(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】(+)-αジヒドロテトラベナジンコハク酸塩
(51)【国際特許分類】
C07D 455/06 20060101AFI20230309BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230309BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230309BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20230309BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230309BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230309BHJP
C07C 55/10 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
C07D455/06 CSP
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/4375
A61P25/14
A61P43/00 111
C07C55/10
(21)【出願番号】P 2019553985
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2018058109
(87)【国際公開番号】W WO2018178251
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2017-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519345759
【氏名又は名称】アデプティオ ファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダッフィールド、アンドリュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パーンディヤ、アナント
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-517312(JP,A)
【文献】特表2015-528516(JP,A)
【文献】EUROPEAN JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2011年,Vol. 46,pp. 1841-1848
【文献】長瀬博監訳,最新 創薬化学 下巻,株式会社テクノミック,1999年09月25日,pp. 347-365
【文献】高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,Vol.6, No.10,2007年01月15日,pp. 20-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩。
【請求項2】
結晶形態の、請求項1に記載の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩。
【請求項3】
1:1の塩比を有する、請求項1
又は2に記載の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項5】
1mg~30mgの、請求項1から
3のいずれか一項に記載の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、請求項
4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物がカプセル剤または錠剤である、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩に対して、ジヒドロテトラベナジンの任意の他の異性体を20重量%以下含有する、請求項
5または請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
運動障害の治療のための、請求項
4から
7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ハンチントン病、ヘミバリズム、老人性舞踏病、チック障害、遅発性ジスキネジア、ジストニア、ミオクローヌスおよびトゥレット症候群からなる群から選択される多動性運動障害の治療のための、請求項
4から
7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
溶媒とともに(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基とコハク酸とを混合することと、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩が形成される時間を与えることと、コハク酸塩を単離することとを含む、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジヒドロテトラベナジン塩、それを含有する医薬組成物、それを製造する方法、および例えばトゥレット症候群などの多動性運動障害の治療でのその治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
運動障害は一般に、多動性運動障害(hyperkinetic movement disorder)および運動低下性運動障害(hypokinetic movement disorder)の2つのカテゴリーに分類することができる。多動性運動障害は、筋活動の増加によって引き起こされ、振戦、ジストニア、舞踏病、チック、ミオクローヌスおよび常同症をはじめとする異常および/または過剰な運動を引き起こすことがある。
【0003】
多動性運動障害は、多くの場合、本質的に心理的なものであり、大脳基底核のアミン神経伝達物質の不適切な調節によって生じる。
【0004】
トゥレット症候群は、複数の身体的チックおよび音声チックを特徴とする遺伝性の神経学的症状である。チックとは、通常、反復性であるがランダムな身体の運動または声帯の雑音である。音声チックには様々な形態があり、自分自身の言葉、他人の言葉、または他の音の反復を含むことがある。発症は通常小児に起こり、青年期および成人期を通じて続く。
【0005】
トゥレット症候群に随伴するチックは一時的に抑制することができるが、患者は通常短い期間に限りチックを抑制することができる。あらゆる患者のあらゆる種類のチックを対象とする有効な治療法はまだないが、チック抑制のためのある種の薬剤が開発されている。
【0006】
ドーパミン受容体拮抗薬はトゥレット症候群患者のチックを抑制する能力を示すことが知られており、現在、フルフェナジン、リスペリドン、ハロペリドールおよびピモジドなどの多くのドーパミン受容体拮抗薬がトゥレットのチックの抑制に使用されている。
【0007】
2型小胞モノアミン輸送体(VMAT2)は、細胞サイトゾルからシナプス小胞に向かうドーパミン、セロトニンおよびヒスタミンなどのモノアミン神経伝達物質の輸送に関与する膜タンパク質である。このタンパク質を阻害すると、シナプス前ニューロンがドーパミンを放出するのが妨げられ、その結果、脳内のドーパミン量が減少する。
【0008】
したがって、VMAT2阻害剤が、トゥレット症候群の症状に対する効果的な薬剤であり得ることが予測される。
【0009】
テトラベナジン(化学名:1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ(a)キノリジン-2-オン)は、1950年代後半から医薬品として使用されている。当初、抗精神病薬として使用されていたテトラベナジンは、現在、ハンチントン病、ヘミバリズム、老人性舞踏病、チック、遅発性ジスキネジアおよびトゥレット症候群などの多動性運動障害の治療に使用されている。例えば、JankovicらによるAm.J.Psychiatry.(1999)Aug;156(8):1279-81およびJankovicらによるNeurology (1997)Feb;48(2):358-62を参照されたい。
【0010】
テトラベナジンの主な薬理作用は、ヒト小胞モノアミン輸送体アイソフォーム2(hVMAT2)を阻害することにより、中枢神経系に対するモノアミン(例えば、ドーパミン、セロトニンおよびノルエピネフリン)の供給を減少させることである。この薬物は、シナプス後ドーパミン受容体も遮断する。
【0011】
テトラベナジンは、様々な多動性運動障害の治療に効果的かつ安全な薬物であり、典型的な神経弛緩薬とは対照的に、遅発性ジスキネジアを引き起こすことは示されていない。それでもなお、テトラベナジンは、鬱病、パーキンソニズム、傾眠、神経過敏または不安、不眠症、およびまれにではあるが神経遮断薬悪性症候群を引き起こすなど、いくつかの用量関連の副作用を示す。
【0012】
テトラベナジンの中心的作用はレセルピンとよく似ているが、VMAT1輸送体での活性を欠く点でレセルピンとは異なる。VMAT1輸送体での活性の欠如とは、テトラベナジンがレセルピンよりも末梢活性が低く、その結果、低血圧症などのVMAT1関連副作用を引き起こさないことを意味する。
【0013】
テトラベナジンの化学構造は以下の通りである。
【化1】
【0014】
この化合物は、3位および11b位の炭素原子にキラル中心を有するため、理論的には、以下に示すように合計4つの異性体型で存在し得る。
【化2】
【0015】
各異性体の立体化学は、Cahn、IngoldおよびPrelogによって開発された「RおよびS」命名法を使用して定義される。Advanced Organic Chemistry by Jerry March, 4th Edition, John Wiley & Sons, New York, 1992, pages 109-114を参照されたい。この特許出願では、「R」または「S」の表示は、炭素原子の位置番号の順に示されている。したがって、例えば、RSは3R、11bSの省略表記である。同様に、以下に説明するジヒドロテトラベナジンのように3つのキラル中心が存在する場合、「R」または「S」の表示は、炭素原子2、3および11bの順に列挙される。したがって、2R,3S,11bS異性体は省略形ではRSSと称される、などとなる。
【0016】
市販のテトラベナジンは、RR異性体とSS異性体とのラセミ混合物であり、RR異性体およびSS異性体は最も熱力学的に安定な異性体であることが分かる。
【0017】
テトラベナジンは、やや不十分で変動のあるバイオアベイラビリティを有する。テトラベナジンは初回通過代謝により大部分が代謝され、典型的には、尿中では未変性のテトラベナジンはほとんどまたはまったく検出されない。テトラベナジンの代謝物の少なくともいくつかは、テトラベナジンの2-ケト基の還元により形成されるジヒドロテトラベナジンであることが知られている。
【0018】
ジヒドロテトラベナジン(化学名:2-ヒドロキシ-3-(2-メチルプロピル)-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-ベンゾ(a)キノリジン)は3つのキラル中心を有するため、以下の8つの光学異性体型のいずれかで存在し得る。
【化3】
【0019】
8つのジヒドロテトラベナジン異性体すべての合成および特性評価は、Sunら(Eur.J.Med.Chem.(2011),1841-1848)によって説明されている。
【0020】
8つのジヒドロテトラベナジン異性体のうち、4つの異性体が、親テトラベナジンの安定性の高いRRおよびSS異性体、すなわちRRR、SSS、SRRおよびRSS異性体に由来する。
【0021】
RRRおよびSSS異性体は一般に「アルファ(α)」ジヒドロテトラベナジンと呼ばれ、それぞれ(+)-α-ジヒドロテトラベナジンおよび(-)-α-ジヒドロテトラベナジンと個別に呼ばれることがある。α異性体は、2位および3位のヒドロキシルおよび2-メチルプロピル置換基のトランス相対配向を特徴とする。例えば、KilbournらによるChirality, 9:59-62(1997)およびBrossiらによるHelv.Chim.Acta., vol.XLI, No. 193, pp1793-1806(1958)を参照されたい。
【0022】
SRRおよびRSS異性体は、一般に「ベータ(β)」異性体と呼ばれ、それぞれ(+)-β-ジヒドロテトラベナジンおよび(-)-β-ジヒドロテトラベナジンと個別に呼ばれることがある。β異性体は、2位および3位のヒドロキシルおよび2-メチルプロピル置換基のシス相対配向を特徴とする。
【0023】
ジヒドロテトラベナジンは主に薬物の活性を担うと考えられているが、ジヒドロテトラベナジンの様々な立体異性体のどれがその生物学的活性を担うのかを示す証拠を含む試験はこれまでに発表されていない。さらに具体的には、どの立体異性体がトゥレット症候群などの運動障害を治療するテトラベナジンの能力を担うのかを示す試験は発表されていない。
【0024】
Schwartzら(Biochem.Pharmacol.(1966),15:645-655)は、ウサギ、イヌおよびヒトを対象に行われたテトラベナジンの代謝試験について説明している。Schwartzらは、9種類の代謝物を同定し、そのうち5種類は非抱合型、残りの4種類はグルクロン酸抱合型であった。5種類の非抱合代謝物は、α-およびβ-ジヒドロテトラベナジン、2-メチルプロピル側鎖にヒドロキシル基が導入されている2種類の酸化類似体、ならびに2-メチルプロピル側鎖にヒドロキシル基が導入されている酸化テトラベナジンであった。4種類の抱合代謝物はいずれも、9-メトキシ基が脱メチル化されて9-ヒドロキシ化合物となった化合物であった。様々な代謝物のキラリティーは試験されておらず、特に個々のα-およびβ-異性体のキラリティーの開示はなかった。
【0025】
Schermanら(Mol.Pharmacol.(1987), 33, 72-77は、ラセミ体α-およびβ-ジヒドロテトラベナジン間のVMAT2結合の立体特異性を記載している。Schermanらは、in vitroで試験した場合、α-ジヒドロテトラベナジンが、クロマフィン顆粒モノアミン輸送体に対してβ-異性体の3~4倍の親和性を示したと報告した。しかし、Schermanらは、α-およびβ-ジヒドロテトラベナジンの個々のエナンチオマーの分割または試験については開示していない。
【0026】
Mehvarら(J.Pharm.Sci.(1987), 76(6), 461-465)は、テトラベナジンまたはジヒドロテトラベナジンの投与後のラットの脳内のテトラベナジンおよびジヒドロテトラベナジンの濃度の試験を報告した。この試験では、その比較的大きな極性にもかかわらず、ジヒドロテトラベナジンが血液脳関門を通過することができたことが示された。しかし、ジヒドロテトラベナジンの立体化学は開示されなかった。
【0027】
Mehvarら(Drug Metabolism and Disposition(1987), 15:2, 250-255)は、遅発性ジスキネジアに罹患した4例の患者にテトラベナジンを投与した後のテトラベナジンおよびジヒドロテトラベナジンの薬物動態の試験を記載している。テトラベナジンの経口投与では、テトラベナジンの血漿中濃度は低くなったが、ジヒドロテトラベナジンの濃度は比較的高くなった。しかし、in vivoで形成されたジヒドロテトラベナジンの立体化学は報告されなかった。
【0028】
Robertsら(Eur. J.Clin.Pharmacol.(1986), 29:703-708)は、不随意運動障害(involuntary movement disorder)の治療を受けた患者のテトラベナジンおよびそのヒドロキシ代謝物の薬物動態を記載している。Robertsらは、テトラベナジンは経口投与後に大部分が代謝され、テトラベナジンの血漿中濃度は非常に低くなったが、ヒドロキシ代謝物の濃度ははるかに高くなったことを報告した。Robertsらは、ヒドロキシ代謝物の同定については記載しなかったが、ヒドロキシ代謝物の血漿中濃度が高いことが治療上重要である可能性があり(代謝物が薬理学的に活性であることが知られていたため)、Schwartzら(上記文献)の開示を考慮すると、シス異性体とトランス異性体との組合せ(すなわち、βおよびα異性体)が親薬物よりも治療上重要である可能性があることを示唆した。
【0029】
ミシガン大学医学部のMichael Kilbournと共同研究者らは、ジヒドロテトラベナジンの様々な異性体に関するいくつかの試験を発表している。Med.Chem.Res.(1994), 5:113-126では、Kilbournらは、VMAT2結合試験のin vivoイメージング剤としての(+/-)-α-[11C]-ジヒドロテトラベナジンの使用について記載している。
【0030】
