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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/08 20230101AFI20230309BHJP
【FI】
C02F3/08 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019048516
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020146664
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 祐典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 薫
(72)【発明者】
【氏名】松枝 孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 信宏
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-200184(JP,A)
【文献】特開2003-334579(JP,A)
【文献】特開2006-110442(JP,A)
【文献】特開平10-244295(JP,A)
【文献】特開2003-260494(JP,A)
【文献】特開昭61-291099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/02- 3/10
C02F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を担持する担体と共に処理対象としての水を貯留する反応槽と、
前記反応槽の底部に一端を、水面より上に他端を配置されたエアリフト管と、
前記エアリフト管の内部へ気体を送り込む導気管と、
前記エアリフト管の他端から前記反応槽の水面に向かって下り勾配をなし、水が両面間を通過できる隙間を備えた傾斜板とを備え、
前記エアリフト管に前記導気管から気体を吹き込むことで、前記反応槽内の担体と水を前記エアリフト管内へ吸入し、気体と共に前記エアリフト管の他端から排出して前記傾斜板に導き、担体は前記傾斜板に沿って落下させて反応槽へ戻す一方、前記傾斜板の隙間から下方へ流れる水は排出管を通して外部へ排出するよう構成され、
前記排出管を通る水の一部を前記反応槽へ戻す分配槽を設けたことにより、
前記反応槽内における微生物の保持量を調整するよう構成されたこと
を特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記分配槽は前記反応槽内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記分配槽は、
前記排出管からの水が供給される前段側の空間と、水を下流側へ排出する後段側の空間とに内部を分割する分割板と、
前記前段側の空間と前記分配槽の外側を仕切る外壁に設けられた堰と、
前記堰に設けられた流出口とを備え、
前記排出管から前段側の空間へ供給された水は、一部が前記流出口から前記反応槽へ流れ、一部が前記分割板を越えて前記後段側の空間へ流れるよう構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記堰は高さを可変に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記流出口は、前記堰の上縁に設けられ、下方に向かって幅が狭くなる形状を有する切れ込みであり、前記流出口のなす角度は5°以上60°未満であることを特徴とする請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記流出口の下端部に、先端部の形状を鈍く形成した鈍角部を備えたことを特徴とする請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記前段側の空間を、前記排出管が接続される前段槽と、前記堰が設けられた中段槽とに分割する水位調整板を備え、
前記排出管から前記前段槽に供給された水は、前記水位調整板を越えて前記中段槽に流れるよう構成されていることを特徴とする請求項3~6のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記前段側の空間に接続された前記排出管の出口は、下向きに設置されていることを特徴とする請求項3~7のいずれか一項に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水や汚水等の水を浄化処理するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水や汚水といった水を浄化する技術として、生物処理と呼ばれる方法が一般的に用いられている。水中に含まれる有機物等の物質を、微生物の働きにより分解し、あるいは無害化するのである。
【0003】
図7は、こうした生物処理を行うための装置として従来用いられている水処理装置の一例を示している。本従来例の水処理装置においては、活性炭やアンスラサイト、軽量骨材、あるいは樹脂等で形成された粒状の固形物である担体1が反応槽2内に投入されると共に、処理対象である水Wが反応槽2に導入されて、担体1に担持された微生物により水Wが浄化処理されるようになっている。反応槽2は、内部に水平方向に沿って設けられた仕切板3により上下に分割されており、該仕切板3の上側の処理室4に担体1が投入される。処理室4における仕切板3付近の高さには曝気管5が設けられ、外部の曝気ブロワ6から処理室4内へ空気Aが送り込まれるようになっている。
【0004】
