(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】運転資質判定システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230310BHJP
A61B 5/18 20060101ALI20230310BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
G08G1/16 F
A61B5/18
A61B5/11 100
(21)【出願番号】P 2019109889
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513302477
【氏名又は名称】エコナビスタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】清石 彩華
(72)【発明者】
【氏名】川又 大祐
(72)【発明者】
【氏名】冨田 岳陽
(72)【発明者】
【氏名】安田 輝訓
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175111(JP,A)
【文献】特開2016-022310(JP,A)
【文献】特開2019-067385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
B60W 10/00 - 60/00
A61B 5/18
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の睡眠中の生体データを取得する生体データ取得手段と、
前記被検者の属性情報を取得する属性情報取得手段と、
睡眠中の生体データに関わらず運転の資質がない運転不適合者の睡眠中の生体データである不適合者生体データを記憶手段から取得する不適合者生体データ取得手段と、
前記被検者の睡眠中の生体データ、当該被検者の属性情報、および、前記不適合者生体データから、当該被検者の運転の資質を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする、運転資質判定システム。
【請求項2】
被検者の睡眠中の生体データを取得する生体データ取得手段と、
前記被検者の属性情報を取得する属性情報取得手段と、
運転の資質がない運転不適合者の睡眠中の生体データである不適合者生体データを記憶手段から取得する不適合者生体データ取得手段と、
前記被検者の睡眠中の生体データ、当該被検者の属性情報、および、前記不適合者生体データから、当該被検者の運転の資質を判定する判定手段と、
を有し、
前記判定手段は、前記被検者の睡眠中の生体データと前記不適合者生体データとの差異が予め定められた第1閾値よりも小さい場合、当該被検者の運転の資質を不適合と判定することを特徴とする
、運転資質判定システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記被検者の睡眠中の生体データと前記不適合者生体データとの差異が前記第1閾値よりも大きい場合であっても、当該第1閾値とは異なる予め定められた第2閾値よりも小さく、かつ、当該被検者の属性情報が予め定められた不適合条件を満足する場合、当該被検者の運転の資質を不適合と判定することを特徴とする、請求項2に記載の運転資質判定システム。
【請求項4】
被検者の睡眠中の生体データを取得する生体データ取得手段と、
前記被検者の属性情報を取得する属性情報取得手段と、
運転の資質がない運転不適合者の睡眠中の生体データである不適合者生体データを記憶手段から取得する不適合者生体データ取得手段と、
前記被検者の睡眠中の生体データ、当該被検者の属性情報、および、前記不適合者生体データから、当該被検者の運転の資質を判定する判定手段と、
を有し、
前記判定手段は、前記被検者の睡眠中の生体データと前記不適合者生体データとの差異が予め定められた特定の閾値よりも小さく、かつ、当該被検者の属性情報が予め定められた不適合条件を満足する場合、当該被検者の運転の資質を不適合と判定することを特徴とする
、運転資質判定システム。
【請求項5】
前記判定手段は、前記被検者の睡眠中の生体データと前記不適合者生体データとの差異が前記特定の閾値よりも小さく設定された閾値に対してさらに小さい場合、当該被検者の属性情報が前記不適合条件を満足するか否かに関わらず、当該被検者の運転の資質を不適合と判定することを特徴とする、請求項4に記載の運転資質判定システム。
【請求項6】
被検者の睡眠中の生体データを取得する生体データ取得手段と、
前記被検者の属性情報を取得する属性情報取得手段と、
運転の資質がない運転不適合者の睡眠中の生体データである不適合者生体データを記憶手段から取得する不適合者生体データ取得手段と、
