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特許7240783仮設トイレ建屋および仮設トイレ建屋の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】仮設トイレ建屋および仮設トイレ建屋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20230309BHJP
   A47K 11/00 20060101ALI20230309BHJP
   E03D 11/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
E04H1/12 301
A47K11/00
E03D11/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023507441
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2022045313
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2022161599
(32)【優先日】2022-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】396011521
【氏名又は名称】大都技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 清之
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実公平03-054527(JP,Y2)
【文献】特開2004-278280(JP,A)
【文献】特開2014-079421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
A47K 11/00 - 11/12
E03D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状をなす格子筒と、
前記格子筒に挿入されるトイレ空間を画定するための容器本体と、
前記格子筒の側方を覆う外装板と、
前記容器本体の上方を覆う屋根と、を備え、
前記格子筒は、作用する外力に抗することで前記容器本体を保護することを特徴とする仮設トイレ建屋。
【請求項2】
前記容器本体は、天井に向かって開口する上方開口部が設けられた床容器と、床に向かって開口する下方開口部が設けられた天井容器と、を有することを特徴とする請求項1に記載の仮設トイレ建屋。
【請求項3】
前記天井容器と、前記床容器との間に生じる隙間を塞ぐためのシート材が装着されることを特徴とする請求項2に記載の仮設トイレ建屋。
【請求項4】
前記格子筒は、前記床容器が挿入される床格子筒と、前記天井容器が挿入される天井格子筒とを有し、前記床格子筒と前記天井格子筒は、分離可能に接合されることを特徴とする請求項3に記載の仮設トイレ建屋。
【請求項5】
前記格子筒の下端部と接合して、前記床容器を支持するパレット部を備え、
前記パレット部は、フォークリフトのフォークが挿入できる挿入孔が設けられ、
前記格子筒の上端部に、吊金具が接合されることを特徴とする請求項4に記載の仮設トイレ建屋。
【請求項6】
前記容器本体の内面は、硬質ウレタン層で覆われることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の仮設トイレ建屋。
【請求項7】
筒形状をなす格子筒と、前記格子筒に挿入されるトイレ空間を画定するための容器本体と、前記格子筒の側方を覆う外装板と、前記容器本体の上方を覆う屋根と、を備え、前記格子筒は、作用する外力に抗することで前記容器本体を保護することを特徴とする仮設トイレ建屋の製造方法であって、
筒形状をなす金属枠と、前記金属枠に挿入される容器部と、前記金属枠に着脱可能に接合して、前記容器部を支持するパレットと、を有する物流容器を2個準備する工程と、
一方の前記物流容器について、容器部の上端部を切断して上方開口部を形成する工程と、
他方の前記物流容器について、パレットを金属枠から分離した後、容器部の下端部を切断して下方開口部を形成する工程と、
前記上方開口部と前記下方開口部が対向する状態で、一方の前記物流容器に他方の前記物流容器を積み重ねて、一方の前記物流容器の金属枠と、他方の前記物流容器の金属枠を接合することで前記格子筒、および前記容器本体を形成する工程と、を備えることを特徴とする仮設トイレ建屋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設トイレに用いる建屋に関する。
【背景技術】
【0002】
仮設トイレは、輸送や設置が比較的簡単なことからイベント会場、工事現場など様々な場所で使用されている。輸送性や設置簡便性の更なる向上をめざして、様々な仮設トイレが開発されている。
