(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】転がり案内ユニット
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20230309BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20230309BHJP
F16C 43/04 20060101ALN20230309BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C33/78 Z
F16C43/04
(21)【出願番号】P 2019106767
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】松井 雅士
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/030722(WO,A1)
【文献】特開平8-21441(JP,A)
【文献】特開2005-147203(JP,A)
【文献】特開2018-35860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側面と外周側面に沿って第1軌道溝がそれぞれ形成された無端の環状の軌道レール,及び前記軌道レールに跨架して複数の転動体を介して摺動自在なスライダを有し,前記スライダは,前記軌道レールの前記第1軌道溝に対向してそれぞれ形成された第2軌道溝と前記第2軌道溝に沿ってそれぞれ延びるリターン路が形成されたケーシング,前記ケーシングの両端面にそれぞれ取り付けられ且つ前記第1軌道溝と前記第2軌道溝とで構成される軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路が形成された一対のエンド部材,並びに前記軌道路,前記リターン路及び一対の前記方向転換路で構成される循環路を転走する前記転動体を有し,前記エンド部材は少なくとも前記転動体をすくい上げるため前記軌道レールの前記第1軌道溝へ突出するすくい部を備えていることから成る転がり案内ユニットにおいて,
前記ケーシングは前記軌道レールに対して跨架可能であり,
前記軌道レールには,前記軌道レールの前記スライダ側の上面で且つ前記軌道レールの幅方向の内周側及び外周側のいずれか一方の領域を切り欠いて切欠き部が形成され,前記エンド部材は前記切欠き部が形成された領域で前記軌道レールに対して跨架可能であり,
前記切欠き部には,前記軌道レールの前記第1軌道溝に連通する第3軌道溝が形成されている栓部材が嵌合配置されることを特徴とする転がり案内ユニット。
【請求項2】
前記エンド部材は,少なくとも前記方向転換路が形成され且つ前記すくい部を備えたエンドキャップであることを特徴とする請求項1に記載の転がり案内ユニット。
【請求項3】
前記エンド部材は,前記エンドキャップの端面に配設されて前記スライダと前記軌道レールとの間の隙間をシールし且つ前記軌道レールの前記第1軌道溝へ突出する凸部を備えているエンドシールを有することを特徴とする請求項2に記載の転がり案内ユニット。
【請求項4】
前記切欠き部の軌道レール周方向長さは,前記エンド部材を嵌合配設できる前記エンド部材の軌道レール周方向長さに実質的に等しい長さに形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の転がり案内ユニット。
【請求項5】
前記軌道レールに形成された前記第1軌道溝は,周方向に延びる上側と下側から成る一対の軌道面と前記軌道面間の逃げ溝から形成され,前記切欠き部の深さは,前記軌道レールに形成された前記逃げ溝の領域まで延びており,前記軌道レールの前記切欠き部の領域では前記下側軌道面が形成されており,前記栓部材に形成された前記第3軌道溝は前記上側軌道面に連通していることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の転がり案内ユニット。
【請求項6】
前記切欠き部の深さは,前記軌道レールに形成された前記第1軌道溝の領域を超えて延びており,前記栓部材に形成された前記第3軌道溝は前記軌道レールに形成された前記1軌道溝に連通して形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の転がり案内ユニット。
【請求項7】
前記軌道レールは環状に形成され,前記スライダを構成する前記ケーシングは外周側長手方向寸法が内周側長手方向寸法より長く形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の転がり案内ユニット。
【請求項8】
前記軌道レールの前記切欠き部には,取付け用ねじ孔と位置決め用第1ピン孔が形成され,前記栓部材には,前記取付け用ねじ孔に対応する位置に取付け用孔が形成され且つ前記位置決め用第1ピン孔に対応する位置に位置決め用第2ピン孔が形成され,
前記軌道レールの前記切欠き部に嵌合した前記栓部材の前記
位置決め用第2ピン孔と前記
軌道レールの前記