Eur.J.Pharmacol(1995)278, 249-252では、Kilbournらは、[3H]-テトラベナジンを使用して、(+)-、(-)-および(+/-)-α-DHTBZのin vitro結合親和性を試験する競合結合試験を報告した。結合アッセイでは、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンについて0.97nMのKi値および(-)-α-ジヒドロテトラベナジンについて2.2μMのKi値が得られ、それにより、(+)α異性体がVMAT2受容体に対して(-)α異性体よりもはるかに大きな結合親和性を有することが示された。ただし、トゥレット症候群などの運動障害の治療に対するいずれかの異性体の有用性に関する試験は報告されず、結論も導き出されなかった。
【0031】
Chirality(1997)9:59-62では、Kilbournらは、上記の2R,3R,11bR配置を有するとの結論が下された(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの絶対配置を同定することを目的とした試験を記載した。Kilbournらはまた、α-およびβ-ジヒドロテトラベナジンがヒトの脳内では薬理学的に活性な薬物である可能性が高いことを示している前述のSchwartzらおよびMehvarらの論文に言及しているが、テトラベナジンの活性代謝物の正確な立体化学的同一性に関して明確な結論は導き出されなかった。
【0032】
Synapse(2002), 43:188-194では、Kilbournらは、「infusion to equilibrium methods」において、VMAT受容体の特異的なin vivo結合を測定するために使用される薬剤としての(+)-α-[11C]-ジヒドロテトラベナジンの使用について記載した。Kilbournらは、(-)-α-[11C]-ジヒドロテトラベナジンが均一な脳分布を生成することを発見し、これは、このエナンチオマーが低いVMAT親和性を有するという以前の観察と一致している。
【0033】
Sunら(上記文献)は、8つのジヒドロテトラベナジン異性体すべてのVMAT2結合親和性を検討した。Sunらは、右旋性エナンチオマーがいずれも、対応する左旋性エナンチオマーよりも劇的に強力なVMAT2結合活性を示したことを発見し、最も活性の高い(+)-α-異性体が最も活性であることを発見した。ただし、Sunらは、トゥレット症候群などの運動障害の治療に対する個々の異性体の相対的有効性は検討しなかった。
【0034】
国際公開第2015/120110号パンフレット(Auspex)は、テトラベナジンおよびジヒドロテトラベナジンをはじめとする多種多様な薬理学的薬剤のいずれかを含有することができる持続放出製剤を記載している。ただし、ジヒドロテトラベナジン製剤の実施例はなく、テトラベナジンを含有する製剤に限り実施例が存在する。
【0035】
国際公開第2011/153157号パンフレット(Auspex Pharmaceutical, Inc.)は、ジヒドロテトラベナジンの重水素化形態を記載している。ジヒドロテトラベナジンの多くの重水素化形態が示されているが、この出願は、少数の示された化合物を合成することを可能にするのに十分な情報しか提供していない。d6-α-ジヒドロテトラベナジンおよびd6-β-ジヒドロテトラベナジンのラセミ混合物は開示されているが、これらの混合物は分割されておらず、個々の(+)および(-)異性体の特性は試験されなかった。同様に、国際公開第2014/047167号パンフレット(Auspex Pharmaceutical, Inc.)は、テトラベナジンおよびその誘導体のいくつかの重水素化形態を記載している。ここでも、α-およびβ-ジヒドロテトラベナジンの重水素化形態の個々の(+)および(-)異性体は分離も試験もされなかった。
【0036】
したがって、正確にどのジヒドロテトラベナジン異性体がテトラベナジンの投与に起因する治療特性を担うかについて、現在まで不明であることが分かる。
【0037】
また、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンが、上記のような望ましくない副作用を伴わずに、トゥレット症候群などの運動障害の治療に治療上有用な効果をもたらすかどうかについても、これまで幾分不明であった。一方で、例えば、国際公開第2016/127133号パンフレット(Neurocrine Biosciences)は、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンがテトラベナジンの活性代謝物であることを示すChirality(上記文献)のKilbournらの論文に言及している。国際公開第2016/127133号パンフレットはまた、テトラベナジンがラットの脳内でシナプス前およびシナプス後ドーパミン受容体を阻害することを示すLoginらによる(1982), Ann.Neurology 12:257-62およびRechesらによるJ.Pharmacol.Exp.Ther.(1983), 225:515-521に報告されている試験にも言及している。国際公開第2016/127133号パンフレットでは、テトラベナジンのこの「オフターゲット」活性が、テトラベナジンの観察された副作用の一部の原因であり得ることが示唆されている。
【0038】
上述のように、テトラベナジンは鬱病およびパーキンソニズムを引き起こすなど、いくつかの用量関連の副作用を示すことが知られている(国際公開第2016/127133号パンフレットを参照されたい)。これらの副作用はVMAT2阻害によっても引き起こされる可能性があり、そのため、テトラベナジンおよびテトラベナジン由来化合物の治療効果と、これらの副作用とを分けることは困難であることが分かる(Mullerによる“Valbenazine granted breakthrough drug status for treating tardive dyskinesia”, Expert Opin.Investig.Drugs(2015),24(6), pp. 737-742を参照されたい)。
【0039】
テトラベナジンに関連する副作用を回避または軽減するために、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンのバリンエステルプロドラッグが開発されており、これはそのINN名バルベナジンによって知られている。バルベナジンの構造を以下に示す。
【化4】
【0040】
米国特許第8039627号明細書に開示されているように、バルベナジンは、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の存在下で、ジクロロメタンおよび4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)中、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンとカルボベンジルオキシ-L-バリンとを反応させて、中間体2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,1bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルを得ることによって調製される。次いで、炭素上のパラジウムを用いて中間体を水素化して、ベンジルオキシカルボニル保護基を除去して、バルベナジンを得る。
【0041】
Muller(“Valbenazine granted breakthrough drug status for treating tardive dyskinesia”, Expert Opin.Investig.Drugs(2015), 24(6), pp.737-742)は、遅発性ジスキネジア患者を対象としたバルベナジンの第IIb相臨床試験(「KINECT 1」)を記載している。バルベナジンを100mg/日の用量で投与し観察した際に症状のいくらかの軽減が見られたが、バルベナジンを50mg/日の用量で投与した対象では、異常不随意運動評価尺度(AIMS)を用いてスコア化したところ、改善の有意な徴候は認められなかった。Mullerは、おそらくバルベナジンの投与量が少なかったために、この試験は事実上失敗したとの結論を下した。
【0042】
同じ論文に記載されているその後の試験(「KINECT 2」)では、当初25mg/日の用量が対象に投与され、用量範囲は75mg/日まで増加した。試験終了時までに、測定が行われた時点で、バルベナジンにより治療された対象34例中21例が75mg/日の用量を投与されていた(O’Brienらによる“Kinect 2:NBI-98854 treatment of moderate to severe tardive dyskinesia” Mov.Disord.2014;29(Suppl 1):829)。この解析では、試験終了時までに75mg/日の用量で治療されていた患者および試験終了時までに25mg/日または50mg/日の用量で治療されていた患者の異常不随意運動の減少の内訳は示されていない。
【0043】
O’Brienらによって報告されたバルベナジンのその後の第III相試験(“KINECT 3 A randomised, Double-Blind Placebo-Controlled Phase 3 Trial of Valbenazine(NBI-98854)for Tardive Dyskinesia(PL02.003)”, Neurology(2016), 86(16), Supplement PL02.003)では、1日当たり40mgまたは80mgのバルベナジンを投与した場合の遅発性ジスキネジア患者の異常不随意運動の変化が検討された。80mg/日のバルベナジンが異常不随意運動スコアを有意に改善したことが確認され、80mg/日のバルベナジンが遅発性ジスキネジアを有意に改善するとの結論が下された。
【0044】
国際公開第2015/171802号パンフレット(Neurocrine Biosciences, Inc.)は、約15ng/ml~60ng/mlのCmaxおよび少なくとも15ng/mlのCminが8時間にわたって存在するような(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの血漿中濃度を生じる治療剤を投与することによって多動性疾患を治療する方法を記載している。国際公開第2015/171802号パンフレットでは、(+)-α-ジヒドロテトラベナジン自体を投与することによってこれを達成することができることが示唆されているが、国際公開第2015/171802号パンフレットに記載されている実験からは、バルベナジンの投与後に達成される(+)-α-ジヒドロテトラベナジン濃度のデータのみが提供されている。国際公開第2015/171802号パンフレットの例1では、血漿中30ng/mlの濃度の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンが適切な目標であり、15ng/ml未満の曝露は一般的な遅発性ジスキネジア(TD)集団全体に対して至適以下であるとの結論が下されている。国際公開第2015/171802号パンフレットの例2では、50mgの用量のバルベナジンが、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの必要な血漿中濃度を維持すると思われたことが開示されている。
【0045】
国際公開第2016/210180号パンフレット(Neurocrine Biosciences)は、様々な神経障害を治療するためのVMAT2阻害剤の使用を開示している。(+)-α-ジヒドロテトラベナジンはVMAT2阻害剤の例として言及されているが、国際公開第2016/210180号パンフレットで具体的に例示されているVMAT2阻害化合物は、バルベナジンおよび[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノールである。
【0046】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンはテトラベナジンよりも高い溶解度を有するが、それでも比較的低い溶解度を有し、多形を形成する傾向も示す。したがって、改善された物理的性質を備えた(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの医薬組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0047】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジン塩はVMAT2の拮抗薬である。テトラベナジンは、脳内のVMAT2を阻害し、シナプス前およびシナプス後の両ドーパミン受容体を阻害することにより、治療効果を発揮する。
【0048】
本出願の発明者らは、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩が、遊離塩基および他の一般的な酸付加塩と比較して予想外に良好な物理的性質を有することを発見した。特に、コハク酸塩は、遊離塩基および他の一般的な塩よりも、溶解度が高く、熱安定性が高く、多形を形成する傾向が少ない。
【0049】
これまでに実施された試験に基づいて、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンのコハク酸塩が、テトラベナジンが現在使用されているか提案されている疾患状態および症状の予防または治療に有用であると想定される。したがって、例として、限定するものではないが、本発明の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩は、ハンチントン病、ヘミバリズム、老人性舞踏病、チック障害、遅発性ジスキネジア、ジストニアおよびトゥレット症候群などの多動性運動障害の治療に使用することができる。本発明のジヒドロテトラベナジンコハク酸塩が、鬱病の治療に有用であり得ることも想定される。
【0050】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンは、以下の式(I)に示す化学構造(I)を有すると考えられる。
【化5】
【0051】
したがって、本発明は、式(II)に示される化学式を有する(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを提供する。
【化6】
【0052】
本出願では、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは、便宜上および簡潔にするために、(+)-α-DHTBZスクシナートもしくは(+)-α-DHTBZコハク酸塩、または本発明のコハク酸塩と呼ばれ得る。
【0053】
本発明のコハク酸塩は、典型的には、約1:1の塩比((+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基と酸とのモル比)を有する。
【0054】
別の態様では、本発明は、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0055】
本発明はまた以下を提供する。
・医薬品に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート。
・VMAT2受容体拮抗薬として使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート。
・運動障害(例えば、多動性運動障害)の治療に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート。
・それを必要とする対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物対象)の運動障害(例えば、多動性運動障害)の治療方法であって、治療有効量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む治療方法。
・運動障害(例えば、多動性運動障害)を治療するための薬剤を製造するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの使用。
・(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートおよび薬学的に許容される賦形剤を含む単位剤形(例えば、カプセルまたは錠剤)。
【0056】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは、ハンチントン病、ヘミバリズム、老人性舞踏病、チック障害、遅発性ジスキネジア、ジストニアおよびトゥレット症候群などの多動性運動障害の治療に使用することができる。一実施形態では、多動性運動障害はトゥレット症候群である。
【0057】
本明細書に記載の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは、典型的には60%を超える異性体純度を有する。
