(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】異種のゼオライトを含む気体分離膜及びこれの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20230309BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20230309BHJP
C01B 39/04 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D69/12
C01B39/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021086298
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0061225
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0053818
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518107501
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145,Anam-ro,Seongbuk-gu,Seoul,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】チェー,ジュン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヤン-ファン
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-151709(JP,A)
【文献】国際公開第2013/147327(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C01B 39/04
C01B 39/48
C01B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のMWW型ゼオライトと1つ以上のDDR型ゼオライトとを含み、
前記MWW型ゼオライトと前記DDR型ゼオライトとは互いに交互に備えられ、前記MWW型ゼオライトと前記DDR型ゼオライトとの中の少なくともいずれか1つ以上は、エピタキシャル
構造(epitaxial
structure)
を有するものを含むMWW/DDR型気体分離膜。
【請求項2】
前記MWW型ゼオライト及びDDR型ゼオライトは、独立して層(layer)を形成し、交互に繰り返して備えられる請求項1に記載の気体分離膜。
【請求項3】
前記MWW型ゼオライトは、Si:Alのモル比の基準値が100:0~10である請求項1に記載の気体分離膜。
【請求項4】
前記DDR型ゼオライトは、Si:Alのモル比の基準値が100:0~10である請求項1に記載の気体分離膜。
【請求項5】
前記MWW型ゼオライト上に、DDR型ゼオライトが、第1の方向に備えられる場合、前記MWW型ゼオライトは、複数のMWW型ゼオライト粒子の集団からなり、前記MWW型ゼオライト粒子は、前記第1の方向に平行する平均長さが10nm~1μmであり、
前記DDR型ゼオライト上に、MWW型ゼオライトが、第1の方向に備えられる場合、前記DDR型ゼオライトは、複数のDDR型ゼオライト粒子の集団からなり、前記DDR型ゼオライト粒子は、前記第1の方向に平行する平均長さが0.1μm~10μmであるものを含む請求項
1に記載の気体分離膜。
【請求項6】
前記気体分離膜は、気体混合物から二酸化炭素気体(CO
2)を分離するものである請求項1に記載の気体分離膜。
【請求項7】
第1の構造誘導剤及び第1の原料を含む第1のゼオライト前駆体溶液を用いて水熱合成法で製造した複数の第1のゼオライト粒子を支持体上に備えて、MWW型ゼオライトを形成するMWW型ゼオライト形成ステップ;及び
第2の構造誘導剤及び第2の原料を含む第2のゼオライト前駆体溶液を用いて水熱合成法で前記MWW型ゼオライト上にDDR型ゼオライトを成長させるDDR型ゼオライト形成ステップ;を含み、
前記第1または第2の原料は、それぞれSi及びAlの中の少なくともいずれか1つ以上を含み、
前記MWW型ゼオライトは、前記支持体上に複数の粒子の形態で備えられ、前記DDR型ゼオライトは、前記MWW型ゼオライト上でエピタキシャル成長(epitaxial growth)されるものを含む気体分離膜の製造方法。
【請求項8】
前記MWW型ゼオライトは、粒子の平均長さが10nm~1μmであり、
前記第1のゼオライト前駆体溶液のモル濃度の比率は、Si:Al:構造誘導剤:溶媒=100:0~10:10~500:500~20000であり、
前記第2のゼオライト前駆体溶液のモル濃度の比率は、Si:Al:構造誘導剤:溶媒=100:0~10:1~200:500~20000である請求項
7に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項9】
前記MWW型ゼオライトは、粒子の平均長さが0.1μm~10μmであり、
前記第1のゼオライト前駆体溶液のモル濃度の比率は、Si:Al:構造誘導剤:溶媒=100:0~10:1~200:500~20000であり、
前記第2のゼオライト前駆体溶液のモル濃度の比率は、Si:Al:構造誘導剤:溶媒=100:0~10:10~500:500~20000である請求項
7に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の構造誘導剤は、独立して、ヘキサメチレンイミン(Hexamethyleneimine、HMI)、ピぺリジン(Piperidine)、アダマンチルアミン(1-adamantylamine)、エチレンジアミン(ethylenediamine)、メチルトロピニウム塩、1-TMAdaOH(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium hydroxide)、TMAdaBr(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium bromide)、TMAdaF(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium fluoride)、TMAdaCl(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium chloride)、TMAdaI(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium iodide)、TEAOH(tetraethylammonium hydroxide)、TEABr(tetraethylammonium bromide)、TEAF(tetraethylammonium fluoride)、TEACl(tetraethylammonium chloride)、TEAI(tetraethylammonium iodide)、ジプロピルアミン(dipropylamine)、及びシクロへキシルアミン(cyclohexylamine)の中のいずれか1つ以上を含む請求項
7に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項11】
前記支持体は、α-アルミナ、γ-アルミナ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルフォン、ポリイミド、シリカ、グラス、ムライト(mullite)、ジルコニア(zirconia)、チタニア(titania)、イットリア(yttria)、セリア(ceria)、バナジア(vanadia)、シリコン、ステンレススチール、カーボン、カルシウム酸化物、及びリン酸化物の中のいずれか1つ以上を含む請求項
7に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項12】
前記MWW型ゼオライト形成ステップ及び前記DDR型ゼオライト形成ステップの間には、
