(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】草刈刃
(51)【国際特許分類】
A01D 34/73 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
A01D34/73 101
(21)【出願番号】P 2020160626
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2022-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520372962
【氏名又は名称】株式会社サイコ
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敬伯
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0290073(US,A1)
【文献】米国特許第6067718(US,A)
【文献】特公平6-55054(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/63 - 34/82
A01D 34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の鋼板製基体部の外周に、多数のカッタユニットが、所定ピッチをもって、かつ上記基体部と同一の上記鋼板をもって一体に形成され、
各カッタユニットは、上記基体部に対してほぼ直角に近くなるよう屈曲され、
かつ各カッタユニットには刃部と、該刃部の回転方向の後部に設けた凹部とが設けられ、各
刃部と凹部の中間には内向きの折返し部を形成されていることを特徴とする草刈刃。
【請求項2】
前記カッタユニットは、上記基体部に対して約75~90°になるよう屈曲されていることを特徴とする請求項1記載の草刈刃。
【請求項3】
前記カッタユニットは、前記刃部の回転方向の後部に設けた凹部が、刃部の高さのほぼ半分の深さに形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の草刈刃。
【請求項4】
前記カッタユニットは、前記刃部の基部に横長の中空部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の草刈刃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山林、庭、田畑等の草や小枝を刈り取る刈払機に取付けて使用される草刈刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の草刈刃は、円盤状の基体の外周に、多数の歯部を形成し、各歯部の先端に超鋼チップ刃をロウ付けしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この超鋼チップ刃をロウ付けした草刈刃においては、刈払い作業により超鋼チップ刃が摩耗し切れ味が低下したら、各チップ刃は、専用のダイヤモンド工具を使って研磨されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ダイヤモンド工具を用いて超鋼チップを研磨するには熟練の技術を要するので、一般の使用者が、ダイヤモンド工具を使って研磨をしてチップ刃の切れ味をアップさせるのは非常に難しい。よって、刈払い作業をして超鋼チップの切れ味が悪くなると、一般の使用者は、チップ刃の研磨作業を経ることなく草刈刃を廃棄してしまうことが少なくない。
また、超鋼チップ刃は、新品のものを使用直後にやや切れ味が低下してしまい、その低下した切れ味の状態で長く持続する特徴がある。しかし、上述のように、使用者が超鋼チップの研磨をするのは困難であり、切れ味のやや落ちた草刈刃を使って刈払い作業をすることになって、使い勝手が悪かった。
【0005】
そこで、本発明は、使用することで切れ味が低下してきた場合に、一般の使用者が、専門の研磨装置や熟練の研磨の技術をもたなくても、容易に切れ味を向上させることができる草刈刃を提供することを目的とする。
また、壁面に刃部がぶつかって破損したり、変形することを防いで摩耗しにくく、スムーズに刈払い作業を行い得る草刈刃を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明に係る草刈刃は、円盤状の鋼板製基体部の外周に、多数のカッタユニットが、所定ピッチをもって、かつ上記基体部と同一の上記鋼板をもって一体に形成され、
各カッタユニットは、上記基体部に対してほぼ直角に近くなるよう屈曲され、
