(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】認証システム、認証方法、及び登録装置
(51)【国際特許分類】
G06F 21/32 20130101AFI20230309BHJP
G06F 21/44 20130101ALI20230309BHJP
【FI】
G06F21/32
G06F21/44
(21)【出願番号】P 2019139867
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野畑 直樹
【審査官】宮司 卓佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-092442(JP,A)
【文献】特開2006-268668(JP,A)
【文献】特開2001-202336(JP,A)
【文献】特開2011-013912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/31-21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末が通信対象と通信する場合に、前記端末に係る固有のコード情報を取得する取得部と、
ユーザの生体情報を検出部で入力した場合に、事前に前記コード情報により改変して保存された生体認証の登録情報を、前記取得部によって取得された前記コード情報を基に解き、その登録情報を用いて前記生体情報の正否を認証する認証部と、を備え、
前記登録情報は、前記生体情報に含まれる複数の特徴データが改変有無の二つの組に仕分けされた情報であり、
前記認証部は、前記取得部で取得した前記コード情報を用いて、複数の前記特徴データのうち改変無しデータを特定し、特定した前記改変無しデータを基に前記生体認証を実行する認証システム。
【請求項2】
前記コード情報は、前記端末の認証に用いる認証情報である
請求項1に記載の認証システム。
【請求項3】
前記登録情報は、前記生体情報の一部であって前記生体認証に用いる前記改変無しデータと、ランダムに生成されたダミーデータとを備える請求項1又は請求項2に記載の認証システム。
【請求項4】
端末が通信対象と通信する場合に、前記端末に係る固有のコード情報を取得部によって取得するステップと、
ユーザの生体情報を検出部で入力した場合に、事前に前記コード情報により改変して保存された生体認証の登録情報を、前記取得部によって取得された前記コード情報を基に解き、その登録情報を用いて前記生体情報の正否を認証するステップと、を備え、
前記登録情報は、前記生体情報に含まれる複数の特徴データが改変有無の二つの組に仕分けされた情報であり、
前記生体情報の正否を認証するステップでは、前記取得部で取得した前記コード情報を用いて、複数の前記特徴データのうち改変無しデータを特定し、特定した前記改変無しデータを基に前記生体認証を実行する認証方法。
【請求項5】
生体認証の解として使用される登録情報を
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の認証システムのメモリに登録する登録装置であって、
ユーザから入力した生体情報を、端末及び前記端末の通信対象が通信する際に前記端末から送信されるコード情報を基に改変し、改変後の前記生体情報を前記登録情報として登録する登録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を用いて認証を行う認証システム、認証方法、及び登録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体情報を用いて認証を行う認証システムが周知である。この種の認証システムは、種々のサービスに利用されている。例えば、特許文献1に記載の認証システムでは、車両において事前に正しい指の静脈を登録情報として予め登録しておき、指の静脈を検出した際、これを登録情報と照合することにより認証を実行する。そして、この認証結果に基づいて車載機器の作動を許可する。この認証システムでは、車両に搭載された認証装置のメモリに、登録情報が記憶されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、認証システムでは、記憶された登録情報が漏洩した場合、この登録情報が解析されると、登録情報から例えば指の静脈を偽装されるおそれがある。また、一般的に生体情報は、不変的で変更が難しい。そのため、指の静脈が偽装されると、同じ指の静脈を用いる他のサービスに悪用されてしまうという可能性があり、対策が必要とされていた。
