(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 5/00 20060101AFI20230310BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B60C19/00 C
(21)【出願番号】P 2018126820
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】榊原 一泰
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-127101(JP,A)
【文献】特開2003-048407(JP,A)
【文献】特開2013-043643(JP,A)
【文献】特開平04-365605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナによって構成されるタイヤ内面に取り付けられてタイヤ周方向に延びるスポンジからなる吸音部材と、
前記タイヤ内面と前記吸音部材との間に配置されてタイヤ周方向に延びるゴムからなる制振部材と
を備え、
前記制振部材は、空気入りタイヤのトレッド部、両側のビード部及び両側のサイドウォール部のタイヤ内面に取り付けられている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記制振部材は、タイヤ周方向全体に亘って配置されている、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記吸音部材は、タイヤ周方向全体に亘って取り付けられている、
請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記制振部材は、タイヤ内面を構成するインナーライナのゴムより損失正接(tanδ)が大きいゴムから形成されている、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記制振部材は、タイヤ径方向内面にタイヤ径方向外側に窪む凹部を備え、
前記制振部材と前記吸音部材との間に、前記凹部の内面と前記吸音部材のタイヤ径方向外面とによって区画される空洞部が形成されている、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記吸音部材は、タイヤ径方向内面にタイヤ周方向に離間して配置されてタイヤ径方向内側に突出する突部を備えている、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
インナーライナによって構成されるタイヤ内面に取り付けられてタイヤ周方向に延びるスポンジからなる吸音部材と、
前記タイヤ内面と前記吸音部材との間に配置されてタイヤ周方向に延びるゴムからなる制振部材と
を備え、
前記制振部材は、タイヤ径方向内面にタイヤ径方向外側に窪む凹部を備え、
前記制振部材と前記吸音部材との間に、前記凹部の内面と前記吸音部材のタイヤ径方向外面とによって区画される空洞部が形成されている、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が荒れた路面を走行するときや路面の継ぎ目を通過するときなどに生じるタイヤ接地面からの振動によってタイヤ内部の空気による空洞共鳴音が発生することが知られている。空洞共鳴音は、車室内の騒音の原因となることから、空洞共鳴音を抑制することが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、板状部材に複数の貫通孔とタイヤ周方向に延びる複数のスリットとを形成すると共に複数のスリットにタイヤ幅方向に延びる複数の円筒状の支持部材を挿通した後に、スリットに支持部材が挿通された板状部材をトレッド部のタイヤ内面に取り付けて、空洞共鳴音を抑制するようにした空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載のものは、板状部材に複数の貫通孔や複数のスリットを形成すると共にスリットに複数の支持部材を挿通させ、その後に板状部材をトレッド部のタイヤ内面に取り付けるものであり、タイヤ製造時の生産性の低下を引き起こし得る。
【0006】
そこで、本発明は、空洞共鳴音を抑制すると共に生産性の向上を図ることができる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インナーライナによって構成されるタイヤ内面に取り付けられてタイヤ周方向に延びるスポンジからなる吸音部材と、前記タイヤ内面と前記吸音部材との間に配置されてタイヤ周方向に延びるゴムからなる制振部材とを備え、前記制振部材は、空気入りタイヤのトレッド部、両側のビード部及び両側のサイドウォール部のタイヤ内面に取り付けられている空気入りタイヤを提供する。
