(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】アルツハイマー病に関係する生体分子
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20230309BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230309BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20230309BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20230309BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20230309BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20230309BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230309BHJP
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A61K 31/404 20060101ALI20230309BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230309BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230309BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20230309BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230309BHJP
【FI】
G01N33/68
A61P25/28
A61K31/13
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A61K31/445
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K31/506
A61K31/437
A61K31/4439
A61K31/404
A61P25/16
A61P43/00 111
C07K14/47
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2021005131
(22)【出願日】2021-01-15
(62)【分割の表示】P 2017561625の分割
【原出願日】2016-05-27
【審査請求日】2021-02-03
(32)【優先日】2015-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2015-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505423678
【氏名又は名称】エレクトロフォレティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】イアン ヒューゴ ピケ
(72)【発明者】
【氏名】マルコルム アンドリュー ワード
(72)【発明者】
【氏名】クレア ルイーズ ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクラム ミトラ
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/005893(WO,A2)
【文献】特開2013-121956(JP,A)
【文献】特表2002-523461(JP,A)
【文献】特表2018-510343(JP,A)
【文献】C.-X. Gong,Post-translational modifications of tau protein in Alzheimer’s disease,J Neural Transm,2005年,Vol.112,Page.813-838
【文献】C.-X. Gong,Hyperphosphorylation of Microtubule-Associated Protein Tau: A Promising Therapeutic Target for Alzheimer Disease,Curr Med Chem,2008年,Vol.15 No.23,Page.2321-2328
【文献】Thomas McAvoy,Quantification of Tau in Cerebrospinal Fluid by Immunoaffinity Enrichment and Tandem Mass Spectrometry,Clinical Chemistry,2014年,Vol.60 No.4,Page.683-689
【文献】Roman Vlkolinsky,Decreased brain levels of 29,39-cyclic nucleotide-39-phosphodiesterase in Down syndrome and Alzheimer’s disease,Neurobiology of Aging,2001年,Vol.22,Page.547-553
【文献】Michael Fountoulakis,Proteomics-driven progress in neurodegeneration research,Electrophoresis,2006年,Vol.27,Page.1556-1573
【文献】Matthew D Li,Integrated multi-cohort transcriptional meta-analysis of neurodegenerative diseases,Acta Neuropathologica Communications,2014年,Vol.2,Page.93
【文献】Christopher D Aluise,Peptides and proteins in plasma and cerebrosipinal fluid as biomarkers for the prediction, diagnosis, and monitoring of the therapeutic efficacy of Alzheimer's disease,Biochim Biophys Acta,2008年08月07日,Vol.1782 No.10,Page.549-558
【文献】Henrik Zetterberg,Cerebrospinal Fluid Biomarkers for Alzheimer’s Disease: More to Come?,Journal of Alzheimer’s Disease,2013年,Vol.33,Page.S361-S369
【文献】Sayuri Taniguchi-Watanabe,Biochemical classification of tauopathies by immunoblot, protein sequence and mass spectrometric analyses of sarkosyl-insoluble and trypsin-resistant tau,Acta Neuropathol,2015年11月04日,Vol.131,Page.267-280
【文献】高島明彦,認知症とタウ蛋白との関係,埼玉医科大学雑誌,2017年03月,Vol.43 No.2,Page.134-141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/68
A61P 25/28
A61K 31/13
A61K 31/55
A61K 31/27
A61K 31/445
A61K 39/395
A61K 45/00
A61K 31/506
A61K 31/437
A61K 31/4439
A61K 31/404
A61P 25/16
A61P 43/00
C07K 14/47
C12N 15/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タウ又はその1以上の断片及び2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼを含む、アルツハイマー病を診断するためのバイオマーカーのパネルであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含み、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S191、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上のリン酸化アミノ酸を含み;
タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つのリン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含み、かつ該バイオマーカーのパネルが配列番号:1のアミノ酸配列を含むプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくは断片を含まず;
該2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼが、配列番号:2のアミノ酸配列、又はそのアイソフォームもしくは断片を含む、前記バイオマーカーのパネル。
【請求項2】
配列番号:11のアミノ酸配列を含むアクチンアルファ心筋1、配列番号:12のアミノ酸配列を含むアンチトロンビン-III、配列番号:3のアミノ酸配列を含むBH3共役ドメインデスアゴニスト、配列番号:24のアミノ酸配列を含むcAMP依存性プロテインキナーゼI型-ベータレギュラトリーサブユニット、配列番号:4のアミノ酸配列を含むカテニンデルタ-1、配列番号:23のアミノ酸配列を含む170kDaの中心体タンパク質、配列番号:5のアミノ酸配列を含むクラスリン軽鎖B、配列番号:13のアミノ酸配列を含むEgl nineホモログ1、配列番号:14のアミノ酸配列を含むフィブリノーゲンガンマ鎖、配列番号:27のアミノ酸配列を含むGMP還元酵素1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むグアニンヌクレオチド結合タンパク質G(q)サブユニットアルファ、配列番号:15のアミノ酸配列を含むインスリン様増殖因子結合タンパク質6、配列番号:28のアミノ酸配列を含むKxDLモチーフ含有タンパク質1、配列番号:18のアミノ酸配列を含むラムダ-クリスタリンホモログ、配列番号:20のアミノ酸配列を含むミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、配列番号:7のアミノ酸配列を含む中性アルファ-グルコシダーゼAB、配列番号:19のアミノ酸配列を含む核膜孔複合体タンパク質Nup155、配列番号:16のアミノ酸配列を含むOCIAドメイン含有タンパク質1、配列番号:25のアミノ酸配列を含むタンパク質KIAA1045、配列番号:8のアミノ酸配列を含むセセルニン-2、配列番号:17のアミノ酸配列を含む血清アルブミン、配列番号:9のアミノ酸配列を含む短鎖特異的アシルCoAデヒドロゲナーゼ、配列番号:22のアミノ酸配列を含むシナプトポリン、配列番号:10のアミノ酸配列を含むシンタフィリン、配列番号:21のアミノ酸配列を含む膜貫通型タンパク質119、及び配列番号:26のアミノ酸配列を含むチューブリンアルファ鎖様3を含む群Aから選択される1以上のタンパク質をさらに含む、請求項1記載のバイオマーカーのパネル。
【請求項3】
群B、C、又はDから選択される1以上のタンパク質をさらに含む、請求項1記載のバイオマーカーのパネルであって、
群Bが、配列番号:11のアミノ酸配列を含むアクチンアルファ心筋1、配列番号:12のアミノ酸配列を含むアンチトロンビン-III、配列番号:3のアミノ酸配列を含むBH3共役ドメインデスアゴニスト、配列番号:4のアミノ酸配列を含むカテニンデルタ-1、配列番号:5のアミノ酸配列を含むクラスリン軽鎖B、配列番号:13のアミノ酸配列を含むEgl nineホモログ1、配列番号:14のアミノ酸配列を含むフィブリノーゲンガンマ鎖、配列番号:6のアミノ酸配列を含むグアニンヌクレオチド結合タンパク質G(q)サブユニットアルファ、配列番号:15のアミノ酸配列を含むインスリン様増殖因子結合タンパク質6、配列番号:18のアミノ酸配列を含むラムダ-クリスタリンホモログ、配列番号:7のアミノ酸配列を含む中性アルファ-グルコシダーゼAB、配列番号:19のアミノ酸配列を含む核膜孔複合体タンパク質Nup155、配列番号:16のアミノ酸配列を含むOCIAドメイン含有タンパク質1、配列番号:8のアミノ酸配列を含むセセルニン-2、配列番号:17のアミノ酸配列を含む血清アルブミン、配列番号:9のアミノ酸配列を含む短鎖特異的アシルCoAデヒドロゲナーゼ、及び配列番号:10のアミノ酸配列を含むシンタフィリンを含み、
群Cが、配列番号:11のアミノ酸配列を含むアクチンアルファ心筋1、配列番号:12のアミノ酸配列を含むアンチトロンビン-III、配列番号:3のアミノ酸配列を含むBH3共役ドメインデスアゴニスト、配列番号:24のアミノ酸配列を含むcAMP依存性プロテインキナーゼI型-ベータレギュラトリーサブユニット、配列番号:4のアミノ酸配列を含むカテニンデルタ-1、配列番号:23のアミノ酸配列を含む170kDaの中心体タンパク質、配列番号:5のアミノ酸配列を含むクラスリン軽鎖B、配列番号:13のアミノ酸配列を含むEgl nineホモログ1、配列番号:14のアミノ酸配列を含むフィブリノーゲンガンマ鎖、配列番号:27のアミノ酸配列を含むGMP還元酵素1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むグアニンヌクレオチド結合タンパク質G(q)サブユニットアルファ、配列番号:15のアミノ酸配列を含むインスリン様増殖因子結合タンパク質6、配列番号:18のアミノ酸配列を含むラムダ-クリスタリンホモログ、配列番号:20のアミノ酸配列を含むミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、配列番号:7のアミノ酸配列を含む中性アルファ-グルコシダーゼAB、配列番号:19のアミノ酸配列を含む核膜孔複合体タンパク質Nup155、配列番号:16のアミノ酸配列を含むOCIAドメイン含有タンパク質1、配列番号:25のアミノ酸配列を含むタンパク質KIAA1045、配列番号:17のアミノ酸配列を含む血清アルブミン、配列番号:9のアミノ酸配列を含む短鎖特異的アシルCoAデヒドロゲナーゼ、配列番号:22のアミノ酸配列を含むシナプトポリン、配列番号:10のアミノ酸配列を含むシンタフィリン、及び配列番号:26のアミノ酸配列を含むチューブリンアルファ鎖様3を含み、かつ
群Dが、配列番号:8のアミノ酸配列を含むセセルニン-2、配列番号:21のアミノ酸配列を含む膜貫通型タンパク質119、及び配列番号:28のアミノ酸配列を含むKxDLモチーフ含有タンパク質1を含む、前記バイオマーカーのパネル。
【請求項4】
前記バイオマーカーが、下記表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択される1以上のタンパク質をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項記載のバイオマーカーのパネル:
表5:対照と比較してAD患者のCSFにおいて上方/下方調節されるバイオマーカー
【表5】
表6:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Synap*」を有するタンパク質
【表6】
表7:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Phosporyl*」を有するタンパク質
【表7】
表8:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Stress」を有するタンパク質
【表8】
表9:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Calcium」を有するタンパク質
【表9】
表10:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Cytoskelet*」を有するタンパク質
【表10】
表11:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Mitochondri*」を有するタンパク質
【表11】
表12:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Vesicle」を有するタンパク質
【表12】
表13:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Insulin」を有するタンパク質
【表13】
。
【請求項5】
タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含み、かつ
ii)S61、S64、S199、S205、及びS396から選択される1以上のリン酸化アミノ酸を含む、請求項1記載のバイオマーカーのパネル。
【請求項6】
前記1以上のタンパク質が、少なくともベイシジン及び/又はミトコンドリアのシトクロムcオキシダーゼサブユニット7A関連タンパク質を含む、請求項4記載のバイオマーカーのパネル。
【請求項7】
対象におけるアルツハイマー病を診断するためのデータの取得方法であって:
a)該対象から得られた試料を、請求項1~6のいずれか1項において定義されるパネルのバイオマーカーについてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該パネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参照濃度又は量と比較することを含む、前記方法。
【請求項8】
前記アルツハイマー病が、タウ毒性を特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記アルツハイマー病が、タウオパチーである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記アッセイする工程a)及び/又は前記測定する工程b)が:
i)前記試料を、前記パネルの前記バイオマーカーの各々に対する1以上の結合性物質と接触させること;又は
ii)前記試料中で、質量分析により、前記パネルの前記バイオマーカー又はそれらの断片の各々を検出すること;又は
iii)前記試料中で、2Dゲル電気泳動により、前記パネルの前記バイオマーカーの各々を検出すること;又は
iv) i)、ii)、もしくはiii)のいずれかの組合せを含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
工程a)における前記アッセイすること及び/又は工程b)における前記測定することが:
i)前記パネルにおける前記バイオマーカーの1以上の断片を検出すること、及び/又は
ii)配列番号:29のアミノ酸配列を含むタウもしくはその1以上の断片上の1以上のリン酸化アミノ酸を検出することであって、検出されるべきタウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合、タウ又はその1以上の断片上の少なくとももう1つのリン酸化アミノ酸が検出される、前記検出すること;を含む、請求項
10記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、脳脊髄液(CSF)、血液、血漿、血清、又はそれらの組合せの群から選択される、請求項7~
11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記試料が、CSF又は血液である、請求項7~
12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、ヒト対象である、請求項7~
13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
試料中で、請求項1~6のいずれか1項において定義されるパネルの前記バイオマーカーをアッセイ及び/又は測定するための試薬を含む、アルツハイマー病を診断するためのキット。
【請求項16】
前記試薬が、前記パネルの前記バイオマーカーに特異的に結合する1以上の結合性物質を含む、請求項
15記載のキット。
【請求項17】
前記1以上の結合性物質が、一次抗体であり、各々の一次抗体が:
i)前記パネルの異なるバイオマーカー、及び/又は
ii)配列番号:29のアミノ酸配列を含むタウもしくはその断片の1以上のリン酸化アミノ酸に特異的に結合する、請求項
16記載のキット。
【請求項18】
前記試薬が、前記一次抗体に特異的に結合する1以上の二次抗体をさらに含む、請求項
17記載のキット。
【請求項19】
前記二次抗体が、標識されている、請求項
18記載のキット。
【請求項20】
前記試料が、脳脊髄液(CSF)、血液、血漿、血清、又はそれらの組合せの群から選択される、請求項
15~19のいずれか1項記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、タウ毒性を特徴とする神経認知障害、特に、アルツハイマー病のためのバイ
オマーカーのセット、並びに該障害を診断するため、ステージ分類するため、治療するた
め、及び該障害の治療の応答を評価するために該セットを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
タウタンパク質の細胞内凝集体から構成される神経原線維変化は、タウオパチーと総称
されるアルツハイマー病(AD)及び他の神経変性疾患の鍵となる神経病理学的特徴である。
タウは細胞内微小管関連タンパク質であり、天然には折り畳まれていないコンホメーショ
ン、熱安定性、酸安定性、及び翻訳後修飾の能力などのいくつかのユニークな特徴を有す
る。
【0003】
異常に過剰リン酸化されたタウは、ヒトタウオパチーの鍵となる特徴である。ADの病態
形成において、アミロイド-βペプチド(Aβ)の蓄積が、タウのリン酸化を調節するシグナ
ル伝達経路と相互作用する。タウの過剰リン酸化は、軸索輸送の調節におけるその正常な
機能を乱し、神経原線維変化及び可溶性タウの有毒種の蓄積に繋がる
【0004】
現在のところ、ADを治癒させる方法はない。承認されている治療は少なく、かつ有効性
は限られており、ほとんどは、進行を減速又は遅延させる役割を果たしている。
【0005】
AD及び他のタウオパチーの治療のための新たな療法の特定及び開発もまた、効果的な診
断用、予後用、及び予測用バイオマーカーを欠くこと、並びに新たな療法の設計のための
新たな標的を欠くことによって大いに影響を受けている。現在のところ、ADは、脳生検に
よるか、患者が死亡した後の剖検時にしか確定診断することができない。明らかに、臨床
現場では、脳生検は滅多に行われず、診断は、今でも主に、症状の履歴に基づいて行われ
、一連の神経学的検査、心理測定的検査、及び生化学的検査に依存している。これらの後
者の検査としては、ApoE e4アレル状態の評価、及び脳脊髄液中のアミロイドベータ、タ
ウ、及びホスホ-タウの測定が挙げられる。
【0006】
それでもやはり、これらの現行の方法はなお、AD及び他のタウオパチーの早期診断のた
めに不満足なものであるのみでなく、患者を臨床試験に動員するために重要である神経疾
患の進行を予測するため、新たな療法を設計するため、及び現行の療法及び新たな療法の
有効性を予測するためにも不満足なものである。
【0007】
理想的な診断用バイオマーカーは、非疾患と比較した疾患に対する高い特異性、並びに
疾患の種類及びステージを区別する高い感度を有するべきである。
【0008】
予後用バイオマーカーは、病理学的変化の強度及び重症度を反映し、変性が観察される
前の疾患の非常に初期の段階から、疾患の進行したステージまでのそれらの将来の経過を
予測するものであるべきである。
【0009】
薬力学的バイオマーカーは、容易に利用可能な体液、例えば、血液、血小板、血清、及
び最も好ましくは血漿を含む血液産物、並びにCSFにおける疾患関連タンパク質のレベル
の変化に基づいて、実施された療法が効果的であるのかどうかについての信頼できる指標
を提供すべきである。そのような薬力学的バイオマーカーが、いつ治療を中止したらよい
か、又はいつ別の療法に変更したらよいかのガイダンスを臨床医に提供できることも望ま
しい。
【0010】
新たな標的は、効果的であり、安全であり、臨床的及び商業的必要性を満たし、かつ特
に、「ドラッガブル(druggable)」である必要がある。「ドラッガブル」な標的は、小
分子であれより大きな生体分子であれ想定される薬物分子にとって到達可能なものであり
、結合すると、インビトロ及びインビボの双方で測定し得る生物学的応答を誘発する。言
い換えれば、それの阻害又は活性化は、疾患状態に治療効果をもたらすこととなる。
【0011】
従って、アルツハイマー病及び他のタウオパチーの患者の診断、ステージ分類、予後モ
ニタリング、及び治療有効性の評価において、バイオマーカーとして優れた感度及び/又
は特異性で働き得るとともに、新たな療法の開発のための新たな標的として役立ち得るタ
ンパク質が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
(発明の概要)
従って、本発明は、タウ毒性を特徴とする神経認知障害、例えば、タウオパチー、特に
、アルツハイマー病を診断するため、ステージ分類するため、治療するため、及び該障害
の治療の応答を評価するための方法における使用のための新規のバイオマーカー及びタウ
又はその断片のリン酸化アミノ酸を提供する。加えて、本発明は、タウオパチーに対する
新たな療法の開発のため、又は元々は神経認知障害、例えば、タウオパチーの治療のため
に設計されたものではない既存の療法の別用途への使用のための新規の標的を提供する。
【0013】
第1の態様において、本発明は:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片;及び/又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片
を含むバイオマーカーのパネルを提供する。
【0014】
第2の態様において、本発明は、タウ又はその1以上の断片を含むバイオマーカーのパネ
ルであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;
タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つの
リン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記パネルを提供する。
【0015】
第3の態様において、本発明は、表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合
せから選択される1以上、任意に2以上のタンパク質を含むバイオマーカーのパネルを提供
する。
【0016】
第1の態様の一実施態様において、前記バイオマーカーのパネルは、配列番号:11のアミ
ノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するアクチンアルファ心筋1、配列番号:12のア
ミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するアンチトロンビン-III、配列番号:3のア
ミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するBH3共役ドメインデスアゴニスト、配列
番号:24のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するcAMP依存性プロテインキナ
ーゼI型-ベータレギュラトリーサブユニット、配列番号:4のアミノ酸配列を含むか又は該
アミノ酸配列を有するカテニンデルタ-1、配列番号:23のアミノ酸配列を含むか又は該ア
ミノ酸配列を有する170kDaの中心体タンパク質、配列番号:5のアミノ酸配列を含むか又は
該アミノ酸配列を有するクラスリン軽鎖B、配列番号:13のアミノ酸配列を含むか又は該ア
ミノ酸配列を有するEgl nineホモログ1、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか又は該アミ
ノ酸配列を有するフィブリノーゲンガンマ鎖、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか又は
該アミノ酸配列を有するGMP還元酵素1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ
酸配列を有するグアニンヌクレオチド結合タンパク質G(q)サブユニットアルファ、配列番
号:15のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するインスリン様増殖因子結合タ
ンパク質6、配列番号:28のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するKxDLモチー
フ含有タンパク質1、配列番号:18のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するラ
ムダ-クリスタリンホモログ、配列番号:20のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を
有するミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、配列番号:7のアミノ酸配列
を含むか又は該アミノ酸配列を有する中性アルファ-グルコシダーゼAB、配列番号:19のア
ミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する核膜孔複合体タンパク質Nup155、配列番
号:16のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するOCIAドメイン含有タンパク質1
、配列番号:25のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するタンパク質KIAA1045
、配列番号:8のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するセセルニン-2、配列番
号:17のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する血清アルブミン、配列番号:9
のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する短鎖特異的アシルCoAデヒドロゲナ
ーゼ、配列番号:22のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するシナプトポリン(
Synaptoporin)、配列番号:10のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するシンタ
フィリン(Syntaphilin)、配列番号:21のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有す
る膜貫通型タンパク質119、及び配列番号:26のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列
を有するチューブリンアルファ鎖様3(Tubulin alpha chain-like 3)を含む群Aから選択さ
れる1以上の、代わりの2以上のタンパク質をさらに含む。
【0017】
別の実施態様において、本発明の第1の態様によるバイオマーカーのパネルは、群B、C
、又はDから選択される1以上のタンパク質をさらに含む。
【0018】
他の一実施態様において、第1の態様およびその実施態様によるバイオマーカーのパネ
ルは、本発明の第2及び/又は第3の態様において定義される1以上のバイオマーカーをさら
に含んでいてもよい。
【0019】
第4の態様において、本発明は、対象における神経認知障害を診断するための方法であ
って:
a)該対象から得られる試料を、それらの実施態様を含む本発明の第1、第2、及び第3の態
様のうちのいずれか1つにおいて定義される前記パネルの前記バイオマーカーについてア
ッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該パネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参
照濃度又は量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を有しているかどうかを
決定すること
を含む、前記方法を提供する。
【0020】
第5の態様において、本発明は、対象における神経認知障害をステージ分類するための
方法であって:
a)該対象から得られる試料を、それらの実施態様を含む本発明の第1、第2、及び第3の態
様のうちのいずれか1つにおいて定義される前記パネルの前記バイオマーカーについてア
ッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該パネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参
照濃度又は量と比較することによって、該対象における該神経認知障害のステージを決定
すること
を含む、前記方法を提供する。
【0021】
第6の態様において、本発明は、対象において神経認知障害を発症する可能性を評価す
るための方法であって:
a)該対象から得られる試料を、それらの実施態様を含む本発明の第1、第2、及び第3の態
様のうちのいずれか1つにおいて定義される前記パネルの前記バイオマーカーについてア
ッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該バイオマーカーパネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイ
オマーカーの参照濃度又は量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を発症す
る可能性があるかどうかを決定すること
を含む、前記方法を提供する。
【0022】
第7の態様において、本発明は、対象における神経認知障害を治療するための方法であ
って:
a)該対象から得られる試料を、それらの実施態様を含む本発明の第1、第2、及び第3の態
様のうちのいずれか1つにおいて定義される前記パネルの前記バイオマーカーについてア
ッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参照濃度又は
量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を有しているかどうかを決定するこ
と;
d)該神経認知障害を治療するための薬物を、該対象に投与すること
を含む、前記方法を提供する。
【0023】
あるいは、本発明の第7の態様は、対象における神経認知障害の治療における使用のた
めの薬物であって、該対象が:
a)該対象から得られる試料を、それらの実施態様を含む本発明の第1、第2、及び第3の態
様のうちのいずれか1つにおいて定義される前記パネルの前記バイオマーカーについてア
ッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参照濃度又は
量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を有しているかどうかを決定するこ
と
を含む方法によって選択される、前記薬物として説明され得る。
【0024】
あるいは、本発明の第7の態様は、対象における神経認知障害の治療のための薬品の生
産のための薬物の使用であって、該対象が:
a)該対象から得られる試料を、それらの実施態様を含む本発明の第1、第2、及び第3の態
様のうちのいずれか1つにおいて定義される前記パネルの前記バイオマーカーについてア
ッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参照濃度又は
量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を有しているかどうかを決定するこ
と
を含む方法によって選択される、前記使用として説明され得る。
【0025】
第8の態様において、本発明は、対象における神経認知障害を治療するための薬物に対
する応答を評価するための方法であって、該対象が、該薬物で治療されてきたか又は該薬
物で治療されており:
a)対象から得られる試料を、それらの実施態様を含む本発明の第1、第2、及び第3の態様
のうちのいずれか1つにおいて定義される前記パネルの前記バイオマーカーについてアッ
セイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参照濃度又は
量と比較することによって、該対象が、該薬物に応答してきたかどうか又は該薬物に応答
しているかどうかを決定すること
を含む、前記方法を提供する。
【0026】
本発明の第7及び第8の態様の一実施態様において、神経認知障害を治療するための前記
薬物は、キナーゼ阻害剤である。好ましくは、該キナーゼ阻害剤は、タウキナーゼ阻害剤
、又はカゼインキナーゼ阻害剤、任意に、カゼインキナーゼ1アルファ、ベータ、ガンマ
、デルタ、もしくはイプシロンから選択される。より好ましくは、該キナーゼ阻害剤は、
5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン;2-アミ
ノ-3-[(チオフェン-2-イル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;2-[3-(ピリジン
-4-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1,3-ベンゾオキサゾール;2-アミノ-3-[(4-フルオロフ
ェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフ
ェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;2-アミノ-3-ベンゾイルインドリジ
ン-1-カルボキサミド;2-アミノ-1-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]-1H-インドール-3-
カルボキサミド;それらの組合せ;又はそれらの医薬として許容し得る塩もしくは溶媒和物
から選択されるカゼインキナーゼ1デルタ阻害剤である。さらにより好ましくは、前記カ
ゼインキナーゼ1デルタ阻害剤は、5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-
イル)ピリミジン-2-アミン;2-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン
-1-カルボキサミド;2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン
-1-カルボキサミドから選択される。
【0027】
本発明の第4、第5、第6、第7、及び第8の態様の好ましい実施態様において、前記神経
認知障害は、タウ毒性を特徴とする。より好ましくは、前記神経認知障害は、タウオパチ
ーである。
【0028】
前記タウオパチーは、アルツハイマー病、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う
前頭側頭型認知症(FTDP-17)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、皮質基底核変性症、多
系統萎縮症(MSA)、鉄蓄積を伴う神経基底変性、1型(ハラーホルデン・スパッツ)、嗜銀顆
粒性認知症、ダウン症候群、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ボクサー認知症、
ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、筋強直性ジストロフィー、ニーマン
・ピック病C型、進行性皮質下グリオーシス、プリオンタンパク質脳アミロイドアンギオ
パチー、神経原線維変化型認知症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、クロ
イツフェルト・ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症症候群、神経原線維
変化/認知症を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、慢性外傷性脳障害、アルファ-シヌク
レイン病、パーキンソン病、又はそれらの組合せの群から選択されてもよい。
【0029】
さらにより好ましくは、前記タウオパチーは、アルツハイマー病である。
【0030】
本発明の第7の態様の一実施態様において、工程d)は、メマンチン(例えば、Namenda(登
録商標))、ガランタミン(例えば、Razadyne(登録商標))、リバスチグミン(例えば、Exelo
n(登録商標))、ドネペジル(例えば、Aricept(登録商標))、ソラネズマブ、5HT5アンタゴ
ニスト、又はそれらの組合せの群から選択される追加の治療薬剤を投与することをさらに
含む。
【0031】
本発明の第8の態様の他の一実施態様において、前記対象は、メマンチン(例えば、Name
nda(登録商標))、ガランタミン(例えば、Razadyne(登録商標))、リバスチグミン(例えば
、Exelon(登録商標))、ドネペジル(例えば、Aricept(登録商標))、ソラネズマブ、5HT5ア
ンタゴニスト、又はそれらの組合せの群から選択される追加の治療薬剤でも治療されてき
たか又は治療されていてもよい。
【0032】
第8の態様の別の実施態様において、好ましくは又は代わりに、工程c)の後に、前記方
法は、メマンチン(例えば、Namenda(登録商標))、ガランタミン(例えば、Razadyne(登録
商標))、リバスチグミン(例えば、Exelon(登録商標))、ドネペジル(例えば、Aricept(登
録商標))、ソラネズマブ、5HT5アンタゴニスト、又はそれらの組合せの群から選択される
追加の治療薬剤を投与することを含む。
【0033】
本発明の第4、第5、第6、第7、及び第8の態様の実施態様において、前記アッセイする
工程a)及び/又は前記測定する工程b)は:
i)前記試料を、前記パネルの前記バイオマーカーの各々に対する1以上の結合性物質と接
触させること;又は
ii)前記試料中で前記バイオマーカーの各々に特異的な自己抗体を検出すること;又は
iii)前記試料中で、質量分析により、前記パネルの前記バイオマーカー又はそれらの断片
の各々を、任意に該試料を1以上のアイソバリックな反応性質量標識で事前に標識して、
検出すること;又は
iv)前記試料中で、2Dゲル電気泳動により、前記パネルの前記バイオマーカーの各々を検
出すること;又は
iv)i)、ii)、iii)、もしくはiv)のいずれかの組合せ
を含む。
【0034】
好ましくは、工程a)における前記アッセイすること及び/又は工程b)における前記測定
することは:
i)前記パネルにおける前記バイオマーカーの1以上の断片を検出すること、及び/又は
ii)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するタウもしくはその1
以上の断片上の1以上のリン酸化アミノ酸を検出することであって;検出されるべきタウ上
の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合、タウ又はその1以上の断片上の少なくともも
う1つのリン酸化アミノ酸が検出される、前記検出することを含む。
【0035】
より好ましくは、前記試料は、固体支持体上に固定化されている。
【0036】
本発明の第4、第5、第6、第7、及び第8の態様の実施態様において、前記試料は、脳脊
髄液(CSF)、血液、血漿、血清、唾液、尿、組織(例えば、脳組織)又はそれらの組合せの
群から選択される。好ましくは、前記試料は、CSF又は血液である。同じく好ましくは、
前記対象は、ヒト対象である。
【0037】
第9の態様において、本発明は、試料中でそれらの実施態様を含む本発明の第1、第2、
及び第3の態様のうちのいずれか1つにおいて定義されるパネルのバイオマーカーをアッセ
イ及び/又は測定するための試薬を含むキットを提供する。
【0038】
前記試薬は、前記パネルの前記バイオマーカーに特異的に結合する1以上の結合性物質
を含んでいてもよい。好ましくは、前記1以上の結合性物質は、一次抗体であり、各々の
一次抗体は:
i)前記パネルの異なるバイオマーカー、及び/又は
ii)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するタウもしくはその断
片の1以上のリン酸化アミノ酸
に特異的に結合する。
【0039】
前記試薬は、該一次抗体に特異的に結合する1以上の二次抗体をさらに含んでいてもよ
い。好ましくは、前記二次抗体は、標識されている。
【0040】
第9の態様及びその実施態様の別の実施態様において、前記試料は、脳脊髄液(CSF)、血
液、血漿、血清、唾液、尿、組織(例えば、脳組織)又はそれらの組合せの群から選択され
る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
(図面の簡単な説明)
【
図1】ヒトプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aの配列。記号□又は*でフラグを付けたアミノ酸は、それぞれ、ヒトプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aのアイソフォーム又はバリアントにおいて異なるアミノ酸又は修飾アミノ酸によって置換されたアミノ酸を示す。
【
図2】ヒト2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼの配列。記号□又は*でフラグを付けたアミノ酸は、それぞれ、ヒト2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼのアイソフォーム又はバリアントにおいて異なるアミノ酸又は修飾アミノ酸によって置換されたアミノ酸を示す。
【
図3】プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aのベン図。
【
図4】2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼのベン図。
【
図5】(A)軽症(Braak 0~II)(n=3)、中等症(Braak III/IV)、又は重症(Braak V/VI)タウ病態のヒト脳;(B)ビヒクル単独で、又は30mg/kgのカゼインキナーゼ1デルタ阻害剤5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン(PS110)、及び2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド(PS278-05)を含むビヒクルで経口的に処置したヒトタウオパチーのTMHTモデル由来のマウス脳;及び(C)認知的に冒されている非AD対照(CTL;n=3)及び生化学的に診断されたAD患者(AD;n=3)由来のCSFにおけるプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aのレベル(全ての非修飾ペプチドのイオン強度の合計としてのもの)。
【
図6】(A)軽症(Braak 0~II)(n=3)、中等症(Braak III/IV)(n=3)、又は重症(Braak V/VI)(n=3)タウ病態のヒト脳;(B)ビヒクルのみ(n=3)、又は30mg/kgのカゼインキナーゼ1デルタ阻害剤5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン(PS110;n=3)及び2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド(PS278-05;n=3)を含むビヒクルで経口的に処置したヒトタウオパチーのTMHTモデル由来のマウス脳;及び(C)認知的に冒されている非AD対照(CTL;n=3)、及び生化学的に診断されたAD患者(AD;n=3)由来の脳脊髄液における2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼのレベル(全ての非修飾ペプチドのイオン強度の合計としてのもの)。
【
図7】ヒト対照及び生化学的に診断されたAD対象のCSFにおける脳由来のタンパク質を測定するTMTcalibrator(商標)実験の実験設計。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(定義)
「バイオマーカー」という用語は、翻訳後修飾を含む、同定されたタンパク質の全ての
生物学的に関係のある形態を含む。例えば、バイオマーカーは、グリコシル化形態、リン
酸化形態、多量体形態、断片化形態、又は前駆体形態で存在することができる。バイオマ
ーカー断片は、天然に存在するものであってもよく、又は例えば、酵素的に生成され、完
全なタンパク質の生物学的に活性のある機能を依然として保持しているものであってもよ
い。断片は、典型的には、少なくとも約10アミノ酸、通常、少なくとも約50アミノ酸の長
さであり、300アミノ酸もの長さ、又はそれより長いものとすることができる。
【0043】
「標準配列」という用語は、オルソロガスな種の中で最もよく見られる配列及び/又は
最もよく似ている配列を指すために本明細書において使用される。特に、別途規定されな
い限り、標準配列は、本明細書において、ヒト配列を指す。
【0044】
「KEGG経路」という用語は、代謝、遺伝情報処理、環境情報処理、細胞プロセス、生物
システム、ヒト疾患、及び創薬についての分子相互作用及び反応ネットワークを表す手描
きの一群の経路地図を指す。「KEGG経路マッピング」とは、分子データセット、特に、ゲ
ノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、及びメタボロミクスにおける大規
模なデータセットを、高次全身機能の生物学的解釈のためにKEGG経路地図にマッピングす
るプロセスのことである;(http://www.genome.jp/kegg/pathway.html)。
【0045】
「濃度又は量」という用語は、例えば、曲線下面積及びスペクトルカウントなどのLC-M
S/MS無標識定量法によって決定されるような試料中のバイオマーカーの相対濃度又は量を
指す。
【0046】
「比較すること」もしくは「比較する」という用語又はその文法的等価物は、試料中の
バイオマーカーの相対濃度又は量を、他の試料(例えば、私的な又は公的なデータベース
に保存されているタンパク質濃度又は量)と比べて測定することを意味する。
【0047】
「参照濃度もしくは量」という用語は、私的な又は公的なデータベースに保存されてい
るタンパク質濃度又は量を指すが、この用語は、それに限定されるものではない。「参照
濃度又は量」は、患者の大規模スクリーニングから、又はそのような決定と対照患者にお
ける臨床情報との間の既知のもしくは以前に決定された相関を参照することにより得られ
たものであってもよい。例えば、参照値は、対象と同様の年齢及び性別の対照対象、例え
ば、健常者(すなわち、認知症を有しない者)におけるバイオマーカーの濃度又は量との比
較によって決定されてもよい。あるいは、参照値は、文献中に見出すことができる値、例
えば、位置112及び158における変異の有無が比較すべき参照を表すApoE ε4アレルの存在
、又はCSF中の>350ng/Lの全タウ(T-タウ)、>80ng/Lのホスホ-タウ(P-タウ)、及び<530
ng/LのAβ42のレベルのようなものである(Hansson Oらの文献、Lancet Neurol. 2006, 5(
3):228-34)。さらに、参照値は、時間的に試験時点よりも前の1以上の時点で同じ対象か
ら得られたものであってもよい。そのような早期の試料を、試験時点の日付から1週間以
上、1カ月以上、3カ月以上、最も好ましくは、6カ月以上前に採取してもよい。いくつか
の実施態様において、複数の早期の試料を長期的に比較してもよく、バイオマーカー発現
の変化の傾きを認知低下の関連要因として算出してもよい。
【0048】
「対照」又は本明細書で使用される場合、「非AD対照」もしくは「非AD対象」という用
語は、認知的に正常であるヒト又は非ヒト対象、又は認知異常と診断されたか、もしくは
その症状を呈しているが、既存の生化学的検査に関して、非AD対象と定義される、ヒト又
は非ヒト対象から採取された組織試料又は体液試料を指す。
【0049】
「結合性物質」という用語は、一般に、本発明のバイオマーカーに対する親和性を有す
る任意の分子を指す。結合性物質は、アパタマー(apatamer)、抗体、レクチン、及び酵素
を含み得る。
【0050】
「抗体」という用語は、ポリクローナル抗血清、モノクローナル抗体、抗体の断片、例
えば、単鎖及びFab断片、並びに遺伝子改変抗体を含む。抗体は、キメラであっても、単
一種のものであってもよい。
【0051】
「アプタマー」という用語は、特定の標的に対する選択性を有する小型の親和性物質を
含み、これは、核酸、アミノ酸、もしくは他の合成有機分子、又はこれらの構成分子のう
ちの任意のものの組合せのプロイマー(ploymer)である。
【0052】
「選択反応モニタリング」、「SRM」、及び「MRM」という用語は、既知のバイオマーカ
ーを表す既知の質量電荷比のプリカーサーイオンが、優先的にイオントラップ又は三連四
重極質量分析計でのタンデム質量分析による分析の標的とされる質量分析アッセイを意味
する。分析中、親イオンは断片化され、第2の予め規定された質量電荷比の娘イオンの数
がカウントされる。通常、定量内部標準としての役割を果たすように、予め規定された数
の安定同位体置換を有するが、他の点では、標的イオンと化学的に同一である等価なプリ
カーサーイオンが本方法に含まれる。
【0053】
「イムノアッセイ」という用語は、本発明の1以上のバイオマーカーのレベルを、1以上
の結合性物質を用いて標的バイオマーカーを捕捉すること及び又はその存在を検出するこ
とによって定量的に測定する任意の方法を指す。イムノアッセイは、バイオマーカーが表
面に吸着され、検出可能な標識を保持する結合性物質を用いて検出される直接的なもので
あってもよく、バイオマーカーが表面に吸着され、その後、該バイオマーカーに対する特
異性を有する第1の結合性物質が該標的バイオマーカーに対する特異的結合を介して該表
面に捕捉され、第1の抗体に対して特異的である検出可能な標識を保持する第2の結合性物