位置決め用第1ピン孔に位置決め用ピンを挿通し,前記軌道レールの前記切欠き部に嵌合した前記栓部材の前記取付け用孔に挿通した取付け用ねじを前記軌道レールの前記取付け用ねじ孔に螺入することによって,前記栓部材が前記軌道レールの前記切欠き部に固定されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の転がり案内ユニット。
【請求項9】
前記軌道レールの前記切欠き部には,取付け用孔と位置決め用第1ピン孔が形成され,前記栓部材には,前記取付け用孔に対応する位置に取付け用ねじ孔が形成され且つ前記位置決め用第1ピン孔に対応する位置に位置決め用第2ピン孔が形成され,
前記軌道レールの前記切欠き部に嵌合した前記栓部材の前記
位置決め用第2ピン孔と前記軌道レールの前記
位置決め用第1ピン孔に位置決め用ピンを挿通し,
前記軌道レールの前記取付け用孔に挿通した取付け用ねじを,前記軌道レールの前記切欠き部に嵌合した前記栓部材の前記取付け用ねじ孔に螺入することによって,前記栓部材が前記軌道レールの前記切欠き部に固定されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の転がり案内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,無端状の軌道レール上を複数の転動体を介して相対移動するスライダから成る転がり案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,曲動転がり案内ユニットは,曲線状の軌道レールに沿って転動体を介してスライダを曲線運動案内させるものであり,工作機械,搬送装置,産業用ロボット,トランスファマシン,組立装置,半導体製造装置などの相対運動する摺動部分に使用されるようになった。通常,スライダが軌道レール上面に跨架して移動する転がり案内ユニットでは,スライダの両端に位置するエンドキャップに設けた転動体のすくい部が軌道溝に倣う形状となって軌道レールの軌道溝側に突出しており,軌道レールの幅よりスライダのすくい部間が狭いため,組み立てたスライダを,軌道レールの中間領域で跨架できず組み付けることはできない。即ち,スライダは,それを組み立てた後に,軌道レールの端部から挿入して,転がり案内ユニットを組み立てたものであった。転がり案内ユニットにおける軌道レールを無端の環状に形成する場合に,複数の軌道レールを継ぎ足して組み合わせると,継ぎ目の部分でずれや変形が発生する可能性があるため,環状の部材を加工して無端の環状レールとした構造が精度・ 剛性の点で有利であると考えられる。しかしながら,無端の軌道レールでは,上記の理由からスライダを軌道レールに組み付けることができなかった。
【0003】
また,曲線運動案内装置として,その組立作業を容易に且つ正確にでき,しかも剛性が大きく正確な無限曲線案内を組み立てるため,無端の軌道レールを切断して切断部をずらし,切断した軌道レールの端部から移動ブロックを取り付けるものが知られている。該曲線運動案内装置は,無端状に成形された無端リング状の軌道レールに多数の転動体を介して移動ブロックを取り付けたものであり,無端状の軌道レールの一部に移動ブロックを組み付けるため,軌道レールの一部を切断して切断部を形成し,この切断部の端面同士をずらすことによって,軌道レールの切断部を通じて移動ブロックを軌道レールに着脱可能としたものである(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,軌道レールを備えた運動案内装置として,軌道レールの上面に移動ブロック長さ以上の長さの切欠部を設けて,移動ブロックの軌道レールへの取付・ 取り外しを可能とし,補填部材で切欠部を埋めて軌道面を連続させるものが知られている。該運動案内装置は,長手方向に沿って転動体転走面が形成された軌道レールと,該軌道レールに複数の転動体を介して組み付けられる移動ブロックとを備えている。移動ブロックは,軌道レールの長手方向に沿って相対的に往復運動自在である。軌道レールは,転動体転走面を分断すると共に移動ブロックを組み付け可能な切欠部と,該切欠部を閉塞して分断された転動体転走面を連絡する補填部材とを備えている(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
また,案内装置として,移動ブロック本体の寸法を軌道レールに跨架可能な寸法とし,側蓋を軌道レールの幅方向に分割,又は弾性部材で形成して軌道レールに跨架可能としたものが知られている。該案内装置は,軌道レールに相対移動自在に組み付けられた移動ブロックを備えている。移動ブロックは,軸保持バンド直交断面を軌道レールの中間で組み込み可能な形状寸法とし,側蓋は,幅方向に左右に分割した分割体で構成され,一方の分割体の分割面に突出する位置決め用ピンを設けると共に,他方の分割体の分割面に位置決め用穴を設けている。位置決め用ピンを位置決め用穴に嵌入して側蓋組立体とし,移動ブロックは,分割体に設けた固定用ビス穴に固定ビスを通して側蓋組立体を移動ブロック本体の相対移動方向両端に取付け固定したものである(例えば,特許文献3参照)。
【0006】
また,本出願人に係る曲動転がり案内ユニットとして,