仕切板3には集水ストレーナ7が設けられており、処理室4において処理された水Wが集水ストレーナ7により担体1を除かれて下方の集水室8へ抜けるようになっている。集水室8は、さらに処理水管9を介して処理水槽10に接続されている。
【0005】
また、集水室8には外部の逆洗ブロワ11から逆洗用の送気管12を通じて空気Aを送り込むことができるようになっており、処理水槽10の下方には、逆洗用の送水管13の一端が接続されている。送水管13の他端は処理水管9に接続されており、送水管13の途中に備えた逆洗ポンプ14の作動により、処理水槽10内の水Wを処理水槽10から反応槽2へ送り込むことができるようになっている。
【0006】
反応槽2の上部にはサイホン管15が設けられており、反応槽2内の水Wが一定の水位を超えると、超過分がサイホン管15を通じて外部へ排出されるようになっている。
【0007】
水処理を行う場合、反応槽2に対し、上方から処理対象の水Wが導入される。水W中の物質は、処理室4において担体1に担持された微生物の働きによって処理される。水Wは、処理室4内を下方へ向かう間に微生物反応により浄化され、仕切板3に設けられた集水ストレーナ7を通じて集水室8へ抜ける。さらに、処理水管9を通って処理水槽10へ移り、沈殿等の必要な処理を経て、環境中へ放出される。
【0008】
浄化処理の実行中、反応槽2の処理室4に対しては、曝気ブロワ6から曝気管5を通して空気Aが送り込まれる。これにより水W中に酸素が溶け込まされ、処理室4内の水W中の物質が、担体1に担持された好気性微生物により酸化される。
【0009】
運転時間の経過に伴い、処理室4内の担体1には微生物が繁殖し、担体1の表面に生物膜からなる固形物が形成される。こうした固形物は、担体1の目詰まりや固着を生じさせ、水Wの通過抵抗を増大させ、浄化効率の低下を招く。そこで、このような反応槽2を備えた水処理装置を運転する場合は、定期的に逆洗を行い、担体1の表面の固形物を剥がし落とす必要がある。
【0010】
逆洗を行う際は、逆洗ブロワ11から反応槽2の集水室8へ多量の空気Aを送り込む。集水室8へ送り込まれた空気Aは、仕切板3の集水ストレーナ7を通じて処理室4へ流れ込む。処理室4では、流れ込んだ空気Aの勢いにより、水Wと共に担体1が撹拌される。担体1が互いに衝突し、表面を擦り合わせながら水W中を上下に動くことで、担体1の表面に付着する固形物が剥離する。
【0011】
続いて、送水管13に設けられた逆洗ポンプ14を作動させ、処理水槽10内の水Wを反応槽2の集水室8へ送り込む。水Wは集水ストレーナ7を通じて処理室4へ流れ込み、先の空気Aの吹き込みに伴い剥がれ落ちた固形物と共に、サイホン管15から外部へ排出される。
【0012】
ところで、このような水処理装置では、本来の役割である水Wの浄化処理と、逆洗とを同時に実行することができない。つまり、逆洗の実行中は水Wの浄化処理を行うことができないので、連続的な浄化処理が要求される場所では複数個の反応槽が必要となり、浄化のための設備が大型化してしまう。また、逆洗を常時実行することはできないので、逆洗を行ってから次の逆洗を行うまでの間、徐々に担体1に固形物が増え、浄化効率が低下していってしまう。よって、一定以上の浄化効率を確保しようとすれば設備全体がさらに大型化してしまうという問題がある。
【0013】
また、逆洗のための逆洗ブロワ11や送気管12、送水管13、逆洗ポンプ14といった機構を備える必要があるし、逆洗に十分な量の水を確保するためには処理水槽10の容積も大きくしなくてはならない。
【0014】
そこで、こうした問題を解決し、コンパクトで浄化効率の高い水処理装置を実現し得る技術として、本願出願人により下記特許文献1に記載の下向流型生物膜浄化装置が既に提案され、実用化されている。
【0015】
図8図10は下記特許文献1に記載の下向流型生物膜浄化装置と同等の水処理装置を示している。ここに示した水処理装置は、直径2mm~10mm程度の粒状の固形物である担体1が投入された反応槽20と、該反応槽20内に酸素を供給する散気装置21を備えている。散気装置21は、反応槽20内に配置された散気管21aに対し、外部の散気ブロワ22から反応槽20内へ酸素を含む気体(例えば、空気)Aを送り込むようになっている。
【0016】
反応槽20内における散気管21aよりも下方の位置には、下向きに開口23aを有する椀型の集水室23が設けられている。開口23aの高さは、反応槽20の最下部よりは上方である。集水室23の内部には、処理水管24の一端が開口している。処理水管24は、集水室23の内側から開口23aを通り、さらに反応槽20の壁を貫通して外部へ延び、他端は処理水槽25に接続されている。
【0017】
処理対象の原水である水Wは、反応槽20の外に設けた原水槽26に貯留され、原水ポンプ27によって汲み上げられ、原水管28を通じて反応槽20に供給されるようになっている。
【0018】
水処理の際には、反応槽20に対して処理対象である水Wが上方から導入されると共に、散気装置21から空気Aが供給される。そして、水Wが担体1の槽を下方へ通過する間、微生物の働きによって浄化される。浄化された水は、集水室23から処理水管24に引き込まれ、処理水槽25に導かれる。
【0019】
そして、本例の場合、このような水Wの浄化処理と並行して、担体1の洗浄処理をも実行できるようになっている。
【0020】
本例における反応槽20は、下部に下方へ向かって断面積の小さくなる逆円錐形の縮径部20aを備え、縮径部20aよりも上側は、高さによらず径の等しい円柱形の形状である。このような形状の反応槽20の中心軸に沿って、担体1を洗浄するためのエアリフト管29が設けられている。エアリフト管29は、下端を縮径部20aの最下部付近に、上端を反応槽20における水面よりも上側に配置されており、下端付近には、エアリフト管29内へ気体(例えば、空気)Aを導入するための導気管30の一端が接続されている。導気管30は反応槽20の外部へ延びており、導気管30の他端から洗浄用ブロワ31によりエアリフト管29内へ空気Aが送り込まれるようになっている。
