(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチドのトランスフェクションのためのペプチド・ポリヌクレオチド複合体
(51)【国際特許分類】
C07K 14/435 20060101AFI20230309BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230309BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230309BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230309BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230309BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230309BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230309BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230309BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230309BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20230309BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230309BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
A61K47/42
A61K47/64
A61K9/14
A61K48/00
A61K31/7105
A61P35/00
A61P19/02
A61P9/10
C12N15/87 Z
C12N15/113 Z
(21)【出願番号】P 2021092458
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2017568204の分割
【原出願日】2016-07-01
【審査請求日】2021-06-01
(32)【優先日】2015-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・エイ・ウィックリン
(72)【発明者】
【氏名】カーク・ホウ
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/107596(WO,A1)
【文献】特表2014-507392(JP,A)
【文献】Ying-Xia Tan et al.,Truncated peptides from melittin and its analog with high lytic activity at endosomal pH enhance branched polyethylenimine-mediated gene transfection.,J. Gene Med.,2012年04月,Vol.14, No.4,p.241-250,doi: 10.1002/jgm.2609
【文献】Kirk K. Hou et al.,Melittin derived peptides for nanoparticle based siRNA transfection.,Biomaterials,2013年04月,Vol.34, No.12,p.3110-3119,doi: 10.1016/j.biomaterials.2013.01.037
【文献】Kirk K. Hou et al.,Mechanisms of nanoparticle-mediated siRNA transfection by melittin-derived peptides.,ACS Nano,2013年10月22日,Vol.7, No.10,p.8605-8615,doi: 10.1021/nn403311c
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 47/00
C07K 14/00
C12N 15/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非細胞毒性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができる、配列番号1を含むペプチド。
【請求項2】
ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む医薬組成物であって、前記ペプチド・ポリヌクレオチド複合体が50未満対1であるペプチド対ポリヌクレオチドのモル比を有し、前記ペプチドが請求項1記載のペプチドである、医薬組成物。
【請求項3】
前記ペプチド対ポリヌクレオチドのモル比が、(a)5対1から45対1;(b)5対1から35対1、10対1から40対1、もしくは15対1から45対1;(c)5対1から30対1、10対1から35対1、15対1から40対1、もしくは20対1から45対1;または(d)5対1から25対1、10対1から30対1、15対1から35対1、20対1から40対1、もしくは25対1から45対1である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記複合体が、直径が50nmから200nmのナノ粒子である、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが、核酸配列の発現を調節または阻害できる非コードRNAである、請求項2~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、低分子干渉RNA(siRNA)またはマイクロRNA(miRNA)である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記複合体がアルブミンで被覆されている、請求項2~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記複合体のポリヌクレオチドが、STAT3、JNK2、p65、及びp100/52からなる群から選ばれるタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸配列
の発現を破壊する、請求項2~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
以下における使用のための、請求項2~8のいずれかに記載の組成物:
(a)
p65、p100および/またはp52をコードする核酸配列の発現を破壊することによる腫瘍の処置;
(b)
p65、p100および/またはp52をコードする核酸配列の発現を破壊することによる関節炎の処置;
(c)細胞におけるSTAT3の発現を破壊することによる血管新生の阻害;
(d)細胞におけるJNK2の発現を破壊することによる泡沫細胞形成の阻害;または
(e)細胞におけるp65の発現を破壊することによる関節炎の処置。
【請求項10】
細胞の細胞質へ、ポリヌクレオチドを送達するインビトロでの方法であって、細胞をペプチド・ポリヌクレオチド複合体と接触させることを含み、前記ペプチド・ポリヌクレオチド複合体が50未満対1であるペプチド対ポリヌクレオチドのモル比を有し、前記ペプチドが請求項1記載のペプチドである、方法。
【請求項11】
(a)前記ポリヌクレオチドが、
p65、p100および/またはp52をコードする核酸配列の発現を破壊する;
(b)前記ポリヌクレオチドが、細胞におけるSTAT3の発現を破壊する;
(c)前記ポリヌクレオチドが、細胞におけるJNK2の発現を破壊する;または
(d)前記ポリヌクレオチドが、細胞におけるp65の発現を破壊する、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年7月2日に出願された、米国仮特許出願第62/187,979号の利益を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
米国政府の権利
本発明は、国立衛生研究所(NIH)によって授与された、助成金番号U01CA141541及びR01HL073646-08の下で、米国政府の援助を受け成し遂げられた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、医薬組成物として配合され得るペプチド・ポリヌクレオチド複合体、及びその使用方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
低分子干渉RNA(siRNA)を用いるRNA干渉(RNAi)は、がん及び炎症性疾患を含む、無数の疾患に対して非常に有効な治療法として提案されている。しかしながら、20年近い精力的な研究にもかかわらず、siRNA治療剤は、血清中における遊離siRNAの、乏しい細胞取り込み及び不安定性に起因して、臨床応用への橋渡しにおいて、限られた成功しか示していない。カチオン性脂質及びポリマーは、siRNAのトランスフェクションにうまく取り入れられてきたが、しかし容認できない細胞毒性を示し、及び活性酸素(ROS)ならびにCa+2漏出の発生を引き起こす可能性がある。さらに、細胞膜ペプチド(CPP)に基づく、siRNAトランスフェクション剤は、細胞毒性低下との関連が示されるものの、リソソーム捕捉のために、従来の脂質トランスフェクション剤での高効率化を達成していない。
【0005】
したがって、当該技術分野において、疾患を治療するための効率的な細胞の取り込み、及び細胞質への送達を可能とする、新しいクラスの治療用siRNA組成物及びsiRNAトランスフェクション剤が求められる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む、医薬組成物を包含する。このペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、50未満対1であるペプチド対ポリヌクレオチドの比率を含む。このペプチドは、(a)非溶解性であり、及び細胞のエンドソームからの、ポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができ、ならびに(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。このポリヌクレオチドは、RNA配列またはDNA配列である。一態様において、当該ペプチドは、少なくとも1つのカチオン領域、及びそのペプチドの少なくとも1つのカチオン領域に隣接する、少なくとも1つのヒスチジン残基を含む。他の態様において、当該ポリヌクレオチドは、核酸配列の発現を調節または阻害することができる、非コードRNAである。
【0007】
本発明はまた、細胞の細胞質に、ポリヌクレオチドを送達する方法を包含する。この方法は、細胞をペプチド・ポリヌクレオチド複合体と接触させることを含み、そのペプチド・ポリヌクレオチド複合体が、50未満対1であるペプチド対ポリヌクレオチドの比率を含み、ここでそのペプチドが、(a)非溶解性であり、及び細胞のエンドソームからの、ポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができ、ならびに(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする。一態様において、当該ペプチドは、少なくとも1つのカチオン領域、及びそのペプチドの少なくとも1つのカチオン領域に隣接する、少なくとも1つのヒスチジン残基を含む。他の態様において、当該ポリヌクレオチドは、核酸配列の発現を調節または阻害することができる、非コードRNAである。
【0008】
本発明はまた、治療を必要とする対象において、細胞の細胞質にポリヌクレオチドを送達する方法を包含する。当該方法は、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む、医薬組成物の治療に有効な量を、その対象に投与することを含み、そのペプチド・ポリヌクレオチド複合体が、50未満対1であるペプチド対ポリヌクレオチドの比率を含み、ここでそのペプチドが、(a)非溶解性であり、及び細胞のエンドソームからの、ポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができ、ならびに(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする。一態様において、当該ペプチドは、少なくとも1つのカチオン領域、及びそのペプチドの少なくとも1つのカチオン領域に隣接するか、またはその領域内に位置する、少なくとも1つのヒスチジン残基を含む。他の態様において、当該ポリヌクレオチドは、核酸配列の発現を調節または阻害することができる、非コードRNAである。
【0009】
本発明はまた、配列番号1に少なくとも80%の同一性を有し、及び非溶解性であり、ならびに細胞のエンドソームからの、ポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができるペプチドをコードする、アミノ酸配列を包含する。
【0010】
本発明はまた、配列番号1に少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、ペプチドを包含し、ここでそのペプチドが、非溶解性であり、及び細胞のエンドソームからの、ポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができることを特徴とする。
【0011】
本発明のその他の態様及び反復を、以下により詳細に記述する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、当該技術分野において公知の、ポリヌクレオチドのトランスフェクションのその他方法と比較して、細胞の細胞質への、細胞毒性の弱い、当該ポリヌクレオチドの効率的なトランスフェクションが可能な、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を提供する。有利なことに、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、血清の存在下において安定であり、及びしたがって、イン・ビボでの細胞の細胞質にポリヌクレオチドを効率的に送達することが可能である。したがって、本発明は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む医薬組成物、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体の調製法、当該ポリヌクレオチドを細胞の細胞質にトランスフェクションするための、本発明のペプチド・ポリヌクレオチドの使用法、及び本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を調製するためのキットを包含する。
【0013】
I.ペプチド・ポリヌクレオチド複合体
本発明の1つの態様は、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を包含する。本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、そのペプチドに会合したポリヌクレオチドを、細胞の細胞質に効率的にトランスフェクションすることができる。当該ペプチド、当該ポリヌクレオチド、当該ペプチド・ポリヌクレオチド複合体、及び当該細胞を、以下に記述する。
【0014】
(a)ペプチド
一態様において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、ペプチドを含む。一般に、及び実施例において説明されるように、本発明のペプチドは、メリチンに由来し、及び膜二重層と相互作用する傾向を維持しつつ、その細胞毒性を弱めるように改質される。さらに、当該ペプチドは、実質的に非溶解性であり、及び細胞に対して非細胞毒性である。好ましくは、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドと、実質的に類似する機能を有し、及び(2)配列番号1のアミノ酸配列との類似性または同一性を持つアミノ酸配列を有する、ペプチドを含む。
【0015】
本明細書において使用される語句「配列番号1を含むペプチドと、実質的に類似する機能」とは、エンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができる、実質的に非溶解性及び/または非細胞毒性のペプチドを指す。いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、非溶解性である。用語「非溶解性」とは、典型的に、細胞の脂質二重膜が、そのペプチドと接触したときに損なわれないことを意味する。この脂質二重膜の完全性は、細胞または細胞に入る細胞外成分の、不適切な出入りによって、評価され得る。例えば、細胞タンパク質及び/または細胞小器官は、損なわれた脂質二重膜を持つ細胞から、漏出することがある。あるいは、細胞外成分(すなわち、通常、ギャップ結合を介して進入しないもの)は、例えば、損なわれた脂質二重膜を持つ細胞に、進入することができる。しかしながら、当該ペプチドが、細胞の脂質二重膜を貫通して、及び細胞の内部に入り込むことが可能であっても、その際に脂質二重膜の完全性は、影響を受けないことに留意すべきである。その他の実施形態において、本発明のペプチドは、実質的に非細胞毒性である。用語「非細胞毒性」とは、細胞が典型的に、ペプチドとの接触時に、死滅させられないことを示す。典型的に、本発明のペプチドは、細胞の生存率を、わずか約10%、より好ましくはわずか約7%、より好ましくはわずか約5%、またはより好ましくはわずか約3%、低下させるだけである。特定の実施形態において、本発明のペプチドは、非溶解性であり、及び非細胞毒性である。
【0016】
後述のセクションI(b)及び(c)に記述のように、本発明のペプチドは、ポリヌクレオチドと会合することが可能である。したがって、1つの態様において、本発明のペプチドは、ポリヌクレオチドと相互作用する、少なくとも1つのカチオン領域を含む。典型的に、カチオン領域は、2つ以上連続した、塩基性アミノ酸を有する。重要なことは、本発明のペプチドはまた、エンドソーム溶解能力を持つことであり、それがエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を与えること、及び細胞の細胞質に入り込むことを可能にする。用語「エンドソーム溶解性」とは、エンドソームの溶解を、開始または促進する物質を記述するために使用することができる。実施例で記述するように、本発明のペプチドの、ヒスチジン残基のプロトン化が、当該ペプチド・ポリヌクレオチド複合体の分解を促進し、これにより、当該ペプチドが放出され、エンドソーム膜を透過してポリヌクレオチドを放出する。したがって、他の態様において、本発明のペプチドは、そのペプチドの少なくとも1つのカチオン領域に隣接するかまたはその領域内に位置する、1つ以上のヒスチジン残基を含む。非限定的な例示を用いて、仮に本発明のペプチドが、3つのカチオン領域を含む場合、当該ペプチドは、そのペプチドの第1カチオン領域に隣接するかまたはその領域内の、少なくとも1つのヒスチジン、そのペプチドの第2カチオン領域に隣接するかまたはその領域内の、少なくとも1つのヒスチジン、そのペプチドの第3カチオン領域に隣接するかまたはその領域内の、少なくとも1つのヒスチジン、そのペプチドの第1及び第2のカチオン領域の各々に隣接するかまたはその領域内の、少なくとも1つのヒスチジン、そのペプチドの第1及び第3のカチオン領域の各々に隣接するかまたはその領域内の、少なくとも1つのヒスチジン、そのペプチドの第2及び第3のカチオン領域の各々に隣接するかまたはその領域内の、少なくとも1つのヒスチジン、またはそのペプチドの第1、第2及び第3のカチオン領域の各々に隣接するかまたはその領域内の、少なくとも1つのヒスチジンを有していてよい。カチオン領域に隣接するヒスチジン残基は、そのカチオン領域の前後に位置してよい。いくつかの実施形態において、カチオン領域に隣接するヒスチジン残基は、その領域の直ぐ隣にある。その他の実施形態において、カチオン領域に隣接するヒスチジン残基は、その領域の直ぐ隣にはない。例えば、当該ヒスチジン残基は、そのカチオン領域から約2、3、4または5位以内であってよい。その他の実施形態において、ヒスチジン残基は、カチオン領域内にある。本発明のペプチドのエンドソーム溶解能力により、エンドソームからトランスフェクションされたポリヌクレオチドを放出し、細胞の細胞質へ送達するための、例えばクロロキン、膜融合ペプチド、不活化アデノウイルス及びポリエチレンイミンなどの、追加のエンドソーム溶解物質の必要性が取り除かれる。このような既知のエンドソーム溶解物質は、細胞に悪影響を及ぼし、及びトランスフェクション時に毒性を高めることがある。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、配列番号1を含む。その他の実施形態において、本発明のペプチドは、配列番号1から構成される。特定の実施形態において、本発明のペプチドは、配列番号1の変異体であり、ここでその変異体が、配列番号1の少なくとも10個の連続したアミノ酸、及び配列番号1を含むペプチドと、実質的に類似する機能を含むことを特徴とする。例えば、本発明のペプチドは、配列番号1の、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の連続したアミノ酸を含んでよい。いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、表Aから選択される。
表A
【表1】
【0018】
好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、配列番号1に対して、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここでそのペプチドが、非溶解性であり、及び細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができる。当該ペプチドは、配列番号1に対して、少なくとも80%の同一性を有し、配列番号1のアミノ酸配列に対して、約80%、好ましくは約85%、より好ましくは約90%、さらに好ましくは約95%の同一性を有し得る、アミノ酸配列を含む。配列番号1に対して、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明のペプチドは、保存的置換された1つ以上のアミノ酸を含んでいてよい。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上のアミノ酸が、その得られるペプチドが、配列番号1を含むペプチドと、実質的に類似する機能を有する限りは、保存的置換されてよい。
【0019】
他の態様において、本発明は、配列番号1に対して、少なくとも80%の同一性を有し、ならびに非溶解性であり、及び細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができるペプチドをコードする、アミノ酸配列を提供する。いくつかの実施形態において、このアミノ酸配列は、配列番号1に対して、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。その他の実施形態において、当該アミノ酸配列は、配列番号1である。
