(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】化合物、合成中間体、使用、医薬組成物及び神経調節治療方法
(51)【国際特許分類】
C07K 5/113 20060101AFI20230309BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20230309BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20230309BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20230309BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230309BHJP
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A61P 3/06 20060101ALI20230309BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230309BHJP
A61P 3/14 20060101ALI20230309BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20230309BHJP
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A61P 29/00 20060101ALI20230309BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20230309BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230309BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20230309BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230309BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230309BHJP
G01N 33/566 20060101ALI20230309BHJP
C07K 5/093 20060101ALN20230309BHJP
C07K 5/103 20060101ALN20230309BHJP
C07K 5/12 20060101ALN20230309BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20230309BHJP
C07K 7/64 20060101ALN20230309BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230309BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20230309BHJP
【FI】
C07K5/113 ZNA
A61K38/06
A61K38/07
A61K38/12
A61K47/60
A61P1/14
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P3/14
A61P5/14
A61P9/12
A61P15/00
A61P19/08
A61P19/10
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/06
A61P25/08
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/28
A61P29/00
A61P29/02
A61P35/00
A61P37/00
C12Q1/02
G01N33/53 D
G01N33/566
C07K5/093
C07K5/103
C07K5/12
C07K7/06
C07K7/64
C07K14/705
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2019564034
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(86)【国際出願番号】 BR2018050156
(87)【国際公開番号】W WO2018209415
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】BR102017010169-0
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(31)【優先権主張番号】PCT/BR2017/050314
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】519406500
【氏名又は名称】レマー コンサルトレス アッセスソリア エムプレサリアル リミターダ
(73)【特許権者】
【識別番号】519406511
【氏名又は名称】プロテイマックス バイオテクノロジア リミターダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レメール、リカルド アマラル
(72)【発明者】
【氏名】ヘイマン、アンドレア ステルマン
【審査官】中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-518983(JP,A)
【文献】特表2011-504167(JP,A)
【文献】特表2010-507069(JP,A)
【文献】Further Characterization of Hemopressin Peptide Fragments in the Opioid and Cannabinoid Systems,ANESTHESIA AND ANALGESIA,2015年,Volume 121, Number 6,pp. 1488-1494
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00- 19/00
A61P 3/06
A61P 1/14
A61P 37/00
A61P 3/14
A61P 5/14
A61P 15/00
A61P 3/04
A61P 3/10
A61P 29/00
A61P 19/08
A61P 19/10
A61P 35/00
A61P 29/02
A61P 25/06
A61P 25/04
A61P 25/08
A61P 25/18
A61P 25/28
A61P 25/22
A61P 25/16
A61P 25/00
A61P 3/00
A61K 38/06
A61K 38/07
A61K 38/12
A61K 47/60
A61P 9/12
G01N 33/53
G01N 33/566
C12Q 1/02
C12N 5/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容されるビヒクルと;
有効成分として、
次式で表されるNFKF;又は
【化1】
次式で表されるNFKL;
【化2】
から選択される化合物
、その塩、或いはそれらの組合せとを含む、
哺乳動物の代謝機能を調節するための医薬組成物。
【請求項2】
薬学的に許容されるビヒクルと;
有効成分として、
次式で表されるNFKF;又は
【化3】
次式で表されるNFKL;
【化4】
から選択される化合物
、その塩、或いはそれらの組合せとを含む、
哺乳動物の痙攣の治癒的又は予防的治療用医薬組成物。
【請求項3】
薬学的に許容されるビヒクルと;
有効成分として、
次式で表されるNFKF;又は
【化5】
次式で表されるNFKL;
【化6】
から選択される化合物
、その塩、或いはそれらの組合せとを含む、
哺乳動物の治癒的
又は予防的神経調節のための治療用医薬組成物。
【請求項4】
経口液剤、シロップ剤、錠剤、又はカプセル剤の形態である、請求項
1~
3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
薬学的に許容されるビヒクルと;有効成分として、NFKF
又はNFKL
から選択される化合物、その塩、
或いはそれらの組み合わ
せとを含む医薬組成物であって、神経調節、神経保護及び/又は片頭痛、疼痛、神経障害性疼痛、けいれん、又は多発性硬化症の治癒的又は予防的治療のための、経口液剤、シロップ剤、錠剤、又はカプセル剤の形態にある、上記医薬組成物。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか一項に記載の医薬組成物の調製のため
の、NFKF
又はNFKL
から選択される化合物、その塩、或いはそれらの組合せの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学、医学、化学及びバイオテクノロジーの分野に属する。より具体的には、本発明は、診断及び/又は治療向けのリガンドを調製するための化合物及びその使用、医薬向けの化合物の調製における合成中間体、医薬品を調製するための化合物の使用、前記化合物を含有する医薬組成物ならびに治療方法を記載する。本発明の化合物はペプチド性であり、より密接に関連するペプチド性化合物と比較して、驚くべき安定性及び取り扱いの容易さを示した。本発明の医薬組成物は、前記ペプチド性化合物を含み、経口投与した場合でさえ驚くべき治療結果を示した。いくつかの実施形態では、本発明の組成物の投与が、ヘモプレシン(hemopressin)及びカンナビジオールの効果と比較して優れた治療結果をもたらした。いくつかの実施形態では、本発明の組成物の経口投与が、発作の治癒的又は予防的治療、疼痛閾値の調節、及び重要な神経保護において重要な驚くべき結果をもたらし、多発性硬化症の臨床症状を実質的に軽減した。
【背景技術】
【0002】
本発明のペプチド性化合物は、極端な温度で驚くほど安定であり、原線維形成の問題を引き起こさず、診断用のリガンド及び医薬組成物を含む医薬向けの製品の調製における取り扱いを容易にする。
【0003】
本発明に最も近いペプチド性化合物は、ヘモプレシン及び生物活性を有するそのより大きなサイズの変異体である。しかしながら、ヘモプレシンは不安定性及び原線維を形成する傾向などの技術的困難を呈し、医薬製剤への使用が制限される(Bomar MG及びGalande AK、Modulation of the cannabinoid receptors by hemopressin peptides.520~524)。これらの制限により、ヘモプレシンに対する最初の熱意が低下した:凝集/原線維形成の自然な傾向により、合成、医薬製剤及び治療用途の両方で可能な濃度の範囲が実質的に制限される。同じ文献(Bomar及びGalande)は、アルツハイマー病、パーキンソン病及びII型糖尿病に関連するアミロイドペプチド性原線維と同様に、ヘモプレシンの自己組織化が生理学的に関連し、潜在的に病原性又は神経毒性である可能性があると推測するに至っている。
【0004】
本発明の結果は、最も近い背景技術に鑑みて驚くべきものであり、本発明者らは、本発明のペプチド性化合物がヘモプレシンよりも安定で、容易に操作可能であるといういかなる報告も示唆も文献の中に認識しておらず、よって、これに関して、予想外の改善及び予想外の大きさである。
【0005】
CB1及びCB2受容体ならびにその内因性リガンドを含むカンナビノイド系は、中でも、食物摂取、エネルギー及び/又は脂質代謝の制御を含む種々の代謝機能、腸の運動性の調節、免疫系、カルシウムサイクルのバランスに作用する。カンナビノイド受容体は、皮質、海馬、扁桃体、下垂体及び視床下部を含む脳で広く発現される。CB受容体、特にCB1は、甲状腺、副腎、生殖器官、脂肪組織、肝臓、筋肉及び消化管を含む多数の末梢器官及び組織で既に同定されている。
【0006】
Bomar及びGalandeの論文はまた、RVD-Hp、VD-HpなどのヘモプレシンのN伸長バージョンがCB1受容体に対するアゴニスト効果を示し、したがって、2個又は3個のアミノ酸のみの違いが、ペプチドがアンタゴニスト効果を示すかアゴニスト効果を示すかに干渉して、CB1に対する反対の効果をもたらすと思われることを示している。さらに、様々な既知のペプチドのシグナル伝達経路が、Gタンパク質によって媒介される古典的な経路とは異なるため、これまでに入手可能な文献報告に照らした外挿は信頼できない。CB2受容体に関しても、同様の相反する効果が生じる可能性がある。
【0007】
文献はまた、ヘモプレシン及び前記の既知の伸長サイズ変異体が治療活性を有する一方で、6アミノ酸未満のサイズのペプチド性化合物は治療効果をもたらさないことを明確に示している(Szlaviczら、2015;Dvoracskoら、2016;Bomar及びGalande、2013;Bauerら、2012)。
【0008】
本発明は驚くべきことに正反対のことを証明する:ヘモプレシン及び伸長サイズ変異体について知られている使用においてより強力な治療効果を提供することに加えて、本発明は以前には知られておらず示唆もされていない他の使用も提供する。さらに、ペプチドのサイズの小さな変化は、治療効果の実質的な予想外の変化につながるだけでなく、効果の完全な欠如につながる可能性がある。
【0009】
また、ヘモプレシンに似たペプチド(ペプカン(pepcan))を用いた研究はいくつかの課題に直面していることに留意すべきである。例えば、前記のより大きなペプチドの操作は、原線維凝集/形成により妨げられてきた。さらに、インビボでの前記ペプチドの代謝安定性は制限されており、それぞれの薬理学的実験からのデータは薬物動態分析なしでは解釈することが困難であるので、文献における混乱を招く。ヘモプレシン(Hp)及びRV-Hpの投与に関する研究があるが、生理学的レベルで自然に存在する内因性ペプチドは、RVD-Hp(ペプカン12)及びペプカン23のみであるように思われる。
【0010】
これに関連して、種々の化合物がカンナビノイド受容体調節活性を有するとして当技術分野で既に検出されている。これらの中には、リモナバンなど、体重を減らし及びウエストを細くする薬物の開発をターゲットとするものがある。しかしながら、この化合物はその後、ヒトにおける精神障害の発生増加と関連付けられ、世界市場から排除された。
【0011】
本発明の化合物はさらに、カンナビジオールなどのカンナビノイド化合物の代替物として優れた候補であるという利点を提供する。カンナビジオールは、その実証済みの効果にもかかわらず、その起源であるアサ(Cannabis sativa)植物により規制上の課題に直面している。本発明は、ペプチド性化合物に基づいており、アサ(Cannabis sativa)の誘導体を使用していない、発作を患い、薬物を得ることが困難である患者のための追加の治療アプローチを提供する。結果は、本発明の化合物を抗痙攣薬として使用すると、数ある技術的利点の中でも、治療効果の増加、経口使用、低い投与量、虚脱及び鼻出血などの副作用の少ない発生を含む、使用における他の驚くべき技術的利点を提供することを示した。
【0012】
ピロカルピン(一般的に「ピロ」と呼ばれる)は、ブラジルに生息し、その特性を利用して汗及び唾液を産生するトゥピグアラニーインディアンによって何世紀にもわたって使用されている植物であるヤボランジ植物(ヤボランジ(Pilocarpus jaborandi))の葉から抽出されたアルカロイドである。ピロカルピンは非特異的ムスカリンアゴニストであり、ゆっくり分解され、ニコチン受容体に対する効果はなく、発汗剤(汗産生)及び唾液分泌促進薬(唾液の産生)効果を得るためのヤボランジ葉からの抽出物を通して、1874年にブラジル人医師Sifronio Coutinhoによって、診療に導入された。
【0013】
その医薬特性にもかかわらず、高濃度のピロカルピンは痙攣の発生を誘発し、そのための実験モデルとして使用されている。ピロカルピン誘発性発作は、細胞レベルで神経毒性を引き起こし、脳の酸化ストレスの増加及び一定のアミノ酸の濃度の変化に関係している可能性がある(Santosら、2011)。
【0014】
この実験モデルでのピロカルピンの投与は、重度の脳損傷、神経毒性につながり、通常は動物の死に至る。しかしながら、この結果の前に、ピロカルピンは、痙攣性の常同運動に関連する癲癇重積状態(SE)を誘発することができるコリン作動性変化を引き起こす。ピロカルピンは、脳に直接又は腹腔内に投与されると、癲癇重積状態を誘発することができる。この物質は、この特許出願に記載されたいくつかの実験で使用され、その有害なニューロン/脳効果が、本発明の組成物によって阻害又は予防された:これらの実験に供された動物の実質的な部分が、他の既知の物質で処置された動物群とは対照的に、脳病変に関連する症状を有さず、明らかな損傷なしに生存した。
【0015】
癲癇の機序の理解の多くは、動物実験モデル、特にラット及びマウスでの研究から来ている。これに関連して、げっ歯類におけるピロカルピンの投与は、ヒトの癲癇(ELT)を模倣し、一般に「ピロカルピンモデル」と呼ばれる。このモデルは1983年にTurskiらによって開発され、その組織学的、生化学的、薬理学的、電気生理学的及び行動的特性(Turskiら、1983)がELTのヒト保有者に見られるものを同様に再現するため、現在、癲癇の最も広く使用されているモデルの1つである。
【0016】
ピロカルピンモデルはまた、唾液分泌の発生などの、ムスカリン受容体の変化を証明するのにも有用である。アセチルコリンは、ムスカリン受容体(mAChR)を通して、学習及び記憶などの認知機能において重要な役割を果たす。mAChRは、一定のニューロン及び他の細胞の細胞膜でGタンパク質受容体と複合体を形成する受容体である。これらは、副交感神経系の節後線維から放出されるアセチルコリンによって刺激される最終的な末端受容体として作用するなど、いくつかの役割を果たす。
【0017】
ムスカリン受容体は、ニコチンよりもムスカリンにより感受性であるので、そのように呼ばれている。その対応物はニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)であり、自律神経系でも重要なイオンチャネル受容体である。多くの薬物及び他の物質(例えば、ピロカルピン及びエスコポラミン)は、選択的アゴニスト又はアンタゴニストとして作用するこれら2つの異なる受容体を操作する。
【0018】