【0058】
本文脈の用語「異性体純度」は、あらゆる異性体型のジヒドロテトラベナジンの総量または濃度に対する、コハク酸塩に存在する(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基の量を指す。例えば、組成物中に存在する総ジヒドロテトラベナジンの90%が(+)-α-ジヒドロテトラベナジンである場合、異性体純度は90%である。
【0059】
本発明の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン塩は、82%超、85%超、87%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超、99.5%超または99.9%超の異性体純度を有し得る。
【0060】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは、一般に、そのような投与を必要とする対象、例えばヒトまたは動物の患者、好ましくはヒトに投与される。
【0061】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは、典型的には、治療的または予防的に有用であり、一般に非毒性の量で投与される。しかし、特定の状況では、本発明のジヒドロテトラベナジン化合物を投与する利点が、毒性作用または副作用の欠点を上回る場合があり、その場合、ある程度の毒性をもたらす量で化合物を投与することが望ましいと考えられる可能性がある。
【0062】
本出願の発明者はまた、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンは、文献から(例えば、国際公開第2015/171802号パンフレットから)予測されたであろうよりもはるかに低い用量で運動障害(例えば、多動性運動障害)の治療に効果的であり、そのような低い用量で使用することにより、テトラベナジンに関連する望ましくない副作用を回避するか最小限に抑えることができることを発見した。
【0063】
さらに具体的には、本発明者らが実施した実験は、国際公開第2015/171802号パンフレットで必要とされるバルベナジンの用量よりもはるかに低い用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン自体を投与することによって、トゥレット症候群などの運動障害を効果的に治療することができることを示している。
【0064】
別の態様では、本発明は、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0065】
医薬組成物は、例えば、0.5mg~30mg(例えば、0.5mg~20mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形であり得る。
【0066】
単位剤形は、経口投与されるもの、例えばカプセルまたは錠剤であり得る。
【0067】
本発明の特定の実施形態では、以下が提供される。
・0.5mg~30mg(例えば、0.5mg~30mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・0.5mg~25mg(例えば、0.5mg~25mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・0.5mg~20mg(例えば、0.5mg~20mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・1mg~30mg(例えば、1mg~30mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・1mg~25mg(例えば、1mg~25mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・1mg~20mg(例えば、1mg~20mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・2mg~20mg(例えば、2mg~20mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・0.5mg~10mg(例えば、0.5mg~10mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・0.5mg~7.5mg(例えば、0.5mg~7.5mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・1mg~10mg(例えば、1mg~10mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・1mg~7.5mg(例えば、1mg~7.5mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・3mg~20mg(例えば、3mg~20mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・2mg~15mg(例えば、2mg~15mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・3mg~15mg(例えば、3mg~15mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・4mg~15mg(例えば、4mg~15mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・5mg~15mg(例えば、5mg~15mg)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・約0.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・約1mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・約2mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・約3mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・約4mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・約5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・約7.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・約10mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・約12.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
・約15mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む単位剤形。
【0068】
単位剤形は経口投与されてもよく、カプセルまたは錠剤であってもよい。
【0069】
上記で定義および説明されている単位剤形は、典型的には、ハンチントン病、ヘミバリズム、老人性舞踏病、チック障害、遅発性ジスキネジア、ジストニアおよびトゥレット症候群などの多動性運動障害の治療に使用するためのものである。
【0070】
本発明はまた以下を提供する。
・運動障害(例えば、多動性運動障害)の治療方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートであって、治療が、1日当たり1mg~30mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート。
・それを必要とする対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物対象)の運動障害(例えば、多動性運動障害)の治療方法であって、この治療が、1日当たり1mg~30mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む治療方法。
・運動障害(例えば、多動性運動障害)を治療するための薬剤を製造するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの使用であって、この治療が、1日当たり1mg~30mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む使用。
・治療が、1日当たり2mg~30mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、1日当たり3mg~30mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、1日当たり2mg~20mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、1日当たり3mg~20mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、1日当たり5mg~20mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、1日当たり約7.5mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、1日当たり約10mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、1日当たり約12.5mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、1日当たり約15mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、1日当たり約20mgの量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
【0071】
いずれの場合も、指定された(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの量は、1日1回または1日数回(例えば2回)投与されてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、指定された(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの量は、1日1回投与される。
【0073】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与は、典型的には、慢性治療レジメンの一部を形成する。したがって、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは、少なくとも1週間、さらに通常は少なくとも2週間、または少なくとも1カ月、典型的には1カ月超の治療期間にわたって患者に投与され得る。患者が治療によく応答することが示された場合、治療期間は6カ月よりも長くすることができ、数年間に及んでもよい。
【0074】
慢性治療レジメンは(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの連日投与を含んでもよいか、治療レジメンは(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを投与しない日を含んでもよい。
【0075】
対象に投与される投与量は、治療期間中に変化してもよい。例えば、初回投与量は、治療に対する対象の応答に応じて増減されてもよい。例えば、対象に初回低用量を投与して、対象の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートに対する耐容性を試験し、その後、必要に応じて1日最大摂取量30mgまで投与量を増やしてもよい。あるいは、推定された所望の程度のVMAT2遮断をもたらすように、患者に投与される初回1日投与量が選択されてもよく、その後、治療期間の残りの間、比較的低用量の維持用量が投与され、治療に対する対象の応答が増加が必要であることを示す場合、場合により投与量を増加してもよい。
【0076】
したがって、本発明はまた、それを必要とする対象の運動障害を治療する方法、およびこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを提供し、
この治療は、
(a)(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの初回1日投与量を対象に投与する工程と、ここで初回1日投与量は、0.5mg~5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの量であり、
(b)治療から生じる効果および副作用について対象の臨床評価を実施する工程と、
(c)臨床評価(b)により(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの1日投与量を増加することが望ましいと確認された場合、0.5mg~5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、その(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ初回1日投与量よりも多い増加した1日投与量を投与するか、臨床評価により1日投与量を増加することが望ましくないと確認された場合、初回1日投与量を維持するか、投与量を減らすか、治療を中止する工程と、
(d)増加した1日投与量が投与された場合、増加した1日投与量による治療から生じる効果および副作用について対象の追加の臨床評価を実施する工程と、
(e)追加の臨床評価(d)により(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの1日投与量をさらに増加することが望ましいと確認された場合、0.5mg~5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ直前の1日投与量よりも多いさらに増加した1日投与量を投与するか、臨床評価により1日投与量をさらに増加することが望ましくないと確認された場合、直前の1日投与量を維持するか、直前の投与量を減らすか、治療を中止する工程と、
(f)場合により、至適1日投与量に達するまで、工程(d)および(e)を所望する回数繰り返す工程とを含む。
【0077】
前述の方法の特定の実施形態では、以下が提供される。
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの初回1日投与量が、0.5mg~3mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0078】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの初回1日投与量が、0.5mg~2mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0079】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの初回1日投与量が、0.5mg、1mg、1.5mgまたは2mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0080】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの初回1日投与量が、0.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0081】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの初回1日投与量が、1mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0082】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの初回1日投与量が、1.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0083】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの初回1日投与量が、2mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0084】
工程(c)の増加した1日投与量が、0.5mg~3mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ初回1日投与量よりも多い量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0085】
