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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】車両用表示システム及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20230309BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20230309BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20230309BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20230309BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20230309BHJP
   B60Q 1/00 20060101ALI20230309BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60W50/14
F21V7/00 590
F21V14/04
F21V9/40 400
B60Q1/00 G
B60R11/02 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020535737
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2019030579
(87)【国際公開番号】W WO2020031915
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018147734
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018152957
(32)【優先日】2018-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 佳典
(72)【発明者】
【氏名】神谷 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】滝井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中林 政昭
(72)【発明者】
【氏名】伏見 美昭
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-069111(JP,A)
【文献】特開2005-219583(JP,A)
【文献】特開2010-072365(JP,A)
【文献】特開2017-206196(JP,A)
【文献】特開2017-026417(JP,A)
【文献】特開2017-056909(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60W 50/14
F21V 7/00-14/00
B60Q 1/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる車両用表示システムであって、
前記車両の内部に位置すると共に、前記車両の周辺環境を示す周辺環境映像を前記車両のウィンドウ上に表示するように構成された第1表示装置と、
前記車両又は前記車両の周辺環境に関連付けられた所定の条件に応じて、前記ウィンドウ上に前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げるように構成された表示制御部と
前記車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成された第2表示装置と、を備え、
前記表示制御部は、前記第2表示装置が前記路面に向けて前記光パターンを出射したときに、前記ウィンドウ上に前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げる、車両用表示システム。
【請求項2】
前記第1表示装置は、前記車両の進行方向における前記周辺環境映像を前記車両のフロントウィンドウ上に表示するように構成されている、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項3】
前記第1表示装置は、前記車両の全てのウィンドウ上に前記周辺環境映像を表示すると共に、前記全てのウィンドウの透過率を下げるように構成されている、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記車両の運転モードに応じて、前記ウィンドウに前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げる、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の車両用表示システム。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記車両の周辺環境の明るさに応じて、前記ウィンドウに前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げる、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の車両用表示システム。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記車両が現在走行している道路に応じて、前記ウィンドウに前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げる、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の車両用表示システム。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記車両の現在位置における天候に応じて、前記ウィンドウに前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げる、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の車両用表示システム。
【請求項8】
車両に設けられる車両用表示システムであって、
前記車両の外部の路面に向けて所定の情報を示す光パターンを出射するように構成された第1表示装置と、
前記車両の内部に位置すると共に、前記車両の走行に関連した車両走行情報が前記車両の外部の現実空間と重畳されるように前記車両走行情報を前記車両の乗員に向けて表示するように構成された第2表示装置と、
前記車両に関連した情報又は前記車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、前記第1表示装置および前記第2表示装置の一方に表示されている情報を前記第1表示装置および前記第2表示装置の他方に表示させるように構成された表示制御部と、を備える車両用表示システム。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記車両に関連した情報又は前記車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、前記所定の情報を前記第2表示装置に表示させる、請求項に記載の車両用表示システム。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記車両に関連した情報又は車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、前記車両走行情報を前記第1表示装置に表示させる、請求項に記載の車両用表示システム。
【請求項11】
前記表示制御部は、前記車両に関連した情報又は前記車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、前記所定の情報のうち一部の情報を、前記第2表示装置に表示させる、請求項に記載の車両用表示システム。
【請求項12】
前記車両に関連した情報は、車両の運転モードに関する情報である、請求項から11のうちいずれか一項に記載の車両用表示システム。
【請求項13】
前記車両の周辺環境に関連した情報は、周辺環境の明るさ情報、前記車両が現在走行している道路情報、または、前記車両の現在位置における天候情報である、請求項から11のうちいずれか一項に記載の車両用表示システム。
【請求項14】
請求項1から13のうちいずれか一項に記載の車両用表示システムを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用表示システム及び当該車両用表示システムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車の自動運転技術の研究が各国で盛んに行われており、自動運転モードで車両(以下、「車両」は自動車のことを指す。)が公道を走行することができるための法整備が各国で検討されている。ここで、自動運転モードでは、車両システムが車両の走行を自動的に制御する。具体的には、自動運転モードでは、車両システムは、カメラ、レーダ(例えば、レーザレーダやミリ波レーダ)等のセンサから得られる車両の周辺環境を示す情報(周辺環境情報)に基づいてステアリング制御(車両の進行方向の制御)、ブレーキ制御及びアクセル制御(車両の制動、加減速の制御)のうちの少なくとも1つを自動的に行う。一方、以下に述べる手動運転モードでは、従来型の車両の多くがそうであるように、運転者が車両の走行を制御する。具体的には、手動運転モードでは、運転者の操作(ステアリング操作、ブレーキ操作、アクセル操作)に従って車両の走行が制御され、車両システムはステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御を自動的に行わない。尚、車両の運転モードとは、一部の車両のみに存在する概念ではなく、自動運転機能を有さない従来型の車両も含めた全ての車両において存在する概念であって、例えば、車両制御方法等に応じて分類される。
【0003】
このように、将来において、公道上では自動運転モードで走行中の車両(以下、適宜、「自動運転車」という。)と手動運転モードで走行中の車両(以下、適宜、「手動運転車」という。)が混在することが予想される。
【0004】
自動運転技術の一例として、特許文献1には、先行車に後続車が自動追従走行した自動追従走行システムが開示されている。当該自動追従走行システムでは、先行車と後続車の各々が照明システムを備えており、先行車と後続車との間に他車が割り込むことを防止するための文字情報が先行車の照明システムに表示されると共に、自動追従走行である旨を示す文字情報が後続車の照明システムに表示される。
【0005】
また、路面上に図形や文字等の光パターンを照射(描画)することで、車両の情報を、運転者(乗員)自身または歩行者・対向車等の他者に対して通知・警告する車両用表示システムが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開平9-277887号公報
【文献】日本国特開2016-55691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両の周辺環境等の状況に応じて車両の周辺環境に対する乗員の視認性が低下することが考えられる。例えば、車両の現在位置における天候が大雨等の悪天候である場合では、車両のウィンドウを通じて乗員に直接的に視認される視界(以降、直接視界という。)では、車両の周辺環境が十分に視認できない可能性がある。この場合、直接視界では、車両の前方に存在する歩行者等の対象物の存在に乗員が気付かない虞がある。また、白色の光パターンが路面上に描画された場合、路面上に降り積もった雪により、乗員が路面に描画された光パターンを視認し難いことが想定される。
このように、車両の周辺環境等の状況に応じて車両の周辺環境に対する乗員の視認性が低下してしまう状況を改善する余地がある。
【0008】
本開示は、車両の周辺環境に対する乗員の視認性の低下を防止することが可能な車両用表示システム及び車両を提供することを目的とする。また、本開示は、乗員と車両との間のリッチな視覚的コミュニケーションを実現可能な車両用表示システム及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様の車両用表示システムは、車両に設けられており、
前記車両の内部に位置すると共に、前記車両の周辺環境を示す周辺環境映像を前記車両のウィンドウ上に表示するように構成された第1表示装置と、
