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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】鋳造品検査装置
(51)【国際特許分類】
   G06V 30/14 20220101AFI20230309BHJP
   G01N 21/89 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G06V30/14 360B
G01N21/89 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019059327
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020160785
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】加藤 純次郎
【審査官】宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-188051(JP,A)
【文献】特開2002-74260(JP,A)
【文献】特開2007-219943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 30/14 - 30/168
G06V 30/224
G06V 30/40 - 30/416
G01N 21/84 - 21/958
G06V 30/00 - 30/12
G06V 30/18 - 30/222
G06V 30/226 - 30/32
G06V 30/42 - 30/424
G06T 1/00
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の摺動部と、その摺動部に対して放射方向へ貫通した貫通孔と、を有する鋳造品の前記貫通孔の内周面のうち、前記摺動部の外周寄りに、前記内周面から突出している鋳出し文字を検査する鋳造品検査装置であって、
前記貫通孔が水平方向に延在した状態で、前記貫通孔の底部に位置する前記鋳出し文字は、上部表面に平坦部を有しており、
前記貫通孔のうち、前記摺動部の外周側の第1端側から前記鋳出し文字に向けて、前記貫通孔の延びる方向である水平方向に対して斜め上から、第1波長の光を照射する第1光源と、
前記貫通孔のうち、前記摺動部の内周側の第2端側から前記鋳出し文字に向けて、前記貫通孔の延びる方向である水平方向に対して斜め上から、前記第1波長とは波長が異なる第2波長の光を照射する第2光源と、
前記第1光源及び前記第2光源が光を照射している状態で、前記第1端側の、上方を向いている前記鋳出し文字の表面に対して斜め上、かつ、前記第1光源よりも俯角が大きい方向から、前記鋳出し文字を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像結果から前記第1波長の波長成分による第1画像と前記第2波長の波長成分による第2画像とを波長フィルタによって、それぞれ抽出し、前記第1画像及び前記第2画像を合成した合成画像を生成することにより、前記第1画像の影部と前記第2画像の影部によって囲まれた、前記鋳出し文字の形状を特定する特定部と、
を備えていることを特徴とする鋳造品検査装置。
【請求項2】
前記鋳造品は、前記円環状の摺動部と、その摺動部に対して放射方向へ貫通した前記貫通孔である複数のベンチレート部と、を備えるディスクロータである、請求項1に記載の鋳造品検査装置。
【請求項3】
前記ディスクロータを、前記円環状の摺動部の中心軸線を中心として回転させる回転機構を備えている、請求項2に記載の鋳造品検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクロータ等の鋳造品を検査する鋳造品検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造品に何らかの識別情報を付与する場合、鋳出し文字を鋳造時に形成することがある。例えば、鋳物によって形成されるディスクロータでは、鋳出し文字として、メーカ名、車体固有記号、摩耗限度マークが形成されている。なお、本明細書において、鋳出し文字等の「文字」は、アルファベット等の狭義の文字のみを指すのではなく、数字、記号、符号、マーク等も含まれる。
【0003】
鋳出し文字は、文字が欠けていたり、一部が潰れていたりして、目視により識別できない場合がある。そのため、鋳出し文字が許容範囲を超えて識別しにくい形状である場合、不良品であると判定する必要があるが、このような仕分けを目視によって行うことは非効率である。
【0004】
そこで、鋳出し文字がレーザースキャニングセンサによって三次元計測されることにより、自動的に鋳出し文字を認識できるようにした鋳出し文字認識装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-219943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋳造品に鋳出し文字を形成する場合、比較的目立たない場所に形成することがある。具体的には、貫通孔の内周面に形成される場合が挙げられる。ベンチレートタイプのディスクロータであれば、ベンチレート部の内周面に鋳出し文字が形成される。
