(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】電荷キャリア取出インバースダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20230309BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20230309BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
H01L29/91 K
H01L29/06 301G
H01L29/06 301M
H01L29/06 301V
H01L29/91 C
H01L29/91 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020184607
(22)【出願日】2020-11-04
(62)【分割の表示】P 2018161815の分割
【原出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-08-27
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518270252
【氏名又は名称】イクシス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】IXYS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【氏名又は名称】大釜 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】キョンウク・ソク
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-066977(JP,A)
【文献】特開2014-011213(JP,A)
【文献】特開平10-093113(JP,A)
【文献】特開2016-025236(JP,A)
【文献】特表2013-545295(JP,A)
【文献】米国特許第8716745(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0178947(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06、29/861、29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体上面と、半導体底面と、周側縁とを有する半導体デバイスダイであって、前記
半導体デバイスダイは、
前記
半導体デバイスダイの前記半導体底面から上方に広がって、前記
半導体デバイスダイの前記周側縁に向かって横向きに外側方向にも広がっている、底側P型シリコン領域と、
前記底側P型シリコン領域上に配置されたN-型シリコン領域と、
前記半導体上面から前記N-型シリコン領域まで下方に広がっているN型空乏停止領域と、
前記半導体上面から前記N型空乏停止領域まで下方に広がっているP+型電荷キャリア取出領域と、
前記半導体上面から前記N型空乏停止領域まで下方に広がっているN+型コンタクト領域と、
前記半導体上面から前記N-型シリコン領域まで広がっているP型シリコン周側壁領域であって、前記P型シリコン周側壁領域は前記底側P型シリコン領域に接しており、それによりP型アイソレーション構造を形成し、また、前記P型シリコン周側壁領域は、前記N-型シリコン領域を側方から取り囲み、前記N-型シリコン領域を前記
半導体デバイスダイの前記周側縁から分離する、P型シリコン周側壁領域と、
前記N+型コンタクト領域及び前記P+型電荷キャリア取出領域上に配置される上側金属電極と、
前記
半導体デバイスダイの前記半導体底面に配置される底側金属電極と、
前記半導体上面から前記N-型シリコン領域まで下方に広がっているP+型浮遊電界リングであって、前記P+型浮遊電界リングは前記N型空乏停止領域の周囲を側方から取り囲むが、前記N-型シリコン領域
のN-型シリコンによって前記N型空乏停止領域から分離される、P+型浮遊電界リングと、を含む半導体デバイスダイであって、
上面視において、前記P+型電荷キャリア取出領域の総面積は前記N+型コンタクト領域の総面積よりも大きく、
上面視において、前記N+型コンタクト領域は島状であり、且つ前記P+型電荷キャリア取出領域によって側方から囲まれている、半導体デバイスダイ。
【請求項2】
前記底側P型シリコン領域は透明アノード領域であり、前記底側P型シリコン領域は、10ミクロン未満の厚さであり、前記底側P型シリコン領域は、3×10
17原子/cm
3未満のP型ドーパント濃度を有する、請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項3】
前記N+型コンタクト領域は複数のN+型コンタクト領域のうちの1つであり、前記複数のN+型コンタクト領域は2次元配列で配置されており、前記N+型コンタクト領域の各々は前記P+型電荷キャリア取出領域のP+型シリコンによって側方から囲まれている、請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項4】
前記半導体デバイスダイはディスクリートダイオードデバイスである、請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項5】
前記半導体デバイスダイは
、前記上側金属電極および前記底側金属電極以外に、他の金属電極を含まない、請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項6】
前記N型空乏停止領域には前記上側金属電極と接触している部分がない、請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項7】
前記半導体デバイスダイにはエピタキシャルシリコン材料である部分がない、請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項8】
前記底側P型シリコン領域はバルクウェハシリコン材料からなり、前記N-型シリコン領域はエピタキシャルシリコン材料からなる、請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項9】
前記
半導体デバイスダイの前記周側縁のシリコンのいくつかはN型シリコンである、請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項10】
前記
半導体デバイスダイの前記周側縁のシリコンにはN型シリコンである部分がない、請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項11】
前記P型シリコン周側壁領域はアルミニウムでドープされている、請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項12】
リング状N+型空乏停止リングであって、前記リング状N+型空乏停止リングは前記半導体上面から下方に広がり、前記リング状N+型空乏停止リングは前記P+型電荷キャリア取出領域の周囲を側方から取り囲み、前記リング状N+型空乏停止リングは前記N型空乏停止領域の境界を示す外側の周囲の境界線を有し、前記リング状N+型空乏停止リングには前記N-型シリコン領域のどのN-型シリコンにも接する部分がない、リング状N+型空乏停止リング、をさらに含む請求項1に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項13】
前記底側P型シリコン領域は、前記半導体デバイスダイの順方向伝導状態において、電子が前記N-型シリコン領域から前記透明アノード領域の全てを通り抜けて前記底側金属電極まで通るように電子を伝導させる手段である、請求項2に記載の半導体デバイスダイ。
【請求項14】
半導体上面と、半導体底面と、周側縁とを有する2電極インバースダイオードダイであって、前記
2電極インバースダイオードダイは、
P型シリコンの透明アノード領域であって、前記透明アノード領域は前記
2電極インバースダイオードダイの前記半導体底面から上方に広がり、前記透明アノード領域は10ミクロン未満の厚さであり、前記透明アノード領域は前記半導体底面に隣接してP型ドーパント濃度を有し、前記P型ドーパント濃度は3×10
17原子/cm
3未満である、P型シリコンの透明アノード領域と、
前記透明アノード領域上に配置されているN-型シリコン領域と、
前記半導体上面から前記N-型シリコン領域まで下方に広がっているP型シリコン周側壁領域であって、前記P型シリコン周側壁領域は前記透明アノード領域と接しており、それによってP型アイソレーション構造を形成し、前記P型アイソレーション構造は、前記N-型シリコン領域を側方から取り囲み、前記N-型シリコン領域を前記
