IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタT&S建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-せん断パネル 図1
  • 特許-せん断パネル 図2
  • 特許-せん断パネル 図3
  • 特許-せん断パネル 図4
  • 特許-せん断パネル 図5
  • 特許-せん断パネル 図6
  • 特許-せん断パネル 図7
  • 特許-せん断パネル 図8
  • 特許-せん断パネル 図9
  • 特許-せん断パネル 図10
  • 特許-せん断パネル 図11
  • 特許-せん断パネル 図12
  • 特許-せん断パネル 図13
  • 特許-せん断パネル 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】せん断パネル
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20230309BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
E04H9/02 321B
E04H9/02 311
F16F7/00 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019037214
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020139358
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241474
【氏名又は名称】トヨタT&S建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇晃
(72)【発明者】
【氏名】孫 玉平
(72)【発明者】
【氏名】竹内 崇
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-202455(JP,A)
【文献】特開2000-096867(JP,A)
【文献】特開2005-213964(JP,A)
【文献】特開平09-195568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 2/56
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製の板状部材を有し、該板状部材は、本体部と、該本体部における所定方向の両端部に形成した取付け部で、一体に形成され、
前記本体部の前記取付け部間における前記所定方向と直交する方向の両側部に、その外側が開口する切欠きを形成し、
前記本体部を、第1抑え部材と第2抑え部材で挟持し、
前記切欠き部分において、外側連結部材により第1抑え部材と第2抑え部材を連結し、
前記本体部に少なくとも1つの貫通穴を形成し、
該貫通穴内に内側連結部材を挿通し、この内側連結部材により第1抑え部材と第2抑え部材を連結し、
前記第1抑え部材と第2抑え部材により、前記板状部材が、座屈することを抑制するようにしたことを特徴とするせん断パネル。
【請求項2】
前記第1抑え部材と第2抑え部材は、撓み変形できるとともに復元力を有する部材で構成されていることを特徴とする請求項1記載のせん断パネル。
【請求項3】
前記貫通穴を、少なくとも板状部材の中心部に形成し、
前記内側連結部材は、前記貫通穴に対して、遊嵌して設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のせん断パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、せん断パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の筋交いとして軸方向に伸縮するダンパーを設け、このダンパーが、その軸方向に伸縮した際に、地震エネルギーを吸収して制震するようにすることが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のダンパーは、構造が複雑で、コストが高くなるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上記従来技術よりも安価で制震機能を有するせん断パネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、鋼製の板状部材を有し、該板状部材は、本体部と、該本体部における所定方向の両端部に形成した取付け部で、一体に形成され、
前記本体部の前記取付け部間における前記所定方向と直交する方向の両側部に、その外側が開口する切欠きを形成し、
前記本体部を、第1抑え部材と第2抑え部材で挟持し、
前記切欠き部分において、外側連結部材により第1抑え部材と第2抑え部材を連結し、
前記本体部に少なくとも1つの貫通穴を形成し、
該貫通穴内に内側連結部材を挿通し、この内側連結部材により第1抑え部材と第2抑え部材を連結し、
前記第1抑え部材と第2抑え部材により、前記板状部材が、座屈することを抑制するようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第1抑え部材と第2抑え部材は、撓み変形できるとともに復元力を有する部材で構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記貫通穴を、少なくとも板状部材の中心部に形成し、