【0021】
エアリフト管29の上端部の周囲には、分離装置32が設置されている。分離装置32は、本体部32aと、遮蔽板32bを備えている。本体部32aは、エアリフト管29の上部を囲むように配置され、エアリフト管29の上端から径方向外側に向かって下り勾配をなす傾斜板32cと、該傾斜板32cの下方に配置される受け皿32dを備えている。傾斜板32cは、両面間を水Wが通過でき、且つ担体1の粒を通さない程度の隙間を備えた板状の部材であり、例えば金網やパンチングメタル、あるいは柵状の部材等である。本例の場合、図10に示す如く、長方形状の傾斜板32cが4枚、平面視でエアリフト管29を中心としてX字状に配置されている(図10では、傾斜板32cとしては手前側にあたる2枚のみが表れている)。4枚の傾斜板32cの上辺は、正方形をなしてエアリフト管29の上端を囲んでおり、該正方形を覆うように略四角台形状の誘導部32eが設置され、エアリフト管29の上端は、誘導部32eの上部の中心に開口している。傾斜板32cの上辺と、平面視で円形であるエアリフト管29の上端の間が、誘導部32eにより接続される形である。
【0022】
各傾斜板32cの傾斜方向に沿った2辺には、それぞれ上方へ立ち上がるように縁部32fが設けられている。
【0023】
遮蔽板32bは、円筒面状の形状をなす部材であり、本体部32aの上方にエアリフト管29の上端を囲むように設置される。遮蔽板32bの下端は、本体部32aの上面をなす誘導部32eあるいは傾斜板32cの上部に対し、少なくとも担体1の通過を許容する程度の距離を開けて配置される。
【0024】
受け皿32dは、傾斜板32cおよび誘導部32eの下方に配置される皿状の部材であり、後述するように、傾斜板32cから下方へ流れる水Wを受けるために設置される。一方、受け皿32dは、傾斜板32cに沿って落ちる担体1を受けることがないよう、各傾斜板32cにあたる部分の縁が、傾斜板32cの下辺を超えて径方向外側に張り出さないように設けられる。受け皿32dの中心は、エアリフト管29が貫通している。
【0025】
受け皿32dには排出管33の一端が接続されており、受け皿32dの受けた水Wを外部へ排出できるようになっている。排出管33の他端は、反応槽20とは別に設けた洗浄水処理槽34に接続されている。洗浄水処理槽34の上部には、戻し管35の一端が接続され、戻し管35の他端は原水槽26に接続されている。
【0026】
担体1の洗浄処理は、洗浄用ブロワ31からエアリフト管29に対して空気Aを吹き込むことによって行う。洗浄用ブロワ31から吹き込まれた空気Aは、導気管30からエアリフト管29に到達すると、エアリフト管29内を上方へ向かう。この際、エアリフト管29の下端からは、反応槽20の底部に溜まった担体1が水Wと共に吸入され、空気Aの動きに伴ってエアリフト管29内を上昇する。ここで、エアリフト管29の下端は、下向きの傾斜を有する縮径部20aの最下部に開口しているので、反応槽20の底部に溜まった担体1はエアリフト管29の下端部の開口付近に自重によって集まり、これにより、エアリフト管29への担体1の吸入がスムーズに行われる。尚、集水室23は、担体1の溜まる反応槽20の下部に位置しているが、開口23aが下を向くように配置されているので、浄化されて集水室23から処理水管24を通じて処理水槽25へ抜き出される水Wに関しては、担体1が分離された状態で抜き出されることになる。
【0027】
水Wと共にエアリフト管29内を上昇する間、担体1と水Wは空気Aによって撹拌され、これにより、担体1の表面に付着した生物膜等の固形物は剥離し、担体1が洗浄される。そして、洗浄された担体1と、剥離した固形物を含む水Wが、空気Aと共にエアリフト管29の上端から排出される。
【0028】
水Wと担体1は、エアリフト管29の上端から分離装置32の本体部32aの上方へ排出される。この際、エアリフト管29の上端を囲むように配置された遮蔽板32bにより、排出される水Wや担体1が勢い良く周囲に放出されることは防止され、水Wと担体1はエアリフト管29の上端から本体部32aの誘導部32eのなす面に沿うように排出され、さらに径方向外側に位置する傾斜板32cへ誘導される。
【0029】
傾斜板32cは、担体1の粒を通さない程度の隙間を備えているので、エアリフト管29の上端から排出された担体1は傾斜板32cの表面を伝って下方に落下し、反応槽20内に戻される。この際、傾斜板32cの傾斜方向に沿った二辺には縁部32fが備えられているので、担体1が傾斜板32cの側辺(縁部32fの備えられた辺)を超えて受け皿32dに落下することは防がれる。一方、排出された水Wの大半は、担体1から剥離した固形物と共に、傾斜板32cの隙間から下方へ流れ、受け皿32dに受けられる。
【0030】
受け皿32dの水Wは、担体1から剥離した固形物と共に排出管33から外部の洗浄水処理槽34へ排出され、貯留される。洗浄水処理槽34では、水Wの沈殿処理が行われ、底部に沈殿した固形物は適宜抜き出されて汚泥として処理される。洗浄水処理槽34の上澄みは、原水槽26に戻され、再び反応槽20へ戻される。
【0031】
担体1の洗浄処理は、上述の如き水Wの浄化処理を行いつつ、それと同時に実行することができる。尚、洗浄処理は、浄化処理の実行中、連続的に行うこともできるが、通常は定期的に短時間、実行すれば十分である。
【0032】