前記MWW型ゼオライト形成ステップの複数の第1のゼオライト粒子の少なくとも一部を覆うバッファー部を形成させるバッファー部形成ステップをさらに含み、
前記バッファー部形成ステップは、アダマンチルアミン:エチレンジアミン:ヒュームドシリカ(fumed silica):溶媒が1~20:100~200:100:1000~20000のモル濃度で混合されたバッファー部前駆体溶液を用いて、水熱合成法で、前記MWW型ゼオライト上にバッファー部を備える請求項
7に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項13】
前記バッファー部形成ステップにおいて、
前記MWW型及びDDR型ゼオライトは、互いに異なる種類のゼオライトからなり、前記バッファー部前駆体溶液によって形成されているゼオライト構造は、前記DDR型ゼオライト構造と同一に形成される請求項
12に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項14】
前記MWW型ゼオライト形成ステップ及びDDR型ゼオライト形成ステップは、独立して、水熱合成後に12~40時間の間、0.2~0.5℃/minの上昇速度で、450~550℃の温度で加熱してか焼するステップをさらに含む請求項
7に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項15】
前記DDR型ゼオライト形成ステップの後に、700~1200℃の温度で、10秒~5分間、急速熱処理するステップをさらに含む請求項
7に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項16】
前記水熱合成法で前記MWW型ゼオライト上にDDR型ゼオライトを成長させるDDR型ゼオライト形成ステップは、100℃~200℃の温度で、0.5日~15日間、水熱合成することを含む請求項7に記載の気体分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MWW型ゼオライト及びDDR型ゼオライトを含む気体分離膜及びこれの製造方法に関し、
具体的には、MWW型ゼオライトにDDRゼオライトがエピタキシャル成長されたか、またはDDRゼオライトにMWW型ゼオライトがエピタキシャル成長されたものを含む気体分離膜またはその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、メタノールのガソリン転換や煤煙の脱窒などのための触媒であって、SiO4とAlO4
-の四面体が幾何学的な形態で結合して規則的な三次元骨格構造を有するアルミナ-シリカの結晶分子体で、前記四面体は酸素を互いに共有して連結され、骨格は溝(channel)を有し、さらに互いに連結されている空洞(cavity)を有するという特徴がある。このような特徴によって、ゼオライトはイオン交換性に優れているため、触媒、吸着剤、分子体、イオン交換剤、分離膜などの様々な用途で用いられている。
【0003】
従来のゼオライト分離膜の場合、分離膜を製作する際、必然的に生成されるゼオライト固有の気孔のサイズよりも大きい欠陥によって、分離性能が大きく低下し、これによって高性能の分離膜の製作が難しかった。
【0004】
よって、ゼオライト固有の気孔のサイズよりも大きい欠陥を埋めて分離性能に優れている分離膜に対する開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、異種のゼオライトが互いに交互にエピタキシャル成長された気体分離膜及びこれの製造方法を提供することある。具体的に、本発明は、MWW型ゼオライトからDDR型ゼオライトがエピタキシャル成長されるか、または、DDR型ゼオライトからMWW型ゼオライトがエピタキシャル成長された気体分離膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1つ以上のMWW型ゼオライトと1つ以上のDDR型ゼオライトとを含み、前記MWW型ゼオライトと前記DDR型ゼオライトとは互いに交互に備えられ、前記MWW型ゼオライトと前記DDR型ゼオライトとの中の少なくともいずれか1つ以上は、エピタキシャル成長(epitaxial growth)されるものを含むMWW/DDR型気体分離膜を提供する。
【0008】
また、本発明は、第1の構造誘導剤及び第1の原料を含む第1のゼオライト前駆体溶液を用いて水熱合成法で製造した複数の第1のゼオライト粒子を支持体上に備えて、第1のゼオライトを形成する第1のゼオライト形成ステップ;及び
第2の構造誘導剤及び第2の原料を含む第2のゼオライト前駆体溶液を用いて水熱合成法で前記第1のゼオライト上に第2のゼオライトを成長させる第2のゼオライト形成ステップ;を含み、
前記第1または第2の原料は、それぞれSi及びAlの中の少なくともいずれか1つ以上を含み、
前記第1のゼオライトは、前記支持体上に複数の粒子の形態で備えられ、前記第2のゼオライトは、前記第1のゼオライト上でエピタキシャル成長(epitaxial growth)されるものを含む気体分離膜の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る気体分離膜は、MWW型ゼオライトとDDR型ゼオライトとの構造的連続性を利用して異種のゼオライトが互いにエピタキシャル成長された気体分離膜は優れた分離効能を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例に係る気体分離膜の断面図を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る気体分離膜を製造する方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施例に係る気体分離膜を製造する方法を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る気体分離膜を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージ(a-e)及びX線回折分析したグラフ(f)である。
【
図5】本発明の一実施例に係る気体分離膜の界面でのMWW型ゼオライトからDDR型ゼオライトのエピタキシャル成長が可能な概略的な構造モデルを示すイメージである。
【
図6】本発明の他の実施例に係る気体分離膜を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
【
図7】本発明の他の実施例に係る気体分離膜をX線回折分析したグラフである。
【
図8】本発明の一実施例に係る気体分離膜のX線回折分析したグラフ(a)、透過電子顕微鏡(TEM)イメージ(b)、高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM)イメージ(c)及び高速フーリエ変換(FFT)パターン(d)のイメージである。
【
図9】本発明のさらに他の実施例に係る気体分離膜を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
【
図10】本発明のさらに他の実施例に係る気体分離膜をX線回折分析したグラフである。
【
図11】本発明の比較例に係る気体分離膜を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したイメージである。
【
図12】本発明の一実施例に係る気体分離膜の二酸化炭素分離能力を確認したグラフである。
【
図13】本発明の他の実施例に係る気体分離膜の二酸化炭素分離能力を確認したグラフである。
【
図14】本発明の一実施例に係る気体分離膜の乾燥及び湿式条件での二酸化炭素分離能力を確認したグラフである。
【
図15】本発明の一実施例に係る気体分離膜の疏水性を確認したイメージである。
【
図16】本発明の一実施例に係る気体分離膜の走査電子顕微鏡(SEM)及び蛍光共焦点光学顕微鏡(FCOM)イメージであって、(a)ライン及び(c)ラインは断面イメージ、(b)ライン及び(d)ラインは平面(top-view)イメージである。