かつ各カッタユニットには刃部と、該刃部の回転方向の後部に設けた凹部とが設けられ、各刃部と凹部の中間には内向きの折返し部を形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明における草刈刃において、前記カッタユニットは、上記基体部に対して約75~90°になるよう屈曲されていることをも特徴とするものである。
【0008】
本発明における草刈刃において、前記カッタユニットは、前記刃部の回転方向の後部に設けた凹部が、刃部の高さのほぼ半分の深さに形成されていることをも特徴とするものである。
【0009】
本発明における草刈刃において、前記カッタユニットは、前記刃部の基部に横長の中空部が形成されていることをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、次のような大きな効果を奏する。
請求項1に係る草刈刃は、円盤状の鋼板製基体部の外周に、多数のカッタユニットが、所定ピッチをもって、かつ上記基体部と同一の上記鋼板をもって一体に形成され、各カッタユニットは、上記基体部に対してほぼ直角に近くなるよう屈曲され、かつ各カッタユニットには刃部と、該刃部の回転方向の後部に設けた凹部とが設けられ、各刃部と凹部の中間には内向きの折返し部を形成されていることを特徴とするものである。
よって、各カッタユニットは狭い壁際でも効率的に草を刈り取ることができ、草刈刃を長期間切れ味の良い状態で使用できる。
また各カッタユニットはその下方の被刈材を刈払うことができ、正確な刈払いが可能となって、作業効率が非常に良い。また使用中のキックバックを防ぎ得る。
【0011】
請求項2に係る草刈刃において、前記各カッタユニットは上記基体部に対してほぼ直角に近くなるよう屈曲されているときは、被刈材が垂直に立ち上げっているような場合、被刈材が刃部に沿って巻き上げられてしまう結果となり、切断効率が非常に悪いという問題があった。
そこで、前記各カッタユニットの角度を上記基体部に対して約75°近くになるよう屈曲しておけば被刈材が刃部に効率よく切断されることとなる。
【0012】
請求項3に係る草刈刃において、前記カッタユニットは前記刃部の回転方向の後部に設けた凹部が、刃部の高さのほぼ半分の深さに形成されている。
したがって、被刈材が刃部に沿って巻き上げられてしまう結果となることがなく、切断効率が非常に良好なものとなった。
【0013】
請求項4に係る草刈刃において、前記カッタユニットは、前記刃部の基部に横長の中空部が形成されているものである。
したがって、被刈材が刃部に沿って巻き上げられてしまう結果となることがなく、切断効率が非常に良好なものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る草刈刃の第1実施例(ほぼ直角)示す概略平面図である。
【
図5】本発明に係る草刈刃の第2実施例(角度付き)を示す概略平面図である。
【
図10】本発明に係る草刈刃の変形例を示す参考斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明の草刈刃を詳説する。
図1~
図4は本発明の草刈刃の第1実施例(ほぼ直角)を示し、この草刈刃11は、円盤状の鋼板製基体部12の外周12aに、多数のカッタユニット13が、所定ピッチPをもって、かつ、基体部12と同一の鋼板をもって、一体に形成されたものである。
つまり、草刈刃11は、一枚の円盤状の鋼材を加工して形成した円盤状の基体部12と、該基体部12の外周12aに一体に連設された多数のカッタユニット13とで形成されている。
【0016】
前記多数のカッタユニット13は、所定ピッチPをもって、かつ上記基体部12と同一の上記鋼板をもって一体に形成され、各カッタユニット13は、上記基体部12に対してほぼ直角に近くなるよう絞り加工等によって屈曲され、かつ各カッタユニット13には刃部13aと、該刃部13aの回転方向の後部に設けた凹部13bとが繰り返し設けられ、各刃部13aと凹部13bの中間には前記各カッタユニット13を絞り加工する際に形成される内向きの折返し部13cが形成されている。
よって、各カッタユニット13は狭い壁際でも効率的に草を刈り取ることができ、草刈刃11を長期間切れ味の良い状態で使用できる。
また各カッタユニット13はその下方の被刈材を刈払うことができ、正確な刈払いが可能となって、作業効率が非常に良い。また使用中のキックバックを防ぐことができる。
【0017】
ちなみに、前記カッタユニット13は前記刃部13aの回転方向の後部に設けた凹部13bが、刃部13aの高さのほぼ半分の深さに形成されている。
したがって、被刈材が刃部13aに沿って巻き上げられてしまう結果となることがなく、切断効率が非常に良好なものとなった。
【0018】
また前記カッタユニット13は、前記刃部13aの基部に横長の中空部13dが形成されている。
したがって、被刈材が刃部13aに沿って巻き上げられてしまう結果となることがなく、切断効率が非常に良好なものとなった。