2電極インバースダイオードダイの前記周側縁から分離し、また、前記P型アイソレーション構造は、前記N-型シリコン領域の下にもあり、前記N-型シリコン領域を前記半導体底面から分離する、P型シリコン周側壁領域と、
前記半導体上面から前記N-型シリコン領域まで下方に広がっているN型空乏停止領域と、
前記半導体上面から前記N型空乏停止領域まで下方に広がっているN+型コンタクト領域と、
前記N+型コンタクト領域上に配置され、前記N+型コンタクト領域と接している上側金属電極と、
前記
2電極インバースダイオードダイの前記半導体底面に配置される底側金属電極
と、 前記
2電極インバースダイオードダイが順方向伝導状態で動作しているときに、取り出された正孔が前記半導体上面の方に流れるように、前記N型空乏停止領域から連続的に正孔を取り出す、局在電荷取出電界を発生させる手段であって、前記取り出された正孔に起因する電荷は前記上側金属電極の外に流れ出す電流の形で前記
2電極インバースダイオードダイから放出される、手段と、を備え、
前記2電極インバースダイオードダイは、前記上側金属電極および前記底側金属電極以外に、他の金属電極を含まず、
局在電荷取出電界を発生させる前記手段は、P+型電荷キャリア取出領域を含み、
上面視において、前記P+型電荷キャリア取出領域の総面積は前記N+型コンタクト領域の総面積よりも大きく、
上面視において、前記N+型コンタクト領域は島状であり、且つ前記P+型電荷キャリア取出領域によって側方から囲まれている2電極インバースダイオードダイ。
【請求項15】
前記透明アノード領域は、前記
2電極インバースダイオードダイの前記順方向伝導状態において、前記N-型シリコン領域から透明アノード領域の全てを通り抜けて前記底側金属電極まで電子が通るように電子を伝導させる手段である、請求項14に記載の2電極インバースダイオードダイ。
【請求項16】
(a)半導体上面からN-型シリコン領域まで下方に広がっているN型空乏停止領域を形成する工程と、
(b)P+型電荷キャリア取出領域が前記N型空乏停止領域まで広がるように、前記半導体上面から下方に広がっているP+型電荷キャリア取出領域を形成する工程と、
(c)N+型コンタクト領域が前記N型空乏停止領域まで広がるように、前記半導体上面から下方に広がっているN+型コンタクト領域を形成する工程と、
(d)インバースダイオード構造の上側金属電極を形成する工程であって、前記上側金属電極は前記N+型コンタクト領域及びP+型電荷キャリア取出領域上に配置される、前記インバースダイオード構造の上側金属電極を形成する工程と、
(e)底側P型シリコン領域を形成する工程であって、前記N-型シリコン領域は前記底側P型シリコン領域上に配置されかつ前記底側P型シリコン領域と隣接し、前記底側P型シリコン領域は半導体底面から上方に広がり、前記底側P型シリコン領域は前記インバースダイオード構造のダイ領域の中央領域を前記ダイ領域の周囲部分から分離するP型アイソレーション構造の一部である、底側P型シリコン領域を形成する工程と、
(f)前記インバースダイオード構造の底側金属電極を形成する工程であって、前記底側金属電極は前記半導体底面に配置され、前記インバースダイオード構造の前記底側P型シリコン領域は透明アノード領域であり、前記底側P型シリコン領域は、10ミクロン未満の厚さであり、前記底側P型シリコン領域は、3×10
17原子/cm
3未満のP型ドーパント濃度を有する、前記インバースダイオード構造の底側金属電極を形成する工程と、を含み、
上面視において、前記P+型電荷キャリア取出領域の総面積は前記N+型コンタクト領域の総面積よりも大きく、
上面視において、前記N+型コンタクト領域は島状であり、且つ前記P+型電荷キャリア取出領域によって側方から囲まれている、インバースダイオード構造を製造する方法。
【請求項17】
前記ダイ領域はウェハの一部であり、さらに
(
g)工程(a)の後、工程(f)の前にウェハの裏面を薄化する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記P型アイソレーション構造は、さらにP型シリコン周側壁領域を含み、前記P型シリコン周側壁領域は前記半導体上面から前記N-型シリコン領域を通って前記底側P型シリコン領域まで下方に広がっている、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ウェハの、周端部がより厚く、中央部がより薄くなるように、
工程(
g)でウェハの裏面が薄化される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載される実施形態は、インバースダイオードデバイス(inverse diode devices)及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い逆降伏電圧特性(reverse breakdown voltage capabilities)を有する、商業的に利用できるパワーダイオードのほとんど全ての種類は、N-型底側カソードも有する。まれな例外として、イクシス社、カルフォルニア州、ミルピタス、バックアイドライブ1590、から商業的に利用可能な、いわゆる「インバースダイオード」又は「リバースダイオード(reverse diode)」がある。これらの普通ではないダイオードは、P型周側壁拡散領域だけではなく底側P型アノード領域も含む、P型アイソレーション構造(P type isolation structures)を有する。これらの普通ではないダイオードは、他種のダイオードと比較して、いくつかの優れた特性を有する。例えば、それらは、高い逆降伏電圧を有し得る一方で、同時に優れたダイナミックロバスト性を示す。このインバースダイオード構造を新しい用途領域に拡張する方法が求められている。
【発明の概要】
【0003】
新規インバースダイオードデバイスダイ(又は新規インバースダイオードデバイスチップ:A novel inverse diode device die)はわずかにドープされた底側P-型シリコン領域を有する。この底側領域は、そのようなP型ドーパント濃度を有し、それがいわゆる「透明アノード」として機能するような厚さを有する。インバースダイオードデバイスダイの中央活性領域は、P型シリコン周側壁領域によってダイ(又はチップ:die)の周側端から分離される。P型シリコン周側壁領域及び底側P-型シリコン領域は共に、P型アイソレーション構造を形成する。このP型アイソレーション構造のP型シリコンは、ダイの中央活性領域におけるN-型シリコンを、底側から底部を囲むだけでなく、側面からも完全に囲む。好ましい実施形態では、インバースダイオードデバイスダイはエピタキシャルシリコンを含まないが、むしろ全てのシリコン領域は浮遊帯バルクシリコンウェハ材料の領域である。一例では、わずかにドープされた底側P-型シリコン領域は、1)10ミクロン未満の厚さであり、2)3×1017原子/cm3未満の低いP型ドーパント濃度を有し、3)インバースダイオードデバイスダイの順方向伝導の間、N-型シリコン領域から、わずかにドープされた底側P-型シリコン領域を横切って下方に、底側アノード金属電極まで電子が再結合することなしに、電子が通ることを可能にする、「透明アノード」領域である。3×1017原子/cm3のP型ドーパント濃度は底側アノード金属電極に隣接している底側P-型シリコン領域と隣接した半導体底面で測定される。
【0004】
新規インバースダイオードデバイスダイは「高速」である(すなわち、新規「P+型電荷キャリア取出領域」の存在に起因して、及び透明アノードに起因して、小さいピークの逆回復電流(Irr)を有する)。インバースダイオードデバイスダイの順方向伝導の間、正孔は新規P+型電荷キャリア取出領域により作られる電場により連続的に取り出される。正孔は、上側カソード金属電極に向かって、上方にP+型電荷キャリア取出領域を通過する。さらに、電子はN-型ドリフト領域から取り出される。これらの取り出された電子は、わずかにドープされた底側P-型シリコン領域の全てを通り抜けて、下層のアノード金属電極まで、底側P-型シリコン領域で再結合することなしに、下方に通る。これらの2つの機構に起因して、順方向伝導の間、ダイオードのN-型ドリフト領域中の電荷キャリア(正孔及び電子の両方)の濃度は減少する。
【0005】
インバースダイオードデバイスダイにわたる電圧が、それから逆バイアス電圧に切り替わるとき、ピーク逆回復電流(Irr(peak))の大きさは、ダイオードが逆阻止状態の動作を開始し得る前に、除去される必要がある電荷キャリアの数がより少なくなることに起因して、小さくなる。有利なことには、インバースダイオードデバイスダイは、ライフタイムキラー、電荷トラップイオン又は原子、付加されるシリコン結晶欠陥、及び/又は他の再結合中心構造を含む必要なしに、高速である。インバースダイオードデバイスダイは同時に以下の全てを有する所望の特性を有する:1)高電流順方向伝導状態における低い順方向電圧降下(Vr)、2)高電流順方向電流状態から逆電圧状態に切り替わるときの小さいピークの逆回復電流(Irr)、3)高い逆降伏電圧(Vbr)という耐性、及び4)高電圧の静的逆阻止状態における小さい逆漏れ電流(Ilk)。小さい逆漏れ電流は、高いジャンクション温度下において特に重要である。
