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特許7240808PSGL-1モジュレーターおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】PSGL-1モジュレーターおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230309BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61K39/395 E
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61P43/00 107
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017500373
(86)(22)【出願日】2015-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-08-31
(86)【国際出願番号】 US2015039586
(87)【国際公開番号】W WO2016007653
(87)【国際公開日】2016-01-14
【審査請求日】2018-07-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/022,191
(32)【優先日】2014-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517006821
【氏名又は名称】サンフォード バーナム プレビーズ メディカル ディスカバリー インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー, リンダ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ティノコ, ロベルト
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】馬場 亮人
【審判官】岡崎 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-521958(JP,A)
【文献】西村 順裕,エンテロウイルス71の感染機構に関する研究,ウイルス,2012年,第62巻,第1号,p.121-128
【文献】Zhang S et al.,Targeting CD162 protects against streptococcal M1 protein-evoked neutrophil recruitment and lung injury,American Journal of Physiology. Lung Cellular and Molecular Physiology,2013年,Vol.305, No.10,p.L756-L763
【文献】Tripodo C et al.,P-selectin glycoprotein ligand-1 as a potential target for humoral immunotherapy of multiple myeloma,Current Cancer Drug Targets,2009年,Vol.9, No.5,p.617-625
【文献】Raes G et al.,The metastatic T-cell hybridoma antigen/P-selectin glycoprotein ligand 1 is required for hematogenous metastasis of lymphomas,International Journal of Cancer,2007年,Vol.121, No.12,p.2646-2652
【文献】Huang CC et al.,A novel apoptosis-inducing anti-PSGL-1 antibody for T cell-mediated diseases,European Journal of Immunology,2005年,Vol.35, No.7,p.2239-2249
【文献】Veerman KM et al.,PSGL-1 regulates the migration and proliferation of CD8(+) T cells under homeostatic conditions,The Journal of Immunology,2012年,Vol.188, No.4,p.1638-1646
【文献】Aubert RD et al.,Antigen-specific CD4 T-cell help rescues exhausted CD8 T cells during chronic viral infection,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011年,Vol.108, No.52,p.21182-21187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K45/00-08
A61K38/00-58
A61K39/00-44
A61K48/00
A61K31/00-80
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)アンタゴニストを含む、がんを処置する方法においてT細胞応答を誘発するまたはT細胞機能を回復させるのに使用するための組成物であって、前記PSGL-1アンタゴニストは、CD4+T細胞依存性CD8+T細胞応答を増加させ、前記方法は、それを必要とする被験体に前記PSGL-1アンタゴニストを含む前記組成物を投与するステップを含み、前記PSGL-1アンタゴニストが、PSGL-1遮断抗体を含み、前記CD4+T細胞またはCD8+T細胞がPSGL-1を発現する、組成物。
【請求項2】
前記がんが、前立腺、結腸、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟部組織、脾臓、胸部および尿生殖路からなる群から選択される、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記PSGL-1遮断抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
FoxP3、IL-10、TGF-βおよび/またはMHCクラスIIの発現が、増加する、または
IFNγ、TNFαおよびCD107のCD8+分泌が、増加する、または
PD-1、BTLAおよびCD160の発現が、減少または増加する、または
CD25およびT-betの発現が、増加する、
請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35 U.S.C. §119(e)の下の、2014年7月08日に出願された米国第62/022,191号に対する優先権の利益を主張するし、その内容の全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、一部には、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金番号:P01AI046530-14、R01AI06895-01A1およびP30CA030199-32の下、政府支援によってなされた。アメリカ合衆国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、全般的には、抗体、より具体的には、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)モジュレーターの使用ならびに免疫応答をモジュレートし、感染性疾患、がんならびに免疫および炎症関連疾患および障害を処置するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
Tリンパ球による免疫応答は、微生物に対する宿主保護にとって重大な意味を持つが、慢性感染において機能不全になる場合がある。HIVならびにB型肝炎およびC型肝炎等、慢性ウイルス感染により、T細胞応答は、進行性機能喪失を有し、多くのT細胞が、アポトーシスを起こす。残るT細胞は、機能不全状態、すなわち、表現型疲弊(phenotypic exhaustion)において停止している。理解が不完全ではあるが、いくつかの根底にある機構が、クローン13株(Cl13)による慢性感染のリンパ球性脈絡髄膜炎(chodomeningitits)ウイルス(LCMV)モデルにおけるT細胞疲弊について同定された。このモデルにおいて、ウイルス特異的CD8+T細胞は、抗原およびI型インターフェロンに慢性的に曝露されており、PD-1、LAG-3、CD160およびBTLAを含む免疫阻害性受容体の(if)発現が上方調節される。細胞は、運動性も失い、転写調節変更を示し、阻害性サイトカイン、IL-10およびTGFβの産生増加を有する。時間と共に、CD8+T細胞は、その増殖ポテンシャル、細胞傷害性機能ならびにIL-2、TNF-αおよびIFN-γを産生する能力を失う。CD4+T細胞は、阻害性受容体の上方調節および機能喪失により同様に変更された分化を呈する。重要なことに、ウイルス特異的CD4+T細胞は、疲弊したCD8+T細胞をレスキューすることができ、これに、ウイルスクリアランスを媒介させることができる。CD4+T細胞によるIL-2およびIL-21の産生は、欠陥のあるCD8+T細胞応答の反転に寄与すると考えられ、適切なエフェクター分化に必要な鍵となるサイトカインが、慢性感染後に限定的になることを暗示する。したがって、数種類の統合されたプロセスの相互関係が組み合わさり、慢性ウイルス感染を排除する免疫系の能力を無効にする。
【0005】
皮膚、肺および腎臓を含む多くのがんは、HIV、B型肝炎およびC型肝炎を含む慢性ウイルス感染において観察されるものと同様に、免疫抑制の同様の状態を確立し、免疫機能不全の多くの共通の特色を共有する。これらは、応答するT細胞の死、ならびにPD-1、Lag-3およびCTLA-4を含む阻害性受容体の上方調節を含む。したがって、抗腫瘍T細胞応答の重大な意味を持つ機能のブーストを目標とする免疫療法が、このような設定におけるがんの根絶に必要である。そこで、慢性ウイルスおよび腫瘍が、過剰な免疫応答を防止する天然のチェック機構を奪うことにより免疫系を乗っ取ることが明らかである。主要な生物医学研究問題は、この免疫抑制を反転し、腫瘍排除を促進するための治療法をいかにして開発するかである。
【0006】
そこで、T細胞機能不全の反転が、広範囲の臨床設定において免疫応答を再建し、疾患消散を達成し得ることが明らかである。接着機構は、リンパ系および非リンパ系組織の両方におけるT細胞の蓄積を調節する。接着分子発現のモジュレートは、エフェクターおよびメモリーT細胞発生に影響を与えるため、ならびに異なる分化ステージにおける細胞を区別するために使用されてきた。受容体のセレクチンファミリー、L、EおよびPのリガンドである、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)は、慢性LCMV感染後にT細胞において高度に誘導される。PSGL-1は、炎症組織へのT細胞輸送を調節し、定常状態条件下および炎症応答後のリンパ系組織へのT細胞遊走を媒介するために主に認識される。PSGL-1は、応答消散後の骨髄へのメモリーT細胞ホーミングを調節することもできる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
免疫阻害性受容体(例えば、PD-1/PD-L1、CTLA-4)を遮断することにより、また、抗腫瘍T細胞により、広範囲のがんの免疫破壊を大幅に改善することができる新たな処置にもかかわらず、有効性は、患者サブセット(多くの場合、<30%)に限定される。よって、非応答性患者における有効な免疫療法を達成するために免疫系を利用する新たな戦略を開発する決定的な必要がある。
【0008】
本発明は、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)が、免疫系および免疫応答をモジュレートするという独創的な発見に関する。具体的には、本発明は、多機能性T細胞の生存およびウイルスクリアランスを増加させる、PSGL-1アゴニストおよびアンタゴニストを提供する。本発明は、PSGL-1モジュレーターを使用して、感染性疾患、がんならびに免疫疾患および障害ならびに炎症性疾患および障害を処置する方法をさらに提供する。
【0009】
一実施形態では、本発明は、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)モジュレーターを、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、T細胞媒介性疾患または障害を処置する方法を提供する。一態様では、PSGL-1モジュレーターは、アゴニストまたはアンタゴニストである。別の態様では、T細胞媒介性疾患または障害は、感染性疾患、がん、自己免疫性障害または炎症性障害である。具体的な態様では、PSGL-1モジュレーターは、アゴニストであり、T細胞媒介性疾患または障害は、自己免疫性疾患または障害あるいは炎症性疾患または障害である。ある特定の態様では、PSGL-1モジュレーターは、アンタゴニストであり、T細胞媒介性疾患または障害は、がんまたは感染性疾患である。
【0010】
一態様では、PSGL-1モジュレーターは、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である。具体的な態様では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。別の態様では、CD4+依存性CD8+T細胞応答は、増加する。追加的な態様では、ウイルス特異的T細胞は、増加する。別の態様では、TregおよびDC応答は、増加する。さらなる態様では、FoxP3、IL-10、TGF-βおよび/またはMHCクラスIIの発現は、増加する。ある態様では、IFNγ、TNFαおよびCD107のCD8+分泌は、増加する。他の態様では、PD-1、BTLAおよびCD160の発現は、減少または増加する。一態様では、CD25およびT-betの発現は、増加する。別の態様では、ウイルスクリアランスは、増加する。
【0011】
追加的な実施形態では、本発明は、PSGL-1モジュレーターを、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、T細胞応答を誘発する方法を提供する。ある態様では、PSGL-1モジュレーターは、アゴニストまたはアンタゴニストである。別の態様では、T細胞媒介性疾患または障害は、感染性疾患、がん、自己免疫性障害または炎症性障害である。一態様では、PSGL-1モジュレーターは、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である。具体的な態様では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。別の態様では、CD4+依存性CD8+T細胞応答は、増加する。追加的な態様では、ウイルス特異的T細胞は、増加する。別の態様では、TregおよびDC応答は、増加する。さらなる態様では、FoxP3、IL-10、TGF-βおよび/またはMHCクラスIIの発現は、増加する。ある態様では、IFNγ、TNFαおよびCD107のCD8+分泌は、増加する。他の態様では、PD-1、BTLAおよびCD160の発現は、減少または増加する。一態様では、CD25およびT-betの発現は、増加する。
【0012】
さらなる実施形態では、本発明は、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)モジュレーターを、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、T細胞機能を回復させる方法を提供する。ある態様では、PSGL-1モジュレーターは、アゴニストまたはアンタゴニストである。別の態様では、T細胞媒介性疾患または障害は、感染性疾患、がん、自己免疫性障害または炎症性障害である。一態様では、PSGL-1モジュレーターは、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である。具体的な態様では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。別の態様では、CD4+依存性CD8+T細胞応答は、増加する。追加的な態様では、ウイルス特異的T細胞は、増加する。別の態様では、TregおよびDC応答は、増加する。さらなる態様では、FoxP3、IL-10、TGF-βおよび/またはMHCクラスIIの発現は、増加する。ある態様では、IFNγ、TNFαおよびCD107のCD8+分泌は、増加する。他の態様では、PD-1、BTLAおよびCD160の発現は、減少または増加する。一態様では、CD25およびT-betの発現は、増加する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)モジュレーターと、医薬キャリアとを含む医薬組成物を提供する。一態様では、PSGL-1モジュレーターは、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である。追加的な態様では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)モジュレーターを、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、T細胞媒介性疾患または障害を処置する方法。
