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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】流体発電システム及びその設置構造
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/18 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
F03B13/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022062177
(22)【出願日】2022-04-01
【審査請求日】2022-05-30
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511216204
【氏名又は名称】東福 憲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100101926
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 孝和
(72)【発明者】
【氏名】東福 憲郎
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-110300(JP,A)
【文献】中国実用新案第203962277(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧に対応した回転力を出力可能な出力軸を有する流体駆動装置と、当該流体駆動装置の出力軸の回転力を受けて発電動作を行う発電装置と、所定の支持体に組み付けられたこれら流体駆動装置と発電装置とを流体上に固定するための固定装置とを備え、
上記流体駆動装置は、
第1の回転体と、
上記第1の回転体と所定間隔を保ち且つその回転中心軸が上記第1の回転体の回転中心軸と平行な第2の回転体と、
上記第1の回転体と第2の回転体とに巻き付けられた無端ベルトと、
各抵抗部材が流体圧を受けるための凹状の受圧面部を有し且つ上記無端ベルトの表面に所定の間隔で立設された複数の第1の抵抗部材と、
その回転中心軸が上記第1及び第2の回転体の回転中心軸と平行な状態で、上記第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトとの間に配設され、且つ、上記支持体により上下動自在に支持された複数の補助回転体と
を備え、
上記発電装置は、
上記流体駆動装置の出力軸の回転力を回転軸で受けて発電動作を行う発電機を備え、
上記固定装置は、
流体の底等の地盤上に固設するための固定体と、
上記固定体の上部に設けられた第1の連結部と、
上記支持体に設けられ且つ上記第1の連結部と連結可能な第2の連結部と
を備え、
上記複数の補助回転体の中の1つ以上の補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置決めされることにより、上記無端ベルトのうち第1の回転体及び第2の回転体よりも下側の無端ベルト部分が、流体の深さ方向に略くの字状に湾曲されて、当該下側の無端ベルト部分の長さが、上側の無端ベルト部分の長さよりも長く設定されている
流体発電システムの設置構造であって、
上記支持体を、上記第1の回転体及び第2の回転体が流体面の上方に位置し且つ上記湾曲した下側の無端ベルト部分に位置する複数の第1の抵抗部材が当該流体内に完没するように、流体上に配置し、
上記固定装置の固定体を、柱状体に設定して、その下端部を水深が深い洋上等における流体の底等の地盤上に固定することにより、流体中に立設し、
当該固定体の上端部に設けられている第1の連結部を、上記支持体に設けられている上記第2の連結部に連結することで、当該支持体を、上記配置位置に固定し、
上記第1の連結部と第2の連結部との連結部位が、流体面の上方である、
ことを特徴とする流体発電システムの設置構造。
【請求項2】
流体圧に対応した回転力を出力可能な出力軸を有する流体駆動装置と、当該流体駆動装置の出力軸の回転力を受けて発電動作を行う発電装置と、所定の支持体に組み付けられたこれら流体駆動装置と発電装置とを流体上に固定するための固定装置とを備え、
上記流体駆動装置は、
第1の回転体と、
上記第1の回転体と所定間隔を保ち且つその回転中心軸が上記第1の回転体の回転中心軸と平行な第2の回転体と、
上記第1の回転体と第2の回転体とに巻き付けられた無端ベルトと、
各抵抗部材が流体圧を受けるための凹状の受圧面部を有し且つ上記無端ベルトの表面に所定の間隔で立設された複数の第1の抵抗部材と、
その回転中心軸が上記第1及び第2の回転体の回転中心軸と平行な状態で、上記第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトとの間に配設され、且つ、上記支持体により上下動自在に支持された複数の補助回転体と
を備え、
上記発電装置は、
上記流体駆動装置の出力軸の回転力を回転軸で受けて発電動作を行う発電機を備え、
上記固定装置は、
地盤上に固設するための固定体と、
上記固定体の上部に設けられた第1の連結部と、
上記支持体に設けられ且つ上記第1の連結部と連結可能な第2の連結部と
を備え、
上記複数の補助回転体の中の1つ以上の補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置決めされることにより、上記無端ベルトのうち第1の回転体及び第2の回転体よりも下側の無端ベルト部分が、流体の深さ方向に略くの字状に湾曲されて、当該下側の無端ベルト部分の長さが、上側の無端ベルト部分の長さよりも長く設定されている
流体発電システムの設置構造であって、
上記支持体を、上記第1の回転体及び第2の回転体が用水路の上方に位置し且つ上記湾曲した下側の無端ベルト部分に位置する複数の第1の抵抗部材が当該用水路内に完没するように、流体上に配置し、
上記用水路の側壁を固定装置の固定体として適用し、
上記支持体に設けられている第2の連結部を、当該用水路の上記側壁の上部に設けた上記第1の連結部に連結することで、当該支持体を、上記配置位置に固定した、
ことを特徴とする流体発電システムの設置構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の流体発電システムの設置構造において、
上記複数の補助回転体のうち最下流に位置する補助回転体を、他の補助回転体よりも下方に位置させた、
ことを特徴とする流体発電システムの設置構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の流体発電システムの設置構造において、
上記複数の補助回転体のうち略中央に位置する補助回転体を、他の補助回転体よりも下方に位置させた、
ことを特徴とする流体発電システムの設置構造。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の流体発電システムの設置構造において、
上記第1及び第2の連結部の一方がボルトを有すると共に、他方がボルト孔を有し、
上記ボルト孔を上記ボルトに嵌めて、当該ボルトをナット締めすることにより、第1の連結部と第2の連結部とが連結される、
ことを特徴とする流体発電システムの設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水力等の流体エネルギを効率的に電気エネルギに変換して発電効率を高めることができる流体発電システム及びその設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇に加えて地球温暖化等の地球環境問題が深刻化していることから、自然エネルギを利用した発電装置、及び発電方法が注目されている。特に、CO2の排出権問題やRPS(Renewable Portfolio Standard)制度の導入により、今後さらにその重要性が増すことが予想される。
【0003】
例えば、自然エネルギ源である太陽光を利用する太陽光発電装置は、その設置が容易であるとともに発電コストも比較的安いことから、住宅や農業ハウスの屋根発電からメガソーラー発電所のような大規模設備迄その普及が急速に進んでいる。
【0004】
また、従来の固定式の太陽光発電装置に加えて、設置工事等が不要であり、運搬や設置場所の変更を容易に行える携帯型の太陽光発電装置も注目されている。例えば特許文献1には、電源のない野外等の任意の場所に設置して利用することができる携帯型の太陽光発電装置が開示されている。
【0005】
具体的には、電気的に接続した多数のシート状、又はフィルム状の太陽光発電シートを収納ケース内に引き伸ばし自在に収納した状態で持ち運び可能とし、使用者は任意の場所にて収納ケースから太陽光発電シートを引き出すことで、電源のない野外においても太陽光を効率的に利用して発電することで電気機器を利用することが可能となっている。
【0006】
また、風力や水力といった流体を作業体として駆動装置を駆動させることで発電機を発電させる流体駆動装置も数多く提案されている。例えば特許文献2には、河川や農業用水路等の水路に設置して、自然エネルギ源としての水を利用する水力発電装置が開示されている。
【0007】
具体的には、対向配置された2枚の円盤部と、円盤部の中心軸部から放射状に等間隔で取り付けられたパドル部からなる本体部を備え、水中のパドル部が水流圧を受けることにより、パドル部が接続される水軸が得られる回転力を利用して発電装置を駆動する構成となっている。
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の太陽光発電装置においては、発電量が天候や日射量に左右されてしまい、特に晴れた日の昼間の日射量が比較的大きな時間帯でしか安定的な発電ができないという問題がある。
【0009】
一方、上記した特許文献2に開示の水力発電装置が設置される河川や農業用水路等では、季節ごとに所定の流量が維持されるように水量調整がされるため、継続的に一定の流量を確保することが可能である。そのため、太陽光発電装置のように日射量等の外部要因により発電量が不安定となることがなく、1年を通して安定的な発電が可能である。
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示の水力発電装置は、その直径が最大で約1,4m程度と大型であり、例えば水深の浅い河川や、流速の遅い河川に設置した場合に、パドル部が水車を回転させるだけの十分な水圧を受けることができず、目論見通りの発電量が得られないことが凝念される。
【0011】