【0020】
本発明のペプチドは、当該技術分野で公知の種々の技術を用いて、作製することができる。当該ペプチドは、標準技術を用いて単離されてよく、標準技術を用いて合成されてよく、または受託機関から購入または入手されてもよい。
【0021】
本発明のペプチドが、システイン残基の形態で、C末端チオールを含む場合、本発明のペプチドは、他の遊離チオール基、例えば、同一のまたは異なるペプチドからの遊離チオール基との、ジスルフィド結合を形成することができる。当業者は、ダイマー形成が、プラスミドDNAの送達を改善するかどうかを、容易に決定することができる。理論に束縛されることを望まないが、ダイマー形成は、DNA濃縮の改善によって、本発明の特定のペプチドのためのプラスミドDNAの送達を改善する可能性がある。ダイマー化は、24~72時間の、20%DMSOにおける遊離ペプチドのインキュベーションによって、または当該技術分野で公知のその他の方法によって、誘発され得る。非限定的な例示として、遊離チオールは、エルマン試薬を用いた比色アッセイにより、定量化することができる。
【0022】
本発明のペプチドは、標識化されてよい。適切な標識の非限定的な例示には、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、比色標識、及び共鳴標識を含む。ペプチドを標識化する方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0023】
ペプチドをカーゴ複合体に結合させることができる。本明細書において使用される、用語「カーゴ複合体」とは、本発明のポリヌクレオチド以外のペプチドによって、またはそのペプチドと結合して運ばれ得る、任意の分子または物質を指し得る。他の方法として、本発明のペプチドは、本発明のポリヌクレオチドに添加して、カーゴ複合体に結合されてよい。例えば、カーゴ複合体は、画像用カーゴ体、治療用カーゴ体、細胞毒性用カーゴ体、または標的用カーゴ体であってよい。
【0024】
画像用カーゴ分子及び物質の非限定的な例示には、検出可能な物理的または化学的性質を有する分子、物質、もしくは材料が含まれていてよい。そのような画像用カーゴ体は、蛍光イメージング、磁気共鳴画像法、陽電子放射断層撮影、ラマンイメージング、光コヒーレンス断層撮影、光音響イメージング、フーリエ変換赤外イメージング、または免疫アッセイの分野において、十分に開発されており、及び一般的に、このような方法において、最も有用な任意の標識が、本発明に適用されていてよい。利用可能な、様々な標識化またはシグナル生成システムの考察ついては、米国特許第4,391,904号が参照され、その内容全体が、参照として本明細書に組み入れられる。
【0025】
治療用カーゴ体の非限定的な例示には、薬理剤などの生物学的活性を有する任意の物質が含まれてよい。このような治療用カーゴ体には、鎮痛薬、解熱薬、抗ぜんそく薬、抗生物質、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗真菌薬、降圧剤、非ステロイド及びステロイドを含む抗炎症薬、抗悪性腫瘍剤、抗不安薬、免疫阻害剤、片頭痛薬、鎮静薬、催眠薬、抗狭心症薬、抗精神病薬、抗躁薬、不整脈薬、関節炎薬、抗痛風薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、抗線維素溶解薬、血行動態薬、抗血小板薬、抗けいれん薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、抗再狭窄薬、かゆみ止め、カルシウム調節に有用な薬剤、抗細菌薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗感染薬、気管支拡張薬、ステロイド化合物及びホルモン、ならびにそれらの組合せを含んでよい。あるいは、カーゴ複合体は、分子複合体または薬理学的に許容される塩の成分の形態であってよい。
【0026】
細胞毒性カーゴ体とは、細胞に(例えば、死滅させるか、または損傷を与えて)有害である、分子または物質を指す。例示としては、タキソール(パクリタキセル、ドセタキセル)及びビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン)などの、抗微小管薬を含んでよい。例えば、例示には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシ・アントラセンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、ならびそれらの類縁体、または同族体を含んでよい。
【0027】
標的化カーゴ体は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を細胞に誘導する、任意の分子または物質であってよい。標的化カーゴ体は、真核生物の標的細胞、または原核生物の標的細胞に誘導されてよい。標的化する物質の非限定的な例示には、抗体もしくは抗体断片、受容体リガンド、小分子、ペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、核酸、siRNA、shRNA、アンチセンスRNA、デンドリマー、マイクロバブル、またはアプタマーを含んでよい。
【0028】
カーゴ複合体が、本発明のペプチドに結合する手段は、実施形態に応じて変化し得るものであり、実際に変化する。カーゴ複合体は、共有または非共有結合を含む、当該技術分野で公知の任意の手段によって、本発明のペプチドに結合されてよい。
【0029】
(b)ポリヌクレオチド
他の態様において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、ポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、またはそれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、二本鎖である。その他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、一本鎖である。そのうえその他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、一本鎖と二本鎖の組み合わせである。
【0030】
本発明のポリヌクレオチドは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ酸(DNA)、またはRNAとDNAの組み合わせを含んでよい。さらに、ポリヌクレオチドは、改質されたDNA塩基または改質されたRNA塩基などの、改質核酸塩基を含んでいてよい。改質は、特に制約されるわけではないが、糖の2’位、ピリミジンのC-5位、及びプリンの8位で発生してよい。適切な改質DNA塩基またはRNA塩基の例示には、2’-フルオロヌクレオチド、2’-アミノヌクレオチド、5’-アミノアリル-2’-フルオロヌクレオチド、及びホスホロチオエートヌクレオチド(モノチオリン酸塩及びジチオリン酸塩)を含む。あるいは、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド模倣体であってよい。ヌクレオチド模倣体の例示には、ロック核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、及びホスホロジアミデート・モルホリノオリゴマー(PMO)を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、RNAとDNAとの組み合わせである。その他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAを含む。ポリヌクレオチドがDNAである場合、そのポリヌクレオチドは、発現カセットを含んでいてよい。本明細書において使用する、「発現カセット」とは、プロモーターに操作可能に連結された、タンパク質またはペプチドをコードする、核酸配列を含む核酸構築体である。特定の実施形態において、核酸構築体は、さらに追加の調節配列を含む。追加の調節配列の非限定的な例示には、転写終結配列を含む。その他の追加の調節配列は、当該技術分野で公知である。本明細書において使用される用語の、プロモーターとは、細胞内で標的核酸配列の発現を、付与または活性化することができる、合成または天然由来の分子を意味し得る。プロモーターは、通常、本発明のDNAポリヌクレオチドに関連するプロモーターであってよいし、または異種プロモーターであってよい。異種のプロモーターは、ウイルス、細菌、菌類、植物、昆虫、及び動物などの原体から、誘導されてよい。プロモーターは、発現が発生する細胞、組織または臓器に関して、恒常的にまたは差次的にDNA配列の発現を調節することができる。または、プロモーターは、発育段階に関連し、または生理的ストレス、病原体、金属イオン、もしくは誘発物質または活性化因子(すなわち、誘発性プロモーターなど)などの、外的刺激に反応して、発現を調節することができる。プロモーターの非限定的な代表例には、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、HSP70基本プロモーター、lacオペレータプロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーター、RSV-LTRプロモーター、CMVIEプロモーター、テトラサイクリン応答因子(TRE)の核酸配列含むプロモーター、及びそのCMVIEプロモーターを含んでよい。これらの実施形態のいくつかの選択肢において、本発明のDNAポリヌクレオチドは、ベクターに取り込まれる。当業者は、標準的な組換え技術によって、ベクターを構築することができるであろう(例えば、Sambrook et al.,2001及びAusubel et al.,1996を参照されたし。この両方を、参照として本明細書に組み入れる)。ベクターには、非限定的に、プラスミド、コスミド、転移因子、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、及び植物ウイルス)、及び人工染色体(例えば、YAC)、例えばレトロウイルスベクター(例えば、モロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)、MSCV、SFFV、MPSV、SNVなどに由来したもの)、レンチウイルスベクター(例えば、HIV-1、HIV-2、SIV、BIV、FIVなど)、複製可能型、複製欠損型、及びそれらのガットレス形態を含むアデノウイルスベクター(Ad)、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、シミアンウイルス40(SV-40)ベクター、ウシ乳頭腫ウイルスベクター、エプスタイン・バーウイルス、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ハーヴェイマウス肉腫ウイルスベクター、マウス乳腺腫瘍ウイルスベクター、及びラウス肉腫ウイルスベクターを含む。
【0032】
さらにその他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、RNAを含む。非限定的なRNA配列の例示には、タンパク質をコードすることが可能な、mRNA、及びtRNA、rRNA、snoRNA、マイクロRNA、siRNA、piRNA、及び長鎖非コードRNA(lncRNA)などの、非コードRNAを含んでよい。例えば、核酸は、mRNAを含んでいてよい。好ましい実施形態において、核酸がmRNAを含む場合、そのmRNA分子は、5’のキャップされた、ポリアデニル化された、またはキャップ及びポリアデニル化されたものであってよい。あるいは、mRNA分子は、そのmRNAの内部オープンリーディングフレームを翻訳するための、内部リボソーム進入部位(IRES)を含んでいてよい。
【0033】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、細胞内で発現する核酸配列の発現を、調節または阻害することができる、非コードRNAを含む。細胞内で発現する核酸配列の発現を調節または阻害することができる、非限定的な、非コードRNAの例示には、マイクロRNA(または、miRNAとして知られる)、siRNA、piRNA及びlncRNAを含む。一般に、核酸配列の発現を調節または阻害することが可能な、非コードRNAでの細胞のトランスフェクションは、その核酸配列の切断につながる可能性があり、核酸配列のタンパク質への翻訳を、増強、防止、または破壊することが可能であり、または核酸配列の転写を調節することが可能である。
【0034】
好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、細胞内で発現する核酸配列の発現を破壊することができる、非コードRNAを含む。本明細書において使用される、「核酸配列の発現を破壊すること」とは、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体で処理されなかった細胞における、核酸配列の発現レベルと比較した場合に、核酸配列のまたはその核酸配列から翻訳されたタンパク質の、発現レベルにおける、任意の低下を記述するために使用されてよい。実施形態のいくつかの選択肢において、ポリヌクレオチドは、短い干渉RNA(siRNA)を含む。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することができる、非コードRNAを含む。他の好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、JNK2をコードする核酸配列の発現を破壊することができる、非コードRNAを含む。特定の好ましい実施形態において、この非コードRNAは、siRNAである。その他の好ましい実施形態において、当該非コードRNAは、miRNAである。さらにその他の好ましい実施形態において、当該非コードRNAは、shRNAである。
【0036】
そのうえ他の好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、NFκBシグナル伝達経路に通常関連する核酸配列の発現を破壊することができる、非コードRNAを含む。NFκB経路の非限定的な例示には、古典的NFκB経路、及び非古典的NFκB経路を含んでよい。特定の好ましい実施形態において、この非コードRNAは、siRNAである。その他の好ましい実施形態において、当該非コードRNAは、miRNAである。さらにその他の好ましい実施形態において、当該非コードRNAは、shRNAである。
【0037】
この古典的NFκBシグナル伝達経路に通常関連する核酸配列の、非限定的な例示には、その古典的NFκBシグナル伝達経路の、転写因子p65サブユニットをコードする核酸、及びその古典的NFκBシグナル伝達経路の、転写因子p105/p50サブユニットをコードする核酸を含んでよい。実施形態の1つの選択肢において、本発明のポリヌクレオチドは、当該古典的NFκBシグナル伝達経路の、p105/p50サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊することができる、非コードRNAを含む。実施形態の他の選択肢において、本発明のポリヌクレオチドは、当該古典的NFκBシグナル伝達経路の、p65サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊することができる、非コードRNAを含む。例示的な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号15の核酸配列(GGAGUACCCUGAAGCUAUA)を有する、siRNAを含む。
【0038】
当該古典的NFκBシグナル伝達経路に通常関連する核酸配列の、非限定的な例示には、その非古典的NFκBシグナル伝達経路のp100/p52サブユニットをコードする核酸、及びその非古典的NFκBシグナル伝達経路のRelBサブユニットをコードする核酸を含んでよい。実施形態の1つの選択肢において、本発明のポリヌクレオチドは、当該非古典的NFκBシグナル伝達経路の、RelBサブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊することができる、非コードRNAを含む。実施形態の他の選択肢において、本発明のポリヌクレオチドは、当該非古典的NFκBシグナル伝達経路の、p100/p52サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊することができる、非コードRNAを含む。例示的な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号16の核酸配列(GAAAGAAGACAGAGCCUAU)を有する、siRNAを含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、NFκBシグナル伝達経路に通常関連する核酸配列の発現を破壊することができる、2つ以上の非コードRNAを含む。好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、古典的NFκBシグナル伝達経路に通常関連する核酸配列の発現を破壊することができる非コードRNA、及び非古典的NFκBシグナル伝達経路に通常関連する核酸配列の発現を破壊することができる非コードRNAを含む。例示的な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、古典的NFκBシグナル伝達経路の、p65サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊することができる非コードRNA、及び古典的NFκBシグナル伝達経路の、p100/p52サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊することができる非コードRNAを含む。
【0040】
一般に、siRNAは、約15から約29ヌクレオチドの長さ範囲の、二本鎖RNA分子を含む。いくつかの実施形態において、このsiRNAは、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29ヌクレオチドの長さであってよい。その他の実施形態において、当該siRNAは、約16から約18、約17から約19、約21から約23、約24から約27、または約27から約29ヌクレオチドの長さであってよい。好ましい実施形態において、当該siRNAは、約21ヌクレオチドの長さであってよい。siRNAは、任意でさらに1つまたは2つの一本鎖のオーバーハング、例えば、1つの一本鎖のまたは2つの一本鎖の5’末端のオーバーハング、1つの一本鎖のまたは2つの一本鎖の3’末端のオーバーハング、もしくはそれらの組み合わせを含んでよい。このsiRNAは、共にハイブリダイズをする、2つのRNA分子から形成されてよく、あるいは、短いヘアピンRNA(shRNA)から生成されてもよい(以下を参照)。いくつかの実施形態において、当該siRNAの2本の鎖は、完全に相補的であってよく、そのため、2つの配列間に形成された二本鎖に、ミスマッチやバルジが存在しない。その他の実施形態において、当該siRNAの2本の鎖は、実質的に相補的であってよく、そのため、2つの配列間に形成される二本鎖に、1つ以上のミスマッチ及び/またはバルジが存在してもよい。特定の実施形態において、当該siRNAの1つまたは両方の5’末端が、リン酸基を有していてよく、一方でその他の実施形態において、その1つまたは両方の5’末端が、リン酸基を欠いている。その他の実施形態において、当該siRNAの1つまたは両方の3’末端が、ヒドロキシ基を有していてよく、一方でその他の実施形態において、その1つまたは両方の3’末端が、ヒドロキシ基を欠いている。
【0041】
当該siRNAの1つの鎖は、「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」と呼ばれ、標的転写産物とハイブリダイズをする部分を含む。標的転写産物とは、破壊されるべき所望の発現に対応して、細胞で発現される核酸配列を指す。本発明の治療用組成物という観点から、標的転写産物の発現を破壊することは、有益な効果をもたらす可能性がある。好ましい実施形態において、当該siRNAのアンチセンス鎖は、その標的転写産物の領域と完全に相補的であってよく、すなわち、それは、約15から約29の間のヌクレオチドの長さ、好ましくは少なくとも16ヌクレオチドの長さ、及びより好ましくは、約18~20ヌクレオチドの長さの標的領域上に、単一のミスマッチまたはバルジのない、標的転写産物とハイブリダイズをする。その他の実施形態において、このアンチセンス鎖は、その標的領域と実質的に相補的であってよく、すなわち、そのアンチセンス鎖及び標的転写産物によって形成される二本鎖に、1つ以上のミスマッチ及び/またはバルジが存在していてよい。典型的に、siRNAは、その標的転写産物のエクソンの配列を標的とする。当業者は、標的転写産物に対応したsiRNAを設計する、プログラム、アルゴリズム、及び/または商用サービスに精通している。代表的な例示は、Rosetta siRNA設計アルゴリズム(Rosetta Inpharmatics、North Seattle、WA)、MISSION(登録商標)siRNA(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)、及びsiGENOME siRNA(Thermo Scientific)である。当該siRNAは、当業者には公知の方法を用いて、イン・ビトロで酵素合成することが可能である。あるいは、当該siRNAは、当該技術分野で公知である、オリゴヌクレオチド合成技術を用いて、化学的に合成することが可能である。
【0042】
その他の実施形態において、当該非コードRNAは、短いヘアピンRNA(shRNA)であってよい。一般に、shRNAは、(前述のように)RNA干渉に介在するのに十分な長さの、二本鎖構造を形成するために、ハイブリダイズしているかまたはハイブリダイズが可能である、少なくとも2つの相補部分、及び二本鎖を形成するそのshRNAの領域と結合してループを形成する、少なくとも1つの一本鎖部分を含む、RNA分子である。この構造体はまた、その二本鎖部分であるステムを持つ、ステムループ構造と呼ばれる。いくつかの実施形態において、この構造体の二本鎖部分は、完全に相補的であってよく、そのためそのshRNAの二本鎖領域に、ミスマッチやバルジが存在しない。その他の実施形態において、この構造体の二本鎖部分は、実質的に相補的であってよく、そのためそのshRNAの二本鎖部分に、1つ以上のミスマッチやバルジが存在してよい。当該構造体のループは、約1から約20ヌクレオチドの長さ、好ましくは約4から約10ヌクレオチドの長さ、及びより好ましくは約6から約9ヌクレオチドの長さで形成されてよい。当該ループは、その標的転写産物に相補的である領域の、5’または3’末端のいずれかに位置してよい。
【0043】
