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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】目地部形成用プレート部材
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
E21D11/10 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019013692
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020122301
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・覆工コンクリート高速打設システムの実規模施工実験の公開実証実験の案内状の配布(平成30年8月28日 株式会社奥村組により配布) ・覆工コンクリート高速打設システムの実規模施工実験(平成30年9月25日~平成30年9月26日 施工技術総合研究所) ・日経コンストラクション 第696号 (平成30年9月24日 日経BP社発行) ・日刊建設工業新聞 (平成30年9月26日 日刊建設工業新聞社発行) ・建設通信新聞 (平成30年9月26日 株式会社日刊建設通信新聞社発行) ・日刊建設産業新聞 (平成30年9月27日 日刊建設産業新聞社発行)
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】310005294
【氏名又は名称】北陸鋼産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501360120
【氏名又は名称】テクノプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】浜田 元
(72)【発明者】
【氏名】横山 豊也
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 千尋
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-299793(JP,A)
【文献】特開2008-308855(JP,A)
【文献】特開2011-094429(JP,A)
【文献】特開昭53-105828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山岳トンネル工法においてトンネルの内壁面を覆うトンネル覆工コンクリートを構築する際に設置される、10.5mを超える長さの施工スパンを備えるロングスパンのトンネル覆工用型枠に取り付けて用いられて、構築されるトンネル覆工コンクリートに誘発目地を形成するための目地部形成用プレート部材であって、
前記トンネル覆工用型枠は、トンネルの掘進方向に移動可能な架台部と、該架台部に支持されてトンネルの内壁面との間に覆工空間を形成する型枠本体部とを備えており、
前記型枠本体部は、トンネルの掘進方向に2分割された一対の分割型枠本体部によって構成されており、一対の前記分割型枠本体部は、これらの隣接する端面の間に、一定幅の間隔部分が全周に亘って形成されるように前記架台部に支持されており、
前記一定幅の間隔部分を挟んだ一方の前記分割型枠本体部の端部には、他方の前記分割型枠本体部の端部との間に、スリット状の隙間を全周に亘って連続して形成するプレート取付台座が、全周に亘って固定されて設けられており、
当該目地部形成用プレート部材は、前記プレート取付台座の取付面部に着脱可能に取り付けて用いられ、前記型枠本体部の外周部分の周方向の湾曲形状に沿った湾曲形状を備える外周側辺部と、該外周側辺部と対向して配置された内周側辺部と、左右両側の側部辺部とを有する略4角形の平面形状を備えており、前記外周側辺部側の部分が、前記覆工空間側に突出して配置される目地部形成部となっており、前記内周側辺部側の部分が、前記型枠本体部から内側に突出して配置される内側突出把持部となっており、
前記内側突出把持部の少なくとも2箇所に、前記プレート取付台座の取付面部に設けられた台座側ピン挿通孔と合致させる、プレート側ピン挿通孔が形成されており、
前記内側突出把持部の内周側端部に、把手用の開口部が形成されている目地部形成用プレート部材。
【請求項2】
前記内側突出把持部の一方の面には、前記目地部形成部を前記スリット状の隙間に挿入する方向を案内する一対の被ガイド材が、前記目地部形成部を挿入する方向に沿って互いに平行に配置されて突設されており、該一対の被ガイド材を、前記プレート取付台座の取付面部に前記目地部形成部の挿入方向に沿って互いに平行に配置されて突設された一対のガイド材に沿わせるようにしながら、前記目地部形成部を前記覆工空間に向けて、前記スリット状の隙間に挿入できるようになっている請求項1記載の目地部形成用プレート部材。
【請求項3】
前記内側突出把持部の一方の面の前記内周側辺部に近接する内周側端部には、横幅方向の中央部から垂直に張り出して、張出し締着片が一体として取り付けられており、該張出し締着片には切欠き孔が形成されており、該切欠き孔には、前記プレート取付台座の取付面部の内周側端部の裏面側に回転可能に支持されて取り付けられた固定ボルトが、ナット部材を用いて着脱可能に締着される請求項1または2記載の目地部形成用プレート部材。
【請求項4】
前記目地部形成部に、先端に向けて厚さを減少させるテーパー加工が施されている請求項1~3のいずれか1項記載の目地部形成用プレート部材。
【請求項5】
前記目地部形成部の両面は、摩擦低減材で被覆されている請求項1~4のいずれか1項記載の目地部形成用プレート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地部形成用プレート部材に関し、特に、山岳トンネル工法において、トンネルの内壁面を覆うトンネル覆工コンクリートに誘発目地を形成するための目地部形成用プレート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、山岳トンネル工法においては、地山を掘削して形成された山岳トンネルの内壁面を、所定厚さのトンネル覆工コンクリートで覆う二次覆工が実施されるが、この二次覆工は、トンネルの掘削方向(前後方向)に沿って移動可能なスライドセントルと呼ばれるトンネル覆工用型枠を用いて、次のようになされる(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
すなわち、トンネル覆工用型枠をトンネル内に搬入し、このトンネル覆工用型枠に設けられたアーチ状の型枠本体部と、トンネルの内壁面との間に所定厚さの覆工空間を周方向に沿って形成し、この覆工空間に、コンクリートポンプから圧送されるコンクリートを流し込んでこれを硬化させることにより二次覆工が実施され、これによってトンネルの内壁面が所定厚さのトンネル覆工コンクリートによって覆われる。
【0004】
