(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】VOC処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20230309BHJP
B01D 53/44 20060101ALI20230309BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20230309BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20230309BHJP
F24F 8/158 20210101ALI20230309BHJP
F24F 8/167 20210101ALI20230309BHJP
【FI】
B01D53/04 230
B01D53/44 110
B01D53/86 150
A61L9/014
F24F8/158
F24F8/167
(21)【出願番号】P 2022066155
(22)【出願日】2022-04-13
【審査請求日】2022-04-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、防衛装備庁、請負事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛装備庁長官
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊浦 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】谷山 教幸
(72)【発明者】
【氏名】高見 有一
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 英樹
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-527750(JP,A)
【文献】特表2010-527751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-14
B01D 53/02-12
B01D 53/44、82、86
B01J 20/18、34
B63G 8/36
B64G 1/46
F24F 8/15-167
C07B 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VOCを吸着するベータ型ゼオライトからなる吸着材が充填された第1吸着容器及び第2吸着容器と、
VOCを含む被処理ガスを被処理ガス入口から前記第1吸着容器を通して処理ガス出口へ流す第1吸着ラインと、
前記被処理ガスを前記被処理ガス入口から前記第2吸着容器を通して前記処理ガス出口へ流す第2吸着ラインと、
再生ガスを前記吸着材に吸着されたVOCの脱着温度まで加熱する加熱器と、
前記吸着材から脱着して前記再生ガスに同伴するVOCを酸化処理する白金触媒と、
前記再生ガスを前記第1吸着容器、前記加熱器、及び前記白金触媒に循環させる第1再生ループと、
前記再生ガスを前記第2吸着容器、前記加熱器、及び前記白金触媒に循環させる第2再生ループと、
熱回収ガスを前記第1吸着容器及び前記第2吸着容器の順に通して前記処理ガス出口へ流す第1熱回収ラインと、
前記熱回収ガスを前記第2吸着容器及び前記第1吸着容器の順に通して前記処理ガス出口へ流す第2熱回収ラインと、
前記被処理ガスの流路を前記第1吸着ラインと前記第2吸着ラインとの間で択一的に切り替える吸着流路切替装置と、
前記再生ガスの流路を前記第1再生ループと前記第2再生ループとの間で択一的に切り替える再生流路切替装置と、
前記熱回収ガスの流路を前記第1熱回収ラインと前記第2熱回収ラインとの間で択一的に切り替える熱回収流路切替装置と、
前記被処理ガスが前記第1吸着ラインに流れているときに前記再生ガスが前記第2再生ループを循環し、前記被処理ガスが前記第2吸着ラインに流れているときに前記再生ガスが前記第1再生ループを循環し、前記被処理ガスの流れを一旦止めて前記被処理ガスの流路を前記第1吸着ラインから前記第2吸着ラインに切り替える間に前記熱回収ガスが前記第2熱回収ラインを流れ、前記被処理ガスの流れを一旦止めて前記被処理ガスの流路を前記第2吸着ラインから前記第1吸着ラインに切り替える間に前記熱回収ガスが前記第1熱回収ラインを流れるように、前記吸着流路切替装置、前記再生流路切替装置、及び前記熱回収流路切替装置の動作を制御する制御装置と、を備える、
VOC処理装置。
【請求項2】
前記第1再生ループは前記第1吸着容器よりも前記再生ガスの流れの下流側の遮断部で遮断可能に構成されており、前記遮断部で遮断された前記第1再生ループにおいて前記第1吸着容器よりも前記再生ガスの流れの下流側に設けられた第1接続部と、前記第2吸着ラインの前記第2吸着容器よりも前記被処理ガスの流れの上流側に設けられた第2接続部とが接続されることによって、前記第1再生ループと前記第2吸着ラインとを利用した前記第1熱回収ラインが形成されている、
請求項1に記載のVOC処理装置。
【請求項3】
前記第2再生ループは前記第2吸着容器よりも前記再生ガスの流れの下流側の遮断部で遮断可能に構成されており、前記遮断部で遮断された前記第2再生ループにおいて前記第2吸着容器よりも前記再生ガスの流れの下流側に設けられた第3接続部と、前記第1吸着ラインの前記第1吸着容器よりも前記被処理ガスの流れの上流側に設けられた第4接続部とが接続されることによって、前記第2再生ループと前記第1吸着ラインとを利用した前記第2熱回収ラインが形成されている、