このような水処理装置によれば、担体1の洗浄に際して水Wの浄化処理を停止する必要がなく、したがって、水処理装置の稼働率を向上させることができ、また、担体1に多量の固形物が付着する前に担体1を洗浄することができる。このため、小型の設備で高い効率による水処理が可能である。担体1の洗浄処理に要する設備も、図7に示す如き例における逆洗用の設備と比較して小型である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【文献】特開昭61-291099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
しかしながら、図8図10に記載の如き水処理装置であっても、場合によっては要求される性能を満足できない可能性も考えられる。具体的には、例えば別の浄化処理を経た水を原水とし、これに対しさらに浄化処理を行うことを考えると、有機物の濃度が低く、且つアンモニアの残存する水を高速で処理する場合が想定される。具体的には、例えばC-BOD(Carbonaceous Biochemical Oxygen Demand)にして20mg/L程度の有機物に対し、アンモニアを20mg/L程度含む水が処理対象となる。この場合、時間あたりの水処理量が、通常と比較して多くなる。通常の排水を処理しようとする場合、上記特許文献1に記載の如き下向流型生物膜浄化装置では、反応槽面積あたりの通水量は20m/m・日程度であるが、上述のように有機物濃度が低く且つアンモニアの残存する水を処理しようとすると、通水量はこの2~3倍程度になる。したがって、担体の目詰まりを防止するためには、原因となる固形物の量を少なくする必要がある。
【0035】
図8図10に記載の水処理装置の場合、担体1の洗浄の効率は、例えば洗浄を行う時間や頻度、エアリフト管29に送り込む空気Aの量などによって制御することができる。つまり、反応槽20内における固形物の量を少なくしようとすれば、これらを調整し、洗浄の程度を大きくすることで担体1に付着する固形物の量を少なく保てば良い。ところが、反応槽20内に固形物が少ないということは、すなわち浄化反応を行う微生物が少ないことを意味する。特に、アンモニアを酸化する微生物は、好気性微生物の中でも増殖が比較的遅く、アンモニアの浄化を意図する場合、反応槽20内における固形物量を減らしてしまうと、満足な浄化性能を出すことが難しい。閉塞防止のために固形物量を減らすことが、浄化性能を高めるうえで制限要因となってしまうのである。
【0036】
また、15℃前後の低温の水を処理しようとする場合にも同様の問題がある。低温では微生物の反応速度が遅いので、浄化性能を高めるには多量の固形物を反応槽20内に維持する必要があるが、そのために洗浄の程度を低くすれば、担体1の目詰まりが生じてしまう。
【0037】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡便な構成により高い効率で水を浄化し得る水処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は、微生物を担持する担体と共に処理対象としての水を貯留する反応槽と、前記反応槽の底部に一端を、水面より上に他端を配置されたエアリフト管と、前記エアリフト管の内部へ気体を送り込む導気管と、前記エアリフト管の他端から前記反応槽の水面に向かって下り勾配をなし、水が両面間を通過できる隙間を備えた傾斜板とを備え、前記エアリフト管に前記導気管から気体を吹き込むことで、前記反応槽内の担体と水を前記エアリフト管内へ吸入し、気体と共に前記エアリフト管の他端から排出して前記傾斜板に導き、担体は前記傾斜板に沿って落下させて反応槽へ戻す一方、前記傾斜板の隙間から下方へ流れる水は排出管を通して外部へ排出するよう構成され、前記排出管を通る水の一部を前記反応槽へ戻す分配槽を設けたことにより、前記反応槽内における微生物の保持量を調整するよう構成されたことを特徴とする水処理装置にかかるものである。
【0039】
本発明の水処理装置において、前記分配槽は前記反応槽内に配置することができる。
【0040】
本発明の水処理装置において、前記分配槽は、前記排出管からの水が供給される前段側の空間と、水を下流側へ排出する後段側の空間とに内部を分割する分割板と、前記前段側の空間と前記分配槽の外側を仕切る外壁に設けられた堰と、前記堰に設けられた流出口とを備え、前記排出管から前段側の空間へ供給された水は、一部が前記流出口から前記反応槽へ流れ、一部が前記分割板を越えて前記後段側の空間へ流れるよう構成することができる。
【0041】
本発明の水処理装置において、前記堰は高さを可変に構成することができる。
【0042】
本発明の水処理装置において、前記流出口は、前記堰の上縁に設けられ、下方に向かって幅が狭くなる形状を有する切れ込みとし、前記流出口のなす角度は5°以上60°未満とすることができる。
【0043】
本発明の水処理装置においては、前記流出口の下端部に、先端部の形状を鈍く形成した鈍角部を備えることができる。
【0044】
本発明の水処理装置は、前記前段側の空間を、前記排出管が接続される前段槽と、前記堰が設けられた中段槽とに分割する水位調整板を備え、前記排出管から前記前段槽に供給された水は、前記水位調整板を越えて前記中段槽に流れるよう構成することができる。
【0045】
本発明の水処理装置において、前記前段側の空間に接続された前記排出管の出口は、下向きに設置することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の水処理装置によれば、簡便な構成により高い効率で水を浄化し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施による水処理装置の形態の一例を示す全体概略図である。
