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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】リハビリテーション訓練装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
A61H1/02 R
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022500537
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2019104720
(87)【国際公開番号】W WO2021003835
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/095130
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522004472
【氏名又は名称】北京大艾机器人科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】帥梅
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特許第4806094(JP,B1)
【文献】特開2011-224294(JP,A)
【文献】特開2000-337469(JP,A)
【文献】特開平10-188243(JP,A)
【文献】特開2019-011833(JP,A)
【文献】特開平09-318226(JP,A)
【文献】特開昭59-019761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体枠と、第1伝達機構及び第2伝達機構とを備え、
前記第1伝達機構及び第2伝達機構は、それぞれ前記車体枠の両側に取り付けられ、
かつ、前記第1伝達機構の駆動アセンブリと前記第2伝達機構の駆動アセンブリは、軸桿を介して接続され、
前記第1伝達機構及び第2伝達機構の各々は、車輪アセンブリ、伝達アセンブリ、駆動アセンブリ及び下肢桿アセンブリを備え、
前記伝達アセンブリは、前記車輪アセンブリの回転によって前記伝達アセンブリの回転を駆動するように、前記車輪アセンブリに連動可能に接続され、
前記駆動アセンブリは、前記伝達アセンブリに連動可能に接続され、かつカムを有し、
前記下肢桿アセンブリは、連桿を介して前記駆動アセンブリに接続され、かつ前記伝達アセンブリに駆動されて揺動し、
前記カムは、
円形本体を有し、前記円形本体の第1側面にカム溝が配置され、
前記カム溝の輪郭は、前記カム溝に設置された第1従動部材が前記カムの回転運動に駆動されて水平軸線において往復運動を行うように構成され、
前記カムが1周回転する度に、前記第1従動部材は、水平軸線における第1位置と第2位置との間で往復運動を1回行い、
前記第1位置は、前記第1従動部材が前記輪郭において前記円形本体の円心に最も近接した位置にあるときの、前記第1従動部材の水平軸線における位置であり、
前記第2位置は、前記第1従動部材が前記輪郭において前記円形本体の円心から最も離れた位置にあるときの、前記第1従動部材の水平軸線における位置であり、
前記下肢桿アセンブリは、太もも桿を備え、
前記第1従動部材は、前記連桿によって前記太もも桿に接続されることにより、前記太もも桿が前記第1従動部材の前記往復運動に駆動されて1つの角度範囲で揺動することを特徴とする、リハビリテーション訓練装置
【請求項2】
記角度範囲は、健常者歩行時の太ももの股部を軸とする揺動角度範囲であり、
記揺動は、健常者歩行時の太ももの揺動である、請求項1に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項3】
前記カムは、第2カム溝を更に備え、前記第2カム溝は、前記円形本体の前記第1側面に対向する第2側面に設置され、前記第2カム溝の第2輪郭は、前記カムの回転運動に駆動されて、前記第2カム溝に設置される第2従動部材が水平軸線において別の往復運動を行うよう構成され、
前記第2輪郭は、前記輪郭と異なり、
前記カムが1周回転する度に、前記第2従動部材は、水平軸線において第3位置と第4位置との間で往復運動を1回行い、
前記第3位置は、前記第2従動部材が前記第2輪郭において前記円形本体の円心に最も近接した位置にあるときの、前記第2従動部材の水平軸線における位置であり、
前記第4位置は、前記第2従動部材が前記第2輪郭において前記円形本体の円心から最も離れた位置にあるときの、前記第2従動部材の水平軸線における位置であり、
前記伝達機構は、脛揺動桿及び第2連桿を更に備え、
前記下肢桿アセンブリは、軸受を介して前記下肢桿アセンブリの膝部位置において前記太もも桿に接続される脛桿を更に備え、前記第2連桿の一端は、前記脛揺動桿を介して前記脛桿に接続され、前記脛揺動桿は、前記太もも桿の股部に対応する位置に設置され、前記第2連桿の他端は、前記駆動アセンブリの第2従動部材に接続されることにより、前記別の往復運動は、前記第2従動部材に接続される前記脛桿が別の角度範囲において別の揺動を行うよう駆動する、請求項1に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項4】
記別の角度範囲は、健常者歩行時の脛の揺動角度範囲であり、
前記別の揺動は、健常者歩行時の脛の揺動である、請求項3に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項5】
前記駆動アセンブリは、支持材及び揺動桿を更に備え、
前記支持材は、前記カムを支持し、
前記揺動桿は、一端が前記第1従動部材に接続され、他端が前記支持材に固定接続される、請求項3に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項6】
前記駆動アセンブリは、前記連桿と前記支持材の間に設置されるポリテトラフルオロ系摩擦プレートを更に備える、請求項5に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項7】
前記駆動アセンブリは、第2揺動桿を更に備え、
前記第2揺動桿は、一端が前記第2従動部材に接続され、他端が前記支持材に固定接続される、請求項5に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項8】
前記軸桿は、第1桿部及び第2桿部を備え、
前記第1桿部は、クラッチを介して前記第2桿部に接続される、請求項1に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項9】
前記第1伝達機構と前記第2伝達機構は、第2軸桿を介して接続され、
前記第1伝達機構と前記第2伝達機構の間に、前記第2軸桿に取り付けられる差動装置を備える、請求項に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項10】
2つのユニバーサルブレーキキャスターを更に備え、
前記2つのユニバーサルブレーキキャスターは、前記車体枠の底部に取り付けられ、かつ前記車体枠の両側にそれぞれ位置する、請求項に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項11】
前記車体枠の頂部に接続され、かつ前記車体枠の両側の間において延出する腰部保持枠を更に備える、請求項1に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項12】
前記車体枠の頂部に取り付けられ、かつ前記車体枠の両側に位置する2つの腰部保持枠支持材を更に備え、前記腰部保持枠支持材は、固定部、調整部および変動部を備え、
前記固定部は、前記車体枠に固定接続され、
前記調整部は、昇降スクリューを介して前記固定部に接続され、
前記変動部は、弾性部材を介して前記調整部に接続され、
前記腰部保持枠の両端は、対応する腰部保持枠支持材の前記変動部にそれぞれ接続される、請求項11に記載のリハビリテーション訓練装置
【請求項13】