そこで、近年、特許文献3及び特許文献4に示すように、水力等の流体エネルギを効率的に電気エネルギに変換して、天候や日射量に左右されることなく、高発電効率と大きな発電量を安定的に得ることができる流体発電システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2006-86203号公報
【文献】特開2012-92750号公報
【文献】特許第6731561号公報
【文献】特許第6894556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した特許文献3及び特許文献4で提案されている流体発電システムでは、支持体を水底に固定する構造であるため、水深の浅い水上で使用する場合には、流体発電システムを設置するコストや時間はさほどかからない。
しかしながら、これらの流体発電システムでは、水深の深い洋上で使用する場合に、システムを設置するための莫大なコストや時間がかかるという問題がある。
すなわち、水深が深くなればなるほど、支持体の支柱を長くして、流体駆動装置の第1の回転体や第2の回転体等の装置の位置を高くする必要があり、しかも、水深が深くなればなるほど、支柱が大きな水流圧を受けるようになるので、支持体の水流圧に対する耐久性や第1の回転体や第2の回転体等の装置に対する安定性が必要となる。このような要求を満たすには、支持体の構造やその支柱自体を頑丈且つ丈夫な物に設定しなければならない。そのため、流体駆動装置自体に費やすコストが高くなってしまう。また、水深が深くなればなるほど、システムの設置作業に難易度が増すので、その分コスト増しに繋がる。
さらに、洋上では、満潮や干潮の現象によって、海面の位置が上下する。このため、安定した電力量を得るには、システムの高さを満潮や干潮の都度調整しなければならず、メインテナンス作業が面倒であるという問題がある。
【0014】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、水力等の流体エネルギを効率的に電気エネルギに変換して高発電効率と大きな発電量を得ることができるだけでなく、水深が深い洋上等で使用する場合においても、システムの設置コストの低減とメインテナンス作業の負担軽減とを図ることができる流体発電システム及びその設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、第1の発明は、流体圧に対応した回転力を出力可能な出力軸を有する流体駆動装置と、流体駆動装置の出力軸の回転力を受けて発電動作を行う発電装置と、所定の支持体に組み付けられたこれら流体駆動装置と発電装置とを流体上に固定するための固定装置とを備えた流体発電システムであって、流体駆動装置は、第1の回転体と、第1の回転体と所定間隔を保ち且つその回転中心軸が第1の回転体の回転中心軸と平行な第2の回転体と、第1の回転体と第2の回転体とに巻き付けられた無端ベルトと、各抵抗部材が流体圧を受けるための凹状の受圧面部を有し且つ無端ベルトの表面に所定の間隔で立設された複数の第1の抵抗部材と、その回転中心軸が第1及び第2の回転体の回転中心軸と平行な状態で、第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトとの間に配設され、且つ、支持体により上下動自在に支持された複数の補助回転体とを備え、発電装置は、流体駆動装置の出力軸の回転力を回転軸で受けて発電動作を行う発電機を備え、固定装置は、流体の底等の地盤上に固設するための固定体と、固定体の上部に設けられた第1の連結部と、支持体に設けられ且つ第1の連結部と連結可能な第2の連結部とを備え、複数の補助回転体の中の1つ以上の補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置決めされることにより、無端ベルトのうち第1の回転体及び第2の回転体よりも下側の無端ベルト部分が、流体の深さ方向に略くの字状に湾曲されて、下側の無端ベルト部分の長さが、上側の無端ベルト部分の長さよりも長く設定されている構成とした。
かかる構成により、固定装置の固定体を流体の底等の地盤上に固設すると共に、固定体の上部に設けられた第1の連結部と支持体に設けられた第2の連結部とを、連結することにより、支持体によって支持された流体駆動装置と発電装置とを、所定深さの洋上に固定することができる。
このとき、無端ベルトのうち第1の回転体及び第2の回転体よりも下側の無端ベルト部分が、流体の深さ方向に略くの字状に湾曲するように設定されているので、第1の回転体及び第2の回転体を流体面の上方に位置させると共に、湾曲した下側の無端ベルト部分にある複数の第1の抵抗部材が流体内に完没するように、流体駆動装置を設置することができる。
これにより、流体内に完没した複数の第1の抵抗部材が、流体中で流体圧を受けると、無端ベルトが巻き付けられた第1の回転体と第2の回転体とが、流体圧方向に回転し、その回転力が流体駆動装置の出力軸に出力される。すると、この回転力は、発電機の回転軸に伝達され、発電機による発電動作が行われる。
つまり、この発明の流体発電システムによれば、支持体に設けられた第2の連結部を、固定体に設けられた第1の連結部に連結するだけで、流体発電システムを、水深が深い洋上に設置することができるので、システムの設置コストの低減を図ることができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明に係る流体発電システムにおいて、複数の補助回転体のうち最下流に位置する補助回転体を、他の補助回転体よりも下方に位置させた構成とする。
かかる構成により、複数の第1の抵抗部材が、流体圧を効率的に確保することができ、この結果、極めて大きな電力を起こすことができる。
すなわち、上記下方に位置する補助回転体よりも上流側に位置する複数の第1の抵抗部材が、流体圧を強く受ける。そして、上記下方に位置する補助回転体よりも下流側に位置する複数の第1の抵抗部材が受ける流体圧は、弱い。
しかし、この発明では、複数の補助回転体のうち最下流に位置する補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置している。このため、ほぼ全ての第1の抵抗部材が強い流体圧を効率的に受けることができ、その結果、極めて大きな電力を起こすことができる。
【0017】
第3の発明は、第1の発明に係る流体発電システムにおいて、複数の補助回転体のうち略中央に位置する補助回転体を、他の補助回転体よりも下方に位置させた構成とする。
かかる構成により、上記下方に位置させた補助回転体よりも上流に位置する複数の第1の抵抗部材が、流体圧を受けて、第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトが回転することになる。したがって、例えば、流体が左から右に流れている場合、下方に位置している補助回転体よりも左側に位置する複数の第1の抵抗部材がその流体圧を受け、右側に位置する複数の第1の抵抗部材は流体圧をほとんど受けない。しかし、流体が、右から左に流れるように変化した場合、下方に位置している補助回転体よりも右側に位置する複数の第1の抵抗部材が、その流体圧を受け、左側に位置する複数の第1の抵抗部材は、流体圧をほとんど受けない。このとき、複数の補助回転体のうち略中央に位置する補助回転体が、他の補助回転体よりも下方に位置されているので、補助回転体よりも左側に位置する第1の抵抗部材の数と補助回転体よりも右側に位置する第1の抵抗部材とは、ほぼ同数である。したがって、例えば、第7の発明ないし第9の発明のいずれかの第1の抵抗部材を適用することで、左方向からの流体圧によって得られる回転エネルギと右方向からの流体圧によって得られる回転エネルギとが、ほとんど同じになり、流体の方向が変化しても、常にほぼ同じ大きさの回転エネルギを得ることができる。
流体発電システムを、流体の流れ方向が変化しやすい場所に設置する場合には、第10の発明に用いられる回転方向変換器と、第7ないし第9の発明のいずれかに用いられる第1の抵抗部材を適用することが好ましい。
【0018】
第4の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、第1及び第2の連結部の一方がボルトを有すると共に、他方がボルト孔を有し、ボルト孔をボルトに嵌めて、ボルトをナット締めすることにより、第1の連結部と第2の連結部とが連結される構成とした。
かかる構成により、ボルト孔をボルトに嵌めると共に、ボルトをナット締めして、第1の連結部と第2の連結部とを連結することにより、流体駆動装置と発電装置とが組み付けられた支持体を、所望の位置に簡単且つ容易に設置することができる。
【0019】
第5の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、所定の断面形状を有した線状溝を、第1の回転体,第2の回転体及び複数の補助回転体の周面に設けると共に、線状溝の断面形状と同形状の断面形状を有して線状溝と嵌合可能な線状突起を、無端ベルトの内面に設けた構成とする。
かかる構成により、第1の抵抗部材が流体圧を受けると、線状溝が線状突起に嵌合した状態で、第1の回転体,第2の回転体及び複数の補助回転体と無端ベルトとが一体に回転する。つまり、無端ベルトを第1の回転体,第2の回転体及び複数の補助回転体に巻き付けただけの構成であると、流体の流れ方向によって、無端ベルトが横ずれを起こして、第1の回転体等から外れてしまうおそれがある。しかし、この発明では、無端ベルトが、第1の回転体,第2の回転体及び複数の補助回転体に巻き付けられているだけでなく、その線状突起が第1の回転体等の線状溝に嵌合しているので、無端ベルトは、どのような方向の流体圧を受けても、第1の回転体等から外れることはない。
【0020】
第6の発明は、第5の発明に係る流体発電システムにおいて、第1の回転体及び第2の回転体の周面に設けられた線状溝を、同形の列状の穴に設定すると共に、無端ベルトの内面に設けられた線状突起を、列状の穴の断面形状と同形状の断面形状を有して列状の穴と嵌合可能な列状の突起物に設定した構成とする。
【0021】
第7の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、第1の抵抗部材を、可撓性素材で形成された受圧面部と、受圧面部を無端ベルトの表面に起立させて支持する支持部材とで形成した構成とする。
かかる構成により、第1の抵抗部材は、流れに対向する受圧面部で流体圧を受けて、第1の回転体及び第2の回転体を回転させる。そして、流体の流れ方向が変わった場合には、可撓性素材で形成された受圧面部が、流れ方向に撓む。この結果、受圧面部が、流体圧を受けるので、第1の回転体及び第2の回転体が回転する。