図2】本実施例の水処理装置の要部の形態を示す斜視図であり、分配槽の構成を示している。
図3】本実施例の水処理装置における流出口の形状について簡略的に説明する図である。
図4】本実施例の水処理装置の要部の形態の別の一例を示す概略断面図である。
図5】本発明の参考例による水処理装置の形態を示す概略図である。
図6】本発明の別の参考例による水処理装置の形態を示す概略図である。
図7】従来における水処理装置の一例を示す全体概略図である。
図8】従来における水処理装置の別の一例を示す全体概略図である。
図9】従来における水処理装置の別の一例における要部を示す概略正断面図であり、特に反応槽の構成を示している。
図10】従来における水処理装置の別の一例における要部を示す斜視図であり、分離装置の構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0049】
図1図2は本発明の実施による水処理装置の形態の一例を示しており、図中、図8図10と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0050】
本実施例の水処理装置は、基本的な構成は図8図10に示す従来例と同様であり、微生物を担持する担体1と共に処理対象としての水Wを貯留する反応槽20と、該反応槽20内に酸素を供給する散気装置21を備えている。反応槽20内の散気管21aよりも下方の位置には椀型の集水室23が設けられ、集水室23の内部には、処理水管24の一端が開口している。処理水管24は、集水室23の内側と、処理水槽25を接続している。処理対象の原水である水Wは、反応槽20の外に設けた原水槽26に貯留され、原水ポンプ27によって汲み上げられ、原水管28を通じて反応槽20に供給されるようになっている。
【0051】
また、円筒形の壁の下部に逆円錐形の縮径部20aを備えた反応槽20の中心軸に沿って、エアリフト管29が設けられている。エアリフト管29は、反応槽20の底部に一端(下端)が、水面より上に他端(上端)が位置するように配置されており、エアリフト管29の下端付近には、導気管30の一端が接続されている。そして、導気管30の他端から洗浄用ブロワ31によりエアリフト管29内へ気体(例えば、空気)Aが送り込まれるようになっている。
【0052】
水面から上方へ突出するように配置されたエアリフト管29の上端部の周囲には、本体部32aと、遮蔽板32bを備えた分離装置32が設けられている。本体部32aは、傾斜板32cと受け皿32dを備えており、傾斜板32cとしては、エアリフト管29の上端を囲むように長方形状の板が複数枚(ここでは4枚)配置されている。各傾斜板32cは、両面間を水Wが通過でき、且つ担体1が通過できない程度の隙間を備えている。各傾斜板32cは、エアリフト管29の上端から径方向外側の水面へ向かう向きに下り勾配をなすように配置され、エアリフト管29の上端と、4枚の傾斜板32cの上辺の間は、略四角台形状の誘導部32eにより接続されている。各傾斜板32cの傾斜方向に沿った2辺には、それぞれ上方へ突出する縁部32fが設けられている。
【0053】
エアリフト管29から排出される水Wや担体1を分離装置32で受けるにあたっては、エアリフト管29の出口である上端を傾斜板32cで取り囲むことが確実且つ効率が良く、好適である。この際、例えば傾斜板32cを円錐面とし、その頂点にあたる位置にエアリフト管29の上端を配置しても良いが、円錐面状の部材は形成に手間や費用が嵩んでしまう。そこで、本実施例のように長方形状の傾斜板32cでエアリフト管29の上端を囲むようにすると、分離装置32を平面的で単純な形状の傾斜板32cにより構成することができ、分離装置32を備えた反応槽20を設置するにあたり、建設費を低く抑えることができる。また、このようにした場合、円形断面のエアリフト管29と傾斜板32cとの間や、傾斜板32c同士の間には隙間が生じることになるが、エアリフト管29と傾斜板32cとの間は誘導部32eで接続し、また、傾斜板32cには傾斜方向に関して両脇に縁部32fを設けることで、水Wや担体1を傾斜板32cへ正しく誘導し、また傾斜板32cの脇から担体1が落下することを防止し、後述する担体1の洗浄にあたり、エアリフト管29から排出された担体1を確実に反応槽20へ戻すことができる。
【0054】
本体部32aの上方には、エアリフト管29の上端を囲むように円筒面状の遮蔽板32bが設置される。傾斜板32cおよび誘導部32eの下方には、受け皿32dが設置される。受け皿32dには排出管33が接続されており、分離装置32に回収された水Wは、排出管33を通って外部に排出され、洗浄水処理槽34に導かれるようになっている。洗浄水処理槽34の上部には、戻し管35の一端が接続され、戻し管35の他端は原水槽26に接続されている。
【0055】
以上の構成については図8図10に示した例と概ね共通しているが、本実施例の場合、反応槽20の内部に分配槽40を備えた点を特徴としている。この分配槽40は、排出管33の途中に設けられており、排出管33を通る水Wの一部を反応槽20へ戻すようになっている。
【0056】
分配槽40の構成を図2に示す。分配槽40は、内部に水Wを貯留する方形の槽であり、内部は垂直方向に沿った面をなす2枚の板(水位調整板41および分割板42)により、3つの空間(前段槽40a、中段槽40b、後段槽40c)に分割されている。尚、ここでは、分割板42の前段側にあたる空間(ここに示した例においては、前段槽40aと中段槽40bにより構成される空間)を「前段側の空間」、分割板42の後段側にあたる空間(後段槽40cにより構成される空間)を「後段側の空間」と称することとする。
【0057】