請求項1又は2に記載のVOC処理装置。
【請求項4】
共にベータ型ゼオライトからなる第1吸着容器に充填された第1吸着材、及び、第2吸着容器に充填された第2吸着材を用いて被処理ガス中のVOCを除去するVOC処理方法であって、
i)前記被処理ガスを前記第1吸着容器へ通して前記第1吸着材へ前記被処理ガスに含まれるVOCを吸着させるとともに、高温の再生ガスを前記第2吸着容器へ通して前記第2吸着材からVOCを脱着させて当該VOCを白金触媒で酸化処理させるステップ、
ii)熱回収ガスを前記第2吸着容器及び前記第1吸着容器へこの順序で通して、前記第2吸着材から熱を回収するとともに、回収した熱を利用して前記第1吸着材を予熱するステップ、
iii)前記被処理ガスを前記第2吸着容器へ通して前記第2吸着材へ前記被処理ガスに含まれるVOCを吸着させるとともに、高温の前記再生ガスを前記第1吸着容器へ通して前記第1吸着材からVOCを脱着させて当該VOCを前記白金触媒で酸化処理させるステップ、
iv)前記熱回収ガスを前記第1吸着容器及び前記第2吸着容器へこの順序で通して、前記第1吸着材から熱を回収するとともに、回収した熱を利用して前記第2吸着材を予熱するステップ、
上記i)~iv)をこの順序で繰り返す、
VOC処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理ガスに含まれているVOCを吸着除去する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VOCは、常温常圧で大気中に容易に揮発する揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略称である。代表的なVOCとして、塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤、ガソリン、シンナーなどに含まれるトルエン、キシレン、酢酸エチルなどの物質が挙げられる。大気中のVOCは、光化学スモッグを引き起こす光化学オキシダントや浮遊粒子状物質(SPM)の原因となる。そのため、工場などの固定発生源からのVOCの排出抑制措置が講じられている。
【0003】
特許文献1では、VOCなどを含む被処理ガスから除去成分を吸着除去する吸着装置が開示されている。この吸着装置は、塔内に吸着剤が充填された2つの吸着塔を備え、一方の吸着塔で被処理ガス中の除去成分を吸着剤に吸着させ、同時に、他方の吸着塔で吸着剤の再生を行うように構成されている。2つの吸着塔で、吸着剤の吸着と再生とを交互に切り替えることにより、連続して被処理ガスを処理することができる。吸着が行われている吸着塔には被処理ガスが導入され、再生が行われている吸着塔には被処理ガスが導入されずに再生用の高温のキャリアガスが導入される。キャリアガスは、吸着剤を除去成分が脱着する温度まで加熱し、脱着された除去成分(脱着ガス)と共に吸着塔から排出されたのち冷却され、除去成分は凝縮により液体となって回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、低濃度のVOCの人体への健康影響についても懸念されている。特に、閉鎖された空間では、低濃度のVOCであっても人体がそれに曝露され続けることとなるため、人体へ与える影響が大きい。これまでは主に有機溶剤を使用する工場から排出されるVOCを低減するためのVOC除去技術が提案されてきたが、前述のように閉鎖された空間の空気(雰囲気ガス)に含まれる微量のVOCを除去する技術については未開拓である。
【0006】
上記のようにVOCを微量に含む空気の清浄化のためのVOC除去技術では、低濃度のVOCを効率的に除去すること、省メンテナンスで良好な除去性能を長時間維持すること、及び、省エネルギーであることが工業的用途と比較して強く要求される。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、VOCを含む空気(被処理ガス)を清浄化するVOC処理装置及び方法において、省エネルギーを実現するものを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るVOC処理装置は、
VOCを吸着するベータ型ゼオライトからなる吸着材が充填された第1吸着容器及び第2吸着容器と、
VOCを含む被処理ガスを被処理ガス入口から前記第1吸着容器を通して処理ガス出口へ流す第1吸着ラインと、
前記被処理ガスを前記被処理ガス入口から前記第2吸着容器を通して前記処理ガス出口へ流す第2吸着ラインと、
再生ガスを前記吸着材に吸着されたVOCの脱着温度まで加熱する加熱器と、
前記吸着材から脱着して前記再生ガスに同伴するVOCを酸化処理する白金触媒と、
前記再生ガスを前記第1吸着容器、前記加熱器、及び前記白金触媒に循環させる第1再生ループと、
前記再生ガスを前記第2吸着容器、前記加熱器、及び前記白金触媒に循環させる第2再生ループと、
熱回収ガスを前記第1吸着容器及び前記第2吸着容器の順に通して前記処理ガス出口へ流す第1熱回収ラインと、
前記熱回収ガスを前記第2吸着容器及び前記第1吸着容器の順に通して前記処理ガス出口へ流す第2熱回収ラインと、
前記被処理ガスの流路を前記第1吸着ラインと前記第2吸着ラインとの間で択一的に切り替える吸着流路切替装置と、