mAChRは、膜貫通受容体(7TM)の中で最もよく特徴付けられており、中枢神経系(CNS)で広く発現される。5つのmAChRサブタイプ(M1、M2、M3、M4及びM5)がクローニングされており、一般的にはシグナル伝達に基づいて2つの異なるクラスに分類される。mAChR M1、M3及びM5は、Gq/11タンパク質を通してシグナル伝達し、ホスホリパーゼCを活性化し、細胞内カルシウムを動員するサブタイプである。しかしながら、mAChR M2及びM4は、Gi/oタンパク質を通して優勢であり、アデニル酸シクラーゼを阻害し、cAMPの細胞内濃度を低下させる。CNSの主要なmAChRはM1サブタイプであり、これは皮質、海馬、線条体及び視床に位置し、後シナプスに見られる。M2 mAChRは脳幹及び視床に主に位置するが、皮質、海馬及び線条体にも位置し、アセチルコリンの放出を制御する。M3及びM5のmAChRは、CNSでM1又はM2 mAChRよりもはるかに低いレベルで発現されるが、M3 mAChRは皮質及び海馬に見られ、M5 mAChRは黒質の非常に離れた場所にある。M4 mAChRは、皮質及び海馬を含む脳の多くの領域で見られるが、線条体ではより顕著であり、ドーパミン放出の制御において役割を果たし、自発運動活性を調節すると考えられている。
【0019】
CNSにおけるmAChRの広範で多様な発現プロファイルを考えると、全てのサブタイプが潜在的な薬物標的として評価されていることは驚くべきことではない。これらの標的のいくつかは、アルツハイマー病へのM1の関与など、文献で十分に受け入れられているが、乱用薬物への依存及び嗜癖と相関しているM5など、比較的新しいものもある。
【0020】
多発性硬化症は、強力な神経変性成分を伴う中枢神経系の神経炎症性疾患であり、患者の健康に大きな影響を及ぼす。疾患には依然として満足できる利用可能な治療選択肢がほとんどなく、本発明の場合のように、代替物の開発が非常に望ましい。
【0021】
多発性硬化症は、乏突起膠細胞及びニューロンの破壊を特徴とし、結果として不均一で累積的な臨床症状が生じる。現在利用可能な治療法は部分的にのみ有効であり、主に疾患の炎症期に向けられている。しかしながら、疾患の神経変性成分が、新しい治療アプローチにとって依然として最大の課題である。本発明は、この重要なギャップを埋めることを正確に意図している。
【0022】
疾患の正確な病因はまだ不明であるが、自己反応性Tリンパ球がその病態生理学において中心的な役割を果たすと推測されている。多発性硬化症の最も一般的な動物モデルは、多くの生理学的及び臨床的側面を共有しているため、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)である。ヒトの多発性硬化症の様々な臨床的、免疫学的及び組織学的な側面を反映したEAEのいくつかのモデルが存在する。マウスにおけるEAEの能動的誘発モデルは堅牢で、再現性のある結果を提供し、自己免疫性神経炎症を誘発したトランスジェニックマウスの使用を通した治療薬の検索に特に有用である。EAEモデルは通常、多発性硬化症の新規な治療戦略の有効性の「原理証明」として使用される。
【0023】
背景技術検索は、本発明に部分的にのみ関連する文献を開示している。このような文献を以下に記載するが、このような文献のいずれもが、本発明の目的のいずれも予想も示唆もしていないので、先行技術の基礎として役立つことのみを目的として本明細書に示される。
【0024】
Novel Peptide Substrates for Endopeptidase 24.15 Neurolysin and Angiotensin Converting Enzyme(Vanessa Rioli、Fabio C.Gozzo、Andrea S.Heimann、Alessandra Linardi、Jose E.Krieger、Claudio S.Shida、Paulo C.Almeida、Stephen Hyslop、Marcos N.Eberlin、Emer S.Ferro;2003年3月7日)において本発明者らの一人によって提示されたいくつかの研究が、新たなペプチドを「スクリーニングする」有効な技術を実証している。本発明は、数ある理由の中でも、異なる分子実体を提供するため、その文献とは異なる。本発明はまた、より安定で、より治療上有効な化合物を提供する。さらに、本発明は、神経調節、神経保護、鎮痛、痙攣、又は多発性硬化症の治療に対する新規な治療アプローチを提供し、その結果は驚くべきものであった。
【0025】
Gomesら(Gomes I、Grushko JS、Golebiewska U、Hoogendoorn S、Gupta A、Heimann AS、Ferro ES、Scarlata S、Fricker LD及びDevi LA Novel endogenous peptide agonists of cannabinoid receptors FASEB J.2009年9月;23(9):3020~3029)は、著者の一人として、本発明の共同発明者(Heimann)を有する別の科学刊行物である。前記共同発明者は、本発明の仮説を検証するために他の共同発明者によって試験が提案された際、仮説によって驚かされた-この事自体がその非自明性を明らかにしている。Gomesらは2009年に公開されたが、本発明の優先権は2017年である、すなわち、Gomesらの公開の7年後超であり、本発明者自身によるヘモプレシン(Hp)の発見(Heimannら、Proc Natl Acad Sci USA、2007年12月18日;104(51):20588-93)の実質的に10年後であり、本発明者だけでなく、世界の他の研究者の誰もが本発明の目的を公開も示唆もしなかったことに留意すべきである。
【0026】
さらに、Gomesらは、マウスの脳内に一定のエンドカンナビノイドが自然に存在すること(すなわち、局所発現)を開示しており、HpのN伸長バージョンを発見した。さらに、Gomesらの結論の1つは、脳で見られるN伸長バージョン(RVD-Hpα及びVD-Hpα)が本発明のペプチドの機能と反対の機能を有し、これがアンタゴニスト/逆アゴニストであり、本発明のペプチドはカンナビノイド受容体のアゴニストであるというものである。したがって、Gomesらは、発作の制御又は神経調節におけるエンドカンナビノイドの使用も、これらの実体のいずれかを含む医薬組成物-まして本発明のペプチドの使用、請求された使用のいずれか、又は同ペプチドを含む経口組成物も開示も示唆もしていない。結果として、Gomesらが本発明のペプチドの使用を開示していないだけでなく、当業者は、Gomesらを読むことから、(i)本発明のペプチド性化合物を合成する;(ii)その安定性がヘモプレシンの安定性よりも実質的に大きいと予想する;(iii)治療作用がヘモプレシンの治療作用よりも大きいと予想する;(iv)成功の合理的な予想をもって、本明細書に示される他の用途のためにこれを試験する;又は(v)神経調節、神経保護、発作若しくは多発性硬化症治療のための経口医薬組成物を調製するように動機付けられないだろう。これに関連して、共同発明者自身は、他の共同発明者によって示唆された試験を実施する前に、このようなアプローチにあまり意味を見出さなかった。本発明の化合物は新規であり、驚くべき特性を有する;以前から知られている用途で、実質的で驚くべき改善である;これまで知られていない用途で、ペプチドを含有する経口医薬組成物が神経調節作用を有することも驚くべきことであるため、これは新規で驚くべきことである。当業者は、本発明の前記ペプチド性化合物がより高い安定性を有し、消化管に抵抗し、相互作用して、得られる神経調節/神経保護効果をもたらすことを予期しないだろう。
【0027】
文献国際公開第2014/008567号パンフレットは、発明者の一人として、本発明の共同発明者(Heimann)を含む。この文献は、肥満、糖尿病、全身性動脈性高血圧(又は疾患、状態に関連する及び/又は伴う併存症)を含む代謝障害の治療;過体重の予防;食欲の調節;満腹感の誘導;減量成功後の体重増加の予防;エネルギー消費の増加;審美的な体重減少;又は過食症に有用なペプチド性化合物及び組成物を開示している。前記文献の化合物はCB受容体と相互作用するが、本発明のものとは異なる化学構造のものである。さらに、このアプローチは発明者らによって想像されたものでもなく、先行技術から自明でもなかったので、本発明の化合物を神経調節剤、神経保護剤、抗痙攣薬として、又は多発性硬化症の治療に有用な実体として使用することについての報告も示唆も、前記文献ではなされていない。
【0028】
文献国際公開第2011/011847号パンフレット(=米国特許出願公開第2015/297669号明細書、米国特許第9452196号明細書、欧州特許第2459207号明細書)は、発明者の一人として、本発明の発明者(Heimann)を含む。この文献は、糖尿病及び肥満/体重増加の制御のためのヘモプレシン(Hp)の使用のみを開示しており、Hp及びDV-Hp、PVD-Hp、RVD-Hpなどのより大きな誘導体に限定されている。本発明は、数ある理由の中でも、ヘモプレシンと比較して、数ある利点の中でも、調製の容易さ、大きな安定性及び生物活性を含む利点を提供する、異なる化合物を開示するために、前記文献とは異なる。さらに、本発明の化合物は、国際公開第2011/011847号パンフレットに開示も示唆もされていない他の治療用途を提供する:本発明者らによって実施された試験は、特に神経調節、神経保護、発作及び多発性硬化症症状の阻害に関して驚くべき結果、前記文献に記載も示唆されていない事実を示した。さらに、国際公開第2011/011847号パンフレットの前記共同発明者は、他の共同発明者が本発明の仮説を検証するために試験を提案した際、仮説によって感銘させられた-それ自体がその非自明性を明らかにしている。文献国際公開第2011/011847号パンフレットは2011年に公開されたが、本発明の優先権は2017年である、すなわち、最も早い先例の公開から5年後超であり、共同発明者自身によるヘモプレシンの発見(Heimannら、Proc Natl Acad Sci USA、2007年12月18日;104(51):20588-93)の実質的に10年後であり、共同発明者だけでなく、世界の他の研究者の誰もが本発明の目的を公開も示唆もしなかった。最後に、文献国際公開第2011/011847号パンフレットは、脳受容体ではなく脳の外側にある脂肪組織に存在する受容体に対する作用に焦点を当てている。
【0029】
また、文献が、発作の制御に関して、ヘモプレシンについて言及しておらず、本発明のペプチドについてはほとんど言及していないことに留意することも重要である。発作制御におけるヘモプレシンの使用は、先行技術で開示も示唆もされておらず、同じ発明者の別の同時係属出願であるPCT/BR2017/050313の主題である。この文献が明らかにするものは他の分子実体であり、CB1受容体アゴニストであるが、本発明のペプチドは逆アゴニスト及びアンタゴニスト(モジュレーター)であり、本発明の結果をさらに驚くべきものにしている。
【0030】
文献国際公開第2013/021196号パンフレットは、オリゴデンドロサイトの分化を妨げる薬剤としてのヘモプレシンの使用を開示している。本発明は、数ある理由の中でも、他の化合物、他の使用を明らかにし、ヘモプレシンと比較して、数ある利点の中でも、調製の容易さ、大きな安定性及び生物活性を含む利点を提供するという点で前記文献とは異なる。さらに、本発明者らによって実施された試験は、特に本発明の化合物による神経調節、神経保護、発作の発生及び/又は多発性硬化症の症状の阻害に関して驚くべき結果を示したが、これらは前記文献に記載も示唆もされていない。
【0031】
それを予想も示唆もすることなく本発明を制限する科学文献の他の参考文献には、以下の文献が含まれる。
【0032】
ASPRONI,B.ら Novel pyrrolocycloalkylpyrazole analogues as CB1 ligands.Chemical Biology and Drug Design、1~13頁、2017.
【0033】
HILDEBRANDT,A.K.らEfficient computation of root mean square deviations under rigid transformations.Journal of Computational Chemistry、第35巻、765~771頁、2014.
【0034】
HUA T.らCrystal structure of the human cannabinoid receptor CB1.Cell、第167巻、750~762頁、2016.
【0035】
MAIOROV,V.N.;CRIPPEN,G.M.Significance of root-mean-square deviation in comparing three-dimensional structures of globular proteins.Journal of Molecular Biology、第235巻、625~634頁、1994.
【0036】
MORGAN,C.A.;HURLEY,T.D.Characterization of two distinct structural classes of selective aldehyde dehydrogenase 1A1 inhibitors.Journal of Medicinal Chemistry、第58巻、1964~1975頁、2015.
【0037】
PERTWEE,R.G.The diverse CB1 and CB2 receptor pharmacology of three plant cannabinoids:Δ9-tetrahydrocannabinol,cannabidiol and Δ9 -tetrahydrocannabivarin.British Journal of Pharmacology、第153巻、199~215頁、2008.
【0038】
RAMACHANDRAN,G.N.;RAMAKRISHNAN,C.;SASISEKHARAN,V.
Stereochemistry of polypeptide chain configurations.Journal of Molecular Biology、第7巻、95~99頁、1963.
【0039】
SANTOS,P.S.らEfeitos do acido lipoico nas concentracoes de glutamato e taurina no hipocampo de ratos apos convulsoes induzidas por pilocarpina.Arq.Neuro-Psiquiatr.[online].2011、第69巻、n.2b、360~364頁.
【0040】
MUNROらNature 365:61~65、1993.
【0041】
RINALDI-CARMONA M.らJ.Pharmacol.Exp.Ther.278:871~878、1996.
【0042】
Gupta A、Heimann AS、Gomes I、Devi LA.Antibodies against G-protein coupled receptors:novel uses in screening and drug development.Comb.Chem High Throughput Screen.2008、11(6)463~467.
【0043】
Langmead CJ1、Watson J、Reavill C.Muscarinic acetylcholine receptors as CNS drug targets.Pharmacol Ther.2008年2月;117(2):232~43.Epub 2007年12月20日.
【0044】
Bomar MG及びGalande AK.Modulation of the cannabinoid receptors by hemopressin peptides.Life Sci.2013 92(8~9):520~524.
【0045】
Dvoracsko S、Tomboly C、Berkecz R、Keresztes A.Investigation of receptor binding and functional characteristics of hemopressin(1-7).Neuropeptides 2016、58:15~22.
【0046】
Gomes I、Grushko JS、Golebiewska U、Hoogendoorn S、Gupta A、Heimann AS.Ferro ES、Scarlata S、Fricker LD及びDevi LA.Novel endogenous peptide agonists of cannabinoid receptors.FASEB J.2009年9月;23(9):3020~3029.
【0047】
Gelman JS、Sironi J、Castro LM、Ferro,ES及びFricker LD.Hemopressins and other hemoglobin-derived peptides in mouse brain:Comparison between brain,blood,and heart peptidome and regulation in Cpefat/fat mice.J Neurochem.2010年5月;113(4):871~880.
【0048】
Bauer M、Chicca A、Tamborrini M、Eisen D、Lerner R、Lutz B、Poetz O、Pluschke G、Gertsch J.Identification and Quantification of a New Family of Peptide Endocannabinoids(Pepcans)Showing Negative Allosteric Modulation at CB 1 Receptors.The Journal of Biological Chemistry 第287巻、第44号、36944~36967頁、2012年10月26日.
【0049】
Reichwein JF及びLiskamp RMJ.Site-specific N-alkylation of peptides on the solid phase.Tetrahedron Letters、第39巻、第10号、1998年3月5日、1243~1246頁.
【0050】
Szlavicz E、Perera PS、Tomboly C、Helyes Z、Zador F、Benyhe S、Borsodi A、Bojnik E.Further Characterization of Hemopressin Peptide Fragments in the Opioid and Cannabinoid Systems.Anesth Analg.2015年12月;121(6):1488-94.doi:10.1213/ANE.0000000000000964.PubMed PMID:26465932.
