(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】ロキソプロフェン又はその塩及びビタミンEを含有する経口用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/355 20060101AFI20230309BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20230309BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230309BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230309BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230309BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61K31/355
A61K31/192
A61P43/00 121
A61P29/00
A61P11/00
A61K9/20
(21)【出願番号】P 2022034049
(22)【出願日】2022-03-07
(62)【分割の表示】P 2017132351の分割
【原出願日】2017-07-06
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2016135103
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】井 紀孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 美希
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 泰貴
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-052210(JP,A)
【文献】特表2008-531569(JP,A)
【文献】特許第4460019(JP,B1)
【文献】特開2018-021002(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1546016(CN,A)
【文献】特開2011-162536(JP,A)
【文献】臨床皮膚科,2009年,Vol. 63, No. 1,pp. 37-40
【文献】皮膚科の臨床,2008年,Vol. 50, No. 7,pp. 920-921
【文献】皮膚科の臨床,2003年,Vol. 45, No. 13,pp. 1777-1780
【文献】実験潰瘍(ULCER RESEARCH),1998年,Vol. 25, No. 2,pp. 304-305
【文献】日薬理誌,2007年,Vol. 130,pp. 39-44
【文献】Journal of Nutritional Biochemistry,2009年,Vol. 20,pp. 894-900
【文献】Journal of Gastroenterology and Hepatology,2016年04月27日,(2017) Vol. 32, No. 1,pp. 136-145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一錠剤中に、(a)ロキソプロフェン又はその塩及び(b)α-トコフェロール、及び、このコハク酸エステル、酢酸エステル、リン酸エステル、並びにそれらの塩から選ばれるビタミンEを含有し、解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤として用いられる経口医薬組成物。
【請求項2】
有効成分として、(a)ロキソプロフェン又はその塩及び(b)α-トコフェロール、及び、このコハク酸エステル、酢酸エステル、リン酸エステル、並びにそれらの塩から選ばれるビタミンEのみを含有する、請求項1に記載の経口医薬組成物。
【請求項3】
1投与単位当たりの(a)ロキソプロフェン又はその塩の含有量が無水物換算で10~180mgであり、(b)ビタミンEの含有量が1~500mgである請求項1又は2に記載の経口医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェン又はその塩の薬効を増強するとともに、胃粘膜障害をも軽減した解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤として用いられる経口医薬組成物に関する。より詳しくは、ロキソプロフェン又はその塩とビタミンEを含有する経口医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピオン酸系非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤(以下、NSAIDと称することがある)であるロキソプロフェンは、他のNSAIDと同様に、プロスタグランジン生合成の抑制作用に基づく解熱・鎮痛・抗炎症作用を有する。なお、ロキソプロフェンは経口投与後に胃粘膜刺激作用の弱い未変化体のまま消化管から吸収され、体内で活性体となるプロドラッグであるため、胃粘膜障害は少ないという特徴を有することでも知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ロキソプロフェン又はその塩と他の有効成分とを併用して経口投与することで胃粘膜障害を更に抑制する技術として、制酸剤(酸化マグネシウム)を含有させる技術(特許文献1参照)、グルコサミン又はコンドロイチンを含有させる技術(特許文献2参照)、抗コリン薬のヨウ化イソプロパミドを含有させる技術(特許文献3参照)、抗ヒスタミン薬のクレマスチンフマル酸塩を含有させる技術(特許文献4参照)、抗プラスミン薬のトラネキサム酸を含有させる技術(特許文献5参照)などが開示されている。
【0004】
