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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】油中水型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/894 20060101AFI20230309BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230309BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/06
A61K8/44
A61K8/34
A61Q19/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018214838
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020083763
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 紗弥香
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078028(JP,A)
【文献】特開2016-141625(JP,A)
【文献】特開2017-081846(JP,A)
【文献】特開2017-218440(JP,A)
【文献】特開2002-338448(JP,A)
【文献】特開2002-201355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0174050(US,A1)
【文献】国際公開第2018/225768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
美白剤、多価アルコール、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーン、及び下記一般式(3)で表される重量平均分子量が35000~150000の直鎖シリコーンを組成物全体に対して0.1~2質量%含有する、油中水型乳化組成物。
【化1】

(一般式(1)中、Rは、独立して水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又はフェニル基を表す。Rは、独立して下記一般式(2)で表される基を表す。Rは、独立して水素原子、炭素数1~3のアルキル基、フェニル基、又は下記一般式(2)で表される基を表す。nは100~400の整数を、mは50以下の整数をそれぞれ表す。)
【化2】

(一般式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。aは1~5の整数を、bは10~30の整数を、cは10~30の整数をそれぞれ表す。)
【化3】

(一般式(3)中、Rは独立して水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、及びフェニル基から選択される基を表す。pは前記重量平均分子量を満たす整数を表す。)
【請求項2】
前記美白剤が、トラネキサム酸類、及びアスコルビン酸類からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン変性シリコーンの含有量が、組成物全体に対して1.5~5質量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレン変性シリコーンと前記直鎖シリコーンとの含有量の質量比が、1:0.05~1:0.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
内相比が70~80質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記多価アルコールが、グリセリン、ジグリセリン、及び糖アルコールから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
皮膚外用剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
美白用化粧料である、請求項7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に好適な、油中水型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け、シミ、そばかす、肝斑、薬剤による皮膚の黒化症等の色素沈着が関連する皮膚症状は、顔の印象に大きく影響する。そのため、皮膚の色素沈着の予防や改善に対する関心はとても高く、美白剤や美白用化粧料の需要は近年大きいものとなっている。
従来さまざまな美白剤が提案され、化粧料等の皮膚外用剤に配合されている。代表的なものとして、アスコルビン酸やその誘導体、トラネキサム酸、アルブチン、ハイドロキノン等が挙げられる。これらの美白剤を配合した組成物は、塗布後の肌にべたつきや乾燥を感じるなど使用感に不満が生じる問題点があった。
【0003】
かかる問題に対してはこれまでに、美白剤を油中水型乳化剤型にしてべたつきを抑えたり(特許文献1、2等)、エタノール含有量を多くしてさっぱりした使用感を付与したりする(特許文献3)ことが提案されている。
【0004】
また、油中水型乳化化粧料において、特定の二種のシリコーンを用いて高内水相とし、水のあふれ出し感を演出することが開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-205372号公報
【文献】特開2015-211375号公報
【文献】特許4732638号
【文献】特許3782914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、トラネキサム酸類やアスコルビン酸等の美白成分に由来するべたつきを感じさせず、また水があふれ出すようなみずみずしい使用感を与える化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねたところ、ポリオキシアルキレン変性シリコーンと、高重合直鎖とをシリコーンを組み合わせることにより、使用感に優れる油中水型乳化組成物を形成できることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]美白剤、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーン、及び下記一般式(3)で表される直鎖シリコーンを含有する、油中水型乳化組成物。
【0009】
【化1】
(一般式(1)中、Rは、独立して水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又はフェニル基を表す。Rは、独立して下記一般式(2)で表される基を表す。Rは、独立して水素原子、炭素数1~3のアルキル基、フェニル基、又は下記一般式(2)で表される基を表す。nは100~400の整数を、mは50以下の整数をそれぞれ表す。)
【0010】
【化2】
(一般式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。aは1~5の整数を、bは10~30の整数を、cは10~30の整数をそれぞれ表す。)