【
図17】本発明の一実施例に係る気体分離膜の蛍光共焦点光学顕微鏡(FCOM)の特性を分析したイメージである。
【
図18】本発明の他の実施例に係る気体分離膜の蛍光共焦点光学顕微鏡(FCOM)の特性を分析したイメージである。
【
図19】本発明の一実施例に係る気体分離膜の欠陥構造について概略的に示すイメージである。
【
図20】本発明の他の実施例及び比較例に係る気体分離膜の蛍光共焦点光学顕微鏡(FCOM)の特性を分析したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をより具体的に説明するために、本発明に係る好ましい実施例を、添付の図面を参照してより詳しく説明する。しかしながら、本発明は、ここにおいて説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化されることもできる。
【0012】
ゼオライト分離膜は、微細気孔のサイズが一定で、分子体の役割を行うことができる。ゼオライト分離膜を分離工程に適用する場合、既存の分離工程で使用されていたエネルギーを低減することができると期待されている。現在まで253のゼオライト構造が提示されているが、それにもかかわらず、少数のゼオライト(例;MFI、FAU、CHA、DDR、MOR、LTA)構造が分離膜に合成された。
【0013】
分離膜の合成時、均一のシード層を形成した後、2次成長を通じて分離膜を合成する方法を主に使用しているが、大体シード層と2次成長で育った分離膜の構造が同一な構造からなっていた。
【0014】
DDR型ゼオライトは、気孔のサイズが約0.36x0.44nm2で、CO2(0.33nm)を分子体の役割を通じて選択的に分離することができる。しかしながら、DDR型ゼオライトは、シード粒子を合成することが難しく、再現性が低くて、分離膜のシード層の形成が難しく、連続的なDDR型ゼオライト分離膜の合成を提示したケースが非常に少ない。
【0015】
また、MWW型ゼオライトは、板形粒子で、c-方向に配向される際、6membered ring(MR)気孔(0.28nm)を垂直に通過しなければならないため、水素選択的分離膜として提示された。だが、6MR気孔方向に配向された分離膜の形成が難しく、連続的な分離膜の形成及び分離性能については報告されたことがない。
【0016】
本発明は、1つ以上のMWW型ゼオライトと1つ以上のDDR型ゼオライトとを含み、
前記MWW型ゼオライトと前記DDR型ゼオライトとは、互いに交互に備えられ、前記MWW型ゼオライトと前記DDR型ゼオライトとの中の少なくともいずれか1つ以上は、エピタキシャル成長(epitaxial growth)されるものを含むMWW/DDR構造気体分離膜を提供する。
【0017】
前記MWW/DDR構造は、MWW型ゼオライトとDDR型ゼオライトとが相互成長したものであって、1つ以上のMWW型ゼオライトに1つ以上のDDR型ゼオライトがエピタキシャル成長されたものか、または、1つ以上のDDR型ゼオライトに1つ以上のMWW型ゼオライトがエピタキシャル成長されたものを意味する。
【0018】
一例として、本発明の気体分離膜は、前記MWW型ゼオライト及びDDR型ゼオライトが独立して層(layer)を形成し、交互に繰り返して備えられることができ、前記気体分離膜の厚さは0.1~50μm、0.1~30μm、0.5~10μm、または0.5~3μmであり得る。
【0019】
一例として、前記MWW型ゼオライト上にDDR型ゼオライトが第1の条件で水熱合成法でエピタキシャル成長されて備えられるか、または、前記DDR型ゼオライト上にMWW型ゼオライトが第2の条件で水熱合成法でエピタキシャル成長されて備えられることができる。
【0020】
前記第1の条件は、100℃~200℃、100℃~180℃、120℃~160℃、または130℃~160℃の温度で、0.5日~15日、1日~15日、または1日~10日間、水熱合成することを含み、前記第2の条件は、100℃~200℃、100℃~180℃、120℃~160℃、または130℃~150℃の温度で、0.5日~15日、1日~15日、または1日~11日間、水熱合成することを含むことができる。
【0021】
前記MWW型ゼオライトは、Si:Alのモル比の基準値が100:0~10または100:1~10であることができる。
【0022】
前記DDR型ゼオライトは、Si:Alのモル比の基準値が100:0~10または100:0~1であることができる。
【0023】
本発明に係る気体分離膜は、上記したように、異種のゼオライトが交互に相互成長された構造を有し、前記異種のゼオライトが互いにエピタキシャル成長されたことを特徴とするので、気体混合物から二酸化炭素の気体(CO2)を分離する気体分離効率を、既存の分離膜に比べ、さらに向上することができる。
【0024】
また、本発明の気体分離膜は、
図1の(a)に示すように、前記MWW型ゼオライト上にDDR型ゼオライトが第1の方向Xに備えられている場合、前記MWW型ゼオライトは、複数のMWW型ゼオライト粒子の集団からなり、前記MWW型ゼオライト粒子は、前記第1の方向に平行する平均長さT1が10nm~1μm、100nm~1μm、10nm~800nm、20nm~500nm、10nm~100nm、または50nm~100nmである。
【0025】
また、
図1の(b)に示すように、前記DDR型ゼオライト上にMWW型ゼオライトが第1の方向Xに備えられる場合、前記DDR型ゼオライトは、複数のDDR型ゼオライト粒子の集団からなり、前記DDR型ゼオライト粒子は、前記第1の方向に平行する平均長さT2が0.1μm~10μm、0.1μm~5μm、0.5μm~5μm、1μm~5μm、0.5μm~3μm、または0.1μm~1μmであるものを含むことができる。
【0026】
さらに、
図1の(c)に示すように、前記複数のMWW型ゼオライト粒子が多層(multi-layer)に積層されて第1のゼオライトを形成することができ、
図1の(d)に示すように、前記複数のDDR型ゼオライト粒子が多層(multi-layer)に積層されて第1のゼオライトを形成することができる。
【0027】
前記MWW型ゼオライト粒子または前記DDR型ゼオライト粒子は、第1のゼオライト粒子で第2のゼオライトを形成するためのシードの役割をすることができる。
【0028】
また、本発明は、
図2に示すように、第1の構造誘導剤及び第1の原料を含む第1のゼオライト前駆体溶液を用いて、水熱合成法で製造した複数の第1のゼオライト粒子を支持体上に備えて、第1のゼオライトを形成する第1のゼオライト形成ステップ;及び第2の構造誘導剤及び第2の原料を含む第2のゼオライト前駆体溶液を用いて、水熱合成法で、前記第1のゼオライト上に第2のゼオライトを成長させる第2のゼオライト形成ステップ;を含み、前記第1または第2の原料は、それぞれSi及びAlの中の少なくともいずれか1つ以上を含み、前記第1のゼオライトは、前記支持体上に複数の粒子の形態で備えられ、前記第2のゼオライトは、前記第1のゼオライト上でエピタキシャル成長(epitaxial growth)されるものを含む気体分離膜の製造方法を提供する。
【0029】
さらに、本発明に係る気体分離膜の製造方法は、
図3に示すように、前記第1のゼオライト形成ステップ及び前記第2のゼオライト形成ステップの間に、前記第1のゼオライト形成ステップの複数の第1のゼオライト粒子の少なくとも一部を覆うバッファー部を形成するバッファー部形成ステップを含むことができる。
【0030】
前記バッファー部形成ステップは、前記第1のゼオライトとバッファー部前駆体溶液を用いて、水熱合成法で、前記第1のゼオライトの複数の粒子上に第2のゼオライトを成長させることができる。
【0031】
前記バッファー部形成ステップは省略可能である。前記バッファー部形成ステップによって、互いに異なる構造からなる第1及び第2のゼオライトの間の界面が、エピタキシャル成長して備えられるようにすることによって、構造的な安全性をより向上することができる。
【0032】
前記第1または第2の原料は、それぞれSi及びAlの中の少なくともいずれか1つ以上を含む。
【0033】