【0005】
本発明の目的は、セキュリティ性を向上可能にした認証システム、認証方法、及び登録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための認証システムは、端末が通信対象と通信する場合に、前記端末に係る固有のコード情報を取得する取得部と、ユーザの生体情報を検出部で入力した場合に、事前に前記コード情報により改変して保存された生体認証の登録情報を、前記取得部によって取得された前記コード情報を基に解き、その登録情報を用いて前記生体情報の正否を認証する認証部と、を備える。
【0007】
上記課題を解決するための認証方法は、端末が通信対象と通信する場合に、前記端末に係る固有のコード情報を取得するステップと、ユーザの生体情報を検出部で入力した場合に、事前に前記コード情報により改変して保存された生体認証の登録情報を、前記取得部によって取得された前記コード情報を基に解き、その登録情報を用いて前記生体情報の正否を認証するステップと、を備える。
【0008】
上記課題を解決するための登録装置は、生体認証の解として使用される登録情報を認証システムのメモリに登録する登録装置であって、ユーザから入力した生体情報を、端末及び前記端末の通信対象が通信する際に前記端末から送信されるコード情報を基に改変し、改変後の前記生体情報を前記登録情報として登録する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の認証システム、認証方法、及び登録装置は、セキュリティ性を向上可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、認証システム、認証方法、及び登録装置の一実施形態を
図1~
図4に従って説明する。
図1に示すように、通信対象としての車両1は、端末2との無線によるID照合を通じて端末の認証を行う認証システム3が搭載されている。認証システム3は、ID照合の成立を一条件に車載装置4の作動を許可又は実行する。本例の認証システム3は、車両1からの通信を契機に無線によって自動的にID照合を実行するキー操作フリーシステムである。車載装置4は、例えばドアロック装置やエンジンなどがある。
【0012】
認証システム3は、車両1においてID照合を実行するシステム装置5を備える。端末2及びシステム装置5は、互いに電波を送受信して無線通信を実行してID照合を実行する。本例の無線通信は、システム装置5から端末2へLF帯(LF:Low Frequency)の電波が送信され、端末2からシステム装置5へUHF帯(UHF:Ultra High Frequency)の電波が送信されるLF-UHFの相互通信である。端末2及びシステム装置5には、ID照合で使用する認証情報として電子キーID及びキー固有鍵が登録されている。ID照合は、例えば電子キーIDの正否を確認する電子キーIDの照合や、キー固有鍵を用いたチャレンジレスポンス認証等を実行する。
【0013】
システム装置5は、システム装置5において、無線通信を実行する通信部6を有している。通信部6は、LF帯の電波を送信し、UHF帯の電波を受信可能になっている。また、システム装置5の図示しないメモリには、電子キーID及びキー固有鍵が記憶されている。
【0014】
端末2は、端末2の作動を制御する端末制御部20と、端末2において無線通信を行う端末通信部21とを備える。端末2は、例えば主にキー機能を有する電子キーである。端末制御部20は、端末2においてID照合の作動を実行する。端末通信部21は、UHF帯の電波を送信し、LF帯の電波を受信可能になっている。また、端末2のメモリ22には、生体認証で用いられるコード情報が記憶されている。
【0015】
認証システム3は、車両1を使用するユーザの正否を生体認証によって確認する生体認証機能を備える。本例の場合、生体認証機能において、認証システム3は、ユーザから取り込んだ生体情報と、車両1側に事前登録された登録情報とを比較することにより、ユーザの正否を確認する。事前登録は、認証システム3を使用する前に、解の正解となる登録情報を登録しておく初期登録の一種である。生体情報には、例えば指紋、静脈、虹彩、顔、及び声などが挙げられる。
【0016】
認証システム3は、生体情報を検出する検出部30と、検出部30の出力を基に生体認証を実行する認証制御部40を備えている。本例の検出部30及び認証制御部40は、車両1に設けられている。認証制御部40は、生態認証の認証結果をシステム装置5に出力し、その認証結果に基づく車載装置4の作動を、システム装置5に実行させる。
【0017】
