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特許7241077基材を熱可塑性コーティング材料で連続的にラミネートするための装置
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  • 特許-基材を熱可塑性コーティング材料で連続的にラミネートするための装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】基材を熱可塑性コーティング材料で連続的にラミネートするための装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/40 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
B29C65/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020531815
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018072604
(87)【国際公開番号】W WO2019038311
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】102017119576.9
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520064274
【氏名又は名称】クロムファス ギーリンクス ウント パルトナー ゲーベーエル
【氏名又は名称原語表記】Klomfass Gierlings & Partner GbR
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ギーリンクス,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】クロムファス,トルシュテン-デリック
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-204017(JP,A)
【文献】特公昭48-44951(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を熱可塑性コーティング材料(2)で連続的にラミネートするための装置であって、フィルム状の熱可塑性コーティング材料(2)の表面を溶融させるIR加熱装置(3)、前記IR加熱装置(3)の反対側にあって連続熱可塑性コーティング材料(2)の溶融表面と反対側の表面を積極的に冷却する冷却装置(1)、および連続基材ウェブ(4)と連続熱可塑性コーティング材料(2)とを一緒に押圧して、基材ウェブ(4)と熱可塑性コーティング材料(2)との間にホットメルト接着結合を生じさせる少なくとも1つのプレスローラアセンブリ(5)を備え、
前記冷却装置(1)は回転駆動冷却ローラとして設計され、その周囲に、
-熱可塑性コーティング材料(2)の供給装置(2a)、
-冷却ローラ上にある熱可塑性コーティング材料(2)の表面を加熱するための1つまたは複数のIR放射ヒータ(3)、
-基材ウェブ(4)の供給装置(4a)、
-基材ウェブ(4)を冷却ローラ(1)上にある熱可塑性コーティング材料の溶融表面に押し付けるための1つまたは複数のプレスローラアセンブリ(5)、および
-積層物(6)の取り外し装置(6a)
が順次に配置され、
熱可塑性コーティング材料(2)の冷却ローラ(1)への供給から積層物(6)の取り外しまでの間、前記熱可塑性コーティング材料(2)が冷却ローラ(1)の表面上で移動することなく静止するように構成されている、装置
【請求項2】
前記冷却ローラ(1)が、流体冷却剤を供給および排出するための接続部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記IR放射ヒータ(3)および前記プレスローラアセンブリ(6)がそれぞれ、冷却ローラ(1)の半周にわたって分布するように配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
熱可塑性コーティング材料(2)が前記冷却ローラ(1)の周りを通過するときに熱可塑性コーティング材料(2)の側縁を所定の位置に固定する固定装置が、熱可塑性コーティング材料の(2)側端に沿って冷却ローラ(1)の周囲に設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記固定装置がクリップまたはガイドベルトとして設計されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記基材ウェブ(4)の供給装置(4a)が接着剤供給部をさらに備えていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材を熱可塑性コーティング材料で連続的にラミネートするための装置に関し、その装置は、熱可塑性コーティング材料の表面を溶融させるIR加熱装置、加熱装置の反対側にあって連続熱可塑性コーティング材料の溶融表面と反対側の表面を積極的に冷却する冷却装置、および連続基材ウェブと連続熱可塑性フィルムウェブとを一緒に押圧して基材ウェブと熱可塑性材料との間に結合を生じさせる少なくとも1つのプレスローラアセンブリを備える。