前記再生ガスの流路を前記第1再生ループと前記第2再生ループとの間で択一的に切り替える再生流路切替装置と、
前記熱回収ガスの流路を前記第1熱回収ラインと前記第2熱回収ラインとの間で択一的に切り替える熱回収流路切替装置と、
前記被処理ガスが前記第1吸着ラインに流れているときに前記再生ガスが前記第2再生ループを循環し、前記被処理ガスが前記第2吸着ラインに流れているときに前記再生ガスが前記第1再生ループを循環し、前記被処理ガスの流れを一旦止めて前記被処理ガスの流路を前記第1吸着ラインから前記第2吸着ラインに切り替える間に前記熱回収ガスが前記第2熱回収ラインを流れ、前記被処理ガスの流れを一旦止めて前記被処理ガスの流路を前記第2吸着ラインから前記第1吸着ラインに切り替える間に前記熱回収ガスが前記第1熱回収ラインを流れるように、前記吸着流路切替装置、前記再生流路切替装置、及び前記熱回収流路切替装置の動作を制御する制御装置と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の一態様に係るVOC処理方法は、共にベータ型ゼオライトからなる第1吸着容器に充填された第1吸着材、及び、第2吸着容器に充填された第2吸着材を用いて被処理ガス中のVOCを除去するVOC処理方法であって、
i)前記被処理ガスを前記第1吸着容器へ通して前記第1吸着材へ前記被処理ガスに含まれるVOCを吸着させるとともに、高温の再生ガスを前記第2吸着容器へ通して前記第2吸着材からVOCを脱着させて当該VOCを白金触媒で酸化処理させるステップ、
ii)熱回収ガスを前記第2吸着容器及び前記第1吸着容器へこの順序で通して、前記第2吸着材から熱を回収するとともに、回収した熱を利用して前記第1吸着材を予熱するステップ、
iii)前記被処理ガスを前記第2吸着容器へ通して前記第2吸着材へ前記被処理ガスに含まれるVOCを吸着させるとともに、高温の前記再生ガスを前記第1吸着容器へ通して前記第1吸着材からVOCを脱着させて当該VOCを前記白金触媒で酸化処理させるステップ、
iv)前記熱回収ガスを前記第1吸着容器及び前記第2吸着容器へこの順序で通して、前記第1吸着材から熱を回収するとともに、回収した熱を利用して前記第2吸着材を予熱するステップ、
上記i)~iv)をこの順序で繰り返すことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、VOCを含む被処理ガスを清浄化するVOC処理装置及び方法において、省エネルギーを実現するものを提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るVOC処理装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、VOC処理装置の配管構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、VOC処理装置の制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1吸着容器及び第2吸着容器で行われる処理のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るVOC処理装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すVOC処理装置1は、第1吸着容器11と第2吸着容器12との2つのVOC吸着処理容器を備える。第1吸着容器11には第1吸着材13aが充填され、第2吸着容器12には第2吸着材13bが充填されている。第1吸着材13a及び第2吸着材13bは共にベータ型ゼオライトである。
【0013】
VOC処理装置1は、加熱器57及び触媒58を備える。加熱器57は、吸着材13a,13bの再生に用いられる再生ガスを吸着材13a,13bからVOCが脱着する脱着温度まで加熱する。高温の再生ガスがVOCを吸着した吸着材13a,13bと接触すると、吸着材13a,13bに吸着されていたVOCが吸着材13a,13bから脱着する。触媒58は、白金触媒(酸化触媒)であって、吸着材13a,13bから脱着したVOCを酸化させ、同時に反応熱を発生させる。
【0014】
VOC処理装置1には、被処理ガスの入口である被処理ガス入口21と、被処理ガスからVOCが除去された清浄ガスの出口である処理ガス出口22とが規定されている。VOC処理装置1には、被処理ガスが流れる第1吸着ラインL1及び第2吸着ラインL2と、再生ガスが循環する第1再生ループR1及び第2再生ループR2と、熱回収ガスが流れる第1熱回収ラインH1及び第2熱回収ラインH2とが設けられている。熱回収ガスは、例えば、空気であってよい。
【0015】
第1吸着ラインL1は、被処理ガスを被処理ガス入口21から第1吸着容器11を通して処理ガス出口22へ流すように構成されている。第2吸着ラインL2は、被処理ガスを被処理ガス入口21から第2吸着容器12を通して処理ガス出口22へ流すように構成されている。第1再生ループR1は、再生ガスを第1吸着容器11、加熱器57、及び白金触媒58に循環させるように構成されている。第2再生ループR2は、再生ガスを第2吸着容器12、加熱器57、及び白金触媒58に循環させるように構成されている。第1熱回収ラインH1は、熱回収ガスを第1吸着容器11及び第2吸着容器12の順に通して処理ガス出口22へ流すように構成されている。第2熱回収ラインH2は、熱回収ガスを第2吸着容器12及び第1吸着容器11の順に通して処理ガス出口22へ流すように構成されている。
