(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】分光分析装置および干渉光形成機構
(51)【国際特許分類】
G01J 3/45 20060101AFI20230309BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G01J3/45
G01N21/27 Z
(21)【出願番号】P 2022078453
(22)【出願日】2022-05-11
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2022029016
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522077580
【氏名又は名称】西藤 翼
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】西藤 翼
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0192365(US,A1)
【文献】特開2015-111169(JP,A)
【文献】特開2014-048096(JP,A)
【文献】特開2019-215262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01J 9/00 - G01J 9/04
G01B 9/02
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01N 21/00 - G01N 21/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光供給部と、
該光供給部から供給される
供給光を全て利用して干渉光を形成する干渉光形成部と、
該干渉光形成部によって形成された干渉光の光量を検出する検出部と、
を備え、
前記干渉光形成部は、
互い対向する反射面を有する第一反射部と第二反射部と、を備えており、
前記第二反射部は、
前記第一反射部に対して移動が固定された固定反射部と、
前記供給光の光軸と直交する基準面に沿って
前記第一反射部に対して移動可能に設けられた移動反射部と、
該移動反射部の基準面に沿った移動と固定とを行う移動部と、を備えており、
前記第一反射部は、
前記光供給部から供給される供給光を反射す
る一つの入射反射面を有し、
該一つの入射反
射面によって全ての供給光を平行光である入射光として前記第二反射部に入射する入射部と、
前記基準面と平行な対称面に対して前記入射部の入射反射面と面対称に設けられた出射反射面を有し、前記第二反射部から供給される反射光を干渉反射光として前記検出部に向けて出射する出射部と、を備えており、
前記第二反射部の固定反射部および移動反射部は、
前記第一反射部の一つの入射反射面と対向するように設けられており、
前記第二反射部の固定反射部は、
前記対称面に対して面対称に設けられた第一反射面と第二反射面とを備えており、
該第一反射面は、
前記第一反射部の入射部の入射反射面と対向し、かつ、前記入射光の一部が入射され該入射光を光軸が前記供給光の光軸と平行な第一反射光となるように反射するように設けられており、
該第二反射面は、
前記第一反射部の出射部の出射反射面と対向し、かつ、前記第一反射光が入射され該第一反射光を光軸と前記基準面とのなす角度が前記入射光の光軸と前記対称面とのなす角度と同じである第二反射光となるように反射するように設けられており、
前記第二反射部の移動反射部は、
前記固定反射部の第一反射面および第二反射面とそれぞれ平行な第三反射面と第四反射面とを備えており、
前記第三反射面は、
前記第一反射部の入射部の入射面と対向し、かつ、前記入射光の一部が入射され該入射光を光軸が前記供給光の光軸と平行な第三反射光となるように反射するように設けられており、
該第四反射面は、
前記第一反射部の出射部の出射反射面と対向し、かつ、前記第三反射光が入射され該第三反射光を光軸と前記基準面とのなす角度が前記入射光の光軸と前記対称面とのなす角度と同じである第四反射光となるように反射するように設けられている
ことを特徴とする分光分析装置。
【請求項2】
前記第一反射部は、
前記入射部の入射反射面が放物面であり、
前記出射部の出射反射面が放物面である
ことを特徴とする請求項1記載の分光分析装置。
【請求項3】
前記第一反射部は、
前記入射部が前記供給光を平行光とする平行光形成部を有しており、
前記入射部の入射反射面は、
前記平行光形成部が平行光とした供給光を平行光として前記第二反射部に向けて反射する平坦面であり、
前記入射部の出射反射面は、
前記第二反射部から供給される反射光を干渉反射光として前記検出部に反射する平坦面であり、
前記出射部が、
前記出射反射面で反射された前記干渉反射光を集光して前記検出部に入射する集光部を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の分光分析装置。
【請求項4】
前記光供給部と前記第一反射部の入射反射面との間にスリットが設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の分光分析装置。
【請求項5】
前記光供給部が、
供給される光を前記第一反射部の入射反射面に向けて反射する放物面を有する
ことを特徴とする請求項1記載の分光分析装置。
【請求項6】
入射される
供給光を全て利用して干渉光を形成する干渉光形成機構であって、
該干渉光形成機構は、
互い対向する反射面を有する第一反射部と第二反射部と、を備えており、
前記第二反射部は、
前記第一反射部に対して移動が固定された固定反射部と、
前記供給光の光軸と直交する基準面に沿って
前記第一反射部に対して移動可能に設けられた移動反射部と、
該移動反射部の基準面に沿った移動と固定を行う移動部と、を備えており、
前記第一反射部は、
入射される供給光を反射す
る一つの入射反射面を有し、
該一つの入射反
射面によって全ての供給光を平行光である入射光として前記第二反射部に入射する入射部と、
前記基準面と平行な対称面に対して前記入射部の入射反射面と面対称に設けられた出射反射面を有し、前記第二反射部から供給される反射光を干渉反射光として出射する出射部と、を備えており、
前記第二反射部の固定反射部および移動反射部は、
前記第一反射部の一つの入射反射面と対向するように設けられており、
前記第二反射部の固定反射部は、
前記対称面に対して面対称に設けられた第一反射面と第二反射面とを備えており、
該第一反射面は、
前記第一反射部の入射部の入射反射面と対向し、かつ、前記入射光の一部が入射され該入射光を光軸が前記供給光の光軸と平行な第一反射光となるように反射するように設けられており、
該第二反射面は、