【0008】
本発明によれば、タイヤ接地面からの振動がタイヤ内面と吸音部材との間に配置されたゴムからなる制振部材によって低減され、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の空気の振動による音が低減される。そして、この低減されたタイヤ内部の空気の振動による音がタイヤ内面に制振部材を介して取り付けられたスポンジからなる吸音部材を通過するときに低減されるので、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の空気の振動による音が共鳴してタイヤ内部に発生する空洞共鳴音を抑制することができる。
【0009】
また、タイヤ製造時に、タイヤ内面にゴムからなる制振部材とスポンジからなる吸音部材とを取り付けるだけで、空洞共鳴音を抑制することができるので、比較的容易に製造することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0010】
前記制振部材は、タイヤ周方向全体に亘って配置されていることが好ましい。
【0011】
本構成によれば、タイヤ周方向の一部に制振部材が配置される場合に比して、空洞共鳴音を有効に抑制することができる。
【0012】
前記吸音部材は、タイヤ周方向全体に亘って取り付けられていることが好ましい。
【0013】
本構成によれば、タイヤ周方向の一部に吸音部材が取り付けられる場合に比して、空洞共鳴音を有効に抑制することができる。
【0014】
前記制振部材は、タイヤ内面を構成するインナーライナのゴムより損失正接(tanδ)が大きいゴムから形成されていることが好ましい。
【0015】
本構成によれば、インナーライナのゴムより損失正接が大きいゴムから形成される制振部材を用いることで、制振部材によって振動エネルギを有効に吸収することができるので、制振部材によってタイヤ接地面からの振動を有効に低減させることができ、空洞共鳴音を有効に抑制することができる。
【0016】
前記制振部材は、タイヤ径方向内面にタイヤ径方向外側に窪む凹部を備え、制振部材と吸音部材との間に、凹部の内面と吸音部材のタイヤ径方向外面とによって区画される空洞部が形成されていてもよい。
【0017】
本構成によれば、制振部材と吸音部材との間に形成される空洞部によって、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の空気の振動による音が低減されるので、空洞共鳴音をさらに抑制することができる。
【0018】
前記吸音部材は、タイヤ径方向内面にタイヤ周方向に離間して配置されてタイヤ径方向に内側に突出する突部を備えていてもよい。
【0019】
本構成によれば、吸音部材のタイヤ径方向内面にタイヤ周方向に離間して配置された複数の突部によって吸音部材のタイヤ径方向内面に凹凸を形成することができるので、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の音が放射状に伝播される際に、吸音部材のタイヤ径方向内面に形成される凹凸によって音を低減することができ、空洞共鳴音をさらに抑制することができる。
本発明はまた、インナーライナによって構成されるタイヤ内面に取り付けられてタイヤ周方向に延びるスポンジからなる吸音部材と、前記タイヤ内面と前記吸音部材との間に配置されてタイヤ周方向に延びるゴムからなる制振部材とを備え、前記制振部材は、タイヤ径方向内面にタイヤ径方向外側に窪む凹部を備え、前記制振部材と前記吸音部材との間に、前記凹部の内面と前記吸音部材のタイヤ径方向外面とによって区画される空洞部が形成されている空気入りタイヤを提供する。
本発明によれば、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の空気の振動による音が共鳴してタイヤ内部に発生する空洞共鳴音を抑制することができる。
また、タイヤ製造時に、タイヤ内面にゴムからなる制振部材とスポンジからなる吸音部材とを取り付けるだけで、空洞共鳴音を抑制することができるので、比較的容易に製造することができ、生産性の向上を図ることができる。