前段槽40aの下部には、排出管33の上流側の部分(上流側の排出管33a)が接続され、後段槽40cの底部には、排出管33の下流側の部分(下流側の排出管33b)が接続されている。中段槽40bと後段槽40cの間を分割する分割板42の高さは、前段槽40aと中段槽40bの間を分割する水位調整板41の高さよりも低く設定されている。そして、排出管33から分配槽40に流れる水Wは、まず前段側の空間をなす前段槽40aに供給され、次いで水位調整板41を越えて中段槽40bに流れ、さらに分割板42を越えて後段側の空間をなす後段槽40cに流入し、後段槽40cから下流側の排出管33bへ排出されるようになっている。
【0058】
中段槽40bと、分配槽40の外側を仕切る外壁の一部には、高さを調整可能な堰43が設置されており、堰43の上縁部には、流出口43aが設けられている。流出口43aは、下方に向かって幅が狭くなるよう、堰43の上縁部にV字状に形成された切れ込みと、該切れ込みから外側へ伸びる樋状の導水部を備えている。堰43の高さを、流出口43aの下端の高さが分割板42の上縁の高さより低くなるよう設定すると、中段槽40b内に溜まった水Wの一部は、堰43の流出口43aから外側へ流れる。分配槽40は反応槽20の内部に備えられているので(図1参照)、流出口43aから外側へ流れた水Wは反応槽20へ戻ることになる。
【0059】
つまり、本実施例では、担体1の洗浄を行う際、エアリフト管29の上端から排出されて分離装置32に回収された水Wは分配槽40を経由するが、そのうち一部は分割板42を越えて後段槽40cに流入し、排出管33から外部(洗浄水処理槽34)へ排出され、一部は流出口43aから反応槽20へ流れることになる。一方、水Wと共にエアリフト管29の上端から排出された担体1に関しては、全量が傾斜板32c上面を通って反応槽20へ落下する。
【0060】
水Wの浄化処理に伴って担体1に蓄積した固形物は、担体1の洗浄処理(エアリフト管29への空気Aの吹き込み)の実行により担体1から剥離する。図8図10に示した例の場合、剥離した固形物を含んでエアリフト管29の上端から排出され、分離装置32により回収された水Wのほぼ全量が排出管33から外部へ排出されることになるが、図1図2に示す本実施例の場合、水Wは一旦分配槽40を経由し、そのうち流出口43aを通る一部は、固形物と共にそのまま反応槽20へ戻される。
【0061】
つまり、図8図10に示した従来の水処理装置では、担体1の目詰まりや固着の防止のために洗浄を行った場合に、担体1から剥離した固形物の大部分を反応槽20の外部へ排出することになり、これが浄化処理の効率向上を制限する要因となっていたが、本実施例によれば、洗浄処理により担体1の目詰まりや固着は防止しつつも、剥離した固形物の一部を反応槽20に戻すことで、反応槽20内における微生物群の保持量を保ち、浄化効率を向上させることができるのである。
【0062】
一般に、微生物による水処理を行う際には、浄化性能の指標として槽内における固形物の滞留時間(SRT:Sludge Retention Time)を用いることができる。これは、槽内に存在する固形物の総量を、浄化処理や洗浄に伴って単位時間あたりに流出する固形物の量で割った値として求めることができ、この値が大きいほど浄化性能が高いと言うことができる。一般的な水処理装置においては、SRTがおおむね10日程度以上あれば良いとされるが、特にアンモニアの除去を目的とする場合、アンモニア酸化細菌は増殖が遅いため、高めのSRT値が要求される。
【0063】
SRTは、図8図10に示した例の場合、以下の式で表すことができる。
[式1]
SRT=VC/(QOUTOUT+QWASHWASH
【0064】
ただし、
・V:反応槽における水の容量
・C:反応槽内における固形物の濃度
・QOUT:水の浄化処理に伴って処理水管から排出される水の量
・COUT:処理水管から排出される水中の固形物の濃度
・QWASH:担体の洗浄処理に伴って排出管から排出される水の量
・CWASH:排出管から排出される水中の固形物の濃度
【0065】
一方、図1図2に示す本実施例の場合、SRTは以下の式で表すことができる。
[式2]
SRT=(VC+aQWASHWASH)/{QOUTOUT+(1-a)QWASHWASH
【0066】
ただし、
・a:担体の洗浄処理の際、分配槽から反応槽に戻る水の割合(0<a≦1)
【0067】
つまり、本実施例においては、分配槽40を設置することにより、担体1の洗浄処理の際にエアリフト管29から排出される水Wのうち、割合aに相当する量が反応槽20へ戻されることになる。その結果、上記式2におけるSRTの値は、上記式1におけるSRTの値よりも大きくなり、浄化性能を向上させることができるのである。
【0068】
担体1の洗浄時において、分離装置32から分配槽40を通って反応槽20に戻る水Wの割合(以下、「返流量」と称する)aは、分割板42に対する堰43の高さを変えることで調整することができる。すなわち、仮に流出口43aの下端を分割板42の上端よりも高く設定した場合には、前段側の空間をなす中段槽40bから流れる水Wのうち、概ね全量が分割板42を越えて後段側の空間をなす後段槽40cに流入することになるが、流出口43aの下端の位置を分割板42の上端よりも低くすれば、中段槽40b内の水Wの一部が流出口43aを越えて反応槽20へ戻る。そして、流出口43aの位置が分割板42の上端に対して低いほど、返流量は大きくなる。
【0069】
流出口43aからの返流量は、該流出口43aの形状にも左右される。流出口43aは、図3に示す如く、下方に向かって幅が狭くなる形状を有する切れ込みとして構成されているが、この切れ込みである流出口43aのなす角度αが小さければ、それだけ流出口43aの上下の位置による返流量の変動は小さくなる。つまり、角度αを十分小さくすれば、堰43の高さの変更を介した返流量の調整は容易になる。ただし、角度αが小さすぎると、返流量の変更に必要な堰43の高さの変更量が大きくなりすぎてしまう。したがって、流出口43aのなす角度αとして好適な範囲は、例えば5°以上60°未満、より好ましくは10°以上30°以下である。
