(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】地盤改良装置における洗浄装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20230309BHJP
E02D 3/08 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
E02D3/10 104
E02D3/08
(21)【出願番号】P 2021008569
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】田中 肇一
(72)【発明者】
【氏名】永石 雅大
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-117285(JP,A)
【文献】特開2017-043942(JP,A)
【文献】特開平07-062644(JP,A)
【文献】特開2016-196805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00- 3/115
B08B 1/00- 1/04
B08B 5/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に回転しながら貫入され、引き抜く際に杭材料を排出し、打ち戻しと前記杭材料の排出とを繰り返すことで無振動にて材料杭を造成するケーシングパイプを備え、前記材料杭を造成した後で前記ケーシングパイプ内を洗浄水にて洗浄する地盤改良装置における洗浄装置であって、
前記ケーシングパイプの内周面に前記洗浄水を噴射させる洗浄水噴射ノズルと、
前記洗浄水噴射ノズルを前記ケーシングパイプ内に吊り下げて、ウインチの巻き上げ巻き戻しにより前記洗浄水噴射ノズルを前記ケーシングパイプ内において昇降動させるワイヤと、
前記洗浄水噴射ノズルに前記洗浄水を供給する洗浄水供給ホースと、
を備え、
前記ワイヤの中途部は、前記ケーシングパイプ内の前記洗浄水噴射ノズルの昇降位置を検出する位置検出器のドラムに巻き付けられ、
前記位置検出器は、前記ケーシングパイプ内の前記洗浄水噴射ノズルの昇降位置を前記ワイヤの先端に取り付けられた電極重錘の重さにより該ワイヤが引っ張られた状態で前記ドラムに巻き付けられる巻付量により検知して、前記洗浄水噴射ノズルの昇降位置の検出を行うことを特徴とする地盤改良装置における洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の地盤改良装置における洗浄装置であって、
前記洗浄水噴射ノズルは、前記洗浄水供給ホースを介して高圧洗浄水を噴出させる高圧洗浄機に連結されていると共に、高圧エアを噴出させるエアコンプレッサに連結されていることを特徴とする地盤改良装置における洗浄装置。
【請求項3】
請求項1記載の地盤改良装置における洗浄装置であって、
前記洗浄水噴射ノズルは、回転ノズルであり、前記電極重錘に固定されると共に前記洗浄水供給ホースを連結した固定体と、外周面に複数の噴射ノズルを突設すると共に前記固定体の軸部に回転自在に支持され、前記複数の噴射ノズルから噴射され
る高圧洗浄水の噴射力の反力により回転する回転体と、を備え、
前記ケーシングパイプの内周面に付着した付着物を洗浄水で洗浄する際に、前記回転体を回転させながら前記複数の噴射ノズルから高圧洗浄水を噴射させるようにしたことを特徴とする地盤改良装置における洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強制昇降装置を用いた回転圧入によって、無振動にて砂杭等の材料杭を造成する地盤改良装置における洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の地盤改良装置における洗浄装置として、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に記載のパイル造成装置における洗浄装置を
図4に示す。このパイル造成装置1は、
図4に示すように、クローラクレーンの前部に立設したリーダ(いずれも図示省略)と、このリーダに図示しないワイヤを介して昇降自在に装備された昇降枠2と、この昇降枠2の下端部に起振機3を介して垂下連結された外ケーシング4と、この外ケーシング4内に同心状に挿入され、上端部が起振機3に連結された内ケーシング5と、この内ケーシング5の上端部に連設されて該内ケーシング5内に砂等の杭材料を供給するホッパー6と、を備えている。
【0003】
また、ホッパー6の開口部内周には、ホッパー6の内面に向けて洗浄水Sを噴射する多数の孔7aを設けた洗浄水噴射管7が配管されている。また、外ケーシング4の内周面上端部と内ケーシング5の外周面上端部との間の環状空間部には、両ケーシング4,5の対向周面に向けて洗浄水Sを噴射する多数の孔8aを設けた洗浄水噴射管8が配管されている。これら洗浄水噴射管7,8によりパイル造成装置1における洗浄装置9が構成されている。
【0004】
そして、