前記車両又は前記車両の周辺環境に関連付けられた所定の条件に応じて、前記ウィンドウ上に前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げるように構成された表示制御部と、を備える。
【0010】
上記構成によれば、車両又は車両の周辺環境に関連付けられた所定の条件に応じてウィンドウ上に周辺環境映像が表示される一方で、ウィンドウの透過率が低下する。このように、上記所定の条件に応じて、乗員は、直接視界に代わって周辺環境映像を通じて車両の周辺環境を視認することが可能となり、車両の周辺環境に対する乗員の視認性の低下を防止することができる。
【0011】
また、前記第1表示装置は、前記車両の進行方向における前記周辺環境映像を前記車両のフロントウィンドウ上に表示するように構成されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、車両の進行方向における周辺環境映像が車両のフロントウィンドウに表示される。このため、例えば、車両が後進している場合には、車両の後方における周辺環境映像が車両のフロントウィンドウ上に表示される。このように、車両の周辺環境に対する乗員の視認性の低下を防止することができる。
【0013】
また、前記第1表示装置は、前記車両の全てのウィンドウ上に前記周辺環境映像を表示すると共に、前記全てのウィンドウの透過率を下げるように構成されてもよい。
【0014】
上記構成によれば、車両の全てのウィンドウ(特に、フロントウィンドウ、サイドウィンドウ及びバックウィンドウ)上に周辺環境映像が表示されると共に、全てのウィンドウの透過率が低下する。このように、乗員は、全てのウィンドウ上に表示された周辺環境映像を通じて車両の周辺環境を視認することが可能となり、車両の周辺環境に対する乗員の視認性の低下を防止することができる。
【0015】
また、車両用表示システムは、前記車両の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成された第2表示装置をさらに備えてもよい。
前記表示制御部は、前記第2表示装置が前記路面に向けて前記光パターンを出射したときに、前記ウィンドウ上に前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げてもよい。
【0016】
上記構成によれば、光パターンが路面に向けて出射されたときに、乗員は、直接視界に代わって周辺環境映像を通じて車両の周辺環境を視認することが可能となる。
【0017】
また、前記表示制御部は、前記車両の運転モードに応じて、前記ウィンドウに前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げてもよい。
【0018】
上記構成によれば、車両の運転モードに応じて、乗員は、直接視界に代わって周辺環境映像を通じて車両の周辺環境を視認することが可能となる。
【0019】
また、前記表示制御部は、前記車両の周辺環境の明るさに応じて、前記ウィンドウに前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げてもよい。
【0020】
上記構成によれば、車両の周辺環境の明るさに応じて、乗員は、直接視界に代わって周辺環境映像を通じて車両の周辺環境を視認することが可能となる。
【0021】
また、前記表示制御部は、前記車両が現在走行している道路に応じて、前記ウィンドウに前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げてもよい。
【0022】
上記構成によれば、車両が現在走行している道路に応じて、乗員は、直接視界に代わって周辺環境映像を通じて車両の周辺環境を視認することが可能となる。
【0023】
また、前記表示制御部は、前記車両の現在位置における天候に応じて、前記ウィンドウに前記周辺環境映像が表示されるように前記第1表示装置を制御すると共に、前記ウィンドウの透過率を下げてもよい。
【0024】
上記構成によれば、車両の現在位置における天候に応じて、乗員は、直接視界に代わって周辺環境映像を通じて車両の周辺環境を視認することが可能となる。特に、車両の現在位置における天候が悪天候である場合には、周辺環境映像を通じて車両の周辺環境に対する乗員の視認性の低下を防止することができる。
【0025】
本開示の一態様に係る車両用表示システムは、車両に設けられる車両用表示システムであって、
前記車両の外部の路面に向けて所定の情報を示す光パターンを出射するように構成された第1表示装置と、
前記車両の内部に位置すると共に、前記車両の走行に関連した車両走行情報が前記車両の外部の現実空間と重畳されるように前記車両走行情報を前記車両の乗員に向けて表示するように構成された第2表示装置と、
前記車両に関連した情報又は前記車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、前記第1表示装置および前記第2表示装置の一方に表示されている情報を前記第1表示装置および前記第2表示装置の他方に表示させるように構成された表示制御部と、を備える。
【0026】
上記構成によれば、表示制御部は、車両に関連した情報又は車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、第1表示装置および第2表示装置の一方に表示させている情報を、第1表示装置および第2表示装置の他方に表示させる。このため、乗員が第1表示装置または第2表示装置により表示されている情報を認識することが困難である場合には、その情報を他方の第2表示装置または第1表示装置に表示させることができる。これにより、車両によって提示される情報に対する乗員の視認性をさらに向上させることが可能となる。このように、乗員と車両との間のリッチな視覚的コミュニケーションを実現可能な車両用表示システムを提供することができる。
【0027】
また、前記表示制御部は、前記車両に関連した情報又は前記車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、前記所定の情報を前記第2表示装置に表示させてもよい。
【0028】
上記構成によれば、表示制御部は、車両に関連した情報又は車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、所定の情報を第2表示装置に表示させる。このため、乗員が第1表示装置により表示されている情報を認識することが困難である場合には、その情報を第2表示装置に表示させることができる。これにより、車両によって提示される情報に対する乗員の視認性をさらに向上させることが可能となる。
【0029】
また、前記表示制御部は、前記車両に関連した情報又は車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、前記車両走行情報を前記第1表示装置に表示させてもよい。
【0030】
上記構成によれば、表示制御部は、車両に関連した情報又は車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、車両走行情報を第1表示装置に表示させる。このため、乗員が第2表示装置により表示されている情報を認識することが困難である場合には、その情報を第1表示装置に表示させることができる。これにより、車両によって提示される情報に対する乗員の視認性をさらに向上させることが可能となる。
【0031】
また、前記所定の情報は、複数の情報を含み、
前記表示制御部は、前記車両に関連した情報又は前記車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、前記所定の情報のうち一部の情報を、前記第2表示装置で表示させてもよい。
【0032】
上記構成によれば、表示制御部は、車両に関連した情報又は車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、所定の情報のうち一部の情報を第2表示装置に表示させる。このため、第1表示装置により表示されている情報のうち乗員が認識することが困難である情報を第2表示装置に表示させることができる。これにより、車両によって提示される情報に対する乗員の視認性をさらに向上させることが可能となる。
【0033】
また、前記車両に関連した情報は、車両の運転モードに関する情報でもよい。
【0034】
上記構成によれば、表示制御部は、車両の運転モードに基づいて、第1表示装置および第2表示装置の一方に表示させている情報を、第1表示装置および第2表示装置の他方に表示させる。このため、運転モードのレベルに応じて表示装置の切替えを行うことができる。
【0035】
また、前記車両の周辺環境に関連した情報は、周辺環境の明るさ情報、前記車両が現在走行している道路情報、または、前記車両の現在位置における天候情報でもよい。
【0036】
上記構成によれば、表示制御部は、周辺環境の明るさ情報、車両が現在走行している道路情報、または、車両の現在位置における天候情報に基づいて、第1表示装置および第2表示装置の一方に表示させている情報を、第1表示装置および第2表示装置の他方に表示させる。このため、自車両の周辺環境の状況に応じて表示装置の切替えを行うことができる。
【0037】
また、上記車両用表示システムを備えた車両が提供されてもよい。
【0038】
上記によれば、車両の周辺環境に対する乗員の視認性の低下を防止することができる車両を提供することができる。
【発明の効果】
【0039】
本開示によれば、車両の周辺環境に対する乗員の視認性の低下を防止することが可能な車両用表示システム及び車両を提供することができる。また、乗員と車両との間のリッチな視覚的コミュニケーションを実現可能な車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両システムが搭載された車両の正面図である。
図2】第1実施形態に係る車両システムのブロック図である。
図3】HUD(Head-Up Display)から出射された光が乗員の目に到達する様子を示す図である。
図4】第1実施形態に係る車両用表示システムの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図5】車両の外部からの光がフロントウィンドウによって遮られる様子を示す図である。
図6】HUD表示領域に表示される周辺環境映像の一例を示す図である。
図7図4のフローチャートに示す所定の条件の具体例を示した表である。
図8】車両の上面図である。
図9】車両システムが搭載された車両の正面図である。
図10】車両システムのブロック図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る表示制御部による表示切替制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図12A】第2実施形態に係る表示切替前の路面描画の一例を説明するための図である。
図12B】第2実施形態に係る表示切替後のHUDの一例を説明するための図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る表示制御部による表示切替制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図14】第3実施形態に係る表示切替後のHUDの一例を説明するための図である。
図15】本発明の第4実施形態に係る表示制御部による表示切替制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図16A】第4実施形態に係る表示切替前のHUDの一例を説明するための図である。
図16B】第4実施形態に係る表示切替後の路面描画の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0042】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」について適宜言及する場合がある。これらの方向は、図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。前後方向は、図1では示されていないが、左右方向及び上下方向に直交する方向である。
【0043】
最初に、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る車両システム2について以下に説明する。図1は、車両システム2が搭載された車両1の正面図である。図2は、車両システム2のブロック図である。車両1は、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
【0044】
