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特許7241396水田用水位調整装置及び水田の水位調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】水田用水位調整装置及び水田の水位調整方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
A01G25/00 501A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019097573
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020191786
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】511095089
【氏名又は名称】アゼックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145078
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】川田 勝儀
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136879(JP,A)
【文献】特開2011-160685(JP,A)
【文献】登録実用新案第3204524(JP,U)
【文献】実開昭63-001031(JP,U)
【文献】実開昭54-147023(JP,U)
【文献】特開2016-151164(JP,A)
【文献】実開昭62-159531(JP,U)
【文献】特開2016-148136(JP,A)
【文献】特開2008-043241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水穴を設けた後壁板及び内面に縦方向のガイド溝を形成した一対の側壁板を底板に平面視で略冂字状に立設してなる桝本体と、上端側に係止部を有し、前記一対の側壁板のガイド溝に昇降可能に挿嵌した止水板と、下端側に該止水板の係止部に係合する係合部を有し、上部側に水位調整口を有する構成からなり、前記ガイド溝に昇降可能に挿嵌した水位調整板と、前記止水板の横幅方向両端面又は前記各ガイド溝の溝面に固着し、該止水板の昇降動を確保しつつ前記桝本体内に水、泥その他の異物が流入するのを阻止する止水パッキングと、前記止水板と前記ガイド溝の溝面との間に配設し、該止水板を前記水位調整板に圧接させる弾性押圧体とから構成してなる水田用水位調整装置。
【請求項2】
前記水位調整板は、裏面に前記桝本体の各側壁板に滑合する横振れ防止用縦リブを設けてあることを特徴とする請求項1記載の水田用水位調整装置。
【請求項3】
前記止水板に固着した止水パッキングは、前記水位調整板の横幅方向両端面も覆う形状からなることを特徴とする請求項1記載の水田用水位調整装置。
【請求項4】
前記止水パッキングは、無数の弾性短繊維が絡まることで微細孔が形成されたパイル状のものをテープ上面に固着したものである請求項1記載の水田用水位調整装置。
【請求項5】
前記止水パッキングは、弾性体であるゴム、スポンジ又はシリコンである請求項1記載の水田用水位調整装置。
【請求項6】
前記水位調整板は、前記水位調整口より上側の上端中央に昇降操作体を設けてあることを特徴とする請求項1記載の水田用水位調整装置。
【請求項7】
排水穴を有する後壁板と内面に縦方向のガイド溝を形成した一対の側壁板を底板に平面視で略冂字状に立設してなる桝本体に、上端側に係止部を有する止水板を前記ガイド溝に昇降可能に挿嵌して設け、下端側に該止水板の前記係止部に係合する係合部を有し、上部側に水位調整口を有する水位調整板を前記ガイド溝に昇降可能に挿嵌して構成した水田用水位調整装置を用い、前記止水板の幅方向両端面又は前記ガイド溝の溝面に固着した止水パッキングによって、該止水板の昇降動を確保しつつ前記桝本体内に水、泥その他の異物が侵入するのを阻止し、前記止水板と前記ガイド溝の溝面との間に配設した弾性押圧体によって該止水板を前記水位調整板に圧接させるようにした水田の水位調整方法。
【請求項8】
前記止水板に固着した止水パッキングは、前記水位調整板の横幅方向両端面も覆う形状からなることを特徴とする請求項7記載の水田の水位調整方法。