前記被検者の睡眠中の生体データ、当該被検者の属性情報、および、前記不適合者生体データから、当該被検者の運転の資質を判定する判定手段と、
を有し、
前記被検者の認知機能に異常が生じているか否かを判定する予備判定手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記予備判定手段により前記被検者の認知機能に異常が生じていると判定された場合に、当該被検者の運転の資質を判定することを特徴とする
、運転資質判定システム。
【請求項7】
コンピュータに、
被検者の睡眠中の生体データを取得する機能と、
前記被検者の属性情報を取得する機能と、
睡眠中の生体データに関わらず運転の資質がない運転不適合者の睡眠中の生体データである不適合者生体データを記憶手段から取得する機能と、
前記被検者の睡眠中の生体データ、当該被検者の属性情報、および、前記不適合者生体データから、当該被検者の運転の資質を判定する機能と、
を実現させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転資質判定システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サーバが、睡眠データ(睡眠時の脈拍、呼吸、体動等)に基づいて、ユーザの睡眠が充分か否かを解析し、解析結果を車両に出力する安全運転管理システムが開示されている。このシステムでは、ユーザが睡眠不足である場合には、ユーザが運転できないよう車両を制御する。また、このシステムでは、睡眠データを取得する際に取得した睡眠時ユーザ識別情報(血圧、体重等)と、ユーザが車両に搭乗したときに取得した運転時ユーザ識別情報とに基づき、ユーザを識別する。
【0003】
特許文献2には、睡眠状態情報(利用者の脈拍、呼吸、体動等に基づいて演算された睡眠の質等に関する情報)と、運転状態情報とに基づいて、睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関を示す運転レベルマップを設定し、運転レベルマップに基づき、車両運転時に利用者に警告、アドバイスを行う安全運転支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-126376号公報
【文献】特開2010-122732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2の技術では、被検者の睡眠中の生体データに基づいて運転の可否を制御したり、運転時の警告やアドバイスを行ったりしている。これらの技術は、被検者に運転の資質があることを前提としており、そもそも被検者における運転の資質に関する判断は行われていない。
【0006】
本発明は、睡眠中の生体データに基づいて被検者の運転の資質を判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被検者の睡眠中の生体データを取得する生体データ取得手段と、前記被検者の属性情報を取得する属性情報取得手段と、睡眠中の生体データに関わらず運転の資質がない運転不適合者の睡眠中の生体データである不適合者生体データを記憶手段から取得する不適合者生体データ取得手段と、前記被検者の睡眠中の生体データ、当該被検者の属性情報、および、前記不適合者生体データから、当該被検者の運転の資質を判定する判定手段と、を有することを特徴とする、運転資質判定システムである。
請求項2に記載の発明は、被検者の睡眠中の生体データを取得する生体データ取得手段と、前記被検者の属性情報を取得する属性情報取得手段と、運転の資質がない運転不適合者の睡眠中の生体データである不適合者生体データを記憶手段から取得する不適合者生体データ取得手段と、前記被検者の睡眠中の生体データ、当該被検者の属性情報、および、前記不適合者生体データから、当該被検者の運転の資質を判定する判定手段と、を有し、前記判定手段は、前記被検者の睡眠中の生体データと前記不適合者生体データとの差異が予め定められた第1閾値よりも小さい場合、当該被検者の運転の資質を不適合と判定することを特徴とする、運転資質判定システムである。
請求項3に記載の発明は、前記判定手段は、前記被検者の睡眠中の生体データと前記不適合者生体データとの差異が前記第1閾値よりも大きい場合であっても、当該第1閾値とは異なる予め定められた第2閾値よりも小さく、かつ、当該被検者の属性情報が予め定められた不適合条件を満足する場合、当該被検者の運転の資質を不適合と判定することを特徴とする、請求項2に記載の運転資質判定システムである。