検出部30は、例えば画像の撮像を行うカメラであり、生体情報としてユーザの顔を撮像した画像データを出力する。認証制御部40は、例えば検出部30から出力された画像データを画像処理して、生体情報に含まれる特徴データを解析する。特徴データには、解析した特徴の項目と、それに対応する数値が含まれる。画像処理では、例えば入力した画像データを複数の項目で解析して、各々について数値化される。これにより、解析した項目とそれに対応する数値とが組み合わさった複数項目の特徴データが得られる。なお、画像処理には公知の画像処理技術が用いられる。
【0018】
認証制御部40は、登録情報を登録する登録部41を備えている。登録部41は、入力した生体情報を、生体情報の改変に用いられる情報であるコード情報に基づいて改変し、改変後の生体情報を登録情報として登録する。登録部41は、登録情報を、認証制御部40のメモリ45に書き込み保存する。コード情報は、端末2にユニークな情報であることが好ましい。コード情報の一例は、端末2に登録された認証情報、例えば電子キーIDである。登録部41は、例えば検出部30から生体情報を入力すると、生体情報に含まれている複数項目の特徴データのうち、一部の項目を改変する。登録部41は、ランダムに生成したダミーデータによって、例えば特徴データの数値部分を改変する。
【0019】
認証制御部40は、生体認証時に、コード情報を取得する取得部42を備えている。取得部42は、例えばシステム装置5及び端末2の間の通信を介して、端末2からコード情報を取得する。取得部42は、例えばID照合の通信時、端末2から送信された電子キーIDを、システム装置5を介して取得する。
【0020】
認証制御部40は、コード情報を基に、生体情報に含まれている複数の特徴データを改変有無の二つの組に仕分ける選別部44を備えている。選別部44は、コード情報を取得すると、例えば所定の選別アルゴリズムにコード情報を通して、複数の特徴データのそれぞれについて、改変の有無を選別する。選別アルゴリズムは、例えばハッシュ関数などの不可逆な一方向関数を用いた演算であることが好ましい。以下、選別部44によって改変無しと選別された特徴データを、「改変無しデータ」と記載する。また、選別部44によって改変有りと選別された特徴データを、「改変有りデータ」と記載する。
【0021】
登録部41は、選別部44の選別結果に基づいて、生体情報の改変を行う。登録部41は、生体情報に含まれる複数の特徴データのうち、改変有りデータを改変し、改変無しデータを改変しない。登録部41は、改変有りデータをランダムに生成したダミーデータによって置換する。これにより、登録される登録情報は、改変無しデータとダミーデータとを備える。
【0022】
認証制御部40は、生体情報の正否を認証する認証部43を備えている。認証部43は、検出部30が生体情報を入力した場合に、改変して保存された登録情報を、取得部42によって取得されたコード情報を基に解き、その登録情報を用いて生体認証を行う。生体認証において、認証部43は、検出部30が検出した生体情報と、解読した登録情報との比較により認証を行う。認証部43は、比較の結果、生体情報及び登録情報が一致しているとみなせる場合、生体認証を成立とする。
【0023】
認証部43は、認証時に、取得部42が取得したコード情報によって改変無しデータを特定し、改変無しデータを基に、生体認証を行う。認証部43は、例えば生体情報及び登録情報の改変無しデータを比較する。
【0024】
以下、本実施形態の作用について説明する。まず、
図2及び
図3を用いて登録情報の登録について説明する。認証制御部40は、例えば車両において規定の登録操作が実行されつつ、所定の登録条件が満たされている場合に、登録部41による登録処理を開始する。規定の登録操作には、例えば車両のカーナビゲーションシステムを用いた登録開始操作が挙げられる。登録条件には、例えば端末2のID照合の成立や、ID及びパスワードを用いたユーザ確認の成立などが挙げられる。
【0025】
図2に示すように、S101(Sはステップの略、以下同じ)では、認証制御部40の登録部41は、登録するユーザの生体情報を入力する。生体情報は、例えば検出部30を用いて入力される。生体情報は、例えば顔の画像である。認証制御部40は、前処理として画像データを解析し、複数の特徴データを得る。前処理には、公知の画像処理技術が用いられる。
【0026】
S102では、認証制御部40の取得部42は、コード情報を取得する。コード情報は、例えば電子キーIDである。本例の場合、生体情報の登録条件として、端末2のID照合が課される。このID照合では、端末2からシステム装置5へ電子キーIDが送信される。取得部42は、ID照合で用いられた電子キーIDをシステム装置5から取得する。