【請求項9】
前記止水パッキングは、無数の弾性短繊維が絡まることで微細孔が形成されたパイル状のものをテープ上面に固着したものである請求項7記載の水田の水位調整方法。
【請求項10】
前記止水パッキングは、弾性体であるゴム、スポンジ又はシリコンである請求項7記載の水田の水位調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水位調整板の高さ位置の設定に止水パッキングとばねを利用することにより、高齢者でも水位調整作業を容易に、また遠隔操作や自動化に対応出来るようにした水田用水位調整装置及び水田の水位調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水田は、稲の生育時期に応じて水位を調整することで水の温度管理を行うために、また豪雨時には大量の水を放出するために、水田の畔に水位調整装置を設置している。水位調整装置には種々のものがあるが、一例として、桝本体内に土圧を受ける受圧板と、桝本体に昇降可能に設け、受圧板が圧接することで高さ位置が規制される水位調整板とから大略構成した水位調整装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】第4817159号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、年々農業従事者が高齢化し、また就業人口が減少していることから、水田の水位管理作業における身体的負担を軽減し、また作業の効率化を図ることが求められる。しかし、従来の水位調整装置は、水位調整板に圧接してその高さの位置決めをする受圧板は水分を含んだ粘性のある土(以下、土と称する。)で加圧すると共に、漏水を防止していることから、水位調整板の高さを変える場合には、受圧板の前の土を取り除いて受圧板の水位調整板への押圧力を軽減する作業が必要であり、高さ調整の後は漏水防止のために土の埋戻し作業が必要であった。
【0005】
上述した受圧板に土圧を掛ける従来の方法は、水分を含んでいる土の重さと、粘着性があり、粘着性は水分の含有率によって異なることから昇降動に必要な土圧が一定でないため、水位調整板の上下の調整を円滑に行うことが出来ないという問題がある。しかも調整作業を行うのは水田や畦で足場が悪いために、土を取り除き、埋め戻す作業には大きな身体的負担と時間を要するし、水田毎に水位調整作業を行う必要があることから、作業の効率化が求められている。
【0006】
また、近年水位調整の遠隔操作或いは自動化を可能にする水位調整装置の機械化が検討され、試作機も提案されているが、水位調整板の昇降機構に水田水に混入している稲わら、稲茎、根等の雑物が係着して作動不良を招くという問題も生じている。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みなされたもので、土圧に替えて、止水パッキングとばねを利用することにより、大きな力を使うことなく水位調整作業の負担の軽減と効率化を図ることができ、また水位調整の遠隔操作や自動化に対応可能な水田用水位調整装置及び水田の水位調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述した課題を解決するために構成した請求項1に係る本発明の手段は、排水穴を設けた後壁板及び内面に縦方向のガイド溝を形成した一対の側壁板を底板に平面視で略冂字状に立設してなる桝本体と、上端側に係止部を有し、前記一対の側壁板のガイド溝に昇降可能に挿嵌した止水板と、下端側に該止水板の係止部に係合する係合部を有し、上部側に水位調整口を有する構成からなり、前記ガイド溝に昇降可能に挿嵌した水位調整板と、前記止水板の横幅方向両端面又は前記各ガイド溝の溝面に固着し、該止水板の昇降動を確保しつつ前記桝本体内に水、泥その他の異物が流入するのを阻止する止水パッキングと、前記止水板と前記ガイド溝の溝面との間に配設し、該止水板を前記水位調整板に圧接させる弾性押圧体とからなる。
(2)そして、前記水位調整板は、裏面に前記桝本体の各側壁面に滑合する横振れ防止用縦リブを設けるとよい。
(3)また、前記止水板に固着した前記止水パッキングは、前記水位調整板の横幅方向両端面も覆う形状にするとよい。