質を用いて検出される間接的なものであってもよい。あるいは、イムノアッセイは、結合
性物質が固体支持体上に固定化されており、分析試料由来の標的バイオマーカーを捕捉す
るサンドイッチイムノアッセイであってもよい。その後、目下固定化されているバイオマ
ーカーは、上述のように直接的又は間接的な方法において結合性物質を用いて検出される
。
【0054】
「ビーズ懸濁アレイ」という用語は、バイオマーカーが、懸濁液に保持されている1つ
又はモール固体粒子上で検出されるイムノアッセイを意味する。
【0055】
「平面アレイ」という用語は、個々のバイオマーカー又は結合性物質が、ガラススライ
ド、シリコンウェハー、ニトロセルロース片を含むがこれらに限定されない連続的な固体
表面上の個々に分離したアドレス指定可能な位置に固定化されているイムノアッセイ系を
意味する。その後、イムノアッセイの後続の工程が、平面アレイの全表面に適用された通
常の試薬を用いて行なわれるか、又は該アレイ内の適切なアドレス指定可能な位置で個別
に追加され得る。
【0056】
「単離された」という用語又はその文法的等価物は、本明細書の全体を通じて、タンパ
ク質、抗体、ポリヌクレオチド、又は化学的分子が、場合によっては、それが天然に生じ
得る物理的環境とは異なる物理的環境で存在することを意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む
。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例
えば、非ヒト霊長類、齧歯類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬
虫類などを含む。
【0058】
「治療する」、「治療すること」、「治療」、「予防する」、「予防すること」、もし
くは「予防」という用語又はこれらの文法的等価物は、治療的治療、予防的治療、及び対
象が障害を発症するリスク又は他のリスク因子を軽減する適用を含む。治療は、障害の完
全な治癒を必要とせず、症状又は基礎となるリスク因子の軽減を包含する。
【0059】
本明細書で使用される「診断」という用語又はその文法的等価物は、患者における障害
の存在(existence)もしくは存在(presence)、非存在もしくは不在、又は可能性に関する
何らかの情報の提供を含む。これは、障害又はそれに関連して経験されるもしくは経験さ
れ得る症状の種類又は分類に関する情報の提供をさらに含む。これには、例えば、障害の
重症度の診断が含まれてもよい。これは、障害の医学的経過の予後、例えば、その持続期
間、重症度、及び軽度認知障害(MCI)からAD又は他の認知症への進行の経過を包含する。
【0060】
本明細書で使用される「ステージ分類する」という用語又はその文法的等価物は、対象
において、神経認知障害、特に、ADのステージを特定することを意味する。例えば、ADは
、使用される診断の枠組みに応じて、3つのステージ又は7つのステージにより特徴付けら
れる。全般的認知症スケール(Global Dementia Scale)は、全体的機能の1つのそのような
尺度である。これは、標準化された重症度基準セットに対する認知及び機能を含む重症度
の評価によって測定される。
【0061】
「効力」という用語は、所与の介入(例えば、薬物、医療機器、外科的手技など)の有益
な変化に関する能力を示す。効力が立証されれば、その介入は、それが比較されることに
なる他の利用可能な介入と少なくとも同じ程度に良好である可能性がある。「効力」及び
「有効性」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0062】
「含む」という用語は、対象が、列挙された全ての要素を含むが、任意に、追加の、名
前を挙げていない要素も含み得ること(すなわち、非限定(open))を示す。
【0063】
本明細書で使用される場合の「及び/又は」という用語は、2つの明記された特徴又は成
分の各々の、他方を伴う又は伴わない具体的開示として解釈されるべきである。例えば、
「A及び/又はB」は、各々が個別に本明細書に記述されているかのように、(i)A、(ii)B、
並びに(iii)A及びBの各々の具体的開示として解釈されるべきである。
【0064】
文脈上、そうでないと指示されない限り、上に記述された特徴/用語の定義は、本発明
の任意の特定の態様又は実施態様に限定されるのではなく、本明細書に記載される全ての
態様及び実施態様に等しく適用される。
【0065】
(略語)
CSF(脳脊髄液);LBD(レビー小体型認知症);FTD(前頭側頭型認知症);VaD(血管性認知症);
ALS(筋萎縮性側索硬化症) CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病);CNS(中枢神経系);TMT(登録
商標)(Tandem Mass Tag(登録商標));TEAB(炭酸水素テトラ-エチルアモニウム(amonium);T
FA(トリフルオロ酢酸);SDS(ドデシル硫酸ナトリウム);TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)
ホスフィン);ACN(アセトニトリル);Da(ダルトン);HPLC(高速液体クロマトグラフィー);FA
(ギ酸);IFC(インテリジェントフロー制御);LC-MS/MS(タンデム質量分析検出を伴う液体ク
ロマトグラフィー);MS(質量分析);MS/MS又はMS2(タンデムMS);MS/MS/MS又はMS3(トリプル
MS) PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動);SCX(強陽イオン交換);ppm(百万分率);TiO2(
二酸化チタン);IMAC(鉄金属アフィニティークロマトグラフィー);ELISA(酵素結合免疫吸
着測定(enzyme-linked immonusorbent assay))。
【0066】
(詳細な説明)
(1.タンパク質パネル及びそれを使用する方法)
タウが、神経変性障害、例えば、ADのようなタウオパチーの病態に関与していること、
及びそれが、神経原線維変化の形成に積極的に関与していることは広く受け入れられてい
るものの、過剰発現されかつ過剰リン酸化されたタウの毒性を媒介する分子過程について
はそれほど知られていない。
【0067】
本発明者らは、タウの過剰発現及び過剰リン酸化が、脳におけるタウ毒性を引き起こし
、疾患の進行及び重症度の一因となり得るシグナル伝達経路の活性化を含むさらなる事象
に繋がることを仮定した。本発明者らはさらに、これらの経路に関与するタンパク質の多
くが、タウ毒性の発展の間に血液及びCSF中に放出されるであろうこと、及び疾患過程の
早期に検出可能であろうことを仮定した。
【0068】
本発明者らは、驚くべきことに、複数の細胞プロセス、関連タンパク質、及び/又はそ
れらのレベルが、タウ用量依存的な様式で修飾されること、及びこれらの影響を受けた経
路が、ADのいくつかの特徴と相関していることを見出した。
【0069】
さらに、本明細書で同定されるバイオマーカーのパネルは、脳においてのみ発現してい
るのではなく、これらは、驚くべきことに、脳脊髄液(CSF)においても同定可能であり、
かつ最も重要なことには、それらのCSF中での存在量が、実質的なメモリー効果を伴い非A
D患者及びAD患者間で調節されている。
【0070】
最後に、本発明者らは、本明細書において、タウキナーゼ阻害剤(タウリン酸化を阻害
する酵素)の投与に際し、本発明によるパネルのタンパク質(すなわちバイオマーカー)の
存在量が、それらの投与前存在量に逆比例して増加する又は減少して、阻害剤がタウの過
剰リン酸化の減少において効果的であることを示すことの実証に成功した。最も驚くべき
ことに、これらのタンパク質の存在量が、それらの投与前存在量に逆比例して増加する又
は減少するにつれて、タウ毒性も同等に減少する。
【0071】
本発明は:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片;及び/又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片
を含むバイオマーカーのパネルを提供する。
【0072】
プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aは、PPP1CA(セリン/スレオ
ニンプロテインホスファターゼPP1-アルファ触媒サブユニット)の阻害剤である。リン酸
化された場合に、1000倍超高い阻害活性を有し、PPP1CA基質のリン酸化状態及び平滑な筋
収縮を調節するための分子スイッチを作製している。
【0073】
ミエリン形成細胞におけるRNA代謝に関与すると記載されている2’,3’-環状ヌクレオ
チド3’-ホスホジエステラーゼは、中枢神経系ミエリンにおいて3番目に多く存在するタ
ンパク質である。その触媒活性は、ヌクレオシド2',3'-環状ホスフェートに対するもので
あり、これはヌクレオシド2'-ホスフェートに変換される。
【0074】
アイソフォームは、標準配列に関する選択的タンパク質配列として本明細書に記載され
ている。アイソフォームは、単一の選択的プロモーター使用、単一の選択的スプライシン
グ、単一の選択的開始、及び単一のリボソームフレームシフトによるか、又はこれらの組
合せによって、同じ遺伝子から生じさせることができる。
【0075】
バリアントは、(天然に生じる)多形、系統、分離株、又は品種間の変化、疾患に関連す
る変異、及びRNA編集事象などの、天然のバリアントを含むように本明細書に記載されて
いる。バリアントは、通常、標準配列に関するアミノ酸変化として報告される。ほとんど
の天然に生じる多形(単一アミノ酸多形又はSAPとも呼ばれる)は、コドンレベルでの単一
ヌクレオチド変化によるものである。RNA編集事象には、ヌクレオチドの変換、挿入、及
び欠失が含まれる。
【0076】
断片は、タンパク質のタンパク質分解的(酵素的又はその他の)切断の結果として本明細
書に記載されている。断片は、天然のタンパク質分解的切断の結果、例えば、補体の活性
化、凝固カスケードの間に生じたか、又はマトリックスタンパク質の酵素的切断から生じ
た断片であり得る。あるいは、断片は、インビボ及び/又はインビトロで、例えば、プロ
テアーゼによって生じ得る。
【0077】
一実施態様において、プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aのバ
リアントは、配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有しており、ここ
で、
a)位置26のセリンが、ホスホセリンによって置き換えられているか;又は
b)位置38のスレオニンが、ホスホスレオニンによって置き換えられているか;又は
c)位置136のセリンが、ホスホセリンによって置き換えられているか;又は
d)位置123のグリシンが、アルギニンによって置き換えられている。
【0078】
図1は、プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14A(配列番号:1)のヒ
ト配列を示し;記号□でフラグを付けたものは、d)において上で示したように、ヒトプロ
テインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aのアイソフォームにおいて異なる
アミノ酸と置き換えられたアミノ酸である。*でフラグを付けたアミノ酸は、a)~c)にお
いて上で示したように、ヒトプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14A
のアイソフォームにおいて修飾アミノ酸によって置き換えられたアミノ酸である。
【0079】
別の実施態様において、プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aの
アイソフォームは、配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有しており
、ここで、アミノ酸68~94は、欠失している(アイソフォーム2)。
【0080】
別の実施態様において、2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼのバリア
ントは、配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつここで
a)位置110のチロシンが、ホスホチロシンによって置き換えられているか;又は
b)位置418のシステインが、システインメチルエステルによって置き換えられているか;又
は
c)位置418のシステインが、S-ファルネシルシステインによって置き換えられているか;又
は
d)位置207のグルタミンが、アルギニンによって置き換えられている。
【0081】
図2は、2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼ(配列番号:2)のヒト配列
を示し;記号□でフラグを付けたものは、d)において上で示したように、ヒト2’,3’-環
状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼのアイソフォームにおいて異なるアミノ酸と置
き換えられたアミノ酸である。*でフラグを付けたアミノ酸は、a)~c)において上で示し
たように、ヒトプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aのアイソフォ
ームにおいて修飾アミノ酸によって置き換えられたアミノ酸である。
【0082】
別の実施態様において、2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼのアイソ
フォームは、
配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有しており、ここで、アミノ酸
1~20は、欠失している(アイソフォームCNPI)。一般的な臨床実践において、バイオマー
カーとしての使用のためのタンパク質は、少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ又
は4つのセットとして測定される。従って、配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該ア
ミノ酸配列を有するプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそ
のアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片、及び/又は配列番号:2のアミノ
酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエス
テラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片に加えて、本発
明によるバイオマーカーのパネルは、配列番号:11のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ
酸配列を有するアクチンアルファ心筋1、配列番号:12のアミノ酸配列を含むか又は該アミ
ノ酸配列を有するアンチトロンビン-III、配列番号:3のアミノ酸配列を含むか又は該アミ
ノ酸配列を有するBH3共役ドメインデスアゴニスト、配列番号:24のアミノ酸配列を含むか
又は該アミノ酸配列を有するcAMP依存性プロテインキナーゼI型-ベータレギュラトリーサ
ブユニット、配列番号:4のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するカテニンデ
ルタ-1、配列番号:23のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する170kDaの中心
体タンパク質、配列番号:5のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するクラスリ
ン軽鎖B、配列番号:13のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するEgl nineホモ
ログ1、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するフィブリノーゲ
ンガンマ鎖、配列番号:27のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するGMP還元酵
素1、配列番号:6のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するグアニンヌクレオ
チド結合タンパク質G(q)サブユニットアルファ、配列番号:15のアミノ酸配列を含むか又
は該アミノ酸配列を有するインスリン様増殖因子結合タンパク質6、配列番号:28のアミノ
酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するKxDLモチーフ含有タンパク質1、配列番号:18
のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するラムダ-クリスタリンホモログ、配
列番号:20のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するミエリン関連オリゴデン
ドロサイト塩基性タンパク質、配列番号:7のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を
有する中性アルファ-グルコシダーゼAB、配列番号:19のアミノ酸配列を含むか又は該アミ
ノ酸配列を有する核膜孔複合体タンパク質Nup155、配列番号:16のアミノ酸配列を含むか
又は該アミノ酸配列を有するOCIAドメイン含有タンパク質1、配列番号:25のアミノ酸配列
を含むか又は該アミノ酸配列を有するタンパク質KIAA1045、配列番号:8のアミノ酸配列を
含むか又は該アミノ酸配列を有するセセルニン-2、配列番号:17のアミノ酸配列を含むか
又は該アミノ酸配列を有する血清アルブミン、配列番号:9のアミノ酸配列を含むか又は該
アミノ酸配列を有する短鎖特異的アシルCoAデヒドロゲナーゼ、配列番号:22のアミノ酸配
列を含むか又は該アミノ酸配列を有するシナプトポリン、配列番号:10のアミノ酸配列を
含むか又は該アミノ酸配列を有するシンタフィリン、配列番号:21のアミノ酸配列を含む
か又は該アミノ酸配列を有する膜貫通型タンパク質119、及び配列番号:26のアミノ酸配列
を含むか又は該アミノ酸配列を有するチューブリンアルファ鎖様3を含む群Aから選択され
る1以上の、代わりの2以上の、好ましくは、3つ以上のタンパク質をさらに含んでいても
よい。
【0083】
表1は、「群A」のバイオマーカーの名称、及びヒトタンパク質及びそのマウス対応物に
ついてのそれらのUniprotコードを示す。
【0084】
【0085】
一実施態様において、本発明によるバイオマーカーのパネルは、i)配列番号:1のアミノ
酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファターゼ1レギュラトリー
サブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片;及び/
又はii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌ
クレオチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片、並びに配列番号:11のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する
アクチンアルファ心筋1、配列番号:12のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有す
るアンチトロンビン-III、配列番号:3のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有す
るBH3共役ドメインデスアゴニスト、配列番号:4のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸
配列を有するカテニンデルタ-1、配列番号:5のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列
を有するクラスリン軽鎖B、配列番号:13のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有
するEgl nineホモログ1、配列番号:14のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有す
るフィブリノーゲンガンマ鎖、配列番号:6のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を
有するグアニンヌクレオチド結合タンパク質G(q)サブユニットアルファ、配列番号:15の
アミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するインスリン様増殖因子結合タンパク質
6、配列番号:18のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するラムダ-クリスタリ
ンホモログ、配列番号:7のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する中性アルフ
ァ-グルコシダーゼAB、配列番号:19のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する
核膜孔複合体タンパク質Nup155、配列番号:16のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配
列を有するOCIAドメイン含有タンパク質1、配列番号:8のアミノ酸配列を含むか又は該ア
ミノ酸配列を有するセセルニン-2、配列番号:17のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸
配列を有する血清アルブミン、配列番号:9のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を
有する短鎖特異的アシルCoAデヒドロゲナーゼ、及び配列番号:10のアミノ酸配列を含むか
又は該アミノ酸配列を有するシンタフィリンを含む「群B」から選択される1以上、好まし
くは2以上のバイオマーカーを含む。
【0086】
このバイオマーカーの部分群(本明細書においては、「群B」と称する)は、非AD個体の
ヒト血漿又はヒト血清において別々に同定されている(http://www.plasmaproteomedataba
se.org/)。従って、これらのバイオマーカーが、AD患者の血液/血液産物中に存在するの
みではなく、CSFにおいて観察されるそれらの上方/下方調節が血液中/血液産物中に移動
することも期待される。血液及びその産物(血漿又は血清)は、診断のためにCSFよりもす
ぐにかつ簡単に利用可能であるために、このことは特に有利である。
【0087】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、i)配列番号:1のアミノ酸配列を含
むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニッ
ト14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片;及び/又はii)配列
番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレオチド3
’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断
片、並びに配列番号:11のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するアクチンア
ルファ心筋1、配列番号:12のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するアンチト
ロンビン-III、配列番号:3のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するBH3共役
ドメインデスアゴニスト、配列番号:24のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有
するcAMP依存性プロテインキナーゼI型-ベータレギュラトリーサブユニット、配列番号:4
のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するカテニンデルタ-1、配列番号:23の
アミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する170kDaの中心体タンパク質、配列番号
:5のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するクラスリン軽鎖B、配列番号:13の
アミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するEgl nineホモログ1、配列番号:14のア
ミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するフィブリノーゲンガンマ鎖、配列番号:2
7のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するGMP還元酵素1、配列番号:6のアミ
ノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するグアニンヌクレオチド結合タンパク質G(q)
サブユニットアルファ、配列番号:15のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有す
るインスリン様増殖因子結合タンパク質6、配列番号:18のアミノ酸配列を含むか又は該ア
ミノ酸配列を有するラムダ-クリスタリンホモログ、配列番号:20のアミノ酸配列を含むか
又は該アミノ酸配列を有するミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、配列
番号:7のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する中性アルファ-グルコシダー
ゼAB、配列番号:19のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する核膜孔複合体タ
ンパク質Nup155、配列番号:16のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するOCIA
ドメイン含有タンパク質1、配列番号:25のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有
するタンパク質KIAA1045、配列番号:17のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有
する血清アルブミン、配列番号:9のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する短
鎖特異的アシルCoAデヒドロゲナーゼ、配列番号:22のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ
酸配列を有するシナプトポリン、配列番号:10のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配
列を有するシンタフィリン及び配列番号:26のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列
を有するチューブリンアルファ鎖様3を含む「群C」から選択される1以上、好ましくは2以
上のバイオマーカーを含む。
【0088】
このバイオマーカーの部分群(本明細書において、「群C」と称することとする)は、対
照対象と比較して、AD患者のヒトCSFにおいて調節されていること、及びカゼインキナー
ゼ阻害剤の投与の際に、マウス脳において逆調節されることが見出されている。
【0089】
【0090】
別の実施態様において、本発明によるバイオマーカーのパネルは、i)配列番号:1のアミ
ノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファターゼ1レギュラトリ
ーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片;及び
/又はii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌ
クレオチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片、並びに配列番号:8のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するセ
セルニン-2、配列番号:21のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する膜貫通型
タンパク質119、配列番号:28のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するKxDLモ
チーフ含有タンパク質1を含む「群D」から選択される1以上、好ましくは2以上のバイオマ
ーカーを含む。
【0091】
このバイオマーカーの部分群(本明細書において、「群D」と称することとする)は、対
照と比較して、AD患者の脳において調節されること、及びカゼインキナーゼ阻害剤の投与
に際しマウス脳において調節されることが見出されている。
【0092】
【0093】
群C及びD(それぞれ、表2及び表3に記載)は、2つの異なるカゼインキナーゼ阻害剤の投
与後に、マウス脳において調節されることが示されているバイオマーカー、及びi)(表2;
群C)Braakステージ3/4又は5/6のADのヒト患者のCSFにおいて、上方又は下方調節されるバ
イオマーカー又はii)(表3;群D)対照対象と比較して、AD患者のヒト脳において上方/下方
調節されるバイオマーカーを含む。これらのバイオマーカーは、タウオパチーを診断及び
ステージ分類することを可能とし、その特定の患者において治療が効果的であるかどうか
、又は代わりのアプローチを次に行うべきかどうかをはっきりさせることを可能とする薬
力学的バイオマーカーとしても役立つために非常に有利である。
【0094】
さらに、本発明は、タウ又はその1以上の断片を含むバイオマーカーのパネルであって
、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つ
のリン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記バイオマーカーのパ
ネルを提供する。
【0095】
微小管関連タンパク質タウは、アルツハイマー病の患者の海馬及び皮質において異常に
リン酸化され、最終的には、該疾病の病理学的特徴である対を成すらせん状の線維(PHFタ
ウ)へと器質化する凝集体を形成する。タウタンパク質のある種のリン酸化された形態は
、経シナプス伝播によっって脳内を伝播することができ、かつ、恐らく、これ及び他のよ
く理解されていないプロセスによって、脳脊髄液中にも見出される。CSF中の全タウに対
するセリン181でリン酸化されたタウ(2N4Rタウアイソフォーム配列;配列番号:29に基づく
)の比は、個体を前症候性アルツハイマー病を有するものとして分類するため、及び症候
性疾患において臨床診断を確認するために用いられる受け入れられたバイオマーカーであ
る。
【0096】
本発明において同定された配列番号:29のアミノ酸配列を有するか又は該アミノ酸配列
を含むタウ又はその断片上のリン酸化されたアミノ酸は、表4に例示されるように、セリ
ン及び/又はスレオニン及び/又はチロシンアミノ酸である。
【0097】
表4:ヒトCSF及び/又はヒト脳及び/又はマウス脳由来のタウにおいてリン酸化されている
ことが分かったタウタンパク質(配列番号:29)のアミノ酸(Xは、検出されたことを意味す
る)
【表4】
【0098】
表4に示すアミノ酸の各々は、診断用、予後用、及び/又は薬力学的バイオマーカーとし
て有用なものである。好ましくは、全ての試験において検出された(すべてのカラムでXの
)17個のリン酸化残基は、ヒト疾患の間に存在し、カゼインキナーゼ阻害剤で処置した動
物モデルにおいても検出され、かつヒトのCSFにおいても検出することができたために、
薬力学的バイオマーカーとして最大の可能性を有する。
【0099】
より好ましくは、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であって、タ
ウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S64、T181、S184、S202、S205、T231、及び/又はS235を含む、
前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0100】
一実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であって
、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)S61、S64、S199、S205、及びS396から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミ
ノ酸を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0101】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0102】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であって
、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S64を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0103】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S199を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0104】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S205を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0105】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0106】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61及びS64を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0107】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61及びS199を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0108】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61及びS205を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0109】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0110】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S64及びS199を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0111】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S64及びS205を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0112】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S64及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0113】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S199及びS205を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0114】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S199及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0115】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S205及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0116】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S64、及びS199を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0117】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S64、及びS205を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0118】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S64、及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む。
【0119】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であって
、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S199、及びS205を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む
。
【0120】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S199、及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む
。
【0121】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S205、及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む
。
【0122】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S64、S199、及びS205を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む
。
【0123】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S64、S199、及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む
。
【0124】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であって
、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S64、S205、及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む
。
【0125】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S199、S205、及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を含む
。
【0126】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S64、S199、及びS205を含む、前記タウ又はその1以上の断片を
含む。
【0127】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S64、S199、及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片を
含む。
【0128】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S199、S205、及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の断片
を含む。
【0129】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、タウ又はその1以上の断片であっ
て、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)リン酸化アミノ酸S61、S64、S199、S205、及びS396を含む、前記タウ又はその1以上の
断片を含む。
【0130】
上述のような、アミノ酸配列、及びタウ内又はその1以上の断片上の特定のリン酸化ア
ミノ酸に関する実施態様は、本発明の第2の態様の他の実施態様の全て、及びタウ又はそ
の1以上の断片が関与する本発明の他の態様の全てに等しく適用可能である。
【0131】
一実施態様において、バイオマーカーのパネルは、群A、B、C、又はDから選択される少
なくとも1つのバイオマーカー、及びタウ又はその1以上の断片であって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
む;前記タウ又はその1以上の断片から選択される1つのバイオマーカーを含み、ここで、
タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルは、少なくとももう1つの
リン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む。好ましくは、群A、B、C、又
はDから選択されるバイオマーカーは:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片であるか;又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片である。
【0132】
より好ましくは、パネルは、3つ以上、4つ以上、5つ以上のバイオマーカーを含み、こ
こで、タウに追加される少なくとも2つのバイオマーカーは、群A、B、C、又はDから選択
され、かつi)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテイン
ホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバ
リアント、もしくは断片;及びii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列
を有する2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム
、もしくはバリアント、もしくは断片である。
【0133】
さらに、本発明は、表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択
される1以上、任意に2以上のタンパク質を含むバイオマーカーのパネルを提供する。
【0134】
これらのバイオマーカーは、対照と比較して、AD患者のCSFにおいて高度に調節されて
いることが見出されている。各々のタンパク質の全ての非修飾ペプチドを、3つの対照、
及び3つのAD症例についてまとめた。その後、各々のタンパク質のlog2比及びp値を算出し
た。2以上のペプチド、>60%調節、及びp<0.05であるタンパク質を表5のバイオマーカー
として選択した。
【0135】
表5:対照と比較してAD患者のCSFにおいて上方/下方調節されるバイオマーカー
【表5】
【0136】
一実施態様において、バイオマーカーのパネルは、少なくともベイシジンを含む。
【0137】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、少なくともミトコンドリアのシト
クロムcオキシダーゼサブユニット7A関連タンパク質を含む。
【0138】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、少なくともベイシジン、及びミト
コンドリアのシトクロムcオキシダーゼサブユニット7A関連タンパク質を含む。
【0139】
ベイシジン又はBSG又は細胞外マトリックスメタロプロテイナーゼ誘導因子(EMMPRIN)又
は表面抗原分類147(CD147)は、I型内在性膜受容体である。シクロフィリン(CyP)タンパク
質Cyp-A及びCyP-B、並びに特定のインテグリンを含む多くのリガンドを有する。ベイシジ
ンは、メタロプロテイナーゼ誘導能を有しており、かつそれは、いくつかの別個機能、例
えば、精子形成、モノカルボン酸輸送体の発現、及びリンパ球の応答性も調節している。
それは、上皮細胞、内皮細胞、及び白血球を含む多くの細胞型により発現される。ヒトベ
イシジンタンパク質は、N-末端細胞外部分に2つの重度にグリコシル化されたC2型免疫グ
ロブリン様ドメインを形成する269個のアミノ酸を含有する。その細胞外部分に追加の免
疫グロブリン様ドメインを1つ含有するベイシジンの第2の形態も特性が明らかにされてい
る。そのアミノ酸配列を、配列番号:30に示す。
【0140】
ミトコンドリアのシトクロムcオキシダーゼサブユニット7A関連タンパク質、すなわちC
ox7rは、ヒトにおいてCOX7A2L遺伝子によってコードされる酵素である。ミトコンドリア
のシトクロムcオキシダーゼサブユニット7A関連タンパク質は、シトクロムcオキシダーゼ
(COX)の成分であり、それは、ミトコンドリア呼吸鎖の末端成分であり、かつ還元型シト
クロムcから酸素への電子伝達を触媒する。そのアミノ酸配列を、配列番号:31に示す。
【0141】
上記したような、表5から選択されるバイオマーカーに関する実施態様は、本発明の第3
の態様の他の実施態様の全て、及び表5から選択されるバイオマーカーが関与する本発明
の他の態様の全てに等しく適用可能である。
【0142】
一実施態様において、バイオマーカーのパネルは、表5から選択される少なくとも1つの
バイオマーカー、及びタウ又はその1以上の断片から選択される少なくとも1つのバイオマ
ーカーであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
む、前記少なくとも1つのバイオマーカーを含み;ここで、タウ上の該リン酸化アミノ酸
が、T181である場合に、該パネルは、少なくとももう1つのリン酸化アミノ酸を有するタ
ウ又はその1以上の断片を含む。
【0143】
好ましくは、該パネルは、群A、B、C、又はDから選択される1つのバイオマーカーも含
む。より好ましくは、群A、B、C、又はDから選択されるバイオマーカーは:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片;又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片である。
【0144】
表5に列挙したバイオマーカーは、ADの病態に関連性があることが知られている特定の
経路に属していることもある。それらを、以下で特定のGO用語(http://geneontology.org
/)に従い表6~表13に例示されているもののような特定のリストにさらにグループ分けし
てもよい。
【0145】
データを解析するために用いたGO用語の1つは、「Synap*」という用語であった。表5
のうちでこの特定の経路の一部として登録されるバイオマーカーを、表6に示す。
【0146】
一実施態様において、本発明によるバイオマーカーのパネルは、表6から選択される1以
上、好ましくは2以上のバイオマーカーを含む。
【0147】
表6:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Synap*」を有するタン
パク質
【表6】
【0148】
一実施態様において、バイオマーカーのパネルは、表6から選択される少なくとも1つの
バイオマーカー、及びタウ又はその1以上の断片から選択される少なくとも1つのバイオマ
ーカーであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
む、前記少なくとも1つのバイオマーカーを含み;ここで、タウ上の該リン酸化アミノ酸
が、T181である場合に、該パネルは、少なくとももう1つのリン酸化アミノ酸を有するタ
ウ又はその1以上の断片を含む。
【0149】
好ましくは、該パネルは、群A、B、C、又はDから選択される1つのバイオマーカーも含
む。より好ましくは、群A、B、C、又はDから選択されるバイオマーカーは:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片であるか;又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片である。
【0150】
データを解析するために用いた別のGO用語は、「Phosporyl*」という用語であった。
表5のうちでこの特定の経路の一部として登録されるバイオマーカーを表7に示す。
【0151】
別の実施態様において、本発明によるバイオマーカーのパネルは、表7から選択される1
以上、好ましくは2以上のバイオマーカーを含む。
【0152】
表7:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Phosporyl*」を有する
タンパク質
【表7】
【0153】
一実施態様において、バイオマーカーのパネルは、表7から選択される少なくとも1つの
バイオマーカー、及びタウ又はその1以上の断片から選択される少なくとも1つのバイオマ
ーカーであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
む、前記少なくとも1つのバイオマーカーを含み;ここで、タウ上の該リン酸化アミノ酸
が、T181である場合に、該パネルは、少なくとももう1つのリン酸化アミノ酸を有するタ
ウ又はその1以上の断片を含む。
【0154】
好ましくは、該パネルは、群A、B、C、又はDから選択される1つのバイオマーカーも含
む。より好ましくは、群A、B、C、又はDから選択されるバイオマーカーは:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片であるか;又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片である。
【0155】
データを解析するために用いた別のGO用語は、「Stress」という用語であった。表5の
うちでこの特定の経路の一部として登録されるバイオマーカーを表8に示す。
【0156】
別の実施態様において、本発明によるバイオマーカーのパネルは、表8から選択される1
以上、好ましくは2以上のバイオマーカーを含む。
【0157】
表8:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Stress」を有するタン
パク質
【表8】
【0158】
さらに別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、表8から選択される少なく
とも1つのバイオマーカー、及びタウ又はその1以上の断片から選択される少なくとも1つ
のバイオマーカーであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
む、前記少なくとも1つのバイオマーカーを含み;ここで、タウ上の該リン酸化アミノ酸
が、T181である場合に、該パネルは、少なくとももう1つのリン酸化アミノ酸を有するタ
ウ又はその1以上の断片を含む。
【0159】
好ましくは、該パネルは、群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカーも
含む。より好ましくは、群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカーは:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片であるか;又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片である。
【0160】
データを解析するために用いた別のGO用語は、「Calcium」という用語であった。表5の
うちでこの特定の経路の一部として登録されるバイオマーカーを表9に示す。
【0161】
別の実施態様において、本発明によるバイオマーカーのパネルは、表9から選択される1
以上、好ましくは2以上のバイオマーカーを含む。
【0162】
表9:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Calcium」を有するタン
パク質
【表9】
【0163】
別の実施態様の1つにおいて、バイオマーカーのパネルは、表9から選択される少なくと
も1つのバイオマーカー、及びタウ又はその1以上の断片から選択される少なくとも1つの
バイオマーカーであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
む、前記少なくとも1つのバイオマーカーを含み;ここで、タウ上の該リン酸化アミノ酸
が、T181である場合に、該パネルは、少なくとももう1つのリン酸化アミノ酸を有するタ
ウ又はその1以上の断片を含む。
【0164】
好ましくは、該パネルは、群A、B、C、又はDから選択される1つのバイオマーカーも含
む。より好ましくは、群A、B、C、又はDから選択されるバイオマーカーは:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片であるか;又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片である。
【0165】
データを解析するために用いた別のGO用語は、「Cytoskelet*」という用語であった。
表5のうちでこの特定の経路の一部として登録されるバイオマーカーを表10に示す。