上記の二次覆工は、トンネルの掘削作業の進行に伴って、例えば、10.5m程度の所定の施工スパン毎にトンネル覆工用型枠を据え付け直しながら、トンネルの掘進方向後方から前方に向かって順次実施される。
【0005】
ところで、近年のトンネル工法においては、掘削技術の進歩によって、トンネルの切羽面の掘削時間が短縮され、二次覆工の工程、具体的にはコンクリートの打設から養生およびトンネル覆工用型枠の脱型までの工程の進捗が、トンネルの切羽面の掘削工程の進捗に追従できなくなってきている。
【0006】
そこで、トンネル覆工コンクリートを形成するための工程の進捗を早めるために、例えば、トンネル覆工用型枠を組み立ててからコンクリートを打設するまでの工程と、打設したコンクリートの養生からトンネル覆工用型枠を脱型するまでの工程とを、別々の日に行っていたものを、トンネル覆工用型枠の脱型と移動および再組立からコンクリートの打設までの工程を、1日のうちに終わらせ、翌日は専らコンクリートの養生期間に当てるという施工方法が実施されている。
【0007】
また、別の方法として、一般的に用いられている10.5m程度の延長を有するトンネル覆工用型枠に代えて、好ましくは18m~22m程度の延長を有するロングスパンのトンネル覆工用型枠を用いることによって、1サイクルで行うトンネル覆工コンクリートの施工スパンを延ばして工期を短縮するとともに、トンネル覆工コンクリートを形成するための工程の進捗を早めることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-280094号公報
【文献】特開2003-262096号公報
【文献】特開2015-067949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、例えば、トンネル覆工コンクリートの施工スパンが10.5m程度の一般的な長さである場合には、連続する各々の施工スパンにおけるトンネル覆工コンクリートの境目部分で、コンクリートの乾燥収縮や温度収縮によるひび割れを吸収することによって、各々のトンネル覆工コンクリートの施工スパンにおけるひび割れの発生を効果的に抑制することができる。
【0010】
しかしながら、前記後者の施工方法(ロングスパンのトンネル覆工用型枠を用いる施工方法)を採用する場合、トンネル覆工コンクリートの1サイクルでの施工スパンが例えば10.5m程度から18m~22m程度に延長されるため、18m~22m程度の長いトンネル覆工コンクリートの施工スパン中間部に、乾燥収縮や温度収縮に伴うひび割れが発生し易くなるという問題がある。
【0011】
上記問題を解決するためには、施工スパンが18m~22m程度と長いトンネル覆工コンクリートの施工スパン中間部に、乾燥収縮や温度収縮に伴うひび割れを誘発する誘発目地を設けることが望ましい。
【0012】
上記誘発目地をトンネル覆工コンクリートの施工スパンの中間部に設ける方法としては、打設したコンクリートが硬化してトンネル覆工用型枠を脱型した後に、例えば、コンクリートカッターを用いて、硬化したトンネル覆工コンクリートの施工スパン中間部の内周面を溝状に切削することによって、誘発目地を形成する方法が考えられる。
【0013】
しかしながら、硬化したトンネル覆工コンクリートの内周面をコンクリートカッターによって溝状に切削する場合、トンネル覆工コンクリートのアーチ形状部分を含む湾曲する横断面形状に沿ってコンクリートカッターを移動させながら、トンネル覆工コンクリートの内周面を溝状に切削してゆく作業が必要となるため、多くの手間と時間を要するという問題がある。
【0014】
本発明は、このような技術的課題を鑑みてなされたもので、その目的は、トンネル覆工コンクリートの各施工スパン中間部に誘発目地を、多くの手間や時間を要することなく容易に設けることができる、プレート取付台座と組み合わせて用いる目地部形成用プレート部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、山岳トンネル工法においてトンネルの内壁面を覆うトンネル覆工コンクリートを構築する際に設置される、10.5mを超える長さの施工スパンを備えるロングスパンのトンネル覆工用型枠に取り付けて用いられて、構築されるトンネル覆工コンクリートに誘発目地を形成するための目地部形成用プレート部材であって、前記トンネル覆工用型枠は、トンネルの掘進方向に移動可能な架台部と、該架台部に支持されてトンネルの内壁面との間に覆工空間を形成する型枠本体部とを備えており、前記型枠本体部は、トンネルの掘進方向に2分割された一対の分割型枠本体部によって構成されており、一対の前記分割型枠本体部は、これらの隣接する端面の間に、一定幅の間隔部分が全周に亘って形成されるように前記架台部に支持されており、前記一定幅の間隔部分を挟んだ一方の前記分割型枠本体部の端部には、他方の前記分割型枠本体部の端部との間に、スリット状の隙間を全周に亘って連続して形成するプレート取付台座が、全周に亘って固定されて設けられており、当該目地部形成用プレート部材は、前記プレート取付台座の取付面部に着脱可能に取り付けて用いられ、前記型枠本体部の外周部分の周方向の湾曲形状に沿った湾曲形状を備える外周側辺部と、該外周側辺部と対向して配置された内周側辺部と、左右両側の側部辺部とを有する略4角形の平面形状を備えており、前記外周側辺部側の部分が、前記覆工空間側に突出して配置される目地部形成部となっており、前記内周側辺部側の部分が、前記型枠本体部から内側に突出して配置される内側突出把持部となっており、前記内側突出把持部の少なくとも2箇所に、前記プレート取付台座の取付面部に設けられた台座側ピン挿通孔と合致させる、プレート側ピン挿通孔が形成されており、前記内側突出把持部の内周側端部に、把手用の開口部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
ここで、前記内側突出把持部の一方の面には、前記目地部形成部を前記スリット状の隙間に挿入する方向を案内する一対の被ガイド材が、前記目地部形成部を挿入する方向に沿って互いに平行に配置されて突設されており、該一対の被ガイド材を、前記プレート取付台座の取付面部に前記目地部形成部の挿入方向に沿って互いに平行に配置されて突設された一対のガイド材に沿わせるようにしながら、前記目地部形成部を前記覆工空間に向けて、前記スリット状の隙間に挿入できるようになっていることが好ましい。
【0017】
また、前記内側突出把持部の一方の面の前記内周側辺部に近接する内周側端部には、横幅方向の中央部から垂直に張り出して、張出し締着片が一体として取り付けられており、該張出し締着片には切欠き孔が形成されており、該切欠き孔には、前記プレート取付け台座の取付面部の内周側端部の裏面側に回転可能に支持されて取り付けられた固定ボルトが、ナット部材を用いて着脱可能に締着されることが好ましい。
【0018】
さらに、前記目地部形成部に、先端に向けて厚さを減少させるテーパー加工が施されていることが好ましい。
【0019】
