(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】自動航行一軸二舵船
(51)【国際特許分類】
B63B 43/18 20060101AFI20230309BHJP
B63H 25/38 20060101ALI20230309BHJP
B63H 25/02 20060101ALI20230309BHJP
B63H 25/04 20060101ALI20230309BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
B63B43/18
B63H25/38 B
B63H25/02 B
B63H25/04 Z
B63H25/38 101
B63B49/00 Z
(21)【出願番号】P 2020096537
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000107365
【氏名又は名称】ジャパン・ハムワージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和志
(72)【発明者】
【氏名】山本 博敬
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-052887(JP,A)
【文献】特開2018-103949(JP,A)
【文献】特開2019-116133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/00-85/00
B63J 1/00-99/00
B63H 1/00-25/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船尾に配置した一基の推進プロペラと、推進プロペラの後方に配置した左右一対の高揚力舵と、各高揚力舵をそれぞれ駆動する一対のロータリーベーン舵取機と、2枚の高揚力舵の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御
し、無人で自律的に自動操船する自動制御装置と、制御装置から独立して2枚の高揚力舵の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御する緊急制御装置と、船舶レーダ装置を備え、
緊急制御装置は、
ハッキングによって自動制御装置が外部の他者に支配され、船舶が本来航行すべき航路から逸脱し、もしくは船速が異常に速まったりして異常操船状態となったときに、または自動制御装置の誤作動により異常操船状態となったときに、または相手船の誤操船が原因で異常接近するときにおいて、衝突リスク判定部で衝突リスクを判定し、
衝突リスク判定部は、船舶レーダ装置から得る自船情報と他船情報に基づいて自船が他船に衝突するか否かを判断し、衝突すると判断した場合に緊急指令を緊急操船部に指令し、
緊急操船部は、緊急指令を受けて、
ホバリング操船に先立って船舶の緊急停止操船を行い、その後に船体をその場に留まらせるホバリング操船を行うことを特徴とする自動航行一軸二舵船。
【請求項2】
自船情報は、自船の船位、自船の船速、自船の方位を含み、
他船情報は、他船の船位、他船の船速、他船の方位を含むことを特徴とする請求項1に記載の自動航行一軸二舵船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緊急制御機能を備えた自動航行一軸二舵船に関し、衝突を防止する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の操縦装置としては、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、一基の推進プロペラの後方に一対の舵を推進プロペラ軸心に対して対称の位置に設けた二枚舵システム、あるいは、二基の推進プロペラの後方にそれぞれ一枚の舵を設けた二枚舵システムを有する船舶の自動制御装置である。
【0003】
この自動制御装置は、操舵命令系統がオートパイロット装置とジョイスティック・パネルとから構成され、オートパイロット装置は針路設定装置とジャイロコンパスとからなり、ジョイスティック・パネルはジョイスティックレバーと舵角設定装置と緊急停止押釦とからなり、制御装置系統が自動演算装置とジョイスティック・ユニットと舵角設定器と緊急停止制御ユニットとから構成される。
【0004】