【0166】
別の実施態様において、本発明によるバイオマーカーのパネルは、表10から選択される
1以上、好ましくは2以上のバイオマーカーを含む。
【0167】
表10:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Cytoskelet*」を有す
るタンパク質
【表10】
【0168】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、表10から選択される少なくとも1
つのバイオマーカー、及びタウ又はその1以上の断片から選択される少なくとも1つのバイ
オマーカーであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
む、前記少なくとも1つのバイオマーカーを含み;ここで、タウ上の該リン酸化アミノ酸
が、T181である場合に、該パネルは、少なくとももう1つのリン酸化アミノ酸を有するタ
ウ又はその1以上の断片を含む。
【0169】
好ましくは、該パネルは、群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカーも
含む。より好ましくは、群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカーは:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片であるか;又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片である。
【0170】
データを解析するために用いたさらに別のGO用語は、「Mitochondri*」という用語で
あった。表5のうちでこの特定の経路の一部として登録されるバイオマーカーを表11に示
す。
【0171】
別の実施態様において、本発明によるバイオマーカーのパネルは、表11から選択される
1以上、好ましくは2以上のバイオマーカーを含む。
【0172】
表11:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Mitochondri*」を有
するタンパク質
【表11】
【0173】
別の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、表11から選択される少なくとも1
つのバイオマーカー、及びタウ又はその1以上の断片から選択される少なくとも1つのバイ
オマーカーであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
む、前記少なくとも1つのバイオマーカーを含み;ここで、タウ上の該リン酸化アミノ酸
が、T181である場合に、該パネルは、少なくとももう1つのリン酸化アミノ酸を有するタ
ウ又はその1以上の断片を含む。
【0174】
好ましくは、該パネルは、群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカーも
含む。より好ましくは、群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカーは:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片であるか;又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片である。
【0175】
表5のバイオマーカーを、GO用語「Vesicle」及び「Insuline」でも解析した。これらの
特定の経路の一部として登録されるものを、表12及び表13にそれぞれ示す。
【0176】
別の実施態様において、本発明によるバイオマーカーのパネルは、表12又は表13から選
択される1以上、好ましくは2以上のバイオマーカーを含む。
【0177】
表12:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Vesicle」を有するタ
ンパク質
【表12】
【0178】
表13:AD患者のCSFにおいて調節されることが分かっているGO用語「Insulin」を有するタ
ンパク質
【表13】
【0179】
他の実施態様において、バイオマーカーのパネルは、表12又は表13から選択される少な
くとも1つのバイオマーカー、及びタウ又はその1以上の断片から選択される少なくとも1
つのバイオマーカーであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
む、前記少なくとも1つのバイオマーカーを含み;ここで、タウ上の該リン酸化アミノ酸
が、T181である場合に、該パネルは、少なくとももう1つのリン酸化アミノ酸を有するタ
ウ又はその1以上の断片を含む。
【0180】
好ましくは、該パネルは、群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカーも
含む。より好ましくは、群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカーは:
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファタ
ーゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、
もしくは断片であるか;又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片である。
【0181】
各々のタンパク質の全ての非修飾ペプチドを、3つの対照及び3つのAD症例についてまと
めた。その後、各々のタンパク質のlog2比及びp値を算出した。2以上のペプチド、>60%
調節、及びp<0.05であるタンパク質を、シナプス機能障害(表6)、調節不全のリン酸化(表
7)、酸化ストレス(表8)、調節不全のカルシウムシグナル伝達(表9)、調節不全の細胞骨格
(表10)、ミトコンドリア損傷(表11)、異常なベシクル機能(表12)、及び機能障害性インス
リンシグナル伝達(表13)のバイオマーカーとして選択した。
【0182】
本明細書に記載されるバイオマーカーのパネルは、タウ毒性を特徴とする神経認知疾患
、例えば、タウオパチー、及び特にアルツハイマー病などの神経認知障害を診断するため
、該神経認知障害をステージ分類するため、該神経認知障害を発症する可能性を評価する
ため、及び該神経認知障害を治療するための薬物への応答を評価するために有用である。
このような方法のいずれかにおけるこれら本発明によるバイオマーカーのパネルの使用に
は、かなりの利点がある。
【0183】
第一に、本発明によるバイオマーカーは、タウ毒性及び結果として脳において生じる経
路の変化の、末梢組織、例えばCSF及び血液における末梢シグナルへの翻訳を表す。従っ
て、これらは、組織試験を末梢液試験で置き換えることを可能とする。特に、神経認知障
害において主に影響される組織が、脳組織であるために、このことは、大きな利点となる
。脳生検(brain biopsy)は、死後でない限り行われない。
【0184】
第二に、本発明によるバイオマーカーは、タウ毒性を特徴とする神経認知障害、例えば
、アルツハイマー病の特定のステージを説明することができるものとして選択されている
。また、現在のところ、疾患の進行をある程度表すものの、疾患のステージに関しては正
確ではない可能性があり、従って、特定のステージのために開発及び承認されている療法
を選択することを特に難しくする一連の心理測定的試験を介して、ADのような神経認知疾
患の進行を臨床医は評価しているために、このことは大きな利点となる。
【0185】
第三に、これらのバイオマーカーは、典型的には文献で報告されているものでも臨床の
現場でタウオパチーのバイオマーカーとして現在用いられているものでもないタンパク質
をさらに含んでおり、従って、タウ毒性を特徴とする神経認知障害、例えば、ADを有する
対象、及び神経認知障害の症状を呈しているにもかかわらず、ADの初期兆候によって影響
を受けていない対象を、初期段階においてさえも特定しかつ区別するための追加のツール
を、臨床医に提供する。
【0186】
従って、本発明は、対象における神経認知障害を診断するための方法であって、該方法
が:
a)該対象から得られる試料を、本明細書において規定されたようなパネルのバイオマーカ
ーについてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該パネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参
照濃度又は量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を有しているかどうかを
決定すること;
を含み、
該バイオマーカーのパネルが:
I)i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファ
ターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント
、もしくは断片;及び/又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、バリアント、もしくは断片
;又は
II)群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカー;又は
III)タウ又はその1以上の断片であって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つ
のリン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記タウ又はその1以上の
断片;又は
IV)表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択される1以上、任意
に2以上のタンパク質;又は
V) I)、II)、III)、及びIVの組合せ
を含むパネルから選択される、前記方法を提供する。
【0187】
好ましくは、前記神経認知障害は、タウ毒性を特徴とする;より好ましくは、前記神経
認知障害は、アルツハイマー病、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型
認知症(FTDP-17)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、皮質基底核変性症、多系統萎縮症
(MSA)、鉄蓄積を伴う神経基底変性、1型(ハラーホルデン・スパッツ)、嗜銀顆粒性認知症
、ダウン症候群、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ボクサー認知症、ゲルストマ
ン・シュトロイスラー・シャインカー病、筋強直性ジストロフィー、ニーマン・ピック病
C型、進行性皮質下グリオーシス、プリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパチー、神
経原線維変化型認知症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、クロイツフェル
ト・ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症症候群、神経原線維変化/認知症
を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、慢性外傷性脳障害、アルファ-シヌクレイン病、
パーキンソン病、又はそれらの組合せの群から選択されるタウオパチーである。
【0188】
さらにより好ましくは、該タウオパチーは、アルツハイマー病である。
【0189】
本発明は、対象における神経認知障害をステージ分類するための方法であって:該方法
が
a)該対象から得られる試料を、本明細書において規定されたパネルのバイオマーカーにつ
いてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該パネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参
照濃度又は量と比較することによって、該対象における該神経認知障害のステージを決定
すること;
を含み、該バイオマーカーのパネルが:
I)i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファ
ターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント
、もしくは断片;及び/又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、バリアント、もしくは断片
;又は
II)群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカー;又は
III)タウ又はその1以上の断片であって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つ
のリン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記タウ又はその1以上の
断片;又は
IV)表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択される1以上、任意
に2以上のタンパク質;又は
V) I)、II)、III)、及びIVの組合せ
を含むパネルから選択される、前記方法も提供する。
【0190】
好ましくは、本発明によるステージ分類する方法においては、プロテインホスファター
ゼ1レギュラトリーサブユニット14Aのレベルが、神経認知障害の進行したステージにある
対象の試料中で増加し;かつ/又は2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼの
レベルが、神経認知障害の進行したステージにある対象の試料中で増加する。一実施態様
において、神経認知障害のステージ分類が高いほど(すなわちより進行したステージにあ
るほど)、タウ発現及び過剰リン酸化が高い。従って、該ステージは、タウ依存的である
。
【0191】
好ましくは、前記神経認知障害は、タウ毒性を特徴とし、より好ましくは、該神経認知
障害は、アルツハイマー病、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知
症(FTDP-17)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、皮質基底核変性症、多系統萎縮症(MSA
)、鉄蓄積を伴う神経基底変性、1型(ハラーホルデン・スパッツ)、嗜銀顆粒性認知症、ダ
ウン症候群、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ボクサー認知症、ゲルストマン・
シュトロイスラー・シャインカー病、筋強直性ジストロフィー、ニーマン・ピック病C型
、進行性皮質下グリオーシス、プリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパチー、神経原
線維変化型認知症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、クロイツフェルト・
ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症症候群、神経原線維変化/認知症を伴
う非グアム型運動ニューロン疾患、慢性外傷性脳障害、アルファ-シヌクレイン病、パー
キンソン病、又はそれらの組合せの群から選択されるタウオパチーである、
【0192】
さらにより好ましくは、前記タウオパチーは、アルツハイマー病(AD)であり、かつ前記
ステージ分類は、ADのBraakステージ分類のステージのいずれか1つである。
【0193】
ADのBraakステージ分類は、1991年に初めて記載(Braak, H.らの文献、(1991) Acta Neu
ropathologica 82 (4): 239-59)され:
・神経原線維変化の関与が、主として脳のトランス嗅内領域(transentorhinal region)に
限定されている場合に使用されるステージI及びII;
・海馬などの辺縁系領域の関与も存在する場合のステージIII、及びIV、並びに
・広範な新皮質の関与が存在する場合のステージV及びVI
を含む。
【0194】
好ましい一実施態様において、前記神経認知障害がADである場合、配列番号:1のアミノ
酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファターゼ1レギュラトリー
サブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片の濃度
又は量は、AD BraakステージIII又はステージIVのAD患者と比較してAD BraakステージV又
はBraakステージVIのAD患者の試料において増加している。
【0195】
別の好ましい実施態様において、前記神経認知障害がADである場合、配列番号:2のアミ
ノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエ
ステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片の濃度又は量
は、AD BraakステージIII又はステージIVのAD患者と比較して、AD BraakステージV又はBr
aakステージVIのAD患者の試料において増加している。
【0196】
本発明は、対象において神経認知障害を発症する可能性を評価するための方法であって
:
a)該対象から得られる試料を、本明細書において規定されたパネルのバイオマーカーにつ
いてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該バイオマーカーパネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイ
オマーカーの参照濃度又は量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を発症す
る可能性があるかどうかを決定すること;を含み、
前記バイオマーカーのパネルが:
I)i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファ
ターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント
、もしくは断片;及び/又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、バリアント、もしくは断片
;又は
II)群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカー;又は
III)タウ又はその1以上の断片であって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つ
のリン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記タウ又はその1以上の
断片;又は
IV)表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択される1以上、任意
に2以上のタンパク質;又は
V) I)、II)、III)、及びIVの組合せ、を含むパネルから選択される、前記方法も提供する
。
【0197】
好ましくは、前記神経認知障害は、タウ毒性を特徴とし、より好ましくは、前記神経認
知障害は、アルツハイマー病、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認
知症(FTDP-17)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、皮質基底核変性症、多系統萎縮症(M
SA)、鉄蓄積を伴う神経基底変性、1型(ハラーホルデン・スパッツ)、嗜銀顆粒性認知症、
ダウン症候群、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ボクサー認知症、ゲルストマン
・シュトロイスラー・シャインカー病、筋強直性ジストロフィー、ニーマン・ピック病C
型、進行性皮質下グリオーシス、プリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパチー、神経
原線維変化型認知症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、クロイツフェルト
・ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症症候群、神経原線維変化/認知症を
伴う非グアム型運動ニューロン疾患、慢性外傷性脳障害、アルファ-シヌクレイン病、パ
ーキンソン病、又はそれらの組合せの群から選択されるタウオパチーである。
【0198】
さらにより好ましくは、前記タウオパチーは、アルツハイマー病である。
【0199】
本発明は、対象における神経認知障害を治療するための方法であって:
a)該対象から得られる試料を、本明細書において規定されたパネルのバイオマーカーにつ
いてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参照濃度又は
量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を有しているかどうかを決定するこ
と;
d)該神経認知障害を治療するための薬物を、該対象に投与すること;を含み、
前記バイオマーカーのパネルが:
I)i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファ
ターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント
、もしくは断片;及び/又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、バリアント、もしくは断片
;又は
II)群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカー;又は
III)タウ又はその1以上の断片であって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つ
のリン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記タウ又はその1以上の
断片;又は
IV)表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択される1以上、任意
に2以上のタンパク質;又は
V) I)、II)、III)、及びIVの組合せ、を含むパネルから選択される、前記方法も提供する
。
【0200】
あるいは、本態様は、対象における神経認知障害の治療における使用のための薬物であ
って、該対象が:
a)該対象から得られる試料を、それらの実施態様を含む本発明の第1、第2、及び第3の態
様のうちのいずれか1つにおいて定義される前記パネルの前記バイオマーカーについてア
ッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参照濃度又は
量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を有しているかどうかを決定するこ
と;
を含む方法によって選択され、
該バイオマーカーのパネルが:
I)i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファ
ターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント
、もしくは断片;及び/又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、バリアント、もしくは断片
;又は
II)群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカー;又は
III)タウ又はその1以上の断片であって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つ
のリン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記タウ又はその1以上の
断片;又は
IV)表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択される1以上、任意
に2以上のタンパク質;又は
V) I)、II)、III)、及びIVの組合せ
を含むパネルから選択される、前記薬物として、又は、あるいは、対象における神経認知
障害の治療のための薬品の生産のための薬物の使用であって、該対象が:
a)該対象から得られる試料を、それらの実施態様を含む本発明の第1、第2、及び第3の態
様のうちのいずれか1つにおいて定義される前記パネルの前記バイオマーカーについてア
ッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参照濃度又は
量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を有しているかどうかを決定するこ
と;を含む方法によって選択され、
該バイオマーカーのパネルが:
I)i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファ
ターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント
、もしくは断片;及び/又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、バリアント、もしくは断片
;又は
II)群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカー;又は
III)タウ又はその1以上の断片であって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つ
のリン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記タウ又はその1以上の
断片;又は
IV)表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択される1以上、任意
に2以上のタンパク質;又は
V) I)、II)、III)、及びIVの組合せ
を含むパネルから選択される、前記使用として説明され得る。
【0201】
一実施態様において、試料が脳試料である場合、配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又
は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、
又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片;及び/又は配列番号:2のア
ミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジ
エステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片の濃度又は
量は、神経認知障害を治療するための薬物の投与に応答して減少するであろう。
【0202】
別の実施態様において、試料がCSFである場合、配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又
