(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】測位装置、測位方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230309BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20230309BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2019082941
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 薫
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-288514(JP,A)
【文献】特開2019-015642(JP,A)
【文献】特開2016-223904(JP,A)
【文献】特開2011-185707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-15/14
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G06Q 10/00-10/30
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を用いた測位を行う測位部と、
特定の点の測位において相対的に少ないレーザー波数での測位を行う第1の測位モードおよび相対的に多いレーザー波数での測位を行う第2の測位モードの一方を選択する測位モード選択部と、
前記第1の測位モードおよび前記第2の測位モードの前記選択された回数を個別にカウントするカウント部と
を備える測位装置。
【請求項2】
レーザー光を用いた測位を行う方法であって、
特定の点の測位において相対的に少ないレーザー波数での測位を行う第1の測位モードおよび相対的に多いレーザー波数での測位を行う第2の測位モードの一方を選択する測位モード選択ステップと、
前記第1の測位モードおよび前記第2の測位モードの前記選択された回数を個別にカウントするカウントステップと
を備える測位方法。
【請求項3】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータに
特定の点の測位において相対的に少ないレーザー波数での測位を行う第1の測位モードおよび相対的に多いレーザー波数での測位を行う第2の測位モードの一方を選択する測位モード選択ステップと、
前記第1の測位モードおよび前記第2の測位モードの前記選択された回数を個別にカウントするカウントステップと
を実行させるプログラム。
【請求項4】
前記第1の測位モードおよび前記第2の測位モードの前記選択された回数のカウント数を管理サーバに送信する送信部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項5】
レーザー光を用いた測位を行う測位部と、
特定の点の測位において相対的に少ないレーザー波数での測位を行う第1の測位モードおよび相対的に多いレーザー波数での測位を行う第2の測位モードの一方を選択する測位モード選択部と、
前記第1の測位モードおよび前記第2の測位モードの前記選択されたモード情報と測位データを管理サーバに送る送信部と、
を備える測位装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置の測定を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
トータルステーションを用いて測位(位置の測定)を行う技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トータルステーションをレンタルで利用する形態がある。この場合、例えば1週間でレンタル料金がいくら、といった形態が利用される。しかしながら、この形態は、ユーザの利用状態に即したものではなかった。このような背景において、本発明は、トータルステーションのレンタル事業において、利用者の利用形態に即した課金が可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、レーザー光を用いた測位を行う測位部と、特定の点の測位において相対的に少ないレーザー波数での測位を行う第1の測位モードおよび相対的に多いレーザー波数での測位を行う第2の測位モードの一方を選択する測位モード選択部と、前記第1の測位モードおよび前記第2の測位モードの前記選択された回数を個別にカウントするカウント部とを備える測位装置である。
【0006】
本発明は、レーザー光を用いた測位を行う方法であって、特定の点の測位において相対的に少ないレーザー波数での測位を行う第1の測位モードおよび相対的に多いレーザー波数での測位を行う第2の測位モードの一方を選択する測位モード選択ステップと、前記第1の測位モードおよび前記第2の測位モードの前記選択された回数を個別にカウントするカウントステップとを備える測位方法として把握可能である。
【0007】
本発明は、コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、コンピュータに特定の点の測位において相対的に少ないレーザー波数での測位を行う第1の測位モードおよび相対的に多いレーザー波数での測位を行う第2の測位モードの一方を選択する測位モード選択ステップと、前記第1の測位モードおよび前記第2の測位モードの前記選択された回数を個別にカウントするカウントステップとを実行させるプログラムとして把握可能である。