【0016】
図2は、VOC処理装置1の具体的な配管構成の一例を示す図である。
図2に示すように、被処理ガス入口21には、導入路30が接続されている。導入路30には、被処理ガスの流れの上流側から順に第1送風機41、及び第1冷却器42が設けられている。第1冷却器42では、VOC処理装置1に導入された被処理ガスが、吸着材13a,13bの吸着に好適な温度まで冷却される。導入路30は、第1冷却器42よりも被処理ガスの流れの下流側に設けられた分岐点43で、第1導入路31と第2導入路32とに分岐している。第1導入路31は、第1吸着容器11の入口11aと接続されている。第2導入路32は第2吸着容器12の入口12aと接続されている。
【0017】
第1導入路31と第2導入路32とは、分岐点43よりも被処理ガスの流れの下流側において、第1接続路51によって接続されている。第1導入路31と第1接続路51との接続部には、第1流路切替弁44が設けられている。第1流路切替弁44は、第1吸着容器11の入口11aが被処理ガス入口21と連通され且つ第1接続路51と連通されない状態と、第1吸着容器11の入口11aが第1接続路51と連通され且つ被処理ガス入口21と連通されない状態とに切り替える。第2導入路32と第1接続路51との接続部には、第2流路切替弁45が設けられている。第2流路切替弁45は、第2吸着容器12の入口12aが被処理ガス入口21と連通され且つ第1接続路51と連通されない状態と、第2吸着容器12の入口12aが第1接続路51と連通され且つ被処理ガス入口21と連通されない状態とに切り替える。
【0018】
処理ガス出口22には、排出路60が接続されている。排出路60には、第2冷却器48が設けられている。吸着材13a,13bへのVOCの吸着反応は発熱反応である。これにより温度上昇した清浄ガスが第2冷却器48で冷却される。排出路60は、第2冷却器48よりも清浄ガスの流れの上流側に設けられた合流点47で、第1排出路61と第2排出路62とが合流している。第1排出路61は、第1吸着容器11の出口11bと接続されている。第2排出路62は、第2吸着容器12の出口12bと接続されている。
【0019】
第1排出路61と第2排出路62とは、合流点47よりも清浄ガスの流れの上流側において、第2接続路52によって接続されている。第1排出路61と第2接続路52との接続部には、第3流路切替弁46が設けられている。第3流路切替弁46は、第1吸着容器11の出口11bが処理ガス出口22と連通され且つ第2接続路52と連通されない状態と、第1吸着容器11の出口11bが第2接続路52と連通され且つ処理ガス出口22と連通されない状態とに切り替える。第2排出路62と第2接続路52との接続部には、第4流路切替弁49が設けられている。第4流路切替弁49は、第2吸着容器12の出口12bが処理ガス出口22と連通され且つ第2接続路52と連通されない状態と、第2吸着容器12の出口12bが第2接続路52と連通され且つ処理ガス出口22と連通されない状態とに切り替える。
【0020】
第1接続路51の中途部51aと第2接続路52の中途部52aとは、再生路53で接続されている。再生路53には、第1接続路51と接続された側から順に、第5流路切替弁55、第2送風機56、加熱器57、及び、触媒58が設けられている。
【0021】
再生路53には、第5流路切替弁55と第2送風機56との間の給気部71へ外部から空気を供給する給気路70が接続されている。再生路53には、第2接続路52及び第4流路切替弁49をバイパスして、再生路53から第2排出路62へ余剰の空気を直接に排出する余剰空気排出路80が接続されている。余剰空気排出路80には、余剰空気の流れの上流側から順に、触媒81、熱交換器82、及び開閉弁83が設けられている。触媒81は、再生路53から余剰空気排出路80を通じて排出される余剰空気に含まれるVOC等の除去すべき成分を除去する。熱交換器82は、給気路70を流れる空気と余剰空気とを熱交換させ、余剰空気を冷却するとともに空気を温める。
【0022】
図2に示すVOC処理装置1において、第1吸着ラインL1は、導入路30、第1導入路31、第1吸着容器11、第1排出路61、及び排出路60により形成されている。被処理ガス入口21より第1吸着ラインL1に導入された被処理ガスは、第1送風機41によって下流側へ送られる間に、第1冷却器42、第1吸着容器11、及び第2冷却器48の順に通過して、清浄ガスとなって処理ガス出口22から排出される。
【0023】
第2吸着ラインL2は、導入路30、第2導入路32、第2吸着容器12、第2排出路62、及び排出路60により形成されている。被処理ガス入口21より第2吸着ラインL2に導入された被処理ガスは、第1送風機41によって下流側へ送られる間に、第1冷却器42、第2吸着容器12、及び第2冷却器48の順に通過して、清浄ガスとなって処理ガス出口22から排出される。
【0024】
第1吸着ラインL1と第2吸着ラインL2とは、導入路30及び排出路60を共有している。これにより、第1送風機41、第1冷却器42、及び第2冷却器48の各機器を、第1吸着ラインL1及び第2吸着ラインL2の各々のラインに設けることなく、共用することができる。
【0025】
また、