工程(c)の増加した1日投与量が、0.5mg~2mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ初回1日投与量よりも多い量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0086】
工程(c)の増加した1日投与量が、0.5mg、1mg、1.5mgまたは2mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ初回1日投与量よりも多い量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0087】
工程(c)の増加した1日投与量が、0.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ初回1日投与量よりも多い量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0088】
工程(c)の増加した1日投与量が、1mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ初回1日投与量よりも多い量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0089】
工程(c)の増加した1日投与量が、1.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ初回1日投与量よりも多い量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0090】
工程(c)の増加した1日投与量が、2mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ初回1日投与量よりも多い量である方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0091】
工程(e)のさらに増加した1日投与量が、0.5mg~3mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ直前の1日投与量よりも多い方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0092】
工程(e)のさらに増加した1日投与量が、0.5mg~2mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ直前の1日投与量よりも多い方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0093】
工程(e)のさらに増加した1日投与量が、0.5mg、1mg、1.5mgまたは2mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ直前の1日投与量よりも多い方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0094】
工程(e)のさらに増加した1日投与量が、0.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ直前の1日投与量よりも多い方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0095】
工程(e)のさらに増加した1日投与量が、1mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ直前の1日投与量よりも多い方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0096】
工程(e)のさらに増加した1日投与量が、1.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ直前の1日投与量よりも多い方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0097】
工程(e)のさらに増加した1日投与量が、2mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの増量分だけ直前の1日投与量よりも多い方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0098】
治療が、20mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0099】
治療が、17.5mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0100】
治療が、15mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0101】
治療が、12.5mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0102】
治療が、10mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0103】
治療が、9mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0104】
治療が、8mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0105】
治療が、7.5mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0106】
治療が、7mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0107】
治療が、6mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0108】
治療が、5mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0109】
治療が、4mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0110】
治療が、3mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0111】
治療が、2.5mg以下の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量である最大(例えば、至適化された)1日投与量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの投与を含む方法(またはこの方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート)。
【0112】
所望の治療効果を達成するために必要な(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの量は、治療される対象の体重に依存し得る。対象に投与される(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの量は、mg/kgの数として表すことができ、「mg」は活性化合物(すなわち、塩の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基成分)の重量を指し、「kg」は治療される対象の体重を指す。そのため、適切な投与量は、mg/kg量に治療される対象の体重を掛けることによって計算することができる。したがって、本発明はまた以下を提供する。
・運動障害の治療方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートであって、1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が1mg~30mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、1日当たり0.01mg/kg~0.5mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩を対象に投与することを含む(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート。
・それを必要とする対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物対象)の運動障害の治療方法であって、1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が1mg~30mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、この治療が、1日当たり0.01mg/kg~0.5mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む治療方法。
・運動障害を治療するための薬剤を製造するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの使用であって、1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が1mg~30mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、この治療が、0.01mg/kg~0.5mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む使用。
【0113】
さらなる実施形態では、以下が提供される。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、1日当たり0.01mg/kg~0.3mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、1日当たり0.02mg/kg~0.3mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、0.03mg/kg~0.3mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、0.04mg/kg~0.3mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、0.05mg/kg~0.3mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、1日当たり0.02mg/kg~0.2mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、0.03mg/kg~0.2mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、0.04mg/kg~0.2mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基の総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、0.05mg/kg~0.2mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、1日当たり0.02mg/kg~0.1mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、0.03mg/kg~0.1mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、0.04mg/kg~0.1mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・1日当たりの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの総投与量が0.5mg~20mg(例えば1mg~20mg)の範囲内である場合、治療が、0.05mg/kg~0.1mg/kgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・使用または方法が、有効量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含み、
(i)対象が30kg~50kgの体重を有する場合、上記有効量が、2mg~7.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンもしくはその薬学的に許容される塩の1日量であり、
(ii)対象が50kg~75kgの体重を有する場合、上記有効量が、5mg~10mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンもしくはその薬学的に許容される塩の1日量であり、
(iii)対象が75kg~95kgの体重を有する場合、上記有効量が、7.5mg~15mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンもしくはその薬学的に許容される塩の1日量であり、または
(iv)対象が95kgを超える体重を有する場合、上記有効量が、15mg~20mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基に相当する、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンもしくはその薬学的に許容される塩の1日量であり、1日当たりに投与される(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの量が15mg~20mgである、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
【0114】
本発明者らは、多動性運動障害の効果的な治療に必要な(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの血漿中濃度が、国際公開第2015/171802号パンフレットに記載されているバルベナジンの投与により達成される血漿中濃度よりもかなり低くなり得ることを見出した。
【0115】
したがって、さらなる態様では、本発明は以下を提供する。
・運動障害の治療方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートもしくはその薬学的に許容される塩、または
・それを必要とする対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物対象)の運動障害の治療方法、または
・運動障害を治療するための薬剤を製造するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの使用
治療は、3時間にわたって測定した場合、2ng/ml~15ng/mlの範囲の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基の平均血漿中Cavg濃度を達成するのに十分な量で治療有効量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む。
【0116】
一実施形態では、本発明は以下を提供する。
・運動障害の治療方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、または
・それを必要とする対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物対象)の運動障害の治療方法、または
・運動障害を治療するための薬剤を製造するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの使用
治療は、3時間にわたって測定した場合、3ng/ml~15ng/mlの範囲の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基の平均血漿中Cavg濃度を達成するのに十分な量で治療有効量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む。
【0117】
VMAT2タンパク質の完全な遮断は、パーキンソニズムなどの望ましくない副作用をもたらす可能性があるため、望ましくないと考えられる。本発明は、運動障害の効果的な治療を提供するのに十分であるが、パーキンソニズムおよび類似の副作用をもたらす程度までVMAT2タンパク質を遮断しない(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの血漿中濃度をもたらす。VMAT2の遮断レベルは、ポジトロン放出断層撮影法(PET)を用いた競合的結合試験によって決定することができる。様々な濃度で放射性リガンドと目的の化合物とを同時投与することによって、占有される結合部位の割合を決定することができる(例えば、Matthewsらによる“Positron emission tomography molecular imaging for drug development”, Br.J.Clin.Pharmacol., 73:2, 175-186を参照されたい)。したがって、本発明はまた以下を提供する。
