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  • 特許-摩擦部材(ライニング体) 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】摩擦部材(ライニング体)
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20230309BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20230309BHJP
   F16D 69/00 20060101ALI20230309BHJP
   F16D 69/02 20060101ALI20230309BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
C09K3/14 520C
F16D65/092 D
F16D69/00 R
F16D69/02 B
C09K3/14 520M
C09K3/14 520F
C04B35/80
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019556256
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018058879
(87)【国際公開番号】W WO2018189054
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】102017107621.2
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519365045
【氏名又は名称】エリカ フィッシャー
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】エリカ フィッシャー
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-530680(JP,A)
【文献】特開昭48-061845(JP,A)
【文献】特表2000-509439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
F16D 49/00-71/04
C04B 35/00-35/553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じセラミック材料から一体的に形成された、縫い目や接合のないバッキング部(11)と摩擦部(14)とを備えた摩擦部材(10)であって、前記セラミック材料の純度は少なくとも75%であり、前記摩擦部材(10)は等方圧加圧による焼結体である、摩擦部材。
【請求項2】
前記バッキング部(11)は、少なくとも取付け部(16)で、前記摩擦部(14)を超えて側方に突き出す、ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦部材。
【請求項3】
少なくとも1つの取付け部切欠き(17)が前記取付け部(16)に存在する、ことを特徴とする請求項2に記載の摩擦部材。
【請求項4】
前記セラミック材料は酸化物セラミックス又は非酸化物セラミックスで構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の摩擦部材。
【請求項5】
前記使用されるセラミック材料は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、又は炭化ホウ素である、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の摩擦部材。
【請求項6】
前記セラミック材料は添加物を含まない、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の摩擦部材。
【請求項7】
前記添加物は強化繊維である、ことを特徴とする請求項6に記載の摩擦部材。
【請求項8】
前記セラミック材料は強化繊維を含む、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の摩擦部材。
【請求項9】
前記強化繊維は炭素繊維により形成される、ことを特徴とする請求項8に記載の摩擦部材。
【請求項10】
前記セラミック材料は焼結セラミック材料である、ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1つに記載の摩擦部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦ブレーキで使用する摩擦部材(ライニング体)に関する。この摩擦部材は、ブレーキパッドとも呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
摩擦ブレーキ用の摩擦部材は既知である。例えば、特許文献1は、ディスクブレーキ用の摩擦部材を記載している。摩擦部材は、摩擦ライニングを含むバッキングプレートを備える。バッキングプレートは一般的に金属、例えば、鋼鉄でできている。ブレーキパッドは、ブレーキディスクとの摩擦係合に適した材料でできている。ブレーキキャリパとの接触によるバッキングプレートの酸化を防ぐため、適切な金属層をバッキングプレートに配置してブレーキキャリパの材料との接触腐食を避けることが提案されている。
【0003】
特許文献2は、摩擦ライニングをバッキングに一体的且つ形状同志の噛み合い、嵌め合いによる係止で接合することを提案している。強化繊維はこのプロセスで配置され、バッキングと摩擦ライニングの間の界面に貫入する。例えば、摩擦ライニングに存在する強化繊維は、穿刺によりバッキング層に貫入するとともに、バッキング層と摩擦ライニングの間に形状同志の噛み合い、嵌め合いによる嵌合を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第3803069号明細書
【文献】独国特許出願公開第10358320号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、摩擦ブレーキで使用する際に機械的必要条件及び熱の必要条件を満たす、製造が非常に容易な摩擦部材(ライニング体)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の技術的特徴を有する摩擦部材(ライニング体)により達成される。
【0007】
本発明の摩擦部材(ライニング体)は、同じセラミック材料から一体的に形成された、縫い目や接合のないバッキング部と摩擦部とを備える。バッキング部と摩擦部との間に移行面や移行領域といったものは存在しない。摩擦部材を形作るセラミック材料は、バッキング部と摩擦部との間に分離層や接合層を形成しない。特に、摩擦部材は、焼結体を形成するために焼結により製造される。摩擦部材は、等方圧加圧による焼結体であることが好ましい。
【0008】
摩擦部材のバッキング部と摩擦部とが一体として構成されているため、ブレーキの際に熱膨張計数の違いによる熱応力が発生しない。関連する技術分野で、金属製のバッキング部による場合と同じく、このセラミック摩擦部材がブレーキキャリパで使用される際には接触腐食は発生しない。