一方、ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種であり、トコフェロールとも呼ばれる。薬理作用としては、下垂体-副腎系に対する賦活作用により内分泌の失調を是正するほか、膜安定化作用により毛細血管壁内皮細胞や中膜筋細胞の原形質膜、ミトコンドリア、小胞体、リソソームなどの生体膜を安定化させ、血管壁の透過性や抵抗性を改善する。また、末梢血行を促すと共に、血小板粘着・凝集能を抑制して、微小循環系の動態を改善する、抗酸化作用として過酸化脂質の生成を抑制するなど、末梢の代謝系に重要な役割を果たしている(非特許文献2)。効能効果としては、上記の薬理作用から、ビタミンE欠乏症の予防及び治療、末梢循環障害、過酸化脂質の増加防止があげられる(非特許文献2、非特許文献3)。しかしながら、痛みに係る効果は知られていない。
【0005】
上述のように、ロキソプロフェン又はその塩と他の有効成分との併用による作用効果の検討がなされてきているが、ロキソプロフェン又はその塩とビタミンEを併用して経口投与することで鎮痛作用および胃粘膜障害抑制作用に如何なる影響が生じるかは知られていなかった。これまでに、ロキソプロフェン又はその塩と抗酸化剤としての酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、トコフェロール又はd-σ-トコフェロールを含有する皮膚透過性が亢進した外用消炎鎮痛剤が知られていた(特許文献6)。また、ロキソプロフェン又はその塩を含有する抗アデノウイルス剤に更にビタミン剤を含有してもよいことが知られ、ビタミン剤の一例としてビタミンEがあげられていた(特許文献7)。また、ロキソプロフェン又はその塩を有効成分とする軟カプセル剤を製造する際に製剤の安定化のためにクロスポビドンとともに加えることができる油脂の例示としてトコフェロールが記載されている(特許文献8)。しかしながら、ロキソプロフェン又はその塩とビタミンEとを配合した経口用組成物は知られておらず、それによる併用効果については不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-052210公報
【文献】特開2008-195705公報
【文献】特開2010-150250公報
【文献】特開2011-173861公報
【文献】特開2010-083882公報
【文献】特開2011-037903公報
【文献】特開2008-285475公報
【文献】特開2014-058491公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】薬理と治療 Vol.16 No.2 1988 p.611-619
【文献】第十六改正日本薬局方解説書2011,廣川書店
【文献】JAPIC 医療用医薬品集2013年版,一般財団法人日本医療情報センター
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ロキソプロフェンはプロドラッグであるため、胃粘膜障害は他のNSAIDに比べて少ないと考えられているが、それでも胃粘膜障害は発現するリスクがある。本発明は、胃粘膜障害のリスクが軽減した新たなロキソプロフェン配合の解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤として用いられる経口用医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本研究の結果、ロキソプロフェン又はその塩とビタミンEとの併用において胃粘膜障害が軽減され、同時に、薬効も補助的に高めるという結果を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示す通りである。
(1)(a)ロキソプロフェン又はその塩及び(b)ビタミンEを含有する経口医薬組成物。
(2)解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤として用いられる(1)に記載の経口医薬組成物。
(3)固形製剤である(1)又は(2)に記載の経口医薬組成物。
(4)1投与単位当たりの(a)ロキソプロフェン又はその塩の含有量が無水物換算で10~180mgであり、(b)ビタミンEの含有量が1~500mgである(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の経口医薬組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、ロキソプロフェン又はその塩とビタミンEを含有する経口用医薬組成物は、ロキソプロフェンの薬効を補助的に高めるので有用である。更に、ロキソプロフェンによる胃粘膜傷害も顕著に軽減するので有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物単独、及び、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物とビタミンEの併用における胃粘膜傷害の影響を調べた結果を示したものである。
【
図2】
図2は、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物単独、及び、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物とビタミンEの併用におけるフリンチング回数の影響を調べた結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において「ロキソプロフェン又はその塩」とは、ロキソプロフェン又はその塩(塩の水和物を含む)であり、好適には、ロキソプロフェンナトリウムであり、さらに好適には、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物である。本発明のロキソプロフェン又はその塩は、ロキソプロフェンナトリウム水和物として第16改正日本薬局方に収載されている。
【0014】
本発明において「ビタミンE」としては、同属体としてα-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールの他、これらのコハク酸エステル、酢酸エステル、ニコチン酸エステル、リン酸エステル等の誘導体や、光学異性体であるdl-体の他、α-トコフェロールコハク酸エステルカルシウム等のこれらの塩があげられる。好適には、第16改正日本薬局方に掲載されているトコフェロール、トコフェロールコハク酸エステルカルシウム、トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロールニコチン酸エステル、及び、日本薬局方外医薬品規格2002に収載されているd-α-トコフェロール、酢酸d-α-トコフェロール及びコハク酸d-α-トコフェロールなどを用いることができる。