・運動障害の治療方法に使用するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートであって、治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の最大90%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート。
・それを必要とする対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物対象)の運動障害の治療方法であって、この治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の最大90%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む治療方法。
・運動障害を治療するための薬剤を製造するための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートの使用であって、この治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の最大90%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む使用。
【0118】
さらなる実施形態では、以下が提供される。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の最大85%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の最大80%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の最大75%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の最大70%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の25%~85%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の30%~80%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の35%~75%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の35%~70%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の40%~75%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療がそれを必要とする対象に投与することを含み、方法が、対象に対してVMAT2タンパク質の45%~75%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療がそれを必要とする対象に投与することを含み、方法が、対象に対してVMAT2タンパク質の35%~80%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療がそれを必要とする対象に投与することを含み、方法が、対象に対してVMAT2タンパク質の40%~80%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の45%~80%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の50%~80%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の50%~85%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対してVMAT2タンパク質の55%~80%の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療が、対象に対して30%~70%のVMAT2タンパク質の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療がそれを必要とする対象に投与することを含み、方法が、対象に対して30%~65%のVMAT2タンパク質の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療がそれを必要とする対象に投与することを含み、方法が、対象に対して30%~60%のVMAT2タンパク質の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療がそれを必要とする対象に投与することを含み、方法が、対象に対して40%~80%のVMAT2タンパク質の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療がそれを必要とする対象に投与することを含み、方法が、対象に対して40%~75%のVMAT2タンパク質の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療がそれを必要とする対象に投与することを含み、方法が、対象に対して40%~70%のVMAT2タンパク質の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療がそれを必要とする対象に投与することを含み、方法が、対象に対して40%~65%のVMAT2タンパク質の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
・治療がそれを必要とする対象に投与することを含み、方法が、対象に対して40%~60%のVMAT2の遮断レベルを引き起こすのに十分な量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを対象に投与することを含む、本明細書に記載の使用のための(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート、方法または使用。
【0119】
本発明の前述の態様および実施形態のそれぞれでは、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは、典型的には、治療有効量のアマンタジンと組み合わせて投与されない。さらに具体的には、本発明の前述の態様および実施形態のそれぞれでは、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンまたはその薬学的に許容される塩は、典型的には、いかなる量のアマンタジンと組み合わせても投与されない。
【0120】
運動障害は、ハンチントン病、ヘミバリズム、老人性舞踏病、チック障害、遅発性ジスキネジア、ジストニア、ミオクローヌスおよびトゥレット症候群などの多動性運動障害であり得る。一実施形態では、運動障害はトゥレット症候群である。別の実施形態では、運動障害は遅発性ジスキネジアである。別の実施形態では、運動障害はハンチントン病である。
【0121】
用語「治療」は、症状または障害を治療する文脈で本明細書で使用される場合、一般に、いくつかの所望の治療効果、例えば、症状の進行の抑制が達成される治療および療法に関係し、進行速度の低下、進行速度の停止、症状の改善、治療中の症状に関連するか、それによって引き起こされる少なくとも1つの症状の軽減または緩和、および症状の治癒を含む。治療中の多動性運動障害がトゥレット症候群である場合、障害の治療はチックの発生率または重症度の低下に関係し得る。
【0122】
同位体
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは1つ以上の同位体置換を含有し得、特定の元素への言及は、その範囲内にその元素のあらゆる同位体を含む。例えば、水素への言及は、その範囲内に1H、2H(D)および3H(T)を含む。同様に、炭素および酸素への言及は、それらの範囲内にそれぞれ11C、12C、13Cおよび14C、ならびに16Oおよび18Oを含む。
【0123】
典型的には、本発明の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは、それらの天然の存在量よりも多い量の同位体(11Cまたは3Hなど)を含有しない。
【0124】
一実施形態では、重水素原子である、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナート中の総水素原子の割合は、2%未満、さらに典型的には1%未満、さらに通常は0.1%未満、好ましくは0.05%未満、最も好ましくは0.02%以下である。
【0125】
同様に、特定の官能基への言及もまた、文脈がそうでないことを示さない限り、その範囲内に同位体変化を含む。
【0126】
同位体は放射性でも非放射性でもよい。本発明の一実施形態では、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは放射性同位体を含有しない。そのような化合物は治療用途に好ましい。しかし、別の実施形態では、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは1つ以上の放射性同位体を含有してもよい。そのような放射性同位体を含有する化合物は、診断の状況に有用であり得る。
【0127】
溶媒和物
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは溶媒和物を形成し得る。
【0128】
溶媒和物の例は、本発明の化合物の固体状態構造(例えば、結晶構造)に、非毒性の薬学的に許容される溶媒(以下、溶媒和溶媒(solvating solvent)と呼ぶ)の分子を組み込むことにより形成される溶媒和物である。そのような溶媒の例には、水、アルコール(エタノール、イソプロパノールおよびブタノールなど)およびジメチルスルホキシドが挙げられる。溶媒和物は、溶媒和溶媒を含有する溶媒または溶媒の混合物を用いて本発明の化合物を再結晶化することにより調製することができる。溶媒和物が所与の場合に形成されたかどうかは、熱重量分析(TGE)、示差走査熱量測定(DSC)およびX線結晶解析などの周知の標準的な技術を用いて、化合物の結晶を分析することによって決定することができる。
【0129】
溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的溶媒和物であり得る。
【0130】
特定の溶媒和物は水和物であり、水和物の特定の例には、半水和物、一水和物および二水和物が挙げられる。
【0131】
溶媒和物ならびにそれらの製造および特性評価に使用される方法のさらに詳細な考察については、BrynらによるSolid-State Chemistry of Drugs, Second Edition, published by SSCI, Inc of West Lafayette, IN, USA, 1999, ISBN 0-967-06710-3を参照されたい。
【0132】
あるいは、本発明の(+)α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは、水和物として存在するのではなく、無水であってよい。したがって、別の実施形態では、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートは無水形態である。
【0133】
ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩の調製方法
(+)-α-ジヒドロテトラベナジン(式(I)の化合物)は、スキーム1に示す合成経路に従ってテトラベナジンから調製することができる。
【化7】
【0134】
水素化ホウ素ナトリウムを用いて、テトラベナジンのRRおよびSS異性体を含有するラセミ体テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1,a]イソキノリン-2-オン)を還元すると、4つのジヒドロテトラベナジン異性体の混合物が得られ、そのうちのα-ジヒドロテトラベナジンのラセミ混合物(RRRおよびSSS異性体)が主生成物を構成し、β-ジヒドロテトラベナジンのラセミ混合物(SRRおよびRSS異性体)が副生成物を構成する。β-ジヒドロテトラベナジンは、例えば、クロマトグラフィーまたは再結晶化による初期精製手順中に除去することができ、次いで、ラセミ体α-ジヒドロテトラベナジンを分割して(例えば、ジ-p-トルオイル-L-酒石酸もしくは(R)-(-)-カンファースルホン酸による再結晶により、またはキラルクロマトグラフィーにより)、(+)-α-ジヒドロテトラベナジン(I)((2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1,a]イソキノリン-2-オール)を得ることができる。
【0135】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンはまた、Yaoらによる“Preparation and evaluation of tetrabenazine enantiomers and all eight stereoisomers of dihydrotetrabenazine as VMAT2 inhibitors”, Eur. J. Med. Chem.,(2011), 46, pp. 1841-1848に従って調製することができる。
【0136】
次いで、(+)-α-DHTBZ遊離塩基とコハク酸とを反応させることによって、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩を調製することができる。反応は、典型的には溶媒の存在下で行われる。
【0137】
したがって、本発明のさらなる態様では、本発明の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩を調製する方法が提供され、この方法は、溶媒とともに式(I)の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基と
【化8】
コハク酸とを混合することと、塩の形成を可能にすることと、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩を単離することとを含む。
【0138】
一実施形態では、(+)-α-DHTBZコハク酸塩を調製する方法は、溶媒とともに式(II)の(+)-α-DHTBZ遊離塩基とコハク酸とを反応させて反応混合物を形成することと、次いで、少なくとも1時間、さらに典型的には少なくとも2時間、または少なくとも4時間、または少なくとも12時間、例えば少なくとも1日かけて反応混合物を撹拌することとを含む。
【0139】
溶媒は単一の溶媒であってもよく、溶媒の混合物を含んでもよい。一般に、溶媒は、少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒からなるか、それを含有し、例にはアセトンおよび酢酸エチルが挙げられる。
【0140】
一実施形態では、溶媒は、アセトン、酢酸エチルおよびそれらの混合物から選択される。
【0141】
特定の実施形態では、溶媒はアセトンである。
【0142】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩の好ましい調製方法は、(+)-α-ジヒドロテトラベナジン、コハク酸(例えば室温で)および非水性溶媒からスラリーを形成することと、コハク酸塩の形成を可能にするのに十分な時間にわたりスラリーを撹拌することとを含む。時間は典型的には、少なくとも4時間、さらに通常は少なくとも6時間、または少なくとも12時間、特に少なくとも18時間である。この方法で使用する特定の非水性溶媒はアセトンである。
【0143】
医薬製剤および治療方法
本発明の医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、鼻腔内投与、気管支内投与、眼投与、点耳投与、直腸投与、膣内投与または経皮投与に適した任意の形態であり得る。組成物が非経口投与を目的としたものである場合、それらは、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与用に、または注射、注入もしくは他の送達手段による標的器官もしくは組織への直接送達用に製剤化することができる。