前記Siを含む原料は、シリカ(SiO2)、モノマーシリカ(monomeric silica)、ヒュームドシリカ(fumed silica)及びコロイドシリカの中のいずれか1つ以上を含むことができる。
【0034】
前記Alを含む原料は、酸化アルミニウム塩を含むことができ、具体的に、Alを含む原料は、NaAl2O3であり得る。
【0035】
具体的に、第1または第2のゼオライト前駆体溶液がMWW型ゼオライトを成長させるための溶液である場合、前記第1または第2の原料はSi及びAlを含み、前記第1または第2のゼオライト前駆体溶液のモル濃度の比率は、Si:Al:構造誘導剤:溶媒=100:0~10:10~500:500~20000、または100:1~10:10~500:500~20000を含むことができる。
【0036】
また、第1または第2のゼオライト前駆体溶液がDDR型ゼオライトを成長させるための溶液である場合、前記第1または第2の原料はSi, Alを含み、前記第1または第2のゼオライト前駆体溶液のモル濃度の比率は、Si:Al:構造誘導剤:溶媒=100:0~10:1~200:500~20000、または100:0~1:1~200:500~20000であり得る。
【0037】
前記溶媒は、蒸留水、脱イオン水、またはエタノールを含むことができる。
【0038】
前記第1及び第2の構造誘導剤は、独立して、ヘキサメチレンイミン(Hexamethyleneimine、HMI)、ピぺリジン(Piperidine)、アダマンチルアミン(1-adamantylamine)、エチレンジアミン(ethylenediamine)、メチルトロピニウム塩、1-TMAdaOH(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium hydroxide)、TMAdaBr(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium bromide)、TMAdaF(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium fluoride)、TMAdaCl(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium chloride)、TMAdaI(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium iodide)、TEAOH(tetraethylammonium hydroxide)、TEABr(tetraethylammonium bromide)、TEAF(tetraethylammonium fluoride)、TEACl(tetraethylammonium chloride)、TEAI(tetraethylammonium iodide)、ジプロピルアミン(dipropylamine)、及びシクロへキシルアミン(cyclohexylamine)の中のいずれか1つ以上を含む。
【0039】
前記メチルトロピニウム塩は、メチルトロピニウムアイオダイド(methyltropinium
iodide)、メチルトロピニウムフルオライド(methyltropinium fluoride)、メチルトロピニウムクロライド(methyltropinium chloride)、メチルトロピニウムブロマイド(methyltropinium bromide)、及びメチルトロピニウムハイドロキサイド(methyltropinium hydroxide)で構成された群から選択される1種以上を含む。
【0040】
具体的に、第1及び第2の構造誘導剤のうちMWW型ゼオライトを成長させるための構造誘導剤は、ヘキサメチレンイミン(Hexamethyleneimine、HMI)、ピぺリジン(Piperidine)、TMAdaOH(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium hydroxide)、TMAdaBr(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium bromide)、TMAdaF(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium fluoride)、TMAdaCl(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium chloride)、及びTMAdaI(N,N,N-trimethyl-1-adamantylammonium iodide)の中のいずれか1つ以上であり得る。
【0041】
また、第1及び第2の構造誘導剤のうちDDR型ゼオライトを成長させるための構造誘導剤は、メチルトロピニウム塩、アダマンチルアミン(1-adamantylamine)、及びエチレンジアミン(ethylenediamine)の中のいずれか1つ以上であり得る。
【0042】
前記支持体は、α-アルミナ、γ-アルミナ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルフォン、ポリイミド、シリカ、グラス、ムライト(mullite)、ジルコニア(zirconia)、チタニア(titania)、イットリア(yttria)、セリア(ceria)、バナジア(vanadia)、シリコン、ステンレススチール、カーボン、カルシウム酸化物、及びリン酸化物の中のいずれか1つ以上を含む。
【0043】
前記第1のゼオライト形成ステップは、第1の構造誘導剤及び第1の原料を含む第1のゼオライト前駆体溶液を用いて、水熱合成法で製造した複数の第1のゼオライト粒子を前記支持体上に備えて、第1のゼオライトを形成するステップである。
【0044】
前記第1のゼオライト形成ステップは、下記のように、2つのステップで構成されることができる:
(1)前記第1のゼオライト前駆体溶液を用いて、第1の条件または第2の条件で水熱合成法で複数の第1のゼオライト粒子を形成する第1のゼオライト粒子形成ステップ;及び
(2)前記形成されている複数の第1のゼオライト粒子を含む懸濁液を用いて、支持体に前記第1のゼオライト粒子を蒸着させる第1のゼオライト形成ステップを含むことができる。
【0045】
前記第1のゼオライト前駆体溶液がMWW型ゼオライト粒子を形成するための溶液である場合、前記第1の原料はSi及びAlを含み、前記第1のゼオライト前駆体溶液のモル濃度の比率は、Si:Al:構造誘導剤:溶媒=100:0~10:10~500:500~20000、または100:1~10:10~500:500~20000を含む。具体的に、MWW型ゼオライト粒子を形成するための第1のゼオライト前駆体溶液は、Si:Na:Al:構造誘導剤:溶媒=100:10~100:0~10:10~500:500~20000、または100:10~100:1~10:10~500:500~20000の割合で混合された溶液であり得る。
【0046】
また、前記第1のゼオライト前駆体溶液がDDR型ゼオライト粒子を形成するための溶液である場合、前記第1の原料はSi, Alを含み、前記第1のゼオライト前駆体溶液のモル濃度の比率は、Si:Al:構造誘導剤:溶媒=100:0~10:1~200:500~20000、または100:0~1:1~200:500~20000を含む。具体的に、DDR型ゼオライト粒子を形成するための第1のゼオライト前駆体溶液は、SiO2:Na:Al:構造誘導剤:溶媒=100:10~100:0~10:1~200:500~20000、または100:10~100:0~1:1~200:500~20000の割合で含むことができる。
【0047】
前記第1の条件は、DDR型ゼオライトの粒子を形成する条件であって、100℃~200℃、100℃~180℃、120℃~160℃、または130℃~160℃の温度で、0.5日~15日、1日~15日、または1日~10日間、水熱合成することを含み、前記第2の条件は、MWW型ゼオライトの粒子を形成する条件であって、100℃~200℃、100℃~180℃、120℃~160℃、または130℃~150℃の温度で、0.5日~15日、1日~15日、または1日~11日間、水熱合成することを含む。