また、制振部材と吸音部材との間に形成される空洞部によって、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の空気の振動による音が低減されるので、空洞共鳴音をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、空洞共鳴音を抑制すると共に生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの縦断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの横断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられる吸音部材及び制振部材を示す図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられる吸音部材及び制振部材を示す図である。
【
図5】
図4のY5-Y5線に沿った吸音部材及び制振部材の断面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられる吸音部材及び制振部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの縦断面図、
図2は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの横断面図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係るゴム製の空気入りタイヤ1は、ホイール2に組み付けられてホイール2と共に車輪を構成するものであり、環状に形成されている。空気入りタイヤ1のタイヤ内面1aとホイール2のリム部2aの外面とによってタイヤ内部(内腔)8が円環状に形成されている。
【0024】
空気入りタイヤ1は、
図2に示すように、タイヤ径方向外側に位置して路面に接するトレッド部3と、タイヤ径方向内側に位置してホイール2のリム部2aに組み付けられる両側のビード部4と、トレッド部3と両側のビード部4との間にそれぞれ位置してタイヤ径方向に延びる両側のサイドウォール部5とを備える。
【0025】
空気入りタイヤ1は、両側のビード部4間に図示しないカーカスが設けられると共に、前記カーカスのタイヤ内面側にタイヤ内面1aを構成する図示しないインナーライナが設けられている。前記インナーライナは、空気圧を保持するためのものであり、空気の透過を防ぐゴムで形成されている。
【0026】
本実施形態では、空気入りタイヤ1のタイヤ内面1aにタイヤ周方向に延びる吸音部材10が取り付けられると共に、タイヤ内面1aと吸音部材10との間にタイヤ周方向に延びる制振部材20が配置され、吸音部材10は、制振部材20を介してタイヤ内面1aに取り付けられている。
【0027】
吸音部材10及び制振部材20はそれぞれ、タイヤ周方向全体に亘ってタイヤ周方向に延びるように形成されている。制振部材20は、空気入りタイヤ1のタイヤ内面1aに、具体的にはトレッド部3、両側のビード部4及び両側のサイドウォール部5のタイヤ内面1aにタイヤ周方向全体に亘って取り付けられている。吸音部材10は、空気入りタイヤ1のタイヤ内面1aに、具体的にはトレッド部3のタイヤ内面1aにタイヤ周方向全体に亘って制振部材20を介して取り付けられている。
【0028】
吸音部材10及び制振部材20はそれぞれ好ましくは、タイヤ周方向全体に亘ってタイヤ周方向に延びるように形成されるが、タイヤ周方向の一部にタイヤ周方向に延びるように形成することも可能である。
【0029】
吸音部材10は、タイヤ周方向に延びるようにシート状に形成されている。吸音部材10は、多孔質体であるスポンジから形成され、合成樹脂等を発泡させた連続気泡又は独立気泡を含むものである。スポンジからなる吸音部材10は好ましくは、比重が0.021g/cm3以上0.027g/cm3以下のものが用いられる。吸音部材10として、例えばポリウレタン系のスポンジを用いることができるが、種々のスポンジを用いることができる。吸音部材10は、接着剤又は両面テープなどの適宜の接合手段を用いて制振部材20に取り付けられる。
【0030】
吸音部材10は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向最大幅であるタイヤ幅の30%以上70%以下のタイヤ幅方向長さを有するように形成されている。吸音部材10のタイヤ幅方向長さをタイヤ幅の30%より小さくすると空洞共鳴音の低減効果が小さくなる一方、タイヤ幅の70%より大きくするとサイドウォール部5のタイヤ内面1aに制振部材20を介して取り付けられてタイヤ内面1aから剥離するおそれがある。
【0031】