【0144】
経口投与に適した医薬剤形には、錠剤、カプセル、カプレット、丸薬、トローチ剤、シロップ、溶液、スプレー、粉末、顆粒、エリキシルおよび懸濁液、舌下錠、スプレー、カシェ剤またはパッチおよびバッカルパッチが挙げられる。
【0145】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンスクシナートを含有する医薬組成物は、既知の技術に従って製剤化することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA, USAを参照されたい。
【0146】
したがって、錠剤組成物は、不活性希釈剤または担体、例えば、糖または糖アルコール、例えば;ラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトール;および/または非糖由来希釈剤、例えば、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、タルク、炭酸カルシウム、またはセルロースもしくはその誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびデンプン、例えば、コーンスターチとともに、単位用量の活性化合物を含有することができる。錠剤はまた、標準的な成分、例えば、結合剤および造粒剤、例えば、ポリビニルピロリドン、崩壊剤(例えば、膨潤性架橋ポリマー、例えば、架橋カルボキシメチルセルロース)、滑沢剤(例えば、ステアラート)、保存剤(例えば、パラベン)、酸化防止剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液)、および発泡剤、例えば、シトラート/バイカーボナート混合物を含有してもよい。そのような賦形剤は周知であり、ここで詳細に考察する必要はない。
【0147】
カプセル製剤は、硬質ゼラチン種であっても軟質ゼラチン種であってもよく、固体、半固体または液体形態の活性成分を含有することができる。ゼラチンカプセルは、動物ゼラチンまたはその合成もしくは植物由来の等価物から形成することができる。
【0148】
固体剤形(例えば、錠剤、カプセルなど)はコーティングされていてもコーティングされていなくてもよいが、典型的にはコーティング、例えば保護フィルムコーティング(例えば、ワックスまたはワニス)または放出制御コーティングを有する。コーティング(例えば、Eudragit(商標)型のポリマー)は、消化管内の所望の位置で活性成分を放出するように設計することができる。したがって、コーティングは、消化管内の特定のpH条件下で分解し、それにより胃または回腸または十二指腸内で化合物を選択的に放出するように選択することができる。
【0149】
コーティングの代わりに、またはコーティングに加えて、消化管内で酸度またはアルカリ度が変化する条件下で化合物を選択的に放出するように適合され得る放出制御剤、例えば、放出遅延剤を含む固体マトリックス中に薬物が提供されてもよい。あるいは、マトリックス材料または放出遅延コーティングは、剤形が消化管を通過するにつれて実質的に連続的に浸食される浸食性ポリマー(例えば、無水マレイン酸ポリマー)の形態をとることができる。
【0150】
局所使用のための組成物には、軟膏、クリーム、スプレー、パッチ、ゲル、液滴および挿入物(例えば、眼内挿入物)が挙げられる。そのような組成物は、既知の方法に従って製剤化することができる。
【0151】
非経口投与用の組成物は、典型的には、滅菌水溶液または油性溶液または微細懸濁液として提供されるか、注射用滅菌水を用いて即座に構成するための微粉化滅菌粉末形態で提供され得る。
【0152】
直腸投与または膣内投与用の製剤の例には、例えば、活性化合物を含有する付形成形材またはワックス材から形成され得るペッサリーおよび坐薬が挙げられる。
【0153】
吸入による投与のための組成物は、吸入可能な粉末組成物または液状もしくは粉末スプレーの形態をとってもよく、粉末吸入装置またはエアロゾル分注装置を用いた標準的な形態で投与することができる。そのような装置は周知である。吸入による投与の場合、粉末製剤は、典型的には、ラクトースなどの不活性固体粉末希釈剤とともに活性化合物を含む。
【0154】
吸入による投与のための組成物は、吸入可能な粉末組成物または液状もしくは粉末スプレーの形態をとってもよく、粉末吸入装置またはエアロゾル分注装置を用いた標準的な形態で投与することができる。そのような装置は周知である。吸入による投与の場合、粉末製剤は、典型的には、ラクトースなどの不活性固体粉末希釈剤とともに活性化合物を含む。
【0155】
本発明の特定の医薬組成物は、以下から選択される組成物である。
・舌下組成物;
・鼻腔内組成物;
・活性化合物のゼロ次放出に対応する放出動態を提供するように製剤化されたペレットまたは錠剤;
・活性化合物の最初の迅速な放出とそれに続く一定速度の放出(ゼロ次)とを提供するように製剤化されたペレットまたは錠剤;
・活性化合物の一次放出とゼロ次放出との混合を提供するように製剤化されたペレットまたは錠剤;ならびに
・活性化合物のゼロ次放出と一次放出との組合せ、および場合により、第2、第3および第4の放出順序およびそれらの組合せから選択される活性化合物の追加の放出順序を提供するように製剤化されたペレットまたは錠剤。
【0156】
上記で定義されたタイプの放出動態を提供するように製剤化されたペレットおよび錠剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(上記文献)および“Remington - The Science and Practice of Pharmacy, 21st edition, 2006, ISBN 0-7817-4673-6に記載されているような当業者に周知の方法に従って調製することができる。
【0157】
本発明の化合物は、一般に、単位剤形で提供され、したがって、典型的には、所望の程度の生物学的活性を提供するのに十分な量の化合物を含有する。そのような量は上述されている。
【0158】
上記のように、活性化合物は、それを必要とする対象(患者)(例えば、ヒトまたは動物の患者)に、所望の治療効果を達成するのに十分な量で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【
図1】コハク酸のXRPDパターンおよびコハク酸塩を生成する試みが失敗して得られた固体のXRPDパターンとともに、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩の様々なバッチのXRPDパターンを示すスタックプロットである。
【
図2】(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩の
1H NMRスペクトル(溶媒としてDMSOを使用して記録された)を示す。
【
図3】(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩のDSCサーモグラムを示す。
【
図4】(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩のTGAサーモグラムを示す。
【
図5】(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩の吸湿プロットである。
【
図6】以下の例4、試験1に記載されているように、ビヒクル(アンフェタミン誘発有りまたは無し)と、0.5、1、1.5および2mg/kgの用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンと、1mg/kgの用量のリスペリドンとを用いて、アンフェタミン誘発ラットを処置した場合のラットの平均総移動距離を示す。
【
図7】以下の例4、試験1に記載されているように、ビヒクル(アンフェタミン誘発有りまたは無し)と、0.5、1、1.5および2mg/kgの用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンと、1mg/kgの用量のリスペリドンとを用いて、アンフェタミン誘発ラットを処置した場合のラットの平均総常動行動を示す。
【
図8】以下の例4、試験2に記載されているように、ビヒクル(アンフェタミン誘発有りまたは無し)と、0.1mg/kgおよび0.25mg/kgの用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンと、1mg/kgの用量のリスペリドンとを用いて、アンフェタミン誘発ラットを処置した場合のラットの平均総移動距離を示す。
【
図9】以下の例4、試験2に記載されているように、ビヒクル(アンフェタミン誘発有りまたは無し)と、0.1mg/kgおよび0.25mg/kgの用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンと、1mg/kgの用量のリスペリドンとを用いて、アンフェタミン誘発ラットを処置した場合のラットの平均総常動行動を示す。
【
図10】以下の例4、試験3に記載されているように、ビヒクルと、2.5mg/kgまたは5mg/kgの用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンと、1mg/kgの用量のリスペリドンとを用いて、アンフェタミン誘発を実施しなかったラットを処置した場合のラットの平均総移動距離を示す。
【
図11】以下の例4、試験3に記載されているように、ビヒクルと、2.5mg/kgまたは5mg/kgの用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンと、1mg/kgの用量のリスペリドンとを用いて、アンフェタミン誘発を実施しなかったラットを処置した場合のラットの平均総常動行動を示す。
【0160】
例
以下の非限定的な例は、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの塩の合成および特性を説明するものである。
【0161】
材料および方法
X線粉末回折(XRPD)試験は、CubiX-Pro装置を使用して行った。「そのままの状態」の試料に対してXRPD分析を行った。各試料をSiゼロリターンウルトラマイクロサンプルホルダー(Si zero-return ultra-micro sample holder)に置いた。10mmの照射幅を使用して分析を行い、ハードウェア/ソフトウェア内に以下のパラメーターを設定した。
【表1】
【0162】
1H NMR試験は、Bruker 500 MHz AVANCE装置を使用して行った。内部標準として0.05%テトラメチルシラン(TMS)を用いて、試料をDMSO-d6に溶解した。55mmブロードバンド(1H-X)Z勾配プローブを使用して、500MHzで1H NMRスペクトルを記録した。スペクトルの取得には、20ppmのスペクトル幅、1.0秒の繰り返し率、および32の過渡電流を有する30度のパルスを使用した。
【0163】
Mettler DSC1装置を使用して、「そのままの状態」の試料に対して示差走査熱量測定(DSC)を行った。試料をアルミニウム鍋に秤量し、穿孔した蓋で覆い、次いでクリンプし、30~300°C、10°C/分で分析した。
【0164】
Mettler 851e TGA装置を使用して、「そのままの状態」の試料に対して熱重量分析を行った。試料をアルミナるつぼに秤量し、30~300℃、10℃/分で分析した。
【0165】
Hiden IGA Sorp吸湿分析器を使用して、吸湿分析を行った。分析は、平衡重量に達するまで、または最大4時間にわたり、相対湿度40%および25°Cで試料を最初に保持することによって行った。次いで、10%の段階で、相対湿度40~90%の等温(25°C)吸着走査(isothermal adsorption scan)に試料を供した。試料は、最大4時間にわたり各点で、漸近的重量に平衡化させた。吸着後、相対湿度85~5%(25°C)の脱離走査を10%の段階で行い、再度、最大4時間にわたり漸近的重量に平衡化させた。次いで、10%の段階で、相対湿度0~40%で吸着走査を行った。試料を60℃および相対湿度0%で2時間乾燥させ、得られた固体をXRPDによって分析した。
【0166】
塩の水溶解度は平衡法によって測定し、平衡法では、磁気撹拌棒を備えた2mlバイアルに一定量の塩を量り入れ、水を加えた。完全な溶解が観察された場合、試料を使い果たすまでさらに材料を加えた。次いで、スラリーを7日間撹拌した後、遠心濾過により固体を単離した。固体をXRPDによって分析し、濾液をHPLCによって分析して、溶液中の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン塩の量を決定した。溶解度は、既知の濃度の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン試料に対して確立された検量線に対して計算した。
【0167】
使用したHPLCシステムは以下の通りであった。
【表2】
【0168】
例1
2R,3R,11bR-ジヒドロテトラベナジンの塩形成能に関する研究
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンが様々な鉱酸および有機酸から酸付加塩を形成する能力を評価するために実験を行った。さらに具体的には、塩酸、硫酸、リン酸、L-酒石酸、クエン酸、L-リンゴ酸、アジピン酸、メタンスルホン酸、コハク酸、ベンゼンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸との(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの塩の調製を試みた。第1の実験では、(+)-α-ジヒドロテトラベナジン(32mg/ml)の酢酸エチル溶液またはアセトン溶液を調製し、1mlのアリコートに分割し、各アリコートを撹拌棒を備えた4mlガラスバイアルに導入し、J-KEM加熱ブロックを用いて溶液の温度を50°Cに維持した。次いで、ジオキサンまたは水性ジオキサンに溶解した酸(1.05モル当量)を滴下した。酸を加えた後、得られた混合物を20°C/時の冷却速度で室温まで徐々に冷却した。冷却後、溶液を一晩撹拌した。この時間の後に形成された固体を遠心濾過によって分離した。透明なままの溶液を蒸発させて残渣を得た。ほとんどの場合、残渣は油であった。XRPDを使用して、濾過または溶媒の蒸発により得られた固体の結晶性を調べた。この実験では、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの酢酸エチル溶液およびアセトン溶液の両方から結晶性塩酸塩が得られ、(+)-α-DHTBZの酢酸エチル溶液から結晶性ベンゼンスルホン酸塩が得られた。酢酸エチル溶液およびアセトン溶液の両方から非晶質リン酸塩が得られた。コハク酸含有バイアルは固体を堆積させ、これを濾過し、XRPDによって分析したところ、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンのコハク酸塩ではなくコハク酸であることが判明した。
【0169】
第2の実験では、第1の実験で得られた油および非晶質固体と0.5mlのアセトニトリルとを混合し、室温で3日間撹拌した後、固体を濾過するか、透明溶液を蒸発させて、固体または油の残渣を得た。この第2の実験で得られたあらゆる固体の結晶性をXRPDにより試験した。
【0170】
この第2の実験では、結晶性硫酸塩および部分的に結晶性のナフタレン-2-スルホン酸塩が、大部分が非晶質のリン酸塩とともに得られた。第1の実験と同様に、コハク酸含有バイアルは固体を堆積させ、これを濾過し、XRPDによって分析したところ(
図1、プロットZEN-E-6-7aを参照)、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンのコハク酸塩ではなくコハク酸(
図1、コハク酸のプロットを参照)であることが示された。
【0171】
第3の実験では、L-酒石酸、コハク酸、クエン酸、L-リンゴ酸、アジピン酸およびメタンスルホン酸を含有する第2の実験のバイアルの各々に、0.5mlの酢酸エチルを加え、得られた混合物を室温で10日間撹拌した。この期間の最後に、スラリーを濾過するかデカンティングし、透明溶液を穏やかな窒素流下で蒸発乾固させた。この実験では、結晶性の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩が得られ、これを濾過し、真空乾燥し、次いで、XRPD分析に供して、その結晶性を確認した(
図1、プロットZEN-E-6-7bを参照)。
【0172】