図2に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、車両用表示システム4(以下、単に「表示システム4」という。)と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7とを備える。さらに、車両システム2は、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、記憶装置11と、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備える。
【0045】
車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。車両制御部3は、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC(System on a Chip)等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing
Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及びTPU(Tensor Processing Unit)のうちの少なくとも一つを含む。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)を含む。ROMには、車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、車両制御プログラムは、自動運転用の人工知能(AI)プログラムを含んでもよい。AIプログラムは、多層のニューラルネットワークを用いた教師有り又は教師なし機械学習(特に、ディープラーニング)によって構築されたプログラム(学習済みモデル)である。RAMには、車両制御プログラム、車両制御データ及び/又は車両の周辺環境を示す周辺環境情報が一時的に記憶されてもよい。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。また、コンピュータシステムは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。さらに、コンピュータシステムは、ノイマン型コンピュータと非ノイマン型コンピュータの組み合わせによって構成されてもよい。
【0046】
表示システム4は、左側ヘッドランプ20Lと、右側ヘッドランプ20Rと、左側路面描画装置45Lと、右側路面描画装置45Rとを備える。さらに、表示システム4は、HUD(Head-Up Display)42と、表示制御部43とを備える。
【0047】
図1に示すように、左側ヘッドランプ20Lは、車両1の左側前面に配置されており、ロービームを車両1の前方に照射するように構成されたロービームランプと、ハイビームを車両1の前方に照射するように構成されたハイビームランプとを備える。右側ヘッドランプ20Rは、車両1の右側前面に配置されており、ロービームを車両1の前方に照射するように構成されたロービームランプと、ハイビームを車両1の前方に照射するように構成されたハイビームランプとを備える。ロービームランプとハイビームランプの各々は、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の1以上の発光素子と、レンズ及びリフレクタ等の光学部材を有する。また、以降では、説明の便宜上、左側ヘッドランプ20L及び右側ヘッドランプ20Rを単にヘッドランプ20と総称する場合がある。
【0048】
左側路面描画装置45L(第1表示装置の一例)は、左側ヘッドランプ20Lの灯室内に配置されている。左側路面描画装置45Lは、車両1の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成されている。左側路面描画装置45Lは、例えば、光源部と、駆動ミラーと、レンズやミラー等の光学系と、光源駆動回路と、ミラー駆動回路とを有する。光源部は、レーザ光源又はLED光源である。例えば、レーザ光源は、赤色レーザ光と、緑色レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。駆動ミラーは、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、DMD(Digital Mirror Device)、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等である。光源駆動回路は、光源部を駆動制御するように構成されている。光源駆動回路は、表示制御部43から送信された所定の光パターンに関連する信号に基づいて、光源部の動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を光源部に送信するように構成されている。ミラー駆動回路は、駆動ミラーを駆動制御するように構成されている。ミラー駆動回路は、表示制御部43から送信された所定の光パターンに関連する信号に基づいて、駆動ミラーの動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を駆動ミラーに送信するように構成されている。光源部がRGBレーザ光源である場合、左側路面描画装置45Lは、レーザ光を走査することで様々の色の光パターンを路面上に描画することが可能となる。
【0049】
右側路面描画装置45Rは、右側ヘッドランプ20Rの灯室内に配置されている。右側路面描画装置45Rは、車両1の外部の路面に向けて光パターンを出射するように構成されている。左側路面描画装置45Lと同様に、右側路面描画装置45Rは、光源部と、駆動ミラーと、レンズ等の光学系と、光源駆動回路と、ミラー駆動回路とを有する。
【0050】
また、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rの描画方式は、ラスタースキャン方式、DLP(Digital Light Processing)方式又はLCOS(Liquid Crystal on Silicon)方式であってもよい。DLP方式又はLCOS方式が採用される場合、光源部はLED光源であってもよい。また、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rの描画方式として、プロジェクション方式が採用されてもよい。プロジェクション方式が採用される場合、光源部は、マトリクス状に並んだ複数のLED光源であってもよい。さらに、本実施形態では、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rは、車体ルーフ100A上に配置されてもよい。この点において、1つの路面描画装置が車体ルーフ100A上に配置されてもよい。以降では、説明の便宜上、左側路面描画装置45L及び右側路面描画装置45Rを単に路面描画装置45と総称する場合がある。また、以降の説明において、路面描画装置45は、左側路面描画装置45L、右側路面描画装置45R又は左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45Rの組み合わせを示すものとする。
【0051】
HUD42(第2表示装置の一例)は、車両1の内部に位置する。具体的には、HUD42は、車両1の室内の所定箇所に設置されている。例えば、図3に示すように、HUD42は、車両1のダッシュボード内に配置されてもよい。HUD42は、車両1と乗員Hとの間の視覚的インターフェースとして機能する。HUD42は、所定の情報(以下、HUD情報という。)が車両1の外部の現実空間(特に、車両1の前方の周辺環境)と重畳されるように当該HUD情報を乗員Hに向けて表示するように構成されている。このように、HUD42は、AR(Augmented Reality)ディスプレイとして機能する。HUD42よって表示されるHUD情報は、例えば、車両1の走行に関連した車両走行情報及び/又は車両1の周辺環境に関連した周辺環境情報(特に、車両1の外部に存在する対象物に関連した情報)である。また、HUD42は、後述するように、外部カメラ6Aによって撮像された車両1の周辺環境を示す周辺環境映像を表示するように構成されている。
【0052】
図3に示すように、HUD42は、HUD本体部420と、透明スクリーン421とを有する。HUD本体部420は、光源部と、駆動ミラーと、光学系と、光源駆動回路と、ミラー駆動回路とを有する。光源部は、例えば、レーザ光源又はLED光源である。レーザ光源は、例えば、赤色レーザ光と、緑光レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。駆動ミラーは、例えば、MEMSミラー、DMD、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等である。光学系は、プリズム、レンズ、拡散板、拡大鏡のうち少なくとも一つを含む。光源駆動回路は、光源部を駆動制御するように構成されている。光源駆動回路は、表示制御部43から送信された画像データに基づいて、光源部の動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を光源部に送信するように構成されている。ミラー駆動回路は、駆動ミラーを駆動制御するように構成されている。ミラー駆動回路は、表示制御部43から送信された画像データに基づいて、駆動ミラーの動作を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を駆動ミラーに送信するように構成されている。
【0053】
透明スクリーン421は、フロントウィンドウ60の一部によって構成されている。透明スクリーン421は、HUD情報が表示されるHUD表示領域D1を有する(図6参照)。HUD本体部420から出射された光(画像)は、透明スクリーン421のHUD表示領域D1に照射される。次に、HUD表示領域D1は、HUD本体部420から出射された光を乗員Hの視点Eに向けて反射する。この結果、乗員Hは、HUD本体部420から出射された光(画像)を透明スクリーン421の前方の所定の位置において形成された虚像として認識する。このように、HUD42によって表示されるHUD情報(画像)が車両1の前方の現実空間に重畳される結果、乗員Eは、当該HUD情報が道路上に浮いているように感じることができる。
【0054】
尚、透明スクリーン421は、フロントウィンドウ60から分離した透明なコンバイナーとして構成されてもよい。この場合でも、コンバイナーはHUD表示領域を有する。さらに、乗員Hは、HUD本体部420から出射された光(画像)をコンバイナーの前方の所定の位置において形成された虚像として認識する。また、虚像が形成される位置(虚像形成位置)は、HUD42の光学系の位置(特に、投影光学系の焦点距離)を調整することで可変されてもよい。この点において、表示制御部43は、車両1の前方の対象物の位置と虚像形成位置が略一致するように、HUD42を制御することができる。また、HUD42の描画方式は、ラスタースキャン方向、DLP方式又はLCOS方式であってもよい。DLP方式又はLCOS方式が採用される場合、HUD42の光源部はLED光源であってもよい。
【0055】
表示制御部43は、路面描画装置45(具体的には、左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45R)、ヘッドランプ20(具体的には、左側ヘッドランプ20Lと右側ヘッドランプ20R)及びHUD42の動作を制御するように構成されている。この点において、表示制御部43は、路面上の所定の位置に光パターンが照射されるように路面描画装置45(具体的には、左側路面描画装置45Lと右側路面描画装置45R)の動作を制御するように構成されている。さらに、表示制御部43は、HUD情報がHUD表示領域D1に表示されるようにHUD42の動作を制御するように構成されている。
【0056】
表示制御部43は、電子制御ユニット(ECU)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、CPU、MPU、GPU及びTPUのうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROMと、RAMを含む。また、コンピュータシステムは、ASICやFPGA等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。
【0057】
本実施形態では、車両制御部3と表示制御部43は、別個の構成として設けられているが、車両制御部3と表示制御部43は一体的に構成されてもよい。この点において、表示制御部43と車両制御部3は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。また、表示制御部43は、ヘッドランプ20と路面描画装置45の動作を制御するように構成された電子制御ユニットと、HUD42の動作を制御するように構成された電子制御ユニットの2つの電子制御ユニットによって構成されてもよい。