【0007】
この場合、従来の鋳出し文字認識装置では、鋳出し文字の上方からレーザー光を照射し、その反射光を鋳出し文字の真上にあるセンサにより検出する構成であるため、貫通孔内の鋳出し文字を認識することができない。なお、貫通孔の一方からレーザー光を照射することも考えられるが、照射したレーザー光が鋳出し文字の一部にしか届かず、反射光がセンサに戻ってこない部分が多くなるため、鋳出し文字の正否を判定できるほど正確には文字を認識することができない。そのため、貫通孔の内周面に形成された鋳出し文字の検査は人間による目視検査に委ねられているのが実状である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、鋳造品の貫通孔に形成された鋳出し文字等の突出部を効率良く検査することのできる鋳造品検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、第1の発明は、鋳造品に形成された貫通孔の内周面において、前記内周面から突出している突出部を検査する鋳造品検査装置であって、
前記貫通孔の第1端側から前記突出部に向けて第1波長の光を照射する第1光源と、
前記貫通孔の第2端側から前記突出部に向けて前記第1波長とは波長が異なる第2波長の光を照射する第2光源と、
前記第1光源及び前記第2光源が光を照射している状態で、前記第1端側から前記突出部を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像結果から前記第1波長の波長成分による第1画像と前記第2波長の波長成分による第2画像とをそれぞれ抽出し、前記第1画像及び前記第2画像を合成した合成画像を生成することにより、前記突出部の形状を特定する特定部と、
を備えていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記突出部は、鋳出し文字であることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記鋳造品は、円環状の摺動部と、その摺動部に対して放射方向へ貫通した前記貫通孔である複数のベンチレート部とを備えるディスクロータであり、
前記鋳出し文字は前記ベンチレート部のうち前記摺動部の外周寄りに形成されており、
前記第2光源は前記摺動部の内周側に配置されており、
前記第1光源及び前記撮像部は前記摺動部の外周側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、前記第1光源及び前記第2光源は、前記ベンチレート部の延びる方向と平行に、又は前記ベンチレート部の延びる方向に対して斜め上から、前記鋳出し文字に向けて光を照射するものであり、
前記撮像部は、前記鋳出し文字の表面に対して斜め上から撮像するように、かつ前記第1光源よりも俯角が大きくなるようにして設置されていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記ディスクロータを、前記円環状の摺動部の中心軸線を中心として回転させる回転機構を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、貫通孔の第1端側から突出部へ第1光源により光を照射することで、その光が突出部によって遮られることにより形成される影(第1輪郭)が、突出部のうち貫通孔の第2端側に生じる。同様に、貫通孔の第2端側から突出部へ第2光源により光を照射することで、その光が突出部によって遮られることにより形成される影(第2輪郭)が、突出部のうち貫通孔の第1端側に生じる。これらの影(輪郭)から突出部の形状を特定することにより、突出部に対して真上からではなく横方向から光を照射しても、突出部の形状を特定することができるようになる。
【0015】
また、第1光源と第2光源とから同時に光を照射した状態では、第1輪郭及び第2輪郭を生じさせる影が消されてしまう。この点、第1の発明では、第1光源と第2光源とでは異なる波長の光を発しており、撮像部によって撮像した後、第1波長成分による第1画像と、第2波長成分による第2画像とを抽出し、それら画像を合成することにより、影(輪郭)を利用して突出部の形状を特定することができる。そのため、一方の光源のみから光を照射して撮像し、他方の光源のみから光を照射して撮像するという繰り返し動作が不要になって、一度に突出部の形状を特定することができ、検査効率が向上する。
【0016】
第2の発明によれば、鋳造品の特定に用いる情報などの情報を提示する鋳出し文字を検査対象とすることにより、鋳出し文字が人間に判読可能なものであるかを検査することができる。
【0017】