つまり、この発明によれば、流体の流れの向きの変化に応じて、第1の抵抗部材の受圧面部の向きが変わるので、流体の流れの向きが変わった場合に、流体発電システムを流れの向きに対応させて動かすことなく、流体発電システムの動作を継続させることができる。
【0022】
第8の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、複数の第1の抵抗部材を、受圧面部が交互に逆向きになるように、無端ベルトの表面に所定の間隔で立設した構成とする。
かかる構成により、流体の流れが変わっても、流れの方向に対向する受圧面部を有する第1の抵抗部材が、流体圧を捉えるので、流体発電システムを流れの向きに対応させて動かすことなく、流体発電システムの動作を継続させることができる。
【0023】
第9の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、第1の抵抗部材を、互いに背中合わせに接合された1対の受圧面部と、これら1対の受圧面部を無端ベルトの表面に起立させて支持する支持部材とで形成した構成とする。
かかる構成により、流体の流れが変わっても、互いに背中合わせに接合された1対の受圧面部のうち、流れの方向に対向する受圧面部が流体を捉えるので、流体発電システムを流れの向きに対応させて動かすことなく、流体発電システムの動作を継続させることができる。
【0024】
第10の発明は、第1の発明ないし第3の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムにおいて、流体駆動装置の出力軸と発電機の回転軸との間に、流体駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を同一方向又は逆方向に変換可能な回転方向変換器を設けた構成とする。
かかる構成により、流体の流れ方向に変化がない場合には、流体駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を、回転方向変換器によって、例えば同一方向に設定することができる。そして、流体の流れ方向が逆転した場合には、流体駆動装置の出力軸の回転方向に対する発電機の回転軸の回転方向を、回転方向変換器によって、逆方向に設定することができる。つまり、この発明によれば、流体発電システムの向きを流体の流れ方向に合わせて動かすことなく、流体発電システムの動作を継続させることができる。
【0025】
第11の発明は、第1の発明ないし第10の発明のいずれかの発明に係る流体発電システムを流体上に設置するための流体発電システムの設置構造であって、第1の回転体及び第2の回転体が流体面の上方に位置し且つ湾曲した下側の無端ベルト部分に位置する複数の第1の抵抗部材が流体内に完没するように、固定体を、流体の底等の地盤上に固設すると共に、支持体に設けられた第2の連結部を、固定体の上部の第1の連結部に連結した構成とする。
かかる構成により、流体内に完没した複数の第1の抵抗部材が、流体中で流体圧を受けると、無端ベルトが巻き付けられた第1の回転体と第2の回転体とが、流体圧方向に回転し、その回転力が流体駆動装置の出力軸に出力される。すると、この回転力が、発電装置における発電機の回転軸に伝達されて、発電機による発電動作が行われる。
また、第1の回転体及び第2の回転体が流体面の上方に位置しているので、流体面上にある第1の回転体と第2の回転体と無端ベルトの部分とが、流体による抵抗を受けない。この結果、第1の回転体と第2の回転体とが、効率的に回転する。
また、流体中に沈められる下側の無端ベルト部分が、上側の無端ベルト部分よりも長く設定されているので、より多くの第1の抵抗部材を用いて、発電することができる。
なお、流体発電システムを洋上等、干潮及び満潮の現象がある場所に設置した場合には、満潮時に、第1及び第2の回転体と無端ベルトとが、海中に完没してしまうおそれがある。かかるおそれがある場所に設置する場合には、支持体の高さを通常よりも高く設定しておくことで、満潮時においても、第1及び第2の回転体と無端ベルトとが、海中に完没しないようすることができる。
また、このような場所に設置すると、干満の影響による海面の上下変動が起こるので、流体駆動装置や発電装置は海面変動の作用を受ける。しかし、流体駆動装置や発電装置を支持する支持体が、固定装置によって固定されているので、流体駆動装置や発電装置は、海面の上下変動に影響されない。つまり、流体駆動装置や発電装置は、海面の上下動や波浪等によって横揺れ等を起こすことはなく、配置位置に位置し続けることになる。
【0026】
第12の発明は、第11の発明に係る発電システムの設置構造において、第1の連結部と第2の連結部との連結部位が、流体面の上方である構成とした。
かかる構成により、第2の連結部と第1の連結部との連結作業を、流体中でなく、流体面より上で行うことができる。このように、第2の連結部と第1の連結部との連結作業を流体面よりも上で行うようにすることで、連結作業を流体中よりも容易に行うことができ、システムの設置コストのさらなる低減を図ることができる。
【0027】
第13の発明は、第11の発明に係る発電システムの設置構造において、第1の連結部と第2の連結部との連結部位が、流体面の下方である構成とした。
【0028】
第14の発明は、第11の発明に係る発電システムの設置構造において、第1の回転体及び第2の回転体が用水路の水面の上方に位置し且つ湾曲した下側の無端ベルト部分に位置する複数の第1の抵抗部材が用水路内に完没するように、支持体に設けられた第2の連結部を、用水路の側壁(固定体)の上部に設けられた第1の連結部に連結した構成とする。
【発明の効果】
【0029】
以上詳しく説明したように、第1ないし第14の発明によれば、水力等の流体エネルギを効率的に電気エネルギに変換して高発電効率と大きな発電量を得ることができるだけでなく、水深が深い洋上で使用する場合においても、システムの設置コストの低減とメインテナンス作業の負担軽減とを図ることができるという、優れた効果がある。
具体的には、流体発電システムを、洋上等の水深が深い流体上に設置する場合には、固定装置の固定体を、予め設置位置の海底に固設しておき、流体駆動装置と発電装置が組み付けられた支持体を、設置位置迄運ぶ。そして、支持体下部の第2の連結部を固定体上部の第1の連結部に合わせて、これら第1及び第2の連結部を連結することで、流体駆動装置と発電装置とが組み付けられた支持体を洋上に簡単且つ固定的に設置することができる。この結果、流体発電システムを設置するためのコストや時間を低減することができる。
また、満潮や干潮の現象が起きる洋上に設置する場合には、流体駆動装置や発電装置を組み付ける支持体の高さを満潮時の流体面の高さに合わせて設定しておく。これにより、流体駆動装置や発電装置の高さを満潮や干潮の都度調整することなく、安定した電力量を得ることができるので、システムの維持管理が非常に容易である。
【0030】
また、第2の発明によれば、流体圧を効率的に確保することができ、その結果、極めて大きな電力を起こすことができる。
【0031】
また、第5及び第6の発明によれば、無端ベルトが第1の回転体等から外れるという事態を予め防止することができる。
【0032】
また、第7ないし第10の発明によれば、流体の流れの向きが変わった場合においても、流体発電システムを流れの向きに対応させて動かすことなく、流体発電システムの動作を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】この発明の第1実施例に係る流体発電システムを示す分解斜視図である。
図2】流体発電システムの平面図である。
図3】流体発電システムの概略図である。
図4】第1の抵抗部材を示す斜視図である。
図5図4の矢視B-B断面図である。
図6】各補助回転体の取付状態を説明するための分解斜視図である。
図7】各補助回転体の取付状態を示す斜視図である。
図8】固定装置5の第1の連結部と第2の連結部とを連結した状態を示す斜視図である。
図9】流体発電システムを洋上に設置する方法を説明するための概略図である。
図10】流体発電システムを洋上に設置した状態を示す概略図である。
図11】干満に対応した深さ設定を説明するための概略図である。
図12】固定装置の第1変形例を示す斜視図であり、図12の(a)は、第1の連結部と第2の連結部との連結前の状態を示し、図12の(b)は、連結後の状態を示す。
図13】固定装置の第2変形例を示す斜視図であり、図13の(a)は、第1の連結部と第2の連結部との連結前の状態を示し、図13の(b)は、連結後の状態を示す。
図14】固定装置の第3及び第4変形例を示す斜視図であり、図14の(a)は、第3変形例を示し、図14の(b)は、第4変形例を示す。
図15】この発明の第2実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す概略図である。
図16】第2実施例の作用及び効果を説明するための概略図である。
図17】この発明の第3実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す概略図である。
図18】第3実施例の流体発電システムの設置構造に適用される第1の抵抗部材の概略断面図である。
図19】第3実施例の設置構造に適用される回転方向変換器を示す平面図である。
図20】流体発電システムの設置構造が示す動作を説明するための概略図であり、図20の(a)は、流水方向が図の右方向の場合の動作を示し、図20の(b)は、流水方向が図の左方向の場合の動作を示す。
図21】この発明の第4実施例に係る流体発電システムの要部を示す斜視図であり、図21の(a)は、第1の回転体及び第2の回転体を示し、図21の(b)は、補助回転体を示し、図21(c)は、無端ベルトを示す。
図22】線状溝と線状突起とを示す断面図である。
図23】線状溝と線状突起の変形例を示す断面図であり、図23の(a)は、U字状の断面を示し、図23の(b)は、V字状の断面を示す。
図24】この発明の第5実施例に係る流体発電システムの要部を示す斜視図であり、図24の(a)は、第1の回転体及び第2の回転体を示し、図24の(b)は、補助回転体を示し、図24(c)は、無端ベルトを示す。
図25】この発明の第6実施例に係る流体発電システムの設置構造の要部を示す概略図である。
図26】この発明の第7実施例に係る設置構造に適用される第1の抵抗部材を示す斜視図である。
図27】第7実施例に係る流体発電システムを示す概略図である。
図28】この発明の第8実施例に係る設置構造を示す概略図である。
図29】流体発電システムと浮体具とを示す斜視図である。
図30】浮体具を利用した流体発電システムの設置作業を示す概略図である。
図31】流体発電システムを設置した状態を示す概略図である。