は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、
又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片;及び/又は配列番号:2のア
ミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジ
エステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もしくは断片の濃度又は
量は、治療に応答して増加又は減少する。
【0203】
本発明は、対象における神経認知障害を治療するための薬物に対する応答を評価するた
めの方法であって、該対象が、該薬物で治療されてきたか又は該薬物で治療されており、
該方法が:
a)該対象から得られる試料を、本明細書に記載されるパネルのバイオマーカーについてア
ッセイすること;
b)該試料中で、該バイオマーカーパネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定する
こと;
c)該試料中の該パネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参
照濃度又は量と比較することによって、該アルツハイマー病の治療が成功かどうかを決定
すること、を含み
該バイオマーカーのパネルが:
I)i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファ
ターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント
、もしくは断片;及び/又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、バリアント、もしくは断片
;又は
II)群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカー;又は
III)タウ又はその1以上の断片であって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つ
のリン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記タウ又はその1以上の
断片;又は
IV)表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択される1以上、任意
に2以上のタンパク質;又は
V) I)、II)、III)、及びIVの組合せ
を含むパネルから選択される、前記方法も提供する。
【0204】
好ましくは、本発明のこれら2つの態様における神経認知障害は、タウ毒性を特徴とし
、より好ましくは、前記神経認知障害は、アルツハイマー病、17番染色体に連鎖しパーキ
ンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、皮質
基底核変性症、多系統萎縮症(MSA)、鉄蓄積を伴う神経基底変性、1型(ハラーホルデン・
スパッツ)、嗜銀顆粒性認知症、ダウン症候群、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病
、ボクサー認知症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、筋強直性ジスト
ロフィー、ニーマン・ピック病C型、進行性皮質下グリオーシス、プリオンタンパク質脳
アミロイドアンギオパチー、神経原線維変化型認知症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性
硬化性全脳炎、クロイツフェルト・ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症
症候群、神経原線維変化/認知症を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、慢性外傷性脳障
害、アルファ-シヌクレイン病、パーキンソン病、又はそれらの組合せ、の群から選択さ
れるタウオパチーである。
【0205】
好ましい一実施態様において、前記タウオパチーは、アルツハイマー病である。
【0206】
一実施態様において、神経認知障害を治療するための薬物はキナーゼ阻害剤であり;好
ましくは、該キナーゼ阻害剤は、タウキナーゼ阻害剤又はカゼインキナーゼ阻害剤、より
好ましくはカゼインキナーゼ1アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、又はイプシロンから
選択される。
【0207】
さらにより好ましくは、前記キナーゼ阻害剤は、カゼインキナーゼ1デルタ阻害剤であ
る。カゼインキナーゼ1デルタ阻害剤は、引例として本明細書に組み込まれているWO20120
80727及びWO2012080729に記載されている。
【0208】
カゼインキナーゼ1デルタ阻害剤の例は、5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリ
ジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン(PS110);
2-アミノ-3-[(チオフェン-2-イル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;
2-[3-(ピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1,3-ベンゾオキサゾール;
2-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド(PS278);
2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド
2-アミノ-3-ベンゾイルインドリジン-1-カルボキサミド;
2-アミノ-1-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]-1H-インドール-3-カルボキサミド;それ
らの組合せ;又はそれらの医薬として許容し得る塩もしくは溶媒和物である。
【0209】
最も好ましいカゼインキナーゼ1デルタ阻害剤は、5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)
-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン(PS110);
2-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド(PS278);
2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;
それらの組合せ;又はそれらの医薬として許容し得る塩もしくは溶媒和物から選択される
。
【0210】
好ましくは、本発明による治療の方法における工程d)は、追加の治療薬剤を投与するこ
とをさらに含む。一実施態様において、前記対象は、キナーゼ阻害剤で治療されてきたか
又は治療されており、かつ前記追加の治療薬剤は、メマンチン(例えば、Namenda(登録商
標))、ガランタミン(例えば、Razadyne(登録商標))、リバスチグミン(例えば、Exelon(登
録商標))、ドネペジル(例えば、Aricept(登録商標))、ソラネズマブ、5HT5アンタゴニス
ト、又はそれらの組合せの群から選択される。別の実施態様において、前記対象は、メマ
ンチン(例えば、Namenda(登録商標))、ガランタミン(例えば、Razadyne(登録商標))、リ
バスチグミン(例えば、Exelon(登録商標))、ドネペジル(例えば、Aricept(登録商標))、
ソラネズマブ、5HT5アンタゴニスト、又はそれらの組合せの群から選択される薬剤で治療
されてきたか又は治療されており、かつ前記追加の治療薬剤は、キナーゼ阻害剤、好まし
くはカゼインキナーゼ1デルタ阻害剤、より好ましくは5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イ
ル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン;
2-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;2-メチ
ル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;それら
の組合せ;又はそれらの医薬として許容し得る塩もしくは溶媒和物から選択されるカゼイ
ンキナーゼ阻害剤から選択される。
【0211】
本発明の一実施態様において、対象における神経認知障害を治療するための薬物に対す
る応答を評価する場合であって、該対象が、該薬物で治療されてきたか、又は治療されて
いる場合:
i)該対象は、メマンチン(例えば、Namenda(登録商標))、ガランタミン(例えば、Razadyne
(登録商標))、リバスチグミン(例えば、Exelon(登録商標))、ドネペジル(例えば、Aricep
t(登録商標))、ソラネズマブ、5HT5アンタゴニスト、又はそれらの組合せの群から選択さ
れる追加の治療薬剤でも治療されてきたか又は治療されており;かつ/又は
ii)工程c)の後に、該方法が、メマンチン(例えば、Namenda(登録商標))、ガランタミン(
例えば、Razadyne(登録商標))、リバスチグミン(例えば、Exelon(登録商標))、ドネペジ
ル(例えば、Aricept(登録商標))、ソラネズマブ、5HT5アンタゴニスト、又はそれらの組
合せの群から選択される追加の治療薬剤を投与することを含む。
【0212】
本発明による全ての方法の前記アッセイする工程a)及び/又は前記測定する工程b)は:
i)前記試料を、前記パネルの前記バイオマーカーの各々に対する1以上の結合性物質と接
触させること;又は
ii)前記試料中で前記バイオマーカーの各々に特異的な自己抗体を検出すること;又は
iii)前記試料中で、質量分析により、前記パネルの前記バイオマーカーの各々を、任意に
該試料を1以上のアイソバリックな反応性質量標識で事前に標識して、検出すること;又は
iv)前記試料中で、2Dゲル電気泳動により、前記パネルの前記バイオマーカーの各々を検
出すること;又は
iv) i)、ii)、iii)、もしくはiv)のいずれかの組合せをさらに含んでいてもよい。
【0213】
好ましくは、工程a)における前記アッセイすること及び/又は工程b)における前記測定
することは:
i)前記パネルにおける前記バイオマーカーの1以上の断片を検出すること、及び/又は
ii)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するタウもしくはその1
以上の断片上の1以上のリン酸化アミノ酸を検出することであって;検出されるべきタウ上
の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合、タウ又はその1以上の断片上の少なくともも
う1つのリン酸化アミノ酸が検出される、前記検出すること、を含む。
【0214】
任意に、前記試料は、固体支持体上に固定化されている。
【0215】
本発明による方法においてアッセイされる試料は、脳脊髄液(CSF)、血液、血漿、血清
、唾液、尿、組織(例えば、脳組織)又はそれらの組合せの群から選択される。
【0216】
好ましくは、前記試料は、CSF又は血液である。
【0217】
診断、評価、又は治療される対象は、ADのもしくは本明細書に記載されるタウオパチー
の動物モデル(例えば、齧歯動物又は霊長類)、又はヒト対象であり得る。好ましくは、診
断、評価、又は治療される対象は、ヒト対象である。
【0218】
(2.キット)
本発明は、試料中で、本発明によるパネルのバイオマーカーをアッセイ及び/又は測定
するための試薬を含むキットも提供する。
【0219】
好ましくは、キットは、神経認知障害、特にアルツハイマー病を診断すること、ステー
ジ分類すること、及び該障害の治療に対する応答を評価することを可能とする。
【0220】
本発明によるキット試薬は、本明細書に記載されるパネルのバイオマーカーに特異的に
結合する1以上の結合性物質を含んでいてもよい。好ましくは、該1以上の結合性物質は、
一次抗体であって、ここで各々の一次抗体は:
i)該パネルの異なるタンパク質、及び/又は
ii)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するタウもしくはその断
片の1以上のリン酸化アミノ酸
に特異的に結合する。
【0221】
より好ましくは、一次抗体は、プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニッ
ト14Aに対する1以上の抗体、及び/又は2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラ
ーゼに対する1以上の抗体である。他の一次抗体としては、群A、B、C、又はD及び表5~表
13に列記したタンパク質のうちの他のバイオマーカーに対する抗体が挙げられる。
【0222】
一次抗体は、アッセイプレート、ビーズ、マイクロスフェア、又は粒子に固定化されて
いてもよい。任意に、ビーズ、マイクロスフェア、又は粒子は、染色されているか、タグ
化されているか、又は標識されていてもよい。任意に、アッセイプレートは、平面アレイ
又はマイクロタイターマルチウェルプレートである。
【0223】
キットが、パネルのバイオマーカーに対する一次抗体を含む場合、該キットは、該一次
抗体に特異的に結合する1以上の二次抗体をさらに含んでいてもよい。
【0224】
任意に、二次抗体は、標識、例えば、蛍光標識又はタグ化されていてもよい。
【0225】
本発明によるキットは、タグ化された二次抗体の存在を検出するための1以上の検出試
薬をさらに含んでいてもよい。
【0226】
試料は、好ましくは、脳脊髄液(CSF)、血液、血漿、血清、唾液、尿、組織(例えば、脳
組織)又はそれらの組合せの群から選択される。
【0227】
本発明のキットは:
a)対象から得られる試料をパネルのバイオマーカーについてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該タンパク質の各々の該濃度又は量を、該タンパク質の参照濃度又は量と比
較することによって、該対象が、神経認知障害特に、アルツハイマー病を有しているかど
うかを決定すること;
を可能とし、ここで、該バイオマーカーのパネルは:
I)i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファ
ターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント
、もしくは断片;及び/又は
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、バリアント、もしくは断片
;又は
II)群A、B、C、又はDから選択される1以上のバイオマーカー;又は
III)タウ又はその1以上の断片であって:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つ
のリン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記タウ又はその1以上の
断片;又は
IV)表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択される1以上、任意
に2以上のタンパク質;又は
V) I)、II)、III)、及びIVの組合せ、を含むパネルから選択される。
【0228】
特に、本発明によるキットは:
i)前記試料を、前記パネルの前記バイオマーカーの各々に対する1以上の結合性物質と接
触させること;又は
ii)前記試料中で前記バイオマーカーの各々に特異的な自己抗体を検出すること;又は
iii)前記試料中で、質量分析により、前記パネルの前記バイオマーカーの各々を、任意に
該試料を1以上のアイソバリックな反応性質量標識で事前に標識して、検出すること;又は
iv)前記試料中で、2Dゲル電気泳動により、前記パネルの前記タンパク質の各々を検出す
ること;又は
iv) i)、ii)、iii)、もしくはiv)のいずれかの組合せ
によって、前記試料をアッセイすること(工程a)と同様に)及び/又は測定すること(工程b)
と同様に)を指示し得る。
【0229】
さらに別の実施態様において、キットは、脳組織を調製するのに適した、任意に、ホル
マリン固定パラフィン包埋脳組織切片を調製するのに適した試薬を含んでいてもよい。
【0230】
キットは、1以上のバイオマーカーの濃度又は量の決定を比較可能である定量的な尺度
を提供する参照をさらに提供し得る。該参照は、神経認知障害、例えば、タウオパチー、
特に、ADの存在、又はそのステージ分類、又はそれを発症する可能性を示すタンパク質量
又は濃度を示し得る。
【0231】
キットは、本発明による方法を実施するための印刷された説明書も含み得る。
【0232】
一実施態様において、キットは、質量分析アッセイを実施するためのものであってもよ
く、参照ペプチド(例えば、SRMペプチド)のセットをアッセイ適合性のフォーマットで含
んでいてもよく、ここで、該セット中の各々のペプチドは、i)群A、B、C、又はDのバイオ
マーカーのうちの1以上;ii)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有
するリン酸化されたタウもしくはその1以上の断片;又はiii)表5~表13に列記したタンパ
ク質のうちの1以上をユニークに表すものである。
【0233】
好ましくは、そのようなユニークなペプチドの2以上を、そのためにキットがデザイン
され、かつユニークなペプチドの各々のセットが健常対象の試料中のそのようなバイオマ
ーカーの量又は濃度を反映する既知の量で提供される、各々のバイオマーカーに使用する
。
【0234】
任意に、キットは、試料からの本発明によるバイオマーカーの単離及び抽出のためのプ
ロトコル及び試薬、トリプシンなどのタンパク質分解酵素の精製調製物、並びにモニタリ
ングされるべきプリカーサー質量及び比遷移の詳細を含む方法の詳細なプロトコルも提供
し得る。ペプチドは合成ペプチドであってもよく、かつ炭素、窒素、酸素、及び/又は水
素の1以上の重同位体を含んでいてもよい。
【0235】
任意に、本発明のキットは、適当な細胞、容器、成長培地、及びバッファーも含み得る
。
【0236】
(3.バイオマーカーの検出及び測定)
本明細書に記載されるバイオマーカーのパネルは、発現が調節される、すなわち、定量
的に増加又は減少するバイオマーカーと、疾患状態と比べて正常状態でもっぱら存在する
か又はもっぱら存在しない、すなわち、定性的に発現されるバイオマーカーの両方を含む
。その発現が疾患状態と比べて正常状態で異なる程度は、標準的な特徴解析技術によって
可視化されるのに十分な大きさであるだけでよい。
【0237】
タンパク質の検出及び定量の方法は当技術分野で周知であり、任意の好適な方法を利用
し得る。
【0238】
一実施態様において、パネルのバイオマーカーは、そのバイオマーカーに特異的な結合
性物質、例えば、抗体を、例えば、ELISAアッセイ又はウェスタンブロッティングで用い
て検出し得る。
【0239】
本明細書に記載されるパネル中の個々のバイオマーカーの、リン酸化アミノ酸又は他の
翻訳後修飾を有するアミノ酸を含む1以上のエピトープを特異的に認識する能力がある抗
体の産生に関する方法は、当技術分野において公知である。そのような抗体としては、ポ
リクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化又はキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断
片、F(ab')2断片、Fab発現ライブラリーによって産生される断片、抗イディオタイプ(抗I
d)抗体、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片を挙げることができるが、これらに限
定されない。
【0240】
抗体の産生のために、様々な宿主動物をタンパク質又はその部分の注射によって免疫す
ることができる。そのような宿主動物としては、ウサギ、マウス、及びラットを挙げるこ
とができるが、これらに限定されない。リゾレシチン、Pluronicポリオール、ポリアニオ
ン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアミン(keyhole limpet hemocyamin
)、ジニトロフェノール、並びに潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCGカルメッ
ト・ゲラン桿菌(BCG bacille Calmette-Fuerin)及びコリネバクテリウム・パルヴム(Cory
nebacterium parvum)などの活性物質を含む、様々なアジュバントを用いて、宿主種に応
じて、免疫学的応答を増大させることができる。
【0241】
ポリクローナル抗体は、抗原、例えば、標的タンパク質、又はその抗原性機能性誘導体
で免疫した動物の血清に由来する不均一な抗体分子集団である。ポリクローナル抗体の産
生のために、宿主動物、例えば、上記のような宿主動物を、同じく上記のようなアジュバ
ントが補充された示差発現タンパク質又は経路タンパク質の注射によって免疫することが
できる。
【0242】
特定の抗原に対する均一な抗体集団であるモノクローナル抗体は、培養下の継続細胞株
による抗体分子の産生をもたらす任意の技術によって得ることができる。これらには、Ko
hler及びMilsteinのハイブリドーマ技術(1975, Nature 256:495-497;及び米国特許第4,37
6,110号)、ヒトβ細胞ハイブリドーマ技術(Kosborらの文献、1983, Immunology Today 4:
72; Coleらの文献、1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030)、並びにEBVハイ
ブリドーマ技術(Coleらの文献、1985、モノクローナル抗体及び癌療法(Monoclonal Antib
odies and Cancer Therapy)、Alan R. Liss社、pp. 77-96)が含まれるが、これらに限定
されない。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含む任意の免疫グロブリンク
ラス及びその任意のサブクラスのものであり得る。本発明のmAbを産生するハイブリドー
マは、インビトロ又はインビボで培養することができる。インビボで高力価のmAbを産生
するので、これが現在好ましい産生方法になっている。
【0243】
さらに、適当な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を適当な生物学的活性のヒト
抗体分子由来の遺伝子と一つに結合させることによる「キメラ抗体」の産生のために開発
された技術(Morrisonらの文献、1984, Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851-6855; Neuberge
rらの文献、1984, Nature 312:604-608; Takedaらの文献、1985, Nature 314:452-454)を
使用することができる。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子、例え
ば、マウスmAbに由来する可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である
。
【0244】
あるいは、単鎖抗体の産生について記載されている技術(米国特許第4,946,778号; Bird
の文献、1988, Science 242: 423-426; Hustonらの文献、1988, Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 85:5879-5883;及びWardらの文献、1989, Nature 334:544-546)を、示差発現タンパ
ク質又は経路タンパク質-単鎖抗体を産生するように適合させることができる。単鎖抗体
は、アミノ酸架橋によってFv領域の重鎖断片と軽鎖断片を連結させ、単鎖ポリペプチドを
生じさせることにより形成される。
【0245】
特異的エピトープを認識する抗体断片は、公知の技術によって作製することができる。
例えば、そのような断片としては、抗体分子のペプシン消化によって産生することができ
るF(ab')2断片及び該F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより作製すること
ができるFab断片が挙げられるが、これらに限定されない。所望の特異性を有するモノク
ローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能にするために、別のFab発現ライブラリーを
構築してもよい(Huseらの文献、1989, Science 246:1275-1281)。
【0246】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施態様において、試料は、分析用の固体支持
体上に固定化されていてもよい。パネルの個々のタンパク質に特異的な結合性物質、例え
ば、抗体が、平坦な表面又は微粒子ビーズなどの固体支持体上に固定化され、該パネルの
タンパク質が、固定化された結合性物質、例えば、固定化された抗体によって捕捉される
、抗体サンドイッチ技術を利用してもよい。その後、捕捉されたタンパク質は、シグナル
発生物質(酵素、蛍光タグ、放射性標識など)で直接標識することができるか、又はさらな
る増幅(酵素、フルオロフォア、放射性標識などを含む、標識された二次抗体、ストレプ
トアビジン/ビオチン系)を用いて検出することができる、第二の結合性物質、例えば、二
次抗体を用いて検出される。他の方法としては、試料の一次元又は二次元(2D)ゲル電気泳
動を挙げることができるが、これらに限定されない。そのような方法の後に、ウェスタン
ブロッティングなどの技術を用いる固体表面への転写、及びその後のパネルのタンパク質
に特異的な抗体を用いる検出が続く。
【0247】
他の実施態様において、パネルのバイオマーカーに対する自己抗体は、健常対象、ADの
患者又は代表者由来の試料を用いる上記のウェスタンブロッティング法を使用し、その後
、試料中に存在するが、健常対象に存在しないバイオマーカーに特異的な自己抗体の存在
を検出することにより、検出することができる。
【0248】
抗体ではない結合性物質の例は、アプタマーである。アプタマーの例としては、核酸ア
プタマー及びペプチドアプタマーが挙げられる。
【0249】
あるいは、パネルのバイオマーカーは、とりわけ、2Dゲル電気泳動の銀染色、又はLS/M
S/MS、MALDI-TOF、SELDI-TOF、及びTMT-SRMを含む質量分析技術によって検出することが
できる。
【0250】
発現の差を可視化し得る他のそのような標準的な特徴解析技術は当業者に周知である。
これらには、クロマトグラフィーによる画分の連続的な分離及びピークの比較、キャピラ
リー電気泳動、マイクロチップ上でのものを含むマイクロチャネルネットワークを用いた
分離、SELDI解析、並びにqPST解析が含まれる。
【0251】
クロマトグラフィーによる分離は、クロマトグラムが分離の時間に対する280nmでの光
