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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】埋設物探査装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20060101AFI20230309BHJP
   G01S 15/89 20060101ALI20230309BHJP
   G01N 29/07 20060101ALI20230309BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G01V1/00 B
G01S15/89 B
G01N29/07
G01N29/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019067309
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165842
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 裕太
(72)【発明者】
【氏名】小川 建三
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-232627(JP,A)
【文献】特開2003-169800(JP,A)
【文献】特開2018-119799(JP,A)
【文献】特開2004-077357(JP,A)
【文献】米国特許第6408695(US,B1)
【文献】特開2002-209894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01S 15/00-15/96
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数の音波を送受信可能なマトリクス状に配列された複数の第1プローブと、
前記第1周波数より高い第2周波数の音波を送受信可能なマトリクス状に配列された複数の第2プローブと、
を有するプローブ装置と、
前記第1プローブの内の一個の第1プローブが前記第1周波数の音波を送信してから、残余の複数の前記第1プローブそれぞれが探査対象物に反射した前記第1周波数の音波を受信するまでの経過時間に基づいて前記探査対象物までの距離を算出し、算出した距離と受信した電波の強度を紐付けた第1のデータ群を作成し、また、全ての第1プローブが順次前記第1周波数の音波を送信し残余の複数の第1プローブそれぞれが反射した音波を受信することにより前記第1のデータ群を作成し、作成された前記第1のデータ群の全てを加算して前記探査対象物の位置を推定する第1推定部と、
前記第2プローブの内の一個の第2プローブが前記第2周波数の音波を送信してから複数の前記第2プローブそれぞれが前記探査対象物に反射した前記第2周波数の音波を受信するまでの経過時間に基づいて前記探査対象物までの距離を算出し、算出した距離と受信した電波の強度を紐付けた第2のデータ群を作成し、また、全ての第2プローブが順次前記第2周波数の音波を送信し残余の複数の第2プローブそれぞれが反射した音波を受信することにより前記第2のデータ群を作成し、作成された前記第2のデータ群の全てを加算して前記探査対象物の位置を推定する第2推定部と、
前記第1推定部が作成した前記第1のデータ群の全てを加算した結果と、前記第2推定部が作成した前記第2のデータ群の全てを加算した結果と、を加算し、加算された値が閾値以下の場合には加算された値を0に置換した後、加算された信号レベルに応じて前記探査対象物の位置を推定する第3推定部と、
を有する解析装置と、
を備える埋設物探査装置。
【請求項2】
前記第2プローブは、前記第1プローブより小型に形成されマトリクス状に配置された前記第1プローブの間に配置されている請求項1に記載の埋設物探査装置。
【請求項3】
前記第1推定部および前記第3推定部は、加算して得られた値が所定の閾値以下である場合、前記得られた値を零に置換する請求項1または2に記載の埋設物探査装置。
【請求項4】
第1方向と前記第1方向に直交する第2方向へマトリクス状に配置された前記第1プローブの、前記第1方向の両端に配置された前記第1プローブ間の距離をD1,音波の伝搬速度をV,前記第1周波数をf1、探査する深さをN,としたときに下記のに示される条件を満たす請求項1から3の何れか一項に記載の埋設物探査装置。
【数1】
【請求項5】