また、近年では無人で自律的に自動航行する機能を備えた船舶の研究開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、船舶が無人で自律的に自動航行する場合には、船舶に自動制御操船のためのプログラムを搭載した自動制御装置を設ける必要がある。船舶が自動航行を行う場合に、航行に必要な目的地、航路、天候情報等々は無線通信を介して外部から得ることになる。この場合に、無線通信を介して外部の他者が自動制御装置に侵入する可能性がセキュリティの問題として存在する。ここで、外部の他者とは、日本産業規格 JIS X 0001-1994 においては、「高度な技術をもった計算機のマニア。」(01.07.03) と「高度の技術をもった計算機のマニアであって、知識と手段を駆使して、保護された資源に権限をもたずにアクセスする人。」(01.07.04)であり、いわゆるハッカーと呼称される人である。
【0007】
ハッキングによって船舶が本来航行すべき航路から逸脱したり、船速が異常に速まったりした異常操船状態において、あるいは操船装置の誤作動により異常操船状態となった状態において、あるいは相手船の誤操船が原因で異常接近する状態において、衝突のリスクが生じた場合に船舶を停船し、その場に留めることが求められる。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するものであり、自動航行を行う機能を有する船舶に衝突のリスクが生じた場合に、船舶をその場に留めることで衝突を回避する自動航行一軸二舵船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の自動航行一軸二舵船は、船尾に配置した一基の推進プロペラと、推進プロペラの後方に配置した左右一対の高揚力舵と、各高揚力舵をそれぞれ駆動する一対のロータリーベーン舵取機と、2枚の高揚力舵の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御し、無人で自律的に自動操船する自動制御装置と、制御装置から独立して2枚の高揚力舵の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御する緊急制御装置と、船舶レーダ装置を備え、緊急制御装置は、ハッキングによって自動制御装置が外部の他者に支配され、船舶が本来航行すべき航路から逸脱し、もしくは船速が異常に速まったりして異常操船状態となったときに、または自動制御装置の誤作動により異常操船状態となったときに、または相手船の誤操船が原因で異常接近するときにおいて、衝突リスク判定部で衝突リスクを判定し、衝突リスク判定部は、船舶レーダ装置から得る自船情報と他船情報に基づいて自船が他船に衝突するか否かを判断し、衝突すると判断した場合に緊急指令を緊急操船部に指令し、緊急操船部は、緊急指令を受けて、ホバリング操船に先立って船舶の緊急停止操船を行い、その後に船体をその場に留まらせるホバリング操船を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の自動航行一軸二舵船において、自船情報は、自船の船位、自船の船速、自船の方位を含み、他船情報は、他船の船位、他船の船速、他船の方位を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成により、自動航行を行う機能を有する船舶が本来航行すべき航路から逸脱したり、船速が異常に速まったりした異常操船状態において、あるいは操船装置の誤作動により異常操船状態となった状態において、あるいは相手船の誤操船が原因で異常接近する状態において、衝突のリスクが生じた場合に、船舶をその場に留めることで衝突を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態における緊急制御機能を備えた自動航行一軸二舵船の推力システムおよび自動制御装置を示す模式図
【
図2】同実施の形態における緊急制御機能を備えた自動航行一軸二舵船の操船スタンドを示す模式図
【
図3】同実施の形態における操船スタンドの構成を示す模式図
【
図4】同実施の形態における緊急制御装置を示す模式図
【
図5】同実施の形態における高揚力舵の可動範囲を示す平面図
【
図6】同実施の形態における推進器および高揚力舵を示し、推力システム100の船尾部の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る緊急制御機能を備えた自動航行一軸二舵船の自動制御装置は、船舶の大きさに拘わらず適用可能である。