さらにまた、前記目地部形成部の両面は、摩擦低減材で被覆されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の目地部形成用プレート部材によれば、プレート取付台座と組み合わせて用いられて、トンネル覆工コンクリートの各施工スパン中間部に誘発目地を、多くの手間や時間を要することなく容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る目地部形成用プレート部材が取り付けられたトンネル覆工型枠を説明する略示縦断面図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る目地部形成用プレート部材が取り付けられたトンネル覆工型枠を説明する略示平面図である。
図3図2のA-Aに沿った略示横断面である。
図4】本発明の好ましい一実施形態に係る目地部形成用プレート部材の配設状態を説明する、図2のB-Bに沿った略示横断面である。
図5図1のC部拡大断面図である。
図6】本発明の好ましい一実施形態に係る目地部形成用プレート部材の正面図である。
図7】目地部形成用プレート部材の側面図(図6の矢視D方向の図)である。
図8図7のE-Eに沿った断面図である。
図9】目地部形成ユニットを構成するプレート取付台座の正面図である。
図10】プレート取付台座の側面図(図9の矢視F方向の図)である。
図11】目地部形成ユニットを構成する対向台座の正面図である。
図12】目地部形成ユニットを構成する対抗台座の側面図(図11の矢視G方向の図)である。
図13】(a)~(c)はトンネル覆工作業をその工程順に示す図2のA-Aに沿った略示断面図である。
図14】(a)~(c)はトンネル覆工作業におけるトンネル覆工コンクリートの天端部の打設方法をその工程順に示す部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の好ましい一実施形態を添付図面に基づいて説明する。本実施形態の目地部形成用プレート部材15は、好ましくは目地部形成ユニット50を構成するプレート取付台座20と組み合わせて用いられる。目地部形成ユニット50は、例えば山岳トンネル工法等のトンネル工法において、図1及び図2に示すように、掘削したトンネルTの内周面を覆って構築されるトンネル覆工コンクリート4を、セントルと呼ばれるトンネル覆工用型枠1として、一般的に用いられている10.5m程度の施工延長を有するトンネル覆工用型枠に代えて、好ましくは18m~22m程度の施工延長を有するロングスパンのトンネル覆工用型枠1を用いて形成する際に、2分割された一対の分割型枠本体部3A,3Bの間の間隔部分dに取り付けられて、トンネル覆工コンクリート4の施工スパン中間部に、乾燥収縮や温度収縮に伴うひび割れを誘発する誘発目地を、本実施形態の目地部形成用プレート部材15によって、多くの手間を要することなく容易に形成できるようにするユニットとして用いられる。
【0024】
[トンネル覆工用型枠]
本実施形態では、まず、目地部形成用プレート部材15を含んで構成される目地部形成ユニット50が取り付けられるトンネル覆工用型枠1について、図1図3に基づいて以下に説明する。
【0025】
本実施形態では、トンネル覆工用型枠1は、山岳トンネル工法において地山を掘削して形成されたトンネルTの内壁面を覆うトンネル覆工コンクリート4を構築するためのものであって、10.5mを超える施工延長(本実施の形態では、18m)を有するロングスパンのスライドセントルとして構成されている。なお、トンネル覆工コンクリート4で覆う前のトンネルTの内壁面は、コンクリートが吹き付けられて一次覆工5が施されている。また、以下の説明においては、トンネルTの延長方向(図1図2の左右方向)を「前後方向」、トンネルTの幅方向を「左右方向」、トンネルTの延長方向において坑口側を「後側」、切羽側を「前側」と称することがある。
【0026】
本実施形態では、トンネル覆工用型枠1は、図1および図2に示すように、トンネルTの掘進方向X(図1参照)に沿って移動可能な架台部2と、該架台部2上に支持された型枠本体部3とを備えており、その全長は、18mのロングスパンのものとなっている。したがって、後述するように、トンネル覆工用型枠1を用いて形成されるトンネル覆工コンクリート4の施工スパンLは、18mと、従来の10.5mに対して大幅に延長されている。
【0027】
ここで、前記架台部2は、図1及び図3に示すように、門型台車2Aを備えている。この門型台車2Aは、基台部2aと、該基台部2aを支持する左右の支持脚部2bとを備えており、各支持脚部2bの下端部には、トンネルTの床面に長手方向(図1の左右方向)に沿って平行に敷設された左右一対のレール6上を移動可能な、ローラ等の走行部7がそれぞれ取り付けられている。したがって、トンネル覆工用型枠1は、レール6に沿ってトンネルTの掘進方向X(図1参照)に移動することができる。
【0028】
前記型枠本体部3は、一次覆工5によって覆われたトンネルTの内壁面との間に所定厚さの覆工空間Sを形成するためのものであって、トンネルTの掘進方向X(図1図2の左右方向)に2分割された一対の分割型枠本体部3A,3Bによって構成されている。
【0029】
上記各分割型枠本体部3A,3Bは、図3に示すように、全体としてトンネルTの内壁面形状に沿ったアーチ形状部を含んだ形状を有しており、アーチ形状部の上部の覆工空間Sを形成するための上部型枠3aと、トンネルTのアーチ形状部の下部および両側の側壁部分の覆工空間Sを形成するための左右一対の側部型枠3bと、一対の下部型枠3cとをそれぞれ含んで構成されている。ここで、上部型枠3aは、門型台車2Aの基台部2aに設けられた複数の昇降ジャッキ8によって上下に昇降可能に支持されている。また、一対の側部型枠3bは、上部型枠3aの左右両側の下端部にそれぞれ回動可能に連結されており、一対の下部型枠3cは、各側部型枠3bの下端部にそれぞれ回動可能に連結されている。そして、左右の各側部型枠3bと各下部型枠3cは、一端部が門型台車2Aに連結された伸縮ジャッキ9,10の他端部にそれぞれ連結されており、伸縮ジャッキ9,10の伸縮によって、上部型枠3aや側部型枠3bに対してそれぞれ回動することができる。
【0030】
また、図1及び図3に示すように、型枠本体部3の上部型枠3aと側部型枠3bには、開閉可能な複数の圧入接続口11a,11bが、トンネルTの掘進方向Xに間隔をおいて形成されている。ここで、各圧入接続口11a,11bは、後述のように覆工用のコンクリート12(図13(a)~(c)参照)を覆工空間Sに流し込んだり圧入したりするため等の目的で用いられる。
【0031】
以上のように構成されたトンネル覆工用型枠1は、昇降ジャッキ8や伸縮ジャッキ9,10を伸縮させることによって、型枠本体部3を拡開させたり内側に縮小させることができ、トンネルTの内壁面に沿うように型枠本体部3を組み付けて、トンネルTの内壁面との間に所定厚さの覆工空間Sを形成するとともに、型枠本体部3を脱型した後には、トンネルTの内部を掘進方向Xに移動することができる。
【0032】