前記第一反射部の出射部の出射反射面と対向し、かつ、前記第一反射光が入射され該第一反射光を光軸と前記対称面とのなす角度が前記入射光の光軸と前記対称面とのなす角度と同じである第二反射光となるように反射するように設けられており、
前記第二反射部の移動反射部は、
前記固定反射部の第一反射面および第二反射面とそれぞれ平行な第三反射面と第四反射面とを備えており、
前記第三反射面は、
前記第一反射部の入射面と対向し、かつ、前記入射光の一部が入射され該入射光を光軸が前記供給光の光軸と平行な第三反射光となるように反射するように設けられており、
該第四反射面は、
前記第一反射部の出射反射面と対向し、かつ、前記第三反射光が入射され該第三反射光を光軸と前記対称面とのなす角度が前記入射光の光軸と前記対称面とのなす角度と同じである第四反射光となるように反射するように設けられている
ことを特徴とする干渉光形成機構。
【請求項7】
前記第一反射部は、
前記入射部の入射反射面が放物面であり、
前記出射部の出射反射面が放物面である
ことを特徴とする
請求項6記載の干渉光形成機構。
【請求項8】
前記第一反射部は、
前記入射部が入射される供給光を平行光とする平行光形成部を有しており、
前記入射部の入射反射面は、
該平行光形成部が平行光とした供給光を平行光として前記第二反射部に向けて反射する平坦面であり、
前記入射部の出射反射面は、
前記第二反射部から供給される反射光を干渉反射光とし反射する平坦面であり、
前記出射部が、
前記出射反射面で反射された前記干渉反射光を集光して出射する集光部を備えている
ことを特徴とする請求項6記載の
干渉光形成機構。
【請求項9】
前記供給光の入射方向において、前記第一反射部の入射反射面より上流側に設けられたスリットを備えている
ことを特徴とする請求項6記載の干渉光形成機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析装置および干渉光形成機構に関する。
【背景技術】
【0002】
気体、液体や固体等(以下単に気体等という)に光が照射された際に、気体等を透過した光や気体等で反射した光(以下、物体光という)の波長は、気体等に存在する物質によって異なる。そこで、物体光の波長を利用して、気体等に存在する物質を判別・特定する方法として分光技術を用いた手法がある。分光技術を用いた手法では、物体光の周波数スペクトルやその強度を利用することによって、気体等に存在する物質を判別・特定したり、その物質の濃度など(以下、物質を判別・特定等という場合がある)を把握したりすることができる。
【0003】
分光技術を用いた手法としては、波長分散型分光法やフーリエ分光法が知られている。
【0004】
波長分散型分光法は、物体光を回折格子に照射したときに、物体光の波長に応じて回折角が異なることを利用して、物質を判別・特定等を行うことができる。
【0005】
フーリエ分光法は、マイケルソン型の2光束干渉光学系を用いた位相シフト干渉を利用した分光法であり、インターフェログラムを形成し、このインターフェログラムを数学的にフーリエ変換することにより分光特性を取得して、物質を判別・特定等を行う技術である。
【0006】
このフーリエ分光法を利用して物質を判別・特定等行う分光分析装置として、特許文献1に記載の技術が開発されている。この特許文献1の分光分析装置は、被測定物の各測定点から多様な方向に向かって発せられた多波長の光が入射する分割光学系と、分割光学系を透過した多波長の光をほぼ同一点に導き干渉像を形成する結像光学系と、干渉像の光強度を検出する検出部と、分割光学系から結像光学系に向かう多波長の光の一部と残りの多波長の光の相対的な光学光路長差を伸縮する光路長差伸縮手段と、光路長差伸縮手段によって光学光路長差を伸縮させることにより検出部で検出される光強度変化に基づき、被測定物の各測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と、を備えている。
【0007】
この特許文献1の分光分析装置では、分割光学系が、被測定物の各測定点から多様な方向に向かって発せられた多波長の光を第1反射部と第2反射部とに分割して導く構成となっている。また、光路長差伸縮手段は、第1及び第2反射部を相対的に移動させることにより分割光学系から第1反射部を経て結像光学系に向かう多波長の光と分割光学系から第2反射部を経て結像光学系に向かう多波長の光の光学光路長差を伸縮する構成としている。
【0008】
そして、特許文献1には、第1及び第2反射部の反射面を、それぞれ分割光学系を透過した平行光束の光軸に対して45°傾いた状態で配置すると、第1及び第2反射部で反射した光をそのまま結像光学系に導くことができる、との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したマイケルソン型の2光束干渉光学系と特許文献1の分光分析装置は、いずれも分割された光束を同じ位置に結像させることによってインターフェログラムを形成しているが、それぞれ以下のような特徴がある。
【0011】
まず、マイケルソン型の2光束干渉光学系は、分割された光束の結像位置を精度よく一致させることができる一方、装置の構成上、微小な振動でも干渉に影響を与えるという問題がある。しかも、ビームスプレッタを使用して光束を2つに分離しているため光利用率が低くなるため、物体光の強度が強くなければ測定が困難であるという問題も生じる。
【0012】
一方、特許文献1の分光分析装置では、分割光学系を透過してきた光線の全てを分析に用いることができるため、光の利用効率が高く、物体光の強度が弱くても測定が可能である。しかし、光路長差伸縮手段によって分割光学系によって分割された光束の光学光路長差を伸縮した際に、各光束の結像位置のズレが生じる。このため、被測定対象を二次元で計測した場合には、干渉像を形成する位置のズレが生じるため、空間分解能が低くなるという問題が生じる。
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、装置の外乱に対する頑強性を高めることができ、光利用率と空間分解能も高くできる分光分析装置および干渉光形成機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の分光分析装置は、光供給部と、該光供給部から供給される供給光から干渉光を形成する干渉光形成部と、該干渉光形成部によって形成された干渉光の光量を検出する検出部と、を備え、前記干渉光形成部は、互い対向する反射面を有する第一反射部と第二反射部と、を備えており、前記第二反射部は、前記第一反射部に対して移動が固定された固定反射部と、前記第一反射部に対して前記供給光の光軸と直交する基準面に沿って移動可能に設けられた移動反射部と、該移動反射部の基準面に沿った移動と固定を行う移動部と、を備えており、前記第一反射部は、前記光供給部から供給光を反射する入射反射面を有し、平行光である入射光として前記第二反射部に入射する入射部と、前