【0027】
S103では、取得部42が電子キーIDを取得すると、選別部44は、生体情報に含まれる特徴データを二つの組に選別する。選別部44は、例えば電子キーIDを所定の選別アルゴリズムに通し、認証に用いる特徴データである改変無しデータと改変有りデータの組に選別する。選別部44は、選別結果を登録部41へ出力する。
【0028】
S104では、登録部41は、選別部44の選別結果に基づき、生体情報を改変する。登録部41は、「改変有りデータ」を改変し、「改変無しデータ」を改変しない。登録部41は、改変有りデータを、ランダムに生成されたダミーデータによって置換して改変する。
【0029】
図3を用いて、生体情報の改変について説明する。認証制御部40は、検出した画像データについて画像処理を行うことによって、複数の項目についてそれぞれ検出値を求め、項目と検出値とを含む特徴データを得る。項目には、例えば目と目の間隔、鼻の高さ、鼻の角度、眉毛の太さ、及び眉毛と目の間隔、などの特徴Nが挙げられる。認証制御部40は、画像データを解析し、これら特徴Nのそれぞれについて、検出値Xを算出する。それぞれの項目には、項目番号nが付与されている。画像処理において、項目番号nと特徴Nは予め設定されている。
【0030】
次に、認証制御部40は、選別部44によって、コード情報に基づき特徴データの選別を行う。選別部44は、各特徴データについて改変有無を決定する。選別部44は、所定の選別アルゴリズムにコード情報を通して、各特徴データについて改変有無を定めた選別結果を出力する。なお、選別結果は、コード情報から一義的に求まる。
【0031】
次に、認証制御部40は、登録部41によって、選別結果に基づき生体情報を改変する。登録部41は、選別部44によって改変有りとされた改変有りデータを、ダミーデータによって置換する。ダミーデータは、例えば生成のたびに値が変わる乱数によって生成されたダミー値Yである。登録部41は、各改変有りデータごとにダミー値Yを生成し、このダミー値によって改変有りデータの検出値Xを置換する。これにより、登録部41は、複数の特徴Nに対して、検出値X及びダミー値Yのいずれかを登録値X/Yとして対応付けた登録情報を生成する。
【0032】
図2に戻り、S105では、登録部41は、コード情報に基づいて生体情報を改変することで得られた登録情報を登録する。登録部41は、登録情報を、メモリ45に記憶する。登録情報は、ユーザの生体情報そのものとは異なるデータとなる。仮に、登録情報を生体情報そのものとした場合、暗号化されていたとしても、解析によって復元されてしまう。また、登録情報が車両1に記憶されている場合、車両1を盗難されることによって、生体情報が漏洩するおそれがある。本例の場合、登録情報からユーザの生体情報を復元しようとしても、ダミーデータによって元の生体情報を復元することができない。そのため、生体情報のセキュリティ性を高めることができる。
【0033】
次に、
図4を用いて、ユーザが実際に車両1を操作する際の認証について説明する。
図4に示すように、S201では、端末2及びシステム装置5の間でID照合による端末認証が行われる。システム装置5は、例えば車両1の近傍に電波をLF送信している。端末2は、電波がLF送信されているとき、車両近傍エリアに進入して受信すると、これに対する応答を送信し、ID照合を開始する。ID照合では、端末2及びシステム装置5の間で、端末2の電子キーIDを送受信して電子キーIDの照合を行うとともに、キー固有鍵を用いた暗号認証を行う。システム装置5は、これらの照合や認証が成立したことを確認すると、ID照合を成立とする。
【0034】
S202では、検出部30は、生体情報を検出する。本例の検出部30は、ID照合が成立した場合に、生体情報として顔画像を撮像する。検出部30は、撮像した画像データを認証制御部40へ出力する。認証制御部40は、画像データを入力すると、画像データの前処理を実行する。これにより、いま検出した生体情報に含まれる特徴データが得られる。
【0035】
S203では、認証制御部40は、取得部42によって、コード情報を取得する。本例の取得部42は、システム装置5からID照合で用いられた電子キーIDを取得する。取得部42は、例えばID照合が行われたときに、システム装置5が受信した電子キーIDを出力させることにより、電子キーIDの取得を行う。取得部42は、取得した電子キーIDを選別部44へ出力する。このように、コード情報は、通信によって取得されるので、ユーザが入力をしなくても済む。これは、ユーザにとって利便性が高い。