請求項4に記載の発明は、被検者の睡眠中の生体データを取得する生体データ取得手段と、前記被検者の属性情報を取得する属性情報取得手段と、運転の資質がない運転不適合者の睡眠中の生体データである不適合者生体データを記憶手段から取得する不適合者生体データ取得手段と、前記被検者の睡眠中の生体データ、当該被検者の属性情報、および、前記不適合者生体データから、当該被検者の運転の資質を判定する判定手段と、を有し、前記判定手段は、前記被検者の睡眠中の生体データと前記不適合者生体データとの差異が予め定められた特定の閾値よりも小さく、かつ、当該被検者の属性情報が予め定められた不適合条件を満足する場合、当該被検者の運転の資質を不適合と判定することを特徴とする、運転資質判定システムである。
請求項5に記載の発明は、前記判定手段は、前記被検者の睡眠中の生体データと前記不適合者生体データとの差異が前記特定の閾値よりも小さく設定された閾値に対してさらに小さい場合、当該被検者の属性情報が前記不適合条件を満足するか否かに関わらず、当該被検者の運転の資質を不適合と判定することを特徴とする、請求項4に記載の運転資質判定システムである。
請求項6に記載の発明は、被検者の睡眠中の生体データを取得する生体データ取得手段と、前記被検者の属性情報を取得する属性情報取得手段と、運転の資質がない運転不適合者の睡眠中の生体データである不適合者生体データを記憶手段から取得する不適合者生体データ取得手段と、前記被検者の睡眠中の生体データ、当該被検者の属性情報、および、前記不適合者生体データから、当該被検者の運転の資質を判定する判定手段と、を有し、前記被検者の認知機能に異常が生じているか否かを判定する予備判定手段をさらに備え、前記判定手段は、前記予備判定手段により前記被検者の認知機能に異常が生じていると判定された場合に、当該被検者の運転の資質を判定することを特徴とする、運転資質判定システムである。
請求項7に記載の発明は、コンピュータに、被検者の睡眠中の生体データを取得する機能と、前記被検者の属性情報を取得する機能と、睡眠中の生体データに関わらず運転の資質がない運転不適合者の睡眠中の生体データである不適合者生体データを記憶手段から取得する機能と、前記被検者の睡眠中の生体データ、当該被検者の属性情報、および、前記不適合者生体データから、当該被検者の運転の資質を判定する機能と、を実現させることを特徴とする、プログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、睡眠中の生体データに基づいて被検者の運転の資質を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態による運転資質判定システムの全体構成を示す図である。
【
図3】判定サーバの処理装置による判定処理の動作を示すフローチャートである。
【
図4】判定サーバの認知機能判定部による判定結果の出力例を示す図であり、
図4(A)は、被検者の認知機能に異常が検知された場合の出力例を示す図、
図4(B)は、被検者の認知機能に異常が検知されなかった場合の出力例を示す図である。
【
図5】判定サーバの運転資質判定部による判定結果の出力例を示す図であり、
図5(A)は、被検者の運転資質が不適合と判定された場合の出力例を示す図、
図5(B)は、被検者の運転資質が適合と判定された場合の出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<システム構成>
図1は、本実施形態による運転資質判定システムの全体構成を示す図である。本実施形態の運転資質判定システムは、生体データ取得装置100と、判定サーバ200と、端末装置300とを備える。各装置は、ネットワーク400を介して接続されている。なお、
図1には、一つの生体データ取得装置100が記載されているが、生体データ取得装置100は、通常、被検者ごとに設けられるため複数となる。また、
図1には、一つの端末装置300が記載されているが、複数の端末装置300がシステムに存在しても良い。
【0011】
端末装置300は、判定サーバ200に対して判定処理の実行を指示したり、判定サーバ200による判定結果を受信して表示したりする装置である。端末装置300としては、例えば、スマートフォン等の携帯型情報端末や、パーソナルコンピュータ(PC)等が用いられる。
【0012】
ネットワーク400は、各システム間のデータ通信に用いられる通信ネットワークであれば良く、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等が用いられる。ネットワーク400の通信方式、通信基盤等の種類や構成は特に限定されない。ネットワーク400においてデータ通信に用いられる通信回線は、有線か無線かを問わず、これらを併用しても良い。
【0013】
<生体データ取得装置の構成>
生体データ取得装置100は、被検者の睡眠中の生体データを取得する装置である。ここで、被検者とは、運転資質判定システムの利用者であり、運転資質の判定対象の人物である。