記基準面と平行な対称面に対して前記入射部の入射反射面と面対称に設けられた出射反射面を有し、前記第二反射部から供給される反射光を干渉反射光として前記検出部に向けて出射する出射部と、を備えており、前記第二反射部の固定反射部は、前記対称面に対して面対称に設けられた第一反射面と第二反射面とを備えており、該第一反射面は、前記第一反射部の入射部の入射反射面と対向し、かつ、前記入射光の一部が入射され該入射光を光軸が前記供給光の光軸と平行な第一反射光となるように反射するように設けられており、該第二反射面は、前記第一反射部の出射部の出射反射面と対向し、かつ、前記第一反射光が入射され該第一反射光を光軸と前記基準面とのなす角度が前記入射光の光軸と前記対称面とのなす角度と同じである第二反射光となるように反射するように設けられており、前記第二反射部の移動反射部は、前記固定反射部の第一反射面および第二反射面とそれぞれ平行な第三反射面と第四反射面とを備えており、前記第三反射面は、前記第一反射部の入射部の入射面と対向し、かつ、前記入射光の一部が入射され該入射光を光軸が前記供給光の光軸と平行な第三反射光となるように反射するように設けられており、該第四反射面は、前記第一反射部の出射部の出射反射面と対向し、かつ、前記第三反射光が入射され該第三反射光を光軸と前記基準面とのなす角度が前記入射光の光軸と前記対称面とのなす角度と同じである第四反射光となるように反射するように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第一反射部に対して第二反射部の移動反射部を直線的に移動させて光路長を変更しているので、装置の外乱に対する頑強性を高めることができるし、結像位置のズレを防止でき測定の空間分解能も高くできる。しかも、光の反射だけを利用して光路長差を生じさせているので、光の利用効率を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の干渉光形成機構Mの概略説明図であり、(A)は(B)のA-A線概略断面であり、(B)は(A)のB-B線概略断面であり、(C)は(B)のC-C線概略断面である。
【
図2】本実施形態の干渉光形成機構Mの第二反射部R2を移動させた状態の概略説明図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のB-B線概略断面であり、(C)は(A)の底面面である。
【
図3】本実施形態の分光分析装置1の概略斜視図である。
【
図4】(A)本実施形態の分光分析装置1の概略平面図であり、(B)は(A)のB矢視図ある。
【
図5】(A)は
図4(A)のVA-VA線矢視図であり、(B)は
図4(B)のVB-VB線矢視図である。
【
図6】本実施形態の分光分析装置1の光路長変更の説明図であり、(A)は第一ミラー17の反射面17aおよび第二ミラー18の反射面18aと第三ミラー21の反射面21aおよび第四ミラー22の反射面22aとを面一にした状態であり、(B)は第三ミラー21の反射面21aおよび第四ミラー22の反射面22aを入射部材12の入射反射面12aおよび出射部材13の出射反射面13aから離間した状態である。
【
図7】本実施形態の分光分析装置1から壁2b以外のフレーム2を除いた概略斜視図である。
【
図9】他の実施形態の干渉光形成機構MBの概略説明図であり、(A)は(B)のA-A線概略断面であり、(B)は(A)のB-B線概略断面であり、(C)は(B)のC-C線概略断面である。
【
図10】他の実施形態の干渉光形成機構MBの第二反射部R2を移動させた状態の概略説明図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のB-B線概略断面であり、(C)は(A)の底面面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の分光分析装置は、フーリエ分光法を利用して被測定対象や被測定対象に含まれる物質を判別・特定する分光分析装置であり、干渉光を形成する機構に特徴を有するものである。
【0018】
本実施形態の分光分析装置によって物質を判別・特定する被測定対象はとくに限定されない。気体や液体、固体を被測定対象とすることができる。また、判別・特定する物質もとくに限定されず、被測定対象に含まれる気体や液体、固体を判別・特定する物質とすることができる。例えば、気体であれば、メタンや二酸化炭素などの炭素系ガス、アンモニア等の天然ガスや産業ガスを判別・特定することが可能である。
【0019】
<本実施形態の干渉光形成機構>
まず、本実施形態の分光分析装置1を説明する前に、本実施形態の分光分析装置1に採用される干渉光形成機構M(本実施形態の干渉光形成機構M、以下単に干渉光形成機構Mという場合がある)を説明する。
【0020】
図1および
図2に示すように、干渉光形成機構Mは、第一反射部R1と、第二反射部R2と、を備えている。
【0021】
<第一反射部R1>
図1および
図2に示すように、第一反射部R1は、対称面SPに対して互いに面対称となるように設けられた入射反射面SIと出射反射面SOとを備えている。入射反射面SIおよび出射反射面SOはいずれも放物面に形成されており、入射反射面SIおよび出射反射面SOに入射された光を集光したり平行光としたりすることができる形状に形成されている。例えば、入射反射面SI(または出射反射面SO)に非平行光が入射されるとその光を平行光として反射したり、入射反射面SI(または出射反射面SO)に平行光が入射されるとその反射光を所定の焦点に集光させたりすることができるように、入射反射面SI(または出射反射面SO)は形成されている。
【0022】
なお、上記構成の場合には、第一反射部R1において、上述した入射反射面SIが設けられる部分が特許請求の範囲の請求項6にいう入射部に相当し、上述した出射反射面SOが設けられる部分が特許請求の範囲の請求項6にいう出射部に相当するものになる。
【0023】
<第二反射部R2>
図1および
図2に示すように、第二反射部R2は、第一反射部R1の入射反射面SIおよび出射反射面SOと対向するように設けられている。この第二反射部R2は、第一反射部R1に対して移動が固定された固定反射部FRと、第一反射部R1に対して移動可能に設けられた移動反射部MRと、とを有している(
図1(B)、
図2(B)参照)。
【0024】
<固定反射部FR>
図1および
図2に示すように、固定反射部FRは、対称面SPに対して面対称に設けられた第一反射面SR1と第二反射面SR2とを備えている。
【0025】
第一反射面SR1は、第一反射部R1の入射反射面SIと対向するように設けられている。具体的には、第一反射部R1の入射反射面SIに対して対称面SPの法線と平行な光(以下、供給光Lという)が入射されると、その光を反射した光(以下、入射光RLという)の一部(
図1(B)および