【0048】
前記第1のゼオライト粒子形成ステップは、水熱合成後に12~40時間の間、0.5~1.5℃/minの上昇速度で、450~550℃の温度で、加熱してか焼(calcination)するステップをさらに行うことができる。
【0049】
また、前記第1のゼオライト形成ステップは、前記製造された複数の第1のゼオライト粒子と無水トルエン、エタノール及び蒸留水の中のいずれか1つ以上を含む溶媒を混合した懸濁液を用いて、支持体上に複数の第1のゼオライト粒子を1つ以上の層で蒸着させて第1のゼオライトを形成することができる。
【0050】
前記のような条件において第1のゼオライトを形成する場合、
図1の(a)のように、前記支持体S上に第1の方向に平行する平均長さT1が10nm~1μm、100nm~1μm、10nm~800nm、20nm~500nm、10nm~100nm、または50nm~100nmである複数の第1のゼオライト粒子100を形成して、第1のゼオライトを形成することができ、前記第1のゼオライト粒子100は、MWW型ゼオライト粒子であり得る。また、
図1の(c)のように、前記支持体S上に前記複数の第1のゼオライト粒子100が多層(multi-layer)に積層されて、第1のゼオライトを形成することができる。
【0051】
または、
図1の(b)のように、前記支持体S上に第1の方向Xに平行する平均長さT2が0.1μm~10μm、0.1μm~5μm、0.5μm~5μm、1μm~5μm、0.5μm~3μm、または0.1μm~1μmである第1のゼオライト粒子100を形成して、第1のゼオライトを形成することができ、前記第1のゼオライト粒子100は、DDR型ゼオライト粒子であり得る。また、
図1の(d)のように、前記支持体S上に前記複数の第1のゼオライト粒子100が多層(multi-layer)に積層されて、第1のゼオライトを形成することができる。
【0052】
前記第1のゼオライト粒子は、第2のゼオライトを形成するためのシードの役割をすることができる。
【0053】
前記第1のゼオライトの厚さは、0.1~10μm、0.5~10μm、0.1~1μm、または1~10μmであることができ、第1のゼオライトがMWW型ゼオライトである場合の第1のゼオライトの厚さは、0.1~1μmであり、第1のゼオライトがDDR型ゼオライトである場合の第1のゼオライトの厚さは、1~10μmであり得る。
【0054】
前記のような厚さで第1のゼオライトを形成する場合は、第1のゼオライト粒子と連続する結晶相を形成するよう、第2のゼオライトを成長させることができる。
【0055】
前記第1のゼオライト形成ステップは、水熱合成後に12~40時間の間、0.2~1.0℃/minの上昇速度で、400~500℃の温度で、加熱してか焼するステップをさらに行うことができる。
【0056】
前記のようなか焼する過程を通じて、第1のゼオライトは、多孔性支持層との結合力が増大されることができ、安定した第1のゼオライトを形成することができる。
【0057】
前記バッファー部形成ステップは、第1のゼオライトの複数の第1のゼオライト粒子と連続する結晶相を形成するよう、第2のゼオライトがエピタキシャル成長され、第2のゼオライトを3次元に成長させるための前駆体の役割をする。
【0058】
前記バッファー部形成ステップにおいて、前記第1及び第2のゼオライトは、互いに異なる種類のゼオライトからなり、前記バッファー部前駆体溶液によって形成されたゼオライト構造は、前記第2のゼオライト構造と同一に形成することができる。
【0059】
具体的に、前記バッファー部形成ステップは、アダマンチルアミン:エチレンジアミン:ヒュームドシリカ(fumed silica):溶媒が1~20:100~200:100:1000~20000のモル濃度で混合されたバッファー部前駆体溶液を用いて、水熱合成法で、バッファー部を備えることができる。さらに具体的に、前記第1のゼオライト上にバッファー部前駆体溶液を用いて、100℃~200℃、100℃~180℃、120℃~160℃、または130℃~160℃の温度で、1日~5日、または1日~3日間、水熱合成法で、第1のゼオライト上にバッファー部を形成することができる。
【0060】
前記バッファー部形成ステップは、前記のような条件の水熱合成法で、バッファー部を形成することにより、第1のゼオライト粒子からエピタキシャル(epitaxial)に第2のゼオライト粒子を形成することができる。
【0061】
前記バッファー部形成ステップは、水熱合成後に12~40時間の間、0.2~0.5℃/minの上昇速度で、450~550℃の温度で、加熱してか焼するステップをさらに行うことができる。
【0062】
上記したように、か焼する過程を通じて製造された第2のゼオライト粒子は、熱的に活性化することができ、第2のゼオライト粒子は、安定して第1のゼオライトと強い結合力を有することができる。
【0063】
前記第2のゼオライト形成ステップは、第2の構造誘導剤及び第2の原料を含む第2のゼオライト前駆体溶液を用いて、第1の条件または第2の条件で、水熱合成法で、前記第1のゼオライト上に第2のゼオライトを成長させるステップである。
【0064】
前記第2のゼオライト前駆体溶液がMWW型ゼオライトを形成するための溶液である場合、前記第2の原料はSi及びAlを含み、前記第2のゼオライト前駆体溶液のモル濃度の比率は、Si:Al:構造誘導剤:溶媒=100:0~10:10~500:500~20000、または100:1~10:10~500:500~20000を含む。具体的に、MWW型ゼオライトを形成するための第2のゼオライト前駆体溶液は、Si:Na:Al:構造誘導剤:溶媒=100:10~100:0~10:10~500:500~20000、または100:10~100:1~10:10~500:500~20000の割合で混合された溶液であり得る。
【0065】
また、前記第2のゼオライト前駆体溶液がDDR型ゼオライトを形成するための溶液である場合、前記第2の原料はSi, Alを含み、前記第2のゼオライト前駆体溶液のモル濃度の比率は、Si:Al:構造誘導剤:溶媒=100:0~10:1~200:500~20000、または100:0~1:1~200:500~20000を含む。具体的に、DDR型ゼオライトを形成するための第2のゼオライト前駆体溶液は、Si:Na:Al:構造誘導剤:溶媒=100:10~100:0~10:1~200:500~20000、または100:10~100:0~1:1~200:500~20000の割合で含むことができる。
【0066】
前記第2のゼオライト前駆体溶液において、構造誘導剤は、前記メチルトロピニウム塩であることができ、上記したように、メチルトロピニウム塩を含む第2のゼオライト前駆体溶液を用いて、水熱合成法で、連続的な面の方向性を有するように、第2のゼオライトを成長させることができる。
【0067】
具体的に、
図1に示すように、前記支持体S上に形成されている複数の第1のゼオライト粒子100から第2のゼオライトが成長されながら1つの面を形成して第2のゼオライト層200を形成することができ、
図1の(a)のように、前記複数の第1のゼオライト粒子100がMWW型ゼオライト粒子である場合、第2のゼオライト層200は、DDR型ゼオライトで形成されることができ、
図1の(c)のように、前記複数の第1のゼオライト粒子100が多層(multi-layer)に積層された第1のゼオライト上に第2のゼオライト層200を形成することができる。
【0068】
または、
図1の(b)のように、前記複数の第1のゼオライト粒子100はDDR型ゼオライト粒子である場合、第2のゼオライト層200はMWW型ゼオライトで形成されることができ、
図1の(d)のように、前記複数の第1のゼオライト粒子100が多層(multi-layer)に積層された第1のゼオライト上に第2のゼオライト層200を形成することができる。
【0069】
