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特許7240733デュアル相互作用ヘアピンプローブを使用した標的媒介in situシグナル増幅
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】デュアル相互作用ヘアピンプローブを使用した標的媒介in situシグナル増幅
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20230309BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230309BHJP
   G01N 33/533 20060101ALI20230309BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20230309BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20230309BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALI20230309BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20230309BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230309BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
G01N33/53 M ZNA
G01N33/533
G01N33/48 M
G01N21/78 C
C12Q1/6841 Z
C12Q1/6844 Z
C12N15/11 Z
C12N15/09 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019564848
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018034150
(87)【国際公開番号】W WO2018217905
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】62/510,045
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510144959
【氏名又は名称】ラトガース,ザ ステート ユニバーシティ オブ ニュー ジャージー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャギ,サンジャイ
(72)【発明者】
【氏名】マラス,サルバトーレ,エー.イー.
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-511292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0228733(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0009278(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0223585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定および透過処理した細胞の核酸標的配列に隣接してハイブリダイズすることができ、相互作用してハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)またはローリングサークル増幅(RCA)増幅を開始できる一本鎖イニシエーター配列を生成することができる、相互作用ヘアピンオリゴヌクレオチドプローブペアであって、
前記プローブペアは、
第1の、標的配列相補的な一本鎖ループ配列に隣接する2つの相補的アーム配列を含む二本鎖ステムを有するステムループオリゴヌクレオチドである、アーム供与(arm-donating)ヘアピンプローブ、この際前記アーム配列(供与アーム(donating arm))の一つが一本鎖伸長を含む;および
第2の、一本鎖ループ配列に隣接する2つの相補的アーム配列を含む二本鎖ステムを有するステムループオリゴヌクレオチドである、アーム受容体(arm-acceptor)ヘアピンプローブ、ここで前記ループおよび一方のアームがHCRまたはRCAイニシエーター配列を含み、他方のアームが少なくとも末端の標的配列相補的な配列を含む一本鎖伸長を有し、前記第2のプローブが前記第1のプローブに隣接する前記標的配列にハイブリダイズすることができる、を含み、
この際、溶液中で遊離または非特異的に結合している場合、前記プローブは、それらのステムループ構造を維持することができ、
前記第1のプローブのループ配列の前記標的配列へのハイブリダイゼーションは、そのプローブのステムを開くが、第2のプローブの末端標的配列相補的な配列の前記標的配列へのハイブリダイゼーションは、そのプローブのステムを開かず、
前記第1および第2のプローブが前記標的配列に隣接して正しくハイブリダイズされる場合、前記第1のプローブの供与アームは、一本鎖であり、前記一本鎖伸長を有する前記第2のプローブのアームとハイブリダイズすることができ、それによりそのHCRまたはRCAイニシエーター配列を一本鎖にする、プローブペア。
【請求項2】
前記アーム受容体プローブの一本鎖伸長が前記アーム供与プローブの供与アームのステム形成(stem-forming)部分に相補的なトーホールド(toehold)配列を含む、請求項1に記載のプローブペア。
【請求項3】
前記アーム受容体プローブの一本鎖伸長が前記末端標的配列相補的な配列のみを含む、請求項1に記載のプローブペア。
【請求項4】
前記プローブがDNAプローブである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプローブペア。
【請求項5】
各プローブペアが前記標的配列の異なる部分配列(subsequence)に隣接してハイブリダイズし、各プローブペアが相互作用して同じ一本鎖HCRイニシエーター配列を生成する、複数の請求項1に記載のプローブペアのセット。
【請求項6】
標的配列の2つのアレル変異を検出するための2つの請求項1に記載のプローブペアのセットであって、
第1のアレル変異のみにハイブリダイズするアーム供与プローブと前記アーム供与プローブがハイブリダイズする前記標的配列の3’へハイブリダイズするアーム受容体プローブとを含む第1のプローブペア、この際前記第1のプローブペアは、相互作用して、第1の一本鎖HCRイニシエーター配列を生成する;および
第2のアレル変異のみにハイブリダイズするアーム供与プローブと前記アーム供与プローブがハイブリダイズする前記標的配列の5’へハイブリダイズするアーム受容体プローブとを含む第2のプローブペア、この際前記第2のプローブペアは、相互作用して、前記第1の一本鎖HCRイニシエーター配列とは異なる第2の一本鎖HCRイニシエーター配列を生成する、を含む、セット。
【請求項7】
同一のアーム供与の第1のプローブを共有する2つの請求項1に記載のプローブペアのセットであって、
両方のアーム配列は、一本鎖伸長を含む供与アームであり、
前記第1のプローブおよび両方の第2のプローブが前記標的配列に隣接して正しくハイブリダイズする場合、前記第1のプローブの各供与アームは、一本鎖であり、前記一本鎖伸長を有する一方の第2のプローブのアームとハイブリダイズすることができ、それによりそのHCRまたはRCAイニシエーター配列を一本鎖にし、
各プローブペアは、相互作用して、HCRモノマーの同じペアのために一本鎖HCRイニシエーター配列を生成する、セット。
【請求項8】
選択標的配列のための少なくとも1つの請求項1に記載のプローブペアおよび共に同じ蛍光色素分子でラベルされ、溶液中で遊離している場合、それらのヘアピン構造を維持することができるHCRヘアピンオリゴヌクレオチドモノマーペアを含み、
前記少なくとも1つのプローブペアのそれぞれにより生成された前記イニシエーター配列が前記モノマーペアでHCR増幅を開始することができる、オリゴヌクレオチドセット。
【請求項9】
2つの請求項3に記載のプローブペアを含む、オリゴヌクレオチドセットであって、
第1の色の第1の蛍光色素分子で両方ともラベルされた、第1のペアのHCRヘアピンオリゴヌクレオチドモノマー、および異なる色の第2の蛍光色素分子で両方ともラベルされた、第2のペアのHCRヘアピンヘアピンオリゴヌクレオチドモノマーを含み、
溶液中で遊離している場合、モノマーペアは共に、それらのヘアピン構造を維持することができ、
前記第1の一本鎖イニシエーター配列は、前記第1のペアのHCRヘアピンモノマーでHCR増幅を開始することができるが、前記第2のペアでは開始できず、前記第2の一本鎖イニシエーター配列は、前記第2のペアのHCRヘアピンモノマーでHCR増幅を開始することができるが、前記第1のペアでは開始できない、オリゴヌクレオチドセット。
【請求項10】
標的配列を含む核酸標的分子を含む、または含むと疑われる細胞のサンプル中の前記標的配列を検出するためのsm-FISH方法であって、
a)前記サンプル中の細胞を固定および透過処理すること;
b)前記固定および透過処理した細胞を洗浄すること;
c)前記洗浄した細胞を含むサンプルを請求項1に記載の相互作用ヘアピンハイブリダイゼーションプローブペアの少なくとも一つとインキュベートして、HCRポリメリゼーション用またはRCAポリメリゼーション用の一本鎖イニシエーター配列を生成すること;
d)必須ではないが好ましくは、前記インキュベートした細胞を洗浄して、ハイブリダイゼーションしなかったプローブを除去すること;
e)c)工程後または、もし含む場合、d)工程後、重合試薬を添加し、インキュベートして、増幅産物を生成すること、ここで前記重合試薬は、HCRシグナル増幅用として、少なくとも1つのペアの蛍光色素分子標識HCRモノマー、またはRCAシグナル増幅用として、少なくとも1つの環状DNAテンプレートおよびDNAポリメラーゼを含み;
f)過剰(未使用)HCRヘアピンオリゴヌクレオチドモノマーまたは過剰(未使用)RCA環状テンプレートを洗い流すこと;
g)RCAシグナル増幅用として、各標識配列用の蛍光色素分子標識検出プローブを添加し、インキュベートすること;および
h)顕微鏡検査またはフローサイトメトリーにより前記細胞における蛍光を検出すること、を含む、方法。
【請求項11】
前記相互作用ヘアピンハイブリダイゼーションプローブペアの少なくとも一つが単一ペアからなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が標的配列の2つの密接に関連する変異体の一方または両方を含む、または含むと疑われ、この際前記相互作用ヘアピンプローブペアの少なくとも一つが請求項6に記載の相互作用ヘアピンプローブの2つのペアを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月23日に出願された米国仮出願第62/510,045号の優先権を主張する。当該出願の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般にハイブリダイゼーションプローブを使用したin situでの核酸配列の検出および増幅されたハイブリダイゼーションシグナルの生成に関する。
【背景技術】
【0003】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、例えば、固定され透過処理された個別の細胞のRNAを検出する際に使用される周知技術である。低コピー数のRNA標的を持つ細胞を検出するFISH法、すなわち細胞レベルでの検出は、通常検出可能な蛍光を生成するためのシグナル増幅を含む。そのような方法は、Moter et al.(2000)J.Microbiol.Meth.41:85-112で概説されている。例えば、ジゴキシゲニン(DIG)標識プローブは、DIGラベルとアルカリホスファターゼに結合した抗DIG抗体との反応、続いて発色反応でのアルカリホスファターゼと基質との反応により検出することができる。特定のFISH法では、単一のRNA分子を検出できることが示されている(sm-FISH)。sm-FISHでは、検出可能な蛍光スポットとして単一のRNA分子を検出できるように、十分に強く、十分にバックグラウンドを超える、十分に高い局所的な蛍光シグナルの生成を必要とする。sm-FISHの2つの成功している方法は、ターゲット配列のための複数の核酸ハイブリダイゼーションプローブ、少数(5または6)の長い多重標識プローブ(Femino et al.(1998)Science 280:585-590)または多数(例えば、48)の標的配列に沿ってタイルされ、同じ蛍光色素分子ですべて単一標識された、短いプローブ(Raj et al.(2008)Nature Methods 5:877-879)のセットを利用する。後者のプローブのセットは、LGC Biosearch TechnologiesからStellaris FISHプローブセットとして市販されている。十分にsm-FISHを可能にするための感度を向上させる別の周知技術は、カリフォルニア工科大学、カリフォルニア州パサデナ(米国)のDr.Niles A.Pierceとその同僚らによって開発された蛍光シグナル増幅法であるハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)によるシグナル増幅である。さらに、in situハイブリダイゼーション反応のシグナル強度を改善する別の技術は、ローリングサークル増幅(RCA)によるシグナル増幅である(Lizardi et al.(1998)Nature Genetics 19:225-232;Soderberg et al (2006)Nature Methods 3:995-1000;およびLarsson et al.(2010) Nature Methods 5: 395-7)。
【0004】
HCRによるシグナル増幅において、「イニシエーター配列」と呼ばれる伸長を含む(またはタグが付けられた)リニア(またはランダムコイル)ハイブリダイゼーションプローブにより、2つの蛍光標識ヘアピンオリゴヌクレオチド(モノマー)がハイブリダイゼーションによって重合し、そのハイブリダイゼーションを介してハイブリダイゼーションプローブと相補的な標的配列につながれた、多様な蛍光色素分子標識の二本鎖ポリマーを生成する。DNAおよびRNAの両方が、ハイブリダイゼーションプローブおよびHCRヘアピンオリゴヌクレオチドの構築に使用される。HCRのより詳細な説明は、図1の説明に関連して以下に登場する。
【0005】
単一の標的配列に対する基本的なHCR法のバリエーションは、同じイニシエーター配列を保持し、標的配列に沿ってハイブリダイズする複数のプローブのセット;一方の端に第1のHCRヘアピンオリゴヌクレオチドのためのイニシエーター、他方の端に他のヘアピンオリゴヌクレオチドのためのイニシエーターである2つのイニシエーター配列を有するプローブ;または両方の使用を含む(Choi et al.(2014)ACS NANO 8:4284-4294、4288の右欄)。Choi et al.は、両方を使用した:RNA標的配列ごとに5つの2-イニシエーターDNAプローブ。別のバリエーションは、プローブのセットおよび各ターゲット配列に対して、異なった異なる色のペアのHCRモノマーを用いる複数の標的配列の多重検出である。例えば、Choi et al.は、各標的配列に対して、5つの2-イニシエータープローブのセットと、スペクトル的に異なるAlexa Fluor蛍光色素分子を保持するHCRモノマーのユニークなペアを用いる5つの標的の多重検出を記載している。
【0006】
HCR増幅を利用する固定、透過処理した細胞(ゼブラフィッシュ胚)におけるRNA検出の例は、Choi et al.(2014)により報告されている。第1の方法は、RNAプローブ(81ヌクレオチド長、50ヌクレオチド(50nt)の標的相補配列または「認識」配列、5ntスペーサー、および26ntイニシエーター配列を含む)およびRNA HCRヘアピンオリゴヌクレオチドモノマー(52ヌクレオチド長、それぞれが10ntのトーホールド(toehold)配列、16bpステム、および10ntループを含む)を使用した。第2の「次世代」の方法は、DNAプローブ(91ヌクレオチド長、50ntの標的相補配列、5ntスペーサー、および36ntイニシエーター配列(12ntのトーホールド相補配列を含む);または132ヌクレオチド長、標的相補配列の各末端にスペーサーおよびイニシエーターを有する)、およびDNA HCRヘアピンオリゴヌクレオチドモノマー(72ヌクレオチド長、12ntトーホールド配列、24塩基対(24bp)ステム、および12ntループ)を使用した。全載ゼブラフィッシュ胚とのハイブリダイゼーションのために、胚を1mLの4%パラホルムアルデヒドで固定し、PBSで洗浄し、一連のメタノール洗浄で透過処理した。RNAプローブのために、ハイブリダイゼーションは、50%ホルムアミドを含むバッファー中で55℃で一晩行われた。RNAヘアピンモノマーのために、HCR増幅は、40%ホルムアミドを含むバッファー中で45℃で一晩行われた。DNAプローブのために、ハイブリダイゼーションは、50%ホルムアミドを含むバッファー中で一晩行われた。DNAヘアピンモノマーのために、ハイブリダイゼーションは、ホルムアミドを含まないバッファー(塩化ナトリウムクエン酸(SSC)、Tween20および硫酸デキストランのみ)中で室温で一晩行われた。
【0007】
Choi et al.(2014)によるHCR増幅を用いる固定および透過処理した培養細胞、ゼブラフィッシュ胚、およびマウス脳スライスにおけるRNA検出はまた、Shah et al.(2016)により報告された。胚とのハイブリダイゼーションのために、彼らは、30ntの標的相補配列、5ntのスペーサー、および36ntのイニシエーター配列を含む39の1-イニシエーターDNA sm-Fishプローブ(プローブ間に≧5ntのギャップ)のセットを使用した;培養細胞および脳スライスのために、彼らは、20ntの標的相補配列、4ntのスペーサー、および36ntのイニシエーター配列を含む21~32のDNA sm-FISHプローブのセットを使用した。HCR増幅条件は、HCR重合をポリマー鎖あたり~20から40ヘアピンに制限するために調製された。培養細胞のために、HCR増幅は、硫酸デキストランおよびSSCを含むバッファー中で120nMの各ヘアピンモノマーを用いて室温で45分間実施された。胚のために、HCR増幅は、硫酸デキストラン、SSC、およびTween20を含むバッファー中で60nMの各ヘアピンモノマーを用いて室温で1時間実施された。脳スライスのために、HCR増幅は、硫酸デキストランおよびSSCを含む緩衝液中で120nMの各ヘアピンモノマーを用いて室温で5~6時間実施された。
【0008】
HCRの現在の制限は、疑似シグナル(バックグラウンドシグナルとも称する)の生成を含む。洗浄後およびHCRの開始時に非特異的に結合したままのタグ付きハイブリダイゼーションプローブはまた、バックグラウンドシグナルまたは偽陽性を構成する検出可能なシグナルを生成する。このようなシグナルの存在は、いくつかの参考文献で指摘されているが、それらのバックグラウンドシグナルの決定方法は、互いに異なっていた。Choi et al.(2014)は、これらの非特異的バックグラウンドシグナルの範囲は、イニシエーターを含むハイブリダイゼーションプローブの長さと数に依存することを指摘した。Table S2において、Choi et al.(2014)は、HCR検出実験の1つのシグナルおよびバックグラウンドレベルを報告する。平均シグナルレベルは、2010ユニットであり、バックグラウンドレベル(非特異的検出とも称する)は、28ユニットであった。
【0009】
バックグラウンドシグナルはまた、Chen et al.(2016)によっても観察され、彼らは、Supplementary Table3において、高倍率イメージングにおいてカウントしたスポットの数に関して、シグナルおよびバックグラウンドレベルを報告する。彼らは、遺伝子Dlg4からのmRNAの発現についてマウス脳の領域を画像化した。Dlg4 mRNAに相補的なプローブを使用して得られたスポットの数は、脳の特定の領域で9,795であった。ミスセンスプローブ(mRNAと同じ配列を持ち、したがってRNAに結合できない)を代わりに使用した場合、同じ領域で1,540個のスポットが検出された。同様に、存在しないRNAに対するプローブは、この領域に1,209個のスポットをもたらした。後者の2つの数字は、バックグラウンドシグナルのレベルを表し、最初の数字は、特定のシグナルを表す。
【0010】
Shah et al.(2016)はまた、HCRイニシエーターでタグ付けされた非特異的に結合したプローブの増幅によって生成された顕著なバックグラウンドシグナルを観察した。彼らは、3セットのプローブで同時にPgk1 mRNAを画像化することによりバックグラウンドレベルを分析した:Alexa647で標識されたHCRヘアピンの1つのセットからのシグナルを引き出すイニシエーターでタグ付けされたプローブの1セット、Alexa 594で標識されたHCRヘアピンの第2のセットからのシグナルを引き出す第2のイニシエーターでタグ付けされたプローブの第2のセット、およびCy3bで直接標識されたプローブの第3のセット。彼らの結果は、Alexa 647の36%、Alexa 594 HCRの27%、およびCy3bスポットの20%が非特異的に結合したプローブに由来することを示している(偽陽性シグナル)(Shah et al.2016のFigureS3B)。さらに、この文書の実施例1では、受動的にタグ付けされたプローブで実施されたHCRで得られる偽陽性シグナルの追加の例について記載する。
【0011】
HCRのさらなる制限は、単一のヌクレオチドによって互いに異なるターゲットの間を区別するために使用できないことである。
【0012】
RCAによるシグナル増幅は、通常その後の連結反応のために5’および3’末端が互いに隣接するような方法で標的に結合する一本鎖リニアDNAオリゴヌクレオチドからテンプレート依存的な方法で環状のテンプレートを最初に形成することにより実施される(Lizardi et al.(1998)Nature Genetics 19:225-232およびLarsson et al.(2010)Nature Methods 5:395-7)。こうして作製された環状DNA分子は、次にDNAプライマーおよびDNAポリメラーゼによるローリングサークル増幅(RCA)のテンプレートとして使用される。環状のテンプレートのコピーは、テンプレート配列の相補体の多数の連結されたコピーを生成し、その後蛍光プローブによって検出される。RCAのより詳細な説明は、図2の説明に関連して以下に登場する。