【0003】
特許文献1の発明は、互いに前後方向に離れた位置で便槽に固定された複数個の吊り上げ部材を備える仮設トイレである。吊り上げ部材は、中央の底板と左右の側板を有して正面視略コの字形をなしている。底板が便槽の底面に接触し、側板が便槽の側面に固定され、側板の内側に吊り上げ索を掛止する掛止部材が設置されている。このような構成とすることで、便槽に汚物が大量に入った状態でも、便槽やボックスを変形・破損させることなく、クレーンで吊り上げることができる。
【0004】
特許文献2の発明は、ブロー成形の便槽と、便槽の上面に下端部が連結された樹脂製のドアパネルと、便槽の上面に下端部が連結され、ドアパネルの一方の側縁に連結された樹脂製の第1サイドパネルと、便槽の上面に下端部が連結され、ドアパネルの他方の側縁に連結された樹脂製の第2サイドパネルと、便槽の上面に下端部が連結され、第1および第2サイドパネルそれぞれに連結された樹脂製のバックパネルとドアパネル、第1および第2サイドパネルおよびバックパネルの少なくとも1つの周縁を溶着し、内部に中空部を形成する一対の表皮材シートと、中空部内の芯材とを一体成形されたサンドイッチパネル構造とした仮設トイレである。このような構成とすることで、輸送性および組立性並びに使用便益性を向上させつつ、メインテナンスと養生を簡易化できる。
【0005】
特許文献3の発明は、ドアパネル、第1および第2サイドパネルおよびバックパネルにより、内部に便器を設けた密閉スペースを構成するパネル式組み立て構造体をなす仮設トイレユニットであって、ドアパネル、第1および第2サイドパネルおよびバックパネルの少なくとも1つをサンドイッチパネル構造とし、サンドイッチパネルは、一対の表皮材シートと、一対の表皮材シートそれぞれに溶着される樹脂製の芯材とを有し、一対の表皮材シートの末端を溶着一体化して側壁を構成し、サンドイッチパネルの外周の側壁と芯材の外周には隙間が形成されている。このような構成とすることで、輸送性および組立性並びに使用便益性を向上させつつ、メインテナンスと養生を簡易化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-79421号公報
【文献】特開2011-94427号公報
【文献】特開2014-122548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1~3で開示されている仮設トイレは、各構成要素が構造的に一体となって強度を確保していることから、一部の構成要素の破損によって全体が大きなダメージを直接受ける構造となっている。例えば、強風等に起因して飛来物が側壁部に衝突して、側壁部の外側が損傷したとき、側壁部全体の強度が大幅に低下し、大きなダメージを直接受ける構造となっている。強風の発生頻度が高まっている近年の気象状況に鑑みると、従来の仮設トイレの対耐荷重、および対耐久性対策は不十分であると考えられる。
【0008】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、高い耐荷重性能、および耐久性能を具備する仮設トイレを提供するものである。また、この仮設トイレを、低コスト、短工期で製造する製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明は、仮設トイレ建屋であって、筒形状をなす格子筒と、格子筒に挿入されるトイレ空間を画定するための容器本体と、格子筒の側方を覆う外装板と、容器本体の上方を覆う屋根とを備え、格子筒は、作用する外力に抗することで容器本体を保護することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、容器本体は外力に抗する格子筒に差し入れられていることから、容器本体が直接に外力を受けることはない。また、格子筒の側方は外装板で覆われており、また容器本体の上方は屋根で覆われていることから、強風等に起因して空中を飛来する飛来物が仮設トイレ建屋に衝突したとしても容器本体は直接に飛来物に衝突することなく保護される。
【0011】
好ましくは、容器本体は、天井に向かって開口する上方開口部が設けられた床容器と、床に向かって開口する下方開口部が設けられた天井容器とを有する。
【0012】
この構成によれば、容器本体は、天井に向かって開口する上方開口部が設けられた床容器と、床に向かって開口する下方開口部が設けられた天井容器を有するので、格子筒の変形によって大きな力を受けることなく円滑に追従できる。
【0013】
好ましくは、天井容器と、床容器との間に生じる隙間を塞ぐためのシート材が装着される。
【0014】
この構成によれば、天井容器と、床容器との間に生じる隙間を塞ぐためのシート材が装着されるので、雨水のトイレ空間への侵入を防止できる。
【0015】