【0051】
Special Periodic Reports,Amino Acids,Peptides and Proteins:第42巻、Royal Society of Chemistry、2013.
【0052】
概説された文献から、驚くべき技術的効果は言うまでもなく、本発明の教示を予想又は示唆する文献は見つからなかったので、本発明者らの目で、ここで提案された解決策は、先行技術に対して新規性及び進歩性を有する。
【発明の概要】
【0053】
本発明は、例えば、とりわけ、ヘモプレシンよりも安定で、取り扱いが容易なペプチド化合物;医薬向けの化合物の調製に有用な合成中間体;カンナビノイド及び/又はムスカリン系の診断向けのリガンドを調製するための前記化合物の使用;ヘモプレシン又はカンナビジオールを含有するものに対して改善された医薬品を調製するための化合物の使用;代謝機能を調節するための及び/又はヘモプレシンを含有する組成物よりも改善された鎮痛効果のための医薬組成物;免疫調節医薬組成物;痙攣及び/又は多発性硬化症の治癒的又は予防的治療のための神経調節性、神経保護医薬組成物;治療方法;不安定性、凝集体の形成及び/又は低い治療効果などのヘモプレシンの使用に起因する欠点なしに、また虚脱及び鼻出血などのカンナビノイド物質の使用に起因する不便なしに、これら及び/又は他の技術的効果を提供する分子実体を提供するために、先行技術のいくつかの既知の課題に対処する。
【0054】
本発明のさらなる目的は、極端な温度での高い安定性及び/又は取り扱いの容易さを有し、医薬製剤及び医薬品に特に有用なペプチド性化合物を提供することである。本発明のペプチド性化合物は、とりわけ、ヘモプレシン及び通常はより大きなサイズ(9~15アミノ酸)の既知の変異体などの他のペプチドと比較して、動物における投与、生物学的利用能及び/又は治療作用の利点をもたらす。本発明のペプチド性化合物はまた、哺乳動物への経口投与を提供し、これまで知られていない用途を提供するのに加えて、ヘモプレシンよりも大きな治療効果を提供し、種々の態様で驚くべきものである。
【0055】
本発明のさらなる目的は、製造、取り扱い、使用及び安全性の利点を提供し、以前記載された全て又はほとんど全ての用途でカンナビジオールに取って代わることができる、カンナビジオールに代わる化合物を提供することである。
【0056】
本発明の別の目的は、ムスカリン系及び/又はカンナビノイド系受容体のリガンドとして有用なペプチド性化合物を提供することである。したがって、本発明のペプチド性化合物は診断用途に有用である。本発明の別の目的は、カンナビノイド及び/又はムスカリン受容体の存在、位置及び/又は量を診断する、ならびに他の化合物のこのような受容体への結合を評価するためのインビトロ方法である。
【0057】
本発明の化合物はまた、CB1受容体、CB2受容体を両方同時に調節する、カンナビノイド系で相互作用する他の物質の結合又は作用を調節する、カンナビノイド系での活性ペプチドの生成又は分解をもたらすプロテアーゼ又はペプチダーゼの調節、或いはこれらの組み合わせによって、ムスカリン受容体及び/又はカンナビノイド受容体を調節するのに有用である。
【0058】
本発明の別の目的は、本発明のペプチド性化合物を含み、化学修飾、置換、他の官能基の包含を含み得る、医薬及び/又は診断向けの化合物の調製における合成中間体である。
【0059】
本発明の別の目的は、哺乳動物の代謝機能を調節するための改善された医薬組成物を調製するために本発明のペプチド性化合物を使用することである。
【0060】
本発明の別の目的は、改善された鎮痛医薬組成物を調製するための本発明のペプチド性化合物の使用である。
【0061】
本発明の別の目的は、哺乳動物の神経調節剤及び/又は神経保護薬を調製するための本発明のペプチド性化合物の使用である。
【0062】
本発明の別の目的は、哺乳動物の発作の治癒的又は予防的治療用医薬品を調製するための本発明のペプチド性化合物の使用である。さらに、本発明のペプチド性化合物の動物への投与は、カンナビジオール及びヘモプレシンよりも優れた抗痙攣活性を含む重要な驚くべき技術的利点を提供し、その(ヘモプレシンの)抗痙攣薬としての使用は、同じ発明者らの同時係属特許出願の主題である。
【0063】
本発明の別の目的は、哺乳動物の多発性硬化症の治癒的又は予防的治療用医薬品を調製するための本発明のペプチド性化合物の使用である。
【0064】
本発明の他の目的は、代謝障害、疼痛、発作、多発性硬化症の治療的又は予防的治療、ならびに神経調節及び/又は神経保護のための治療方法である。
【0065】
本発明の別の目的は、哺乳動物の代謝機能を調節するための改善された医薬組成物である。
【0066】
本発明の別の目的は、改善された鎮痛医薬組成物である。
【0067】
本発明の別の目的は、哺乳動物の神経調節及び/又は神経保護医薬組成物である。
【0068】
本発明の別の目的は、哺乳動物の発作の治癒的又は予防的治療のための改善された医薬組成物である。
【0069】
本発明の別の目的は、哺乳動物の多発性硬化症の治癒的又は予防的治療用医薬組成物である。
【0070】
本発明の化合物は、式:
R1-N-AA1-K-AA2-R2
(式中、
AA1はF、W、L、I、V、P、Gからなる群から選択されるアミノ酸であり、
AA2は水素、又はF、W、L、I、V、P、Gからなる群から選択されるアミノ酸であり、
R1は、R2がアミノ酸Lである場合、存在しないか、又は水素若しくはアミノ酸Vであり;
R2は、AA2が水素である場合、存在しないか、又はR1が水素である場合、水素、アミノ酸Lである)
のペプチド性化合物及び/又はその修飾形態、その環状-、アミド-、アルキル-、アルコキシ-、ハロゲン-、ヒドロキシル-、PEG化形態、他の官能基、非天然アミノ酸、D-アミノ酸を含むアミノ酸又はペプチドで修飾された形態、その塩ならびに/或いはこれらの組み合わせである。
【0071】
本発明の化合物は、合成であり、既知の天然形態とは異なり、診断用途のリガンド及び哺乳動物用の治癒的又は予防的医薬品から選択される医薬向けの製品を調製するのに有用である。
【0072】
一実施形態では、AA1がF、W又はLである。
【0073】
一実施形態では、R1及びR2が共に水素である。
【0074】
一実施形態では、本発明の化合物が、NFKF、NWKF、NLKF、NFKW、NWKW、NLKW、NFKL、NWKL、NLKL、VNFK、VNWK、VNLK、及びその修飾形態又は環状形態、そのアミド化、アルキル化、アルコキシ化、ハロゲン化、ヒドロキシル化又はPEG化形態、他の官能基及びd-アミノ酸形態などの非天然形態を含むアミノ酸又はペプチドで修飾された形態、その塩;及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0075】
一実施形態では、本発明のペプチド性化合物が、NFKトリペプチド、NFKFテトラペプチド、NFKLテトラペプチド、及びその修飾形態又は環状形態、アミド化、アルキル化、アルコキシ化、ハロゲン化、ヒドロキシル化、PEG化形態、他の官能基及びd-アミノ酸形態などの非天然形態を含むアミノ酸又はペプチドで修飾された形態、その塩;及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0076】
本発明の医薬組成物は、本発明のペプチド性化合物と、薬学的に許容されるビヒクルとを含み、場合により他の有効成分を含む、錠剤、ゲル、経口液剤又はシロップ、カプセル剤、坐剤、注射液又は吸入可能な若しくは粘着形態であってもよい。
【0077】
本特許出願のこれら及び他の目的は、当業者及びこの部門に関心を有する企業によって直ちに認識され、以下の説明でその再現のために十分に詳細に説明される。
【0078】
以下の詳細な説明及び添付の図は、本発明の主な特徴及び実施形態を示し、当業者にさらなる支援を提供するためにさらに詳細に示され、したがって、彼女/彼は、その実施形態のいずれかで本発明の発明の概念を理解及び再現することができる。このような詳細又は図は、限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の実施形態のいくつかを例示するためにのみ役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】NFKF実施形態の本発明の化合物対Hp(PVNFKFLSH)の比較安定性試験の結果を示す図である。グラフのデータは、24時間凍結した後、又は100°Cで10分間加熱した後の、HPLCによるこれらの活性物質の各々の濃度測定の結果を示している(n=2)。統計学的に有意なデータも示されており、アステリスクは以下を示す:(*)対照に対してP<0.05(***)対照に対してP<0.005;(****)対照に対してP<0.0001。
【0080】
【
図2】共にピロカルピンモデルにおける、ヘモプレシン試験結果と比較したNFKF実施形態の本発明の化合物の試験結果を示す図である。最初の唾液分泌の発生時間を、以下の処置用量の投与で示す:対照(生理食塩水);ヘモプレシン(Hp又はPVNFKFLSH、0.551334μmol/kg);ヘモプレシン(0.91889μmol/kg);NFKF実施形態の本発明の化合物(0.540882μmol/kg);NFKF(0.901469μmol/kg);化合物PEP-19(DIIADDEPLT、0.908117μmol/kg)。アステリスクは、統計学的有意性を示す:(*)対照に対してP<0.05;(**)対照に対してP<0.01;+記号はHp 0.91889μmol/kgに対してP<0.05を示す。
【0081】
【
図3】共にピロカルピンモデルにおける、抗痙攣薬としてのヘモプレシン試験の結果と比較した抗痙攣薬としてのNFKF実施形態の本発明の化合物の試験結果を示す図である。最初の発作の(対照に対する)時間の割合を、以下の処置用量の投与で示す:対照(生理食塩水);ヘモプレシン(Hp又はPVNFKFLSH、0.551334μmol/kg);ヘモプレシン(0.91889μmol/kg);NFKF実施形態の本発明の化合物(0.540882μmol/kg);NFKF(0.901469μmol/kg);化合物PEP-19(DIIADDEPLT、0.908117μmol/kg)。アステリスクは、統計学的有意性を示す:(*)対照に対してP<0.05;(**)対照に対してP<0.01;+記号はHp 0.91889μmol/kgに対してP<0.05を示す。
【0082】
【
図4】対照、カンナビジオール(30mg/kg)又はNFKF(500μg/kg)の投与により最初の唾液分泌が発生する時間を示す、ピロカルピンモデルにおけるNFKF実施形態の本発明の化合物の試験結果を示す図である。対照と他の試験化合物との間のデータは、試験した条件下でそれらの間の統計学的有意性を示さない。
【0083】
【
図5】カンナビジオール(30mg/kg)又はNFKF(500μg/kg)の投与により最初の痙攣が発生する時間を示す、ピロカルピンモデルにおける抗痙攣薬としてのNFKF実施形態の本発明の化合物の試験結果を示す図である。アステリスクは、統計学的有意性を示す:(**)対照に対してP<0.02;(***)対照に対してP<0.002。
【0084】
【
図6】動物の生存/死亡プロファイルがNFKFの投与で示される、ピロカルピンモデルにおけるNFKF実施形態の本発明の化合物による神経保護試験の結果を示す図である。
【
図6A】対照(生理食塩水のみ)を投与した動物の生存プロファイルを示す図である。
【
図6B】カンナビジオール30mg/kgを投与した動物の生存プロファイルを示す図である。
【
図6C】NFKF500μg/kgを投与した動物の生存プロファイルを示す図である。
【
図6D】全てのプロファイルを単一のグラフに示す図である。神経調節剤NFKF500μg/kgで処置した群では、2匹の動物のみが死亡したことに注目することは興味深い。NFKF群の残りの動物は合計3匹で1週間超生存していたが、実際には他の全ての動物が30分以内に死亡した。結果として、この群の平均生存時間は有意に異なり、他の群よりはるかに長かった。さらに、NFKF群(500μg/kg)とカンナビジオール(30mg/kg)を投与した群を比較すると、生存率は最初の群、すなわち、NFKF 500μg/kg群で、60倍低い相対濃度のこの化合物を使用した場合でさえ、3倍高い。
【0085】
【
図7】試験したモデルにおける24時間後の動物の生存/死亡プロファイルを示す、本発明の化合物の様々な実施形態(NFKF、NFKL及びNFK、全て600μg/kg)を動物の群(各群n=5)に前もって投与し、その後、ピロカルピンを投与した神経保護試験の結果を示す図である。縦軸は、死亡した動物の数を示す。対照は、ピロカルピン投与前の生理食塩水の投与である。
【0086】
【
図8】対照又は試験化合物の投与後に最初の唾液分泌が発生する時間を示す、ピロカルピンモデルにおける本発明の化合物NFKF、NFKL、NFK、FKF、FKL、ならびにジペプチドNF、FK、KF及びKLの試験結果を示す図である。*対照に対してP<0.05。結果は、対照群の7匹の動物及びNFKで処置した群の6匹の動物の平均結果を反映している。
【0087】
【
図9】対照又は試験化合物の投与後に最初のシグナルが発生する時間を示す、ピロカルピンモデルにおける本発明の化合物NFKF、NFKL、NFK、FKF、FKL、ならびにジペプチドNF、FK、KF及びKLの試験結果を示す図である。
【0088】
【
図10】対照又は試験化合物の投与後に発作が発生する時間を示す、ピロカルピンモデルにおける本発明の化合物NFKF、NFKL、NFK、FKF、FKL、ならびにジペプチドNF、FK、KF及びKLの試験結果を示す図である。*対照に対してP<0.05;**対照に対してP<0.001。
【0089】
【
図11】対照又は試験化合物の投与後に死亡が発生する時間を示す、ピロカルピンモデルにおける本発明の化合物NFKF、NFKL、NFK、FKF、FKL、ならびにジペプチドNF、FK、KF及びKLの試験結果を示す図である。*対照に対してP<0.05。
【0090】
【
図12】受容体の活性化/コンフォメーション変化に感受性の抗CB1抗体におけるCB1受容体への種々の化合物の結合アッセイの結果を示す図である。対照に対するCB1受容体への結合の値(%)を示す。*対照に対してP<0.05。
【0091】
【
図13】GPCR、この場合はサブタイプ1のカンナビノイド受容体の三次元構造の概要を示す図である。7回膜貫通ヘリックス(I~VII)、細胞内ループ(ICL1及びICL2)及び細胞外ループ(ECL2及びECL3)に言及している。
【0092】
【
図14】結晶学構造(PDB 5TGZ)でのAM6538構造の重なり、及びGoldscore関数による検証後に得られた結果を示す図である(本出願の目的にはこのような色は無関係であるが、図が有色に見える場合、結晶構造は紫色であり、Goldscore関数の結果は青/シアンである)。