【0036】
S204では、選別部44は、電子キーIDを入力すると、電子キーIDを所定の選別アルゴリズムに通すことにより、認証に用いる改変無しデータを選別する。選別部44は、選別結果を認証部43へ出力する。ここで、電子キーIDが、登録時に用いた電子キーIDと同一である場合、選別結果は、登録時と同じになる。
【0037】
S205では、認証部43は、入力した改変無しデータの選別結果を基に、いま検出した生体情報と、登録情報とを比較する。認証部43は、選別部44の選別結果に従って、生体情報及び登録情報の改変無しデータだけを比較する。認証部43は、例えば生体情報及び登録情報の間で、同じ項目番号n同士の改変無しデータの数値部分を比較する。認証部43は、生体情報の改変無しデータと登録情報の改変無しデータとのマッチングにより、生体情報及び登録情報が一致していることを確認すると、生体認証を成立と判定する。認証部43は、生体認証を成立とした場合、S206へ移行する。一方、認証部43は、生体情報の改変無しデータと登録情報の改変無しデータとのマッチングにより、両者が一致していないと確認した場合、生体認証を不成立と判定する。認証部43は、生体認証を不成立とした場合、S207へ移行する。仮に、登録時と認証時とで、電子キーIDが異なる場合、選別結果が異なるので、生体認証が成立しない。すなわち、本例の生体認証では、正しい端末2を所持しない者は、生体認証を成立に移行させることができないため、生体認証の難易度が高い。
【0038】
S206では、認証制御部40は、生体認証が成立した場合、生体認証が成立した旨を、システム装置5へ通知する。システム装置5は、通知を受けると、例えばID照合が成立していることを前提に、車載装置4の作動を許可する。
【0039】
S207では、認証制御部40は、生体認証が不成立の場合、生体認証が不成立の旨を、システム装置5へ通知する。システム装置5は、通知を受けると、車載装置4の作動を禁止する。なお、システム装置5は、端末2のID照合が成立している場合に、一部の車載装置4の作動を許可し、残りの作動を禁止するように制御してもよい。
【0040】
以下、本実施形態の効果について説明する。
(1)認証システム3は、端末2がシステム装置5と通信する場合に、端末2に係る固有のコード情報を取得する取得部42を備える。また、認証システム3は、ユーザの生体情報を検出部30で入力した場合に、事前にコード情報により改変して保存された生体認証の登録情報を、取得部42によって取得されたコード情報を基に解き、その登録情報を用いて生体情報の正否を認証する認証部43を備える。この構成によれば、生体認証に用いる登録情報は、コード情報を基に改変したものが登録されているので、登録情報から元の生体情報を復元することができない。そのため、セキュリティ性が向上する。
【0041】
(2)コード情報は、端末2を認証するための通信で用いられる認証情報である。この構成によれば、端末認証で用いる認証情報をコード情報として兼用するので、別途コード情報を生成する必要がない。また、生体認証とともに端末2の認証を行う態様とすれば、認証のセキュリティ性向上に寄与する。
【0042】
(3)登録情報は、生体情報に含まれる複数の特徴データが改変有無の二つの組に仕分けされた情報である。認証部43は、取得部42で取得したコード情報を用いて、複数の特徴データのうち改変無しデータを特定し、特定した改変無しデータを基に生体認証を実行する。この構成によれば、コード情報によって、生体認証に用いる改変無しデータを決定して、改変無しデータの部分だけを比較するという簡素な処理で認証を行うことができる。これにより、認証時に生体情報を改変する処理を行わなくても済む。これは、処理負荷の軽減に寄与する。
【0043】
(4)登録情報は、生体情報の一部であって生体認証に用いる改変無しデータと、ランダムに生成されたダミーデータとを備える。この構成によれば、ランダムなダミーデータによって登録情報からの生体情報の復元を困難にすることができる。これは、セキュリティ性の向上に寄与する。
【0044】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
[認証部43について]
・認証部43は、コード情報を用いて生体情報を改変して、登録してある登録情報と比較を行ってもよい。これは、例えば選別部44が省略された構成に適用できる。
【0045】
・認証部43が生体情報と登録情報とを比較して認証する方法は、特に限定されない。例えば改変無しデータだけを比較してもよいし、改変有りデータの比較結果を無視してもよい。また、比較方法は、例えばマッチングなど、公知の技術を用いることができる。