【0058】
センサ5は、加速度センサ、速度センサ及びジャイロセンサのうち少なくとも一つを含む。センサ5は、車両1の走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部3に出力するように構成されている。また、センサ5は、着座センサと、顔向きセンサと、外部天候センサと、照度センサとのうちの少なくとも一つを含んでもよい。着座センサは、運転者が運転席に座っているかどうかを検出するように構成されている。顔向きセンサは、運転者の顔の方向を検出するように構成されている。外部天候センサは、車両1の現在位置における外部天候を検出するように構成されている。照度センサは、車両1の周辺環境の明るさ(照度)を検出するように構成されている。
【0059】
カメラ6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6は、一以上の外部カメラ6Aと、内部カメラ6Bとを含む。外部カメラ6Aは、車両1の周辺環境を示す画像データを取得した上で、当該画像データを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された画像データに基づいて、周辺環境情報を取得する。ここで、周辺環境情報は、車両1の外部に存在する対象物(歩行者、他車両、標識等)に関する情報を含んでもよい。例えば、周辺環境情報は、車両1の外部に存在する対象物の属性に関する情報と、車両1に対する対象物の距離や位置に関する情報とを含んでもよい。外部カメラ6Aは、単眼カメラとしても構成されてもよいし、ステレオカメラとして構成されてもよい。
【0060】
また、外部カメラ6Aによって取得された画像データは、表示制御部43に送信される。表示制御部43は、送信された画像データに基づいて、車両1の周辺環境を示す周辺環境映像を所定のフレームレートでHUD42(具体的には、HUD表示領域)に表示する。また、4つの外部カメラ6Aが車両1に搭載される場合、4つの外部カメラ6Aの各々は、車両1の四隅のうちの一つに配置されてもよい。この場合、表示制御部43は、各外部カメラ6Aから送信された画像データを合成することで周辺環境映像を生成した上で、当該生成された周辺環境映像をHUD42に表示してもよい。
【0061】
内部カメラ6Bは、車両1の内部に配置されると共に、乗員Hを示す画像データを取得するように構成されている。内部カメラ6Bは、乗員Hの視点Eをトラッキングするトラッキングカメラとして機能する。ここで、乗員Hの視点Eは、乗員Hの左目の視点又は右目の視点のいずれかであってもよい。または、視点Eは、左目の視点と右目の視点を結んだ線分の中点として規定されてもよい。表示制御部43は、内部カメラ6Bによって取得された画像データに基づいて、乗員Hの視点Eの位置を特定してもよい。乗員Hの視点Eの位置は、画像データに基づいて、所定の周期で更新されてもよいし、車両1の起動時に一回だけ決定されてもよい。
【0062】
レーダ7は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ及びレーザーレーダ(例えば、LiDARユニット)のうちの少なくとも一つを含む。例えば、LiDARユニットは、車両1の周辺環境を検出するように構成されている。特に、LiDARユニットは、車両1の周辺環境を示す3Dマッピングデータ(点群データ)を取得した上で、当該3Dマッピングデータを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された3Dマッピングデータに基づいて、周辺環境情報を特定する。
【0063】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイ(HUDは除く)である。GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0064】
無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車に関する情報(例えば、走行情報等)を他車から受信すると共に、車両1に関する情報(例えば、走行情報等)を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。また、無線通信部10は、歩行者が携帯する携帯型電子機器(スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス等)から歩行者に関する情報を受信すると共に、車両1の自車走行情報を携帯型電子機器に送信するように構成されている(歩車間通信)。車両1は、他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器とアドホックモードにより直接通信してもよいし、アクセスポイントを介して通信してもよい。さらに、車両1は、図示しない通信ネットワークを介して他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器と通信してもよい。通信ネットワークは、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)及び無線アクセスネットワーク(RAN)のうちの少なくとも一つを含む。無線通信規格は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、LPWA、DSRC(登録商標)又はLi-Fiである。また、車両1は、他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器と第5世代移動通信システム(5G)を用いて通信してもよい。
【0065】
記憶装置11は、ハードディスクドライブ(HDD)やSSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置である。記憶装置11には、2次元又は3次元の地図情報及び/又は車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、3次元の地図情報は、3Dマッピングデータ(点群データ)によって構成されてもよい。記憶装置11は、車両制御部3からの要求に応じて、地図情報や車両制御プログラムを車両制御部3に出力するように構成されている。地図情報や車両制御プログラムは、無線通信部10と通信ネットワークを介して更新されてもよい。
【0066】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、車両1の走行を自動的に制御する。つまり、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0067】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両1の走行は運転者により制御される。
【0068】
次に、車両1の運転モードについて説明する。運転モードは、自動運転モードと手動運転モードとからなる。自動運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードとからなる。完全自動運転モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはない。高度運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはあるものの車両1を運転しない。運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御のうち一部の走行制御を自動的に行うと共に、車両システム2の運転支援の下で運転者が車両1を運転する。一方、手動運転モードでは、車両システム2が走行制御を自動的に行わないと共に、車両システム2の運転支援なしに運転者が車両1を運転する。
【0069】
また、車両1の運転モードは、運転モード切替スイッチを操作することで切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、運転モード切替スイッチに対する運転者の操作に応じて、車両1の運転モードを4つの運転モード(完全自動運転モード、高度運転支援モード、運転支援モード、手動運転モード)の間で切り替える。また、車両1の運転モードは、自動運転車が走行可能である走行可能区間や自動運転車の走行が禁止されている走行禁止区間についての情報または外部天候状態についての情報に基づいて自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、これらの情報に基づいて車両1の運転モードを切り替える。さらに、車両1の運転モードは、着座センサや顔向きセンサ等を用いることで自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、着座センサや顔向きセンサからの出力信号に基づいて、車両1の運転モードを切り替える。
【0070】
次に、図4から図7を参照して本実施形態に係る表示システム4の動作の一例について以下に説明する。図4は、表示システム4の動作の一例を説明するためのフローチャートである。図5は、車両1の外部からの光がフロントウィンドウ60によって遮られる様子を示す図である。図6は、HUD表示領域D1に表示される周辺環境映像の一例を示す図である。図7は、図4のフローチャートに示す「所定の条件」の具体例を示した表である。
【0071】
図4に示すように、ステップS1において、表示制御部43は、車両1又は車両1の周辺環境に関連付けられた所定の条件を満たすかどうかを判定する。ステップS1の判定結果がYESの場合、表示制御部43は、フロントウィンドウ60(具体的には、HUD表示領域D1)上に、車両1の周辺環境を示す周辺環境映像を表示すると共に、フロントウィンドウ60の透過率を下げる(ステップS2)。一方、ステップS1の判定結果がNOである場合、本処理は終了する。
【0072】
図7に示すように、ステップS1の「所定の条件」の具体例としては以下の6つの条件が挙げられる。
1)光パターンが路面上に出射された場合
2)車両1の運転モードが高度運転支援モード又は完全自動運転モードである場合
3)車両1の周辺環境の明るさが第1の明るさ以下である場合
4)車両1の周辺環境の明るさが第2の明るさ以上である場合
5)車両1が現在走行している道路が自動運転車専用道路である場合
6)車両1の現在位置における天候が悪天候である場合
【0073】
1)光パターンが路面上に出射された場合
表示制御部43は、路面描画装置45が路面に向けて光パターンを出射したと判定した場合(ステップS1でYES)、フロントウィンドウ60上に周辺環境映像を表示すると共に、フロントウィンドウ60の透過率を下げる(ステップS2)。この点において、表示制御部43は路面描画装置45の動作を制御している。従って、表示制御部43は、路面描画装置45を駆動させた場合に、フロントウィンドウ60上に周辺環境映像を表示すると共に、フロントウィンドウ60の透過率を下げてもよい。
【0074】
2)車両1の運動モードが高度運転支援モード又は完全自動運転モードである場合
表示制御部43は、車両1の運転モードを示す情報を車両制御部3から受信した上で、車両1の運転モードが高度運転支援モード又は完全自動運転モードであると判定した場合に(ステップS1でYES)、フロントウィンドウ60上に周辺環境映像を表示すると共に、フロントウィンドウ60の透過率を下げる(ステップS2)。
【0075】
3)車両1の周辺環境の明るさが第1の明るさ以下である場合
車両制御部3は、車両1の周辺環境の照度を示す照度データを照度センサから取得した上で、当該照度データを表示制御部43に送信する。次に、表示制御部43は、照度データに基づいて、車両1の周辺環境の照度が第1の照度以下であると判定した場合に(ステップS1でYES)、フロントウィンドウ60上に周辺環境映像を表示すると共に、フロントウィンドウ60の透過率を下げる(ステップS2)。例えば、車両1が夜間に走行中の場合や車両1がトンネルの中を走行中の場合に、ステップS1の判定結果がYESとなる。尚、周辺環境の明るさの一例として、周辺環境の照度を挙げたが、明るさは照度に限定されるものではない。
【0076】
4)車両1の周辺環境の明るさが第2の明るさ以上である場合
表示制御部43は、照度センサから取得された照度データに基づいて、車両1の周辺環境の照度が第2の照度以上であると判定した場合に(ステップS1でYES)、フロントウィンドウ60上に周辺環境映像を表示すると共に、フロントウィンドウ60の透過率を下げる(ステップS2)。例えば、車両1が非常に明るい光(太陽光や工事現場を照らす照明光等)によって照らされた場合に、ステップS1の判定結果がYESとなる。