前記車体枠に取り付けられる手すりを更に備える、請求項に記載のリハビリテーション訓練装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリテーション(リハビリ訓練装置に関し、具体的には、リハビリテーション訓練装置(無動力多関節の同期訓練装置に適用可能な伝達機構を備えたリハビリテーション訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
肢体に障害を抱える人の数が増え、中でも高齢者の割合が比較的高い。第2回全国障害者サンプリング調査の結果によると、現在、我が国で肢体に障害を抱える障害者の数が約2400万余りに達し、かつ毎年数百万の規模で増えつつあるとされている。一方、我が国の人口高齢化の問題が深刻化するにつれ、脳血管疾患に起因する肢体障害者も増えつつある。
【0003】
調査では肢体障害者への医療救助や支援、リハビリサービスに対する需要が益々高まっていることも示されている。現在、我が国におけるリハビリ手段は、依然として伝統的なリハビリ器具に加えて療法士による1対1のリハビリ治療がメインであり、大量のリハビリ技師がリハビリ治療に関与することが求められる。
【0004】
片麻痺患者の多くがリハビリ訓練装置を利用してリハビリ訓練を行うことにより、肢体の運動機能を部分的または完全に回復できることが臨床研究により解明されているが、一部の家庭では経済面の顧慮で最適なリハビリタイミングを逃がすことがある。
【0005】
現在、国内においてリハビリ器具の開発に携わる研究機構や企業が続出する一方で、知能化設備の開発に莫大な費用がかかり、一般の患者家庭にとってかような高い治療費用を負担するのは非常に困難である。また、従来の肢体機能障害のリハビリ治療においては主に療法士による1対1の手動訓練に依存するため、リハビリ訓練の強度や、継続性、治療効果を確保することが困難である。
【0006】
そのため、一般の患者も自由に使用可能であり、リハビリ訓練の強度や、継続性、治療効果を確保できる下肢リハビリ訓練装置の開発が急務になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電気的設定及びそれに対応する複雑な制御プログラムを要せず、療法士又は操縦者が簡単に操作するだけで肢体機能障害者が1対1のリハビリ訓練を遂行しうる下肢リハビリ訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明の1つの態様では、リハビリテーション訓練装置を提供し、
リハビリテーション訓練装置は、車体枠と、第1伝達機構及び第2伝達機構とを備え、
前記第1伝達機構及び第2伝達機構は、それぞれ前記車体枠の両側に取り付けられ、
かつ、前記第1伝達機構の駆動アセンブリと前記第2伝達機構の駆動アセンブリは、軸桿を介して接続され、
前記第1伝達機構及び第2伝達機構の各々は、車輪アセンブリ、伝達アセンブリ、駆動アセンブリ及び下肢桿アセンブリを備え、
前記伝達アセンブリは、前記車輪アセンブリの回転によって前記伝達アセンブリの回転を駆動するように、前記車輪アセンブリに連動可能に接続され、
前記駆動アセンブリは、前記伝達アセンブリに連動可能に接続され、かつカムを有し、
前記下肢桿アセンブリは、連桿を介して前記駆動アセンブリに接続され、かつ前記伝達アセンブリに駆動されて揺動し、
前記カムは、円形本体を有し、前記円形本体の第1側面にカム溝が配置され、前記カム溝の輪郭は、前記カム溝に設置された第1従動部材が前記カムの回転運動に駆動されて水平軸線において往復運動を行うように構成され、そのうち、
前記カムが1周回転する度に、前記第1従動部材は、水平軸線における第1位置と第2位置との間で往復運動を1回行い、
前記第1位置は、前記第1従動部材が前記輪郭において前記円形本体の円心に最も近接した位置にあるときの、前記第1従動部材の水平軸線における位置であり、前記第2位置は、前記第1従動部材が前記輪郭において前記円形本体の円心から最も離れた位置にあるときの、前記第1従動部材の水平軸線における位置であり、
前記下肢桿アセンブリは、太もも桿を備え、
前記第1従動部材は、前記連桿によって前記太もも桿に接続されることにより、前記太もも桿が前記第1従動部材の前記往復運動に駆動されて1つの角度範囲で揺動する
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る無動力多関節の同期訓練装置の立体模式図である。
図2図1に示す無動力多関節の同期訓練装置の車輪アセンブリの断面図である。
図3図1に示す無動力多関節の同期訓練装置の伝達アセンブリの分解図である。
図4図1に示す無動力多関節の同期訓練装置のカムアセンブリ及びカム支持材の分解図である。
図5図5Aは、図1に示す無動力多関節の同期訓練装置の下肢桿アセンブリの分解図であり、図5Bは、図1に示す無動力多関節の同期訓練装置の下肢桿アセンブリの立体模式図である。
図6図1に示す無動力多関節の同期訓練装置の伝達アセンブリの側面図である。
図7図1に示す無動力多関節の同期訓練装置のカムアセンブリにおけるカム溝のカム輪郭設計方法を示すフローチャートである。
図8図1に示す無動力多関節の同期訓練装置の腰部保持枠の立体模式図である。
図9図1に示す無動力多関節の同期訓練装置の腰部保持枠支持材の立体模式図である。
図10図10A図10Dは、従動ローラーが本発明の一実施形態に係るカムに駆動されるときの動作を示す簡易模式図である。
図11図11A図11Dは、従動部材が本発明の一実施形態に係る非円形歯車ペアに駆動されるときの動作を示す簡易模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の特徴及び利点をより深く理解できるように、図面を参照しながら本発明をより詳しく説明する。なお、以下の図例と説明は、本発明の例示に過ぎず、本発明を制限するものではない点にも留意されたい。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る無動力多関節の同期訓練装置10を示す。図1に示すように、訓練装置10は、車体枠100、車体枠100に取り付けられた1対の伝達機構200、腰部保持アセンブリ300、1対のユニバーサル車輪400及び手すり500で構成される。訓練装置10を使用する際、歩行リハビリ訓練を必要とする患者は、訓練装置10の前部(すなわち、図1の左側)に固定され、リハビリ訓練を支援する別の医療スタッフ又は操縦者が訓練装置10の後部(すなわち、図1の右側)に位置する。医療スタッフ又は操縦者は、手すりをしっかりと掴み、訓練装置10をゆっくりと前方へ押し続け、このとき伝達機構200の作用下で訓練装置10の前進力が患者の下肢(例えば、太もも及び/又は脛)に加わる作用力に変換する。該作用力によって、患者の下肢が所定のリズムに従って患者の股部を軸として揺動するようにし、患者は、健常者の歩行姿勢で訓練装置10に追従して前進し、歩行リハビリ訓練の目的を実現する。
【0017】
本発明の一部の実施形態において、車体枠100の底部の後側に1対のユニバーサル車輪400が設置される。好ましくは、該1対のユニバーサル車輪400は、4寸の大きさを有する1対のユニバーサルサイレントブレーキキャスターであり、訓練装置に移動中及び静止時の平衡性や安定性を付与する。当然、車体枠のサイズに応じて大きさが異なる他のサイズのユニバーサル車輪を用いてもよく、上述の平衡性や安定性を実現できれば、本発明ではユニバーサル車輪の種類に対して特に制限がない。
【0018】
以下、伝達機構200、腰部保持アセンブリ300をより詳しく説明する。
【0019】
伝達機構200については図1に示すように、訓練装置10は、車体枠の両側(すなわち、図1の正面及び裏面)に設けられ且つ同じ構成を有する1対の伝達機構200を備える。図1に示すように、伝達機構200は、車輪アセンブリ210、伝達アセンブリ220、駆動アセンブリ230及び下肢桿アセンブリ240を備える。車輪アセンブリ210、伝達アセンブリ220、駆動アセンブリ230及び下肢桿アセンブリ240は、それぞれ適切な位置において車体枠100に取り付けられる。例えば、車輪アセンブリ210は、車体枠100の下部前側に設けられ、伝達アセンブリ220は、車体枠100の中部後側に設けられ、駆動アセンブリ230は、車体枠100の上部後側に設けられ、下肢桿アセンブリ240は、車体枠100の前部に設けられ且つ車体枠100の上部から下部へ延出して構成される。
【0020】