【0046】
[取得部42について]
・取得部42がコード情報を取得するタイミングは、生体情報の入力よりも前でもよいし、後でもよいし、途中でもよい。また、ID照合が行われたときに取得するのでもよい。
【0047】
・取得部42は、システム装置5を介さないでコード情報を取得してもよい。すなわち、認証制御部40が端末2と通信を行ってもよい。
[登録部41について]
・登録部41は、ダミーデータを用いて特徴データの数値を置換することに限定されない。例えば、コード情報から演算した演算結果を用いて特徴データを改変してもよい。
【0048】
・登録部41は、生体情報に含まれる全ての特徴データを改変してもよい。
・登録部41による改変は、検出値を変更することに限定されず、例えば、改変有りデータ同士の間で対応する数値を入れ替えてもよいし、数値を削除してもよいし、数値を置換してもよいし、項目をダミーに変更してもよい。
【0049】
・登録部41は、生体情報を改変する際に、改変に用いるコード情報を新たに生成してもよい。この場合、生成したコード情報を、端末2へ送信して記憶させればよい。すなわち、コード情報は、電子キーIDに限定されず、改変のために別途設けられた情報でもよい。
【0050】
・コード情報は、一定でなくてもよく、更新されてもよい。例えば登録のたびに新たな値に更新されてもよい。この場合、一定回数又は一定期間の使用で、新たなコード情報を生成し、これを基に新たな登録情報を登録してもよい。また、生成されたコード情報は、端末2側へ送信されて書き換えられてもよい。
【0051】
・生体情報の登録をするための登録条件は、特に限定されない。登録条件には、例えば端末2のID照合の成立や、ID及びパスワードを用いたユーザ確認の成立などが挙げられる。また、登録は初期のみに行われてもよいし、使用途中の任意のタイミングで行われてもよい。
【0052】
・登録部41は、車両1に設けられることに限定されず、端末2に設けられていてもよいし、別個に登録装置として設けられていてもよい。
[選別部44について]
・選別部44は、コード情報をアルゴリズムに通して選別を行うことに限定されず、コード情報そのものを用いて選別を行ってもよい。
【0053】
・選別部44が選別する改変無しデータ及び改変有りデータのそれぞれの個数は、特に限定されない。改変無しデータ及び改変有りデータの両方に少なくとも一つのデータが含まれていればよい。
【0054】
・選別部44は、省略可能である。
[その他]
・検出部30は、車両1に設けられることに限定されず、端末2側に設けられていてもよい。
【0055】
・登録時には、車両1に設けられた検出部30とは別の検出装置によって生体情報を検出してもよい。
・生体情報に含まれる特徴データは、実施形態に限定されない。例えば、実施形態のような特徴を解析することに限定されず、種々の画像処理によって解析されたデータであればよい。また、画像処理方法は、特に限定されず、公知の技術を用いることができる。
【0056】
・特徴データは、項目と数値とが組みになったものとしたが、これに限定されない。例えば、数値の羅列でもよい。
・登録情報に含まれるデータは特に限定されない。登録情報及び生体情報の比較ができれば、例えば登録値X/Yの単なる羅列でもよいし、項目番号nと登録値X/Yとの組み合わせでもよいし、特徴Nと登録値X/Yとの組み合わせでもよい。
【0057】
・検出部30は、カメラに限定されず、センサやマイク等の各種検出装置を用いることができる。
・生体情報は、特に限定されない。生体情報には、例えば指紋、静脈、虹彩、顔、及び声などが挙げられる。
【0058】
・端末2は、電子キーに限定されず、例えば高機能携帯電話、所謂スマートフォンなどの各種端末でもよい。
・認証において、ID照合と生体認証とが同時に実施されてもよいし、別のタイミングで実施されてもよい。
【0059】
・認証システム3において、端末2のID照合は、キー操作フリーシステムに限定されず、端末認証の方法は特に限定されない。また、端末2のID照合、すなわち端末認証は、省略されてもよい。
【0060】
・認証システム3は、車両に限定されない。例えば、住宅のドアなどの施解錠に使用されるものでもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…車両、2…端末、3…認証システム、4…車載装置、5…システム装置、6…通信部、20…端末制御部、21…端末通信部、22…メモリ、30…検出部、40…認証制御部、41…登録部、42…取得部、43…認証部、44…選別部、45…メモリ。