【0008】
本発明において、前記第1の測位モードおよび前記第2の測位モードの前記選択された回数のカウント数を管理サーバに送信する送信部をさらに有する態様が挙げられる。
【0009】
本発明は、レーザー光を用いた測位を行う測位部と、特定の点の測位において相対的に少ないレーザー波数での測位を行う第1の測位モードおよび相対的に多いレーザー波数での測位を行う第2の測位モードの一方を選択する測位モード選択部と、前記第1の測位モードおよび前記第2の測位モードの前記選択されたモード情報と測位データを管理サーバに送る送信部とを備える測位装置として把握することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トータルステーションのレンタル事業において、利用者の利用形態に即した課金が可能な技術が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】測設の作業を行う場合の一例を示す概要図である。
【
図2】実施形態のトータルステーションの制御部のブロック図である。
【
図4】実施形態における処理の手順の一例を示すフローチャーである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施形態
(概要)
図1には、測設を行う場合の例が示されている。測設は、土木工事現場等において、図面上で定めた位置を実際の現場で特定し、その位置に目印を付ける(例えば杭を打つ)作業である。この作業では、トータルステーション100が利用される。この例において、トータルステーション100はレンタル品であり、トータルステーション100を利用する利用者は、利用形態に応じたレンタル使用料金をレンタル事業者に支払う。
【0013】
測設において、作業員50は、レーザー測位のターゲットとなる反射プリズム71を備えた測量用ポール70を手にし、また測設作業に関するガイド情報を表示する端末51を携帯している。反射プリズム71は、入射した光を180°方向を変えて反射する。端末51は、通信インターフェース、操作インターフェース、表示ディスプレイを備えている。端末51としては、専用の端末またはガイド機能を実現するアプリケーションソフトウェアをインストールしたスマートフォンやタブレット端末が利用される。
【0014】
測設では、トータルステーション100の測位機能を利用して、予め図面上で特定した測設点を確定し、そこに杭打ち等が行なわれる。この測設点の確定に反射プリズム71を備えた測量用ポール70とトータルステーション100が利用される。
【0015】
トータルステーション100は、
図2の制御部110を備える。制御部110は、レーザー光を用いた測位を行う測位部101と、ユーザ50の操作を受け付ける操作受付部102と、操作受付部102に対するユーザ50による操作に基づき、特定の点の測位において相対的に少ないレーザー波数での測位を行う第1の測位モードおよび相対的に多いレーザー波数での測位を行う第2の測位モードの一方を選択する測位モード選択部103と、第1の測位モードおよび第2の測位モードの選択された回数を個別にカウントするカウント部104とを備えている。ここでいうレーザー波数は距離測定方式におけるレーザー光のパルス数であったり、位相差方式における1周期やそれらの組み合わせによる反射されたレーザー光の検出数又は検出周期に係る数を意味する。
【0016】
第1の測位モードと第2の測位モードとで、求められるトータルステーション100の性能に違いがある。具体的に述べると、第1の測位モードは第2の測位モードに比較してより高い性能が求められる。一般により高性能な精密機器はそれに応じて開発費用や製造費用が高く、高価格となる。
【0017】
そこで、トータルステーションのレンタルでの利用に際して、要求される性能に対応した重み付けを行い、それを課金に反映させる。これにより、利用者の利用形態に即した課金が可能となる。具体的には、相対的に高コストの機能を利用した場合は相対的に高い課金が行なわれ、相対的に低コストの機能を利用した場合は相対的に低い課金が行なわれる。
【0018】
この方法によれば、低コストの機能を利用した場合は、課金が相対的に低く、高コストの機能を利用した場合は、課金が相対的に高くなる。これは利用する機能の価値に対応した課金であり、利用者の利用形態に即した課金となる。
【0019】
(トータルステーション)
トータルステーション100の光学的な機能は、通常のトータルステーションと同じである。トータルステーション100は、現場に設置した状態で絶対座標系における外部標定要素(位置と姿勢)が予め計測されており、既知のデータとして取得されている。絶対座標系というのは、GNSSや地図で用いられる座標系であり、通常は緯度、経度、高度によって座標が特定される。座標系として適当なローカル座標系を用いることもできる。また、トータルステーション100は、測設点の座標を予め取得しており、内部の記憶部に記憶している。
【0020】
トータルステーション(TS)100は、レーザー光やカメラによる撮影画像の画像認識処理を用いて反射プリズム71を探索する機能、およびレーザー光を用いて反射プリズム71の測位を行う機能を有する。トータルステーション100は、反射プリズム71に測距用のレーザー光を照射し、その反射光を利用してトータルステーション100に対する反射プリズム71の位置を計測する。