制振部材20は、タイヤ接地面からタイヤ内部8に伝達する振動を抑制するものであり、タイヤ周方向に延びるようにシート状に形成されている。制振部材20は、制振性能を有するゴムから形成されている。ゴムからなる制振部材20は好ましくは、タイヤ内面1aを構成するインナーライナのゴムより損失正接(tanδ)が大きいゴムから形成されるものが用いられる。損失正接(tanδ)は、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合であり、損失正接=損失弾性率/貯蔵弾性率で表される。
【0032】
制振部材20として、例えば損失正接が0.5~0.9である天然ゴム系のゴムを用い、インナーライナとして、例えば損失正接が0.1~0.4であるブチル系のゴムを用い、制振部材20は、インナーライナのゴムより損失正接が大きいものが用いられる。制振部材20及びインナーライナとして共にブチル系のゴムを用いることも可能であるが、かかる場合においても、制振部材20は、インナーライナのゴムより損失正接が大きいものが用いられる。制振部材20は、タイヤ1が加硫成形されるときにタイヤ1と共に加硫成形されてタイヤ内面1aに取り付けられる。
【0033】
このようにして構成される空気入りタイヤ1を製造する際には、金型内で加硫成形してタイヤ1を製造するときにタイヤ内面1aを構成するインナーライナに制振部材20を重ね合わせて加硫成形してタイヤ内面1aに制振部材20が取り付けられたタイヤ1が製造されると共にスポンジからなる吸音部材10が製造される。そして、加硫成形されたタイヤ1と共にタイヤ内面1aに取り付けられた制振部材20に吸音部材10が取り付けられて空気入りタイヤが製造される。
【0034】
このように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ内面1aに取り付けられてタイヤ周方向に延びるスポンジからなる吸音部材10と、タイヤ内面1aと吸音部材10との間に配置されてタイヤ周方向に延びるゴムからなる制振部材20とを備えている。
【0035】
これにより、タイヤ接地面からの振動がタイヤ内面1aと吸音部材10との間に配置されたゴムからなる制振部材20によって低減され、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部8の空気の振動による音が低減される。そして、この低減されたタイヤ内部8の空気の振動による音がタイヤ内面1aに制振部材20を介して取り付けられたスポンジからなる吸音部材10を通過するときに低減されるので、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部8の空気の振動による音が共鳴してタイヤ内部8に発生する空洞共鳴音を抑制することができる。
【0036】
また、タイヤ製造時に、タイヤ内面1aにゴムからなる制振部材20とスポンジからなる吸音部材10とを取り付けるだけで、空洞共鳴音を抑制することができるので、比較的容易に製造することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0037】
タイヤ内部8の空気の振動による音が放射状に伝播される際、リム部2aによって一部反射され、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部8の空気の振動による音は、タイヤ接地面から放射状に拡がる音の他、リム部2aから反射される音も含まれる。そして、タイヤ接地面からの振動によってタイヤ内部8の空気の振動による音が放射状に伝播される際にも、吸音部材10によって音が低減させることができ、空洞共鳴音を抑制することができる。
【0038】
また、制振部材20は、タイヤ周方向全体に亘って配置されることにより、タイヤ周方向の一部に制振部材20が配置される場合に比して、空洞共鳴音を有効に抑制することができる。
【0039】
また、吸音部材10は、タイヤ周方向全体に亘って取り付けられることにより、タイヤ周方向の一部に吸音部材10が取り付けられる場合に比して、空洞共鳴音を有効に抑制することができる。
【0040】
また、制振部材20は、タイヤ内面1aを構成するインナーライナのゴムより損失正接が大きいゴムから形成されている。これにより、インナーライナのゴムより損失正接が大きいゴムから形成される制振部材20を用いることで、制振部材20によって振動エネルギを有効に吸収することができるので、制振部材20によってタイヤ接地面からの振動を有効に低減させることができ、空洞共鳴音を有効に抑制することができる。
【0041】
図3は、本発明の第2実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられる吸音部材及び制振部材を示す図である。
図3では、吸音部材及び制振部材を平面状に展開した状態で示している。第2実施形態に係る空気入りタイヤは、第1実施形態に係る空気入りタイヤと、制振部材の形状が異なること以外は同様であるので、同様の構成については説明を省略する。