前記探査対象物が鉄筋コンクリートに埋設されたものであり、前記第1周波数をf1、前記鉄筋コンクリート中の音波の伝搬速度をV,前記鉄筋コンクリート内に含まれる粗骨材の粒径の最大値をA,としたときに下記の式に示される条件を満たす請求項1から4の何れか一項に記載の埋設物探査装置。
f1<V/(2A)
【請求項6】
隣接する前記第1プローブ間の距離をL1,音波の波長をλ1,としたときに下記の式に示される条件を満たす請求項1から5の何れか一項に記載の埋設物探査装置。
L1<λ1/2
【請求項7】
マトリクスの行もしくは列を構成する前記第1プローブの数N1は、マトリクスの両端に配置された前記第1プローブ間の距離をD1,隣接する前記第1プローブ間の距離をL1としたときに下記の式に示される条件を満たす請求項6に記載の埋設物探査装置。
N1>D1/L1
【請求項8】
前記第1推定部及び前記第2推定部は、距離変換部と合成部とを有し、
前記第1推定部の距離変換部は、前記第1周波数の音波が送信された時刻から前記探査対象物に反射した前記第1周波数の音波を受信するまでの経過時間に基づいて、前記第1プローブから前記探査対象物までの距離を算出し、算出した距離と受信した音波の強度の値とをひも付けて記憶部に記憶し、
前記第1推定部の合成部は、複数の前記第1プローブごとに求めた前記第1プローブそれぞれから前記探査対象物までの距離と距離にひも付けられた音波の強度の値とに基づいて、前記探査対象物の位置を推定し、
前記第2推定部の距離変換部は、前記第2周波数の音波が送信された時刻から前記探査対象物に反射した前記第2周波数の音波を受信するまでの経過時間に基づいて、前記第2プローブから前記探査対象物までの距離を算出し、算出した距離と受信した音波の強度の値とをひも付けて記憶部に記憶し、
前記第2推定部の合成部は、複数の前記第2プローブごとに求めた前記第2プローブそれぞれから前記探査対象物までの距離と距離にひも付けられた音波の強度の値とに基づいて、前記探査対象物の位置を推定する請求項1から7の何れか一項に記載の埋設物探査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設物探査装置、及び埋設物探査装置に使用するプローブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の建造物に耐震補強工事を行う場合、ボーリング工事や後打ちアンカ打設工事をする際に、鉄筋の誤切断、埋設配管の誤切断、埋設ケーブルの誤切断などの不具合が多発している。
【0003】
このような不具合を防止するために、電磁波レーダーを用いた埋設物探査装置等で埋設物の有無を事前に調査することが増えている。埋設物の探査には、例えば、開口合成法を用いた埋設物探査装置が使用される(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「全波形サンプリング処理(FSAP)方式を用いた逆散乱イメージング法による欠陥の超音波画像化」 応用力学論文集Vol13,pp89-97 2010年8月、土木学会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの埋設物探査装置では、電磁波レーダーの焦点を深い位置に合わせているため、焦点よりも浅い位置にある埋設物を表示できないことがある。また、ゴーストを生じて、埋設物がないにもかかわらずあたかも埋設物があるかのように表示されることがある。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、埋設物探査装置の探査精度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、実施形態に係る埋設物探査装置は、プローブ装置と解析装置を備える。プローブ装置は、第1周波数の音波を送受信可能なマトリクス状に配列された複数の第1プローブと、第1周波数より高い第2周波数の音波を送受信可能なマトリクス状に配列された複数の第2プローブと、を有する。