前記草刈刃11は、その表面に焼き入れ等を施して強度を確保することもできる。なお焼き入れによって草刈刃11が硬くなりすぎて衝撃強度が低下するおそれがあるので、注意が必要である。
【0019】
図5~
図8は本発明の草刈刃の第2実施例(角度付き)を示すものであり、この草刈刃21は、円盤状の鋼板製基体部22の外周22aに、多数のカッタユニット23が、所定ピッチPをもって、かつ、基体部22と同一の鋼板をもって、一体に形成されたものである。
前記各カッタユニット23が第1実施例のように上記基体部22に対してほぼ直角に近くなるよう屈曲されているときは、被刈材が垂直に立ち上げっているような場合、被刈材が刃部23aに沿って巻き上げられてしまう結果となり、切断効率が悪くなるという問題があった。
そこで、前記各カッタユニット23の角度を上記基体部22に対して約75°近くになるよう屈曲しておけば被刈材が刃部23aに効率よく切断されることとなる。また、各カッタユニット23は狭い壁際でも効率的に草を刈り取ることができ、草刈刃21を長期間切れ味の良い状態で使用できる。
【0020】
この実施例においても、前記多数のカッタユニット23は、所定ピッチPをもって、かつ上記基体部22と同一の上記鋼板をもって一体に形成され、各カッタユニット23は、上記基体部22に対して約75°近くになるよう絞り加工等によって屈曲され、かつ各カッタユニット23には刃部23aと、該刃部23aの回転方向の後部に設けた凹部23bとが繰り返し設けられ、各刃部23aと凹部23bの中間には前記各カッタユニット23を絞り加工する際に形成される内向きの折返し部23cが形成されている。
【0021】
本発明の草刈刃の第2実施例(角度付き)においても、仮に前記各カッタユニット23は上記基体部22に対してほぼ直角に近くなるよう屈曲されているときは、被刈材が垂直に立ち上げっているような場合、被刈材が刃部23aに沿って巻き上げられてしまう結果となり、切断効率が非常に悪いという問題があった。
しかしながら、本実施例のように、前記各カッタユニット23の角度を上記基体部22に対して約75°近くになるよう屈曲しておけば被刈材が刃部23aに効率よく切断されることとなる。
前記草刈刃21は、その表面に焼き入れ等を施して強度を確保している。この焼き入れは草刈刃21の寿命に大幅に影響することとなるので非常に重要である。
【0022】
図9は各実施例1および2の草刈刃11,21を取り付けて使用する肩掛け式の草刈り機31の例を示すものであり、32は刈り取った草等の飛散防止カバーである。
【0023】
また、
図10は本発明に係る草刈刃の変形例を示すものであり、この草刈刃41は、円盤状の鋼板製基体部42の外周42aに、多数のカッタユニット43が、基体部42と同一の鋼板をもって、一体に形成されたものである。
前記各カッタユニット43が第2実施例のように前記各カッタユニット43の角度を基体部42の外周42aに対して約75°近くになるよう屈曲しておけば被刈材が刃部43aに効率よく切断されることとなる。また、各カッタユニット43は狭い壁際でも効率的に草を刈り取ることができ、草刈刃41を長期間切れ味の良い状態で使用できる。
【0024】
この実施例においても、前記多数のカッタユニット43は、所定ピッチPをもって、かつ上記基体部42と同一の上記鋼板をもって一体に形成され、各カッタユニット43は、上記基体部42に対して約75°近くになるよう絞り加工等によって屈曲され、かつ各カッタユニット43には刃部43aと、該刃部43aの回転方向の後部に設けた凹部43bとが繰り返し設けられ、各刃部43aと凹部43bの中間には前記各カッタユニット43を絞り加工する際に形成される内向きの折返し部43cが形成されている。
その上で、本変形例のように前記各カッタユニット43の刃部43aに切削刃43eを設けることにより、より切断効率に良好な草刈刃を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の草刈刃は以上のように構成されているので、肩掛け式の草刈り機に好適に使用することができる。もちろん、肩掛け式の草刈り機以外の草刈り機にも応用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
11 草刈刃
12 鋼板製基体部
12a 外周
13 カッタユニット
13a 刃部
13b 凹部
13c 折返し部
13d 中空部
21 草刈刃
22 鋼板製基体部
22a 外周
23 カッタユニット
23a 刃部
23b 凹部
23c 折返し部
31 肩掛け式の草刈り機
32 飛散防止カバー
41 ユニット
42 基体部
42a 外周
43 カッタユニット
43a 刃部
43b 凹部
43c 折返し部
43e 切削刃
P 所定ピッチ