【0013】
本発明の目的は、バックグラウンドを低減し、それにより、HCRシグナル増幅検出方法の感度を高めることである。
【0014】
本発明の他の目的は、ハイブリダイゼーションプローブにつながれた連結アンプリコンを生成するRCAシグナル増幅検出方法であり、この際バックグラウンドシグナルが減少し、感度が増加する。
【0015】
本発明の他の目的は、わずか1ヌクレオチドだけ互いに異なる標的間を区別するために使用できるHCR検出方法である。
【発明の概要】
【0016】
HCRイニシエーターが標的の特異的な領域にタグ付けされているプローブは、公知である。このようなプローブは、in situハイブリダイゼーションの増幅検出を可能にするが、非特異的なシグナルを生成する傾向があり、同じ細胞内の2つのアレルの区別および検出には使用できない。本発明は、HCRイニシエーターがヘアピン内に隔離され、プローブが意図された位置で正しい標的に結合されるまで増幅を開始できないプローブペアを含む。さらに、本発明に係るプローブペアは、単一のヌクレオチド多型によって互いに異なる単一の標的分子からの増幅シグナルの発生および検出を可能にする。野生型および変異型の配列の両方を同時に検出することができる。本発明は、HCRによる固定および透過処理した細胞においてシグナル増幅を開始するための相互作用ヘアピンハイブリダイゼーションプローブペアを含む。
【0017】
本発明はまた、シグナル増幅のためにプローブ連結プライマーおよび環状テンプレートを利用するRCA法を含み、ヘアピン内に隔離され、プローブが意図した位置でそれらの正しい標的に結合するまで増幅を開始できないように、プライマーは、プローブペアに含まれる。本発明は、RCAにより固定および透過処理した細胞におけるシグナル増幅を開始するための相互作用ヘアピンハイブリダイゼーションプローブペアを含む。
【0018】
本発明は、かかるプローブの1つ以上のペアとHCRオリゴヌクレオチドモノマーの1つ以上のペアまたはRCA用の追加のオリゴヌクレオチドのいずれかとのオリゴヌクレオチドセットを含む。本発明はまた、固定および透過処理した細胞と相互作用ヘアピンハイブリダイゼーションプローブのペアの少なくとも1つとを含む反応混合物、固定および透過処理した細胞と少なくとも1つのイニシエーター配列を生成するために相互作用しているハイブリダイズしたプローブペアとHCRモノマーのペアの少なくとも1つとを含む反応混合物を含む。本発明はさらに、本発明の方法による単一分子蛍光ハイブリダイゼーション(sm-FISH)アッセイを実施するためのアッセイキットを含み、キットは、少なくとも上記のオリゴヌクレオチドセットに加えて、ハイブリダイゼーションおよび増幅反応のためのバッファーの少なくとも1つを含む。相互作用ヘアピンプローブペアおよびHCRモノマーは、天然または修飾ヌクレオチドを含み、好ましくは天然ヌクレオチドを含み、より好ましくはDNAヌクレオチドからなる。
【0019】
本発明に係る方法は、DNAまたはRNA標的のためのFISH方法であり、特に単一分子検出(単一分子FISH(sm-FISH))のための方法またはそれが可能な方法を含む。RNAのカテゴリーの例は、制限されないが、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、核内低分子RNA、マイクロRNA、環状RNA、ノンコーディングRNA、プレRNA、およびスプライスされたまたは選択的にスプライスされたRNAを含む。個別の細胞でRNAまたはDNAを検出するためのFISH法では、細胞を固定し、透過処理し、洗浄した後、ハイブリダイゼーションプローブでプローブする。細胞培養および組織中の細胞を固定および透過処理するためのFISH技術は、洗浄と同様に公知である。本発明に係る方法は、細胞を固定および透過処理するための特定の技術、または特定の洗浄工程に限定されない。
【0020】
本発明に係るRNAまたはDNA FISH検出方法では、固定および透過処理した細胞は、標的ストランドにおけるRNAまたはDNA標的配列に隣接してハイブリダイズした場合、相互作用して一本鎖HCRイニシエーター配列を生成する相互作用ヘアピンハイブリダイゼーションプローブのペアの少なくとも1つでプローブされる。かかるプロービングは、固定および透過処理した細胞と少なくとも1つのプローブペアとをインキュベートしてプローブペアをそれらの標的配列とハイブリダイズさせること、およびハイブリダイズしたプローブをインキュベートしてそれらの相互作用によりイニシエーター配列を生成することを含む。プローブのハイブリダイゼーションおよびプローブの相互作用の両方は、一回のインキュベーションで実施することができる。過剰なハイブリダイズしていないプローブを除去するために洗浄した後、HCRヘアピンモノマーのペアの1つとイニシエーターとの反応は、HCRによるシグナル増幅をもたらす。または、シグナル増幅は、RCAによって得られる。
【0021】
相互作用ヘアピンプローブの各ペアは、次の順番でセグメント(核酸配列エレメント)を有する第1のヘアピン含有プローブを含む;5’→3’または3’→5’:第1のヘアピンステムアーム配列、選択した核酸(RNAまたはDNA)標的配列の第1の配列に相補的なループ配列、および一本鎖伸長(single-strand extension)を含む第1のステムアームに相補的な第2のヘアピンステムアーム。我々は、このプローブを「アーム供与ヘアピンプローブ(arm-donating hairpin probe)」または「アーム供与ビーコン(arm-donating beacon)」とさまざまに称するが、我々は、「DB」と略すこともある。我々は、その第2のステムアームを「供与アーム(donating arm)」と称する。相互作用ヘアピンプローブの各ペアはまた、次の順番で配列エレメントを有する第2のヘアピン含有プローブを含む;5’→3’または3’→5’:第1の部分配列(subsequence)に隣接する標的配列の第2の部分配列に相補的な末端標的相補配列、第1のヘアピン含有プローブの供与アームに相補的な第1のヘアピンステムアーム配列、ヘアピンループ配列、および少なくとも第1のヘアピンステムアームの一部分に相補的な第2のヘアピンステムアーム配列。我々は、このプローブを「アーム受容体ヘアピン(arm-acceptor hairpin)または「アーム受容体プローブ(arm-acceptor probe)」と称する。その第2のステムアームは、末端標的相補配列を含む、ある実施形態ではトーホールド配列をも含む一本鎖伸長を有する。方向については、アーム供与ヘアピンプローブの第2のヘアピンステムアーム(供与アーム)およびアーム受容体プローブにおけるその相補体は、内側に向いており、すなわちプローブペアが標的配列にハイブリダイズする場合、互いに近接する。図4の第2のパネルを参照すると、これは、供与アームe’、f’がアーム供与ヘアピンプローブ49の5’末端にあるので、その相互作用アーム受容体プローブ50は、3’末端にそのヘアピンe、f、g’、f’を有すること;および供与アームd’、b’がアーム供与ヘアピンプローブ48の3’末端にあるので、その相互作用アーム受容体プローブ47は、5’末端にそのヘアピンd、b、a’、b’を有することを意味する。
【0022】
第1のヘアピン含有プローブであるアーム供与プローブは、公知の分子ビーコンプローブのように機能し、これは、ステムループ構造を有し、ループ配列がその相補的な標的配列にハイブリダイズすると開く(Tyagi and Kramer(1996)Nature Biotechnology 14:303-308;Tyagi et al.(1998)Nature Biotechnology 16:49-53)。アーム供与ビーコンのループの標的配列へのハイブリダイゼーションは、そのステムアームを分離し、第2のステムアーム配列およびその伸長を一本鎖にし、それによって第2のヘアピン含有プローブであるアーム受容体プローブと相互作用することができる。相互作用は、アーム受容体プローブのステムアームを分離し、そのループ配列および第2のアーム配列を一本鎖とし、要望どおりHCR増幅のためのイニシエーターとしてまたはRCAのためのイニシエーター(プライミング配列)として、機能できる。
【0023】
上記のように、第2のヘアピン含有プローブの第1のアーム配列であるアーム受容体プローブは、標的相補配列だけでなく、ステムおよび標的相補配列の間にトーホールド配列である、第1のアーム配列の一本鎖伸長を含むことができる。このような実施形態(図4を参照)では、トーホールド配列は、第1のプローブの供与アームのステム形成(stem-forming)部分に十分に相補的であり、供与アームを一本鎖とした後、そのステム部分は、トーホールド配列にハイブリダイズする。ストランド置換が続き、第2のプローブのステムを開く。他の実施形態(図5を参照)では、トーホールド配列はないが、相互作用は、それにもかかわらずアーム受容体プローブのステムを開く。両方のタイプの実施形態を以下および実施例で説明する。
【0024】
2つのプローブが標的配列に隣接して結合またはハイブリダイズする場合にのみ、それらは、相互作用して一本鎖HCRイニシエーター配列またはRCAプライマー配列を生成する。第2のプローブのループ配列がアレルを識別している、すなわち、単一ヌクレオチドのミスマッチがあり、その標的配列がアレル間で異なるヌクレオチドを含む際に、ハイブリダイズせず、プローブを開かない場合、HCRまたはRCA増幅は、プローブに完全に相補的なアレル標的配列からのみに由来するであろう。
【0025】
本発明の重要な側面は、増幅のイニシエーターが遊離または非特異的に結合したプローブにおいて「隔離され(sequestered)」または「隠され(masked)」るが、プローブがそれらの特異的な標的に結合すると、「明らかにされ(revealed)」または「暴露され(unmasked)」ることである。
【0026】
本発明に係る検出方法において、上記相互作用ヘアピンプローブのペアにより生成されるHCRイニシエーター配列は、HCRによるシグナル増幅反応を開始する。HCRでは、同じ蛍光色素分子の少なくとも1つのコピー、好ましくは単一のコピーで標識されたヘアピンオリゴヌクレオチドモノマーのペアは、HCRイニシエーターとの反応により開始されると、ハイブリダイゼーションおよび鎖置換により相互作用してイニシエーター配列の二本鎖伸長を生成する。伸長は、HCRポリマーとして知られている。多重に蛍光色素分子で標識されており、それによって直接蛍光色素分子で標識されたプローブと比較して、増幅された蛍光シグナルを生成する。ハイブリダイゼーションによりアーム受容体ヘアピンプローブと直接つながれ、プローブの標的配列へのハイブリダイゼーションにより、そのプローブの標的配列と間接的につながれる。HCRの概略図を図2に示す。HCRの説明については、Choi et al.(2014)ACS Nano 8:4284-4294を参照。
【0027】
本発明に係る検出方法において、相互作用ヘアピンプローブの単一のペアは、HCRイニシエーターの単一のコピーを生成することができる、または相互作用ヘアピンプローブの追加の(1つ以上の)ペアは、HCRイニシエーターの複数のコピーを生成するために使用することができる。複数のプローブペアを使用して単一の標的配列を検出する場合、最も単純な構成は、標的結合配列のみを変更でき、それによって単一のHCRモノマーペアの使用を可能にする。
【0028】
特定の実施形態では、2つのプローブペアは、単一のアーム供与プローブを共有することができる。3つのプローブのみであるとしても、2つのプローブペアがあり、アーム供与プローブおよび第1のアーム受容体プローブを含む1のペアとアーム供与プローブおよび第2のアーム受容体プローブを含む第2のペアとがある。そのような実施形態において、1つのアーム受容体プローブは、アーム供与プローブの結合部位の標的配列5’にハイブリダイズし、第2のアーム受容体は、アーム供与プローブの結合部位の標的配列3’にハイブリダイズする。アーム供与プローブが標的配列にハイブリダイズし、そのステムアームが一本鎖になると、2つの解放された(freed)アームが両方のアーム受容体プローブと相互作用し、それにより2つのHCRイニシエーターを放出する。2つの解放されたHCRイニシエーターは、次にHCRモノマーの単一のペアによってHCR増幅を開始し、これにより、共通のアーム供与プローブから1つではなく2つのHCRポリマーが成長する。これは、標的配列の単一コピーからのより強い蛍光シグナルをもたらす。
【0029】
本発明に係る方法は、例えば野生型配列および単一ヌクレオチド多型または変異(SNPまたはSNV)含む突然変異配列のように、わずか1つのヌクレオチドだけ異なる2つのアレル変異の両方に対する、sm-FISHアッセイ、定性的および定量的アッセイの両方をさらに含む。そのような方法は、2つの相互作用ヘアピンプローブペアを利用し、各ペアは、アーム供与ビーコンプローブおよびアーム受容体ヘアピンプローブを含む。各アーム供与ビーコンプローブのループ配列は、標的配列の異なるアレル変異に相補的である。例えば、アーム供与ビーコンプローブの1つのループ配列は、野生型標的配列にハイブリダイズすることができるが、SNPを有する突然変異配列にはハイブリダイズすることができず、第2のアーム供与ビーコンプローブのループ配列は、突然変異配列にハイブリダイズすることができるが、野生型配列にはハイブリダイズすることができない。したがって、既定のRNA標的鎖のために、アーム供与ビーコンプローブの1つだけが既定の標的配列に結合するであろう。アーム供与ビーコンプローブの1つだけが既定の標的に結合するけれども、両方のアーム受容体プローブは、同じ標的に結合し、結合アーム供与ビーコンのいずれかの側に結合する(図3および4)。3’イニシエーター配列を有するアーム受容体ヘアピンプローブは、アーム供与ビーコンプローブのループが結合する3’である標的配列に結合する。5’イニシエーター配列を有するアーム受容体ヘアピンプローブは、第2のアーム供与ビーコンプローブのループが結合する5’である標的配列に結合する。2つのアーム受容体ヘアピンプローブのトーホールドおよびステムループ配列は、異なっており、これにより各相互作用プローブペアは、異なる蛍光色素分子ラベルで標識された異なるモノマーペアを用いてHCRを開始する異なる一本鎖イニシエーター配列を生成し、よって検出可能な異なるHCR多量体生成物を生成する。4つのプローブおよびそれらがターゲットと互いとにどのように相互作用するのかについては、図3~5に示す。
【0030】
両方のアレル変異体がヘテロ接合細胞の異なるRNA鎖に存在する可能性があるため、そのような細胞では両方のHCR変異からのシグナルを観察できる。一方、ホモ接合体細胞は、たった1つのシグナルを示すであろう。最後に、一方のアレルが他方のアレルと比較して増幅され、より一層発現されるがん細胞において、対応するHCRのシグナルの強度は、マイナーアレルに対応するHCRからのシグナルの強度よりも大きくなる。
【0031】
隣接してハイブリダイズしたプローブペアの相互作用によって生成されない限り、一本鎖HCRイニシエーター配列は、反応混合物に存在しないため、少なくとも1つのプローブペアおよび少なくとも1つのHCRモノマーペアは、固定および透過処理した細胞へと一緒に添加することができる。しかしながら、特定の好ましい方法では、少なくとも1つのプローブペアが最初に添加され、HCRモノマーを添加する前に、非結合プローブを洗浄により除去する。本発明のsm-FISH方法は、HCRポリマーの検出を含む。HCR重合後、未使用のHCRモノマーおよび未結合プローブペアは、洗浄により除去される。蛍光は、顕微鏡検査またはフローサイトメトリーによって検出される。
【0032】
いくつかの状況では、sm-FISHのためのタイルのプローブ(tiled probe)でmRNAターゲット長全体を標的にするのではなく、タイルのStellarisプローブセットで行われるように、標的配列のごく一部(40~50nt)を使用することが必要または有利であり得る。例えば、保管されたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルでは、標的mRNAが分解され、小さな断片としてのみ存在し得る。その他の場合、標的は、多くのsm-FISHプローブのタイリングを可能にするのに十分な長さではない小さなエクソンであり得る。さらに他の場合では、標的は、検出が必要な小さな変異を含みうる。これらの場合、単一の相互作用ヘアピンプローブのペアまたは共通のアーム供与プローブを共有する2つのペアを使用することで十分かつ有利になり得る。
【0033】
本発明により達成されるバックグラウンドのないシグナル増幅により、現在のHCR方法により達成されるよりも信頼性の高い標的核酸の検出が可能になる。バックグラウンドシグナルの減少により、より少ない標的の検出、細胞および組織の自然な自己蛍光を超える標的の検出、および組み合わせカラーコーディング(combinatorial color-coding)による同じ細胞内の複数の標的の検出も可能になる。組み合わせカラーコーディングに基づく多重化では、各標的は、色の組み合わせを生じさせるプローブの混合物を使用して検出される。しかしながら、各標的シグナルは、複数のチャンネルに分割されるため、これは、プローブが各チャンネルのための強いシグナルを生成することを必要とする。本発明のプローブは、強いシグナルを生成して組み合わせカラーコーディングに基づくの多重化のニーズを満たす。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、受動的にタグ付けされたハイブリダイゼーションプローブによる核酸標的配列の検出およびHCRモノマーによるHCRシグナル増幅の概略図である。
図2図2は、受動的にタグ付けされたハイブリダイゼーションプローブによる核酸標的配列の検出および環状テンプレートと標識検出プローブとによるRCAシグナル増幅の概略図である。
図3図3Aは、相互作用ヘアピンプローブペアならびにHCRイニシエーター配列を生成するためのお互いとおよびそれらの標的配列との相互作用の概略図である。図3Bは、重合が図3Aに示される相互作用ヘアピンプローブペアによって開始されるHCRモノマーのペアの概略図である。
図4図4は、相互作用ヘアピンプローブの2つのペアならびにHCRイニシエーター配列を生成するためのお互いとおよびそれらの標的配列との相互作用の概略図である。アーム受容体プローブは、トーホールド配列を含み、アーム供与プローブは、トーホールド相補配列を含む。
図5図5は、トーホールドまたはトーホールド相補配列を有さないように変更された図4のプローブペアならびにHCRイニシエーター配列を生成するためのお互いとおよびそれらの標的配列との相互作用の概略図である。
図6図6は、共通のアーム供与プローブを共有する相互作用ヘアピンプローブの2つのペアおよび2つのHCRイニシエーター配列を生成するためのそれらの相互作用の概略図である。
図7図7は、相互作用ヘアピンハイブリダイゼーションプローブペアによる核酸標的配列の検出ならびに環状テンプレートおよび標識検出プローブによるRCAシグナル増幅の概略図である。
図8図8は、受動的にタグ付けされたハイブリダイゼーションプローブによる検出およびHCRシグナル増幅からのならびに相互作用プローブペアによる検出およびHCRシグナル増幅からの標的特異的シグナルおよびバックグラウンドシグナルを示す顕微鏡画像のセットである。
図9図9Aおよび9Bは、受動的にタグ付けされたプローブおよび相互作用ヘアピンプローブペアを使用してHCRで生成された標的特異的シグナルおよびバックグラウンドシグナルを含むグラフである。分析はフローサイトメトリーにより実施された。
図10図10Aおよび10Bは、相互作用ヘアピンプローブの2つのペアおよびHCRモノマーの2つのペアを用いるmRNA分子の単一ヌクレオチド変異の同時検出を示す顕微鏡画像を含む。また、定量的レベルの区別を表示するグラフを示す。
図11図11は、異なる設計のアーム供与プローブを有する相互作用プローブペアを用いるmRNA分子の単一ヌクレオチド変異の同時検出を示す顕微鏡画像のセットである。
図12図12は、相互作用ヘアピンプローブを用いて得られたシグナルを示す顕微鏡画像のセットであり、アーム受容体プローブは、ホスホジエステル結合のみを有し、アーム受容体プローブは、クリックケミストリーによる非ホスホジエステル結合を含んだ。
図13図13は、相互作用ヘアピンプローブペアによるHeLa細胞のスモールガイドRNAの検出およびHCRシグナル増幅からのシグナルの顕微鏡画像である。
図14図14は、3種類のプロービング:すべて同じ蛍光色素分子で単一標識された、多数のショートプローブを用いる直接(増幅なし)検出;多数の受動的にタグ付けされたプローブを用いるHCR;および半数の相互作用ヘアピンプローブペアを用いるHCRを使用するフローサイトメトリー検出からの標的特異的なシグナルおよびバックグラウンドシグナルを含むグラフのセットである。
図15図15は、EGFR mRNAのヘテロ接合の点突然変異の検出を示す顕微鏡画像のセットである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
定義:
「RNA」。本特許出願の明細書および特許請求の範囲での使用では、標的配列に言及する場合、「RNA」は、すべてのバリアント、例えばメッセンジャーRNA、リボソームRNA、コーディングまたは非コーディングRNA、直鎖または環状RNA、トランスファーRNA、マイクロRNA、スプライスされたまたは交互にスプライスされたRNA、およびプレRNAを含む。本特許出願の明細書および特許請求の範囲での使用では、相互作用ヘアピンプローブに言及する場合、「RNA」は、天然リボヌクレオチドおよびホスホジエステル結合を有するオリゴリボヌクレオチドを含み、また1つ以上の非天然ヌクレオチド(例えば、PNAヌクレオチド、LNAヌクレオチドまたは2’-O-メチルリボヌクレオチド)を含むオリゴリボヌクレオチドを含む。
【0036】
「DNA」。本特許出願の明細書および特許請求の範囲での使用では、相互作用ヘアピンプローブに言及する場合、「DNA」は、天然デオキシリボヌクレオチドおよびホスホジエステル結合を有するオリゴデオキシリボヌクレオチドを含み、また1つ以上の非天然ヌクレオチド(例えば、PNAヌクレオチド、LNAヌクレオチドまたは2’-O-メチルリボヌクレオチド)および非天然の骨格を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドを含む。
【0037】