解析装置は、第1プローブの内の一個の第1プローブが第1周波数の音波を送信してから、残余の複数の第1プローブそれぞれが探査対象物に反射した第1周波数の音波を受信するまでの経過時間に基づいて探査対象物までの距離を算出し、算出した距離と受信した電波の強度を紐付けた第1のデータ群を作成し、また、全ての第1プローブが順次第1周波数の音波を送信し残余の複数の第1プローブそれぞれが反射した音波を受信することにより第1のデータ群を作成し、作成された第1のデータ群の全てを加算して探査対象物の位置を推定する第1推定部と、第2プローブの内の一個の第2プローブが第2周波数の音波を送信してから複数の第2プローブそれぞれが探査対象物に反射した第2周波数の音波を受信するまでの経過時間に基づいて探査対象物までの距離を算出し、算出した距離と受信した電波の強度を紐付けた第2のデータ群を作成し、また、全ての第2プローブが順次第2周波数の音波を送信し残余の複数の第2プローブそれぞれが反射した音波を受信することにより第2のデータ群を作成し、作成された第2のデータ群の全てを加算して探査対象物の位置を推定する第2推定部と、第1推定部が作成した第1のデータ群の全てを加算した結果と、第2推定部が作成した第2のデータ群の全てを加算した結果とを加算し、加算された値が閾値以下の場合には加算された値を0に置換した後、加算された信号レベルに応じて探査対象物の位置を推定する第3推定部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る埋設物探査装置のブロック図である。
図2】プローブの構成について説明するための図である。
図3】プローブの形状について説明するための図である。
図4】受信部のブロック図である。
図5】第1推定部のブロック図である。
図6】送信部と受信部の動作について説明するための図である。
図7】距離変換部の動作について説明するための図である。
図8】距離変換部の動作について説明するための図である。
図9】合成部の動作について説明するための図である。
図10】距離変換部の動作について説明するための図である。
図11】合成部の動作について説明するための図である。
図12】第3推定部の動作について説明するための図である。
図13】プローブの配置について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る埋設物探査装置について、図を参照して説明する。説明にあたっては、相互に直行するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を適宜用いる。
【0010】
図1は、本実施形態に係る埋設物探査装置1のブロック図である。埋設物探査装置1は、例えば、コンクリートに埋設された鉄筋や配管を探査する装置である。
【0011】
図1に示されるように、埋設物探査装置1は、プローブ装置100と解析装置200とを有する。
【0012】
(プローブ装置)
図2は、プローブ装置100の構成について説明するための図である。図2に示されるように、プローブ装置100は、第1周波数f1の音波を送受信可能なマトリクス状に配列された複数の第1プローブPと、第2周波数f2の音波を送受信可能なマトリクス状に配列された複数の第2プローブQと、を有している。図2では、第1プローブPを文字Pを記載した四角で表し、第2プローブを文字Qを記載した四角で表している。ここでは、第1周波数f1を50kHz,第2周波数f2を100kHzとする。
【0013】
隣接する第1プローブP間の間隔L1は、第1周波数f1の音波の波長をλ1、コンクリートの中における音波の伝搬速度をVとすると、式1を満たすように設定される。
L1≦λ1/2 (式1)
λ1=V/f1
【0014】
コンクリートの中における音波の伝搬速度Vを4000m/s、f1を50kHzとすると、L1は40mm以下となる。
【0015】
隣接する第2プローブQ間の間隔L2は、第2周波数f2の音波の波長をλ2、コンクリートの中における音波の伝搬速度をVとすると、式2を満たすように設定される。
L2≦λ2/2 (式2)
λ2=V/f2
【0016】
コンクリートの中における音波の伝搬速度Vを4000m/s、f2を100kHzとすると、L2は20mm以下となる。
【0017】
図2において、右上のP8の第1プローブPから右下のP128の第1プローブPまでのX軸方向の長さD1は、コンクリートの中における音波の伝搬速度をV、探査しようとするZ軸方向の深さをNとすると、式3を満たすように設定される。
【数1】
【0018】
Nを400mmとした場合、D1は358mm以上となる。L1を40mmとした場合、X軸方向に並べる第1プローブPの数N1は、9個以上必要となる。ここでは、N1を16としている。
【0019】
右上のQ7の第2プローブQから右下のQ140の第2プローブQまでのX軸方向の長さD2は、コンクリートの中における音波の伝搬速度をV、探査しようとするZ軸方向の深さをNとすると、式4を満たすように設定される。
【数2】
【0020】
Nを400mmとした場合、D2は253mm以上となる。L2を20mmとした場合、X軸方向に並べる第2プローブQの数N2は、13個以上必要となる。ここでは、N2を20としている。
【0021】