の吸光度のプロットの形で得られる、文献に記載されているような高速液体クロマトグラ
フィーによって実施することができる。次に、不完全に分解されたピークを生じる材料を
、再度クロマトグラフィーにかけるなどする。
【0252】
キャピラリー電気泳動も採用し得る。この技術は、小さいキャピラリーチューブに含ま
れる試料にわたって電位を印加することに依存する。このチューブは、電荷を帯びた表面
、例えば、負の電荷を帯びたケイ酸塩ガラスを有する。反対の電荷を帯びたイオン(この
場合、陽イオン)は表面に引き付けられ、その後、表面と同じ極性の適当な電極(この場合
、カソード)に移動する。この試料の電気浸透流(EOF)中では、陽イオンが最も速く移動し
、電荷を帯びていない材料及び負の電荷を帯びたイオンがそれに続く。したがって、タン
パク質は、本質的には、その電荷に従って分離される。
【0253】
マイクロチャネルネットワークは、キャピラリーと同様に機能し、ポリマー材料のフォ
トアブレーションによって形成することができる。この技術では、UVレーザーを用いて、
好適なUV吸収特性を有するポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリカー
ボネートに一気に照射される高エネルギー光パルスを発生させる。入射光子は、限定され
た空間を有する化学結合を破壊し、内圧の上昇、小爆発、及びアブレーションされた材料
の排出をもたらし、マイクロチャネルを形成する空隙を後に残す。マイクロチャネル材料
は、キャピラリー電気泳動の場合と同様に、EOFに基づく分離を達成する。これは、各々
のチップが、それ自体の試料インジェクター、分離カラム、及び電気化学的検出器を有す
る、マイクロチップの形態に適応可能である。
【0254】
ProteinChip技術と組み合わせた表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(SE
LDI-TOF-MS)も、迅速でかつ感度の高いバイオマーカープロファイリング手段を提供する
ことができ、2Dゲル電気泳動に代わるものとして補足的に使用される。ProteinChipシス
テムは、タンパク質試料をチップの表面化学(例えば、アニオン性、カチオン性、疎水性
、親水性など)に基づいて選択的に結合させることができるアルミニウムチップからなる
。結合したバイオマーカーは、その後、モル濃度過剰の小さいエネルギー吸収性分子とと
もに共結晶化される。チップは、その後、N2 320nm UVレーザーの高強度短パルスによっ
て分析され、タンパク質の分離及び検出が飛行時間型質量分析によって行われる。実験に
おける各々の群のスペクトルプロファイルを比較し、対象となる任意のピークを下記のよ
うな技術を用いてさらに分析して、パネルのタンパク質の同一性を確認することができる
。
【0255】
アイソトピック又はアイソバリックTandem Mass Tags(登録商標)(TMT(登録商標))(Ther
mo Scientific, Rockford, USA)技術を用いて、本明細書に記載されるパネルのタンパク
質を検出することもできる。簡潔に説明すると、比較用の試料中のタンパク質を任意に消
化し、安定同位体タグで標識し、質量分析によって定量する。このように、異なる試料中
の等価なタンパク質の発現を、そのそれぞれの同位体ピークの強度又はタンデム質量分析
実験における断片化の間にTMT(登録商標)試薬から遊離したレポーターイオンの強度を比
較することにより直接比較することができる。
【0256】
本明細書に記載されるパネルのタンパク質の検出の前に、最も多く存在するタンパク質
を試料から取り除く除去工程があってもよい。血清/血漿のタンパク質組成の大部分は、
ごくわずかの種類のタンパク質からなる。例えば、35~50mg/mlの濃度で存在するアルブ
ミンは、全タンパク質含有量の約54%に相当し、IgGは、他の16%を上乗せする。対照的
に、疾患に応答して、例えば、組織漏出の結果として変化するタンパク質は、10ng/mlで
循環し得る。タンパク質濃度のこの非常に広いダイナミックレンジは、分析上の大きな課
題となっており、この問題を克服するために、複数の親和性除去カラムを用いて、最も大
量に存在するタンパク質(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10種、又はそれよ
り多くの大量に存在するタンパク質)を除去することができる。より多くの出発材料を使
用することができ、かつ大量に存在する分子からの干渉がより少ないので、これは、より
少ない存在量範囲の変化の検出を可能にする。そのような除去戦略を任意の検出法の前に
適用することができる。
【実施例】
【0257】
(4.実施例)
これから、本発明の特定の態様及び実施態様を、例として、図面及び上記の表を参照し
て、説明することとする。本明細書中に言及される文書は全て、あらゆる目的のために引
用により完全に本明細書中に組み込まれている。
【0258】
試料調製用の試薬は全て、明記しない限り、Sigma Aldrich(登録商標)(Dorset, UK)か
ら購入した。Tandem Mass Tags(登録商標)(Thermo Scientific(登録商標));アセトニトリ
ル(Fisher Scientific(登録商標), Loughborough, UK);トリプシン(Roche Diagnostics(
登録商標), West Sussex, UK)。
【0259】
(4.1 脳における神経原線維変化病態と相関しているタンパク質(Braakステージ分類))
(試料調製)
下側頭皮質試料からの9つの凍結組織試料を、より大きな凍結組織切片から切断した。
試料は、神経原線維変化(NFT)病態(=Braakステージ分類)に従い選択され、従って、AD関
連NFT病態の全ての段階を表す。
【0260】
試験群は、Braakステージ0、I、及びIIの各々について1試料、BraakステージIIIについ
て1試料、BraakステージIVが2試料、BraakステージVについて1試料、及びBraakステージ6
がさらに2試料を含んでいた。
【0261】
試料を、本明細書において以下で詳細に記載されるようにSysQuant(登録商標)技術によ
り、9つの試料全て、及び試験参照1つを含む1回のSysQuant(登録商標)TMT 10plex実験の
範囲で処理し解析した。
【0262】
データの主成分分析(PCA)による統計学的評価の後に定量的考察を行い、より高いBraak
ステージ分類の試料において最も有意な相違を示した。PCAの結果に従って、調節を算出
し、BraakステージV/VI(重症群)の試料をBraakステージIII/IV(中等症群)の試料と比較す
ることによって統計学的に評価した。
【0263】
溶解バッファー(8M尿素、75mM NaCl、50mM トリス、pH 8.2、プロテアーゼ及びホスフ
ァターゼ阻害剤カクテル(Roche)中の皮質試料を、超音波処理(20%振幅で20×1秒間、オ
ン/オフパルス、氷上(4℃))によって溶解させ、その後、4℃、12,500gで10分間遠心分離
して、組織残屑を除去した。上清を、新たなチューブ内に移し、試料のタンパク質濃度を
、Bradfordアッセイを用いて決定した。試料毎に、同じタンパク質量を、後続の工程全て
に用いた。
【0264】
溶解後、参照試料を、同一量の9つの個々の試料全てを混合することによって調製した
。特に、各々の試料について、2.5mgのタンパク質材料を採取し、3mg/mlの濃度に調整し
た。各々の調整した試料から、167μLを採取し、合一して、参照試料を調製した。残りの
666μL(=2mg)は、個々の試料操作に使用した。
【0265】
DTTを各々の試料に加え(終濃度5mM)、振盪しながら56℃で25分間インキュベートしてジ
スルフィド結合を還元した。その後、試料を室温で放冷してから、ヨードアセトアミド(
終濃度14mM)を添加し、室温及び暗所で30分間インキュベートして、システイン残基をア
ルキル化した。未反応ヨードアセトアミドを、追加の5mMまでDTTを加えることによりクエ
ンチし、室温及び暗所で15分間インキュベートした。
【0266】
試料を、25mMトリス-HCl、pH 8.2で希釈して、尿素の濃度を1.6Mまで低下させた。トリ
プシン(Roche, UK)を、5ng/μLの最終最小濃度(少なくとも1:100のトリプシン対基質比)
まで、CaCl2(1mMの終濃度)と共に加えた。試料を、振盪しながら37℃で1晩(~15から18時
間)インキュベートした。消化された試料を室温まで放冷し、消化を、0.4%(vol/vol)ま
でTFAを用いて酸性化させることにより停止させた。試料を室温、2,500gで10分間遠心分
離し、ペレットは廃棄した。
【0267】
試料を、200mgのSepPak tC18カートリッジ(Thermo Scientific UK)を製造業者の説明書
に従い使用して脱塩し、タンパク質を、溶出バッファー(50%ACN、50%H2O)で溶出させ、
Speedvacで乾固するまで濃縮した。
【0268】
TMT(登録商標)標識化については、1試料あたり総ペプチド量が2.0~2.5mgの終濃度を目
標として、試料を567μLのTEAB/ACNバッファーに再可溶化した。TMT(登録商標)10plex試
薬セットのTMT(登録商標)標識を、下記表14により各々の試料に加えて、各々の試料中に1
5mM TMT(登録商標)の終濃度を得た。
【0269】
表14
【表14】
Ref.=全ての試料のアリコートを含有する参照試料
【0270】
反応を、室温で1時間進行させた。ヒドロキシルアミンを、0.25%[w/v]ヒドロキシルア
ミンの終濃度まで各々の試料に加え、15分間インキュベートした。その後、試料を2%TFA
で1:3に希釈し、その後、水でさらに希釈して、ACNの濃度を5%未満まで低下させた。試
料を、等しい量で混合して、1つのSysQuant10plex試料を得て、その後、それを2つのアリ
コートへと分割して、それらを脱塩し(500mg SepPak tC18カートリッジ)、表15のプロト
コルによるSCXクロマトグラフィー(流速として3mL/min;バッファーA:水+0.1% TFA;バッ
ファーC:7mM KH2PO4, pH 2.65, 30% ACN (vol/vol);バッファーD: 7mM KH2PO4, 350mM K
Cl, pH 2.65, 30% ACN (vol/vol))によって分画した。
【0271】
【0272】
脱塩して得た凍結乾燥したペプチドを、800μLのバッファーAに再懸濁し、HPLCシステ
ムにインジェクトした。12の画分を採取し、ペプチドの数が少ない画分を、多くの数のペ
プチドを含有する画分と混合することによって「スマートプール(smart pool)」して、類
似の総ペプチド含量の6つの最終画分を得て、脱塩した。
【0273】
その後、各々の画分から小量部分を採取して、非濃縮画分の後続の分析を適用した。画
分の残りの部分を、双方とも当技術分野において周知であるIMAC又はTiO2法のいずれかに
よってホスホペプチドの濃縮に処した。乾燥画分を、LC-MS分析に移した。
【0274】
(LC-MS/MS分析)
「スマートプール」された画分を、MS取得をTop Speed MS2 HCD法によって行うLC-MS/M
S(ダブルショットワークフロー)によって各々2回分析した。
【0275】
非濃縮画分由来のペプチドを、100μlの2% ACN/0.1% FAに再懸濁し、その後、1画分
あたり5ulを、2cm×75umのAcclaim PepMap100プレカラム上にインジェクトし、EASY-nLC
1000システム(Thermo Fisher Scientific)上でEASY-Spray50cm×75um ID、PepMap RSCL、
C18、2umを用いて分離した。ペプチドを、200nL/分で8~30% ACN/0.1% FAの160分、分
離グラジエントを用いて分離した。
【0276】
全てのホスホ濃縮画分由来のペプチドを、30μLの2% ACN/0.1% FAに再懸濁し、その
後、1画分あたり5μLをインジェクトし、200nL/分で10~30%のACN中0.1%FAの160分、分
離グラジエントを用いて分離した。
【0277】
質量スペクトルは、Orbitrap Fusion(商標)Tribrid(商標)質量分析計(Thermo Fisher S
cientific)で、各々のFTMSスキャン(120,000分解能)に続き、30,000分解能でトップスピ
ード高エネルギー衝突解離(top speed higher collision induced dissociation: HCD)FT
MS2スキャンを用いて180分の総測定時間の間取得した。HCDは、各々のFTMSスキャンの最
も強いイオンに対して行い、その後、同じ分析物を繰り返し配列決定することを避けるた
めに、30秒間動的除外リストに載せた。各々の試料を、2回のLC-MS/MS繰り返し分析(ダブ
ルショットワークフロー)によって分析した。
【0278】
(コンピューテーショナルMS)
取得したスペクトルを、2014年2月22日にダウンロードしたヒト特異的UniProtKB/Swiss
-Protデータベース(88,647配列が登録されている)を用いるProteome Discoverer 1.4(PD
1.4; Thermo Fisher Scientific)ソフトウェアを用いて処理した。生データを、PD 1.4.
内のSequest HT及びMascot (Matrix Mascotサーバー2.2.06)検索アルゴリズムを用いて検
索した。SysQuant(登録商標)ワークフローのいずれかの濃縮アームの6つの画分に属して
いたMS生データファイル、及び同じ試行の分析セットに属していたものを、それぞれ、個
々のMudPit検索として提示した。このようにして、合計で4回のMudPit検索を行った。検
索結果を、ペプチドレベルで1%の偽発見率(FDR)かつ1タンパク質あたり少なくとも1つの
ランク1ペプチドでフィルタリングした後に、検索結果を、MS Excelファイルにエクスポ
ートした。このデータを、規定されたスクリプトによって処理して、全ての同定されたペ
プチド及びそれらのタンパク質起源をリスト化した。
【0279】
(データ解析)
全てのタンパク質同定、ペプチド配列、リン酸化部位情報を、ペプチド、タンパク質、
及びリン酸化部位に関する定量値及び生物学的情報と共に、Microsoft Excelファイル(Qu
antSheet)内に整理して、倍数変化、有意性、生物学的機能、及び細胞局在に基づく構造
化データ解析を可能とした。
【0280】
全般的データ品質を生物情報学的手段で評価するために、すなわち、Braakステージ分
類の効果を可視化するために、かつ、従って、後続の定量計算に指針を与えるために、主
成分分析(PCA)を行った。
【0281】
完全な生物学的データ解釈も行い、対象となるタンパク質の標的化分析(targeted anal
ysis)を、例えば、タウタンパク質、及び神経変性に関係があるとされる追加のADバイオ
マーカータンパク質について適用した。
【0282】
(4.2 TMTcalibrator(商標)を用いるAD CSFにおける調節されるタンパク質の定量)
本発明者らはまた、ADに生化学的に陰性であった対照、及び生化学的に陽性であったも
のから抜き出したヒトCSF中のタウのリン酸化されたペプチドの存在及び相対的な存在量
も確認した。簡単に述べると、別々の実験で行った、中等症タウ病態(BraakステージIII
~IV;n=3)又は重症タウ病態(BraakステージV~VI;n=3)のヒト対象から死後に採取した前
頭前野の皮質材料をプールし、トリプシンで消化し、4つの別々のアリコート中で、TMT試
薬TMT
10-129C、130N、130C、及び131で標識した。同じ脳消化プールからの各々の標識さ
れたアリコートを、それぞれ、0.3mg:1.2mg:1.8mg:3.0mgの比で混合して、較正標準を作
製した。同時に、3名の認知障害のない対照個体、及び3件の生化学的に診断されたADの症
例からのヒト脳脊髄液試料(1個体あたり600ugのタンパク質含量(600ul))を、トリプシン
で消化し、TMT(登録商標)試薬TMT
10-126、127N、127C、128N、128C、及び129Nでそれぞれ
標識し、混合して、臨床試験試料を作製した。最後に、等体積の較正標準及び臨床試験試
料を混合して、
図7による分析試料を作製した。
【0283】
質量分析、及びデータ解析を、セクション4.1において上述したように行った。
【0284】
(4.3 インビボでのタウ阻害の効果)
発明者らはまた、SysQuantを適用して、タウキナーゼカゼインキナーゼ1デルタ(CK1d)
の小分子阻害剤で処置したTMHT(Thy-1変異型ヒトタウ)マウス(QPS(登録商標)Austriaによ
り開発されたもの、http://www.qps-austria.com)の脳におけるタンパク質及びリン酸化
変化を分析した。8.5ヶ月(±2週)の月齢から開始して、TMHTマウスは、CK1d阻害剤2-メチ
ル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド(PS278-
05)、5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン(PS
110)、化合物PF4800567(3-[(3-クロロフェノキシ)メチル]-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4
-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン;Tocris(登録商標))、又はビヒクル(0.5
%w/vメチルセルロース)を、8週間(54回適用)、30mg/kg体重の投与量で、経口的に、強制
飼養で受けた。
【0285】
合計で48頭の動物が用いられ、4処置群に割り当てられた。表16に、動物、コホート、
及び処置グループ割り当て、動物の性別及び月齢を記載する。
【0286】
表16
【表16】
Cmp 324=5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミ
ン;Cmp A=2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カル
ボキサミド;f=雌性;m=雄性
【0287】
脳試料を、安楽死の10分以内に採取し、氷冷生理食塩水中で洗浄し、清潔なEppendorf
チューブに移して、直ちに液体窒素中で凍結させた。
【0288】
ビヒクル、PS110、及びPS278-05群の各々における3頭の動物の各々から海馬試料(左又
は右)1点を、SysQuantによる分析のために選択した。9つの試料全てのプールも参照チャ
ネルとして調製した。全てのTMT(登録商標)標識化、混合、及び質量分析、並びに生物情
報学研究は、本質的に、セクション4.1に記載されているように行った。ペプチド及びタ
ンパク質同定には、UniProtKBマウスデータベースを用い、全てのヒトタウアイソフォー
ムの入力を含めることで補完した。
【0289】
全てのタンパク質同定、ペプチド配列、リン酸化部位情報を、該ペプチド、タンパク質
、及びリン酸化部位に関する定量値、及び生物学的情報と共に、Microsoft Excelファイ
ル(QuantSheet)内に整理して、倍数変化、有意性、生物学的機能、及び細胞局在に基づく
構造化データ解析を可能とした。
【0290】
(4.4 リン酸化されたタウの検出)
セクション4.1、4.2、及び4.3において試験した様々なヒト及びマウス試料におけるタ
ウリン酸化の動態プロファイルを、それぞれのQuantSheetの標的化データ解析(targeted
data analysis)によって決定した。ヒトMAPT(P10636;P10636-8を含むもの=配列番号:29)
UniProt配列とマッチした全てのペプチドを、別のMicrosoft Excelシートにエクスポート
した。
【0291】
各リン酸化されていないペプチドのイオン強度値を合計し、各疾患重症度群(Braakステ
ージ0~II;BraakステージIII~IV;BraakステージV~VI)について平均を算出して、全タウ
発現についての値を得た。各リン酸化アミノ酸、例えば、pT181について、該リン酸化ア
ミノ酸を含む全てのペプチドのイオン強度値を合計して、各疾患重症度群(Braakステージ
0~II;BraakステージIII~IV;BraakステージV~VI)についての平均を算出した。
【0292】
合計で185個のヒトタウ由来のユニークなペプチドを、9つの脳の試料の全てにおいて、
35個の高信頼度(ホスホRSスコア>75%)リン酸化部位を用いて定量した。これらのうち、
74個のペプチドのレベルが、中等症(BraakステージIII~IV)の及び重症(BraakステージV
~VI)タウ病態の患者の脳において有意に(p<0.05)調節されていた。
【0293】
同様に、ビヒクル対照又はCK1d阻害剤PS278-05及びPS110での処置後のマウス脳におけ
る全タウの、及び各リン酸化されたセリン、スレオニン、及びチロシンアミノ酸について
の発現レベルを算出した。
【0294】
ヒトMAPT(P10636;配列番号:29)UniProt配列及び/又はマウスMAPT(P10637)とマッチした
全てのペプチドを、別のMicrosoft Excelシートにエクスポートした。各ホスホペプチド
についてのイオン強度値を合計し、各処置群(ビヒクル対照、PS110、PS278-05)について
の平均を算出した。本発明者らは、124個のヒトタウ由来のユニークなペプチドを、9つの
脳の試料の全てにおいて、39個の高信頼度(ホスホRSスコア>75%)リン酸化部位を用いて
定量した。これらのうち、PS110で処置されたマウスの海馬において、37個のペプチドの
レベルが有意に(p<0.05)調節されていた一方で、PS278-05で処置されたマウスの海馬で
は、22個のペプチドが有意に(p<0.05)調節されていた。
【0295】
最後に、対照及び生化学的に(biocheically)確認されたADの症例から抜き出したヒトCS
F試料における全タウの、及び各リン酸化されたセリン、スレオニン、及びチロシンアミ
ノ酸についてのレベルを、上述のように決定した。ヒトMAPT(P10636)UniProt配列とマッ
チした全てのペプチドを、別のMicrosoft Excelシートにエクスポートした。各ホスホペ
プチドについてのイオン強度値を合計し、各群(対照、AD)についての平均を算出した。ヒ
トCSF中に、27個の高信頼度リン酸化部位を含む、65個の定量されたタウペプチドが存在
した。
【0296】
総合すると、3つの試験にわたって、本発明者らは、タウタンパク質上の44個のユニー
クなリン酸化部位を同定し、19個の部位を、ヒト脳、マウス脳、及びヒトCSFの試料全て
において定量した。表4は、マウス、及びヒト脳組織、及びヒトCSFにおいてSysQuant(登
録商標)及びTMTcalibrator(商標)によって同定された全てのタウリン酸化部位を校合する
。アミノ酸の番号付けは、ヒト2N4Rタウ(配列番号:29のUniprotアクセッション番号P1063
6-8)に基づいている。
【0297】
タウタンパク質におけるこれらのリン酸化残基の測定の方法が発明を限定することは意
図されない。部位のうちの1以上を、該リン酸化残基に対して特異的な結合性物質、例え
ば、抗体又はアプタマーを用いて測定してもよい。しかしながら、いくつかの部位に対し
ては、結合性物質の使用は、追加の残基に対する隣接リン酸化の影響のために、望ましさ
が劣るであろう。1つのそのような例は、リン酸化されたスレオニン181(2N4Rタウ番号付
け)の測定である。現行のADの診断は、全タウ及びpT181のCSFレベルを測定して比を得る
ことにより支持されている。該比が大きいほど、患者がADを有する可能性が高い。本試験
において、本発明者らは、pT181が、CSF中の2つの別個のペプチド上で測定可能であるこ
とを確認した。一方は、スレオニン181で単一リン酸化されたペプチドであり、他方は、
スレオニン181、セリン184、及びセリン185で3重リン酸化されている。恐らく、S184及び
S185での追加のリン酸化は、結合性物質の親和性と干渉し、その3重リン酸化された種に
結合する能力を低下させ、そうすることで、CSF中のpT181の総量を過小表示とするであろ
う。
【0298】
これらの制限を克服するために、リン酸化されたタウは、好ましくは、質量分析を用い
て測定される。各リン酸化の相対的又は絶対的な定量を提供する能力がある質量分析の任
意の形態を用い得る。そのような方法としては、データ非依存性取得(DIA)、データ依存
性取得(DDA)、選択反応モニタリング(SRM)、多重反応モニタリング(MRM)、又はTMTcalibr
ator(商標)が挙げられるが、これらに限定されない。いずれの場合にも、質量分析を用い
て試験試料中の内在性ホスホタウペプチドと区別することができる参照ホスホペプチドが
提供される。該参照ホスホペプチドは、生体試料から提供されてもよく、アイソトピック
又はアイソバリックな質量タグを用いて内在性ホスホペプチドから別途作製してもよい。
あるいは、該参照ホスホペプチドを、各トリプシンペプチドが確実に、少なくとも1ダル
トンの、好ましくは、2ダルトン超の、最も好ましくは5ダルトン超の天然に存在する等価
なホスホペプチドを超える質量を有するようにいくつかのH2、C13、N15、O18原子置換を
有する合成のリジン源を用いて産生された組換えタウタンパク質の消化により生じさせて
もよい。逐次アミノ酸を添加することによって生産された完全合成ペプチドを用いてもよ
く、ここで、該ペプチド配列内の1以上のアミノ酸が、H2、C13、N15、O18、又は他のその
ような適切な安定重同位体での原子置換を含有する。
【0299】
検出及び定量の手段によらず、早期診断、疾患の進行予測、又は治療効果のモニタリン
グを意図したアッセイでは、1つ、2つ、又はそれを超える異なるタウホスホペプチドを測
定してもよい。
【0300】
(4.5ヒトCSFにおける他の脳由来タンパク質の同定)
タウタンパク質から誘導される調節されたペプチドを識別することに加えて、本発明者
らはまた、実施例4.2からのデータを解析して、ヒトAD CSF中に示差的に発現される他の
疾患関連タンパク質を同定した。簡単に述べると、ユニークなUniProt受入番号にマッチ
させた全ての非修飾ペプチドについてのTMT(登録商標)レポーターイオン強度を合計し、
ヒトCSFにおける関連性のあるタンパク質の相対的な発現を決定するのに用いた。合計し
た強度値に基づいて、対照(n=3)及びAD(n=3)群における各タンパク質発現についてのlog2
比を算出した。統計学的な有意性を、2標本t検定を用いて、6つの独立したタンパク質定
量値に基づいて、p値として算出した。得られたデータマトリックスを、Microsoft Excel
にエクスポートし、フィルターをかけて40%超の調節(-0.5≦log2≧0.5)及びp≦0.05を示
すタンパク質の全てを選択した。これを、中等症及び重症タウ病態の脳検量体を用いる両
TMTcalibrator(商標)実験に対して行った。調節されるタンパク質のリストを、log2比及
びp-値も含めて表5に示す。
【0301】
ADの診断用及び/又は予後用バイオマーカーとして、表5に列挙したタンパク質のいずれ
を用いてもよい。
【0302】
(4.6 結果)
本発明者らは、驚くべきことに、ADの患者の脳において高度に調節されている、かつ/
又はCSF中に存在する、かつ/又はカゼインキナーゼ阻害剤の投与に応答して高度に調節さ