(項目2)
前記PSGL-1モジュレーターが、アゴニストまたはアンタゴニストである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記T細胞媒介性疾患または障害が、感染性疾患、がん、自己免疫性障害および炎症性障害からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記感染性疾患が、ボツリヌス中毒、腺ペスト、カリシウイルス感染(ノロウイルスおよびサポウイルス)、水痘、クラミジア、コレラ、Clostridium difficile感染、感冒(急性ウイルス鼻咽喉炎;急性コリーザ)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、デング熱、ジフテリア、エボラ出血熱、淋病、手足口病(HFMD)、Helicobacter pylori感染、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、単純ヘルペス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染、エプスタイン・バーウイルス感染性単核症(Mono)、インフルエンザ(flu)、レジオネラ症(レジオネラ病)、ハンセン病、ライム病(ライムボレリア症)、マラリア、マールブルグ出血熱(MHF)、麻疹、中東呼吸器症候群(MERS)、髄膜炎、ムンプス、百日咳(Pertussis)(百日咳(Whooping cough))、ペスト、進行性多巣性白質脳症、狂犬病、ライノウイルス感染、ロッキー山紅斑熱(RMSF)、風疹、サルモネラ症、SARS(重症急性呼吸器症候群)、疥癬、敗血症、細菌性赤痢(細菌赤痢)、帯状疱疹(帯状ヘルペス)、天然痘(痘瘡)、梅毒、破傷風(開口障害)、結核、腸チフス熱、渓谷熱、ウイルス性肺炎、ウエストナイル熱および黄熱からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記がんが、前立腺、結腸、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟部組織、脾臓、胸部および尿生殖路からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記自己免疫性障害が、アジソン病、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、クッシング症候群、1型糖尿病、移植片対宿主病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、全身性エリテマトーデス、移植片拒絶および血管炎からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目7)
前記PSGL-1モジュレーターが、アゴニストであり、前記T細胞媒介性疾患または障害が、自己免疫性疾患または障害あるいは炎症性疾患または障害である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記PSGL-1モジュレーターが、アンタゴニストであり、前記T細胞媒介性疾患または障害が、がんまたは感染性疾患である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記PSGL-1モジュレーターが、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請
求項9に記載の方法。
(項目11)
CD4+依存性CD8+T細胞応答が、増加する、項目1に記載の方法。
(項目12)
ウイルス特異的T細胞が、増加する、項目1に記載の方法。
(項目13)
TregおよびDC応答が、増加する、項目1に記載の方法。
(項目14)
FoxP3、IL-10、TGF-βおよび/またはMHCクラスIIの発現が、増加する、項目13に記載の方法。
(項目15)
IFNγ、TNFαおよびCD107のCD8+分泌が、増加する、項目1に記載の方法。
(項目16)
PD-1、BTLAおよびCD160の発現が、減少または増加する、項目1に記載の方法。
(項目17)
CD25およびT-betの発現が、増加する、項目1に記載の方法。
(項目18)
ウイルスクリアランスが、増加する、項目4に記載の方法。
(項目19)
PSGL-1モジュレーターを、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、T細胞応答を誘発する方法。
(項目20)
前記PSGL-1モジュレーターが、アゴニストまたはアンタゴニストである、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記被験体が、感染性疾患、がん、自己免疫性障害または炎症性障害を有する、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記PSGL-1モジュレーターが、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、項目22に記載の方法。
(項目24)
CD4+依存性CD8+T細胞応答が、増加する、項目19に記載の方法。
(項目25)
TregおよびDC応答が、増加する、項目19に記載の方法。
(項目26)
FoxP3、IL-10、TGF-βおよび/またはMHCクラスIIの発現が、増加する、項目19に記載の方法。
(項目27)
IFNγ、TNFαおよびCD107のCD8+分泌が、増加する、項目19に記載の方法。
(項目28)
PD-1、BTLAおよびCD160の発現が、減少または増加する、項目19に記載の方法。
(項目29)
CD25およびT-betの発現が、増加する、項目19に記載の方法。
(項目30)
P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)モジュレーターを、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、T細胞機能を回復させる方法。
(項目31)
前記PSGL-1モジュレーターが、アゴニストまたはアンタゴニストである、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記被験体が、感染性疾患、がん、自己免疫性障害または炎症性障害を有する、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記PSGL-1モジュレーターが、抗体、小分子、タンパク質または核酸である、項目30に記載の方法。
(項目34)
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、項目33に記載の方法。
(項目35)
CD4+依存性CD8+T細胞応答が、増加する、項目30に記載の方法。
(項目36)
TregおよびDC応答が、増加する、項目30に記載の方法。
(項目37)
FoxP3、IL-10、TGF-βおよび/またはMHCクラスIIの発現が、増加する、項目30に記載の方法。
(項目38)
IFNγ、TNFαおよびCD107のCD8+分泌が、増加する、項目30に記載の方法。
(項目39)
PD-1、BTLAおよびCD160の発現が、減少または減少する、項目30に記載の方法。
(項目40)
CD25およびT-betの発現が、増加する、項目30に記載の方法。
(項目41)
P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)モジュレーターと、医薬キャリアとを含む、医薬組成物。
(項目42)
前記PSGL-1モジュレーターが、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である、項目41に記載の組成物。
(項目43)
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、項目42に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1A図1Eは、LCMVクローン13感染後のPSGL-1 KOマウスにおけるPSGL-1動態およびウイルス特異的T細胞の蓄積を示す。WTマウスは、黒色バーまたは黒丸で表し、PSGL-1 KOマウスは、白色バーで表す。(A)非感染WTマウス由来の血液におけるCD8+T細胞と比べたGP33-41+CD8+T細胞におけるPSGL-1レベルの平均蛍光強度(MFI)。(B)8-感染後日数(dpi)の脾臓における、ウイルス特異的CD8+T細胞頻度および絶対数を列挙した。(C)GP33-41+CD8+T細胞におけるウイルス特異的CD8+T細胞頻度のFACSプロット。(D)8-dpiの脾臓におけるウイルス特異的GP66-76+CD4+T細胞の頻度および絶対数。(E)ウイルス特異的GP66-76+CD4+T細胞におけるウイルス特異的CD8+T細胞頻度のFACSプロット。
【0015】
図2図2A図2Eは、ウイルス特異的PSGL-1 KO T細胞が、増殖ではなく生存の増強を呈することを示す。WTマウスは、黒色バーで表し、PSGL-1 KOマウスは、白色バーで表す。(A~B)8-dpiに単離されたWTおよびPSGL-1の脾臓由来のGP33-41+CD4+細胞(A)およびGP66-76+CD4+細胞(B)のレベル。(C~D)10-dpiに単離されたWTおよびPSGL-1の脾臓由来のIL7Rα(C)およびBcl-2(D)のレベル。(E)10-dpiのWTおよびPSGL-1の血液由来のCD25のレベル。
【0016】
図3図3A図3Gは、PSGL-1 KOマウスにおける増強されたエフェクターT細胞機能を示す。WTマウスは、黒色バーで表し、PSGL-1 KOマウスは、白色バーで表す。(A)GP33-41+CD8+細胞におけるINF-γおよびINF-γ+TNF-αの産生。(B)NP396-404+CD8+細胞におけるINF-γおよびINF-γ+TNF-αの産生。(C)CD107+INF-γ+Tet+細胞の産生。(D)GP33-41+CD8+細胞におけるグランザイムBの産生。(E)GP33-41+CD8+細胞におけるT-betの産生。(F)GP33-41+CD8+細胞におけるEomesの産生。(G)GP66-76+CD4+細胞におけるINF-γ、INF-γ+TNF-αおよびINF-γ+TNF-α+IL-2の産生。
【0017】
図4図4A図4Dは、ウイルス特異的T細胞における阻害性受容体発現を示す。WTマウスは、黒色バーで表し、PSGL-1 KOマウスは、白色バーで表す。(A)ウイルス特異的GP66-76+CD4+T細胞、7dpiにおけるPD-1のレベル。(B)ウイルス特異的GP66-76+CD4+T細胞、8dpiにおけるPD-1のレベル。(C)ウイルス特異的GP33-41+CD8+細胞およびNP396-404+CD8+細胞、8dpiにおけるPD-1のレベル。(D)ウイルス特異的GP33-41+CD8+細胞におけるCD160およびBTLAのレベル。
【0018】
図5図5A図5Gは、PSGL-1 KOウイルス特異的CD8T細胞およびCD4T細胞の蓄積が、細胞固有であり、疲弊したCD8T細胞のPSGL-1ライゲーションが、その生存を減少したことを示す。WTおよびPSG-L-1 KOナイーブP14トランスジェニックT細胞は、丸で表す、または1PSGL-1 KOナイーブSmartaトランスジェニックCD4T細胞は、四角で表す。(A~B)WTおよびPSG-L-1 KOナイーブP14トランスジェニックT細胞(丸)または1PSGL-1 KOナイーブSmartaトランスジェニックCD4T細胞(四角)、1dpi由来の脾臓(A)または肺(B)におけるWTに対するPSGL-1 KOの比。(C~D)脾臓、1dpiにおけるWT(丸)およびPSGL-1 KO(四角)P14細胞(C)またはSmarta細胞(D)の数。(E)2-dpiのWTまたはPSGL-1 KO P14細胞におけるCFSE希釈。(F~G)9-dpiに単離された脾細胞由来の、プロピジウム陰性GP33-41+CD8+T細胞の頻度(F)およびGP33-41+CD8+T細胞におけるPD-1レベル(G)。
【0019】
図6図6A図6Eは、PSGL-1 KOマウスが、加速されたウイルス制御および広範囲の免疫病理を有することを示す。(A~C)8-dpiにおける黒丸または黒色バーで表されるWTマウスおよび白色四角または白色バーで表されるPSGL-1 KOマウス由来の血清LCMVウイルスレベル(A)、生存曲線(B)および血清キナーゼレベル(C)。(D)非感染および8日目の感染WTおよびPSGL-1 KO肺のH&E組織像。(E)非感染および8-dpiのWTおよびPSGL-1 KOの肺における病理スコア。
【0020】
図7図7A図7Eは、PSGL-1 KOマウスにおける最適ウイルス特異的CD8+T細胞機能が、CD4+T細胞ヘルプに依存することを示す。黒色バーまたは黒丸で表されるWTマウス、白色バーまたは白色四角で表されるPSGL-1 KOマウス、および灰色バーまたは灰色三角で表されるPSGL-1 KO CD4枯渇マウス。(A)脾臓におけるGP66-76+CD4+T細胞の絶対数。(B)8-dpiの血液におけるGP33-41およびNP396-404CD8+T細胞の頻度。(C)10-dpiの脾臓におけるサイトカイン産生GP33-41CD8+T細胞の絶対数。(D)dpi10日目の脾臓におけるGP33-41+およびNP396-404+特異的CD8+T細胞におけるPD-1レベル。(E)10-dpiの生存率および血清ウイルスレベル。
【0021】
図8図8A図8Eは、Cl13感染後のウイルス特異的CD8T細胞応答の動態を示す。WT(黒色四角またはバー)またはPSGL1-KO(白色四角またはバー)マウス。(A~D)dpi4日目、6日目および8日目(A、B、C)ならびにdpi30日目の(D)GP33-41+CD8+T細胞またはNP396-404+CD8+T細胞の絶対数。(E)ドットプロットは、代表的なマウスを表す。
【0022】
図9図9A図9Dは、PSGL-1 KOウイルス特異的T細胞が、有効に遊走し、肺に蓄積することを示す。(A~D)DGP33-41四量体もしくはDNP396-404四量体(A~B)またはIA-GP66-76(C~D)で染色した、dpi7.5日目のWT(黒色バー)またはPSGL1-K0(白色バー)マウス肺由来の細胞。
【0023】
図10図10A図10Eは、ウイルス特異的T細胞におけるサイトカイン受容体レベルを示す。WTマウスは、黒色四角またはバーで表し、PSGL-1 KOマウスは、白色四角またはバーで表す。(A)4、6および8dpiのGP33-41細胞におけるIL-7Rαのレベル。(B)4、6および8dpiのNP396-404細胞におけるIL-7Rαのレベル。(C)9dpiのIL-21のレベル。(D)9dpiのCD122のレベル。(E)9dpiのIL-6Rのレベル。
【0024】
図11図11A図11Eは、増加したサイトカインレベルが、PSGL-1 KOマウス由来のエフェクターT細胞によって発現されることを示す。WTマウスは、黒色バーで表し、PSGL-1 KOマウスは、白色バーで表す。(A~C)10dpiのCD8+T細胞におけるINF-γ(A、C)およびTNF-α(B)の産生。(D~E)10dpiのCD4+T細胞におけるTNF-α(D)およびIL-2(E)の産生。
【0025】
図12図12A図12Eは、ウイルス特異的T細胞における阻害性受容体発現を示す。WTマウスは、黒色バーで表し、PSGL-1 KOマウスは、白色バーで表す。(A~E)pd8日目の脾臓における(A~B)、dpi15日目(C)、dpi30日目(D)の血液における、およびdpi112日目の脾臓における(E)ウイルス特異的GP33-41-およびNP396-404-CD8T細胞におけるPD-1、CD160およびBTLAのレベル。
【0026】
図13図13A図13Eは、ナイーブWT細胞およびPSGL-1 KO P14細胞の感染前表現型ならびにWT細胞およびPSGL-1 KO P14細胞の増殖を示す。WTマウスは、黒色バーで表し、PSGL-1 KOトランスジェニックP14+Tgマウスは、白色バーで表す。(A~B)CD44およびCD62L(A)ならびにCD25、CD69およびCDI27(B)で染色した脾臓。(C)dpi13日目の脾臓および肺におけるWTまたはPSGL-1 KO P14細胞の頻度。(D)dpi13日目の脾臓および肺におけるBrdu取り込み。(E)脾臓における代表的ヒストグラム。
【0027】
図14図14A図14Bは、PSGL-1 KOマウスにおけるよりより大きな病理を示す。WT非感染マウスは、黒丸で表し、PSGL-1 KO非感染マウスは、白色バー、四角で表し、WT感染マウスは、黒色三角で表し、PSGL-1 KO感染マウスは、白色三角マウスで表す。(A)WTおよびPSGL-1 KO肺および肝臓の病理スコア。(B)dpi9日目のWTマウスおよびPSGL-1 KOマウスから単離された胃、小腸および大腸。
【0028】