当該shRNAはさらに、その5’または3’末端に、オーバーハングを含んでいてよい。その任意のオーバーハングは、約1から約20ヌクレオチドの長さ、及びより好ましくは約2から約15ヌクレオチドの長さで形成されてよい。いくつかの実施形態において、このオーバーハングには、1つ以上のU残基、例えば、約1から約5のU残基を含んでいてよい。いくつかの実施形態において、当該shRNAの5’末端は、リン酸基を有していてよく、一方、その他の実施形態においては、有していなくてもよい。その他の実施形態において、当該shRNAの3’末端は、ヒドロキシ基を有していてよく、一方、その他の実施形態においては、有していなくてもよい。一般に、shRNAは、保存された細胞RNAiの機構によって、siRNAにプロセッシングされる。したがって、shRNAは、siRNAの前駆体であり、及び同様にそのshRNAの一部分(すなわち、そのshRNAのアンチセンス部分)と相補的である、標的転写産物の発現を阻害することができる。当業者は、shRNAの設計及び合成に対応した、利用可能な資源(詳細は上述)に精通している。代表的な例示は、MISSION(登録商標)のshRNA(Sigma-Aldrich)である。
【0044】
さらにその他の実施形態において、当該非コードRNAは、RNA干渉(RNAi)RNAi発現ベクターであってよい。典型的に、RNAi発現ベクターは、miRNA、siRNAまたはshRNAなどの、RNAi作用因子の細胞内(イン・ビボ)合成に用いることができる。1つの実施態様において、2つの別個の、相補的なsiRNA鎖を、2つのプロモーターを含む、単一のベクターを用いて転写することができ、その各々が、1つのsiRNA鎖の転写を誘導する(すなわち、各プロモーターは、そのsiRNAの鋳型に操作可能に連結され、そのため転写が発生し得る)。この2つのプロモーターは、同じ配向性にあってよく、その場合、それぞれが相補的なsiRNA鎖の1つに対応した鋳型に操作可能に連結される。あるいは、その2つのプロモーターは、反対の配向性にあってよく、単一の鋳型に隣接し、そのため、そのプロモーターの転写が、2つの相補的なsiRNA鎖の合成をもたらす。他の実施形態において、当該RNAi発現ベクターは、2つの相補領域を含む、単一のRNA分子の転写を活発にさせる、プロモーターを含んでよく、そのため転写産物が、shRNAを形成する。
【0045】
一般的に言えば、1つ以上のsiRNAまたはshRNAの転写ユニットの、イン・ビボでの発現を誘導するために利用されるプロモーターは、RNAポリメラーゼIII(PolIII)のプロモーターであってよい。U6またはH1プロモーターなどの、特定のPolIIIプロモーターは、転写された領域内で、cis作用する調節要素を必要とせず、及びしたがって、特定の実施形態において、好ましい。その他の実施形態において、PolIIのプロモーターは、1つ以上のsiRNAまたはshRNA転写単位の発現を活発にさせるために使用されてよい。いくつかの実施形態において、組織特異的、細胞特異的、または誘発性のPolIIプロモーターが使用されてよい。
【0046】
siRNAまたはshRNAの合成のための、鋳型を提供する構築体は、標準的な組換えDNA法を用いて作製され、及び真核細胞の発現に適した、多種多様な異なるベクターのいずれかに挿入される。助言は、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,John Wiley & Sons,New York,2003)、またはMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Sambrook & Russell,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,3rd edition,2001)に見出せる。当業者はまた、ベクターが、追加の調節配列(例えば、終結配列、翻訳調節配列など)、ならびに選択可能なマーカー配列を含んでよいことは、理解されよう。DNAプラスミドは、pBR322、PUCなどに基づくものなどを含んで、当該技術分野では公知である。多くの発現ベクターは、すでに適切な1つのプロモーターまたはプロモーター類を含んでいるので、プロモーター(複数可)に関した適切な位置で、目的とするRNAi作用因子をコードする核酸配列を、挿入することだけが必要である。ウイルスベクターはまた、RNAi作用因子の細胞内発現を提供するために、使用されてよい。適切なウイルスベクターには、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターなどを含む。好ましい実施形態において、当該RNAi発現ベクターは、MISSION(登録商標)TRCのshRNA製品(Sigma-Aldrich)で提供されるものなどの、shRNAレンチウイルス系ベクターまたはレンチウイルス粒子である。
【0047】
本発明の核酸配列は、当該技術分野で公知の種々の異なる技術を用いて、得られてよい。その塩基配列、ならびに相同配列は、標準技術を用いて単離され、受託機関から購入または入手されてよい。一旦、当該塩基配列が得られれば、当該技術分野で公知の方法を使用して、多様な用途での使用に対応して、増幅されてよい。
【0048】
(c)ポリペプチド・ポリヌクレオチド複合体
本発明の他の態様において、本発明のポリペプチドとポリヌクレオチドは、会合して複合体を形成する。本明細書において使用される用語「会合する」は、非共有結合を介したペプチドとポリヌクレオチドとの相互作用、またはペプチドとポリヌクレオチドとの共有結合を指してよい。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力に基づく結合、疎水結合、または静電相互作用などの、非共有結合を介して会合する。例えば、本発明のペプチドは、全体として正味の正電荷を有していてよく、これにより、静電相互作用を介して、本発明のポリヌクレオチドが、当該ペプチドと会合し、本発明の複合体を形成することができる。本発明のポリペプチド・ポリヌクレオチド複合体を形成する方法は、当該技術分野で公知であり、ならびにさらに、セクションV及び実施例にて記述される。
【0049】
本発明のペプチドが、本発明のポリヌクレオチドと会合する場合の、ポリヌクレオチドに対するペプチドのモル比は、そのペプチド、そのポリヌクレオチド組成物、またはそのポリヌクレオチドの大きさに応じて変化し得るものであり、実際に変化し、及び実験的に決定されてよい。本質的に、本発明のポリヌクレオチドに対する本発明のペプチドの適切なモル比は、当該ペプチドが、当該ポリヌクレオチドを完全に複合化し、一方で、当該ペプチドへの対象の曝露を最小限にする、モル比であってよい。本発明において、この比率は、ペプチド対ポリヌクレオチドで、50未満対1である。
【0050】
例えば、本発明のペプチドは、ポリヌクレオチドに対するペプチドのモル比が、約1対1、5対1、10対1、15対1、20対1、25対1、30対1、35対1、40対1、または約45対1で、ポリヌクレオチドと会合してよい。いくつかの実施形態において、ペプチドと本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに対するペプチドのモル比が、約1対1、5対1、10対1、15対1、20対1、25対1、30対1、35対1、40対1、または約45対1で、会合する。その他の実施形態において、本発明のペプチドと本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに対するペプチドのモル比が、約5対1から約45対1で、会合してよい。その他の実施形態において、本発明のペプチドと本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに対するペプチドのモル比が、約5対1から約35対1、約10対1から約40対1、または約15対1から約45対1で、会合してよい。その他の実施形態において、本発明のペプチドと本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに対するペプチドのモル比が、約5対1から約30対1、約10対1から約35対1、約15対1から約40対1、または約20対1から約45対1で、会合してよい。その他の実施形態において、本発明のペプチドと本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに対するペプチドのモル比が、約5対1から約25対1、約10対1から約30対1、約15対1から約35対1、または約20対1から約40対1、または約25対1から約45対1で、会合してよい。
【0051】
本発明のポリヌクレオチドがsiRNAである場合、そのsiRNAポリヌクレオチドを完全に複合化できる、本発明のポリヌクレオチドに対する本発明のペプチドの適切なモル比は、50未満対1である。他の方法として、いくつかの実施形態において、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドのモル比は、約5対1から約45対1の間であってよい。その他の実施形態において、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドのモル比は、約5対1、約6対1、約7対1、約8対1、約9対1、約10対1、約11対1、約12対1、約13対1、約14対1、または約15対1であってよい。その他の実施形態において、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドのモル比は、約10対1、約11対1、約12対1、約13対1、約14対1、約15対1、約16対1、約17対1、約18対1、約19対1、または約20対1であってよい。そのうえその他の実施形態において、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドのモル比は、約15対1、約16対1、約17対1、約18対1、約19対1、約20対1、約21対1、約22対1、約23対1、約24対1、または約25対1であってよい。さらにその他の実施形態において、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドのモル比は、約20対1、約21対1、約22対1、約23対1、約24対1、約25対1、約26対1、約27対1、約28対1、約29対1、約30対1、31対1、約32対1、約33対1、約34対1、または約35対1であってよい。その他の実施形態において、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドのモル比は、約25対1、約26対1、約27対1、約28対1、約29対1、約30対1、約31対1、約32対1、約33対1、約34対1、または約35対1であってよい。その他の実施形態において、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドのモル比は、約30対1、約31対1、約32対1、約33対1、約34対1、約35対1、約36対1、約37対1、約38対1、約39対1、または約40対1であってよい。その他の実施形態において、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドのモル比は、約35対1、約36対1、約37対1、約38対1、約39対1、または約40対1、約41対1、約42対1、約43対1、約44対1、約45対1、約46対1、約47対1、約48対1、または約49対1であってよい。
【0052】
当該ペプチドが、当該ポリヌクレオチドを完全に複合化できるモル比を決定する方法は、当該技術分野で公知であり、及び実施例に記述のゲルシフトアッセイを含んでよい。当該ペプチドへの対象の暴露を最小にするモル比を決定する方法は、当該技術分野で公知であり、及び当該ポリペプチドの漸増用量を利用した、細胞毒性測定を含んでよい。
【0053】
本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、直径が約50nmから約999nm、より好ましくは直径が約50nmから約500nm、さらに好ましくは直径が約50nmから約250nmであってよい。それゆえ、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体とは、「ナノ粒子」を指してよい。いくつかの実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または約120nmである。その他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、215、または220nmである。その他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約225、230、235、240、245、250、255、260、265、または270nmである。その他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約280、285、290、295、300、310、315、320、325、330、335、340、または345nmである。その他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約350、355、360、370、375、380、385、390、395、400、405、410、または415nmである。その他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、または500nmである。その他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約570、575、580、585、590、595、600、605、610、615、620、625、または630nmである。
【0054】
好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約50から約250nmである。例えば、本発明のナノ粒子は、直径が約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約101、約102、約103、約104、約105、約106、約107、約108、約109、約110、約111、約112、約113、約114、約115、約116、約117、約118、約119、約120、約121、約122、約123、約124、約125、約126、約127、約128、約129、約130、約131、約132、約133、約134、約135、約136、約137、約138、約139、約140、約141、約142、約143、約144、約145、約146、約147、約148、約149、約150、約151、約152、約153、約154、約155、約156、約157、約158、約159、約160、約161、約162、約163、約164、約165、約166、約167、約168、約169、約170、約171、約172、約173、約174、約175、約176、約177、約178、約179、約180、約181、約182、約183、約184、約185、約186、約187、約188、約189、約190、約191、約192、約193、約194、約195、約196、約197、約198、約199、約200、約201、約202、約203、約204、約205、約206、約207、約208、約209、約210、約211、約212、約213、約214、約215、約216、約217、約218、約219、約220、約221、約222、約223、約224、約225、約226、約227、約228、約229、約230、約231、約232、約233、約234、約235、約236、約237、約238、約239、約240、約241、約242、約243、約244、約245、約246、約247、約248、約249、または約250nmである。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約50から約200nmである。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約50から約150nmである。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約50から約100nmである。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約75から約125nmである。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約100から約150nmである。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約125から約175nmである。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約150から約200nmである。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約175から約225nmである。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約200から約250nmである。他の好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約180から約200nmである。
【0055】
特定の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、直径が約5から約30nmの、小粒子の凝集体を含んでいてよい。それゆえ、本発明のナノ粒子は、直径が約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または約30nmの小粒子の凝集体を含んでいてよい。いくつかの実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、直径が約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または約15nmの、小粒子の凝集体を含む。その他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、直径が約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または約20nmの、小粒子の凝集体を含む。そのうえその他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、直径が約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または約25nmの、小粒子の凝集体を含む。その他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、直径が約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または約30nmの、小粒子の凝集体を含む。
【0056】
本発明のナノ粒子は、このナノ粒子の安定性を高めるために、さらに改質されてよい。例えば、本発明のナノ粒子は、安定性を高めるために、アルブミンで被覆されてよい。アルブミンで被覆された本発明のナノ粒子は、直径が約5から約90nm、またはそれ以上であってよい。それゆえ、本発明のナノ粒子は、直径が約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、または約90nmの粒子を含んでいてよい。いくつかの実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約5、約10、約15、約20、約25、または約30nmの粒子を含む。その他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約30、約35、約40、約45、約50、または約55nmの粒子を含む。そのうえその他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約55、約60、約65、約70、約75、または約80nmの粒子を含む。その他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約80、約85、または約90nm、もしくはそれ以上の粒子を含む。好ましい実施形態において、本発明のナノ粒子は、直径が約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、または約75nmの粒子を含む。
【0057】
粒子径は、当該技術分野で公知の方法を用いて評価されてよい。粒子の大きさを測定する方法の、非限定的な例示には、動的光散乱、レーザー回折、エレクトロゾーン(電気センシングゾーン)、光遮断-または別名フォトゾーン、及び単粒子光センシング(SPOS)、ふるい解析、空気力測定、透気度の直径、沈降、粒子のゼータ電位の測定、またはそれらの組み合わせを含んでよい。好ましい実施形態において、粒子径は、動的光散乱により評価される。他の好ましい実施形態において、粒子径は、その粒子のゼータ電位を測定することにより評価される。そのうえ他の好ましい実施形態において、粒子径は、動的な光散乱により、またはその粒子のゼータ電位を測定することによって評価される。
【0058】
本発明のナノ粒子は、約-15から約20mV、好ましくは約0mV、またはそれ以上のゼータ電位を有していてよい。例えば、ナノ粒子は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20mV、もしくはそれ以上のゼータ電位を有していてよい。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、約1、約2、約3、約4、または約5mVのゼータ電位を有する。その他の実施形態において、ナノ粒子は、約10、11、12、13、または約14mVのゼータ電位を有する。そのうえその他の実施形態において、ナノ粒子は、約11、約12、約13、約14、または約15mVのゼータ電位を有する。例示的な実施形態において、ナノ粒子は、約1、約2、約3、約4、または約5mVのゼータ電位を有する。その他の実施形態において、ナノ粒子は、約10、約11、12、約13、または約14mVのゼータ電位を有する。例示的な実施形態において、ナノ粒子は、約3.72mVのゼータ電位を有する。他の実施形態において、ナノ粒子は、約12mVのゼータ電位を有する。そのうえ他の実施形態において、ナノ粒子は、約13.1mVのゼータ電位を有する。
【0059】
本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約1対1から約30対1、好ましくは約5対1から約25対1の、負電荷に対する正電荷の比率を有していてよい。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、約4対1、約5対1、約6対1、約7対1、または約8対1の、負電荷に対する正電荷の比率を有する。その他の実施形態において、ナノ粒子は、約10対1、約11対1、約12対1、約13対1、または約14対1の、負電荷に対する正電荷の比率を有する。そのうえその他の実施形態において、ナノ粒子は、約22対1、約23対1、約24対1、約25対1、または約26対1の、負電荷に対する正電荷の比率を有する。
【0060】