前記第1の条件は、100℃~200℃、100℃~180℃、120℃~160℃、または130℃~160℃の温度で、0.5日~15日、1日~15日、または1日~10日の間、水熱合成することを含み、前記第2の条件は、100℃~200℃、100℃~180℃、120℃~160℃、または130℃~150℃の温度で、0.5日~15日、1日~15日、または1日~11日の間、水熱合成することを含む。
【0070】
前記第2のゼオライト形成ステップの後に、700~1200℃の温度で、10秒~5分間、急速熱処理するステップをさらに含むことができる。
【0071】
上記したように、急速熱処理するステップを通じて、ゼオライトは縮小され、支持体は膨張しながら、ゼオライト内にクラック(crack)の幅が縮んで、気体透過選択性を向上することができる。
【0072】
以下、本発明の実施例を記載する。しかしながら、下記実施例は、本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明の権利範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0073】
[実施例]
本発明の実施例1-2及び比較例1-11のゼオライトを下記のように合成し、その結果を下記の表1にまとめた。
【0074】
MWW型ゼオライト粒子の合成
まず、NaOH(98% pellet、Sigma-Aldrich)及びナトリウムアルミン酸塩(NaAlO2、Sigma-Aldrich)をプラスチック瓶に入った脱イオン水(DI)に添加した。次いで、ヘキサメチレンイミン(hexamethyleneimine、HMI、97% Sigma-Aldrich)を前記混合物に添加した。前記溶液にヒュームドシリカ(CAB-O-SIL M-5、Cabot Corporation)を攪拌しながらゆっくり添加した。前記混合物の最終質量組成は、1 SiO2:0.1 NaOH:0.03 NaAlO2:0.8 HMI:13.1 H2Oである。前記混合物をシェーカーを用いて終夜激しく混合して、テフロンライナーに移し、ライナーをステンレス-スチールオートクレーブ(stainless-steel autoclave)に入れた。前記オートクレーブは、135℃に予熱されているオーブンに移し、40rpmで回転させながら、11日間行った。11日後、オートクレーブを水道水で冷却して急冷させた。そうしてから、生成されたMCM-22(P)は、5回遠心分離及び洗浄を繰り返して回収した。回収された粒子をか焼炉(furnace)で200mL/minの気流下で、1℃/minの昇温速度で、550℃で、12時間か焼して、MCM-22粒子を製造した。
【0075】
MCM-22シード層の形成
約0.05gのか焼されたMCM-22粒子を、40mLの無水トルエンに添加して、種子懸濁液を製造した。この懸濁液をカバーグラスの間に挟んで、テフロンホルダーを用いて垂直に配置されているα-Al2O3ディスクを、乾燥されたガラス反応器に順次に配置した。その後、ガラス反応器をパラフィルムで密封して超音波処理(UC-10P、JEIO Tech、South Korea)を約20分間行った。超音波処理を行った後、α-Al2O3ディスクは回収し、新鮮なトルエンで少しの間洗浄した。生成されたMCM-22シード層は、200mL/minの気流下で、0.5℃/minの昇温速度で、450℃で、12時間か焼された。この際、製造されたMCM-22シード層は、Layer M(比較例1)という。
【0076】
2次及び3次成長を通じた異種フィルムの形成
前記MCM-22シード層は、さらに、2次水熱合成成長にさらされた。まず、最終ゾルのモル組成は、1-アダマンチルアミン(1-adamantylamine、97%、Sigma-Aldrich):エチレンジアミン(ethylenediamine、99%、Sigma-Aldrich):ヒュームドシリカ(CAB-O_Sil、M5):H2Oが9:150:100:4000の合成溶液を製造した。その次に、MCM-22シード層がコーティングされた面をテフロンホルダーを用いて、傾いた角度で下方に向けるようにして、テフロンライナーに位置させた。前記合成溶液をステンレス-スチールオートクレーブにあるテフロンライナーに注いだ。前記オートクレーブは、160℃に予熱されているオーブンに移し、反応を1日、2日、または3日間行った後、水道水で冷却して急冷させた。回収されたMCM-22シード層を脱イオン水で広範囲に洗浄し、か焼炉(furnace)で200mL/minの気流下で、0.5℃/minの昇温速度で、550℃で、12時間か焼した。この際、回収されたα-Al2O3ディスクは、MD_xd(比較例2-4)と示され、ここにおいて、MはMCM-22シード層、DはDDRゼオライト、xは水熱反応時間(1日、2日、または3日)を意味する。
【0077】
か焼されたMD層は、ZSM-58(DDR型ゼオライト)の合成を許容する合成前駆体を用いて相互成長された。か焼されたMD層をメチルトロピニウムアイオダイド(methyltropinium iodide、MTI)が含まれている合成前駆体溶液に入れて、水熱合成を進行することによって、連続的な面外方向性を有する疏水性のDDRゼオライト分離膜を3次元に成長させた。具体的に、シリカソースの役割をするLUDOX HS-40(40wt% suspension in H2O、Sigma-Aldrich)とメチルトロピニウムアイオダイド(methyltropinium iodide)をともに脱イオン水に添加した。このように準備した前駆体溶液を攪拌機を利用して1時間くらい混合した。さらに、NaOHを入れた後に、終夜攪拌機を利用してよく混合した。このようにして準備した合成前駆体溶液のモル組成は、100 SiO2:25MTI:30 NaOH:4000 H2Oである。このようにして準備した前駆体溶液にか焼されたMD層が形成されているアルファアルミナディスクを入れた後に、130℃に予熱されているオーブンで、時間を変えながら(5日または10日)水熱合成を行った後、反応が完了すると、水道水で急冷させた。収得した分離膜は、脱イオン水に漬した後、100℃のオーブンで、終夜乾燥させた。その結果、生成物である分離膜は、MDZ_xd(比較例5-6)と示し、ここにおいて、MはMCM-22、DはDDR、Z:ZSM-58を示し、xは3次成長のための時間水熱合成の反応時間(日)を示す。
【0078】
欠陥構造を制御するために、文献に報告された通り、急速熱処理工程(Rapid Thermal Processing、RTP)を使用して製造された分離膜(MDZ_5d、MDZ_10d)を処理した。具体的に、製造された分離膜を200mL/minのアルゴン気体の流れ下で、石英チューブに入れ、予熱されている炉(furnace、名目上約1000℃)を速やかに分離膜の方に移動させた。1分後、炉(furnace)は分離膜から遠くなった。RTP処理した分離膜とRTP処理していない分離膜ともに、200mL/minの気流下で、0.5℃/minの昇温速度で、550℃で、12時間さらにか焼した。RTP処理MDZ分離膜は、MDZ_xd_RC(実施例1-2)と示し、ここにおいて、RCのRは急速熱処理、Cは後続する既存のか焼を意味する。逆に、RTP処理をしていない分離膜は、MDZ_xd_C(比較例7-8)と示す。
【0079】
また、DDR/MWWの異種エピタキシャル(heteroepitaxial)成長に対する構造的互換性を評価するために、MCM-22シード層は、MFI型ゼオライトの2次水熱成長にさらされた。MFIゼオライト合成ゾルのモル組成は、40 SiO2(テトラエチルオルトシリケート、TEOS、Sigma-Aldrich):9 テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド(1.0M in H2O、Sigma-Aldrich):9500 脱イオン水:160 エタノールである。前記合成ゾルを、前記述べたように、MCM-22シード層が配置されているテフロンライニングされたオートクレーブに注いだ。オートクレーブを175℃に予熱されているオーブンに入れて、1日、3日及び5日間、反応を行った。回収されたMCM-22シード層を脱イオン水で洗浄して、200mL/minの気流下で、0.5℃/minの昇温速度で、550℃で、12時間さらにか焼した。便宜上、収得した層は、MM_xd(比較例9-11)と示し、ここにおいて、M及びMは、それぞれ、MCM-22及びMFIゼオライトを示し、xは水熱合成反応時間(それぞれ、1日、3日、または5日)を示す。