好ましくは、格子筒は、床容器が挿入される床格子筒と、天井容器が挿入される天井格子筒とを有し、床格子筒と天井格子筒は、分離可能に接合される。
【0016】
この構成によれば、格子筒は、床容器が挿入される床格子筒と、天井容器が挿入される天井格子筒とを有し、床格子筒と天井格子筒は、分離可能に接合されるので、床格子筒と天井格子筒を、調整部材を介して接合する等によって、仮設トイレ建屋の高さを高くすることができる。また、床格子筒と天井格子筒を接合することで格子筒、および容器本体の双方を同時に形成できるので組立が容易となる。
【0017】
好ましくは、格子筒の下端部と接合して、床容器を支持するパレット部を備え、パレット部は、フォークリフトのフォークが挿入できる挿入孔が設けられ、格子筒の上端部に、吊金具が接合される。
【0018】
この構成によれば、格子筒の下端部と接合して、床容器を支持するパレット部を備え、パレット部は、フォークリフトのフォークが挿入できる挿入孔が設けられ、格子筒の上端部に、吊金具が接合されるので、フォークリフトを利用して、あるいはクレーンを利用しての仮設トイレ建屋の輸送が可能となる。
【0019】
好ましくは、容器本体の内面は、硬質ウレタン層で覆われることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、容器本体の内面は、硬質ウレタン層で覆われるので、トイレ空間の、断熱性、遮音性、居住性、デザイン性を高めることができる。
【0021】
上記課題を解決するための他の態様の発明は、筒形状をなす格子筒と、格子筒に挿入されるトイレ空間を画定するための容器本体と、格子筒の側方を覆う外装板と、容器本体の上方を覆う屋根と、を備え、格子筒は、作用する外力に抗することで容器本体を保護することを特徴とする仮設トイレ建屋の製造方法であって、筒形状をなす金属枠と、金属枠に挿入される容器部と、金属枠に着脱可能に接合して、容器部を支持するパレットとを有する物流容器を2個準備する工程と、一方の物流容器について、容器部の上端部を切断して上方開口部を形成する工程と、他方の物流容器について、パレットを金属枠から分離した後、容器部の下端部を切断して下方開口部を形成する工程と、上方開口部と下方開口部が対向する状態で、一方の物流容器に他方の物流容器を積み重ねて、一方の物流容器の金属枠と、他方の物流容器の金属枠を接合することで格子筒、および容器本体を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、2個の物流容器を利用して仮設トイレ建屋を製造することができるので、製造コストを低減できるとともに、製造期間の短縮を図ることができ、さらに製造方法の簡略化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態における仮設トイレ建屋の斜視図である。
図2】外装材を省略した仮設トイレ建屋の斜視図である。
図3】容器本体の正面断面図である。ただし、硬質ウレタン層は省略している。
図4】屋根、および吊金具の取付を説明する断面図である。
図5】物流容器の斜視図である。
図6】(a)~(c)は、仮設トイレ建屋の製造手順を説明する概略図である。
図7】トイレ空間の設備配置状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1~4を参照して、本発明の仮設トイレ建屋1の実施形態を詳述する。
【0025】
図1に示す通り、仮設トイレ建屋1(以後、建屋1と記す)は、側面が外装板30で覆われており、正面に扉31が取り付けられている。本実施形態では、扉31は、トイレ空間1aの側でロックできる外開きの開き戸であるが、これに限定されるわけではない。
【0026】
建屋1の下端部にパレット部50が設けられている。パレット部50は載置面に安定して載置するためのものであり、フォークリフトのフォークが挿通できる挿通孔51が設けられている。これにより、フォークリフトによる建屋1の荷揚げ、荷降ろし、現場内搬送が可能となる。また、建屋1の上端部に、吊金具52が取付けられている。ワイヤーを介して固定金具と、控え杭、あるいは錘を接続することで建屋1を安定して設置面に設置できる。またクレーンで吊るときの金具としても利用できる。
【0027】
屋根40は、平屋根であるが、限定されるわけではない。例えば、切妻屋根であってもよい。
【0028】
図2および図3に示す通り、格子筒10は、天井容器22が差し込まれる天井格子筒12と、床容器21が差し込まれる床格子筒11で構成されており、天井格子筒12と床格子筒11はボルト接合により分離可能に接合している。また、床格子筒11は、下端部でボルト接合により、パレット部50と分離可能に固定されている。
【0029】