第3の発明によれば、摺動部に複数のベンチレート部を形成したディスクロータにおいて、メーカ名等の情報を表示する鋳出し文字を検査することができる。ディスクロータの摺動部は円環状に形成され、かつ鋳出し文字は外周寄りに形成されている。そのため、ベンチレート部に対して光源を内周側と外周側とに設置する一方、撮像部を外周側に設置することにより、内周側の狭い場所には光源の一方だけを配置すればよくなり、鋳出し文字をベンチレート部の外周から近い位置において撮像することができるようになる。
【0018】
第4の発明によれば、撮像部が斜め上方から鋳出し文字を撮像するようにしており、俯角を外周側に設置された第1光源よりも大きくなるようにしてあるので、撮像部と同じ側に配置されている第1光源によって形成される影(輪郭)を、撮像部によって確実に撮像することができる。その結果、第1画像及び第2画像をいずれも比較的正確に捕捉することができるようになり検査精度が向上し得る。
【0019】
第5の発明によれば、第1光源、第2光源及び撮像部を固定したままでも、ディスクロータを回転させることにより、各ベンチレート部の外周寄りに形成された鋳出し文字を全て検査することができ、ディスクロータの自動検査を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ディスクロータの縦断面、及び検査装置の構成を示す概略図。
図2】ディスクロータの横断面(図1の2-2線断面図)、及び検査装置の一部の構成を示す概略図。
図3】画像処理部による処理を示すフローチャート、及び処理過程の画像を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を具体化した一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。車両のブレーキ機構の一部として用いられるディスクロータ10には鋳出し文字11が複数形成されている。本発明の鋳造品検査装置は、本実施の形態では、それら鋳出し文字11を検査する検査装置30として具体化されている。
【0022】
<ディスクロータ10の構成>
最初に、検査装置30による検査対象となるディスクロータ10の構成を説明する。図1及び図2に示すように、ディスクロータ10は、全体として略円板状をなし、ハット部12及び摺動部13を有する。ハット部12は、自動車等の車両が有する車軸の端部に設けられたハブに取り付けられる。ハット部12は、底面部14と、周面部15とを有している。
【0023】
底面部14は円形板状をなし、中心部には取付孔16が形成されている。取付孔16の周囲には、複数のボルト挿通孔(図示略)が形成されている。取付孔16及びボルト挿通孔を用いて、ディスクロータ10がハブに連結されるようになっている。周面部15は、底面部14の外周縁部から延びる円筒状をなし、ハット部12の周面を形成している。
【0024】
周面部15において底面部14とは反対側の端部に、摺動部13が連結されている。摺動部13は、車両制動時にディスクパッドによって挟み込まれて圧接される部分である。摺動部13は、周面部15より外方へ円環状をなすように突出して形成されている。摺動部13の表裏両面は、ディスクパッドにより圧接される一対の摺動面17となっている。
【0025】
摺動部13は、インナディスク部18と、インナディスク部18よりもアウタ側に配置されるアウタディスク部19と、フィン20とを備えている。フィン20は、インナディスク部18とアウタディスク部19とを、周方向における複数箇所において連結している。フィン20は放射状に延びており、インナディスク部18とアウタディスク部19とフィン20とで囲まれた空間が、放射方向(径方向)に貫通したベンチレート部21になっている。ベンチレート部21は車両の走行時に空気が流通する流路であり、空気の流通により摺動部13を早期に冷却させることができる。ベンチレート部21が貫通孔に相当する。
【0026】
本実施の形態のディスクロータ10は、周面部15とインナディスク部18とが連結されたインナハットタイプであり、また、ハット部12及び摺動部13が一体形成された1ピース構造の鋳造品である。
【0027】
ディスクロータ10には、インナディスク部18のベンチレート部21側の面から、アウタディスク部19側へ向けて突出する鋳出し文字11が形成されている。鋳出し文字11は、各ベンチレート部21につき、1文字ずつ形成されており、鋳造によって形成されている。鋳出し文字11は、メーカ名、車体固有記号、摩耗限度マークを表示するためのものである。鋳出し文字11は、ベンチレート部21の内周端よりも外周端に近い位置に形成されており、ディスクロータ10の外周側から表示内容を目視にて確認しやすくなっている。
【0028】
ベンチレート部21や鋳出し文字11を形成するために、鋳造段階において中子が用いられる。インナハットタイプのディスクロータ10の周面部15には、鋳造段階において幅木が用いられることで、窓部22が形成されている。窓部22は、周面部15の内外に貫通する空間部であり、ベンチレート部21と同じ高さ位置に形成されている。また、図2に示すように、隣接する一対のベンチレート部21に中子を通せるように、これら一対のベンチレート部21に対して1つの窓部22が形成されている。
【0029】