【0021】
(トータルステーションのブロック図)
トータルステーション100は、測距光を50回/秒のパルス周期で測位対象物に対してパルス照射する。利用するパルス数は選択できる。各パルス光は、高周波変調されており、対象物で反射した測距光と基準光路を伝搬した基準光との位相差から測距が行なわれる。また、その際の光軸の方向から、トータルステーション100の光学原点から見た測距光の反射点の方向が判る。そして、トータルステーション100から見た反射点の距離と方向から、トータルステーション100に対する測距光の反射点の位置が算出される。なお、パルス状の測距光の飛翔時間から測距を行う形態もある。なお、トータルステーションの距離測定は本実施例では測距光はパルス発光によるパルス方式としているが、発光強度変調による位相差方式やこれらの組み合わせ方式を用いることができる。
【0022】
図2にトータルステーション100の制御部110のブロック図を示す。なお、光学系や機構系の構成は、通常のトータルステーションと同じであるので説明は省略する。制御部110は、コンピュータとして機能する。制御部110は、CPU、メモリ、インターフェース回路、各種のプロセッサ、各種の集積回路により構成されている。制御部110の一部または全部をマイコンやFPGA等を利用した専用のプロセッサで構成することもできる。また、制御部110の一部をCPUによって実行されるプログラムとして把握することもできる。
【0023】
制御部110は、測位部101、操作受付部102、測位モード選択部103、カウント部104、通信装置105および記憶部106を備える。
【0024】
測位部101は、測距光の反射点の位置を算出する。トータルステーション100は基準光路を内蔵している。測位対象物に照射する測距パルス光の一部が分岐されてこの基準光路に基準パルス光として導かれる。測位対象物から反射した測距光(測定パルス光)を検出するフォトダイオード等の検出素子は、基準パルス光と測定パルス光を検出する。
【0025】
測定パルス光は、基準パルス光より長い経路を伝搬するので、両光の検出タイミングに位相差が生じる。この位相差から測距光の反射点までの距離が算出される。また、この測距光の光軸の方向が、トータルステーション100が備える水平回転角検出センサと鉛直方向角(仰角または俯角)検出センサにより計測される。トータルステーション100を起点とした測距光の反射点までの距離と方向が判ることで、トータルステーション100に対する反射点の位置が算出できる。
【0026】
利用する特定の座標系(例えば絶対座標系)におけるトータルステーション100の外部標定要素は予め調べられており、既知であるので、トータルステーション100に対する反射点の位置が判ることで、絶対座標系における当該反射点の位置(3次元座標値)が算出される。以上の処理が測位部101で行われる。
【0027】
操作受付部102は、ユーザ50によるトータルステーション100の操作の内容を受け付ける。この例では、ユーザ50は携帯する端末51を用いてトータルステーション100の操作を行う。ユーザ50が端末51を用いてトータルステーション100に対する操作を行うと、その操作を指示する信号が端末51からトータルステーション100に送られ、それが操作受付部102で受け付けられる。
【0028】
測位モード選択部103は、ユーザ50により指定された測位モードを選択する。この例では、後述する第1の測位モードと第2の測位モードの2種類の測位モードが用意されており、そのいずれか一方が選択される。勿論、測位モードは任意のタイミングで切り替えることができる。具体的には、端末51がユーザ50により操作されて、第1の測位モードまたは第2の測位モードが選択される。この選択内容が操作受付部102で受け付けられ、この受け付けた内容に基づき、測位モード選択部103での測位モードの選択が行なわれる。
【0029】
カウント部104は、測位モードの選択をカウントする。カウントの仕方としては、測位モードの選択が行なわれる毎にそれをカウントし、通信装置106から管理サーバ200にその旨を送信する形態、測位モードの選択のカウントの累積値を作業終了の段階で通信装置106から管理サーバ200にまとめて送信する形態、測位モードの選択のカウントの累積値を作業の途中の段階で複数回に分けて通信装置106から管理サーバ200に送信する形態がある。
【0030】
通信装置105は、端末51と通信を行う。通信は、電話回線、無線LAN回線、ブルートゥース(登録商標)回線等が利用される。また、通信装置105はインターネット回線に接続可能であり、インターネット回線を利用して
図3の管理サーバ200と通信を行う。通信装置105から管理サーバ200へは、測位モードの利用状態に係るデータと共に、トータルステーション100が取得した測位データも送信される。
【0031】
記憶部106は、半導体メモリやハードディスク装置により構成され、トータルステーション100の動作に必要な各種のデータやプログラム、トータルステーション100の動作の結果得られた各種のデータを記憶する。
【0032】
(測位モードの説明)
(A)第1の測位モード
第1の測位モードでは、測位対象物が動いていても測位ができるように、3パルスの測距光の平均値を用いて測距を行う。利用するパルス数が少ないと、測位対象物の動きへの追従性が高くなるが、測位精度は低下する。逆に、利用するパルス数が多くなると、測位対象物の動きへの追従性は低くなるが、測位精度は向上する。このメリットとデメリットのバランスから、上記の設定が採用されている。なお、第1の測位モードでの利用するパルス数は、上記の例に限定されるものではく、装置の能力や測位の状況に応じて適宜設定できる。