図9に示すものが知られている。該曲動転がり案内ユニットは,スライダを構成するエンドキャップ本体51にすくい部56が存在して両側のすくい部56間が軌道レールの上面の幅より狭いため無端の軌道レール53にスライダを容易に跨架させることができない。そこで,ケーシングの内側寸法を軌道レール53に跨架可能な寸法に形成し,エンドキャップを構成するエンドキャップ本体54にスリット55を設け,エンドキャップ本体54を変形させることによって,スライダを軌道レール53に跨架可能に構成し,更に,給油プラグを取り付けることによってスリット55からの油漏れを防いだ構成である。エンドキャップ本体53は,上部に形成した給脂孔56,該給脂孔56と方向転換路59とを連通する給脂溝57,及び前記給脂孔56から上部の下面に達するスリット55が形成されている。エンドキャップ本体53の給脂孔56には,スリット55を塞ぎ給脂溝57と連通する給脂路である孔部が形成された給脂プラグが嵌着されている(例えば,特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-21441号公報
【文献】WO2011/030722
【文献】特開2005-147203号公報
【文献】特開2018-035860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで,上記引用文献1に開示されたように,軌道レールを切断することは,軌道レールの剛性の低下や軌道レールのつなぎ目の位置ずれが発生するおそれがあり,軌道レールの切断部をずらす作業は手で行うことができず,器具や装置を必要とするため工数がかかるという問題がある。また,軌道レールの切断部を金具で固定しているが,固定金具による部品点数増加,固定金具を収容する穴やねじ穴の追加工により工数が増加するという問題がある。
【0009】
また,上記引用文献2に開示されたように,切欠部は,軌道レールの両側面に達しているため,切欠部を埋める補填部材の軌道レールに対する幅方向の位置決めができず,軌道レールと補填部材とのずれが発生する可能性があり,また,補填部材が軌道レールに対して位置ずれが生じたり,補填部材の軌道溝間寸法が軌道レールの転走溝間の寸法と異なるため,転動体の走行中に予圧が変化することがあり,転動体の走行中の移動ブロック全体の軌道レールの幅方向に位置ずれが発生する恐れがあるという問題がある。更に,切欠部は,軌道レールの幅方向に貫通しており,切欠部を移動ブロックの長さ以上に軌道レールに形成する必要があるため,材料の無駄が大きくなり,強度の低下や変形の可能性が大きくなるという問題がある。
【0010】
また,上記引用文献3に開示されたように,側蓋を分割すると,側蓋の強度の低下や側蓋自体の位置ずれの可能性が高まる。側蓋を変形して側蓋を軌道レールに跨架可能にし,且つ側蓋に転動体の方向転換路を形成するのに, 十分な強度を持つ弾性部材が開示されていない。また, 側蓋に対して通常品とは異なる特別な部品を必要とするという問題がある。また, 上記引用文献4 では,エンドキャップ本体にスリットを設ける工程が必要であり,また, 給脂プラグを設けることによって部品点数が増加するという問題がある。
【0011】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,無端の軌道レールにスライダを跨架させて組み立てる転がり案内ユニットにおいて,スライダを構成するケーシングの断面形状を軌道レールの長手方向の中間領域で跨架可能な寸法に形成し,軌道レールのスライダ側即ち上面に切欠き部を形成し,切欠き部は軌道レールの一方の側面に少なくともエンドキャップのエンド部材が跨架可能な長手方向寸法に切り欠いて形成し,切欠き部からエンド部材を挿入可能に形成し,エンド部材を変形させることなく,軌道レールに跨架させて,切欠き部を栓部材で埋めて軌道レールの全長を構成し,スライダを組み立てて構成するものであり,軌道レールの切欠き部を同形状の栓部材で塞いで軌道面を連続させ,栓部材と軌道レールの軌道溝を同時に研削加工し,軌道溝に段差の無い形状に構成し,栓部材が軌道レールの幅方向に切欠き部につき当てられ,軌道レールの切欠き部に栓部材をピンによって水平方向の位置決めをして,栓部材を軌道レールに取付ねじによって上下方向の位置決めを行って,栓部材の軌道レールに対する位置ずれを防止することができる転がり案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は,内周側面と外周側面に沿って第1軌道溝がそれぞれ形成された無端の環状の軌道レール,及び前記軌道レールに跨架して複数の転動体を介して摺動自在なスライダを有し,前記スライダは,前記軌道レールの前記第1軌道溝に対向してそれぞれ形成された第2軌道溝と前記第2軌道溝に沿ってそれぞれ延びるリターン路が形成されたケーシング,前記ケーシングの両端面にそれぞれ取り付けられ且つ前記第1軌道溝と前記第2軌道溝とで構成される軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路が形成された一対のエンド部材,並びに前記軌道路,前記リターン路及び一対の前記方向転換路で構成される循環路を転走する前記転動体を有し,前記エンド部材は少なくとも前記転動体をすくい上げるため前記軌道レールの前記第1軌道溝へ突出するすくい部を備えていることから成る転がり案内ユニットにおいて,