図15図15A図15Dは、Cl13感染後のウイルス特異的PSGL-1KO T細胞の蓄積を示す。(A~D)感染後8dpi(A)および30dpi(B)の血液におけるならびに8dpiの脾臓(C)および肺(D)における、ウイルス特異的CD8+T細胞が列挙された。
【0029】
図16図16A図16Cは、PSGL-1 KO由来のCD8+T細胞の増強された抗ウイルス機能を示す。(A~C)NP396-404またはGP33-41ペプチドにより刺激され、IFN-γおよびTNF-α(A、B)またはCD107(C)に関して解析された脾臓細胞。
【0030】
図17図17A図17Bは、ウイルス特異的CD8+T細胞の減少した阻害性受容体発現を示す。(A~B)PD-1(A)ならびにCD60およびBTLA(B)のレベルから、ウイルス特異的T細胞を評価した。
【0031】
図18図18A図18Cは、PSGL-1 KO CD4+T細胞が、減少した阻害性受容体発現により、改善された生存および機能を呈することを示す。(A~C)頻度(A)、サイトカイン応答(B)ならびにPD-1およびBTLAレベル(C)を8dpiに測定した。
【0032】
図19図19A図19Bは、PSGL-1 KOマウスが、慢性LCMVを取り除き、より多量の循環炎症性サイトカインを有することを示す。(A)感染後のウイルス力価。(B)8dpiにおけるサイトカインレベル。
【0033】
図20図20A図20Dは、T細胞生存、ならびにPD-1がウイルス感染に対する応答後およびPSGL-1遮断後にPGSL-1欠乏によってモジュレートされることを示す。(A~D)感染後に解析されたNP396-404(A)およびGP33-41(B)特異的CD8+T細胞のレベル。(C)WTマウスおよびPSGL-1 KOマウスから測定されたPD-1のウイルス特異的CD8+T細胞レベル。(D)IAV特異的NP396-404またはLCMV特異的NP396-404CD8+T細胞におけるPD-1レベルを8dpiに測定した。
【0034】
図21図21A図21Bは、腫瘍微小環境におけるT細胞によるPSGL-1およびPD-1発現を示す。(A)CD4+細胞の頻度(左)、該CD4+細胞のPSGL-1発現(中央)およびPSGL-1lo細胞、対、高PSGL-1high細胞によるPD-1の発現(右)。(B)CD8+T細胞の頻度(左)、その高PSGL-1発現(中央)およびPD-1の不均一発現。
【0035】
図22図22A図22Bは、メラノーマ+耳におけるCD8+T細胞によるPSGL-1発現およびPSGL-1結合を示す。(A)CD44hiCD8+T細胞 対 CD44loCD8+T細胞におけるPD-1およびPSGL-1の発現。(B)PSGL-1の機能的な結合を有するCD8+T細胞の頻度。
【0036】
図23図23A図23Bは、メラノーマ腫瘍におけるCD3+T細胞ならびにCD4+TregおよびCD4+非Tregの頻度を示す。(A)CD3T細胞単核(monocuclear)細胞。(B)フローサイトメトリーによる破壊された腫瘍内の高頻度での、PSGL-1+、PD-1+(ダブルポジティブ)CD4+非Treg(エフェクターT細胞)およびTreg。
【0037】
図24図24は、メラノーマにおける免疫細胞および該免疫細胞のPSGL-1発現の存在を示す。(A)メラノーマ腫瘍内で同定された、T細胞(CD4+非Treg、Treg、CD8+細胞)、NK T細胞、NK細胞、樹状細胞(DC、MHC II+、CD11c)骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC、Gr1+、CD11b)およびマクロファージ(Mφ、F4/80+、CD11b+)。(B)PSGL-1を発現したこれらの免疫細胞サブセット。
【0038】
図25図25A図25Fは、WTマウスと比較したPSGL-1欠損マウスの抗腫瘍応答を示す。(A)腫瘍体積および重量。(B)エフェクターCD8+T細胞およびCD4+T細胞の頻度。(C)CD8+T細胞およびCD4+T細胞によるPD-1の発現。(D~F)CD8+T細胞およびCD4+T細胞によるサイトカイン産生。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)が、免疫系および免疫応答をモジュレートするという独創的な発見に関する。具体的には、本発明は、多機能性T細胞の生存およびウイルスクリアランスを増加させる、PSGL-1アゴニストおよびアンタゴニストを提供する。本発明は、PSGL-1モジュレーターを使用して、感染性疾患、がんならびに免疫疾患および障害ならびに炎症性疾患および障害を処置する方法をさらに提供する。
【0040】
本組成物および方法について記載する前に、かかる組成物、方法および条件は変動し得るため、本発明は、記載されている特定の組成物、方法および実験条件に限定されないことを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲においてのみ限定されるため、本明細書において使用されている用語法が、特定の実施形態について記載することのみを目的とし、限定を意図しないことも理解されたい。
【0041】
他に規定がなければ、本明細書に使用されている全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様のまたは同等の任意の方法および材料を本発明の実施または検査に使用してもよいが、好まれる方法および材料をここに記載する。下に記す定義は、本開示を理解するためのものであるが、決して、当業者による用語の理解に取って代わると見なされるべきものではない。
【0042】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される通り、文脈がそれ以外を明らかに指示しない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、複数の参照を含む。よって、例えば、「その(the)方法」への言及は、本開示等々を読むことにより当業者に明らかとなる、本明細書に記載されている種類の1種または複数の方法および/またはステップを含む。
【0043】
抗体は通常、2本の同一軽(L)鎖および2本の同一重(H)鎖で構成された、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1個の共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結されているが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変動する。各重鎖および軽鎖は、規則的に間隔をあけた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V)と続くいくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)およびその他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列され、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基が、軽鎖および重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられる。各可変領域は、相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3個のセグメントで構成され、可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、β-シート立体配置を大部分は採用する4個のFR領域を含み、これらは、β-シート構造の一部を接続し、場合によってはこれを形成するループを形成する3個のCDRによって接続される。各鎖におけるCDRは、FRによってごく接近して一体に保持され、他の鎖由来のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接的に関与しないが、抗体依存性細胞性細胞傷害における抗体の関与等、様々なエフェクター機能を示す。
【0044】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5種の主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は、周知である。
【0045】
抗体のFc領域は、細胞表面受容体および補体系の一部のタンパク質と相互作用する抗体のテイル領域である。この特性により、抗体が免疫系を活性化することができる。IgG、IgAおよびIgD抗体アイソタイプにおいて、Fc領域は、抗体の2本の重鎖の第2および第3の定常ドメインに由来する2個の同一タンパク質断片で構成される;IgMおよびIgE Fc領域は、各ポリペプチド鎖における3個の重鎖定常ドメイン(CHドメイン2~4)を含有する。IgGのFc領域は、高度に保存されたN-グリコシル化部位を有する。Fc断片のグリコシル化は、Fc受容体媒介性活性に必須である。この部位に結合したN-グリカンは、複合型の主にコア-フコシル化された二分岐構造(diantennary structure)である。加えて、少量のこのようなN-グリカンは、バイセクト型GlcNAcおよびα-2,6連結型シアル酸残基も有する。
【0046】
用語「抗体」は、本明細書において使用する場合、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2個のインタクトな抗体から形成された多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)および所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片を指す。
【0047】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の部分、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)およびFv断片;ダイアボディ(diabody)、およびトリボディ(tribody)など;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成された多特異性抗体が挙げられる。
【0048】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用する場合、実質的に同種抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る起こり得る天然起源の変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向される。さらに、各モノクローナル抗体は、抗原における単一の決定基に対して指向される。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていない、ハイブリドーマ培養によって合成されるという点が有利である。例えば、本発明に従って使用するべきモノクローナル抗体は、ハイブリドーマによって、組換えDNA方法によって作製する、またはファージ抗体ライブラリーから単離することができる。
【0049】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖の部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一または相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)と共に、所望の生物学的活性を示す限りにおいてかかる抗体の断片を特に含む。
【0050】
「ヒト化」形態の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)または抗体の他の抗原結合性部分配列等)である。大部分に関して、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および容量を有するマウス、ラットまたはウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、相当する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見出せない残基を含むことができる。このような修飾は、抗体性能をさらに精緻化および最大化するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1個、典型的には2個の可変ドメインのうち実質的に全てを含み、CDRのうち全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FRのうち全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、少なくとも免疫グロブリン定常領域(Fc)の部分、典型的にはヒト免疫グロブリンの部分も含む。
【0051】
「単鎖Fv」または「sFv」抗体断片は、単一のポリペプチド鎖において存在する、抗体のVドメインおよびVドメインを含む。好ましくは、Fvポリペプチドは、sFvに抗原結合のための所望の構造を形成させることができるポリペプチドリンカーを、VドメインおよびVドメインの間にさらに含む。
【0052】
用語「融合分子」および「融合タンパク質」は、互換的に使用され、組換え方法、化学的方法または他の適した方法によって共有結合により連結(すなわち、融合)された、生物学的活性ポリペプチド、通常、HVEMまたは抗体およびエフェクター分子、通常、タンパク質またはペプチド配列を指すことを企図する。必要に応じて、融合分子は、ペプチドリンカー配列を介して1つまたは数箇所の部位において融合されていてよい。あるいは、ペプチドリンカーを使用して、融合分子の構築を支援することができる。特に好まれる融合分子は、融合タンパク質である。一般に、融合分子は、コンジュゲート分子でも構成され得る。
【0053】
Fc-融合タンパク質(Fcキメラ融合タンパク質、Fc-Ig、Igに基づくキメラ融合タンパク質およびFc-タグタンパク質としても公知)は、目的のペプチドまたはタンパク質に遺伝学的に連結された、IgGのFcドメインで構成される。Fc-融合タンパク質は、in vivoおよびin vitro研究に価値ある試薬になった。
【0054】
Fc融合結合パートナーは、単一のペプチド、細胞表面受容体との結合によりシグナル伝達分子を活性化するリガンド、二量体形成により活性化される受容体の細胞外ドメイン、またはタンパク質マイクロアレイにおいて結合パートナーの同定に使用されるベイトタンパク質に及び得る。
【0055】
in vivoにおけるFcドメインの最も価値ある特色の1つは、目的のタンパク質の血漿半減期を劇的に延長することができることであり、これは、生物療法薬のために、改善された治療有効性をもたらし;Fc-融合タンパク質を魅力的な生物療法剤にした特質である。
【0056】
本明細書において使用する場合、用語「核酸」または「核酸配列」は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはこれらのうちのいずれかの任意の断片を指し;一本鎖であっても二本鎖であってもよい、ゲノムまたは合成起源のDNAまたはRNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、iRNA)を含み、例えば、iRNA、リボヌクレオタンパク質(例えば、例えば、二本鎖iRNA、例えば、iRNP)、核酸、すなわち、天然ヌクレオチドの公知の類似体を含有するオリゴヌクレオチドを含む、起源が天然または合成の、センスもしくはアンチセンス鎖またはペプチド核酸(PNA)、または任意のDNA様もしくはRNA様材料であり得る。
【0057】
本明細書において使用する場合、用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、翻訳後修飾、例えば、リン酸化またはグリコシル化に関係なく、2個またはそれを超えるサブユニットアミノ酸、アミノ酸アナログまたは他のペプチド模倣物の化合物を指す。サブユニットは、ペプチド結合または例えば、エステルもしくはエーテル結合等の他の結合によって連結することができる。全長ポリペプチド、トランケートされたポリペプチド、点変異体、挿入変異体、スプライスバリアント、キメラタンパク質およびこれらの断片は、この定義によって包含される。様々な実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも10アミノ酸または少なくとも25または少なくとも50または少なくとも75または少なくとも100または少なくとも125または少なくとも150または少なくとも175または少なくとも200アミノ酸を有することができる。
【0058】
本明細書において使用する場合、用語「小分子」は、およそ10-9mのサイズを有する、生物学的プロセスの調節に役立つことができる低分子量(<900ダルトン)有機化合物を指す。大部分の薬物は、小分子である。小分子は種々の生物学的機能を有し得、細胞シグナル伝達分子として、医学における薬物として、農業における農薬として、および多くの他の役割において働くことができる。これらの化合物は、天然(二次代謝物等)または人工(抗ウイルス薬等)であり得;疾患に対する有益な効果を有し得る(薬物等)、または有害であり得る(催奇形物質および発癌物質等)。核酸およびタンパク質等のバイオポリマーならびに多糖(デンプンまたはセルロース等)は、小分子ではないが、これらの構成物単量体(それぞれリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、アミノ酸および単糖)は多くの場合、小分子と見なされる。