【0011】
【化3】
(一般式(3)中、Rは独立して水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、及びフェニル基から選択される基を表す。pは500~2000の整数を表す。)
[2]前記美白剤が、トラネキサム酸類、及びアスコルビン酸類からなる群から選択される、[1]に記載の組成物。
[3]前記ポリオキシアルキレン変性シリコーンの含有量が、組成物全体に対して1.5~5質量%である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]前記直鎖シリコーンの含有量が、組成物全体に対して0.1~2質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]前記ポリオキシアルキレン変性シリコーンと前記直鎖シリコーンとの含有量の質量比が、1:0.05~1:0.5である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]内相比が70~80質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]さらに、グリセリン、ジグリセリン、及び糖アルコールから選択される多価アルコールを含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]皮膚外用剤である、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]美白用化粧料である、[8]に記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、トラネキサム酸類やアスコルビン酸等の美白成分に由来するべたつきを感じさせず、また水があふれ出すようなみずみずしい使用感を与える油中水型乳化組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の油中水型乳化組成物は、美白剤、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーン、及び一般式(3)で表される直鎖シリコーンを必須に含有する。
【0014】
本発明における美白剤は、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、トラネキサム酸、アルブチン、エラグ酸、コウジ酸、リノール酸、ニコチン酸アミド、5,5'-ジプロピルビフェニル-2,2'-ジオール、5'-アデニル酸二ナトリウム、トラネキサム酸セチル、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、ハイドロキノン、パントテン酸等が挙げられる。
これらのうち、通常の剤型ではべたつきを感じやすいトラネキサム酸類、及びアスコルビン酸類が、本発明の組成物に含有させる美白剤として好適である。
【0015】
本発明において「トラネキサム酸類」とは、トラネキサム酸もしくはその誘導体またはそれらの塩をいう。
トラネキサム酸は、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸を指す。
トラネキサム酸の誘導体としては、例えば、エステル体やアミド体等が挙げられ、トラネキサム酸のエステルとしてはトラネキサム酸ラウリルエステル、トラネキサム酸ヘキサデシルエステル、トラネキサム酸セチルエステル等を、トラネキサム酸のアミド体としてはトラネキサム酸メチルアミド等を挙げられる。
【0016】
また、トラネキサム酸またはその誘導体の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;亜鉛塩;鉄塩;アンモニウム塩;アルギニン、ヒスチジン、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンとの塩等が挙げられる。
【0017】
本発明の組成物におけるトラネキサム酸類の含有量は、特に限定されないが、組成物全体に対して0.1~5.0質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。かかる範囲で含有させることにより、べたつきで使用感が損なわれにくくなり、またトラネキサム酸類が発揮する抗炎症(肌荒れ抑制)効果や美白(色素沈着抑制)効果を発揮させやすくなる。
【0018】
本発明において「アスコルビン酸類」とは、アスコルビン酸もしくはその誘導体またはそれらの塩をいう。
アスコルビン酸の誘導体としては、例えば、エステル体、アミド体、配糖体等が挙げられ、より具体的にはスコルビン酸2-グルコシド、リン酸アスコルビル、エチルアスコルビン酸、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル等を挙げられる。
【0019】
また、アスコルビン酸またはその誘導体の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;亜鉛塩;鉄塩;アンモニウム塩;アルギニン、ヒスチジン、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンとの塩等が挙げられる。
【0020】
本発明の組成物におけるアスコルビン酸類の含有量は、特に限定されないが、組成物全体に対して0.1~5.0質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。かかる範囲で含有させることにより、べたつきで使用感が損なわれにくくなり、またアスコルビン酸類が発揮するチロシナーゼ阻害効果やコラーゲン合成促進効果を発揮させやすくなる。
【0021】
本発明の組成物は、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンを含有する。
【0022】
【化1】
【0023】
一般式(1)において、Rは、独立して水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又はフェニル基を表し、好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。Rは、独立して下記一般式(2)で表される基を表す。Rは、独立して水素原子、炭素数1~3のアルキル基、フェニル基、又は下記一般式(2)で表される基を表し、好ましくは炭素数1~3のアルキル基、又は下記一般式(2)で表される基であり、より好ましくはメチル基である。nは100~400の整数を、mは50以下の整数をそれぞれ表す。
【0024】
【化2】
一般式(2)において、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。aは1~5の整数を、bは10~30の整数を、cは10~30の整数をそれぞれ表す。
【0025】
本発明において、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンは、油中水型エマルションを形成するための界面活性剤として働く。この変性シリコーンを界面活性剤として用いることにより、水相の比率が高い、すなわち高内相を安定に形成することができる。本発明の組成物は高内相であることにより、肌に塗布した際にみずみずしい感触を与え、含有する美白剤等に由来するべたつき感をマスクすることができる。また、良好な保湿感を与えることもできる。