図2に示すVOC処理装置1において、第1再生ループR1は、再生路53、第2接続路52の一部分、第1排出路61の一部分、第1吸着容器11、第1導入路31の一部分、及び第1接続路51の一部分により形成されている。第1再生ループR1では、給気路70を通じて導入された再生ガス(空気)が、加熱器57で加熱されて熱ガスとなり、第2送風機56の作用によって第1再生ループR1を循環する。第2送風機56は、再生ガスが第1吸着容器11の出口11bから入って入口11aから出るように、即ち、被処理ガスとは逆方向に流れるように送風する。再生ガスは、第1吸着容器11を通過する間に第1吸着材13aと接触してVOCを脱着させる。脱着したVOCは再生ガスに伴って第1再生ループR1を流れて、触媒58を通過する。触媒58では、再生ガスに同伴するVOCが酸化処理される。
【0026】
第2再生ループR2は、再生路53、第2接続路52の一部分、第2排出路62の一部分、第1吸着容器11、第2導入路32の一部分、及び第1接続路51の一部分により形成されている。第2再生ループR2では、給気路70を通じて導入された再生ガス(空気)が、加熱器57で加熱されて熱ガスとなり、第2送風機56の作用によって第2再生ループR2を循環する。第2送風機56は、再生ガスが第2吸着容器12へ出口12bから入って入口12aから出るように、即ち、被処理ガスとは逆方向に流れるように送風する。再生ガスは、第2吸着容器12を通過する間に第2吸着材13bと接触してVOCを脱着させる。脱着したVOCは再生ガスに伴って第2再生ループR2を流れて、触媒58を通過する。触媒58では、再生ガスに同伴するVOCが酸化処理される。
【0027】
第1再生ループR1と第2再生ループR2とは、再生路53を共有している。これにより、第5流路切替弁55、第2送風機56、加熱器57、及び触媒58の各機器を、第1再生ループR1と第2再生ループR2の各々のループに設けることなく、共用することができる。
【0028】
更に、
図2に示すVOC処理装置1において、第1熱回収ラインH1は、給気路70、再生路53、第2接続路52の一部、第1排出路61の一部、第1吸着容器11、第1導入路31の一部、第1接続路51、第2導入路32の一部、第2吸着容器12、第2排出路62、及び排出路60により形成されている。給気路70を通じて導入された熱回収ガスは、第2送風機56の作用によって、第1熱回収ラインH1を通って処理ガス出口22から排出される。
【0029】
第1熱回収ラインH1は、第1再生ループR1及び第2吸着ラインL2を利用して形成されている。
図1に示すように、第1再生ループR1は第1吸着容器11よりも再生ガスの流れの下流側に設けられた遮断部90で遮断可能に構成されている。そして、遮断部90で遮断された第1再生ループR1において第1吸着容器11よりも再生ガスの流れの下流側に設けられた第1接続部91と、第2吸着ラインL2の第2吸着容器12よりも被処理ガスの流れの上流側に設けられた第2接続部92とが接続されることによって、第1再生ループR1と第2吸着ラインL2とを利用した第1熱回収ラインH1が形成されている。
図2に示すように、遮断部90が第5流路切替弁55で構成され、第1接続部91が第1流路切替弁44で構成され、第2接続部92が第2流路切替弁45で構成され、第1接続部91と第2接続部92とを結ぶ流路が第1接続路51で構成されていてよい。
【0030】
図2に示すVOC処理装置1において、第2熱回収ラインH2は、給気路70、再生路53、第2接続路52の一部、第2排出路62の一部、第2吸着容器12、第2導入路32の一部、第1接続路51、第1導入路31の一部、第1吸着容器11、第1排出路61、及び排出路60により形成されている。給気路70を通じて導入された熱回収ガスは、第2送風機56の作用によって、第2熱回収ラインH2を通って処理ガス出口22から排出される。
【0031】
第2熱回収ラインH2は、第2再生ループR2と第1吸着ラインL1とを利用して形成されている。
図1に示すように、第2再生ループR2は第2吸着容器12よりも再生ガスの流れの下流側に設けられた遮断部90で遮断可能に構成されている。そして、遮断部90で遮断された第2再生ループR2において第2吸着容器12よりも再生ガスの流れの下流側に設けられた第3接続部93と、第1吸着ラインL1の第1吸着容器11よりも被処理ガスの流れの上流側に設けられた第4接続部94とが接続されることによって、第2再生ループR2と第1吸着ラインL1とを利用した第2熱回収ラインH2が形成されている。
図2に示すように、第3接続部93が第2流路切替弁45で構成され、第4接続部94が第1流路切替弁44で構成され、第2接続部92と第3接続部93とを結ぶ流路が第1接続路51で構成されていてよい。
【0032】
図3は、VOC処理装置1の制御系統の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、
図2に示すVOC処理装置1が備える第1流路切替弁44、第2流路切替弁45、第3流路切替弁46、第4流路切替弁49、第5流路切替弁55、及び開閉弁83の動作は、制御装置9によって制御される。また、VOC処理装置1が備える第1送風機41及び第2送風機56の動作は、制御装置9によって制御される。更に、VOC処理装置1が備える第1冷却器42、及び第2冷却器48の動作は、制御装置9によって制御される。
【0033】