図2(B)では入射反射面SIの上部(入射反射面SIを上下に二分割する面Vより上方の部分)で反射した光)が入射されるように設けられている。しかも、第一反射面SR1は、入射光RLを反射した反射光(以下、第一反射光L1という)の光軸が、対称面SPの法線(言い換えれば、供給光Lの光軸)と平行となるように設けられている。つまり、第一反射面SR1は、その反射角θ1(
図2(A)における入射光RLと第一反射光L1とのなす角θ1)が、入射反射面SIの反射角θi(
図2(A)における供給光Lと入射光RLとのなす角θi)と同じ角度になるように設けられている。なお、上記のように配設することによって、第一反射光L1の全てが第二反射面SR2に向けて反射されることになる。
【0026】
第二反射面SR2は、第一反射部R1の出射反射面SOと対向するように設けられている。具体的には、第一反射面SR1から入射される第一反射光L1を第二反射面SR2が反射すると、その反射光(以下、第二反射光L2という)が出射反射面SO(具体的には出射反射面SOの上部)に入射するように第二反射面SR2は設けられている。しかも、第二反射面SR2は、第二反射光L2の光軸と対称面SPとのなす角度が、入射光LIの光軸と対称面SPとのなす角度と同じ角度となるように設けられている。上記のように配設することによって、第二反射光L2の全てが出射反射面SOに向けて反射されることになる。
【0027】
ここで、第二反射面SR2は、対称面SPに対して第一反射面SR1と面対称に設けられているので、上記の構成であれば、出射反射面SOの反射角θo(
図2(A)における第二反射光L2と出射反射面SOで反射した光(以下、干渉反射光LFという)とのなす角θo)は、入射反射面SIの反射角θiと同じになる。したがって、上記のように第二反射面SR2を設ければ、第二反射面SR2の反射角θ2(
図2(A)における第一反射光L1と第二反射光L2とのなす角θ2)は、出射反射面SOの反射角θoと同じ角度になる。
【0028】
<移動反射部MR>
図1(C)および
図2(C)に示すように、移動反射部MRは、対称面SPに対して面対称に設けられた第三反射面SR3と第四反射面SR4とを備えている。
【0029】
第三反射面SR3は、第一反射面SR1と平行に設けられた面であり、入射反射面SIに対する位置関係が実質的に第一反射面SR1と同様となるように設けられている。つまり、第三反射面SR3は、第一反射部R1の入射反射面SIに供給光Lが入射されると、入射光RLの一部(
図1(B)および
図2(B)では入射反射面SIの下部(面Vより下方の部分)で反射した光)が入射されるように設けられている。しかも、第三反射面SR3は、入射光RLを反射した反射光(以下、第三反射光L3という)の光軸が、対称面SPの法線(言い換えれば、供給光Lの光軸)と平行となるように設けられている。つまり、第三反射面SR3は、その反射角θ3(
図2(C)における入射光RLと第三反射光L3とのなす角θ3)が、入射反射面SIの反射角θiと同じ角度になるように設けられている。なお、上記のように配設することによって、第三反射光L3の全てが第四反射面SR4に向けて反射されることになる。
【0030】
第四反射面SR4は、第二反射面SR2と平行に設けられた面であり、出射反射面SOに対する位置関係が実質的に第二反射面SR2と同様となるように設けられている。つまり、第四反射面SR4は、第三反射面SR3から入射される第三反射光L3を第四反射面SR4が反射すると、その反射光(以下、第四反射光L4という)が出射反射面SO(具体的には出射反射面SOの下部)に入射するように設けられている。しかも、第四反射面SR4は、第四反射光L4の光軸と対称面SPとのなす角度が、入射光LIの光軸と対称面SPとのなす角度と同じ角度となるように設けられている。つまり、第四反射面SR4は、その反射角θ4(
図2(C)における第三反射光L3と第四反射光L4とのなす角θ4)が出射反射面SOの反射角θoと同じ角度になるように設けられている。上記のように配設することによって、第四反射光L4の全てが出射反射面SOに向けて反射されることになる。
【0031】
そして、移動反射部MRは、第三反射面SR3および第四反射面SR4を上記の状態を維持したまま、第一反射部R1に対して接近離間できるように設けられている。具体的には、移動反射部MRは、第三反射面SR3および第四反射面SR4を上記の状態を維持したまま、対称面SPと平行な方向(
図1、
図2では左右方向)に移動できるように設けられている。つまり、移動反射部MRを移動させても、対称面SPの法線方向から見たときに、第三反射面SR3に入射する入射光LIの光軸が第一反射面SR1に入射する入射光LIの光軸と常に一致し、出射反射面SOに入射する第四反射光L4の光軸も出射反射面SOに入射するに第二反射光L2の光軸と常に一致した状態に維持されるように、移動反射部MRは設けられている(
図2(C)参照)。
【0032】
本実施形態の干渉光形成機構Mは上記の構成を有するので、供給光Lを全て利用して干渉反射光LFによる干渉像を形成することができる。すると、供給光Lの強度が弱くても、ある程度の信号強度を有するインターフェログラムを形成できる干渉像を形成することができる。
【0033】
また、本実施形態の干渉光形成機構Mは上記の構成であるので、入射反射面SIの反射角θi、第一~第四反射面SR1~SR4の反射角θ1~θ4および出射反射面SOの反射角θoが全て同じ角度になり、この関係は移動反射部MRを移動させても変化しない(
図2(C)参照)。このため、供給光Lの光軸と干渉反射光LFの光軸とを同軸に維持した状態で光路長を変更できる。また、移動反射部MRを移動させて光路長を変化させても、対称面SPと平行な方向から見ると、第一、第三反射面SR1,SR3に入射する入射光LI,L3の光軸は常に一致しており、出射反射面SOに入射する第二、第四反射光L2,L4の光軸も常に一致した状態に維持される(
図2(C)参照)。つまり、供給光Lを分割した各光束の光路長を実質的に共通の光路で変化させる、言い換えれば、供給光Lを分割した各光束に実質的に共通の光路で位相差を生じさせることができる。したがって、移動反射部MRを移動させて光路長を変化させた際に、両光束が結像する位置のズレも防止することができるから、空間分解能の高い干渉像を得ることができる。また、干渉光形成機構Mの振動などの外乱に対する頑強性を高くできる。
【0034】
なお、干渉反射光LFの光軸とは、第二反射光L2を出射反射面SOで反射した干渉反射光LF1と、第四反射光L4を出射反射面SOで反射した干渉反射光LF2と、の両方を含む光束の光軸を意味している。
【0035】
<本実施形態の分光分析装置1>
つぎに、本実施形態の分光分析装置1を説明する。
図3~