【0015】
上記以外のビタミンEも市販されているので、容易に入手できる。
【0016】
本発明の組成物の1投与単位(1回投与量)におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は無水物換算で1回10~180mg、1日1~3回であり、好ましくは、1回20~90mg、1日1~3回である。
【0017】
また、本発明の組成物の1投与単位(1回投与量)におけるビタミンEの含有量は特に制限はないが、1回1~500mg、1日1~3回であり、好ましくは、1回3~100mg、1日1~3回である。
【0018】
また、本発明の組成物が1日1回50mL服用する液剤であれば、その液剤におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は、好ましくは無水物換算で10~180mg/50mLであり、ビタミンEについては1~500mg/50mLである。
【0019】
本発明の組成物は、常法に従って製剤されるが、投与方法に合わせて、各薬剤を別々に製剤してもよい。
【0020】
本発明の組成物等は、例えば、錠剤(チュアブル錠、発泡錠、口腔内崩壊錠などを含む)、トローチ剤、ドロップ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、ドライシロップ剤などの固形製剤;舐剤、チューインガム剤、ゼリー剤、ゼリー状ドロップ剤などの半固形製剤;シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、酒精剤、液剤などの液状製剤などの、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の剤形とすることができる。本発明においては、服用の簡便性や製造面等の点で、固形製剤であるのが好ましく、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤及び細粒剤からなる群より選ばれる経口投与組成物であるのがより好ましく、錠剤又は硬カプセル剤であるのが特に好ましい。これらの組成物には、更に、必要に応じてその他の有効成分、例えば、鎮咳・去痰剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、胃腸薬成分、制酸剤、抗コリン剤、その他のビタミン類、キサンチン誘導体、鎮静剤を、本発明を損なわない範囲内で適宜配合してもよく、それらに配合変化のために保存安定性に問題があれば、適宜顆粒分け等を行い製剤化すればよい。
【0021】
鎮咳・去痰剤としては、例えば、コデイン、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデインリン酸塩、ジブナートナトリウム、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンクエン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、デキストロメトルファン、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、デキストロメトルファンフェノールフタリン塩、ノスカピン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、プソイドエフェドリン硫酸塩、l-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、アンブロキソール塩酸塩、ブロムヘキシン塩酸塩等があげられる。
【0022】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、アゼラスチン塩酸塩、アリメマジン酒石酸塩、エバスチン、エピナスチン塩酸塩、エメダスチンフマル酸塩、オキサトミド、オロパタジン塩酸塩、カルビノキサミン、ジフェニルジスルホン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェンヒドラミンタンニン酸塩、トリプロリジン塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、トンジルアミン塩酸塩、フェキソフェナジン、フェネタジン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、プロメタジン、メキタジン、メトジラジン塩酸塩、ロラタジン等があげられる。
【0023】
抗炎症剤としては、グリチルリチン酸及びその誘導体並びにそれらの塩類(例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等)、トラネキサム酸等があげられる。
【0024】
胃腸薬成分としては、ゲファルナート、セトラキサート塩酸塩、ソファルコン、テプレノン、メチルメチオニンスルホニウムクロリド等があげられる。
【0025】
制酸剤としては、例えば、グリシン(アミノ酢酸とも呼ばれる)、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物、ベントナイト、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム等のマグネシウム、アルミニウム及びカルシウム塩、乾燥炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、リン酸水素ナトリウム水和物、無水リン酸一水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等のナトリウム及びカリウムから選ばれる塩等の胃酸のpHをあげる成分があげられる。
【0026】
抗コリン剤としては、スコポラミン臭化水素酸塩、ダツラエキス、メチルスコポラミン臭化物、メチル-l-ヒヨスチアミン臭化物、ピレンゼピン塩酸塩、ブチルスコポラミン臭化物、ベラドンナアルカロイド、ベラドンナエキス、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド、ヨウ化ジフェニルピペリジノメチルジオキソラン、ロートエキス、ロート根、ロート根総アルカロイドクエン酸塩等があげられる。