図1に示すように、生体データ取得装置100は、生体データを取得するセンサであるベッドセンサ110と、ベッドセンサ110により取得された生体データを判定サーバ200へ送信するための通信装置120とを備える。
【0014】
ベッドセンサ110は、被検者の体動に関するデータを非接触で測定可能なセンサを用いて構成される。一例として、ベッドセンサ110として、寝具の下に敷いて使用するマット型のセンサを用いても良い。具体的には、ベッドセンサ110は、導電性の生地と複数個の圧電素子によって構成され、周期的な微振動を検知するようにしても良い。また、ベッドセンサ110には、マイクロ波ドップラーレーダー等を使用しても良い。ベッドセンサ110は、生体データとして、例えば脈拍、呼吸数、寝返り等の体動を検知する。もっとも、体動を検知できれば、ベッドセンサ110は、マット型のセンサやマイクロ波ドップラーレーダーを用いた構成に限らない。例えば、ベッドセンサ110として、スマートフォンを代用してもよい。例えば、スマートフォン用のアプリケーション・プログラムとして、スマートフォンに内蔵された加速度センサの出力を用いて、被検者の睡眠時間や睡眠サイクル等を計測できるものが存在しており、これを用いて生体データを取得することも考えられる。なお、ベッドセンサ110は、被検者の睡眠中の生体データの他、被検者がベッドに入ったか否か、ベッドから出たか否か等の被検者の動作を検知するようにしても良い。
【0015】
通信装置120は、ネットワーク400に接続して判定サーバ200との間で通信を行う装置である。通信装置120は、ネットワーク400に接続するためのネットワーク・インターフェイスを備える。通信装置120は、ベッドセンサ110により取得されたデータを収集し、予め定められた通信プロトコルにしたがって、例えば定期的に判定サーバ200へ送信する。なお、生体データ取得装置100は、生体データを、通信装置120により直接、判定サーバ200へ送信しても良いし、エッジサーバのような外部装置による中継を経て判定サーバ200へ送信するようにしても良い。後者の場合、通信装置120は、単にベッドセンサ110が取得した生体データを外部装置へ出力する機能のみを有し、通信プロトコルにしたがった通信制御や生体データの送信タイミングの制御等は外部装置が行うようにしても良い。
【0016】
<判定サーバの構成>
図2は、判定サーバ200の構成を示す図である。判定サーバ200は、生体データ取得装置100から被検者の睡眠中の生体データを取得し、被検者の運転資質を判定するサーバである。
図2に示すように、判定サーバ200は、記憶装置210と、処理装置220と、通信装置230とを備える。
【0017】
記憶装置210は、判定処理に用いられるデータやプログラムを記憶する装置であり、例えば磁気ディスク装置や不揮発性半導体メモリ等で実現される。
図2に示すように、記憶装置210には、生体データ・データベース(DB)211と、属性情報データベース(DB)212と、不適合者生体データ・データベース(DB)213とが構築されている。
【0018】
生体データDB211には、生体データ取得装置100により取得された被検者の睡眠中の生体データが登録される。生体データは、生体データ取得装置100から受信するたびに追加され蓄積される。
【0019】
属性情報DB212には、被検者の属性情報が予め登録されている。属性情報には、主として被検者の運転資質に関連する情報が含まれるが、必ずしも運転資質に関連する情報のみに限定しない。例えば、年齢、性別、身長、体重、持病、服薬状況、過去の運転歴、事故歴等の情報が属性情報として登録される。属性情報は、例えば、被検者の自己申告により得られた情報であっても良いし、アクセス権限が与えられていれば、持病や服薬状況については医療機関のデータベースから、運転歴や事故歴については警察署のデータベースから読み出して登録しても良い。
【0020】
不適合者生体データDB213には、不適合者生体データが予め登録されている。不適合者生体データとは、予め運転不適合者と認定された対象者の睡眠中の生体データに関する情報である。不適合者生体データとしては、例えば、医療機関等において患者の睡眠中の生体データを検出することで得られたデータが用いられる。運転不適合者としては、例えば、軽度認知障害者、認知症患者、注意欠陥多動性障害者等と診断された対象者等が該当する。生体データは、上述した被検者の生体データと同様である。なお、不適合者生体データDB213は、クラウドサーバやネットワーク上に設けられた外部のデータベースサーバ等として実現しても良い。
【0021】
処理装置220は、判定処理を実行する装置であり、演算手段としてのCPU(Central Processing Unit)、作業用メモリとして用いられるRAM(Random Access Memory)、BIOS(Basic Input/Output System)等のプログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)を備える。