図2は、伝達機構200の車輪アセンブリ210の断面図である。図2に示すように、車輪アセンブリ210は、車輪本体211、鎖車212、取付け軸213及び軸受アセンブリ214を備える。車輪本体211としては、700C一体型の車輪が好ましく、車輪本体211の底部とユニバーサル車輪400の底部を同じ水平面にすることで訓練装置10が地面に安定に接触できるようにする。鎖車212と車輪本体211は同軸に設置され、かつ取付け軸213及び軸受アセンブリ214を介して互いに接続され、鎖車212と車輪本体211が同期して回転できるようにする。取付け軸213は、車体枠100に固定される。該実施形態において、車輪アセンブリ210は、鎖車212を介して以下で詳述する伝達アセンブリ220に連動可能に接続される。例えば、図1に示すように、車輪アセンブリ210の鎖車212は、駆動ベルト215を介して伝達アセンブリ220に連動可能に接続される。車輪本体211が回転するとき、車輪本体211の回転動力(又は、捩り力)は、駆動ベルト215を介して伝達アセンブリ220に伝達され、その結果、伝達アセンブリ220が車輪アセンブリ210の回転に追従して回転する。駆動ベルト215としては、駆動用チェーンであってもよく、駆動用ベルトであってもよい。
【0021】
図3は、伝達機構200の伝達アセンブリ220の分解図である。図3に示すように、伝達アセンブリ220は、鎖車221及び鎖車222、軸受223及び軸受224、及び取付け軸225を備える。鎖車221及び鎖車222は、軸受223、224および取付け軸225で構成される軸受アセンブリによって互いに接続され、鎖車221と鎖車222が同期して回転できるようにする。伝達アセンブリ220において、鎖車221は、上述の駆動ベルト215を介して車輪アセンブリ210からの動力(又は、捩り力)を受け、鎖車222は、別の駆動ベルト228を介して伝達機構200の駆動アセンブリ230に連動可能に接続され、該動力(捩り力)を更に駆動アセンブリ230に伝達する。駆動ベルト215と同様に、駆動ベルト228としては駆動用チェーンであってもよく、駆動用ベルトであってもよい。一部の実施形態において、取付け軸225としては、スプライン軸であることが好ましい。
【0022】
図1を参照されたく、図1に示す車体枠100に1対の伝達機構200が設けられているため、図1に示す訓練装置10は1対の伝達機構200を有することになる。本発明の実施形態において、該1対の伝達機構200は、軸桿226を介して互いに接続される。図3に示すように、軸桿226の一端は、1つの伝達アセンブリ220の取付け軸225に接続され、軸桿226の他端も同様に別の伝達アセンブリ(図示せず)の取付け軸に接続される。これにより、2つの伝達アセンブリの動力は、互いに補足することができる。また、本発明の一部の実施形態によれば、上記一部の実施形態と組み合わせてもよく、このとき伝達アセンブリ220は、差動装置227を備える。図3に示すように、差動装置227の径方向外側は、鎖車222にろう接される。差動装置227は、伝達アセンブリ220の他の位置に取り付けられてもよく、本発明ではこれらについて特に制限がない。差動装置227は、訓練装置10における1対の伝達アセンブリのうち1つの伝達アセンブリに取り付けることもできる。例えば、差動装置227を図3に示す伝達アセンブリ220に取り付けてもよいが、図3に示されていない別の伝達アセンブリに取り付けても構わない。差動装置227を採用することで、車輪の転向に余計の抵抗を加えることなく、路面凸凹状況や転向時に1対の車輪アセンブリ210の回転速度が一致しないことに起因する自己転向現象を回避することができる。
【0023】
次に、図4を参照されたく、図4のA部分は、伝達機構200の駆動アセンブリ(カム機構)230の分解模式図であり、図4のB部分は、カム支持材250の模式図である。
【0024】
図4に示すように、駆動アセンブリ230は、カム231、連桿232、鎖車233、軸受234、従動ローラー235、揺動桿236及び軸桿237を備える。そのうち、軸桿237は、軸受234を介し且つカム231の中心に形成された開口部2312を経由して鎖車233とカム231を互いに連結する。鎖車233は、上述の駆動ベルト228を介して伝達アセンブリ220からの動力(捩り力)を受け、その結果、カム231が伝達アセンブリ220の回転に追従して回転する。
【0025】
カム231の片側に後述のカム溝2311が形成される。連桿232は、一端がカム231に接続され、他端が以下で詳述する下肢桿アセンブリ240に接続され、カム231が回転するとき、連桿232のカム231に接続される一端は、カム231の回転につれて略水平方向において往復運動し、連桿232の下肢桿アセンブリ240に接続される他端は、カム231に駆動されて前後方向で揺動する。これにより、下肢桿アセンブリ240が付勢され、患者の下肢部が健常者の歩行姿勢に擬態する形で受動的に前後に揺動し、患者が前後揺動の状態で前向きに受動的に歩行することになり、歩行リハビリ訓練の目的を達成する。
【0026】
具体的には、カム溝2311内に従動ローラー235が設けられ、カム溝2311のカム輪郭は、カム231の回転運動をカム溝2311内における従動ローラー235の略水平方向における所定の往復運動に変換するように構成される。従動ローラー235としてはローラー軸受が好ましく、具体的には、従動ローラー235は、転がり部2351及び転がり部に接続される支持ピラー2352を有し、転がり部2351がカム溝2311内に設けられ、転がり部2351の側壁がカム溝2311の側壁に接して形成されることにより、カム231が回転するとき、従動ローラー235の転がり部2351は、カム溝2311内において溝の側壁面に沿って転がることができる。
【0027】
図10A図10Dは、本発明の実施形態に係るカム700に駆動されて従動ローラー750が移動するときの動きを示す簡易模式図である。そのうちカム700は、図4に示すカム231に似ており、従動ローラー750は、図4に示す従動ローラー235に似ている。
【0028】
図10Aに示すように、カム700は、円形本体710を有し、伝達アセンブリ220に駆動されて円心720を軸として回転することができ、回転は定速度であることが好ましい。円形本体710の側面730にカム溝740が形成され、本発明の一部の実施形態に係るカム溝740は、円心720に対して偏心して形成される。カム溝740のカム輪郭は、円形以外の閉曲線であり、かつ該カム輪郭の位置Aにおいて円心に最も近接するため近心位置Aと称され、該カム輪郭の位置Bにおいて円心から最も離間するため遠心位置Bと称される。従動ローラー750は、カム溝740内に設けられ、図4に示される後述の揺動桿236及びカム支持材250に拘束されて概ね水平軸線760の方向に限って移動可能である。
【0029】
例えば、図10Aに示す従動ローラー750の水平軸線760における位置をT0時点の開始位置C1とした場合、図10Aに示すように、カム700が回転するに当たって、位置C1においてカム溝740の近心位置Aがちょうど水平軸線760に位置するため、このときカム溝740の従動ローラー750がカム輪郭の近心位置Aに位置する。
【0030】
次に、図10Aに示す矢印方向に沿ってカム700を反時計回りに回し、カム700が図10Bの状態になるように回転させる。図10Bに示すように、T1時点でカム700の回転に伴ってカム輪郭の近心位置Aと遠心位置Bとの間における1つの位置が水平軸線760と重なる。このとき、従動ローラー750は、カム溝740の側壁に付勢されて水平軸線760において水平方向(例えば、水平方向の左側へ)に沿って図10Aの位置C1から、図10Bに示す水平軸線760の位置C2に移動する。
【0031】
次に、図10Bに示す矢印方向に沿ってカム700を反時計回りに回し続け、カム700が図10Cの状態になるように回転させる。図10Cに示すように、T2時点でカム700の回転に伴ってカム輪郭の遠心位置Bが水平軸線760と重なる。このとき、従動ローラー750は、カム溝740の側壁に付勢されて水平軸線760において水平方向(例えば、水平方向の左側へ)に沿って図10Bの位置C2から図10Cの位置C3へ移動し、そのうち従動ローラー750は、位置C3においてちょうどカム輪郭の遠心位置Bに位置する。
【0032】