【0070】
また、角度αをこのように十分小さくする場合、水W中に含まれる固形物等が流出口43aに詰まりやすくなってしまうことが考えられる。そこで、図3に示す如く、流出口43aの下端部に、切れ込みの先端部の形状が鈍くなっている鈍角部43bを備えるようにしても良い。このようにすると、流出口43aの下端部に極端に幅の狭い部分が存在しないため、流出口43aに詰まりが生じにくくなる。尚、ここでは鈍角部43bの形状として逆台形状を例示したが、鈍角部43bの形状はこれに限定されず、例えば円弧等の曲線であっても良いし、鋭角の三角形以外の多角形状であっても良い。
【0071】
また、本実施例では、分割板42の前段側の空間を水位調整板41により前段槽40aと中段槽40bとに分割しており、上流側の排出管33aから供給される水Wは、一旦前段槽40aに貯留され、水位調整板41の上端を越えて中段槽40bに流れ、均等な水位で貯留されたうえで分割板42の上端または流出口43aに流れる。このため、前段槽40aに流れ込む水Wの流量が多い場合も、水Wは均等な水位で流出口43aと分割板42に分配される。こうして、上流側の排出管33aから供給される水Wの量が多くても、流出口43aへの水Wの分配量を安定させることができる。
【0072】
堰43の高さを可変にする機構としては、適宜の機構を採用することができる。例えば、高さの異なる複数の堰43を用意し、必要な返流量の設定に応じて交換するようにしても良いし、あるいは、堰43を上下2枚に分割した構成とし、流出口43aを備えた上側の板を下側の板に対してスライドさせることで高さを変更できるようにしても良い。
【0073】
分配槽40は、ここでは反応槽20の内部に設置した場合を説明したが、反応槽20の外部(例えば、反応槽20から外へ伸びる排出管33の下流側端部など)に設置することも可能である。ただし、その場合は流出口43aから排出される水Wを反応槽20に戻すための配管を別途設ける必要がある。分配槽40を反応槽20内に配置すれば、流出口43aから排出された水Wはそのまま反応槽20に戻ることになり、返流のための配管が不要であるという点で有利である。
【0074】
図4は、分配槽の形態の別の一例を示している。この別の実施例の分配槽50では、図2に示した分配槽40における水位調整板41にあたる構成が省略されており、分配槽50の内部は、分割板51により、前段側の空間をなす前段槽50aと、後段側の空間をなす後段槽50bの2つに分割されている。そして、前段槽50aに上流側の排出管33aの出口が接続されると共に、前段槽50aと分配槽50の外側を仕切る外壁の一部に、高さを可変に構成され、且つ上端部に流出口52aを備えた堰52が設置されている。
【0075】
分配槽50の作用効果については、図2に示した分配槽40と基本的に同様である。ただし、ここに示す分配槽50のように水位調整板41(図2参照)を省略した場合、図4中に示す如く上流側の排出管33aの下流側端部を前段槽50aの内部に伸ばし、出口を下向きに設置することが好ましい。図2に示した分配槽40の場合、前段槽40aに流れ込む水Wの流量が多くても、水Wは上述したように、一旦水位調整板41を越えることで水位を均等に調整されて流出口43aと分割板42に分配される。一方、ここに示す分配槽50の場合、水位調整板41に相当する構成を備えていないため、仮に前段槽50aに水Wを供給する上流側の排出管33aの出口が真横あるいは上を向いていると、流量が多い場合に水Wの勢いのために水面の高さが安定せず、流出口52aへの水Wの分配が不安定になるおそれがある。そこで、上流側の排出管33aの出口を下に向けて設置しておけば、流量が多い場合であっても、前段槽50aに供給される水Wは一旦底面に向けて流れてから槽内を上昇するので、前段槽50aにおける水位が安定し、それにより流出口52aへの水Wの分配量が安定する。
【0076】
ところで、上記本実施例のように、浄化効率を高める目的で担体1の洗浄に伴って剥離した固形物を反応槽20に戻すことを考えた場合、例えば図5に参考例として示す如く、排出管33の途中に開度によって内部を流通する水Wの量を調整できる流量調整バルブ33cを設け、洗浄水処理槽34へ向かう水Wの量を制限することが考えられる。この場合、エアリフト管29から排出されたが洗浄水処理槽34へ向かうことができない余剰の水Wは、受け皿32dから溢れて反応槽20に戻ることになる。
【0077】
しかしながら、このような仕組みを採用した場合、水Wに含まれる固形物により、流量調整バルブ33cが閉塞するリスクが生じる。流量調整バルブ33cが閉塞すれば、水Wと共に固形物の全量が反応槽20に戻り、浄化効率が著しく低下してしまうことになる。このような事態を避けるためには流量調整バルブ33cを頻繁にメンテナンスする必要があり、手間や費用が生じてしまう。
【0078】
また、水処理装置の運転にあたっては、浄化の効率や担体1における微生物の担持量、反応槽20への水Wの供給量といった条件に応じ、担体1の洗浄の際にエアリフト管29へ送り込む空気Aの量や、洗浄処理の時間等を変更するような場合も考えられる。こういった変更を行えば、洗浄処理の際に反応槽20に戻される水Wの量や、洗浄処理による反応槽20中の固形物量の変動量が変化する。このため、適当な浄化効率を保つためには、洗浄処理の条件の変更に伴い、流量調整バルブ33cの開度を都度調節する必要がある。こうした調節を手動で行うのは非常に煩雑である。開度の自動調節機構を別途装備することもできるが、それにも費用と手間が生じる。
