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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】再生土木材料
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/04 20060101AFI20230310BHJP
   C04B 18/16 20230101ALI20230310BHJP
【FI】
E01C7/04
C04B18/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019071212
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020169486
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519119644
【氏名又は名称】株式会社ナカヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小野 敏孝
(72)【発明者】
【氏名】関 勇治
(72)【発明者】
【氏名】守屋 祐弥
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-266003(JP,A)
【文献】特開2002-146709(JP,A)
【文献】特開2011-051818(JP,A)
【文献】特開2010-007273(JP,A)
【文献】特開2006-028212(JP,A)
【文献】特開2016-216315(JP,A)
【文献】特開2004-052411(JP,A)
【文献】特開2005-139829(JP,A)
【文献】特開2016-196747(JP,A)
【文献】特開2007-268431(JP,A)
【文献】特開2010-059003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/04
C04B 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が5mm以上40mm以下のコンクリート再生材と、
前記コンクリート再生材の粒径5mm未満の細粒分を置換する、JIS A5032に規定されている「溶融スラグ細骨材」に準拠する六価クロムを含まない一般廃棄物溶融スラグとを混合してなり、
前記コンクリート再生材と前記一般廃棄物溶融スラグの質量比が80:20~60:40であることを特徴とする再生土木材料。
【請求項2】
請求項記載の再生土木材料において、前記一般廃棄物溶融スラグが、副資材としてコークスと石灰石を使用した溶融処理施設から排出される溶融スラグであることを特徴とする再生土木材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路盤材、裏込め材、盛土材、埋戻し材等として使用される再生土木材料に関する。
【背景技術】
【0002】
天然骨材の削減や資源循環型社会の構築に寄与するため、土木工事や建築工事に使用されたコンクリート塊は、中間処理施設における、破砕、金属類の分類(除去)、ふるい分け等の処理を経て、粒径が0mm超から40mm程度のコンクリート再生材として道路や駐車場等の路盤材、擁壁の裏込め材、土木構造物の基礎材、埋戻し材、盛土材等に利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、セメントコンクリート破砕材(粒径:0~40mm)と石炭灰と廃スラッジ等を混合して製造する再生路盤材が開示されている。セメントコンクリート破砕材は50重量部以上、石炭灰と廃スラッジは50重量部以下、石炭灰と廃スラッジの比は4:1~1:4が好ましいとしている。
また、特許文献2には、粒径が5~30mmの再生骨材(コンクリート再生材)を50質量%以上70質量%未満と、高炉水砕スラグを23質量%超47質量%以下と、添加剤(石灰、セメント、副産石膏)を3~7質量%とを含有する透水性路盤材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-293358号公報
【文献】特開2002-146709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の再生路盤材の場合、施工前の水和反応による硬化を避けるため、防雨対策等の品質管理を必要とするだけでなく、セメントコンクリートの細粒分を含むため、六価クロムの溶出量が環境基準値を超えるおそれがある。
また、特許文献2記載の透水性路盤材は、水分を含むと硬化するため、施工前及び施工中において防雨対策等の品質管理が必要である。