前記内側連結部材は、前記貫通穴に対して、遊嵌して設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のせん断パネルは、本体部を有し、その所定方向両端部に設けた取付け部間における所定方向と直交する方向の両側部に、その外側が開口する切欠きを形成し、本体部を、第1抑え部材と第2抑え部材で挟持し、この切欠き部分において、外側連結部材により第1抑え部材と第2抑え部材を連結し、本体部に少なくとも1つの貫通穴を形成し、貫通穴内に内側連結部材を挿通し、この内側連結部材により第1抑え部材と第2抑え部材を連結し、両抑え部材により、板状部材が、座屈することを抑制するようにしたことにより、上記従来技術のダンパーに比べて、安価で簡単な構造で構成することができ、取付け部に、地震等により力が加わった際に、本体部が変形することにより、そのエネルギーを吸収して制震機能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係るせん断パネルの正面図。
図2図1の分解斜視図。
図3】本発明の実施例1に係るせん断パネルを建物に取付けた状態の図。
図4図3の要部拡大図。
図5図4のA-A線断面図。
図6図4の側面図。
図7】本発明の実施例1に用いる板状部材の正面図。
図8】本発明の実施例1に用いる抑え部材の正面図。
図9】本発明の実施例1に係るせん断パネルの建物への取付け状態を示す他例の図。
図10】本発明の実施例1に係るせん断パネルの建物への取付け状態を示す他例の図。
図11】本発明の実施例1に係るせん断パネルの建物への取付け状態を示す他例の図。
図12】本発明の実施例1に係るせん断パネルの建物への取付け状態を示す他例の図。
図13】本発明の実施例1に係るせん断パネルの他例の正面図。
図14】本発明の実施例2に係るせん断パネルの一例の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係るせん断パネル1の正面図を示す。
【0011】
このせん断パネル1は、地震や風などにより建物などに横揺れなどのエネルギーが加わった際に、そのエネルギーの少なくとも一部を吸収するように作用するものであり、せん断パネル1は、建物などの建築物において、それに加えられた横揺れなどのエネルギーを吸収できるように作用する。
【0012】
図3に示すように、隣接する柱10,10の上端部と下端部に設けた梁11,12を設けるとともに、柱10,10間に横材13を架設した建物において、柱10,10間でかつ、横材13と梁12間にせん断パネル1を設けることにより、梁12に横方向(軸方向)への外力が働いて、柱10,10と梁11,12が平行四辺形に変形する際にその変形に追従するとともに、その加わった力のエネルギーを吸収し、建物全体に加わるエネルギーを低減するように作用するものである。なお、柱10,10と梁11,12は、木や鉄骨など任意の部材で構成することができ、本実施例では鉄骨で構成し、取付金具14を介して固設した。
【0013】
せん断パネル1は、図2に示すように、板状部材2と、第1抑え部材3と、第2抑え部材4で構成されている。
【0014】
板状部材2は、図1図7に示すように、鋼製の板材で構成されているとともに、略方形状に形成された本体部5を有し、本体部5は、図7に示すように、その所定方向(X-X方向)における両端部5a,5aは、夫々、外側方向に向かうほど、所定方向(X-X方向)と直交する方向(Y-Y方向)の幅が長くなるように形成されている。板状部材2のX-X方向、Y-Y方向の長さや厚みは、せん断パネル1を用いる建物等に応じて任意に設定する。
【0015】
本体部5の所定方向(X-X方向)の両端部5a,5aには、取付け部6,7が固設され、取付け部6,7は、所定方向と直交する方向(Y-Y方向)に長手方向が位置する長方形状に形成され、本体部5と取付け部6,7は、鋼製の板材により一体に形成されている。
【0016】
取付け部6,7には、夫々取付け穴6a,7aが形成され、この取付け穴6a,7aと高力ボルト8等を用いて、取付け部6,7を、横材13と梁12に対して固定する。この取付け方法は任意に設定することができる。
【0017】
また、取付け部6,7の長手方向の長さL1は、本体部5における所定方向と直交する方向(Y-Y方向)の幅L2より長く形成され、本体部5における所定方向と直交する方向(Y-Y方向)の両側部には、その外側方向と本体部5の板厚方向の両側が開口する切欠き9,9が形成されている。
【0018】
第1抑え部材3と第2抑え部材4は、夫々、方形状の板材で構成されている。また、第1抑え部材3と第2抑え部材4は、撓み変形できるとともに復元力を有し、かつ、第1抑え部材3と第2抑え部材4で前記本体部5を挟持することにより、取付け部6,7に対してその軸方向(Y-Y方向)に力が作用した際に、本体部5がその面方向に座屈することを抑制できる強度を有する部材と厚みで構成されている。例えば、第1抑え部材3と第2抑え部材4を、樹脂、金属、木材、コンクリートなどの材料を用いて形成することができ、本実施例ではポリプロピレンを用いて形成し、その厚みは、せん断パネル1に要求される強度等に応じて設定する。
【0019】
板状部材2の本体部5には、その中心部に、その表裏方向に貫通する貫通穴21が形成されている。
【0020】
第1抑え部材3と第2抑え部材4には、図1図2図8に示すように、その4隅に夫々、その表裏方向に貫通する取付け穴22が形成されているとともに、その中心部には、その表裏方向を貫通する取付け穴23が形成されている。夫々の取付け穴22は、図1に示すように、本体部5の切欠き9,9部分に位置するように形成されている。
【0021】
本体部5を、第1抑え部材3と第2抑え部材4により挟持し、本体部5の貫通穴21と、第1抑え部材3と第2抑え部材4の取付け穴23,23に挿通し、このボルト25にナット26を螺合することにより、本体部5、第1抑え部材3、第2抑え部材4を連結する。ボルト25とナット26により内側連結部材27を構成している。
【0022】
貫通穴21の内径は、ボルト25の外径より大きく形成され、ボルト25は貫通穴21に対して遊嵌している。
【0023】