【0042】
第2実施形態に係る空気入りタイヤについても、タイヤ内面にタイヤ周方向に延びる吸音部材10が取り付けられると共に、タイヤ内面と吸音部材10との間にタイヤ周方向に延びる制振部材30が配置され、吸音部材10は、制振部材30を介してタイヤ内面に取り付けられる。
【0043】
第1実施形態に係る空気入りタイヤ1では、制振部材20は、トレッド部3、両側のビード部4及び両側のサイドウォール部5のタイヤ内面1aに取り付けられているが、第2実施形態に係る空気入りタイヤでは、
図3に示すように、制振部材30は、トレッド部のタイヤ内面に吸音部材10のタイヤ径方向外面全体にのみ取り付けられる。
【0044】
本実施形態に係る空気入りタイヤについても、タイヤ内面に取り付けられたスポンジからなる吸音部材10と、タイヤ内面と吸音部材10との間に配置されたゴムからなる制振部材30とが備えられることにより、空洞共鳴音を抑制すると共に生産性の向上を図ることができる。
【0045】
図4は、本発明の第3実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられる吸音部材及び制振部材を示す図、
図5は、
図4のY5-Y5線に沿った吸音部材及び制振部材の断面図である。
図4では、吸音部材及び制振部材を平面状に展開すると共に分離した状態で示している。第3実施形態に係る空気入りタイヤは、第2実施形態に係る空気入りタイヤと、制振部材の形状が異なること以外は同様であるので、同様の構成については説明を省略する。
【0046】
第3実施形態に係る空気入りタイヤについても、タイヤ内面にタイヤ周方向に延びる吸音部材10が取り付けられると共に、タイヤ内面と吸音部材10との間にタイヤ周方向に延びる制振部材40が配置され、吸音部材10は、制振部材40を介してタイヤ内面に取り付けられる。
【0047】
図4及び
図5に示すように、第3実施形態に係る空気入りタイヤでは、制振部材40は、トレッド部のタイヤ内面に吸音部材10のタイヤ径方向外面全体にのみ取り付けられる。
【0048】
本実施形態では、制振部材40は、タイヤ径方向内面にタイヤ径方向外側に窪む凹部41を備えている。凹部41は、略四角柱状に窪んで形成され、制振部材40のタイヤ径方向内面に、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向にそれぞれ複数の凹部41が等間隔に形成されている。
【0049】
これにより、制振部材40に吸音部材10が取り付けられると、制振部材40と吸音部材10との間に、凹部41の内面と吸音部材10のタイヤ径方向外面とによって区画される空洞部42が形成される。制振部材40と吸音部材10との間には、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向にそれぞれ複数の空洞部42が等間隔に形成される。
【0050】
本実施形態では、制振部材40のタイヤ径方向内面に、略四角柱状に窪む凹部41が形成されているが、略三角柱状や略円柱状などの他の形状に窪む凹部を形成することも可能である。また、制振部材40のタイヤ径方向内面に形成される凹部として、タイヤ幅方向やタイヤ周方向に延びる凹部を形成することも可能である。
【0051】
また、制振部材40は、トレッド部のタイヤ内面に吸音部材10のタイヤ径方向外面全体にのみ取り付けられているが、第1実施形態に係る空気入りタイヤ1と同様に、制振部材40を、吸音部材10よりタイヤ幅方向両側に延ばしてトレッド部3、両側のビード部4及び両側のサイドウォール部5のタイヤ内面1aに取り付けるようにすることも可能である。
【0052】
制振部材40のタイヤ径方向内面に形成される凹部41は、空気入りタイヤ1を製造する際に、タイヤを金型内で加硫成形するときに、加硫成形に用いるブラダーの表面を制振部材40のタイヤ径方向内面に対応する形状に形成することで、加硫成形してタイヤが製造されるときにタイヤ内面に取り付けられる制振部材40のタイヤ径方向内面に凹部41を形成することができる。
【0053】
本実施形態に係る空気入りタイヤについても、タイヤ内面に取り付けられたスポンジからなる吸音部材10と、タイヤ内面と吸音部材10との間に配置されたゴムからなる制振部材40とが備えられることにより、空洞共鳴音を抑制すると共に生産性の向上を図ることができる。
【0054】