そして、図10Cに示す矢印方向に沿ってカム700を反時計回りに回し続け、カム700が図10Dの状態になるように回転させる。図10Dに示すように、T3時点でカム700の回転に伴ってカム輪郭の近心位置Aと遠心位置Bの間における1つの位置が水平軸線760と重なる。このとき、従動ローラー750は、カム溝740の側壁に付勢されて水平軸線760において水平方向に沿って図10A及び図10Bとは逆向き(例えば、水平方向の右側へ)に、図10Cの位置C3から逆向きに図10Dの水平軸線760の位置C4に移動する。
【0033】
そして、引き続き図10Dに示す矢印方向に沿ってカム700を反時計回りに回し続けると、図10Aの状態に戻る。すなわち、カム溝740の近心位置Aがちょうど水平軸線760に位置し、このとき従動ローラー750は、カム溝740の側壁に付勢されて水平軸線760において水平方向に沿って引続き逆向き(例えば、水平方向の右側へ)に、図10Dの位置C4から移動して図10Aの位置C1に戻る。このときカム700は、ちょうど1周分だけ回転する。
【0034】
以上で述べたように、カム700が1周回転する期間において、従動ローラー750は、水平軸線760において往復運動を遂行する。図10A図10Dに示すように、カム700が1周回転する期間において、従動ローラー750がT0時点の開始位置C1から水平方向の左へ移動してT1時点の位置C2に到達し、そして引続き水平方向の左へ移動してT2時点の位置C3に到達し、そして逆向きで水平方向の右へ移動して位置C4に到達し、最後に、引続き逆向きで水平方向の右へ移動して位置C1に戻る。そのため、カム700が1周回転するに当たって、従動ローラー750は、位置C1→位置C2→位置C3→位置C4→位置C1の往復運動を行う。そのうち位置C1及びC3は、該往復運動の折り返し点に相当し、位置C1は、カム輪郭の近心位置Aが回転によって水平軸線760に重なるときの位置に相当し、位置C3は、カム輪郭の遠心位置Bが回転によって水平軸線760に重なるときの位置に相当する。故に、カム700が1周回転するに当たって、従動ローラー750は、位置C1と位置C3との間において往復運動を1回行う。同時に、カム700が回転する期間中、円形以外の閉曲線のカム輪郭に影響されて従動ローラー750が水平軸線760において移動する瞬間速度もカム輪郭の変化に応じて変動する。つまり、従動ローラー750は、カム700の回転に追従して位置C1と位置C3との間で変速往復運動を行い、位置C1と位置C3の間のかような変速往復運動は、さらに被駆動体(図示せず)が従動ローラー750に駆動されて所定の角度範囲内において変速揺動するよう駆動する。
【0035】
以上においてカムを駆動アセンブリ230とし、カムの回転運動によってカム溝に設置された従動ローラーを往復運動させる場合を説明したが、本発明はこれらの駆動形態に制限されず、他の駆動形態であっても本発明に適用可能である。図11A図11Dは、カム溝740を有するカム700の代わりに非円形歯車ペア800を用いた場合を示す図である。非円形歯車ペア800の場合、駆動アセンブリ230の鎖車233は、カム700ではなく、非円形歯車ペア800の駆動非円形歯車810に接続される。
【0036】
図11A図11Dは、非円形歯車ペア800によって非円形歯車ペア800の従動ローラー850を駆動するときの動きを示す簡易模式図である。
【0037】
図11A図11Dに示すように、非円形歯車ペア800は、駆動非円形歯車810及びそれに噛み合う従動非円形歯車820を有する。駆動非円形歯車810は、従動非円形歯車820を駆動して回転させる。駆動非円形歯車810および従動非円形歯車820は、外周に歯部が形成され、駆動非円形歯車810及び従動非円形歯車820それぞれの歯部は歯数が同じであるため、駆動非円形歯車810が1周回転する度に従動非円形歯車820も1周回転する。該実施形態では、駆動非円形歯車810及び従動非円形歯車820の回転軸心830及び840は、それぞれの幾何中心からずれ、かつ駆動非円形歯車810と従動非円形歯車820との間の中心距離が同じくなるように形成される。そのうち前記中心距離とは、駆動非円形歯車810の回転軸心830から噛み合い位置までの回転半径と、従動非円形歯車820の回転軸心840から噛み合い位置までの回転半径との合計である。したがって、中心距離が同じである非円形歯車ペア800は、駆動非円形歯車810と従動非円形歯車820が如何なる位置にまで回転したとしても、駆動非円形歯車810と従動非円形歯車820が互いに噛み合い、噛み合い関係が解除されたり又は互いに圧迫したりすることが起こらないように確保する。従動非円形歯車820の側面には、従動部材850が形成される。
【0038】
以下、図11A図11Dを参照しながら非円形歯車ペア800の従動部材850の動きを説明する。
【0039】
図11Aに示すように、図11Aに示す従動部材850の位置をT0時点の開始位置D1とする。図11Aに示すように、位置D1において、従動部材850と駆動非円形歯車810の回転軸心830との距離E1が最も短く、すなわち位置D1において、従動部材が駆動非円形歯車810の回転軸心830に最も近接することになる。
【0040】
次に、図11Aに示す矢印方向に沿って駆動非円形歯車810を時計回りに回し、駆動非円形歯車810の駆動下で従動非円形歯車820を反時計回りに回転させると、非円形歯車ペア800は、回転して図11Bの状態になる。図11Bに示すように、T1時点において、非円形歯車ペア800の回転に伴って駆動非円形歯車810の回転軸心830に最も近接した位置D1にあった従動部材850は、位置D2に移動する。位置D2において、従動部材850と駆動非円形歯車810の回転軸心830との距離E2が距離E1に比べて大きくなるため、非円形歯車ペア800が図11Aの状態から図11Bの状態になるにつれて、従動部材850は、駆動非円形歯車810の回転軸心830から徐々に離れてしまう。
【0041】
そして、引き続き図11Bに示す矢印方向に沿って駆動非円形歯車810を時計回りに回し続け、駆動非円形歯車810の駆動下で従動非円形歯車820を反時計回りに回転させると、非円形歯車ペア800は、回転して図11Cの状態になる。図11Cに示すように、T2時点において、非円形歯車ペア800の回転に伴って位置D2にあった従動部材850が位置D3に移動する。位置D3において、従動部材850と駆動非円形歯車810の回転軸心830との距離E3が距離E2に比べて更に大きくなるため、非円形歯車ペア800が図11Bの状態から図11Cの状態になるにつれて、従動部材850は、さらに駆動非円形歯車810の回転軸心830から徐々に離れてしまう。
【0042】
そして、引き続き図11Cに示す矢印方向に沿って駆動非円形歯車810を時計回りに回し続け、駆動非円形歯車810の駆動下で従動非円形歯車820を反時計回りに回転させると、非円形歯車ペア800は、回転して図11Dの状態になる。図11Dに示すように、T3時点において、非円形歯車ペア800の回転に伴って位置D3にあった従動部材850が位置D4に移動する。位置D4において、従動部材850と駆動非円形歯車810の回転軸心830との距離E4が距離E3に比べて小さくなるが、距離E1に比べて大きいため、非円形歯車ペア800が図11Cの状態から図11Dの状態に変化するにつれて、従動部材850は、駆動非円形歯車810の回転軸心830に徐々に接近する。
【0043】
そして、引き続き図11Dに示す矢印方向に沿って駆動非円形歯車810を時計回りに回し続けると、従動非円形歯車820は、駆動非円形歯車810の駆動下で反時計回りに回転して図11Aの状態に戻る。すなわち、非円形歯車ペア800が図11Dの状態から図11Aの状態に戻るにつれて、従動部材850は、駆動非円形歯車810の回転軸心830に徐々に接近し、最終的には駆動非円形歯車810の回転軸心830に最も近接した位置D1に戻る。このとき駆動非円形歯車810は、ちょうど1周分だけ回転する。
【0044】