【0026】
本発明における一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンは、HLBが低いものが好ましく、具体的にはHLB1~4のものが高内相の油中水型エマルションの形成しやすさの観点から好ましい。なお、ここでHLB(Hydrophilic-Lypophilic Balance)は、グリフィンの式より算出した値をいう。
【0027】
本発明における一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンの具体例としては、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-30/10ジメチコンが好ましく挙げられるが、これらに限定さ
れない。
本発明における一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンとしては、市販のものを使用することができ、例えばBY11-030(東レ・ダウコーニング社製)、ES-5226(東レ・ダウコーニング社製)、FB-2540(東レ・ダウコーニング社製)等を挙げられる。
【0028】
本発明における一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンの含有量は、組成物全体に対して好ましくは1.5~5質量%であり、より好ましくは2~4質量%であり、さらに好ましくは2.5~3.5質量%である。含有量が1.5質量%より小さいと油中水型エマルションを形成し難くなる場合があり、また含有量が5質量%より大きいと組成物を塗布したときにべたつきを生じる場合がある。
【0029】
本発明の組成物は、一般式(3)で表される直鎖シリコーンを含有する。
【0030】
【化3】
【0031】
一般式(3)において、Rは、独立して水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、及びフェニル基から選択される基を表し、水素原子及び好ましくは炭素数1~3のアルキル基から選択される基を表し、より好ましくはメチル基である。より好ましくは。pは500~2000の整数を表す。
【0032】
本発明において、一般式(3)で表される直鎖シリコーンは、重量平均分子量が通常35000~150000の高重合(高分子量)のものである。
かかる直鎖シリコーンを用いることにより、組成物を肌に塗布したときに瞬時に転相し、内水相がはじけるように崩壊する。これにより、水があふれ出すような感じ(スプラッシュ感)のある使用感が付与され、含有する美白剤等に由来するべたつき感がよりマスクされる。
【0033】
本発明における一般式(3)で表される直鎖シリコーンの具体例としては、ジメチコン等が好ましく挙げられるが、これらに限定されない。
本発明における一般式(3)で表される直鎖シリコーンとしては、市販のものを使用することができ、例えばKF96H50000(信越シリコーン社製)、BELSIL DM 60000(旭化成ワッカーシリコーン株式会社社製)、SH200-60,000cs(東レ・ダウコーニング社製)等を挙げられる。
【0034】
本発明における一般式(3)で表される直鎖シリコーンの含有量は、組成物全体に対して好ましくは0.1~2質量%であり、より好ましくは0.15~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.5~1.0質量%である。含有量が0.1質量%より小さいと内水相の崩壊感を十分に演出することができない場合があり、また含有量が5質量%より大きいと組成物を塗布したときにべたつきを生じる場合がある。
【0035】
本発明において、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン変性シリコーンと一般式(3)で表される直鎖シリコーンとの含有量の質量比は、好ましくは1:0.05~1:0.5であり、より好ましくは1:0.15~1:0.3であり、さらに好ましくは1:0.2~1:0.27である。
かかる範囲にあることにより、安定な高内水相の形成と、使用時(塗布時)の水相のはじけるような崩壊感を両立しやすくなり、優れた使用感を実現することができる。
【0036】
本発明の組成物は、よりべたつきを抑制するために、さらに多価アルコールを含有することが好ましい。かかる多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、糖アルコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等を挙げられるが、これらのうちグリセリン、ジグリセリン、及び糖アルコールが特に好ましく挙げられる。糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール等を挙げられる。
【0037】
本発明における多価アルコールの含有量は、組成物全体に対して好ましくは5~40質量%であり、より好ましくは8~30質量%であり、さらに好ましくは10~20質量%である。かかる範囲において、組成物のべたつきをより抑制しやすくなる。
【0038】
本発明の組成物は、油中水(W/O)型乳化構造を有する。すなわち、水相(W相)が油相(O相)に内包される構造を有する。
本発明において水相は通常、水及び水性成分により構成される。ここで水性成分は、25~65℃の水に溶解する成分であればよい。
本発明において油相は通常、油性成分により構成される。ここで油性成分は、通常は油剤であるが、これに限らず、25~65℃の水に懸濁して1時間静置した後に水と相分離する成分も含んでよい。
本発明の組成物における内相比(水相の質量比率)は、好ましくは70~80質量%であり、より好ましくは75~78質量%である。このように高内相であることにより、使用時に内水相のはじけるような崩壊感(スプラッシュ感)と、安定な乳化構造とを両立しやすくなる。
【0039】
本発明の油中水型乳化組成物は、肌等に塗布したときに水があふれ出すような感じを演出し、べたつきを感じることなく、みずみずしい感触を与え、さらに塗布後の肌に優れた保湿感を与えることができる。そのため、皮膚外用剤の態様とすることが好ましく、化粧料(医薬部外品を含む)の態様とすることがより好ましく、美白用化粧料とすることがさらに好ましい。
【0040】
本発明の化粧料は、前述した成分以外に、通常の化粧料で使用される成分を本発明の効果を損なわない限りにおいて任意に含有することができる。
かかる成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミ
リスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;
【0041】
脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;
【0042】