以上に説明したように、図2に示されるプローブ装置100では、第1プローブPがX軸方向に16個、Y軸方向に8個配置されている。図2の左上からY方向に向かってP1からP8の第1プローブPが配置されている。第1プローブの2行目には、Y方向に向かってP9からP16の第1プローブPが配置されている。第1プローブPの一番下の行には、Y方向に向かってP121からP128の第1プローブPが配置されている。
【0022】
第2プローブQの1行目には、Y方向に向かってQ1からQ7の第2プローブQが配置されている。第2プローブQの2行目には、Y方向に向かってQ8からQ14の第2プローブQが配置されている。第2プローブQの一番下の行には、Y方向に向かってQ134からQ140の第2プローブQが配置されている。プローブ装置100は、マトリクス状に配置された128個の第1プローブPと140個の第2プローブQを有している。第2プローブQそれぞれは、複数の第1プローブPの間に配置されている。
【0023】
図3は、第1プローブPのイメージ図である。第1プローブPの形状は、立方体である。例えば、第1プローブPのX軸方向の長さLxは21mmであり、Y軸方向の長さLyは21mmであり、Z軸方向の長さは21mmである。第1プローブPは、複数の振動素子をマトリクス状に組み合わせて構成されている。第1プローブPに使用される振動素子は、第1周波数f1の音波に共振する振動素子である。音波が出力される方向を+Z方向とした場合、第1プローブPの-Z側にダンパ12が設けられている。ダンパ12は、四角錐の部分と矩形部分とからなる。ダンパ12は、タングステン等で形成されている。ダンパ12は、音波を+Z方向に効率よく出力するために設けられる。
【0024】
第2プローブQの形状は、立方体である。例えば、第2プローブQのX軸方向の長さLxは11mmであり、Y軸方向の長さLyは11mmであり、Z軸方向の長さは11mmである。
【0025】
(解析装置)
図1に示すように、解析装置200は、送信部210、受信部220、制御部250、第1推定部260、第2推定部270、第3推定部280、表示部300を有する。
【0026】
制御部250は、CPU251,RAM253,ROM255を備える。ROM255には、埋設物を探査するためのアプリケーションソフトウエア等が記憶されている。RAM253は、CPU251のワーキングエリアとして使用される。CPU251は、ユーザによる操作及びROM255に記憶されているアプリケーションソフトウエアに基づいて各部を制御する。
【0027】
送信部210は、第1送信部211と第2送信部212を有する。第1送信部211は、制御部250の指示に基づいて、第1周波数f1の音波に対応する信号を第1プローブPに送信する。具体的には、第1送信部211は、例えば、主な周波数成分が50kHzであり、信号レベルが200Vの信号を第1プローブPに送信する。
【0028】
第2送信部212は、制御部250の指示に基づいて、第2周波数f2の音波に対応する信号を第2プローブQに送信する。具体的には、第2送信部212は、例えば、主な周波数成分が100kHzであり、信号レベルが200Vの信号を第2プローブQに送信する。
【0029】
受信部220は、第1受信部230と第2受信部240とを有する。図4は、第1受信部230のブロック図である。第1受信部230は、第1プローブPの数(128個)に対応する数のAMP231及びA/Dコンバータ232を有している。AMP231それぞれは、対応する第1プローブPが受信した音波の信号を増幅する。A/Dコンバータ232は、増幅された音波の信号をΔt(例えば、100ns)ごとにサンプリングしてA/D変換する。第1受信部230は、第1送信部211が信号を送信した時刻t0から各サンプリング時刻までの経過時間T(i)と受信した音波の信号の強度とをひも付けて、複数の第1プローブPごとに制御部250内のRAM253に記憶する。
【0030】
第2受信部240の構成は、第1受信部230の構成とほぼ同じである。第2受信部240は、第2プローブQの数(140個)に対応する数のAMP231及びA/Dコンバータ232を有している。
【0031】
図1に示す第1推定部260は、第1周波数f1の音波が送信されてから複数の第1プローブそれぞれが探査対象物に反射した第1周波数f1の音波を受信するまでの経過時間に基づいて、探査対象物の位置を推定する。図5に示されるように、第1推定部260は、距離変換部261と合成部262を有する。
【0032】