【0016】
本実施の形態における緊急制御機能を備えた自動航行一軸二舵船は、
図1から
図7に示すように、推力システム100と推力システム100を制御する操船システム200を備えている。
【0017】
推力システム100は、船体110の船尾に配置した1基1軸のプロペラからなるプロペラ推進器101と、プロペラの後方に配置した2枚の高揚力舵102、103を配したものである。
【0018】
高揚力舵102、103は、プロペラの軸心方向に沿った断面形状が高揚力の断面輪郭の舵ブレードを有する舵である。高揚力の舵ブレードには種々の形状のものがあるが、本実施の形態の高揚力舵102、103の舵ブレードは以下の形状をなす。すなわち、水平断面の輪郭において前方へ半円形状に突出させた前縁部102a、103aと、前縁部102a、103aに連続して流線型に幅を増大させた後に最小幅部102b、103bに向けて徐々に幅を減少させた中間部102c、103cと、中間部102c、103cに連続して所定幅の後方端102d、103dに向けて徐々に幅を増大させた魚尾後縁部102e、103eからなる形状を有している。
【0019】
各高揚力舵102、103は、それぞれ、アウトボード(外舷側)へ105°、インボード(内舷側)へ35゜転舵可能に構成されている。そして、1基1軸の推進器(プロペラ)をプロペラ前進回転のままで、1対2枚の高揚力舵102、103をそれぞれ独立して種々の角度に作動させ、両舷の高揚力舵102、103を舵角の組合せを変えることによって、プロペラ後流を目的とする望ましい方向に分配し、それぞれの方向の推力を自在に変えることができる。従って、それぞれの方向の推力の合成推力を自在に変えることができ、プロペラ後流を制御して船尾回りの推力を360゜全方向にわたって制御することで、船の前後進、停止、前進旋回、後進旋回等の操船を行わせ、船の運動を自由に制御することができる。
【0020】
さらに、推力システム100は、高揚力舵102、103を駆動するロータリーベーン舵取機104、105と、ロータリーベーン舵取機104、105を制御する舵制御装置(サーボアンプ)106、107と、船体110の船首側に配置した船首スラスター108および船首スラスター108を制御するスラスター制御装置109を有している。
【0021】
また、ロータリーベーン舵取機104、105のそれぞれには、ポンプユニット151、152と舵角発信器153、154とフィードバックユニット155、156が接続しており、フィードバックユニット155、156が舵制御装置106、107に接続している。
【0022】
操船システム200は、2枚の高揚力舵102、103の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御し、無人で自律的に自動操船する場合(モード)の自動制御装置201、有人で2枚の高揚力舵102、103の舵角を組み合わせて操船する場合(モード)の有人制御装置202、自動制御装置201から独立して2枚の高揚力舵102、103の舵角を組み合わせて船体運動の方向を制御する場合(モード)の緊急制御装置203を備え、船舶レーダ装置271および送受信アンテナ装置272が接続されている。
【0023】
自動制御装置201は、操船スタンド250に格納されており、ジャイロコンパス251、GPSコンパス(図示省略)を用いたオートパイロットで操縦するものであり、送受信アンテナ装置272を介して交信する無線通信により遠隔地から目的地、航路、船速等々の航行に必要な情報を操船指令として受け取り、船舶レーダ装置271で周囲の船舶や障害物を検知しつつ自律的に自動操船する自動航行操船部253と、無線通信による操船指令を受け取る操船指令受信部265を有している。
【0024】
有人制御装置202は、ジャイロコンパス251のジャイロ方位を表示するジャイロ方位表示部252と、ジョイスティックレバー254により操船するジョイスティック操船部255と、モード切替スイッチ260により自動制御装置201と有人制御装置202の切替を行うモード切替部261と、画面にタッチパネルを配したディスプレイ装置262と、ディスプレイ装置262に映す画像を制御する画像制御部263を有している。
【0025】
画像制御部263は、ジャイロ方位を映すジャイロ方位表示画像267と、ジャイロ方位表示部252をモニター画面上でタッチ操作するための方位表示部操作画像268と、自動航行操船部253をモニター画面上でタッチ操作するためのオート操船操作画像269を選択的に表示し、あるいは同時に表示する。