上記の実験は、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの酸付加塩を形成することの困難さを示している。したがって、試験した遊離塩基/酸の組合せのうち、コハク酸、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸およびナフタレン-2-スルホン酸のみが(+)-α-ジヒドロテトラベナジンと結晶塩を形成した。ただし、ナフタレン-2-スルホン酸塩は、ゴム状で、茶色であり、取り扱いがやや困難であった。リン酸との反応により固体物質が得られたが、これは非晶質であった。
【0173】
例2
(+)-α-ジヒドロテトラベナジン塩の追加の特性評価
例1に記載された試験に基づいて、追加の特性評価のために、コハク酸塩、塩酸塩、硫酸塩およびベンゼンスルホン酸塩を選択した。
【0174】
2A.塩酸塩形態A
50°Cで8mlバイアル中で(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基(30mg)をアセトン(1ml)に溶解し、水または1:7ジオキサン:水混合物中の0.5M塩酸溶液0.225ml(遊離塩基に対して1.1モル当量に相当)を撹拌しながらバイアルに滴下した。バイアルを周囲温度までゆっくりと冷却し、一晩撹拌した。次いで、得られた溶液を穏やかな窒素流下で蒸発乾固させた。アセトニトリル(0.5ml)を加え、混合物を撹拌してスラリーを形成した。3日間撹拌した後、得られた固体を遠心濾過により単離し、減圧下、周囲温度で乾燥させて(+)-α-ジヒドロテトラベナジン塩酸塩結晶形態Aを得、その結晶性をXRPD分析により確認した。
【0175】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジン塩酸塩結晶形態Aの1H NMRスペクトルは、遊離塩基の1H NMRスペクトルと一致している。塩比は0.95:1であることが確認された。結晶性HCl塩形態AをDSC分析に供したところ、245°Cおよび283°Cで吸熱を示した。TGA分析では重量損失は観察されなかった。したがって、HCl塩形態Aは良好な熱安定性を有する。
【0176】
HCl塩形態Aの平衡溶解度は、HPLCによって決定し、203mg/モルであることが確認された。
【0177】
2B.塩酸塩形態B
HCl塩形態Aを水性スラリー中で1週間撹拌したところ、異なる(XRPDによる)結晶形態(塩形態B)への変換が起こった。塩形態Bは、0.83:1の塩比を有することが確認された。DSC分析では、96°C、114°Cおよび246°Cでの吸熱と、165°Cでの単一発熱とが示された。TGA分析では、1.2%の重量損失が示された。データは、塩形態Bが水和物であることを示した。この塩形態は、その望ましくない熱的挙動のため、それ以上特性評価しなかった。
【0178】
2C.硫酸塩
酢酸エチル(10ml)に(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基(300mg)を50°Cで溶解し、3:1ジオキサン:水中の0.50M硫酸溶液2.190ml(1.1モル当量に相当)を撹拌しながら遊離塩基の溶液に滴下した。次いで、溶液を室温までゆっくりと(1時間当たり20℃の速度で)冷却し、一晩撹拌した。次いで、透明溶液を穏やかな窒素流下で蒸発乾固させた。アセトニトリル(5ml)を残渣に加え、得られたスラリーを3日間撹拌した。次いで、遠心濾過により固体を単離し、減圧下、周囲温度で乾燥させて結晶性固体として硫酸塩を得、その結晶性をXRPDにより確認した。
【0179】
硫酸塩のDSC分析では、209℃および279℃での吸熱と、223℃での単一発熱とが示された。TGA分析では、3.7%の重量損失が示された。
【0180】
硫酸塩の塩比は、バッチごとに異なることが確認された。あるバッチでは0.67:1の塩比が得られたが、別のバッチでは塩は0.27:1の塩比しか有しなかった。塩比の変動のため、硫酸塩はそれ以上特性評価しなかった。
【0181】
2D.ベンゼンスルホン酸塩
アセトン(10ml)に(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基(300mg)を50°Cで溶解し、ジオキサン中の0.50Mベンゼンスルホン酸溶液2.10ml(1.1モル当量に相当)を撹拌しながら遊離塩基の溶液に滴下した。次いで、溶液を室温までゆっくりと(1時間当たり20℃の速度で)冷却し、一晩撹拌した。次いで、得られた固体を遠心濾過により単離し、減圧下、周囲温度で乾燥させて、結晶性固体としてベンゼンスルホン酸塩を得、その結晶性をXRPDにより確認した。
【0182】
NMRにより塩比を分析し、1H NMRスペクトルが1.1:1であることが確認された。DSC分析では、249℃で単一吸熱が示された。TGA分析では重量損失は観察されなかった。重量吸湿試験では、塩はわずかに吸湿性であることが観察され、0.2重量%の吸湿が相対湿度60%で観察され、1.7重量%の吸湿が相対湿度90%で観察された。
【0183】
ベンゼンスルホン酸塩は、水、エタノールおよび酢酸エチルのスラリー中で一週間撹拌した後も変化しなかった(XRPD分析による)。
【0184】
ベンゼンスルホン酸塩の平衡溶解度は、HPLC試験により2.20mg/mlであることが確認された。
【0185】
2E.(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩の調製
(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基(313mg)およびコハク酸(116mg、1.0モル当量)を固体状態で、磁気撹拌棒を備えた20mLバイアルに導入した。アセトン(1.0ml)を加え、得られたスラリーを室温で4日間撹拌した後、濾過して(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩を得た。
【0186】
X線粉末回折(XRPD)、1H NMR、示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)によって、コハク酸塩を特性評価した。
【0187】
塩のXRPDパターンを
図1に示す(プロットSUN-A-J-163(2)を参照)。XRPDパターンは、塩が結晶性であることを示している。
【0188】
塩の
1H NMRスペクトル(溶媒としてDMSOを使用して記録された)を
図2に示す。
1H NMRスペクトルにより、塩比が1.0:1であることが確認される。すなわち、塩は、コハク酸の各モルに対して1モルの遊離塩基を含有する。
【0189】
塩のDSCサーモグラムを
図3に示す。サーモグラムは、150℃、202℃および264℃での吸熱を示している。
【0190】
塩のTGAサーモグラムを
図4に示す。150°C未満では重量損失は観察されなかった。
【0191】
吸湿分析を行ったところ、塩はわずかに吸湿性であることが確認された。吸湿プロットを
図5に示す。相対湿度60%で0.6重量%の吸湿が観察され、相対湿度90%で1.3重量%の吸湿が観察された。吸湿試験の完了後、塩を60℃、相対湿度0%で乾燥させ、XRPDパターンを再度取得した(
図1、SUN-A-J-163(2)を参照)。元のXRPDパターンからの変化は観察されなかった。
【0192】
上記の分析データは、コハク酸塩が無水物であることと一致している。
【0193】
また、遊離塩基の酢酸エチル溶液を、50°Cの4:1ジオキサン:水中で0.55モル当量のコハク酸と混合し、混合物を20°C/時間の速度で室温まで冷却し、次いで一晩撹拌することにより、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンのヘミコハク酸塩を形成する試みを行った。得られた溶液を蒸発させて油を形成した。次いで、酢酸エチルを油に加え、混合物を室温で4日間撹拌した。得られたスラリーを遠心濾過により濾過し、単離された固体を室温で一晩減圧乾燥した。乾燥させた固体を
1H NMRおよびXRPDにより分析し、ヘミ塩(hemi-salt)ではなく単塩であると特定した。XRPDパターンを
図1に示す(プロットLYO-F-4(3)を参照)。
【0194】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジン塩の形成-結論
上記の実験は、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの塩の調製が簡単でないことを示している。実際、他の薬理学的に活性な化合物と安定な酸付加塩を形成することが知られている多くの酸は、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンと結晶塩を形成することができないか、困難を伴って形成するにとどまる。
【0195】
調製されたこれらの結晶塩のうち、最も水溶性の塩は、350mg/mlを超える水への溶解度(HPLCにより測定)を有するコハク酸塩であった。また、コハク酸塩は良好な熱安定性を有し、多形性の証拠は確認されなかった。コハク酸塩は単塩であった(すなわち、遊離塩基:酸の比が1:1である)。0.55モル当量の酸を用いてヘミ塩を作る試みは失敗し、単塩の形成をもたらした。
【0196】
塩酸塩も良好な水溶解度(203mg/ml)を有したが、望ましくない多形性を示し、安定の高い「A」結晶形態は、水性スラリー中に放置されると、熱的に安定性の低い「B」結晶形態に転換する。
【0197】
硫酸塩は、塩比の変動を受け、行われた試験のいずれにおいても、得られた1:1塩またはヘミ塩のいずれかに特徴的な塩比ではなかった。
【0198】
最後に、ベンゼンスルホン酸塩は良好な熱安定性を示し、明らかな多形性を示さないが、望ましくない低溶解度(遊離塩基の0.127mg/mlと比較して2.20mg/ml)を有した。
【0199】
したがって、安定性および溶解度の両方の観点から、最も有望な塩はコハク酸塩であった。この塩は、遊離塩基および酸のスラリーをアセトン中で長期間撹拌するだけで、良好な収率で形成することができた。
【0200】
生物学的特性
以下の例3、4および5には、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンおよび(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩の生物学的特性が記載されている。
【0201】
例3
5例のヒトボランティアに、ある量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンを経口投与した。4例のボランティアに対しては、薬物投与の30、60、120および180分後に血液試料を採取した。5例目のボランティアからは血液試料は採取しなかった。薬物投与60分後にPETスキャンを開始し、薬物投与120分後に停止した。
【0202】
7.5mg、15mgおよび22.5mgの投与量で実験を実施した。
【0203】
結果
表1は、7.5mg、15mgおよび22.5mgの投与から0.5、1、1.5、2および3時間後の4例のヒト対象の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンのナノグラム/ml単位の血漿中濃度を示している。表2は、5例の対象全例に7.5mg、15mgおよび22.5mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンを投与した後のVMAT2遮断(%)を示している。
【表3】
【表4】
【0204】
低体重の対象では所与の用量で高い(+)-α-ジヒドロテトラベナジン血漿中濃度が観察されたが、体重の重い個体であっても7.5mgという低用量で少なくとも50%のVMAT2遮断(%)が観察され、体重の軽い個体では顕著に高いVMAT2結合(%)が観察されたことが分かる。また、PETスキャンの期間中、15ng/ml未満の平均血漿中濃度によって、少なくとも50%のVMAT2結合(%)が生じることが観察された。
【0205】
データは、15ng/ml未満の血漿中濃度をもたらす非常に低用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンが、なお高レベルのVMAT2遮断をもたらすことができることを示している。
【0206】
例4-アンフェタミン誘発過運動に対するジヒドロテトラベナジンおよびリスペリドンの効果の比較
トゥレット症候群のドーパミン作動性モデルでは、アンフェタミンなどのドーパミン作動薬の全身投与または局所投与が使用される。アンフェタミンを注射すると、試験動物は常動行動を発現する。特に、トゥレット症候群の野生型マウスおよびラットに関与するドーパミン作動系の関与は、アンフェタミンにより刺激することができ、その結果生じる多動および常同症は、リスペリドンおよびハロペリドールなどのドーパミン拮抗薬を用いて回復させることができる(Tourette’s syndrome - Animal Models for Screening, Charles River Discovery Research Services, Finland)。
【0207】
アンフェタミンは、ラットおよび他の種に対して、脳内ドーパミンの細胞外濃度の上昇と、それに付随する行動発現とを引き起こした。比較的低用量(1.2ng/kg i.p.)では、アンフェタミンは自発運動行動を増加させ、運動を停止させ、高度に反復性の急速な頭部運動を伴う静止姿勢に移行させる。刺激のこの後者の非自発運動段階は、集中型常同症(focused stereotypy)と呼ばれる。常同症は1時間以上続くことがあり、通常はこれに運動刺激期間が続く(Schiorring 1971)。
【0208】
ドーパミン作動薬(アンフェタミンなど)の投与は、行動常同症(behavioural stereotypies)、および感覚運動ゲーティングの混乱を誘発することが知られている。また、ドーパミン作動性モデル、コリン作動性(TAN)モデルおよびHDCモデル(ストレスおよび/またはアンフェタミン注射後)では、常動行動の増加が示されることが知られている(Yaolら、2016)。
【0209】
アンフェタミン誘発常動行動は、運動障害の症状である遅発性ジスキネジアのモデルとしても評価されている(Rubovitisら、(1972)を参照されたい)。
【0210】
非定型抗精神病薬リスペリドンは、トゥレット症候群の治療に一般的に使用され、チック抑制にはおそらく最も優れた非定型抗精神病薬であり、ハロペリドールおよびフルフェナジンよりも運動性副作用のリスクが低い可能性があると説明されている(J.D.Walkup, A Guide to Tourette Syndrome Medications, Publ.2008, The National Tourette Syndrome Association, Inc.)。
【0211】
上記の理由により、自発運動試験がトゥレット症候群および他の運動障害の有用なモデルであることに基づいて、3件の試験を実施して、ラットのアンフェタミン誘発過運動および非アンフェタミン誘発過運動に対するジヒドロテトラベナジンおよびリスペリドンの効果を比較した。
【0212】
材料および方法
装置
オープンフィールドアリーナ、Med Associates Inc.
プラスチック注射器1ml、Terumo 参照番号:SS-01T1
動物用経口ゾンデ15G、Instech Solomon、カタログ番号:72-4446
Sartorius Mechatronics Scale A22101、Sartorius Weighting Technology, Germany
注射針27G Terumo Myjector、0.5ml、参照番号:8300010463
プラスチック注射器3ml、Soft-Ject、参照番号:8300005761
BD Microtainer K2EDTAチューブ 参照番号:365975
Matrix 0.75ml、Alphanum Tube、Thermo Scientific、参照番号:4274
マイクロプレート装置、ユニプレート24ウェル、10ml、参照番号:734-1217
Thermo Electron Corp.Heraeus Fresco 17、冷蔵遠心分離機
【0213】
試験動物
動物実験はいずれも、米国国立衛生研究所(NIH)の実験動物の管理および使用に関するガイドラインに従って実施され、フィンランドの国立動物実験委員会(National Animal Experiment Board)によって承認された。実験には、体重範囲200~250g(到着時165~200g)の雄のCD(Charles River Laboratories, Germany)を使用した。動物は、光制御環境(午前7時から午後8時まで点灯)下で標準温度(22±1°C)で収容し、食物および水を自由に摂取させた。
【0214】
方法
オープンフィールドアリーナでラットの自発運動を試験した。オープンフィールド試験は、ラットの光サイクル中に、試験チャンバーに均一に分散させた通常の照明下で実施した。活動モニター(Med. Associates Inc.)によってラットの経路を記録した。
【0215】