(4)更に、前記止水パッキングは、無数の弾性短繊維が絡まることで微細孔が形成されたパイル状のものをテープ上面に固着したものであるとよい。
(5)前記止水パッキングは、弾性体であるゴム、ウレタン又はシリコンでもよい。
(6)前記水位調整板は、前記水位調整口より上側の上端中央に昇降操作体を設けるとよい。
(7)また、請求項7に係る本発明の構成は、排水穴を有する後壁板と内面に縦方向のガイド溝を形成した一対の側壁板を底板に平面視で略冂字状に立設してなる桝本体に、上端側に係止部を有する止水板を前記ガイド溝に昇降可能に挿嵌して設け、下端側に該止水板の前記係止部に係合する係合部を有し、上部側に水位調整口を有する水位調整板を前記ガイド溝に昇降可能に挿嵌して構成した水田用水位調整装置を用い、前記止水板の幅方向両端面又は前記ガイド溝の溝面に固着した止水パッキングによって、該止水板の昇降動を確保しつつ前記桝本体内に水、泥その他の異物が侵入するのを阻止し、前記止水板と前記ガイド溝の溝面との間に配設した弾性押圧体によって該止水板を前記水位調整板に圧接させるようにしたことにある。
(8)そして、前記止水パッキングは、前記止水板に設けた状態で前記水位調整板の横幅方向両端面も覆う形状にするとよい。
(9)前記止水パッキングは、無数の弾性短繊維が絡まることで微細孔が形成されたパイル状のものをテープ上面に固着したものであるとよい。
(10)また、前記止水パッキングは、弾性体であるゴム、ウレタン又はシリコンでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)水位調整板は、従来の土圧に変えて止水パッキングと弾性押圧体により高さ位置を調整するようにしたから、水位調整時に従来行っていた土の除去と埋め戻し作業が不要になり、調整作業の負担を軽減できるし、作業効率を高めることができる。
(2)水位調整板の裏面には、幅方向両端側に位置して桝本体の側壁板に滑合する左右一対の横振れ防止用縦リブを設け、水位調整板が水圧等の外力を受けても大きく傾くことがないようにしたから、水位調整板は円滑に昇降動することができ、自動化の要請にも対応することができる。
(3)止水板に固着する止水パッキングは止水板の端面だけでなく、水位調整板の横幅方向端面も覆う形状にしたから、止水板及び水位調整板と桝本体のガイド溝との間から浸水するのを効果的に防止できる。
(4)止水板の上端側に係止部を、水位調整板の下端側に係合部を設けて互いに係合するようにしたから、水位調整板を引上げるだけで止水板も一体に最大限引上げることができるので、溝切り排水の作業を効率的に行うことが出来る。
(5)止水板と桝本体のガイド溝との間に設ける止水パッキングは、無数の弾性短繊維が絡まることで微細孔が形成されたパイル状のものであるから、微細孔に土の粒子が詰まることで水田水が桝本体側に流失するのを抑制できる。
(6)止水パッキングの微細孔に詰まった土の粒子は、粒子同士が結合して固化することがないから、止水パッキングは弾性を損なうことがなく止水板は昇降動することができる。
(7)止水板の横幅方向両端側と各ガイド溝の溝面との間に弾性押圧体を配設することにより、止水板を水位調整板に左右均等に圧接させるようにしたから、水位調整板が自重で降下する事態を防止することができるし、止水板の傾きが無いのでガイド溝からの漏水を防止できる。
(8)昇降操作体は水位調整板の上端中央に設けたから、水田水中に混入している稲わら、稲茎、根等の雑物が昇降操作体に絡まることもないので、手動或いは自動化による水位調整を円滑に行うことができるし、雑物の除去作業も殆ど不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の実施の形態に係る水田用水位調整装置の全体斜視図である。
図2】水位調整装置の縦断面図である。
図3】水位調整板の背面斜視図である。
図4】止水板と水位調整板を挿嵌した状態の部分前面斜視図である。
図5】止水板と水位調整板を挿嵌した状態の部分背面斜視図である。
図6】桝本体のガイド溝に止水板と水位調整板を挿嵌した状態の部分拡大図である。
図7】止水板に固着した止水パッキングの部分断面図である。
図8】水位調整板を最大限下降させた状態の説明図である。