距離変換部261は、第1送信部211が信号を送信した時刻t0から探査対象物に反射した第1周波数f1の音波を受信するまでの経過時間T(i)を探査対象物までの距離に変換する。距離変換部261は、探査対象物までの距離と信号レベルとをひも付けて、複数の第1プローブPごとにRAM253に記憶する。
【0033】
合成部262は、複数の第1プローブPごとに求めた第1プローブPそれぞれから探査対象物までの距離に基づいて、探査対象物の位置を推定する。また、合成部262は、信号レベルで表されたデータを画像データに変換して表示部300に供給する。詳細は後述する。
【0034】
図1に示す第2推定部270は、第2送信部212が信号を送信した時刻t0から探査対象物に反射した第2周波数f2の音波を受信するまでの経過時間T(i)を探査対象物までの距離に変換する。第2推定部270は、探査対象物までの距離と信号レベルとをひも付けて、複数の第2プローブQごとにRAM253に記憶する。
【0035】
第2推定部270は、複数の第2プローブQごとに求めた第2プローブQそれぞれから探査対象物までの距離に基づいて、探査対象物の位置を推定する。また、第2推定部270は、信号レベルで表されたデータを画像データに変換して表示部300に供給する。
【0036】
第3推定部280は、第1推定部260と第2推定部270の推定結果に基づいて探査対象物の位置を推定する。また、第3推定部280は、信号レベルで表されたデータを画像データに変換して表示部300に供給する。
【0037】
表示部300は、液晶ディスプレイである。表示部300は、第1推定部260、第2推定部270及び第3推定部280から取得した画像データに基づく画像を表示する。
【0038】
(動作)
次に、埋設物探査装置1の動作について説明する。最初に、第1送信部211は、制御部250の指示に基づいて、第1周波数f1の音波に対応する信号を1番目の第1プローブP(P1)に送信する。P1の第1プローブPは、第1周波数f1の音波を送信する。また、第1送信部211は、第1プローブPに信号を送信した時刻t0を第1受信部230に通知する。
【0039】
P2からP128の第1プローブPは、探査対象物に反射した音波を受信し、受信した信号を解析装置200に供給する。図4に示す解析装置200のAMP231は、供給された信号を増幅し、A/Dコンバータ232に供給する。A/Dコンバータ232は、第1送信部211が信号を送信した時刻t0から各サンプリング時刻までの経過時間T(i)と信号レベルとをひも付けてRAM253に記憶する。
【0040】
図6は、送信信号と受信信号との関係を示す図である。図6に示されるように、A/Dコンバータ232は、増幅された音波の信号をΔtごとにサンプリングし、A/D変換して増幅された音波の信号レベルを取得する。Δtは、例えば100nsである。A/Dコンバータ232は、サンプリング周期であるΔtごとにカウンタを動作させ、カウンタの値KにΔtを掛け合わせて、第1送信部211が信号を送信した時刻t0から各サンプリング時刻までの経過時間T(i)を求める。A/Dコンバータ232は、経過時間T(i)と信号レベルとをひも付けてRAM253に記憶する。詳細には、A/Dコンバータ232は、送信した第1プローブPがP1からP128の何れのプローブであるかの情報と、RAM253に送信するデータがP1からP128の何れのプローブで受信した信号のデータであるかを上記の情報とをひも付けてRAM253に記憶する。
【0041】
図5に示す距離変換部261は、第1送信部211が信号を送信した時刻t0から探査対象物に反射した第1周波数f1の音波を受信するまでの経過時間T(i)を、音波を送信した第1プローブPから探査対象物までの距離r1と、探査対象物から音波を受信した第1プローブPまでの距離r2に変換する。P1の第1プローブPが音波を送信し、P2の第1プローブPで探査対象物に反射した音波を受信する場合について図7を参照して説明する。P1の第1プローブPから図7に斜線で示す探査対象物までの距離をr1、探査対象物からP2の第1プローブPまでの距離をr2、コンクリートの中における音波の伝搬速度をV、時刻t0から各サンプリング時刻までの経過時間をT(i)とすると、式5が成立する。
r1+r2=T(i)×V (式5)
【0042】
P1の第1プローブPからP2の第1プローブPまでの距離は既知である。また、P1の第1プローブPから送信される音波の深さ方向に対する角度も既知である。したがって、P1の第1プローブPから探査対象物までの距離r1および探査対象物からP2の第1プローブPまでの距離r2を求めることができる。距離変換部261は、信号レベルと経過時間T(i)から求めた距離r1およびr2の値とをひも付けてRAM253に記憶する。
【0043】