【0093】
【
図15】CB1受容体結合部位でAM6538について観察された主な相互作用を示す図である。
【0094】
【
図16】CB1受容体結合部位でリモナバンについて観察された主な相互作用を示す図である。
【0095】
【
図17】CB1受容体結合部位でカンナビジオールについて観察された主な相互作用を示す図である。
【0096】
【
図18】CB1受容体結合部位でNFKF実施形態の本発明のペプチド性化合物について観察された主な相互作用を示す図である。
【0097】
【
図19】CB2受容体構造を得る方法の結果を示す図である。
【
図19A】得られたCB2受容体の三次元構造を示す図である。
【
図19B】得られたヒトCB2モデルについてのRamachandranグラフを示す図である。
【0098】
【
図20】CB2受容体とAM6538リガンドとの間の主な相互作用を示す図である。
【0099】
【
図21】CB2受容体とリモナバンとの間の主な相互作用を示す図である。
【0100】
【
図22】CB2受容体とカンナビジオールとの間の主な相互作用を示す図である。
【0101】
【
図23】CB2受容体とNFKF実施形態の本発明の化合物との間の主な相互作用を示す図である。
【0102】
【
図24】ラットの右足の裏に印加された力(g)として表される疼痛閾値の結果を示す図である。動物が蹴って反応する場合に、この反応を誘発するのに必要な力(g)が疼痛閾値である。縦軸は、脚に印加された圧力を示す。抗侵害受容性活性を、対照動物と比較した疼痛閾値の増加として表した。本発明の化合物を、0.5~0.25mg/kgの用量で動物に経口投与し、生理食塩水を対照として使用した。*対照に対してP<0.05。
【0103】
【
図25】多発性硬化症を制御するためのNFKF実施形態の本発明の化合物の試験結果を示す図である。
【
図25A】MOGによるEAE誘発を受けた、野生型(WT)マウス、すなわち、正常マウスの臨床スコア曲線を示す図である。
【
図25B】MOG誘発を受けたEAEモデルの、エンドペプチダーゼ遺伝子24.15のノックアウトマウス、すなわち、トランスジェニックの、多発性硬化症症状を生じやすいマウスの臨床スコア曲線を示す図である。
【
図25C】MOG誘発及びNFKFで得られる神経保護を受けた、EAEモデルの、エンドペプチダーゼ遺伝子24.15のノックアウトマウス、すなわち、トランスジェニックの、多発性硬化症症状を生じやすいマウスの臨床スコア曲線を示す図である。*WTに対してP<0.05 24.15 KO+NFKF;+WTに対してP<0.05 24.15 KO。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本発明のいくつかの目的の根底にある発明概念は、式:
R1-N-AA1-K-AA2-R2
(式中、
AA1はF、W、L、I、V、P、Gからなる群から選択されるアミノ酸であり、
AA2は水素、又はF、W、L、I、V、P、Gからなる群から選択されるアミノ酸であり、
R1は、R2がアミノ酸Lである場合、存在しないか、又は水素若しくはアミノ酸Vであり;
R2は、AA2が水素である場合、存在しないか、又はR1が水素である場合、水素、アミノ酸Lである)
のペプチド性化合物及び/又はその修飾形態、その環状-、アミド-、アルキル-、アルコキシ-、ハロゲン-、ヒドロキシル-、PEG化形態、他の官能基、非天然アミノ酸、D-アミノ酸を含むアミノ酸又はペプチドで修飾された形態、その塩ならびに/或いはこれらの組み合わせである。
【0105】
本発明の化合物は、合成であり、既知の天然形態とは異なり、診断用途のリガンド及び哺乳動物用の治癒的又は予防的医薬品から選択される医薬向けの製品を調製するのに有用である。
【0106】
一実施形態では、AA1がF、W又はLである。
【0107】
一実施形態では、R1及びR2が共に水素である。
【0108】
一実施形態では、本発明の化合物が、NFKF、NWKF、NLKF、NFKW、NWKW、NLKW、NFKL、NWKL、NLKL、VNFK、VNWK、VNLK、及びその修飾形態又は環状形態、そのアミド化、アルキル化、アルコキシ化、ハロゲン化、ヒドロキシル化又はPEG化形態、他の官能基及びd-アミノ酸形態などの非天然形態を含むアミノ酸又はペプチドで修飾された形態、その塩;及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0109】
一実施形態では、本発明のペプチド性化合物が、NFKトリペプチド、NFKFテトラペプチド、NFKLテトラペプチド、及びその修飾形態又は環状形態、アミド化、アルキル化、アルコキシ化、ハロゲン化、ヒドロキシル化、PEG化形態、他の官能基及びd-アミノ酸形態などの非天然形態を含むアミノ酸又はペプチドで修飾された形態、その塩;及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0110】
前記ペプチド性化合物は、極端な温度での驚くほど高い安定性及び取り扱いの容易さを有し、医薬製剤及び医薬品に特に有用である。本発明のペプチド性化合物は、とりわけ、例えばヘモプレシン及び通常はより大きなサイズ(9~23アミノ酸)の既知の変異体などの他のペプチドと比較して、動物における投与、生物学的利用能及び/又は治療作用の利点をもたらす。本発明のペプチド性化合物はまた、哺乳動物への経口投与を提供し、ヘモプレシンについて知られているものよりも大きな治療効果を提供し、既に記載された全て又はほとんど全ての用途でヘモプレシンに有利に取って代わることができる。
【0111】
本発明の化合物はまた、本発明のペプチド性化合物を含み、化学修飾、置換、他の官能基の包含を含む、医薬向けの化合物の調製における合成中間体である。
【0112】
本発明の化合物は、カンナビジオールの有利な代替物であり、製造、取り扱い、使用及び安全性の利点を提供し、以前記載された全て又はほとんど全ての用途でカンナビジオールに取って代わるのに有用である。
【0113】
本発明の化合物は、ムスカリン及び/又はカンナビノイド系受容体のリガンドであり、CB1受容体、CB2受容体の両方同時の調節、カンナビノイド系で相互作用する他の物質の結合又は作用を調節する、カンナビノイド系での活性ペプチドの生成又は分解をもたらすプロテアーゼ又はペプチダーゼを調節する、或いはこれらの組み合わせによって、診断用途に、或いはムスカリン受容体及び/又はカンナビノイド受容体を調節するのに有用である。本特許出願で提示される試験結果は、本発明の化合物がカンナビノイド及び/又はムスカリン受容体と相互作用及び/又はその活性を調節することを示している。
【0114】
本発明の化合物は、哺乳動物の代謝機能を調節するための改善された医薬組成物に有用である。
【0115】
本発明の化合物は、改善された鎮痛医薬組成物に有用である。
【0116】
本発明の化合物は、哺乳動物の発作の治癒的又は予防的治療用医薬組成物に有用である。本発明のペプチド性化合物の動物への投与は、カンナビジオール及びヘモプレシンよりも優れた抗痙攣活性を含む重要な驚くべき技術的利点を提供し、後者の抗痙攣薬としての使用は、同じ発明者らの同時係属特許出願PCT/BR2017/050313の主題である。
【0117】
本発明の化合物は、哺乳動物の神経調節及び/又は神経保護医薬組成物に有用である。本特許出願で提示される試験結果は、本発明の組成物がニューロンの作用を調節し、神経保護、抗痙攣性でもあり、多発性硬化症の治療に有用であることを示している。
【0118】
本発明の目的のために、以下の定義が使用される。
【0119】
医薬向けの製品
【0120】
本出願の文脈において、「医薬向けの化合物」は、本出願に共通の発明概念として記載される化合物を含む任意の分子実体を意味し、とりわけ、それらが核として上に定義される実体R1-N-AA1-K-AA2-R2を含む限り、同化合物の化学修飾/誘導体化によって、又は他の官能基、直鎖若しくは分岐側鎖の包含、親水性若しくは疎水性の変化によって得られた分子実体も含み、但し、天然及び既知の実体を除く。
【0121】
医薬組成物
【0122】
本特許出願の文脈において、「医薬組成物」は、恒常性を維持及び/又は回復するように作用する、予防、緩和及び/又は治療目的の有効成分を含有するありとあらゆる組成物として理解されるべきであり、経口、局所、非経口、経腸及び/又は髄腔内投与され得る。
【0123】
薬学的に許容される製剤
【0124】
本出願の文脈において、「薬学的に許容される製剤」とは、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、硝子体内及び筋肉内、脳内、脳室内及び眼内治療及び投与及び/又は製剤を含むいくつかの治療レジメンで記載され得る特定の組成物で使用するための簡便な用量及び治療の開発などの、当業者に周知の薬学的に許容される賦形剤及び担体を含有する製剤を意味する。
【0125】
修飾ペプチド
【0126】
本出願の文脈において、「修飾ペプチド」は、ハロゲン化物、環化、アミド化、アルキル化、アルコキシ化、ヒドロキシル化、PEG化形態、アミノ酸上に他の官能基を含む形態、又はその塩形態、ならびにアミノ酸又はペプチド上に、d-アミノ酸形態などの非天然を含む形態を含む、天然に存在しない、人工的に修飾又は合成されたペプチドとして理解されるべきである。ペプチド性化合物は、例えば、ペプチドのN末端領域に存在する第一級アミンと優先的に反応するスクシンイミジル基を含む試薬でのペグ化などの、当業者に知られている技術を使用してペグ化され得る。本発明のペプチド性化合物は、例えば、Reichwein及びLiskamp(Reichwein JF及びLiskamp RMJ、Site-specific N-alkylation of peptides on the solid phase、Tetrahedron Letters、第39巻、第10号、1998年3月5日、1243~1246頁)に記載される光延反応を含む、当業者に知られている技術を使用して任意のアミノ酸でアルキル化され得る。前記論文は、ペプチドの特定のアミド官能基への任意のアルキル基の導入を記載している。本発明のペプチド性化合物は、例えば、書籍Special Periodic Reports,Amino Acids,Peptides and Proteins:第42巻、Royal Society of Chemistry、2013に記載されているものを含む、当業者に知られている技術を使用して、任意のアミノ酸上でアルコキシ化、ハロゲン、ヒドロキシ又は他の官能基で置換され得る。本発明のペプチド性化合物は、当業者に知られている技術を使用して、ビオチンなどの診断及び/又は治療用途に有用な他の分子種で修飾することができる。
【0127】
環状又は輪状ペプチド
【0128】
本出願の文脈において、「環状、環化又は輪状ペプチド」は、当技術分野で知られている任意の方法、特に酵素の活性により、直鎖ペプチド分子の2つの末端間の共有結合を有するペプチドとして理解されるべきである。環状ペプチドは、その末端又は加水分解酵素による攻撃ゾーンが直鎖ペプチドほど露出されていないので、分解するのがより困難であるため、直鎖ペプチドの代わりに使用することができる。
【0129】
アゴニスト
【0130】
本出願の文脈において、「アゴニスト」は、受容体部位と複合体を形成し、それによって細胞の能動的反応を誘因する薬物、薬物、ホルモン、神経伝達物質又は他のシグナル伝達分子として理解されるべきである。
【0131】
逆アゴニスト/アンタゴニスト
【0132】
本出願の文脈において、「逆アゴニスト又はアンタゴニスト」は、アゴニスト受容体に結合し、一方の作用が他方の効果を部分的又は完全に阻害するように、アゴニストの効果と反対の薬理学的効果をもたらす薬剤(例えば、薬物、薬物、ホルモン又は酵素)として理解されるべきである。特に、化合物は、アゴニストの存在下で作用するが、その活性を低下させる場合は逆アゴニストであり;アンタゴニストは、アゴニストの活性を完全に遮断する化合物である。
【0133】
ヒトの等価用量
【0134】
本発明では、「ヒトの等価用量」の概念は、米国保健福祉省食品医薬品局医薬品評価研究センター(CDER)によって公開された「Guidance for Industry Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」、2005年7月 Pharmacology and Toxicologyに示されるように、ヒトにおいて、所与の用量で動物で同じ大きさの効果が予想される用量である。前記ガイドでは、動物で観察された用量(mg/kg)をヒトの等価用量(mg/kg)に変換するには、ラットで得られた結果を6.2で、マウスで得られた結果を12.3で割る必要がある。これらの値は、標準体重60kgのヒトに適用可能である。他の種又は標準体重範囲外の体重については、ヒトの等価用量(DEH)を以下の式によって計算することができる:DEH=動物の用量(mg/kg)x(動物の体重(kg)/ヒトの体重(kg))0.33。このガイダンスは、試験した濃度限界の10倍の安全範囲を十分であるとみなしている。
【0135】
CB受容体のリガンド
【0136】
本特許出願の文脈において、「CB受容体のリガンド」は、CB系及び/又はCB1若しくはCB2受容体と相互作用する化合物又は分子として理解されるべきである。
【0137】
CB受容体機能又はカンナビノイド系の調節
【0138】
本特許出願の文脈において、これは、CB受容体、特にCB1又はCB2の生化学的活性の変化をもたらす相互作用として「CB受容体機能を調節する」ことを意味する。アンタゴニスト又は逆アゴニスト効果がCB受容体で発生する場合、変化は正であり、アゴニスト効果がCB受容体で発生する場合、変化は負であると理解される。本特許出願で提示される試験の結果は、本発明の化合物が、おそらくCB1及び/又はCB2受容体のアロステリック調節剤として、CB1受容体及び/又はCB2受容体と相互作用及び/又はこれを調節することを示している。したがって、本発明の化合物は、CB1受容体又はCB2受容体を両方同時に調節すること、カンナビノイド系で相互作用する他の物質の結合又は作用を調節すること、カンナビノイド系での活性ペプチドの生成又は分解をもたらすプロテアーゼ又はペプチダーゼを調節すること、又は本発明の化合物で天然分子を保護することによって天然系を改善すること(すなわち、本発明の化合物はまた、前記受容体との結合と独立に、天然系を保護作用に導くことができるだろう)、又は前記効果の組み合わせによって、カンナビノイド系を調節するのに有用である。
【0139】
ムスカリン受容体の機能の調節
【0140】