図32】この発明の第9実施例に係る流体発電システムを示す分解斜視図である。
図33】第9実施例の流体発電システムを設置した状態を示す斜視図である。
図34】第10実施例に適用される流体発電システムの概略図である。
図35】流体発電システムの発電量の減少状態を示す概略図である。
図36】流体発電システムの発電量の増加状態を示す概略図である。
図37】流体発電システムの発電停止状態を示す概略図である。
図38】弛み防止機構を示す流体発電システムの概略図である。
図39】無端ベルトを示す斜視図である。
図40】弛み防止機構の動作状態を示す概略図である。
図41】支持体の補強状態を示す概略図である。
図42】支持体の形状の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0035】
(実施例1)
図1は、この発明の第1実施例に係る流体発電システムを示す分解斜視図であり、図2は、流体発電システムの平面図であり、図3は、流体発電システムの概略図である。
図1に示すように、この実施例の流体発電システム1は、流体駆動装置1Aと発電装置1Bと固定装置5を備えている。
【0036】
流体駆動装置1Aは、流体圧に対応した回転力を出力するための装置であり、第2の回転体2Bのシャフト部21の延出部21b(図2参照)を出力軸としている。
この流体駆動装置1Aは、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bと無端ベルト3Aと複数の第1の抵抗部材30と複数の補助回転体2C~2Hとを有しており、これらの部材は支持体10に組み付けられている。
【0037】
具体的には、図2にも示すように、支持体10において、同高さの支柱11A,12Aが無端ベルト3Aの長さ方向に設けられている。そして、支柱11B,12Bが、支柱11A,12Aと対向するように無端ベルト3Aの幅方向に設けられている。さらに、複数の支柱13A~18Aが、これら支柱11A,12Aの間に設けられ、同数の支柱13B~18Bが、支柱13A~18Aに対向するように無端ベルト3Aの幅方向に設けられている。
そして、支柱11A,12Aと支柱13A~18Aが、水平な補強材10Aによって連結され、支柱11B,12Bと支柱13B~18Bが、水平な補強材10B(図示省略)によって連結されている。
【0038】
第1の回転体2Aは、回転中心軸としてのシャフト部20を有し、このシャフト部20の両端部が、支柱11A,11Bの上端部に回転自在に取り付けられている。
第2の回転体2Bは、第1の回転体2Aと同形であり、第1の回転体2Aと同様に回転中心軸としてのシャフト部21を有している。そして、このシャフト部21の両端部が、支柱12A,12Bの上端部に回転自在に取り付けられている。
つまり、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bとは、シャフト部20,21を平行にした状態で一定の間隔を保っており、無端ベルト3Aは、このような第1の回転体2Aと第2の回転体2Bとに巻き付けられている。
無端ベルト3Aは、幅広の帯状体であり、多層構造のゴム部材、合成樹脂、金属製チェーンベルト等で形成することができる。
【0039】
複数の第1の抵抗部材30は、この無端ベルト3Aの表面上に立設されている。
図4は、第1の抵抗部材を示す斜視図であり、図5は、図4の矢視B-B断面図である。
これらの図に示すように、各第1の抵抗部材30は、受圧面部31と、この受圧面部31を保持する支持部材32とによって構成されている。
受圧面部31は、流体圧を受けるための部分であり、断面弧状に凹んでいる。受圧面部31の長さは、無端ベルト3Aに余幅を残すように、無端ベルト3Aの幅よりも短く設定されている。受圧面部31の材質は任意であるが、この実施例では、凹状に湾曲された金属板を適用した。
支持部材32は、枠部32aと、この枠部32aの両端に形成された固定部32b,32bとを有している。枠部32aは、無端ベルト3Aの幅方向に沿って配置され、固定部32b,32bは、無端ベルト3Aにビス等により固定されている。
そして、受圧面部31が、枠部32a内に嵌められ、その上端31aと下端31bとが、枠部32aに固着されている。
つまり、凹状の受圧面部31を無端ベルト3Aの長さ方向に向けた状態で、複数の第1の抵抗部材30が、一定間隔で無端ベルト3Aの表面に立設されている。
【0040】
図1において、複数の補助回転体2C~2Hは、後述する中心軸としてのシャフト部27c~27hを平行にした状態で、第1及び第2の回転体2A,2Bと無端ベルト3Aの間に配設されている。そして、これらの補助回転体2C~2Hは、支持体10の支柱13A,13B~18A,18Bによって上下動自在に支持されている。
図6は、各補助回転体2C(2D~2H)の取付状態を説明するための分解斜視図であり、図7は、各補助回転体2C(2D~2H)の取付状態を示す斜視図である。
具体的には、図6に示すように、支柱の上端~下端に向かう長孔24が、支持体10の支柱13A(14A~18A),13B(14B~18B)のそれぞれに形成されている。そして、各補助回転体2C(2D~2H)のシャフト部27c(27d~27h)の両端部が、長孔24にそれぞれ回転自在に嵌め込まれている。
そして、補強材10Aと各支柱13A(14A~18A)との連結が、スペーサ10Cを介して行われ、補強材10Bと各支柱13B(14B~18B)との連結が、スペーサ10Dを介して行われている。各スペーサ10C(10D)の突出長さは、摘み23の厚さよりも大きく設定されいる。つまり、図7に示すように、摘み23が通ることができる間隙Gが、補強材10Aと各支柱13A(14A~18A)との間や補強材10Bと各支柱13B(14B~18B)との間に形成されている。これにより、各補助回転体2C(2D~2H)が、補強材10A,10Bに邪魔されることなく、支柱13A,13B(14A,14B~18A,18B)に沿って自由に上下動することができるようになっている。
そして、摘み23,23を、長孔24から外方に突出したシャフト部27c(27d~27h)の両端部に締め付けることで、各補助回転体2C(2D~2H)を所定高さに固定することとができる。
【0041】
この実施例では、補助回転体2C~2Hの高さが、次のように設定されている。
すなわち、図3に示すように、補助回転体2C,2E,2Gが、それぞれ、支柱13A(13B),15A(15B),17A(17B)の最上位に固定され、無端ベルト3Aの上側部分の内面に圧接されている。そして、補助回転体2D,2F,2Hが、それぞれ、支柱14A(14B),16A(16B),18A(18B)の下側位置に固定され、無端ベルト3Aの下側部分の内面に圧接されている。
さらに、図に示すように、補助回転体2Fが、最下位置に固定されて、無端ベルト3Aの下側部分が、下方に略くの字状に湾曲されている。つまり、無端ベルト3Aの下側部分の長さが、上側部分の長さよりも長く設定されており、これによりより多くの第1の抵抗部材30が、無端ベルト3Aの下側部分に配置されるようになっている。
【0042】
一方、発電装置1Bは、図1及び図2に示すように、発電機6を有し、発電機6の回転軸60が、連結部材61によって、流体駆動装置1Aの出力軸21bに直結されている。これにより、発電機6の回転軸60が、流体駆動装置1Aの出力軸21bの回転力を受けて、発電機6が発電動作を行うようになっている。
この実施例では、流体駆動装置1Aの出力軸21bと発電機6の回転軸60とを、連結部材61によって直結した例を示しているが、ギア機構やベルト機構等を、出力軸21bと回転軸60との間に設けて、出力軸21bの回転を変化させて回転軸60に伝えるようにすることもできる。
【0043】
図1等に示す固定装置5は、支持体10に組み付けられた流体駆動装置1Aと発電装置1Bとを洋上等に固定するための装置である。
固定装置5は、固定体5Aと第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとで構成されている。そして、第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとが連結可能な構造になっている。
具体的には、固定体5Aは、海底等の地盤上に杭打ち等によって打ち込むことができる柱状体であり、高強度の部材で形成されている。この固定体5Aを海底等に打ち込んで立設する数は、任意であるが、4本以上が好ましい。そこで、この実施例では、固定体5Aの本数を4本に設定した。
第1の連結部5Bは、各固定体5Aの上部に設けられたフランジ状部材であり、複数本のボルト51が、その上面に上向きに突設されている。この実施例では、ボルト51の本数を6本に設定したが、その本数は任意である。要は、第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとの連結強度が所望値以上になるように、ボルト51の本数を決めればよい。
第2の連結部5Cも、フランジ状部材であり、支持体10の支柱11A,11B,12A,12Bのそれぞれの下部に取り付けられている。第1の連結部5Bのボルト51に対応した数のボルト孔52が、この第2の連結部5Cの面の対応した位置に穿設されている。
【0044】
図8は、固定装置5の第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとを連結した状態を示す斜視図である。
固定装置5が、以上の構成をとることにより、図8に示すように、固定装置5の4本の固定体5Aを、杭打ち等によって海底等の地盤上に固設することができる。そして、支柱11A(11B,12A,12B)下部の第2の連結部5Cに穿設されているボルト孔52を、第1の連結部5Bのボルト51に嵌めて、第1及び第2の連結部5B,5Cを当接することができる。この状態で、ボルト51をナット53で締めることにより、第1及び第2の連結部5B,5Cを連結することができる。
このように、固定装置5の第1及び第2の連結部5B,5Cを連結することにより、支持体10によって支持された流体駆動装置1Aと発電装置1Bとを、所定深さの海底の所定の位置に固定することができる。
【0045】
次に、この実施例の流体発電システム1を洋上に設置する方法について記載する。なお、この記載は、この発明の流体発電システムの設置構造を具体的に説明するものでもある。
図9は、流体発電システムを洋上に設置する方法を説明するための概略図であり、図10は、流体発電システムを洋上に設置した状態を示す概略図である。
【0046】
この実施例では、図10に示すように、固定装置5の第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとの連結部位Cが海面Sの上方に位置するように、流体発電システムを設置する。