図8は、第1プローブPで取得したデータを記憶するRAM253に作成される三次元の記憶領域のイメージ図である。三次元の記憶領域は、図2に示されるX軸方向に配置されたP1からP121の第1プローブPの数(16マス)、Y軸方向に配置されたP1からP8の第1プローブPの数(8マス)、及び探査する深さ方向に対応している。探査の分解能Mを4mmとした場合、4mm単位で信号レベルを記憶できるように記憶領域を確保する。探査の分解能Mを4mmとし探査する深さNを400mmとした場合、100マスが準備される。つまり、16×8×100のマトリクス状の記憶領域が作成される。
【0044】
距離変換部261は、P1の第1プローブPが送信してからP2の第1プローブPが探査対象物に反射した音波を受信するまでの経過時間T(i)から求めた、P2の第1プローブPから探査対象物までの距離に対応するマスに、P2の第1プローブPが受信した音波の信号レベルの値を入力する。
【0045】
同様にして、距離変換部261は、P1の第1プローブPの音波の送信に対して、P3からP128の第1プローブPが受信した探査対象物に反射した音波を受信するまでの経過時間T(i)から求めた、P3からP128の第1プローブPそれぞれから探査対象物までの距離を求め、距離に対応するマスに信号レベルの値を入力する。
【0046】
図8に示される例では、P1の第1プローブPは送信プローブであるので、1列目のZ軸方向のすべてのマスが「0」になっている。2列目のZ軸方向のすべてのマスが「0」であるので、P9の第1プローブPは探査対象物に反射した音波を受信していない。P17の第1プローブPは、探査対象物に反射した音波を受信しているので、所定の距離に対応するマスに受信した信号レベルの値が入力されている。
【0047】
第1送信部211は、P1の第1プローブPに信号を送信した後、所定時間経過後にP2の第1プローブPに信号を送信する。P2の第1プローブPは音波を送信し、P1及びP3からP128の第1プローブPは、探査対象物に反射した音波を受信し、解析装置200に受信した信号を供給する。距離変換部261は、P1及びP3からP128までの127個の第1プローブPが受信した音波について距離r1およびr2の値を求める。距離変換部261は、距離に対応するマスに信号レベルの値を入力する。
【0048】
以後、第1送信部211は、第1周波数f1の音波に対応する信号をP3からP128の第1プローブPに順次所定の時間間隔をおいて送信する。距離変換部261は、P3からP128の第1プローブPが送信した音波について距離r1およびr2の値を求め、距離に対応するマスに信号レベルの値を入力する。距離変換部261は、第1プローブPの音波の送信それぞれに対して、図8に示されるデータを作成する。したがって、距離変換部261は、図8に示されるマトリクス状の記憶領域を16,256個(=128×127)作成する。
【0049】
合成部262は、距離変換部261が作成した16,256個(=128×127)のデータを合成する。具体的には、合成部262は、16,256個のデータの対応するマスの信号レベルの値を加算する。加算された値が大きいほど、探査対象物が存在する確率が高いことを表す。
【0050】
また、合成部262は、図9に示されるように、加算された信号レベルの値を輝度に変換した画像データを作成する。例えば、合成部262は、加算された信号レベルの値を白から黒までの256段階の輝度に変換する。例えば、合成部262は、加算された信号レベルの値が大きいほど、輝度を低く(黒に近く)する。輝度が低いほど、探査対象物が存在する確率が高いことを表す。また、合成部262は、加算された値が所定の閾値以下である場合、加算された信号レベルの値を「0」に置換する。合成部262は、作成した画像データを表示部300に供給する。
【0051】
P1からP128までの第1プローブPの送信を終えると、第2プローブQについて、上記と同様の処理を行う。具体的には、第2送信部212は、制御部250の指示に基づいて、第2周波数f2の音波に対応する信号をQ1からQ140の第2プローブQに順次所定の時間間隔をおいて送信する。第2受信部240は、第2送信部212が信号を送信した時刻t0から各サンプリング時刻までの経過時間T(i)と受信した信号レベルとをひも付けてRAM253に記憶する。また、第2受信部240は、送信した第2プローブQがQ1からQ140の何れのプローブであるかの情報と、RAM253に送信するデータがQ1からQ140の何れのプローブで受信した信号のデータであるかを上記の情報とをひも付けてRAM253に記憶する。
【0052】