【0006】
1つの特定の例では、ウェハの薄化(wafer thinning)は、中央N-型ドリフト領域の厚さが25ミクロン越50ミクロン未満であるように用いられる(一例では、それは28ミクロンの厚さである)。この距離は、半導体底面の平面の法線に沿って測定され、底側P-型領域の上部からN型空乏ステッパー領域の底部までの直線に沿って広がっている。ウェハの薄化の使用により、極めて高い逆降伏電圧特性が必要とされないが、低い順方向電圧降下Vf及び小さいピークの逆回復電流Irrの両方を有するファストダイオードが望まれる一定の用途に適用されうる、新規のP+型電荷キャリア取出領域及び透明アノードの利点を可能にする。使用されるウェハの薄化は、従来のバックグラインド、又はTAIKOプロセスバックグラインドでもよい。
【0007】
別の実施形態では、新規のインバースダイオードデバイスダイは、ダイの中央活性領域中のN-型シリコン領域を完全に囲むP型アイソレーション構造を有する。インバースダイオードデバイスダイは、その上側に新規の「P+型電荷キャリア取出領域」を有するが、インバースダイオードデバイスの底側P型シリコン領域は透明アノードではない。
【0008】
別の新規態様では、ファストリカバリインバースダイオードが作られる半導体デバイス製造プロセスが開示される。ファストリカバリインバースダイオードは、底側透明アノードだけでなく、新規のP+型電荷キャリア取出領域も有する。本製造方法では、上側シリコン領域を形成するために、上側プロセスはウェハ上で行われる。また、上側金属電極もウェハ上に形成される。ウェハはその後底側から薄化される。底側薄化後、P-型底側領域(透明アノード領域)が形成される。底側金属化後、ウェハは複数の同じファストリカバリインバースダイオードに単一化される。
【0009】
さらに別の新規態様では、ファストリカバリインバースダイオードが作られる半導体デバイス製造プロセスが開示される。ファストリカバリインバースダイオードは、底側透明アノードだけでなく、新規のP+型電荷キャリア取出領域も有する。その方法では、ウェハは上側プロセスの前に(例えば通常のバックグラインド又はTAIKOプロセスグラインドによって)底側から薄化される。これにより、グラインドされた底側シリコン表面は、薄化工程のグラインドで導入される結晶欠陥を低減するように処理され得る。この処理は、グラインドされた底側シリコン表面の犠牲酸化を含み得る。この処理後、透明アノードは底側から注入される。上側領域の形成はその後行われる。上側及び下部側の金属化後、結果として得られるウェハは複数の同じファストリカバリダイオードに単一化される。透明アノードが薄く、裏側のウェハ薄化により導入される結晶欠陥が望まない逆漏れ電流の増加を引き起こすケースでは、そのような欠陥が透明アノードPN接合にあることを避けるために、グラインドされた底側表面を処理する能力は、特に利点がある。
【0010】
さらなる詳細及び実施形態及び方法は、以下の詳細な説明に記載される。この概要は本発明を規定すると主張していない。本発明は特許請求の範囲によって規定される。
【0011】
添付の図面では、同様の数字は同様の構成を示し、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、1つの新規態様に係るファストインバースダイオードデバイスダイ1の第1の実施形態の断面側面図である。
【
図2】
図2は、
図1のファストリカバリインバースダイオードデバイスダイのP+型電荷キャリア取出領域、N+型コンタクト領域、リング状N+型空乏領域、及びN型空乏停止領域(又はN型空乏ストッパー領域:N type depletion stopper region)のトップ-ダウン図である。
【
図3】
図3は、
図1のファストリカバリダイオードダイの様々な部分のドーパント濃度、ドーパント種、及び寸法を記載する表である。
【
図4】
図4は、順方向バイアス状況における、
図1の新規のファストリカバリインバースダイオードデバイスの動作を示す断面図である。
【
図5】
図5は、拡大したときの、
図4のインバースダイオードデバイス1の一部を示す。
【
図6】
図6は、透明アノードではないP++型シリコン層の図である。
【
図10】
図10は、ダイオードデバイスが順方向バイアス状態から逆バイアス状態に切り替わるときの、
図1の新規ファストリカバリインバースダイオードデバイスの動作を説明する断面図である。
【
図12】
図12は、比較のシミュレーション結果を記載する表である。
【
図14】
図14は、ファストリカバリインバースダイオードデバイスダイの第2の実施形態の断面側面図である。
【
図17】
図17は、1200ボルトの逆降伏電圧の定格値を有する新規ファストリカバリインバースダイオードデバイスのドーパント濃度、ドーパント種、及び様々な部分の寸法を記載する表である。
【
図18】
図18は、比較のシミュレーション結果を記載する表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
ここで、本発明の背景の例及びいくつかの実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。以下の明細書及び請求項において、第1の物体が第2の物体の「上に(over)」又は「上に(on)」配置されると言うとき、第1の物体は直接第2の物体の上に存在し得るか、又は第1と第2の物体の間に介在物が存在し得ると理解されるべきである。同様に、「上部に(top)」、「上側に(topside)」、「上に(up)」、「上方に(upward)」、「下に(down)」、「下方に(downward)」、「垂直に(vertically)」、「横向きに(laterally)」、「側面に(side)」、「下に(under)」、「裏面に(backside)」、「底部に(bottom)」及び「底側に(bottomside)」などの用語は、本明細書では、記載されている構造の異なる部分の間の相対的な方向を記載するのに使用され、記載されている全体構造は実際に3次元空間の何らかの方向を向き得ると理解されるべきである。明細書において、処理がウェハの底部に行われると記載されるとき、例えば、ドーパントが上方に拡散するように言われているときなど、ウェハはこれらの処理工程中に上下逆さまの方向を向いていてもよく、上部から規則正しく処理されてもよい、と理解される。以下の明細書において、P型シリコンは、概して、単にP型シリコンとして称されてもよく、又はそれがより特別にP++型シリコン、P+型シリコン、P型シリコン、又はP-型シリコンとして称されてもよい。P++、P+、P、P-の指示子は、おおよそ一般的な意味における、ドーパント濃度の相対的な範囲を指示すること意図する。例えば、P+型シリコンとして記載されるシリコンとP型シリコンとして記載されるシリコンとの間の濃度範囲が重複してもよい。P+型シリコンの底部におけるドーパント濃度範囲は、P型シリコンの上部のドーパント濃度範囲よりも低い。また、この特許文献において、N型シリコンを記載する同様の方法(ときどき、より特別にN+型シリコン、N型シリコン、又はN-型シリコンと称することに関して)も使用される。
【0014】
図1は、1つの新規態様に係るファストリカバリインバースダイオードデバイスダイ1の第1の実施形態の断面側面図である。ダイ1はディスクリートダイオードデバイスである。ダイ1は、長方形の上部表面、長方形の底部表面、及び4つの周側縁を有する。側端2及び3の2つは、断面側面図で示される。より詳細には、底側P-型シリコン領域4は、ダイの平面の半導体底面5から上方に広がっており、ダイの全4つの周側縁に向かって横向きに外側方向にも広がっている。断面図において、底側P-型シリコン領域4は周側縁2及び3に向かって広がって描かれている。
【0015】
N-型シリコン領域6は、
図1に示すように、底側P-型シリコン領域4の上に配置される。このN-型シリコン領域6は、N-ドリフト領域とも称するが、この特定の例において、底側P-型シリコン領域4と同じバルクウェハ材料からなる。インバースダイオード1の主なPN接合は、底側P-型シリコン領域4とN-型シリコン領域6の底部との間の接合であるので、N-型シリコン領域6はインバースダイオード1のカソードである。
【0016】
N型空乏停止領域7は、半導体上面8から下向きにN-型シリコン領域6まで下向きに広がっている。複数のN+型コンタクト領域は、図示されるように、半導体上面8から下向きにN型空乏停止領域7まで下向きに広がっている。
図1で示される特例の断面図に、3つのN+型コンタクト領域10~12がある。また、リング状N+型空乏停止領域31もある。P+型電荷キャリア取出領域9は、図示されるように、半導体上面8から下向きにN型空乏停止領域6まで下向きに広がっている。
【0017】