図7に示すように、本実施形態の分光分析装置1は、被測定対象である気体や液体、固体等(以下、気体等という場合がある)を透過した光や気体等で反射した光(以下、物体光という場合がある)に基づいて、被測定対象に含まれる物質を判別・特定する装置である。具体的には、物体光から形成される干渉像のインターフェログラムをフーリエ変換することによって、物体光の分光特性を取得して被測定対象に含まれる物質を判別・特定する装置である。
【0036】
この本実施形態の分光分析装置1(以下、単に分光分析装置1という場合がある)は、光供給部3(
図4参照)と、スリット4と、干渉光形成部10と、検出部5と、制御部と、を有しており、干渉光形成部10が上述した本実施形態の干渉光形成機構Mの構成を有している。
以下、各構成について説明するが、以下の構成は一例であり、同様な機能を発揮することができるのであれば、下記構成に限定されない。
【0037】
<フレーム部2>
分光分析装置1は、フレーム部2を備えている。このフレーム部2は、ベース部材2aと、このベース部材2aに立設された壁部材2bと、フレーム体2c、と、を備えている。ベース部材2aは、その上面が平坦面になったベース面bs(
図5(A)参照)を有している。なお、ベース面bsは、ベース部材2aの上面全面に設けられていてもよいし、ベース部材2aの上面の一部にのみ設けてもよい。ベース面bsを一部にのみ設ける場合には、そのベース面bs上に後述する移動部30を設けることが望ましい。壁部材2bは、光供給部3やスリット4、干渉光形成部10の第一反射部11が設置される部材であり、その表面sがベース面bsと直交するように設けられている。またフレーム体2cは、干渉光形成部10の第二反射部15が設置される部材である。
【0038】
なお、フレーム部2の構造は上述した構造や
図3に示す構造に限定されない。
【0039】
<光供給部3>
光供給部3は、物体光を干渉光形成部10に対して供給光Lとして供給するものである。具体的には、光供給部3は、物体光を集光した後、干渉光形成部10の入射部材12の入射反射面12aに対して供給光Lとして供給するものである。より詳しく言えば、光供給部3は、光軸がベース部材2aのベース面bsと平行な光軸面(
図1、2であれば面Vが相当する)上に位置しかつ壁部材2bの表面sと平行となるように供給光Lを形成する機能を有している。しかも、光供給部3は、光供給部3と干渉光形成部10の入射部材12の入射反射面12aとの間において焦点FPを形成した後、干渉光形成部10の入射部材12の入射反射面12aに供給光Lを入射する機能も有している。
【0040】
なお、光供給部3は、供給光Lを形成する部材として、一般的な対物レンズや放物面ミラー等を使用することができるが、上述した機能を満たすものであればよく、とくに限定されない。
【0041】
<スリット4>
光供給部3と干渉光形成部10の入射部材12の入射反射面12aとの間には、スリット4が設けられている。このスリット4は、例えば、偏向フィルタとして機能するものであり、上述した焦点FPの位置に設けられている。
【0042】
なお、スリット4は必ずしも設けなくてもよい。しかし、スリット4を設けることによって特定の方向の波の光のみで干渉像を形成できるので、物質を判別・特定する精度を高くできる。また、スリット4に代えてピンホールを設けてもよい。
【0043】
<干渉光形成部10>
干渉光形成部10は、上述した干渉光形成機構Mと実質的に同様の構成と有している。
干渉光形成部10は、第一反射部11と、第二反射部15と、移動部30と、を備えている。第一反射部11および第二反射部15は、上述した本実施形態の干渉光形成機構Mの第一反射部R1および第二反射部R2と実質的同等の機能を有するものである。以下の説明では、本実施形態の干渉光形成機構Mと同等の構成や配置となる部分については適宜説明を割愛する。
【0044】
<第一反射部11>
図3および
図4に示すように、壁部材2bの表面sには、第一反射部11の入射部材12が設けられている。この入射部材12は、光供給部3から供給される、スリット4を通過した供給光Lが入射される入射反射面12aが設けられている。この入射反射面12aは放物面であり、供給光Lを平行光である入射光LIに変換して第二反射部15に向かって反射するように設けられている。しかも、入射部材12は、入射光RLの光軸が上述した光軸面上に位置するように供給光Lを反射するように設けられている(
図4(A)参照)。
【0045】
また、壁部材2bの表面sには、第一反射部11の出射部材13が設けられている。この出射部材13は、第二反射部15から供給される反射光(上述した第二、第四反射光L2,L4)が入射される出射反射面13aを有しており、その出射反射面13aが供給光Lの光軸と直交する対称面SPに対して入射部材12の入射反射面12aと面対称となるように配設されている。この出射反射面13aは放物面であり、反射光を干渉反射光LFとして後述する検出部5に向かって反射するように設けられている。
【0046】
なお、上記構成の場合には、第一反射部11において、上述した入射部材12が特許請求の範囲の請求項1にいう入射部に相当し、上述した出射部材13が特許請求の範囲の請求項1にいう出射部に相当するものになる。
【0047】
<第二反射部15>
図4および
図6に示すように、第一反射部11の側方には、第一反射部11の入射部材12の入射反射面12aおよび出射部材13の出射反射面13aと対向するように、第二反射部15が設けられている。この第二反射部15は、固定反射部16と移動反射部20とを有している。
【0048】
<固定反射部16>
図5(A)に示すように、固定反射部16は、フレーム部2のフレーム体2cに固定された第一ミラー17と第二ミラー18とを備えている。第一ミラー17と第二ミラー18は平坦面である反射面17aおよび反射面18aを有しており、反射面17a,18aがそれぞれ入射部材12の入射反射面12aおよび出射部材13の出射反射面13aと対向するように設けられている(
図4(A)参照)。しかも、第一ミラー17と第二ミラー18とは、第一ミラー17の反射面17aと第二ミラー18の反射面18aとが対称面SPに対して互いに面対称となるように配設されている。
【0049】
また、第一ミラー17は、反射面17aの反射角θ1と第一反射部11の入射部材12の入射反射面12aの反射角θiとが同じ角度となり、しかも、第一反射光L1の光軸が光軸面と平行となるように設けられている(
図2、
図4(A)参照)。
【0050】
一方、第二ミラー18は、反射面18aの反射角θ2と第一反射部11の出射部材13の出射反射面13aの反射角θoとが同じ角度となり、しかも、第二反射光L2の光軸が光軸面と平行となるように設けられている(
図2、
図4(A)参照)。
【0051】
<移動反射部20>
図5~