格子筒10は、縦材13と横材14が縦横に組まれることで格子形状をなしている。縦材13は、亜鉛メッキ処理が施された金属製の棒状の部材であり、上下方向に沿って延びている。横材14は、亜鉛メッキ処理が施された金属製の棒状の部材であり、縦材13を取り囲んで環状に設けられている。縦材13は横材14と交差する位置で凹部15が設けられている。凹部15は、横材14との接続位置を決めるとともに、接続状態をより強固に保つためのものである。また、縦材13、および横材14は扉枠32と接合して、構造的に一体化している。扉枠32は、金属製であることが好ましい。これにより、強度上の弱点となる扉部分を強固な構造とすることができる。
【0030】
容器本体20は、扉枠32に接続しており、床25に向かって開口する天井容器22と、天井26に向かって開口する床容器21とシート材23を有している。天井容器22、および床容器21は平面視が略矩形の容器であり、天井容器22は天井格子筒12に、また床容器21は床格子筒11に、差し込まれている。天井容器22の外側面、および床容器21の外側面は、格子筒10の縦材13からの力が作用する状態で接触している。これに起因する摩擦力によって、天井格子筒12内に位置する天井容器22の変位が拘束されるとともに、床格子筒11内に位置する床容器21の変位が拘束される。
【0031】
縦材13に接触した状態で天井容器22、床容器21は扉枠32に接続している。天井容器22の下方開口部22aと、床容器21の上方開口部21aは隙間が設けられている。この隙間はシート材23で覆われている。これにより、容器本体20、および扉31は、協働してトイレ空間1aを画定する。
【0032】
図7に示す通り、トイレ空間1aの断熱性能を向上させるために、容器本体20の内部空間側に硬質ウレタン層60が設けられている。また、トイレ空間1aは、少なくとも、洋式の水洗トイレ61が配置できる空間を確保することが好ましい。仮設水洗トイレに必要となる他の設備、例えば洗浄された汚物を貯留するタンク、洗浄水を貯留する貯水タンクについては、建屋1とは別に配置してもよい。これにより、建屋1をコンパクトなものとすることができる。
【0033】
容器本体20の素材は、軽量で、変形しにくく、強度に優れるものであることが好ましい。本実施形態では、天井容器22、および床容器21はポリエチレン製を例示しているが、限定されるわけではない。また、シート材23はポリエチレン製の防水シートを例示しているが、限定されるわけではない。
【0034】
天井容器22と床容器21との間に生じる隙間を埋めるシート材23は、天井容器22の内部空間側の側面、床容器21の外部空間側の側面に取り付けられている。これにより、トイレ空間1aへの雨水の侵入を防止できる。
【0035】
外装板30は、横材14に接続した状態で固定されてる。すなわち、外装板30は、格子筒10を介して容器本体20に接続している。格子筒10が外装板30と容器本体20の間に介在することで、外装板30と容器本体20の間に空気層が形成される。空気層の存在によって、建屋1の断熱性能は、より一層向上する。
【0036】
外装板30を設けることによって、容器本体20を保護できて、容器本体20の耐久性能の向上が図れる。例えば、強風時において飛来物が建屋1に衝突した場合でも容器本体20は破損を免れ、内部空間の確保が可能となる。また、太陽光が直接に容器本体20に照射されなくなることで、内部空間の温度上昇を抑制できる。外装板30の素材は、軽量で、強度にすぐれ、太陽光の遮蔽性能が高いものであることが好ましい。本実施形態では、木製を例示しているが、限定されるわけではない。
【0037】
図4に示す通り、屋根40は、天板41と袴枠42で構成されている。天板41は平面視が矩形のポリカーボネート板である天板部材43と、断熱材44を有している。断熱材44は、天板部材43の床25に対向する面に張り付けられており、側面は袴枠42に接触している。袴枠42は、天板41の外縁端から床25方向に向かって垂直に延びる板であり、外装板30を覆っている。
【0038】
吊金具52は、頭部にリング53の付いたボルトであり、袴枠42の対向する側面に2個ずつ、合計4個が、袴枠42から突設して設けられている。また、袴枠42を貫通して、縦材13に取り付けられている。吊金具52の端部同士は、繋材54を介して接続している。繋材54は、吊金具52を経由して格子筒10に作用する力を負担することで、格子筒10の変形を抑制するものである。リング53の部分にワイヤー等を引っ掛けることによって、建屋1を吊り上げることができる。また、強風対策用の錘を取り付けることができる。
【0039】
建屋1の製造方法について、図5、6(a)~(c)を参照して説明する。
【0040】
建屋1の製造は、液体用の物流容器101を2個用いる。この物流容器101は、国際間の輸送に数多く利用されているもので、一般的に「IBCコンテナ」と呼ばれており、高密度ポリエチレン製複合中型容器(IBC1,000Lコンテナ)である。物流容器101は、UN(国連)認定されたIMDGコード(International Maritime Dangerous Goods Code:国際海上危険物規定)に合致したコンテナであることが好ましい。また、フォークリフトによる荷役・運搬からトラック、鉄道、海上運送、荷卸し、貯蔵まで、国内はもちろん、国際間でも液体運搬容器として使用することができ、危険物運搬の安全確保ができるものであることが好ましい。