ここで、鋳出し文字11は、鋳造によりディスクロータ10と一体で形成されていることから、文字が欠けていたり、一部が潰れていたりすることがある。そのため、鋳出し文字11が、メーカ名等の情報を読み取るのに支障のないレベルであるか否かを検査する必要がある。この検査のための検査装置30を以下に説明する。
【0030】
<検査装置30の構成>
検査装置30は、ハット部12の内周側に配置される支持軸部31を備えている。支持軸部31は上下方向に延びている。そして、支持軸部31の上端側に形成された係合部32が、取付孔16に挿入されてディスクロータ10と係合されることにより、支持軸部31にディスクロータ10が一体回転可能な状態で支持される。支持軸部31にはモータ33が接続されており、モータ33が回転することによりディスクロータ10は、自身の中心軸線を中心として回転することができるようになっている。
【0031】
ハット部12の外周側には、撮像部であるカラーカメラ35と、第1光源である青色LED36とが設置されている。ハット部12の内周面と、支持軸部31の外周面との隙間には、第2光源である赤色LED37が設置されている。
【0032】
赤色LED37は、窓部22を通じてベンチレート部21の内周端から外周端へ向けて、赤色に対応した波長の光を照射するものであり、光軸はベンチレート部21に沿った水平方向に向けられている。図2に示すように、赤色LED37は、隣接する一対のベンチレート部21に向けて光が照射されるようになっている。
【0033】
青色LED36は、ベンチレート部21の外周端から内周端へ向けて青色に対応した波長の光を照射するものであり、光軸はベンチレート部21に沿った水平方向に向けられている。図2に示すように、青色LED36は一対設けられており、隣接する一対のベンチレート部21の延長上にそれぞれ配置されている。
【0034】
カラーカメラ35は、青色LED36及び赤色LED37から照射される各波長の光を同時に取得することのできるカメラである。カラーカメラ35は、鋳出し文字11に対して斜め上方に配置されている。ここで、カラーカメラ35の俯角θ1は、水平方向に光軸が設けられた青色LED36及び赤色LED37の俯角θ2(=0度)よりも大きくなっている。カラーカメラ35は、図2に示すように平面視では一対の青色LED36の間、かつ赤色LED37の光軸の延長上に位置している。カラーカメラ35は、隣接する一対のベンチレート部21に配置された鋳出し文字11を一度に撮像できるように設定されている。例えば図2の状態であれば、「M」及び「I」の2つの鋳出し文字11を一度に撮像する。
【0035】
検査装置30は、モータ33、カラーカメラ35、青色LED36及び赤色LED37を制御するコントローラ40を備えている。
【0036】
コントローラ40は回転制御部41を備えており、回転制御部41によってモータ33の回転が制御される。コントローラ40はLED制御部42を備えており、LED制御部42によって一対の青色LED36及び赤色LED37の点灯及び消灯が制御される。コントローラ40はカメラ制御部43を備えており、カメラ制御部43によってカラーカメラ35による撮像タイミングが制御される。
【0037】
回転制御部41は、ディスクロータ10を回転させ、図2に示すように、赤色LED37が窓部22の中心位置となり、かつ各青色LED36が各ベンチレート部21の中心位置となる回転位置に停止させる。回転制御部41がモータ33を停止させた状態で、LED制御部42が各青色LED36及び赤色LED37を点灯させ、それと同時に、カメラ制御部43がカラーカメラ35による撮像を行わせる。カラーカメラ35は、各青色LED36及び赤色LED37によって光が照射されている2つの鋳出し文字11を一度に撮像する。
【0038】
カラーカメラ35による撮像が終了すると、LED制御部42が各青色LED36及び赤色LED37を消灯させるとともに、回転制御部41がモータ33を、次の窓部22の中心位置に赤色LED37が位置するまで回転させる。これにより、次の鋳出し文字11を撮像することができる。
【0039】
コントローラ40は画像記憶部44を備えており、画像記憶部44にはカラーカメラ35によって撮像された画像が記憶される。コントローラ40は画像処理部45を備えており、画像処理部45は、カラーカメラ35によって撮像された画像を画像記憶部44から取り出し、加工処理して鋳出し文字11の形状を特定する。以下、画像処理部45により実行される処理を説明する。
【0040】
<画像処理の流れ>
画像処理部45は、ステップS11において、カラーカメラ35によって鋳出し文字11が新たに撮像されたか否かを、画像記憶部44に記憶されている情報をもとに判断する。新たに鋳出し文字11が撮像されていない場合には本処理を終了する。新たに撮像された画像がある場合、ステップS12に移行する。
【0041】
なお、カラーカメラ35は一度に隣接する2つの鋳出し文字11を撮像し、これら2つの鋳出し文字11について以下の画像処理を実行する。例えば、図2の状態であれば「M」及び「I」の2つの鋳出し文字11を同時に撮像して画像処理する。ただし、画像処理は各鋳出し文字11について同じ処理であるため、以下においては図2に「M」と表示されている鋳出し文字11を例に説明する。