【0033】
(第2の測位モード)
第2の測位モードは、測位の精度を上げるために10パルスの測距光の平均値を用いて測距を行う。なお、第2の測位モードでの利用するパルス数は、上記の例に限定されるものではく、装置の能力や測位の状況に応じて適宜設定できる。
【0034】
(管理サーバ)
図3は、管理サーバ200のブロック図である。管理サーバ200は、トータルステーション100の利用状況に応じた課金に係る処理を行う。管理サーバ200は、インターネット回線を介してトータルステーション100と通信を行う。管理サーバ200は、通信部201、カウント部202、課金金額計算部203を備える。通信部201は、インターネット回線への接続および同回線を利用したトータルステーション100との通信を行う。通信相手は、トータルステーション100に限定されず、端末51や他の電子機器との通信も可能である。
【0035】
カウント部202は、トータルステーション100による第1の測位モードによる測位の回数および第2の測位モードによる測位の回数のそれぞれを個別にカウントする。カウントは、当該モードが選択された場合に1カウントとする。よって、当該モードを用いた計測時間は関係しない。勿論、時間要素を加味する形態も可能である。
【0036】
例えば、仮に測設点が10カ所あるとする。この場合、各測設点への誘導作業のために第1の測位モードが10回選択される。また、各測設点の確定(杭打ち)作業のために第2の測位モードが10回選択される。なお、作業を失敗し、やり直す場合もあるので、各モードが11回以上選択される場合も有り得るが、ここでは話を簡単にするために、各測位モードがそれぞれ10回選択されるものとする。
【0037】
各測位モードの利用回数がトータルステーション100から管理サーバ200に送られ、それがカウント部202で検出される。また、この際、トータルステーション100による測位データも管理サーバ200に送られる。
【0038】
上記の例の場合、第1の測位モードが10回選択され、第2の測位モードが10回選択された旨を示す信号が、トータルステーション100から管理サーバ200に送られる。そして、管理サーバ200のカウント部202において、第1の測位モードが10回選択され、第2の測位モードが10回選択された旨がカウント(認識)される。
【0039】
課金金額計算部203は、カウント部202でカウントされた第1の測位モードの利用回数と第2の測位モードの利用回数に応じた課金を行う。この課金の結果に基づき、トータルステーション100の利用者(ユーザ)への利用料金の請求や料金引き落としの処理が行なわれる。
【0040】
例えば、第1の測位モードの利用料金(課金料金)が500円/1回、第2の測位モードの利用料金(課金料金)が1500円/1回であるとする。そして、第1の測位モードの利用回数が250回、第2の測位モードの利用回数が230回であったとする。この場合、(500円×250回)+(1500円×230回)=470000円が課金され、この金額が利用者に請求される。
【0041】
(測設作業の一例)
以下、測設の作業の概要について説明する。まず、トータルステーション100を第1の測位モードに設定する。この設定は、ユーザ50が端末51を操作することで行なわれる。
【0042】
作業者50は、測設点の位置および測設作業の順番が記載された図面を携帯しており、この図面を参照して、第1の測設点の付近に移動する。この図面が端末51の表示画面に表示される形態も可能である。また、トータルステーション100の側でも測設作業の順番は予め記憶しており、上記のタイミングで第1の測位点付近でのターゲット(反射プリズム71)の探索が開始される。具体的には、作業者50が端末51を操作して、トータルステーション100に処理の開始を指示することで、上記の探索が開始される。
【0043】
上記の測設点への移動の際、作業者50は、測量用ポール70を垂直に保持するように努める。作業者50が第1の測設点の近くに移動すると、反射プリズム71がトータルステーション100によって捕捉され、更にロックされ、トータルステーション100による第1の測位モードによる反射プリズム71の測位が行なわれる。この反射プリズムの測位は連続的に行われ、特に指示をしなければ継続して反射プリズムの測位データが得られる。
【0044】
トータルステーション100による反射プリズム71の測位が行なわれると、その測位データと第1の測設点のデータが端末51に送信される。これを受けて、端末51には、反射プリズム71の位置と予め定めた測設点との位置関係がレーダー表示される。具体的には、反射プリズム71の2次元位置を中心に表示し、更にこの中心に対する測設点の2次元位置を表示した画面が端末51のディスプレイに表示される。
【0045】
作業者50はこの端末51の表示を参考にして、測設点と反射プリズム71の2次元位置が一致するように、測量用ポール70の位置を調整する。測設点と反射プリズム71の位置(平面座標系上での座標)が一致あるいは一致と見なせる状況になったら、第2の測位モードに切り替え、反射プリズム71の測設点の特定を行う。
【0046】