【0059】
本明細書において使用する場合、用語「処置する」または「処置」または「緩和」は、治療的処置、予防的および/または防止的方策を指し、その目的は、標的とする病理学的状態または障害を防止または減速(減弱)することである。処置を必要とする者は、既に障害を有する者と共に、障害を有する傾向がある者または障害を防止するべき者を含む。
【0060】
用語「治療剤」は、本明細書において使用する場合、患者または被験体に投与したときに所望の治療効果を誘導することができる化学化合物または組成物を含む。本発明の治療剤の例は、抗PSGL-1抗体またはPSGL-1融合タンパク質である。
【0061】
本明細書において使用する場合、疾患の処置に使用される薬物の、用語「有効量」または「治療有効量」は、疾患の重症度を低下させる、疾患もしくはその処置に関連する1種もしくは複数の症状の重症度を低下させる、または処置されている状態に続いてある頻度で生じ得る、より重篤な症状もしくはより重篤な疾患の発病を遅延させることができる量である。「有効量」は、言及されている目的に関して、経験的におよびルーチン様式で決定することができる。
【0062】
治療剤は、被験体を処置するために、局所的、非経口的、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、静脈内および/または病巣内投与を含む、任意の適した手段により投与することができる。
【0063】
本明細書において使用する場合、用語「T細胞媒介性疾患または障害」は、PSGL-1モジュレーターによる処置から利益を得る任意の状態を指す。抗PSGL-1処置から利益を得る疾患および障害の例として、感染性疾患、がんならびに免疫疾患および障害、自己免疫性疾患および障害ならびに炎症性疾患および障害が挙げられる。特に、がんまたは感染性疾患を有する被験体は、PSGL-1アンタゴニスト処置から利益を得ることができ、自己免疫性疾患または障害あるいは炎症性疾患または障害を有する被験体は、PSGL-1アゴニスト処置から利益を得ることができる。
【0064】
生物の身体が、感受性細胞に付着しこれに進入することができる病原性ウイルス、感染性ウイルス粒子(ビリオン)、真菌または細菌に侵入されると、感染が生じる。膨大な数のウイルスが、感染性疾患を引き起こす。感染性疾患の例として、ボツリヌス中毒、腺ペスト、カリシウイルス感染(ノロウイルスおよびサポウイルス)、水痘、クラミジア、コレラ、Clostridium difficile感染、感冒(急性ウイルス鼻咽喉炎;急性コリーザ)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、デング熱、ジフテリア、エボラ出血熱、淋病、手足口病(HFMD)、Helicobacter pylori感染、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、単純ヘルペス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染、エプスタイン・バーウイルス感染性単核症(Mono)、インフルエンザ(flu)、レジオネラ症(レジオネラ病)、ハンセン病、ライム病(ライムボレリア症)、マラリア、マールブルグ出血熱(MHF)、麻疹、中東呼吸器症候群(MERS)、髄膜炎、ムンプス、百日咳(Pertussis)(百日咳(Whooping cough))、ペスト、進行性多巣性白質脳症、狂犬病、ライノウイルス感染、ロッキー山紅斑熱(RMSF)、風疹、サルモネラ症、SARS(重症急性呼吸器症候群)、疥癬、敗血症、細菌性赤痢(shigellosis)(細菌赤痢(bacillary dysentery))、帯状疱疹(帯状ヘルペス)、天然痘(痘瘡)、梅毒、破傷風(開口障害)、結核、腸チフス熱(typhoid fever)、渓谷熱、ウイルス性肺炎、ウエストナイル熱および黄熱が挙げられるがこれらに限定されない。
【0065】
感染性疾患は、一般的に、抗ウイルス剤、抗細菌剤または抗真菌剤で処置される。抗ウイルス剤として、アバカビル、アシクロビル(Aciclovir)、アシクロビル(Acyclovir)、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル、アンプリジェン(Ampligen)、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、バラビル(Balavir)、シドホビル、コンビビル、ドルテグラビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エコリエベル(Ecoliever)、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害剤、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル(Imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンIII型、インターフェロンII型、インターフェロンI型、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサビル(Nexavir)、ヌクレオシド類似体、ノビル(Novir)、オセルタミビル、ペグインターフェロンアルファ-2a、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、ラルテグラビル、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、ピラミジン(Pyramidine)、サキナビル、ソホスブビル、スタブジン、相乗的増強剤(synergistic enhancer)、ティーツリーオイル、テラプレビル、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビルおよびジドブジンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0066】
抗細菌剤として、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン(Bs)、ゲルダナマイシン、ハービマイシン(Herbimyci)、リファキシミン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン(Cefalotin)またはセファロチン(Cefalothin)、セファレキシン、セファクロル、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフタロリンフォサミル、セフトビプロール、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、ダルババンシン、オリタバンシン(Oritavanci)、クリンダマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スピラマイシン、アズトレオナム、フラゾリドン、ニトロフラントイン(Bs)、オキサゾリジノン(Bs)、リネゾリド、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ペニシリン、ピペラシリン、ペニシリンG、テモシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、マフェニド、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニルアミド(Sulfanilimide)、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ストレプトマイシンおよびホスホマイシンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
抗真菌剤として、アンホテリシンB、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ニスタチン、リモシジン、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、アルバコナゾール、エフィナコナゾール、エポキシコナゾール、フルコナゾール、イサブコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、プロピコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、ボリコナゾール、アバファンギン(Abafungin)、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、アニデュラファンギン、カスポファンギンおよびミカファンギンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0068】
免疫疾患または障害は、免疫系の機能不全である。このような障害は、いくつかの異なる仕方で:罹患した免疫系の構成成分(複数可)によって;免疫系が過活動であるか不活発であるかによって、および状態が先天性であるか後天性であるかによって特徴付けることができる。自己免疫性疾患は、身体に通常存在する物質および組織に対する身体の異常な免疫応答(自己免疫)から生じる。自己免疫性疾患の根底にある病態生理学の主な理解は、自己免疫性疾患の間での際立った程度の遺伝的共有を同定した、ゲノムワイド関連スキャンの適用であった。
【0069】
自己免疫性障害として、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症(別名ルー・ゲーリック病)、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群(Antisynthetase syndrome)、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性膵炎、自己免疫性末梢性ニューロパチー、自己免疫性多内分泌(polyendocrine)症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー(Balo)病/バロー同心円性硬化症、ベーチェット病、ベルジェ病、ビッカースタッフ型脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性閉塞性肺疾患、慢性再発性多巣性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠乏症、接触性皮膚炎、頭蓋動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚性白血球破砕性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、びまん性皮膚全身性硬化症、円板状エリテマトーデス、ドレスラー症候群、薬物誘発性ループス、湿疹、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エヴァンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化肺胞炎(または特発性肺線維症)、胃炎、胃腸類天疱瘡、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本脳症、橋本甲状腺炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠ヘルペス、別名、妊娠性類天疱瘡、化膿性汗腺炎、ヒューズ・ストーヴィン(Hughes-Stovin)症候群、低ガンマグロブリン血症(Hypogammaglobulinemi)、特発性炎症性脱髄性疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、別名、若年性関節リウマチ、川崎病、ランバート・イートン筋無力症症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病、ルポイド肝炎、別名、自己免疫性肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、顕微鏡的大腸炎、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、モルフェア、ムッハ・ハーベルマン病、別名、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、多発性硬化症、重症筋無力症、筋肉炎、メニエール病、ナルコレプシー、視神経脊髄炎、神経性筋強直症、眼(Occular)瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オード(Ord)甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌に関連する小児自己免疫性精神神経障害)、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間血色素尿症(PNH)、パリー・ロンベルグ(Parry Romberg)症候群、扁平部炎(pars planitis)、パーソネージ・ターナー症候群、尋常性天疱瘡、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、ライター症候群、再発性多発軟骨炎、下肢静止不能症候群(Restless leg syndrome)、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スティッフパーソン症候群、スチル病、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎、血小板減少症、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化脊椎関節症、蕁麻疹様血管炎、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症が挙げられるがこれらに限定されない。
【0070】
炎症性疾患は、膨大な種類のヒト疾患の基礎をなす障害の大型の群である。免疫系は多くの場合、アレルギー反応および一部のミオパチーの両方において実証される、炎症性障害に関与し、多くの免疫系障害は、異常な炎症をもたらす。炎症性プロセスにおいて病原学的起源を有する非免疫疾患は、がん、粥状動脈硬化および虚血性心疾患を含む。多種多様なタンパク質が、炎症に関与し、それらのうちいずれか1種は、該タンパク質の正常な機能および発現を損なうまたは他の仕方で調節不全にする遺伝的変異を受けやすい。炎症に関連する障害の例として、尋常性ざ瘡、喘息、自己免疫性疾患、セリアック病、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流傷害、関節リウマチ、サルコイドーシス、移植片拒絶、血管炎、間質性膀胱炎、粥状動脈硬化、アレルギー、ミオパチー、白血球欠損およびがんが挙げられる。
【0071】
用語「免疫モジュレーター」は、本明細書において使用する場合、免疫系をモジュレートする任意の治療剤を指す。免疫モジュレーターの例として、エイコサノイド、サイトカイン、プロスタグランジン、インターロイキン、ケモカイン、チェックポイント調節因子、TNFスーパーファミリーメンバー、TNF受容体スーパーファミリーメンバーおよびインターフェロンが挙げられる。免疫モジュレーターの具体例として、PGI2、PGE2、PGF2、CCL14、CCL19、CCL20、CCL21、CCL25、CCL27、CXCL12、CXCL13、CXCL-8、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CXCL10、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL15、IL17、IL17、INF-α、INF-β、INF-ε、INF-γ、G-CSF、TNF-α、CTLA、CD20、PD1、PD1L1、PD1L2、ICOS、CD200、CD52、LTα、LTαβ、LIGHT、CD27L、41BBL、FasL、Ox40L、April、TL1A、CD30L、TRAIL、RANKL、BAFF、TWEAK、CD40L、EDA1、EDA2、APP、NGF、TNFR1、TNFR2、LTβR、HVEM、CD27、4-1BB、Fas、Ox40、AITR、DR3、CD30、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、BAFFR、TACI、BCMA、Fn14、CD40、EDAR XEDAR、DR6、DcR3、NGFR-p75およびTajが挙げられる。免疫モジュレーターの他の例として、トシリズマブ(Actemra)、CDP870(Cimzia)、エンテラセプト(enteracept)(Enbrel)、アダリムマブ(Humira)、Kineret、アバタセプト(Orencia)、インフリキシマブ(Remicade)、リツジマブ(rituzimab)(Rituxan)、ゴリムマブ(Simponi)、Avonex、Rebif、ReciGen、Plegridy、Betaseron、Copaxone、Novatrone、ナタリズマブ(Tysabri)、フィンゴリモド(Gilenya)、テリフルノミド(Aubagio)、BG12、Tecfideraおよびアレムツズマブ(Campath、Lemtrada)が挙げられる。