セクションI(a)に記述されるように、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、細胞の細胞質へ、当該ポリヌクレオチドを効率的に放出することができる。ペプチド・ポリヌクレオチド複合体はまた、対象における投与時の分解から、当該ポリヌクレオチドを保護することができる。それゆえ、本発明のペプチド・ポリヌクレオチドのナノ粒子は、血清の存在下で、安定的に維持され得る。ナノ粒子は、約10、20、30、40、50、60分、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19時間、約1、2、3、4、5、6、7日またはそれ以上の間、血清の存在下で安定的に維持され得る。ナノ粒子は、約50、100、150、200、または約300μg/ml、もしくはそれ以上のヒト血清アルブミンの存在下で、安定的に維持され得る。ナノ粒子の安定性は、そのナノ粒子の当該ペプチド・ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドの活性を維持する、ナノ粒子の能力を測定することによって、あるいは時間の経過とともに、ナノ粒子の大きさの変化を測定することによって、決定されてよい。ナノ粒子の大きさを測定する方法は、このセクションで記述した通りであり得る。
【0061】
本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を調製する方法は一般に、本発明のペプチドを、本発明のポリヌクレオチドと接触させて、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を形成することを含む。典型的には、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体の形成に適した条件下でインキュベーションすることによって、ペプチドとポリヌクレオチドとが接触させられる。ペプチド・ポリヌクレオチド複合体の形成に適した条件は、実施例で記述される通りである。典型的に、そのような条件は、約30℃から約40℃の温度、及び約20秒から約60分間、またはそれ以上のインキュベーション時間を含み得る。適切な温度はまた、約30℃より低くてよい。例えば、インキュベーションは、氷上で行われてよい。当業者は、インキュベーションの長さと温度は、当該ペプチド及び当該ポリヌクレオチドに応じて、変化し得るものであり、実際に変化し、及び実験的に決定されてよいことを理解されよう。
【0062】
本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、そのナノ粒子の安定性を高めるためにさらに改質されてよい。例えば、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、ナノ粒子の安定性を高めるために、架橋されてよい。当業者は、適切な架橋剤は、当該ナノ粒子の組成物及びその抗体または抗体断片に応じて、変化し得るものであり、実際に変化することを認識されよう。いくつかの態様において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、グルタルアルデヒド、ビスカルボン酸スペーサー、ビスカルボン酸・活性エステルなどの化学架橋剤を用いて、カルボジイミド・カップリングの手順による、ビスリンカーアミン/酸を用いて、またはクリック化学の手順、カルボジイミド・カップリング化学、アシル化、活性エステルカップリング、もしくはアルキル化を用いて、化学的に架橋されてよい。
【0063】
あるいは、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、ナノ粒子の安定性を高めることができる化合物で被覆されてよい。安定性を高めるためのナノ粒子を改質する方法は、当該技術分野において公知であり、及びNicolas et al.,2013 Acta Biomater.9:4754-4762に記述の通りでよく、その開示は、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
本明細書におい使用される用語「被覆」は、非共有結合を介した化合物とペプチド・ポリヌクレオチド複合体との相互作用、または、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体と化合物との共有結合を指してよい。好ましい実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体と被覆化合物とを、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力に基づく結合、疎水性結合、または静電相互作用などの、非共有結合を介して会合する。例えば、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、全体として正味の正電荷を有していてよく、及び被覆化合物は、当該ペプチド・ポリヌクレオチド複合体及び化合物を、静電相互作用を介して会合させ、本発明の複合体を形成することを可能にし得る、全体として負電荷を有していてもよい。
【0065】
当該ナノ粒子の安定性を高めるために、ナノ粒子の被覆に使用されてよい化合物の、非限定的な例示には、アルブミン、オレイン酸などの脂肪酸、ポリエチレングリコール、キトサンなどの多糖類、ヘパリンもしくはヘパラン、及びその他のグリコサミノグリカン、または当業者に公知の、その他の公開された被覆材料を含む。いくつかの実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体の安定性は、ナノ粒子を脂肪酸で被覆することにより高められてよい。その他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体の安定性は、ナノ粒子を多糖類で被覆することにより高められてよい。
【0066】
好ましい実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子の安定性は、ナノ粒子をアルブミンで被覆することにより高められてよい。アルブミンは、血清で一般に見出される、負に荷電された球状タンパク質である。理論に束縛されることを望まないが、本発明のナノ粒子のアルブミンでの被覆は、凝集を防止することによりナノ粒子の安定性を高められ得ると考えられる。好ましくは、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子を被覆するために使用され得るアルブミンは、血清アルブミンであり、ならびにウシ血清アルブミン及びヒト血清アルブミンを含んでよい。例示的な実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子の安定性は、ヒト血清アルブミンでナノ粒子を被覆することにより高められてよい。
【0067】
本質的に、ナノ粒子は、アルブミンを含む溶液で、そのナノ粒子をインキュベーションすることにより、アルブミンで被覆される。ナノ粒子は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または約1mg/ml、もしくはそれ以上のアルブミンを含む溶液中で、インキュベーションされてよい。いくつかの実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.1、0.15、0.2、0.25、または約0.3mg/mlのアルブミンを含む溶液中で、インキュベーションされてよい。その他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.3、0.35、0.4、0.45、または約0.5mg/mlのアルブミンを含む溶液中で、インキュベーションされてよい。そのうえその他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.5、0.55、0.6、0.65、または約0.7mg/mlのアルブミンを含む溶液中で、インキュベーションされてよい。その他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.7、0.75、0.8、0.85、または約0.9mg/mlのアルブミンを含む溶液中で、インキュベーションされてよい。追加の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.9、0.95、1、または約1.5mg/mlのアルブミンを含む溶液中で、インキュベーションされてよい。好ましい実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.4、0.45、0.5、0.55、または約0.6mg/mlのアルブミンを含む溶液中で、インキュベーションされてよい。
【0068】
ペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、そのペプチド・ポリヌクレオチド複合体を被覆するために、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または約60分間、もしくはそれ以上にわたって、アルブミンと共にインキュベーションされてよい。いくつかの実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む粒子は、約5、10、15、または約20分間、アルブミンと共にインキュベーションされる。その他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む粒子は、約20、25、30、または約35分間にわたって、アルブミンと共にインキュベーションされる。さらにそのうえその他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む粒子は、約35、40、45、または約50分間にわたって、アルブミンと共にインキュベーションされる。その他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む粒子は、約50、55、または約60分、もしくはそれ以上の間にわたって、アルブミンと共にインキュベーションされる。好ましい実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む粒子は、約25、30、または約35分間にわたって、アルブミンと共にインキュベーションされる。
【0069】
(d)細胞
本発明の他の態様において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、細胞の細胞質に当該ポリヌクレオチドをトランスフェクションさせることができる。いくつかの実施形態において、細胞は、原核細胞である。好ましい実施形態において、細胞は、真核細胞である。細胞は、イン・ビトロ、イン・ビボ、イン・サイチュ、またはエクス・ビボにあってよい。細胞は、単一の細胞であってよく、また組織もしくは臓器を含んでいてもよい。用語「細胞」はまた、対象における細胞を指す。
【0070】
本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドのトランスフェクションに適した条件下で、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体の存在下で細胞をインキュベーションすることにより、イン・ビトロで細胞に投与されてよい。ペプチド・ポリヌクレオチド複合体におけるポリヌクレオチドのトランスフェクションに適した条件は、実施例に記述の通りであってよい。当業者は、インキュベーションの長さが、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体、及び細胞に応じて変化し得るものであり、実際に変化することを理解されよう。典型的に、このような条件には、約10分から24時間のインキュベーション時間を含んでよい。より好ましくは、トランスフェクションの条件は、約15分から3時間のインキュベーション時間を含んでよい。
【0071】
本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む組成物を、対象に投与することにより、イン・ビボで(すなわち、対象体内の)細胞に投与されてよい。適切な組成物は、後述のセクションIIでさらに詳しく記述される。
【0072】
II.医薬組成物
本発明の他の態様において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、投与に適した医薬組成物に組み込まれてよい。本発明の医薬組成物は、通常、細胞内で発現する2種以上の核酸配列の発現を破壊するために使用されてよい。例えば、本発明の医薬組成物は、通常、細胞内で発現する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の核酸配列の発現を破壊するために使用されてよい。当業者は、医薬組成物は、疾患を治療したり、疾患を予防したり、または健康を増進したりするために、投与されることを理解するであろう。それゆえ、本発明の医薬組成物は、通常、細胞内で発現する任意の核酸配列の発現を、破壊するために使用されてよく、そのため発現が破壊されたことによって、その組成物を投与された対象に対して、測定可能でかつ有益な効果(すなわち顕著な効果)をもたらす。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、通常、細胞内で発現する1つの核酸配列の発現を破壊するために使用される。好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊するために使用される。他の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、JNK2をコードする核酸配列の発現を破壊するために使用される。そのうえ他の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、古典的NFκBシグナル伝達経路の、p65サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊するために使用される。他の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、古典的NFκBシグナル伝達経路の、p100/p52サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊するために使用される。
【0074】
その他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、通常、細胞内で発現する2つの核酸配列の発現を破壊するために使用される。好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、古典的NFκBシグナル伝達経路の、p65サブユニットをコードする核酸配列、及び古典的NFκBシグナル伝達経路の、p100/p52サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊するために使用される。
【0075】
本発明の医薬組成物が、通常、細胞内で発現する、2つ以上の核酸配列の発現を破壊するために使用される場合、医薬組成物は、2つ以上のペプチド・ポリヌクレオチド複合体の混合物を使用して、配合されてよく、ここで各複合体は、通常、細胞内で発現する異なる核酸配列の発現を破壊することができるポリヌクレオチドを含む。あるいは、2つ以上のポリヌクレオチドが、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体の混合物を生成するために使用されてよく、ここで各ポリヌクレオチドは、通常、細胞内で発現する異なる核酸配列の発現を破壊することができる。
【0076】
本発明の医薬組成物はまた、必要に応じて、1つ以上の無毒の薬学的に許容されるキャリアー、補助剤、賦形剤、及びベヒクルを含んでいてよい。本明細書で使用される用語「薬学的に許容されるキャリアー」とは、医薬品管理に適合した、任意の及びすべての溶媒、分散媒体、被覆剤、抗菌・防カビ剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことを意図している。薬学的に活性な物質に対して、このような媒体及び薬剤を用いることは、当該技術分野においては公知である。任意の従来の媒体または薬剤は、本発明のナノ粒子と非適合性である場合を除き、それらの当該組成物中での使用が考慮される。補充の活性化合物もまた、当該組成物に組み込まれてよい。
【0077】
本発明の医薬組成物は、その目的の投与経路に適合するように、配合されてよい。適切な投与経路には、非経口、経口、肺内、経皮、経粘膜、直腸投与を含む。本明細書において使用される用語の非経口には、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内、または胸骨内注射、または点滴技術を含む。
【0078】
非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液には、滅菌希釈剤、例えば注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒など、抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど、キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸など、緩衝剤、例えば酢酸、クエン酸塩またはリン酸塩など、及び緊張を調整する薬剤、例えば塩化ナトリウムやブドウ糖などの成分を含むことができる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの、酸または塩基で調整されてよい。非経口製剤には、アンプル、使い捨て注射器またはガラスもしくはプラスチック製の多数回投与バイアル瓶を含んでよい。
【0079】
経口用組成物は一般に、不活性な希釈剤または食用キャリアーを含んでいてよい。経口用組成物は、ゼラチンカプセルに封入し、または錠剤に圧縮されてよい。経口治療投与の目的に対しては、その活性化合物は、賦形剤が組み込まれ、及び錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用されてよい。経口用組成物はまた、うがい薬として使用する流体キャリアーを用いて調製されてよく、ここでその流体キャリアー中の化合物は、経口で適用され、及びうがいで、ならびに吐き出してまたは飲み込んでよい。薬学的に適合性のある結合剤及び/または補助材料は、当該組成物の一部として含まれてよい。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、結合剤、例えば微結晶セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなど、賦形剤、例えば澱粉もしくは乳糖など、崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル、もしくはトウモロコシ澱粉など、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステロートなど、滑剤、例えばコロイド状の二酸化ケイ素、甘味料、例えばショ糖もしくはサッカリンなど、または香料、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの成分、または類似の性質の化合物のいずれかを含んでいてよい。吸入による投与に対応した、当該化合物は、適切な推進剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含む、圧力容器またはディスペンサー、または噴霧器からのエアゾールスプレーの形態で送達される。
【0080】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、非経口投与に適合するように配合される。例えば、注射剤への利用に適した医薬組成物は、滅菌された水溶液(水溶性の場合)または分散液、及び滅菌注射液もしくは分散液の即時調製に対応した、無菌粉末を含むことができる。静脈内投与に対応した、適切なキャリアーには、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(BASF;Parsippany、N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。例示的な実施形態において、本発明の医薬組成物は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)が配合される。
【0081】
すべての場合において、組成物は、無菌であってよく、及び容易に注射針を通過するようになる程度に、流動性があってよい。組成物は、製造及び貯蔵条件下で安定であり得て、ならびに細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して、保護されていてよい。当該キャリアーは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含む、溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどでの被覆を利用することにより、分散液の場合には、必要な粒子径の維持により、及び界面活性剤を用いることにより、維持され得る。微生物作用の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの、種々の抗菌剤及び防カビ剤によって達成されてよい。多くの場合、当該組成物中に、等張剤、例えば糖類、つまり多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むことが、好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの物質を、当該組成物中に含ませることによって、もたらされるであろう。
【0082】
滅菌注射用液剤は、必要に応じて、上記で列挙した成分を1種または組み合わせて、次いで濾過殺菌を行い、適切な溶媒に、必要量の当該活性化合物を組み込んで、調製されてよい。一般に、分散液は、基本的な分散媒、及び上記に列挙したものからの必要なその他成分を含む無菌ベヒクルに、当該活性化合物を組み込んで、調製される。滅菌注射液の調製に対応した、滅菌粉末の場合において、調製の好ましい方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、当該活性成分に、上記の事前に滅菌ろ過した溶液からの任意の追加の必要成分を加えた粉末を生成する。
【0083】
全身投与はまた、経粘膜または経皮的手段によって行われてよい。経粘膜または経皮投与に対応して、浸透させる障壁に対する適切な浸透剤が、当該配合に使用される。このような浸透剤は一般に、当該技術分野で知られており、及び例えば、経粘膜投与に対しては、洗浄剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体などが、含まれてよい。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用によって達成されてよい。経皮投与に対応して、当該活性化合物は、当該技術分野で一般に知られている、軟膏、塗り薬、ゲル、またはクリームに配合される。当該化合物はまた、坐剤(例えば、ココアバター及びその他のグリセリドなどの、従来の坐剤用基剤と共に)、または直腸送達のための停留浣腸の形態で、調製されてよい。