以上で述べたように、非円形歯車ペア800が1周回転する期間において、従動部材850は、位置D1と位置D3との間で往復運動を遂行する。図11A図11Dに示すように、非円形歯車ペア800が1周回転するに当たって、従動部材850は、T0時点において駆動非円形歯車810の回転軸心830に最も近接した開始位置D1から、駆動非円形歯車810の回転軸心830から遠ざかった位置D2に移動した後、T2時点において駆動非円形歯車810の回転軸心830から更に離れて回転軸心830から最も離れた位置D3に移動し、そして、回転軸心830に徐々に接近して位置D4に移動し、最後に回転軸心830に更に接近して回転軸心830に最も近接した位置D1に戻る。したがって、非円形歯車ペア800が1周回転するに当たって、従動部材850は、位置D1→位置D2→位置D3→位置D4→位置D1の往復運動を遂行する。そのうち位置D1及び位置D3は、該往復運動の折り返し点に相当し、位置D1は、駆動非円形歯車810の回転軸心830に最も近接した位置に相当し、位置D3は、駆動非円形歯車810の回転軸心830から最も離れた位置に相当する。故に、従動部材850は、非円形歯車ペア800が1周回転する度に位置D1と位置D3との間で往復運動を1回行う。同時に、非円形歯車ペア800が回転する期間中、円形以外の歯車輪郭に影響されて従動部材850の各位置における瞬間速度も円形以外の歯車ピッチ線の変化に応じて変動する。つまり、従動部材850は、非円形歯車ペア800の回転に追従して位置D1と位置D3との間で変速往復運動を行い、位置D1と位置D3の間のかような変速往復運動は、さらに被駆動体(図示せず)が従動部材850に駆動されて所定の角度範囲内において変速揺動するよう駆動する。
【0045】
図4を参照されたく、本発明の一好適な実施形態において、カム溝2311のカム輪郭設計による変速往復運動は、健常者歩行時の下肢部における1つの点が股部を軸として変速揺動するよう駆動する。したがって、カム溝2311内において従動ローラー235が転がるにつれて、従動ローラー235のX‐Z平面における位置は、カム溝2311のカム輪郭に応じて変化し、すなわちカム溝2311のカム輪郭に基づきX‐Z平面において図10A図10Dの位置C1と位置C3との間で規則的な変速往復運動を行う。従動ローラー235が往復運動する際の2つの境界位置C1及びC3は、健常者歩行時の下肢部における1つの点が股部を軸とする2つの境界角度に対応する。従動ローラー235の支持ピラー2352が連桿232の一端に接続され、連桿232の他端が以下で説明する下肢桿アセンブリ240に接続されることにより、従動ローラー235がカム231の回転につれてX‐Z平面において規則的な変速往復運動を行う際、下肢桿アセンブリ240は、連桿232の押し引き作用下でX‐Z平面において規則的に変速揺動する。カム231のカム溝2311のカム輪郭が1周回転する度に、カム溝2311における従動ローラー235は、例えば図10A図10Dの位置C1及び位置C3によって規定される距離内において往復運動を1回遂行する。従動ローラー235が下肢桿アセンブリ240を駆動して揺動させるため、下肢桿アセンブリ240は、かような往復運動に応じて揺動する。上記往復運動による下肢桿アセンブリ240の揺動角度は、健常者歩行時の下肢部における1つの点が一歩踏み出すときに股部に対する揺動に対応し、従動ローラー235の1回往復運動による下肢桿アセンブリ240の変速揺動は、健常者歩行時の下肢部における1つの点が一歩を踏み出す時に股部に対する変速揺動に対応するため、下肢桿アセンブリ240に固定された患者は受動的に一歩踏み出し、患者が一歩踏み出したときの下肢部の揺動角度及び揺動方式が健常者と同じであるため、患者の歩行訓練を実現することができる。本発明の実施形態において、具体的には、従動ローラー235と下肢桿アセンブリ240の股部に近接し且つ太ももに対応する位置とは、連桿232によって接続されるため、カム溝2311のカム輪郭設計に対応する往復運動は、健常者歩行時の股部に対する太ももの揺動を駆動し、かつ往復運動に駆動される揺動角度は、健常者歩行時の股部に対する太ももの揺動角度に対応する。
【0046】
健常者の歩行姿勢にとって、健常者の股部に近接する太ももの位置は概ね図4に示すX方向で前後揺動するが、Z方向では揺動が極小さく、若しくは揺動が殆どない。そのため、訓練装置にカム支持材250を更に設け、カム支持材250は、第1アーム251を備え、第1アーム251の底部及び頂部にそれぞれ固定スリーブ252を設け、固定スリーブ252は、駆動アセンブリ230の軸受234及び伝達アセンブリ220の軸受223をそれぞれ支持して固定する。第1アーム251の上部に案内溝253が更に形成され、案内溝253は、X方向に延出する長孔として形成される。案内溝253内に従動ローラー235の支持ピラー2352が設けられ、従動ローラー235がX‐Z平面において規則的に揺動する際、Z方向(すなわち、垂直方向)での位置変動が案内溝253に制限され、概ねX方向(すなわち、水平方向)に限って規則的に前後揺動する。なお、下肢桿アセンブリ240に揺動桿236が更に設けられ、揺動桿236の一端が支持ピラー2352に接続され、他端がカム支持材250に接続され、揺動桿236によってもZ方向における従動ローラー235の位置変動を制限することができる。揺動桿236の他端は、車体枠100に直接的に接続されてもよい。
【0047】
本発明の一部の実施形態によれば、カム231のカム溝2311が形成されている側と対向する他の側に第2カム溝(図示せず)が更に形成され、カム溝2311とほぼ同様にして、第2カム溝のカム輪郭設計に対応する変速往復運動は、カム溝2311のカム輪郭に対応する変速往復運動と異なる別の変速往復運動である。同様に、駆動アセンブリ230は、さらに第2軸受234’、第2連桿232’、第2従動ローラー235’及び第2揺動桿236’を備え、カム231と軸桿237は第2軸受234’を介して接続される。第2カム溝、第2連桿232’、第2従動ローラー235’及び第2揺動桿236’の配置形態は、カム溝2311、連桿232、従動ローラー235及び揺動桿236の配置形態と基本的に同じであり、ここでは重複説明を省略する。また、カム支持材250に、第1アーム251に平行する第2アーム254を更に備えることができる。第2アーム254は、その底部及び頂部に固定スリーブ252を備え、固定スリーブ252も、駆動アセンブリ230の第2軸受234’および伝達アセンブリ220の軸受224を支持して固定する。また、第2アーム254の上部にも第2案内溝255が形成され、第2案内溝255は、第2従動ローラー235’のZ方向における位置変動を制限する。このように、第2カム溝によって、カム231の回転運動を第2カム溝内に位置する第2従動ローラー235’が略X方向(水平方向)において往復運動を行うよう変換する。
【0048】
カム231が第2カム溝を備える実施形態では、第2連桿232’の一端が第2従動ローラー235’に接続され、他端が下肢桿アセンブリ240の膝部に対応する位置に直接又は間接的に接続される。したがって、第2カム溝のカム輪郭設計に対応する変速往復運動は、健常者歩行時の股部に対する脛の変速揺動に対応し、かつ該往復運動の2つの境界位置は、健常者歩行時の股部に対する脛の変速揺動の2つの境界角度に対応する。故に、カム231が1周回転する度に、第2カム溝における第2従動ローラー235’の変速往復運動は、健常者歩行時の股部に対する脛の変速揺動に対応し、よって、下肢桿アセンブリ240の脛部分は、健常者歩行時の股部に対する脛の揺動方式と同様にして1回揺動する。そのため、患者の脛は、健常者歩行時の脛の揺動方式と同様に1回揺動し、患者のリハビリ訓練を実現することができる。
【0049】
また、本発明の一部の実施形態によれば、駆動アセンブリ230に、カム支持材250と連桿の間に設置される摩擦プレート239及び239’(もし存在する場合)を備えてもよく、摩擦プレート239及び239’としては、ポリテトラフルオロ系摩擦プレートが好ましく、連桿の揺動過程における摩擦抵抗を低減することができる。
【0050】