具体的には、図9に示すように、固定装置5の固定体5Aの長さを、海底Bから海面S迄の深さよりも長く設定して、4本の固定体5Aを、所望の設置箇所に固設し、固定体5A上部の第1の連結部5Bを、海面Sの上方に位置させておく。
一方、流体駆動装置1Aと発電装置1Bが組み付けられた支持体10においては、支柱11A,12A(11B,12B)の長さを支柱13A,13B(14A,14B~18A,18B)の長さよりも短めに設定して、4つの第2の連結部5Cを、最下位の補助回転体2Fよりも上方に位置させておく。
無端ベルト3Aの下側部分の海中深度が、支柱11A,12A(11B,12B)の長さによって決まるので、支柱11A,12A(11B,12B)の長さは、流体発電システムの設置条件に応じて決定される。
【0047】
かかる支持体10を、運搬船によって、上記固定体5Aが設置されている洋上まで曳航する。そして、設置場所において、支持体10をクレーン等で持ち上げ、4つの第2の連結部5Cの位置を、海面Sから出ている4つの第1の連結部5Bの位置に合わせる。しかる後、支持体10を降ろしながら、各第2の連結部5Cのボルト孔52を各第1の連結部5Bのボルト51に嵌める。そして、ナット53でボルト締めすることにより、第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとを連結させる。
【0048】
かかる連結作業を行うことによって、図10に示すように、流体駆動装置1Aと発電装置1Bとが組み付けられた支持体10が、固定装置5によって洋上に安定的に固定された状態になる。
かかる状態では、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bが、海面Sの上方に位置すると共に、くの字状に湾曲した無端ベルト3Aの下側部分が、海中に没する。
この結果、海中に没している複数の第1の抵抗部材30が、海水による流体圧を受けるので、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bとが、海水の流れ方向に回転する。このとき、上記したように、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bは、海面Sの上方に配置されているので、海面S上にある第1の回転体2Aと第2の回転体2Bと無端ベルト3Aの部分とが、海水による抵抗を受けることなく回転する。
この回転は、出力軸21b(図2参照)を通じて発電機6の回転軸60に伝達され、発電機6による発電動作が行われる。
【0049】
以上のように、この実施例によれば、深い洋上において作業する際においても、固定体5A上部の第1の連結部5Bと支持体10の第2の連結部5Cとを連結するだけで、流体駆動装置1Aと発電装置1Bとが組み付けられた支持体10を洋上の所望位置に簡単に設置することができる。
特に、この実施例では、第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとの連結作業を、海中でなく、海面よりも上の位置で行うことができるので、流体発電システムの設置作業をより簡単且つ容易に行うことができ、この結果、設置作業のコストや時間を大きく低減することができる。
【0050】
また、従来の技術と比較して考察すると、従来の方法では、支持体10の支柱11A,11B~18A,18Bの長さを、ほぼ水深の長さに設定する必要があったが、この実施例によれば、その長さを固定装置5の固定体5Aの長さ分だけ短くすることができる。この結果、流体駆動装置1Aと発電装置1Bとが組み付けられた支持体10の小型化,軽量化を図ることができ、その分、流体発電システムを設置するためのコストや時間を大きく低減することができる。さらに、設置後の支持体10の支柱11A,11B~18A,18Bが受ける水流面が小さくなるので、その分、設置構造の安定性にも繋がる。
【0051】
ところで、流体発電システムを洋上に設置すると、流体駆動装置1Aや発電装置1Bが海面変動や波浪等による影響を受けて横揺れ等を起こすおそれがある。しかし、この実施例の流体発電システム1では、洋上の支持体10と固定体5Aとが、第1及び第2の連結部5B,5Cによって連結され、流体駆動装置1Aと発電装置1Bが組み付けられた支持体10が、固定装置5によって強固に固定されているので、これらの装置が横揺れ等を起こすおそれはほとんどない。
【0052】
図11は、干満に対応した深さ設定を説明するための概略図である。
流体発電システムを干満の差が大きな洋上に設置する場合には、図11に示すように、干潮時の海面S1が無端ベルト3Aの下側部分の位置に来るように、そして、満潮時の海面S2が第1の回転体2A及び第2の回転体2Bよりも下方に位置するように、支持体10の支柱11A,11B~18A,18Bの高さを通常よりも高く設定しておく。
かかる設定により、干満時における不具合を防止することができる。
【0053】
(変形例1)
ここで、固定装置の第1変形例について説明する。
図12は、固定装置の第1変形例を示す斜視図であり、図12の(a)は、第1の連結部と第2の連結部との連結前の状態を示し、図12の(b)は、連結後の状態を示す。
図12の(a)に示すように、この変形例では、固定装置5において、複数のボルト孔52が、固定体5Aの上部に設けられた第1の連結部5Bに穿設されている。そして、第1の連結部5Bのボルト孔52に対応した数のボルト51が、支柱11A(11B,12A,12B)に取り付けられた第2の連結部5Cに対応した位置に下向きに突設されている。
【0054】
固定装置5が、かかる構成をとることにより、図12の(b)に示すように、第2の連結部5Cに突設されているボルト51を第1の連結部5Bのボルト孔52に挿通して、第1及び第2の連結部5B,5C同士を当接することができる。この状態で、ボルト51をナット53で締めることにより、第1及び第2の連結部5B,5Cを連結することができる。
【0055】
(変形例2)
次に、固定装置の第2変形例について説明する。
図13は、固定装置の第2変形例を示す斜視図であり、図13の(a)は、第1の連結部と第2の連結部との連結前の状態を示し、図13の(b)は、連結後の状態を示す。
図13の(a)に示すように、この変形例では、固定装置5が、固定体5Aと、固定体5Aの上部に設けられた第1の連結部5Bと、支柱11A(11B,12A,12B)に取り付けられた第2の連結部5Cと、別体のボルト51’とナット53とを備えている。
具体的には、複数のボルト孔52が、第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとにそれぞれ穿設されている。これら第1の連結部5Bのボルト孔52と第2の連結部5Cのボルト孔52は、それぞれ対応する位置に穿設されており、それぞれのボルト孔52同士を一致させるように、第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとを当接することができる。
【0056】
固定装置5が、かかる構成をとることにより、図13の(b)に示すように、第1及び第2の連結部5B,5Cを上記のように当接させた状態で、別体のボルト51’をボルト孔52に挿通して、このボルト51’をナット53で締めることにより、第1及び第2の連結部5B,5Cを連結することができる。
【0057】
(変形例3)
さらに、固定装置の第3及び第4変形例について説明する。
図14は、固定装置の第3及び第4変形例を示す斜視図であり、図14の(a)は、第3変形例を示し、図14の(b)は、第4変形例を示す。
第3変形例は、図14の(a)に示すように、固定装置5において、固定体5Aの上面に突設された複数のボルト51を、第1の連結部5Bとしている。そして、第1の連結部5Bのボルト51に対応した数のボルト孔52が、支柱11A(11B,12A,12B)に取り付けられた第2の連結部5Cに穿設されている。
第4変形例は、図14の(b)に示すように、固定装置5において、支柱11A(11B,12A,12B)の下面に突設されたに複数のボルト51を、第2の連結部5Cとしている。そして、固定体5Aの上部に取り付けられた第1の連結部5Bには、第2の連結部5Cであるボルト51に対応した数のボルト孔52が、穿設されている。
【0058】
(実施例2)
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図15は、この発明の第2実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す概略図である。
図15に示すように、この実施例の設置構造では、流体発電システムにおいて、最も下側に位置させる補助回転体を特定した点が、上記第1実施例と異なる。
具体的には、補助回転体2C,2E,2Gを、無端ベルト3Aの上側部分に接触させると共に、補助回転体2D,2Fを、無端ベルト3Aの下側部分に接触させた。そして、最下流に位置する補助回転体2Hを、他の補助回転体2C~2Gよりも下側位置に固定して、流体発電システム全体を洋上に設置した。
【0059】
ここで、この実施例に係る流体発電システムの設置構造が示す作用及び効果について説明する。
図16は、この実施例の作用及び効果を説明するための概略図である。
なお、理解を容易にするため、図16において、支持体10の支柱11A,~18A(11B~18B)と補強材10A(10B)の記載、そして、固定装置5の固定体5Aと第1の連結部5Bと第2の連結部5Cの記載は省略した。
図16に示すように、任意の補助回転体2Fを最下位に位置させた状態で、流体発電システムを設置した場合には、補助回転体2Fよりも上流側に位置する第1の抵抗部材30群(図中、領域L1内にある複数の第1の抵抗部材30)が受ける流体圧は、非常に強い。これに対して、補助回転体2Fよりも下流側に位置する第1の抵抗部材30群(図中、領域L2内にある複数の第1の抵抗部材30)が受ける流体圧は、弱い。
したがって、この設置構造では、全ての第1の抵抗部材30が強い流体圧を効率的に受けているとは、言えない。
【0060】
しかし、図15に示すように、この実施例の設置構造では、最下流に位置する補助回転体2Hを、他の補助回転体2C~2Gよりも下側位置に固定して設置した構造であるので、ほぼ全ての第1の抵抗部材30が強い流体圧を受けることになる。
つまり、この実施例の設置構造によれば、可能な限り多くの第1の抵抗部材30によって水流の力を得ることができ、この結果、水流による流体圧を効率的に確保することができ、極めて大きな電力を起こすことができる。