【0084】
1つの実施形態において、当該活性化合物は、体内からの迅速な排出に対応して、インプラント及びマイクロカプセル送達システムを含む、放出調節配合物などの、当該化合物を保護するキャリアーと共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーが、使用されてよい。このような配合物の調製法は、当業者には明らかである。これらは、当業者に公知の方法にしたがって、例えば、米国特許第4,522,811号に記述されているように、調製されてよい。
【0085】
医薬組成物の追加配合調合物は、例えば、Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1975)、及びLiberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.(1980)に記述されている。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton Pa.,16Ed ISBN:0-912734-04-3、この全体が、参照により本明細書に組み込まれるが、その最新版は、開業医に一般的に知られるような、配合化技術の大要を提供している。
【0086】
当業者は、医薬組成物における本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体の濃度は、一部として、投与経路、その対象、及びその投与の理由に応じて、変化し得るものであり、実際に変化し、ならびに実験的に決定され得る、ことを認識されよう。医薬組成物における本発明のナノ粒子などの、活性薬剤の濃度を実験的に決定する方法は、当該技術分野で公知である。一般に、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約0.1nMから約50μMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。例えば、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約0.1nm、0.2nm、0.3nm、0.4nm、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、11nm、12nm、13nm、14nm、15nm、16nm、17nm、18nm、19nm、20nm、21nm、22nm、23nm、24nm、25nm、26nm、27nm、28nm、29nm、30nm、31nm、32nm、33nm、34nm、35nm、36nm、37nm、38nm、39nm、40nm、41nm、42nm、43nm、44nm、45nm、46nm、47nm、48nm、49nm、50nm、51nm、52nm、53nm、54nm、55nm、56nm、57nm、58nm、59nm、60nm、61nm、62nm、63nm、64nm、65nm、66nm、67nm、68nm、69nm、70nm、71nm、72nm、73nm、74nm、75nm、76nm、77nm、78nm、79nm、80nm、81nm、82nm、83nm、84nm、85nm、86nm、87nm、88nm、89nm、90nm、91nm、92nm、93nm、94nm、95nm、96nm、97nm、98nm、99nm、100nm、101nm、102nm、103nm、104nm、105nm、106nm、107nm、108nm、109nm、110nm、111nm、112nm、113nm、114nm、115nm、116nm、117nm、118nm、119nm、120nm、121nm、122nm、123nm、124nm、125nm、126nm、127nm、128nm、129nm、130nm、131nm、132nm、133nm、134nm、135nm、136nm、137nm、138nm、139nm、140nm、141nm、142nm、143nm、144nm、145nm、146nm、147nm、148nm、149nm、150nm、151nm、152nm、153nm、154nm、155nm、156nm、157nm、158nm、159nm、160nm、161nm、162nm、163nm、164nm、165nm、166nm、167nm、168nm、169nm、170nm、171nm、172nm、173nm、174nm、175nm、176nm、177nm、178nm、179nm、180nm、181nm、182nm、183nm、184nm、185nm、186nm、187nm、188nm、189nm、190nm、191nm、192nm、193nm、194nm、195nm、196nm、197nm、198nm、199nm、200nm、201nm、202nm、203nm、204nm、205nm、206nm、207nm、208nm、209nm、210nm、211nm、212nm、213nm、214nm、215nm、216nm、217nm、218nm、219nm、220nm、221nm、222nm、223nm、224nm、225nm、226nm、227nm、228nm、229nm、230nm、231nm、232nm、233nm、234nm、235nm、236nm、237nm、238nm、239nm、241nm、242nm、243nm、244nm、245nm、246nm、247nm、248nm、249nm、251nm、252nm、253nm、254nm、255nm、256nm、257nm、258nm、259nm、261nm、262nm、263nm、264nm、265nm、266nm、267nm、268nm、269nm、271nm、272nm、273nm、274nm、275nm、276nm、277nm、278nm、279nm、281nm、282nm、283nm、284nm、285nm、286nm、287nm、288nm、289nm、291nm、292nm、293nm、294nm、295nm、296nm、297nm、298nm、299nm、300nm、301nm、302nm、303nm、304nm、305nm、306nm、307nm、308nm、309nm、310nm、311nm、312nm、313nm、314nm、315nm、316nm、317nm、318nm、319nm、320nm、321nm、322nm、323nm、324nm、325nm、326nm、327nm、328nm、329nm、330nm、331nm、332nm、333nm、334nm、335nm、336nm、337nm、338nm、339nm、340nm、341nm、342nm、343nm、344nm、345nm、346nm、347nm、348nm、349nm、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nm、360nm、361nm、362nm、363nm、364nm、365nm、366nm、367nm、368nm、369nm、370nm、371nm、372nm、373nm、374nm、375nm、376nm、377nm、378nm、379nm、380nm、381nm、382nm、383nm、384nm、385nm、386nm、387nm、388nm、389nm、390nm、391nm、392nm、393nm、394nm、395nm、396nm、397nm、398nm、399nm、400nm、401nm、402nm、403nm、404nm、405nm、406nm、407nm、408nm、409nm、410nm、411nm、412nm、413nm、414nm、415nm、416nm、417nm、418nm、419nm、420nm、421nm、422nm、423nm、424nm、425nm、426nm、427nm、428nm、429nm、430nm、431nm、432nm、433nm、434nm、435nm、436nm、437nm、438nm、439nm、440nm、441nm、442nm、443nm、444nm、445nm、446nm、447nm、448nm、449nm、450nm、451nm、452nm、453nm、454nm、455nm、456nm、457nm、458nm、459nm、460nm、461nm、462nm、463nm、464nm、465nm、466nm、467nm、468nm、469nm、470nm、471nm、472nm、473nm、474nm、475nm、476nm、477nm、478nm、479nm、480nm、481nm、482nm、483nm、484nm、485nm、486nm、487nm、488nm、489nm、490nm、491nm、492nm、493nm、494nm、495nm、496nm、497nm、498nm、499nm、500nm、501nm、502nm、503nm、504nm、505nm、506nm、507nm、508nm、509nm、510nm、511nm、512nm、513nm、514nm、515nm、516nm、517nm、518nm、519nm、520nm、521nm、522nm、523nm、524nm、525nm、526nm、527nm、528nm、529nm、530nm、531nm、532nm、533nm、534nm、535nm、536nm、537nm、538nm、539nm、540nm、541nm、542nm、543nm、544nm、545nm、546nm、547nm、548nm、549nm、550nm、551nm、552nm、553nm、554nm、555nm、556nm、557nm、558nm、559nm、560nm、561nm、562nm、563nm、564nm、565nm、566nm、567nm、568nm、569nm、570nm、571nm、572nm、573nm、574nm、575nm、576nm、577nm、578nm、579nm、580nm、581nm、582nm、583nm、584nm、585nm、586nm、587nm、588nm、589nm、590nm、591nm、592nm、593nm、594nm、595nm、596nm、597nm、598nm、599nm、600nm、601nm、602nm、603nm、604nm、605nm、606nm、607nm、608nm、609nm、610nm、611nm、612nm、613nm、614nm、615nm、616nm、617nm、618nm、619nm、620nm、621nm、622nm、623nm、624nm、625nm、626nm、627nm、628nm、629nm、630nm、631nm、632nm、633nm、634nm、635nm、636nm、637nm、638nm、639nm、640nm、641nm、642nm、643nm、644nm、645nm、646nm、647nm、648nm、649nm、650nm、651nm、652nm、653nm、654nm、655nm、656nm、657nm、658nm、659nm、660nm、661nm、662nm、663nm、664nm、665nm、666nm、667nm、668nm、669nm、670nm、671nm、672nm、673nm、674nm、675nm、676nm、677nm、678nm、679nm、680nm、681nm、682nm、683nm、684nm、685nm、686nm、687nm、688nm、689nm、690nm、691nm、692nm、693nm、694nm、695nm、696nm、697nm、698nm、699nm、700nm、701nm、702nm、703nm、704nm、705nm、706nm、707nm、708nm、709nm、710nm、711nm、712nm、713nm、714nm、715nm、716nm、717nm、718nm、719nm、720nm、721nm、722nm、723nm、724nm、725nm、726nm、727nm、728nm、729nm、730nm、731nm、732nm、733nm、734nm、735nm、736nm、737nm、738nm、739nm、740nm、741nm、742nm、743nm、744nm、745nm、746nm、747nm、748nm、749nm、750nm、751nm、752nm、753nm、754nm、755nm、756nm、757nm、758nm、759nm、760nm、761nm、762nm、763nm、764nm、765nm、766nm、767nm、768nm、769nm、770nm、771nm、772nm、773nm、774nm、775nm、776nm、777nm、778nm、779nm、780nm、781nm、782nm、783nm、784nm、785nm、786nm、787nm、788nm、789nm、790nm、791nm、792nm、793nm、794nm、795nm、796nm、797nm、798nm、799nm、800nm、801nm、802nm、803nm、804nm、805nm、806nm、807nm、808nm、809nm、810nm、811nm、812nm、813nm、814nm、815nm、816nm、817nm、818nm、819nm、820nm、821nm、822nm、82
3nm、824nm、825nm、826nm、827nm、828nm、829nm、830nm、831nm、832nm、833nm、834nm、835nm、836nm、837nm、838nm、839nm、840nm、841nm、842nm、843nm、844nm、845nm、846nm、847nm、848nm、849nm、850nm、851nm、852nm、853nm、854nm、855nm、856nm、857nm、858nm、859nm、860nm、861nm、862nm、863nm、864nm、865nm、866nm、867nm、868nm、869nm、870nm、871nm、872nm、873nm、874nm、875nm、876nm、877nm、878nm、879nm、880nm、881nm、882nm、883nm、884nm、885nm、886nm、887nm、888nm、889nm、890nm、891nm、892nm、893nm、894nm、895nm、896nm、897nm、898nm、899nm、900nm、901nm、902nm、903nm、904nm、905nm、906nm、907nm、908nm、909nm、910nm、911nm、912nm、913nm、914nm、915nm、916nm、917nm、918nm、919nm、920nm、921nm、922nm、923nm、924nm、925nm、926nm、927nm、928nm、929nm、930nm、931nm、932nm、933nm、934nm、935nm、936nm、937nm、938nm、939nm、940nm、941nm、942nm、943nm、944nm、945nm、946nm、947nm、948nm、949nm、950nm、951nm、952nm、953nm、954nm、955nm、956nm、957nm、958nm、959nm、960nm、961nm、962nm、963nm、964nm、965nm、966nm、967nm、968nm、969nm、970nm、971nm、972nm、973nm、974nm、975nm、976nm、977nm、978nm、979nm、980nm、981nm、982nm、983nm、984nm、985nm、986nm、987nm、988nm、989nm、990nm、991nm、992nm、993nm、994nm、995nm、996nm、997nm、998nm、999nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、21μm、22μm、23μm、24μm、25μm、26μm、27μm、28μm、29μm、30μm、31μm、32μm、33μm、34μm、35μm、36μm、37μm、38μm、39μm、40μm、41μm、42μm、43μm、44μm、45μm、46μm、47μm、48μm、49μm、または約50μmのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約0.1nMから約1.0nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約1nMから約10nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約1nMから約100nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約1nMから約200nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約1nMから約50nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約10nMから約100nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約10nMから約200nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約50nMから約100nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約50nMから約200nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約100nMから約200nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約150nMから約200nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約200nMから約100nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約500nMから約1000nMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体において、約1μMから約50μMのポリヌクレオチドを含むように、配合されてよい。本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体におけるペプチドの濃度は、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体における、望ましいポリヌクレオチドの濃度、及びポリヌクレオチドに対するペプチドの比率に基づいて算出されてよい。
【0087】
医薬組成物はまた、約30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、または約700μg/ml、もしくはそれ以上の、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むように配合されてよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または約100μg/mlの、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むように配合されてよい。その他の実施形態において、医薬組成物は、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または約300μg/mlの、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むように配合されてよい。そのうえその他の実施形態において、医薬組成物は、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、または約500μg/mlの、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むように配合されてよい。さらにその他の実施形態において、医薬組成物は、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、または約700μg/ml、もしくはそれ以上の、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含むように配合されてよい。
【0088】
III.使用法
他の態様において、本発明は、当該ポリヌクレオチドを、細胞の細胞質にトランスフェクションするための、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体の使用法を包含する。いくつか実施形態において、当該細胞は、イン・ビトロにある。その他の実施形態において、当該細胞は、イン・ビボにある。したがって、本発明はまた、治療を必要とする対象において、細胞の細胞質に、当該ポリヌクレオチドをトランスフェクションするための、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体の使用法を提供する。一般的に言えば、本発明の方法は、ポリヌクレオチドのトランスフェクションに適した条件下で、細胞を本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体と接触させることを含む。適切な細胞及び条件は、上述のセクションIにおいて、記述されている。細胞がイン・ビボにある実施形態において、本発明の方法は、典型的に、治療を必要とする対象に、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む医薬組成物を投与することを含む。適切な医薬組成物については、セクションIIで記述される。
【0089】
他の態様において、本発明は、対象の病態の治療法を包含する。この方法は、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む、医薬組成物の治療に有効な量を、それらを必要とする対象に投与することを含む。本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、当該ペプチド・ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドを、対象の細胞に効率的にトランスフェクション、または送達することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、細胞内で発現する核酸配列の発現を、調節または阻害することができる、非コードRNAを含む。細胞内で発現する核酸配列の発現を、調節または阻害することができるポリヌクレオチドを、効率的にトランスフェクションすることによって、本発明の方法は、通常、細胞内で発現する核酸配列の発現を、調節または阻害することによって、治療され得る任意の病態の治療に使用されてよい。いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、対象において、NFκB介在性病態の治療に、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を、対象に投与する方法を包含する。その他の好ましい実施形態において、本発明は、対象において、STAT3異常調節に関連する病態の治療に、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を、対象に投与する方法を包含する。その他の好ましい実施形態において、本発明は、JNK2調節異常に関連する病態の治療に、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を、対象に投与する方法を包含する。特定の病気とは?
