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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】ポリウレタン系の製造
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20230310BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230310BHJP
   C08G 18/16 20060101ALI20230310BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230310BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230310BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230310BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/00 J
C08G18/16
C08L75/04
C08K3/36
C08K5/17
C08G101:00
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018155151
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2019059917
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】17192836.9
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ エムリヒ スモルザイク
(72)【発明者】
【氏名】ムラデン ヴィダコヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】カイ オリヴァ フェルトマン
(72)【発明者】
【氏名】アンネグレート テルハイデン
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-077650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0040050(US,A1)
【文献】特開2005-232197(JP,A)
【文献】特表2016-540068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 101:00
C08L 75/00-75/16
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート-ポリオール、イソシアネート-水反応、およびイソシアネート三量化のうち少なくとも1つのための1つ以上の触媒の存在下で、少なくとも1つのポリオール成分を少なくとも1つのイソシアネート成分と反応させることによって、ポリウレタン系を製造する方法であって、前記反応を合成シリカ及びポリアミンPの存在下で実施し、
前記ポリアミンPは、グアニジン塩と式(I)で表されるポリアミンとの反応の結果生じ、
2N-CH2-CH2-NH-(CH2-CH2-NH)x-CH2-CH2-NH2 (I)
式中、x=0~4であり、
前記グアニジン塩と前記ポリアミンとの前記反応は、5:1~1:5の範囲の、グアニジン塩とポリアミンのモル比で実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
使用する前記合成シリカは、ヒュームドシリカ又は沈降シリカであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用する前記ポリアミンPは、式(II)
H[-(HN-CH2-CH2a-NH-C(=NHR+-)]c-NH-(CH2-CH2-NH-)bH (II)
で表される化合物であって、
前記化合物は、グアニジン塩を式(I)で表される化合物と反応させることによって得られ、
式中、
aは、独立して0~6であり、
bは、独立して0~6であり、
cは、独立して1~4であり、
Rは、H又は(CH-CH-NH-)dであり、
dは、独立して0~6であり、
d>0かつRがHではない場合、a及びbは、それぞれ0であってもよく、a>0の場合、d及びbは、それぞれ0であってもよく、又は、b>0の場合、d及びaは、それぞれ0であってもよく、
は、陰イオンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記合成シリカと前記ポリアミンPとを、ポリオール成分100部に対し、合計0.01部~10部の質量分率で使用することを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
下記(i)又は下記(ii);
(i)前記ポリウレタン系を製造するのに用いられる反応混合物に、前記ポリアミンPと前記合成シリカとを別個に添加し、前記合成シリカは液体に分散している