「核酸(Nucleic acid)」。本特許出願の明細書および特許請求の範囲での使用では、標的分子または標的配列に言及する場合、「核酸」は、RNAまたはDNAを意味し、いずれの場合も天然ヌクレオチドおよびホスホジエステル結合を有するオリゴヌクレオチドを含み;または相互作用ヘアピンプローブに言及する場合、天然ヌクレオチドおよびホスホジエステル結合を有するRNAおよびDNAオリゴヌクレオチドを含み、また1つ以上の非天然ヌクレオチド(例えば、PNAヌクレオチド、LNAヌクレオチドまたは2’-O-メチルリボヌクレオチド)を含む。
【0038】
「隣接して(Adjacently)」。相互作用ヘアピンプローブペアのハイブリダイゼーションを記述するために本特許出願の明細書および特許請求の範囲での使用では、「隣接して」は、互いに十分に近く、相互作用ヘアピンプローブ間の相互作用を可能にするサイトを意味する。好ましい選択は、2つの相互作用するプローブの結合サイト間にギャップがない「直接隣接した(immediately adjacent)」である。
【0039】
「標的分子(target molecule)」、「標的鎖(target strand)」、「標的配列(target sequence)」、および「標的配列領域(target-sequence region)」または「部分配列(subsequence)」。本特許出願の明細書および特許請求の範囲での使用では、標的分子または標的鎖は、RNAまたはDNAのいずれかである核酸鎖であり、1以上の標的配列を含む。「標的配列」は、1つ以上の従来の受動的にタグ付けされたプローブによりまたは1つ以上の本発明の相互作用ヘアピンプローブのペアにより、プローブされるRNAまたはDNA標的配列中の配列であり、シグナル増幅は、単一色のシグナルをもたらす。2つ以上の従来の受動的にタグ付けされたプローブのセットまたは相互作用ヘアピンプローブの2つ以上のペアのセットが同じ標的配列を標的とする場合、セット内の従来の受動的にタグ付けされたプローブのそれぞれまたはセット内の相互作用ヘアピンプローブのペアは、標的配列の別々の標的配列領域(または部分配列)を標的とする。1つまたは複数の標的分子(または標的鎖)の2つ以上の標的配列を同時に検出する多重法では、各標的配列は、1つ以上の従来の受動的にタグ付けされたプローブによりまたは1つ以上の相互作用ヘアピンプローブのペアによりプローブされ、シグナル増幅は、各標的配列の異なる色のシグナルをもたらす。
【0040】
「受動的にタグ付けされた(Passively tagged)」。先行技術(Choi et al.(2014))のプローブに対応するハイブリダイゼーションプローブを記述するために本特許出願の明細書および特許請求の範囲での使用では、「受動的にタグ付けされた」とは、イニシエーター配列であるHCRイニシエーター配列またはRCAイニシエーター配列のいずれかは、標的配列相補配列(target sequence-complementary sequence)の少なくとも一端に付加されることを意味する。このようなプローブのイニシエーターは、イニシエーターとしての機能を妨げる構造に隔離されていない。それどころか、受動的にタグ付けされたハイブリダイゼーションプローブのイニシエーター配列は、プローブがその特定の標的配列に結合しているかまたは非特異的な部位に結合しているかにかかわらず、シグナル増幅を開始し得る。
【0041】
図面の解釈
図において、お互いに相補的な配列は、同じ文字で示されており、1つは、相補的な配列の間を区別するためにプライム(’)で示されている。したがって、図において、配列aおよびa’は、お互いに相補的であり、配列bおよびb’、I5およびI’5も同様である。
【0042】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
本発明に係る方法は、FISH方法である。FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)は、細胞内の核酸標的を検出するための公知の方法である。最初に、細胞は、通常ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドで固定され、通常エタノールまたは界面活性剤で透過処理されて、核酸ハイブリダイゼーションプローブの導入が可能にる。本発明は、細胞を固定および透過処理する特定の方法に限定されず、in-situプローブハイブリダイゼーションおよびHCRまたはRCA増幅と互換性のある、任意の固定および透過処理方法を使用できる。例えば、Choi et al.(2014)は、4%パラホルムアルデヒドで胚を固定し、メタノールで透過処理することを教示する(Choi et al.(2014)Supplementary Information at S1.1)。Shah et al.(2016)Development 143:2862-2868は、マウス脳スライスを4%パラホルムアルデヒドで固定し、1Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の8%SDS界面活性剤の溶液でのインキュベーションを含む、「PACT clearing」として知られる技術により透過処理することを教示している(Shah et al.(2016),Supplementary Materials and Methods)。Chen et al.(2016)Nature Methods 13:679-684およびSupplementary Materialsは、培養細胞を10%ホルマリンで固定し、70%エタノールに保存して固定した細胞を透過処理することを教示している(Chen et al.(2016),Supplementary Methods)。実施例で報告する我々の研究において、我々は、固定のために1X PBS中の4%ホルムアルデヒドを10分間使用し、透過処理のために70%エタノールを30分間使用した。
【0043】
最もシンプルなFISH方法では、選択された標的配列、例えばDNAプローブに相補的な蛍光色素分子標識リニア(またはランダムコイル)ハイブリダイゼーションプローブを次に添加し、ハイブリダイズしていないプローブ(ハイブリダイズしていないプローブのコピーを意味する)を洗い流す。その後、蛍光を検出する。最もシンプルなFISH方法は、ただ豊富な標的分子を検出するためだけには十分である。まれな標的分子を検出するため、特にまれな標的分子を単一分子レベルで検出する場合、FISH方法は、単一の標的分子から発せられる蛍光を増加させる方法を含む必要がある。それを行う一般的な方法の1つは、シグナル増幅である。本発明は、2つのシグナル増幅方法のいずれかを含むFISH方法に関する:ハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)およびローリングサークル増幅(RCA)。本発明に係る方法は、高レベルの感度でRNAおよびDNA標的の検出のためにFISHを利用し、特定の好ましい実施形態では、単一分子FISH(sm-FISH)と呼ばれることもある単一分子感度を可能とする。以下の説明では、主にRNA標識の検出に焦点を当てる。DNA検出に必要な特定の調整については、別途説明する。
【0044】
ハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)
本発明の特定の方法は、固定および透過処理した細胞における単一核酸分子の検出のための、ハイブリダイゼーション連鎖反応、HCRとして知られるシグナル増幅方法を含むFISHに関し、またそれを使用する(単一分子FISH、sm-FISHと略す)。従来のHCRシグナル増幅による検出は、特定の核酸標的配列、例えばRNA標的配列のために、1つのハイブリダイゼーションプローブ、またはより多くの場合、数個のハイブリダイゼーションプローブのセットを使用する。通常、ハイブリダイゼーションプローブまたはプローブセットの複数のハイブリダイゼーションプローブは、蛍光色素分子標識されていない。各ハイブリダイゼーションプローブは、それを3’テール、5’テール、または3’テールおよび5’テールの両方に結合しており、いずれも標的配列にハイブリダイズしない。代わりに、各テールは末端HCR「イニシエーター」配列を含む。我々は、それらの標的配列に結合したときに、遊離の(隔離されていない)イニシエーター配列を有するハイブリダイゼーションプローブを「受動的にタグ付けされたプローブ」と称する。HCRによるRNA標的配列またはDNA標的配列の検出はまた、HCRモノマーと呼ばれることもある、蛍光色素分子標識ヘアピンオリゴヌクレオチドのペアを使用する;その一つは、ハイブリダイゼーションプローブのイニシエーター配列と相互作用してHCR増幅を開始する。既存のHCR検出方法の基本を図1に示し、これは、単一プローブの単一核酸標的配列へのハイブリダイゼーションを示すかかる方法を表し、ハイブリダイゼーションプローブは、単一のHCRイニシエーター配列を含む。細胞は、培養中であろうと組織切片中であろうと、FISH方法において慣習となっているように、固定および透過処理される。核酸標的配列、例えばRNA標的配列に相補的なハイブリダイゼーションプローブを固定および透過処理した細胞に加え、インキュベートしてプローブを標的配列にハイブリダイズさせる。HCRモノマーを添加する前に、サンプルを洗浄してプローブの未結合コピーを除去する。以下の説明から理解されるように、そのような除去は、プローブのコピーが特異的に(正しく)ハイブリダイズしたか非特異的に結合したかにかかわらずHCR増幅を開始できるため、極めて必要である。HCRは、その後蛍光色素分子標識HCRモノマーを添加してインキュベートすることにより実行される。その後、未使用のHCRモノマーを洗浄により除去して、その後、蛍光を顕微鏡によりまたはフローサイトメトリーにより検出する。
【0045】
図1は、核酸標的分子10における標的配列TS1に相補的であるプロービング配列P1を含む単一の受動的にタグ付けされたハイブリダイゼーションプローブ11により開始されるHCRによるシグナル増幅を示す。ハイブリダイゼーションプローブ11はまた、5’テールとしてイニシエーターI1を含み、これは、セグメントa’およびb’を含む。イニシエーターI1は、スペーサーS1によってプローブ配列P1に結合している。また図1に示すように、HCRヘアピンのペアはオリゴヌクレオチド(HCRモノマー)、すなわち蛍光色素分子標識ヘアピンオリゴヌクレオチドH1およびH2である。モノマーH1は、「トーホールド」配列として知られる一本鎖5’末端配列aと、ステムb-b’を含むステムループヘアピン(ハイブリダイズされたアーム配列bおよびb’を含む)と一本鎖ループ配列c’とを含む。トーホールド配列aは、ステムアームbの一本鎖伸長である。順序において、H1の4つの配列は、5’-a-b-c’-b’-3’である。ヘアピンモノマーH1は、単一の3’末端蛍光色素分子Oのみを含むことが示される。モノマーH2は、一本鎖末端トーホールド配列cと、ステムb-b’を含むステムループヘアピン(ハイブリダイズされたアーム配列bおよびb’を含む)と一本鎖ループ配列a’とを含む。順序において、4つの配列は、3’-c-b-a’-b’-5’である。HCRモノマーH2はまた、単一の5’末端蛍光色素分子Oを含む。H1およびH2の蛍光色素分子Oは、同じである。モノマーはまた、複数のコピーの蛍光色素分子Oで標識することができる。
【0046】
図1は、イニシエーターI1により開始されるHCR増幅の概略フローチャートである。まずプローブI1は、固定および透過処理した細胞を含むサンプルに添加され、インキュベートされる。図1の一番上に示されるように、プローブ配列(標的配列相補配列)P1は、標的配列TS1にハイブリダイズするが、スペーサー配列S1およびイニシエーター配列I1は、ハイブリダイズしない。したがって、配列a’、b’を含む、イニシエーター配列I1は、プローブ配列P1を介して標的配列TS1に結合される(またはつながれる)が、一本鎖を維持する。洗浄によるプローブ11の未結合コピーの除去後、HCRモノマーH1およびH2のペアは、図1の右上に示すように、標的分子10およびハイブリダイズしたプローブ11を含む洗浄サンプルに添加される。
【0047】
ハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイズしたプローブ11を含むサンプルとHCRモノマーH1およびH2とのインキュベーションは、次のようにHCRシグナル増幅を引き起こす。図1の第2の図を参照すると、イニシエーター配列11の配列a’は、H1トーホールド配列aにハイブリダイズし、鎖置換により伸長されたハイブリッドを形成し、それによりイニシエーター配列b’は、H1配列bにハイブリダイズして、HCR重合を開始する。ハイブリダイゼーション条件下で不可逆である、このハイブリダイゼーションおよび鎖置換反応(hybridization-and-strand displacement reaction)は、モノマーH1のステムb-b’を分離し、その結果H1配列c’、b’が示されるような一本鎖3’末端領域となり、モノマーH2のためのイニシエーター配列I2として機能することができる。したがって、現在一本鎖であるH1配列c’は、H2トーホールド配列cにハイブリダイズし、鎖置換により伸長されたハイブリッドを形成し、図1の第3の図に示すように、HCR重合を継続する。ハイブリダイゼーション条件下で同様に不可逆である、第2のハイブリダイゼーションおよび鎖置換反応は、H2のステムb’-bを分離し、その結果図1の第3の図に示すように、成長するポリマー鎖の終端で、H2配列a’、b’がオリジナルのイニシエーター配列I1と同一の一本鎖5’末端領域となる。図1に示すように、H2の一本鎖配列a’、b’は、次に別のH1モノマーを加えることができる。これは、図1の一番下の図に示すように、一方の鎖における一連のモノマーH1および相補鎖におけるイニシエーター配列I1から伸長する一連のH2モノマーを有する、成長する二本鎖HCRポリマーHCR-Pをもたらす。非結合のH1およびH2モノマーは、洗浄により除去され、蛍光は、顕微鏡検査またはフローサイトメトリーにより検出される。HCRは、特異的に結合したプローブおよび非特異的に結合したプローブで同等に動作するため、プローブ11などの受動的にタグ付けされたプローブは、疑似シグナルを生成する傾向がある。
【0048】
イニシエーター配列I2が3’タグとしてプローブ11に含まれる場合(3’-b-c-P1)、同じHCRモノマーH1およびH2のHCR重合を同様に開始することができる。イニシエーター配列I2の配列c’は、上述のH2トーホールド配列cにハイブリダイズし、上記の方法で重合を開始して、H1よりむしろH2で開始して、プローブ配列P1の3’末端から伸長する第2のHCRポリマーを生成する。また、プローブのセットは、プローブ11の標的配列相補配列を変えることにより作製して、標的配列TS1におけるさらなる配列にハイブリダイズすることができる。
【0049】
ローリングサークル増幅(RCA)でのsm-FISH
本発明はまた、ローリングサークル増幅(RCA)によるシグナル増幅を含むsm-FISH検出のための、またはその検出を可能にする、試薬および方法を含む。我々はまず、図2に記載のRCAが受動的にタグ付けされたプローブで使用することができる方法である我々のコンセプトを説明し、図2は、ハイブリダイゼーション、RCA増幅および蛍光色素分子(O)標識検出プローブLPとしてここに示すように、検出プローブでの検出の概略フローチャートを表す。図2の左側の第1の図は、標的配列TS2を含む標的配列20にハイブリダイズしたプローブ21を示す。ハイブリダイゼーションプローブ21は、標的配列特異的な部分P2、スペーサーS5およびプローブ配列P2が標的配列TS2に結合したときに一本鎖を維持するDNA配列であるRCAイニシエーターI5を含む。プローブ21は、固定および透過処理した細胞の標的にハイブリダイズして、過剰な未結合プローブは、HCR方法のために、上述のように洗浄により除去される。
【0050】
その後、RCAは、プローブのイニシエーター配列I5と相補的であり、また検出プローブ結合配列PBSを含む配列I5’を含む環状DNAテンプレートCTを使用してサンプルに対して行われる。テンプレートCTおよびDNAポリメラーゼは、洗浄したサンプルに添加され、その後RCA条件下でインキュベートされる。イニシエーター(プライマー)配列I5は、図2の第2の図に示されるように、テンプレートCTの配列I5’にハイブリダイズする。テンプレートCTはその後、連続して複数回コピーされる、すなわち図2の第3の図に示すように、DNAポリメラーゼにより重合される。テンプレートCTが環状でありエンドレスであるため、非常に長い一本鎖DNA増幅産物APが生成され、示されるように環状テンプレートCTの多くの直列に繰り返されたコピーを含む。環状テンプレートは、反応を行うために添加されてもよく、またはまずI5に結合し、その後リガーゼの添加により環状に変化される、CTのリニアバージョンを用いることによりin situで生成されてもよい。増幅産物APは、ハイブリダイズしたプローブ21を介して標的配列TS2へのつながりを維持する。未結合のテンプレートCTを洗い流し、検出プローブLPを添加して、ハイブリダイズする条件下サンプルとインキュベートする。図2の最後の図に示すように、セグメントPBS環状テンプレートCTの配列を有する、標識プローブLPは、増幅産物APにおける環状テンプレートCTの各コピーにハイブリダイズする。標識プローブLPは、少なくとも一つの蛍光色素分子Oを含む。図2に記載の実施形態において、プローブLPは、単一の蛍光色素分子で標識されたリニア(ランダムコイル)プローブである。多くのコピーの標識プローブLPは、結合し、標的配列TS2が強い蛍光を発するようにする。過剰の未結合標識プローブLPを洗浄により除去し、蛍光を顕微鏡検査またはフローサイトメトリーにより検出する。分子ビーコンプローブを単一標識プローブLPの代わりに使用して、洗浄による後者の除去の必要性を回避することができる。HCRと同様に、RCAは、特異的に結合したプローブおよび非特異的に結合したプローブで同等に動作するため、プローブ21のようなRCAを開始するための受動的にタグ付けされたプローブは、疑似シグナルを生成する傾向がある。
【0051】
HCRを用いた本発明の方法および試薬
本発明の検出方法は、上述の通り、細胞を固定および透過処理すること、プローブを細胞の核酸標的配列、例えばmRNA配列にハイブリダイズすること、および上記のHCRヘアピンオリゴヌクレオチド(HCRモノマー)のペアを重合することを含むsm-FISH方法である。本発明の方法は、とりわけHCR重合を開始するために使用されるハイブリダイゼーションプローブの設計および構築において、HCR増幅による従来公知のFISH法とは異なる。プローブが標的配列にハイブリダイズするか非特異的部位に結合するかにかかわらず、HCRを開始することができるイニシエーター配列で受動的にタグ付けされたハイブリダイゼーションプローブを使用するのではなく、本発明の方法は、意図された核酸標的配列、例えばmRNA標的分子中の選択した標的配列にハイブリダイズした場合にのみ、HCRシグナル増幅を開始する本発明のプローブを使用する。本発明のハイブリダイゼーションプローブは、我々が好ましくはDNAからなる相互作用ヘアピンオリゴヌクレオチドプローブペアと称する相互作用ステムループオリゴヌクレオチドのペアを含み、プローブは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)方法により固定および透過処理されたサンプル中のDNA鎖またはmRNA鎖などのRNA鎖であり得る、核酸標的鎖の標的配列に隣接してハイブリダイズする。
【0052】
a.本発明の相互作用ヘアピンプローブペアおよびそれらの相互作用
本発明に係る相互作用ヘアピンプローブペアの実施形態およびそれらの相互作用の概略フローチャートを図3Aに示す。プローブヘアは、我々が「アーム供与ビーコン」と称することもある、第1の「アーム供与ヘアピンプローブ」31を含む。プローブ31は、ステムe-e’および標的核酸分子30の標的配列TS3に相補的である一本鎖ループ配列P3を有するステムループオリゴヌクレオチドである。ステムのハイブリダイズするアームの一つである「供与アーム」は、末端の、一本鎖伸長f’を含む。プローブペアはまた、第2の「アーム受容体ヘアピンプローブ」32を含む。プローブ32は、ステムf-f’および一本鎖ロープ配列g’を有するステムループオリゴヌクレオチドである。ステムのアームの一つは、末端標的相補配列P4を含み、示される実施形態においては、トーホールド配列eも含む、一本鎖伸長を含む。
【0053】
本発明に係るsm-FISH方法は、標的配列を含む標的分子を含む、または含むと疑われる細胞のサンプル中の標的配列を検出する工程を含む:
a)サンプル中の細胞を固定および透過処理すること;
b)固定および透過処理した細胞を洗浄すること;
c)洗浄した細胞を含むサンプルを本発明に係る相互作用ヘアピンプローブペアの少なくとも一つとインキュベートすること;
d)必須ではないが好ましくは、インキュベートした細胞を洗浄して、ハイブリダイゼーションしなかったプローブを除去すること;
e)c)工程後または、もし含む場合、d)工程後、重合試薬を添加し、インキュベートして、増幅産物を生成すること、前記重合試薬は、HCRシグナル増幅用として、少なくとも1つのペアの蛍光色素分子標識HCRモノマー、またはRCAシグナル増幅用として、少なくとも1つの環状DNAテンプレートおよびDNAポリメラーゼを含む;
f)過剰(未使用)HCRヘアピンオリゴヌクレオチドモノマーまたは過剰(未使用)RCA環状テンプレートを洗い流すこと;
g)RCAシグナル増幅用として、各標的配列用の蛍光色素分子標識検出プローブを添加し、インキュベートして、その後洗浄により過剰検出プローブを除去すること;
h)顕微鏡検査またはフローサイトメトリーにより前記細胞における蛍光を検出すること。
【0054】
図3に示す相互作用プローブペアは、以下のように機能する。固定および透過処理した細胞を含むサンプルを図3Aの第2の図に示すように、プローブペア31、32とインキュベートする場合、プローブペアはまず、それらの標的相補配列、ここではループ配列P3および伸長配列P4により標的配列TS3にハイブリダイズする。本発明に係る相互作用プローブペアのプローブ、ここではプローブ31、32は、「隣接して」ハイブリダイズする、すなわちお互いに十分に近接しており、図3Aの真ん中の図に示すように、それらの相互作用を可能にする。「隣接して」に関して、我々は、本発明に係る相互作用プローブペアの標的相補配列(または「プローブ配列」)、ここではプローブ配列P3およびP4は、それらの間にいかなるギャップもなく、またはそれらの意図した相互作用を依然として可能にするそれらの間の小さなギャップのみ、好ましくは多くて4~5ヌクレオチドのギャップで、ハイブリダイズすることを意味する。ループ配列P3のハイブリダイゼーションは、プローブ31のステムe-e’を開き、これにより供与アームe’、f’は、一本鎖となる。伸長P4のハイブリダイゼーションは、プローブ32のステムf’-fを開かない。図3Aの真ん中の図に示すように、標的に結合した後、ハイブリダイズして開いたプローブ31は、ハイブリダイズしたプローブ32と相互作用する。図3Aに示す実施形態において、プローブ31のアーム配列e’は、ハイブリダイズしたプローブ32のトーホールド配列eにハイブリダイズして、ハイブリッドe’-eを形成する。鎖置換により、ハイブリッドe’-eは、伸長し、それによりプローブ32のステムf’-fを開き、ループ配列g’およびアームf’を含む配列を3’末端一本鎖配列g’、f’とし、これらは共にHCRイニシエーター配列I3を形成する。