【0027】
その他のビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンP、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、ビオチン、アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物、イノシトールヘキサニコチネート、ウルソデオキシコール酸、L-システイン、L-塩酸システイン、オロチン、ガンマーオリザノール、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルクノラクトン、グルクロン酸アミド、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ニンジン、ヨクイニンがあげられる。
【0028】
キサンチン誘導体としては、カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン、クエン酸カフェインがあげられる。
【0029】
鎮静剤としては、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素があげられる。
【0030】
製剤化にあたっては、公知の方法と添加剤を適宜用いて製造することができる。添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜加えればよい。添加物としては、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤等をあげることができる。
【0031】
賦形剤としては、例えば、結晶セルロース、粉末セルロース、バレイショデンプン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、乳糖、白糖、D-マンニトール、エリスリトール、ブドウ糖、果糖等をあげることができる。
【0032】
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、アルギン酸、部分アルファー化デンプン、ベントナイト等をあげることができる。
【0033】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、硬化油等をあげることができる。
【0034】
コーティング剤としては、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、ステアリン酸マグネシウム、セラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポビドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール等をあげることができる。これら添加物は、上記にあげたものに限定されるものではなく、また、これらのうち1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
以下に、試験例及び製剤例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、これらの例に限定されるものではない。以下の製剤例においてはビタミンEとしてトコフェロール酢酸を用いるが、トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステルカルシウム、トコフェロール酢酸エステル又はトコフェロールニコチン酸エステルを用いてもよい。
【実施例】
【0036】
(製剤例1)ハードカプセル剤
(表1)
1カプセル中(mg) a b c
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロキソプロフェンナトリウム(無水物として) 60 60 60
ビタミンE 3 20 100
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
結晶セルロース 10 20 50
ポリビニルアルコール 5 5 5
クロスカルメロースナトリウム 8 8 8
ヒプロメロース 18 22 25
軽質無水ケイ酸 10 20 30
ポビドン 5 6 3
乳糖 適量 適量 適量
ステアリン酸マグネシウム 5 5 5
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記成分および分量をとり、日局製剤総則「カプセル剤」の項に準じてカプセルを製造する。
【0037】
(製剤例2)錠剤
(表2)
1錠中(mg) d e f
-――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロキソプロフェンナトリウム(無水物として) 60 60 60
ビタミンE 3 20 100
D-マンニトール 253 264 273
トレハロース 30 43 48
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
ヒプロメロース 20 30 40
ヒドロキシプロピルセルロース 10 20 30
マクロゴール400 60 - 30
ポビドン - 6 3
ステアリン酸マグネシウム 5 5 5
酸化チタン 3 4 5
タルク 2 3 3
カルナウバロウ 微量 微量 微量
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記成分および分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。なお、所望により剤皮を塗布する。
【0038】
(製剤例3)顆粒剤
(表3)
1包中(mg) g h i
-――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロキソプロフェンナトリウム(無水物として) 60 60 60
ビタミンE 3 20 100
エリスリトール 105 111 125
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
ヒドロキシプロピルセルロース 10 20 30