P+型電荷キャリア取出領域9は、図示されるように、半導体上面8から下向きにN型空乏停止領域6まで下向きに広がっている。
図2は、P+型電荷キャリア取出領域9及びN+型コンタクト領域10~12、リング状N+型空乏停止領域31、並びにN型空乏停止領域7のトップ-ダウン図である。
図2のトップ-ダウン図は、ダイの半導体上面8に沿った図である。
図1の断面図は、
図2の断面の線A-A’に沿っている。
図2のトップ-ダウン図から見られるように、9つのN+型コンタクト領域は、行と列の2次元配列に配置される。9つのN+型コンタクト領域の各々は、P+型電荷キャリア取出領域9のP+型シリコンによって、側方から囲まれる。リング状N+型空乏停止領域31は、P+型電荷キャリア取出領域9の外周に広がっている。
【0018】
9つのN+型コンタクト領域の深さ、リング状N+型空乏停止領域31の深さ、及びP+型電荷キャリア取出領域9の深さは同様である。この例では、これらの深さは約0.4ミクロン~約0.6ミクロンの範囲にある。N型空乏停止領域7の深さは、約1.6ミクロンであり、この深さはN-型領域6の上部からP+型電荷キャリア取出領域9の底部までで測定される。N型空乏停止領域7は、デバイスの所望の最大逆阻止電圧下で(領域4と6の間のPN接合からの)主な空乏領域が、P+型電荷キャリア取出領域9の底部とN型空乏停止領域7のN型シリコンとの間のPN接合にある空乏領域に達するまで上方には広がらないように、P+型電荷キャリア取出領域9よりも十分に薄く作られる。
【0019】
P+型フローティングフィールドリング13は、図示されるように、半導体上面8から下向きにN-型シリコン領域6まで下向きに広がっている。P+型フローティングフィールドリング13は、N型空乏停止領域7が位置するダイの中央領域の周囲を周辺的に取り囲む。
【0020】
ダイはまた、それが中央N-型シリコン領域6の周囲を取り囲むように、ダイの4つの周側縁から横向きに内側方向に広がっているP型シリコン周側壁領域14も有する。P型シリコン周側壁領域14は、底側P-型シリコン領域4と接し、その下向きに広がって、半導体上面8まで上向きに広がってもいる。P型周囲領域14と底側P-型シリコン領域4の組み合わせは、いわゆる「P型アイソレーション構造」(また、「P型アイソレーション領域」又は「P型分離拡散構造」又は「P型分離拡散領域」と呼ばれることもある)を形成する。この構造のP型シリコンは、N-型シリコン領域6を、底部からの底面だけでなく、両側面から周辺的に完全に囲む。一例では、P型分離拡散構造は、領域14を形成するために半導体上面8から下方にアルミニウムを拡散させることによって、及びP型ドーパントを有するウェハの底部をイオン注入し、その後レーザ加熱して領域4を形成することによってドーパントを活性化させることによって作られる。
【0021】
様々な適した異なるP型分離拡散構造及びそれらの形成方法について追加の情報として、1)Kelberlauらにより2005年8月30日に出願され、「順阻止デバイス及び逆阻止デバイスの製造方法」と題された、米国特許第7,442,630号、2)N. Zommerにより1995年7月31日に出願され、「逆阻止IGBTの製造方法」と題された、米国特許第5,698,454号、3)シュプリンガー社、ベルリン、ハイデルベルク、により公開されたJ.Lutzらによる「半導体パワーデバイス」の146-147頁(2011年)、4)イクシス社、米国、95035、カルフォルニア州、ミルピタス、により公開された「ダイオードチップ」と題されたデータシート、DWN17-18、5)Wisotzkiらにより2005年11月20日に出願され、「高電圧デバイス用トレンチ分離拡散」と題された、米国特許第9,590,033号、6)Mochizukiらにより1980年7月10日に出願され、「アルミニウム拡散半導体基板を有する半導体デバイスの製造方法」と題された、米国特許第4,351,677号、7)Greenにより2000年8月16日に出願され、「新規の同心周辺区域配列(Arrangement of Concentric Perimeter Zones)を有するサイリスタ」と題された、米国特許第6,507,050号、8)Kelberlauらにより2002年3月13日に出願され、「順阻止デバイス及び逆阻止デバイス」と題された、米国特許第6,936,908号、9)Neidigにより2005年3月14日に出願され、「プレーナ技術におけるパワー半導体部品」と題された、米国特許第7,030,426号、10)Veerammaらにより2003年8月27日に出願され、「パワーデバイスのための降伏電圧」と題された、米国特許第8,093,652号、11)イクシスセミコンダクター有限会社、ドイツ、D-68623、ラムパートハイム、エディソン通り15、による「プレーナ型のFRED、整流ダイオード及びサイリスタチップ」と題された2004年の記載、12)Wisotzkiらにより2012年2月20日に出願され、「薄化ウェハの凹型側面上のパワーデバイス製造」と題された、米国特許第8,716,067号、Veerammaにより2006年5月11日に出願され、「低周波及び高周波用途のための安定なダイオード」と題された、米国特許第8,716,745号、を参照。以下の文献の各々の全体の主題は本明細書に参照として組み込まれる:1)米国特許第7,442,630号、2)米国特許第5,698,454号、3)米国特許第9,590,033号、4)米国特許第4,351,677号、5)米国特許第6,507,050号、6)米国特許第6,936,908号、7)米国特許第7,030,426号、8)米国特許第8,093,652号、9)米国特許第8,716,067号、10)米国特許第8,716,745号。
【0022】
酸化膜層15は、図示されるように、半導体上面8上に直接配置される。酸化膜層15は、半導体上面8のカソードコンタクト部分を側方から囲む。上側金属電極16は、図示されるように、半導体上面8のカソードコンタクト部分上に直接配置される。この上側金属電極16は、インバースダイオードデバイスのカソード電極又はカソード端子である。底側金属電極17は、ダイの半導体底面5に直接配置される。底側金属電極17はダイの端部2からダイの端部3まで、半導体底面5中に広がっている。底側P-型領域4だけでなく底側金属電極17も、上側金属電極16より幅広い。底側金属電極17は、ダイオードデバイス1のアノード電極又はアノード端子である。上側パッシベーション層18は、パッシベーションが上側金属電極16の周端と重なり、かつ覆うように、酸化膜層15上に配置される。このダイ構造において、半導体底面5と半導体上面8との間の全てのシリコン領域は、バルクシリコンウェハ材料である。エピタキシャルシリコン材料はない。
【0023】
ウェハの製造後、ウェハはダイシングされる。その結果生じるダイは、ベアダイとして使用されてもよく、又は、3端子半導体デバイスパッケージにパッケージされてもよい。
【0024】
図3は、
図1のファストリカバリインバースダイオードデバイス1の様々な部分の、ドーパント濃度、ドーパント種、及び寸法を記載する表である。
【0025】
図4は、順方向バイアス状況における、
図1の新規ファストリカバリインバースダイオードダイの動作を示す断面図である。
図5は、拡大したときにおける、
図4のダイの一部を示す。順方向バイアス状態において、電流は、底部のアノード電極17から、デバイスを通って上向きに、上部のカソード電極16から外へ流れる。この時間の間、領域6及び7において高濃度の電荷キャリアが存在する。これは、高濃度の電子及び高濃度の正孔を含む。ダイオードにわたる電圧極性が逆阻止状態に素早く反転されるとき、これらの領域6及び7における多数の電子及び正孔を、ダイオードが阻止電流の流れを開始し得る前に、どうにかして取り除かなければならない。これらの電荷キャリアのいくつかは、電子及び正孔の再結合に起因して取り除くことができるが、一方で、その他は逆回復電流I
rrの形でダイオードダイから電荷キャリアが流れ出すことによって取り除くことができる。この逆回復電流のピーク値を低減するために、順方向バイアス状態の間、領域6及び7における電荷キャリア濃度は、
図4の新規インバースダイオードデバイスダイ1中で低減される。順方向バイアス状態において、空乏領域20はP+型電荷キャリア取出領域9とN型空乏停止領域7との間の境界線に存在する。この空乏領域20は、
図5に示される。空乏領域20により、空乏領域にわたる電界21が生じる。この電界21の方向は矢印21によって示される。空乏領域20の境界に、又はその近くに発生した正孔は、この局在電荷取出電界に起因して、矢印21の方向に空乏領域20を横切って掃き出される(swept)。
図5中の矢印22はそのような代表的な正孔23のパスを示す。正孔の取出は、ダイオードがその順方向伝導状態で動作するとき、連続的である。局在電荷取出電界21による連続的な正孔取出により、順方向バイアス状態におけるデバイスの領域7及び6中の正孔濃度は(P+型電荷キャリア取出領域がない別の方法で存在するであろう正孔の濃度と比較して)低下する。さらに、その区域で抽出された正孔に対応する、その区域の電子は、放出される傾向がある。電荷の中立は領域7及び領域6中で維持され、そのため電子はデバイスの底部から放出される。