図2に示すように、処理装置220は、認知機能判定部221と、運転資質判定部222とを備える。処理装置220において、CPUが記憶装置210に格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、認知機能判定部221および運転資質判定部222の機能が実現される。処理装置220は、判定処理として、被検者の認知機能に対する予備的な判定と、被検者の運転資質に関する判定の2段階の処理を行う。処理装置220は、生体データ取得手段、属性情報取得手段および不適合者生体データ取得手段の一例である。
【0022】
認知機能判定部221は、被検者の認知機能に異常が生じている可能性があるか否かを判定する。すなわち、認知機能判定部221は、被検者の認知機能に対する予備的な判定を行う。認知機能判定部221による判定は、後述する運転資質判定部222による判定とは異なり、不適合者との比較ではなく、被検者のデータや情報自体の特徴に基づいて行われる。例えば、生体データDB211に保持されている被検者の睡眠中の生体データが認知機能の変調を招く可能性のあるものである場合、認知機能判定部221は、被検者の認知機能に異常が生じている可能性があると判定する。認知機能の変調を招く可能性のある生体データとしては、例えば、就寝時間と起床時間、睡眠時間の長さ、睡眠深度、中途覚醒の回数等のパターンが平常時の平均的なパターンとは異なる場合等が挙げられる。また、属性情報DB212に保持されている被検者の属性情報に認知機能の変調が疑われる情報が含まれている場合、認知機能判定部221は、被検者の認知機能に異常が生じている可能性があると判定する。認知機能の変調に関わる属性情報としては、例えば、持病や服薬状況の変化、事故の傾向等が挙げられる。また、上記のようなデータの他、被検者に簡易的な認知能力の判定テストを実施し、その結果に基づいて判定を行うようにしても良い。認知機能判定部221は、予備判定手段の一例である。
【0023】
運転資質判定部222は、被検者の睡眠中の生体データ、属性情報および不適合者生体データに基づき、被検者の運転の資質の有無を判定する。すなわち、運転資質判定部222は、被検者の運転資質に関する判定を行う。運転資質判定部222は、判定手段の一例である。運転資質判定部222は、まず、被検者の睡眠中の生体データと運転不適合者の睡眠中の生体データとを比較し、両データの対応する項目間の差異が予め定められた第1閾値以下か否かを判定する。両データの差異は、例えば、対応する項目において予め定められた特徴量(の値)の差異により特定される。両データの差異が第1閾値以下である場合、運転資質判定部222は、被検者の運転資質を不適合と判定する。被検者の運転資質が不適合であるとは、判定サーバ200の判定において、被検者が自動車の運転を避けた方が良いと判断されることを言う。
【0024】
また、運転資質判定部222は、被検者の生体データと運転不適合者の生体データとの差異が第1閾値を超えている場合であっても、第1閾値よりも大きい値で予め定められた第2閾値以下である場合、属性情報を加味した判定を行う。すなわち、運転の資質に関連する属性情報において、運転の資質が低い傾向がある場合、運転資質判定部222は、被検者の運転資質を不適合と判定する。属性情報において運転の資質が低い傾向がある場合としては、例えば、持病において特定の症状がある場合や事故歴が多い場合等が挙げられる。属性情報に基づく判定は、例えば、属性情報の内容に関して予め運転資質を不適合と判定するための条件(以下、不適合条件と呼ぶ)を設定しておき、被検者の属性情報が不適合条件を満足するか否かを判定するようにしても良い。
【0025】
被検者の生体データと運転不適合者の生体データとの差異が第2閾値を超えている場合、および、両データの差異が第2閾値以下であっても属性情報において運転の資質が低い傾向がない場合、運転資質判定部222は、被検者の運転資質を適合と判定する。被検者の運転資質が適合であるとは、判定サーバ200の判定において、被検者が自動車を運転しても良いと判断されることを言う。
【0026】
言い換えると、運転資質判定部222は、被検者の睡眠中の生体データと不適合者生体データとの差異が予め定められた特定の閾値よりも小さく、かつ、被検者の属性情報が不適合条件を満足する場合、被検者の運転の資質を不適合と判定する。ここで、特定の閾値とは、上述した第2閾値である。そして、運転資質判定部222は、被検者の睡眠中の生体データと不適合者生体データとの差異が、この特定の閾値よりも小さく設定された閾値に対してさらに小さい場合、被検者の属性情報が不適合条件を満足するか否かに関わらず、被検者の運転の資質を不適合と判定する。ここで、特定の閾値よりも小さく設定された閾値とは、上述した第1閾値である。