ところで、型枠本体部3のトンネルの掘進方向Xに2分割された一対の分割型枠本体部3A,3Bは、これらの隣接する端面の間に、一定幅の間隔部分d(図1図2参照)が、全周に亘って形成されるように、架台部2に支持されており、これらの一対の分割型枠本体部3A,3Bの端面の間の間隔部分dに、目地部形成ユニット50が全周に亘って取り付けられている。目地部形成ユニット50が、間隔部分dに全周に亘って取り付けられることによって、一対の分割型枠本体部3A,3Bの間には、一定幅のスリット状の隙間δ(図5参照)が全周に亘って形成されるようになっている。また形成されたスリット状の隙間δには、目地部形成ユニット50のプレート取付台座20に支持させて、プレート取付台座20と共に当該目地部形成ユニット50を構成する、各施工スパンL(=18m)の中間部に誘発目地を形成するための複数の目地部形成用プレート部材15が、目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させて、引き抜き可能に挿入配置された状態で、全周に亘って連設して配設されるようになっている(図4参照)。
【0033】
[目地部形成ユニット]
次に、トンネル覆工用型枠1に取り付けて用いられる、本実施形態の目地部形成用プレート部材15を構成部材とする目地部形成ユニット50について、図4図12に基づいて以下に説明する。本実施形態では、目地部形成ユニット50は、上述の一対の分割型枠本体部3A,3Bを含んで構成されるトンネル覆工用型枠1における、一定幅の間隔部分d(図1図2参照)を挟んだ一方の分割型枠本体部3Aの端部に全周に亘って固定されることによって、図5に示すように、他方の分割型枠本体部3Bの端部との間に、スリット状の隙間δを全周に亘って形成するプレート取付台座20と、プレート取付台座20に着脱可能に取り付けられることによって、スリット状の隙間δを介して目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、引き抜き可能に挿入配置されると共に、全周に亘って連設して配置される(図4参照)、複数の目地部形成用プレート部材15とを含んで構成されている。目地部形成用プレート部材15の内側突出把持部15Bの少なくとも2箇所(本実施の形態では2箇所)には、プレート側ピン挿通孔16aが形成されており(図6参照)、プレート取付台座20の取付面部20aには、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態でプレート側ピン挿通孔16aと合致する位置に、台座側ピン挿通孔23aが形成されている(図9参照)。合致させたプレート側ピン挿通孔16aと台座側ピン挿通孔23aにピン部材26(図5参照)を挿通させることによって、目地部形成用プレート部材15がプレート取付台座20に支持された状態で取り付けられている。このように、本実施形態の目地部形成用プレート部材15は、プレート取付台座20と組み合わせて用いられる。
【0034】
また、本実施形態では、図5に示すように、好ましくはスリット状の隙間δを挟んだ両側に位置する、他方の分割型枠本体部3Bおよびプレート取付台座20の端縁部の外周面から立設して、直角三角形状または直角台形状の断面形状を有する面取り部材21h,20hが、覆工空間Sに突出する状態で周方向に全周に亘って連続して取り付けられている。
【0035】
さらに、本実施形態では、一対の分割型枠本体部3A,3Bの間の一定幅の間隔部分dを挟んだ他方の分割型枠本体部3Bの端部には、好ましくはプレート取付台座20と対になって配置される対向台座21が、目地部形成ユニット50の構成部材として全周に亘って一体として取り付けられている。この対向台座21の端部を他方の分割型枠本体部3Bの端部として、プレート取付台座20の端部との間に、スリット状の隙間δが、全周に亘って形成されるようになっている。他方の分割型枠本体部3Bの端縁部となる、対向台座21の端縁部の外周面から立設して、面取り部材21hが、周方向に全周に亘って連続して取り付けられている。
【0036】
本実施形態では、目地部形成ユニット50を構成するプレート取付台座20は、覆工空間Sの周方向に全周に亘って連設して配置される複数の目地部形成用プレート部材15(図4参照)の各々と対応させて形成された、目地部形成用プレート部材15と同数の複数の単位取付台座20’を、覆工空間Sの周方向に連設して一方の分割型枠本体部3Aの端部に各々固定することによって、これらの周方向に連設する単位取付台座20’が一体となった部材として設けられている。プレート取付台座20を形成する単位取付台座20’は、各々、図9及び図10に示すように、例えば鋼製のプレート部材を組み付けて形成されており、覆工空間Sの内側の型枠面となる外周面部20bと、周方向両側の側部接合面部20cと、一方の分割型枠本体部3Aの端部に接合される端部接合面部20dと、端部接合面部20dと対向して配置される取付面部20aとを含んだ、箱形形状を備えている。箱形形状の単位取付台座20’の内部には、側部接合面部20cと同様の形状を備える複数の補強リブプレート20eが、側部接合面部20cと略平行に配置されて適宜の位置に取り付けられている。
【0037】
プレート取付台座20を形成する単位取付台座20’の外周面部20bは、一方の分割型枠本体部3Aの外周面のアーチ形状に湾曲する横断形状に沿った、湾曲形状を有しており、これによって分割型枠本体部3Aの外周面と共に、覆工空間Sの内側の型枠面を形成するようになっている。外周面部20bの取付面部20a側の端縁部には、当該端縁部に沿って、直角三角形状または直角台形状の断面形状を有する面取り部材20hが、外周面から立設した状態で取り付けられている。
【0038】
側部接合面部20cは、矩形状のプレート部分となっており、複数のボルト締着孔20fが形成されている。これらのボルト締着孔20fにボルト部材(図示せず)を締着することにより、隣接する単位取付台座20’同士を、周方向に一体として接合できるようになっている。端部接合面部20dは、外周側辺部及び内周側辺部が分割型枠本体部3Aの外周面のアーチ形状に沿って湾曲する、横長の略矩形形状を備えており、複数のボルト締着孔20fが形成されている。これらのボルト締着孔20fにボルト部材(図示せず)を締着することにより、各々の単位取付台座20’を、一方の分割型枠本体部3Aの端部に設けられた端面接合プレート3d(図5参照)に、一体として接合できるようになっている。
【0039】