図5中の矢印24はそのような代表的な電子25のパスを示す。また、この電子の流れは、ダイオードがその順方向伝導状態において動作するときにも連続的である。電子の流れにより、順方向バイアス状態におけるデバイスの領域7及び6中の電子の濃度は(P+型電荷取出領域がない別の方法で存在するであろう電子の濃度と比較して)低下する。領域7及び6中の正孔及び電子の数の低下に付随して、ダイオードが順方向伝導状態から逆電圧状態に素早く切り替わるときにダイオードから除去されるべき電荷キャリアはより少なくなる。
【0026】
図1の例では、電子はわずかにドープされたP-型シリコン領域4の全てを実際に通り、金属の底側アノード電極17に再結合することなく達する。底側P-型シリコン領域4は透明アノードである。順方向伝導の間の透明アノードの動作は2つの構造を比較することにより説明される。第1の構造は
図6に記載される。P++型領域は比較的薄い(例えば56ミクロン)。順方向伝導では、正孔は金属の底側アノード金属電極43から、P++型領域44を通って、N-型領域45まで通る。電子は反対方向に流れようとする。N-型領域45からの電子はP++型領域44まで、及び底側アノード金属電極43に向かって通る。それらは、P++型領域44まで通るが、ほとんど全ての電子はそれらが底側アノード金属電極43に達する前に、P++型領域44で再結合する。実際に、再結合率はP++領域44の左側でより高い。
図7は、
図6の構造中の電子の濃度を示す説明図である。線53は電子濃度である。縦線46はN-型領域45とP++型領域44との間のPN接合の場所を表す。縦線51はシリコンと金属の境界線の場所を表す。電子の濃度は、底側アノード金属電極43がPN接合から56ミクロンの距離に達する前に、ほとんど十分ゼロに降下したことに注意されたい。この結果、PN接合での電子濃度の線53の傾きは本質的にゼロである。
【0027】
第2の構造は
図8に記載される。P-型領域47は、わずかにドープされ、比較的薄い(例えば3ミクロン)。順方向伝導では、正孔は、第1の構造のように、金属の底側アノード金属電極48から、P-型領域47を通って、N-型領域49まで通る。正孔は反対方向に通る。N-型領域49からの正孔は、P-型領域47まで通るが、P-型領域47の濃度及び厚さに起因して、正孔は、正孔と再結合することなく、P-型領域47を通り、底側アノード金属電極48に達する。
図9は、
図8の構造中の電子の濃度を示す説明図である。縦線50はN-型領域49とP-型領域47との間のPN接合の場所を表す。縦線52はシリコンと金属の境界線の場所を表す。線54は電子濃度である。P-型領域47を通って左から右へ移動する電子濃度は、PN接合からの距離が長くなるにつれて減少するが、電子濃度はPN接合の3ミクロン内でまだゼロには達しなかった(又はちょうどゼロに達した)ことに注意されたい。底側アノード金属電極48はPN接合から3ミクロンの距離に位置するので、金属の底側アノード金属電極48での電子濃度の線54の傾きはゼロではない。従って、実質的な電子は金属の底側アノード金属電極48に達する。従って、
図8の構造は、それが順方向伝導においてこの挙動を有するので、「透明アノード」と言われる。一例では、
図1の底側P-型シリコン領域4はそのような透明アノードである。それは、順方向伝導の間、ダイオードデバイスのN-型領域6から電子を取り出すのに役立ち、それによって、順方向伝導の間、さらに領域6中の電荷キャリア濃度を低減する。
【0028】
図7及び
図9の図は、
図6及び
図8の単純化された構造をシミュレーションすることにより教示の目的のために用意されたものであると理解されるべきである。実際のデバイスの電子濃度は実際の構造のより複雑な性質に起因して、及びシミュレーションの限界に起因して、異なるプロファイルを有するであろう。現実のデバイス中の底側P-型シリコン領域4がダイオードデバイスの順方向伝導の間に電子を取り出す程度は、異なる領域の厚さ及びドーパント濃度を有する一連のダイオードデバイスを作ることによって、及びその結果できたデバイスを試験することによって、研究され、実験的に最適化され得る。
【0029】
図10は、ダイオードデバイスが順方向バイアス状態から逆バイアス状態に切り替わるときの、
図1の新規ファストリカバリインバースダイオードデバイス1の動作を示す断面図である。
図11は、拡大したときにおける、
図10のファストリカバリインバースダイオードデバイス1の一部を示す。底側P-型シリコン領域4とN-型シリコン領域6との間のPN接合に空乏領域26がある。ダイオードデバイスにわたるポテンシャルが反転されるとき、空乏領域26は広がる。それは下方に広がっているが、それは、N-シリコン領域6中のより低い濃度に起因してはるか上方に広がっている。この空乏領域26により、電界27が生じる。空乏領域26の広がり由来の正孔は、底側P-型シリコン領域4を通って、アノード電極27に向かって下方に移動する。
図10中の矢印29はこれらの正孔のうち代表的な1つのパスを表す。空乏領域26の広がり由来の電子は、N-型シリコン領域6を通って上方に移動する。
図10中の矢印28はこれらの電子のうち代表的な1つのパスを表す。
図11は、これらの飛び出した電子が、どのようにそれらの通り道上のN+型コンタクト領域を通ってカソード電極16まで上向きに通るかを示す。空乏領域26の広がりに起因する電荷キャリアがダイオードデバイスから一旦取り除かれ、及び(順方向バイアス状態における高濃度の電荷キャリアに起因して存在する)、領域6及び7中の過剰な電荷キャリアが、ダイオードデバイスから一旦取り除かれると、それから、逆回復電流I
rrの値が減少し始める。ダイオードデバイスはその後、ここでは動作のうちその「静的な逆阻止状態」として言われる動作を開始する。逆漏れ電流(I
lk)と称される、長期間の静的状態におけるダイオードデバイスにわたる逆極性に起因して流れる逆電流の量は、小さい。
【0030】
ファストリカバリダイオードを作る1つの従来の方法は、そのような電荷キャリアがあるダイオードの領域中に存在する電荷キャリアの寿命を短縮することである。キャリア寿命におけるこの短縮はいわゆる「再結合中心」をダイオードの中央ドリフト領域中のシリコンに導入することによって達成され得る。これらの再結合中心は概して、イオン注入を通してシリコン中の欠陥を形成することによって、及び/又はイオン又は原子をシリコン結晶格子に沈着させることによって、導入される。そのような再結合中心は概して、順方向バイアス状態から逆バイアス状態に切り替わる短時間の間、その時間にダイオード中に存在するいくつかの電子と正孔は再結合し得るので、有益である。もしこれらの電子と正孔が再結合する場合、その後それらは逆回復電流の形でダイオードから除去される必要はない。この結果、再結合中心に起因する電子と正孔の再結合は、不要な逆回復電流の値を低減するのに役立つ。しかしながら、この切り替わる時間が過ぎ、ダイオードがその静的な逆阻止状態で動作し始めた後、シリコン格子中のこれらの再結合中心及び欠陥は望ましいものではなく、ダイオードにリークを引き起こし得る。逆漏れ電流は、したがって、再結合中心及びシリコン欠陥が加えられなかった別の方法での逆漏れ電流と比較して増加する。しかしながら、
図1の本新規ファストリカバリインバースダイオードデバイスにおいて、ダイオードデバイスは、電荷キャリア濃度を低減するためにP+型電荷キャリア取出領域9及び透明アノード4を使用し、有利なことに、N-型シリコン領域のシリコンはライフタイムキラーである再結合中心を作り出すために注入される必要はなく、又はダメージを受ける必要がない。有利なことに、N-型シリコン領域6のシリコンにとどまる、特に追加の、再結合中心、又は「ライフタイムキラー」イオン、又は電荷キャリアトラップ原子はない。従って、
図1のファストリカバリインバースダイオードは、低い逆漏れ電流だけでなく、良好な逆回復特性の、両方を示す。
【0031】
この結果、
図1のファストリカバリインバースダイオードデバイスダイ1は、ダイオード接続PNP型バイポーラトランジスタとして想定され得る。PNPバイポーラトランジスタのエミッタは底側P-型シリコン基板である。PNPバイポーラトランジスタのコレクタは上側P+型電荷キャリア取出領域である。PNPバイポーラトランジスタのベースは、概して、N-型シリコン領域と、N型空乏停止領域と、上側N+型コンタクト領域と、を含む。PNPバイポーラトランジスタのコレクタ及びベースは共に金属カソード電極によって結合していることに注意されたい。全体のデバイスは、その結果、ある意味で、ダイオード接続PNPバイポーラトランジスタである。
【0032】