【0091】
その他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、その対象に不完全なまたは欠失しているタンパク質をコードする、DNAを含む。対象において、不完全なまたは欠失しているタンパク質によって特徴づけられる、疾患の非限定的な例示には、下位運動ニューロン疾患、ポンペ病、リソソーム蓄積症、及び多形性膠芽腫を含む。好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、リソソーム蓄積症を有する対象において、不完全なまたは欠失しているタンパク質をコードするDNAを含む。酵素補充療法は、特にリソソーム蓄積症に十分に適しており、及び本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、リソソーム蓄積症を有する対象において、不完全なまたは欠失しているタンパク質をコードする、発現カセットまたはベクターを、その対象の細胞質にトランスフェクションするために、使用されてよい。リソソーム蓄積症には、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼ欠損症、シスチン症、ダノン病、ファブリ病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス(乳児型、遅発乳児型/若年型、成人型/慢性)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児型遊離シアル酸蓄積症/ISSD、若年型ヘキソサミニダーゼ欠損症、クラッベ病(乳児発症型、遅発型)、異染性白質萎縮、ムコ多糖蓄積症(偽ハーラー多発性ジストロフィー/ムコリピドーシスIIIA)、MPSIハーラー症候群、MPSIシャイエ症候群、MPSIハーラー・シャイエ症候群、MPSIIハンター症候群、サンフィリポ症候群A型/MPS IIIA、サンフィリポ症候群B型/MPS IIIB、サンフィリポ症候群C型/MPSIIIC、サンフィリポ症候群型D型/MPS IIID、モルキオ病A型/MPS IVA、モルキオ病B型/MPS IVB、MPS IXヒアルロニダーゼ欠損症、MPS VIマロトー・ラミー症候群、MPS VIIスライ症候群、ムコリピドーシスI/シアリドーシス、ムコリピドーシスIIIC、ムコリピドーシスIV型)、多重スルファターゼ欠損症、ニーマン・ピック病(A型、B型、C型)、神経セロイドリポフスチン症(CLN6病(非定型後期乳児型、後期発症変異型、早期若年型)、バッテン・シュピールマイアー・フォークト/若年性NCL/CLN3病、フィンランドバリアント後期乳児型CLN5、ヤンスキー・ビールショウスキー病/後期乳児型CLN2/TPP1病、クフス病/成人発症型NCL/CLN4病、北部てんかん/バリアント後期乳児型CLN8、サンタブオリ・ハルチア病/乳児型CLN1/PPT病、ベータ-マンノシドーシス、ポンペ病/糖原病II型、濃化異骨症、サンドホフ病/成人発症型/GM2ガングリオシドーシス、サンドホフ病/GM2ガングリオシドーシス-乳児型、サンドホフ病/GM2ガングリオシドーシス-若年型、シンドラー病、サラ病/シアル酸蓄積症、テイ・サックス病/GM2ガングリオシドーシス、ウォルマン病を含むが、それらに限定されない。例示的な実施形態において、当該対象は、ゴーシェ病、ファブリ病、MPS I、MPS II]、MPS VI及び糖原病II型からなる群から選択される、疾患に対する治療を必要としている。
【0092】
当該ペプチド、当該ポリヌクレオチド及びペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、セクションIに記述の通りであってよい。本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む医薬組成物は、セクションIIに記述の通りであってよい。本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を投与する方法、及び病態を治療する方法は、後述される。
【0093】
(a)治療を必要とする対象への投与
一態様において、本発明は、治療を必要とする対象に対して、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを包含する。本明細書において使用される用語、「治療を必要とする対象」とは、予防または治療処置を必要とする対象を指す。対象は、げっ歯類、ヒト、家畜動物、愛玩動物、または、動物学上の動物であってよい。1つの実施形態において、対象は、げっ歯類、例えばマウス、ラット、モルモットなどであってよい。他の実施形態において、対象は、家畜動物であってよい。適切な家畜動物の非限定的な例示には、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラマ及びアルパカを含む。さらに他の実施形態において、対象は、愛玩動物であってよい。愛玩動物の非限定的な例示には、イヌ、ネコ、ウサギ、及び鳥類などのペットが含まれてよい。そのうえ他の実施形態において、対象は、動物学上の動物であってよい。本明細書において使用される、「動物学上の動物」とは、動物園において見られる動物をいう。そのような動物には、非ヒト霊長類、大型ネコ、オオカミ、及びクマを含む。好ましい実施形態において、対象は、マウスである。他の好ましい実施形態において、対象は、ヒトである。
【0094】
セクションIIで記述されたように、本発明の医薬組成物は、その目的の投与経路に適合するように配合される。適切な投与経路には、非経口、経口、肺内、経皮、経粘膜、及び直腸投与を含む。好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、注射により投与される。
【0095】
当業者は、対象に投与される、当該組成物の量及び濃度は、一部としてその対象及びその投与目的に依存することを、認識されよう。最適な量を決定する方法は、当該技術分野では公知である。一般に、医薬組成物における、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体の濃度は、セクションIIに記述された通りであってよい。
【0096】
本発明の組成物は、典型的に、対象に利益を与えるのに十分な量で、治療を必要とする対象に投与される。この量は、「治療に有効な量」と定義される。治療に有効な量は、特定の組成物の効力または効能、治療されている疾患、投与の期間または頻度、投与の方法、及びその対象の特定の治療反応を含む、対象の体格及び病態によって、決定されてよい。治療に有効な量は、当該技術分野で公知の方法を用いて決定されてよく、及びマウスなどのモデル動物において決定される、治療に有効な量から誘導され、またはそれらの組み合わせで、実験的に決定されてよい。さらに、投与経路は、その治療に有効な量を決定する際に、考慮されてよい。治療的に有効な量の決定において、当業者はまた、特定の対象における特定の化合物の投与に伴う、副作用の有無、性質、及びその程度を考慮することができる。
【0097】
本発明の医薬組成物が、注射により対象に投与される場合、組成物は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、または約100mg/kg、もしくはそれ以上の量を、ボーラス投与で、その対象へ投与されてよい。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または約5mg/kgの量で、対象に投与される。その他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、約5、5.5、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、または約15mg/kgの量で、対象に投与される。そのうえその他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または約30mg/kgの量で、対象に投与される。その他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または約45mg/kgの量で、対象に投与される。追加の実施形態において、本発明の医薬組成物は、約45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、または約100mg/kgもしくはそれ以上の量で、対象に投与される。好ましい実施形態において、医薬組成物は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、または約1.5mg/kgの量を、ボーラス投与で、対象に投与される。
【0098】
組成物はまた、一定期間にわたって、当該対象への2回以上のボーラス投与の注入で、投与されてよい。例えば、組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回もしくはそれ以上のボーラス投与の注入で、当該対象に投与されてよい。いくつかの実施形態において、組成物は、1、2、3、4、または5回のボーラス投与の注入で、当該対象に投与される。その他の実施形態において、組成物は、5、6、7、8、9、10回もしくはそれ以上のボーラス投与の注入で、当該対象に投与される。好ましい実施形態において、組成物は、2,3、または4回のボーラス投与の注入で、当該対象に投与される。このボーラス投与は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11時間毎、もしくは約12時間毎に注入されてよく、またはそれらは、約1、2、3、4、5、6日毎、もしくは約7日毎に注入されてよい。好ましい実施形態において、ボーラス投与は、ほぼ毎日注入されてよい。
【0099】
(b)NFκB介在性病態の治療
前述のように、本発明の方法は、対象におけるNFκB介在性病態の治療に使用されてよい。本発明の方法は、NFκBシグナル伝達経路に通常関連する核酸配列の発現を破壊することによって、対象におけるNFκB介在性病態の治療に、使用されてよい。本発明の方法は、古典的NFκBシグナル伝達経路、非古典的NFκBシグナル伝達経路、または古典的及び非古典的NFκBシグナル伝達経路の両方に通常関連する核酸配列の発現を破壊することによって、対象におけるNFκB介在性病態の治療に、使用されてよい。実施例において記述されるように、本出願者らは驚くことに、古典的NFκBシグナル伝達経路及び非古典的NFκBシグナル伝達経路に通常関連する核酸配列の発現を破壊することが、相乗効果を発揮することを、発見した。用語「相乗効果を発揮する」とは、2つ以上の物質が、各物質の効果を個別に加算した以上の効果を生成するように、相乗効果を発揮して作用する場合の、その効果を指す。相乗作用の1つの尺度は、Chou-Talalay併用指数法によって示され得る。このChou-Talalay指数法は、メジアン効果方程式に基づいており、及び質量作用法の原理から派生したもので、1つのエンティティと複数のエンティティ、及び最初の次数と高次の次数の動力学をリンクする理論であり、ミカエリス・メンテン、ヒル、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ、スキャッチャードの式を包含している。このChou-Talalay併用指数法は、相加作用は、CI=1となり、相乗作用は、CI<1となり、及び交互作用は、CI>1となるような、併用指数(CI)となる。Ting-Chao Chou、2008、Preclinical versus clinical drug combination studies、Leukemia & Lymphoma、49:2059-2080を参照されたし。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、古典的NFκBシグナル伝達経路と通常関連する核酸配列の発現を破壊することにより、対象におけるNFκB介在性病態の治療に使用される。実施形態の例示的な選択肢において、対象におけるNFκB介在性病態は、古典的NFκBシグナル伝達経路の、転写因子p65サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊することにより治療される。
【0101】
その他の実施形態において、本発明の方法は、非古典的NFκBシグナル伝達経路と通常関連する核酸配列の発現を破壊することにより、対象におけるNFκB介在性病態の治療に使用される。実施形態の例示的な選択肢において、対象におけるNFκB介在性病態は、古典的NFκBシグナル伝達経路の、転写因子p100/p52サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊することにより治療される。
【0102】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、古典的NFκBシグナル伝達経路と通常関連する核酸配列、及び非古典的NFκBシグナル伝達経路と通常関連する核酸配列の発現を破壊することにより、対象におけるNFκB介在性病態の治療に使用される。実施形態の例示的な選択肢において、対象におけるNFκB介在性病態は、古典的NFκBシグナル伝達経路の、転写因子p65サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊すること、及び古典的NFκBシグナル伝達経路の、転写因子p100/p52サブユニットをコードする核酸配列の発現を破壊することにより治療される。
【0103】
用語「NFκB介在性病態)」は、NFκBシグナル伝達経路における、シグナル伝達の異常調節によって引き起こされる可能性がある、任意の病態を記述するために使用され得る。NFκB介在性症状の、非限定的な例示には、炎症性疾患、自己免疫疾患、移植拒絶反応、骨粗鬆症、がん、関節炎、アルツハイマー病、関節炎、アテローム性動脈硬化症、ウイルス感染症、または毛細血管拡張性運動失調症を含んでよい。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、炎症性疾患の治療に使用される。その他の実施形態において、本発明の方法は、自己免疫疾患の治療に使用される。そのうえその他の実施形態において、本発明の方法は、移植拒絶反応の治療に使用される。その他の実施形態において、本発明の方法は、骨粗鬆症の治療に使用される。追加の実施形態において、本発明の方法は、アルツハイマー病の治療に使用される。その他の実施形態において、本発明の方法は、アテローム性動脈硬化症の治療に使用される。その他の実施形態において、本発明の方法は、ウイルス感染症の治療に使用される。さらにその他の実施形態において、本発明の方法は、毛細血管拡張性運動失調症の治療に使用される。
【0104】
i.がんの治療
好ましい実施形態において、本発明の方法は、新生物またはがんの治療に使用される。当該新生物は、悪性または良性であってよく、当該がんは、原発性または転移性であってよく、当該新生物またはがんは、初期段階または後期段階であってよい。がんまたは新生物は、対象のがん腫瘍に、核酸配列を送達することによって治療されてよい。当該がんまたは新生物は、がん細胞の成長を遅らせるか、またはがん細胞を死滅させることによって治療されてよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドは、イン・ビボで、対象におけるがん細胞に、当該ナノ粒子のポリヌクレオチドを送達することにより、がんまたは新生物を治療することができる。本発明の方法で治療され得る新生物またはがんの、非限定的な例示には、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫(小児小脳型または大脳型)、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍(小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚経路膠腫と視床下部膠腫)、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児型、消化管型)、原発部位不明のがん、中枢神経系リンパ腫(原発性)、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、大腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイングファミリー腫瘍のユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫(小児型)、性腺外胚細胞腫瘍、肝臓外胆管がん、眼腫瘍(眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、胆嚢がん、胃(腹部)がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、生殖細胞腫瘍(小児頭蓋外型、性腺外型、卵巣型)、妊娠絨毛腫瘍、神経膠腫(成人型、小児脳幹型、小児大脳星細胞、小児視覚経路型及び視床下部型)、胃カルチノイド、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、視床下部及び視覚経路神経膠腫(小児型)、眼内黒色腫、膵島細胞がん、カポジ肉腫、腎がん(腎細胞がん)、喉頭がん、白血病(急性リンパ性、急性骨髄性、慢性リンパ性、慢性骨髄性、毛細胞性)、口唇及び口腔内がん、肝臓がん(原発性)、肺がん(非小細胞、小細胞)、リンパ腫(AIDS関連型、バーキット型、皮膚T細胞型、ホジキン型、非ホジキン型、原発性中枢神経系)、マクログロブリン血症(ワルデンストレーム)、骨/骨肉腫の悪性線維性組織球腫、髄芽腫(小児型)、黒色腫、眼内黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫(成人悪性型、小児型)、原発不明転移性扁平上皮性頸部がん、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群(小児型)、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病(慢性)、骨髄性白血病(成人急性、小児急性)、多発性骨髄腫、骨髄増殖性疾患(慢性)、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん、中咽頭がん、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣がん、卵巣上皮がん(表面上皮間質腫瘍)、卵巣胚芽細胞腫、卵巣低悪性度腫瘍、膵がん、膵がん(膵島細胞)、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児型)、下垂体腺腫、形質細胞性腫瘍、胸膜肺芽腫、原発中枢神経系リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん(腎がん)、腎盂及び尿管の移行上皮がん、横紋筋肉腫(小児型)、唾液腺がん、肉腫(ユーイング家族腫瘍型、カポジ型、軟組織型、子宮型)、セザリー症候群、皮膚がん(非黒色腫、黒色腫)、皮膚がん(メルケル細胞)、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮がん、原発不明扁平上皮性頸部がん(転移性)、胃がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児型)、T細胞リンパ腫(皮膚)、T細胞白血病及びリンパ腫、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫(小児型)、胸腺腫及び胸腺がん、甲状腺がん、甲状腺がん(小児型)、腎骨盤及び尿管の移行上皮がん、絨毛腫瘍(妊娠性)、原発不明な部位(成人型、小児型)、尿管及び腎盂の移行上皮がん、尿道がん、子宮がん(内膜)、子宮肉腫、膣がん、視覚経路及び視床下部膠腫(小児型)、外陰がん、ワルデンストレーム型マクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍(小児型)を含んでよい。好ましい実施形態において、本発明の方法は、T細胞白血病及びリンパ腫の治療に使用される。例示的な実施形態において、本発明の方法は、ヒトTリンパ好性ウイルス-1(HTLV-1)誘発性成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)の治療に使用される。