【背景技術】
【0002】
そのような装置を使用して製造されるラミネートは、その製造に接着剤が使用されないかあるいは使用される接着剤の量を顕著に低減できるため、衛生製品、食品包装用フィルム、建設用フィルム、農業用フィルム、およびその他の技術ラミネートの製造に特に有利である。不織布材料は、特に衛生用品の基材として使用できるが、織物または編物や薄い発泡ウェブも使用できる。他の用途のために、例えばPE、CPPなどの熱可塑性プラスチック材料からなる他の基材も使用できる。
【0003】
前述のタイプの装置は、例えば、特許文献1から知られている。この既知の装置では、冷却装置は固定冷却板として設計されており、その上を連続熱可塑性フィルムウェブが案内され、フィルムウェブを下から冷却し、同時に加熱装置によって上から溶融する。この既知の装置の1つの問題は、連続フィルムウェブが、その表面の溶融のせいで、反対側の表面の冷却にもかかわらず、比較的不安定であることである。結果として、張力をかけられた熱可塑性フィルムウェブがプレスローラアセンブリに到達する前に歪み、したがって、対応する不規則性が最終製品に生じるリスクがある。
【0004】
原則的に同様の問題は、先行技術(特許文献2)によって知られている別の装置でも生じるが、これは、接着剤を用いて動作するが、同様に、その表面を溶融することによって結合される熱可塑性フィルムウェブの表面の活性化を提供する。この公知の装置では、ローラの周りを通過する支持コンベアベルトが、固定冷却板と冷却される熱可塑性フィルムとの間に配置されている。しかしながら、この支持コンベアベルトは冷却装置の冷却効果を著しく損ない、プレスローラアセンブリの前の領域で連続熱可塑性フィルムウェブを十分に安定化しない。この装置では、十分な接着剤を追加で使用できるため、フィルムウェブを均一に溶融することはそれほど重要ではない。
【0005】
冷却によって引き起こされる問題を解消するために、特許文献3から知られている装置は、反対側の表面を冷却することなく連続熱可塑性フィルムウェブの表面を溶融することを試みる。これを可能にするために、IRレーザを使用して表面を溶融し、反対側の表面の冷却を完全に省略している。この装置でも、当然ながら、表面で溶融されて弱くなっている張力をかけられた熱可塑性フィルムウェブが、プレスローラアセンブリに入る前に歪むリスクがある。さらに、特にこのフィルムウェブが最大350m/分の速度で通過することを考慮すると、1つのレーザービームの高度に集束したエネルギーを連続熱可塑性フィルムウェブの表面全体に均一に分配することは容易ではない。したがって、フィルムウェブの表面領域の熱膨張が異なるために不規則性が発生するリスク、または熱可塑性フィルムウェブが部分的に基材に十分に接着しないリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102013001826号明細書
【文献】国際公開第2016/026918号
【文献】欧州特許出願公開第3098060号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明が対処する課題は、プレスローラアセンブリに入る前に熱可塑性コーティング材料が歪まず、さらに基材ウェブへの熱可塑性コーティング材料の均一な接着が確保されるように、冒頭で述べたタイプの装置を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、冒頭で述べたタイプの装置から出発して、本発明は、冷却装置を回転駆動冷却ローラとして設計し、その周囲に次のものを順次に配置することを提案する:
-熱可塑性コーティング材料の供給装置、
-冷却ローラ上にある熱可塑性コーティング材料の表面を加熱するための1つまたは複数のIR放射ヒータ、
-基材ウェブの供給装置、
-基材ウェブを冷却ローラ上にある熱可塑性コーティング材料の溶融表面に押し付けるための1つまたは複数のプレスローラアセンブリ、および
-完成積層物の除去装置。
【0009】
本発明による装置において、熱可塑性コーティング材料は、歪みや変位が発生しないように、冷却ローラへの供給と冷却ローラからの完成積層物の除去の間の全期間中、移動することなくしたがって全く張力なしで、回転駆動冷却ローラの表面上にその表面全体にわたり静止する。熱可塑性コーティング材料の表面は、冷却ローラの周囲の比較的大きな角度経路(angular path)で溶融できるため、高いウェブ速度でも、溶融すべき表面の非常に均一な加熱を達成できる。
【0010】