取付面部20aは、スリット状の隙間δを介して目地部形成用プレート部材15を覆工空間Sへ挿入する際に、目地部形成用プレート部材15を挿入方向に案内すると共に、目地部形成用プレート部材15を仮固定した状態で支持する部分となっており、端部接合面部20dと同様の、外周側辺部及び内周側辺部が分割型枠本体部3Aの外周面のアーチ形状に沿って湾曲する、横長の略矩形形状を備えている。取付面部20aの表面には、縦幅方向の中央部分に、横幅方向に延設して、帯板形状の補強プレート20gが、一体として接合されており、この補強プレート20gの両端部分に配置されて、台座側ピン挿通孔23aが、当該補強プレート20g及び取付面部20aを貫通して、2箇所に形成されている。また、取付面部20aの表面には、目地部形成用プレート部材15の挿入方向である縦幅方向に延設して、一対のガイド凸条24aが、リブ状のガイド材として、補強プレート20gの両側の端部に、平行に配置されて一体として接合されている。一対のガイド凸条24aは、外側辺部の間の間隔が、後述する目地部形成用プレート部材15の内側突出把持部15Bの一方の面にリブ状の被ガイド材として突設された、一対の被ガイド凸条24bの内側辺部の間の間隔と、同様の間隔となるように、目地部形成用プレート部材15の挿入方向に突設されており、これによって目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aのスリット状の隙間δへの挿入方向を、案内できるようになっている。
【0040】
さらに、本実施形態では、取付面部20aの中央部における内周側端部の裏面側には、内周側辺部に近接する部分から突出して、回転支持ブラケット25aが一体として接合されている(図10参照)。この回転支持ブラケット25aに支持されて、固定ボルト25bとこれに螺合するナット部材25cが、回転軸25dによって上下に回動可能に軸支されて取り付けられている(図5図9参照)。固定ボルト25bは、スリット状の隙間δを介して目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aを覆工空間Sへ挿入した状態で、目地部形成用プレート部材15に設けられた後述する張出し締着片18の切欠き孔18a(図7図8参照)に、ナット部材25cを用いて締着できるようになっている(図5参照)。
【0041】
プレート取付台座20と対になって、他方の分割型枠本体部3Bの端部に取り付けられる対向台座21は、プレート取付台座20と同様に、覆工空間Sの周方向に全周に亘って連設して配置される複数の目地部形成用プレート部材15(図4参照)の各々と対応させて形成された、目地部形成用プレート部材15と同数の複数の単位対向台座21’を、覆工空間Sの周方向に連設して他方の分割型枠本体部3Bの端部に各々固定することによって、これらの周方向に連設する単位対向台座21’が一体となった部材として設けられている。対向台座21を形成する単位対向台座21’は、各々、図11及び図12に示すように、例えば鋼製のプレート部材を組み付けて形成されており、覆工空間Sの内側の型枠面となる外周面部21bと、周方向両側の側部接合面部21cと、他方の分割型枠本体部3Bの端部に接合される端部接合面部21dとを含んだ、箱形形状を備えている。箱形形状の単位取付台座21’の内部には、側部接合面部21cと同様の形状を備える複数の補強リブプレート21eが、側部接合面部21cと略平行に配置されて適宜の位置に取り付けられている。
【0042】
対向台座21を形成する単位対向台座21’の外周面部21bは、他方の分割型枠本体部3Bの外周面のアーチ形状に湾曲する横断形状に沿った、湾曲形状を有しており、これによって分割型枠本体部3Bの外周面と共に、覆工空間Sの内側の型枠面を形成するようになっている。外周面部21bの端部接合面部21dとは反対側の端縁部には、当該端縁部に沿って、直角三角形状または直角台形状の断面形状を有する面取り部材21hが、外周面から立設した状態で取り付けられている。
【0043】
側部接合面部21cは、矩形形状の一カ所の角部分が凹状に切り欠かれた、略L字形状のプレート部分となっており、複数のボルト締着孔21fが形成されている。これらのボルト締着孔21fにボルト部材(図示せず)を締着することにより、隣接する単位対向台座21’同士を、周方向に一体として接合できるようになっている。端部接合面部21dは、外周側辺部及び内周側辺部が分割型枠本体部3Bの外周面のアーチ形状に沿って湾曲する、横長の略矩形形状を備えており、複数のボルト締着孔21fが形成されている。これらのボルト締着孔21fにボルト部材(図示せず)を締着することにより、各々の単位対向台座21’を、他方の分割型枠本体部3Bの端部に設けられた端面接合プレート3e(図5参照)に、一体として接合できるようになっている。
【0044】
[目地部形成用プレート部材]
プレート取付台座20や対向台座21と共に目地部形成ユニット50を構成する本実施形態の目地部形成用プレート部材15は、図6図8に示すように、好ましくアルミニウム製又はスチール製の、例えば6~10mm程度の厚さ(本実施形態では、7mm程度の厚さ)の金属ブレートを用いて形成される。また目地部形成用プレート部材15は、例えば縦幅が300~600mm程度、横幅が400~700mm程度の大きさの、外周側辺部と、外周側辺部と対向して配置される内周側辺部と、左右両側の側部辺部とを有する、4辺形状の平面形状を備えている。外周側辺部は、分割型枠本体部3A,3Bやプレート取付台座20や対向台座21の外周部分による型枠面の、周方向の湾曲形状に沿った湾曲形状を有している。目地部形成用プレート部材15は、外周側辺部側の部分が、型枠面から覆工空間S側に突出して配置される目地部形成部15A(図6の斜線部分)となっていると共に、内周側辺部側の部分が、型枠面の内側に突出して配置される内側突出把持部15Bとなっている。
【0045】
目地部形成部15Aは、図5に示すように、プレート取付台座20の端縁部と対向台座21の端縁部との間の部分に周方向に延設して設けられたスリット状の隙間δを介して、覆工空間Sに向けて目地部形成用プレート部材15が挿入された際に、プレート取付台座20や対向台座21の外周部分による型枠面から、例えば200mm程度の突出高さで外側に突出するように配置される。また目地部形成部15Aには、先端に向けて厚さを例えば7mm程度から2mm程度に減少させた、テーパー加工が施されており、また好ましくは、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aの両面は、摩擦低減材として、例えば高吸水性を備えるアクリル樹脂を含んだ摩擦低減材等の、吸水して膨潤する材料として公知の、高吸水性樹脂を含む摩擦低減材によって被覆されている。これらによって、覆工空間Sに打設されたコンクリートが硬化した後に、目地部形成用プレート部材15を型枠本体部3の内側に引き抜く操作を、よりスムーズに行なうことが可能になる。
【0046】
内側突出把持部15Bは、覆工空間Sに打設したコンクリートが硬化するまでの間、目地部形成用プレート部材15をプレート取付台座20に固定しておくための仮固定部として機能すると共に、コンクリートが硬化した後に目地部形成用プレート部材15をトンネル覆工用型枠1の内側に引き抜く際の、持手部として機能する部分である。内側突出把持部15Bにおけるプレート取付台座20と対向する面とは反対側の面(図6の手前側の面)には、図6及び図7に示すように、横幅方向の中央線cを挟んだ両側に対称に配置されて、円形ボス16が一体として突設されており、これらの円形ボス16の中央部には、当該円形ボス16及び目地部形成用プレート部材15を貫通して、プレート側ピン挿通孔16aがそれぞれ形成されている。プレート側ピン挿通孔16aは、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、プレート取付台座20の取付面部20aに形成された台座側ピン挿通孔23a(図9参照)と合致する位置に配置されて形成されている。これによって、上述のように、合致させたプレート側ピン挿通孔16aと台座側ピン挿通孔23aにピン部材26(図5参照)を挿通させることによって、目地部形成用プレート部材15が、プレート取付台座20に支持された状態で取り付けられる。