図10は、第2プローブQで取得したデータを記憶するRAM253に作成される三次元の記憶領域のイメージ図である。三次元の記憶領域は、図2に示されるX軸方向に配置されたQ1からQ134の第2プローブQの数(20マス)、Y軸方向に配置されたQ1からQ7の第2プローブQの数(7マス)、及び探査する深さ方向に対応している。探査の分解能Mを4mmとした場合、4mm単位で信号レベルを記憶できるように記憶領域を確保する。探査の分解能Mを4mmとし探査する深さNを400mmとした場合、100マスが準備される。つまり、20×7×100のマトリクス状の記憶領域が作成される。
【0053】
第2推定部270は、第2プローブQそれぞれに対応する図10に示されるマトリクス状の記憶領域を19,460個(=140×139)作成する。第2推定部270は、19,460個のデータの対応するマスの信号レベルの値を加算する。加算された値が大きいほど、探査対象物が存在する確率が高いことを表す。また、第2推定部270は、図11に示されるように、加算された信号レベルの値を輝度に変換した画像データを作成し、表示部300に供給する。
【0054】
Q1からQ140までの第2プローブQの送信を終えると、第3推定部280は、第1推定部260と第2推定部270の推定結果に基づいて探査対象物の位置を推定する。具体的には、第3推定部280は、第1推定部260の合成部262が加算した図8に示す16,256個のマトリクス状に配置されたデータの加算結果と、第2推定部270の合成部262が加算した図10に示す19,460個のマトリクス状に配置されたデータの加算結果と、を対応するマスごとに加算する。そして、第3推定部280は、加算された値が所定の閾値以下の場合、加算された値を「0」に置換する。第3推定部280は、図12に示されるように、加算された信号レベルの値を輝度に変換した画像データを作成し、表示部300に供給する。
【0055】
50kHzの音波に基づいて作成した図9に示される画像データでは、深度が浅い位置(-Z側)に対応するマスにゴーストがある。100kHzの音波に基づいて作成した図11に示される画像データでは、深度が浅い位置(-Z側)に対応するマスにゴーストがない。50kHzの音波に基づいて作成した画像データと100kHzの音波に基づいて作成した画像データとを足し合わせると、ゴースト部分の値は、探査対象物が存在する部分の値に比べて相対的に小さな値になる。第3推定部280は、閾値以下の値をノイズと判断して「0」に置換する。したがって、図12に示されるように、配管等の探査対象物が存在する位置の色は濃く表示されるが、ゴースト部分は表示されていない。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態に係る埋設物探査装置1は、第1周波数f1の音波を送受信可能なマトリクス状に配列された複数の第1プローブPから取得したデータに基づいて埋設物の位置を推定する第1推定部260と、第2周波数f2の音波を送受信可能なマトリクス状に配列された複数の第2プローブQから取得したデータに基づいて埋設物の位置を推定する第2推定部270と、第1推定部が作成したデータと第2推定部が作成したデータに基づいて埋設物の位置を推定する第3推定部280を有する。第1周波数f1の音波を送受信可能なマトリクス状に配列された複数の第1プローブPと第2周波数f2の音波を送受信可能なマトリクス状に配列された複数の第2プローブQから取得したデータに基づいて埋設物の位置を推定することにより、埋設物探査装置1の探査精度を向上することができる。
【0057】
第2周波数f2は第1周波数f1より高い周波数であり、第2プローブQは第1プローブPに比べて小型である。第2プローブQは、マトリクス状に配置された第1プローブPの間に配置されている。小型の第2プローブQを第1プローブPの間に配置することにより、プローブ装置100を小型化することができる。
【0058】
第1プローブPは、式3の条件を満たし、第2プローブQは式4の条件を満たすように配置されている。これにより、探査精度を上げることができる。
【0059】
第1プローブPは、式1の条件を満たし、第2プローブQは式2の条件を満たすように配置されている。これにより、探査精度を上げることができる。
【0060】
ここで、第1周波数f1の決め方について説明する。鉄筋コンクリート内に含まれる粗骨材の粒径の最大値をA、第1周波数f1の波長をλ1とすると、式6の条件を満たす必要がある。
A<λ1/2 (式6)
【0061】
音波の伝搬速度をVとすると、λ1=V/f1であるので、式7の条件を満たすように第1周波数f1を設定する。