【0077】
5)車両1が現在走行している道路が自動運転車専用道路である場合
車両制御部3は、GPS9から車両1の現在位置を示す現在位置情報を取得すると共に、記憶装置11から地図情報を取得する。次に、車両制御部3は、現在位置情報と地図情報を表示制御部43に送信する。次に、表示制御部43は、現在位置情報と地図情報に基づいて、車両1が現在走行している道路を特定する。次に、表示制御部43は、車両1が現在走行している道路が自動運転車専用道路であると判定した場合に(ステップS1でYES)、フロントウィンドウ60上に周辺環境映像を表示すると共に、フロントウィンドウ60の透過率を下げる(ステップS2)。
【0078】
6)車両1の現在位置における天候が悪天候である場合
車両制御部3は、外部カメラ6Aから取得された画像データに基づいて、車両1の現在位置における天候を示す天候情報を生成した上で、当該天候情報を表示制御部43に送信する。次に、表示制御部43は、受信した天候情報に基づいて、車両1の現在位置における天候が悪天候(つまり、雨、雪等)であると判定した場合に(ステップS1でYES)、フロントウィンドウ60上に周辺環境映像を表示すると共に、フロントウィンドウ60の透過率を下げる(ステップS2)。尚、表示制御部43は、ワイパーが駆動しているかどうかを示す情報に基づいて、車両1の現在位置における天候が悪天候であるかどうかを判定してもよい。この点において、ワイパーが駆動している場合に、表示制御部43は、車両1の現在位置における天候が悪天候であると判定してもよい。また、表示制御部43は、外部天候センサから取得された天候情報又は通信ネットワーク上のサーバから取得された天候情報に基づいて、車両1の現在位置における天候が悪天候であるかどうかを判定してもよい。
【0079】
本実施形態によれば、車両1又は車両1の周辺環境に関連付けられた所定の条件に応じて、乗員Hは、車両1のフロントウィンドウ60を通じて乗員Hに視認される視界(以下、直接視界という。)に代わって、周辺環境映像を通じて車両1の周辺環境を視認することが可能となる。このように、車両1の周辺環境に対する乗員Hの視認性の低下を防止することができる。
【0080】
また、フロントウィンドウ60は、ガラス板と、当該ガラス板上に配置された液晶シャッタとを有してもよい。液晶シャッタは、液晶シャッタを通過する光の透過率を調整可能な透過率調整部として機能する。液晶シャッタは、例えば、2枚の偏光フィルタと当該2枚の偏光フィルタの間に設けられた液晶層とを有する。2枚の偏光フィルタの一方は、所定の方向に偏光した光を通過させるように構成されている一方、2枚の偏光フィルタの他方は、所定の方向とは垂直な方向に偏光した光を通過させるように構成されてもよい。液晶層に電圧が印加されることで、液晶層の液晶分子の配列方向が変化するため、液晶シャッタを通過する光の透過率を調整することができる。特に、表示制御部43は、液晶層に印加される電圧を調整することで液晶シャッタ(つまり、フロントウィンドウ60)の透過率を下げることができる。例えば、液晶シャッタの透過率を10%以下に設定することが可能となる。このように、フロントウィンドウ60の透過率を下げることで、図5に示すように、車両1の外部からの光を乗員が視認できないようにすることができる。一方で、この状態では、乗員Hは、HUD本体部420から出力された周辺環境映像を明確に視認することができる点に留意されたい。
【0081】
また、車両1の現在位置における天候が雨又は雪の場合に、HUD表示領域D1に表示される周辺環境映像は、雨粒や雪が除去された映像であってもよい。この場合、表示制御部43は、静止画像データ(フレーム)に表示された雨粒等を除去するための所定の画像処理を実行してもよい。このように、周辺環境映像から雨粒等が除去されているため、直接視界と比較して、周辺環境に対する乗員Hの視認性を向上させることができる。
【0082】
また、HUD42は、車両1の進行方向における周辺環境映像をフロントウィンドウ60上に表示するように構成されている。例えば、車両1が前進する場合に、車両1の前方における周辺環境映像がフロントウィンドウ60上に表示される。この場合、表示制御部43は、車両1の前方における周辺環境を示す画像データに基づいて、周辺環境映像をHUD42に表示する。一方、車両1が後進する場合に、車両1の後方における周辺環境映像がフロントウィンドウ60上に表示される。この場合、表示制御部43は、車両1の後方における周辺環境を示す画像データに基づいて、周辺環境映像をHUD42に表示する。
【0083】
このように、車両1が後進している場合には、車両1の後方における周辺環境映像がフロントウィンドウ60上に表示されるので、車両1の周辺環境に対する乗員Hの視認性の低下を防止することができる。
【0084】
また、周辺環境映像は、車両1の全てのウィンドウ上に表示されてもよい。この点において、周辺環境映像は、フロントウィンドウ60、左サイドウィンドウ63、右サイドウィンドウ62、リアウィンドウ64のそれぞれに表示されてもよい(図8参照)。この場合、車両1は、車両1の前方における周辺環境を示す周辺環境映像をフロントウィンドウ60に表示するHUD42と、車両1の左側方における周辺環境を示す周辺環境映像を左サイドウィンドウ63に表示する第2HUD(図示せず)と、車両1の右側方における周辺環境を示す周辺環境映像を右サイドウィンドウ62に表示する第3HUD(図示せず)と、車両1の後方における周辺環境を示す周辺環境映像をリアウィンドウ64に表示する第4HUD(図示せず)とを備えてもよい。また、フロントウィンドウ60、左サイドウィンドウ63、右サイドウィンドウ62、リアウィンドウ64の各々は、液晶シャッタを有してもよい。周辺環境映像がフロントウィンドウ60、左サイドウィンドウ63、右サイドウィンドウ62、リアウィンドウ64に表示される場合、表示制御部43は、フロントウィンドウ60、左サイドウィンドウ63、右サイドウィンドウ62、リアウィンドウ64の各々の透過率を低下させる。このように、乗員Hは、全てのウィンドウに表示された周辺環境映像を通じて車両1の周辺環境を明確に視認することができ、車両1の周辺環境に対する乗員Hの視認性の低下を防止することができる。
【0085】
本実施形態では、表示制御部43は、車両1又は車両1の周辺環境に関連付けられた所定の条件に応じて、フロントウィンドウ60上に周辺環境映像を表示すると共に、フロントウィンドウ60の透過率を下げているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、表示制御部43は、乗員Hの手動操作(例えば、HUD42に対する所定の入力操作等)に応じて、フロントウィンドウ60上に周辺環境映像を表示すると共に、フロントウィンドウ60の透過率を下げてもよい。
【0086】
また、図4にステップS2では、周辺環境映像だけでなく映画や広告映像等の映像コンテンツがフロントウィンドウ60上に表示されてもよい。さらに、周辺環境映像がフロントウィンドウ60上に表示されると共に、フロントウィンドウ60以外の他のウィンドウに映像コンテンツが表示されてもよい。
【0087】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態(以下、第2実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。また、以降では、第1実施形態で説明された構成要素と同一の参照番号が付された構成要素については特に説明を行わない。
【0088】
最初に、図9及び図10を参照して、本実施形態に係る車両システム2Aについて以下に説明する。図9は、車両システム2Aが搭載された車両1Aの正面図である。図10は、車両システム2Aのブロック図である。車両1Aは、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
【0089】
図10に示すように、車両システム2Aは、車両制御部103と、車両用表示システム104(以下、単に「表示システム104」という。)と、センサ105と、カメラ106と、レーダ107とを備える。さらに、車両システム2Aは、HMI(Human Machine Interface)108と、GPS(Global Positioning System)109と、無線通信部110と、記憶装置111とを備える。さらに、車両システム2Aは、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備える。
【0090】
車両制御部103は、車両1Aの走行を制御するように構成されている。車両制御部103は、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC(System on a Chip)等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成される電子回路を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及び/又はTPU(Tensor Processing Unit)である。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)を含む。ROMには、車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、車両制御プログラムは、自動運転用の人工知能(AI)プログラムを含んでもよい。AIプログラムは、多層のニューラルネットワークを用いた教師有り又は教師なし機械学習(特に、ディープラーニング)によって構築されたプログラムである。RAMには、車両制御プログラム、車両制御データ及び/又は車両の周辺環境を示す周辺環境情報が一時的に記憶されてもよい。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。また、コンピュータシステムは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。さらに、コンピュータシステムは、ノイマン型コンピュータと非ノイマン型コンピュータの組み合わせによって構成されてもよい。
【0091】
表示システム104は、表示制御部140と、照明装置141と、路面描画装置142と、ヘッドアップディスプレイ(HUD)143と、を備える。路面描画装置142は、第1表示装置の一例である。HUD143は、第2表示装置の一例である。
【0092】
照明装置141は、車両1Aの外部に向けて光を出射するように構成されている。照明装置141は、左側ヘッドランプ120Lと、右側ヘッドランプ120Rとを備える。照明装置141は、ヘッドランプ120L、120Rの他に、車両1Aの前部に設けられるポジションランプ、車両1Aの後部に設けられるリアコンビネーションランプ、車両の前部または側部に設けられるターンシグナルランプ、歩行者や他車両のドライバーに自車両の状況を知らせる各種ランプなどを備えてもよい。
【0093】
路面描画装置142は、車両1Aの外部の路面に向けて所定の情報を示す光パターンを出射するように構成されている。路面描画装置142は、二つの路面描画装置(左側路面描画装置142Lおよび右側路面描画装置142R)を備える。図9に示すように、左側路面描画装置142Lは、左側ヘッドランプ120Lに搭載され、右側路面描画装置142Rは、右側ヘッドランプ120R内に搭載されている。以降の説明では、左側路面描画装置142Lおよび右側路面描画装置142Rを単に路面描画装置142という場合がある。
【0094】
路面描画装置142は、例えば、レーザ光を出射するように構成されたレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光を偏向するように構成された光偏向装置と、レンズ等の光学系部材とを備える。レーザ光源は、例えば、赤色レーザ光と、緑色レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。光偏向装置は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等である。路面描画装置142は、レーザ光を走査することで光パターンM0,M1(図12A参照)を路面上に描画するように構成されている。レーザ光源がRGBレーザ光源である場合、路面描画装置142は、様々な色の光パターンを路面上に描画することが可能となる。左側路面描画装置142Lおよび右側路面描画装置142Rは、それぞれ別の光パターンを路面上に描画してもよいし、それぞれの光パターンを合成することにより1つの光パターンを路面上に描画してもよい。
【0095】