(ii)前記ポリウレタン系を製造するのに用いられる反応混合物に添加する前に、前記ポリアミンPと前記合成シリカとを混合する
であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
製造される前記ポリウレタン系はポリウレタンフォームであることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリウレタン系中、0.001wt%~10wt%の合成シリカ及びポリアミンPを含むことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリウレタン系は、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、又は半硬質ポリウレタンフォームであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタン分野に関し、特に、イソシアネート-ポリオール及び/若しくはイソシアネート-水反応、及び/又はイソシアネート三量化のための1つ以上の触媒の存在下で、少なくとも1つのポリオール成分を少なくとも1つのイソシアネート成分と反応させることによって、ポリウレタン系を製造する方法であって、前記反応を担体材料及びポリアミンPの存在下で実施し、使用する前記担体材料は、例えば、ヒュームドシリカである方法に関し、また、このようにして得られるポリウレタン系に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明が目的とするポリウレタン系は、例えば、ポリウレタン塗料、ポリウレタン接着剤、ポリウレタンシーラント、ポリウレタンエラストマー、又は、特にポリウレタンフォームである。
【0003】
ポリウレタンは優れた機械的特性及び物理的特性を有しており、したがって、非常に広範囲の分野で用いられる。フォーム分野は、様々なポリウレタン、例えば、エーテル及びエステルポリオールを主成分とした従来の軟質フォーム、低温硬化フォーム(しばしば、HRフォームとも称される)、硬質フォーム、一体フォーム、及び微孔質フォーム、並びに、半硬質系など、これらの分類間の特性を備えるフォームの特に重要な市場である。例えば、硬質フォームは内部側のルーフライナーとして使用され、エステルフォームは、ドアの内装品として、またダイカットサンバイザに使用され、低温硬化フォーム及び軟質フォームはシート系及びマットレスに用いられる。接着剤及び塗料は、ポリウレタンを使用する別の分野であり、その分野では、ポリウレタンが、その優れた特性により注目されている。
【0004】
ポリウレタンフォームは、製造及び保管の過程で、アルデヒドを放出する。健康上の懸念から、いくら根拠がなくとも、多くの消費者は、アルデヒドを排出する製品を使用することを回避しようとする。
【0005】
更に、近年、中国政府当局は特に要求が高くなり、中国で販売される自動車室内での排出に厳しい制限値を課している。そこでは、芳香族炭化水素だけでなく、アルデヒドにも再び焦点があてられている。このように、アルデヒドの発生が可能な限り低いレベルのポリウレタンフォームが、一般に広く望まれている。
【0006】
この要望を満たすために、既に種々の方法が試みられてきた。例えば、国際公開第2009/117479号においては、ホルムアルデヒドがその原料から発生していると仮定、より詳細には、使用するアミン触媒(三級アミン)中にホルムアルデヒドが含まれていると推測している。前記公報では、一級アミンをその三級アミン触媒に添加することによって、ホルムアルデヒドの排出量を低減することが提案されている。ジメチルアミノプロピルアミンを使用することが好ましいと記載している。
【0007】
独国特許出願公開第10003156号は、低排出フォームに直接関するものではないが、種々の化合物、特に重金属イオンに関して、非常に良好な吸着力を有するポリマーを開発する課題に取り組むものである。この課題に対して提案されている解決策は、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、カルボキシメチル化ポリエチレンイミン、ホスホノメチル化ポリエチレンイミン、四級化ポリエチレンイミン、及び/又はジチオカルバミン化ポリエチレンイミンを含む、ポリウレタンフォームの形態をとるものである。これらのポリウレタンフォームは、例えばホルムアルデヒドなどの有機物を吸着するのにも有用である。
【0008】
独国特許出願公開第10258046号では、ホルムアルデヒド排出レベルが低減されたポリウレタンフォームを製造する課題に取り組んでいる。独国特許出願公開第10003156号と対比して、独国特許出願公開第10258046号によって取り組まれている課題は、したがって、そのようにポリウレタン(PU)フォームから排出されるホルムアルデヒドを低減することであって、周囲空気からホルムアルデヒドを吸着することでない。この課題に対して提案された解決策は、ポリウレタンフォームにアミノ含有ポリマーを混合することを含む方法であり、前記混合は、ポリウレタンフォームの製造前及び/又は製造中に実施してもよい。