本出願の文脈において、「ムスカリン受容体の機能を調節する」という用語は、学習及び記憶などの認知機能、ドーパミン放出の制御、自発運動活性の調節において重要な役割を果たすムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)の変化をもたらす相互作用として理解されるべきであり、その調節はアルツハイマー病の制御及び/又は乱用薬物への依存又は嗜癖の制御にも有用である。アンタゴニスト又は逆アゴニスト効果がムスカリン受容体で発生する場合、変化は正であり、アゴニスト効果がムスカリン受容体で発生する場合、変化は負であると理解される。本特許出願で提示される試験は、本発明の化合物がムスカリン受容体と相互作用及び/又はこれを調節することを示唆している。
【0141】
代謝機能の調節
【0142】
本出願の文脈において、この用語は、エネルギー及び/又は脂質代謝;動脈性高血圧、腸運動性の調節;免疫系;カルシウムサイクルのバランス、甲状腺、末梢器官ならびに生殖器官、脂肪組織、肝臓、筋肉及び消化管を含む組織に関連する状態の調節を含むと理解され、肥満、糖尿病、疾患又は免疫/炎症性障害、骨減少症、骨粗鬆症、がんの治療に有用である。これに関連して、本発明のペプチド性化合物はまた、過体重の予防;食欲の調節;満腹感の誘導;減量成功後の体重増加の予防;エネルギー消費の増加;審美的な体重減少;又は過食症を含む代謝障害を治療するための医薬組成物に有用である。
【0143】
神経調節剤
【0144】
本出願の文脈において、「神経調節剤」又は「神経調節剤」という用語は、脳、皮質、海馬、扁桃体、下垂体、視床下部活性;副腎の調節を含むニューロン/神経学的機能を調節することを意図している。神経調節には、病態生理学的過程につながる薬剤又は状態に対する神経保護の有益な調節が含まれる。神経保護剤又は化合物は、好ましくはしばしば症状の発症の何年も前に始まる疾患の前駆期の前(又は最中)に使用される。本発明では、神経調節剤は、本態性振戦、片頭痛、疼痛、神経障害性疼痛、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、不安、統合失調症若しくは双極性障害などの精神障害、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、自閉症などの先天性疾患を含む種々の神経学的状態又は疾患の治癒的又は予防的治療に潜在的に有用であり、発作及び/又は癲癇の発生ならびに神経興奮性の障害又は虚血、低酸素若しくは他の有害な状態によるニューロン病変に関連する他の臨床状態に関与する病態生理学的過程を修正するのにも潜在的に有用である。
【0145】
この特許出願では、本発明の化合物がカンナビノイド受容体に結合及び/又はこれを調節することが実証されているが、本発明の驚くべき医薬作用は、CB1及び/又はCB2及び/又はムスカリン受容体に対する作用に関連し得る、或いはおそらくはアデノシンの取り込み、GGPR55、PPARγ受容体、細胞内カルシウムレベル、カンナビノイド受容体とヘテロダイマーを形成するオピオイド受容体の調節、又はこれらの組み合わせの調節に関連し得る。したがって、これらの標的に関連する任意の治療適応症が、本発明から利益を得る可能性がある。
【0146】
本発明はまた、以下の条項によって定義される。
【0147】
上記のペプチド性化合物。
【0148】
診断用途のリガンド及び哺乳動物用の治癒的又は予防的医薬品から選択される医薬向けの製品を調製するための上記のペプチド性化合物の使用。
【0149】
AA1及び/又はAA2がF、W又はLである、上記の使用。
【0150】
前記ペプチド性化合物が、NFKF、NWKF、NLKF、NFKW、NWKW、NLKW、NKKL、NWKL、NLKL、VNFK、VNWK、VNLK、及び修飾形態、環状形態、アミド化、アルキル化、アルコキシ化、ハロゲン化、ヒドロキシル化、PEG化形態、他の官能基及びd-アミノ酸形態などの非天然を含むアミノ酸又はペプチドで修飾された形態、その塩;及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記の使用。
【0151】
前記ペプチド性化合物が、NFKトリペプチド、NFKFテトラペプチド、NFKLテトラペプチド、及びその修飾形態、環状形態、アミド化、アルキル化、アルコキシ化、ハロゲン化、ヒドロキシル化、PEG化形態、他の官能基及びd-アミノ酸形態などの非天然を含むアミノ酸又はペプチドで修飾された形態、その塩;及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記の使用。
【0152】
上記の化合物を含む医薬向けの化合物の調製における合成中間体。
【0153】
医薬及び/又は診断向けの他の化合物の調製における合成中間体としての上記の化合物の使用。
【0154】
修飾された上記の化合物。
【0155】
カンナビノイド受容体リガンド及び/又はムスカリン受容体を調製するための上記の化合物の使用。
【0156】
哺乳動物の診断向けの結合剤を調製するための上記の化合物の使用。
【0157】
代謝機能を調節する医薬組成物を調製するための上記の化合物の使用。
【0158】
鎮痛医薬組成物を調製するための上記の化合物の使用。
【0159】
免疫調節医薬組成物を調製するための上記の化合物の使用。
【0160】
哺乳動物の神経調節剤及び/又は神経保護医薬品を調製するための上記の化合物の使用。
【0161】
哺乳動物の治癒的又は予防的抗痙攣薬を調製するための上記の化合物の使用。
【0162】
哺乳動物の多発性硬化症の治癒的又は予防的治療用医薬品を調製するための上記の化合物の使用。
【0163】
薬学的に許容される担体と;有効成分として、上記の化合物とを含む、哺乳動物の代謝機能を調節するための医薬組成物。
【0164】
薬学的に許容される担体と;有効成分として、上記の化合物とを含む、哺乳動物の鎮痛医薬組成物。
【0165】
薬学的に許容される担体と;有効成分として、上記の化合物とを含む、神経調節及び/又は神経保護医薬組成物。
【0166】
薬学的に許容される担体と;有効成分として、上記の化合物とを含む、哺乳動物の発作の治癒的又は予防的治療用医薬組成物。
【0167】
薬学的に許容される担体と;有効成分として、上記の化合物とを含む、哺乳動物の多発性硬化症の治癒的又は予防的治療用医薬組成物。
【0168】
NFKトリペプチド、NFKFテトラペプチド、NFKLテトラペプチド又はこれらの組み合わせを含む医薬組成物。
【0169】
錠剤、錠剤、ゲル、経口液剤又はシロップ、カプセル剤、坐剤、注射液、吸入可能な形態又は粘着形態の上記の医薬組成物。
【0170】
上記のペプチドを投与することを含む、動物の代謝機能の治療調節剤。特にこの用途では、本発明のペプチドを、好ましくはその分子量が大きくなるように修飾して、その血液脳関門の通過を最小化又は防止する。
【0171】
上記の化合物を動物に投与するステップを含む、疼痛の治癒的又は予防的治療のための治療方法。
【0172】
上記の化合物を動物に投与するステップを含む、治癒的若しくは予防的神経調節及び/又は神経保護のための治療方法。
【0173】
上記の化合物を動物に投与するステップを含む、発作の治癒的又は予防的治療のための治療方法。
【0174】
上記の化合物を動物に投与するステップを含む、多発性硬化症の治癒的又は予防的治療のための治療方法。
【0175】
インビトロ及びインシリコ試験の結果は、本発明の化合物が医薬組成物の調製、それらの安定性、及び治療効果において利点を提供することを示した。
【0176】
本発明の化合物は、さらに線維形成又は原線維、ならびにその既知の変異体の技術的課題を引き起こすヘモプレシンよりもはるかに安定であることが分かった。
【0177】
哺乳動物のインビボ試験の結果は、低投与量で優れた治療効果を示し、有意な副作用の証拠はなかった。
【0178】
本発明のペプチド性化合物はまた、診断及び/又は治療用途に有用な他の化合物を調製するための適切な合成中間体であることが示された。本発明で行われた試験は、本発明の化合物が、診断用調製物又はキットに有用であるとして当業者に知られているビオチンで適切に修飾されることを示している。本発明のペプチド性化合物は、ビオチンによって修飾/保護されると、受容体の活性化/コンフォメーション変化に感受性の抗CB1抗体を用いた試験でCB1受容体に結合することも示された。本発明の別の目的は、カンナビノイド、オピオイド及び/又はムスカリン受容体の存在、量及び/又は局在化を診断する、ならびに他の化合物のこれらの受容体への結合を評価するインビトロ方法である。
【0179】
哺乳動物の本発明の化合物の投与に起因する神経調節剤/神経保護効果は、ピロカルピンなどの有害であることが知られている物質の投与に関連する症状、脳損傷及び死亡の減少及び/又は欠如によって証明される。多発性硬化症を再現するために最も一般的に使用されるモデルであるEAE/MOGモデルを使用した試験も、動物への本発明のペプチド化合物の投与が、神経損傷に本質的に関連する疾患である多発性硬化症の臨床症状を実質的に減少させることを示している。
【0180】
一実施形態では、本発明は、神経調節性、神経保護医薬品の調製及び/又は哺乳動物の発作の治癒的若しくは予防的治療のための前記化合物の使用を提供する。本発明の化合物の動物への投与は、神経調節、神経保護、抗痙攣及び/又は症候性多発性硬化症阻害活性を提供し;経口投与を実行可能にし;その投与及び/又は効果において治療製品の調製における追加の利点を哺乳動物に提供することに加えて、カンナビノイド物質の製造、貯蔵、輸送及び使用に起因する欠点を有さず伴いもしない。さらに、本発明の化合物の動物への投与は、その抗痙攣薬としての使用が、同発明者らの同時係属出願の主題であるヘモプレシンに対して優れた抗痙攣活性を含む重要な驚くべき技術的利点を提供する。
【0181】
本発明は、中枢神経系に関連するものを含む多種多様な医学的状態に有用な医薬組成物を調製するための化合物の使用を記載する。驚くべきことに、本発明の活性化合物はペプチド性又は主にペプチド性であるが、経口投与が動物において脳効果をもたらした。
【0182】
一実施形態では、本発明の組成物を用いたインビボ試験が、その神経保護活性に関して驚くべき結果を示した。本発明の組成物は、前もって動物に投与すると、ニューロンに有害であることが知られている物質のその後の投与に起因する損傷に対して驚くべき、強力で長期の保護を提供した。したがって、本発明の化合物によって提供される神経保護は、発作などの神経興奮性の障害に関連するものを含む種々の医学的状態の治療的代替物として特に有用である。
【0183】
種々の実施形態では、本発明の化合物を用いたインビボ試験が、その抗痙攣薬活性に関して驚くべき結果を実証した。本発明の化合物は、抗痙攣薬として使用すると、カンナビジオールなどの抗痙攣薬として作用することが知られているカンナビノイド化合物の優れた代替候補となるという利点をさらに提供する。カンナビジオールは、抗痙攣薬としてのその実証済みの効果にもかかわらず、その起源であるアサ(Cannabis sativa)植物により規制上の課題に直面している。本発明は、ペプチドに基づいている、すなわち、アサ(Cannabis sativa)の誘導体を使用していない、発作を患い、薬物を得ることが困難である患者のための追加の治療アプローチを提供する。さらに、結果は、本発明の化合物を抗痙攣薬として使用すると、数ある技術的利点の中でも、大きな治療効果、経口使用、低い投与量、虚脱及び鼻出血などの副作用の少ない発生を含む、使用における他の驚くべき技術的利点を提供することを示した。
【0184】
どのようにカンナビジオール(CBD)が発作を止めるかという分子機序はまだ完全には理解されていない。CBDが、CB1及びCB2との相互作用に加えて、アデノシン再取り込みを阻害し;5-HT 1Aアゴニストであり;GPR55(CB3)のアンタゴニストであり;PPARγ受容体アゴニストであり;細胞内Ca2+を増加させることが知られている。他方で、ヘモプレシンは、pERK1/2及びAKTを介した主な作用を有する。したがって、本発明のペプチド性化合物とCBDの両方が抗痙攣作用を有することは驚くべきことであり、その理由を説明することは困難な時期にある。
【0185】
実験的痙攣モデル試験では、哺乳動物への本発明の医薬組成物の投与が、参照化合物であるカンナビジオールの投与量と比較して、低投与量で優れた治療効果をもたらした。さらに、試験結果は、本発明の組成物が、とりわけ、大きな治療効果、経口使用の実行可能性、キャリアオイル(多くの場合副作用を引き起こす)の使用の欠如、低い投与量ならびに虚脱及び鼻出血などの副作用の少ない発生を含む、使用における驚くべき技術的利点を提供することを示した。
【0186】
インビボ比較試験は、本発明の化合物が、その抗痙攣薬としての使用が同じ発明者らの同時係属特許出願の主題であるヘモプレシンよりも優れた活性を有する、及び/又は必要な投与量が低いことを実証している。
【0187】
本発明の医薬組成物は、いくつかの技術的利点を有し、先行技術で利用可能な同類物の既知の望ましくない効果なしに、カンナビノイド系、カンナビノイド(CB)及び/又はムスカリン受容体の活性の調節に関連する疾患の治療にも有用である。
【0188】
さらに、以下の例で実証されるように、神経調節性、神経保護及び/又は抗痙攣薬物の調製における本発明の化合物の使用は、哺乳動物に経口投与可能な医薬品の送達を提供する。試験結果は、有意な脳作用を明らかにし、本発明の化合物の投与が、活性要素が血液脳関門を通過することを可能にすることを示唆した。したがって、結果は、本発明の化合物が標的に直接作用する、すなわち経口摂取中に分解しない活性物質であるか、又は化合物が、修飾化学で、標的に作用する前駆体である-この場合、プロドラッグとして特徴付けられるかどうかにかかわらず、本発明の化合物の使用を示す/支持する。哺乳動物の天然酵素は一般に消化管にある間にペプチド及びタンパク質を分解し、ペプチド活性を有する薬物はめったに生存可能であることが示されないため、経口投与によってさえ重要な効果を提供するこの特徴は特に望ましい。しかしながら、驚くべきことに、本発明の化合物は、経口投与した場合でさえも、強力な治療作用を提供し、この場合、さらに驚くべきことに、脳で作用する。
【0189】
したがって、本出願の主題ではない作用機序に関係なく、本発明の医薬組成物の経口投与は、重要な神経調節、神経保護、抗痙攣、疼痛調節及び症候性多発性硬化症を提供し、さらには死亡を回避さえし、解決された技術的課題の驚くべき規模及び関連性を明確に示している。
【0190】
本発明の医薬組成物は、上記の化合物と、薬学的に許容される担体も含み、場合により他の薬学的に許容される活性物質及び/又はその塩も含む。本発明の医薬組成物は、錠剤、ゲル、カプセル剤、経口液剤又はシロップ、坐剤、注射液又は医薬及び医学目的のための他の適切な投与形態で投与することができる。
【0191】
以下の例は、本発明を実施する種々の方法のいくつかを例示することのみを意図しており、その範囲を限定するものではない。
【0192】
比較試験により、本発明の化合物が、ヘモプレシンと比較して、極端な温度で優れたインビトロ安定性を示すことが示された。
【0193】