【0072】
がんは、身体の他の部分に侵入または広がる潜在力を有する異常細胞成長に関与する疾患の群である。国立がん研究所(national cancer institute)によって記載される例示的ながんは、急性リンパ芽球性白血病、成人;急性リンパ芽球性白血病、小児;急性骨髄性白血病、成人;副腎皮質癌;副腎皮質癌、小児;AIDS関連リンパ腫;AIDS関連悪性病変;肛門がん;星状細胞腫、小児小脳;星状細胞腫、小児大脳;胆管がん、肝外;膀胱がん;膀胱がん、小児;骨がん、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、小脳星状細胞腫、小児;脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児;脳腫瘍、上衣腫、小児;脳腫瘍、髄芽腫、小児;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;脳腫瘍、視覚路および視床下部神経膠腫、小児;脳腫瘍、小児(その他);乳がん;乳がんおよび妊娠;乳がん、小児;乳がん、男性;気管支腺腫/カルチノイド、小児:カルチノイド腫瘍、小児;カルチノイド腫瘍、胃腸;癌、副腎皮質;癌、島細胞;原発不明の癌;中枢神経系リンパ腫、原発性;小脳星状細胞腫、小児;大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児;子宮頸がん;小児がん;慢性リンパ球性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性障害;腱鞘の明細胞肉腫;結腸がん;結腸直腸がん、小児;皮膚T細胞リンパ腫;子宮内膜がん;上衣腫、小児;上皮がん、卵巣;食道がん;食道がん、小児;ユーイングファミリー腫瘍;頭蓋外胚細胞腫瘍、小児;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管がん;眼がん、眼球内メラノーマ;眼がん、網膜芽細胞腫;胆嚢がん;胃(Gastric)(胃(Stomach))がん;胃(Gastric)(胃(Stomach))がん、小児;胃腸カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外、小児;胚細胞腫瘍、性腺外;胚細胞腫瘍、卵巣;妊娠性絨毛性腫瘍;神経膠腫、小児脳幹;神経膠腫、小児視覚路および視床下部;ヘアリー細胞白血病;頭頸部がん;肝細胞(肝臓)がん、成人(原発性);肝細胞(肝臓)がん、小児(原発性);ホジキンリンパ腫、成人;ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭がん;視床下部および視覚路神経膠腫、小児;眼球内メラノーマ;島細胞癌(膵内分泌部);カポジ肉腫;腎臓がん;喉頭がん;喉頭がん、小児;白血病、急性リンパ芽球性、成人;白血病、急性リンパ芽球性、小児;白血病、急性骨髄性、成人;白血病、急性骨髄性、小児;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、ヘアリー細胞;口唇および口腔がん;肝臓がん、成人(原発性);肝臓がん、小児(原発性);肺がん、非小細胞;肺がん、小細胞;リンパ芽球性白血病、成人急性;リンパ芽球性白血病、小児急性;リンパ球性白血病、慢性;リンパ腫、AIDS関連;リンパ腫、中枢神経系(原発性);リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン、成人;リンパ腫、ホジキン;小児;リンパ腫、妊娠中のホジキン;リンパ腫、非ホジキン、成人;リンパ腫、非ホジキン、小児;リンパ腫、妊娠中の非ホジキン;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンストレーム;男性乳がん;悪性中皮腫、成人;悪性中皮腫、小児;悪性胸腺腫;髄芽腫、小児;メラノーマ;メラノーマ、眼球内;メルケル細胞癌;中皮腫、悪性;潜伏性原発性による転移性扁平上皮頸部がん;多発性内分泌新形成症候群、小児;多発性骨髄腫/形質細胞新生物;菌状息肉症;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、多発性;骨髄増殖性障害、慢性;鼻腔および副鼻腔がん;鼻咽頭がん;鼻咽頭がん、小児;神経芽細胞腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺がん;口腔がん、小児;口腔および口唇がん;中咽頭がん;骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫;卵巣がん、小児;卵巣上皮がん;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵臓がん;膵臓がん、小児、膵臓がん、島細胞;副鼻腔および鼻腔がん;副甲状腺がん;陰茎がん;褐色細胞腫;松果体およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;下垂体腫瘍;形質細胞新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽細胞腫;妊娠および乳がん;妊娠およびホジキンリンパ腫;妊娠および非ホジキンリンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;原発性肝臓がん、成人;原発性肝臓がん、小児;前立腺がん;直腸がん;腎細胞(腎臓)がん;腎細胞がん、小児;腎盂および尿管、移行細胞がん;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫、小児;唾液腺がん;唾液腺がん、小児;肉腫、ユーイングファミリー腫瘍;肉腫、カポジ;肉腫(骨肉腫)/骨の悪性線維性組織球腫;肉腫、横紋筋肉腫、小児;肉腫、軟部組織、成人;肉腫、軟部組織、小児;セザリー症候群;皮膚がん;皮膚がん、小児;皮膚がん(メラノーマ);皮膚癌、メルケル細胞;小細胞肺がん;小腸がん;軟部組織肉腫、成人;軟部組織肉腫、小児;潜伏性原発性、転移性による扁平上皮頸部がん;胃(stomach)(胃(Gastric))がん;胃(stomach)(胃(Gastric))がん、小児;テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;T細胞リンパ腫、皮膚性;精巣がん;胸腺腫、小児;胸腺腫、悪性;甲状腺がん;甲状腺がん、小児;腎盂および尿管の移行細胞がん;絨毛性腫瘍、妊娠性;原発部位不明、小児のがん;小児の珍しいがん;尿管および腎盂、移行細胞がん;尿道がん;子宮肉腫;腟がん;視覚路および視床下部神経膠腫、小児;外陰部がん;ワルデンストレームマクログロブリン血症;ならびにウィルムス腫瘍を含む。
【0073】
用語「化学療法剤」は、本明細書において使用する場合、がんの処置に使用される任意の治療剤を指す。化学療法剤の例として、アクチノマイシン、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パニツムマブ(panitumamab)、アービタックス(セツキシマブ)、マツズマブ、IMC-IIF 8、TheraCIM hR3、デノスマブ、アバスチン(ベバシズマブ)、ヒュミラ(アダリムマブ)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、レミケード(インフリキシマブ)、リツキシマブ、シナジス(パリビズマブ)、マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン(oxogamicin))、ラプティバ(エファリズマブ)、タイサブリ(ナタリズマブ)、ゼナパックス(ダクリキシマブ(dacliximab))、NeutroSpec(テクネチウム(99mTc)ファノレソマブ(fanolesomab))、トシリズマブ、ProstaScint(インジウム-Ill標識カプロマブペンデチド)、ベキサール(トシツモマブ)、ゼヴァリン(イットリウム90にコンジュゲートされたイブリツモマブチウキセタン(IDEC-Y2B8))、ゾレア(オマリズマブ)、MabThera(リツキシマブ)、ReoPro(アブシキシマブ)、MabCampath(アレムツズマブ)、シムレクト(バシリキシマブ)、LeukoScan(スレソマブ(sulesomab))、CEA-Scan(アルシツモマブ)、ベルルマ(Verluma)(ノフェツモマブ(nofetumomab))、パノレクス(Panorex)(エドレコロマブ)、アレムツズマブ、CDP 870およびナタリズマブが挙げられるがこれらに限定されない。
【0074】
免疫系は、疾患から保護する、生物内の生物学的構造およびプロセスの系である。この系は、病原体および他の異物から身体を保護し、感染した細胞および悪性細胞を破壊し、細胞デブリを除去する、相互作用する細胞、細胞産物および細胞形成組織の拡散した複雑なネットワークである:系は、胸腺、脾臓、リンパ節およびリンパ組織、幹細胞、白血球、抗体およびリンホカインを含む。B細胞またはBリンパ球は、適応免疫系の液性免疫におけるリンパ球の一種であり、免疫監視に重要である。T細胞またはTリンパ球は、細胞媒介性免疫において中心的役割を果たすリンパ球の一種である。2種のメジャーなT細胞のサブタイプが存在する:キラーT細胞およびヘルパーT細胞。加えて、免疫応答のモジュレートにおける役割を有するサプレッサーT細胞が存在する。キラーT細胞は、クラスI MHC分子にカップリングした抗原のみを認識する一方、ヘルパーT細胞は、クラスII MHC分子にカップリングした抗原のみを認識する。これら2種の抗原提示機構は、2種のT細胞の異なる役割を反映する。第3のマイナーなサブタイプは、MHC受容体に結合されていないインタクトな抗原を認識するγδT細胞である。対照的に、B細胞抗原特異的受容体は、B細胞表面における抗体分子であり、抗原プロセシングを全く必要とせず、病原体全体を認識する。B細胞の各系列は、異なる抗体を発現するため、B細胞抗原受容体の完全セットは、身体が製造し得るあらゆる抗体を表す。
【0075】
P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)は、細胞遊走を惹起することが公知の、造血細胞によって発現され、接着分子のセレクチンファミリー、P、EおよびLに対する高度に保存されたリガンドである。セレクチンは、細胞接着分子のより広範なファミリーの一部である。PSGL-1は、ファミリーの全3メンバーに結合することができるが、P-セレクチンに最高親和性で結合する。大部分の白血球上に発現される重度にグリコシル化されたシアロムチンであるPSGL-1は、炎症において発現される血管セレクチンにおける白血球ローリングのためのセレクチンリガンドとして、また、リンパ系臓器への静止T細胞ホーミングの促進因子としての二重機能を有する。PSGL-1は、骨髄への造血幹細胞ホーミング、胸腺への前駆体ホーミングおよびケモカインとの相互作用を介したSLOへのT細胞ホーミング等、他の場面において役割を果たすことが判明した。PSGL-1欠乏は、少なくとも3種の異なる仕方で、CD8+T細胞恒常性に影響するようである:1)T細胞のリンパ節進入に干渉し、これにより、リンパ節における恒常性サイトカインおよび他の生存促進性シグナルへのアクセスを制限することによる;2)リンパ節滞留時間を延長し、これにより、その中の生存促進性シグナルへのT細胞の曝露を拡張することによる;ならびに3)サイトカインに対するT細胞感受性を増加させることによる。
【0076】
慢性ウイルス感染は、宿主免疫系の抑制がなされたにもかかわらず両者共に生存した、宿主および病原体の間の入り組んだバランスである恒常性状態の変更を表す。接着分子PSGL-1は、細胞遊走において主に機能すると考えられるが、その発現、シグナル伝達能力および結合特異性は、感染の間の追加的な役割を示唆する。
【0077】
PSGL-1は、複数の免疫阻害性受容体の発現レベルに関連付けられた、T細胞応答の以前には認識されていない負の調節因子である。したがって、PSGL-1は、がんを含む免疫障害および炎症性障害を処置するための有意な橋渡しの潜在能(translational potential)を有する。増強された細胞傷害性、サイトカイン産生およびウイルスクリアランスによって測定される通り、PSGL-1欠乏によって、CD8+T細胞が、マウスモデルにおいてインフルエンザウイルスおよびリンパ球性脈絡髄膜炎(choriomenengitis)(LCMV)ウイルスに対しより大きいエフェクター応答を開始することが可能になることが示された。さらに、エフェクターT細胞およびメモリーT細胞は、生存が改善されるため、上昇した頻度で残存する。LCMVバリアント株、クローン13による慢性感染モデルにおいて、PSGL-1欠乏は、慢性感染を防止する。CD8+T細胞は、エフェクター機能を保持し、PD-1といくつかの他の阻害性受容体の高発現を含む疲弊のホールマークを発生することができない。疲弊の特徴を有するCD8+T細胞は、メラノーマ患者の血液、リンパ節および腫瘍浸潤細胞において見出される。抗PD-L1、抗PD-1または抗CTLA-4による臨床治験は、ある程度の顕著な有効性を示したが、複数の受容体の遮断が、より大きい影響を有するであろうという概念が、メラノーマ患者由来のT細胞の試験によって示唆される。PSGL-1 KO T細胞のより優れた機能は、複数の阻害性受容体がより低レベルであることに関連するため、本発明者らは、PSGL-1の遮断が、メラノーマに対するT細胞免疫応答の改善に必要な特質を有し得ることを提案する。PSGL-1は、その寛容原性機能が、PSGL-1欠乏により失われる、調節性T細胞(Treg)およびDCによっても発現される。よって、PSGL-1の遮断は、エフェクターT細胞の応答を増強し得るのみならず、TregおよびDCの免疫抑制性応答も制限することができる。
【0078】
後述する実施例に記載する通り、PSGL-1が、予想外にT細胞機能の調節因子としての役割を果たすことが確立された。該T細胞機能の調節因子は慢性ウイルスによって利用され、エフェクターT細胞免疫を阻止して、持続性感染を可能にするが、同時に免疫媒介性宿主組織損傷を制限することができる。PSGL-1欠損宿主において、CD8T細胞およびCD4T細胞は、T細胞疲弊のホールマークを獲得することができず、代わりに、頑強な多機能エフェクターへと発達し、それは、高いレベルで維持され、CD4T細胞を機構的に必要とした結果である、早期ウイルスクリアランスを続いて促進した。この有効な抗ウイルス免疫は、CD8T細胞およびCD4T細胞の両方における阻害性受容体の発現低下、ならびに炎症促進性サイトカインおよび免疫病理の全身性レベル増加に関連した。CD4T細胞の非存在下で、PSGL-1欠損マウスにおけるCD8T細胞は、阻害性受容体を下方調節することができず、機能疲弊を呈し、ウイルスクリアランスを支持することができなかった。したがって、CD4細胞のPSGL-1依存性阻害の軽減は、CD8T細胞による有効な抗ウイルス応答の誘導の鍵となる。PSGL-1は、ウイルス制御低下にも寄与し得る、CD8エフェクター細胞およびCD4+エフェクター細胞生存の制限におけるT細胞固有の役割も果たす。
【0079】
Cl13感染後の持続性ウイルス複製は、生存サイトカインである、IL-2、1L-7および1L-21の産生、利用能およびこれに対する応答を消滅させることにより、CD8T細胞疲弊およびアポトーシスを駆動する。重要なことに、PSGL-1欠乏は、IL-7RαおよびBc1-2の発現の増加および持続に関連し、IL-7Rαシグナル伝達増強が、エフェクターT細胞生存を改善するための一機構をもたらすことを示唆する。この結論は、IL-7の治療的投与が、ウイルス特異的CD8T細胞を拡大し、そのエフェクター機能を増加させ、持続的Cl13感染を防止するという知見によって支持される。PSGL-1欠損CD8T細胞における高親和性IL-2受容体、CD25の発現増加、およびCD4T細胞からのIL-2のより優れた利用能も、CD8T細胞およびCD4T細胞の生存および機能の改善の基礎をなすことができる。以前の試験は、IL-2が、Cl13感染マウスに投与されると、ウイルス特異的CD8T細胞を増加させ、ウイルス負荷を低下させることを示した。CD8T細胞による進行性機能喪失は、IL-2および1L-7によって反転され得るTGF-αによって媒介されるアポトーシスにより高親和性クローンの排除をもたらし得るため、本発明者らの知見は、組み合わせて、ウイルス特異的CD8-+T細胞に対する増強されたIL-7シグナルおよび1L-2シグナルが、生存の機構に寄与し得ることを示唆する。しかし、IL-21の血清レベル上昇は、PSGL-1欠損マウスにおけるCD8T細胞応答のピークにおいて検出され、IL-21は、慢性LCMV感染の間、ウイルス特異的CD8T細胞を持続させるため、CD4T細胞および他の細胞型によって産生されるこのγcサイトカインも、ウイルス特異的CD8T細胞生存の機構に寄与し得る。T濾胞性ヘルパー細胞(Tfh)の生成および機能に必要なIL-6のレベル増加も観察され、これにより、慢性LCMVの最終的な制御に寄与する抗体応答改善をもたらした。以下に記載する結果は、WTマウスにおいて、PSGL-1が、数種類の生存促進性サイトカインに対するウイルス特異的CD8T細胞およびCD4+T細胞生存応答を制限することにより、また、CD4 T細胞ヘルプに関係付けられた鍵となるサイトカインの産生を制約することにより、Cl13に対するT細胞応答の減弱における中心的役割を果たすことを示す。