制御装置9は、プロセッサ、ROM及びRAMなどのメモリ、及び、I/O部を備える(いずれも図示略)。制御装置9には、I/O部を介して弁44~46,49,55,83の駆動部、送風機41,56、冷却器42,48、及び加熱器57が接続されている。制御装置9は、集中制御を行う単独のプロセッサを備えてもよいし、分散制御を行う複数のプロセッサを備えてもよい。メモリや記憶手段には、プロセッサが実行する基本プログラムやアプリケーションプログラム等が格納されている。アプリケーションプログラムは、プロセッサに各機能部の処理を行わせるように構成されている。プロセッサがプログラムを読み出して実行することによって、制御装置9としての機能を実現する。
【0034】
制御装置9は、被処理ガスの流路(吸着流路)を、第1吸着ラインL1と第2吸着ラインL2との間で択一的に切り替えるように吸着流路切替装置D1を動作させる。
図2示す例では、第1流路切替弁44、第2流路切替弁45、第3流路切替弁46、及び第4流路切替弁49が、吸着流路切替装置D1として機能する。
【0035】
制御装置9は、再生ガスの流路(再生流路)を第1再生ループR1と第2再生ループR2との間で択一的に切り替えるように、再生流路切替装置D2を動作させる。
図2示す例では、第5流路切替弁55、第1流路切替弁44、第2流路切替弁45、第3流路切替弁46、及び第4流路切替弁49が、再生流路切替装置D2として機能する。
【0036】
制御装置9は、熱回収ガスの流路(熱回収流路)を第1熱回収ラインH1と第2熱回収ラインH2との間で択一的に切り替えるように、熱回収流路切替装置D3を動作させる。
図2示す例では、第5流路切替弁55、第1流路切替弁44、第2流路切替弁45、第3流路切替弁46、及び第4流路切替弁49が、熱回収流路切替装置D3として機能する。
【0037】
[VOC処理装置1の動作方法]
ここで、上記構成のVOC処理装置1の動作方法について説明する。
図4は、第1吸着容器11及び第2吸着容器12で行われる処理のタイミングチャートである。
【0038】
図4に示すように、第1工程においては、第1吸着容器11で被処理ガスに含まれるVOCを第1吸着材13aへ吸着させる吸着処理が行われ、第2吸着容器12で第2吸着材13bからVOCを脱着させる再生処理が行われる。第1工程では、被処理ガスが流れる吸着流路として第1吸着ラインL1が有効であり且つ第2吸着ラインL2が無効であり、再生ガスが流れる再生流路として第2再生ループR2が有効であり且つ第1再生ループR1は無効であり、第1熱回収ラインH1及び第2熱回収ラインH2はともに無効である。第1吸着ラインL1を流れる被処理ガスは、第1吸着容器11を通過する間に第1吸着材13aによって含まれるVOCが吸着除去され、清浄ガスとなって処理ガス出口22から排出される。第2再生ループR2を循環する再生ガスは、加熱器57で加熱され、第2吸着容器12を通過する間に第2吸着材13bに吸着されているVOCを脱着させ、脱着したVOCを触媒58へ運ぶ。VOCは触媒58で酸化処理される。
【0039】
第1工程に続く第2工程においては、被処理ガスの流れを一旦止めて、第2吸着容器12の第2吸着材13bが保有する熱が回収され、それが第1吸着容器11の第1吸着材13aへ与えられる。これにより、第2吸着材13bは冷却され、第1吸着材13aは予熱される。第2工程では、第1吸着ラインL1、第2吸着ラインL2、第1再生ループR1、第2再生ループR2、及び第1熱回収ラインH1はいずれも無効であり、第2熱回収ラインH2のみが有効である。第2熱回収ラインH2を流れる熱回収ガスは、第2吸着容器12を流れる間に第2吸着材13bの再生時に生じた熱を回収し、次いで、第1吸着容器11を流れる間に第1吸着材13aを加熱する。なお、第2熱回収ラインH2を熱回収ガスが流れている間は、加熱器57は稼働せず、触媒58は熱回収ガスの温度が不十分であるために活性化されていない。
【0040】
第2工程に続く第3工程では、第2吸着容器12で被処理ガスに含まれるVOCを第2吸着材13bへ吸着させる吸着処理が行われ、第1吸着容器11で第1吸着材13aからVOCを脱着させる再生処理が行われる。第3工程では、被処理ガスが流れる吸着流路として第2吸着ラインL2が有効であり且つ第1吸着ラインL1が無効であり、再生ガスが流れる再生流路として第1再生ループR1が有効であり且つ第2再生ループR2は無効であり、第1熱回収ラインH1及び第2熱回収ラインH2はともに無効である。第2吸着ラインL2を流れる被処理ガスは、第2吸着容器12を通過する間に第2吸着材13bによって含まれるVOCが吸着除去され、清浄ガスとなって処理ガス出口22から排出される。第1再生ループR1を循環する再生ガスは、加熱器57で加熱され、第1吸着容器11を通過する間に第1吸着材13aに吸着されているVOCを脱着させ、脱着したVOCを触媒58へ運ぶ。VOCは触媒58で酸化処理される。
【0041】
第3工程の開始時には、第2工程において、第2吸着容器12の第2吸着材13bは冷却され、第1吸着容器11の第1吸着材13aは予熱されていることから、第2工程が省略される場合と比較して、速やかに安定した処理を開始することができる。
【0042】
第3工程に続く第4工程では、被処理ガスの流れを一旦止めて、第1吸着容器11の第1吸着材13aが保有する熱が回収されて、それが第2吸着容器12の第2吸着材13bへ与えられる。これにより、第1吸着材13aが冷却され、第2吸着材13bが予熱される。第2工程では、第1吸着ラインL1、第2吸着ラインL2、第1再生ループR1、第2再生ループR2、及び第2熱回収ラインH2のいずれも無効であり、第1熱回収ラインH1のみが有効である。第1熱回収ラインH1を流れる熱回収ガスは、第1吸着容器11を流れる間に第1吸着材13aの再生時に生じた熱を回収し、次いで、第2吸着容器12を流れる間に第2吸着材13bを加熱する。第1熱回収ラインH1を熱回収ガスが流れている間は、加熱器57は稼働せず、触媒58は熱回収ガスの温度が不十分であるために活性化されていない。