図12は、「デバイスA」と「デバイスB」になされた比較シミュレーションの結果を記載する表である。この比較シミュレーションはSynopsys Sentaurus Workbench(SWB)と呼ばれるデバイスシミュレータを用いて実行された。デバイスA及びデバイスBの構造は、2-D Sentaurus Structure Editor(SDE)を用いて最初に決められた。決められた構造は、次にworkbench tool suiteのデバイスシミュレータ(Sdevice)部分を用いてシミュレートされた。デバイスAは
図1で示す構造のインバースダイオードデバイスであるが、このインバースダイオードデバイスには、N型空乏停止領域7がなく、P+型電荷キャリア取出領域9がなく、及び透明アノード領域4がない。どちらかといえば、P+型電荷キャリア取出領域9及びN+型コンタクト領域によって占められる全体領域は、単一のN+型コンタクト領域である。一方、デバイスBは、P-型透明アノード領域4と、N型空乏停止領域7と、新規P+型電荷キャリア取出領域9とを完備する、
図1の新規ファストリカバリインバースダイオードデバイス1である。比較目的のために、両デバイスは同じダイサイズ(0.05平方センチメートル)を有するように作られた。比較目的のために、両デバイスを通って流れる初期順方向電流は同じ10.0アンペアに設定された。両デバイスは632ボルトのほぼ同じ逆降伏電圧V
brを有した。デバイスAが10アンペアの順方向伝導から100ボルトの逆電圧状態に100アンペア/マイクロ秒のdI/dtで切り替わるとき約46.9ナノ秒の時間T
zzを有するように、デバイスAでは(キャリアライフタイムを短縮するために)大変なライフタイム制御が用いられた。時間T
zzは、ダイオードを通る逆回復電流I
rrが(順方向バイアス状態から逆バイアス状態に移行するとき)まず負の電流に落ちたときから、それが再び上昇しゼロ電流に達するまでの時間としてここで定義される。逆回復電流のピークはこれらの2つのゼロが時間軸を交差する間で生じる。T
zzはこの逆流現象(reverse commutation episode)中に逆電流がゼロを交差する間の時間間隔である。この時間T
zzは、
図13の説明的なダイオード電流波形30で示される。比較目的のために、両デバイスを通るピーク逆回復電流I
rrは約-3.9アンペアで同一にされた。この比較テストの状況では、デバイスBはデバイスAよりもはるかに低い逆漏れを示したが、デバイスBはさらに約58.4ナノ秒のより長いT
zzを有した。デバイスBを通る逆漏れ電流I
lkは、450ボルトの静的な逆電圧下で約2.04マイクロアンペアであった一方で、デバイスAは同じ450ボルトの静的な逆電圧下で約666マイクロアンペアのより大きい逆漏れ電流I
lkを有するとシミュレートされた。従って、実質的に同じデバイス面積に対して、実質的に同じ順方向電流降下に対して、実質的に同じ逆降伏耐性に対して、及び実質的に同じピーク逆回復電流に対して、デバイスBのデバイスは、デバイスAのデバイスと比較して、より小さい逆漏れ電流を有する。
【0033】
図1のデバイスにはエピタキシャルシリコンはない。デバイスの終端領域にエピタキシャルシリコンと酸化膜/パッシベーションとの界面がないため、デバイスの長期動的耐久性(Long term dynamic ruggedness)が改善され得る。この構造を作るために、上側プロセスはN-型ウェハ上で行われる。上側のパッシベーション工程後、ウェハはバックグラインドにより薄くされる。P型ドーパントはウェハの底部の薄くされた側に注入され、P型ドーパントはレーザ加熱により活性化される。底側の金属化後、ウェハはダイシングされる。従って、
図1のデバイス中にエピタキシャルシリコンはない。別の例では、
図1のファストリカバリインバースダイオードデバイスダイはエピタキシャルシリコンを実際に有する。出発材料はP型ウェハである。N-型エピタキシャルシリコンはウェハ上で成長する。上側プロセス及び上側パッシベーション後、ウェハはバックグラインドにより薄くされる。底側金属化後、ウェハはダイシングされる。従って、この構造では、領域4以外のシリコン領域はエピタキシャルシリコンからなる。
【0034】
図14はファストリカバリインバースダイオードデバイスダイ33の第2の実施形態の断面側面図である。この構造33では、P型アイソレーション構造は、深いトレンチ型アイソレーション構造を含む。深い周囲トレンチ35は半導体上面8から下向きに、ドリフト層のN-型シリコンまで深く広がるように作られる。この深いトレンチは中央活性領域の周囲の全てに広がっている。その後、この深いトレンチ34はP型ポリシリコン35で満たされる。P型ポリシリコンの堆積後、ウェハの上部表面は平坦化される。平坦化後、上側のプロセスはパッシベーション工程まで実施される。バックグラインドは、その後底部からウェハを薄くするように行われる。底側にはその後、P型ドーパントが注入され、ドーパントはレーザ加熱により活性化される。底側の金属化が底側アノード金属電極から実施される。ウェハはダイシングされる。
【0035】
上述のいずれのファストリカバリインバースダイオードデバイスダイ構造でも、出発材料は上側のプロセス後バックグラインドにより薄くされたウェハであり得る。バックグラインドプロセスは、TAIKOグラインドプロセスと呼ばれることがある。例えば、米国特許第8,716,067号(その全体内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照。上側プロセス、上側酸化、上側金属化、及び上側パッシベーションが行われ、上側領域14、6、7、9、10、11、12及び13のコピーが各ダイ領域に形成された後、ウェハは底部から薄くされる。ウェハは通常、実際のグラインド工程の間、その底面側が上を向くように反転される。それにもかかわらず、グラインドされるのは裏面である(すなわちデバイス面ではない)ので、グラインドはバックグラインド又は裏面薄化と称される。
図16は薄くされた非結晶シリコンウェハ39の断面図である。トップ-ダウンの視点から、ウェハは円形である。薄くされたウェハ39はより薄い中央部分40及びより薄い周縁/周端部分41を有する。これらのP型アイソレーション構造の各々は、ウェハの異なるダイ領域を分離し、単離する。符号42は1つのそのようなダイ領域を識別する。もし必要ならば、底側P-型領域4は薄くされたウェハの底側までその後形成される。ウェハの底側はその後金属化される。ウェハはその後、各個別のダイ領域が
図1で示される形の別個のダイになるようにダイシングされる。薄くされたウェハの使用に起因して、結果として得られるリバースリカバリダイオードデバイスダイのN-型領域6の厚さは、28ミクロンまで低減され得る。この28ミクロンは底側P-型領域4の上部から、N型空乏停止領域7の底部までで測定される。適度な逆降伏電圧耐性だけが要求されるいくつかの用途では、(領域7の底部と領域4の上部との間の)デバイスのより薄いN-型領域により、ダイオードデバイスが、小さいピーク逆回復電流I
rrだけでなく、(順方向伝導の間、高い電流レベルで)低い順方向電圧Vfの降下の、両方を有することが可能になる。1つのそのような用途では、ブースト型力率改善(PFC)回路であり、その入力AC供給電圧は120VAC又は240VACのどちらかであり、出力電圧は400VDC以下のDC出力電圧である。そのようなケースでは、550ボルトの逆降伏耐性(定格降伏電圧)は適正であり、10%のマージンがある600ボルトの逆降伏耐性が選択される。そのようなダイオードデバイスでは、(TAIKOで薄くされたウェハの上部と底部の半導体表面の間の)好ましい厚さは約33ミクロンであり、そのような厚さ(例えば3ミクロン)である底側P-型シリコン領域4を有し、N-型領域6の厚さは28ミクロンである。N-型シリコン領域6の厚さは25ミクロン超50ミクロン未満で有り、好ましくは28ミクロンである。このように、新規P+型電荷キャリア取出領域の利点は、PFC回路用途に適用される。高温の用途では、逆漏れ電流が増加する。高温のPFCの用途では、デバイスBのダイオードはデバイスAのデバイスよりも低い逆漏れ電流をさらに有する上に、十分に高速である。
【0036】
図15A及び