その他の構成,作用及び効果は上記第1実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0061】
(実施例3)
次に、この発明の第3実施例について説明する。
図17は、この発明の第3実施例に係る流体発電システムの設置構造を示す概略図である。
なお、図17において、固定装置5の第1の連結部5Bと第2の連結部5Cの記載は省略した。
図17に示すように、この実施例の設置構造では、複数の補助回転体2C~2Iのうち略中央に位置する補助回転体2Fを、他の補助回転体2C~2E,2G~2Iよりも下方に位置させた点が、上記第1及び第2実施例と異なる。
【0062】
具体的には、奇数対の支柱13A(13B)~19A(19B)を、支持体10に設け、奇数個の補助回転体2C~2Iを、支柱奇数対の支柱13A(13B)~19A(19B)に上下動自在に取り付けた。
そして、中央の補助回転体2Fを、最下位に位置させて、支柱16A(16B)に固定した。
また、補助回転体2C,2E,2G,2Iは、無端ベルト3Aの上側部分に接触させた状態で、支柱13A(13B),15A(15B),17A(17B)19A(19B)に固定し、補助回転体2D,2Hは、無端ベルト3Aの下側部分に接触させた状態で、支柱14A(14B),18A(18B)に固定した。
なお、この実施例では、理解を容易にするため、奇数個の補助回転体2C~2Iを、複数の補助回転体として適用した例を示すが、補助回転体の数は、奇数に限定されない。偶数の補助回転体を適用して、そのほぼ中央の補助回転体を最下位に位置決めした構造のものも、この実施例の設置構造として適用することができる。
【0063】
図18は、この実施例の流体発電システムの設置構造に適用される第1の抵抗部材の概略断面図である。
図18に示すように、この実施例に適用される第1の抵抗部材30は、可撓性素材で形成された受圧面部31Aと、受圧面部31Aを支持する支持部材32とで構成されている。
受圧面部31Aは、可撓性素材で形成されていればよく、布製、合成繊維製、合成樹脂性等、その種類は任意である。この実施例では、受圧面部31Aとして、布製のものを適用した。
流体圧が、1点鎖線で示す矢印方向から実線で示す受圧面部31Aに加わると、受圧面部31Aは、流体圧により1点鎖線で示すように撓んで、ヨットの帆のように、流体圧を受ける。また、流体圧の方向が、2点鎖線で示す方向に変化すると、1点鎖線状態の受圧面部31Aが、2点鎖線で示すように、流体圧方向に撓み、ヨットの帆のように、流体圧を受ける。
【0064】
図19は、この実施例の設置構造に適用される回転方向変換器を示す平面図である。
図19に示すように、この実施例の設置構造では、回転方向変換器6Aが、流体駆動装置1Aと発電装置1Bとの間に設けられている。
具体的には、回転方向変換器6Aは、流体駆動装置1Aの出力軸21bと発電機6の回転軸60との間に設けられている。この回転方向変換器6Aは、流体駆動装置1Aの出力軸21bの回転方向と発電機6の回転軸60の回転方向とを同一方向又は逆方向に手動で変換することができる。このような回転方向変換器6Aとして、全ての周知の変換器を適用することができるので、ここでは、記載を省略する。
【0065】
次に、この実施例の設置構造が示す作用及び効果について説明する。
図20は、流体発電システムの設置構造が示す動作を説明するための概略図であり、図20の(a)は、流水方向が図の右方向の場合の動作を示し、図20の(b)は、流水方向が図の左方向の場合の動作を示す。
なお、図20において、支持体10の補強材10A(10B)の記載、そして、固定装置5の第1の連結部5Bと第2の連結部5Cの記載は省略した。
【0066】
図20の(a)に示すように、流水方向が図の右方向である場合には、補助回転体2Fよりも左側(上流)に位置する第1の抵抗部材30群(図中、領域L1内にある複数の第1の抵抗部材30)が、流体圧を受けて、第1及び第2の回転体2A,2Bと無端ベルト3Aが、反時計回りに回転し、複数の第1の抵抗部材30全体も無端ベルト3Aと一体に反時計回りに回転する。
この場合には、補助回転体2Fよりも右側(下流)に位置する第1の抵抗部材30群は、流体圧をほとんど受けない。したがって、この設置構造に適用された流体発電システムが得る回転エネルギは、補助回転体2Fよりも左側(上流)に位置する第1の抵抗部材30群に因る。
しかし、流水方向が図の左方向に変化した場合には、補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30群が、流体圧を受けることとなる。
この場合には、第1の抵抗部材30の受圧面部31が流体圧を受ける向きと逆向きになるため、流水方向が変化した場合に得る回転エネルギは、非常に小さい。
【0067】
しかしながら、この設置構造における流体発電システムでは、図18に示したように、受圧面部31Aが可撓性素材で形成された第1の抵抗部材30を、使用しているので、図20の(a)に示すように、流水方向が右方向の場合には、第1の抵抗部材30の受圧面部31Aが、右方に撓み、補助回転体2Fよりも左側に位置する第1の抵抗部材30群(図中、領域L1内にある複数の第1の抵抗部材30)が、流体圧を確実に受け取る。
そして、図20の(b)に示すように、流水方向が左方向に変化した場合には、第1の抵抗部材30の受圧面部31Aの向きが、左方に撓み、補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30群(図中、領域L2内にある複数の第1の抵抗部材30)が、流体圧を確実に受ける。
この場合には、補助回転体2Fよりも左側に位置する第1の抵抗部材30群は、流体圧をほとんど受けないので、この設置構造の流体発電システムが得る回転エネルギは、補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30群に因る。
【0068】
ところで、図17に示したように、この実施例では、中央の補助回転体2Fを、補助回転体2C~2E,2G~2Iよりも下方に位置させているので、補助回転体2Fよりも左側に位置する第1の抵抗部材30の数と補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30の数は、ほぼ同数である。
したがって、補助回転体2Fよりも左側に位置する第1の抵抗部材30に因って得られる回転エネルギと補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30に因って得られる回転エネルギは、ほぼ同じである。
つまり、この実施例の設置構造によれば、流水方向が変化しても、常にほぼ同じ大きさの回転エネルギを得ることができる。
しかも、図19に示す回転方向変換器6Aを用いることで、第1の抵抗部材30が得た回転エネルギを発電機6によって常に電気に変換することができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1及び第2実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0069】
(実施例4)
次に、この発明の第4実施例について説明する。
図21は、この発明の第4実施例に係る流体発電システムの要部を示す斜視図であり、図21の(a)は、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bを示し、図21の(b)は、補助回転体2C~2Hを示し、図21(c)は、無端ベルト3Aを示す。また、図22は、線状溝と線状突起とを示す断面図である。
これらの図に示すように、この実施例の流体発電システムでは、1対の線状溝2aを第1及び第2の回転体2A,2Bに設け、1対の線状溝2bを補助回転体2C~2Hに設けると共に、1対の線状突起3aを無端ベルト3Aに設けた点が、上記第1ないし第3実施例と異なる。
【0070】
具体的には、図21の(c)に示すように、1対の線状突起3aは、無端ベルト3Aの内周面に突設されている。各線状突起3aは、図22に示すように、断面コ字状に形成されている。
一方、図21の(a)に示すように、1対の線状溝2aは、第1の回転体2A(第2の回転体2B)の外周面であって且つ1対の線状突起3aの突設位置に対応した位置に凹設されている。また、1対の線状溝2bも、図21の(b)に示すように、各補助回転体2C(2D~2H)の外周面であって且つ1対の線状突起3aの突設位置に対応した位置に凹設されている。
図22に示すように、これらの線状溝2a,2bは、線状突起3aと同形状の断面コ字状に形成されている。
つまり、無端ベルト3Aを第1の回転体2A,第2の回転体2B,補助回転体2C~2Hとに巻き付けると、無端ベルト3Aの1対の線状突起3aが、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bの1対の線状溝2aと補助回転体2C~2Hの線状溝2bとに嵌合するように設定されている。
【0071】
なお、線状溝2a,2bは、第1の回転体2A(第2の回転体2B),補助回転体2C(2D~2H)の外周面に刻設することで形成することができる。しかし、大きめの溝をこれらの外周面に形成して、線状溝2a,2bを有した別体のリング状部材を、当該大きめの溝内に装着しすることでも形成することができる。また、線状突起3aは、無端ベルト3Aとは別体の部材で形成することもできる。
線状溝2a,2bや無端ベルト3Aをこのような部材で形成する場合には、部材として、部材同士が接触すると吸盤の働きをする合成ゴムや樹脂等を用いることが好ましい。
【0072】
以上のように、この実施例では、無端ベルト3Aを、第1の回転体2A,第2の回転体2B,補助回転体2C~2Hとに巻き付けて、無端ベルト3Aの1対の線状突起3aを、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bの1対の線状溝2aと補助回転体2C~2Hの線状溝2bとに嵌合させた構成であるので、線状突起3aと線状溝2a,2bとの嵌合力が、外力に対して働く。したがって、無端ベルト3Aが、流体圧を流れ方向だけでなく、横方向等から受けたとしても、横ずれを起こして第1の回転体2A等から外れることはない。
その他の構成作用及び効果は、上記第1ないし第3実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0073】
(変形例4)
図23は、線状溝と線状突起の変形例を示す断面図であり、図23の(a)は、U字状の断面を示し、図23の(b)は、V字状の断面を示す。
線状溝2a,2bと線状突起3aの断面形状は、任意である。したがって、上記実施例では、断面コ字状の線状溝2a,2bと線状突起3aとを例示したが、これに限定されない。