【0042】
ステップS12では、画像記憶部44から取り出した画像に対し赤色波長成分のみを取り出すフィルタをかけ、赤色波長成分により得られる第2画像51を抽出する。図3(a)に示すように、第2画像51は、鋳出し文字11に対して図3(a)の上側(ベンチレート部21の内周側)から赤色LED37が照射された状態における影である第2影画像部52が抽出されるため、鋳出し文字11の輪郭の一部(下側部分)が把握できる状態になる。第2画像51は画像記憶部44に一旦記憶される。
【0043】
次いで、ステップS13では、画像に対し青色波長成分のみを取り出すフィルタをかけ、青色波長成分により得られる第1画像53を抽出する。図3(b)に示すように、第1画像53としては、鋳出し文字11に対して図3(b)の下側(ベンチレート部21の外周側)から青色LED36が照射された状態における影である第1影画像部54が抽出されるため、鋳出し文字11の輪郭の一部(上側部分)が把握できる状態になる。第1画像53は画像記憶部44に一旦記憶される。
【0044】
その後、ステップS14では、画像記憶部44に一旦記憶された第2画像51と第1画像53を合成することにより、合成画像55を生成する。図3(c)に示すように、合成画像55は、第2影画像部52と第1影画像部54とが合成されたものであり、鋳出し文字11の輪郭全体が浮き彫りになる。すなわち、第2影画像部52と第1影画像部54とで囲まれた囲み領域56が鋳出し文字11に対応した領域に相当する。合成画像55は画像記憶部44に一旦記憶される。
【0045】
次いで、ステップS15では、鋳出し文字11に対応する囲み領域56の切出し処理が行われる。切出し処理は、第2影画像部52及び第1影画像部54と囲み領域56との境界を切り取って、図3(d)に示すように、囲み領域56に対応した文字部58のみの特定画像57を抽出する処理である。特定画像57は画像記憶部44に一旦記憶される。
【0046】
以上の画像処理部45による処理の結果、鋳出し文字11に対応した文字部58を含む特定画像57が生成される。
【0047】
図1に示すように、コントローラ40は画像判定部46を備えており、画像判定部46により特定画像57に含まれる文字部58が正常範囲か否かが判定される。画像判定部46は予め参照文字を登録しており、文字部58と参照文字との比較を行うことにより判定を行う。例えば、全体面積の比較、部分面積の比較、文字を分割して長さの差を比較、その他の比較を行い判定することができる。判定処理方法はこれに限られない。ディスクロータ10から読み取られた各文字部58のいずれか1つでも正常範囲にないと判定された場合には、ディスクロータ10は不良品であるとして出荷対象から除外される。
【0048】
<作用効果>
以上説明した検査装置30によれば、以下に示す作用効果が得られる。
【0049】
ディスクロータ10のベンチレート部21に形成された鋳出し文字11は、文字が欠けていたり、一部が潰れていたりすることがある。従来は正常に鋳出し文字11が形成されているか否かを目視により確認していたが、検査装置30により自動的に鋳出し文字11を特定して不良品であるか否かを判定することができる。
【0050】
ベンチレート部21の内周側から鋳出し文字11へ赤色LED37を照射することで、その光が鋳出し文字11によって遮られることにより形成される影(輪郭)が、鋳出し文字11のうちベンチレート部21の外周側に生じる。同様に、ベンチレート部21の外周側から鋳出し文字11へ青色LED36を照射することで、その光が鋳出し文字11によって遮られることにより形成される影(輪郭)が、鋳出し文字11のうちベンチレート部21の内周側に生じる。これらの影(輪郭)から鋳出し文字11の形状を特定するようにしたことにより、鋳出し文字11に対して真上からではなく横方向から光を照射しても、鋳出し文字11の形状を特定することができる。
【0051】
青色LED36と赤色LED37とから同時に光を照射した状態では、鋳出し文字11の影(輪郭)が消されてしまう。この点、青色LED36と赤色LED37とで異なる波長の光が照射され、カラーカメラ35によって撮像した後、赤色波長成分による第2影画像部52と、青色波長成分による第1影画像部54とを抽出し、それらを合成することにより、鋳出し文字11の形状を特定することができる。そのため、青色LED36のみから光を照射して撮像し、次いで赤色LED37のみから光を照射して撮像するという繰り返し動作が不要になって、一度に鋳出し文字11の形状を特定することができ、検査効率が向上する。
【0052】
ベンチレート部21には、メーカ名その他の情報が1つのベンチレート部21につき1文字形成された状態とされており、ディスクロータ10の外周に沿って多数の鋳出し文字11が存在している。この点、支持軸部31によってディスクロータ10をその中心軸線を中心として回転させることができるため、カラーカメラ35、青色LED36及び赤色LED37を固定した状態で次々と鋳出し文字11を検査していくことができる。