図4に示すように、洗浄水噴射管7の多数の孔7aからホッパー6の内面に向かって洗浄水Sが噴射され、ホッパー6の内面に付着した砂等の付着物が洗い流されて洗浄され、ホッパー6の内面を洗浄した洗浄水Sは、該ホッパー6の下端部から内ケーシング5内に流入して、内ケーシング5の内面に付着した砂等の付着物が洗い流されて洗浄されるようになっている。さらに、洗浄水噴射管8の多数の孔8aから内外両ケーシング4,5の対向する周面に向かって洗浄水Sが噴射され、外ケーシング4の内周面及び内ケーシング5の外周面に付着した砂等の付着物が洗い流されて洗浄されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記パイル造成装置1における洗浄装置9では、ホッパー6の内面を洗浄した洗浄水を内ケーシング5内に流入させて、内ケーシング5の内面に付着した砂等の付着物を間接的に洗浄させていて、内ケーシング5の内面に洗浄水Sを直接噴射させないため、内ケーシング5の内面の全面に付着した砂等の付着物を完全に洗い流して洗浄することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、ケーシングパイプの内周面に付着した杭材料等の付着物に対して洗浄水噴射ノズルから洗浄水を直接ピンポイントに噴射して簡単かつ完全に付着物を除去することができる地盤改良装置における洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、地盤中に回転しながら貫入され、引き抜く際に杭材料を排出し、打ち戻しと前記杭材料の排出とを繰り返すことで無振動にて材料杭を造成するケーシングパイプを備え、前記材料杭を造成した後で前記ケーシングパイプ内を洗浄水にて洗浄する地盤改良装置における洗浄装置であって、前記ケーシングパイプの内周面に前記洗浄水を噴射させる洗浄水噴射ノズルと、前記洗浄水噴射ノズルを前記ケーシングパイプ内に吊り下げて、ウインチの巻き上げ巻き戻しにより前記洗浄水噴射ノズルを前記ケーシングパイプ内において昇降動させるワイヤと、前記洗浄水噴射ノズルに前記洗浄水を供給する洗浄水供給ホースと、を備え、前記ワイヤの中途部は、前記ケーシングパイプ内の前記洗浄水噴射ノズルの昇降位置を検出する位置検出器のドラムに巻き付けられ、前記位置検出器は、前記ケーシングパイプ内の前記洗浄水噴射ノズルの昇降位置を前記ワイヤの先端に取り付けられた電極重錘の重さにより該ワイヤが引っ張られた状態で前記ドラムに巻き付けられる巻付量により検知して、前記洗浄水噴射ノズルの昇降位置の検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄水噴射ノズルをケーシングパイプ内にワイヤで吊り下げて、ウインチの巻き上げ巻き戻しによりケーシングパイプ内において昇降動させるようにしたことで、ケーシングパイプの内周面に付着した杭材料等の付着物に対して洗浄水噴射ノズルから洗浄水を直接ピンポイントに噴射して簡単かつ完全に付着物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の地盤改良装置における洗浄装置の概略正面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の地盤改良装置における洗浄装置の要部の断面図である。
【
図4】従来のパイル造成装置における洗浄装置の要部を断面で示す部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の第1実施形態の地盤改良装置における洗浄装置の概略正面図、
図2は洗浄装置の要部の断面図である。
【0013】
図1に示すように、地盤改良装置10は、図示しない施工機本体の前部に立設したリーダ11と、図示しないラック等によりリーダ11に沿って昇降動する強制昇降装置12と、この強制昇降装置12によりリーダ11に沿って昇降動すると共に、回転駆動装置13により回転自在に支持されたケーシングパイプ14と、強制昇降装置12の一側部に取り付けられ、ケーシングパイプ14内に砂(杭材料)31を供給するホッパー15と、を備えている。杭材料としては、砂31の他に、スラグや再生コンクリート或いは産業廃棄物の盛り上がり土等でも良い。
【0014】
図1、
図2に示すように、ケーシングパイプ14は円筒状に形成されている。そして、ケーシングパイプ14を地盤30中に回転しながら貫入し、ケーシングパイプ14内にホッパー15より供給された砂31を地盤30中からケーシングパイプ14を引き抜く際にその先端の開口14bから排出するようになっている。これらケーシングパイプ14の貫入と引き抜きを順次繰り返して、ケーシングパイプ14の打ち戻しと砂31の排出とを繰り返すことで無振動・無騒音にて砂杭(材料杭)32を造成することができるようになっている。
【0015】
図1、
図2に示すように、地盤改良装置10における洗浄装置20は、ケーシングパイプ14で砂杭32を造成した後で、ケーシングパイプ14の内周面14aに付着した砂31等の付着物33を洗浄水Wにて洗い流して洗浄するものである。
【0016】
図1、