【0047】
また、本実施形態では、内側突出把持部15Bにおけるプレート取付台座20と対向する面(図6の手前側の面)には、反対側の面の円形ボス16よりも横幅方向の外側に配置されて、一対の被ガイド凸条24bが、リブ状の被ガイド材として、目地部形成用プレート部材15の挿入方向である縦幅方向に延設すると共に、平行に配置されて突設した状態で一体として接合されている。一対の被ガイド凸条24bは、内側辺部の間の間隔が、プレート取付台座20の取付面部20aに突設された一対のガイド凸条24aの外側辺部の間の間隔と、同様の間隔となるように、目地部形成用プレート部材15の挿入方向に延設して突設されており、これによって上述のように、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aのスリット状の隙間δへの挿入方向を、被ガイド凸条24bをガイド凸条24aに沿わせるようにしながら、安定した状態で案内させることができるようになっている。
【0048】
さらに、本実施形態では、内側突出把持部15Bにおける内周側辺部と近接する内周側端部には、覆工空間Sに打設したコンクリートが硬化した後に目地部形成用プレート部材15を型枠本体部3の内側に引き抜く際の持手部として機能する、横長矩形形状の把手用の開口部19が、横幅方向の中央線cを挟んだ両側に対称に配置されて、一対開口形成されている。
【0049】
さらにまた、本実施形態では、内側突出把持部15Bにおける内周側辺部と近接する内周側端部には、プレート取付台座20と対向する面の横幅方向の中央部分から垂直に張り出して、張出し締着片18が一体として接合されている。張出し締着片18には、図8に示すように、張出し先端側の辺部から基端部側にU字形状に切り欠くようにして、切欠き孔18aが形成されている。この切欠き孔18aには、上述のように、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、プレート取付台座20の内周側端部の裏面側に回転支持ブラケット25aを介して回動可能に支持されて取り付けられた固定ボルト25bを、ナット部材25cを用いて着脱可能に締着できるようになっている(図5参照)。
【0050】
本実施形態では、図4に示すように、プレート取付台座20の外周面部21bによる型枠面から覆工空間S側に目地部形成部15Aを突出させて、型枠本体部3の周方向に連設配置された複数の目地部形成用プレート部材15は、好ましくは隣接する各一対の目地部形成用プレート部材15の側部辺部の間に、隙間が生じないように配設されている。また、これらの連設配置された複数の目地部形成用プレート部材15のうちの一部は、両側の側部辺部の間の間隔が、覆工空間Sの外側から内側に向けて広くなった、内側に末広がりの正面形状を備えるハの字状の目地部形成用プレート部材15’となっている。
【0051】
周方向に連設配置された複数の目地部形成用プレート部材15のうちの一部が、両側の側部辺部の間の間隔が覆工空間Sの内側に向けて末広がりのハの字状の目地部形成用プレート部材15’となっていることにより、当該ハの字状の目地部形成用プレート部材15’を先行して引き抜くようにすることで、型枠本体部3の周方向に連設配置された目地部形成用プレート部材15が、隣接する目地部形成用プレート部材15の側部辺部同士が競り合うことで引き抜き難くなるのを回避して、各々の目地部形成用プレート部材15をスムーズに引き抜けるようにすることが可能になる。
【0052】
[目地部形成ユニットの設置]
本実施形態では、上述の構成を備える目地部形成ユニット50を設置するには、トンネル覆工用型枠1の架台部2によって各々支持された、型枠本体部3を構成する2分割された一対の分割型枠本体部3A,3Bの端面の間の間隔部分dに、プレート取付台座20と、これと対になって配置される対向台座21とを、分割型枠本体部3A,3Bの全周に亘って取り付けることによって、これらの端部の間に、スリット状の隙間δを全周に亘って形成する。すなわち、プレート取付台座20は、上述のように、複数の単位取付台座20’を、周方向に一体として接合すると共に、一方の分割型枠本体部3Aの端部に設けられた端面接合プレート3dに一体として接合することによって、一方の分割型枠本体部3Aの端部に容易に取り付けることができる。また、対向台座21は、上述のように、複数の単位対向台座21’を、周方向に一体として接合すると共に、他方の分割型枠本体部3Bの端部に設けられた端面接合プレート3eに一体として接合することによって、他方の分割型枠本体部3Bの端部に容易に取り付けることができる。なお、スリット状の隙間δは、端面接合プレート3d,3eに複数の単位取付台座20’や単位対向台座21’を一体として接合して、端部に予めプレート取付台座20や対向台座21が取り付けられた一対の分割型枠本体部3A,3Bを、架台部2によって各々支持させて、所定の位置に据え付けることによって、プレート取付台座20の端部と対向台座21の端部の間に全周に亘って形成されるようにすることもできる。
【0053】
一対の分割型枠本体部3A,3Bの端面の間の間隔部分dに、プレート取付台座20と対向台座21とを取り付けることによって、これらの端部の間に、スリット状の隙間δを全周に亘って形成したら、複数の目地部形成用プレート部材15を、各々の目地部形成部15Aをスリット状の隙間δに挿入し、目地部形成部15Aをスリット状の隙間δを介して覆工空間Sに引き抜き可能に突出させて、全周に亘って連設して配置した状態で、プレート取付台座20に各々支持させることにより取り付ける。複数の目地部形成用プレート部材15を、スリット状の隙間δに挿入する操作は、上述のように、目地部形成用プレート部材15の数に対応させて設けられた各々の単位取付台座20’の、取付面部20aに突設された一対のガイド凸条24aに、目地部形成用プレート部材15の取付面部20aと対向する面に突設され被ガイド凸条24bを沿わせるようにすることで、目地部形成用プレート部材15の挿入方向を安定させて、スムーズに行うことが可能になる。
【0054】