尚、本実施形態では、路面描画装置142は、ヘッドランプ120L、120R内に搭載された路面描画装置142L、142Rを備えているが、路面描画装置142が路面上に光パターンを描画することが可能である限りにおいて、路面描画装置142の数、配置場所及び形状は特に限定されるものではない。例えば、左側路面描画装置142Lおよび右側路面描画装置142Rは、ヘッドランプの近傍に配置されてもよい。また、路面描画装置142の数が1つである場合、車体ルーフ上に配置されてもよい。また、路面描画装置142の数が4つである場合、左側ヘッドランプ120L、右側ヘッドランプ120R、左側リアコンビネーションランプ(図示せず)及び右側リアコンビネーションランプ(図示せず)内にそれぞれ1つの路面描画装置142が搭載されてもよい。
【0096】
また、路面描画装置142の描画方式は、DLP(Digital Light Processing)方式又はLCOS(Liquid Crystal on Silicon)方式であってもよい。この場合、光源としてレーザの代わりにLEDが使用される。
【0097】
HUD143は、車両1Aの走行に関連した車両走行情報が車両1Aの外部の現実空間と重畳されるように車両走行情報を車両1Aの乗員に向けて表示するように構成されている。HUD143は、車両1Aの車内の所定箇所に設置されている。例えば、図12Bに示すように、HUD143は、車両1Aのダッシュボード上に設置されている。尚、HUD143の設置個所については特に限定されない。HUD143は、車両1Aと乗員との間の視覚的インターフェースとして機能する。特に、HUD143は、車両走行情報を乗員に視覚的に提示するように構成されている。車両走行情報は、車両1Aの運転に係る情報(例えば、自動運転に関連する情報等)や歩行者情報等を含む。例えば、HUD143は、車両1Aと他車両との間の車車間通信及び/又は車両1Aとインフラ設備(信号機等)との間の路車間通信によって得られた情報を表示するように構成されている。この点において、HUD143は、他車両及び/又はインフラ設備から送信されたメッセージを表示するように構成されている。車両1Aの乗員は、HUD143によって表示されたメッセージを見ることで、他車両の意図等を把握することができる。また、例えば、HUD143は、センサ105及び/又はカメラ106から得られた情報を表示するように構成されている。車両1Aの乗員は、HUD143によって表示されたメッセージを見ることで、車両1Aの走行状態及び/又は歩行者情報等を把握することができる。HUD143によって表示された情報は、車両1Aの前方の現実空間に重畳されるように車両1Aの乗員に視覚的に提示される。このように、HUD143は、AR(Augmented Reality)ディスプレイとして機能する。
【0098】
HUD143は、画像生成ユニットと、画像生成ユニットにより生成された画像が表示される透明スクリーンとを備える。HUD143の描画方式がレーザプロジェクタ方式である場合、画像生成ユニットは、例えば、レーザ光を出射するように構成されたレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光を偏向するように構成された光偏向装置と、レンズ等の光学系部材とを備える。レーザ光源は、例えば、赤色レーザ光と、緑色レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。光偏向装置は、例えば、MEMSミラーである。尚、HUD143の描画方式は、DLP(Digital Light Processing)方式又はLCOS(Liquid Crystal on Silicon)方式であってもよい。この場合、光源としてレーザの代わりにLEDが使用される。
【0099】
また、HUD143は、透明スクリーンを備えなくてもよい。この場合、画像生成ユニットにより生成された画像は、車両1Aのフロントガラス100上に表示されてもよい。
【0100】
表示制御部140は、照明装置141の駆動を制御するように構成されている。例えば、表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、所定の光を出射するように照明装置141を制御する。また、表示制御部140は、路面描画装置142及びHUD143の駆動を制御するように構成されている。例えば、表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、他車両または歩行者に向けて所定の光パターンが提示されるように路面描画装置142を制御する。また、表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、乗員に向けて所定の車両走行情報が提示されるようにHUD143を制御する。
【0101】
表示制御部140は、電子制御ユニット(ECU)により構成されており、図示しない電源に電気的に接続されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを含むコンピュータシステム(例えば、SoC等)と、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子から構成されるアナログ処理回路とを含む。アナログ処理回路は、照明装置141のランプの駆動を制御するように構成されたランプ駆動回路(例えば、LEDドライバ等)を備える。また、アナログ処理回路は、路面描画装置142のレーザ光源の駆動を制御するように構成された第1レーザ光源制御回路と、路面描画装置142の光偏向装置の駆動を制御するように構成された第1光偏向装置制御回路とを含む。また、アナログ処理回路は、HUD143のレーザ光源の駆動を制御するように構成された第2レーザ光源制御回路と、HUD143の光偏向装置の駆動を制御するように構成された第2光偏向装置制御回路とを含む。プロセッサは、例えば、CPU、MPU、GPU及び/又はTPUである。メモリは、ROMと、RAMを含む。また、コンピュータシステムは、ASICやFPGA等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。
【0102】
尚、本実施形態では、照明装置141、路面描画装置142及びHUD143に対して共通の表示制御部140が設けられているが、それぞれに対して別個の表示制御部が設けられてもよい。また、本実施形態では、車両制御部103と表示制御部140は、別個の構成として設けられているが、車両制御部103と表示制御部140は一体的に構成されてもよい。この点において、表示制御部140と車両制御部103は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。この場合、車両用表示システム104は、車両制御部103も含んだ構成となる。
【0103】
例えば、表示制御部140のコンピュータシステムは、車両制御部103から送信された指示信号に基づいて、車両1Aの外部に照射される光パターンを特定した上で、当該特定された光パターンを示す信号を第1レーザ光源制御回路及び第1光偏向装置制御回路に送信する。第1レーザ光源制御回路は、光パターンを示す信号に基づいて、レーザ光源の駆動を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を路面描画装置142のレーザ光源に送信する。一方、第1光偏向装置制御回路は、光パターンを示す信号に基づいて、光偏向装置の駆動を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号を路面描画装置142の光偏向装置に送信する。このようにして、表示制御部140は、路面描画装置142の駆動を制御することができる。
【0104】
また、表示制御部140のコンピュータシステムは、車両制御部103から送信された指示信号に基づいて、HUD143に表示される画像情報(例えば、文字や図形の情報)を特定した上で、当該特定された画像情報を示す信号を第2レーザ光源制御回路及び第2光偏向装置制御回路に送信する。第2レーザ光源制御回路は、画像情報を示す信号に基づいて、レーザ光源の駆動を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号をHUD143のレーザ光源に送信する。一方、第2光偏向装置制御回路は、画像情報を示す信号に基づいて、光偏向装置の駆動を制御するための制御信号を生成した上で、当該生成された制御信号をHUD143の光偏向装置に送信する。このようにして、表示制御部140は、HUD143の駆動を制御することができる。
【0105】
センサ105は、加速度センサ、速度センサ及びジャイロセンサ等を備える。センサ105は、車両1Aの走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部103に出力するように構成されている。センサ105は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、外部天候状態を検出する外部天候センサ及び車内に人がいるかどうかを検出する人感センサ等をさらに備えてもよい。また、センサ105は、照度センサ等の周辺環境情報を取得するセンサを備えてもよい。
【0106】
カメラ106は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ106は、車両1Aの周辺環境を示す画像データを取得した上で、当該画像データを車両制御部103に送信するように構成されている。車両制御部103は、送信された画像データに基づいて、周辺環境情報を取得する。ここで、周辺環境情報は、車両1Aの外部に存在する対象物(歩行者、他車両、標識等)に関する情報を含んでもよい。例えば、周辺環境情報は、車両1Aの外部に存在する対象物の属性に関する情報と、車両1Aに対する対象物の距離や位置に関する情報とを含んでもよい。カメラ106は、単眼カメラとしても構成されてもよいし、ステレオカメラとして構成されてもよい。
【0107】
レーダ107は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ及び/又はレーザーレーダ(例えば、LiDARユニット)等である。例えば、LiDARユニットは、車両1Aの周辺環境を検出するように構成されている。特に、LiDARユニットは、車両1Aの周辺環境を示す3Dマッピングデータ(点群データ)を取得した上で、当該3Dマッピングデータを車両制御部103に送信するように構成されている。車両制御部103は、送信された3Dマッピングデータに基づいて、周辺環境情報を特定する。
【0108】
HMI108は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1Aの運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。GPS109は、車両1Aの現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部103に出力するように構成されている。現在位置情報は、車両1AのGPS座標(緯度及び経度)を含む。
【0109】
無線通信部110は、車両1Aの周囲にいる他車に関する情報(例えば、走行情報等)を他車から受信すると共に、車両1Aに関する情報(例えば、走行情報等)を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部110は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1Aの走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。また、無線通信部110は、歩行者が携帯する携帯型電子機器(スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス等)から歩行者に関する情報を受信すると共に、車両1Aの自車走行情報を携帯型電子機器に送信するように構成されている(歩車間通信)。車両1Aは、他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器とアドホックモードにより直接的に通信してもよいし、アクセスポイントを介して通信してもよい。さらに、車両1Aは、インターネット等の通信ネットワークを介して他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器と通信してもよい。無線通信規格は、例えば、Wi-Fi(登録商標),Bluetooth(登録商標),ZigBee(登録商標)、LPWA、DSRC(登録商標)又はLi-Fiである。また、車両1Aは、他車両、インフラ設備又は携帯型電子機器と第5世代移動通信システム(5G)を用いて通信してもよい。
【0110】