LMA試験の前に、ビヒクル、ビヒクル-アンフェタミン、(+)-α-DHTBZまたはリスペリドンの投与を行った。ラットをアリーナの中央に置き、経路を60分間記録した。
【0216】
エンドポイント、血液試料および組織処理
試験終了後10分以内に、CO2の過量投与により動物を安楽死させた。心臓穿刺により、ビヒクルラットを除く各群のすべての化合物処置ラットから最終血液試料を採取した。18Gの注射針に取り付けられた注射器を用いて0.5mlの血液を採取し、予冷したK2-EDTAマイクロチューブに移した。EDTAマイクロチューブを数回反転させて、EDTAと血液とを混合した。次いで、チューブを直ちに湿った氷の上に置き、採取の10~15分以内に遠心分離し(Heraeus Fresco 17)(9.6x1000G/10x1000RPM、+4°C、2分間)、試料マップに従って、ドライアイス上の96チューブプレート(Matrix Technologies ScreenMates 0.75ml Alphanumeric Round-Bottom Storageチューブ、PP)に200μlの血漿を収集した。
【0217】
採血後、頭蓋底で頚部を外した。脳を採取し、秤量した。脳の重量を記録し、24ウェルプレート上のドライアイス上で脳を凍結した。
【0218】
血漿および脳の試料は、分析のために送られるか破棄されるまで、-80℃で保存した。
【0219】
試験1
0.5mg/kg~2mg/kgの用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン、ならびに1mg/kgの用量のリスペリドンを投与した後のラットの常動行動および移動距離に対する効果を試験した。
【0220】
動物を以下のように割り付けた。
・第1群:ビヒクル(t=0分)およびビヒクル(t=30分)を用いて処置したラット10匹
・第2群:ビヒクル(t=0分)およびアンフェタミン(t=30分)を用いて処置したラット10匹
・第3群:(+)-α-DHTBZ 0.5mg/kg(t=0分)およびアンフェタミン(t=30分)を用いて処置したラット10匹
・第4群:(+)-α-DHTBZ 1mg/kg(t=0分)およびアンフェタミン(t=30分)を用いて処置したラット10匹
・第5群:(+)-α-DHTBZ 1.5mg/kg(t=0分)およびアンフェタミン(t=30分)を用いて処置したラット10匹
・第6群:(+)-α-DHTBZ 2mg/kg(t=0分)およびアンフェタミン(t=30分)を用いて処置したラット10匹
・第7群:リスペリドン1mg/kg(t=0分)およびアンフェタミン(t=30分)を用いて処置したラット10匹
【0221】
結果
1.移動距離
ビヒクル、(+)-α-DHTBZ 0.5mg/kg、(+)-α-DHTBZ 1mg/kg、(+)-α-DHTBZ 1.5mg/kg、(+)-α-DHTBZ 2mg/kgまたはリスペリドン1mg/kgのいずれかを投与したラットを、最初に30分間LMA試験に供し、次いでビヒクルまたはアンフェタミン誘発後に60分間LMA試験に供した。結果として生じる自発運動を、3分間の瓶で、試験期間中の合計として評価した。試験時間にわたる正規化された総移動距離を
図1に示す。
【0222】
ビヒクル-ビヒクル群と比較して、ビヒクル-アンフェタミンは有意に異なっていた。ビヒクル-アンフェタミン群と比較して、ビヒクル-ビヒクル、(+)-α-DHTBZ 0.5mg/kg、(+)-α-DHTBZ 1mg/kg、(+)-α-DHTBZ 1.5mg/kg、(+)-α-DHTBZ 2mg/kgおよびリスペリドン1mg/kgは有意に異なっていた。
【0223】
2.常動行動
ビヒクル、(+)-α-DHTBZ 0.5mg/kg、(+)-α-DHTBZ 1mg/kg、(+)-α-DHTBZ 1.5mg/kg、(+)-α-DHTBZ 2mg/kgまたはリスペリドン1mg/kgのいずれかを投与したラットを、最初に30分間LMA試験に供し、次いでビヒクルまたはアンフェタミン誘発後に60分間LMA試験に供した。結果として生じる常同活動を、3分間の瓶で、試験期間中の合計として評価した。試験時間にわたる正規化された総常動行動を
図2に示す。
【0224】
ビヒクル-ビヒクル群と比較して、ビヒクル-アンフェタミン、(+)-α-DHTBZ 0.5mg/kgおよび(+)-α-DHTBZ 1.5mg/kgは有意に異なっていた。ビヒクル-アンフェタミン群と比較して、ビヒクル-ビヒクル、(+)-α-DHTBZ 0.5mg/kg、(+)-α-DHTBZ 1mg/kg、(+)-α-DHTBZ 1.5mg/kg、(+)-α-DHTBZ 2mg/kgおよびリスペリドン1mg/kgは有意に異なっていた。
【0225】
結論
この試験では、雄のCDラットのアンフェタミン誘発自発運動に対する0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kgおよび2mg/kgの用量の(+)‐α‐DHTBZならびに1mg/kgの用量のリスペリドンの効果を評価した。
【0226】
(+)‐α‐DHTBZの全試験用量およびリスペリドン1mg/kgでは、ビヒクル-アンフェタミン群と比較して自発運動が低下した。(+)‐α‐DHTBZの全試験用量およびリスペリドン1mg/kgでは、ビヒクル-アンフェタミン群と比較して常動行動が減少した。測定された両パラメーターは、(+)-α-DHTBZがリスペリドンと同等の鎮静効果を有することを示唆している。
【0227】
試験2
0.1mg/kg~0.25mg/kgの用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン、ならびに1mg/kgの用量のリスペリドンを投与した後のラットの常動行動および移動距離に対する効果を試験した。
【0228】
動物を以下のように割り付けた。
・第1群:ビヒクル(t=0分)およびビヒクル(t=30分)を用いて処置したラット10匹
・第2群:ビヒクル(t=0分)およびアンフェタミン(t=30分)を用いて処置したラット10匹
・第3群:(+)-α-DHTBZ 0.1mg/kg(t=0分)およびアンフェタミン(t=30分)を用いて処置したラット10匹
・第4群:(+)-α-DHTBZ 0.25mg/kg(t=0分)およびアンフェタミン(t=30分)を用いて処置したラット10匹
・第5群:リスペリドン1mg/kg(t=0分)およびアンフェタミン(t=30分)を用いて処置したラット10匹
【0229】
結果
1 移動距離
ビヒクル、(+)-α-DHTBZ 0.1mg/kg、(+)-α-DHTBZ 0.25mg/kgまたはリスペリドン1mg/kgのいずれかを投与したラットを、最初に30分間LMA試験に供し、次いでビヒクルまたはアンフェタミン誘発後に60分間LMA試験に供した。結果として生じる自発運動を、3分間の瓶で、試験期間中の合計として評価した。試験時間にわたる正規化された総移動距離を
図3に示す。
【0230】
ビヒクル-アンフェタミン群と比較して、ビヒクル-ビヒクル、(+)-α-DHTBZ 0.25mg/kgおよびリスペリドン1mg/kgは有意に異なっていた。
【0231】
2 常動行動
ビヒクル、(+)-α-DHTBZ 0.1mg/kg、(+)-α-DHTBZ 0.25mg/kgまたはリスペリドン1mg/kgのいずれかを投与したラットを、最初に30分間LMA試験に供し、次いでビヒクルまたはアンフェタミン誘発後に60分間LMA試験に供した。結果として生じる常同活動を、3分間の瓶で、試験期間中の合計として評価した。試験時間にわたる正規化された総常動行動を
図4に示す。
【0232】
ビヒクル-アンフェタミン群と比較して、ビヒクル-ビヒクル、(+)-α-DHTBZ 0.1mg/kg、(+)-α-DHTBZ 0.25mg/kgおよびリスペリドン1mg/kgは有意に異なっていた。
【0233】
結論
この試験では、雄のCDラットのアンフェタミン誘発自発運動に対する0.1mg/kgおよび0.25mg/kgの用量の(+)‐α‐DHTBZならびに1mg/kgの用量のリスペリドンの効果を評価した。
【0234】
(+)‐α‐DHTBZ 0.25mg/kgおよびリスペリドン1mg/kgでは、ビヒクル-アンフェタミン群と比較して自発運動が低下した。(+)‐α‐DHTBZの両試験用量およびリスペリドン1mg/kgでは、ビヒクル-アンフェタミン群と比較して常動行動が減少した。
【0235】
試験3
非アンフェタミン誘発ラットに対する(+)-α-ジヒドロテトラベナジンおよびリスペリドンの効果を試験した。動物を以下のように割り付けた。
・第1群:ビヒクルを用いて処置したラット10匹
・第2群:(+)-α-DHTBZ 2.5mg/kgを用いて処置したラット10匹
・第3群:(+)-α-DHTBZ 5mg/kgを用いて処置したラット10匹
・第4群:リスペリドン1mg/kgを用いて処置したラット10匹
【0236】
結果
非誘発ラットでは、ビヒクルを用いて処置したラットの総運動および常動行動は、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンとほぼ同じであった。しかし、リスペリドンを用いて処置したラットでは、総運動が減少し、総常動行動が減少した。
【0237】
注釈
例4の試験1および2は、アンフェタミン誘発ラットの運動の減少に対する0.1mg/kgという低用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの効果を示している。したがって、そのような低用量レジメンが、ヒトの多動性運動障害の治療にも有用であり得ることが予測される。
【0238】
例4の試験3は、低用量の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの投与後、運動障害に見られる種類の異常な運動がこの薬物によって軽減または抑制されるが、正常な運動はそうではないことを示唆している。これは、運動障害によく使用される治療法であり、その投与によって正常な運動および異常な運動の両方の程度を低減させる可能性があるリスペリドンとは対照的である。
【0239】
例5
この試験の目的は、3匹の雄の非ナイーブビーグル犬(HsdRcc:DOBE系統)に対して1.50mg/kgの用量レベルで(+)‐α‐ジヒドロテトラベナジンおよびそのコハク酸塩を経口投与した後の(+)‐α‐ジヒドロテトラベナジンの薬物動態学的パラメーターを決定するために、血漿試料を提供することであった。
【0240】
各イヌの体重は約9.0~12.0kgであり、投与1日目では約16~18カ月齢であった。消すことのできない刺青の番号によって、各イヌを一意に識別した。
【0241】
このイヌがこの前に使用されたのは、この試験の投与の約1~6カ月前であった。Envigo UK Limited, Hillcrest Research Station, Belton, Loughboroughで、従来の集学的生物医学研究のために、イヌを特定の目的で交配し、社会化し、ワクチン接種した。
【0242】
各投与セッションの開始前に、試験への適合性について、適格な獣医外科医が各イヌを検査した。各動物の健康状態および体重記録のコピーを試験ファイルに保存した。投与5日前にイヌを試験に割り付け、試験ユニットで順応させた。
【0243】
順応期間および試験期間中、目的に合わせて設計され、木材の削り屑によって裏打ちされた滑らかなコンクリート床を有する、亜鉛メッキ鋼から構築された畜舎に、2匹ずつイヌを収容した(試験ファイルに保存されている分析証明書)。畜舎領域を14~26°Cの目標温度範囲に維持し、蛍光灯に12時間(8:00~20:00)曝露した後、1日当たり12時間暗所とした。
【0244】
順応と実験期間とを通して、環境読み取り値(温湿度)を毎日記録した。
【0245】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩の投与
投与の前日に、93.7mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩(68.9mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基当量)を正確に秤量し、好適なサイズの容器に入れた。投与の朝、91.87mLのメチルセルロース溶液(0.5%aq.w/v)を(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩に加え、次いで周囲温度で約5分間超音波処理した後、室温で約15分間撹拌した。最終用量では、0.75mg/mLのジヒドロテトラベナジン遊離塩基当量の目標濃度で(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩を含有する透明溶液が得られた。
【0246】
強制胃内投与により2.00mL/kgの用量を経口投与し、1.50mg/kgの目標用量レベルが得られた。投与後、10mLの水道水を胃管に流し、用量全体が確実に投与されるようにした。
【0247】
被検物質の1つをそれぞれ4回を超えて投与した後、頸静脈から連続全血試料(約1.3mL)を採取し、投与前、ならびに投与の0.25、0.50、1、2、3、4、6、12および24時間後にK2 EDTA処理済みチューブに入れた。
【0248】
血液試料を直ちに冷却ブロック上に置いた後、3,000×g、10分、4°Cで15分以内に遠心分離し、得られた血漿を抜き取った。
【0249】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの投与
投与の前日、72.9mgの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンを正確に秤量し、好適なサイズの容器に入れた。投与の朝、97.23mLのメチルセルロース溶液(0.5%aq.w/v)を被検物質に加え、次いで周囲温度で約5分間超音波処理した後、室温で約10分間撹拌した。最終用量では、0.75mg/mLの目標濃度で(+)-α-ジヒドロテトラベナジンを含有する非常に微細な均質懸濁液が得られ、これは、投与期間を通して絶えず撹拌された。
【0250】
強制胃内投与により2.00mL/kgの用量を経口投与し、1.50mg/kgの目標用量レベルが得られた。投与後、10mLの水道水を胃管に流し、用量全体が確実に投与されるようにした。
【0251】
被検物質の1つをそれぞれ4回を超えて投与した後、頸静脈から連続全血試料(約1.3mL)を採取し、投与前、ならびに投与の0.25、0.50、1、2、3、4、6、12および24時間後にK2 EDTA処理済みチューブに入れた。
【0252】
血液試料を直ちに冷却ブロック上に置いた後、3,000×g、10分、4°Cで15分以内に遠心分離し、得られた血漿を抜き取った。
【0253】
結果
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの血漿中濃度を以下の表3および表4に示す。
【0254】
表3は、1.50mg/kg(ジヒドロテトラベナジン遊離塩基当量)の用量レベルで(+)α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩を経口投与した後の雄のビーグル犬の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの血漿中濃度を示している。
【表5】
【0255】
表4は、1.50mg/kgの用量レベルで(+)-α-ジヒドロテトラベナジンを経口投与した後の雄のビーグル犬の(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの血漿中濃度を示している。
【表6】
【0256】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩の投与後、64.33ng/mLの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンの平均Cmax血漿中濃度が投与の平均0.33時間後に観察され、対応する曝露は71.8782ng.h.mLであった。
【0257】
(+)-α-ジヒドロテトラベナジンは(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩と同等の結果をもたらし、58.7ng/mLの(+)-α-ジヒドロテトラベナジンCmaxが投与の0.25時間後に観察され、平均曝露は64.26ng.h.mLであった。
【0258】
注釈
これらの試験は、(+)-α-ジヒドロテトラベナジンコハク酸塩がin vivoで(+)-α-ジヒドロテトラベナジンに変換され得、(+)-α-ジヒドロテトラベナジン遊離塩基を投与した場合に得られるものと同等の(+)-α-ジヒドロテトラベナジン血漿中濃度をもたらすことを示す。
【0259】
均等物
本発明の基礎にある原理から逸脱することなく、上記の本発明の特定の実施形態に対して、多くの修正および変更を加えることができることが容易に分かるであろう。このような修正および変更はいずれも本出願に包含されるものとする。