また、複数の目地部形成用プレート部材15を、スリット状の隙間δに各々挿入して、目地部形成用プレート部材15に形成された一対のプレート側ピン挿通孔16aが、プレート取付台座20の各々の単位取付台座20’の取付面部20aに形成された一対の台座側ピン挿通孔23aに合致したら、上述のように、これらの合致したピン挿通孔16a,23aにピン部材26を挿通することによって、各々の目地部形成用プレート部材15を、スリット状の隙間δを介して目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、プレート取付台座20に支持させて取り付けることができる。
【0055】
本実施形態では、さらに、合致したピン挿通孔16a,23aにピン部材26を挿通することに加えて、上述のように、各々の目地部形成用プレート部材15のプレート取付台座20と対向する面の内周側端部から張り出して設けられた、張出し締着片18の切欠き孔18aに、プレート取付台座20の取付面部20aの裏面側に回動可能に支持されて取り付けられた固定ボルト25bを、ナット部材25cを用いて締着するようになっている。これによって、各々の目地部形成用プレート部材15を、目地部形成部15Aを覆工空間Sに突出させた状態で、さらに安定してプレート取付台座20に取り付けることが可能になる。またこれによって、目地部形成部15Aに施されたテーパー加工や摩擦低減材の作用によって、目地部形成用プレート部材15が特に引き抜きや易くなっている場合でも、覆工空間Sに打設したコンクリートが硬化した後に、目地部形成用プレート部材15を型枠本体部3の内側に引き抜く際に、合致したプレート側ピン挿通孔16a及び台座側ピン挿通孔23aからピン部材26を取り外しても、目地部形成用プレート部材15が、自重によって型枠本体部3の内側落下するのを、効果的に回避することが可能になる。
【0056】
本実施形態では、目地部形成ユニット50は、上述のようにして、複数の目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aが覆工空間Sに突出して全周に亘って連設して配置された状態で、型枠本体部3を構成する2分割された一対の分割型枠本体部3A,3Bの端面の間の間隔部分dに設置されると共に、型枠本体部3に一体として取り付けられることになる。本実施形態では、一対の分割型枠本体部3A,3Bの端面の間の間隔部分dに、目地部形成ユニット50を設置したら、以下のようなトンネル覆工作業によって、トンネルTの一次覆工5が施された内壁面と、型枠本体部3の外周部分の型枠面との間の覆工空間Sにコンクリートを打設して、トンネル覆工コンクリート4が形成されることになる。
【0057】
[トンネル覆工作業]
本実施形態では、トンネル覆工作業は、図1図2、及び図13(a)~(c)に示すように、トンネル覆工用型枠1を用いて、2台のコンクリートポンプ30からそれぞれ延びる圧送配管31を経てコンクリート12(図13(a)~(c)参照)を、覆工空間Sに同時に供給しながら打設することによって、掘削したトンネルTの内壁面を覆うトンネル覆工コンクリート4を構築する作業である。
【0058】
より詳細には、図1及び図2に示すように、2台のコンクリートポンプ30は、トンネルT内に搬入されたトンネル覆工用型枠1を挟んでトンネルTの掘進方向Xの前方と後方にそれぞれ配置されており、各コンクリートポンプ30のホッパー部には、各コンクリートミキサー車32からコンクリート12がそれぞれ投入される。ここで、前後2台のコンクリートポンプ30からは圧送配管31がそれぞれ延びており、各コンクリートミキサー車32から各コンクリートポンプ30のホッパー部へと投入されたコンクリート12は、2系統の各圧送配管31から覆工空間Sに同時に圧送されて供給される。このように、2系統のコンクリートポンプ30と圧送配管31を用いることによって、トンネル覆工コンクリート4を形成するための工程の進捗を効果的に早めることができる。なお、2台のコンクリートポンプ30を用いる場合、これら2台のコンクリートポンプ30は、トンネルTの掘進方向Xにおいて、トンネル覆工用型枠1を挟んだ前方または後方の一方(片側)に並べて配置することも可能である。
【0059】
2台のコンクリートポンプ30からそれぞれ延びる2系統の圧送配管31は、トンネル覆工用型枠1の内側に向かって延びる主配管31aと、該主配管31aからロータリバルブ29を介してトンネルTの幅方向両側に枝分かれした、左右の分岐管31bとを含んで構成されている。ここで、各分岐管31bは、長さの異なる直管や湾曲管等からなる複数のピース管を含んで構成されており、選択した複数のピース管を組み付けて、圧入接続口11a、11bに接続するように配置される。また、これらのピース管を組み替えることによって、当該分岐管31bを、型枠本体部3の2分割された分割型枠本体部3A,3Bの各々における、好ましくは掘進方向Xの後端部に形成された、下段の圧入接続口11aから上段の圧入接続口11bに切り替えて接続したり、上段の圧入接続口11bから天頂部の圧入接続口27a,27bに切り替えて接続したりできるようになっている。
【0060】
すなわち、図13(a)に示すように、左右の各分岐管31bを下段の圧入接続口11aに接続し、各コンクリートポンプ30から圧送されるコンクリート12を、各分岐管31bから覆工空間Sに同時に流し込んだり(ドット部分)圧入したり(斜線部分)することによって、覆工空間Sの下半部にコンクリート12を打設することができる。
【0061】
次に、左右の各分岐管31bを、図13(b)に示すように、上段の圧入接続口11bに接続し、各コンクリートポンプ30から圧送されるコンクリート12を、各分岐管31bから覆工空間Sに同時に流し込んだり(ドット部分)圧入したり(斜線部分)することによって、覆工空間Sの上半部にコンクリート12を打設することができる。
【0062】
そして、最後に左右の分岐管31bを、図13(c)に示すように、天頂部の圧入接続口27a,27bに接続し、各コンクリートポンプ30から圧送されるコンクリート12を、各分岐管31bから覆工空間Sに同時に圧入することによって(網掛部分)、覆工空間Sの天頂部にコンクリート12を打設することができる。この場合、一対の分割型枠本体部3A,3Bの端面の間の間隔部分dで、覆工空間Sに突出させて全周に亘って連設配置された目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aは、図14(a)~(c)に示すように、邪魔板として機能することができる。
【0063】
すなわち、トンネル覆工用型枠1の型枠本体部3の2分割された前後の分割型枠本体部3A,3Bにおおける、各々の後端部に設けられた圧入接続口27a,27bから、コンクリート12を覆工空間Sの天頂部に同時に打設する際に、覆工空間Sに圧送されるコンクリート12は、図14(a)に矢印にて示すように、各圧入接続口27a,27bから妻型枠33側に向かってそれぞれ流れる。そして、上流側から目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aに至ったコンクリート12は、図14(b)に示すように、邪魔板として機能する目地部形成部15Aの部分で打ち上げられるとともに、各圧入接続口27a,27bから妻型枠33に向かってそれぞれ流れる。すなわち、各圧入接続口27a,27bから妻型枠33に向かって流れるコンクリート12は、覆工空間Sにコンクリート12がさらに圧送されることによって、目地部形成部15Aや妻型枠33に到達した後はそれ以上の妻型枠33側への流れが阻止されるため、目地部形成部15Aや妻型枠33に沿って上方に打ち上がることになる。そして、一方の分割型枠本体部3Aの圧入接続口27aから覆工空間Sへと圧送されたコンクリート12は、分割型枠本体部3Aを乗り越えて既設のトンネル覆工コンクリート4a側へも流出し、既設のトンネル覆工コンクリート4a側のコンクリート12と合流するとともに、圧入接続口27b側の部分から覆工空間Sの天面部へと到達し、妻型枠33側に向かって覆工空間Sへと順次充填されていく。