前記ケーシングは前記軌道レールに対して跨架可能であり,
前記軌道レールには,前記軌道レールの前記スライダ側の上面で且つ前記軌道レールの幅方向の内周側及び外周側のいずれか一方の領域を切り欠いて切欠き部が形成され,前記エンド部材は前記切欠き部が形成された領域で前記軌道レールに対して跨架可能であり, 前記切欠き部には,前記軌道レールの前記第1軌道溝に連通する第3軌道溝が形成されている栓部材が嵌合配置されることを特徴とする転がり案内ユニットに関する。
【0013】
また,前記エンド部材は,少なくとも前記方向転換路が形成され且つ前記すくい部を備えたエンドキャップである。或いは.前記エンド部材は,前記エンドキャップの端面に配設されて前記スライダと前記軌道レールとの間の隙間をシールし且つ前記軌道レールの前記第1軌道溝へ突出する凸部を備えているエンドシールを有するものである。
【0014】
また,前記切欠き部の軌道レール周方向長さは,前記エンド部材を嵌合配設できる前記エンド部材の軌道レール周方向長さに実質的に等しい長さに形成されている。
【0015】
また,この転がり案内ユニットでは,前記軌道レールに形成された前記第1軌道溝は,軌道レール周方向に延びる上側軌道面及び下側軌道面の一対の軌道面と前記軌道面間の逃げ溝から形成され,前記切欠き部の深さは,前記軌道レールに形成された前記逃げ溝の領域まで延びており,前記軌道レールの前記切欠き部の領域では前記下側軌道面が形成されており,前記栓部材に形成された前記第3軌道溝は前記上側軌道面に連通しているものである。或いは,前記切欠き部の深さは,前記軌道レールに形成された前記第1軌道溝の領域を超えて延びており,前記栓部材に形成された前記第3軌道溝は前記軌道レールに形成された前記1軌道溝に連通して形成されているものである。
【0016】
また,前記軌道レールは環状に形成され,前記スライダを構成する前記ケーシングは外周側長手方向寸法が内周側長手方向寸法より長く形成されている。
【0017】
また,この転がり案内ユニットは,前記軌道レールの前記切欠き部には,取付け用ねじ孔と位置決め用第1ピン孔が形成され,前記栓部材には,前記取付け用ねじ孔に対応する位置に取付け用孔が形成され且つ前記位置決め用第1ピン孔に対応する位置に位置決め用第2ピン孔が形成され,前記軌道レールの前記切欠き部に嵌合した前記栓部材の前記位置決め用第1ピン孔と前記軌道レールの前記位置決め用第2ピン孔に位置決め用ピンを挿通し,前記軌道レールの前記切欠き部に嵌合した前記栓部材の前記取付け用孔に挿通した取付け用ねじを前記軌道レールの前記取付け用ねじ孔に螺入することによって,前記栓部材が前記軌道レールの前記切欠き部に固定されるものである。
【0018】
或いは,この転がり案内ユニットは,前記軌道レールの前記切欠き部には,取付け用孔と位置決め用第1ピン孔が形成され,前記栓部材には,前記取付け用孔に対応する位置に取付け用ねじ孔が形成され且つ前記位置決め用第1ピン孔に対応する位置に位置決め用第2ピン孔が形成され,前記軌道レールの前記切欠き部に嵌合した前記栓部材の前記位置決め用第1ピン孔と前記軌道レールの前記位置決め用第2ピン孔に位置決め用ピンを挿通し,前記軌道レールの前記切欠き部に嵌合した前記切欠き部の前記取付け用孔に挿通した取付け用ねじを前記栓部材の前記取付け用ねじ孔に螺入することによって,前記栓部材が前記軌道レールの前記切欠き部に固定されるものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明による転がり案内ユニットは,上記のように構成されているので,無端の軌道レールを切断することなく,スライダの軌道レールへの組み付けが可能となり,従来のように軌道レールを長手方向途中で切断したものに比較して,軌道レールの精度及び強度を低下させることがなく,軌道レールにスライダを跨架する時に,エンド部材であるエンドキャップやエンドシールを変形させることも必要がないため,スライダの標準品に対して加工を行うことなく,そのまま使用することができ,従来のようなエンドキャップにスリット加工等を行う必要がないので,製造工数を削減することができ,油漏れに対する対策の心配もないものである。また,軌道レールに形成する切欠き部を幅方向に一部分切欠くのみで全幅方向に貫通しない形状に構成したため,栓部材を切欠き部に配設するのに,軌道レールの幅方向に切欠き部の端面に栓部材をつき当てて位置決めして正確に配設することができる。また,軌道レールに形成する切欠き部は,少なくともエンドキャップのエンド部材を嵌合配設するのに必要なだけの長手方向長さで済み,切欠き部を必要最小限のサイズにすることができ,従来の軌道レールの幅方向全長にわたって切り欠くタイプに比較して,軌道レールの強度が低下する等の影響を少なくすることができ,栓部材の位置決めも精度よく容易に行うことができる。