【0026】
ジョイスティック操作部255は、ジョイスティックレバー254がX-Y方向の何れの方向へも操作可能に構成されており、ジョイスティックレバー254の傾倒方向で船体の指令運動方向を制御し、傾倒方向における傾倒角度で船首尾方向指令速度および船体横方向指令速度を制御するものである。
【0027】
ジョイスティック操船部255は、両舷の高揚力舵102、103の舵角をそれぞれジョイスティックレバー254の傾倒方向に応じて設定した舵角に制御し、かつ両舷の高揚力舵102、103の舵角を組合せることで、プロペラ後流の推力を目的方向に向けて変向し、双方のロータリーベーン舵取機104、105により両舷の高揚力舵102、103のそれぞれの舵角を外舷側へ105°、内舷側へ35°の範囲で制御する。詳細は後述する。
【0028】
自動航行操船部253は、ジャイロコンパス251、GPSコンパス、電子海図システムにより自船の現在位置情報、誘導経路情報、停船保持位置情報に基づいて、自船を無線通信による操船指令で受けた設定針路に誘導制御するものである。
【0029】
緊急制御装置203は、衝突リスク判定部301と警報装置302と緊急操船部303を有する。
【0030】
衝突リスク判定部301は、ジャイロコンパス251、GPSコンパス、船舶レーダ装置271から得る自船情報と他船情報に基づいて自船が他船に衝突するか否かを判断し、衝突すると判断した場合に緊急指令を緊急操船部303に指令する。警報装置302は、緊急指令を受けて警報を発報する。緊急操船部303は、緊急指令を受けて船体をその場に留まらせるホバリング操船を行う。
【0031】
高揚力舵102、103の基本的な舵角の組合せ、およびジョイスティックレバー254の状態と、その呼称及びプロペラ後流線と運動方向を、
図7において説明する。
【0032】
図7中で、舵は水平断面で示してあり、その横あるいは下方に各々の舵の舵角を示している。舵角は右に取るのが正(+)、左に取るのが負(-)として表示し、これらの舵角の組み合わせに対する呼称を掲げている。プロペラ後流の舵によって転流される向きは、細い矢印線で、又、それによる船の推進方向を太い中抜き矢印線で画いている。
【0033】
ちなみに、「TURN TO PORT」(前進左旋回)は左舷舵-35°、右舷舵-35°であり、「ROTATE TO PORT」(船首左回頭)は左舷舵-70°、右舷舵-35°であり、「STERN TO PORT」(船尾左旋回)は左舷舵-105°、右舷舵+45°から+75°であり、「ASTERN TO PORT」(後進左旋回)は左舷舵-105°、右舷舵+75°から+105°であり、「AHEAD」(前進)は左舷舵0°、右舷舵0°であり、「HOVERING」(その場停止)は左舷舵-75°、右舷舵+75°であり、「ASTERN」(後進)は左舷舵-105°、右舷舵+105°であり、「TURN TO STARD」(前進右旋回)は左舷舵+35°、右舷舵+35°であり、「ROTATE TO STARD」(船首右回頭)は左舷舵+35°、右舷舵+70°であり、「STERN TO STARD」(船尾右旋回)は左舷舵-45°から-75°、右舷舵+105°であり、「ASTERN TO STARD」(後進右旋回)は左舷舵-75°から-105°、右舷舵+105°である。
【0034】
以下、上記構成における作用を説明する。
1.有人制御装置202による操縦モード
モード切替スイッチ260を操作して有人制御装置202のジョイスティックによる操縦モードを選択する。ジョイスティック操船部255は、ジョイスティックレバー254によって船体の指令運動方向、船首尾方向指令推力、船体横方向指令推力を指令する。
【0035】
この操船においては、プロペラ推進器101をプロペラ前進回転のままで、それぞれの高揚力舵、102、103をそれぞれ独立に種々の角度に作動させてプロペラ後流を制御し、船尾回りの推力を360゜全方向にわたって制御する。この制御によって船の前後進、停止、前進旋回、後進旋回等を行わせることにより操船における機動性を向上させることができる。
【0036】
すなわち、両舷の舵の舵角の組合せを変えることによって、プロペラ後流を目的とする望ましい方向に向けてその方向に推力を変えることができる。ここに挙げた舵角の組み合わせは一例であり、目的とする推進方向及び推力を得るように、舵角の組み合わせを任意に変えることができる。