【0009】
セラミック材料の純度は、少なくとも75%、少なくとも85%、又は少なくとも95%であることが好ましい。
【0010】
摩擦部材は、特に高圧縮度の焼結セラミック材料でできている。セラミック材料の密度は、約3乃至6g/cm3であることが好ましい。
【0011】
セラミック材料は、摩擦部材として優れた機械及び熱特性を有する。焼結の際に着色物質を添加することにより、摩擦部材に塗装することなく着色することができる。加圧及び焼結により、精密な幾何学的形状が容易に実現できる。
【0012】
摩擦部材を焼結セラミック材料から製造することに代えて、これを反応セラミック材料(Reaktionskeramikmaterial)から製造することもできる。
【0013】
使用されるセラミック材料は、酸化アルミニウム等の酸化物セラミック材料であることが好ましい。酸化アルミニウムの使用により、材料の対合(Werkstoffpaarung)によっては、約0.4乃至0.7の範囲で比較的高い滑り摩擦係数が実現する。
【0014】
例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、又は炭化ホウ素といった非酸化物セラミック材料を使用することもできる。酸化アルミニウムと炭化ケイ素を使用すると、制動プロセスの際、摩擦ライニングが熱せられた場合にこれらの材料の熱膨張係数は低いので都合がよい。
【0015】
摩擦部材の簡素な態様においては、できれば強化繊維は存在しないことが好ましい。これにより製造が簡素化される。その変形態様においては、強化繊維、特に炭素繊維を、摩擦部材のセラミック材料、に配置することもできる。このようにすると、剪断強度を増加させることができる。さらに、熱伝導率を炭素繊維により改善することができ、摩擦部材内でより一様な熱分布を実現することができる。
【0016】
一つの態様においては、バッキング部は、摩擦部を超えて側方に突出する取付け部を備える。少なくとも1つの取付け凹部が、摩擦部材をブレーキキャリパ又はその他の保持部に取り付けるために、この取付け部に設けられ得る。
【0017】
本発明の優位性のある実施例は、従属項、発明の詳細な説明、及び図面から明らかになろう。以下で摩擦ライニングの実施例について添付の図面に基づいて詳細に説明する。図は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】バッキング部を含む摩擦部材の実施例の斜視図である。
図2】摩擦部を含む図1の摩擦部材の実施例の斜視図である。
図3】摩擦部の上面図を含む図1及び2の摩擦部材を示す図である。
図4図3の交差線IV-IV沿いの摩擦部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図は摩擦ブレーキで用いられる摩擦部材(ライニング体)10の実施例を示す。この摩擦部材10は、ブレーキパッドとも呼ばれる。摩擦部材10は、実施例ではバッキングプレート12として構成される、バッキング部11を備える。このバッキングプレート12は、実質的に平坦な後面13を有する。この摩擦部材は、後面13とは反対側に摩擦部14を有する。この摩擦部14は、バッキング部11と反対側に、摩擦面15を備え、その摩擦面15はブレーキ部品に当接して制動プロセスの際に摩擦力を発生させる。摩擦部14の厚さは、摩擦面15に対して垂直方向に一定である。これは、実質的に直方体又は立方形状の外形を有し得る。摩擦部を弧状に湾曲させ、ブレーキディスクの輪郭に一致させることもできる。
【0020】
バッキング部11すなわち、実施例のバッキングプレート12は、摩擦面又は後面13と平行な方向に、摩擦部14を超えて側方に突き出す。バッキング部11はこの領域に取付け部16を備える。バッキング部11すなわちバッキングプレート12は、その取付け部16に、1つ又は複数の取付け部切欠き17を有する。この実施例においては、2つの取付け部切欠き17は孔18として構成されている。
【0021】
別の取付け部切欠き17がその側方で開放されていて、これは開放された切欠き19として構成される。この開放された切欠き19は、少なくとも1つの戻り止め突起部20を有することができ、実施例では互いに向かい合う2つの戻り止め突起部20を備え、そのため開放切欠き19の断面は少なくとも1つの戻り止め突起部20の位置で狭まる。このようにして、切欠き19に係合するピンと、摩擦力による結合及び/又は形状同志の嵌め合わせによる結合を欠き確立することができる。
【0022】
この摩擦部材10は一体成形体からできていて、縫い目や接合がない。特にバッキング部11と摩擦部14の間に、界面、分離面、又は接合面は存在しない。摩擦部材は、セラミック材料から製造される。セラミック材料の純度は、少なくとも80乃至85%、又は少なくとも90乃至95%であることが好ましい。実施例において、セラミック材料は、酸化物セラミックス、例えば、酸化アルミニウムである。しかし、それに代えて、セラミック材料は、炭化物又は窒化物等の非酸化物セラミックス、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、又は炭化ホウ素でもよい。
【0023】
摩擦部材10は焼結セラミック材料から構成されることが好ましい。特に、摩擦部材10は、等方圧加圧の焼結体、好ましくは高圧縮度の焼結体として製造される。実施例によれば、摩擦部材10は単1の工程による加圧及び焼結により製造される。取付け部切欠き17を製造するための機械加工は省略される。同様に、摩擦部14とバッキング部11の間の接続を確立するための後処理は不要である。
【0024】
セラミック材料に加え、強化繊維等の添加物をセラミック材料に添加することができる。1つの実施例においては、炭素繊維がセラミック材料に強化繊維として組み込まれ、それにより機械的安定性及び熱伝導率を改善することができる。かかる添加物の比率は、摩擦部材10の重量に対して、5%以下、10%以下、15%以下、又は25%以下である。
【0025】
不純物は別として、セラミック材料は添加物及び特に強化繊維を含まなくてもよい。
【0026】
摩擦部14の化学的及び/又は機械的及び/又は物理的特性は、バッキング部11と同様である。製造の際には、添加物の有無にかかわらず、部品11、14の両方に同じセラミック材料を使用する。
【0027】
摩擦部材は等方性の特性を有する。特に、等方圧加圧又は熱間等方圧加圧の結果、摩擦ブレーキでの使用の際に有用な多孔性が生じる。
【0028】
本発明は、縫い目及び接合がない同じセラミック材料から一体的に形成された、バッキング部11と摩擦部14とを備えた摩擦部材10に関する。セラミック材料の純度は、少なくとも75%乃至80%である。摩擦部材は焼結体を形態で等方圧加圧により製造されることが好ましく、そうすると単1の工程による製造プロセスを実現することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 摩擦部材(ライニング体)
11 バッキング部
12 バッキングプレート
13 後面
14 摩擦部
15 摩擦面
16 取付け部
17 付属物の切抜
18 孔
19 開放切抜
20 戻り止め突起部

図1
図2
図3
図4