また,軌道レールの切欠き部を塞ぐ栓部材の軌道溝を軌道レールに取り付けた状態で,軌道レールの軌道溝と同時に研削加工を行うため,軌道レールに栓部材を組み付けた後に,軌道レールと栓部材との軌道溝のずれが発生することもない。また,軌道レールに形成する切欠き部は,軌道レールの使用条件から負荷の少ない側の一部分に形成することによって,軌道レールと栓部材との軌道溝に段差が有ったとしても,その段差の悪影響をより少なくすることができる。また,切欠き部を軌道レールの幅方向の内外のいずれかの側に限定して形成し,切欠き部の長手方向の長さを少なくともエンドキャップのエンド部材が嵌合する実質的な長さに形成したため,栓部材に位置ずれが発生したり,栓部分の予圧が軌道レール部分の予圧と異なっても,スライダの幅方向の位置ずれが発生しない。栓部材は取付け用ねじで軌道レールの垂直方向に固定し,位置決めピンで軌道レールのスライダ側の面に位置決めを行うため,栓部材の軌道レールに対する位置ずれが起き難い。また,スライダを軌道レールに跨架した状態で,組み立てることもでき,転動体をスライダに保持する保持器等の部品を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明による転がり案内ユニットの一実施例を示す斜視図である。
【
図2】この発明による転がり案内ユニットのスライダの領域を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図3】ケーシング,その両端に位置するエンドキャップ及びエンドシールに分解したスライダを示す斜視図である。
【
図4】この発明による転がり案内ユニットにおける軌道レールに切欠き部を形成した形状を示す斜視図である。
【
図5】軌道レールに形成した切欠き部に栓部材を取り付けた状態を示し,(a)は切欠き部の深さを軌道レールに形成した逃げ溝の深さに形成し,軌道レールに軌道溝の下側軌道面を形成し且つ栓部材に軌道溝の上側軌道面を形成し,軌道レールの上面から取付け用ねじを取り付けた一例を示す断面図であり,(b)は切欠き部の深さを軌道レールの軌道溝を超えた領域まで形成し,栓部材に軌道溝の上側軌道面と下側軌道面とを形成し,軌道レールの上面から取付けねじを取り付けた別の例を示す断面図であり,(c)は切欠き部の深さを逃げ溝までの深さに形成し,軌道レールに軌道溝の下側軌道面を形成し且つ栓部材に軌道溝の上側軌道面を形成し,軌道レールの下面から取付け用ねじを栓部材に螺入した更に別の例を示す断面図である。
【
図6】この発明による転がり案内ユニットの軌道レールに形成した切欠き部にエンドキャップを嵌合する状態を示す説明図である。
【
図7】軌道レールに形成した切欠き部にエンドキャップの配設を説明するために,スライダからケーシングを省略した状態で示し,(a)エンドキャップのすくい部を切欠き部に嵌合配設した状態を示す斜視図であり,(b)エンドキャップのすくい部を軌道レールの軌道溝に嵌入させた状態を示す斜視図である。
【
図8】軌道レールに形成した切欠き部にスライダを配設した状態を説明するための断面図であり,(a)はこの転がり案内ユニットにおけるリターン路をケーシングに形成したスライダを軌道レールに組み付けた一例を示す断面図であり,(b)はこの転がり案内ユニットにおけるリターン路をパイプで構成した別の例を示す断面図である。
【
図9】従来の切欠き部の無い曲動転がり案内装置にエンドキャップを変形させて軌道レールに取り付ける方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,図面を参照して,この発明による転がり案内ユニットの実施例を説明する。
図1及び
図2に示すように,この発明による転がり案内ユニットは,両側面即ち内周側面15と外周側面16に軌道溝25(第1軌道溝)をそれぞれ設けた軌道レール1が無端の環状に形成され,軌道レール1には複数の転動体5を介して摺動自在なスライダ2が跨架され,スライダ2が軌道レール1の周方向即ち環状に走行する曲動転がり案内装置に構成されている。軌道レール1のスライダ2側は上面32となっている。軌道レール1には,ベースやベッド等に設置するため取付け用孔33が複数設けられている。軌道レール1の各軌道溝25は,上側軌道面28,下側軌道面29,及び上側軌道面28と下側軌道面29の間に形成された逃げ溝22から形成されている。また,スライダ2を構成するケーシング3には,相手部材(図示せず)を取り付けるための取付け用ねじ穴37が複数設けられている。軌道レール1の上面32には,切欠き部9と切欠き部9に嵌合する栓部材10が設けられ,栓部材10は,位置決め用ピン12及び取付け用ねじ11によって軌道レール1に固定されている。