記憶装置111は、ハードディスクドライブ(HDD)やSSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置である。記憶装置111には、2D又は3Dの地図情報及び/又は車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、3Dの地図情報は、点群データによって構成されてもよい。記憶装置111は、車両制御部103からの要求に応じて、地図情報や車両制御プログラムを車両制御部103に出力するように構成されている。地図情報や車両制御プログラムは、無線通信部110とインターネット等の通信ネットワーク200を介して更新されてもよい。
【0111】
車両1Aは、自動運転モードと手動運転モードで走行可能である。車両制御部103は、自動運転モードと手動運転モードとを選択的に実行可能である。
【0112】
自動運転モードにおいて、車両制御部103は、車両1Aの外部の情報を取得する外部センサ(カメラ106、レーダ107、GPS109、無線通信部110、等の少なくとも一つ)の出力に応じてステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を自動的に生成する。車両制御部103は、ユーザが操作可能な操作子の変位を検出するセンサ105の出力と無関係に、外部センサの出力に応じてステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を自動的に生成する。
【0113】
例えば自動運転モードにおいて車両制御部103は、カメラ106が取得した車両1Aの前方の周辺環境情報や、GPS109の現在位置情報と記憶装置111に記憶された地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を自動的に生成する。自動運転モードにおいて、車両1Aはユーザによらずに運転される。
【0114】
手動運転モードにおいて、車両制御部103は通常時に、外部センサの出力と無関係にステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。すなわち、手動運転モードにおいて、車両制御部103は通常時に、外部センサの出力と無関係に、ユーザのステアリングホイールの操作に基づいてステアリング制御信号を生成する。車両制御部103は通常時に、外部センサの出力と無関係に、ユーザのアクセルペダルの操作に基づいてアクセル制御信号を生成する。車両制御部103は、外部センサの出力と無関係に、ユーザのブレーキペダルの操作に基づいてブレーキ制御信号を生成する。手動運転モードにおいて、車両1Aは通常時はユーザにより運転される。
【0115】
尚、手動運転モードにおいて車両制御部103は、例えばセンサ105である車輪速センサの出力に応じてブレーキ制御信号を制御するアンチロックブレーキ制御を実行してもよい。また、手動運転モードにおいて車両制御部103は、センサ105である操舵角センサ、車輪速センサやヨーレートセンサの出力に応じてステアリング制御信号やアクセル制御信号、ブレーキ制御信号の少なくとも一つを制御する横滑り防止制御(Electric Stability Control)、トラクション制御などを実行してもよい。
【0116】
あるいは手動運転モードにおいて車両制御部103は緊急時に、カメラ106などの外部センサの出力に応じてステアリング制御信号とブレーキ制御信号を生成するプリクラッシュ制御や衝突回避制御を実行してもよい。このように手動運転モードにおいて車両制御部103は緊急時には、外部センサの出力に応じてステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号の少なくとも一つを生成してもよい。
【0117】
手動運転モードにおいて、通常時にステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が生成されるトリガーは、ユーザの操作するステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルといった操作子の変位である。手動運転モードにおいて車両制御部103は通常時に、操作子の変位により生成されたステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号といった信号をセンサ105や外部センサの出力に応じて制御(加工)してもよい。本実施形態において、ユーザの運転をセンサ105や外部センサの出力に応じてアシストするいわゆるアシスト運転モードは、手動運転モードの一形態である。
【0118】
2018年現在で知られている自動運転モードのレベル0~5の定義に従えば、本実施形態の自動運転モードはレベル3~5(緊急時等を除く)に該当し、本実施形態の手動運転モードはレベル0~2に該当する。
【0119】
表示制御部140は、車両制御部103から取得した車両1Aに関連した情報又は車両の周辺環境に関連した情報に基づいて、路面描画装置142およびHUD143の一方に表示されている情報を路面描画装置142およびHUD143の他方に表示させるように、路面描画装置142およびHUD143を制御するように構成されている。車両1Aに関連した情報は、例えば、車両の運転モードの情報(例えば、HMI108からの運転モード切替情報、周辺環境情報に基づく運転モード情報、等)を含む。車両の周辺環境に関連した情報は、例えば、周辺環境の明るさ情報(例えば、カメラ106の画像データに基づく明るさ情報、外部サーバから取得した天候情報に基づく明るさ情報、センサ105の検知データに基づく明るさ情報、等)、車両が現在走行している道路情報(例えば、地図情報および現在位置情報に基づく道路情報)、車両の現在位置における天候情報(例えば、車両1Aに搭載されたワイパー(図示せず)の駆動状態やカメラ106の画像データに基づく天候情報、外部サーバから取得した天候情報等)を含む。尚、表示制御部140は、これらの情報を車両制御部103からではなく、センサ105、カメラ106、HIM8、GPS109、無線通信部110、記憶装置111等から直接取得してもよい。
【0120】
次に、第2実施形態に係る表示制御部140の表示切替制御の一例について図11から図12Bを主に参照して説明する。図11は、第2実施形態に係る表示制御部140による表示切替制御の一例を説明するためのフローチャートである。図12Aは、第2実施形態に係る表示切替前の路面描画の一例を説明するための図である。図12Bは、第2実施形態に係る表示切替後のHUDの一例を説明するための図である。
【0121】
第2実施形態に係る表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、所定の条件を満たすと判断した場合には、路面描画装置142の光パターンにより示されている情報を路面描画装置142による表示からHUD143の表示へ切り替える。
【0122】
図11に示すように、ステップS11において、表示制御部140は、車両制御部103から、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報を取得する。次に、ステップS12において、表示制御部140は、取得した情報に基づいて、所定の条件を満たすか否か判断する。所定の条件とは、車両1Aの乗員が路面描画された光パターンを認識することが難しい状況の場合や、路面描画が許容されていないエリアに車両1Aが進入する場合や、車両1Aの乗員にとって路面描画の必要性が低い場合、等である。
【0123】
例えば、表示制御部140は、明るさ情報や天候情報に基づいて、車両1Aの乗員が路面描画された光パターンを認識することが難しい状況であると判断する。白色の光パターンを路面上に描画する場合、路面が降り積もった雪により覆われていると、路面と光パターンとの色彩の差が小さくなり、車両1Aの乗員が路面描画された光パターンを認識することが難しくなる。また、大雨の場合には、車両1Aの前方の視界が悪いため、車両1Aの乗員が路面描画された光パターンを認識することが難しくなる。また、昼間の明るい時間帯では、白色の光パターンを路面上に描画する場合、路面と光パターンとの色彩の差が小さくなり、車両1Aの乗員が路面描画された光パターンを認識することが難しくなる。
【0124】
また、例えば、表示制御部140は、道路情報に基づいて、路面描画が許容されていないエリア(例えば、自動車専用道路以外のエリア)に車両1Aが進入すると判断する。また、例えば、表示制御部140は、運転モード情報に基づいて、運転操作の主権が車両にある場合(例えば、2018年現在で知られている自動運転モードのレベルが3以上)の場合には、車両1Aの乗員にとって路面描画の必要性が低いと判断する。
【0125】
ステップS12において、所定の条件を満たすと判断した場合には(ステップS12のYES)、表示制御部140は、ステップS13において、路面描画装置142の光パターンにより示されている情報を路面描画装置142による表示からHUD143の表示へ切り替える。
【0126】
例えば、図12Aに示すように、車両1Aは、路面描画装置142により、光パターンM0及び光パターンM1を描画している。光パターンM0は、車両1Aの進行方向の矢印を示す光パターンである。光パターンM1は、20m先において左側から歩行者101が近付いてくる情報を示す光パターンである。光パターンM1は、歩行者101の進行方向を示す左向き矢印、歩行者101を示すマーク、歩行者101までの距離を示す文字の組み合わせからなる。この状況において、表示制御部140は、車両制御部103から取得した情報に基づいて、所定の条件を満たすと判断した場合には、図12Bに示すように、HUD143に、光パターンM0及び光パターンM1に対応する画像M3および画像M4を表示させる。また、表示制御部140は、路面描画を中止するよう路面描画装置142を制御する。尚、画像M4は、光パターンM1と一部異なる図形(すなわち、歩行者を示すマークの図形が異なる)を表示しているが、光パターンM1と同じ図形を表示してもよい。また、HUD143は、図12Bに示すように、ステップS13の表示切替前から速度情報M2等の車両走行情報を表示していてもよい。
【0127】
ステップS12において、所定の条件を満たさないと判断した場合には(ステップS12のNO)、表示制御部140は、路面描画装置142の表示を継続する。尚、表示制御部140は、定期的に車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報を取得し、表示切替制御を行ってもよい。また、ステップS13においてHUD143の表示に切り替えた後、表示制御部140は、所定の条件を満たさないと判断した場合には、再び路面描画装置142による表示に切り替えてもよい。
【0128】
このように、表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、路面描画装置142に表示させている情報を、HUD143に表示させる。このため、乗員が路面描画装置142により表示されている情報を認識することが困難である場合には、その情報をHUD143に表示させることができる。これにより、車両1Aによって提示される情報に対する乗員の視認性をさらに向上させることが可能となる。
【0129】
また、表示制御部140は、車両1Aの運転モードに基づいて、路面描画装置142に表示させている情報を、HUD143に表示させる。このため、運転モードのレベルに応じて表示装置の切替えを行うことができる。
【0130】
また、表示制御部140は、周辺環境の明るさ情報、車両が現在走行している道路情報、または、車両の現在位置における天候情報に基づいて、路面描画装置142に表示させている情報を、HUD143に表示させる。このため、自車両の周辺環境の状況に応じて表示装置の切替えを行うことができる。
【0131】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態(以下、第3実施形態という。)に係る表示制御部140の表示切替制御の一例について図13および図14を主に参照して説明する。図13は、第3実施形態に係る表示制御部による表示切替制御の一例を説明するためのフローチャートである。図14は、第3実施形態に係る表示切替後のHUDの一例を説明するための図である。
【0132】
第2実施形態に係る表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、所定の条件を満たすと判断した場合には、路面描画装置142の光パターンにより示されている情報の全てを路面描画装置142による表示からHUD143の表示へ切り替える。これに対して、第3実施形態に係る表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、所定の条件を満たすと判断した場合には、路面描画装置142の光パターンにより示されている情報の一部を路面描画装置142による表示からHUD143の表示へ切り替える。