【0079】
また、図6に別の参考例として示すように、洗浄水処理槽34に溜まった固形物を反応槽20へ戻す固形物戻し管39を設け、担体1の洗浄処理の間あるいは洗浄処理の後、適当な量の固形物を反応槽20へ戻すことも考えられるが、この方式では固形物を反応槽20へ戻すためにポンプ39aを設置し、作動させる必要がある。
【0080】
これに対し、図1図2あるいは図4に示すように、分離装置32により回収された水Wの一部を分配槽40,50を用いて反応槽20へ戻す方式を採用した場合、エアリフト管29から排出される水Wの量が変動しても、必ず概ね一定の割合の水Wを反応槽20へ戻すことができる。図5に示す流量調整バルブ33cや、図6に示すポンプ39aのような装置は不要であり、分割板42,51と堰43,52を備えた分配槽40,50を反応槽20に設置しただけの簡単な構成で、反応槽20への固形物の回収を実行できる。
【0081】
また、図示は省略するが、例えば傾斜板32cの一部を板状の部材で覆い、エアリフト管29から排出される水Wの一部を傾斜板32cを通過させずに反応槽20へ戻すといった仕組みも考えられる。このような構成を採用した場合、非常に簡単な構成である程度安定した返流量を確保できると思われるが、エアリフト管29からの水Wの排出が多い場合には、想定より多くの水Wが傾斜板32cを通過してしまうような事態も考えられる。図1図4に示すように分配槽40,50を設けた構成であれば、より安定した返流量を確保することができる。
【0082】
以上のように、上記本実施例は、微生物を担持する担体1と共に処理対象としての水Wを貯留する反応槽20と、反応槽20の底部に一端を、水面より上に他端を配置されたエアリフト管29と、エアリフト管29の内部へ気体(空気)Aを送り込む導気管30と、エアリフト管29の他端から反応槽20の水面に向かって下り勾配をなし、水Wが両面間を通過できる隙間を備えた傾斜板32cとを備え、エアリフト管29に導気管30から気体Aを吹き込むことで、反応槽20内の担体1と水Wをエアリフト管29内へ吸入し、気体Aと共にエアリフト管29の他端から排出して傾斜板32cに導き、担体1は傾斜板32cに沿って落下させて反応槽20へ戻す一方、傾斜板32cの隙間から下方へ流れる水Wは排出管33を通して外部へ排出するよう構成され、排出管33を通る水Wの一部を反応槽20へ戻す分配槽40,50を設けている。このようにすると、担体1の洗浄により目詰まりや固着は防止しつつ、剥離した固形物の一部を反応槽20に戻すことで、反応槽20内における微生物群の保持量を保ち、浄化効率を向上させることができる。
【0083】
また、各実施例において、分配槽40,50は反応槽20内に配置することができる。このようにすれば、流出口43a,52aから排出された水Wがそのまま反応槽20に戻るので、返流のための配管を不要とすることができる。
【0084】
また、各実施例において、分配槽40は、排出管33からの水Wが供給される前段側の空間と、水Wを下流側へ排出する後段側の空間とに内部を分割する分割板42,51と、前記前段側の空間と分配槽40の外側を仕切る外壁に設けられた堰43,52と、堰43,52に設けられた流出口43a,52aとを備え、排出管33から前段側の空間へ供給された水Wは、一部が前記流出口43a,52aから反応槽20へ流れ、一部が分割板42,51を越えて前記後段側の空間へ流れるよう構成されている。このようにすれば、分割板42,51と堰43,52を備えた分配槽40,50を反応槽20に設置しただけの簡単な構成で、反応槽20への固形物の回収を行うことができる。
【0085】
また、各実施例において、堰43,52は高さを可変に構成されている。このようにすれば、堰43,52の高さを変えることにより、分配槽40,50から反応槽20に戻る水Wの割合を調整することができる。
【0086】
また、各実施例において、流出口43aは、堰43の上縁に設けられ、下方に向かって幅が狭くなる形状を有する切れ込みとし、流出口43aのなす角度は5°以上60°未満とすることができる。このようにすれば、堰43の高さの変更を介した返流量の調整を容易にすることができる。
【0087】
また、各実施例においては、流出口43aの下端部に、先端部の形状を鈍く形成した鈍角部43bを備えることができる。このようにすれば、流出口43aに詰まりを生じにくくすることができる。
【0088】
また、一部の実施例は、前記前段側の空間を、排出管33が接続される前段槽40aと、堰43が設けられた中段槽40bとに分割する水位調整板41を備え、排出管33から前段槽40aに供給された水Wは、水位調整板41を越えて中段槽40bに流れるよう構成されている。このようにすれば、流量が多い場合における流出口43aへの水Wの分配量を安定させることができる。
【0089】
また、一部の実施例において、前記前段側の空間に接続された排出管33の出口は、下向きに設置されている。このようにしても、流量が多い場合における流出口52aへの水Wの分配量を安定させることができる。
【0090】
したがって、上記本実施例によれば、簡便な構成により高い効率で水を浄化し得る。
【0091】
尚、本発明の水処理装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
1 担体
20 反応槽
29 エアリフト管
30 導気管
32c 傾斜板
33 排出管
40 分配槽
40a 前段槽
40b 中段槽
41 水位調整板
42 分割板
43 堰
43a 流出口
50 分配槽
51 分割板
52 堰
52a 流出口
A 空気
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10