図6に示すように、移動反射部20は、フレーム部2のベース部材2aのベース面bsに設置された移動部30の移動テーブル32に固定されている。第三ミラー21と第四ミラー22は、第一ミラー17および第二ミラー18と同様に、その反射面21a,22aがそれぞれ入射部材12の入射反射面12aおよび出射部材13の出射反射面13aと対向するように設けられている。しかも、第三ミラー21と第四ミラー22とは、第三ミラー21の反射面21aと第四ミラー22の反射面22aとが対称面SPに対して互いに面対称となるように配設されている。
【0052】
また、第三ミラー21は、反射面21aの反射角θ3と第一反射部11の入射部材12の入射反射面12aの反射角θiとが同じ角度となり、しかも、第三反射光L3の光軸が光軸面と平行となるように設けられている(
図2、
図4(A)参照)。
【0053】
一方、第四ミラー22は、反射面22aの反射角θ4と第一反射部11の出射部材13の出射反射面13aの反射角θoとが同じ角度となり、しかも、第四反射光L4の光軸が光軸面と平行となるように設けられている(
図2、
図4(A)参照)。
【0054】
<移動部30>
移動部30は、上述したように、フレーム部2のベース部材2aのベース面bsに設けられている。この移動部30は、ベース部31と、このベース部31に対して一方向に移動可能に設けられた移動テーブル32と、移動テーブル32を移動させる移動機構と、を備えている。そして、移動部30は、移動テーブル32の移動方向が対称面SPおよびベース部材2aのベース面bsと平行となるように設けられている。したがって、移動機構によって移動テーブル32を移動させると、上述した関係を維持したまま、移動反射部20(つまり、移動反射部20の第三ミラー21と第四ミラー22)を第一反射部11に対して接近離間させることができる。
【0055】
したがって、干渉光形成部10に供給光Lが入射されると、供給光Lは、入射部材12の入射反射面12aで反射され入射光RLとなって第二反射部15の固定反射部16の第一ミラー17および移動反射部20の第三ミラー21に入射される。入射光LIは、第一ミラー17の反射面17aおよび第二ミラー18の反射面18aで反射され、第一反射光L1、第三反射光L3となって固定反射部16の第二ミラー18および移動反射部20の第四ミラー22にそれぞれ入射される。第一反射光L1および第三反射光L3は、第二ミラー18の反射面18aおよび第三ミラー22の反射面22aでそれぞれ反射され、二反射光L2、第四反射光L4となって出射部材13の出射反射面13aに入射される。そして、第二反射光L2、第四反射光L4は、出射部材13の出射反射面13aで反射されて干渉反射光LF1,LF2を合せた光干渉反射光LFとして干渉光形成部10から出射される。ここで、供給光Lの光軸と干渉反射光LFの光軸は同軸となり、第一反射光L1~第四反射光L4の光軸は全て光軸面と平行になるので、出射部材13の出射反射面13aから所定の距離の同じ位置で干渉反射光LF1,LF2が焦点を形成する。つまり、干渉反射光LF1,LF2の焦点は一致し、この焦点において干渉像を形成することができる。
【0056】
また、移動部30の移動テーブル32を移動させると、第一干渉反射光束(入射光RL、第一反射光L1、第二反射光L2、干渉反射光LF1からなる光束)の光路と、第二干渉反射光束(入射光RL、第三反射光L2、第四反射光L4、干渉反射光LF2からなる光束)の光路と、の間で光路差を生じさせることができる。しかも、実質的に共通の光路(具体的には、光軸面の法線方向から見たときに実質的に共通の光路)で位相差を生じさせることができるから、移動反射部20を移動させて光路長を変化させた際に、両光束が結像する位置のズレも防止することができる。
【0057】
なお、移動部30は、移動テーブル32を一方向に精度よく等速(例えば30μm/s以下)で移動させることができる機能を有するものであればよく、とくに限定されない。例えば、市販されている一軸ステージ等を移動部30として使用することができる。
また、移動テーブル32は手動で移動できるようにしてもよいし、自動で移動できるようにしてもよい。なお、移動テーブル32を自動で移動できるようにした場合には、光路差を精度よく調整し易くなる。また、移動反射部20を等速で移動させることができるという利点が得られる。
【0058】
<検出部5>
検出部5は、干渉光形成部10の出射反射面13から供給される干渉反射光LFの光量を測定する機能を有するものである。具体的には、検出部5は、受光素子を備えた検出面5aを有しており、この検出面5a上に干渉像が形成されるように配設されている。つまり、検出部5は、検出面5a上に形成された干渉縞の光量を測定する機能を有することができる。そして、検出部5は検出面5aの受光素子が検出した光量(干渉縞の光量)に関する信号を制御部7に供給する機能を有している。
【0059】
検出部5は、上記の機能を有するものであればよくとくに限定されないが、例えば、二次元CCDカメラやCMOSカメラ等を採用することができる。二次元CCDカメラのように、複数の受光素子が二次元的に配列された検出面5aを有するものを使用すれば、被測定対象における物質の二次元的な分布を得ることができる。例えば、被測定対象において、物質の存在位置を二次元的に取得したり濃度などの二次元的な分布を取得したりすることも可能である。
【0060】
<制御部>
制御部は、検出部5によって検出される干渉像の光量に関する信号を解析する解析機能を有している。具体的には、干渉反射光LF1,LF2の光路長差と検出部5から供給される光量に関する信号を解析して、インターフェログラムを形成し、このインターフェログラムをフーリエ変換することによって分光特性を取得する機能を有している。
【0061】
なお、移動部30の移動機構が移動テーブル32を自動で移動できるようにした場合には、制御部は移動機構の作動を制御する機能を有していてもよい。かかる機能を設ければ、移動テーブル32の移動、つまり、移動反射部20の第三ミラー21および第四ミラー22の移動とカメラの撮影レートとを合せることができる。つまり、光量を等間隔で取得できるので、取得された光量に基づいて形成されるインターフェログラムをフーリエ変換し易くなる。すると、分光特性を取得するための信号処理を容易にできるし、データ処理時間を短くすることができる。
【0062】
本実施形態の分光分析装置1は以上のような構成を有しているので、光供給部3を通して物体光を干渉光形成部10に入射すれば、検出部5の検出面5aに干渉像を形成できる。すると、制御部によって干渉像を解析すれば、被測定対象に含まれる物質を判別・特定することができる。
【0063】
なお、本実施形態の分光分析装置1は、必ずしも制御部を設けなくてもよい。この場合、制御部に供給された光量と干渉反射光LF1,LF2の光路長差に関する信号を測定データとして記憶する機能を設けておき、測定データを別の解析装置によって解析してもよい。
【0064】
<他の実施形態の干渉光形成機構MB>