【0106】
その他の実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドは、イン・ビトロで、がん細胞に送達されてよい。例えば、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドは、イン・ビトロでがん細胞株に送達されてよい。がん細胞は、イン・ビトロで培養された、がん細胞株であってよい。実施形態のいくつかの選択肢において、がん細胞株は、いまだに記述されていない初代細胞株であってよい。初代がん細胞株を作製する方法は、当業者に公知の標準的な技術を利用する。その他の選択肢において、がん細胞株は、樹立されたがん細胞株であってよい。がん細胞株は、接着性もしくは非接着性であってよく、または細胞株は、当業者に公知の標準技術を用いた、接着性、非接着性もしくは器官型増殖を高める条件下で、成長してよい。がん細胞株は、接触阻害または非接触阻害していてよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、当該がん細胞株は、腫瘍由来の樹立されたヒト細胞株であってよい。腫瘍由来のがん細胞株の非限定的な例示には、骨肉腫細胞株の143B、CAL-72、G-292、HOS、KHOS、MG-63、Saos-2、及びU-2OS、前立腺がん細胞株のDU145、PC3及びLncap、乳がん細胞株のMCF-7、MDA-MB-438及びT47D、骨髄性白血病細胞株のTHP-1、神経膠芽腫細胞株のU87、神経芽腫細胞株のSHSY5Y、骨がん細胞株のSaos-2、大腸がん細胞株のWiDr、COLO320DM、HT29、DLD-1、COLO205、COLO201、HCT-15、SW620、LoVo、SW403、SW403、SW1116、SW1463、SW837、SW948、SW1417、GPC-16、HCT-8HCT116、NCI-H716、NCI-H747、NCI-H508、NCI-H498、COLO320HSR、SNU-C2A、LS180、LS174T、MOLT-4、LS513、LS1034、LS411N、Hs675.T、CO88BV59-1、Co88BV59H21-2、Co88BV59H21-2V67-66、1116-NS-19-9、TA99、AS33、TS106、Caco-2、HT-29、SK-CO-1、SNU-C2B及びSW480、B16-F10、RAW264.7、F8細胞株、ならびに膵がん細胞株のPanc1を含んでよい。例示的な実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、F8細胞株に投与されてよい。他の例示的な実施形態において、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、B16-F10細胞株に投与されてよい。
【0108】
ii.関節炎の病態の治療
その他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、関節炎の病態の治療に使用される。関節炎の病態の非限定的な例示には、変形性関節症、関節リウマチ、痛風及び擬痛風、敗血症性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、スティル病、狼瘡、または感染もしくは治療によって引き起こされた関節炎を含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、変形性関節症の治療に使用される。その他の実施形態において、本発明の方法は、関節リウマチの治療に使用される。そのうえその他の実施形態において、本発明の方法は、痛風の治療に使用される。その他の実施形態において、本発明の方法は、擬痛風の治療に使用される。追加の実施形態において、本発明の方法は、敗血症性関節炎の治療に使用される。その他の実施形態において、本発明の方法は、強直性脊椎炎の治療に使用される。さらにその他の実施形態において、本発明の方法は、若年性特発性関節炎の治療に使用される。その他の実施形態において、本発明の方法は、スティル病の治療に使用される。追加の実施形態において、本発明の方法は、狼瘡の治療に使用される。そのうえその他の実施形態において、本発明の方法は、感染または治療によって引き起こされた関節炎の治療に使用される。例えば、本発明の方法は、コラーゲン抗体誘発性関節炎によって引き起こされた、関節炎の治療に使用される。
【0109】
本明細書において使用される用語「関節炎の病態を治療すること」は、関節炎の症状の緩和を記述するために使用されてよい。関節炎の症状の、非限定的な例示には、リウマチの種類によらず、様々な疼痛のレベル、腫れ、関節のこわばり、手の使用または歩行の困難、倦怠感及び疲れ、体重減少、睡眠不足、筋肉痛及び疼痛、圧痛、及び関節を動かすことの困難などを含む。関節炎の症状を測定する方法は、当該技術分野では公知であり、及び関節炎スコアを用いて、または画像に基づく測定法を用いて、足首などの関節炎の関節の厚みを測定することを含んでよい。
【0110】
いくつかの実施形態において、関節炎の症状は、足首の厚みによって測定される。それゆえ、本発明の方法を用いて、関節炎の病態を治療することは、当該医薬組成物で治療されていない対象と比較した場合に、本発明の医薬組成物で治療された対象において、足首の厚みの増加を防止することであってよい。
【0111】
その他の実施形態において、関節炎の症状は、関節炎スコアを用いて測定される。関節炎スコアを測定する方法は、当該技術分野で知られており、及び米国リウマチ学会(ACR)スコア、関節リウマチ重症度尺度(RASS)、またはACR/EULAR関節リウマチ分類基準を含んでよい。それゆえ、本発明の方法を用いて関節炎の病態を治療することは、当該医薬組成物で治療されていない対象と比較した場合に、本発明の医薬組成物で治療された対象において、関節炎スコアの上昇を防止することであってよい。例えば、本発明の方法を用いて関節炎の病態を治療することは、ACR/EULAR関節リウマチ分類基準を用いて、約1、2、3、4、5、6、7、8、または9を上回る、関節炎スコアの上昇を防ぐことであってよい。好ましい実施態様において、本発明の方法を用いて関節炎の病態を治療することは、約1、2、または約3を上回る、関節炎スコアの上昇を防ぐことであってよい。
【0112】
そのうえその他の実施形態において、関節炎の症状は、画像に基づく測定法を用いて測定される。画像に基づく測定法を利用して、関節炎の症状を測定する方法は、当該技術分野で公知であり、及びHughes et al.,2011 J Acoust Soc Am.129:3756、Hughes 2011 IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control.58:2361-2369、Hughes et al.,2007 Ultrasound Med Biol.33:1236-1243、 Hughes et al.,2007 Journal of the Acoustical Society of America.121:3542-3557、 Hughes et al.,2013 J Acoust Soc Am.133:283-300、Hughes et al.,2009 Journal of the Acoustical Society of America.126:2350-2358に記述されているような、超音波分子画像の使用を含んでよく、それらの開示は、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0113】
(c)STAT3異常調節に関連する病態の治療
いくつかの実施形態において、本発明は、対象おいて、STAT3異常調節に関連する病態の治療に対して、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を、その対象に投与する方法を包含する。いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、対象において、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することにより、その対象におけるSTAT3異常調節に関連する病態の治療に、使用される。例えば、本発明の方法は、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することにより、がんの治療に使用されてよい。がんまたは新生物は、セクションIII(c)iに記述される通りであってよい。当該がんまたは新生物は、がん細胞の成長を遅らせることによって、または血管新生を防ぐことによって、治療されてよい。いくつかの実施形態において、当該がんまたは新生物は、がん細胞の成長を遅らせることによって治療される。その他の実施形態において、当該がんまたは新生物は、血管新生を防止することにより治療される。用語「血管新生」とは、組織中の新しい血管の形成、増殖するための内皮細胞の刺激、または増殖する内皮細胞の生存の促進を意味する。好ましい実施形態において、本発明は、対象において、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することにより、その対象のがんの治療に使用される。例示的な実施形態において、本発明は、がん細胞の成長を遅らせることにより、対象におけるSTAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することによって、その対象のがんの治療に使用される。他の実施形態において、本発明は、血管新生を防止することにより、対象におけるSTAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することによって、その対象のがんの治療に使用される。
【0114】
STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することで、STAT3タンパク質の発現レベルを低下させることができる。STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することでも、STAT3をコードするmRNAのレベルを低下させることができる。例えば、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することで、STAT3をコードするmRNAのレベルを、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または約10倍、もしくはそれ以上、低下させることができる。いくつかの実施形態において、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することで、STAT3をコードするmRNAのレベルを、約1、2、3、4、または約5倍、低下させる。その他の実施形態において、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することで、STAT3をコードするmRNAのレベルを、約5、6、7、8、9、または約10倍、もしくはそれ以上、低下させる。
【0115】
一般に、通常、細胞内で発現する核酸配列の発現の破壊に対応した、本発明の医薬組成物の効力を測定する滴定曲線が、IC50の決定に、作成されてよい。例えば、細胞内でSTAT3の発現を破壊することができる、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む医薬組成物のIC50は、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または約100nM、もしくはそれ以上であってよい。いくつかの実施形態において、細胞内でSTAT3の発現を破壊することができる、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む医薬組成物のIC50は、約10、15、20、25、または約30nMである。その他の実施形態において、細胞内でSTAT3の発現を破壊することができる、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む医薬組成物のIC50は、約30、35、40、45、50、55、または約60nMである。そのうえその他の実施形態において、細胞内でSTAT3の発現を破壊することができる、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む医薬組成物のIC50は、約60、65、70、75、80、85、90、95、または約100nM、もしくはそれ以上である。好ましい実施形態において、細胞内でSTAT3の発現を破壊することができる、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む医薬組成物のIC50は、約40、45、50、55、または約70nMである。
【0116】
STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することで、血管新生を防ぐことができる。血管新生を測定する方法は、当該技術分野で知られており、及び実施例に記述の通りであってもよく、ならびにマトリゲルチューブ形成アッセイ、及びトランスウェル細胞遊走アッセイを含んでよい。STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することで、マトリゲルチューブ形成を、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または約95%、もしくはそれ以上、低下させることができる。いくつかの実施形態において、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することで、マトリゲルチューブ形成を、約30、35、40、45、または約50%、低下させる。その他の実施形態において、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することで、マトリゲルチューブ形成を、約50、55、60、65、70、75、80、85、90、または約95%、もしくはそれ以上、低下させる。好ましい実施形態において、STAT3をコードする核酸配列の発現を破壊することで、マトリゲルチューブ形成を、約50、55、60、65、または約70%低下させる。
【0117】
(d)JNK2異常調節に関連する病態の治療
その他の実施形態において、本発明は、対象における、JNK2異常調節に関する病態の治療に対して、本発明のペプチド・ポリヌクレオチド複合体を、対象に投与する方法を包含する。例示的な実施形態において、本発明は、対象における、JNK2をコードする核酸配列の発現を破壊することによって、その対象のJNK2異常調節に関する病態の治療に、使用される。例えば、本発明の方法は、JNK2をコードする核酸配列の発現を破壊することによって、アテローム性動脈硬化症の治療に、使用されてよい。いくつかの好ましい実施形態において、アテローム性動脈硬化症は、泡沫細胞形成を遮断することにより治療される。泡沫細胞形成は、アテローム斑の特徴であり、及びそれらが、特定の病巣に蓄積し、結果としてアテローム性動脈硬化症の壊死中心を形成する場合に、問題になる可能性がある。例示的な実施形態において、当該複合体のポリヌクレオチドが抗JNK2のsiRNAである、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体は、泡沫細胞形成を遮断するために使用される。