れるバイオマーカーを同定した。加えて、これらの実験において用いられた患者の脳にお
けるタウ毒性は、上昇した発現及び過剰リン酸化(タウ毒性)を呈する。
【0303】
驚くべきことに、データをBraakステージV又はVIに関して解析した場合、プロテインホ
スファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aが、最も上方調節されるタンパク質という
結果となった(
図3)。興味深いことに、このタンパク質のレベルは、軽症(Braakステージ0
~II)及び中等症(BraakステージIII/IV)の間で先ず低下し、その後、重症疾患において顕
著に上昇した。カゼインキナーゼ1デルタ阻害剤5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(
ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン又は2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カ
ルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド双方による処置は、プロテインホスファターゼ
1レギュラトリーサブユニット14Aの上方調節を結果としてもたらし、ヒトにおいて中等症
タウ病態に見られる発現レベルの低下と明らかに反対に作用していた)。
図3は、ADの患者
の脳(表示「ヒト脳」)、BraakステージV又はVIのADの患者のCSF(表示「ヒトCSF 5/6)、及
び5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン(上図)
又は2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサ
ミド(下図)で処置されたマウスの脳(表示「マウスck1 inh.)に対して行った解析のベン図
を示す。表示の各々の下の括弧内の数は、同定されたタンパク質の数を示す。
図3におい
て分かるように、試料全てにおいて上方調節されたタンパク質が1つのみ存在し、該タン
パク質は、プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aである。
【0304】
さらにまた驚くべきことに、BraakステージV又はVIに関してデータを解析した場合、2
’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼが、最も上方調節されるタンパク質
であるという結果となった(
図4)。興味深いことに、このタンパク質のレベルは、軽症(Br
aakステージ0~II)及び中等症(BraakステージIII/IV)の間で先ず低下し、その後、重症疾
患で顕著に上昇する。また、タウオパチーのTMHTモデルにおける平行試験において、この
種の処置は、顕著な役割を果たさず、双方の化合物が、該タンパク質の発現を増加させた
。
図4は、ADの患者の脳(表示「ヒト脳」)、Braakステージ3又は4のADの患者のCSF(表示「
ヒトCSF 3/4)、及び5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジ
ン-2-アミン(上図)又は2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリ
ジン-1-カルボキサミド(下図)で処置されたマウスの脳(表示「マウス ck1 inh.)に対して
行った解析のベン図を示す。
図4において分かるように、試料全てにおいて上方調節され
たタンパク質が1つのみ存在し、該タンパク質は、2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホ
ジエステラーゼである。
【0305】
図5は、軽症(Braak 0~II)(n=3)、中等症(Braak III/IV)、又は重症(Braak V/VI)タウ
病態のヒト脳におけるプロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aレベル
のレベルを表す棒グラフ(A)を示す;プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニ
ット14Aのレベルは、神経認知障害の進行したステージ(Braak V/VI)にあるヒト対象の脳
において増加する。
図5グラフ(B)は、ビヒクル単独で、又は30mg/kgのカゼインキナーゼ1
デルタ阻害剤5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-ア
ミン及び2-メチル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボ
キサミドを含むビヒクルで経口的に処置したヒトタウオパチーのTMHTモデル由来のマウス
脳が、処置に応答して、プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aの濃
度又は量を変化させたことを示す。最後に、
図5グラフ(C)は、生化学的に診断されたAD患
者(n=3)由来のCSFが、認知的に冒されている非AD対照(n=3)と比べて、減少したレベルの
プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14Aを有することを示す。
【0306】
図6は、軽症(Braak 0~II)(n=3)、中等症(Braak III/IV)、又は重症(Braak V/VI)タウ
病態のヒト脳における2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼレベルのレベ
ルを表す棒グラフ(A)を示す;2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼのレベ
ルは、神経認知障害の進行したステージにある(Braak V/VI)ヒト対象の脳において増加す
る。
図6のグラフ(B)は、ビヒクル単独で、又は30mg/kgのカゼインキナーゼ1デルタ阻害剤
5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン及び2-メ
チル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミドを含
むビヒクルで経口的に処置したヒトタウオパチーのTMHTモデル由来のマウス脳が、処置に
応答して、タンパク質2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼの濃度又は量
を変化させたことを示す。最後に、
図6のグラフ(C)は、生化学的に診断されたAD患者(n=3
)由来のCSFが、認知的に冒されている非AD対照(n=3)と比べて、増加したレベルの2’,3’
-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼを有することを示す。
【0307】
まとめると、1)ホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、及び2’,3’-環状ヌ
クレオチド3’-ホスホジエステラーゼの双方が、神経認知障害の進行したステージ(Braak
ステージV又はステージVI)の対象の脳において上昇する;2)認知的に冒されている非AD対
照と比較すると、AD対象のCSFにおいて、プロテインホスファターゼ1レギュラトリーサブ
ユニット14Aが減少するのに対して、2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラー
ゼは増加する;かつ3)ホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14A及び2’,3’-環状
ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼの双方は、カゼインキナーゼ1デルタ阻害剤5-(1,
3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン及び2-メチル-
アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミドに応答して
上方調節される。
【0308】
最後に、ホスファターゼ1レギュラトリーサブユニット14A及び2’,3’-環状ヌクレオチ
ド3’-ホスホジエステラーゼと共に、群A、B、C、D、及び表5~13から追加のタンパク質
を選択して、神経認知障害、特にADの診断、ステージ分類、及び治療評価のための拡張し
たバイオマーカーパネルを形成することができる。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
i)配列番号:1のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するプロテインホスファ
ターゼ1レギュラトリーサブユニット14A、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント
、もしくは断片;及び/あるいは
ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する2’,3’-環状ヌクレ
オチド3’-ホスホジエステラーゼ、又はそのアイソフォーム、もしくはバリアント、もし
くは断片
を含むバイオマーカーのパネル。
(構成2)
タウ又はその1以上の断片を含むバイオマーカーのパネルであって、タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)T39、S46、T50、T52、T56、S61、T63、S64、S68、T69、S113、T181、S184、S185、S19
1、S195、S198、S199、S202、S205、S208、S210、T212、S214、T217、T231、S235、S237
、S238、S258、S262、S285、S289、S356、Y394、S396、S400、T403、S404、S409、S412、
S413、T414/S416、又はS422から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミノ酸を含
み;
タウ上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合に、該パネルが、少なくとももう1つの
リン酸化アミノ酸を有するタウ又はその1以上の断片を含む、前記パネル。
(構成3)
表5、6、7、8、9、10、11、12、13、又はそれらの組合せから選択される1以上、任意に
2以上のタンパク質を含むバイオマーカーのパネル。
(構成4)
配列番号:11のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するアクチンアルファ心
筋1、配列番号:12のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するアンチトロンビン
-III、配列番号:3のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するBH3共役ドメイン
デスアゴニスト、配列番号:24のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するcAMP
依存性プロテインキナーゼI型-ベータレギュラトリーサブユニット、配列番号:4のアミノ
酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するカテニンデルタ-1、配列番号:23のアミノ酸
配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する170kDaの中心体タンパク質、配列番号:5のアミ
ノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するクラスリン軽鎖B、配列番号:13のアミノ酸
配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するEgl nineホモログ1、配列番号:14のアミノ酸配
列を含むか又は該アミノ酸配列を有するフィブリノーゲンガンマ鎖、配列番号:27のアミ
ノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するGMP還元酵素1、配列番号:6のアミノ酸配列
を含むか又は該アミノ酸配列を有するグアニンヌクレオチド結合タンパク質G(q)サブユニ
ットアルファ、配列番号:15のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するインス
リン様増殖因子結合タンパク質6、配列番号:28のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配
列を有するKxDLモチーフ含有タンパク質1、配列番号:18のアミノ酸配列を含むか又は該ア
ミノ酸配列を有するラムダ-クリスタリンホモログ、配列番号:20のアミノ酸配列を含むか
又は該アミノ酸配列を有するミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、配列
番号:7のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する中性アルファ-グルコシダー
ゼAB、配列番号:19のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する核膜孔複合体タ
ンパク質Nup155、配列番号:16のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するOCIA
ドメイン含有タンパク質1、配列番号:25のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有
するタンパク質KIAA1045、配列番号:8のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有す
るセセルニン-2、配列番号:17のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する血清
アルブミン、配列番号:9のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する短鎖特異的
アシルCoAデヒドロゲナーゼ、配列番号:22のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を
有するシナプトポリン、配列番号:10のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有す
るシンタフィリン、配列番号:21のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有する膜
貫通型タンパク質119、及び配列番号:26のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有
するチューブリンアルファ鎖様3を含む群Aから選択される1以上の、代わりの2以上のタン
パク質をさらに含む、構成1記載のバイオマーカーのパネル。
(構成5)
群B、C、又はDから選択される1以上のタンパク質をさらに含む、構成1記載のバイオマ
ーカーのパネル。
(構成6)
構成2記載のパネルにおいて定義される1以上のバイオマーカーをさらに含む、構成1、4
、又は5のいずれか1項記載のバイオマーカーのパネル。
(構成7)
構成3記載のパネルにおいて定義される1以上のバイオマーカーをさらに含む、構成1、4
、5、又は6のいずれか1項記載のバイオマーカーのパネル。
(構成8)
タウが:
i)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有し、かつ
ii)S61、S64、S199、S205、及びS396から選択される1以上、任意に2以上のリン酸化アミ
ノ酸を含む、構成2記載のバイオマーカーのパネル。
(構成9)
少なくともベイシジン及び/又はミトコンドリアのシトクロムcオキシダーゼサブユニッ
ト7A関連タンパク質を含む、構成3記載のバイオマーカーのパネル。
(構成10)
対象における神経認知障害を診断するための方法であって:
a)該対象から得られる試料を、構成1~9のいずれか1項において定義されるパネルのバイ
オマーカーについてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該パネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参
照濃度又は量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を有しているかどうかを
決定することを含む、前記方法。
(構成11)
対象における神経認知障害をステージ分類するための方法であって:
a)該対象から得られる試料を、構成1~9のいずれか1項において定義されるパネルのバイ
オマーカーについてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該パネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参
照濃度又は量と比較することによって、該対象における該神経認知障害のステージを決定
することを含む、前記方法。
(構成12)
対象において神経認知障害を発症する可能性を評価するための方法であって:
a)該対象から得られる試料を、構成1~9のいずれか1項において定義されるパネルのバイ
オマーカーについてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の該バイオマーカーパネルの各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイ
オマーカーの参照濃度又は量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を発症す
る可能性があるかどうかを決定することを含む、前記方法。
(構成13)
対象における神経認知障害を治療するための方法であって:
a)該対象から得られる試料を、構成1~9のいずれか1項において定義されるパネルのバイ
オマーカーについてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参照濃度又は
量と比較することによって、該対象が、神経認知障害を有しているかどうかを決定するこ
と;
d)該神経認知障害を治療するための薬物を、該対象に投与することを含む、前記方法。
(構成14)
対象における神経認知障害を治療するための薬物に対する応答を評価するための方法で
あって、該対象が、該薬物で治療されてきたか又は該薬物で治療されており、該方法が:
a)対象から得られる試料を、構成1~9のいずれか1項において定義されるパネルのバイオ
マーカーについてアッセイすること;
b)該試料中で、該パネルの各々のバイオマーカーの濃度又は量を測定すること;
c)該試料中の各々のバイオマーカーの該濃度又は量を、該バイオマーカーの参照濃度又は
量と比較することによって、該対象が、該薬物に応答してきたかどうか又は該薬物に応答
しているかどうかを決定することを含む、前記方法。
(構成15)
神経認知障害を治療するための前記薬物が、キナーゼ阻害剤である、構成13又は構成14
記載の方法。
(構成16)
前記キナーゼ阻害剤が、タウキナーゼ阻害剤、又はカゼインキナーゼ阻害剤、任意に、
カゼインキナーゼ1アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、もしくはイプシロンから選択さ
れる、構成15記載の方法。
(構成17)
前記キナーゼ阻害剤が、5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ピ
リミジン-2-アミン;
2-アミノ-3-[(チオフェン-2-イル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;
2-[3-(ピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1,3-ベンゾオキサゾール;
2-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;2-メチ
ル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;
2-アミノ-3-ベンゾイルインドリジン-1-カルボキサミド;
2-アミノ-1-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]-1H-インドール-3-カルボキサミド;それ
らの組合せ;又はそれらの医薬として許容し得る塩もしくは溶媒和物から選択されるカゼ
インキナーゼ1デルタ阻害剤である、構成16記載の方法。
(構成18)
前記カゼインキナーゼ1デルタ阻害剤が、5-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イル)-4-(ピリ
ジン-4-イル)ピリミジン-2-アミン;
2-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミド;2-メチ
ル-アミノ-3-[(4-フルオロフェニル)カルボニル]インドリジン-1-カルボキサミドから選
択される、構成17記載の方法。
(構成19)
前記神経認知障害が、タウ毒性を特徴とする、構成10~18のいずれか1項記載の方法。
(構成20)
前記神経認知障害が、タウオパチーである、構成8~17のいずれか1項記載の方法。
(構成21)
前記タウオパチーが、アルツハイマー病、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う
前頭側頭型認知症(FTDP-17)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、皮質基底核変性症、多
系統萎縮症(MSA)、鉄蓄積を伴う神経基底変性、1型(ハラーホルデン・スパッツ)、嗜銀顆
粒性認知症、ダウン症候群、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ボクサー認知症、
ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、筋強直性ジストロフィー、ニーマン
・ピック病C型、進行性皮質下グリオーシス、プリオンタンパク質脳アミロイドアンギオ
パチー、神経原線維変化型認知症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎、クロ
イツフェルト・ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症症候群、神経原線維
変化/認知症を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、慢性外傷性脳障害、アルファ-シヌク
レイン病、パーキンソン病、又はそれらの組合せの群から選択される、構成20記載の方法
。
(構成22)
前記タウオパチーが、アルツハイマー病である、構成21記載の方法。
(構成23)
工程d)が、メマンチン(例えば、Namenda(登録商標))、ガランタミン(例えば、Razadyne
(登録商標))、リバスチグミン(例えば、Exelon(登録商標))、ドネペジル(例えば、Aricep
t(登録商標))、ソラネズマブ、5HT5アンタゴニスト、又はそれらの組合せの群から選択さ
れる追加の治療薬剤を投与することをさらに含む、構成13記載の方法。
(構成24)
構成14記載の方法であって:
i)前記対象が、メマンチン(例えば、Namenda(登録商標))、ガランタミン(例えば、Razady
ne(登録商標))、リバスチグミン(例えば、Exelon(登録商標))、ドネペジル(例えば、Aric
ept(登録商標))、ソラネズマブ、5HT5アンタゴニスト、若しくはそれらの組合せの群から
選択される追加の治療薬剤でも治療されてきたか又は治療されており;かつ/又は
ii)工程c)の後に、該方法が、メマンチン(例えば、Namenda(登録商標))、ガランタミン(
例えば、Razadyne(登録商標))、リバスチグミン(例えば、Exelon(登録商標))、ドネペジ
ル(例えば、Aricept(登録商標))、ソラネズマブ、5HT5アンタゴニスト、若しくはそれら
の組合せの群から選択される追加の治療薬剤を投与することを含む、前記方法。
(構成25)
前記アッセイする工程a)及び/又は前記測定する工程b)が:
i)前記試料を、前記パネルの前記バイオマーカーの各々に対する1以上の結合性物質と接
触させること;又は
ii)前記試料中で前記バイオマーカーの各々に特異的な自己抗体を検出すること;又は
iii)前記試料中で、質量分析により、前記パネルの前記バイオマーカー又はそれらの断片
の各々を、任意に該試料を1以上のアイソバリックな反応性質量標識で事前に標識して、
検出すること;又は
iv)前記試料中で、2Dゲル電気泳動により、前記パネルの前記バイオマーカーの各々を検
出すること;又は
iv) i)、ii)、iii)、もしくはiv)のいずれかの組合せを含む、構成10~24のいずれか1項
記載の方法。
(構成26)
工程a)における前記アッセイすること及び/又は工程b)における前記測定することが:
i)前記パネルにおける前記バイオマーカーの1以上の断片を検出すること、及び/又は
ii)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するタウもしくはその1
以上の断片上の1以上のリン酸化アミノ酸を検出することであって、検出されるべきタウ
上の該リン酸化アミノ酸が、T181である場合、タウ又はその1以上の断片上の少なくとも
もう1つのリン酸化アミノ酸が検出される、前記検出すること;を含む、構成25記載の方法
。
(構成27)
前記試料が、固体支持体上に固定化されている、構成25又は構成26記載の方法。
(構成28)
前記試料が、脳脊髄液(CSF)、血液、血漿、血清、唾液、尿、組織(例えば、脳組織)又
はそれらの組合せの群から選択される、構成10~27のいずれか1項記載の方法。
(構成29)
前記試料が、CSF又は血液である、構成10~28のいずれか1項記載の方法。
(構成30)
前記対象が、ヒト対象である、構成10~29のいずれか1項記載の方法。
(構成31)
試料中で、構成1~9のいずれか1項において定義されるパネルの前記バイオマーカーを
アッセイ及び/又は測定するための試薬を含むキット。
(構成32)
前記試薬が、前記パネルの前記バイオマーカーに特異的に結合する1以上の結合性物質
を含む、構成31記載のキット。
(構成33)
前記1以上の結合性物質が、一次抗体であり、各々の一次抗体が:
i)前記パネルの異なるバイオマーカー、及び/又は
ii)配列番号:29のアミノ酸配列を含むか又は該アミノ酸配列を有するタウもしくはその断
片の1以上のリン酸化アミノ酸
に特異的に結合する、構成32記載のキット。
(構成34)
前記試薬が、前記一次抗体に特異的に結合する1以上の二次抗体をさらに含む、構成33
記載のキット。
(構成35)
前記二次抗体が、標識されている、構成34記載のキット。
(構成36)
前記試料が、脳脊髄液(CSF)、血液、血漿、血清、唾液、尿、組織(例えば、脳組織)又
はそれらの組合せの群から選択される、構成31~35のいずれか1項記載のキット。
【配列表】