表面を処理されていてもよい、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていてもよい、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていてもよい、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていてもよい赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;
【0043】
パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;
【0044】
エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビ
タミンB塩酸塩、ビタミンBトリパルミテート、ビタミンBジオクタノエート、ビタミンB又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等の消炎剤;レチノール、アスコルビン酸、トコフェロール、又はファルネシル酢酸エステル等のシワ改善剤;各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等);ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等の賦活剤;ノニル酸ワレニルアミド、カプサイシン、ジンゲロン、タンニン酸等の血行促進剤;硫黄、チアントール等の抗脂漏剤;トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等の抗炎症剤;コラーゲン、ヒアルロン酸等の水溶性高分子;などが挙げられる。
【0045】
その他、本発明の化粧料には、各種有効成分、保湿剤、pH調整剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤・酸化防止助剤等も任意に配合することができる。
【0046】
美白成分以外の有効成分としては、シワ改善成分、抗炎症成分、動植物由来の抽出物等が挙げられる。
シワ改善成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸ナトリウム、ニコチン酸アミド、ビタミンA又はその誘導体(レチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等)、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステルが挙げられる。
【0047】
動植物由来の抽出物としては、一般的に医薬品、化粧料、食品等に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、インドキノエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エイジツエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オタネニンジンエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オレンジエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クジンエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、ゲンノショウコエキス、紅茶エキス、ゴボウエキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コケモモエキス、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、タンポポエキス、茶エキス、チョウジエキス、チンピエキス、甜茶エキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエ
キス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、ブドウ種子エキス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マヨナラエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モズクエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、緑茶エキス、リンゴエキス、ルイボス茶エキス、レイシエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、ワレモコウエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
【0048】
抗炎症成分としては、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、パントテニルアルコール等が挙げられ、好ましくは、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩である。
【0049】
保湿剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
pH調製剤としては、例えば、乳酸-乳酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。
防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール等が挙げられる。
抗菌剤としては、1,3-ブチレングリコールやパラオキシ安息香酸エステルなどの合成系の他、カプリリルグリコール、カプリル酸グリセリル、エチルヘキシルグリセリン、カプリルヒドロキサム酸等の天然抗菌物質も好ましく挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
<製造例>
下記の表1に示す処方にしたがい、実施例及び比較例の乳化型組成物をそれぞれ製造した。すなわち、成分A及びBをそれぞれ、75℃に加熱して均一に混合した。75℃に保ったまま、成分Aに成分Bを徐々に添加し、撹拌して乳化し、その後室温まで冷却してW/O型乳化組成物を得た。
【0052】
<試験例>
各乳化組成物について、以下の項目を評価した。
(1)べたつき:熟練の評価者が適量を腕に塗布したときのべたつき感を評価した。
○:べたつかない
△:ふつう
×:べたつく
【0053】
(2)スプラッシュ感(水があふれ出すような感じ):熟練の評価者が適量を腕に塗布したときのスプラッシュ感を評価した。
○:良好に感じる
△:やや感じる
×:感じない
【0054】
(3)保湿感:熟練の評価者が適量を腕に塗布した後1時間後の保湿感を評価した。
○:良好に感じる
△:やや感じる
×:乾燥を感じる
【0055】
(4)乳化安定性
40℃条件下で1ヵ月間又は3ヶ月間保存後の乳化粒子の状態を、熟練の評価者が目視で観察し、以下の基準で判定した。
○:乳化構造に変化なし
△:乳化粒子の合一がみられる
×:乳化構造が崩れている
【0056】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により、トラネキサム酸類やアスコルビン酸等の美白成分に由来するべたつきを感じさせず、また水があふれ出すようなみずみずしい使用感を与える油中水型乳化組成物が提供され、産業上非常に有用である。