いくつかの例では、本発明の組成物の神経調節/神経保護/抗痙攣効果が、動物への経口投与によってインビボで評価された。本発明の医薬組成物は、他の化合物又は生理食塩水対照と比較して、本発明の化合物の様々な実施形態による経口用量の処置で哺乳動物(マウス(Mus musculus)又はマウス)に投与された。これらの実験では、試験化合物をピロカルピンの(腹腔内)投与の10分前に経口投与した。0.9%滅菌生理食塩水に溶解したピロカルピン塩酸塩(320mg/kg、Merck)をSE(癲癇重積状態)を誘発するために腹腔内投与した(Turskiら、1983)。Turskiモデルでは、神経毒性効果がピロの注射の約15~25分後に始まり、運動発作及び辺縁系発作が発生し、動物がSEを特徴付ける連続(慢性)発作の状態に発展する(Sanabria及びCavalheiro、2000)。
【0194】
比較試験はまた、本発明の化合物が、その抗痙攣薬としての使用が同じ発明者らの同時係属特許出願PCT/BR/2017050313の主題であるヘモプレシンと比較して、優れたインビボ治療活性を示すことを示した。
【0195】
重要なGPCR(カンナビノイド受容体)のリガンド/調節剤である本発明の化合物は、病理学的状態下でGPCR受容体活性を調節するのに、ならびに標的GPCRを調節するのに、及びカンナビノイド受容体と二量体化するGPCRを発現する細胞への他の標的治療分子実体の担体としても有用である。本発明の化合物は、受容体の活性化/調節されたコンフォメーションに選択的な抗体、特にモノクローナル抗体と組み合わせた療法においても有用である。このような療法は、高い特異性を付与するという利点を提供し、投与の用量も潜在的に減らす。
【0196】
例
例1.極端な条件下での安定性試験-ヘモプレシンに対する本発明の化合物の優位性
【0197】
この実施形態では、NFKF実施形態の本発明の化合物の安定性を、極端な条件下でヘモプレシン(Hp、PVNFKFLSH)の安定性と比較した。Hpは、原線維形成の課題、ならびにより多数のアミノ酸を有するその変異体を有することが知られている。NFKFとHpの試料を、24時間凍結することによる安定性の試験と100℃で10分間加熱することによる安定性の試験の2つの別々の試験にかけた。
【0198】
図1の結果は、HPLC(2.1mmの分析カラム、10~60%の勾配流動。溶媒Aは水/0.1%TFAであり、溶媒Bはアセトニトリル/0.075%TFAである)による測定によって証明されるように、24時間凍結することによって、Hpの有意な部分が失われる又は分解される(140から97、すなわち約31%)ことを示している。他方、NFKF実施形態の本発明の化合物は、はるかに安定したままであり、実質的に少ない分解(120から100、すなわち16.7%)を受けた。
図1の結果はまた、HPLCによる測定によって証明されるように、100℃で10分間加熱すると、Hpのさらにより有意な部分が失われる又は分解される(140から50、すなわち約64.3%)ことも示している。他方、NFKF実施形態の本発明の化合物は安定したままであり、統計学的に有意な分解を受けなかった。
【0199】
まとめると、これらのデータは、本発明の化合物が、極端な温度条件下ではるかに高い安定性及び低い分解を提供することを示しており、これによって本発明の化合物は有効成分の取得後段階と、医薬品の工業的製造、特に輸送ロジスティックチェーンの両方で操作、ガレヌス、医薬製剤及び医薬の安定性において支持される。データは、本発明の化合物を含有する医薬品の貯蔵寿命が、不安定性の課題を伴うHp又は他の活性物質を含有する同類物よりも長くなるはずであることを示唆している。
【0200】
例2.医薬組成物を調製するための化合物R
1
-N-AA
1
-K-AA
2
-R
2
の使用
【0201】
この実施形態では、化合物R1-N-AA1-K-AA2-R2が、化学合成によって合成されたテトラペプチドNFKFである。前記ペプチドは、2.7×10-4モル濃度の前記ペプチドと薬学的に許容される担体とを含む経口液体医薬組成物の調製に使用されてきた。この実施形態では、前記担体が生理食塩水であり、医薬組成物が経口使用のための溶液である。前記組成物を、以下の例3~8に従って哺乳動物へのインビボ経口投与に使用した。
【0202】
他の実施形態では、医薬組成物が、場合により他の有効成分を含む、錠剤、ゲル、経口液剤又はシロップ、カプセル剤、坐剤、注射液又は吸入可能な若しくは粘着形態である。
【0203】
例3.Hpを含む医薬組成物との化合物NFKFを含む比較医薬組成物-インビボ試験の結果
【0204】
この例では、抗痙攣薬としてのその使用が同じ発明者らの同時係属特許出願PCT/BR2017/050313であるヘモプレシン(Hp又はPVNFKFLSH)を含有する医薬組成物に対する本発明の組成物の効果を比較した。
【0205】
図2は、共にピロカルピンモデルにおける、ヘモプレシン試験結果と比較した本発明の化合物NFKFの試験結果を示している。最初の唾液分泌の発生についての対照に対する時間の割合を、以下の処置用量の投与で示す:対照(生理食塩水);ヘモプレシン(Hp又はPVNFKFLSH、0.551334μmol/kg);ヘモプレシン(0.91889μmol/kg);本発明のペプチドNFKF(0.540882μmol/kg);NFKF(0.901469μmol/kg);又はPEP-19(DIIADDEPLT、0.908117μmol/kg)。アステリスクは、統計学的有意性を示す:(*)対照に対してP<0.05;(**)対照に対してP<0.01;+記号はHp 0.91889μmol/kgに対してP<0.05を示す。
【0206】
一方で、ピロカルピンの投与によって誘発される唾液分泌は、ムスカリン受容体の変化を示している。したがって、本発明の化合物の前の投与で観察された最初の唾液分泌の発生についての時間プロファイルの実質的な変化は、ムスカリン受容体の直接的又は間接的な調節を示唆している。
【0207】
さらに、
図2の結果は、本発明の化合物の経口投与が、Hpの経口投与で観察されるよりも実質的に大きな実質的に高い唾液分泌時間調節活性を提供することを明確に示している。
【0208】
例4.Hpを含む抗痙攣医薬組成物との化合物NFKFを含む比較抗痙攣医薬組成物-インビボ試験の結果
【0209】
この例では、本発明の組成物の抗痙攣効果を、抗痙攣薬としてのその使用が同じ発明者らの同時係属特許出願PCT/BR2017/050313であるヘモプレシン(Hp又はPVNFKFLSH)を含有する医薬組成物と比較した。
【0210】
図3は、共にピロカルピンモデルにおける、抗痙攣薬としてのヘモプレシン試験の結果と比較した抗痙攣薬としての本発明の化合物NFKFの試験結果を示している。最初の発作発生についての(対照に対する)時間の割合を、以下の処置用量の投与で示す:ヘモプレシン(Hp又はPVNFKFLSH、0.551334μmol/kg);ヘモプレシン(0.91889μmol/kg);本発明のペプチドNFKF(0.540882μmol/kg);NFKF(0.901469μmol/kg);PEP-19(DIIADDEPLT、0.908117μmol/kg)及び対照(生理食塩水)。アステリスクは以下を示す:(*)対照に対してP<0.05;(**)対照に対してP<0.01;+記号はHp 0.91889μmol/kgに対してP<0.05を示す。
【0211】
さらに、
図3の結果は、本発明の化合物の経口投与が、Hpの経口投与で観察されるよりも実質的に大きな最初の発作の発生を調節する活性を提供することを明確に示している。例えば、Hpと比較して、半分の用量の本発明の化合物で同じ効果が観察される。
【0212】
例5.化合物NFKFを含む抗痙攣医薬組成物-インビボ試験の結果。
【0213】
この実施形態では、例2によって調製された本発明の組成物の抗痙攣効果を、本発明の組成物の事前投与及びその後の動物へのピロカルピンの投与によって評価した。
図4は、対照、カンナビジオール(30mg/kg)、本発明の化合物R
1-N-AA
1-K-AA
2-R
2(実施形態はNFKFテトラペプチド(500μg/kg)である)の投与による最初の唾液分泌の時間を示す、ピロカルピンモデルの結果を示している。
【0214】
図5は、カンナビジオール(30mg/kg)及び本発明のペプチドNFKF(500μg/kg)の投与で最初の発作が起こる時間を示す、ピロカルピンモデリングの結果を示している。アステリスクは以下を示す:
(**)対照に対してP<0.02;(***)対照に対してP<0.002。
【0215】
図4及び
図5に示される結果に加えて、重要な追加の技術的効果には、本発明の化合物NFKFによる処置を受けている動物では虚脱の発生も鼻出血の発生もないが、カンナビジオールで処置された動物群では、虚脱と鼻出血の両方が観察されたという所見が含まれる。したがって、これらは、本発明の化合物によって解決される追加の技術的課題である。
【0216】
例6.化合物NFKFを含む神経調節医薬組成物-インビボ試験の結果
【0217】
この実施形態では、例2によって調製された本発明の組成物の神経調節効果を、本発明の組成物の事前投与及びその後の動物へのピロカルピンの投与によって評価した。他の試験化合物も下記のように評価した。ピロカルピンの投与は、重度の脳損傷、神経毒性につながり、通常は動物の死に至る。この物質は、下記の実験で使用されたが、その有害な神経/脳効果が、本発明の組成物の事前投与によって阻害された:これらの実験に供された動物の大部分が、他の既知の物質で処置された動物群とは対照的に、脳病変に関連する症状を有さず、明らかな損傷なしに生存した。
【0218】
例2によって調製された本発明の組成物を、動物に事前投与した。
図6は、動物の生存/死亡プロファイルがNFKFの投与によって示される、ピロカルピンモデルにおけるNFKF実施形態の本発明の化合物による神経保護試験の結果を示している。A)では、対照(生理食塩水のみ)を投与した動物の生存プロファイルが示され;B)では、カンナビジオール30mg/kgを投与した動物の生存プロファイルが示され;C)では、NFKF500μg/kgを投与した動物の生存プロファイルが示され;D)では、全てのプロファイルが単一のグラフに示される。興味深いことに、NFKF 500μg/kgで処置した群では、2匹の動物しか死亡しなかった。NFKF群の残りの動物は合計3匹で1週間超生存していたが、実際には他の全ての動物が30分以内に死亡した。結果として、この群の平均生存時間は有意に異なり、他の群よりはるかに長かった。さらに、NFKF群(500μg/kg)とカンナビジオール(30mg/kg)を投与した群を比較すると、生存率は最初の群、すなわち、NFKF 500μg/kgを投与した群で、60倍低い相対濃度の化合物を使用した場合でさえ、3倍高い。
【0219】
上記の
図6に示される結果に加えて、重要な追加の技術的効果には、NFKF処置を受けている動物では虚脱の発生も鼻出血の発生もないが、カンナビジオールで処置された動物群では、虚脱と鼻出血の両方が観察されたという所見が含まれる。したがって、これらは、本発明の化合物によって解決される追加の技術的課題である。
【0220】
例7.化合物NFKF、NFKL又はNKFを含む神経調節医薬組成物-インビボ試験の結果
【0221】
例6で得られた驚くべき結果を考慮して、NFKF、NFKL及びNKF実施形態の本発明のペプチドを下記の実験で比較したところ、本発明の化合物のこれらの実施形態の事前投与によって、ピロカルピンの有害なニューロン/脳効果が阻害されたことが示される:これらの実験に供したある動物は、対照で処置された動物群とは対照的に、脳病変に関連する症状を有さず、明らかな損傷なしに生存した。本発明の組成物を、NFKF、NFKL及びNFKの効果を比較するために、適切な濃度補正を用いて例2に従って調製し、このような化合物を動物群に前もって投与した。
図7は、ピロカルピンモデルにおける神経保護試験の結果を示しており、動物の生存/死亡プロファイルが本発明の化合物の投与及びその後のピロカルピンの投与によって示される。NFKL 600μg/kgで処置した群では、NFKFで得られた結果よりも結果がさらに優れていたが、NFKで得られた結果はNFKFで得られた結果と同等であったことに留意することは興味深い。
【0222】
例8.化合物NFKF、NFKL、NFK、FKF、FKLを含む抗痙攣医薬組成物-インビボ試験の結果
【0223】
この実施形態では、本発明の化合物NFKF、NFKL、NFK、FKF、FKL、ならびにNF、FK、KF及びKLジペプチドの様々な実施形態の抗痙攣効果をピロカルピンモデルで評価した。
【0224】
表1は、試験したモデルにおける最初の唾液分泌の発生の時間データを示している。
【0225】
【0226】
図8は、対照又は試験化合物の投与後に最初の唾液分泌が発生する時間を示す、ピロカルピンモデルにおける本発明の化合物NFKF、NFKL、NFK、FKF、FKL、ならびにジペプチドNF、FK、KF及びKLの試験結果を示す。ピロカルピンモデルにおける最初の唾液分泌の発生を阻害又は遅延させたNFKの投与の結果は注目に値する。この結果は、学習及び記憶などの認知機能、ドーパミン放出の制御、自発運動活性の調節において重要な役割を果たすアセチルコリン(mAChR)などのムスカリン受容体機能の調節を示している。これらの受容体の調節は、アルツハイマー病の制御及び/又は薬物乱用の依存又は嗜癖の制御、ならびに老年期の認知症に対する保護に有用である。
【0227】
表2は、試験したモデルにおける最初のシグナルの発生の時間データを示している。
【0228】
【0229】
図9は、対照投与又は試験化合物後に最初のシグナルが発生する時間を示す、ピロカルピンモデルにおける本発明の化合物NFKF、NFKL、NFK、FKF、FKL、ならびにジペプチドNF、FK、KF及びKLの試験結果を示す。
【0230】
表3は、試験したモデルにおける最初の発作の発生の時間データを示している。
【0231】
【0232】
図10は、対照投与又は試験化合物後に最初の発作が発生する時間を示す、ピロカルピンモデルにおける本発明の化合物NFKF、NFKL、NFK、FKF、FKL、ならびにジペプチドNF、FK、KF及びKLの試験結果を示す。
【0233】
表4は、試験したモデルにおける死亡発生の時間データを示している。
【0234】
【0235】
図11は、対照化合物又は試験化合物の投与後に死亡が発生する時間を示す、ピロカルピンモデルにおける本発明の化合物NFKF、NFKL、NFK、FKF、FKL、ならびにジペプチドNF、FK、KF及びKLの試験結果を示す。
【0236】
上記の表1~表4のFKF、FKL、NF、FK、KF及びKL試験の場合、空白のフィールドは、同時に痙攣及び死亡した動物のものである。
【0237】
上記の例3~8で実施された試験の結果は、動物1kg当たり本発明の化合物500~1000μg程度の投与量範囲で有意なインビボ結果を示している。上記のマウスでの試験及びヒト等価用量への変換を考慮すると、ヒト1kg当たり40~80μgの本発明の化合物の投与量範囲でヒトにおいて同じ大きさの効果が予想され、ヒトへの投与について4~800μg/kgの濃度の安全性範囲が本発明で考慮される。