【0080】
【表1】
[実験例]
分離膜の特性
図4の(a)は、大きいab-basal平面を有するディスク型MCM-22粒子が、超音波処理支援方法を使用して、多孔性支持体に均一に蒸着され、連続的で稠密なシード層を構成したことを示す。特に、支持体の表面と平行するab平面を有するMCM-22粒子の数が著しく増加すると、まず、平面外部方向(この場合、c軸はメンブレン表面に垂直の方向に整列)に合成されることを示唆した。このc-面外方向(c-out of plane)は、
図4の(f)の当該X線回折法(XRD)測定によって確認された。
図4の(b)をみると、DDRゼオライトの合成を許容する前駆体とともに、シード層の後続成長によって、DDRの粒子が若干成長した。これによって、MCM-22粒子の丸い形態は、六角形の隅を有する鋭い形態に変わり、このことは、MWW型ゼオライトの単位細胞に沿って異種エピタキシャル成長(heteroepitaxial growth)したことを意味する。
【0081】
MWWゼオライト及びDDRゼオライトは、結晶構造が異なるものの、MWWゼオライトのab平面でDDRゼオライトの異種エピタキシャル成長は、見かけによると、c軸に沿って形成されたものと見える。
図5をみると、MWW及びDDR型ゼオライトの間の構造的互換性は、c軸に沿って形成されており、このことにより、異種エピタキシャル成長がなされたものと見える。
図6をみると、いい感じの異種エピタキシャル成長にもかかわらず、2次成長の程度が明確ではなく、異種エピタキシャル成長が難しかったことが分かり、2次成長時間が1日から3日に増加することによって、鋭い六角形の形態が単調に増加することを確認した。しかしながら、2次成長時間が増加したMD_xdの六角形平面から垂直に成長したプレート(plate)のさらなる成長により、2日間水熱合成したMD_2dがMD層を形成するための最適の時間として選択された。その理由は、形成されたMD_1dとMD_3dとの間の中間であるためである。また、
図7をみると、MD_2d層で明確な形態学的変化は観察されなかったが、延長された成長は、求めていない新しい結晶の成長を招いた。この新しい結晶は、DDR型ゼオライトと競争的に成長するものと知られており、SGT型ゼオライトである可能性が高い。
【0082】
図8をみると、MD_2d層の構造的特性を調べた結果、Le Bail構造分析法は、MWW及びDDR型ゼオライトの組合を基盤として、MD_2d層のXRDパターンを合わせるために用いられた。結果をみると、MD_2d層が主にDDR型ゼオライトで構成されることを確認した。しかしながら、Le Bail構造分析法は、先に述べたSGTゼオライト上で発生する追加のXRDピークを説明することができなかった。また、超音波処理を通じて、MD_2d層から粒子を分離して、透過電子顕微鏡(TEM)によって分析した結果、
図8の(b)に示すように、鋭い隅のある粒子が明確に確認されており、これはディスクのMCM-22蒸着物から成長したことを確認した。
図8の(c)は、
図8の(b)で観察された鋭い隅の領域での高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM)のイメージであり、データは高速フーリエ変換(fast Fourier transformation、FFT)によって行われ、その結果は、
図8の(d)に示した。FFTパターンとともにMWW型ゼオライトの[001]領域軸で発生し、DDR型ゼオライト(白い矢印)に属する可能性のある追加パターンが観察された。これは、
図8の(d)に挿入されているイメージのように、MWW及びDDRゼオライトの[001]領域軸に対するシミュレーションされたFFTパターンによって提供されている。
【0083】
図4の(b)及び
図6において、ディスクのようなMCM-22蒸着物の六角形成長は、MD_2d層の走査電子顕微鏡(SEM)のイメージから推論することができるが、これに相応するDDRゼオライト成長は、
図4の(f)に示されたXRDパターンで観察されており、
図8の(d)の透過電子顕微鏡(TEM)分析は、またMD_2d層の形成に対する異種エピタキシャル成長(DDR/MWW)を示す。
図4の(c)及び
図9の(a-b)をみると、ZSM-58ゼオライト(DDR型ゼオライト)の合成を許容する前駆体を用いたMD_2d層の後続水熱成長は、明確にMDZ_5d(Zは、3次成長に用いられたZSM-58ゼオライトを示す)で一部相互成長された(intergrown)層につながっており、
図4の(d-e)と
図9の(c-d)をみると、さらに、MDZ_10dで連続的な分離膜につながった。しかしながら、白い矢印で示すように、MDZ_5dで相互成長されなかった部分を容易に見つけることができる。また、ZSM-58ゼオライトの比率は、
図4の(f)及び
図10に示すように、XRDピーク強度の増加で裏付けられており、成長期間が5日から10日に増加することによって増加した。
【0084】
図9及び
図10をみると、高速熱処理過程(RTP)を経た分離膜(MDZ_10d_RC)の粒子と結晶相の形態は、ゆっくりか焼された比較例8(MDZ_10d_C)の形態と区別がつかなかった。興味深いところに、MDZ_10Dの(003)平面に該当するXRDピークの強度が大きく増加し、一部のc-面外方向が形成されていることを示した。
図4の(f)及び
図7は、このc-面外方向が既にMD層に存在しており、MCM-22シード層(layer_M)で2次成長時間が増加するにつれ、量が段々増加したことを明確に示している。
図6をみると、このようなc-面外方向は、MCM-22シード層を構成するディスク状のMCM-22粒子と鋭い隅のある六角形板への成長で発生すると予想することができる。
【0085】
図10において、MD_2d層の5日から10日までの追加水熱成長は、MD_2dでc-面外方向を維持しながら、c-面外方向の成長が好ましい。この方向性成長は、ZSM-58ゼオライトの合成を許容する前駆体の存在下で、六角板からのエピタキシャル成長を示す。特に、MDZ_10dに対する結晶学的選好方向(crystallographic preferred orientation、CPO)指数は、7.6±3.9で、高いものと推定されるので、面外方向でc軸の明確な整列を見せる。
【0086】
異種エピタキシャル成長を確認するために、シリカライト-1(silicalite-1、すなわち、シリカのみで構成されているMFI型ゼオライト)を誘導する合成前駆体を用いて、MCM-22シード層に2次成長を行った。MFIゼオライトは、テトラプロピルアンモニウム(TPA)陽イオンがある時、容易に形成されるものと知られているが、
図11をみると、生成された層は、連続的ではなく、蒸着されたMCM-22粒子の間の隙間を埋めることに困難があることが分かる。このことを通じて、異種エピタキシャル成長基盤の分離膜を形成するためには、2つの類型のゼオライトの間に構造的類似性または互換性が必要であることが分かる。
図5をみると、DDR型ゼオライトの六角リング構造(6-MR)は、MDZ_10dの異種分離膜でc-軸に垂直な平面に位置することを示す。よって、優先的に、c-面外指向異種分離膜(すなわち、MDZ_10d)は、面外方向に相当な数の6-MR気孔を有していた。これによって、前記分離膜は、CO
2からH
2を分離するために、6-MR孔の分子体能力を評価することに使用できる良いプラットフォームである。
【0087】
気体分離膜の分離性能
図4の(c)及び
図9の(a-b)に示す走査電子顕微鏡(SEM)によって観察された不連続性から予想した通り、
図12をみると、MDZ_5d_C及びMDZ_5d_RCともに分子体能力を示さなかった。たとえ高速熱処理過程(RTP)が役立っていたが、分離性能の若干の増加を達成したMDZ_5dの相互成長の程度は分子体能力を確保するには充分ではなかった。
図13の(a1, b1, c1)は、既存にか焼されていたMDZ_10d_Cが3組のガス(H