以上では、カムを有する駆動アセンブリ230によって患者の歩行訓練を実現する場合について説明したが、上記図11A図11Dに示す非円形歯車ペア800を有する別の駆動アセンブリを用いて患者の歩行訓練を実現することもできる。このとき、下肢桿アセンブリ240の太もも位置と従動ローラー235を連結する連桿232は、下肢桿アセンブリ240の太もも位置と従動ローラー850を連結する形態に変形される。そのため、位置D1と位置D3の間における従動ローラー850の変速往復運動によっても、患者の太ももが健常者歩行時の太ももの股部に対する揺動と同様に変速揺動するよう駆動することができる。非円形歯車ペア800を有する駆動アセンブリは、さらに別の非円形歯車ペアを備えてもよく、該別の非円形歯車ペアは、非円形歯車ペア800と異なり、従動部材の変速往復運動が健常者の股部に対する脛の変速揺動に対応するように設計される。このとき、下肢桿アセンブリ240の脛位置と第2従動ローラー235’を連結する第2連桿232’は、下肢桿アセンブリ240の脛位置と上記別の非円形歯車ペアの従動部材を連結する形態に変形され、該別の非円形歯車ペアの従動部材の変速往復運動によって、患者の脛が健常者歩行時の股部に対する脛の揺動と同様に変速揺動するよう駆動することができる。
【0051】
車体枠100に1対の伝達機構200が取り付けられているため、訓練装置10は、1対の駆動アセンブリ230を有する。図4に示すように、軸桿237の一端が1つの駆動アセンブリ230に接続され、図には示されていないが、軸桿237の他端が別の駆動アセンブリ230に接続され、前記別の駆動アセンブリは、駆動アセンブリ230と同じく構成される。健常者の歩行姿勢によれば、両足が揺動する際の位相が常に180度ずれるため、軸桿237に連結される1対の駆動アセンブリも180度の位相差で取り付けられる。
【0052】
また、本発明の一部の実施形態によれば、軸桿237は、第1軸桿2371と第2軸桿2372とで構成され、そのうち第1軸桿2371は、駆動アセンブリ230に接続され、第2軸桿2372は、別の駆動アセンブリに接続され、かつ第1軸桿2371及び第2軸桿2372にクラッチ装置238が取り付けられる。クラッチ装置238を用いることで、必要に応じて1対の駆動アセンブリの間の位相差を調整することができる。例えば、患者が訓練装置10を着用する際、両足を閉じる姿勢を維持する必要があるため、クラッチ装置238を開放状態にして両側の駆動アセンブリの位相を自由に調整することができ、訓練装置の着用を完了すると、両側の駆動アセンブリの位相差が180度ずれるように再び調整を行い、かつクラッチ装置を閉合状態にして第1軸桿2371と第2軸桿2372の間の固定接続関係を形成する。別の実施形態によれば、上記実施形態と組み合わせることができ、クラッチ装置238は、滑りバックル2381を備え、かつクラッチ装置238の両側に第1軸桿2371及び第2軸桿2372の向きを制限するための位置制限ハンドルが設けられる。調整を行うとき、第1軸桿2371及び第2軸桿2372のうち何れか1つの軸桿の向きを制限すると同時に、別の軸桿を所定の位相に調整した後、前記別の位置限定ハンドルを堅固に締めてクラッチ装置238を閉合状態にし、そして両側の位置限定ハンドルをそれぞれ緩める。軸桿237に、折り畳み式ハンドル2373及び折り畳み式ハンドル2373を収納するための収納スペース2372が更に設けられ、第1軸桿2371及び第2軸桿2372の向きを調整する際、収納スペース2372から折り畳み式ハンドル2373を旋回して取り出すことにより第1軸桿2371及び第2軸桿2372の向きを調整し、調整後には折り畳み式ハンドル2373を旋回して収納スペース2372に再び収納する。クラッチ装置238の両側の半軸に標記線が刻まれ、両端の半軸を調整して標記線に合わせてから滑りバックルを滑らせることで、両側の第1軸桿2371と第2軸桿2372を180度の位相差で固定することができる。クラッチ装置は、さらに、非操作時に滑りバックル2381が所定の位置に止まるようにする弾性衝突球2382を備える。
【0053】
図5A図5Bを参照されたく、図5Aは、伝達機構200の下肢桿アセンブリ240の分解図であり、図5Bは、伝達機構200の下肢桿アセンブリ240の立体模式図である。
【0054】
下肢桿アセンブリ240は、主に太もも桿241と脛桿242とで構成される。太もも桿241と脛桿242は、軸受(図示せず)を介して膝部位置で互いに接続される。本発明の一部の実施形態によれば、下肢桿アセンブリ240に足底部材243を更に備え、足底部材243は、下肢桿アセンブリ240の足首位置において足部接続ソケット244を介して下肢桿アセンブリ240の脛桿242に取り外し可能に接続される。足底部材243は、前方へ0~15度屈曲することもできる。
【0055】
本発明の一部の実施形態によれば、下肢桿アセンブリ240に、太もも桿に取り付けられた包帯プレート245および脛桿242に取り付けられた包帯ソケット246を更に備え、包帯プレート245及び包帯ソケット246に、患者の下肢部を下肢桿アセンブリ240に固定するための下肢部包帯が取り付けられる。
【0056】
太もも桿241は、股部に開口2419を有し、かつ股部に近接する位置において開口2414が形成され、上記連桿232の一端がローラー軸受2413を介して開口2414に接続されるため、太もも桿241が駆動アセンブリ230の回転に追従して規則的に揺動することにより歩行リハビリ訓練の目的を実現する。第2連桿232’を配置した実施形態において、第2連桿232’が脛桿242の膝部に近接する脛位置に接続されるため、下肢桿アセンブリ240の脛部分も駆動アセンブリ230の回転に追従して規則的に揺動することができる。図1に示すように、駆動アセンブリ230は、下肢桿アセンブリ240の股部位置とほぼ同じ高さに取り付けられる。健常者の歩行姿勢において、脛が揺動する際にX方向(水平方向)及びZ方向(垂直方向)の両方向で同時に揺動するのが一般である。そこで、本発明の一好適な実施形態では、可能な限度で膝部の揺動を駆動アセンブリ230と同じ高さに変換する観点から、第2連桿232’の一端を脛桿242の膝部に近接する脛位置に間接的に接続する。図5に示すように、第2連桿232’は、脛桿を介して脛桿242の膝部に近接する脛位置に間接的に接続され、前記脛桿は、第1従動桿247と第2従動桿248とで構成され、太もも桿241の股部に対応する位置に設置される。具体的には、第2連桿232’の一端(例えば、軸受を介して)は、第1従動桿247の端部2471に位置する開口に接続され、例えば、軸受を介して且つ第1従動桿247の別の端部2472の開口を通って第2従動桿248の端部2481に位置する開口に接続される。第2従動桿248の別の端部2482の開口は、ローラー軸受を介して脛桿242の頂部の膝部に近接する位置に形成された開口2421に接続される。第1従動桿247の中間部2473にある開口は、例えば軸受を介して太もも桿241の股部に形成された開口2419に接続され、開口2419は、開口2414から近い箇所に位置する。このように、駆動アセンブリ230が回転するとき、第2連桿232’が規則的に揺動し、第2連桿232’が第1従動桿247の端部2471に付勢することにより連動して揺動する。第1従動桿247は、中間部2473を回転軸とし、第1従動桿247の別の端部2472が端部2471に追従して揺動するようにし、第1従動桿247の別の端部2472が揺動すると、かような揺動が第2従動桿248を介して脛桿242の膝部に近接する位置に伝達され、その結果、患者の膝部が連動して揺動する。第1従動桿247として、好ましくはL字型の形状を呈する。第1従動桿247および第2従動桿248は、所定の位置においてY方向へ湾曲することでY方向において第2連桿232’、第1従動桿247及び第2従動桿248を互いにずらせ、揺動時に第2連桿232’、第1従動桿247及び第2従動桿248同士の差障りがないようにする。
【0057】