特設点を特定したら、その点に目印となる杭を打つためのマーキング、あるいは目印となる杭を打ち込む作業を行う。以上の作業の場合、第1の測位モードと第2の測位モードがそれぞれ1回選択されたことになる。そして、以上の作業を第2の測設点、第3の測設点・・・に対して繰り返し行う。
【0047】
(トータルステーション側での処理)
以下、上述した測設作業において、トータルステーション100の内部で行なわれる処理の一例を説明する。
図4は、処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4の処理をトータルステーション100に外付けした外部の制御装置(例えば、制御コンピュータとして利用したPC)で行うことも可能である。
図4の処理を実行するプログラムは、記憶部106に記憶され、制御部110で実行される。このプログラムを適当な記憶媒体やサーバに記憶させ、そこから制御部110にダウンロードして利用する形態も可能である。
【0048】
まず、トータルステーション100は、レンタル業者から配布された解除キーを入力することで利用が可能となる設定となっている。トータルステーション100の電源がONにされ、ユーザに配布された解除キーが入力されると(ステップS101)、ステップS102以下の処理が開始される。
【0049】
処理が開始されると、ユーザ50による測位モードの選択が行なわれたか否か、が判定される(ステップS102)。測位モードの選択は、ユーザ50が端末51を操作することで行なわれる。
【0050】
ユーザにより測位モードが選択されると、選択された測位モードが設定される(ステップS103)。例えば、測位モードの実行を指示するコマンドが用意されており、当該コマンドを識別することで測位モードの識別が行なわれる。選択された測位モードが識別されると、当該識別された測位モードが選択され、以後この選択された測位モードでの測位動作が行なわれる。
【0051】
次に、トータルステーション100の測位動作の終了の有無が判定される(ステップS104)。例えば、用意された測設点の全てに対する測設作業が終了した場合、ユーザ50は作業が終了した旨を端末50に入力する。この入力情報がトータルステーション100に送信され、作業の終了の有無がトータルステーション100で認識される。あるいは、用意された測設点の全ての測設作業が終了した段階で、それが自動認識され、作業の終了と判定される。
【0052】
トータルステーション100が動作終了の場合、ステップS105に進む。動作終了でない場合、ステップS102以下の処理を繰り返す。ステップS105では、それまでに利用された第1の測位モードのカウント数と第2の測位モードのカウント数とをカウントする(ステップS105)。例えば、第1の測位モードを30回使用、第2の測位モードを34回使用、といった内容をカウントする。次に、ステップS105で得られた測位モードのカウントデータおよび測位データが管理サーバ200に送信され(S106)、
図4の処理が終了する。
【0053】
上記のフローでは、測設作業の終了後に利用した識別モードの回数のデータをまとめて管理サーバ200に送る形態であるが、識別モードの選択が行なわれるたびに識別モードの利用の有無が管理サーバに送られる形態も可能である。
【0054】
(その他)
第1の測位モードから第2の測位モードへの変更を自動で行う形態も可能である。この場合、測設点と反射プリズム71との距離が予め定めた閾値(例えば、5cm)以下となった段階で、それを契機として第1の測位モードから第2の測位モードに移行する。
【0055】
測位モードの数は2モードに限定されず、3モード以上であってもよい。例えば、現況測量、境界画定測量、建設機械の位置や建設機械の可動部分(例えば、油圧シャベルのバケットの位置)、UAVの測位(追跡)といった用途にトータルステーションを用いることが考えられるが、そのような用途に合った測位モードを用意してもよい。
【0056】
上記の例では、利用する測距光のパルス数の違い応じて測位モードを設定する例を示したが、他の形態の測位モードの設定も可能である。例えば、測位距離によって、測位モードを設定する例が挙げられる。
【0057】
また、実施形態で説明した測位モードに更に重み付けを行ってカウントを行ってもよい。例えば、測距光の出力の可変、あるいは測距光の出力が複数選択可能な構成の場合に、高出力が選択された場合は、測位モードの課金金額を増額する。
【0058】
例えば、第1の測位モードの基本利用料金(基本課金料金)が500円/1回、第2の測位モードの基本利用料金(基本課金料金)が1500円/1回であるとする。また、測距光の出力に通常パワーモードとハイパワーモードがあるとする。ここで、ハイパワーモードは、雨、霧、粉塵等の影響で測距光の反射光の受光強度(受光S/N)が弱い場合に利用される。
【0059】
この例において、通常パワーモードを基本料金とし、ハイパワーモードが利用された場合に、各測位モードの1回当たりの利用料金を基本料金+200円とする。すなわち、ハイパワーモードが選択された場合、第1の測位モードの利用料金が700円/1回、第2の測位モードの利用料金が1700円/1回となる。
【0060】
なお、測距光の出力の選択は、手動または検出光の検出強度に基づく自動選択により行われる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、測量技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
100…トータルステーション、50…作業者、51…端末、70…計測用ポール、71…反射プリズム。