【0238】
例9.他の化合物の調製における合成中間体としての化合物R1-N-AA1-K-AA2-R2の使用
【0239】
本出願において、本発明のペプチド性化合物は、医薬/診断向けの他の化合物を得る際の合成中間体としても有用である。この及び他の実施形態では、化合物が「修飾ペプチド」と呼ばれ、非天然であり、人工的に修飾されている又は合成によって得られ、ハロゲン化物、環化、アミド化、アルキル化、アルコキシ化、ヒドロキシル化、PEG化、任意のアミノ酸の他の官能基、又はその塩形態、ならびにd-アミノ酸形態としての非天然を含むアミノ酸又はペプチドで修飾されたものを含む。この例の実施形態では、本発明のペプチド性化合物が、当業者に知られている技術を使用して、ビオチンなどの診断及び/又は治療用途に有用な分子種で修飾されている。ビオチンは、抗ビオチン抗体、又は西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素若しくは蛍光プローブを用いたアビジン/ストレプトアビジン検出戦略の使用を通して、本発明のリガンド標的、この場合はカンナビノイド及び/又はムスカリン受容体の検出に使用することができる。
【0240】
ビオチン化実施形態の本発明の修飾化合物を、コンフォメーション変化に感受性の抗CB1受容体抗体を使用するスクリーニング技術で使用した。
【0241】
CB1受容体活性化に感受性の抗体を作製し、その特異性によって特徴付けた。化合物をスクリーニングするために、線条体膜(1ウェルあたり5μg)をNUNC-Immuno 96ウェルプレート(Nalge-Nunc)に蒔き、室温で乾燥させた。膜をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、様々なリガンド(1μM)を用いて又は用いないでインキュベートし、抗体による受容体認識の程度をELISAよって測定した。対照に対するCB1受容体への結合%を示す試験の結果を表5に示す。
【0242】
【0243】
図12はこれらの結果を示し、本発明のペプチド性化合物がまた、診断及び/又は治療用途に有用な他の化合物を調製するための適切な合成中間体であることを確認している。本発明のペプチド化合物は、ビオチンによって修飾/保護されると、受容体の活性化/コンフォメーション変化に感受性の抗CB1抗体を用いた試験でCB1受容体に結合することも示された。
【0244】
この文脈において、本共同発明者は、μ及びδオピオイド受容体がCB1カンナビノイド受容体と二量体化し、ヘテロ二量体化が受容体機能の調節をもたらすことを既に示している(Guptaら)。さらに、他のCB1受容体結合物質を使用すると、明らかにそれらのコンフォメーション変化によって媒介されるμオピオイド受容体の認識が増加する。これらの所見は、CB受容体リガンドによって引き起こされるコンフォメーション変化がヘテロ二量体の受容体パートナーに影響を与え、これをコンフォメーション変化に感受性の抗体を使用して検出することができるという考えを支持している。したがって、この例の試験結果は、ヘテロ二量体を含むGPCR(Gタンパク質共役型受容体、又はG-タンパク質共役型受容体/GPCR)の機能を調節するタンパク質-タンパク質又はペプチド-タンパク質相互作用のインビトロ診断方法の概念を支持している。
【0245】
本例の結果は、カンナビノイド、オピオイド及び/又はムスカリン受容体の存在、量及び/又は局在化を診断する、ならびに他の化合物のこれらの受容体への結合を評価するインビトロ方法である本発明の目的の1つを支持する。
【0246】
前記方法は、本発明の場合により修飾された化合物を、カンナビノイド、オピオイド及び/又はムスカリン受容体を含有する生体試料と接触させるステップを含む。前記方法はまた他の分子実体のこれらの受容体への結合の同定及び/又は定量化に有用であり、前記視覚、光学、放射性、化学、分光学シグナル接続を検出するステップを含む。例としては、生化学、細胞化学、組織化学検査が挙げられる。本発明のリガンドはまた、その存在及び/又は量が本発明の化合物の投与によって調節される分子実体の造影剤及び非造影剤画像化試験、例えば、磁気共鳴分光法(MRS)を含む、インビボ診断及び/又は予後方法にも潜在的に有用である。このアプローチは、変性疾患、特に神経変性疾患の診断及び/又は予後に潜在的に有用である。
【0247】
例10.化合物NFKFとCB1受容体のインビトロ及びインシリコ結合/相互作用試験
【0248】
この例では、NFKFテトラペプチドである本発明の化合物R1-N-AA1-K-AA2-R2のインビトロ親和性プロファイルをカンナビノイド受容体CB1で評価した。
【0249】
この目的のために、結合技術を使用して、1μM及び10μMの濃度のカンナビノイドCB1受容体によるNFKFテトラペプチド(純度100%及びDMSO中のストック溶液10mMとして調製された粉末)の親和性を測定した。放射性リガンドアゴニストCP 55940に関連するヒト組換えCB1カンナビノイド受容体を使用してこの評価を行った
(IC 50(M)=1.1nM;Ki(M)=0.94nM;nH=1)。シンチグラフィー計数による検出(Munroら、1993)で、化合物非特異的WIN 55212-2(10mM)を使用して37℃で120分間のインキュベーションで、ヒトCB1受容体及び[3H]CP55940リンカー(0.5nM濃度;3.5dM Kd)を発現する組換えCHO細胞を使用して、インビトロ結合アッセイを行った。
【0250】
結果を、以下の式による特定の対照の結合の割合として表す:
【数1】
【0251】
また、本発明の化合物の存在下で得られた特定の対照の結合のパーセント阻害は以下である:
【数2】
【0252】
IC50値(特定の対照結合の最大阻害の半分を引き起こす濃度)及びHill(nH)係数を、Hill方程式を使用して反復の平均値で生成された競合曲線の非線形回帰によって決定した:
【数3】
【0253】
(式中、Y=特異的結合、A=曲線の漸近左、D=曲線の漸近右、C=化合物濃度、C
50=IC
50及びnH=曲線係数/勾配係数)。この分析は、Sigmaplot 4.0ソフトウェアによって生成されたデータとの比較によって検証されるHillソフトウェアを使用して実施した。阻害定数(Ki)は、Chen Prusoffの式を使用して計算した:
【数4】
【0254】
(式中、L=アッセイにおける放射性リガンドの濃度;KD=受容体に対する放射性リガンドの親和性)。グラフを使用してKDを決定する。
【0255】
50%超の阻害又は刺激を示す結果は、試験化合物の有意な効果を表すと考えられる。25%~50%の阻害又は刺激を示す結果は、試験化合物の低~中程度の効果を示す。25%未満の阻害又は刺激を示す結果は、軽微であると考えられ得る。50%以上の阻害を示す結果は、試験化合物の非特異的又はアロステリック効果を示す。
【0256】
試験した各濃度(1μM及び10μM)について2連で得られた結果を表6に示す。
【0257】
【0258】
最初の測定値を1mMで無視したとしても、驚くほど高い値のため、単独でとられた、1mMでの2回目の測定値のデータがなお効果を示すと考えられるだろう。
【0259】
結果は、NFKFが低濃度の場合にそれぞれの放射性リガンドの結合を調節する大きな力を有することを示しており、nMの範囲で効果が大きいことを示唆している。
【0260】
これらの結果は、NFKFテトラペプチドで証明された治療プロファイルに関連する可能性のある作用機序がCB1カンナビノイド受容体のアロステリック調節を含むことを示しており、驚くべき/予期しないインビボ試験結果(例3、4、5、6、7、8)、ならびに上記のインビトロ実験及び下記のインシリコ実験の結果と一致している。
【0261】
これらの実験データは、本発明の化合物がCB1受容体及び/又はその内因性リガンドと相互作用及び/又はその活性を調節することを示している。したがって、本発明の化合物は、とりわけ、食物摂取の制御、エネルギー及び/又は脂質の代謝、腸運動性の調節、免疫系、カルシウムサイクルバランスを含む種々の代謝機能で潜在的に有用である。カンナビノイド受容体は、皮質、海馬、扁桃体、下垂体、視床下部、副腎を含む脳で広く発現される。CB受容体、特にCB1は、甲状腺、生殖器官、脂肪組織、肝臓、筋肉及び消化管を含む多くの末梢器官及び組織で既に同定されている。これらの結果は、代謝機能の調節及び/又は神経調節における本発明の化合物の使用を支持する。
【0262】
カンナビノイド受容体1(CB1)は、ヒトの脳で最も発現しているGPCR(プロテインGの発現受容体)に相当し、一般に中枢神経系で高レベルに見られる(
図13)。これは、エンドカンナビノイドによって活性化され、疼痛及び炎症、多発性硬化症及び神経変性疾患(アゴニスト効果)及び肥満、肝線維症及びニコチン依存症などの種々の疾患の治療の有望な治療標的として同定されている(HUAら、2016)。
【0263】
図13は、GPCR、この場合はサブタイプ1のカンナビノイド受容体の三次元構造の概要を示している。7回膜貫通ヘリックス(I~VII)、細胞内ループ(ICL1及びICL2)及び細胞外ループ(ECL2及びECL3)。
【0264】
分子モデリングツールの使用を通して、本例では、本発明の化合物R1-N-AA1-K-AA2-R2のCB1結合部位での相互作用の様式を評価したが、その実施形態ではこれはテトラペプチドNFKFである。さらに、観察されたプロファイルを、カンナビジオール、リモナバン、AM6538などの他の既知の結合剤の相互作用様式と比較した。
【化1】
【0265】
NFKFテトラペプチドとCB1受容体の相互作用プロファイルのインシリコ試験を、リガンド構造の設計及び最適化から行った。最初に、Perceptaプログラムを使用して、血漿pH(pH=7.4)でのこれらのリガンドのイオン化状態を検証した。その後、Spartan v.16(Wavefunction,Inc.)でリガンド構造の構築を行い、引き続いて分子力学によるエネルギー最小化を行った。
【0266】
ドッキング試験のための結晶構造CB1の選択を、ヒト(Homo sapiens)種に属し、2.8Åの解像度を示すPDBコード5TGZで利用可能なデータから行った。前記構造は、データベース内の唯一の利用可能なCB1結晶に相当し、この特許出願の優先日で利用可能である。
【0267】
GOLD v.5.1の関数の検証及びドッキング試験の実施。最も安定した複合体を同定するために、GOLDプログラムで3つのスコアリング関数を検討した(ChemScore、Goldscore及びChemPLP)。GOLD v.5.5(CCDC)で分子アンカーリングを実現するために、共結晶化結合剤(AM6538)自体及びその6Å距離にある全てのアミノ酸を参照として使用して、活性部位の位置が必要であった。その後、PyMOL v.1.8.6.2(Schrodinger、LCC)での分子アンカーリング及び結果の分析。
【0268】
最初に、GOLD v.5.5のスコアリング関数を、実験結果と互換性のあるタンパク質結合複合体を予測する能力に従って評価した。このため、CB1受容体結合部位(PDB 5TGZ)で参照リガンド、AM6538を再ドッキングすることによって、3つのスコアリング関数(Goldscore、Chemscore及びChemPLP)を検証した。まず、ドッキングを水分子の非存在下で実施し、その後、結合部位に存在する水分子が結合剤の配向にどの程度影響するかを推定しようとして、水分子の存在下で同じ評価を行った。より高いスコアの複合体を考慮した、平均二乗偏差RMSDによって得られた結果を、表7で確認することができる。
【0269】
RMSDの計算のために、分子モデリング実験及び結晶学的構造の実験の結果の原子のペアを考慮及び比較する。したがって、これらの原子の距離間の平均平方根が計算され、偏差の値が得られる。偏差が小さいほど、結果間の近似が大きくなり、したがって、使用するのに最も適切な関数を示す(MAIOROV;CRIPPEN、1994;HILDEBRANDTら、2013)。
【0270】
【0271】
表7に示されるように、最低RMSD値を示し、ドッキング実験に最適であることが分かった関数は、結合部位に水分子が存在しないGoldscoreであり、このような分子がリガンドの様式に影響を及ぼさないことを示している。
【0272】
図14は、結晶学的構造複合体(PDB 5TGZ)と、検証された方法論を使用したAM6538レドッキング実験から得られた複合体の重なりを視覚的に示している。
【0273】
CB1のAM6538の再ドッキングから生じる複合体は87.39のスコアを獲得し、観察された相互作用プロファイルは文献(HUAら、2016)に記載されているものと一致し、Phe-102、Phe-170、Phe-174及びPhe-379、ならびにロイシン、メチオニン、システイン及びバリン残基などのアミノ酸残基とのいくつかの疎水性相互作用を有していた(
図15参照)。
【0274】
他方、リモナバン及びカンナビジオールについては、観察された相互作用プロファイルはAM6538と非常に類似しており、それぞれ、73.43及び54.91のスコアを示した(それぞれ
図16及び
図17)。
【0275】
本発明の化合物(NFKFテトラペプチド)の一実施形態のドッキング実験では、その構造を、Perceptaプログラムで血漿pH(pH=7.4)でのイオン化状態について分析したところ、以下に示される構造を示し、これをドッキング試験に使用した。
【化2】
【0276】
得られたCB1のNFKFテトラペプチドのドッキング複合体のスコアは100.66であり、参照リガンドによって達成されたスコアよりも実質的に高かった。この事実は、テトラペプチドと残基Ser-123、Thr-197、Ser-167及びSer-383との間に観察される追加の水素結合によって説明することができる。さらに、AM6538について観察された疎水性相互作用は、NFKF相互作用様式にも存在する(
図18)。
【0277】
まとめると、これらの実験の結果は、参照リガンドと同様の相互作用、ならびにドッキング試験で得られたより高いスコアをもたらした追加の相互作用を有する、NFKFについて観察された相互作用プロファイルが、NFKFテトラペプチドがサブタイプ1のカンナビノイド受容体の潜在的なリガンドであることを示唆していることを示している。
【0278】
例11.化合物NFKFとCB2受容体のインビトロ及びインシリコ結合/相互作用試験
【0279】
この例では、NFKFテトラペプチドである本発明の化合物R1-N-AA1-K-AA2-R2のインビトロ親和性プロファイルをカンナビノイド受容体CB2で評価した。
【0280】