また、制振部材40は、タイヤ径方向内面にタイヤ径方向外側に窪む凹部41を備え、制振部材40と吸音部材10との間に、凹部41の内面と吸音部材10のタイヤ径方向外面とによって区画される空洞部42が形成される。これにより、制振部材40と吸音部材10との間に形成される空洞部42によって、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の空気の振動による音が低減されるので、空洞共鳴音をさらに抑制することができる。
【0055】
図6は、本発明の第4実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ内面に取り付けられる吸音部材及び制振部材を示す図である。
図6では、吸音部材及び制振部材を平面状に展開した状態で示している。第4実施形態に係る空気入りタイヤは、第2実施形態に係る空気入りタイヤと、制振部材及び吸音部材の形状が異なること以外は同様であるので、同様の構成については説明を省略する。
【0056】
第4実施形態に係る空気入りタイヤについても、タイヤ内面にタイヤ周方向に延びる吸音部材10´が取り付けられると共に、タイヤ内面と吸音部材10´との間にタイヤ周方向に延びる制振部材50が配置され、吸音部材10´は、制振部材50を介してタイヤ内面に取り付けられる。
【0057】
図6に示すように、第4実施形態に係る空気入りタイヤでは、制振部材50は、トレッド部のタイヤ内面に吸音部材10のタイヤ径方向外面全体にのみ取り付けられる。
【0058】
本実施形態では、制振部材50は、略平板状に形成される基部51と、タイヤ径方向内面にタイヤ径方向内側に突出する複数の凸部52とを備えている。複数の凸部52は、タイヤ周方向に離間して配置され、好ましくはタイヤ周方向に等間隔に離間して配置される。複数の凸部52はそれぞれ、吸音部材10´と同一のタイヤ幅方向長さを有してタイヤ幅方向に延び、タイヤ幅方向から見て略矩形状に形成されている。
【0059】
吸音部材10´は、タイヤ径方向外面に制振部材50の複数の凸部52に対応して形成されたタイヤ径方向内側に窪む複数の溝部11を備えると共に、タイヤ径方向内面にタイヤ径方向内側に突出する複数の突部12を備えている。複数の突部12は、タイヤ周方向に離間して配置され、好ましくはタイヤ周方向に等間隔に離間して配置される。複数の突部12はそれぞれ、タイヤ幅方向に延び、タイヤ幅方向に見て略半円状に形成されている。
【0060】
本実施形態では、吸音部材10´の突部12は、タイヤ幅方向から見て略半円状に形成されているが、タイヤ幅方向から見て略三角状や略矩形状などの他の形状に形成することも可能である。
【0061】
また、制振部材50は、トレッド部のタイヤ内面に吸音部材10´のタイヤ径方向外面全体にのみ取り付けられているが、第1実施形態に係る空気入りタイヤ1と同様に、制振部材50を、吸音部材10´よりタイヤ幅方向両側に延ばしてトレッド部3、両側のビード部4及び両側のサイドウォール部5のタイヤ内面1aに取り付けるようにすることも可能である。
【0062】
制振部材50のタイヤ径方向内面に形成される凸部52は、空気入りタイヤを製造する際に、タイヤを金型内で加硫成形するときに、加硫成形に用いるブラダーの表面を制振部材50のタイヤ径方向内面に対応する形状に形成することで、加硫成形してタイヤが製造されるときにタイヤ内面に取り付けられる制振部材50のタイヤ径方向内面に凸部52を形成することができる。
【0063】
本実施形態に係る空気入りタイヤについても、タイヤ内面に取り付けられたスポンジからなる吸音部材10´と、タイヤ内面と吸音部材10´との間に配置されたゴムからなる制振部材50とが備えられることにより、空洞共鳴音を抑制すると共に生産性の向上を図ることができる。
【0064】
また、吸音部材10´は、タイヤ径方向内面にタイヤ周方向に離間して配置されてタイヤ径方向に内側に突出する突部12を備えている。これにより、吸音部材10´のタイヤ径方向内面にタイヤ周方向に離間して配置された複数の突部12によって吸音部材10´のタイヤ径方向内面に凹凸を形成することができるので、タイヤ接地面からの振動によって生じるタイヤ内部の音が放射状に伝播される際に、吸音部材10´のタイヤ径方向内面に形成される凹凸によって音を低減することができ、空洞共鳴音をさらに抑制することができる。
【0065】
前述した実施形態では、制振部材20、30、40、50は、タイヤが加硫成形されるときにタイヤと共に加硫成形されてタイヤ内面に取り付けられているが、タイヤ内面に、接着剤又は両面テープなどの適宜の接合手段を用いてタイヤ内面に取り付けるようにすることも可能である。
【0066】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 空気入りタイヤ
1a タイヤ内面
10、10´ 吸音部材
12 突部
20、30、40、50 制振部材
41 凹部
42 空洞部