アスパルテーム 9 12 15
香料 微量 微量 微量
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記成分および分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて顆粒剤を製造する。
【0039】
(試験例1)ロキソプロフェン誘発胃粘膜障害に対する抑制効果試験
(1)被検物質
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物は第一三共ケミカルファーマ(株)製のものを、ビタミンEとしてd-α-トコフェロールコハク酸塩(理研ビタミン(株)製)を使用した。これらの被験物質は、トラガント(SIGMA製)を注射用水(大塚製薬工場製)に溶解した0.5%トラガント溶液中に懸濁させて調整した。
【0040】
(2)使用動物
Crl:CD雄性ラット6週齢(日本エスエルシー)を5日間の検疫期間及び2日間の馴化後に使用した。動物は温度20~26℃、湿度40~70%、照明時間6~18時に制御されたラット飼育室内で個別飼育した。固形試料(CRF-1、オリエンタル酵母工業(株))および水道水を自由に摂取させ、1週間予備飼育した後、体重推移および一般症状の良好な動物を選別して供試した。
【0041】
(3)試験方法
18時間以上絶食したラットに、ディスポーザブルラット用経口ゾンデ(フチガミ器械製)を取り付けたポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒(テルモ製)を用いて、被験物質を経口投与した。なお、被験物質はマグネチックスターラーを用いて攪拌しながら使用した。
【0042】
被験物質投与後4時間に、イソフルラン軽麻酔下での頚椎脱臼により動物を安楽死させ、速やかに胃を摘出し、内部に生理食塩液を10mL充填後、1%ホルマリンに浸して翌日まで固定した。
【0043】
固定した胃を大湾に沿って切開し、デジタルノギスを用いて胃粘膜傷害の長さを測定した。個体の胃粘膜傷害の長さは、長径を計測しそれらの総和を算出した。
【0044】
(4)試験結果
表4及び
図1は、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物(L)及びビタミンEの併用における胃粘膜傷害長さの総和を示したものである。ここで、括弧内の数値は各被験薬の投与量mg/Kgであり、各群ともN=6の結果である。
【0045】
(表4)
被験薬(mg/Kg) 胃粘膜傷害長さの総和(mm) 比
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
L(80) 30.05 1
L(80)+E(38.77) 19.70 0.66
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
表4及び
図1より、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物(L)とビタミンEの併用では、ロキソプロフェンによる胃粘膜傷害を顕著に軽減することが判明した。
【0046】
(試験例2)ホルマリンテスト
(1)被検物質
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物は第一三共ケミカルファーマ(株)製のものを使用した。また、ビタミンEとしてd-α-トコフェロールコハク酸塩(理研ビタミン(株)製)を使用した。これらの被験物質は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬工業製、以下CMCと称すことがある)を注射用水(大塚製薬工場製)に溶解した0.5%CMC溶液中に懸濁させて調製した。
【0047】
(2)使用動物
Crl:CD(SD)雄性ラット6週齢(日本チャールス・リバー(株))を使用した。動物は温度20~26℃、湿度35~75%、照明時間7~19時に制御されたラット飼育室内で飼育した。固形飼料(CRF-1、オリエンタル酵母工業(株))および井戸水を自由に摂取させ、1週間予備飼育した後、体重推移および一般症状の良好な動物を選別して供試した。
【0048】
(3)試験方法
ラットに、フレキシブル胃ゾンデを取り付けたディスポーザブル注射筒を用いて、被験物質を経口投与した。
【0049】
被験物質投与後、発痛物質として2.5%ホルマリンを左後肢に0.1mL皮下投与した。
【0050】
ホルマリン投与直後は、ホルマリンの末梢神経系への直接的な刺激に起因した疼痛であるため、疼痛評価はその後の16分~61分間に5分毎に、1分間に発現する痛みの行動(フリンチング)回数(回/分)を測定し集計することで行なった。
【0051】
(4)試験結果
表5及び
図2は、ロキソプロフェンナトリウム(L)及びLとビタミンEとの併用における、ホルマリン皮下投与による被験動物のフリンチング回数の効果を示したものである。ここで、括弧内の数値は各被験薬の投与量mg/Kgであり、各群ともN=8の結果である。
【0052】
(表5)
被験薬(mg/Kg) フリンチング回数 Lとの比
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
対照(媒体:0.5%CMC溶液) 107 1.43
L(45) 75 1
L(45)+E(25) 55 0.73
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0053】
表5及び
図2より、ロキソプロフェンナトリウム(L)単独でフリンチング回数の減少、すなわち鎮痛作用が確認できる。一方、ロキソプロフェンナトリウム(L)とビタミンEとの併用ではフリンチング回数が顕著に減少することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の、ロキソプロフェン又はその塩とビタミンEを含有する経口用医薬組成物は、ロキソプロフェンによる胃粘膜障害を顕著に抑制するとともに、鎮痛作用も補助的に高めるため極めて有用である。本発明の経口用医薬組成物は、解熱剤、鎮痛剤、炎症治療剤又は感冒治療剤として用いられ、特に、頭痛、月経痛(生理痛)、歯痛、抜歯後疼痛、咽喉痛、腰痛、関節痛、筋肉痛、肩こり痛、耳痛、打撲痛、骨折痛、ねんざ痛、外傷痛等の鎮痛、悪寒・発熱時の解熱に好適に用いられる。