【0027】
処理装置220は、以上のようにして得られた判定結果を判定サーバ200の外部の出力対象装置へ出力する。出力対象装置としては、例えば、被検者が所持する端末装置300や被検者の家族等が所持する端末装置300が挙げられる。被検者本人以外の端末装置300への出力は、運転の資質が不適合と判定された場合に限定しても良い。
【0028】
通信装置230は、ネットワーク400に接続して生体データ取得装置100や端末装置300との間で通信を行う装置である。通信装置230は、ネットワーク400に接続するためのネットワーク・インターフェイスを備える。通信装置230は、生体データ取得装置100から被検者の睡眠中の生体データを受信する。また、通信装置230は、被検者に対する運転資質の判定結果を端末装置300へ送信する。なお、生体データ取得装置100により取得された生体データがエッジサーバにより収集される場合、通信装置230は、このエッジサーバから生体データを受信する。また、不適合者生体データDB213が判定サーバ200の外部に設けられている場合、通信装置230は、この外部のデータベースから不適合者生体データを受信する。
【0029】
<判定サーバの処理装置の動作>
図3は、判定サーバ200の処理装置による判定処理の動作を示すフローチャートである。なお、運転資質の判定を行う対象である被検者に対しては、事前に、生体データ取得装置100を使用して睡眠中の生体データが取得され、生体データDB211に記録されているものとする。また、この動作例では、認知機能判定部221による認知機能の判定は、被検者の生体データおよび属性情報に基づいて行われるものとする。
【0030】
まず、処理装置220が、生体データDB211から被検者の生体データを読み出し、属性情報DB212から被検者の属性情報を読み出す(S301)。そして、認知機能判定部221が、読み出した生体データおよび属性情報に基づき、被検者の認知機能の判定を行う(S302)。認知機能判定部221により被検者の認知機能の異常が検知されなければ、被検者の運転資質に問題はないとして、処理装置220による判定処理が終了する(S303でNO)。
【0031】
一方、認知機能判定部221により被検者の認知機能の異常が検知された場合(S303でYES)、次に、処理装置220は、不適合者生体データDB213から不適合者生体データを読み出す(S304)。そして、運転資質判定部222が、被検者の生体データと運転不適合者の生体データとを比較する(S305)。被検者の生体データと運転不適合者の生体データとの差異が第1閾値以下である場合(S306でYES)、運転資質判定部222は、被検者の運転資質が不適合と判定する(S307)。
【0032】
これに対し、被検者の生体データと運転不適合者の生体データとの差異が第1閾値よりも大きく、第2閾値以下である場合(S306でNO、S308でYES)、次に運転資質判定部222は、被検者の属性情報を参酌する。被検者の属性情報が予め定められた不適合条件を満足する場合(S309でYES)、運転資質判定部222は、被検者の運転資質が不適合と判定する(S307)。
【0033】
被検者の生体データと運転不適合者の生体データとの差異が第2閾値よりも大きい場合(S308でNO)、および、被検者の属性情報が不適合条件を満足しない場合(S309でNO)、運転資質判定部222は、被検者の運転資質が適合と判定する(S310)。
【0034】
<判定結果の出力例>
次に、判定サーバ200による判定結果の出力例を示す。判定結果は、判定サーバ200から端末装置300へ送られる。そして、例えば、端末装置300に設けられた表示手段(液晶ディスプレイ等)の画面に表示される。
【0035】
図4は、判定サーバ200の認知機能判定部221による判定結果の出力例を示す図である。
図4(A)は、被検者の認知機能に異常が検知された場合の出力例を示す図、
図4(B)は、被検者の認知機能に異常が検知されなかった場合の出力例を示す図である。認知機能判定部221が被検者の認知機能に異常があると判定した場合、
図4(A)に示すように、端末装置300の表示部310には、認知機能に異常が検知されたという判定結果を通知するメッセージが表示される。図示の例では、「認知機能に異常が検知されました。適合判定を行うことをお勧めします。」というメッセージが表示されている。また、この通知画面には、指示ボタン311と、終了ボタン312とが表示されている。
【0036】
指示ボタン311は、運転資質判定部222による判定を行うことを判定サーバ200に指示するためのボタンオブジェクトである。この指示ボタン311が選択されると、端末装置300から判定サーバ200へ、運転資質判定部222による判定の実行要求が送信される。判定サーバ200は、この実行要求を受信すると、運転資質判定部222による判定処理を実行する。