【0080】
慢性ウイルス感染は、数種類の免疫阻害性受容体に関連する機能不全の状態における抗ウイルスT細胞応答を維持する。解析された受容体、PD-1、CD160およびBTLAのそれぞれが、Cl13感染後のPSGL-1欠損CD8エフェクターおよびCD4エフェクターにおいて下方モジュレートされ、抗ウイルス応答が、劇的に改善されたことが際立つ。結果は、PSGL-1が、正常には、過剰なT細胞応答を防止する調節性プログラムの鍵となる部分であることを暗示する。PSGL-1欠乏は、静止T細胞に明らかな効果がなかった上に、固有の炎症応答ももたらさなかった;しかし、その非存在は、Cl13感染後に免疫病理および死亡率増加をもたらす。このことは、持続性抗原に対する過剰なT細胞応答および宿主組織破壊のバランス保持におけるPSGL-1の機能を強調する。機構的には、抗原刺激中のPSGL-1のライゲーションが、疲弊したCD8T細胞の生存低下および残る生存細胞におけるPD-1上方調節をもたらしたことが判明し、PSGL-1シグナル伝達が、この受容体の発現に関連することが示された。
【0081】
CD8T細胞機能不全に通常関連する転写調節の変化は、homesの発現低下およびT-bet増強を含み、これは、急性感染中のメモリー形成とは対照的に慢性感染中のエフェクター分化に有利である。これらの転写因子は、慢性LCMV感染における反対の役割を有し、より多くの疲弊したウイルス特異的CD8T細胞が、より高いレベルのhomesおよび低下したT-betレベルを発現する。T-bet発現上昇は、PD-1発現を抑制するため、PSGL-1欠乏が、homes低下およびより多くのT-betを引き起こしたことが際立ち、転写調節および疲弊マーカーの変化が、PSGL-1発現に関連するという概念をさらに支持する。
【0082】
高PSGL-1発現は、寛容原性DCおよび大部分の抑制性Tregを表す、機能調節に関連付けられてきたDCおよびTregを含む多くの細胞型に見出すことができ、したがって、PSGL-1は、慢性感染の間にT細胞機能不全に間接的に寄与する他の細胞における役割を果たすことができる。しかし、本発明者らの結果は、これらの効果が、PSGL-1欠乏の場面において生じる場合、PSGL-1の調節活性の実現にCD411-T細胞の活性を必要とすることを示す。PSGL-1欠損マウスは、微妙な表現型を有することが報告されており、本発明者らのデータは、感染が、深刻なPSGL-1依存性阻害効果の誘導に必要であることを示す。胸腺へのプレT細胞およびリンパ節へのナイーブCD4T細胞の変更された輸送にもかかわらず、おそらくより大きいターンオーバーのため、メモリー表現型細胞は、若干増加したが、末梢性ナイーブT細胞は、PSGL-1の非存在下で正常に生成されるようである。エフェクター細胞生存におけるPSGL-1欠乏のT細胞固有効果およびCD4T細胞枯渇による増強された抗ウイルス免疫の反転を考慮すると、PSGL-1欠乏の場面における調節のより微妙な側面は、この試験の成果に本質的な寄与を為すとは思われない。
【0083】
抗PD-1/PD-L1および/または抗CTLA-4による近年の臨床治験は、慢性ウイルスまたは腫瘍に対する免疫が、阻害経路に干渉することにより改善され得るという概念を支持する。さらに、阻害性受容体の組合せの標的化が、より大きい有効性をもたらすことができ、複数の阻害性受容体は、PSGL-1によって減少するため、この受容体は、その阻害がいくつかの臨床的な場面におけるT細胞応答を改善し得る新規標的となることができる。
【0084】
一実施形態では、本発明は、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)モジュレーターを、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、T細胞媒介性疾患または障害を処置する方法を提供する。一態様では、PSGL-1モジュレーターは、アゴニストまたはアンタゴニストである。別の態様では、T細胞媒介性疾患または障害は、感染性疾患、がん、自己免疫性障害または炎症性障害である。追加的な態様では、感染性疾患は、ボツリヌス中毒、腺ペスト、カリシウイルス感染(ノロウイルスおよびサポウイルス)、水痘、クラミジア、コレラ、Clostridium difficile感染、感冒(急性ウイルス鼻咽喉炎;急性コリーザ)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、デング熱、ジフテリア、エボラ出血熱、淋病、手足口病(HFMD)、Helicobacter pylori感染、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、単純ヘルペス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染、エプスタイン・バーウイルス感染性単核症(Mono)、インフルエンザ(flu)、レジオネラ症(レジオネラ病)、ハンセン病、ライム病(ライムボレリア症)、マラリア、マールブルグ出血熱(MHF)、麻疹、中東呼吸器症候群(MERS)、髄膜炎、ムンプス、百日咳(Pertussis)(百日咳(Whooping cough))、ペスト、進行性多巣性白質脳症、狂犬病、ライノウイルス感染、ロッキー山紅斑熱(RMSF)、風疹、サルモネラ症、SARS(重症急性呼吸器症候群)、疥癬、敗血症、細菌性赤痢(細菌赤痢)、帯状疱疹(帯状ヘルペス)、天然痘(痘瘡)、梅毒、破傷風(開口障害)、結核、腸チフス熱、渓谷熱、ウイルス性肺炎、ウエストナイル熱または黄熱である。ある特定の態様では、がんは、前立腺、結腸、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟部組織、脾臓、胸部または尿生殖路である。さらなる態様では、自己免疫性障害は、アジソン病、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、クッシング症候群、1型糖尿病、移植片対宿主病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、全身性エリテマトーデス、移植片拒絶または血管炎である。具体的な態様では、PSGL-1モジュレーターは、アゴニストであり、T細胞媒介性疾患または障害は、自己免疫疾患または障害あるいは炎症性疾患または障害である。ある特定の態様では、PSGL-1モジュレーターは、アンタゴニストであり、T細胞媒介性疾患または障害は、がんまたは感染性疾患である。
【0085】
一態様では、PSGL-1モジュレーターは、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である。具体的な態様では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。別の態様では、CD4+依存性CD8+T細胞応答は、増加する。追加的な態様では、ウイルス特異的T細胞は、増加する。別の態様では、TregおよびDC応答は、増加する。さらなる態様では、FoxP3、IL-10、TGF-βおよび/またはMHCクラスIIの発現は、増加する。ある態様では、IFNγ、TNFαおよびCD107のCD8+分泌は、増加する。他の態様では、PD-1、BTLAおよびCD160の発現は、減少または減少する。一態様では、CD25およびT-betの発現は、増加する。別の態様では、ウイルスクリアランスは、増加する。追加的な態様では、方法は、治療剤の投与をさらに含む。さらなる態様では、治療剤は、免疫モジュレーター、化学療法剤、抗ウイルス剤、抗細菌剤または抗真菌剤である。
【0086】
追加的な実施形態では、本発明は、PSGL-1モジュレーターを、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、T細胞応答を誘発する方法を提供する。ある態様では、PSGL-1モジュレーターは、アゴニストまたはアンタゴニストである。別の態様では、T細胞媒介性疾患または障害は、感染性疾患、がん、自己免疫性障害または炎症性障害である。一態様では、PSGL-1モジュレーターは、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である。具体的な態様では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。別の態様では、CD4+依存性CD8+T細胞応答は、増加する。追加的な態様では、ウイルス特異的T細胞は、増加する。別の態様では、TregおよびDC応答は、増加する。さらなる態様では、FoxP3、IL-10、TGF-βおよび/またはMHCクラスIIの発現は、増加する。ある態様では、IFNγ、TNFαおよびCD107のCD8+分泌は、増加する。他の態様では、PD-1、BTLAおよびCD160の発現は、減少または増加する。一態様では、CD25およびT-betの発現は、増加する。
【0087】
さらなる実施形態では、本発明は、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)モジュレーターを、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、T細胞機能を回復させる方法を提供する。ある態様では、PSGL-1モジュレーターは、アゴニストまたはアンタゴニストである。別の態様では、T細胞媒介性疾患または障害は、感染性疾患、がん、自己免疫性障害または炎症性障害である。一態様では、PSGL-1モジュレーターは、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である。具体的な態様では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。別の態様では、CD4+依存性CD8+T細胞応答は、増加する。追加的な態様では、ウイルス特異的T細胞は、増加する。別の態様では、TregおよびDC応答は、増加する。さらなる態様では、FoxP3、IL-10、TGF-βおよび/またはMHCクラスIIの発現は、増加する。ある態様では、IFNγ、TNFαおよびCD107のCD8+分泌は、増加する。他の態様では、PD-1、BTLAおよびCD160の発現は、減少または増加する。一態様では、CD25およびT-betの発現は、増加する。追加的な態様では、方法は、治療剤の投与をさらに含む。さらなる態様では、治療剤は、免疫モジュレーター、化学療法剤、抗ウイルス剤、抗細菌剤または抗真菌剤である。
【0088】
一実施形態では、本発明は、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)モジュレーターと、医薬キャリアとを含む医薬組成物を提供する。一態様では、PSGL-1モジュレーターは、抗体、小分子、タンパク質、融合タンパク質または核酸である。追加的な態様では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。
【0089】
本発明を、そのあらゆる態様において、次の実施例においてさらに説明する。しかし、実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【実施例
【0090】
(実施例1)
PSGL-1発現は、ウイルス特異的CD8+T細胞において増加し、PSGL-1欠損マウスは、Cl13感染の間にウイルス特異的T細胞の蓄積を有する
【0091】
慢性ウイルス感染におけるPSGL-1を試験するために、90-dpiまでにウイルス血症ならびに200日の感染後日数(dpi)までに脳および腎臓における検出可能ウイルスをもたらすLCMV Cl13ウイルスを使用した。GP33-41+LCMVエピトープに特異的なCD8+T細胞におけるPSGL-1レベルを先ず四量体染色によって試験した。PSGL-1は、全T細胞によって発現されるが、そのレベルは、ナイーブCD8+T細胞と比較してウイルス特異的CD8+T細胞において増加した(図1a)。抗ウイルス応答に対するPSGL-1の寄与を試験するために、WTマウスまたはPSGL-1欠損マウスをCl13に感染させ、LCMV GP33-41+エピトープおよびNP396-404+エピトープに特異的なCD8+T細胞を解析した。PSGL-1欠損マウスは、8-dpiにGP33-41+CD8+T細胞の大幅に増加した頻度および数を有した(図1b)。CD8+T細胞蓄積の差は、4-dpi後まで観察されず(図8a~b)、30-dpiにわたって四量体細胞を維持した(図8c~e)。PSGL-1欠損マウスにおけるNP396-404+T細胞の保存が最も印象的であった(図1b、c)が、これは、このような細胞が、WTマウスにおいて30-dpiまでに大部分は欠失されるからである(図8c~e)。ウイルス特異的GP66-76+CD4+T細胞が、PSGL-1欠損マウスにおいて増加したことも判明した(図1d、e)。この差は、5-dpiまでに観察された(図7a)。
【0092】
内皮におけるE-セレクチンおよびP-セレクチンによる、T細胞におけるPSGL-1の関与は、炎症部位への遊走に重要である場合があるため、PSGL-1欠損マウスの血液および脾臓におけるCD8+T細胞蓄積は、末梢部位への損なわれた遊走に起因し得る。脾臓とは異なり、T細胞進入に接着受容体調節を必要とする、代わりの感染部位を表す肺を試験した。脾臓における知見と一致して、PSGL-1欠損マウスの肺におけるウイルス特異的CD8+(図9a、b)およびCD4+T細胞(図9c、d)は、WTマウスよりも大きい程度まで蓄積した。結果は、PSGL-1欠損マウスにおいて、ウイルス特異的T細胞が、WT細胞よりも際立って多い数で保存されることを示す。
(実施例2)
PSGL-1欠損CD8+T細胞は、増強された生存を有する
【0093】
増強された増殖および/または生存は、PSGL-1欠損マウスにおけるウイルス特異的T細胞の蓄積をもたらすことができる。増殖を評価するために、ウイルス特異的CD8+T細胞によるin vivo BrdU取り込みを8-dpiに解析した。BrdUは、およそ50%(-50%)のWT GP33-41+CD8+T細胞を標識したが、僅かおよそ25%(-25%)のPSGL-1欠損GP33-41+CD8+T細胞を標識した(図2a)。同様に、PSGL-1欠損CD4+ウイルス特異的細胞よりも2×多いWT GP66-76CD4+T細胞が、BrdUを取り込んだ(図2b)。分裂は、より多い数のPSGL-1欠損CD8+T細胞をもたらすとは思われなかったため、CD8+エフェクター細胞による生存分子、IL-7Rαおよびその下流シグナル伝達標的Bc1-2の発現レベルを試験した。10-dpiに、PSGL-1欠損マウス由来のGP33-41+T細胞およびNP396-404+T細胞の両方は、WT細胞と比較して、増加したレベルのIL-7Rα(図2c)およびBc1-2(図2d)を呈した。さらに、PSGL-1欠損ウイルス特異的CD8+T細胞におけるIL-7Rαレベルは、増殖期(expansion phase)を通してWT細胞のものよりも高かった(図10a、b)。PSGL-1欠損マウス由来のGP33-41+T細胞およびNP396-404+T細胞におけるCD25レベルも増加した(図2e)一方、IL-21R、CD122およびIL-6Rを含む、T細胞生存を増強し得る他のサイトカインの受容体は、同様であったまたは低下した(図10c~e)。合わせると、これらの知見は、PSGL-1欠損マウスにおけるウイルス特異的CD8+T細胞の蓄積が、生存増強の結果である可能性が最も高かったことを示す。
(実施例3)
PSGL-1欠損マウスにおけるウイルス特異的CD4T細胞およびCD8T細胞は、多機能エフェクターである
【0094】
WTマウスにおける慢性ウイルス感染は、IFN-γ、TNF-αおよびIL-2を産生するならびにこれらのサイトカインのうち2種以上を同時に産生するCD8+T細胞能力の逐次喪失をもたらすため、サイトカイン産生を試験した。WT細胞と比較して、IFNγおよびIFN-γ+TNF-αを共に分泌するPSGL-1欠損GP33-41+T細胞のはるかに高い頻度が見出された(図3a)。NP396-404+T細胞応答も機能的であった(図3b)。細胞当たり、WTにおいてGP33-41+T細胞のおよそ10%がIFN-γを産生したのに対し、PSGL-1欠損マウスにおいておよそ70%が産生した(図3a)。さらに、ウイルス特異的PSGL-1欠損CD8+T細胞は、有意により高いレベルのサイトカインを産生した(図11a、b)。GP33-41+およびNP396-404+PSGL-1欠損CD8+T細胞の両方が、増強されたCD107aレベルを有し、IFN-γ分泌(section)と共に、より優れた細胞傷害性脱顆粒を示した(図3c)が、WTおよびPSGL-1欠損GP33-41+CD8+T細胞は、グランザイムB(Gzrnb)タンパク質のレベルに関して異ならなかった(図3d)。
【0095】