2/CO
2、CO
2/N
2、CO
2/CH
4)全部に対して劣悪な分離性能を示しており、これは明確な欠陥が存在するということを示す。
図9の(d)において、走査電子顕微鏡(SEM)分解能で明白な膜連続性にもかかわらず、MDZ_10d_Cは非常に劣悪な透過選択能力を示し、これは合成されたフィルムまたは層のか焼方法の重要性を示す。対照的に、高速熱処理過程(RTP)を経た分離膜(すなわち、MDZ_10d_RC)は、特に3つのケース全部でCO
2に対して相当に改善された透過選択性を示し、RTPが欠陥の程度の減少に寄与したことを示す。また、MDZ_10d_RCの6-MR気孔がH
2の透過に大きく寄与すると予想されるにもかかわらず、これに相応するH
2/CO
2分離係数(SF)は、30℃で、約0.37(1未満)であり、125℃で、約0.97であった。また、最大H
2/CO
2SFは、200℃で、相変わらず約1.7で、非常に低かった。これは6-MR気孔の口径(最大サイズ0.28nm)が最大H
2/CO
2-分離に適合していなかったことを意味する。MDZ_10d_RCの構造的特性は、同種のDDR分離膜の構造的特性と類似しているため、MDZ_10d_RCのH
2/CO
2、CO
2/N
2、CO
2/CH
4分離性能は、DDR分離膜の性能と類似していたが、MDZ_10d_RC全般にかけて、はるかに低いCO
2透過率を示した。より好ましい比較のために、
図13の中間列及び右側列をみると、MDZ_10d_RC及び同種のDDR分離膜のH
2/CO
2、CO
2/N
2、CO
2/CH
4分離性能をともに示した。明確にMDZ_10d_RCのCO
2透過率は、膜表面に垂直な方向である8-MRチャンネルがより多い同種のDDR分離膜と比較する際、類似な水準に減少した。したがって、DDRゼオライトの6-MR気孔は、H
2/CO
2分離に適合していないと推論することができるが、他の類型のゼオライト(sodaliteではない)の6-MR気孔を用いて、H
2/CO
2分離に対する分子フィルターリング能力を確認してみなければならない。特に、過酷な条件(高圧及び高温)でのH
2/CO
2分離は、水-ガス転換分離膜反応器を実現するにおいて重要なので、分離膜反応器の構成において壁の役割をすることができるゼオライト膜を通じた実験が必須である。上記の分離能力の結果は、8-MRまたは10-MRを有するゼオライトを後処理基盤の気孔のサイズ減少を通じて、優れたH
2/CO
2分離性能を達成することが妥当であることを示すと考えられる。実際の文献にも、気孔のサイズが縮んだMFIゼオライト分離膜が分離膜反応器に用いられており、分離膜反応器を通じて高いH
2/CO
2分離係数によって著しいH
2回収及びCO
2転換を得ることができた。また、
図14のa1-a2をみると、2成分混合物供給物に水蒸気を添加すると、DDRゼオライトの水分吸着の程度が確実な温度である100℃未満の温度で、H
2とCO
2の透過度が減少した。対照的に、H
2及びCO
2の透過率は、100℃以上の温度で、水蒸気の存在によって変わらなかった。興味深いところに、透過率減少の程度は、H
2及びCO
2ともに200℃まで類似していた。よって、
図14のa2の湿式条件で、当該H
2/CO
2分離係数は、
図14のa1の乾式条件でのH
2/CO
2分離係数と類似していた。また、
図14のb1-b2をみると、供給物の水蒸気は、特に、100℃未満で、CO
2透過率を減少させながら、CO
2/N
2分離係数(SF)を増加させた。対照的に、
図14のc1,c2をみると、減少された透過率は、CO
2/CH
4分離で、CH
4よりCO
2に対してより高く、これによって、当該CO
2/CH
4分離係数(SF)を湿っぽい条件で、約50℃まで減少させた。特に、水蒸気によって誘導されたCO
2/N
2及びCO
2/CH
4分離傾向は、報告された均一なDDR分離膜の傾向と非常に類似していた。主な相違点は、先に述べたMDZ_10d_RCでCO
2透過率が低くなったことであり、これは明確にc-面外方向性を有するDDRゼオライトの相当の部分で発生する。
図15を参照すると、湿式条件でより高いCO
2/N
2分離係数(SF)は、MDZ_10d_RC(
図4の(e)の挿入イメージを参照)でケイ酸質DDRゼオライトの疏水性が原因であり得る。対照的に、MDZ_10d_Cの接触角の測定では、水滴が速やかに消えて、MDZ_10d_Cに多くの欠陥があることを確認した。
【0088】
図16は、MDZ_10d_CとMDZ_10d_RCとの蛍光共焦点光学顕微鏡(Fluorescence confocal optical microscopy;FCOM)のイメージで、それぞれ
図13をみると、それぞれCO
2透過選択性は、MDZ_10d_Cは低く、MDZ_10d_RCは良いことが分かる。これによって、相応する欠陥の程度は、MDZ_10d_Cは高く、MDZ_10d_RCは低いと見ることができる。実際に測定される透過率に対する欠陥、特に亀裂の寄与は、欠陥のサイズ(幅)と数(密度)の結合された関数であるため、このような要素をともに考慮して、最終見かけ性能を理解しなければならない。また、様々な期間の間、分離膜を染色すると、欠陥構造に対する追加情報を提供する。MDZ_10d_Cの欠陥(主に亀裂)は、染色時間が増加するにつれ、染料分子によって段々漸進的に侵入した。特に、ゼオライト膜と多孔性支持体との間の界面に到達する一部の亀裂は、12時間の染料接触後にのみ視覚化された(
図16のa2において、黄色の矢印で示す)。逆に、
図16のc2, d2をみると、
図16のc2において黄色の点線で示すように、MDZ_10d_RCには密度が高いか、または亀裂数が多かったが、界面に完全に伝播されることはなかった。
図16のa3, b3をみると、MDZ_10d_C(24時間)の長期間の染色を通じて、境界面まで伝播されるより多くの亀裂を視覚化した。対照的に、12時間の染色後に検出されたMDZ_10d_RCの亀裂数と同一に維持され、より多くの染料分子が界面により近い領域に接近することができるが、分離膜の中間部分までのみ存在した(
図16のc3において黄色の点線で示す)。最後に、60時間の染色後、界面に伝播されたMDZ_10d_Cの追加亀裂が観察されており、MDZ_10d_RCに存在するより多くの数または密度の亀裂が染料分子によって完全に接近された。
【0089】
図17及び
図18をみると、時間を異なるようにした染色工程を通じて、MDZ_10d_Cに存在する亀裂の数とサイズが、MDZ_10d_RCに存在する亀裂の数とサイズより、それぞれ少なくて大きいことを確認した。蛍光共焦点光学顕微鏡イメージのイメージ処理過程は、欠陥数に対する追加確認を提供した。表2をみると、ピクセル基盤の領域比率(fraction)は、MDZ_10d_Cの場合は0.020、MDZ_10d_RCの場合は0.035を示した。前記イメージ処理過程が完了した後、
図19に示すように、亀裂特徴がよく再構成された。亀裂密度の差にもかかわらず、分離膜の厚さによる亀裂の歪みは、表2に示すように、MDZ_10d_C及びMDZ_10d_RCともに約1.6であり、これは分離膜を透過する分子が同じように若干傾いた経路を沿うべきであることを意味する。
図20をみると、MDZ_10d_Cの亀裂特性は同種のDDR分離膜の亀裂特性と似ていたが、MDZ_10d_RCは亀裂数がより多かった。同種のDDR分離膜が高いCO
2透過選択性を示したことを考慮すると、MDZ_10d_Cの亀裂のサイズは分子体能力を確保するには明確に大きすぎた。現在、急速熱処理過程(RTP)は、多結晶ゼオライト分離膜で粒子を凝縮して、欠陥のサイズを效果的に縮めると知られているが、
図16は、既存の遅いか焼前に急速熱処理過程(RTP)を行った際、より多くの数の小さな亀裂を生成しながら、構造誘導剤(SDA)の除去時に生成される応力(stress)を減らすことができるということを示す。要約すると、欠陥数がより多かったが、MDZ_10d_Cより優れた分離性能を示したMDZ_10d_RCは、欠陥のサイズを縮めることが、優れた分離性能を確保するためにより重要な要素であることが分かる。
【0090】