図3に示すように,スライダ2は,軌道レール1に形成された軌道溝25に対向して軌道溝26(第2軌道溝)と軌道溝26に沿ってそれぞれ延びるリターン路30とを備えたケーシング3,ケーシング3の長手方向の両端面39に取り付けられ且つ軌道路とリターン路30を連通する一対の方向転換路34が形成されたエンド部材を構造するエンドキャップ4,並びに軌道路,リターン路30及び一対の方向転換路34から成る循環路を転走する複数の転動体5(図にはボールが示されている)から構成されている。また,本実施例では,上記エンド部材としては,エンドキャップ4の他に,スライダ2と軌道レール1との隙間をシールするため,その長手方向の外方端面に配設されたエンドシール6を有している。エンドキャップ4及びエンドシール6は,ケーシング3の両端面39に配設されて固定ボルト19によって固定されている。エンドキャップ本体7には,軌道路を走行する転動体5をすくい上げてエンドキャップ4内の方向転換路34に転走させるため,すくい部17が形成されており,すくい部17は,軌道レール1の軌道溝25に倣う形状であって軌道レール1の軌道溝25に突出した状態に形成されている。
【0022】
ところで,この転がり案内ユニットにおいて,スライダ2を構成するエンドキャップ4に形成されている幅方向(左右)の一対のすくい部17は,その間の幅が,軌道レール1の上面32の幅より狭くなっているため,エンドキャップ本体7は,軌道レール1の上面32からそのままの状態では嵌合即ち跨架させて取り付けることができない。また,エンドシール6は,通常,金属製の芯金にゴムをコーティングして形成されており,断面形状が軌道レール1の断面形状に倣う形状であって軌道レール1の軌道溝25に突出した状態に形成されている。エンドシール6は,軌道レール1の上面32に跨架した状態でスライダ2の両端に取り付けて使用するが,エンドシール6に形成された軌道レール1側に突出した凸部52間の幅が軌道レール1の上面32の幅より狭いため,エンドキャップ4と同様に軌道レール1の上面32からそのままでは嵌合即ち跨架させて取り付けることができない。エンドキャップ4及びエンドシール6には,連通する油孔35が設けられており,エンドキャップ4には油孔35からエンドキャップ4内の方向転換路34に通じる油路38(
図6)が形成されている。この実施例では,スライダ2の両端の油孔35には,一方に給脂用のグリースニップル18が取り付けられ,他方に油漏れ防止のための止め栓21が取り付けられている。
【0023】
この発明による転がり案内ユニットでは,特に,軌道レール1は長手方向が無端の環状に形成され,ケーシング3の断面形状が軌道レール1の中間領域で跨架可能な形状寸法に形成され,軌道レール1のスライダ2側である上面32で且つ軌道レール1の幅方向の外周16側の領域を切り欠いた切欠き部9が形成されている。切欠き部9の軌道レール周方向長さは,エンド部材が跨架可能な寸法,即ちエンド部材の軌道レール周方向長さに実質的に等しい長さに形成されており,切欠き部9における軌道レール1の軌道溝25を連通する軌道溝27(第3軌道溝)が形成され且つ切欠き部9に嵌合配置される栓部材10を備えていることを特徴としている。また,
図3に示すように,スライダ2を構成するケーシング3は,上部40,及び上部40の両側部から垂下する袖部41から形成され,両袖部41間には凹部42が形成される。ケーシング3の凹部42は,軌道レール1の上面32に跨架できる幅に形成されている。また,軌道レール1の周方向に対応する切欠き部9の周方向寸法は,エンドシール6の周方向寸法(厚み)が加わるため,少なくともエンドキャップ4の周方向寸法(厚み)よりわずかに大きく形成されている。
【0024】
また,スライダ2を構成するエンド部材である一対のエンドキャップ4は,外側の方向転換路34を備えたエンドキャップ本体7及び内側の方向転換路34を備えたスペーサ8を組み合わせて形成されている。エンドキャップ本体7は,上部43,及び上部43の両側部から垂下する袖部44から形成され,両袖部44間には凹部45が形成される。袖部44には,すくい部17が凹部45側に突出して形成されている。また,スペーサ8は,上部46,及び上部46の両側部から垂下する袖部47から形成され,両袖部47間には凹部48が形成される。同様に,エンド部材を構成するエンドシール6は,上部50,及び上部50の両側部から垂下する袖部51から形成され,両袖部51間には凹部49及び凸部52が形成される。ケーシング3の凹部42,スペーサ8の凹部48,及びエンドシール6の凹部49は,軌道レール1に跨架できる幅方向の寸法に形成されている。これに対して,エンドキャップ本体7は,凹部45にはすくい部17が軌道レール1側即ち内側に突出しているため,すくい部17が干渉して軌道レール1に跨架することができない。また,エンドシール6は,凸部52が軌道レール1側に突出して凸部52間の幅が軌道レール1の上面32の幅より狭いため,エンドキャップ4と同様に軌道レール1の上面32から嵌合即ち跨架させて取り付けることができない。そこで,この転がり案内ユニットでは,軌道レール1の上面32に切欠き部9を形成し,エンドキャップ本体7及びエンドシール6が軌道レール1に跨架できるように,切欠き部9における軌道レール1の幅方向寸法を短くなるように形成している。軌道レール1の軌道溝25を周方向に連続させるため,切欠き部9を埋める栓部材10には,軌道溝25に連通する軌道溝27が形成されている。
【0025】
図4及び