転写プログラムは、急性LCMV感染 対 慢性LCMV感染で異なる。T-betは、急性感染の間のCD8+T細胞エフェクターおよびメモリー分化の調節において重要であるが、Cl13感染の間、疲弊したCD8+T細胞は、低下したT-bet発現を有し、これはPD-1レベルを持続させるように作用する。T-betは、PD-1をコードするPdcdl遺伝子に直接的に結合し、その発現を抑制することができるため、ウイルス特異的CD8+T細胞におけるT-betレベルを試験したところ、WT細胞と比較して、10-dpiのPSGL-1欠損マウスのGP33-44+T細胞における発現増加を見出した(図3e)。さらに、WT Cl13感染マウスにおける死に運命付けられた最終分化CD8+T細胞をマークする高Eomesレベルは、PSGL-1欠損マウスのGP33-41+T細胞において低下した(図3f)。よって、WTマウスにおけるCD8+T細胞は、Cl13感染の間に疲弊を発生するが、PSGL-1欠損マウスにおいて、これは代わりに、多機能エフェクターを生成する。
【0096】
持続性感染中のCD4+T細胞の重要性は、CD4+T細胞枯渇Cl13感染マウスが、ウイルス血症を制御できないことによって強調される。GP66-76+CD4+細胞により、サイトカイン産生に関して改善された機能性も観察された(図3g、図11c~e)。PSGL-1欠損マウス由来のより多くのウイルス特異的CD4+T細胞は、WTマウス由来のものと比較して上昇したIFN-γ、TNF-αおよびIL-2を産生し、これらのウイルス特異的CD4+T細胞は多機能的であり、ダブル/トリプルサイトカイン産生株の数が増加した(図3g)だけではなく、より高いレベルのサイトカインも産生した(図11c~e)。これらの知見は、Cl13感染後に、WTマウスよりも多い数の機能的に優れたウイルス特異的CD4+Tエフェクター細胞が、PSGL-1欠損マウスにおいて発生することを実証する。
(実施例4)
PSGL-1欠損T細胞は、低下した阻害性受容体発現を有する
【0097】
T細胞疲弊は、一部には、PD-1、CD160、Lag-3およびBTLAを含む複数の阻害分子の発現の結果であるため、感染後のWTマウスおよびPSGL-1欠損マウスのウイルス特異的T細胞におけるこれらの受容体を試験した。ウイルス特異的GP66-76+CD4+T細胞におけるPD-1レベルが、PSGL-1欠損マウスにおいて7-dpiまでに減少し始め、8日目にさらに減少したことが判明した(図4a、b)。この時点で、PSGL-1欠損CD4 T細胞におけるBTLAレベルも減少した(図4b)。同様に、WTと比較して、PSGL-1欠損CD8+T細胞は、8-dpiに、より低いレベルのPD-1を発現したが、同様のレベルのCD160およびBTLAを発現した(図12a、b)。PSGL-1欠損ウイルス特異的CD8+T細胞は、9-dpiまでに全3種の受容体の発現の減少を示した(図4c、d)。さらに、PD-1下方調節は、15、30および112-dpiで持続された(図12c~e)。これらの知見は、協調的に調節しなかったが、低下した阻害性受容体レベルは、Cl13感染後のPSGL-1欠損マウスのウイルス特異的CD4+T細胞およびCD8+T細胞における機能性と相関することを示す。
(実施例5)
ウイルス特異的PSGL-1欠損T細胞の蓄積は、細胞固有である
【0098】
PSGL-1欠損マウスにおけるCl13に対する改善された応答のいずれの特色が、T細胞に固有であるかに取り組むために、WTおよびLCMVのGP33-41エピトープに特異的なPSGL-1欠損TCRトランスジェニックCD8+P14細胞を使用し、これらの細胞をWT宿主に移入した。WT細胞およびPSGL-1欠損P14細胞の活性化状態をex vivoで直接的に試験したところ、CD44およびCD62Lの(図13a)ならびにCD25、CD69およびIL-7Rαの(図13b)同様の発現レベルを見出した。続いて、WT細胞およびPSGL-1欠損P14細胞を1:1比でWT宿主に共トランスフェクトし、1日後にCl13にマウスを感染させた。PSGL-1欠損P14細胞とWT P14細胞との増加した比が、5および7-dpiに脾臓(図5a)および肺(図5b)において見出された。この増加は、脾臓におけるより多い数のPSGL-1欠損P14細胞(図5c)ならびに13-dpiの脾臓および肺における頻度増加(図13c)によっても反映された。この蓄積は、8-dpi(データを示さず)および13-dpi(図13d、e)におけるBrdU取り込みによって測定される増殖増加の結果ではなく、これは、PSGL-1欠損T細胞が、WT細胞よりも十分に生存したという概念を支持する。さらに、WT細胞およびPSGL-1欠損P14細胞におけるCFSE希釈は、2-dpiにおいて同一であり、実際にこの時点で、WT細胞は、僅かな蓄積利点を有していた(図5e)。より大きい蓄積にもかかわらず、PSGL-1欠損細胞は、予想通り、Cl13感染によりWT環境において応答する際に、疲弊した表現型(減少したサイトカイン産生および高PD-1)を呈した(データを示さず)。よって、PSGL-1欠損ウイルス特異的CD8+T細胞の蓄積は、細胞固有であったが、その機能回復は、PSGL-1欠損環境における追加的な因子に依存する。次に、WT細胞およびPSGL-1欠損トランスジェニックSmarta CD4+T細胞により、ウイルス特異的CD4+細胞におけるPSGL-1の機能を試験した。WTマウスに共移入されると、平行増加した数により、感染後の脾臓(図5a)および肺(図5b)において5-dpiおよび7-dpiに、WT細胞に対するPSGL-1-欠損細胞の増加した比が観察された(図5d)。細胞固有生存を有するにもかかわらず、CD8+およびCD4+PSGL-1欠損エフェクターの両方が、WT環境において機能的にレスキューされ得ない。
(実施例6)
PSGL-1ライゲーションは、疲弊したCD8T細胞の生存を減少させる
【0099】
ウイルス特異的CD8+T細胞におけるPSGL-1ライゲーションの影響を決定するために、CD8+T細胞が機能的に疲弊されるポイントである9-dpiにWTマウスから脾細胞を単離した。4日間のGP33-41刺激後に、およそ7%の生存可能四量体(tetrarner)+CD8+T細胞が見出された(図5f)。抗PSGL-1抗体の存在下でGP33-41ペプチドにより脾細胞を刺激した場合、四量体CD8+T細胞生存は、IgGまたは抗PSGL-1のみを含有する培地による培養物におけるものと同様のレベルまで、およそ50%減少した(図5f)。PD-1レベルは、ペプチド刺激後に増加し、このようなレベルは、ペプチド刺激中に抗PSGL-1が存在する場合、さらに上昇した(図5g)。これらの結果は、抗原刺激中のPSGL-1ライゲーションが、ウイルス特異的CD8+T細胞の生存を制限し、そのPD-1発現を増強することができることを示す。
(実施例7)
PSGL-1欠損マウスは、慢性LCMV制御を排除するが、免疫病理の増強を示す
【0100】
減少した免疫阻害性受容体発現と共に、改善された機能的CD4+T細胞応答およびCD8+T細胞応答が、WTマウスと比較してPSGL-1欠損マウスにおいて観察されたため、Cl13ウイルスを制御するPSGL1欠損マウスの能力を試験した。30-dpiまでに上昇したウイルス血症を有したWTマウスと比較して、PSGL-1欠損マウスは、15-dpiまでに血液からウイルスを排除したことが判明した(図6a)。しかし、改善された抗ウイルスT細胞応答は、>50%死亡率に関連し、死亡は8-dpiに始まった(図6b)。全身性炎症に取り組むために、炎症促進性サイトカインを試験し、PSGL-1欠損マウスが、IL-6、IL-21、TNF-αおよびIFN-γの劇的に上昇した血清レベルを有したことを観察した(図6c)。さらに、8-dpiの肺浸潤(図6d、図14a)、水腫および炎症(図6d、e)を含む肺の免疫病理は、PSGL-1欠損感染マウスにおいて増加した。病変の進展は、腎臓、肝臓および腸においても明らかであった(図14a、b)。よって、PSGL-1欠損マウスは、WTマウスよりもさらに有効にウイルス複製を制御したが、これは、免疫病理により広範囲の炎症および増加した死亡率をもたらす。したがって、PSGL-1は、過度に過剰増殖性なエフェクター応答を制限するように機能する。
(実施例8)
PSGL-1欠損マウスにおける最適なウイルス特異的CD8T細胞機能は、CD4T細胞を必要とする
【0101】
CD8 T細胞応答の影響におけるCD4+T細胞におけるPSGL-1欠乏の役割と一貫して、5-dpiまでにPSGL-1欠損マウスにおいてGP66-76+CD4+T細胞の増加が観察され、9-dpiまでに蓄積をさらに増加した(図7a)。その寄与を試験するために、抗CD4抗体を投与することにより、PSGL-1欠損マウス由来のCD4+T細胞を枯渇させた。Cl13に対するCD8+T細胞応答を、対照抗体で処置したマウス由来のPSGL-1欠損CD8+T細胞のものまたはWT T細胞のものと比較した。CD4+T細胞枯渇PSGL-1欠損マウスが、WTマウスに見られるレベルまで低下した頻度のGP33-41+T細胞およびNP396-404+CD8+T細胞を有したことが判明した(図7b)。さらに、CD4+T細胞枯渇PSGL-1欠損マウスは、10-dpiに、CD4+T細胞を有したPSGL-1欠損マウスと比較して、低下した数のIFN-γT細胞およびIFN-γ+TNF-α+CD8+T細胞を有した(図7c)。これは、GP33-41+T細胞およびNP396-404+T細胞におけるPD-1レベルの変化とよく似ており、PD-1レベルは高いままであり、WT細胞におけるレベルと同様のレベルであった(図7d)。10-dpiに血清Cl13レベルが低下したPSGL-1欠損マウスとは異なり、CD4+T細胞枯渇マウスにおいて、ウイルスレベルは依然として、WTマウスにおけるものに匹敵していた(図7e)一方、PSGL-1欠損マウスにおける力価は、この時点で減少していた。さらに、10-dpi後のPSGL-1欠損マウスの死亡率は、CD4+T細胞枯渇マウスにおいて防止された(図7e)。これらの結果は、ウイルス特異的PSGL-1欠損CD8+T細胞は、機能疲弊をエスケープするために、CD4+T細胞からのヘルプを必要とすることを示す。よって、その改善された数および機能によって、CD4+T細胞が、PSGL-1欠乏の場面においてCD8+T細胞機能をモジュレートすることが決定された。
(実施例9)
材料&方法
【0102】
マウス。C57BL/6.1マウスおよびSelplg-/-マウスは、Jackson laboratoriesから購入した。特定の病原体を含まない施設においてマウスを飼育および維持し、Sanford-Burnham Medical Research Instituteの従来のBSL-2施設において感染させた。Selplg-/-マウスを、10世代を超えてC57BL/6Jマウスと戻し交配した。PI4およびSmarta TCRトランスジェニックマウスをCharles D.Surh(The Scripps Reseach Institute)から得た。これらのマウスを、Ly5.1(B6.SJL-PtprcPepc/BoyJ)マウスまでおよびThy1.1(B6.PL-Thyl/CyJ)、Selplg-/-マウスまで飼育した。実験に使用したマウスは、少なくとも6週齢であった。実験は、Sanford-Burnham Medical Research institute IACUC規制を遵守しかつ獣医の承認を受けた。
【0103】
感染、増殖および細胞移入。LCMV Cl13株をベビーハムスター腎臓細胞において増殖させ、Veroアフリカミドリザル腎臓細胞において力価決定した。凍結したストックをM Vero細胞培地に希釈し、2×10プラーク形成単位(PFU)のLCMV Cl13をi.v.注射した。増殖を評価するために、感染後8または13日目に、脾臓および肺からリンパ球を単離する16時間前に、マウスに2mgのBrdU(Sigma-Aldrich)をi.p.注射した。養子移入のため、WT P14およびPSGL-1 KO P14細胞を精製し(Stemcell Tech)、1×10個の細胞をWTマウスにi.v.移入し、1日後にLCMV C113を該マウスに感染させた。
【0104】
フローサイトメトリーおよび染色。4℃で20分間または室温で1時間15分間、FACS染色バッファー(2%FBSおよび0.01%アジ化ナトリウム)を補充したPBSにおける四量体染色のために、細胞を表面染色した。Biolegend製の次の抗体を使用した:抗CD8α(クローン53-6.7)、抗PD-1(クローンRMP1-30)、抗CD4(クローンGKI.5)、抗CD90.1(クローンOX-7)、抗CD45.1(クローンA20)、抗IL-21R(クローン4A9)、抗CD126(クローンD7715A7)、抗CD44(クローンIM7)、抗CD62L(クローンMEL-14)。次のクローンは、eBioscience製であった:抗CD127(IL-7RaクローンA7R34)、抗CD160(クローンebiocnx-3)、抗BTLA(クローン6f7)。次の抗体は、BD製であった:抗CD122(クローンTM-(31)、抗BcI-2(クローン3F11)、抗CD107(クローン1D4B)、抗CD162(クローン2PH1)、抗CD25(クローン3C7)、抗CD69(クローンH12F3)、抗Vα2(クローンB20.1)。H-2D-GP33-41、H-2D-NP396-404四量体は、Beckman Coulterから購入した。lA66-77四量体は、NIHコア施設により提供された。細胞をFACS染色バッファーで2回洗浄し、PBS中1%ホルムアルデヒドで15分間固定した。細胞を2回洗浄し、FACS染色バッファーに再懸濁した。細胞内サイトカイン染色のため、細胞をCytofix/Cytopermキット(BD)で固定および透過処理し(perineabilized)、抗GzmB(クローンMHGBO5:invitrogen)、抗TNF-α(クローンMP6-XT22:biolegend)、抗IFN-γ(クローンXIVIG1.2:Biolegend)、抗IL-2(クローンJES6-5H4:eBioscience)で染色した。eBioscience製のキットを使用して、BrdU染色を行った。転写因子検出のため、細胞を、FoxP3染色キット(eBioscience)を使用して固定および透過処理し、抗Tbet(クローン4B10:Biolegend)、抗Eomes(クローンDan11mag:eBioscience)で染色した。染色された細胞をLSRFortessaフローサイトメーター(BD)において解析した。
【0105】
Ex vivoペプチド刺激。感染動物由来の2×10個の脾細胞を96ウェル丸底プレートに播種した。2pg/mLのGP33-41、NP396-404またはGP61-80ペプチド(AnaSpec)、50U/mL IL-2(NCI)および1μg/mlブレフェルジンA(Sigma)により、5時間37℃で細胞をin vitroで刺激した。次に、刺激された細胞を洗浄し、表面染色し、続いて細胞内を染色した。Ex vivo PSGL-1ライゲーション。9日目のLCMV Cl13感染動物由来の2×10個の脾細胞を96ウェル丸底プレートに播種した。in vitroで4日間37℃にて、10mM hepes(Cellgro)1×MEM非必須アミノ酸(Cellgro)、1mMピルビン酸ナトリウム(Cellgro)および10%熱不活化FBS(Hyclone)を補充したRPMI-1640(Cellgro)培地における50U/mL IL-2(NIH)ならびに次の条件で細胞を刺激した:10μg/mLラットIgG(JacksonImmuno Research)、10μg/mL抗PSGL-1(4RAIO BioXCell)、2pg/mLのGP33-41(AnaSpec)または抗PSGL-1(4RA10 BioXCell)+2μg/mLのGP33-41(AnaSpec)。次に、培養された細胞を洗浄し、10分間室温にてヨウ化プロピジウム(1μg/mL)で染色した。細胞を洗浄し、1時間15分間、室温にてFRCS染色バッファー中抗CD8αa、H-2D-GP33-41四量体(Beckman Coulter)、抗PD-1で染色した。染色された細胞をLSRFortessaフローサイトメーター(BD)において解析し、PI+細胞を除外することにより生細胞を決定した。
【0106】
CFSE標識。非感染WTおよびPSGL-1 KO P14 TCRトランスジェニックマウス(Stemcell Tech)の脾臓からCD8T細胞を負に富化した。同数の精製WT細胞およびPSGL-1 KO P14細胞をプールし、37℃にて10分間、5μM CFSE(Life Technologies)で標識し、PBSで洗浄した。WT細胞およびPSGL-1 KO P14細胞を1:1比(それぞれ1×10個の細胞)でi.v.によりWTレシピエントに共移入した。2×10 PFU LCMV Cl 13にWT宿主を感染させ、CFSE希釈をdpi2日目にFACSにより試験した。
【0107】
CD4枯渇。マウスに、-1日目および0日目にCD4枯渇抗体(クローンGM.5、BioXCell)の2回の500μg腹腔内注射を与え、続いてLCMV Cl13に感染させた。処置したマウスの血液および脾臓においてCD4枯渇の有効性を確認した。
【0108】
サイトカインおよび病理。dpi8日目にWTマウスおよびPSGL-1 KOマウスから血清を単離し、マルチプレックス9-ビーズカスタムサイトカインアレイ(Millipore)を使用して、IL-6、IL-21、TNF-αおよびIFN-γのサイトカインレベルを試験した。Luminex IS200機器において試料を解析した。肝臓、腎臓および肺を亜鉛ホルマリン(z-fix Anatech)で固定し、パラフィンに包埋し、切片作製した。組織をH&Eで染色し、Aperio ScanScopeを使用してデジタル的にスキャンした。病理スコアリングは、病理学者による組織試料の盲検評価であった。スコアは0~3.5に及び、ゼロは、病理なしを示し、より大きいスコアは、病理増加を示した。