【0037】
終了ボタン312は、判定サーバ200による判定処理を終了するためのボタンオブジェクトである。この終了ボタン312が選択されると、端末装置300から判定サーバ200へ、判定処理の終了要求が送信され、端末装置300による判定サーバ200へのアクセスが切断される。判定サーバ200は、この終了要求を受信すると、被検者に対する判定処理を終了する。
【0038】
また、認知機能判定部221が被検者の認知機能に異常がないと判定した場合、
図4(B)に示すように、端末装置300の表示部310には、認知機能の異常がないという判定結果を通知するメッセージが表示される。図示の例では、「認知機能に異常はありません。」というメッセージが表示されている。この通知画面には、終了ボタン312が表示されており、この終了ボタン312が選択されると、判定処理が終了し、端末装置300による判定サーバ200へのアクセスが切断される。
【0039】
図5は、判定サーバ200の運転資質判定部222による判定結果の出力例を示す図である。
図5(A)は、被検者の運転資質が不適合と判定された場合の出力例を示す図、
図5(B)は、被検者の運転資質が適合と判定された場合の出力例を示す図である。運転資質判定部222が被検者の運転資質が不適合と判定した場合、
図5(A)に示すように、端末装置300の表示部310には、不適合という判定結果を通知するメッセージが表示される。図示の例では、「運転資質が不適合と判定されました。自動車の運転を控えてください。」というメッセージが表示されている。この通知画面には、終了ボタン312が表示されており、この終了ボタン312が選択されると、判定処理が終了し、端末装置300による判定サーバ200へのアクセスが切断される。
【0040】
また、運転資質判定部222が被検者の運転資質が適合と判定した場合、
図5(B)に示すように、端末装置300の表示部310には、適合という判定結果を通知するメッセージが表示される。図示の例では、「運転資質が適合と判定されました。」というメッセージが表示されている。この通知画面には、終了ボタン312が表示されており、この終了ボタン312が選択されると、判定処理が終了し、端末装置300による判定サーバ200へのアクセスが切断される。
【0041】
なお、上記の出力例では、端末装置300として被検者自身や被検者の家族等が所持する情報端末を想定したが、判定サーバ200による判定結果を利用し得る様々な情報処理装置に対して判定結果を出力しても良い。例えば、運転免許の試験場や警察署に端末装置300としての情報処理装置を設置しても良い。この場合、運転免許証の交付時や更新時に、交付や更新の対象者を被検者として判定サーバ200による判定を実行し、判定結果を端末装置300に出力しても良い。更新対象者に対して運転資質が不適合との判定結果が得られた場合、例えば、運転免許証の返納等の提案を行い得る。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の実施形態では、判定サーバ200の処理装置220は、認知機能判定部221により被検者の認知機能を判定した後、判定結果に応じて、運転資質判定部222により運転資質の判定を行った。これに対し、認知機能判定部221の判定結果に関わらず運転資質判定部222による判定を行っても良いし、認知機能判定部221による判定を行わずに運転資質判定部222による判定を行っても良い。また、運転資質判定部222は、第1閾値を用いた判定のみを行い、被検者の生体データが不適合者生体データに対して第1閾値よりも大きい差異を有する場合は適合と判定するようにしても良い。反対に、運転資質判定部222は、第1閾値を用いた判定を行わず、被検者の生体データと不適合者生体データとの差異が第2閾値以下である場合は全て、属性情報を用いた判定を行うようにしても良い。
【0043】
また、判定サーバ200は、上述した記憶装置210、処理装置220および通信装置230を全て備え、ネットワーク上に構築された単一のサーバマシンにより実現しても良いし、いわゆるクラウドサーバ等として、各機能を複数のサーバに分散して実現しても良い。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
100…生体データ取得装置、110…ベッドセンサ、120…通信装置、200…判定サーバ、210…記憶装置、211…生体データ・データベース(DB)、212…属性情報データベース(DB)、213…不適合者生体データ・データベース(DB)、220…処理装置、221…認知機能判定部、222…運転資質判定部、230…通信装置、300…端末装置、400…ネットワーク