【0009】
しかし、本発明の文脈において、使用するポリウレタンの配合によれば、アルデヒド掃去物質の使用により、フォームの欠陥が引き起こされ、また、状況によっては、アルデヒドを吸収する効力に影響し得ることが判明した。先行技術により知られているアルデヒド掃去物質を用いる場合、状況によってはフォームの加工性を阻害する可能性があり、また、フォームの圧縮性、すなわち「force-to-crush(破砕に要する力)」(FTC)の値が特に低下する可能性がある。
【0010】
したがって、ポリウレタン、特にポリウレタンフォームの供給者は、加工性又は機械的特性を損失することなく、アルデヒドの排出を低減する更なる解決策を今もなお必要としている。
【0011】
このような背景に対して、本発明が取り組んだ特定の課題は、ポリウレタン、特にポリウレタンフォームを提供することであり、アルデヒド排出量のレベルを低減し、かつ、加工性を、特にフォームの圧縮性、すなわち「force-to-crush」(略してFTC)値に関して、より良好に維持することである。
【0012】
そこで、本発明者は、驚くべきことに、担体材料及びポリアミンPの存在下でポリウレタン系を製造すると、この課題を解決できることを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明は、イソシアネート-ポリオール及び/若しくはイソシアネート-水反応、並びに/又はイソシアネートの三量化のための1つ以上の触媒の存在下で、少なくとも1つのポリオール成分を少なくとも1つのイソシアネート成分と反応させることによって、ポリウレタン系を製造する方法であって、担体材料及びポリアミンPの存在下で前記反応を実施する方法を主題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
担体材料は粉体であることが好ましい。使用する担体材料は、特にヒュームドシリカ又は沈降シリカであり、有利には、その一次粒子径が特に5nm~100nmの範囲内にあり、かつ、BET比表面積は、特に30m2/g~800m2/gである。
【0015】
注目すべきは、当業者が、公知の先行技術に基づいて、担体材料の使用を省くのには十分な理由があり、それは、担体材料の使用はPUフォーム製造の妨げとなると一般に考えられているからである。先行技術によれば、これは、シリカに施すポリエチレンアミンに特にあてはまる。
【0016】
このような一般的な見解に反して、本発明において重要なことは、具体的には、担体材料、特にヒュームドシリカ又は沈降シリカなどの存在である。
【0017】
本発明の主題は、先行技術によりアルデヒド掃去剤を使用する場合と比べて、アルデヒドの排出を低減し、加工性が、特に圧縮性、すなわち「force-to-crush」(略してFTC)の値に関して、向上する、ポリウレタン、特にポリウレタンフォームを提供することを可能にする。より詳細には、一般的な方法と比較して、添加剤を使用することなく圧縮性を良好に安定させることができ、その結果、差異は30%未満となる。フォームに欠陥が生じることを回避し得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の文脈において、「ポリアミンP」は、分子量が少なくとも100g/molであり、かつ、一分子当たり第一級又は第二級アミノ基を少なくとも2つ有するポリアミン、特に、分子量が少なくとも200g/molであり、かつ、一分子当たり第一級又は第二級アミノ基を少なくとも3つ有するポリアミンであることが好ましい。
【0019】
ポリアミンPがモル質量分布を有する場合、本発明の文脈において、その分子量は、各々の場合において数平均分子量である。数平均分子量は、特に、ポリスチレン換算でGPC測定により得ることができる。
【0020】
好ましい実施形態において、ポリアミンPの数平均分子量は、少なくとも500g/mol、好ましくは少なくとも1,000g/mol、より好ましくは少なくとも1,500g/mol、特に好ましくは少なくとも2,000g/mol、特に少なくとも2,500g/molである。数平均分子量の上限は、一般に限定されないが、好ましくは1,000,000g/mol以下であり、より好ましくは750,000g/mol以下である。
【0021】
好ましい実施形態において、ポリアミンPは、一分子当たりのアミノ官能価が、少なくとも4、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6である。アミノ官能価の上限は、一般に限定されないが、10以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の文脈において、特に好ましいポリアミンPは、式(I)H2N-CH2-CH2-NH-(CH2-CH2-NH)x-CH2-CH2-NH2で表され、式中、x=0~4、好ましくは1~3、特に1である化合物であり、また、その反応生成物、特にグアニジン塩との反応生成物である。本発明の文脈において、前記反応生成物をグアニジン付加物とも称し、特に好ましいポリアミンPである。