【0118】
IV.キット
本発明の他の態様は、キットを包含する。このキットは、本発明のペプチドを含む第1の組成物、及び必要に応じてポリヌクレオチドを含む第2の組成物を含む。あるいは、目的とするポリヌクレオチドは、当該キットの利用者によって提供されていてよい。キットにより提供される説明書に従うことにより、当該キットの利用者は、本発明のペプチドを含む組成物と、ポリヌクレオチドを含む組成物とを混合し、ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を形成することができる。当該キットの説明書には、当該ペプチドと当該ポリヌクレオチドとを、適当な割合で混合する指示が含まれていてよい。適切な割合は、セクションIで前述されている。当該キットにはまた、適当な緩衝液、水、架橋試薬またはアルブミンを含んでよい。
【0119】
定義
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指して、本明細書では同義に使用される。当該用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、天然に存在するアミノ酸、ならびに、天然に存在するアミノ酸ポリマー、変性残基を含むもの、及び非天然のアミノ酸ポリマーに相応する、人工化学的な模倣体であるアミノ酸ポリマーに適用される。
【0120】
2つ以上のペプチドに関連して、用語「相同の」、「同一の」、またはパーセントの「同一性」とは、以下に記述されるデフォルトのパラメータを伴った、BLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または手動によるアライメント及び目視検査(例えば、NCBIウェブサイト www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などを参照)による測定で、同一(すなわち、比較ウィンドウまたは指定領域にわたり、最大の一致に対応して、比較及びアライメントさせた場合、特定の領域にわたり約60%の同一性、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは、それ以上の同一性)であるアミノ酸残基の、特定の割合を有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。この定義にはまた、欠失及び/または付加を有する配列、ならびに置換、同様に自然発生の、例えば、多形またはアレル変異体、及び人工変異体を有する配列を含む。以下に記述されるように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを考慮することができる。
【0121】
用語「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」とは、自然の状態で見出されれば、通常、伴っている成分を、実質的にまたは本質的に含まない物質を指す。純度及び同質性は、典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高性能液体クロマトグラフィーなどの、分析化学技術を使用して決定される。調製物中に存在する、主要な種であるタンパク質または核酸は、実質的に精製される。いくつかの実施形態における、用語「精製された」とは、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲルにおいて、本質的に1つのバンドを生じることを意味する。好ましくは、それは、核酸またはタンパク質が、少なくとも純度85%、より好ましくは、少なくとも純度95%、及び最も好ましくは、少なくとも純度99%であることを意味する。その他の実施形態における、「精製する」または「精製」は、精製された組成物から、少なくとも1つの混入物質を除去することを意味する。この意味において、精製は、その精製された化合物が、同質であること、例えば、純度100%である必要はない。
【0122】
以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態の提示を含んでいる。以下に続くこれらの実施例において開示される技術は、本開示の実践において良好に機能する、本発明者らによって発見された技術を表し、及びしたがって、その実践に対しては、より好ましい方法が構成されると考え得ることを、当業者には、理解されるものとする。しかしながら、本開示に照らして、開示された特定の実施形態において、多くの変更が可能であり、及び本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、なお類似のまたは同様の結果を得ることができることを、当業者には、理解されるものとする。
【0123】
したがって、本発明は例えば以下の実施形態を提供する。
[1]
ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む医薬組成物であって、前記ペプチド・ポリヌクレオチド複合体が、50未満対1であるペプチド対ポリヌクレオチドの比率を含み、前記ペプチドが、(a)非溶解性であり、及び細胞のエンドソームからの、ポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができ、ならびに(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記医薬組成物。
[2]
前記オリゴヌクレオチドに対するペプチドの比率が、約5対1から約45対1の間で選ばれる、前記[1]に記載の組成物。
[3]
前記オリゴヌクレオチドに対するペプチドの比率が、約5対1から約35対1、約10対1から約40対1、または約15対1から約45対1である、前記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
前記オリゴヌクレオチドに対するペプチドの比率が、約5対1から約30対1、約10対1から約35対1、約15対1から約40対1、または約20対1から約45対1である、前記[1]から[3]のいずれか1項に記載の組成物。
[5]
前記オリゴヌクレオチドに対するペプチドの比率が、約5対1から約25対1、約10対1から約30対1、約15対1から約35対1、もしくは約20対1から約40対1、または約25対1から約45対1である、前記[1]から[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6]
前記複合体が、直径が約50nmから約200nmのナノ粒子である、前記[1]から[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[7]
前記ペプチドが、配列番号1に対して、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記[1]から[6]のいずれか1項に記載の組成物。
[8]
前記ペプチドが、少なくとも1つのカチオン領域、及び前記ペプチドの少なくとも1つのカチオン領域に隣接するか、またはその領域内に位置する、少なくとも1つのヒスチジン残基を含む、前記[1]から[7]のいずれか1項に記載の組成物。
[9]
前記ポリヌクレオチドが、核酸配列の発現を調節または阻害することができる、非コードRNAである、前記[1]から[8]のいずれか1項に記載の組成物。
[10]
前記ポリヌクレオチドが、低分子干渉RNA(siRNA)またはマイクロRNA(miRNA)である、前記[1]から[9]のいずれか1項に記載の組成物。
[11]
前記複合体が、アルブミンで被覆される、前記[1]から[10]のいずれか1項に記載の組成物。
[12]
前記複合体のポリヌクレオチドが、STAT3、JNK2、p65、及びp100/52からなる群から選ばれるタンパク質をコードする、少なくとも1つの核酸配列を破壊する、前記[1]から[11]のいずれか1項に記載の組成物。
[13]
細胞の細胞質へ、ポリヌクレオチドを送達する方法であって、細胞をペプチド・ポリヌクレオチド複合体と接触させることを含み、前記ペプチド・ポリヌクレオチド複合体が、50未満対1であるペプチド対ポリヌクレオチドの比率を含み、前記ペプチドが、(a)非溶解性であり、及び細胞のエンドソームからの、ポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができ、ならびに(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記方法。
[14]
前記オリゴヌクレオチドに対するペプチドの比率が、約5対1から約45対1の間から選ばれる、前記[13]に記載の方法。
[15]
前記オリゴヌクレオチドに対するペプチドの比率が、約5対1から約35対1、約10対1から約40対1、または約15対1から約45対1である、前記[13]または[14]に記載の方法。
[16]
前記オリゴヌクレオチドに対するペプチドの比率が、約5対1から約30対1、約10対1から約35対1、約15対1から約40対1、または約20対1から約45対1である、前記[13]から[15]のいずれか1項に記載の方法。
[17]
前記オリゴヌクレオチドに対するペプチドの比率が、約5対1から約25対1、約10対1から約30対1、約15対1から約35対1、もしくは約20対1から約40対1、または約25対1から約45対1である、前記[13]から[16]のいずれか1項に記載の方法。
[18]
前記ポリヌクレオチドが、治療を必要とする対象において、細胞の細胞質へ送達され、及び前記ペプチド・ポリヌクレオチド複合体を含む、治療に有効な量の医薬組成物を、前記対象に投与することを含む、前記[13]から[17]のいずれか1項に記載の方法。
[19]
(a)前記ポリヌクレオチドが、通常、NFκBシグナル伝達経路に関連するヌクレオチドを破壊し、及び前記対象が、腫瘍に対する治療処置を必要としており、
(b)前記ポリヌクレオチドが、通常、NFκBシグナル伝達経路に関連するヌクレオチドを破壊し、及び前記対象が、関節炎に対する治療処置を必要としており、
(c)前記ポリヌクレオチドが、細胞における、STAT3の発現を破壊し、及び前記対象が、血管新生を阻害する治療処置を必要としており、
(d)前記ポリヌクレオチドが、細胞における、JNK2の発現を破壊し、及び前記対象が、泡沫細胞形成を阻害する治療処置を必要としており、または
(e)前記ポリヌクレオチドが、細胞における、p65の発現を破壊し、及び前記対象が、関節炎に対する治療処置を必要としている、前記[13]から[18]のいずれか1項に記載の方法。
[20]
配列番号1に対して、少なくとも80%の同一性を有し、ならびに非溶解性であり、及び細胞のエンドソームからの、ポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができるペプチドをコードする、アミノ酸配列。
[21]
前記アミノ酸配列が、配列番号1に対して、少なくとも90%の同一性を有する、前記[20]に記載のアミノ酸配列。
[22]
前記アミノ酸配列が、配列番号1に対して、少なくとも95%の同一性を有する、前記[20]に記載のアミノ酸配列。
[23]
前記アミノ酸配列が、配列番号1からなる、前記[20]に記載のアミノ酸配列。
[24]
アミノ酸配列を含むペプチドであって、配列番号1に対して、少なくとも80%の同一性を有し、非溶解性であり、及び細胞のエンドソームからの、ポリヌクレオチドの放出に影響を与えることができる、前記ペプチド。
[25]
前記ペプチドが、配列番号1に対して、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記[24]に記載のペプチド。
[26]
前記ペプチドが、配列番号1に対して、少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記[24]に記載のペプチド。
[27]
前記ペプチドが、配列番号1を含む、前記[24]に記載のペプチド。
【実施例】
【0124】
実施例1:siRNAによるノックダウンのスクリーニング
GFP-PESTを安定的に発現するB16細胞をノックダウンすることにより、GFP発現を、効果的にsiRNAでノックダウンしているかの、迅速なスクリーニングが可能になった。その理由は、そのPEST配列が、GFP半減期を、26から10時間に短縮するためである。細胞毒性を低下させるとともに、オリゴヌクレオチドとの相互作用を改善するように設計した改変に基づいて、メリチン誘導体を選定した。B16GFP細胞において、GFPのノックダウンのための、GFPsiRNAを送達する能力に対して、これらのペプチドをスクリーニングした(表1、
図1)。メリチン自体は、この濃度範囲で毒性がありすぎた一方で、p5RHHは、ペプチド対ポリヌクレオチドの比率が、50対1から200対1の間で使用された場合に、トランスフェクションすることができ、及びGFPノックダウンを示した。驚いたことに、p5RWRHは、50対1の比率では作用せず、しかしペプチド対ポリヌクレオチドの比率が、50未満対1で使用された場合、トランスフェクションすることができた。
【表2】
【0125】
実施例2:ペプチド/siRNAナノ集合体の調製及び分析
当該メリチン誘導体を、Genscript(Piscataway、NJ)によって配合し、RNAse/DNAse非含有水(Sigma、St.Louis、MO)に10mMで溶解し、及び使用するまで、4μlに分注し、-80℃で保管した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Sigma)に、ペプチドを1対200で希釈し、30秒間ボルテックスミキサーで攪拌し、次いで適量のsiRNA(1倍のsiRNA緩衝液中(Thermo)10μMのストック濃度)を加え、Eppendorf Thermomixer Rで振とうしながら、37℃で40分間インキュベーションすることによって、トランスフェクション複合体を調製した。得られたナノ粒子を、12%ポリアクリルアミドゲル上で分離し、次いでエチジウムブロマイド染色を行うことによってsiRNAの組込みを解析した。Zeta Plus粒度計測器(Brookhaven Instruments、Newton、MA)を使用して、動的光散乱(DLS)及びゼータ電位測定を実施した。10mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA、Sigma)中にて、新たに形成されたペプチド/siRNAナノ粒子を一晩インキュベーションすることにより、血清の安定性分析を実施し、次いでDLS及びゼータ電位測定を行った。
【0126】
実施例3:siRNAトランスフェクション
B16F10及びRAW264.7細胞株(ATCC、Manassas、VA)は、10%ウシ胎児血清(Gibco)を補給したDMEM(Gibco、Carlsbad、CA)中に、標準細胞インキュベーション条件(加湿インキュベーター中で、37℃及び5%CO2)の下で保持することができる。GFPを安定的に発現するB16F10細胞は、以下のようにして作製することができる。B16F10に、pEF6V5HisTOPO(Invitrogen)中において、EGFP(pEGFP-N1、Clontech)と、マウスのオルニチン脱炭酸酵素(S421-V461)からのPEST配列との融合物を、トランスフェクションすることができる。細胞は、抗生物質の選抜試薬を加えることなく、フローサイトメトリーによる、4ラウンドの細胞の選別で、選択する。典型的に、一分注量の細胞は、EGFP発現レベルの顕著な変更なしに、連続培養おいて1か月間、維持できる。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、Lifeline Technologies(Frederick、MD)から購入することができ、及び製造者の指示にしたがった、5ng/mLのEGF、5ng/mlのbFGF、15ng/mLのIGF-1、50μg/mLのアスコルビン酸、1μg/mLのヘミコハク酸ヒドロコルチゾン、0.75U/mLのヘパリン硫酸、10mMのL-グルタミン、2%のウシ胎児血清を補給した、VascuLife Basal Medium(Lifeline Technologies)において、培養可能である。
【0127】
トランスフェクションに対応して、細胞は、トランスフェクションの12時間前に、6ウェルプレートに移植し、及び標準細胞培養条件下で培養することができる。ペプチド/siRNAナノ粒子を調製し、及び最終容量が1mlのOptimemI(Gibco)、または10%のFBSを補給した適切な培地で、4時間、細胞と共にインキュベーションする。トランスフェクションは、細胞培養の表面積に基づいて、12ウェルプレートに移植された細胞に応じて、スケーリングする。トランスフェクション後、細胞をPBSで2回洗浄し、及び分析前のさらに24~72時間で、標準細胞培養培地でインキュベーションする。リポフェクトアミン2000は、製造者の手順にしたがって使用することができる。簡単に説明すると、リポフェクトアミン2000を、OptimemIで希釈して、最終濃度を8.4μg/mlとし、及び室温で15分間インキュベーションする。その後、siRNAを、希釈された脂質に添加し、及びトランスフェクションに対応して、OptimemIで合計容量を1mLに希釈する前に、さらに40分間インキュベーションする。適当なeGFPのsiRNAは、Sigmaから購入することができる。siGENOMEマウスのMAPK9のsiRNA1、siGENOMEマウスのSTAT3のsiRNA2、及びsiGENOMEヒトのSTAT3のsiRNA2の遺伝子特異的siRNAは、Dharmacon(Lafayette、CO)から購入することができる。スクランブルsiRNAは、Qiagen(Valencia、CA)から購入することができる。
【0128】
トランスフェクションは、当該技術分野で公知の、ウェスタンブロット法、リアルタイムPCR、共焦点顕微鏡、フローサイトメトリー、またはその他の適切なアッセイによって、評価され得る。
【配列表】