【0055】
HCRヘアピンオリゴヌクレオチド(HCRモノマー)のペア、すなわち蛍光色素分子標識ヘアピンオリゴヌクレオチドH3およびH4を図3Bに示す。モノマーH3は、「トーホールド配列」として知られる一本鎖3’末端配列g、ならびにステムf-f’(ハイブリダイズしたアーム配列fおよびf’を含む)および一本鎖ループ配列h’を含むステムループヘアピンを含む。トーホールド配列gは、ステムアームfの一本鎖伸長である。順序において、H3の4つの配列は、3’-g-f-h’-f’-5’である。モノマーH4は、一本鎖末端トーホールド配列h、ならびにステムf’-f(ハイブリダイズしたアーム配列f’およびfを含む)および一本鎖ループ配列g’を含むステムループヘアピンを含む。順序において、4つの配列は、5’-h-f-g’-f’-3’である。HCRモノマーH3およびH4は、同じ蛍光色素分子Iで標識されている(その蛍光色素分子は、モノマーペアH1、H2およびモノマーペアH3、H4が同じ反応で使用された場合、図4に関連して以下で説明するように、モノマーペアH1、H2の蛍光色素分子は、モノマーペアH3、H4の蛍光色素分子とは異なる色であるということを反映して、中抜きの星として示す)。
【0056】
HCRシグナル増幅は、上述の方法によりイニシエーター配列I3を生成した後に実施される。プローブ31および32が相互作用して、HCRイニシエーター配列I3を生成した後、未結合のプローブを洗い流す。その後、HCRモノマーH3およびH4を添加して、ハイブリダイズする条件下でサンプルとインキュベートする。遊離したイニシエーター配列I3の配列g’(図3A)は、HCRモノマーH3のトーホールド配列gにハイブリダイズし、鎖置換により伸長するハイブリッドを形成して、それによりI3イニシエーター配列f’は、H3配列fにハイブリダイズして、HCR重合を開始する。ハイブリダイゼーション条件下で不可逆である、このハイブリダイゼーションおよび鎖置換反応は、モノマーH3のステムf-f’を分離し、その結果H3配列h’、f’は、示されるように一本鎖3’末端領域となり、H4モノマーのためのイニシエーター配列I4としての機能を果たすことができる。したがって、現在一本鎖であるH3配列h’は、H4トーホールド配列hにハイブリダイズし、鎖置換により伸長されるハイブリッドを形成して、図1に関連して上記で説明した方法で、HCR重合を継続する。同様にハイブリダイゼーション条件下で不可逆である、この第2のハイブリダイゼーションおよび鎖置換反応は、H4のステムf’-fを分離し、その結果H4配列g’、f’は、成長するポリマー鎖の末端で、オリジナルのイニシエーター配列I3と同じ一本鎖3’末端領域となり、モノマーユニットH3およびH4を除き図1に記載のものと同様のHCRポリマーを生成する。未結合のH3およびH4モノマーは、洗浄により除去され、蛍光色素分子は、顕微鏡検査またはフローサイトメトリーにより検出される。
【0057】
相互作用ヘアピンプローブ31~32は、ペアが標的配列TS3に隣接してハイブリダイズする場合に限り、HCRイニシエーター配列g’、f’(I3)を生成する。溶液中で遊離または非特異的に結合している場合、プローブ31は、開かず、供与アームe’、f’は、一本鎖の形態で存在せず、よってプローブ32と相互作用できず、そのステムループ構造を維持する。したがって、イニシエーター配列g’、f’(I3)は、隔離される、すなわちHCR重合を開始するために必要な一本鎖の形態にはならない。まずプローブ31は、構造および機能において未標識分子ビーコンプローブのようなものであり、両方とも公知である。例えば、Tyagi et al.(1998)Nature Biotechnology 16:49-53;およびBonnet et al.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)96:6171-6176を参照。プローブ31は、意図した(正しい)標的配列TS3に対して極めて特異的である。ミスマッチ耐性、すなわち標的配列TS3がループP3に対して1つまたは2つのミスマッチヌクレオチドを含む場合でも、ハイブリダイズして開くように設計することができる、またはアレルを認識するように、すなわちループP3が完全に相補的な標的配列TS3にハイブリダイズする場合には、ハイブリダイズして開くが、標的配列TS3がループP3に対して単一のミスマッチヌクレオチドを含む場合、または非特異的に結合する場合には、開かないように設計することができる。したがって、本発明の方法を用いて、(単一ヌクレオチド多型(SNP)を含む標的配列のような)標的配列中の複数の密接に関連しているアレルのたった一つからHCRシグナル増幅を開始することができる。開いたプローブ31に隣接してハイブリダイズしない限り、プローブ32は、開かず、一本鎖イニシエーター配列I3を生成しないであろう。よって、プローブ32は、分子ビーコンタイプではなく、結果として標的配列30のミスマッチ配列または細胞マトリクスのいずれかにハイブリダイズするように、リニア配列P4を介して非特異的に結合しやすいにもかかわらず、プローブ32は、開かされて一本鎖配列I3を生成するために、開いたプローブ31に隣接してハイブリダイズしなければならないということにより、開かないであろう。よって、第1のプローブが正しくハイブリダイズするかぎり、および第2のプローブがそれに隣接してハイブリダイズする限り(これは正しくハイブリダイズすることを意味する)、一本鎖HCRイニシエーター配列を生じるであろう。溶液中にあるまたは非特異的に結合したプローブ32のコピーは、HCRモノマーH3、H4のHCR増幅を開始できず、したがってバックグラウンドの生成の原因とならないであろう。したがって、本発明に係る方法は、プローブハイブリダイゼーションおよびHCR増幅の間に洗浄工程を有さない実施形態でさえ、バックグラウンドが低いであろう。しかし、ステムハイブリッドは、動的(dynamic)であり、「呼吸(breathing)」を受けるため、非常に稀に溶液中のプローブ31のコピーが簡単に開き、プローブ32のコピーと接触して、HCR増幅を引き起こす可能性がある。その可能性を防ぐために、本発明の方法の好ましい実施形態は、低レベルのバックグラウンドシグナルでさえ発生することに対する予防策として、モノマーH3、H4の添加の前に洗浄工程を含む。
【0058】
上記の設計において、アーム供与ビーコン31のプローブ配列は、ヘアピンの2つのアームに結合しており、これは、上述のとおり、プローブにより高い特異性を付与する。一方、アーム受容体プローブ32のプローブ配列は、末端配列である。ユーザーがこのプローブにもより高い特異性を付与したい場合は、ヘアピン形成アーム配列をプローブ配列P4に向かって付加することができる。例えば、図3のプローブ32を参照すると、配列e’は、プローブの5’末端に付加されるであろう。この追加により、フリープローブ32は、2つのヘアピンf’、g、fおよびe、P4、e’を含むであろう。標的に結合すると、後者のヘアピンは、解かれて、トーホールド配列eを一本鎖にするであろう。上記のように、その後の鎖置換およびイニシエーターの暴露(unmasking)が起こるであろう。この変更は、フリープローブがお互いに相互作用しないことをさらに保証するであろう。
【0059】
以下の実施例において、我々は、既定の標的配列のために、HCRイニシエーター配列を生成する単一の相互作用プローブペアを用いる成功したsm-FISH検出を示す。プローブペアのセットは、異なるプローブペアが標的配列の異なる場所でハイブリダイズし、同じイニシエーターを生成し、HCRモノマーの同じペアでHCR重合化を開始してより強い蛍光シグナルを生成することができるように、両方のプローブの標的配列相補配列を変更することで作製できる。
【0060】
b.2つの密接に関連するアレルのための2つの本発明に係る相互作用プローブペア
本発明の特定の実施形態は、存在する場合は2つの密接に関連するアレルの両方、もしくは標的配列バリアントのいずれかを検出、または検出および定量化する方法を含む。アレル間の変異は、1つ以上のヌクレオチドの置換、削除、または挿入を含むことができる。変異は、スプライス変異も含むことができる。好ましくは、標的配列の変異は、アーム供与プローブの結合領域内に含まれるが、アーム供与プローブおよびアーム受容体プローブの両方の結合領域に及ぶより長い変異も検出することができる。検出および定量化は、単一分子の感度および分解能を実現できる。2つの密接に関連するアレルの1つ、または存在する場合はその両方の検出は、相互作用ヘアピンプローブペアの2つおよび異なる標識HCRモノマーのペアの2つを使用し、各アレルのための一つのプローブペアおよび一つのモノマーペアは、図4に図式化して示される。図4は、各プローブペアに1つずつ、2つの並列フローチャートを示す。
【0061】
図4は、2つの異なる核酸標的分子を示し、それらは密接に関連するアレル変異である。標的分子41は、第1の標的配列変異を含み、これを説明のために我々は、野生型標的配列変異WTTSと称する。標的分子46は、第2の標的配列変異を含み、これを説明の目的のために我々は、突然変異型標的配列変異MTTSと称する。標的配列変異は、単一ヌクレオチド置換によって異なる密接に関連するアレルである。標的配列変異WTTSは、白丸(〇)43として表される野生型ヌクレオチドを有し、標的配列MTTSは、黒丸(λ)45によって表される置換された変異ヌクレオチドを有する。標的配列変異WTTSおよびMTTS、並びに標的鎖41および46は、それ以外の点では同一である。出発のサンプルは、鎖41および46のいずれか、またはその両方を含むことができる。
【0062】
溶液中に遊離して存在する相互作用プローブの2つのペア:アーム供与ヘアピンプローブ48およびアーム受容体プローブ47を含むペアならびにアーム受容体プローブ49およびアーム受容体プローブ50を含むペアを図4の一番上の図に示す。説明の目的のために、左側の48および47の相互作用プローブペアを破線で描き、一方右側の49および50の相互作用プローブペアを実線で描く。最初に後者のペアを考慮すると、プローブ49および50は、それぞれ図3Aのプローブ31および32の構造を有し、それらは、2つの図において同じラベルが付けられている。標的配列MTTS(図4の右側の中央の図)に隣接してハイブリダイズした場合のそれらの相互作用は、イニシエーター配列I3(図4の右側の一番下の図)を解放する。イニシエーターI3は、図3Aおよび3Bに関連して上述したように、HCRモノマーH3およびH4(図3B)のHCR重合を開始する。HCRモノマーH3およびH4は、同じ蛍光色素分子Iで単一標識されている。プローブ49のループP3は、標的配列変異MTTSと完全に相補的である。それは、ヌクレオチド44(黒丸λ)を含み、標的鎖46の標的配列MTTSのヌクレオチド45(黒丸λ)に相補的であるが、鎖41の標的配列WTTSのヌクレオチド43(白丸)にミスマッチである。我々は、ヌクレオチド42および44のそれぞれを「問い合わせヌクレオチド(interrogating nucleotide)」と称することがある。アーム供与プローブ49は、アレルを認識する:標的配列MTTSにハイブリダイズすると開くが、標的配列WTTSと接触、または非特異的に結合した場合、ハイブリダイズせず、開くこともない。
【0063】
プローブペア48および47に目を向けると、アーム供与ヘアピンプローブ48は、アレル識別性のステムループオリゴヌクレオチドである。その標的配列相補ループP5は、標的配列変異WTTSに完全に相補的である。それは、標的鎖41の標的配列WTTSのヌクレオチド43(白丸〇)に相補的である、ヌクレオチド42(白丸〇)を含むが、標的配列46のヌクレオチド45(黒丸λ)とはミスマッチである。プローブ48はまた、ステムd-d’を含む。ステムアームd’である供与アームは、末端の一本鎖伸長b’を含む。プローブ47は、「アーム受容体ヘアピン」プローブ、すなわちステムb’-bおよび一本鎖ループ配列a’を有するステムループオリゴヌクレオチドである。ステムのアームの一つ、ここでは3’アームbは、標的相補配列(または領域)P6を含み、描かれた実施形態において、トーホールド配列dも含む一本鎖伸長を含む。標的配列WTTSに隣接してハイブリダイズした場合のプローブ47,48(図4の左側中央の図)の相互作用は、イニシエーター配列I1を自由にする(図4の左側一番下の図)。イニシエーター配列I1は、図1に関連して上述したように、HCRモノマーH1およびH2のHCR重合を開始する。HCRモノマーH1およびH2は、同じ蛍光色素分子Oで単一標識され、これはHCRモノマーH3およびH4を標識するのに使用した蛍光色素分子Iの色とは異なる色を有する。アーム供与プローブ48は、アレル認識性である:それは標的配列WTTSにハイブリダイズした場合に開くが、標的配列MTTSと接触、または非特異的に結合した場合、ハイブリダイズせず、開くこともない。
【0064】
各供与ビーコンプローブの供与アームがその相補的なアームよりも長いことに留意することが重要である。例えば、プローブ49の5’アームは、5’アームがステム要素である配列e’に加えて配列要素f’を含むので、その3’アームよりも長い。プローブ49が図4の右側中央の図に示すように、標的配列MTTSにうまく結合すると、配列要素e’(トーホールド相補体)が自由になり(ステムにおいてハイブリダイズせず)、図4の右側中央の図に示すように、プローブ50の配列要素e(トーホールド)に結合する態勢となり、その後プローブ50の配列要素f’に取って代わり、配列g’およびf’を含む一本鎖イニシエーターI3を生成する(図4右側一番下の図)。プローブ48が標的WTTSにうまく結合すると、配列要素d’(トーホールド相補体)が自由になり、図4の左側中央の図に示すように、プローブ47の配列要素d(トーホールド)に結合する態勢となり、その後プローブ47の配列要素b’に取って代わり、配列a’およびb’を含む一本鎖イニシエーターI1を生成する。
【0065】
単一のアッセイで標的配列変異WTTSおよびMTTSのいずれかまたは両方を検出できるように、2つの相互作用プローブペアの4つのプローブすべてを、ハイブリダイゼーション反応において、固定および透過処理した細胞を含むサンプルと同時にインキュベートするが、図4の真ん中の図に示すように、4つのプローブのうち3つのみが既定の標的配列変異、ここではWTTSまたはMTTSのいずれかに結合する。右側の受容体プローブ50および左側の受容体プローブ47の両方は、両方のアレル標的配列変異に常に結合するが、供与ビーコンの1つだけがそれらの間で結合する。標的配列変異が野生型の場合(白丸〇で示される可変ヌクレオチド)、プローブ48が結合し、標的配列変異が変異体の場合(黒丸λで示される可変ヌクレオチド)、プローブ49が結合する。両方の標的配列変異がサンプルに存在する場合、プローブ47、49および50は、標的配列変異MTTSのコピーに結合し、プローブ47、48および50は標的配列変異WTTSのコピーに結合する。アーム受容体プローブ47および50は、サンプルに存在する場合、両方の標的配列変異に、単一ヌクレオチド変異領域の左および右に隣接して結合し、ここでアーム供与ヘアピンプローブ48が結合し、アーム供与ヘアピンプローブ49が結合する。
【0066】
ハイブリダイゼーションおよびプローブ49、50もしくはプローブ48、47または両方の間での相互作用を可能にするインキュベーションの後、どの標的配列または配列がサンプル中に存在するのによって決まるが、ハイブリダイズしなかったプローブを洗浄により除去し、HCRモノマーH3、H4、H1およびH2を添加すると、1つまたは2つのHCRポリマーを生成する。重合後、非結合の(過剰な)HCRモノマーを洗浄により除去する。一本鎖イニシエーター配列I1(野生型標的配列WTTSが存在する場合に生成される)のアベイラビリティは、HCRヘアピンオリゴヌクレオチドH1およびH2の重合を引き起こす(図1)。その増幅は、1色の蛍光シグナルを生成する(例えば、TMR)。一方、一本鎖イニシエーター配列I3(変異標的配列MTTSが存在する場合に生成される)のアベイラビリティは、HCRヘアピンオリゴヌクレオチドH3およびH4の重合を引き起こす(図3)。その増幅は、異なっていて、スペクトルとして区別できる色のシグナルを生成する(例えば、Cy5)。HCR増幅後、2つの蛍光色素分子からの蛍光を顕微鏡検査またはフローサイトメトリーにより検出する。顕微鏡検査による検出において、増幅した蛍光シグナルを異なる色のスポットとして検出し、それにより1または両方のアレルの存在を異なる色のスポットの存在によって示し、各アレルでの標的鎖の相対存在量を2つの色のスポットの比率によって示す。どの供与ビーコンが野生型標的配列変異のために設計されているかは任意であり、ヌクレオチド42および44は、逆にすることができる。
【0067】
2つのプローブにおける関連する配列が相補的であるよりむしろ異なっている(プローブ47の配列dおよびプローブ49のe’は相補的ではなく、プローブ47の配列bおよびプローブ49のf’は相補的ではない)ので、アーム供与プローブ49の標的配列MTTSへの結合は、隣接してハイブリダイズしたアーム受容体プローブ47のステムを開くことはない。プローブ48は、プローブ49がプローブ47からのいかなる応答も引き出すことができないのと同じ理由で、プローブ50からのいかなる応答を引き出すことができない。
【0068】
図5は、ハイブリダイゼーションおよびアーム受容体プローブ47および50からトーホールド配列を取り除き、アーム供与プローブ48および49からトーホールド相補配列を取り除くように変更した図4のプローブの相互作用を図式で示す。標的配列は、図4の記載と同じである。アーム受容体プローブ60(図5)は、P4が続く一本鎖伸長e(図4)ではなく一本鎖伸長P4を含む。トーホールド配列eをプローブ50から取り除き、プローブ60を作製している。同じことがアーム受容体プローブ57にも当てはまり、一本鎖伸長は、P6に続く一本鎖伸長d(図4)ではなく、P6である。トーホールド配列dは、取り除かれている。アーム供与プローブ59は、供与アーム49の供与アームe’、f’(図4)の代わりに、供与アームf’を含む。トーホールド相補配列e’をプローブ49から取り除き、プローブ59を作製している。同じことがアーム供与プローブ58にも当てはまり、供与アームは、d’、b’(図4)ではなく、b’である。トーホールド相補配列d’をプローブ48から取り除き、プローブ58を作製している。
【0069】
プローブ48(図4)において、ステム形成ヌクレオチドは、配列dおよびd’内のヌクレオチドであり、その両方がプローブ58(図5)から削除されることが分かるであろう。図5に記載の実施形態において、ステムがプローブ58においても形成できるように、プローブ58の5’ステムアーム(bsubと呼ぶ)は、配列bの一部分に由来する。同じことがアーム供与プローブ59にも当てはまり、配列eおよびe’は、取り除かれている。ステムがプローブ59においても形成できるように、プローブ59の3’ステム(fsubと呼ぶ)は、配列fの一部分に由来する。
【0070】
図5における相互作用プローブペアを用いてHCRイニシエーター配列を生成する方法は、図4における相互作用プローブペアのための上記方法と同じであり、生成されるイニシエーター配列もまた同じである。図5の中央右側の図に示すように、アーム供与プローブ59が標的配列MTTSにハイブリダイズする場合、その解放された供与アーム(配列f’)は、プローブ60のステムアームfと同じ長さである;トーホールド配列がない。我々は、それにもかかわらず、図5の一番下の右側の図に示すように、プローブ59がプローブ60と相互作用し、イニシエーターI3を遊離することを見出した。同様に、図5の中央左側の図に示すように、アーム供与プローブ58が標的配列WTTSにハイブリダイズする場合、その解放された供与アーム(配列b’)は、プローブ57のステムアームbと同じ長さである;トーホールド配列がない。それにもかかわらず、図5の一番下の左側の図に示すように、プローブ58は、プローブ57と相互作用し、イニシエーターI1を遊離する。アーム供与ヘアピンプローブの供与アームにおけるトーホールド相補配列が2つの機能を果たし、プローブが溶液中で遊離している場合にヘアピン構造を維持し、標的に結合するとアーム受容体プローブと相互作用するという事実は、それにもかかわらず、非常に短い、または図5に示すように、0ntのトーホールド相補セグメントを有するプローブ設計を可能にする。いかなるトーホールド配列を有さない相互作用ヘアピンプローブペアの設計を実施例に記載する。いかなるトーホールド配列を有さない相互作用ヘアピンプローブペアが十分に機能するという事実は、驚くべきことであり、本発明の態様である。
【0071】
c.2つのマスクされたイニシエーター配列を暴露し、HCRモノマーの単一ペアからのHCRシグナルを生成するアーム供与ビーコンプローブ