【0133】
本実施形態では、表示制御部140は、路面描画装置142の光パターンにより示している情報のうち、光パターンとして認識することが難しい情報(例えば、文字情報、比較的細かい図形情報、等)のみをHUD143の表示へ切り替える場合について説明する。
【0134】
図13に示すように、ステップS21において、表示制御部140は、車両制御部103から、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報を取得する。次に、ステップS22において、表示制御部140は、取得した情報に基づいて、所定の条件を満たすか否か判断する。所定の条件とは、例えば、表示制御部140は、車両1Aの乗員が路面描画パターンを認識することが難しい場合である。
【0135】
例えば、表示制御部140は、明るさ情報や天候情報に基づいて、車両1Aの乗員が路面描画された光パターンを認識することが難しい状況であると判断する。白色の光パターンを路面上に描画する場合、路面が降り積もった雪により覆われていると、路面と光パターンとの色彩の差が小さくなり、車両1Aの乗員が路面描画された光パターンを認識することが難しくなる。また、大雨の場合には、車両1Aの前方の視界が悪いため、車両1Aの乗員が路面描画された光パターンを認識することが難しくなる。また、昼間の明るい時間帯では、白色の光パターンを路面上に描画する場合、路面と光パターンとの色彩の差が小さくなり、車両1Aの乗員が路面描画された光パターンを認識することが難しくなる。尚、所定の条件の判断基準となる設定値は、第2実施形態の条件よりも緩くなるように設定する。例えば、積雪量、降雨量、照度等の設定値を第2実施形態の設定値よりも小さく設定する。
【0136】
ステップS22において、所定の条件を満たすと判断した場合には(ステップS22でYES)、表示制御部140は、ステップS23において、路面描画装置142の光パターンにより示している情報の中で、光パターンとして認識することが難しい情報(例えば、文字情報、比較的細かい図形情報、等)が含まれているか否かを判断する。例えば、光パターンとして認識することが難しい情報は表示制御部140のメモリに予め登録されており、表示制御部140は、メモリに登録されている情報が光パターンの情報に含まれているか否かを判断する。または、表示制御部140は、路面描画装置142により描画されている光パターンをHUD143等に表示し、表示切替を行う光パターンを車両1Aの乗員が選択する構成にしてもよい。
【0137】
ステップS23において、光パターンとして認識することが難しい情報が含まれていると判断した場合には(ステップS23のYES)、ステップS24において表示制御部140は、光パターンとして認識することが難しい情報のみを路面描画装置142による表示からHUD143の表示に切り替える。
【0138】
例えば、図12Aに示すように、車両1Aは、路面描画装置142により、光パターンM0及び光パターンM1を描画している。この状況において、表示制御部140は、車両制御部103から取得した情報に基づいて、所定の条件を満たすと判断した場合には、光パターンとして認識することが難しい情報(例えば、文字情報、比較的細かい図形情報、等)が含まれているか判断する。図12Aの光パターンのうち、光パターンM1は、文字情報(歩行者101までの距離を示す文字)及び比較的細かい図形情報(歩行者101を示すマーク)を含んでいる。したがって、表示制御部140は、HUD143に、光パターンM1に対応する画像情報M6を表示させる。また、表示制御部140は、路面描画装置142に、光パターンM0の描画を継続させる。尚、画像M6は、光パターンM1と一部異なる図形(すなわち、歩行者を示すマークの図形が異なる)を表示しているが、光パターンM1と同じ図形を表示してもよい。また、HUD143は、図14に示すように、ステップS24の表示切替前から速度情報M5等の車両走行情報を表示していてもよい。
【0139】
ステップS22において、所定の条件を満たさないと判断した場合には(ステップS22でNO)、表示制御部140は、路面描画装置142の表示を継続する。また、ステップS23において、光パターンとして認識することが難しい情報が含まれていないと判断した場合には(ステップS23のNO)、表示制御部140は、路面描画装置142の表示を継続する。尚、表示制御部140は、定期的に車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報を取得し、表示切替制御を行ってもよい。また、ステップS24においてHUD143の表示に切り替えた後、表示制御部140は、所定の条件を満たさないと判断した場合には、再び路面描画装置142による表示に切り替えてもよい。
【0140】
このように、表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、路面描画装置142で表示させている情報のうち一部の情報をHUD143で表示させる。このため、路面描画装置142により表示されている情報のうち乗員が認識することが困難である情報をHUD143に表示させることができる。これにより、車両1Aによって提示される情報に対する乗員の視認性をさらに向上させることが可能となる。
【0141】
また、表示制御部140は、周辺環境の明るさ情報または車両の現在位置における天候情報に基づいて、路面描画装置142で表示させている情報を、HUD143で表示させる。このため、自車両の周辺環境の状況に応じて表示装置の切替えを行うことができる。
【0142】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態(以下、第4実施形態という。)に係る表示制御部140の表示切替制御の一例について図15から16Bを主に参照して説明する。図15は、第4実施形態に係る表示制御部による表示切替制御の一例を説明するためのフローチャートである。図16Aは、第4実施形態に係る表示切替前のHUDの一例を説明するための図である。図16Bは、第4実施形態に係る表示切替後の路面描画の一例を説明するための図である。
【0143】
第1および第2及び第3実施形態では、表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、所定の条件を満たすと判断した場合には、路面描画装置142の光パターンにより示されている情報の全てまたは一部を路面描画装置142による表示からHUD143の表示へ切り替える。これに対して、第4実施形態の表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、所定の条件を満たすと判断した場合には、HUD143により表示している全てまたは一部の情報を路面描画装置142の表示へ切り替える。
【0144】
本実施形態では、車両1Aと前方の道路の分岐箇所との距離(以下、車両1Aと分岐との距離という。)が所定距離以下になると所定の条件を満たすと判断し、HUD143により表示している分岐情報を路面描画装置142の表示へ切り替える場合について説明する。
【0145】
図15に示すように、ステップS31において、表示制御部140は、車両制御部103から、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報(例えば、現在の位置情報、地図情報、等)を取得する。次に、ステップS32において、表示制御部140は、取得した情報に基づいて、車両1Aと分岐との距離が所定距離以下であるかを判断する。
【0146】
例えば、表示制御部140は、車両1Aと分岐との距離が所定距離(例えば30M)より大きい場合には、HUDによる表示の方が好ましく、車両と分岐との距離が所定距離以下の場合には、路面描画による表示が好ましいと判断する。尚、所定距離の設定値は、車両1Aの出荷前に予め設定されている、或いは、車両1Aの乗員が適宜設定してもよい。
【0147】
ステップS32において、車両1Aと分岐との距離が所定距離以下であると判断した場合には(ステップS32のYES)、表示制御部140は、ステップS33において、HUD143により表示されている分岐情報を路面描画装置142の表示に切り替える。
【0148】
図16Aに示すように、車両1Aは、HUD143により、速度情報M7と分岐情報M8とを表示している。分岐情報M8は、分岐までの距離を示す文字、進行方向の矢印の組み合わせからなる。分岐情報M8は、40m先で左折することを示している。この状況において、表示制御部140は、車両制御部103から取得した情報に基づいて、車両1Aと分岐との距離が所定距離以下であると判断した場合には、図16Bに示すように、路面描画装置142に、分岐情報M8に対応する光パターンM9を出射させる。また、表示制御部140は、分岐情報M8の表示を中止するようHUD143を制御する。尚、分岐情報M8は、分岐までの距離を示す文字及び進行方向の矢印に加えて、分岐を含んだ道路の画像を含んでもよい。
【0149】
ステップS32において、車両1Aと分岐との距離が所定距離以下ではないと判断した場合には(ステップS32のNO)、表示制御部140は、HUD143の表示を継続すると共に、ステップS31に戻る。尚、ステップS32において、NOと判断された場合には、ステップS31に戻らずに、表示切替制御を終了してもよい。
【0150】
尚、本実施形態では、車両1Aと分岐との距離が所定距離以下になると、HUD143により表示している分岐情報を路面描画装置142の表示へ切り替える場合について説明したが、これに限定されない。表示制御部140は、分岐情報以外の情報についても、所定の条件を満たす場合にはHUD143の表示から路面描画装置142の表示に切り替える。例えば、路面描画が許容されているエリア(例えば、自動者専用道路)に入る場合、HUD143に表示されている情報の全て又は一部を路面描画装置142の表示に切り替えてもよい。また、2018年現在で知られている自動運転モードのレベルが2以下になる(運転操作の主権が乗員にある)場合、HUD143に表示されている情報の全て又は一部を路面描画装置142の表示に切り替えてもよい。また、夜間の場合(例えば、路面と光パターンのコントラストにより路面描画が認識しやすい場合)、HUD143に表示されている情報の全て又は一部を路面描画装置142の表示に切り替えてもよい。
【0151】
このように、表示制御部140は、車両1Aに関連した情報又は車両1Aの周辺環境に関連した情報に基づいて、HUD143に表示させている情報の全てまたは一部の情報を路面描画装置142に表示させる。このため、HUD143により表示されている情報のうち乗員が認識することが困難である情報を路面描画装置142に表示させることができる。これにより、車両1Aによって提示される情報に対する乗員の視認性をさらに向上させることが可能となる。
【0152】
また、表示制御部140は、車両1Aの運転モードに基づいて、HUD143で表示させている情報を、路面描画装置142で表示させる。このため、運転モードのレベルに応じて表示装置の切替えを行うことができる。
【0153】
また、表示制御部140は、周辺環境の明るさ情報、車両が現在走行している道路情報、または、車両の現在位置における天候情報に基づいて、HUD143で表示させている情報を、路面描画装置142で表示させる。このため、自車両の周辺環境の状況に応じて表示装置の切替えを行うことができる。
【0154】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである
【0155】
本実施形態では、車両の運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードと、手動運転モードとを含むものとして説明したが、車両の運転モードは、これら4つのモードに限定されるべきではない。車両の運転モードの区分は、各国における自動運転に係る法令又は規則に沿って適宜変更されてもよい。同様に、本実施形態の説明で記載された「完全自動運転モード」、「高度運転支援モード」、「運転支援モード」のそれぞれの定義はあくまでも一例であって、各国における自動運転に係る法令又は規則に沿って、これらの定義は適宜変更されてもよい。
【0156】
本出願は、2018年8月6日に出願された日本国特許出願(特願2018-147734号)に開示された内容と、2018年8月15日に出願された日本国特許出願(特願2018-152957号)に開示された内容を適宜援用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B