例えば、図23の(a)及び(b)に示すように、断面U字状のものや断面V字状のものも線状溝2a,2b及び線状突起3aとして適用することができる。
【0074】
(実施例5)
次に、この発明の第5実施例について説明する。
図24は、この発明の第5実施例に係る流体発電システムの要部を示す斜視図であり、図24の(a)は、第1の回転体2A及び第2の回転体2Bを示し、図24の(b)は、補助回転体2C~2Hを示し、図24(c)は、無端ベルト3Aを示す。
これらの図に示すように、この実施例の流体発電システムでは、上記実施例に適用された線状溝2aの代わりに、列状の複数の穴2cを、第1の回転体2A(第2の回転体2B)の外周面に設けた。また、線状突起3aの代わりに、列状の複数の突起物3bを、無端ベルト3Aの内周面に設けた。そして、補助回転体2C(2D~2H)においては、上記実施例と同様に、1対の線状溝2bを、補助回転体2C(2D~2H)の外周面に設けている。
第1の回転体2A(第2の回転体2B)の穴2cの断面形状と無端ベルト3Aの突起物3bの断面形状は同形状に設定されており、突起物3bを穴2cに嵌合させると共に、補助回転体2C(2D~2H)の線状溝2bに嵌合させることで、無端ベルト3Aが第1の回転体2A等から外れるたりする事態を防止することができる。
その他の構成作用及び効果は、上記第1ないし第4実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0075】
(実施例6)
次に、この発明の第6実施例について説明する。
図25は、この発明の第6実施例に係る流体発電システムの設置構造の要部を示す概略図である。
この実施例の設置構造に適用される流体発電システムでは、第1の抵抗部材30の取付構造が上記第3実施例の第1の抵抗部材30の取付構造と異なる。
【0076】
図25に示すように、この実施例の設置構造の流体発電システムでは、複数の第1の抵抗部材30が、交互に逆向きになるように、無端ベルト3Aの表面に一定の間隔で立設されている。具体的には、受圧面部31が逆向きになるように、複数の第1の抵抗部材30が、交互に配置されている。
これにより、補助回転体2Fよりも左側に位置し且つ左向きの受圧面部31を有した第1の抵抗部材30が、実線矢印で示す方向の流体圧を受け、補助回転体2Fよりも右側に位置し且つ右向きの受圧面部31を有した第1の抵抗部材30が、2点鎖線矢印で示す方向の流体圧を受けることができる。
【0077】
この実施例における第1の抵抗部材30が、上記のように配設されているので、流れが変化するような場所で使用する場合においても、上記第7実施例と同様に、流体発電システム全体の向きを流水方向の変化に合わせて変えることなく、動作を継続させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第3実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0078】
(実施例7)
次に、この発明の第7実施例について説明する。
図26は、この発明の第7実施例に係る設置構造に適用される第1の抵抗部材を示す斜視図であり、図27は、第7実施例に係る流体発電システムを示す概略図である。
この実施例の設置構造に適用される流体発電システムでは、流体駆動装置1Aにおける第1の抵抗部材の構造が、上記6実施例と異なる。
【0079】
図26に示すように、この実施例の第1の抵抗部材30’は、上記第1実施例で適用された第1の抵抗部材30と同構造の抵抗部材30A,30Bを背中合わせで接合した構造になっている。具体的には、図左向きの抵抗部材30Aの受圧面部31と図右向きの抵抗部材30Bの受圧面部31とが、中間部材33を介して背中合わせに接合されている。
【0080】
この実施例に適用される第1の抵抗部材30’が、上記のような構造になっているので、図27に示すように、補助回転体2Fよりも左側に位置する第1の抵抗部材30’において、実線矢印で示す流体圧を、この第1の抵抗部材30’の左側の抵抗部材30Bで受けるできる。
そして、補助回転体2Fよりも右側に位置する第1の抵抗部材30’において、2点鎖線矢印で示す流体圧を、右側の抵抗部材30Aで受けるできる。
これにより、流れが変化するような場所で使用する場合においても、流体発電システム全体の向きを流水方向の変化に合わせて変えることなく、動作を継続させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第6実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0081】
(実施例8)
次に、この発明の第8実施例について説明する。
図28は、この発明の第8実施例に係る設置構造を示す概略図である。
海域の状況等によっては、固定装置5の第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとを海中で連結する構造を採用しなければならない場合がある。
すなわち、図28に示すように、第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとの連結部位Cを海面Sの下方に位置させる必要がある場合には、4本の固定体5Aを、第1の連結部5Bが水中に位置するように、海底Bに固設しておく。このとき、支持体10の支柱11A(11B,12A,12B)の長さを、長めに設定して、第2の連結部5Cを海中の第1の連結部5Bに連結することができるようにしておく。
そして、設置場所において、支持体10をクレーン等で持ち上げ、支持体10を海中に沈めながら、4つの第2の連結部5Cと海中の4つの第1の連結部5Bとの位置合わせを行う。以後は、第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとの連結作業を海中にて行うことで、流体発電システムの設置作業を完了する。
【0082】
ところで、支持体10を固定体5Aの第1の連結部5B迄降ろしていく際には、クレーン等の重機を使用すると、支持体10が横揺れを起こす等するため、第2の連結部5Cと第1の連結部5Bとの位置合わせが難しい。また、クレーン等の重機を使用するために、高い作業コストが発生する。
【0083】
以下、流体駆動装置1Aと発電装置1Bが組み付けられた支持体10を、浮体具に取り付けて設置場所まで運び、浮体具を利用して、支持体10の固定作業をする方法を、説明する。
【0084】
図29は、流体発電システムと浮体具とを示す斜視図であり、図30は、浮体具を利用した流体発電システムの設置作業を示す概略図であり、図31は、流体発電システムを設置した状態を示す概略図である。
【0085】
図29に示すように、支持体10は、取付口Fを有した浮体具5Dを装着している。
具体的には、1対の直方体状のタンク55が平行に並べられ、これら1対のタンク55の前端部と後端端部とが、1対の板体56でそれぞれ連結されている。
【0086】
取付口Fは、ロ字状の開口である。流体駆動装置1Aと発電装置1Bが組み付けられた支持体10を、この取付口F内に嵌め込んで、浮体具5Dに固定することができる。
【0087】
これにより、流体駆動装置1Aと発電装置1Bが組み付けられた支持体10を、浮体具5Dに取り付けた状態で、タグボート等によって、設置位置迄曳航することができる。
そして、図30に示すように、その設置場所にて、海水Wを、図示しない注水口を通じて浮体具5Dの空洞内に注入する。海水Wが空洞内に注入されるに従い、流体駆動装置1Aと発電装置1Bが組み付けられた支持体10が海中に少しずつ沈んでいく。位置調整をしながら、この支持体10を固定体5Aの真上迄下降させた後、浮体具5Dへの海水Wの注入を止める。そして、図31に示すように、4つの第2の連結部5Cと海中の4つの第1の連結部5Bとの位置合わせを行った後、第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとを連結する。
つまり、この方法によれば、流体駆動装置1Aと発電装置1Bが組み付けられた支持体10を、浮体具5Dを利用して、設置場所まで曳航することができる。そして、海水Wを浮体具5Dの空洞内に徐々に注入していくことで、支持体10の横揺れを防止しながら、固定体5Aの真上迄少しずつ下降させることができる。このとき、クレーン等の重機による吊り下げと異なり、支持体10の横揺れが、ほとんど生じないので、4つの第2の連結部5Cと海中の4つの第1の連結部5Bとの位置合わせを、容易に行うことができる。この結果、第1の連結部5Bと第2の連結部5Cとの連結作業を、正確に行うことができる。
【0088】
なお、支持体10に取り付ける浮体具の形状や構造は、任意である。浮体具は、浮き袋のように支持体10に取り付けることができ且つ注水及び排水で支持体10の浮き量を調整できる形状及び構造のものならば、どのようなものでもよく、上記した浮体具5Dの形状及び構造に限定されない。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第7実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0089】
(実施例9)
【0090】
次に、この発明の第9実施例について説明する。
図32は、この発明の第9実施例に係る流体発電システムを示す分解斜視図であり、図33は、この実施例の流体発電システムを設置した状態を示す斜視図である。
この実施例では、第1実施例の流体発電システムを用水路に適用した例を示す。
【0091】
図32において、符号100は、水深の深い用水路であり、符号5A’が固定体としての側壁である。
農業用の水W’が、これら1対の側壁5A’の間に流れており、流体駆動装置1Aと発電装置1Bとが組み付けられた支持体10が、この水W’上に設置されている。
具体的には、4つの第1の連結部5Bが、支持体10の第2の連結部5Cに対応するように、1対の側壁5A’の上面に固定されている。
一方、支持体10においては、第2の連結部5Cが取り付けられた支柱11A,11B(12A,12B)間の幅が、用水路を跨ぐ第1の連結部5B,5B間の幅と同じに設定され、これら支柱11A,11B(12A,12B)を除く支持体10の幅が、側壁5A’,5A’間の幅以下に設定されている。
【0092】