基材ウェブを冷却ローラ上にある熱可塑性コーティング材料の溶融表面に押し付けるための複数のプレスローラアセンブリが、冷却ローラの周囲に、その回転方向に沿って基材ウェブの供給装置の後に設けられている場合、特に有利である。結果として、接触圧力は、1つのプレスローラアセンブリから次のプレスローラアセンブリへと徐々に増加し、それによって接着結合の改善をもたらす。
【0011】
本発明による装置の1つの好都合な実施形態は、冷却ローラが流体冷却剤を供給および排出するための接続部を備えていることを提供する。それによって、この液体冷却剤を温度制御することにより、冷却ローラの表面温度を正確に一定に保つことが可能である。
【0012】
また、熱可塑性コーティング材料の溶融と溶融コーティング材料に対する基材ウェブの押圧の両方がそれぞれ、冷却ローラの半周にわたって行われる場合も好都合である。これは、IR放射ヒータとプレスローラアセンブリをそれぞれ、冷却ローラの半円周上に分布させるように配置することで達成される。その結果、高ウェブ速度でも、両方のプロセスに十分な時間が利用できる。
【0013】
冷却ローラの表面上での意図しない変位から熱可塑性コーティング材料をさらに保護するために、冷却ローラの円周上の熱可塑性コーティング材料の側縁を固定する固定装置が、熱可塑性コーティング材料の側端に沿って冷却ローラの周囲に設けられることがさらに提供される。
【0014】
上記の固定装置は、例えばクリップまたはガイドベルトとして設計されてもよい。
【0015】
上述の溶融接着が十分であると考えられない場合、基材ウェブの供給装置は、最後に追加的に接着剤供給部を備えていてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態を、図面に基づいて以下においてより詳細に説明するが、その単一の図は本発明による装置の概略断面図である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による装置の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面において、冷却ローラは参照符号1で示されている。この冷却ローラは、例えば水または油などの冷却剤を供給および排出するための接続部(図示せず)を備えており、例えば前記冷却剤により、5℃~40℃の一定温度に保つことができる。
【0019】
冷却ローラ1は、回転矢印xの方向に回転駆動される。以下のものが、回転矢印xの方向に冷却ローラの周りに順次に配置されている:
-フィルムウェブの形態の熱可塑性コーティング材料2の供給装置2a、
-冷却ローラ1上にある熱可塑性フィルムウェブ2の表面を加熱するための複数のIR放射ヒータ3、
-基材ウェブ4の供給装置4a、この供給装置4aには、必要に応じて接着剤供給装置(図示せず)を追加で設けることが可能である、
-冷却ローラ1上にある熱可塑性フィルムウェブ2の溶融表面に基材ウェブ4を押し付けるための3つのプレスローラアセンブリ5、および
-基材ウェブ4とその上に積層された熱可塑性フィルムウェブ2とからなる積層物6の除去装置6a。
【0020】
本発明による装置は次のように動作する:
中央に配置された冷却ローラ1は、回転矢印xの方向に回転駆動される。連続熱可塑性フィルムウェブ2が、供給装置2aによって冷却ローラ1の表面に供給される。次いで、供給された熱可塑性フィルムウェブ2は、冷却ローラ1の回転により、冷却ローラ1の約半周にわたって配置されたIR放射ヒータ3を通過して案内される。その過程で、放射ヒータ3に面するフィルムウェブ2の表面は、溶融温度まで加熱される。対照的に、冷却ローラ1上にある熱可塑性フィルムウェブ2の表面は溶融せず、無傷のままである。熱可塑性フィルムウェブ2が、放射ヒータ3に沿った経路上で冷却ローラ1の表面に対して変位できないように、その側縁の領域に位置するクリップによってこの経路で冷却ローラ上の位置に固定される(図示されていない)。
【0021】
基材ウェブ4は、供給装置4aによって、最後の放射ヒータ3の後に供給され、次いで、プレスローラアセンブリ5によって冷却ローラ1上にある熱可塑性フィルムウェブ2の溶融表面に押し付けられる。プレスローラアセンブリ5は、冷却ローラ1の残りの半周にわたり分布され、1つのプレスローラアセンブリ5から次のプレスローラアセンブリ5へと、生じる接触圧力を増加させるように配置される。その結果、接着の質が大幅に向上する。
【0022】
ここで、基材ウェブとその上に積層された熱可塑性フィルムウェブからなる連続製品ウェブの形態である完成積層物6の除去装置6aは、最後のプレスローラアセンブリ5の後に配置される。
【符号の説明】
【0023】
1 冷却装置または冷却ローラ
2 熱可塑性コーティング材料
2a 熱可塑性コーティング材料の供給装置
3 IR加熱装置またはIR放射ヒータ
4 基材ウェブ
4a 基材ウェブの供給装置
5 プレスローラアセンブリ
6 積層物
6a 取り外し装置
図1