相互作用ヘアピンプローブシステムでのシグナルを増加するために、各標的配列のために、1つではなく2つのHCRイニシエーター配列を暴露するプローブのセットを利用することが有利である。2つのイニシエーター配列は、同じHCRモノマーペアから増幅を開始し、よって同じ色のシグナルを生成するであろう。このようなシステムの例を図6に示す。このシステムは、3つのプローブ、61、62および50を含む2つの相互作用プローブペア(62、61および62、50)を含む(図6、一番上)。2つのプローブペアは、同じアーム供与プローブ62を共有する。3つのプローブは、標的相補配列P6、P3およびP4を含み、これらは標的分子46の標的配列MTTSにハイブリダイズする。この実施形態において、標的配列は、変異配列であり得るが、そうである必要はないことが分かるであろう。図6の真ん中の図に示すように、3つのプローブは、標的配列上で隣接してハイブリダイズする。それらは、モノマーH3およびH4からのHCR増幅を開始するように設計される(図3B)。アーム供与ビーコン62は、プローブが溶液中で遊離している場合、標的配列相補ループP3の両側に存在する配列要素eおよびe’の結合を介して分子間のステムを形成する。このプローブはまた、ステム要素eおよびe’の一本鎖伸長として配列要素f’の2つのコピーを含む。プローブ62のeおよびe’がお互いに結合する一方、2つのコピーのf’配列は、お互いに結合または相互作用せず、一本鎖を維持する。図に記載の他のアーム供与ビーコンプローブとは異なり、アーム供与ビーコン62は、その両側のそれぞれに位置する受容体ヘアピンプローブにそのアームの両方を提供することができる。図4に関連して上述したように、アーム受容体プローブ50は、(3’から5’)配列要素f’、g’、fを含み、標的相補配列P4が続く。アーム受容体ヘアピン61は、(3’から5’)標的相補配列P6、配列要素e’、f、h’およびf’を含む。3つのプローブのハイブリダイゼーションは、アーム供与ビーコン62のヘアピンステムe-e’の分裂につながり、同時にプローブ62の開いたステムアームeとアーム受容体ヘアピン61のトーホールド配列e’との結合およびプローブ62の開いたステムアームe’とアーム受容体ヘアピン50のトーホールドeとの結合の両方の可能性を生み出す(図6、真ん中)。これらの結合は、両方のアーム受容体プローブでの鎖置換につながる。アーム受容体プローブ50での鎖置換は、HCRイニシエーター配列I3(ループg’およびアームf’)を一本鎖とする。アーム受容体プローブ61での鎖置換は、HCRイニシエーター配列I4(ループh’およびアームf’)を一本鎖とする(図6、一番下)。解放されたイニシエーター配列I3は、HCRモノマーH3に始まるモノマーH3およびH4のHCR増幅を開始することができ、解放されたイニシエーター配列I4は、HCRモノマーH4に始まるモノマーH3およびH4のHCR増幅を開始することができる。両方の増幅反応は、基本的に同じ重合産物をもたらし、同じ色のシグナルを生成する。これは、3つのプローブの隣接した結合が2つの別の色の1つにおける増幅シグナルを生成する図4に記載のプローブのシステムとは対照的である。
【0072】
RCAの開始のための相互作用ヘアピンプローブペア
受動的にタグ付けされたハイブリダイゼーションプローブ(図2)がRCAにおいて疑似シグナルを生成する傾向を克服するために、本発明の相互作用ヘアピンプローブペアは、HCRについて上述したのと同じ方法で展開することができる。本発明に係るRCAを図7に示し、これはRCA実施形態の概略フローチャートを表す。分かりやすくするために、プローブ31、32(図3)の要素と共通である相互作用ヘアピンプローブ71、72の要素は、図3と同じ名称を付す。図7の他の要素は、図2の要素と共通であり、図2と同じ名称を付す。
【0073】
標的配列TS3および相互作用ヘアピンプローブペア71、72を含む標的分子30を図7の最初の図に示す。アーム受容体プローブ72は、ループg’およびステムアームf’を含むHCRイニシエーターI3がループj’およびステムアームi’(ヘアピンステムi-i’を形成する)を含むRCAイニシエーター(プライマー)I5(図2)と置き換えられたことを除き、アーム受容体プローブ32(図3)と同じである。アーム供与プローブ71は、供与アームの一本鎖伸長f’が一本鎖伸長i’と置き換えられたことを除き、アーム供与プローブ31(図3)と同じである。プローブハイブリダイゼーションおよび相互作用は、図3に関連して上述したように進行する。しかし、プローブペア71、72の相互作用は、ループ配列j’およびアーム配列i’を含む一本鎖RCAイニシエーター配列I5を開放する。イニシエーターI5は、その機能を図2に関連して上述したイニシエーターと同じである。I5は、環状テンプレートCTのためのプライミング配列である。DNAポリメラーゼによりCTをコピーしてポリマーAPを生成すること、蛍光色素分子(O)標識検出プローブLPのハイブリダイゼーション、および蛍光検出は、図2について説明したように進行する。簡単に述べると、図3に記載のシステムにおいて、相互作用ヘアピンプローブ32は、遊離している場合、ハイブリダイゼーションにより重合を開始するイニシエーター配列I3を含むが、図7に記載のシステムにおいて、相互作用ヘアピンプローブ72は、遊離している場合、RCAによる重合を開始するプライミング配列であるイニシエーター配列I5を含む。
【0074】
我々は、配列i’がプローブ71および72の両方に存在することを強調する。その3’末端が解放されていない(配列e’に結合している)ので、プローブ71の配列i’は、決してプライマーとしての機能を果たすことができない。プローブ72の配列i’は、標的配列の意図する隣接した部位にハイブリダイズした場合、2つの相互作用ヘアピンプローブの相互作用によってのみ、環状テンプレートCTに結合することができる。DNAポリメラーゼが添加された場合に残っているプローブ72の遊離のまたは非特異的に結合したコピーは、それら自体の3’末端を伸長し(プローブ72構造を参照)、さらに疑似シグナルを生成する可能性を減少することができるので、標的結合プローブの相互作用のみがRCAを開始することができる。したがって、我々の好ましい方法は、増幅試薬の添加の前に未結合の相互作用プローブを除く洗浄工程を含むけれども、そのような洗浄工程を削除することができる。RCA産物APは、図2に関連して上述したように、検出される。シグナルをさらに増幅するために、複数のペアの相互作用プローブを単一の標的配列のために使用することができ、すべては、同じイニシエーター配列を生成し、各ペアは、同じ環状テンプレートからのRCAシグナルを生成するであろう。また、異なる標的の多重検出およびRCAシグナル増幅を実施するために、各ターゲット用に異なる環状化した標的のための異なるイニシエーター配列を生成する異なる相互作用ヘアピンプローブペアおよび異なる色で標識された異なる検出プローブを使用することができる。
【0075】
相互作用ヘアピンプローブの設計および構築
本発明のヘアピンプローブにおけるさまざまな要素の長さおよび配列のいくつかの態様は、比較的フレキシブルである一方、他の態様は、比較的制約されている。
【0076】
アーム供与プローブのループ配列は、意図する標的配列に相補的である(いくつかの実施形態では複数のアレル変異を含み、他の実施形態では1つの変異を除くすべてを除外する)が、サンプルに存在し得る他の非標的配列に相補的ではないように設計される。ループは、必要な特異性を確保するのに十分な長さに設計される。供与アームは、溶液中で遊離または非特異的に結合している場合、そのヘアピン構造を維持するのに十分な数のヌクレオチドを含まねばならない。さらに、ミスマッチ耐性であろうとアレル特異的であろうと、ループがその意図する標的配列に結合する場合には、ステムが開く(解離する)必要があるが、非特異的に結合する場合には、そうではない。これは、本技術分野内である公知の分子ビーコンプローブ構造である。アーム供与プローブのヘアピンがアレルを認識する場合、そのループの長さは、アレル変異、特に単一ヌクレオチド変異(SNP)を拒絶する必要性により制約されるため、通常10~25ヌクレオチド長の範囲である。以下の実施例では、ループ長/ステム長の組み合わせは、ヌクレオチド単位で、HCRに関して、15/6、12/6、11/6、9/6(不十分)、および20/11であった。実施例6は、RCAに関して、25/5の組み合わせを示す。供与アームが比較的不可逆に相互作用できるように、アーム供与プローブの供与アームは、アーム受容体プローブの1つのステムアームと相互作用して、アーム供与プローブのステムよりも強いハイブリッドを形成する必要がある。供与アームは、その要件を達成するために、いくつかのヌクレオチドの一本鎖伸長を有する。以下の実施例において、供与アーム伸長の長さは、ヌクレオチド単位で、12、17、および18であった。
【0077】
HCRシグナル増幅を含む実施形態に関して、アーム受容体プローブのループおよびステムの長さおよび配列は、プローブの相互作用によって遊離すると、ループおよび1つのステムアームがHCRイニシエーター配列を含むため、HCRモノマーの選択によって決まる。同様に、RCAシグナル増幅を含む実施形態に関して、アーム受容体プローブのループおよびステムの長さおよび配列は、環状テンプレートの選択によって決まる。アーム受容体プローブは、溶液中で遊離している場合、そのヘアピン構成を維持する必要があり、プローブがその標的配列に正しくまたは非特異的にハイブリダイズする場合、開かないようにする必要がある。アーム供与プローブと比較すると、そのループは、一般的により短く、そのステムは、一般的により長い。以下の実施例では、アーム受容体プローブのループ長/ステム長の組み合わせは、ヌクレオチド単位で、HCRに関しては8/18であった。実施例6は、RCAに関して6/20の組み合わせを記載する。アーム受容体プローブのヘアピンの1つのアームは、ステム形成ヌクレオチドに加えて、標的相補配列を含む一本鎖伸長を有し、特定の実施形態では、アーム供与プローブの供与アームのステム形成配列に相補的であるトーホールド配列も有する。標的相補セグメントの長さは、例えば15から50ヌクレオチドまで、非常に大きく異なる。以下の実施例では、アーム受容体プローブの標的相補セグメントは、ヌクレオチド単位で、HCR関しては19、20、22または24であった。実施例6は、RCAに関して22ヌクレオチドの長さを記載する。
【0078】
トーホールド配列(およびアーム供与プローブにおけるその相補体)の長さは、アレル識別の特異性に大きな影響を与える:トーホールド配列が短いほど、プローブはより識別力がある。3~11ヌクレオチド長のトーホールド配列を有するアーム受容体プローブは、一般的な標的検出プローブとして十分に機能する。しかし、アレル識別の実施形態において、より好ましいアレル識別は、より小さなトーホールド配列で達成され、我々が発見したように、最良のアレル識別は、0ヌクレオチドのトーホールド配列により発揮される。以下の実施例では、HCR開始に関して、一本鎖伸長の長さは、ヌクレオチド単位で、0-ntのトーホールドに19、20、または22の標的相補的ヌクレオチドを加えたもの;5-ntのトーホールドに22の標的相補ヌクレオチドを加えたもの;および14-ntのトーホールドに24の標的相補ヌクレオチドを加えたものであった。その一本鎖伸長が22の標的相補ヌクレオチドと、さらに5-ntの長さのトーホールド配列とを含むアーム受容体プローブをRCA開始に関して記載する。
【0079】
トーホールド配列がある場合、アーム供与プローブのステム部分は、アーム受容体プローブのトーホールド配列に相補的である。実施例3に記載の第1のプローブペアにおいて、アーム受容体プローブのトーホールド配列は、5nt長であったが、アーム供与プローブのステムは、6nt長であった。その違いに対応するために、一本鎖伸長は、18ヌクレオチド(アーム受容体プローブの18nt長ステムアームに完全に相補的である)から17ヌクレオチドへと削減され、アーム供与プローブのステムの末端ヌクレオチドが18番目のヌクレオチドを提供した。したがって、5’アームのステム形成配列は、必要に応じてトーホールド配列に相補的であるが、1ヌクレオチドより長く、一本鎖伸長は、1ヌクレオチド短いが、アーム受容体プローブにおけるその相補体に相補的である。トーホールド配列がない場合、ステム形成ヌクレオチドおよび一本鎖伸長を含む、ビーコンプローブの供与アームは、アーム受容体プローブのステムと同じ長さである。
【0080】
相互作用ヘアピンプローブペアの各プローブの一部は、標的配列に特異的であり、各プローブのその他の部分は、汎用であり、多くの異なる標的配列のために異なるプローブペアで使用することができる。図3を参照すると、例えばアーム受容体プローブ32において、ヘアピンステムループおよびトーホールド配列(f’-g’-f-e)は、汎用部分である。標的相補配列P4のみが標的特異的である。同様に、アーム供与プローブ31において、ループP3のみが標的特異的である。上記実施形態において、プローブの汎用部分は、DNA分子などの連続する一本鎖核酸分子の一部である。本発明の態様は、相互作用ヘアピンプローブの汎用部分および標的特異的部分が非ホスホジエステル結合を介して互いに連結でき、プローブが標的依存的な方法でHCRまたはRCAからの増幅したシグナルの生成において依然として十分に機能することである。例えば、プローブの汎用部分は、クリックケミストリーを介して標的特異的部分に結合することができる(Baskin JM,et al.(2007)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104(43):16793-16797)。2つのコンポーネントを結合させる他の方法は、当業者には明らかであろう。この方法における汎用部分の標的特異的部分への結合は、比較的長い汎用部分を繰り返し合成する必要がなく、比較的短い標的特異的部分のみを異なる標的配列ごとに合成する必要があるため、プローブ合成の大幅なコスト削減を可能にする。
【0081】
ハイブリダイゼーションの手順の特別な調整が本発明のプローブを用いたDNA標的の検出のために必要である。細胞DNAは、二本鎖であるため、ハイブリダイゼーションのためのプローブには容易にアクセスすることができない。そのようなDNA標的配列へのアクセスを可能にするために、固定および透過処理した細胞は、変性剤の存在下で熱処理される(Vargas et al(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:17008-17013)。例えば、2X SSCおよび70%ホルムアミドの存在下、80℃で10分間、細胞をインキュベートすると、ゲノムDNAが十分に変性し、通常の条件下、本発明の相互作用プローブペアを含む、オリゴヌクレオチドプローブとのその後のハイブリダイゼーションが可能になる。加えて、DNA標的から転写されて細胞内に存在する任意のRNA種がDNA標的からの蛍光シグナルを不明瞭にしないように、細胞RNAは、相互作用ヘアピンププローブを添加する前に、リボヌクレアーゼAでの前処理によって、除去することができる。通常、非反復核DNA標的配列は、既定の細胞核の2つのコピー(各染色体に1つ)にのみ存在するであろう。したがって、2つのスポットのみが相互作用ヘアピンプローブの各セットによって生成され、それらは核内に位置する。DNA標的の検出のための追加の検討事項は、DNA/DNAハイブリッドが相互作用DNAプローブペアおよびRNA標的配列の間で形成されるRNA/DNAハイブリッドよりもわずかに安定性が低いため、標的配列がDNAである場合、プローブペアの標的相補セグメントが一般的に比較的長くなることである。
【0082】
実施例の説明
実施例1は、固定、透過処理した細胞におけるRNA標的配列およびHCR増幅の検出が本発明に係る相互作用DNAヘアピンプローブの単一ペアを用いて開始された場合に得られた、またはHCRが図1に示すタイプの単一の受動的にタグ付けされたDNAハイブリダイゼーションプローブを用いて開始された場合に得られた標的配列特異的なシグナルのレベルおよびバックグラウンドシグナルのレベルを比較する。ヘアピンプローブペアの構造は、図5に示すプローブ59および69のようなトーホールド配列がないことを除き、図3におけるプローブ31および32として一般的に示されている。我々は、いくつかの分析を行った。第1の分析において、我々は、ハイブリダイゼーションプローブのためのGFP標的配列を含む、GFPを発現するようにトランスフェクトされた細胞を顕微鏡で撮影し、また我々は、同じプローブおよびHCR増幅を受けた非トランスフェクト細胞を撮影した。代表的な画像を図8に示す。Cy5チャンネルに現れる蛍光スポットは、Cy5でタグ付けされたHCRポリマーからであった。細胞境界内のスポットを上述のアルゴリズムを用いてカウントした(Raj et al(2008)Nature Methods 5:877-879)。図8の左の4つのパネルは、GFPテンプレートでトランスフェクトしたHeLa細胞に関し、右の4つのパネルは、このテンプレートでトランスフェクトしていないHeLa細胞に関する。左端の2つのパネルのそれぞれの1つの細胞は、GFPチャンネルにおける蛍光を示し、これら2つの細胞がテンプレートプラスミドでトランスフェクトされたことを示している(トランスフェクションは一部の細胞で発生し、他の細胞では発生しない)。同じセットの細胞をCy5チャンネルで見ると(左から2列目のパネル)、HCRシグナルが見られる。相互作用ヘアピンプローブによる検出およびシグナル増幅に対応する、下のパネルにおいて、Cy5シグナルは、トランスフェクト細胞でのみ見られる。受動的にタグ付けされたプローブによる検出およびシグナル増幅に対応する、上のパネルにおいて、トランスフェクト細胞は、前のケースで起こったように、強いシグナルを示す。しかし、前のケースとは異なり、いくつかのスポットがGFP蛍光を全く示さない(トランスフェクトされていない)細胞で見られる。これらのシグナルは、潜在的にバックグラウンドまたは偽陽性シグナルを表す。バックグラウンドの分析のために非トランスフェクト細胞のみを考慮することを完全に確認するために、我々はまた、GFPテンプレートでトランスフェクトされなかったHeLa細胞を撮影した。これらの細胞をフルオレセインチャンネルで見ると、わずかな自己蛍光のみがすべての細胞で観察される(左から3列目のパネル)。しかし、これらの細胞をCy5チャンネルで見た場合(一番右のパネル)、すべてのスポットは、非特異的なソースからであろう。右下のパネルの画像は、フィールド全体での一つのスポットを明らかにするために、より高いコントラストで表される。下のパネルは、目に見える8つの細胞の1つにおけるただ1つのスポットを示すが、上のパネルでは、約13のスポットが合計たった5つの細胞において見られる。これらの観察結果は、異なるプローブシステムにおける標的特異的なシグナルの大きさは、ほぼ同じであるが、バックグラウンドシグナルの大きさは、HCRが受動的にタグ付けされたプローブにより開始された場合、HCRが相互作用ヘアピンプローブペアにより開始された場合よりも高いことを示す。
【0083】
我々はまた、コンピュータ画像分析により4つのカテゴリー(トランスフェクト細胞/受動的にタグ付けされたプローブ;トランスフェクト細胞/相互作用ヘアピンプローブペア;非トランスフェクト細胞/受動的にタグ付けされたプローブ;および非トランスフェクト細胞/相互作用ヘアピンプローブペア)のそれそれの細胞におけるスポットの平均数を分析した(Raj et al(2008))。我々は、平均して、GFPを発現するHeLa細胞が両方の種類のプローブで100スポット/細胞を超えて生成されたことを見出した(多くの細胞において、スポットが非常に多すぎて、それらがお互いに融合し、よってアルゴリズムがそれらをお互いから分解することができなかったため、スポットの平均数は、より正確に決定することができなかった)。一方、GFPを発現しなかったコントロール細胞において、受動的にタグ付けされたプローブは、1.46スポット/細胞を生成したが、相互作用ヘアピンプローブペアは、細胞あたり0.62スポットを生成した。図8の代表的な画像のように、この分析はまた、2種類のプローブにより得られた特異的なシグナルがほぼ同じであるが、受動的にタグ付けされたプローブにより生成されたバックグラウンドシグナルが相互作用ヘアピンプローブペアにより生成されたバックグラウンドシグナルよりも高いことを示す。
【0084】
2つのプローブシステムにより生成されたバックグラウンドおよび特異的なシグナルにさらなる光を当てるために、我々は、細胞懸濁液で実施したパラレルハイブリダイゼーションおよび増幅反応からのフローサイトメトリーにより細胞を分析した。この分析を図9に示す。図9Aの2つのパネルに示される散布図において、各ドットは、それぞれCy5チャンネルおよびGFPチャンネルでの単一細胞の蛍光のX-Y座標を表す。中央のスポットの大きなクラスター(GFP蛍光の10ユニットおよびCy5蛍光の10ユニットの交点)は、GFPプラスミドでトランスフェクトされてなく、よって有意水準のGFPまたはCy5蛍光を示さなかったHeLa細胞を表す。対角線上にあるスポットは、両方のチャンネルにおいて蛍光を示す、トランスフェクト細胞を示す。2つの分布を示す仮想的な線の傾きは、ほぼ同じであり、2つのプローブシステムの感度が類似することを示す。我々はまた、トランスフェクトされなかった細胞におけるCy5蛍光を分析した。これらの細胞は、有意水準のGFP蛍光を示さないため、Cy5蛍光のみが示され、データは、実線ヒストグラムとして表される(図9B)。2種類のプローブで用いられるHeLa細胞に加えて、我々は、いかなるプローブにもさらされていないHeLa細胞の第3のカテゴリーを準備した。これらのヒストグラムおよび関連する平均Cy5蛍光レベルは、相互作用ヘアピンプローブでの蛍光のバックグラウンドレベルがいかなるプローブにもさらされていない細胞とほぼ同じである一方、受動的にタグ付けされたプローブでの蛍光のバックグラウンドレベルがかなり高いことを示す。
【0085】
画像に基づくおよびフローサイトメトリーに基づく分析の両方は、相互作用ヘアピンプローブが受動的にタグ付けされたプローブよりも少ないバックグラウンドシグナルを生成することを示す。一方、特異的なシグナルのレベルは、両方の種類のプローブにおいてほぼ同じである。受動的にタグ付けされたプローブでの比較的高いレベルのバックグラウンドシグナルは、上記で議論した他の研究所での観察結果と一致する。
【0086】
図9Bは、いかなるプローブにもさらされていないHeLa細胞(平均764ユニット)、1つの受動的にタグ付けされたプローブ(平均1083)、または相互作用ヘアピンプローブの1つのペアで得られたバックグラウンドシグナルの定量比較を提供する。細胞の蛍光のプローブありおよびプローブなしの間の差は、各種のプローブにより生成されるバックグラウンドシグナルの増加を示す。受動的にタグ付けされたプローブの場合、差は301ユニット(1085-764)であったが、相互作用ヘアピンプローブの場合、それは75ユニット(839-764)であった。この比較では、単一の受動的にタグ付けされたプローブまたは相互作用ヘアピンプローブの単一ペアを使用した。しかし、標的に結合するプローブの数は、シグナル強度を高めるために標的に対してそれらをタイリングすることにより増加するため、バックグラウンドシグナルは、受動的にタグ付けされたプローブの場合には実質的に増加するが、相互作用ヘアピンプローブの場合にはほとんど増加しない。
【0087】