そして、本発明の一部の実施形態によれば、太もも桿241は、患者の太ももから離間して設けられる外側太もも桿2411、及び患者の太ももに近接して設けられる内側太もも桿2412を備える。外側太もも桿2411と内側太もも桿2412は、取り外し可能に一体に取り付けられる。図5に示すように、外側太もも桿2411及び内側太もも桿2412は、底部において軸受を介して共に脛桿242に接続され、外側太もも桿2411と内側太もも桿2412が互いに離れるとき、X‐Z平面において外側太もも桿2411(内側太もも桿2412と)と脛桿242の接続位置を回転軸として互いに回転できるようにする。このような構成を取ることで、患者が着座姿勢で着用する必要があった場合、外側太もも桿2411と内側太もも桿2412を分離することができ、その結果、内側太もも桿2412がX‐Z平面において脛桿242と約90度の角度を成して容易に着用できるようになる。着用が完了すると、患者は外力を借りて立ち上がり、外側太もも桿2411と内側太もも桿2412が平行して互いに重なるとき、外側太もも桿2411と内側太もも桿2412が一体に取り付けられ、着用が完成される。本発明の一部の実施形態によれば、太もも桿241は、外側太もも桿2411の開口2418に取り付けられたばねプランジャ機構2417を備える。外側太もも桿2411と内側太もも桿2412を分離する必要が生じた場合、操作者は手作業によってばねプランジャ機構2417を開ける。外側太もも桿2411及び内側太もも桿2412を再び取り付ける必要が生じた場合、外側太もも桿2411が内側太もも桿2412に対して回転し、外側太もも桿2411が回転して内側太もも桿2412と重なると、内側太もも桿2412に形成された開口2418’が開口2418と重なり、このときばねプランジャ機構2417のばねプランジャが開口2418’に自動的に跳ね返るため、外側太もも桿2411と内側太もも桿2412の自動ロックを実現する。太もも桿に2つのハンドルねじ2415が更に設けられ、ハンドルねじ2415は、外側太もも桿2411の開口2416及び内側太もも桿2412の開口2416’に対応する位置に取り付けられる。外側太もも桿2411と内側太もも桿2412を分離する必要が生じた場合、操作者は手作業によってハンドルねじ2415を開け、外側太もも桿2411と内側太もも桿2412の分離を実現する。外側太もも桿2411と内側太もも桿2412同士が重なり且つばねプランジャ機構2417によって自動ロックされた状態で、ハンドルねじ2415をしっかり締め付けることで外側太もも桿2411と内側太もも桿2412を更に一体に組み立てる。
【0058】
図6は、伝達部材200の側面図であり、伝達部材200の構造をより明確に示す観点から、図6において一部の部材は省略されている。以上で述べたように、訓練装置を前方へ進ませるとき、車輪アセンブリ210は前方へ行進する。このとき車輪アセンブリ210の回転は、駆動ベルト215を介して伝達アセンブリ220に伝達される。伝達アセンブリ220の動力は、さらに駆動ベルト228を介して駆動アセンブリ230に伝達され、駆動アセンブリ230のカムを駆動して回転させる。カムの回転に伴い、下肢桿アセンブリ240が第1連桿232及び第2連桿232’に駆動されて規則的に揺動する。第1連桿232は、下肢桿アセンブリ240の股部に近接する太もも位置に直接に接続され、患者の太ももが股部に対して規則的に揺動するようにする。第2連桿232’は、第1従動桿247及び第2従動桿248を介して下肢桿アセンブリ240の膝部に近接する脛位置に間接的に接続され、患者の脛が股部に対して規則的に揺動することにより歩行リハビリ訓練の目的を実現する。
【0059】
以上では特別に設計されたカム輪郭を利用し、下肢桿アセンブリ240が健常者歩行時の規則的な揺動を遂行する場合を説明したが、該カム輪郭は、健常者歩行時の下肢部の揺動法則に基づき逆推定されたものであり、特に、健常者歩行時の下肢部の股部位置及び膝部位置の揺動法則に基づいて逆推定される。該カム輪郭については、下肢桿アセンブリ240が駆動アセンブリ230に駆動されて揺動することとは正反対の策略にて設計することもできる。
【0060】
図7は、駆動アセンブリ230のカム溝のカム輪郭設計方法600のフローチャートである。以下、図2図6を参照しながら方法600を説明する。ブロック610において、従動部材を1つの円盤の側面に設置する。図4に示すように、該従動部材としては、従動ローラー235のような従動部材であり、円盤の側面において転がることができる。方法600は、カム溝のカム輪郭設計を意識したものであるため、図4に示すカム231の代わりに平坦な側面を有する円盤を用いることができる。従動部材は、略水平方向に限って移動可能に設けられ、例えば、図4に示す案内溝253及び揺動桿236によって従動部材の垂直方向における移動を制限することができる。
【0061】
ブロック620において、1つの円形本体を提供し、上述の従動部材が円形本体の側面において且つ略水平方向において所定距離内で所定の往復運動(例えば、変速往復運動)を行うようにし、前記所定距離としては、例えば、図10A図10Dに示す位置C1及び位置C3によって規定される距離である。
【0062】
ブロック630において、従動部材が往復運動を行うようにすると同時に、一定の速度で円盤を回転させ、従動部材は、円盤が1周回転する度に該所定距離内で往復運動を1回遂行する。
【0063】
ブロック640において、従動部材が往復運動を1回遂行すると、円盤もちょうど1周回転する。そのため、従動部材が該距離内で往復運動を1回する間に、円盤の側面に1つの円形以外の閉曲線の転がり軌跡が形成され、該閉曲線が所謂必要とされるカム溝のカム輪郭である。故に、該閉曲線に従って円形本体においてカム溝を形成すれば、結果として本発明で言うカムが得られる。
【0064】
以上で述べたように、必要とされる往復運動としては、健常者歩行時の股部に対する太もも及び/又は脛の揺動に対応することが好ましい。上記所定距離の2つの境界点(例えば、図10A図10Dに示す位置C1及び位置C3)は、健常者歩行時に太もも及び/又は脛が股部に対して揺動するときの2つの境界角度に対応する。従動部材の往復運動及び移動距離をそれぞれ健常者歩行時の股部に対する太ももの揺動及び揺動角度に対応させる必要が生じた場合、連桿を介して従動部材を下肢桿の股部に近接する太もも部分(例えば、図5に示す開口2414の位置)に連結するだけで済む。これと同様に、従動部材の往復運動及び移動距離をそれぞれ健常者歩行時の股部に対する脛の揺動及び揺動角度に対応させる必要が生じた場合、図5図6に示すように、連桿及び脛揺動桿を介して従動部材を下肢桿の膝部に近接する脛部分に連結すれば済み、すなわち連桿(例えば、第2連桿232’)及び中間部を介して従動部材を下肢桿の股部における第1従動桿247に連結し、並びに第2従動桿(例えば、第2従動桿248)を下肢桿の膝部に近接する脛部分(例えば、図5に示す開口2421の位置)に間接的に連結するだけで済む。下肢桿が患者の下肢部でなく、健常者の下肢部に固定される場合、健常者が普通に歩くだけで従動部材が健常者歩行時に対応する揺動角度で健常者の歩行に対応する揺動運動をするため、従動部材によって円盤の側面に残される軌跡は健常者歩行時の脛及び/又は太ももの揺動に対応し、対応するカム輪郭が得られる。
【0065】
また、本発明の一部の実施形態では、ソフトウェアモデル化によってもカム輪郭が得られる。例えば、コンピュータ支援ソフトウェア(例えば、Solidworks)を用いて人体下肢部の特定寸法及び訓練装置の基本構造をモデル化し、さらに、健常者歩行時の下肢部(例えば、股部及び膝部)の往復運動法則に基づき上記モデルに制限要素を付加し、かつ運動学的シミュレーションを実行することにより健常者歩行時の歩行姿勢・位置移動グラフを取得し、シミュレーションによって得られた歩行姿勢・位置移動グラフを訓練装置の基本構造モデルに導入することで、逆推定の方式にてカム輪郭を得ることができる。こうした策略によって、実使用の患者の下肢部を計測することで具体的な患者に最も適したカム輪郭を提供し、リハビリ訓練の効果を高めることができる。
【0066】
非円形歯車ペアの製造方法は、次の通りである。
【0067】
まず、互いに噛み合う駆動非円形歯車と従動非円形歯車を製造し、そのうち前記駆動非円形歯車および前記従動非円形歯車は同じ歯数及び一定の中心距離を有し、駆動非円形歯車810が1周回転する度に従動非円形歯車820も1周回転し、かつ駆動非円形歯車810と従動非円形歯車820が任意の位置に回転したとしても、駆動非円形歯車810と従動非円形歯車820が噛み合い関係を解除し又は互いに圧迫することなく、常に互いの噛み合い関係を維持する。本発明の一部の実施形態では、駆動非円形歯車及び従動非円形歯車の回転軸心は、それぞれの幾何中心からずれて形成される。
【0068】
そして、従動非円形歯車の側面に従動部材を設置することにより、非円形歯車ペアの製造を完遂する。
【0069】
製造において、駆動非円形歯車及び従動非円形歯車の歯車ピッチ線は、前記駆動非円形歯車が1周回転すると、前記従動非円形歯車における従動部材が前記駆動非円形歯車に駆動されて第1位置と第2位置の間で変速往復運動を1回行うように構成される。そのうち、第1位置は、従動部材が駆動非円形歯車の回転軸心から最も近接した位置であり、第2位置は、従動部材が駆動非円形歯車の回転軸心から最も離間した位置である。