この目的のために、結合技術を使用して、1μM及び10μMの濃度のカンナビノイド受容体CB2によるNFKFテトラペプチド(純度100%及びDMSO中のストック溶液10mMとして調製された粉末)の親和性を測定した。放射性リガンドアゴニストWIN 55212-2に関連する組換えヒトCB2カンナビノイド受容体を使用してこの評価を行った(IC 50(M)=1.5nM;Ki(M)=0.96nM;nH=0.9)。シンチグラフィー計数による検出(Rinaldi-Carmonaら、1996)で、非特異的化合物WIN 55212-2(5mM)を使用して37℃で120分間のインキュベーションで、ヒトCB2受容体及び[3H]WIN55212-2リンカー(0.8nM濃度;1.5nM Kd)を発現する組換えCHO細胞を使用して、インビトロ結合アッセイを行った。
【0281】
結果を、上記の例10に示されるように表す。
【0282】
試験した各濃度(1μM及び10μM)について2連で得られた結果を表8に示す。
【0283】
【0284】
結果は、NFKFが、試験した条件下でそれぞれの放射性リガンドの結合に有意な調節をもたらさなかったことを示している。
【0285】
これらの結果を例10に記載される実験の結果と併せて考えると、興味深い結論に達した。この受容体についてのドッキング実験の結果によって示されるように、NFKFペプチドはCB2カンナビノイド受容体の選択的リガンドを実証しているが、インビトロ試験の結果は、このテトラペプチドがこのカンナビノイド受容体に有意に結合できないことを示している。しかしながら、本発明の化合物とアロステリック型CB2受容体の相互作用を除外することはできない。したがって、試験結果は、試験した濃度では中程度であるが、CB2受容体の正の調節を示し、CB1について負でCB2について正の複合(アロステリック)調節効果を示唆している。
【0286】
さらに、インビトロ試験結果(例9、10及び/又は11)は、本発明の化合物を、例えば細胞及び/又は組織内の結合部位のその後の同定のための放射性標識又は発色団標識などの診断向けの結合剤として使用することができることを実証している。
【0287】
本発明の化合物R1-N-AA1-K-AA2-R2(NFKFテトラペプチドである)とCB2受容体の相互作用のインシリコ実験を可能にするために、CB2受容体の三次元モデルを、その後のドッキング実験のために、最初に構築した。
【0288】
この実施形態では、CB2の3Dモデルの構築を、この受容体のアミノ酸配列のUniProtデータベースでの検索から行った。配列選択に使用した基準は、種(ヒト(Homo sapiens))とした。したがって、分子モデリング試験を行うために選択したシーケンスは、コードP34972のシーケンスであった。
【0289】
次に、SwissModelサーバーのテンプレート同定ツールを使用して、タンパク質テンプレートを同定及び選択した。サーバーによって、ヒトCB2配列と最も高い構造的同一性を有すると同定された配列は、CB1受容体に対応するヒト(Homo sapiens)種に属するPDT 5TGZコード(HUAら、2016)の配列あった。
【0290】
次いで、UniProtデータベースにリンクされたClustalW2ソフトウェアを使用して標的及びテンプレート配列をアライメントして、配列を比較して、それらの間の同一性の%を確立した。ヒトCB2の3Dホモロジーモデルを、Swissモデルサーバーページで入手可能な自動モードツールを使用して構築し、生成されたモデルを検証するために、GMQEパラメータについて提示された値及びRamachandranグラフ分析を通してモデルの全体的な構造品質及び立体化学的品質を分析した。
【0291】
CB2についての3Dモデルを作成した後、NFKFテトラペプチド、ならびにカンナビジオール、リモナバン及びAM6538についてドッキング試験を実施した。
【0292】
UniProtでのヒトCB2受容体配列の同定及び選択、ならびにSwiss-Modelサーバー上のテンプレート同定ツールからのテンプレートタンパク質(PDBコード5TGZ)の同定後、プログラムClustalW2において2つの配列間でアライメントを行った。2つの配列間の同一性は46.18%であったため、以前公開された研究(MORGAN及びHURLEY、2015)で推奨されているように、比較モデリングをツールとして使用して、ヒトCB2受容体の3D構造を取得することが可能になり、相同性モデルを作成するための一次配列間の少なくとも30%の同一性の必要性が確認される。
【0293】
モデルの立体化学的品質を、Ramachandranグラフを使用して分析した(
図19B)。Ramachandranグラフは、x軸上の二面角Φ(角度C-N-Cα-C)とy軸上のΨ(角度N-Cα-C-N)を関連付ける数学モデルに相当する。このグラフは、角度ΦとΨの組み合わせの確率を表すことができる領域に分割される(RAMACHANDRAN;RAMAKRISHNAN;SASISEKHARAN、1963)。これらの領域は、「好ましい」、「許容される」、「寛大に許容される」及び「禁止」として分類される。
【0294】
ヒトCB2モデル用に構築されたRamachandranグラフは、最も好ましい領域にアミノ酸残基の約96%の存在を示し、許容される領域に残基の4%超の存在を示した。禁止領域にアミノ酸残基は見られず、作成されたモデルの立体化学的検証を示している。モデルの検証後、NFKFテトラペプチド、AM6538アンタゴニスト、カンナビジオール内因性リガンド及びリモナバンアンタゴニストのCB2でドッキング試験を行った。
【0295】
分析した全ての化合物について、試験で得られたスコアは、AM6538で61.53、NFKFテトラペプチドで72.33、カンナビジオールで43.31及び最後にリモナバンで57.40で、CB1について達成されたスコアより低かった。
【0296】
単純化された方法で、終点値をタンパク質とリンカーとの間で同定された相互作用の和とみなすことができるため、
図20~
図23に見られるように、CB1で観察される主な疎水性相互作用がCB2で維持されるが、結合部位での少ない数の相互作用によって低いスコアを説明することができる。
【0297】
また、NFKFテトラペプチドの場合、CB1で示された水素結合相互作用がCB2で発生せず、低いCB2スコアに寄与する(
図23)が、このペプチドはLys-192残基との別の水素結合を示したことに留意することも重要である。
【0298】
表9は、例10とこの例の両方のレシーバー(CB1とCB2)でのドッキング試験によって得られたスコアの比較を手短に要約している。
【0299】
【0300】
上記の例9、10及び/又は11に記載される実験的試験の結果により、試験された他の化合物について、Huaらの文献に記載されるCB1受容体結合部位でのアンタゴニストAM6538の相互作用様式の再現が可能になった。さらに、結果は、カンナビジオール及びリモナバンアンタゴニストと比較したNFKFテトラペプチドを用いた実験のドッキング方法論の検証を提供したので、CB1での相互作用プロファイルを予測することが可能である。
【0301】
CB2受容体の相同性による3Dモデルの構築及び検証も、このような受容体の結合部位で言及された全てのリガンドの挙動の可視化をもたらし、CB1で得られた結果との比較分析を提供した。
【0302】
要約すると、例9、10及び11のインビトロ及びインシリコ実験の結果は、本発明の化合物がCB1受容体リガンドであることを示している。さらに、NFKF化合物のあまり好ましくない相互作用がCB2受容体で証明され、選択性プロファイルの可能性を示した。例10及び11の実験結果、特に
図17及び
図23に示されるものは、NFKアミノ酸がC末端位置のアミノ酸FよりもCB1及びCB2の結合にはるかに強く関与していることを示しており、このトリペプチドは、このような受容体のリガンド/調節剤の潜在的な候補であることを示している。
図7に示されるインビボ試験の結果は、この記載と一致している。
【0303】
例12.本発明の化合物を含む鎮痛又は神経障害性疼痛調節医薬組成物-インビボ試験の結果
【0304】
本発明の化合物を、鎮痛剤又は神経障害性疼痛調節剤としても試験した。そのために、化合物PVNFKF、PVNFK、VNFKF、NFKFを疼痛閾値モデルで試験した。疼痛閾値は、本質的に記載されるように(Randall及びSelitto、1957)、圧力装置(Ugo Basile、イタリア)を使用して測定した。手短に言えば、増加する大きさの力(16g/s)をラットの右足の裏に印加した。動物が蹴って反応する場合に、この反応を誘発するのに必要な力(g)が疼痛の閾値である。抗侵害受容性活性を、対照動物と比較した疼痛閾値の増加として表した。
【0305】
この誘発疼痛モデルは、他の物質の同時投与を必要としない。本発明の化合物を、0.5~0.25mg/kgの用量で動物に経口投与し、生理食塩水を対照として使用した。
【0306】
表10は、疼痛閾値の強度結果(g)を示している。
【表10】
【0307】
図24は、疼痛閾値の結果である、動物の右足の裏に印加された力(g)を示している。化合物NFKFによって提供される鎮痛効果が有意で極めて明白であり、即時疼痛閾値と比較して、投与の3時間後に疼痛閾値を増加させた。さらに、化合物NFKFはPVNFKFよりも有意に実質的に優れていることが示され、PVNFKFと比較してNFKFを投与した動物では50.1%高い疼痛閾値を有していた。
【0308】
この文脈において、本共同発明者は、μ及びδオピオイド受容体がCB1カンナビノイド受容体と二量体化し、ヘテロ二量体化が受容体機能の調節をもたらすことを既に実証している(Guptaら)。さらに、他のCB1受容体結合物質を使用すると、明らかにそれらのコンフォメーション変化によって媒介されるμオピオイド受容体の認識が増加する。これらの所見は、CB受容体リガンドによって引き起こされるコンフォメーション変化がヘテロ二量体の受容体パートナーに影響を与え、治療効果をもたらし得るという考えを支持している。
【0309】
本例における本発明の化合物の明らかな鎮痛効果データは、本発明の化合物がモルヒネ、すなわちHpと組み合わせた低用量のモルヒネと組み合わせた場合にHpの効果と同様の効果、同じ鎮痛効果を提供することを示唆している。したがって、モルヒネと組み合わせた本発明の化合物の使用は、モルヒネが引き起こす嗜癖及び耐性に対する重要な影響を軽減することに寄与し得る。
【0310】
例13.化合物NFKFを含む多発性硬化症を治療するための医薬組成物-インビボ試験の結果
【0311】
多発性硬化症の正確な病因はまだ不明であるが、自己反応性Tリンパ球がその病態生理学において中心的な役割を果たすと推測されている。多発性硬化症の最も一般的な動物モデルは、多くの生理学的及び臨床的側面を共有しているため、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)である。ヒトの多発性硬化症の様々な臨床的、免疫学的及び組織学的な側面を反映したEAEのいくつかのモデルが存在する。マウスにおけるEAEの能動的誘発モデルは堅牢で、再現性のある結果を提供し、自己免疫性神経炎症を誘発したトランスジェニックマウスの使用を通した治療薬の検索に特に有用である。EAEモデルは通常、多発性硬化症の新規な治療戦略の有効性の証拠として使用される。
【0312】
この実施形態では、エンドペプチダーゼ24.15遺伝子のトランスジェニックマウスノックアウトを、本発明の化合物NFKF又は対照としての生理食塩水の投与と共に、MOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)で負荷した。疾患の誘発後、以下の表11に従って、症状の毎日の評価を行った。
【0313】
【0314】
図25は、ノックアウトマウスに生理食塩水(対照)又はNFKFを投与することによって、上記のモデルに従って行った実験の結果を示している。Aでは、MOGによるEAE誘発を受けた、野生型(WT)マウス、すなわち、正常マウスの臨床スコア曲線、;Bでは、遺伝子エンドペプチダーゼ24.15をノックアウトしたマウス、すなわちトランスジェニックの、多発性硬化症症状を生じやすいマウスの臨床スコア曲線を、MOG誘発を受けさせるEAEモデルで示している;Cでは、24.15ノックアウトマウス、すなわち、トランスジェニックの、EAEモデルで多発性硬化症の症状を生じやすいマウスを、MOG及びNFKF神経保護による誘導にかけた臨床スコア曲線。*WTに対してP <0.05 24.15 KO+NFKF;+WTに対してP<0.05 24.15 KO。結果は、本発明の化合物で処置された動物の臨床症状の印象的な減少を示し、これは、トランスジェニックで、エンドペプチダーゼ遺伝子24.15が欠損しているが、正常動物の挙動に非常に近い挙動を示した。これらの結果は、多発性硬化症の治癒的又は予防的治療のためのこの新しい治療戦略の有効性の「原理証明」を構成する。
【0315】
MOG誘発を受けた正常な動物は、インターフェロン及びインターロイキン17のレベルが上昇しており;ノックアウト動物では、これらのマーカー-共に炎症誘発性-が十分に増加していることにも留意すべきである。これらのデータは、NFKF処置トランスジェニック動物の応答タイミングプロファイル(
図25)と合わせて、免疫応答及び/又は抗炎症効果又は本発明の化合物に対する効果と一致している。これに関連して、カンナビノイド系は、その受容体を通した活性化がサイトカイン及びケモカインの転写及び産生に影響を及ぼす一連のシグナル伝達を誘因する種々の免疫細胞に関与していることが知られている。カンナビノイド受容体の調節は、種々の型の免疫細胞の移動活性を阻害することが知られている。さらに、免疫機能に対するカンナビノイド系の影響は、末梢及び中枢神経系内に位置する部位で発生することができ、このことが、文献が、カンナビノイド系が恒常性免疫バランスの微調整で重要な役割を果たすことを示唆している理由である。カンナビノイド系を調節することが示されている本発明の化合物は、この系を妨害することができ、種々の炎症、免疫、自己免疫状態で潜在的に有用である。
【0316】
本明細書に開示され、1つ又は複数の形態で例示される発明概念は、企業秘密として扱われ、この特許出願又はその優先権の提出までは先に開示されなかった。この企業秘密は、出願人の無形資産である。特許出願の考えられる将来の公開は、それ自体、第三者による使用の認可を構成するものではなく、以下としてのみ働く:(i)出願時の前記企業秘密の存在についての第三者に対する科学知識(ii)所有者の明確な表示;及び(iii)出願人によって既に保有されている同資産の開発への再投資を回避するために、開示される概念に基づいた新たな改善の開発を刺激すること。
【0317】
いかなる商業的利用にも所有者の認可が必要であり、不正使用は法律で定められた罰則を課すことが指摘される。これに関連して、本発明の概念の開示から、当業者は、上記で単に例示したものと同一ではない本発明の他の形態を考慮することができるが、商業的使用についての主張の仮説で、このような形態を添付の特許請求の範囲の範囲内にあるとみなすことができることが明示される。
【配列表】