図9】止水板と水位調整板を最大限引き上げた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づき詳述する。図において、1は水田用水位調整装置(以下、水位調整装置1と称する。)を示し、コンクリート、合成樹脂或いはこれらを複合して構成してある。2は該水位調整装置1を構成する桝本体で、該桝本体2は底板2Aと、底板2Aの幅方向両端に起立した一対の側壁板2B、2Bと、該一対の側壁板2B、2Bに幅方向両端を連結して前記底板2Aの後端に起立した後壁板2Cと、該後壁板2Cに設けた直径150mmの排水穴2Dと、前記一対の側壁板2B、2Bの内面に対向して縦方向に設けたガイド溝2Eと、該ガイド溝2Eの下端に連続して前記底板2Aの上面に設けた受け溝2Fとから構成してある。そして、両側壁板2B、2Bの外面には凹部2G、2Gが形成してあり、鼠や害虫が畔から水田内に侵入するのを抑制している。
【0012】
3は桝本体2の略下半分に配設する止水板で、該止水板3は平板からなる板本体3Aと、該板本体3Aの上端側に後方に突設した係止突部3Bと、板本体3Aの下端に後方に突設した溝嵌合部3Cとから構成してある。そして、止水板3は、幅方向両端側をガイド溝2E、2Eに嵌入し、溝嵌合部3Cを受け溝2Fに嵌合した状態で桝本体2に組付けてあり、かつガイド溝2E、2Eに案内されて昇降可能になっている。
【0013】
4は前記止水板3の上方に位置して桝本体2に昇降可能に挿装した水位調整板を示す。該水位調整板4は平板からなる板本体4Aと、該板本体4Aの下端側に前向きに突設し、前記係止突部3Bと係脱する係合突部4Bと、板本体4Aの上部側に開口形成した四角形の水位調整口4Cと、板本体4Aの裏面に幅方向両端側に位置して設けた左右一対の横振れ防止用縦リブ4D、4Dと、板本体4Aの裏面に上下に離間して横設した一対の補強リブ4E,4Eとから構成してある。
上述の構成からなる水位調整板4は、幅方向両端側をガイド溝2E、2Eに昇降可能に挿嵌して桝本体2に組付けてあり、左右一対の縦リブ4D、4Dは図6に示すように桝本体2の側壁板2B内面に滑合することで、大きく傾くのを防止している。
【0014】
このように、水位調整板4は、裏面に左右一対の横振れ防止用縦リブ4D、4Dを設け、若干傾いても桝本体2の側壁板2Bに滑合して大きく傾くのを防止するようにしたから、水位調整板4は円滑に昇降動することができるので手動による操作も楽であるし、自動化の要請にも対応することができる。
また、水位調整板4は、上下に離間して補強リブ4E、4Eを設けてあり、水位調整板4が水圧によって平面視で突湾曲状に撓むのを防止しているから、水位調整板4の横幅方向端面4Fがガイド溝2Eから浮いて隙間が大きくなるのを防止している。
【0015】
かくして、水位調整装置1は桝本体2と、桝本体2に挿嵌した止水板3及び水位調整板4から構成してあり、水位調整板4は係合突部4Bが止水板3の係止突部3Bに係合することで、止水板3を一体に引上げることができるようになっている。これにより、後述する溝切り排水の作業を効率良く行うことができる。
【0016】
5は前記止水板3の横幅方向の左、右端面3Cに固着した止水パッキングを示す。該止水パッキング5は合成樹脂製の無数の弾性短繊維を絡み合わせて無数の微細孔のあるパイル状に形成した本体5Aを、止水板3の板厚より幅広に形成したテープ状の基布5Bに固着したものからなる。
そして、止水パッキング5は止水板3の横幅方向の左、右端面3C、3Cに固着してあり、水位調整板4の左、右端面4D、4Dを覆う、或いは挟む幅広の大きさの形状に形成してある。これにより、水位調整板4は止水パッキング5によって昇降動が妨げられることは無く、かつ止水パッキング5が幅広であることでガイド溝2E内への水田水の浸入を可及的に防止するようにしてある。
【0017】
このような構成からなる止水パッキング5は、ガイド溝2Eと止水板3の端面3Cとの隙間を塞ぐものであるが、微細孔に土の粒子が詰まることで水田水が桝本体2内に流入するのを抑制でき、しかも短繊維の介在により土の粒子同士が結合して固化することがないので弾性を損なうことがないから、止水板3はガイド溝2に対して昇降動することができる。
しかも、止水パッキング5の微細孔に詰まった土粒子は、豪雨や大量放出時にはあたかも水洗されるように除去されるので、止水パッキング5が固化状態になることはない。
【0018】
なお、本発明において止水パッキングとしては、弾性体であるゴム、ウレタン又はシリコンを用いてもよいものである。