【0006】
舗装や埋戻し、盛土等の土木工事では、工期短縮や、騒音、振動、粉塵の低減など近隣住民や走行車両への配慮と共に多様な要望に応える技術が求められる。特に、都市部や供用中の道路の工事は影響度合いが高く、工期短縮や環境対策は重要な課題である。また、土木工事は屋外作業となるため、降雨による工事中断をできる限り避け、工期への影響を最小限に抑える必要がある。
さらにまた、セメント原料の品質低下やセメントの製造過程で生成された六価クロムがコンクリート再生材の細粒分から環境基準値を超えて溶出する場合がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、従来に比べて土木工事に要する期間並びに降雨による工事中断期間が短縮され、環境負荷が軽減されると共に、六価クロムの溶出量が環境基準値以下である再生土木材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る再生土木材料は、粒径が5mm以上40mm以下のコンクリート再生材と、
前記コンクリート再生材の粒径5mm未満の細粒分を置換する、JIS A5032に規定されている「溶融スラグ細骨材」に準拠する六価クロムを含まない一般廃棄物溶融スラグとを混合してなり、
前記コンクリート再生材と前記一般廃棄物溶融スラグの質量比が80:20~60:40であることを特徴としている。
【0009】
「コンクリート再生材」は、廃コンクリートを破砕して利用用途に応じて粒度調整した再生材である。
また、「一般廃棄物溶融スラグ」は、一般廃棄物(産業廃棄物以外の廃棄物)や下水汚泥、それらの焼却灰等を約1300℃以上で高温溶融した後、冷却固化させることで生成する生成物のことである。
【0010】
粒径が5mm未満のコンクリート再生材(以下では、「コンクリート再生材の細粒分」、もしくは単に「細粒分」と呼ぶ。)は、六価クロムを溶出しやすいだけでなく、コンクリート再生材の水はけが悪くなる原因となっている。そこで、本発明に係る再生土木材料では、コンクリート再生材の細粒分を、六価クロムを含まず、排水性の良い一般廃棄物溶融スラグに置換している。
【0012】
後述するように、一般廃棄物溶融スラグの割合が大きくなり過ぎると、路盤材として使用した際に強度が低下するおそれがある。
【0013】
また、本発明に係る再生土木材料は、前記一般廃棄物溶融スラグが、副資材としてコークスと石灰石を使用した溶融処理施設から排出される溶融スラグであることを好適とする。
【0014】
コークスを使用して溶融炉下部の雰囲気温度を1700℃以上の高温状態とすることにより廃棄物中の灰分は完全溶融し、重金属等の有害物質は炉内の還元雰囲気によってガス化する。これにより、溶融スラグ中の有害物質量を低く抑えることができる。また、石灰石を使用して塩基度を調整することにより、流動性の良好な溶融物が生成され、スラグと金属の分離性能などが向上する。加えて、この方式で生成される一般廃棄物溶融スラグは、年間を通じて品質が安定している。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る再生土木材料では、コンクリート再生材の細粒分を一般廃棄物溶融スラグに置換しているので、従来に比べて地盤の転圧回数が低減され、土木工事に要する期間が短縮されるだけでなく、水分が抜けやすく、降雨後の自然乾燥に伴う工事中断期間が短縮される。また、建設機械の稼働時間の低減に伴う騒音、振動等の環境負荷を軽減することができる。さらにまた、六価クロムの溶出量を環境基準値以下に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
【0017】
本発明に係る再生土木材料は、粒径が5mm以上40mm以下のコンクリート再生材と、一般廃棄物溶融スラグとを混合したものであり、路盤材、裏込め材、盛土材、埋戻し材等として使用される。
【0018】
粒径が5mm以上40mm以下のコンクリート再生材は、コンクリート塊を破砕機等で破砕したコンクリート片で、JIS Z8801-1に規定する公称目開き53.0mmの金属製網ふるいを全量通過し、公称目開き37.5mmの金属製網ふるいを質量百分率95%~100%通過する再生クラッシャラン(呼び名:RC-40)を公称目開き4.75mmの金属製網ふるいにかけたときに、ふるい上に残ったコンクリート片である。
【0019】
なお、JIS A1102「骨材のふるい分け試験方法」の3.2には、JIS Z8801-1に規定する公称目開き4.75mmを5mmふるい、公称目開き37.5mmを40mmふるいと呼ぶことができると記載されている。
【0020】