本実施形態の分光分析装置1は、上述したように、第一反射部11の入射部の入射部材12の入射反射面12aや出射部材13の出射反射面13aが放物面である場合を説明したが、第一反射部11の入射部材12の入射反射面12aや出射部材13の出射反射面13aは平坦面としてもよい。つまり、本実施形態の分光分析装置1に採用される干渉光形成機構の構成として、第一反射部R1の入射反射面SIおよび出射反射面SOが平坦面である干渉光形成機構MBを採用してもよい。
【0065】
以下、第一反射部R1の入射反射面SIおよび出射反射面SOが平坦面である干渉光形成機構MB(他の実施形態の干渉光形成機構MB)について説明する。
【0066】
図9および
図10に示すように、干渉光形成機構MBは、第一反射部R1と、第二反射部R2と、を備えている。
【0067】
<第一反射部R1>
図9および
図10に示すように、第一反射部R1は、対称面SPに対して互いに面対称となるように設けられた入射反射面SIと出射反射面SOとを備えている。入射反射面SIおよび出射反射面SOはいずれも平坦面に形成されている。
【0068】
第一反射部R1は、入射反射面SIと対向する位置に平行光形成部PPを備えている。この平行光形成部PPは、例えば、集光レンズなどであり、入射反射面SIに入射される供給光Lを平行光として入射反射面SIに供給するものである。
【0069】
また、第一反射部R1は、出射反射面SOと対向する位置に集光部CPを備えている。この集光部CPは、例えば、集光レンズなどであり、出射反射面SOで反射された平行光である干渉反射光LFを集光するものである。
【0070】
なお、上記構成の場合には、第一反射部R1において、上述した入射反射面SIが設けられる部分および平行光形成部PPが特許請求の範囲の請求項6にいう入射部に相当し、上述した出射反射面SOが設けられる部分および集光部CPが特許請求の範囲の請求項6にいう出射部に相当するものになる。
【0071】
<第二反射部R2>
図1および
図2に示すように、第二反射部R2は、第一反射部R1の入射反射面SIおよび出射反射面SOと対向するように設けられている。この第二反射部R2は、第一反射部R1に対して移動が固定された固定反射部FRと、第一反射部R1に対して移動可能に設けられた移動反射部MRと、とを有している(
図9(B)、
図10(B)参照)。
【0072】
<固定反射部FR>
図9および
図10に示すように、固定反射部FRは、対称面SPに対して面対称に設けられた第一反射面SR1と第二反射面SR2とを備えている。
【0073】
第一反射面SR1は、第一反射部R1の入射反射面SIと対向するように設けられている。具体的には、第一反射部R1の入射反射面SIに対して対称面SPの法線と平行な光(以下、供給光Lという)が入射されると、その光を反射した光(以下、入射光RLという)の一部(
図9(B)および
図10(B)では入射反射面SIの上部(入射反射面SIを上下に二分割する面Vより上方の部分)で反射した光)が入射されるように設けられている。しかも、第一反射面SR1は、入射光RLを反射した反射光(以下、第一反射光L1という)の光軸が、対称面SPの法線(言い換えれば、供給光Lの光軸)と平行となるように設けられている。つまり、第一反射面SR1は、その反射角θ1(
図10(A)における入射光RLと第一反射光L1とのなす角θ1)が、入射反射面SIの反射角θi(
図10(A)における供給光Lと入射光RLとのなす角θi)と同じ角度になるように設けられている。なお、上記のように配設することによって、第一反射光L1の全てが第二反射面SR2に向けて反射されることになる。
【0074】
第二反射面SR2は、第一反射部R1の出射反射面SOと対向するように設けられている。具体的には、第一反射面SR1から入射される第一反射光L1を第二反射面SR2が反射すると、その反射光(以下、第二反射光L2という)が出射反射面SO(具体的には出射反射面SOの上部)に入射するように第二反射面SR2は設けられている。しかも、第二反射面SR2は、第二反射光L2の光軸と対称面SPとのなす角度が、入射光LIの光軸と対称面SPとのなす角度と同じ角度となるように設けられている。上記のように配設することによって、第二反射光L2の全てが出射反射面SOに向けて反射されることになる。
【0075】
ここで、第二反射面SR2は、対称面SPに対して第一反射面SR1と面対称に設けられているので、上記の構成であれば、出射反射面SOの反射角θo(
図10(A)における第二反射光L2と出射反射面SOで反射した光(以下、干渉反射光LFという)とのなす角θo)は、入射反射面SIの反射角θiと同じになる。したがって、上記のように第二反射面SR2を設ければ、第二反射面SR2の反射角θ2(
図10(A)における第一反射光L1と第二反射光L2とのなす角θ2)は、出射反射面SOの反射角θoと同じ角度になる。
【0076】
<移動反射部MR>
図9(C)および
図10(C)に示すように、移動反射部MRは、対称面SPに対して面対称に設けられた第三反射面SR3と第四反射面SR4とを備えている。
【0077】
第三反射面SR3は、第一反射面SR1と平行に設けられた面であり、入射反射面SIに対する位置関係が実質的に第一反射面SR1と同様となるように設けられている。つまり、第三反射面SR3は、第一反射部R1の入射反射面SIに供給光Lが入射されると、入射光RLの一部(
図9(B)および
図10(B)では入射反射面SIの下部(面Vより下方の部分)で反射した光)が入射されるように設けられている。しかも、第三反射面SR3は、入射光RLを反射した反射光(以下、第三反射光L3という)の光軸が、対称面SPの法線(言い換えれば、供給光Lの光軸)と平行となるように設けられている。つまり、第三反射面SR3は、その反射角θ3(
図10(C)における入射光RLと第三反射光L3とのなす角θ3)が、入射反射面SIの反射角θiと同じ角度になるように設けられている。なお、上記のように配設することによって、第三反射光L3の全てが第四反射面SR4に向けて反射されることになる。
【0078】
第四反射面SR4は、第二反射面SR2と平行に設けられた面であり、出射反射面SOに対する位置関係が実質的に第二反射面SR2と同様となるように設けられている。つまり、第四反射面SR4は、第三反射面SR3から入射される第三反射光L3を第四反射面SR4が反射すると、その反射光(以下、第四反射光L4という)が出射反射面SO(具体的には出射反射面SOの下部)に入射するように設けられている。しかも、第四反射面SR4は、第四反射光L4の光軸と対称面SPとのなす角度が、入射光LIの光軸と対称面SPとのなす角度と同じ角度となるように設けられている。つまり、第四反射面SR4は、その反射角θ4(
図10(C)における第三反射光L3と第四反射光L4とのなす角θ4)が出射反射面SOの反射角θoと同じ角度になるように設けられている。上記のように配設することによって、第四反射光L4の全てが出射反射面SOに向けて反射されることになる。