【0019】
6、6は止水板3の表面の横幅方向両端側で、高さ方向上端寄りに位置して設けた弾性押圧体としての左右一対の板ばねを示す。該各板ばね6は、図4に示すように、止水板3の円滑な昇降動が可能なように円弧状に形成した形状からなり、上端側6Aを止水板3にねじにより止着し、下端6Bは自由端にすることにより、板ばね6の弾性が損なわれないようにしてある。
そして、従来技術においては、受圧板に対して土圧により左右均等に押圧力を働かすことは、土の埋戻しを左右均等に行うことが事実上不可能なことから、水位調整板を引上げた際に左右の不均衡により受圧板と桝本体との間から水漏れ現象が生じていた。
しかし、本実施の形態では、左右均等の位置に配設した一対の板ばね6、6はばね力が同一であり、止水板3を水位調整板4に左右均一に押圧することができるので、上述のような水漏れ現象を可及的に抑制することできる。
【0020】
なお、板ばね6の止着方法には、ねじ止め方法の他に、止水板3に差込溝を形成して板ばね6の上端側を差込む方法、止水板3に形成したダボに板ばね6の穴を嵌め込む方法等適宜の方法がある。
【0021】
7は水位調整板4の上端中央に冂字型ブラケット7Aを介して立設した昇降用ねじロッドを示す。該昇降用ねじロッド7は、自動化装置を構成するもので、例えば電動モータで駆動するウオームギアと歯合させることにより、水位調整板4の高さ調整の自動化を可能にするものである。なお、ねじロッドに替えてラックを立設し、電動モータで駆動するピニオンを歯合させて昇降動する自動化装置に構成にしてもよい。
また、昇降用ねじロッド7は遠隔操作による駆動装置にも対応できるものである。
【0022】
本実施の形態は上述の構成からなるもので、次にその作用について説明する。水田の水位調整において、止水板3は桝本体2の下方に通常は位置させることで水田に水を貯えている。そして、水田の貯水量を増加し、或いは減少する場合は、水位調整板4を昇降させて水位の調整を行う。
【0023】
この水位調整作業において、従来は受圧板を押圧している土は、粘性や締固め状態により土圧の係り具合が異なるので、土の除去作業、水位調整板の昇降動に大きな力を必要とした。しかし、本実施の形態では、止水板3は止水パッキング5で桝本体2に支持させ、また板ばね6で止水板3を水位調整板4に左右均等に押圧する構成にしたから、水漏れ現象を抑制しつつ大きな力を加えることなく水位調整作業を行うことが可能であり作業者の身体的負担を軽減できる。
【0024】
そして、このように大きな力を必要としないから、例えば電動モータで水位調整板4を昇降操作することが可能であり、遠隔操作や自動化に対応した操作機構にできる。
【0025】
また、昇降用ねじロッド7は、水位調整板4の水位調整口4Cより上方の上端中央に設けたから、水田水に混入している稲わら、稲茎、根等の雑物が昇降操作体に絡まることもないので、手動或いは自動化による水位調整を円滑に行うことができるし、雑物の除去作業も殆ど不要にできる。
【0026】
また、止水板3の係止突部3Bは水位調整板4の係合突部4Bに係合する構成にしてあり、水位調整板4を引上げることで止水板3を同時に一体に引き上げることができるようにしてある(図9参照)。そこで、水田の底に端から端まで幅及び深さ約15cmの溝を掘り、水田水を桝本体2まで集水して大量の水を一挙に排水する溝切り排水時には、止水板3と水位調整板4を一体に最大限引き上げて排水路を大きく開放することで、排水穴2Dに直通させる水路を確保することで効率的に排水することができる。
【0027】
更に、水位調整板4を最大限下降させた状態でも、水位調整口4Cから水田水を流出させることができるので、水位調整口4Cも水位調整機能を有している。
【0028】
なお、本実施の形態では、止水パッキング5を止水板3の端面3Cに固着したが、各ガイド溝2Eの溝面に固着してもよいものである。
【符号の説明】
【0029】
1 水田用水位調整装置
2 桝本体
2A 底板
2B 側壁板
2C 後壁板
2D 排水穴
2E ガイド溝
3 止水板
3C 端面
4 水位調整板
4C 水位調整口
4D 縦リブ
5 止水パッキング
6 板ばね(弾性押圧体)
7 昇降用ねじロッド(昇降操作体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9