【0053】
ベンチレート部21の内周側であるハット部12内には赤色LED37のみを設置し、青色LED36及びカラーカメラ35をハット部12外に設置しているので、ハット部12内に多くの検査機器を設ける必要がなくなって、ディスクロータ10と検査機器との干渉が生じにくい。また、カラーカメラ35をハット部12外に設置していることから、鋳出し文字11に比較的近い位置でカラーカメラ35を十分に傾けた状態で撮像することができる。その結果、第2影画像部52及び第1影画像部54を輪郭が明確になった状態で得ることができる。
【0054】
インナハットタイプのディスクロータ10では、隣接する2つのベンチレート部21に対応して窓部22が1つ形成されている。そこで、内周側には1つの赤色LED37だけ設置して2つのベンチレート部21に光を照射するようにし、外周側には2つの青色LED36を設置している。そして、カラーカメラ35は2つの鋳出し文字11を同時に撮像して画像処理するようにしていることから、検査機器数を少なくしながら、複数同時に鋳出し文字11を検査することができ、低コストで検査効率を向上させることができる。しかも、カラーカメラ35は、図2の状態であれば「M」及び「I」の2つの鋳出し文字11を同時に撮像することから、各鋳出し文字11は平面視において若干斜め方向から撮像される。そのため、平面視においてベンチレート部21に沿った方向から撮像する場合に比べて、各鋳出し文字11の陰影を明瞭に特定することができる利点がある。
【0055】
<変形例>
上記実施の形態の変形例を以下に説明する。
【0056】
(1)鋳出し文字11が、例えば「O」「X」など、光の照射方向に対して複数回交差する部分を有する文字では、各LED36、37を鋳出し文字11に対して水平に光を照射しただけでは、第2影画像部52と第1影画像部54とで鋳出し文字11の全ての輪郭を抽出することができないことがある。例えば「O」であれば、外周側の輪郭は抽出することができるが、内周側の輪郭を抽出しきれないことがある。光の照射方向に対して複数回交差する部分を有する文字に対処するには、ベンチレート部21に干渉しない範囲で、各LED36,37を鋳出し文字11に対して上から斜め下方向へ向けるとよい。この場合でも、青色LED36の俯角θ2(>0度)よりカラーカメラ35の俯角θ1を大きくしておくことが必要である。
【0057】
(2)検査装置30では、ディスクロータ10の回転停止状態で各LED36、37を点灯させ、カラーカメラ35による撮像後に各LED36、37を消灯させてからディスクロータ10を回転させるようにしていた。これを、ディスクロータ10を回転させたまま、かつ各LED36、37を点灯させたまま、センサ等を用いて撮像タイミング等を決定し、カラーカメラ35が順次鋳出し文字11を撮像してもよい。この場合、ディスクロータ10が一周した段階で、ディスクロータ10の回転を停止させて次の検査対象であるディスクロータ10と交換することで、更に検査効率が向上する。
【0058】
(3)ディスクロータ10は、1ピース構造でなくてもよい。例えば、摺動部13だけで鋳物部品が製造され、ハット部12が例えばアルミニウム等によって製造され、それらを接続してなる2ピース構造であってもよい。また、インナハットタイプではなく、アウタディスク部19と周面部15とが連結されるアウタハットタイプのディスクロータに適用してもよい。また、フィン20及びベンチレート部21の形状は直線的なものに限らず、曲線的なものであってもよい。
【0059】
(4)検査対象は、ディスクロータ10に限らず、貫通孔が形成された鋳造品であればよい。この場合、LED等の光源及びカラーカメラ35等の撮像部は、貫通孔の両端から孔内部に進入した状態で撮像するものであってもよい。
【0060】
(5)検査装置30は、鋳出し文字11に限らず、貫通孔の内部に許容範囲を超える突起が形成されているか否かを検査することに用いてもよい。
【0061】
(6)異なる方向から互いに波長が異なる光を照射するために、青色LED36と赤色LED37とを用いたが、それ以外の波長のLEDを用いてもよい。また、LED以外の光源を用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…ディスクロータ(鋳造品)、11…鋳出し文字(突出部)、12…ハット部、13…摺動部、14…底面部、15…周面部、16…取付孔、17…摺動面、18…インナディスク部、19…アウタディスク部、20…フィン、21…ベンチレート部(貫通孔)、22…窓部、30…検査装置(鋳造品検査装置)、31…支持軸部、32…係合部、33…モータ、35…カラーカメラ(撮像部)、36…青色LED(第1光源)、37…赤色LED(第2光源)、40…コントローラ、41…回転制御部、42…LED制御部、43…カメラ制御部、44…画像記憶部、45…画像処理部(特定部)、46…画像判定部、51…第2画像、52…第2影画像部、53…第1画像、54…第1影画像部、55…合成画像、56…囲み領域、57…特定画像、58…文字部。
図1
図2
図3