【0043】
第4工程が終わると、第1工程に戻る。第4工程に続く第1工程の開始時には、第4工程において、第1吸着容器11の第1吸着材13aは冷却され、第2吸着容器12の第2吸着材13bは予熱されていることから、第4工程が省略される場合と比較して、速やかに安定した処理を開始することができる。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態のVOC処理装置1は、
VOCを吸着するベータ型ゼオライトからなる吸着材13a,13bが充填された第1吸着容器11及び第2吸着容器12と、
VOCを含む被処理ガスを被処理ガス入口21から第1吸着容器11を通して処理ガス出口22へ流す第1吸着ラインL1と、
被処理ガス入口21を被処理ガス入口21から第2吸着容器12を通して処理ガス出口22へ流す第2吸着ラインL2と、
再生ガスを吸着材13a,13bに吸着されたVOCの脱着温度まで加熱する加熱器57と、
吸着材13a,13bから脱着して再生ガスに同伴するVOCを酸化処理する白金触媒58と、
再生ガスを第1吸着容器11、加熱器57、及び白金触媒58に循環させる第1再生ループR1と、
再生ガスを第2吸着容器12、加熱器57、及び白金触媒58に循環させる第2再生ループR2と、
熱回収ガスを第1吸着容器11及び第2吸着容器12の順に通して処理ガス出口22へ流す第1熱回収ラインH1と、
熱回収ガスを第2吸着容器12及び第1吸着容器11の順に通して処理ガス出口22へ流す第2熱回収ラインH2と、
被処理ガスの流路を第1吸着ラインL1と第2吸着ラインL2との間で択一的に切り替える吸着流路切替装置D1と、
再生ガスの流路を第1再生ループR1と第2再生ループR2との間で択一的に切り替える再生流路切替装置D2と、
熱回収ガスの流路を第1熱回収ラインH1と第2熱回収ラインH2との間で択一的に切り替える熱回収流路切替装置D3と、
吸着流路切替装置D1、再生流路切替装置D2、及び熱回収流路切替装置D3の動作を制御する制御装置9とを備える。
ここで、制御装置9は、被処理ガスが第1吸着ラインL1に流れているときに再生ガスが第2再生ループR2を循環し、被処理ガスが第2吸着ラインL2に流れているときに再生ガスが第1再生ループR1を循環し、被処理ガスの流れを一旦止めて被処理ガスの流路を第1吸着ラインL1から第2吸着ラインL2に切り替える間に熱回収ガスが第2熱回収ラインH2を流れ、被処理ガスの流れを一旦止めて被処理ガスの流路を第2吸着ラインL2から第1吸着ラインL1に切り替える間に熱回収ガスが第1熱回収ラインH1を流れるように、吸着流路切替装置D1、再生流路切替装置D2、及び熱回収流路切替装置D3の動作を制御するように構成されている。
なお、上記VOC処理装置1において、第1吸着ラインL1、第2吸着ラインL2、第1再生ループR1、第2再生ループR2、第1熱回収ラインH1、及び第2熱回収ラインH2は流路が部分的に重複していてもかまわない。
【0045】
また、本発明の一態様に係るVOC処理方法は、共にベータ型ゼオライトからなる第1吸着容器11に充填された第1吸着材13a、及び、第2吸着容器12に充填された第2吸着材13bを用いて被処理ガス中のVOCを除去するVOC処理方法であって、
i)被処理ガスを第1吸着容器11へ通して第1吸着材13aへ被処理ガスに含まれるVOCを吸着させるとともに、高温の再生ガスを第2吸着容器12へ通して第2吸着材13bからVOCを脱着させて当該VOCを白金触媒58で酸化処理させるステップ、
ii)熱回収ガスを第2吸着容器12及び第1吸着容器11へこの順序で通して、第2吸着材13bから熱を回収するとともに、回収した熱を利用して第1吸着材13aを予熱するステップ、
iii)被処理ガスを第2吸着容器12へ通して第2吸着材13bへ被処理ガスに含まれるVOCを吸着させるとともに、高温の再生ガスを第1吸着容器11へ通して第1吸着材13aからVOCを脱着させて当該VOCを白金触媒58で酸化処理させるステップ、
iv)熱回収ガスを第1吸着容器11及び第2吸着容器12へこの順序で通して、第1吸着材13aから熱を回収するとともに、回収した熱を利用して第2吸着材13bを予熱するステップ、
上記i)~iv)をこの順序で繰り返すことを特徴としている。
【0046】
上記構成のVOC処理装置1及びVOC処理方法によれば、被処理ガスからVOCを吸着除去する処理を行う処理容器を第1吸着容器11から第2吸着容器12へ切り替える間に、熱回収ガスが第2吸着容器12及び第1吸着容器11をこの順に流れることで、第2吸着容器12の第2吸着材13bは再生で生じた熱が回収されることによって冷却され、第1吸着容器11の第1吸着材13aは回収された熱で予熱される。同様に、被処理ガスからVOCを吸着除去する処理を行う処理容器を第2吸着容器12から第1吸着容器11へ切り替える間に、熱回収ガスが第1吸着容器11及び第2吸着容器12をこの順に流れることで、第1吸着容器11の第1吸着材13aは再生で生じた熱が回収されることによって冷却され、第2吸着容器12の第2吸着材13bは回収された熱で予熱される。このようにして冷却された吸着材13a,13bはVOCを吸着除去する処理に供され、予熱された吸着材13a,13bはVOCを脱着して再生する処理に供される。よって、外部から与えられたエネルギーで吸着材13a,13bの冷却と予熱とを行う場合と比較して、省エネルギーを実現することができる。