【0070】
従動部材と従動部材に駆動される他の部材(例えば、下肢桿アセンブリ240)が接続されるとき、従動部材に接続された部材(例えば、連桿を介して)は、従動部材の変速往復運動に駆動されて一定の角度範囲内で変速揺動を行う。本発明の実施形態によれば、従動部材は、例えば連桿を介して、下肢桿アセンブリ240の太ももに対応する位置又は脛に対応する位置において下肢桿アセンブリ240に接続される。例えば、従動部材が下肢桿アセンブリ240の太ももに対応する位置に接続される場合、従動部材の変速往復運動に駆動されて、下肢桿アセンブリ240の太もも位置が股部を軸とし且つ健常者歩行時の股部に対する太ももの揺動方式に従って変速揺動を行う。該変速往復運動に駆動される揺動角度は、健常者歩行時の股部に対する太ももの揺動角度に対応し、従動部材が往復運動する際の2つの境界位置(すなわち、第1位置及び第2位置)は、健常者歩行時に太ももが揺動する2つの境界角度に対応する。例えば、従動部材が左足の下肢桿に接続される場合、第1位置は、右足が左足を支持脚として一歩踏み出してから股部に対する左足の下境界角度に対応し、第2位置は、左足が右足を支持脚として一歩踏み出してから股部に対する左足の下境界角度に対応する。
【0071】
駆動非円形歯車及び従動非円形歯車のピッチ線については、従来の方法に従ってピッチ曲線、弾性率、歯数及び中心距離を考慮して設計することができる。
【0072】
ピッチ曲線は、必要とされる所定の揺動法則に基づいて得られる。本発明の実施形態において必要とされる所定の揺動法則とは、例えば、健常者歩行時の股部に対する下肢部(太もも又は脛)の変速揺動法則である。駆動非円形歯車の回転角度を時間基準とした場合、非円形歯車ペアに駆動される下肢桿は、該時間基準に従い且つ所定の法則に則って揺動する。このとき、従動非円形歯車の運動曲線がないため、従動非円形歯車は、連桿を介して下肢桿によって駆動される。駆動非円形歯車及び下肢桿が同じ時間基準に従って揺動するため、駆動非円形歯車が1周回転する度に従動非円形歯車も1周分だけ回転する。さらに、下肢桿に駆動される従動非円形歯車は、駆動非円形歯車の定速度と異なる瞬時速度で回転し、該瞬時速度の時間に対する積分は、駆動非円形歯車の回転周期内において360°の条件を満たす必要がある。ところが、丸め誤差やサンプリング密度の影響により、実際の工学計算では数値積分結果に若干バラツキが発生し、比例補正を行って数値積分の誤差を許容範囲内に抑える必要がある。
【0073】
モジュール、歯数及び中心距離を確定する際、非円形歯車ペアでは標準モジュールを優先し、標準の切削具を用いて容易に加工できるようにする。モジュールが決定され且つ指定の歯数に基づくと、非円形歯車のピッチ線の周長が確定される。非円形歯車ペアの瞬時伝達比は、該瞬間に1対のピッチ線における駆動非円形歯車と従動非円形歯車が互いに噛み合うときの噛み合い点それぞれの回転半径の逆比と同じである。また、ピッチ線における1対のピッチ線の半径合計は、非円形歯車ペアの中心距離と同じである。ピッチ線が非円形を呈するため、中心距離、モジュール及び歯数は円形歯車ペアの場合と異なり、簡単な比例関係を持たない。つまり、標準モジュールを用いた場合には非標準の中心距離が得られ、逆の場合にも同様である。ピッチ周長の数値積分を求めるに先立って、各点のピッチ線半径を確定する必要があるが、ピッチ線半径が中心距離及び瞬時伝達比に基づき求められるため、まず1つの中心距離を仮設定し、かかる設定に基づきピッチ周長を試算する必要があり、そして中心距離を調整し、最終的にはピッチ周長の誤差を許容値の範囲内に抑えることが行われる。かような処理で得られた非円形歯車ペアは、標準モジュール及び非標準の中心距離を有し、標準モジュール及び非標準の中心距離は簡単に製造される。
【0074】
図1に示すように、訓練装置10に、車体枠100の頂部に取り付けられる腰部保持アセンブリ300を備え、腰部保持アセンブリ300は、リハビリ訓練過程において対麻痺や片麻痺患者の腰部を強くサポートし、患者が直立歩行を体験できるようにする。腰部保持アセンブリ300が患者に接触する部分に高分子材料で作られた包帯を設置し、中には柔らかくて快適なゴム発泡体を充填することにより、着用時の快適さやユーザ体験を高めることができる。
【0075】
本発明の一部の実施形態において、腰部保持アセンブリ300は、患者と接触する腰部持枠310、および腰部保持枠310を車体枠100に取り付ける腰部保持枠支持材320を備える。腰部保持枠310は、車体枠100の上方において車体枠100の両側へ延出して形成される。人体の重心が健常者歩行時に垂直方向で約20~30mmの変動量を有するため、腰部保持枠支持材320は、健常者歩行時に人体の重心の垂直方向における変動に対応できる観点から、垂直方向において上下へ変動可能に構成される。
【0076】
図8は、腰部保持枠310の立体模式図である。図8に示すように、腰部保持枠310は、腰部保持枠支持材320に固定される1対の支持枠311を備え、1対のバッフル板311は、それぞれの一端において対応する支持枠311に枢動可能に接続される。バッフル板311は、対麻痺患者が着座姿勢で着用し且つ直立姿勢で歩行する際の空間位置の変換を支持する観点から、開閉可能に形成される。腰部保持枠310には、バッフル板311を閉合した後の腰部保持枠310全体の剛性や安定性を確保する観点から、バッフル板311に取り外し可能に接続されるラッチ棒313を更に備え、このようなラッチ棒313は、炭素繊維材で製造することができる。
【0077】
図9は、腰部保持枠支持材320の立体模式図である。図9に示すように、腰部保持枠支持材320は、固定部321、調整部322及び変動部323を備える。固定部321は、車体枠100の頂部に取り付けられ、変動部323は、腰部保持枠310に接続され、固定部321の両端に開口が設けられる。滑り軸324は、固定部321の開口を通過し且つ線形軸受(図示せず)を介して固定部320に組み立てられ、固定部321の開口において垂直方向で上下へ移動することができる。調整部322の両端にも開口が設けられ、調整部322は、その開口において線形軸受(図示せず)を介して滑り軸324に取り付けられ、かつ滑り軸324の延出方向(垂直方向)に沿って上下へ移動することができる。滑り軸324の頂部は、変動部323に接続される。調整部322は、さらに昇降スクリュー325(例えば、筒状スクリュー)によって固定部321に接続され、かつ固定部321に設けられる調整機構326によって固定部321と調整部322の垂直方向における距離を調整する。変動部323は、さらに、弾性部材327(例えば、台形ばね)を介して調整部322に接続される。昇降スクリュー325を調整することにより、調整部322と固定部321の垂直方向における距離を調整することができ、すなわち車体枠100に対する調整部322の垂直方向の位置を調整することで、腰部保持枠支持材320に接続される腰部保持枠310の垂直位置を調整することができるため、患者の身長に応じて適切な位置で腰部保持枠310を設置することができる。変動部323が弾性部材327を介して調整部322に接続されるため、患者がリハビリ訓練を行う際、変動部323は、変動部323に接続されている腰部保持枠310と共に歩行時重心の垂直方向における変動量に応じて上下へ変動することができる。
【0078】
以上で述べたように、本発明の訓練装置は、電子機器の補助に依存することなく、簡単な機械機構に頼って患者の歩行リハビリ訓練を実現することができる。そのため、安価で製造でき、同時に研究開発および電子機器を搭載した訓練装置の知能制御プログラムを開発するための莫大な開発費用を削減することができる。また、本発明によれば、一人の医療スタッフ又は一般操縦者に頼るだけで患者の歩行リハビリ訓練を提供することができ、リハビリ訓練の継続性及び治療効果を改善することができる。
【0079】
以上では本発明の実施形態を説明したが、本発明の趣旨から逸脱しない限り本発明の上記実施形態に対して適宜変更、変化を加えてもよく、これらの変更、変化も本発明の範囲内に含まれる。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D