【0041】
物流容器101は金属枠110、容器部120、パレット150で構成されている。金属枠110は亜鉛メッキが施された棒状の部材が縦横に組まれて格子状をなしており、所定の強度を具備することで、容器部120を保護している。
【0042】
容器部120は、耐UV性能を具備する高分子量高密度ポリエチレン製であり、内容量が約1000Lの容器である。また、容器部120の底部の角部には、容器部120を衝撃から保護するプロテクター160が装着されている。
【0043】
パレット150は、亜鉛メッキが施されており、角部および中間部に配置される脚部の上端に容器部120を支持するための支持板が、また、下端に脚部の変形を拘束するための環状のパイプが固定されている。パレット150は、フォークリフトが四方差し可能なようにフォークを挿入するための挿通孔151が設けられている。
【0044】
上述した物流容器101を、2個準備する。物流容器101は、未使用品、既に輸送で使用した使用済みの容器のいずれであってもよい。
【0045】
2個の物流容器のうちの一方の物流容器101aについて、図6(a)に示す通り、容器部120aの上端部を切断して、上方開口部129aを形成する。
【0046】
他方の物流容器101bについて、図6(b)に示す通り、パレット150bを撤去して、撤去した側の容器部の端部を切断して、下方開口部128bを形成する。
【0047】
図6(c)に示す通り、それぞれの上方開口部129a、下方開口部128bが対向する状態で、一方の物流容器101aの上に他方の物流容器101bを積み重ねる。このとき、金属枠110a、110bを構成する横材114a、114b同士が接触する。接触する横材114a、114b同士をボルト接合することで、積み重ねられた物流容器101a、101bは構造的に一体化する。
【0048】
それぞれの容器部120a、120bの間に生じる隙間を、シート材23を用いて塞ぐとともに、扉31を取りつけるために容器部120a、120b、および金属枠110a、110bを切断する。切断した部分に扉31を取り付ける。具体的には、扉枠32と、金属枠110a、110bおよび容器部120a、120bを接着剤や隙間充填材を用いて接続させる。これらの工程を踏むことで、金属枠110a、110bは格子筒10を形成し、容器部120a、120bは容器本体20を形成する。
【0049】
屋根40を据え付けた後、外装板30を格子筒10に固定する。屋根40の固定は吊金具52を用いる。具体的には、吊金具52を袴枠42に挿通させた状態で、吊金具52と縦材13を固定する。これらの工程を踏むことで、建屋1は完成する。
【0050】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る建屋は、使用済みの物流容器を利用して製作することもできる。不要となって、廃棄される予定の物流容器を再利用できて、しかも製造コストを大幅に削減できることから、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0052】
1 :建屋
1a :トイレ空間
10 :格子筒
11 :床格子筒
12 :天井格子筒
20 :容器本体
21 :床容器
21a :上方開口部
22 :天井容器
22a :下方開口部
25 :床
26 :天井
30 :外装板
40 :屋根
50 :パレット部
51 :挿入孔
52 :吊金具
60 :硬質ウレタン層
101 :物流容器
101a :一方の物流容器
101b :他方の物流容器
110、110a、110b :金属枠
120、120a、120b :容器部
129a :上方開口部
128b :下方開口部
150、150a、150b :パレット
【要約】
【要約】高い耐荷重性能、および耐久性能を具備する仮設トイレを提供するとともに、この仮設トイレを、低コスト、短工期で製造する製造方法を提供する。仮設トイレ建屋1は、筒形状をなす格子筒と、格子筒に挿入されるトイレ空間1aを画定するための容器本体と、格子筒の側方を覆う外装板30と、容器本体の上方を覆う屋根40とを備えている。格子筒は、天井容器が差し込まれる天井格子筒と、床容器が差し込まれる床格子筒で構成されており、天井格子筒と床格子筒はボルト接合により分離可能に接合している。また、床格子筒は、下端部でボルト接合により、パレット部50と分離可能に固定されている。天井容器の上方は屋根40で覆われている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7