そして、図33に示すように、支持体10が、用水路内に嵌め込まれている。具体的には、上記実施例の流体発電システムと同様に、第1及び第2の回転体2A,2Bが、用水路100の水面よりも上方に配置されている。そして、無端ベルト3Aのくの字状に湾曲した部分にある第1の抵抗部材30が、用水路100内の水W’内に完没されている。また、1対の側壁5A’上では、支持体10の第2の連結部5Cのボルト孔52が、第1の連結部5Bのボルト51に嵌められ、ボルト51がナット53によって締め付けられて、第2の連結部5Cと第1の連結部5Bとが、連結されている。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0093】
(実施例10)
次に、この発明の第10実施例について説明する。
この実施例では、流体発電システムの発電量を調整する方法を例示する。
なお、理解を容易にするため、以下の図34図40において、支持体10の支柱11A,12A(11B,12B)と補強材10A(10B)と固定装置5の記載は省略した。
図34は、この実施例に適用される流体発電システムの概略図である。
図34に示すように、この実施例の流体発電システムにおいては、支柱13A’(13B’)~18A’(18B’)が、上記第1実施例の流体発電システムの支柱13A(13B)~18A(18B)よりも長く設定されている。
具体的には、無端ベルト3Aの下側部分を水平にした位置(2点鎖線の位置)から最下位の補助回転体2F迄の距離を、D1とし、無端ベルト3Aの水平な上側部分から各支柱13A’(13B’)(14A’(14B’)~18A’(18B’))の上端(1点鎖線の位置)迄の距離を、D2とした場合、距離D2は距離D1以上になるように設定される。
【0094】
図35は、流体発電システムの発電量の減少状態を示す概略図である。
図34に示す状態では、無端ベルト3Aの下側部分にあるほとんどの第1の抵抗部材30が、海面S下に完没しているので、流体発電システムが作り出す発電量は、極めて大きい。
この状態から、補助回転体2C~2H全体を、支柱13A’(13B’)~18A’(18B’)に沿って上昇させていくと、海中にある第1の抵抗部材30のうち、第1及び第2の回転体2A,2Bに近い第1の抵抗部材30から海面S上に引き上げられていく。そして、第1の抵抗部材30が海面S上に引き上げられるに従って、流体圧を受ける第1の抵抗部材30の数が、減少していく。このため、流体発電システムが作り出す発電量は、補助回転体2C~2H全体の上昇に伴って、ゆっくり減少していく。
そして、図35に示すように、最下位の補助回転体2Fが海面S上にくる迄,補助回転体2C~2Hを上昇させることで、海中に完没する第1の抵抗部材30の数が、1つになり、流体発電システムによる発電量が、ほぼ最小量に減少する。
【0095】
図36は、流体発電システムの発電量の増加状態を示す概略図である。
流体発電システムの発電量を、図35に示した状態迄減少させた後、発電量を増加させる場合には、図35に示した状態から、補助回転体2C~2H全体を、下降させていく。すると、海上にある第1の抵抗部材30が海中に順次完没していく。そして、第1の抵抗部材30が海中に完没していくに従って、流体圧を受ける第1の抵抗部材30の数が、増加していく。このため、流体発電システムが作り出す発電量は、補助回転体2C~2H全体の下降に伴って、増加していく。
したがって、図36に示すように、補助回転体2C~2Hを下降させて、海中に完没する第1の抵抗部材30の数を、増加させることにより、流体発電システムによる発電量を、所望量に迄増加させることができる。
【0096】
通常、流体発電システムの発電量は、海流の速度変化に対応させて調整することができる。しかし、この実施例によれば、上記したように、補助回転体2C~2H全体を上昇,下降させるだけで、海流の変化なしにその発電量の調整を、行うことができる。
【0097】
図37は、流体発電システムの発電停止状態を示す概略図である。
この流体発電システムの発電動作を停止させる場合には、例えば、図37に示すように、全ての補助回転体2C~2Hを、図34に示した1点鎖線の位置よりも上方に上昇させる。
これにより、無端ベルト3Aの下側部分は水平にすることができ、全ての第1の抵抗部材30が、海面Sから離脱して、最終的に流体発電システムの発電動作が、停止する。
【0098】
図38は、弛み防止機構を示す流体発電システムの概略図であり、図39は、無端ベルト3Aを示す斜視図である。
ところで、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bとの間の距離が、短い場合は、補助回転体2C~2Hの一部の補助回転体(例えば、補助回転体2C,2E,2G)を、上昇させると、無端ベルト3Aの下側部分は、水平になる可能性が高い。しかし、第1の回転体2Aと第2の回転体2Bとの間の距離が、長い場合は、図38に示すように、無端ベルト3Aの下側部分が下方に弛んで、水平にならない可能性が高い。このため、一部の第1の抵抗部材30が、海中に完没し、発電動作が、停止しないおそれがある。
このような場合には、図38に示す磁石36と図39に示す磁性体3eとでなる弛み防止機構を備えるのが好ましい。
【0099】
具体的には、複数の磁石36を、無端ベルト3Aの下側部分を水平にした位置(図34の二点鎖線の位置)の上方近傍に配置すると共に、金属板等の磁性体3eを、無端ベルト3Aの内面に取り付けて、弛み防止機構を形成する。
なお、上記磁石36は、電磁石でも永久磁石でもよいが、この実施例では、磁石36として電磁石を適用した。
【0100】
図40は、弛み防止機構の動作状態を示す概略図である。
補助回転体2C~2Hのうちの一部の補助回転体を上昇させたときに、図38に示したように、無端ベルト3Aの下側部分が下方に弛んでいる場合には、弛み防止機構を駆動させる。すなわち、図示しない電源を磁石36に通電する。これにより、無端ベルト3Aが、持ち上げられて、磁性体3eが、磁石36に吸着される。この結果、図40に示すように、無端ベルト3Aの下側部分が、水平に保持され、流体発電システムの発電動作が、停止する。
【0101】
図38に示したように、持ち上げられた無端ベルト3Aに弛みが生じて、発電動作が停止するか否かは、第1及び第2の回転体2A,2Bとの距離間だけでなく、第1の抵抗部材30が取り付けられた無端ベルト3Aの重量や第1及び第2の回転体2A,2Bと海面Sとの差等に左右されるので、正確に判断することはできない。
しかし、弛み防止機構を設けることにより、流体発電システムの発電動作を確実に停止させることができる。
【0102】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例では、固定装置5の第2の連結部5Cを支持体10の支柱11A,11B,12A,12Bのそれぞれの下部に設けることにより、この第2の連結部5Cを海中に立設されている固定体5A上部の第1の連結部5Bに連結する構造の固定装置5を例示したが、固定装置の構造はこれに限定されるものではない。第2の連結部5Cを、支持体10の支柱11A(11B,12A,12B)の下部ではなく、支持体10の底部や側部等、任意の箇所に設けて、固定体5A上部の第1の連結部5Bに連結する構造にすることもできることは勿論である。
【0103】
また、上記実施例では、補強材10A(10B)によって、支持体10の支柱11A,12A(11B,12B)と支柱13A~18A(13B~18B)とを連結すると共に支持体10の強度を保持している。しかし、支柱13A,13B(14A,14B~18A,18B)同士を別体の補強材で連結することで、支持体10の強度をさらに高めることができる。さらに、図41に示すように、別体の固定装置5’を支持体10の底部に設けることで、海流が激しい場所で使用しても、耐え得る強度を確保することができる。
【0104】
さらに、上記実施例では、支柱11A,12A(11B,12B)と支柱13A~18A(13B~18B)と補強材10A(10B)とによって檻状に形成された支持体10を例示したが、支持体の構造はかかる形状のものに限定されない。例えば、図42に示すのように、檻状ではなく、板体によって箱状に形成した支持体10’も適用することができる。つまり、流体駆動装置や発電装置を支持し得る構造の支持体であれば、その形状は任意であり、あらゆる形状の支持体がこの発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1…流体発電システム、 1A…流体駆動置、 1B…発電装置、 2A…第1の回転体、 2B…第2の回転体、 2C~2I…補助回転体、 2a,2b…線状溝、 2c…穴、 3A…無端ベルト、 3a…線状突起、 3b…突起物、 3e…磁性体、 4…第3の回転体、 4A…第4の回転体、 5,5’…固定装置、 5A…固定体、 5A’…側壁、 5B…第1の連結部、 5C…第2の連結部、 5D…浮体具、 6…発電機、 6A…回転方向変換器、 10,10’…支持体、 10A,10B…補強材、 10C,10D…スペーサ、 11A~19A,11B~19B,13A’~18A’,13B’~18B’…支柱、 20,21,27c~27h…シャフト部、 21b…出力軸、 23…摘み、 24…長孔、 30,30’,30D,30E…第1の抵抗部材、 30A,30B…抵抗部材、 31,31A~31C…受圧面部、 31a…上端、 31b…下端、32…支持部材、 32a…枠部、 32b,60…回転軸、 32b…固定部、 32c…補強部、 32d…脚部、 32e…補助脚部、 32f,32f’,32g…接合部、 33…中間部材、 34…ストッパ、 34a,51,71,72…開口、 35…受圧面取付部、 36…磁石、 40…第2の抵抗部材、 41…第3の抵抗部材、 51,51’…ボルト、 52…ボルト孔、 53…ナット、 55…タンク、 56…板体、 61…連結部材、 100…用水路、 B…海底、 C…連結部位、 F…取付口、 G…間隙、 S,S1,S2…水面、 W,W’…水。
【要約】
【課題】流体エネルギを効率的に電気エネルギに変換して高発電効率と大きな発電量を得ることができるだけでなく、水深が深い洋上で使用する場合においても、システムの設置コストの低減とメインテナンス作業の負担軽減とを図ることができる流体発電システム及びその設置構造を提供する。
【解決手段】流体発電システム1は流体駆動装置1Aと発電装置1Bと固定装置5を備える。流体駆動装置1Aは第1及び第2の回転体2A,2Bと無端ベルト3Aと第1の抵抗部材30と補助回転体2C~2Hとを有する。これらは支持体10に組み付けられている。発電装置1Bは流体駆動装置1Aの出力軸21bの回転力を発電機6の回転軸60で受けて発電動作を行う。固定装置5は固定体5Aと第1及び第2の連結部5B,5Cを備えている。第1及び第2の連結部5B,5Cの連結によって、支持体10を維持固定する。
【選択図】図1
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