また、ボルト30を、第1抑え部材3の夫々の取付け穴22に挿通するとともに、対応する第2抑え部材4の夫々の取付け穴22に挿通し、このボルト30にナット31を螺合することにより、第1抑え部材3、第2抑え部材4を連結する。ボルト30とナット31により外側連結部材32を構成している。外側連結部材32は、本体部5の切欠き9,9部分に位置し、本体部5の外側に位置するようになっている。
【0024】
せん断パネル1は上記のように構成されていることにより、地震等により、取付け部6,7に、その軸方向(Y-Y方向)等への力が加わった際に、本体部5が変形することにより、そのエネルギーを吸収することができる。
【0025】
また、ボルト25は貫通穴21に対して遊嵌していることにより、第1抑え部材3と第2抑え部材4は、本体部5に対して、ボルト25を中心にして相対的に回動できるようになっている。これにより、地震等により、取付け部6,7にその軸方向(Y-Y方向)等に力が加わった際にも、その力は、第1抑え部材3と第2抑え部材4には直接作用せず、地震時等において、第1抑え部材3と第2抑え部材4が破損する恐れを減らすことができる。
【0026】
また、第1抑え部材3と第2抑え部材4は、撓み変形できるとともに復元力を有し、この第1抑え部材3と第2抑え部材4により本体部5を挟持したことにより、取付け部6,7に対してその軸方向等に力が作用し、本体部5が面方向に変形した場合に、第1抑え部材3と第2抑え部材4によりその変形量が低減されることで、本体部5が面方向に座屈することを抑制し、せん断パネル1の耐久力が増し、地震等のエネルギーの吸収量を増すことができる。
【0027】
また、第1抑え部材3と第2抑え部材4により、本体部5に対して、これを元の形状に戻すように力が作用し、地震等のエネルギーの吸収量を増すことができるとともに、地震等により、建物が変形した際に、元の形状に戻す力として作用する。
【0028】
また、本体部5全体を、第1抑え部材3と第2抑え部材4により挟持するとともに、本体部5の外側に位置する切欠き9,9部分において、外側連結部材32により第1抑え部材3と第2抑え部材4を連結したことにより、本体部5の面全体において、その面方向の変形を抑制し、せん断パネル1の耐久力が増し、地震等のエネルギーの吸収量を増すことができる。
【0029】
また、本体部5の中心部において、本体部5、第1抑え部材3、第2抑え部材4を、内側連結部材27により相互に連結したことにより、本体部5において最も変形する恐れのある中心部での面方向の変形が、第1抑え部材3と第2抑え部材4により抑制され、せん断パネル1の耐久力を増加することができる。
【0030】
なお、せん断パネル1は、地震や風などにより建物などに横揺れなどのエネルギーが加わった際に、そのエネルギーの少なくとも一部を吸収するように作用するものであり、せん断パネル1は、建物などの建築物において、それに加えられた横揺れなどのエネルギーを吸収できるように作用する場所であれば、上記図3に示す柱10,10間でかつ、横材13と梁12間以外にも任意の場所に設けることができ、その数も任意に設定する。
【0031】
例えば、図9に示すように、ブレース41の途中にせん断パネル1を設けるようにしてもよい。
【0032】
また、せん断パネル1の数と配置方向は、任意に設定することができ、例えば、図10に示すように、梁12に横方向(軸方向)に、せん断パネル1を2個並列に配置するようにしてもよいし、図11に示すように、せん断パネル1を、その本体部5の所定方向(X-X方向)が上下方向となるようにして、壁材42と壁材42との間に、縦方向に適宜間隔を有して、必要数設けてもよいし、図12に示すように、2個のせん断パネル1を平行に配置し、その両端に夫々せん断パネル1を配設し、計4個のせん断パネル1を、ロ状に配置してもよい。
【0033】
また、取付け部6,7の構造は、せん断パネル1を、梁等の取付ける部材の形状や構造に応じてその形状、構造は任意に設定することができる。例えば、図13に示すように、せん断パネル1を取付けるための取付け穴6a,7aを、夫々2段に形成してもよい。
【0034】
[実施例2]
上記実施例1においては、本体部5の中心部に1つの貫通穴21を形成し、この貫通穴21において、第1抑え部材3と第2抑え部材4を連結したが、この貫通穴21は、本体部5において少なくとも1つ形成されていればよく、その数は任意に設定することができる。
【0035】
また、上記実施例1においては、夫々の切欠き9の部分において、2か所の外側連結部材32により第1抑え部材3と第2抑え部材4を連結したが、切欠き9部分に設ける外側連結部材32の数は任意に設定することができる。
【0036】
例えば、図14に示すように、本体部5において、所定方向と直交する方向(Y-Y方向)の中央部において、貫通穴21,21を、適宜間隔を有して上下方向に2カ所形成し、夫々の貫通穴21において、内側連結部材27により、第1抑え部材3と第2抑え部材4を連結するようにしてもよい。また、図14に示すように、夫々の切欠き9の部分において、所定方向と直交する方向(Y-Y方向)に適宜間隔を有して、取付け穴22を設け、夫々の取付け穴22において外側連結部材32により連結するようにしてもよい。
【0037】
上記以外の構成は、上記実施例1と同様であるため、上記実施例1と同様の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
本実施例2においても、上記実施例1と同様の作用、効果を奏する。
【0039】
[実施例3]
上記実施例1、2においては、本体部5を略方形状に形成したが、六角形など任意の形状に形成することができる。
【0040】
上記以外の構成は、上記実施例1と同様であるため、その説明を省略する。
【0041】
本実施例3においても、上記実施例1,2と同様の作用、効果を奏する。
【符号の説明】
【0042】
1 せん断パネル
2 板状部材
3 第1抑え部材
4 第2抑え部材
5 本体部
6,7取付け部
9 切欠き
21 貫通穴
27 内側連結部材
32 外側連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14