実施例2のパートAは、図5で図式的に記載し、そのシステムに関して上述したタイプのシステムを使用して単一のヌクレオチド変化により異なる2つの標的配列変異のいずれかについての実験を記載する。この4つのプローブのセットでは、2つのアーム供与ヘアピンプローブが、サンプルに存在するどの単一の標的配列変異に対しても競合する。相互作用プローブペアの設計は次のとおりであった:第1のアーム供与ヘアピンプローブ(RDB6.6C)は、存在する場合、G標的配列変異に結合し、その後そのアーム受容体プローブ(RA6.3)と相互作用して、Cy5標識ヘアピンオリゴヌクレオチドH3およびH4のHCR増幅からのシグナル増幅をもたらし、Cy5シグナルを生成する;または第2のアーム供与ヘアピンプローブ(LDB6.1T)は、存在する場合、A標的配列変異に結合し、その後そのアーム受容体プローブ(LA6.1)と相互作用して、TMR標識HCRヘアピンオリゴヌクレオチドH1およびH2からのシグナル増幅をもたらし、TMRシグナルを生成する。2つのサンプルからの蛍光画像を図10Aに示す。左側の2つのパネルは、Cy5チャンネル(上)およびTMRチャンネル(下)で見られるG変異を発現する細胞の同じフィールドを示す。同様に、右側の2つのパネルは、Cy5チャンネル(上)およびTMRチャンネル(下)で見られるA変異を発現する細胞の同じフィールドを示す。多くのそのような画像の分析後、同じプローブ混合物を2つの標的配列変異のそれぞれをプローブするために使用しても、平均して、G変異は多くのGy5スポット(86.7%)および非常に少ないTMRスポット(13.3%)を生成し、一方A変異は、多くのTMRスポット(93.8%)および非常に少ないCy5スポット(6.2%)を生成したことが判明した(このデータは、図10Bの5行目にも示す)。我々はまた、A標的配列変異に相補的な第1のアーム供与ヘアピンプローブおよびG標的配列変異に相補的な第2のアーム供与ヘアピンプローブを作製することにより色を反転した。主要な色のスポットは、実際に反転し、左右のアーム受容体ヘアピンプローブおよびそれらと類似のHCRペアが同等で互換性のある方法で機能することを示した。
【0088】
実施例2のパートBにおいて、我々は、パートAの実験を4つの標的配列変異、すなわちA、T、CまたはGの1つを含むサンプルまで拡大した。各標的配列変異に対して、我々は、標的配列変異の1つに完全に相補的なループを有する、2つの異なるアーム供与ヘアピンプローブの6つの組み合わせのすべてを使用した。検出アッセイおよびプローブ/HCRモノマーシステムは、パートAで記載したとおりであった。6つのプローブ混合物のそれぞれを4つの標的配列変異のそれぞれでテストした。この一連の実験を設計した際、各標的配列変異に関して、3つのプローブの組み合わせは、識別力のあるアーム供与ヘアピンプローブのいずれも標的配列変異に完全に相補的ではなかったので、顕著なシグナルを生成しないはずであった;しかし、3つのプローブの組み合わせは、1つのアーム供与ヘアピンプローブが標的配列変異に完全に相補的であるので、顕著なシグナルを生成するはずであった。存在する標的配列に完全に相補的であるアーム供与プローブは、設計されたHCRモノマーペア(Cy5標識H3およびH4またはTMR標識H1およびH2のいずれか)のHCR重合を開始し、適切な色の蛍光シグナルを生成するはずである一方、混合物中の他のアーム供与プローブは、他のHCRモノマーペアによるHCR重合を極めてまれに開始し、それらの色の最小のシグナルのみを生成するはずである。実施例2Bの結果は、それがまさに起こったことを示した。第1に、いずれのアーム供与ヘアピンプローブも標的配列変異に相補的ではなかったアッセイは、顕著な蛍光シグナルを生成せず、顕微鏡分析により平均して合計18スポットであった。これらのアッセイに関して、棒グラフを表示していない。一方、1つのアーム供与ヘアピンプローブが標的配列変異に相補的であったアッセイは、顕著なシグナルを生成し、細胞あたり平均して91スポットであった。図10Bは、水平パーセントバーグラフとして後者の結果を示す。各バーは、両方の色で検出されたスポットの100%を表し、各バーの灰色の部分は、赤(Cy5)であったスポットのパーセントである。完全に相補的なアーム供与ヘアピンプローブによるHCR開始に起因する色におけるスポットの平均割合は、92%であり、たった8%のスポットがミスマッチ(単一ヌクレオチド変化)アーム供与ヘアピンプローブからのHCR開始に起因する色であった。我々はまた、6つのプローブの組み合わせとGFPが発現していない細胞とをテストした。それらは、平均して、細胞あたり1.5スポットを生成した。これらの結果は、変異部位のヌクレオチドの性質に関係なく、プローブシステムが非常に高い忠実性で識別することを示す。
【0089】
実施例3は、HCRシグナル増幅を用いる検出アッセイにおいて、2つの密接に関連するアレル、すなわち完璧に相補的な標的配列および単一のヌクレオチド置換により異なる配列の間を識別する能力を最大化するために相互作用ヘアピンプローブペアの構造の最適化に関する実験を記載する。アレル識別能力に影響を与える相互作用ヘアピンプローブの重要な特徴は、(a)アーム供与ヘアピンプローブのループの長さおよび(b)それが鎖置換の開始のためのアーム受容体ヘアピンプローブの一本鎖トーホールド配列に相補的なトーホールド相補配列を含む(図4参照)か、または含まない(図5参照)か、である。これらの特徴における変化の影響を明らかにするために、我々は、2つの基準よってお互いに異なる4つの相互作用プローブペアを設計し、その後各ペアを野生型GFP mRNA、各ペアのアーム供与プローブが完全に相補的であった(G)標的配列変異、または変異GFP mRNA、各ペアのアーム供与プローブが単一ヌクレオチドによってミスマッチであった(A)標的配列変異のいずれかを発現する細胞を用いてテストした。プローブハイブリダイゼーションおよびHCRシグナル増幅後の代表的な顕微鏡画像を図11に示す。左側のパネルは、完全に相補的な(G)標的配列変異でのアッセイからであり、右側のパネルは、ミスマッチ(A)標的配列変異でのアッセイからである。上の2行のパネルは、アーム受容体プローブのトーホールド配列を有する(一番上の行)および有さない(2行目)15ヌクレオチド長ループを有するアーム供与ヘアピンプローブの使用を比較する。これらの結果は、15-nt長ループを有するアーム供与プローブが完全に相補的な標的のために強いシグナル(スポット)を生成するがミスマッチ標的ではより弱いシグナルを生成することを示す。トーホールド相補配列(およびアーム受容体プローブにおけるその一本鎖相補トーホールド)を削除すると、2行目の画像に示すように、ミスマッチ標的からのシグナルがさらに減少するが、完全に相補的な標的配列からのシグナルは引き続き強かった。図11の下の3行のパネルは、トーホールド相補配列を有さないが6ヌクレオチド長のステムおよび15、12または9ヌクレオチド長のループを有するアーム供与プローブからの結果を比較する。本実施例のアッセイにおいて、ループ長が15ヌクレオチドから12ヌクレオチドへと減少すると、ミスマッチ標的配列変異からのシグナルは、ほぼ完全に消失する一方、完全に相補的な標的配列変異からのシグナルは、ほぼ同じ強さのまま維持された。しかし、ループ長がさらに9ヌクレオチドまで減少すると、両方の標的配列変異からのシグナルは、バックグラウンドレベルまで減少した。下の2つのパネルは、画像に存在するわずかなスポットを明らかにするために他よりも高いコントラストで表示する。プローブ構造におけるこれらの変化および結果として生じるシグナルでの結果として生じる変化は、どのように特定のアッセイ条件下での相互作用ヘアピンプローブの特定のペアの識別能力を最適化できるのかについて示す。
【0090】
実施例4は、本発明に係る相互作用ヘアピンプローブペアのプローブを構築するために汎用な配列を利用する能力を明らかにする。我々は、実施例1で使用され、図5のプローブ60のセグメントを有するアーム受容体プローブRA6.3を選択した。我々は、汎用オリゴヌクレオチドとして汎用セグメントf-g’-f’-3’を使用し、我々は、標的特異的オリゴヌクレオチドとして標的相補配列P4-5’を使用した。我々は、クリックケミストリーを介して汎用オリゴヌクレオチドを標的特異的オリゴヌクレオチドに結合し、クリックリンクを含む、アーム受容体プローブRA6.3-clickを形成した。我々は、実施例1のハイブリダイゼーションおよびHCRシグナル増幅方法において、プローブRA6.3-clickのパフォーマンスを「通常」(すべてホスホジエステルヌクレオチド間リンク)のパフォーマンスと比較した。図12に示す代表的な画像は、2種類のアーム受容体ヘアピンプローブが同等の結果をもたらすことを明らかにする。したがって、ホスホジエステル骨格の不連続性(「クリック」リンクによる)にも関わらず、組み立てられたヘアピンプローブおよびその相互作用ヘアピンプローブは、両方が標的配列に結合された場合、相互作用し、必要な立体構造の変化を受けてアクセス可能なHCRイニシエーターを生成し、HCR増幅を開始して、HCR増幅シグナルを生成することができた。
【0091】
実施例5は、mRNAに加えて、他の種類のRNAもまた、相互作用ヘアピンプローブを使用して検出できることを明らかにする。実施例5で報告される実験において、我々は、スモールガイドRNAを標的とした。スモールガイドRNAは、遺伝子編集ツールCas-9(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats assisted endonuclease 9用)をゲノム内のその標的位置へ導くために使用される(Cong et al.(2013)Science,339:819-823)。スモールガイドRNAは、2つの機能要素を有する:Cas-9タンパク質に結合する部分およびゲノム内の標的配列に相補的であるガイド部分。標的配列相補要素は、結果として生じるCas-9複合体を、Cas-9がDNAを切断するその相補的なゲノム部位へと導き、標的遺伝子の喪失をもたらす。実施例5は、RNAガイド配列を発現して、隣接してハイブリダイズするとHCRシグナル増幅を開始するように操作されたHeLa細胞のCas-9ガイド配列を標的とする相互作用ヘアピンプローブペアを記載する。操作されたガイドRNAは、U6プロモーターの制御下にあるため、操作された細胞の核に局在することが期待された(Lee et al(2008)RNA 14:1823-1833)。これは、細胞の細胞質に局在するmRNAとは異なる。
【0092】
図13は、ガイドRNAに対応するスポットが核内に見られるHela細胞の画像を示す。ガイドRNAでトランスフェクトされなかった細胞は、かなりの数のスポットを生成しなかった。重要なのは、このRNAが核内に局在するという観察結果は、その親プラスミドにより利用されたプロモーターから期待されるように、標的核酸配列、ここではRNA配列が、細胞内のどこに存在しても、相互作用ヘアピンプローブが標的を認識し、その存在を報告できることを示す。
【0093】
実施例6は、シグナル増幅のためにHCRではなくローリングサークル増幅(RCA)を利用する本発明に係る方法を記載する。まず図2を参照すると、RCAイニシエーターI5(受動的にタグ付けされたハイブリダイゼーションプローブ21のタグ)が環状テンプレートCTのコピーを準備して、RCAによる増幅産物APを生成できること、および蛍光色素分子標識検出プローブLPが増幅産物を検出できることが分かる。
【0094】
実施例6は、固定および透過処理した細胞の核酸標的配列で隣接してハイブリダイズする相互作用ヘアピンプローブペア、RDB RCAおよびRA RCAを記載する。ハイブリダイズすると、それらは、相互作用してイニシエーター配列、この場合RCAイニシエーターI5を生成する。図2に関連して説明したように、環状テンプレートおよびDNAポリメラーゼの添加は、RCAシグナル増幅および検出をもたらす。そのような相互作用ヘアピンプローブの構造の略図を、プローブ71および72として図7に示す。そのような方法のフローチャートを図7に示す。
【0095】
実施例7は、3つのタイプのプロービング:すべて同じ蛍光色素分子で単一標識された、多数のショートプローブ;多数の受動的にタグ付けされたプローブを用いるHCR;および半数の相互作用ヘアピンプローブペアを用いるHCRを使用して、刺激されたヒト初代血液単核細胞(PBMCs)によって発現されるインターフェロンガンマ(IFNγ) mRNAのフローサイトメトリー検出からの標的配列特異的シグナルのレベルとバックグラウンドシグナルのレベルとを比較する。PBMCsは、静止状態ではIFNγ mRNAを発現しないが、ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)およびイオノマイシンで刺激すると、それらの約15%がIFNγ mRNAを合成することにより反応する(Bushkin et al.(2015)Journal of Immunology 194:836-841)。大部分の細胞は、IFNγ mRNAを発現しないため、このシステムは、同じ細胞集団からのシグナルおよびバックグラウンドレベルの評価を可能にする。フローサイトメトリーにおいて、各細胞からの総合的な蛍光のみが記録され、顕微鏡とは異なり、スポット検出が特異的シグナルとバックグラウンドシグナルとを区別するための補助として使用できないため、細胞内RNAのフローサイトメトリーに基づく分析における低レベルのバックグラウンドを達成することは、特に重要であることが理解される。
【0096】
実施例7のテストにおいて、固定および透過処理されたPBMCsならびに刺激されたPBMCsを、3つの異なるタイプのプローブのハイブリダイゼーションおよび2つのプローブタイプに関してはHCRシグナル増幅後、フローサイトメトリーにより分析した。PBMCsおよび刺激されたPBMCsの第1のテストは、それぞれがIFNγ mRNA標的配列に完全に相補的であり、単一のCy5蛍光色素分子でその3’末端を標識された(直接標識された)、48のショート(20~24ヌクレオチド長)ランダムコイルDNAプローブのハイブリダイゼーションを含んだ。第2のテストは、それぞれが3’伸長として31ヌクレオチド長HCRイニシエーター配列を有し、第1のテストと同じ標的相補配列を有する48のプローブのハイブリダイゼーションと、Cy5標識HCRヘアピンオリゴヌクレオチドH3およびH4(実施例1)のHCR増幅とを含んだ。第3のテストは、それぞれのペアが第1のテストの一連のプローブと同じ標的相補配列を有する23の相互作用ヘアピンプローブペアのハイブリダイゼーションと、Cy5標識HCRヘアピンモノマーH3およびH4のHCR増幅とを含んだ。
【0097】
フローサイトメトリー分析の結果を図14に示す。右側のパネルは、刺激された細胞を表し、左側のパネルは、静止細胞を表す。これらの散布図の各スポットは、単一の細胞を表し、横軸が細胞のCy5蛍光強度を表し、縦軸が同じ細胞の側方散乱を表す(後者のパラメーターは、細胞のサイズに関する)。刺激されていない細胞は、IFNγ mRNAを有さないため、左側のパネルの細胞は、単一のクラスターで現れ、バックグラウンドシグナルの測定を可能にする(Bushkin et al.2015)。これらのクラスターのピーク蛍光強度は、各パネル上の垂直バーで表され、ピーク蛍光強度は、上部に示される。一方、刺激された細胞は、2つのクラスターに分かれ、左側のクラスターは、応答しない細胞を表し、右側のクラスターは、IFNγ mRNAを産生する細胞を表し、よってより蛍光を発した(右側のパネル)。各パネルのこれらのクラスターのピーク蛍光は、同様に垂直バーで示される。刺激されていない細胞の蛍光ピーク(左側のパネル)および刺激されたが応答しない細胞の蛍光ピーク(右側のパネル)は、ほぼ同じある。
【0098】
図14に示す結果は、mRNA特異的シグナルの強度が、直接標識されたプローブのセットと比較した受動的にタグ付けされたプローブによるHCRの結果として約10倍増加した(373,000対37,000)が、バックグラウンドのレベルも同じ程度増加し(9600対920)、同じシグナル対バックグラウンド比が得られたことを明らかにする。しかし、顕著には、相互作用ヘアピンプローブでのHCRは、直接標識されたプローブのセットと比較して、より高いmRNA特異的シグナルを生成した(66,000対9700)だけではなく、バックグラウンドのレベルもより低かった(650対920)。3つのプローブシステムのシグナル対バックグラウンド比は、直接標識されたプローブでは40、受動的にタグ付けされたプローブでのHCRでは39、相互作用ヘアピンプローブでのHCRでは102であった。相互作用ヘアピンプローブでのHCRにより生成されたmRNA特異的シグナルの絶対的な大きさは、受動的にタグ付けされたプローブでのHCRのものよりも有意に低い(66,000対373,000)が、半数の相互作用ヘアピンプローブペアだけが受動的にタグ付けされたプローブと比較して使用された(23対48)ことが理解されるであろう。
【0099】
図14図9Bとの比較は、HCRを開始するために使用される受動的にタグ付けされたプローブの数を1から48に増やすと、バックグラウンドシグナルのレベルが大幅に増加するが、一方相互作用ヘアピンプローブにより生成されたバックグラウンドシグナルは、プローブペアの数を1ペアから23に増やした場合、はっきりとは増加しなかったことを示す。
【0100】
実施例8は、点突然変異を検出するための本発明の相互作用ヘアピンプローブによるHCRの能力を明らかにする。この証明のために、我々は、ガン細胞株の上皮成長因子受容体(EGFR) mRNAにおける突然変異L858Rを選択した。いくつかのEGFR変異は、ガンがEGFRに結合する薬の影響を受けやすくなる一方、この遺伝子の他のEGFR変異は、ガンがこれらの薬に影響されなくなる(Sharma et al.(2007)Nature Review Cancer 11:169-181)。我々が選択した体細胞突然変異L858Rは、EGFR mRNA(実施例8に示すcDNA配列)の2573の位置で、一つの野生型チミジン(T)残基を変異グアノシン(G)残基へと変化させ、エルロチニブおよびゲフィチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤(TKIs)がガンに対して効果的であろうことを示す。顕微鏡検出によるFISHのために、我々は、2つの細胞株を選択した:非小細胞肺ガンに由来し、そのEGFR遺伝子の2つのコピー(ヘテロ接合体)の1つにおいてこの変異を含むことが知られている、H1975;およびこの変異を含まず、よってこの変異に関して野生型である、HeLa細胞株(Kawahara et al Clinical Cancer Research (2010)16:3163-3170)。変異ホモ接合細胞株(mutant homozygote cell line)は、この変異には利用できない。
【0101】
HCRシグナル増幅のプロービングおよび開始のために、我々は、固定および透過処理した細胞に、図4に記載され、その図および実施例2に関連して上述した4つのプローブシステムの両方の相互作用プローブペアを添加した。2つのヘアピン受容体プローブを野生型であろうと変異であろうとも標的に結合するように設計したが、2つのアーム供与ヘアピンプローブの1つのみを各標的に結合するように設計した。この実験において、図4を参照すると、変異標的配列に相補的である右側のアーム供与ヘアピンプローブ49を右側の受容体ヘアピンプローブ59と相互作用して、CY5で標識されたHCRモノマーH3およびH4の合成を開始するように設計した;および野生型標的配列に相補的である左側のアーム供与ヘアピンプローブ48を左側の受容体ヘアピンプローブ47と相互作用して、TMRで標識されたHCRモノマーH1およびH2の合成を開始するように設計した。
【0102】
相互作用ヘアピンプローブペアによって生成されたスポットが一般にEGFR mRNAに由来することを明らかにするために、我々は、それぞれが野生型および変異標的配列の両方に完全に相補的であり、単一のTexas Red蛍光色素分子でその3’末端を標識された(直接標識された)、48のショートランダムコイルDNAプローブのセットを(相互作用ヘアピンプローブの2つのペアと)同時にハイブリダイズした。これらのプローブは、両方の種類の標的に結合でき、Texas Redチャンネルでシグナルを生成することができる。それらを「トレーサー(tracer)」または「マーカー(marker)」プローブとして使用して、HCRシグナルが意図した標的から発生していることを確認した。実質的に細胞内のすべてのmRNA分子をTexas Redチャンネルで検出されることが予想された(Raj et al.(2008)Nature Methods 5:877-879)。EGFR mRNAから発する特異的なHCRシグナルは、Texas Redシグナルと共局在化すると予測されたが、非特異的なHCRシグナルは、Texas Redシグナルと共局在化するとは予測されなかった。
【0103】
実施例8は、2つの実験を報告する。第1の実験において、我々は、1ステップハイブリダイゼーション反応を使用し、ここでハイブリダイゼーション反応混合物(50μl)は、ショート直接標識プローブのセット、5ngの各アーム供与ヘアピンプローブ、および5ngの各受容体ヘアピンプローブを含んだ。第2の実験のために、我々は、2つの変更を行った:我々は、洗浄によって分離された2ステップのプローブハイブリダイゼーションを行った。第1のハイブリダイゼーションのための反応混合物は、受容体プローブを含んだが、アーム供与プローブを含まず、第2のハイブリダイゼーションのための反応混合物は、アーム供与ヘアピンプローブを含んだが、受容体プローブを含まなかった。第2の実験では、各アーム供与ヘアピンプローブの量を5ngから20ngに増加した。我々は、ヘアピン配列、反応混合物の濃度、および前述の実験の手順が、このデモンストレーションには充分であるが、最適化されていなかったことに留意する。加えて、我々は、おそらく不均衡でありうる、2つのアレルの相対的な発現レベルを確認しなかった(Milani et al.(2017)Allelic imbalance in gene expression as a guide to cis-acting regulatory single nucleotide polymorphisms in cancer cells,Nucleic Acids Research 35:e34)。
【0104】
画像および画像解析は、図15において、H1975およびHeLa細胞株のそれぞれ1つの細胞から表示される。この図では、水平行のパネルは、示される4つの異なるチャンネルから得られた同じ細胞の画像を示す。上の行(H1975細胞)は、下の行(Hela細胞)よりも多くのCy5スポットを示し、ヘテロ接合体サンプルにおけるL858R変異の検出に成功したことを明らかにする。表2は、これらの実験でカウントされたスポット、すなわち:Texas Redスポット;Texas Redスポットと共局在化したTMRスポットおよび共局在化しなかったもの;ならびにTexas Redスポットと共局在化したCy5スポットおよび共局在化しなかったもの(「単独(Alone)」)の数を示す。上の2つの行は、第1の実験の間の図15で画像化された単一の細胞である。真ん中の2つの行は、第1の実験からの60の細胞の平均である。下の2つの行は、第2の実験からの50の細胞の平均である。標準偏差は、報告された値の約30%であった。