図15Bは共に、1つの新規態様に係る方法100のより大きいフローチャート図を形成する。出発材料はN-型浮遊帯シリコンウェハ(工程101)である。アルミニウムはウェハの半導体上面8上に堆積される(工程102)。アルミニウムは、アルミニウムだけがウェハの各ダイ領域の周端部分を被覆するように、パターン化され、エッチングされる。ダイ領域の中央活性領域はアルミニウムで被覆されない。アルミニウムはダイ領域のP型周側壁領域14を形成する高温拡散工程でドライブインされる(driven in)。ウェハの全てのダイ領域は同様に同時に処理される。これらのダイ領域の1つだけのプロセスが以下の記載で詳しく述べられるが、それは、ウェハの全てのダイ領域は同様に同時に処理されると理解されるべきである。次に、N型空乏停止領域7は、それが半導体上面8からダイ領域のN-型シリコン領域のN-型シリコンまで下方に広がるように、形成される(工程103)。次に、N+型コンタクト領域(例えば、10、11及び12)及びリング状N+型空乏停止領域31は、それらが半導体上面8からN型空乏停止領域7のN型シリコンまで下方に広がるように、形成される(工程104)。次に、P+型電荷キャリア取出領域9及びP+型浮遊リング13は、それらが半導体上面8から下方に広がるように、形成される(工程105)。次に、酸化膜層は半導体上面8上に形成される(工程106)。この酸化膜層はパターン化され、エッチングされて、酸化膜層15を形成する。次に、金属は表面8のカソードコンタクト部分上に堆積される(工程107)。金属はパターン化され、エッチングされて、上側金属電極16を形成する。次に、上側パッシベーションは堆積され(工程108)、パターン化され、エッチングされて、パッシベーション層18を形成する。この時点で、ウェハの上側プロセスは完了する。ウェハキャリアを、デバイスウェハの上部に取り付けることができる。その後、ウェハは底側から薄くされる(工程109)。通常のバックグラインド又はTAIKO薄化を用いることができる。この裏面側のウェハの薄化により、ウェハの半導体底面5が形成される。次に、P型ドーパントは半導体底面5からイオン注入される。その後、これらのP型ドーパントはレーザ加熱により活性化され、それによりわずかにドープされた底側P-型領域4(すなわち、透明アノード)を形成する(工程110)。P型周側壁領域及び底側P-型領域は、接して結合し、P型アイソレーション構造を形成する。次に、金属は、半導体底面5に堆積され、それにより底部金属電極17を形成する(工程111)。その後、ウェハは、同一構成の複数の同一ファストリカバリインバースダイオードダイを形成するために、ダイシングされる(工程112)。方法100の工程は、フローチャートで示される順に実施される必要はないが、むしろ、工程は
図1に示す構造を結果として生み出す任意の順で実施され得る。
【0037】
図17は、1200ボルトの定格逆降伏電圧を有する新規ファストリカバリインバースダイオードデバイスの様々な部分の、ドーパント濃度、ドーパント種、及び寸法を記載する表である。10パーセントのマージンのために、インバースダイオードは1320ボルトの目標降伏電圧を有する。
【0038】
図18は、「デバイスC」及び「デバイスD」になされた比較シミュレーションの結果を記載する表である。デバイスC及びデバイスDは1200ボルトの定格逆降伏電圧を有する。デバイスCは
図1の構造のインバースダイオードデバイスであり、
図17のドーパント濃度及び寸法を有するが、このインバースダイオードデバイスには、N型空乏停止領域7がなく、P+型電荷キャリア取出領域9がなく、及び透明アノード領域4がない。むしろ、P+型電荷キャリア取出領域9及びN+型コンタクト領域で占められる全体領域は、単一のN+型コンタクト領域である。デバイスDは、P-型透明アノード領域4、N型空乏停止領域7、及び新規P+型電荷取出領域9を完備する、
図1の新規ファストリカバリインバースダイオードデバイスである。デバイスDは、
図17に記載されるドーパント濃度、及びドーパント種、及び寸法を有する。デバイスCと比較して、デバイスDは有利なことに、より低い逆漏れ電流I
lkだけでなく、より低い順方向電圧V
fの、両方を有する。
【0039】
図19A及び
図19Bは共に別の新規態様にかかる方法200のより大きいフローチャート図を形成する。上述に記載の方法100において、ウェハ薄化の工程が上側プロセス後に行われたのに対して、方法200では、ウェハ薄化の工程は全体のダイオード製造プロセスの初期に行われる。出発材料は、N-型浮遊帯ウェハである(工程201)。アルミニウムは上側に堆積され(工程202)、アルミニウムはマスクされ、エッチングされる。長いドライブイン拡散工程が実施され、深いP型周側壁領域を形成する。製造プロセスのこの初期段階で、ウェハは底側から薄くされる(工程203)。この薄化は、通常のバックグラインドか、又はTAIKOプロセスでもよい。犠牲酸化膜は上側及び下部側に形成される(工程204)。酸化膜のエッチング工程が行われ(工程205)、上側と底側の両方から犠牲酸化膜が除去される。その後、薄い酸化膜は、上側と底側の両方に形成される(工程206)。底側のホウ素の注入が薄い酸化膜を通してウェハの底側中に行われる(工程207)。上側は、マスクを有してリンで注入され(工程208)、N型空乏停止領域を形成する。ウェハの底側中に注入されたホウ素と、ウェハの上側中に注入されたリンは、その後ドライブインされる(工程209)。ドライブインは、例えば、110℃で1時間実施され得る。上側はマスクを有してリンが注入され(工程209)、N+型コンタクト領域を形成する。次に、上側は、ホウ素で、マスクを有して注入され(工程211)、P+型電荷キャリア取出領域を形成する。その後、ウェハは、例えば、950℃30分間加熱される(工程212)。酸化膜はウェハの上側に形成され(工程213)、エッチングされて(工程214)、カソードコンタクト領域を広げる(open up)。金属は、上側に堆積され(工程215)、マスクされ、エッチングされて、上側カソード金属電極を形成する。パッシベーション層は上側に堆積され(工程216)、マスクされ、エッチングされて、上側金属カソード電極を露出させる。金属は底側に堆積され(工程217)、底側アノード電極を形成する。その後、ウェハはダイシングされ、それによって複数の同一のファストリカバリインバースダイオードダイを形成する。この製造プロセスは有利なことに、ウェハの薄くされた底側シリコン表面の犠牲酸化を含む。この犠牲酸化は、バックグラインド工程により引き起こされるシリコンの転位及び欠陥の発生を低減するのに役立つ。従って、その後このシリコン中に形成される透明アノードは、より少ない転位及び欠陥を有するシリコン中に形成される。これは、透明アノードが、バックグラインドにさらされたが、犠牲酸化は有していなかったシリコン中に形成される場合と比較して、より低い逆漏れ電流を生じさせ得る。犠牲酸化に加えて、バックグラインドに起因した、底側シリコン中のシリコン結晶欠陥及び転位の発生をさらに減らすのに役立つ他のプロセス工程(例えば、シリコン層を底側の表面から除去するためのウェットエッチング工程)も実施可能である。ウェハキャリアは、方法200の様々な段階のときに、主要ウェハに取り付けられてもよく、取り外されてもよい。そのようなウェハキャリアは、ウェハハンドリングを容易にする技術分野において周知のように使用され得る。
【0040】
ある特定の実施形態は、説明目的のために上記に記載されているが、この特許文献の教示は、一般的な適用性を有し、上述の特定の実施形態に限定されない。インバースダイオードダイの例は半導体上面上に直接配置された酸化層を有すると上述に記載されているが、他の実施形態では、そのような酸化層はないが、むしろパッシベーション層が半導体上面上に直接配置されている。一例は1つのP+型浮遊リング13を含むと説明されているが、他の例では、追加の最外部のN+型チャネル停止リングだけでなく、多数のP+型ガードリングもあり得る。P+型電荷キャリア取出領域及びN+型コンタクト領域の厚さは説明された例では同じであるが、P+型電荷キャリア取出領域は、N+型コンタクト領域よりも薄くても厚くてもよい。2つの領域の形状は、ダイオードデバイスが特定の用途で性能を最適化するために変化してもよい。
図1のファストリカバリインバースダイオードデバイスダイは、透明アノードを有していても、有していなくてもよい。いくつかの例では、底側領域4のP型ドーパント濃度は低く、領域4は比較的薄い。他の例では、底側領域4のP型ドーパント濃度は高く、領域4は比較的厚い。領域4がより薄い例では、ウェハの薄化は実施されなくてもよい。例では、全シリコン領域はバルクウェハ材料からなると上述では記載されているが、他の例では、他のシリコン領域がエピタキシャルシリコンからなるのに対し、底側P型領域4はウェハ材料であってもよい。従って、記載された実施形態の様々な変更、適応、及び様々な特徴の組み合わせは、請求項に記載されるような発明の範囲から除外されることなく実施され得る。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
半導体上面と、半導体底面と、周側縁とを有する半導体デバイスダイであって、前記ダイは、
前記ダイの前記半導体底面から上方に広がって、前記ダイの前記周側縁に向かって横向きに外側方向にも広がっている、底側P型シリコン領域と、
前記底側P型シリコン領域上に配置されたN-型シリコン領域と、
前記半導体上面から前記N-型シリコン領域まで下方に広がっているN型空乏停止領域と、
前記半導体上面から前記N型空乏停止領域まで下方に広がっているP+型電荷キャリア取出領域と、
前記半導体上面から前記N型空乏停止領域まで下方に広がっているN+型コンタクト領域と、
前記半導体上面から前記N-型シリコン領域まで広がっているP型シリコン周側壁領域であって、前記P型シリコン周側壁領域は前記底側P型シリコン領域に接しており、それによりP型アイソレーション構造を形成し、また、前記P型シリコン周側壁領域は、前記N-型シリコン領域を側方から取り囲み、前記N-型シリコン領域を前記ダイの前記周側縁から分離する、P型シリコン周側壁領域と、