【0047】
また、上記VOC処理装置1及びVOC処理方法では、被処理ガスに含まれるVOCを一旦吸着材13a,13bに凝縮させてから触媒58で処理することから、例え被処理ガスに含まれるVOCが低濃度であったとしてもVOCを効率的に除去することができる。
【0048】
とりわけ、上記VOC処理方法では、吸着材13a,13bでのVOCの吸着と、吸着材13a,13bからのVOCの脱着とが繰り返されることから、省メンテナンスで良好な除去性能を長時間維持することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るVOC処理装置1では、第1再生ループR1は第1吸着容器11よりも再生ガスの流れの下流側の遮断部90で遮断可能に構成されており、遮断部90で遮断された第1再生ループR1において第1吸着容器11よりも再生ガスの流れの下流側に設けられた第1接続部91と、第2吸着ラインL2の第2吸着容器12よりも被処理ガスの流れの上流側に設けられた第2接続部92とが接続されることによって、第1再生ループR1と第2吸着ラインL2とを利用した第1熱回収ラインH1が形成されている。
【0050】
上記構成のVOC処理装置1によれば、第1熱回収ラインH1は、第1再生ループR1及び第2吸着ラインL2を利用して形成することで、配管スペースの低減、配管長さを抑えることによるコスト削減に優位である。さらに、再生ガスの循環により加熱された第1再生ループR1の配管の熱も第2吸着容器12の予熱に利用できるため、さらに省エネルギーを実現することができる。
【0051】
同様に、本実施形態に係るVOC処理装置1では、第2再生ループR2は第2吸着容器12よりも再生ガスの流れの下流側の遮断部90で遮断可能に構成されており、遮断部90で遮断された第2再生ループR2において第2吸着容器12よりも再生ガスの流れの下流側に設けられた第3接続部93と、第1吸着ラインL1の第1吸着容器11よりも被処理ガスの流れの上流側に設けられた第4接続部94とが接続されることによって、第2再生ループR2と第1吸着ラインL1とを利用した第2熱回収ラインH2が形成されている。
【0052】
上記構成のVOC処理装置1によれば、第2熱回収ラインH2は、第2再生ループR2及び第1吸着ラインL1を利用して形成することで、配管スペースの低減、配管長さを抑えることによるコスト削減に優位である。さらに、再生ガスの循環により加熱された第2再生ループR2の配管の熱も第1吸着容器11の予熱に利用できるため、さらに省エネルギーを実現することができる。
【0053】
吸着材13a,13bによるVOCの吸着及び吸着材13a,13bの再生に必要とされる流路(第1吸着ラインL1、第2吸着ラインL2、第1再生ループR1、及び第2再生ループR2)を用いて第1熱回収ラインH1及び第2熱回収ラインH2を形成することができる。
【0054】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0055】
例えば、上記実施形態に係るVOC処理装置1では、第1熱回収ラインH1及び第2熱回収ラインH2は、第1吸着ラインL1、第2吸着ラインL2、第1再生ループR1、及び第2再生ループR2の流路を利用し、弁で流路を切り替えることによって形成されている。このように吸着処理及び再生処理のための流路を利用して第1熱回収ラインH1及び第2熱回収ラインH2を形成することによれば、配管スペースの低減、配管長さを抑えることによるコスト削減に優位である。但し、第1熱回収ラインH1及び第2熱回収ラインH2のうち少なくとも一方が、第1吸着ラインL1、第2吸着ラインL2、第1再生ループR1、及び第2再生ループR2の流路を利用せずに形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 :VOC処理装置
9 :制御装置
11 :第1吸着容器
12 :第2吸着容器
13a,13b :吸着材
21 :被処理ガス入口
22 :処理ガス出口
41,56:送風機
42,48:冷却器
57 :加熱器
58 :白金触媒
D1 :吸着流路切替装置
D2 :再生流路切替装置
D3 :熱回収流路切替装置
H1 :第1熱回収ライン
H2 :第2熱回収ライン
L1 :第1吸着ライン
L2 :第2吸着ライン
R1 :第1再生ループ
R2 :第2再生ループ
【要約】
【課題】VOC除去処理の省エネルギーを図る。
【解決手段】VOC処理方法は、i)被処理ガスに含まれるVOCを第1吸着材に吸着させるとともに、第2吸着材からVOCを脱着させて当該VOCを白金触媒で酸化処理させるステップ、ii)熱回収ガスを第2吸着材及び第1吸着材へこの順序で通して、第2吸着材から熱を回収するとともに、回収した熱を利用して第1吸着材を予熱するステップ、iii)被処理ガスに含まれるVOCを第2吸着材に吸着させるとともに、第1吸着材からVOCを脱着させて当該VOCを白金触媒で酸化処理させるステップ、iv)熱回収ガスを第1吸着材及び第2吸着材へこの順序で通して、第1吸着材から熱を回収するとともに、回収した熱を利用して第2吸着材を予熱するステップ、を繰り返す。
【選択図】
図1