【0037】
このように、操船においては推進器推力の反転(プロペラ逆転)が不要であり、主機関は常に前進回転のままであらゆる操船制御が行え、主機関の回転数を加減せずとも、両舵の舵角を加減して、そのときのプロペラ回転数に対応した前進最大速度から後進最大速度まで無段階にきめ細かく船速を制御することができる。
2.自動制御装置201による操縦モード
モード切替スイッチ260を操作して自動制御装置201による操縦モードを選択する。
【0038】
自動制御装置201は、無人で自律的に自動操船する。すなわち、自動制御装置201は、無線通信により遠隔地から目的地、航路、船速等の航行に必要な情報を操船指令として操船指令受信部265で受け取り、受け取った指令に基づいてGPSコンパスを用いたオートパイロットで操縦し、GPSコンパス、電子海図システムにより自船の現在位置情報、誘導経路情報、停船保持位置情報に基づいて、自船を無線通信による操船指令で受けた設定針路に誘導制御する。
【0039】
この自動制御装置201による操船においても、有人制御装置202による操船と同様に、船体の指令運動方向、船首尾方向指令推力、船体横方向指令推力を指令する。
【0040】
すなわち、プロペラ推進器101をプロペラ前進回転のままで、それぞれの高揚力舵102、103をそれぞれ独立に種々の角度に作動させてプロペラ後流を制御し、船尾回りの推力を360゜全方向にわたって制御する。この制御によって船の前後進、停止、前進旋回、後進旋回等を行わせる。
3.緊急制御装置203による操縦モード
緊急制御装置203は、ハッキングによって自動制御装置201が外部の他者に支配され、船舶が本来航行すべき航路から逸脱したり、船速が異常に速まったりして異常操船状態となったときに、あるいは自動制御装置201の誤作動により異常操船状態となったときに、あるいは相手船の誤操船が原因で異常接近するときにおいて、衝突リスクを判定する。
【0041】
すなわち、衝突リスク判定部301は、船舶レーダ装置271から得る自船情報と他船情報に基づいて自船が他船に衝突するか否かを判断する。自船情報は、自船の船位、自船の船速、自船の方位を含み、他船情報は、他船の船位、他船の船速、他船の方位を含む情報である。
【0042】
衝突リスク判定部301は、衝突すると判断した場合に警報装置302を発報させて操船者(乗船している場合に)に警報を発するとともに、緊急指令を緊急操船部303に指令する。
【0043】
緊急操船部303は、緊急指令を受けて船体をその場に留まらせるホバリング操船を行う。この際に、緊急操船部303は、ホバリング操船に先立って船舶の緊急停止操船を行う。このため、左舷舵の高揚力舵103を取舵方向(上から見て時計回りの方向)に、右舷舵の高揚力舵102を面舵方向(上から見て反時計回りの方向)に、それぞれハードオーバー(舵いっぱい)まで転舵させ、船に制動力を与えて停止させる。この両舵により非常に大きな制動力と後進力を発生させるので、プロペラ逆転による操船よりもはるかに短い時間、短い距離で船体を停止させることができる。
【0044】
次に、緊急操船部303は、船体をその場に留まらせるホバリング操船を行う。このため、左舷舵の高揚力舵103を取舵方向(上から見て時計回りの方向)に-75°、右舷舵の高揚力舵102を面舵方向(上から見て反時計回りの方向)に+75°に転舵させて、
図7に示す「HOVERING」(その場停止)を行う。
【0045】
このように、緊急制御装置203が、緊急操船部303によって船体をその場に留まらせるホバリング操船を行うことで、衝突を回避できる。
【符号の説明】
【0046】
100 推力システム
110 船体
101 プロペラ推進器
102、103 高揚力舵
104、105 ロータリーベーン舵取機
106、107 舵制御装置
108 船首スラスター
109 スラスター制御装置
151、152 ポンプユニット
153、154 舵角発信器
155、156 フィードバックユニット
200 操船システム
201 自動制御装置
202 有人制御装置
203 緊急制御装置
250 操船スタンド
251 ジャイロコンパス
252 ジャイロ方位表示部
253 自動航行操船部
254 ジョイスティックレバー
255 ジョイスティック操船部
260 モード切替スイッチ
261 モード切替部
262 ディスプレイ装置
263 画像制御部
271 船舶レーダ装置
272 送受信アンテナ装置
301 衝突リスク判定部
302 警報装置
303 緊急操船部