一方、一般廃棄物溶融スラグは、前述したように、一般廃棄物や下水汚泥、それらの焼却灰等を約1300℃以上で高温溶融した後、冷却固化させることで生成する生成物であり、副資材としてコークスと石灰石を使用したシャフト炉式一般廃棄物溶融炉(溶融処理施設の一例)から排出される溶融スラグが好適である。
【0021】
溶融炉から排出される一般廃棄物溶融スラグは、ガラス質で角張った形状をしており、表面はツルツルしている。摩砕又は破砕処理を施すことにより、角張りが取れ、スラグ表面に無数の凹凸が形成される。
【0022】
コンクリート再生材と一般廃棄物溶融スラグの混合はミキサーやバックホウなどの重機を用いれば良い。コンクリート再生材と一般廃棄物溶融スラグの混合比(質量比)は80:20~60:40であることが好ましい。
【0023】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【実施例
【0024】
本発明に係る再生土木材料の性能について検証するために実施した性能試験について説明する。
性能試験には、粒径が0mm超40mm以下のコンクリート再生材を2種類(RC40A、RC40B)と、JIS A5032に規定されている「溶融スラグ細骨材」に準拠する一般廃棄物溶融スラグを2種類(スラグA、スラグB)使用した。
【0025】
RC40Aをふるいにかけて5mm以上40mm以下の粒径としたCo再生材AとスラグAの混合比(質量比)を変化させた4種類の土木再生材料と、RC40Bをふるいにかけて5mm以上40mm以下の粒径としたCo再生材BとスラグBを混合した1種類の土木再生材料を作製した。作製した土木再生材料の通過質量百分率を表1に示す。なお、通過質量百分率は、表1に示す各公称目開きの金属製網ふるいを通過した土木再生材料の質量百分率である。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示す土木再生材料並びにRC40A及びRC40Bの各性能試験結果を表2及び表3に示す。
なお、混合3及び混合4の透水係数は測定しなかった。これは、RC40A、混合1、及び混合2の各透水係数の測定によって、一般廃棄物溶融スラグの質量比と透水係数との相関性が把握できたためである。
また、表2中のCr(VI)は六価クロムである。混合2~混合4の六価クロム溶出量が括弧書きなのは、混合2~混合4について六価クロム溶出量の測定を行わなかったことによる。これは、混合1で六価クロムの溶出量が0.02mg/L未満であったため、混合2~混合4も同程度と推定されたためである。なお、六価クロム溶出量の環境基準値は0.05mg/Lである(環境庁告示第四十六号参照)。
【0028】
修正CBRは、路盤材の強度を表す指標であり、JIS A1210に従って3層に分けて各々92回突き固めたときの最大乾燥密度の95%の締固め度に相当するCBRをいう。CBR(California Bearing Ratio)は、路床や路盤材料の表面に直径5.0cmのピストンが2.5mm又は5.0mm貫入したときの荷重を、標準荷重に対する百分率で表したものである。
【0029】
最大乾燥密度は、乾燥密度-含水比曲線における乾燥密度の最大値である(JIS A1210参照)。また、最適含水比は、最大乾燥密度における含水比である(JIS A1210参照)。
六価クロム溶出量の測定は、JIS K0102「工場排水試験方法」の65.2に定める方法に従った。
【0030】
表3は突き固め試験の結果を示したものである。突き固め試験では、直径5cm、質量4.5kgのランマーを45cmの高さから17回、42回、92回自由落下させて試料を突き固め、乾燥密度と落下回数とのグラフから95%最大乾燥密度に相当する落下回数を求めた。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
表2より以下のことがわかる。
・Co再生材A(粒径が5mm以上40mm以下のコンクリート再生材)とスラグA(一般廃棄物溶融スラグ)の混合比が50:50になると、修正CBRの値がRC40Aより低くなり、強度の低下が認められる。
・一般廃棄物溶融スラグの割合が高くなるにつれて透水係数が大きくなっており、従来のコンクリート再生材に比べて、実施例は透水性能が向上している。
・従来のコンクリート再生材であるRC40Aは六価クロム溶出量が環境基準値を超えているが、実施例である混合1~混合3及び参考例である混合4は六価クロム溶出量が環境基準値未満となっている。
【0034】
また、表3より以下のことがわかる。
・従来のコンクリート再生材であるRC40A、RC40Bに比べて、実施例である混合1~混合3、及び参考例である混合4は突き固め回数が減少している。特に、混合2~混合4は突き固め回数が大幅に減少しており、工期の短縮並びに環境負荷の軽減が期待できる。