前記N+型コンタクト領域及び前記P+型電荷キャリア取出領域上に配置される上側金属電極と、
前記ダイの前記半導体底面に配置される底側金属電極と、を含む半導体デバイスダイ。
(態様2)
前記底側P型シリコン領域は透明アノード領域であり、前記底側P型シリコン領域は、10ミクロン未満の厚さであり、前記底側P型シリコン領域は、3×10
17
原子/cm
3
未満のP型ドーパント濃度を有する、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様3)
前記底側P型シリコン領域は、前記半導体デバイスダイの順方向伝導状態において、電子が前記N-型シリコン領域から前記透明アノード領域の全てを通り抜けて前記底側金属電極まで通るように電子を伝導させる手段である、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様4)
前記半導体上面から前記N-型シリコン領域まで下方に広がっているP+型浮遊電界リングであって、前記P+型浮遊電界リングは前記N型空乏層停止領域の周囲を側方から取り囲むが、前記N-型シリコン領域の全N-型シリコンによって前記N型空乏層停止領域から分離される、P+型浮遊電界リングをさらに含む、態様1に記載の半導体デバイス。
(態様5)
前記N+型コンタクト領域は複数のN+型コンタクト領域のうちの1つであり、前記複数のN+型コンタクト領域は2次元配列で配置されており、前記N+型コンタクト領域の各々は前記P+型電荷キャリア取出領域のP+型シリコンによって側方から囲まれている、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様6)
前記半導体デバイスダイは、前記P+型電荷キャリア取出領域のP+型シリコンによって側方から囲まれていない非N+型コンタクト領域を含み、前記半導体デバイスダイの前記非N+型コンタクト領域は前記N-型シリコン領域のN-型シリコンに隣接している、態様4に記載の半導体デバイスダイ。
(態様7)
前記半導体デバイスダイはディスクリートダイオードデバイスである、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様8)
前記半導体デバイスダイは2つ以下の金属電極を含む、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様9)
前記N型空乏停止領域には前記上側金属電極と接触している部分がない、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様10)
前記半導体デバイスダイにはエピタキシャルシリコン材料である部分がない、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様11)
前記底側P型シリコン領域はバルクウェハシリコン材料からなり、前記N-型シリコン領域はエピタキシャルシリコン材料からなる、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様12)
前記ダイの前記周側縁の前記シリコンのいくつかはN型シリコンである、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様13)
前記ダイの前記周側縁の前記シリコンにはN型シリコンである部分がない、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様14)
前記P型シリコン周側壁領域はアルミニウムでドープされている、態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様15)
リング状N+型空乏停止リングであって、前記N+型空乏停止リングは前記半導体上面から下方に広がり、前記リング状N+型空乏停止リングは前記P+型電荷キャリア取出領域の周囲を側方から取り囲み、前記N+型空乏停止リングは前記N型空乏停止領域の境界を示す外側の周囲の境界線を有し、前記N+型空乏停止リングには前記N-型シリコン領域のどのN-型シリコンにも接する部分がない、リング状N+型空乏停止リング、をさらに含む態様1に記載の半導体デバイスダイ。
(態様16)
半導体上面と、半導体底面と、周側縁とを有する2電極インバースダイオードダイであって、前記ダイは、
P型シリコンの透明アノード領域であって、前記透明アノード領域は前記ダイの前記半導体底面から上方に広がり、前記透明アノード領域は10ミクロン未満の厚さであり、前記透明アノード領域は前記半導体底面に隣接してP型ドーパント濃度を有し、前記P型ドーパント濃度は3×10
17
原子/cm
3
未満である、P型シリコンの透明アノード領域と、
前記透明アノード領域上に配置されているN-型シリコン領域と、
前記半導体上面から前記N-型シリコン領域まで下方に広がっているP型シリコン周側壁領域であって、前記P型シリコン周側壁領域は前記透明アノード領域と接しており、それによってP型アイソレーション構造を形成し、前記P型アイソレーション構造は、前記N-型シリコン領域を側方から取り囲み、前記N-型シリコン領域を前記ダイの前記周側縁から分離し、また、前記P型アイソレーション構造は、前記N-型シリコン領域の下にもあり、前記N-型シリコン領域を前記半導体底面から分離する、P型シリコン周側壁領域と、
前記半導体上面から前記N-型シリコン領域まで下方に広がっているN型空乏停止領域と、
前記半導体上面から前記N型空乏停止領域まで下方に広がっているN+型コンタクト領域と、
前記N+型コンタクト領域上に配置され、前記N+型コンタクト領域と接している上側金属電極と、
前記ダイの前記半導体底面に配置される底側金属電極であって、前記2電極インバースダイオードダイは2つだけの金属電極を有する、底側金属電極と、
前記ダイが順方向伝導状態で動作しているときに、取り出された正孔が前記半導体上面に流れるように、前記N型空乏停止領域から連続的に正孔を取り出す、局在電荷取出電界を発生させる手段であって、前記取り出された正孔に起因する電荷は前記上側金属電極の外に流れ出す電流の形で前記ダイから放出される、手段と、を備える2電極インバースダイオードダイ。
(態様17)
前記透明アノード領域は、前記インバースダイオードダイの前記順方向伝導状態において、前記N-型シリコン領域から透明アノード領域の全てを通り抜けて前記底側金属電極まで電子が通るように電子を伝導させる手段である、態様16に記載の2電極インバースダイオードダイ。
(態様18)
(a)半導体上面からN-型シリコン領域まで下方に広がっているN型空乏停止領域を形成する工程と、
(b)P+型電荷キャリア取出領域が前記N型空乏停止領域まで広がるように、前記上部半導体から下方に広がっているP+型電荷キャリア取出領域を形成する工程と、
(c)N+型コンタクト領域が前記N型空乏停止領域まで広がるように、前記半導体上面から下方に広がっているN+型コンタクト領域を形成する工程と、
(d)前記インバースダイオード構造の上側金属電極を形成する工程であって、前記上側金属電極は前記N+型コンタクト領域及びP+型電荷キャリア取出領域上に配置される、前記インバースダイオード構造の上側金属電極を形成する工程と、
(e)底側P型シリコン領域を形成する工程であって、前記N-型シリコン領域は前記底側P型シリコン領域上に配置されかつ前記底側P型シリコン領域と隣接し、前記底側P型シリコン領域は半導体底面から上方に広がり、前記底側P型シリコン領域は前記インバースダイオード構造のダイ領域の中央領域を前記ダイ領域の周囲部分から分離するP型アイソレーション構造の一部である、底側P型シリコン領域を形成する工程と、
(f)前記インバースダイオード構造の底側金属電極を形成する工程であって、前記底側金属電極は前記半導体底面に配置される、前記インバースダイオード構造の底側金属電極を形成する工程と、を含むインバースダイオード構造を製造する方法。
(態様19)
前記ダイ領域はウェハの一部であり、さらに
(f)工程(a)の後、工程(f)の前にウェハの裏面を薄化する工程を含む、態様18に記載の方法。
(態様20)
ウェハの、周端部がより厚く、中央部がより薄くなるように、(f)でウェハの裏面が薄化される、態様19に記載の方法。
(態様21)
前記P型アイソレーション構造は、さらにP型シリコン周側壁領域を含み、前記P型シリコン周側壁領域は前記半導体上面から前記N-型シリコン領域を通って前記底側P型シリコン領域まで下方に広がっている、態様18に記載の方法。
(態様22)
前記インバースダイオード構造の前記底側P型シリコン領域は透明アノード領域であり、前記底側P型シリコン領域は10ミクロン未満の厚さであり、前記底側P型シリコン領域は3×10
17
原子/cm
3
未満のP型ドーパント濃度を有する、態様20に記載の半導体デバイスダイ。