図2に示すように、洗浄装置20は、ケーシングパイプ14の内周面14aに洗浄水Wを噴射させる洗浄水噴射ノズル21と、この洗浄水噴射ノズル21をケーシングパイプ14内に吊り下げて、ウインチ16の巻き上げ巻き戻しにより洗浄水噴射ノズル21をケーシングパイプ14内において昇降動させるワイヤ17と、洗浄水噴射ノズル21に洗浄水Wを供給する洗浄水供給ホース27と、を備えている。
【0017】
ワイヤ17の中途部17bは、ケーシングパイプ14内の洗浄水噴射ノズル21の昇降位置を検出する砂面計(位置検出器)18のドラム18aに巻き付けられている。この砂面計18は、砂杭32を造成する際に、ケーシングパイプ14内の砂面を電極重錘19で感知し、砂面の高さを検出する際に用いられるものを、ケーシングパイプ14内の洗浄水噴射ノズル21の位置を検出する際にも兼用している。即ち、砂面計18は、ケーシングパイプ14内の洗浄水噴射ノズル21の昇降位置をワイヤ17の先端17aに取り付けられた電極重錘19の重さにより該ワイヤ17が引っ張られた状態でドラム18aに巻き付けられる巻付量により検知して、洗浄水噴射ノズル21の昇降位置の検出を行うものである。
【0018】
図2に示すように、洗浄水噴射ノズル21の外周面21aには、放射状に複数の噴射ノズル22が突設されている。また、洗浄水噴射ノズル21は、洗浄水供給ホース27を介して高圧洗浄水Wを噴出させる高圧洗浄機28に連結されていると共に、高圧エアAを噴出させるエアコンプレッサ29に連結されている。これにより、洗浄水噴射ノズル21の複数の噴射ノズル22からケーシングパイプ14の内周面14aに付着した付着物33に対して高圧洗浄水(洗浄水)Wと高圧エアAが噴射されて付着物を除去できるようになっている。尚、複数の噴射ノズル22からは、高圧洗浄水Wと高圧エアAのいずれか一方のみを切り換えにより噴射させたり、高圧洗浄水Wと高圧エアAの両方を噴射できるようになっている。また、高圧洗浄機28は、洗浄水Wを貯留した水槽28Aに連結されている。
【0019】
以上実施形態の地盤改良装置10における洗浄装置20は、地盤30中にケーシングパイプ14を介して砂杭32を造成した後で、ケーシングパイプ14の内周面14aに付着した砂31等の付着物33を除去する際に使用される。即ち、
図2に示すように、ケーシングパイプ14内の下側から上側にかけて、ワイヤ17により洗浄水噴射ノズル21を上方へ移動させながらケーシングパイプ14の内周面14aに付着した付着物33に複数の噴射ノズル22から高圧洗浄水W(高圧エアAのいずれか一方、或いは両方でも良い)を噴射させて付着物33を洗浄する。
【0020】
このように、洗浄水噴射ノズル21をケーシングパイプ14内にワイヤ17で吊り下げて、ウインチ16の巻き上げ巻き戻しによりケーシングパイプ14内において昇降動させるようにしたことで、ケーシングパイプ14の内周面14aに付着した付着物33に対して洗浄水噴射ノズル21の複数の噴射ノズル22から高圧洗浄水W等を直接ピンポイントに噴射して簡単かつ完全に付着物33を除去することができる。また、ケーシングパイプ14内の洗浄水噴射ノズル21の昇降位置は、砂面計18により検出されるため、ケーシングパイプ14の内周面14aの全面に亘って付着物33に洗浄水噴射ノズル21の複数の噴射ノズル22から高圧洗浄水W等をより的確に噴射してより完全に付着物33を除去することができる。
【0021】
図3は本発明の第2実施形態の地盤改良装置における洗浄装置の要部の断面図である。
【0022】
この第2実施形態の地盤改良装置10における洗浄装置20は、洗浄水噴射ノズルが回転ノズル23である点が、前記第1実施形態のものとは異なる。尚、他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0023】
即ち、この第2実施形態の洗浄装置20の洗浄水噴射ノズル23は、回転ノズルであり、電極重錘19に固定されると共に洗浄水供給ホース27を連結した固定体24と、外周面25aに傾斜した複数の噴射ノズル26を突設すると共に固定体24の軸部24aに回転自在に支持され、複数の噴射ノズル26から噴射される高圧洗浄水Wの噴射力の反力により回転する回転体25と、を備えている。
【0024】
そして、ケーシングパイプ14の内周面14aに付着した付着物33を高圧洗浄水Wで洗浄する際に、回転体25を回転させながら複数の噴射ノズル26から高圧洗浄水Wを噴射させるようにしたことにより、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0025】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 地盤改良装置
14 ケーシングパイプ
14a 内周面
16 ウインチ
17 ワイヤ
17a 先端
17b 中途部
18 砂面計(位置検出器)
18a ドラム
19 電極重錘
20 洗浄装置
21 洗浄水噴射ノズル
23 回転ノズル(洗浄水噴射ノズル)
24 固定体
24a 軸部
25 回転体
25a 外周面
26 複数の噴射ノズル
27 洗浄水供給ホース
28 高圧洗浄機
29 エアコンプレッサ
30 地盤
31 砂(杭材料)
32 砂杭(材料杭)
33 付着物