【0079】
そして、移動反射部MRは、第三反射面SR3および第四反射面SR4を上記の状態を維持したまま、第一反射部R1に対して接近離間できるように設けられている。具体的には、移動反射部MRは、第三反射面SR3および第四反射面SR4を上記の状態を維持したまま、対称面SPと平行な方向(
図1、
図2では左右方向)に移動できるように設けられている。つまり、対称面SPの法線方向から見たときに、第三反射面SR3に入射する入射光LIの光軸が第一反射面SR1に入射する入射光LIの光軸と常に一致し、出射反射面SOに入射する第四反射光L4の光軸も出射反射面SOに入射するに第二反射光L2の光軸と常に一致した状態に維持されるように、移動反射部MRは設けられている(
図10(C)参照)。
【0080】
本実施形態の干渉光形成機構MBは上記の構成を有するので、供給光Lを全て利用して干渉反射光LFによる干渉像を形成することができる。すると、供給光Lの強度が弱くても、ある程度の信号強度を有するインターフェログラムを形成できる干渉像を形成することができる。
【0081】
また、本実施形態の干渉光形成機構MBは上記の構成であるので、入射反射面SIの反射角θi、第一~第四反射面SR1~SR4の反射角θ1~θ4および出射反射面SOの反射角θoが全て同じ角度になり、この関係は移動反射部MRを移動させても変化しない(
図10(C)参照)。このため、供給光Lの光軸と干渉反射光LFの光軸とを同軸に維持した状態で光路長を変更できる。また、移動反射部MRを移動させて光路長を変化させても、対称面SPの法線方向から見ると、第一、第三反射面SR1,SR3に入射する入射光LI,L3の光軸は常に一致しており、出射反射面SOに入射する第二、第四反射光L2,L4の光軸も常に一致した状態に維持される(
図10(C)参照)。つまり、供給光Lを分割した各光束の光路長を実質的に共通の光路で変化させる、言い換えれば、供給光Lを分割した各光束に実質的に共通の光路で位相差を生じさせることができる。したがって、移動反射部MRを移動させて光路長を変化させた際に、両光束が結像する位置のズレも防止することができるから、空間分解能の高い干渉像を得ることができる。また、干渉光形成機構MBの振動などの外乱に対する頑強性を高くできる。
【0082】
なお、干渉反射光LFの光軸とは、第二反射光L2を出射反射面SOで反射した干渉反射光LF1と、第四反射光L4を出射反射面SOで反射した干渉反射光LF2と、の両方を含む光束の光軸を意味している。
【0083】
<出射反射面SOについて>
上述したように、干渉光形成機構MBでは、第一反射部R1の入射反射面SIおよび出射反射面SOがいずれも平坦面である場合を説明した。しかし、第一反射部R1の入射反射面Sを平坦面とした場合でも、出射反射面SOは放物面としてもよい。この場合には、集光部CPを設けなくてもよくなる。
【0084】
なお、出射反射面SOは放物面とした場合には、第一反射部R1の入射反射面SIと出射反射面SOとは面対称にはならない。しかし、出射反射面SOの反射角θoが入射反射面SIの反射角θiとが同じになるように設ければ、第一反射部R1の入射反射面SIおよび出射反射面SOをいずれも平坦面とした場合と同じ光軸の干渉反射光LFを得ることができる。
【実施例】
【0085】
本発明の上記機能を有する分光分析装置を使用すれば、光路長を変化させても、第一干渉反射光束と第二干渉反射光束の結像位置のズレを防止できることを確認した。
【0086】
実験では、分光分析装置に小型のレーザー光源(CMP-635-1-D)から635nmの波長のレーザー光線を入射して光路長を変化させて、検出部(CMOSカメラ)上に形成される干渉像を確認した。
なお、実験では、
図3~
図7に示す構造の分光分析装置を使用した。この分光分析装置に使用した各部材は以下のとおりである。
入射部材および出射部材:放物面ミラー(エドモントオプティクス社製 型式:87-406)
移動部:手動ステージ(中央精機製 ハイグレードステージ LS-5042-C8)
なお、入射部材および出射部材の放物面の反射角θi(つまり第一~第四ミラーの反射角θ1~θ4(
図2参照))は90度である。
移動反射部の第三ミラーおよび第四ミラーは、移動部に設けられているマイクロゲージによって手動で移動させた。
【0087】
結果を
図8に示す。
図8における(B)は第一ミラー(第二ミラー)と第三ミラー(第四ミラー)とが面一となっている状態における干渉像であり、(B)は(A)の状態から第一ミラー(第二ミラー)および第三ミラー(第四ミラー)を入射部材および出射部材に接近させた状態における干渉像であり、(C)は(A)の状態から第一ミラー(第二ミラー)および第三ミラー(第四ミラー)を入射部材および出射部材から離間させた状態における干渉像である。
図8に示すように、第三ミラー(第四ミラー)を移動させても、干渉像の干渉像の位置にズレが生じていなことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の赤外線量測定システムは、遠隔で温度を測定するシステムに適している。
【符号の説明】
【0089】
1 分光分析装置
2 フレーム
3 光供給部
4 スリット
5 検出部
10 干渉光形成部
11 第一反射部
12 入射部材
12a 入射反射面
13 出射部材
13a 出射反射面
15 第二反射部
16 固定反射部
17 第一ミラー
17a 反射面
18 第二ミラー
18a 反射面
20 移動反射部
21 第三ミラー
21a 反射面
22 第四ミラー
22a 反射面
30 移動部
M 干渉光形成機構
R1 第一反射部
SI 入射反射面
SO 出射反射面
PP 平行光形成部
CP 集光部
R2 第二反射部
FR 固定反射部
SR1 第一反射面
SR2 第二反射面
MR 移動反射部
SR3 第三反射面
SR4 第四反射面
SI 入射反射面
SO 出射反射面
θi 反射角
θo 反射角
θ1 反射角
θ2 反射角
θ3 反射角
θ4 反射角
L 供給光
RL 入射光
L2 第二反射光
L3 第三反射光
L4 第四反射光
L4 第四反射光
LF 干渉反射光
SP 対称面
【要約】
【課題】装置の外乱に対する頑強性を高めることができ、光利用率と空間分解能も高くできる分光分析装置および干渉光形成機構を提供する。
【解決手段】光供給部3と、干渉光形成部10と、検出部5と、を備え、干渉光形成部10は、互い対向する反射面を有する第一反射部11と第二反射部15と、を備えており、第二反射部15は、第一反射部11に対して移動が固定された固定反射部16と、第一反射部に対して前記供給光の光軸と直交する基準面に沿って移動可能に設けられた移動反射部25と、移動反射部25の基準面に沿った移動と固定を行う移動部30と、を備えており、第一反射部11は、入射反射面12aと、出射反射面13aと、を備えている。
【選択図】
図1