図7に示すように,軌道レール1に形成された切欠き部9は,軌道レール1の外周側面16から内周側面15に向かって軌道レール1の中央付近まで延びており,軌道レール1の径方向に半円状のつき当て面即ち当接面20を備えている。また,切欠き部9の軌道レール1の周方向の寸法は,エンドキャップ4の周方向寸法よりわずかに大きい幅に形成されている。言い換えれば,エンドキャップ4を嵌合配設できるエンドキャップ4の周方向長さに実質的に等しい長さに形成されている。エンドシール6の軌道レール周方向寸法は,エンドキャップ本体7の軌道レール周方向より大幅に短いため,エンド部材は,エンドキャップ4の軌道レール周方向寸法よりわずかに大きい幅に形成した切欠き部9において容易に跨架できる。また,エンドキャップ本体7より周方向寸法が長い部品を跨架させる場合は,切欠き部17の周寸法は,エンドキャップ4の周方向寸法より長く且つスライダ2の走行方向である周方向寸法より短く形成することもできる。また,軌道レール1は,環状に形成され,ケーシング3は,外周側長手方向寸法が内周側長手方向寸法より長く形成されており,スライダ2が軌道レール1をスムーズに往復運動できるように構成されている。また,切欠き部9の底面36には,栓部材10を固定するため,取付け用ねじ11と位置決めピン12が取り付けられる取付け用ねじ孔13とピン孔14が形成されている。
【0026】
この実施例では,軌道レール1に形成された切欠き部9の周方向寸法は,エンドキャップ4の軌道レール周方向寸法よりわずかに大きく形成され,本実施例において,軌道レール1に形成されたピン孔14及び取付け用ねじ孔13は,軌道レール1の強度上影響のない位置に形成されている。切欠き部9の上下方向の深さは,エンドキャップ4のすくい部17が軌道レール1に干渉することなく,軌道溝25に挿入できるような深さであり,栓部材10の取付け用ねじ11が軌道レール1の外形から飛び出すことなく,栓部材10に締め付けられる寸法である必要がある。
図5には,この発明による転がり案内ユニットにおいて,軌道レール1に形成した切欠き部9に栓部材10を配設した状態を示し,軌道レール1に固定する栓部材10の3つの例が示されている。切欠き部9の形状及び寸法は,スライダ2の軌道レール1への取り付け及び切欠き部9への栓部材10の取り付けに必要な最小限の寸法であることが強度上好ましい。即ち,本実施例では,切欠き部9の軌道レール1の周方向寸法は,エンドキャップ4の周方向寸法よりわずかに大きく形成され,また,切欠き部9が形成された軌道レール1の底面36には,栓部材10を取り付けるためのピン孔14(第1ピン孔)と取付け用ねじ孔13(又は取付け用孔13H)とが形成されている。
図5(a)及び
図5(b)には,栓部材10に取付け用孔23とピン孔24(第2ピン孔)が形成されている。また,
図5(c)には,栓部材10に取付け用ねじ孔23Sとピン孔24が形成されている。
【0027】
具体的には,
図5(a)には,軌道レール1に形成した切欠き部9は,軌道レール1の下面に向かって軌道レール1の上側軌道面28を超えて,逃げ溝22に達する深さに形成されている。軌道レール1には,切欠き部9の領域では,軌道レール1の軌道溝25に続く下側軌道面29が形成され,また,栓部材10には,軌道溝25の上側軌道面28に連通する上側軌道面28Pが形成されている。軌道レール1への栓部材10の取付けは,位置決めピン12を栓部材10のピン孔24と軌道レール1のピン孔14とに通して栓部材10を軌道レール1の切欠き部9に位置決めすると共に.栓部材10に形成した取付け用孔23に通した取付け用ねじ11を軌道レール1の取付けねじ孔13に螺入して位置決め固定する。また,
図5(b)には,軌道レール1に形成した切欠き部9は,軌道レール1の軌道溝25を超えた領域まで延びる深さに形成されている。栓部材10には軌道レール1の軌道溝25に連通する軌道溝27が形成されており,軌道溝27は上側軌道面28Pと下側軌道面29Pとから形成されている。軌道レール1への栓部材10の取付けは,位置決めピン12を栓部材10のピン孔24と軌道レール1のピン孔14とに通して栓部材10を軌道レール1の切欠き部9に位置決めすると共に.栓部材10に形成した取付け用孔23に通した取付け用ねじ11を軌道レール1の取付けねじ孔13に螺入する位置決め固定する。更に,
図5(c)には,軌道レール1に形成した切欠き部9は,軌道レール1の下面に向かって軌道レール1の上側軌道面28を超えて,逃げ溝22に達する深さに形成されている。軌道レール1には,切欠き部9の領域では,軌道レール1の軌道溝25に続く下側軌道面29が形成され,また,栓部材10には,軌道溝25の上側軌道面28に連通する上側軌道面28Pが形成されている。軌道レール1への栓部材10の取付けは,位置決めピン12を栓部材10のピン孔24と軌道レール1のピン孔14とに通して栓部材10を軌道レール1の切欠き部9に位置決めすると共に.軌道レール1に形成した取付け用孔13Hに通した取付け用ねじ11を栓部材10の取付けねじ孔23Sに螺入する位置決め固定する。
【0028】
図6及び
図7に示すように,この転がり案内ユニットは,エンドキャップ4を切欠き部9を通すことにより,すくい部17が軌道レール1に干渉することのないように軌道溝25に挿入配設することができ,エンドキャップ4を軌道レール1の上面32側から跨架させることが可能となる。軌道レール1の切欠き部9は,例えば,エンドミル加工等で形成することができる。栓部材10は,軌道レール1と同じ材料を用いて,