【0109】
データ解析。FlowJoソフトウェア(TreeStar)を使用して、フローサイトメトリーデータを解析した。GraphPad Prismソフトウェアを使用して、グラフを作製した。
【0110】
統計解析。GraphPad Prismソフトウェアを使用して実験群を解析し、スチューデントt検定を使用して有意性をp<0.05に設定した。Mantel-CoxおよびGehan-Breslow-Wilcoxon検定を使用して、生存曲線を比較した。
(実施例10)
抗ウイルス応答
【0111】
マウスにおける慢性感染を生じさせるLCMV Cl13ウイルスの試験において、PSGL-1欠乏が、感染後に増加した数のウイルス特異的CD8+T細胞をもたらし(図15A、B)、これが少なくともd30まで継続した(図15C)ことが発見され、T細胞持続における持続的な影響が示された。この知見は、Cl13感染後に欠失されるNP396-404特異的T細胞に関して注目すべきである。この効果は、増殖(expansion)の増大よりも寧ろ、改善されたT細胞生存によるものであった(示さず)。PSGL-1は、白血球ホーミングを調節し、LCMV感染は、全身性であるため、末梢部位、この場合は肺へのT細胞リクルートメントを検査して、効果があったかを調べた。しかし、PSGL-1 KOマウスにおいて、WTマウスよりも多い数のウイルス特異的T細胞が存在し(図15D)、これは遊走能力の全般的な損傷を除外した。CD8+T細胞は、Cl13感染後にエフェクター機能を徐々に失い、先ず能力は、IL-2、TNF-α、最後にIFN-γおよびCTL活性を産生する。有効な抗ウイルス応答において、CD8+T細胞は、複数のエフェクター機能を同時に発現する。図16に示す通り、PSGL-1 KOマウス由来のGP33-41特異的T細胞およびNP396-404特異的T細胞の両方は、WTマウス由来のウイルス特異的CD8+T細胞よりも高い頻度のIFN-γ+細胞およびIFN-γ/INF-αダブル+細胞を示し(図16A、B)、これにより、より優れた機能性が示された。IFN-γ産生と組み合わせた細胞傷害性脱顆粒もより大きかった(図16C)。データは、PSGL-1が、CD8+T細胞応答に予測外の減弱効果を有することを実証する。
【0112】
疲弊したCD8+T細胞は、複数の免疫阻害性受容体、特に、PD-1、同様にBTLA、CD160、LAG3、TIM-3および2B4の発現によって特徴付けられる。CD8+T細胞における低下したレベルの阻害性受容体が、GP33-41特異的T細胞およびNP396-404特異的T細胞の両方に関して、改善された機能に関連することが判明した(図17)。より低レベルの2B4およびLAG3も見出された(示さず)。WTマウスおよびPSGL-1 KOマウスにおけるCl13に応答するCD4+T細胞を解析した。CD8+T細胞に関して示す通り、より十分な生存に関連した、KOマウスにおいて大幅に増加した頻度のウイルス特異的CD4+T細胞が存在した(図18A)。さらに、PSGL-1 KOマウス由来のウイルス特異的CD4+T細胞は、WTマウス由来のものよりも多くのサイトカインを産生し、より多くの多機能細胞も同様に存在した(図18B)。より優れた機能は、阻害性受容体、PD-1およびBTLAの発現減少に関連した(図18C)。これらのデータは、PSGL-1が、T細胞における遊走媒介よりも広範な機能を有し、CD8+T細胞応答およびCD4+T細胞応答の両方のリプレッサーとして作用することを示す。改善されたT細胞機能および生存が、抗ウイルス応答に影響したか決定するために、ウイルスクリアランスを測定した。図17Aに示す通り、PSGL-1欠乏は、Cl13ウイルスが排除されることを可能にした。WTマウスと比較して、PSGL-1 KOマウスの血清において、より大きいレベルのサイトカインIL-6、1L-21、TNF-αおよびIFN-γも検出され(図19B)、これにより、改善された応答の読み出し情報がもたらされた。抗ウイルス免疫におけるPSGL-1をさらに試験するために、Armstrong LCMV株による感染後のPD-1発現レベルが、免疫系によって迅速に排除されるかどうかを解析した。GP33-41ウイルス特異的CD8+T細胞(図20B)よりもNP396-404ウイルス特異的CD8+T細胞(図20A)に対するPD-1の早期およびより明白な効果を有する、この設定におけるCD8+T細胞のより優れた持続(図20)が観察された。両方のクローンに対して、PSGL-1 KO T細胞のより低レベルのPD-1が観察された(図20C)。PSGL-1におけるPD-1のレベルを標的とすることができるかどうかに取り組むために、抗PSGL-1遮断抗体(4RA10)または対照IgGを、インフルエンザAウイルス(IAV)またはCl13 LCMVによる感染後にWTマウスに投与した。抗PSGL-1処置群は、増加した頻度のウイルス特異的CD8+T細胞を有し(示さず)、このような細胞は、対照よりも低レベルのPD-1を発現した(図20D)。総合するとまたは知見は、PSGL-1が、T細胞応答の下方モジュレートにおける以前には未知の一般的な役割を有することを示す。
(実施例11)
BRAFV600E PTENメラノーマモデル
【0113】
侵襲性ヒトメラノーマの最良の現在利用できるマウスモデルの1つは、患者のおよそ65%に存在するBRAFV600E変異を、PTENのサイレンシングと組み合わせる誘導性遺伝的モデルであり、組合せは、患者のおよそ20%に見出される。BRAFV600EおよびPTENの欠失のCre/Lox誘導は、タモキシフェンによる皮膚の局在化処置による、メラニン細胞-チロシナーゼ(tyrosinanse)プロモーター、Try:CreERの活性化により、メラニン細胞において一時的に制御される。2週間までに発生する色素性病変および1ヶ月間までの転移性疾患を伴う、100%発現性(penetrance)が存在する。皮膚関連腫瘍内のCD3+T細胞およびCD45+単核細胞が検出された(データを示さず)。フローサイトメトリーによって腫瘍を解析した。CD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方が、容易に検出された(図21A、B、左パネル)。PSGL-1は、CD4+細胞のおよそ1/2において発現され、これらの細胞が、高PD-1を有する(図21A、中央および右パネル)。CD8+T細胞は、排他的にPSGL-Pであり、PD-1の混合型発現を有した(図21B)。さらに、メラノーマ+耳において、増加したPD-1およびPSGL-1発現は、活性化CD44+CD8+T細胞において検出された(図22A)。このような疲弊したPD-1hi T細胞は、機能的PSGL-1結合も有した(図22B)。これらの知見は、腫瘍浸潤CD8+T細胞が、増加したPD-1、PSGL-1およびPSGL-1結合活性を有することを示す。追加的な試験において、タモキシフェンによる皮膚の局在化処置により、メラニン細胞-チロシナーゼプロモーター、Tyr::CreERの活性化によるメラニン細胞におけるBRAFV600E変異およびPTENの欠失のCre/Lox誘導により、マウスにおいてメラノーマを誘導した。処置後1ヶ月目に、本発明者らは、フローサイトメトリーにより、破壊された腫瘍内にCD3+T細胞単核細胞(図23A)ならびにPSGL-1+、PD-1+(ダブルポジティブ)CD4+非Treg(エフェクターT細胞)およびTregを高頻度で観察した(図23B)。比較により、僅かなT細胞は、腫瘍を有するマウスまたは腫瘍を有さないマウスのいずれかの皮膚流入領域LNにおいて両方の分子を発現した。CD3+T細胞は、メラノーマの至る所に分布することが判明し(図23A)、CD4+非TregおよびTreの両方が検出可能であり、PD-1およびPSGL-1を共発現した(図23B)。このようなマウス由来のメラノーマの追加的な試験は、CD8+T細胞およびCD4+T細胞、Treg、MDSCおよびDC、NK細胞、NK T細胞ならびにマクロファージ(macropphage)を含む、免疫細胞をフローサイトメトリーによって容易に区別することができることを示す(図24)。
(実施例12)
PSGL-1発現細胞ならびに原発性および転移性メラノーマ内のその応答を同定すること。
【0114】
免疫細胞は、メラノーマ発生と共に変化する:腫瘍成長の動態が確立され、6週齢での側腹部におけるTyr:CreER;Braf/Ptenlox/loxマウスの4ヒドロキシタモキシフェン(4-HT)処置により浸潤が発生する。免疫組織化学検査(Immunohistochernistry)を使用して、腫瘍が検出されたら、毎週の間隔で腫瘍を評価し、CD44-およびCD8+T細胞ならびに腫瘍周縁部におけるこれらの局在化 対 腫瘍への浸潤に特に着目する。フローサイトメトリー試験のため、原発性メラノーマおよび流入領域LNが比較され、他の皮膚部位、LNおよび肺への転移後に生じた変化を評価する。4-HT処置後の経時的な腫瘍、流入領域リンパ節および非流入領域リンパ節、血液、脾臓ならびに肺における、CD8+、CD4+およびFoxP3+TregにおけるPSGL-1および阻害性受容体発現(PD-1、Tim-3、Lag-1、BTLA、CTLA-4およびCD160)を解析する。B16メラノーマモデルの試験は、メラニン細胞(rnelanocyte)および悪性メラノーマ細胞によって発現されるヒトメラノソームマトリックスの構造的構成成分であるgp10025-33のマウスホモログであるpmel-1のペプチドgp10025-33(KVPRNQDWL)をロードされたMHCクラスI四量体を使用して、腫瘍特異的CD84-T細胞をモニターすることができることを示した。このペプチドは、BRAFV600E PTENメラノーマモデルにおいて誘導されたメラノーマによって発現される。したがって、腫瘍特異的T細胞応答を試験するために、市販のpmel-四量体を使用する。メラノーマ特異的CD8+T細胞の頻度に変化があるかどうかについて、該細胞によるPSGL-1発現レベルに取り組み、該細胞が、阻害性受容体発現における全体的なCD8+T細胞集団からの差を示すかどうかに取り組む。抗CD3刺激後の細胞内染色(ICS)を使用して、サイトカイン産生(IL-2、IFN-γ、TNF-α)によりCD4+T細胞およびCD8+T細胞の機能をモニターし、pmelペプチド再刺激を使用して、腫瘍特異的CD8+T細胞によるサイトカイン産生を評価する。CD8+T細胞について。グランザイムB染色により、また、CD107を測定することによる脱顆粒により、細胞傷害活性を検査する。
【0115】
機能(16)と相関する、FoxP3発現レベルによるTregの免疫抑制活性、ならびにICSにより1L-10およびTGF-β産生を検査する。メラノーマおよび流入領域LNにおけるエフェクターCD4+T細胞およびCD8+T細胞とTregとの比を評価して、皮膚におけるメラノーマの出現後の経時的に生じる変化を決定する。飲料水中BrdU投与を使用することにより、これらの集団の増殖を試験し、4-HT処置後1、2、3または4週目に処置を開始し、メラノーマ、リンパ系組織および血液におけるT細胞を解析する。腫瘍微小環境をさらに調べること。DC(MHC II+、CD11c+)、MDSC(Gr1+、CD11b+)およびM4(F4/80+、CD11b+)の頻度を解析する。これらの集団における機能に取り組むために、ICSを使用して、それぞれ免疫原性DC 対 寛容原性DC(17)およびM1マクロファージ 対 M2マクロファージに関連するIL-12および1L-10の産生を解析するが、なお、IL-10は、MDSCを区別する。
(実施例13)
PSGL-1の標的化が、メラノーマの発生およびその転移を遅延または制御することができるか決定すること。
【0116】
メラノーマにおけるPSGL-1の影響。骨髄キメラアプローチを使用して、PSGL-1欠乏が、メラノーマ内またはリンパ系区画における免疫細胞の機能に変化をもたらすかについて取り組む。放射線照射したTyr:CreER;Braf/PtenloxiloxマウスにPSGL-1 KO骨髄を注射し、8週間後に4-HTで処置することにより、PSGL-1欠乏を造血細胞において作製する。対照にはWT骨髄を与える。腫瘍成長および転移に関する変化を評価し、組織学的検査およびフローサイトメトリーを使用して、これらの試験において定義される最良の読み出し情報および時点に着目して、腫瘍微小環境、リンパ系区画、肺および血液における頻度および機能ならびに免疫細胞における阻害性受容体発現の変化を評価する。阻害性受容体の欠乏または遮断は、炎症の発生に関連するため、組織学的検査により自己免疫/免疫病理の証拠を試験する。
【0117】
図25は、PSGL-1欠損マウスにおける増強された抗腫瘍T細胞応答を示す。WT(黒色バーまたは黒丸)およびPSGL-1 KO(白色バーまたは四角)に、メラノーマ細胞(Yumm 1.5、d14に腫瘍重量および注射後12日目までに体積)の皮下注射を与えた(A)。腫瘍1グラム当たりのエフェクターCD8+T細胞(左)およびCD4+T細胞(右)の絶対数(B)。エフェクターT細胞におけるPD-1発現(C)。CD4+T細胞(D)およびCD8+T細胞(E)によるサイトカイン(Cyokine)産生。代表的サイトカイン染色を(F)に示す。
【0118】
PSGL-1欠乏のT細胞固有効果に取り組むために、2種のアプローチを使用する。第1に、アレル的にマークされたWT細胞を有するキメラとの比較のため、PSGL-1がT細胞において排他的に欠失されるキメラを生成する。これを達成するため、致死的に放射線照射されたTyr:CreER;Braf/Ptenlox/loxマウス(Thy1.2,CD45.2)を、80:20比のTCR WS KO骨髄細胞(CD45.2):PSGL-1 KO骨髄細胞(Thy1.1,CD45.2)により再構成する。8週間後にマウスを4-HTで処置し、腫瘍の発生および転移ならびにT細胞の応答を評価する。第2のアプローチとして、pmel Tgマウスを飼育してPSGL-1 Thy1.1,CD45.2 KOマウスとし、該マウスまたはWT pmel Tgマウス(Thy1.1,CD45.2)から単離されたCD8+T細胞を、最適化された用量でTyr:CreER;Braf/Pten lox/lox(Thy1.2,Ly5.2)に注射する。代替として、本発明者らは、誘導された原発性メラノーマに由来するメラノーマ細胞株(Yumm 1.5)を使用した。WTマウスまたはPSGL-1欠損マウスに、5×10個の用量の腫瘍細胞をs.c.(右側腹部)に植え込んだ。図24において、体積および重量(A)により腫瘍成長をモニターし、エフェクターCD8+T細胞およびCD4+T細胞の頻度を決定した(B)。PSGL-1欠損マウスは、より小さい腫瘍を有し、より多い数のT細胞を含有した。T細胞は、より低レベルのPD-1を発現し(C)、サイトカイン産生によって測定される通り、より機能的であった(D~F)。
【0119】
免疫療法阻害PSGL-1機能。アゴニストmAb(4RA10)または組換えPSGL-1 Fc融合タンパク質によるPSGL-1の遮断が、T細胞機能不全の反転によりメラノーマの成長および/または転移を制御することができるかについて決定する。原発性メラノーマの処置としての、また、転移が起こった後の処置としての、これらの試薬を検査する。原発性腫瘍について、腫瘍へのmAbの局所注射を、全身性処置と比較する。局所処置のため、原発性腫瘍検出のときに、100μgの出発用量の抗PSGL-1または対照IgGを使用する。全身性処置のため、300μg/mAb/用量をi.p.注射し、処置は一日おきに5日間行い、動物の腫瘍成長および皮膚転移を追跡する。1ヶ月目に、pmel-四量体+CD8+T細胞、阻害性受容体の表面発現、ならびに血液、脾臓、LNおよび示されている通り腫瘍におけるその応答に関して動物を試験する。原発性腫瘍の検出後1、2、3または4週目に、全身性mAb処置の開始の効果を試験して、抗PSGL-1が、進行する疾患に関して抗腫瘍応答に影響することができるかどうかに取り組む。PSGL-1を遮断するための第2の戦略として、PSGL-1 Fcを投与し、対照としてヒトIgを投与する。ELISAによって3~4日毎に血清中mAbおよび融合タンパク質レベルを評価して、半減期(1/2 lives)を決定し、これらの試薬の減衰によりT細胞表現型および/または応答に変化があるかどうかに取り組む。治療の開始後に、毎週の間隔で血清中のIL-6、IL-21、TNF-αおよびIFN-γのレベルを測定して、サイトカインレベルの変化が生じるか、また、改善された抗T細胞腫瘍活性または腫瘍消散との関連があるかどうかを決定する。
【0120】
上述の実施例を参照しつつ本発明について記載してきたが、本発明の精神および範囲内に改変形態および変形形態が包含されることが理解されよう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ制限される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A-11E】
図12
図13
図14
図15
図16
図17A-17B】
図18
図19
図20
図21A-21B】
図22
図23
図24
図25