【0105】
相互作用ヘアピンプローブの1ステップハイブリダイゼーションを用いた第1の実験において、我々は、平均で、H1975細胞が42.5分子のEGFR mRNAを発現し、一方HeLa細胞が18.3分子のこのmRNAを生成することを見出した。H1975細胞において、相互作用ヘアピンプローブは、34%の標的を検出することができ、一方HeLa細胞において、それらは、22%の標的を検出することができる。ヘテロ接合体細胞株H1975において、プローブは、66%の検出されたmRNA分子(100*((9.4/(9.4+4.9)))が変異体であり、残りが野生型であることを示すシグナルを生成したが、野生型細胞株HeLaにおいて、92%の分子(100*(3.3/(3.4+0.2)))が野生型であり、残りが変異体であることが判明した。ガイドとしてTexas Redシグナルに依存する、この分析は、突然変異に対するプローブの精巧な特異性を示す。第1の実験の結果はまた、TMRおよびCy5チャンネルの両方における多くのスポットがTexas Redスポットと共局在しないことを示す。これらのスポットが潜在的に非特異的なソースから発生し、アッセイの感度を下げるため、我々は、2ステップハイブリダイゼーションを行うことによりこれらの数を減らすことに努めた。
【0106】
最後の2行対中央の2行におけるTMR「単独」スポットとCy5「単独」スポットとの比較は、1ステップから2ステップハイブリダイゼーションへの変更が非共局在スポットの平均数を有意に減らした一方、特異的なスポット(Texas Redと共局在化したもの)がほぼ同じに維持された、またはわずかに増加したことを示す。したがって、ヘテロ接合体と野生型との区別は、1ステップハイブリダイゼーションよりもさらに正確で信頼性が高くなった。この区別は、トレーサーとして短く、直接標識されたプローブとの共局在化の知識なしに行うことができる。
【0107】
2つの実験の結果は、変異L858R mRNA標的が野生型標的よりも高い効率で検出されることを示唆する。H1975の1ステップハイブリダイゼーション(60細胞)において、44%のMCT mRNAが検出され(9.4/21.2)、23%のWT mRNAが検出された(4.9/21.2)一方、H1075の2ステップハイブリダイゼーション(50細胞)において、47%のMUT mRNAが検出され(12.9/27.3)、13%のWT mRNAが検出された(3.6/27.3)。これらの計算の分子は、Texas Redと共局在化したTMRおよびCy5チャンネルにおけるスポットの数を表し、分母は、Texas Rec mRNA分子の合計の半分を表す(表2)。野生型mRNAの検出のより低い効率はまた、野生型細胞株HeLaでも明らかであった。この場合、HeLaの1ステップハイブリダイゼーション(60細胞)において、19%のWT mRNAが検出され(3.4/18.3)、(誤って)1%のみ変異プローブに応答した(0.2/18.3)。同様に、HeLaの2ステップハイブリダイゼーション(50細胞)において、17%のWT mRNAが検出され(3.4/20.1)、(誤って)2%のみが変異プローブに応答した(0.5/20.1)。これらの計算の分母は、トータルのTexas Red標識mRNA分子である。
【0108】
これらの違いは、アレルの不均衡による2つのアレルの発現における不均衡に起因する可能性がある(Milani et al. 2017)が、別の要因は、2つのアレルのmRNAのプローブへの異なるアクセシビリティであり得る。アッセイを最適化するためにこのことに対処するシンプルな方法は、各アレルのスポットの数を独立して正規化することである。第2のアプローチは、2つのプローブの濃度を「微調整(fine tune)」することであり、すなわち2つのmRNAの検出の全体的な効率がほぼ同じであるように、左側の供与ビーコンプローブ(WT)の濃度を上げ、右側の供与ビーコンプローブ(MUT)の濃度を下げる。さらに別のアプローチは、左側のアーム供与プローブもしくは左側の受容体プローブまたはその両方の構造を変更して、イニシエーター生成の効率を高めることであろう。
【実施例
【0109】
実施例1.受動的にタグ付けされたプローブにより達成されるよりも、相互作用ヘアピンプローブの使用により達成される、より高いシグナル対バックグラウンド比の実証
意図するmRNA標的配列から特異的に増幅したシグナルを生成する相互作用ヘアピンプローブペアの能力を実証するために、我々は、HeLa細胞において緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする異種mRNAを発現させた。GFPは、通常これらの細胞に存在しない。このmRNAは、我々のプローブの標的として機能した。このシステムにより、我々は、GFP mRNAを発現する細胞からの標的特異的シグナルの評価およびGFP mRNAを発現しないHeLa細胞からのバックグラウンドシグナルの評価が可能になった。
【0110】
【化1】
【0111】
前述の配列において、ステム形成相補セグメントには下線が引かれている。
【0112】
これらの一連の実験のために、我々は、Choi et al (2014)のプローブに類似のGFP mRNAに対する受動的にタグ付けされたハイブリダイゼーションプローブを使用した、または我々は、本発明に係る相互作用ヘアピンハイブリダイゼーションプローブペアである標的相補配列を含む第1の相互作用ヘアピンプローブRDB6.6および第2の相互作用ヘアピンプローブRA6.3を使用した。受動的にタグ付けされたプローブを、その標的相補セグメント(またはプローブ配列)が第2の相互作用ヘアピンプローブRA6.3であるアーム受容体プローブにおける標的相補配列(またはプローブ配列)と同じになるように設計した。この受動的にタグ付けされたプローブにおいて、5’末端の標的相補配列(またはプローブ配列もしくはプロービング配列)の後に、(その3’末端に向かって)5ヌクレオチドのスペーサー(AAAAA)が続き、次にHCRヘアピンH3およびH4のためのイニシエーターである配列g’、f’-3’を含むHCRイニシエーター配列I3が続く。すべてのオリゴヌクレオチドをIntegrated DNA Technologies (IDT)(Coraville,IA,U.S.A.)から入手した。HCRヘアピンH3は、5’末端アミノ標識で得られ、HCRヘアピンH4は、3’末端アミノ標識で得られた。アミノ標識を有するオリゴヌクレオチドは、Cy5スクシンイミジルエステルに結合され、その後上述のように、HPLCにより生成された(Tyagi and Kramer(1996))。これらの標識HCRヘアピンモノマーおよびプローブは、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して、8M尿素を含む10%ポリアクリルアミドゲルでさらに精製され、水に再懸濁され、Nanodrop分光光度計を使用して定量された。プローブおよびヘアピンモノマーが使用前に適切に折りたたまれていることを保証するために、2X SSCで、プローブを5ng/μlに希釈し、HCRヘアピンモノマーを25nMに希釈し(約100μl溶液)、2分間沸騰水内で加熱し、その後室温で10分間冷却された。
【0113】
このmRNAのDNAテンプレート(plasmid pTREd2EGFP,Clontech)は、標準プロトコルを用いてHeLa細胞にトランスフェクトされた(Vargas et al.(2005))。トランスフェクトされた(プラスミドを受け取った)細胞は、GFPの発現により蛍光を発した。その後、細胞をプラスチック皿から取り出し、ガラスのカバースリップに移し、そこでさらに1日培養した。これらの細胞を1Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の4%ホルムアルデヒドで固定し、70%エタノールで透過処理し、2X saline sodium citrate(SSC)バッファー(Ambion,Austin,TX)(プローブ洗浄バッファー)中の10%ホルムアミドで平衡化した。
【0114】
次に、受動的にタグ付けされたプローブまたは相互作用プローブペアを固定および透過処理した細胞に添加し、結果として得られた混合物を37℃の湿潤チャンバーで一晩インキュベートして、プローブを標的配列にハイブリダイズさせ、プローブ-プローブ相互作用を可能にした。ハイブリダイゼーション反応混合物(50μl)は、5ngの各プローブならびに10%硫酸デキストラン(Sigma)、1mg/mlの大腸菌tRNA(Sigma)、2mMリボヌクレオシドバナジル複合体(New England Biolabs,Ipswich,MA)、0.02%RNase-free牛血清アルブミン(Ambion)、10%ホルムアミドおよび2X SSCを含んだ。プローブペアのハイブリダイゼーションおよび相互作用後、カバースリップを1mlのプローブ洗浄バッファーで2回洗浄して、ハイブリダイズしなかったプローブを除去した。各洗浄は、室温で10分間行われた。最後に、細胞を50mM NaHPO、1M NaCl、0.05%(v/v)Tween-20、pH7.4(HCRバッファー)で平衡化した。
【0115】
過剰なプローブの除去後、HCRを50μl反応中、湿潤チャンバー内で37℃、4時間行った。HCR反応混合物は、Koss et al(2015)(Nature Communications 6:7294)により以前に説明され、HCRバッファーに溶解した、HCRヘアピンオリゴヌクレオチドH3およびH4のそれぞれを25nM含んだ。HCRヘアピンモノマーをCy5で標識した。HCR増幅後、過剰(未使用)HCRヘアピンオリゴヌクレオチドを上記プローブ除去で行ったのと同じ方法で、HCRバッファー内で洗浄により除去した。インキュベーション工程(ハイブリダイゼーションおよびHCR)の両方のために、パラフィルムシートをガラスプレート上に置き、反応バッファーの液滴をパラフィルムシート上に置き、その後カバースリップを細胞が付着している側を下に向けて液滴上に置いた。上述のように、カバースリップを取り付けて撮像した(Raj et al(2008))。
【0116】
フローサイトメトリーによるシグナルを分析することを目的とした並行実験において、細胞をトランスフェクション後1日間プラスチック皿で培養し、その後取り出した。取り出した細胞をPBSに懸濁し、固定し、透過処理した。プローブペアを添加し、ハイブリダイゼーションおよび相互作用のためにインキュベートし、その後結合してないプローブを除去するために洗浄し、HCR増幅を行い、HCRバッファーを使用して再度洗浄した。しかし、細胞は、カバースリップへ付着されるのではなく、浮遊状態であったため、インキュベーション/洗浄サイクルごとに、それらをスイングチューブローターを用いる遠心分離機で手短に回転し、上清を吸引により除去し、新たな溶液により置き換えた。最後の洗浄後、それらの細胞をプローブ洗浄バッファーに懸濁し、フルオレセインチャンネル(GFP用)およびCy5チャンネル(HCR産物用)、Becton Dickinson Accuri 6Cフローサイトメーターで分析した。
【0117】
カバースリップを、DAPI、DIC、フルオレセイン(またはGFP)およびCy5チャンネルで、Nikon Eclipse Ti顕微鏡を使用し、60倍の対物レンズで撮像した。最初の2つのチャンネルは、細胞およびそれらの境界の識別を可能にし、フルオレセインチャンネルは、トランスフェクトされた細胞の識別を可能にし、Cy5チャンネルは、プローブシグナルの記録のために使用された。11の光学セクションがCy5チャンネルのために得られた。HCR増幅シグナルは、個別のスポットとして現れる。細胞境界内のスポットは、上述のアルゴリズムを用いてカウントされた(Raj et al (2008))。代表的な画像を図8に示す。図8の左側の4つのパネルは、GFPテンプレートでトランスフェクトされたHeLa細胞に関し、右側の4つのパネルは、このテンプレートでトランスフェクトされなかったHeLa細胞に関する。我々はまた、フローサイトメトリーにより細胞懸濁液で行われた並行ハイブリダイゼーション反応からの細胞を分析した。この分析を図9に示す。図9Aの2つの上部パネルに示す散布図において、各ドットは、受動的にタグ付けされたプローブを用いた反応(左側のパネル)に関するおよび相互作用プローブペアを用いた反応(右側のパネル)に関する、Cy5およびGFPチャンネルそれぞれでの単一の細胞の蛍光のx-y座標を表す。我々はまた、トランスフェクトされなかった細胞におけるCy5蛍光を分析した。これらの細胞は、有意レベルのGFP蛍光を示さないため、Cy5蛍光のみが示され、データは、実線ヒストグラムとして表される(図9B)。
【0118】
実施例2.単一分子感度でのmRNAのアレル変異のin situ検出のために相互作用ヘアピンプローブを使用する
標的配列の単一ヌクレオチド変異の検出のための相互作用ヘアピンプローブの有用性を明らかにするために、我々は、変化がその蛍光に悪影響を与えないように、特定の場所での部位特異的変異導入(site-directed mutagenesis)手順(Change-IT,Affymetrix)を用いて、野生型d2EGFP配列(Clontech)を変異させることにより、GFPコード配列の4つの単一ヌクレオチド変異体を作製した。我々は、d2EGFPコード配列の207の位置に通常存在するグアノシンをアデノシン、シトシンまたはチミジンのいずれかに置換した。変更された(下線)ヌクレオチドの配列コンテクストは、CCTACGGCGTCAGTGCTTC(配列番号47)である。これら4つのGFP変異をコードするプラスミドを、実施例1に記載されるように、HeLa細胞に別々にトランスフェクトした。得られたGFP蛍光細胞の各変異体を確認した。
【0119】
【化2】
【0120】
【化3】
【0121】
野生型GFP標的配列およびアーム供与プローブにおいて、可変のヌクレオチドを太字とする。下線を引いた配列セグメントは、ヘアピンステムのアームを示す。
【0122】
A.2つの相互作用ヘアピンプローブで2つの標的変異体のいずれかをプロービングする
我々は、最初に2つの相互作用ヘアピンプローブペアのセット(RA6.3、LA6.1、RDB6.6C(そのループ配列は、G標的配列変異体に相補的である)およびLDB6.1T(そのループは、A標的配列変異体に相補的である)からなる4つのプローブ)でG変異(野生型)を発現する細胞およびGFP mRNAのA変異体を発現する細胞をプローブした。このプローブセットを使用すると、そのステムを開くようにアーム供与プローブRDB6.6Cが結合する場合、その供与アームは、その後アーム受容体プローブRA6.3と相互作用することができ、次にCy5標識ヘアピンオリゴヌクレオチドH3およびH4のHCR増幅を開始することができる、そのHCRイニシエーター配列を解放して、Cy5シグナルを生成する。しかし、そのステムを開くようにアーム供与プローブLDB6.1Tが代わりに結合する場合、その供与アームは、その後アーム受容体プローブLA6.1と相互作用することができ、次にTMR標識HCRヘアピンオリゴヌクレオチドH1およびH2のHCR増幅を開始することができる、そのHCRイニシエーター配列を開放して、テトラメチルロダイミン(tetramethylrhodaimine)(TMR)シグナルを生成する。
【0123】
細胞およびプローブを調製し、各サンプル(G変異体またはA変異体)のハイブリダイゼーション-相互作用インキュベーションを各ケースで4つのプローブすべてを用いて実施例1のように実施した。実施例1に記載したように、洗浄による過剰なプローブの除去後、HCR増幅を実施例1に記載したように各サンプルで実施し、その間HCRヘアピンCy5標識H3およびH4ならびにTMR標識H1およびH2の2セットが存在した。過剰(未使用)HCRヘアピンオリゴヌクレオチドを除去した後、カバースリップをDAPI、DIC、TMRおよびCy5チャンネルにおいて、Zeiss Axiovert顕微鏡の100倍の対物レンズで撮像した。TMRおよびCy5チャンネルから得られた代表的な画像を両方のサンプルについて図10Aに示す。結果を実施例の説明セクションで上述した。我々は、逆にしたアーム供与ヘアピンの問い合わせヌクレオチドを用いて上述の実験を繰り返した;すなわちプローブRDB6.6Tにより置き換えたプローブRDB6.6C(A標的配列変異体に相補的)を用いておよびプローブLDB6.1Cに置き換えられたプローブLDB6.1T(G標的配列変異体に相補的)を用いて、主要なスポットの色が反転した場合、それらが行われたと理解する。
【0124】
B.2つの相互作用プローブペアで他の標的変異体をプロービングする
我々は、GFP mRNA標的配列の4つの変異体すべてについて実施例2Aを繰り返した。我々は、2つのアーム供与ヘアピンプローブの6つの組み合わせで異なる、6つの異なるプローブ混合物を用いて、各標的配列変異体でサンプルをテストした。すべてのアッセイは、受容体プローブLA6.1およびRA6.3、ならびにHCRヘアピンオリゴヌクレオチドH1、H2、H3およびH4を含んだ。6つの組み合わせのそれぞれについての2つのアーム供与プローブを表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
表1のシステム名称において、大文字は、2つの相互作用プローブペアの2つのアーム供与ヘアピンプローブのそれぞれについて、標的配列可変ヌクレオチドに向かい合うループヌクレオチド、およびそれが開くことから生じるシグナルの色、すなわち緑(TMR)または赤(Cy5)のいずれかを特定する。
【0127】
表1の6つのプローブ混合物のそれぞれを4つの標的配列のそれぞれでテストした。各プローブ混合物について、2つの標的配列変異体は、2つのアーム供与プローブの1つに相補的であり、2つの標的配列変異体は、いずれのアーム供与プローブにも相補的ではない、すなわちそれらは、非類似の(non-cognate)標的配列変異体である。例えば、GgTrと指定されたプローブシステムは、我々が左側のアーム供与プローブと呼ぶ、標的配列変異体Cに相補的なループを有するアーム供与プローブと、我々が右側のアーム供与プローブと呼ぶ、標的配列変異体Aに相補的なループ配列を有するアーム供与プローブとを含み、したがって、それら2つの標的配列変異体は、類似の変異体であり、一方標的配列変異体GおよびTは、非類似の変異体であった。非類似の標的配列変異体を含んだアッセイは、左側のアーム供与ヘアピンプローブのハイブリダイゼーションおよび開放に由来するTMR蛍光色素分子または右側のアーム供与ヘアピンプローブのハイブリダイゼーションおよび開放に由来するCy5蛍光色素分子のいずれかからの有意な蛍光シグナルを生成しなかった。類似の標的配列変異体を含んだアッセイの結果を図10Bに示す。図10Bの水平のパーセントバー(各バーは100%を示す)において、ライトグレーの背景での斜線領域は、緑のスポット(TMR)の割合を表し、連続するダークグレーの部分は、赤のスポット(Cy5)の割合を表す。
【0128】
実施例3.相互作用ヘアピンプローブのアレル識別能力の最適化
我々は、2つの標的配列変異体:アーム供与ヘアピンプローブのループに完全に相補的であった、GFP mRNA(G)(配列番号1)、または単一のヌクレオチドによりアーム供与ヘアピンプローブのループにミスマッチであった、GFP mRNA(A)(配列番号8)のいずれか1つを発現する細胞を用いる検出アッセイにおける相互作用ヘアピンプローブの4つのペアをテストした。本実施例で使用したオリゴヌクレオチドの配列は、以下のとおりであった。
【0129】
【化4】
【0130】
前述の配列において、ヘアピンアーム配列には下線を引いている。
【0131】
第1のプローブペアにおいて、アーム供与ヘアピンプローブRDB6.3は、15nt長のループ配列を含み、それは5nt長のトーホールド相補配列を含んだ。その相互作用プローブであるアーム受容体ヘアピンプローブRA6.2は、5nt長のトーホールド配列を含んだ。プローブRA6.2の配列を参照すると、5’末端の22ヌクレオチドが標的配列に相補的であり、次の5ヌクレオチド(GGACT)がトーホールド配列である。第2のプローブペアにおいて、アーム供与ヘアピンプローブRDB6.1は、15nt長のループ配列を含んだが、トーホールド相補配列を含まなかった;およびアーム受容体ヘアピンプローブRA6.0は、トーホールド配列を含まなかった。第3のプローブペアにおいて、アーム供与ヘアピンプローブRDB6.5は、12nt長のループ配列を含んだが、トーホールド相補配列を含まなかった;およびアーム受容体プローブRA6.0は、トーホールド配列を含まなかった。最後に、第4のプローブペアにおいて、アーム供与ヘアピンプローブRDB6.7は、9nt長のループ配列を含んだが、トーホールド相補配列を含まなかった;およびアーム受容体プローブRA6.0は、トーホールド配列を含まなかった。
【0132】
各HCR検出は、上記の標的配列変異体の1つおよび相互作用ヘアピンプローブペアの1つに加えて、HCRヘアピンオリゴヌクレオチドH3およびH4の単一ペアを利用した。実施例2に記載のように反応を実施した。結果を図11に示す。各パネルは、プローブハイブリダイゼーションおよびHCRシグナル増幅後の細胞の顕微鏡画像である。mRNA標的配列相補体は、パネルの各列の上に示され、パネルの各列におけるアーム供与ヘアピンプローブの特徴は、パネルの左側に示される。
【0133】
実施例4.汎用ヘアピンを非ホスホジエステル結合を介して標的特異的プローブへ連結する
汎用(generic)ヘアピンおよび特定の標的に特異的な標的相補配列からアーム受容体プローブを調製する可能性を調査するために、我々は、クリックケミストリーを使用してアーム受容体プローブRA6.3のバージョンを合成し、そのパフォーマンスをホスホジエステル結合のみを含む「通常の(normal)」アーム受容体プローブRA6.3と比較した。2つの構成要素のうち、汎用受容体ヘアピンオリゴヌクレオチドは、5’アミノ基で得られ、受容体標的相補配列オリゴヌクレオチドは、3’アミノ基で得られた。本実施例で使用したオリゴヌクレオチドの配列は、以下のとおりであった。
【0134】
【化5】
【0135】
前述の配列において、ステムアーム配列には下線を引いている。
【0136】