図5に示すように,切欠き部9と同形状の取付け用孔23と位置決めピン孔24を持った形状に切削・研削等で加工することができる。栓部材10を軌道レール1の切欠き部9に配設し,栓部材10を切欠き部9の所定の位置に位置決めを行って位置決めピン12をピン孔12,24に挿通し,次いで,取付け用ねじ11を栓部材10の取付け用孔23に挿通し,軌道レール1の取付けねじ孔13に螺入して,栓部材10を軌道レール1の切欠き部9に固定する。そこで,軌道レール1と栓部材10の外形,軌道溝25と軌道溝27とを同時加工して,軌道溝25,27の仕上げ加工を行う。また,
図8には,この転がり案内ユニットにおけるケーシング3の2種類のタイプが示されている。(a)には,リターン路30がケーシング3の本体に長手方向に穿孔された貫通孔で形成されている。また,(b)には,リターン路30がケーシング3の側面をアンダーカットした凹部に配設されたパイプ31によって構成されている。
【0029】
この転がり案内ユニットは,次のようにして組み立てることができる。
1.ケーシング3の両端面39にそれぞれ配置するエンドシール6とエンドキャップ4の一方をケーシング3に配設し,ケーシング3に一方のエンドシール6とエンドキャップ4とを固定ボルト19によって固定する。
2.一方のエンドシール6とエンドキャップ4を取り付けたケーシング3を,軌道レール1の外周側に切欠き部9を設けた軌道レール1の上面32側から,エンドキャップ4のすくい部17とエンドシール6の凸部52が切欠き部9に通る位置に下降させ,切欠き部9と反対側の内周側のすくい部17とエンドシール6の凸部52を軌道レール1の切欠き部9と反対側の内周側面15の軌道溝25に配設し,次いで,切欠き部9側の外周側のすくい部17とエンドシール6の凸部52を上面32側から切欠き部9に挿入し,エンドキャップ4とエンドシール6をスライダ2の外方側に滑らせて,内周側と外周側の双方のすくい部17とエンドシール6の凸部52を軌道レール1の軌道溝25に挿入し,軌道レール1にスライダ2を跨架させる。ケーシング3の凹部42及びエンドシール6の凹部49は,軌道レール1の中間で跨架可能な形状寸法に形成されているので,エンドキャップ4とエンドシール6をケーシング3に取り付けても,軌道レール1の上面32に干渉するのは,エンドキャップ4のすくい部17とエンドシール6の凸部52のみであり,転動体5が組み込まれていない状態であれば,エンドキャップ4及びエンドシール6の一部分を切欠き部9に嵌入配設すれば,スライダ2を軌道レール1に組み付けることができる。
3.複数の転動体5を軌道レール1の軌道溝25とケーシング3の軌道溝26の間に形成された軌道路に充填していく。
4.所定の数の転動体5を転がり案内ユニットの軌道路に挿入した後に,他方のエンドキャップ4及びエンドシール6を切欠き部9を通して軌道レール1に跨架させ,ケーシング3の端面39に,エンド部材であるエンドキャップ4とエンドシール6とを固定ボルト19でそれぞれ固定してスライダ2を完成させる。
5.複数のスライダ2を必要とする場合は,上記の手順を繰り返して組み込むこととする。
6.完成したスライダ2を軌道レール1上を走行させて,スライダ2を切欠き部9からずらし,次いで,軌道レール1の切欠き部9に栓部材10を取り付ける。
7.栓部材10が軌道レール1の切欠き部9に対して位置ずれがないよう位置決めピン12で位置決め調整しながら,栓部材10を軌道レール1の切欠き部9に取付け用ねじ11及びピン12で固定する。切欠き部9及び栓部材10の形状は特に限定されない。軌道レール1の環状レールの外周側に切欠き部9を設ける場合など,切欠き部9の軌道溝27に負荷がかからないような方法で使用する場合,栓部材9の軌道溝27を軌道レール1の軌道溝25より凹面とし,すきまとすることもできる。切欠き部9に負荷がかからないような方法で使用する場合,栓部材10の材料を樹脂とすることも出来る。この場合,栓部材10は,あらかじめ型による成形をすることもできるし,スライダ2の組み付け後に,軌道レール1と一体に成形することもできる。また,本実施例では,軌道レール1の上面32の外周側に切欠き部9を形成したが,軌道レール1の上面32の内周側に切欠き部を形成してもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明による転がり案内ユニットは,半導体製造装置,精密機械等の各種装置における摺動部に適用して好ましいものである。
【符号の説明】
【0031】
1 軌道レール
2 スライダ
3 ケーシング
4 エンドキャップ
5 転動体
9 切欠き部
10 栓部材
11 取付け用ねじ
12 位置決めピン
13,23S 取付け用ねじ孔
13H,23 取付け用孔
14 ピン孔(第1ピン孔)
15 内周側面
16 外周側面
17 すくい部
22 逃げ溝
24 ピン孔(第2ピン孔)
25 軌道溝(第1軌道溝)
26 軌道溝(第2軌道溝)
27 軌道溝(第3軌道溝)
28 上側の軌道面
29 下側の軌道面
30 リターン路
32 上面
34 方向転換路
39 端面