f1<V/(2A) (式7)
【0062】
例えば、鉄筋コンクリート内に含まれる粗骨材の粒径の最大値をAを20mmとした場合、V=4000m/sであるので、第1周波数f1を100kHz以下に設定すればよい。音波の半波長が、鉄筋コンクリート内に含まれる粗骨材の粒径の最大値よりも長ければ、音波が粗骨材で散乱することによる、プローブに到達する音波の強度の減衰を抑制することができる。
【0063】
解析に使用する周波数を2種類とする場合、第2周波数f2は、第1周波数f1の2倍程度に設定する。探査の深さNが400mmの場合、第1周波数f1の音波によって400mm付近の情報を正確に取得できるが、深さが浅くなるにしたがって取得する情報の精度が低下していく。したがって、中間の深さに音波の焦点を合わせて取得した情報を加えて解析することにより解析精度を向上することができる。
【0064】
また、上記の説明では、2種類の周波数を使用して解析する場合について説明したが、使用する周波数を2種類に限定する必要はない。解析装置の処理能力と許容されるプローブ装置の大きさに基づいて、使用する周波数の数を増やしてもよい。例えば、使用する周波数を4種類にしてもよい。使用する周波数を4種類とする場合、第2周波数f2を第1周波数f1の1.5倍程度、第3周波数f3を第1周波数f1の2倍程度、第4周波数f4を第1周波数f1の4倍程度に設定する。
【0065】
また、図2を用いて説明した第1プローブP及び第2プローブQの配置は一例であり、これに限定する必要はない。例えば、図13に点線で示すように、第2プローブQを増やしてもよい。また、図2に示す例では、第1プローブPをY軸方向に8個配置しているが、Y軸方向に16個配置してもよい。
【0066】
第1プローブP及び第2プローブQの配置は、式1から式4を満たすことが望ましいが、プローブ装置100を移動させて計測することによりプローブの数を減らすことができる。プローブ装置100を移動させて計測したデータを合成することにより、解析精度を高くすることができる。具体的には、所定の位置にプローブ装置100を配置して、各プローブで受信した音波の信号レベルと経過時間とをRAM253に記憶する。次に、プローブ装置100を移動させて、各プローブで受信した音波の信号レベルと経過時間とをRAM253に記憶する。プローブ装置100を移動させて、同様の測定を行う。十分なデータを計測後、計測したデータに基づいて第1推定部260、第2推定部270、第3推定部280により、探査対象物の解析を行う。このような処理を行うことにより、解析精度を高くすることができる。また、深い位置の探査が可能になる。
【0067】
また、第2プローブQを第1プローブPを補完するプローブと考える場合、第2プローブQの数を減らしてもよい。第2プローブQの数を減らすことにより、解析装置200の処理負荷を軽くすることができる。
【0068】
上記の説明では、コンクリートの中における音波の伝搬速度Vを4000m/sとして説明したが、コンクリートを構成する材質等により、音波の伝搬速度は異なる。埋設物が埋設されているコンクリートの材質等に対応する音波の伝搬速度を用いて式1~式7の計算を行う。
【0069】
また、上記の説明では、コンクリートの中の埋設物を探査する場合について説明したが、埋設物が埋設されている媒体をコンクリートに限定する必要はない。例えば、媒体は、土、木、金属等であってもよい。音波の伝搬速度Vを各媒体における伝搬速度とすることにより、上述の方法で探査対象物を探査することができる。
【0070】
また、探査対象物をものに限定する必要はない。例えば、コンクリートの土台等の中に生じた亀裂や空間を探査することもできる。コンクリートの中に亀裂や隙間がある場合、亀裂や隙間で音波が屈折したり反射強度が変化する。コンクリートの中の亀裂や隙間の有無による音波の反射強度の差が小さい場合、例えば、測定回数を増やして統計処理を行うことにより、解析精度を向上することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1…埋設物探査装置
12…ダンパ
100…プローブ装置
200…解析装置
210…送信部
211…第1送信部
212…第2送信部
220…受信部
230…第1受信部
231…AMP
232…A/Dコンバータ
240…第2受信部
250…制御部
260…第1推定部
261…距離変換部
262…合成部
270…第2推定部
280…第3推定部
300…表示部
P…第1プローブ
Q…第2プローブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13