標的相補配列オリゴヌクレオチドの3’アミノ基は、4-アジドブチレート-N-ヒドロスクシンイミジルエステル(Sigma-Aldrich)を用いることによりアジド官能基に改変されるた。これとは別に、汎用受容体ヘアピンの5’末端のアミノ基は、ジベンゾシクロオクチン-N-ヒドロスクシンイミジルエステル(Sigma-Aldrich)を用いてジベンゾシクロオクチン(DBCO)に共役された。両方の改変オリゴヌクレオチドは、高圧液体クロマトグラフィーにより精製された。2つのオリゴヌクレオチドは、等モル比でそれらを混合し、それらを50mM KCl、2.5mM MgCl、および10mM Tris-HCl(pH8.0)から構成されるバッファーで一晩インキュベートすることによりお互いに結合された。我々は、完全長の共役オリゴヌクレオチドプローブをRA6.3-クリックと称する。それを、8M尿素を含む12%ポリアクリルアミドゲルを用いた変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して精製し、水に再懸濁し、Nanodrop分光光度計を使用して定量した。RA6.3-クリックを、上述のように、加熱および冷却によってそのヘアピン構造に折りたたんだ。次に、実施例1に記載したように、適切に折りたたまれたアーム受容体プローブRA6.3-クリックをHCRシグナル増幅でのハイブリダイゼーションアッセイおよび野生型GFP mRNA標的配列変異体G(配列番号1)を発現する細胞を撮像するための顕微鏡検出において、アーム供与ヘアピンプローブRDB6.6およびHCRモノマーH3、H4と組み合わせて使用した。並行して、我々は、同じアッセイ方法において、「通常の」アーム受容体プローブRA6.3を使用し、同じGFP mRNAを発現する細胞を撮像した。代表的な画像を図12に示す。
【0137】
実施例5.スモールガイドRNAの検出
我々は、HeLa細胞において、Cox-2遺伝子に対するガイドRNA標的配列を発現させた。この配列をプラスミドpGL3-U6-sgRNA-PGK-ピューロマイシン(Addgene)にインサートし、改変プラスミドをHeLa細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション後、実施例1に記載したように、細胞を固定化および透過処理した。
【0138】
Cox-2ガイドRNAを検出するために、我々は、実施例1の方法において、HCR増幅を開始する相互作用ヘアピンプローブペアを設計した。実施例1に記載したように、これらのプローブを調製し、精製した。本実施例で使用したオリゴヌクレオチドの配列は、以下のとおりであった。
【0139】
【化6】
【0140】
前述の配列において、ステムアーム配列には下線を引いている。
【0141】
ヘアピンプローブペアのハイブリダイゼーションおよび相互作用、HCR増幅、ならびにイメージングを、実施例1に記載したように行った。結果を図12に示す。これは、HeLa細胞の画像を示し、ガイドRNAに対応するスポットが核内に見える。このガイドRNAをトランスフェクトされなかった細胞は、有意な数のスポットを生成しなかった(表示せず)。
【0142】
実施例6.ローリングサークル増幅と組み合わせて相互作用ヘアピンプローブを使用する
本実施例は、sm-FISHによる核酸標的配列を検出するためのローリングサークル増幅(RCA)によるシグナル増幅を開始するための相互作用ヘアピンプローブペアの使用についての試薬および方法を記載する。本実施例の標的は、Vargas et al(2011)Cell 147:1054-1065により以前説明された改変GFP遺伝子のアレイ3配列である。GFP-アレイ3コンストラクトを安定して発現するチャイニーズハムスター細胞株をガラスカラースリップ上で培養し、その後HeLa細胞についての前の実施例で記載したのと同じ方法で固定および透過処理する。
【0143】
使用したオリゴヌクレオチドの配列は、以下のとおりである。
【0144】
【化7】
【0145】
RCA用の環状テンプレートを作製するために、リニアオリゴヌクレオチド(配列番号32)を、製造元の指示に従って、T7ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs,Ipswich,MA,U.S.A.)を用いて、その5’末端でリン酸化し、スプリント(splint)オリゴヌクレオチド(配列番号33)とアニールし、その後T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を用いて結合した。次に、環状化したテンプレートDNAを、85%ホルムアミド中、100℃で10分間の変性によりスプリントオリゴヌクレオチドから分離し、その後8M尿素を含む10%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動により精製した。実施例1に記載したように、相互作用ヘアピンプローブペアを精製および調製した。
【0146】
相互作用ヘアピンプローブペア、アーム供与ヘアピンプローブRDB RCAおよびアーム受容体ヘアピンプローブRA RCAを固定および透過処理した細胞の標的配列にハイブリダイズさせ(50μlのハイブリダイゼーション反応のそれぞれに対して、5ngの各プローブ)、相互作用させることができる。過剰(未結合)プローブを実施例1に記載の方法で除去する。次に、環状化したテンプレートオリゴヌクレオチド(50μlのハイブリダイゼーション反応混合物中5ng)を添加し、1時間37℃でハイブリダイズする。未結合(過剰)環状化したテンプレートをプローブ洗浄バッファーを用いて、2ラウンドの洗浄により除去する。その後、サンプルを50mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgCl、10mM(NHSO、4mM DTT、250ng/μl BSA、0.05% Tween-20、および0.25mMの4つのヌクレオチドトリホスフェートのそれぞれで構成されるポリメラーゼバッファーで平衡化する。50μlの同じバッファーで、0.125U/μlのphi29 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)の存在下、1時間37℃で、RCAシグナル増幅を行う。次に、カバースリップをRCA産物(50μlのプローブ洗浄バッファー中5ng)用のTMR標識検出プローブ(配列番号36)を含む溶液に移し、30分間37℃、溶液中でインキュベートする。過剰(未結合)コピーの検出プローブをプローブ洗浄バッファーで2回の洗浄により除去し、実施例1に記載したように行われる顕微鏡観察のために、カバースリップを取り付ける。この手順において、高い処理能力と高い鎖置換能力とを有するDNAポリメラーゼを使用することが重要である。この点において、DNAポリメラーゼバクテリオファージΦ29(New England Biolabs)が最適な選択である。
【0147】
多くのバリエーションが上記方法の各工程について可能である。例えば、事前に作製した環状テンプレートを用いる代わりに、リニアバージョンの環状テンプレートを使用可能である。その場合、相互作用ヘアピンプローブの相互作用に起因する一本鎖RCAイニシエーター配列は、スプリントとして機能し、環状化は、in-situライゲーション工程により達成されるであろう。これは、オリゴヌクレオチド調製に必要な労力を軽減するであろう。さらに、過剰の検出プローブの除去のための洗浄工程を必要とする、上記RCA産物検出用のリニア検出プローブを使用する代わりに、同種の検出プローブ、好ましくは分子ビーコンプローブを利用できる。これは、必要に応じて、最後の洗浄工程を取り除くであろう。
【0148】
実施例7.相互作用ヘアピンプローブでのHCRおよびmRNAのフローサイトメトリー検出を使用する
フローサイトメトリーにおいて、各細胞からの総合的な蛍光のみが記録され、顕微鏡検査とは異なり、スポット検出は、特定のシグナルとバックグラウンドシグナルとを区別するための補助として使用できないため、顕微鏡に基づく分析よりも細胞内RNAのフローサイトメトリーに基づく分析において、低レベルのバックグラウンドを達成することがより重要である。受動的にタグ付けされたプローブによるHCR検出および直接標識されたプローブによる検出よりも、相互作用ヘアピンプローブによるHCR検出がフローサイトメトリーでのより高いシグナル対バックグラウンド比を得られることを明らかにするために、我々は、3つのプローブタイプのすべてを用いて初代血液単核細胞(PBMCs)におけるIFNγ mRNAを検出した。PBMCsは、それらの静止状態ではIFNγ mRNAを発現しないが、それらがホルボール12-ミリスチン酸13-アセテートおよびイオノマイシンで刺激された場合、それらの約15%がIFNγ mRNAを合成することによって応答する(Bushkin et al.(2015)Journal of Immunology 19:836-841)。ほとんどの細胞は、まったくIFNg mRNAを発現しないため、このシステムは、同じ細胞集団からのシグナルおよびバックグラウンドレベルの評価を可能にする。
【0149】
プローブ配列および合成
対応するcDNA配列として示される、IFNγ mRNAの配列を以下に示す。
【0150】
【化8】
【0151】
プローブ配列は、以下のとおりであった。
【0152】
48の短く、直接標識されたプローブ
IFNγ cDNA配列における下線およびグレーの網掛けされた配列の逆相補体(reverse complement)。
【0153】
受動的に標識されたHCRプローブ
同じセットの配列を受動的にタグ付けされたHCRプローブの標的相補領域についても使用した。しかし、それらの3’末端では、HCRのイニシエーターとして機能する次の配列AAAAATACTTCATGTTACAGACGACTCCCAC(配列番号38)が付加された。
【0154】
23の右側のアーム供与ヘアピンプローブ
それらの一般的な配列は、GTTACAGACGACTCCCACNNN...NNNGTGGGA(配列番号39)であり、NNN...NNNは、上記IFNγ cDNA配列における23の下線付きの配列の1つの逆相補体を示し、NNN...NNNの左側の配列、すなわちGTTACAGACGACTCCCA(配列番号40)は、各プローブの右側のアームであり(図3Aの領域f’およびe’に対応する)、NNN...NNNの右側の配列、すなわちGTGGGA(配列番号41)は、この配列の一部分に相補的である(図3Aの領域eに対応する)。
【0155】
23の右側の受容体ヘアピンプローブ
それらの配列は、最初の1つを除き、その3’末端に実施例4に記載の汎用アーム受容体プローブヘアピン(配列番号26)がそれぞれに付加された、上記IFNγ cDNA配列における網掛けされた配列の逆相補体であった。
【0156】
Cy5蛍光色素分子を短く、直接標識されたプローブのそれぞれの3’末端に共役させた。右側のアーム供与ヘアピンプローブのそれぞれを完全に自動化されたDNA合成(IDT DNA Inc.)により調製した。一方、右側の受容体プローブのそれぞれをクリックケミストリーによりプローブの標的特異的な部分に汎用の右側の受容体ヘアピンを連結することにより調製した。このために、我々は、それぞれ当モル濃度の23オリゴヌクレオチド(最初および最後のものを除き、上記IFNγ cDNA配列における網掛けされた配列の逆相補体を有する)のプールから始め、次に、実施例4に記載されるように、それらを3’末端で汎用アーム受容体プローブヘアピン(配列番号26)に結合させた。クリックケミストリーを介するそれらの合成の後、実施例4に記載されるように、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により右側の受容体プローブを精製した。右側のアーム供与ヘアピンプローブおよび右側の受容体プローブ(それぞれプールとして)を95℃で2分間加熱し、2X SSC(別々のチューブ内)中、室温で10分間冷却して、それらがそれぞれのヘアピンを適切に形成していたことを確認することができた。
【0157】
PBMCsは、血液から精製された。一部は、刺激されず(「静止(resting)」)、一部は、PMAおよびイオノマイシンにより刺激された。刺激されなかった細胞および刺激された細胞の両方をホルムアルデヒドで固定し、アルコールで透過処理し、Bushkin et al(2015)Journal of Immunology 194:836-841に記載されているような短く、直接標識されたプローブのセットでプローブした。ハイブリダイゼーション反応の並行セットにおいて、我々はまた、受動的にタグ付けされたHCRプローブのセットを用いておよび相互作用ヘアピンプローブのセットを用いて細胞をプローブした。50μlのハイブリダイゼーション反応のそれぞれについて、我々は、25ngの短く、直接標識されたプローブまたは250ngの受動的にタグ付けされたプローブまたは250ngの右側の受容体プローブセットと一緒に250ngの右側の供与ビーコンプローブセットを使用した。上述のように、各プローブセットを当モル濃度の複数のプローブで構成した。37℃での一晩のハイブリダイゼーションの後、細胞をプローブ洗浄バッファー中で2回洗浄した。短く、直接標識されたプローブでの反応をこの工程後分析したが、受動的にタグ付けされたHCRプローブでの反応および相互作用ヘアピンプローブでの反応をHCRバッファーで洗浄し、実施例1に記載されたように、2時間37℃で、Cy5で標識されたHCRヘアピンH3およびH4用いてHCR増幅を行った。HCR後、細胞をHCRバッファーで2回、プローブ洗浄バッファーで1回洗浄し、分析した。実施例1に記載されるように、フローサイトメトリー分析を行った。
【0158】
フローサイトメトリー分析の結果を図14に示す。右側の列のパネルは、刺激された細胞を表し、左側の列のパネルは、静止細胞を表す。一番上の行のパネルは、短く、直接標識されたプローブのセットでのプロービングからの結果であった。真ん中の行のパネルは、受動的にタグ付けされたHCRプローブのセットでのプロービングからの結果であった。一番下の行のパネルは、相互作用ヘアピンHCRプローブのセットからの結果であった。これらの散布図の各スポットは、単一の細胞を表し、横軸は、細胞のCy5蛍光を表し、縦軸は、同じ細胞の側方散乱を表す(後者のパラメーターは、細胞のサイズに関する)。
【0159】
左側のパネルの細胞は、単一のクラスターで現れ、そのピーク蛍光強度は、各パネル上の垂直バーで表される。ピーク強度の値は、短く、直接標識されたプローブのセットでは、920蛍光ユニット、受動的に標識されたHCRプローブのセットでは、9600ユニット、相互作用ヘアピンHCRプローブのセットでは、650であった。一方、右側のパネルの刺激された細胞は、2つのクラスターに分かれる。左側のクラスターは、応答しない細胞を表し、右側のクラスターは、IFNγg mRNAを産生する細胞を表し、よってこれがより蛍光を発した。各パネルの右側のクラスターのピーク蛍光は、垂直バーで示される。これらのピーク強度の値は、短く、直接標識されたプローブのセットでは、37000任意の蛍光ユニット(a.u.)、受動的に標識されたHCRプローブのセットでは、373,000ユニット、相互作用ヘアピンHCRプローブのセットでは、66,000であった。
【0160】
実施例8.ガン細胞株における上皮成長因子受容体(EGFR)mRNAの突然変異L858Rを検出する
細胞株H1975およびHeLa細胞株をATCC(Manasas,VA)から入手し、サプライヤーの指示に従って培養した。細胞株H1075は、EGFR遺伝子(ヘテロ接合体)の2つのコピーの1つにおいて体細胞変異L858Rを有し、一方HeLa細胞株は、その変異を有さない。突然変異は、EGFR mRNAの位置2573でチミジン(T)残基をグアノシン(G)残基に変える。
【0161】
プローブ配列および合成
対応するcDNA配列として示される、EGFR mRNAの配列を以下に示す。
【0162】
【化9】
【0163】
【化10】
【0164】
L858R変異の対象となるチミジン残基は太字および括弧内である。
【0165】
48の短く、直接標識されたプローブ
上記EGFR cDNA配列の下線が引かれた配列の逆相補体。24は、突然変異の対象となるヌクレオチド(T)を含む網掛けの配列の5’であり、24は、その配列の3’である。
【0166】
右側のアーム供与ヘアピンプローブ EGFR 3.1(変異体)
【0167】
【化11】
【0168】
ステムを形成する配列には下線が引かれている。一本鎖ループを形成し、変異標的に相補的であるヌクレオチドは太字である。単一ヌクレオチド変異のヌクレオチドは括弧内である。
【0169】
左側のアーム供与ヘアピンプローブ EGFR3.0(野生型)
【0170】
【化12】
【0171】
ステムを形成する配列には下線が引かれている。一本鎖ループを形成し、野生型標的に相補的であるヌクレオチドは太字である。突然変異の対象となるヌクレオチドは括弧内である。
【0172】
右側の受容体ヘアピンプローブ EGFR3.0
【0173】
【化13】
【0174】
ステムを形成する配列には下線が引かれている。変異および野生型標的に相補的であるヌクレオチドは太字である。
【0175】
左側の受容体ヘアピンプローブ EGFR3.0
【0176】
【化14】
【0177】
ステムを形成する配列には下線が引かれている。変異および野生型標的に相補的であるヌクレオチドは太字である。
【0178】
相互作用ヘアピンプローブをIDT DNA Inc.から入手し、その後実施例4に記載したように、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により精製した。右側のアーム供与プローブおよび右側の受容体プローブを95℃で2分間加熱し、2X SSC中(別々のチューブ内)、10分間室温で冷却して、それらがそれぞれのヘアピンを適切に形成したことを確認できた。短く、直接標識されたプローブは、Biosearch LGCからの3’アミノ基で得られ、次にTexas Red色素に結合した。標識されたプローブをRaj et al. (2008)によって説明されたように精製した。
【0179】
実施例1に記載したように、細胞をカバースリップ上で培養し、固定および透過処理した。
【0180】
第1の実験では、プローブハイブリダイゼーション反応混合物(50μl)は、25ngのプールされた短く、直接標識されたプローブ、5ngの右側のアーム供与ヘアピンプローブEGFR3.1(変異体)、左側のアーム供与ヘアピンプローブEGFR3.1(野生型)、右側の受容体ヘアピンプローブEGFR3.0、および左側の受容体ヘアピンプローブEGFR3.0のそれぞれを含んだ。これらのプローブに加えて、ハイブリダイゼーション混合物はまた、10%硫酸デキストラン(Sigma)、1mg/ml 大腸菌tRNA(Sigma)、2mMリボヌクレオシドバナジル複合体(New England Biolabs,Ipswich,MA)、0.02% RNase-freeウシ血清アルブミン(Ambion)、10%ホルムアミドおよび2x SSCを含んだ。このハイブリダイゼーション反応混合物を伸ばしたパラフィルム上に置き、カバースリップをその上に細胞を下向きして置き、その後一晩湿潤チャンバー内、50℃でインキュベートした。カバースリップをプローブ洗浄バッファーで2回、HCRバッファーで1回洗浄した。
【0181】
第2の実験では、プローブハイブリダイゼーションを2つの工程で行い、アーム供与ヘアピンプローブの濃度を上げた。第1の工程では、ハイブリダイゼーション反応混合物は、左側および右側の受容体プローブを含んだが、アーム供与ヘアピンプローブを含まなかった。6時間にしたこと以外上記と同じ条件下で行った、このハイブリダイゼーション後、過剰の受容体プローブをプローブ洗浄バッファーでカバースリップを2回連続して洗浄することにより除去した。その後、2回目のハイブリダイゼーションを、20ngの右側および左側のアーム供与ヘアピンプローブのそれぞれを含んだが受容体プローブを含まなかった反応混合物で行った。2回目のハイブリダイゼーションを一晩行った。Texas Red標識プローブは、両方のハイブリダイゼーション反応に含まれていた。過剰のアーム供与プローブを洗浄により除去した。
【0182】
次に、両方の実験において、実施例1に記載したように、HCR増幅をHCRバッファー中で行った。HCR反応混合物は、2セットのHCRヘアピンオリゴヌクレオチド:Cy5標識H3およびH4、ならびにTMR標識H1およびH2を含んだ。過剰(未使用)HCRヘアピンオリゴヌクレオチドを除去した後、カバースリップを、Prime Photometric sCMOSカメラを用いて、DIC、DAPI、TMR、Texas RedおよびCy5チャンネルにおいて、Zeiss Axiovert顕微鏡、開口数1.4、63倍の対物レンズで撮像した。TMR、Texas RedおよびCy5チャンネルにおいて、お互いに0.2μm離れた16の光学セクションを取得した。これらのz-スタックを、各チャンネルにおいて、3-Dでスポットを同定し、その後チャンネルの各ペアの間の共局在化したスポットを同定するカスタムMATLABイメージプロセッシングプログラムにより分析した(Vargas et al. 2011)。3つのスポットすべてで共局在化されたスポットは、ほとんど見つからなかった。
【0183】
第1の実験からの画像および画像分析を図15において細胞株H1975(上の行)およびHeLa細胞株(下の行)のそれぞれ1細胞から示す。各行の水平パネルは、示すように4つの異なるチャンネル(TMR、Texas Red、Cy5およびDIC)から得られた同じ細胞の画像を表す。画像は、z-スタックの中心レイヤーに対応する右側のDICパネルを除き、z-スタックに由来する最大強度の投影である。DICパネルは、図の一番下で示されるキーで同定された各種類のスポットの位置を表示する。
【0184】
表2は、2つの実験からの単一細胞の画像においてスポットをカウントした結果を示す。スポットの数を異なるカテゴリーのスポットで表す:Texas Redスポットの総数、Texas Redスポットと共局在化しなかった(「単独」)TMRスポットの数、Texas Redスポットと共局在化しなかったCy5スポットの数、Texas Redスポットと共局在化したTMRスポットの数、およびTexas Redスポットと共局在化したCy5スポットの数。上の2行は、第1の実験(1ステッププローブハイブリダイゼーション)における単一細胞、すなわち図15に示される細胞のカウントである。次の2行は、第1の実験からの60細胞のカウントの平均である。下の2行は、第2の実験(2ステッププローブハイブリダイゼーション)からの50細胞のカウントの平均である。標準偏差は、報告された値の約30%であった。
【0185】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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