【0064】
上述のように、圧入接続口27a,27bから打設されたコンクリート12が覆工空間Sの天面部に達すると、例えば目地部形成用プレート部材15よりも既設のトンネル覆工コンクリート4a側の部分に残留する空気が逃げ場を失うため、覆工空間Sの天面部に近接する部分に空気溜りが生じ易くなる。然るに、本実施形態では、目地部形成ユニット50を構成するプレート取付台座20又は対向台座21に、天端部の型枠面から覆工空間Sの天面部に近接する部分に至る長さで突出して、エア抜きパイプ28が、引き抜き可能に取り付けられていることが好ましい。これによって、覆工空間Sに突出する目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aに近接して、エア抜きパイプ28が覆工空間Sの天面部に近接する部分に至る長さで突設するため、残留する空気をエア抜きパイプ28からトンネル覆工用型枠1の内部へと逃がすことができる。この結果、目地部形成用プレート部材15の付近で覆工空間Sの天面部に空気溜りを生じさせることなく、図14(c)に示すように、天端部の覆工空間Sにコンクリート12を密実に圧入して充填することができる。なお、本実施形態では、トンネルTの延長方向に適当な間隔で複数の伸縮バイブレータ13を配置したため、覆工空間Sの天端部に打設されたコンクリート12を複数の伸縮バイブレータ13によって締め固めることができ、より密実で品質の高いトンネル覆工コンクリート4を得ることができる。
【0065】
そして、本実施形態では、上述のトンネル覆工作業によって覆工空間Sに打設されたコンクリート12が硬化して、トンネル覆工コンクリート4が形成されたら、複数の目地部形成用プレート部材15の各々を、覆工空間Sから型枠本体部3の内側に引き抜いて、誘発目地を形成する作業を行なう。
【0066】
すなわち、目地部形成用プレート部材15が、プレート取付台座20に支持されて取り付けられている図5に示す状態から、合致したプレート側ピン挿通孔16a及び台座側ピン挿通孔23aに挿通されたピン部材26を抜き取って取り外す。ピン部材26を抜き取る作業は、目地部形成用プレート部材15の張出し締着片18にプレート取付台座20の固定ボルト25bが締着されているので、目地部形成用プレート部材15を落下させることなく、安定した状態で行なうことが可能になる。ピン部材26をピン挿通孔16a,23aから取り外したら、ナット部材25cを緩めて、固定ボルト25bを張出し締着片18から解放して取り外すと共に、目地部形成用プレート部材15の内側端部に形成された把手用の開口部19に手や指を係止することにより、例えば作業員による手作業によって、目地部形成用プレート部材15を覆工空間Sから型枠本体部3の内側に引き取る操作を、容易に且つスムーズに行うことが可能になる。またこれによって、トンネル覆工コンクリート4には、スリット状の隙間δに沿って、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aが引き抜かれた部分による誘発目地が、容易に形成されることになる。
【0067】
したがって、本実施形態の目地部形成用プレート部材15によれば、プレート取付台座20と組み合わせて用いられて、トンネル覆工コンクリート4の各施工スパン中間部に誘発目地を、多くの手間や時間を要することなく容易に設けることが可能になる。
【0068】
また、本実施形態によれば、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aには、テーパー加工が施されており、また目地部形成部15Aの両面は、好ましくは高吸水性樹脂を含む摩擦低減材によって被覆されているので、覆工空間Sに打設されたコンクリート12が硬化した後に、目地部形成用プレート部材15を型枠本体部3の内側に引き抜く操作を、よりスムーズに行なうことが可能になる。
【0069】
さらに、本実施形態によれば、スリット状の隙間を挟んだ両側に位置するプレート取付台座20や対向台座21の端縁部の外周面から立設して、直角三角形状または直角台形状の断面形状を有する面取り部材20h,21hが、覆工空間Sに突出する状態で周方向に全周に亘って連続して取り付けられているので、覆工空間Sから目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aを引き抜く際に、誘発目地の角部が欠けることになるのを、効果的に回避することが可能になると共に、目地部形成用プレート部材15の目地部形成部15Aのトンネル覆工コンクリート4との付着面積を減少させて、目地部形成用プレート部材15を型枠本体部3の内側に引き抜く操作を、よりスムーズに行なうことが可能になる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、内側突出把持部の一方の面の内周側端部から張り出して、切欠き孔を備える張出し締着片が取り付けられている必要は必ずしも無い。プレート側ピン挿通孔は、目地部形成用プレート部材の内側突出把持部に3箇所以上設けることもでき、目地部形成部をスリット状の隙間に挿入する方向を案内する一対の被ガイド材は、平行に配置された一対の被ガイド凸条以外の、プレート取付け台座のガイド材によって案内されるその他の被ガイド材であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 トンネル覆工用型枠
2A 門型台車
2a 基台部
2b 支持脚部
3 型枠本体部
3A、3B 分割型枠本体部
3a 上部型枠
3b 側部型枠
3c 下部型枠
4 トンネル覆工コンクリート
5 一次覆工
6 レール
7 走行部
8 昇降ジャッキ
9、10 伸縮ジャッキ
11a、11b 圧入接続口
13 伸縮バイブレータ
15 目地部形成用プレート部材
15’ ハの字状の目地部形成用プレート部材
15A 目地部形成部
15B 内側突出把持部
20 プレート取付台座
21 対向台座
28 エア抜きパイプ
30 コンクリートポンプ(コンクリートポンプ車)
31 圧送配管
31b 分岐管
32 コンクリートミキサー車
50 目地部形成ユニット
T トンネル
X トンネルの掘進方向
図1
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