【0023】
本発明の文脈において、更に好ましいポリアミンPは、国際公開第WO2016201615A1号にアルデヒド掃去剤として記載されているアミンであり、好ましくは1,3-プロパンジアミノ官能基を少なくとも1つ有するアミン、例えば、更に詳細には、N,N’-ジメチルプロパンジアミン、N’,N’-ジフェニルプロパンジアミン、1-ベンジル-1,3-プロパンジアミン、イソトリデシルオキシプロピル-1,3-ジアミノプロパン、ドデシルオキシプロピル-1,3-ジアミノプロパン、及びヘキシロキシプロピル-1,3-ジアミノプロパン、最も好ましくはイソトリデシルオキシプロピル-1,3-ジアミノプロパンである。これらのポリアミンPを使用することは、本発明の意味において特に好ましい一実施形態である。
【0024】
本発明の文脈において、更に好ましいポリアミンPは、不飽和ニトリルと、少なくとも2つ以上のアミン基、好ましくは3つ以上のアミン基を有する脂肪族ポリアミンとの反応生成物である。使用する前記不飽和ニトリルは、特に2-プロペンニトリルであり、使用する前記脂肪族ポリアミンは、特に、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、及び/又はヘキサメチレンジアミンであり、2-プロペンニトリルとジエチレントリアミンとの反応生成物が特に好ましい。本発明の意味において、特に好ましい一実施形態では、これらのポリアミンPを使用する。
【0025】
本発明によれば、担体材料及びポリアミンPの存在下で、ポリウレタン系を製造する。本発明の目的にとって、これは、ポリアミンP、例えばグアニジン付加物を、担体材料と一緒に使用することを意味する。より詳細には、ポリアミンPを担体材料に施している。
【0026】
ポリウレタンフォームにおいて本発明により所望される効果のために、特に、
(i)ポリアミンPと担体材料を、ポリウレタン系を製造するのに用いられる反応混合物に別々に添加し、前記担体材料は液体に分散していることが好ましく、
(ii)ポリウレタン系を製造するのに用いられる反応混合物に添加する前に、ポリアミンPと担体材料とを混合する
ことが可能である。
【0027】
この場合、(ii)による混合は、担体材料を液体に分散させ、この分散液をポリアミンP(iiaに相当する)と混合するようにして実施することが好ましい。
【0028】
更に、(ii)による混合は、粉体の形態の担体材料をポリアミンP(iibに相当する)と直接混合し、好ましくは連続相としてのポリアミンPと分散相としての担体材料を含む分散液が生成されるように実施することが好ましい。
【0029】
また、(ii)による混合によれば、担体材料上にポリアミンPを吸着させることができる。
【0030】
本発明において重要なことは、いずれの場合においても、担体材料とポリアミンPとを組み合わせて使用すること、すなわち、担体材料及びポリアミンPの存在下でポリウレタン系を製造することである。
【0031】
本発明の主題は、本発明が取り組む課題を解決することである。このように、ポリウレタン系を製造する方法を担体材料及びポリアミンPの存在下で実施する場合は必ず、アルデヒド排出量を低減するポリウレタン、特にポリウレタンフォームを提供することが可能になると同時に、それによって、添加剤を添加しない標準的な方法と比較して、フォームの加工性が向上する。より詳細には、圧縮特性(FTC)に及ぼされる悪影響はごく僅かであり、差異が最大30%であることが好ましい。フォームの欠陥は、最小限にとどめられる。
【0032】
ポリオール系に対して、担体材料の絶対量は、特に0.001wt%~5wt%の範囲にあり、ポリアミンPに対する相対量は、特に0.1wt%~10wt%の範囲にある。
【0033】
本発明により使用可能な担体物質として、特に合成シリカが挙げられる。これらは、火炎加水分解又は高温加水分解によるAEROSIL法によって特に製造されるヒュームドシリカと、湿式法によって特に合成される沈降シリカとに、その製造方法によって一般に識別される。
【0034】
AEROSIL法は、実質、四塩化ケイ素(SiCl4)の連続火炎加水分解と説明され得る。この場合、SiCl4は気相に変換され、その後、中間物として形成された水素と、水素/酸素ガス炎内で、自発的かつ定量的に反応し、所望の二酸化ケイ素及びHClガスを形成する。共反応物(例えば、SiHCl3、H3SiCl、さもなくばAlCl3、TiCl4、ZrCl4など、発熱性特殊酸化物と称されるもの)の濃度、火炎温度、及び燃焼空間におけるシリカの滞留時間を変化させることによって、シリカの粒径、粒度分布、比表面積、及び表面特性に対して、広い範囲内に影響を及ぼすことが可能である。ここで、完全にアモルファスである二酸化ケイ素とは対照的に、TiO2やAl23などの特殊酸化物は、結晶の形で得られることで、識別される。「アモルファス」物質は、原子がいずれの秩序構造も形成せず、不規則なパターンを形成し、かつ、短距離秩序のみを有し、長距離秩序を有さない物質である。水素/酸素ガス炎内での短い滞留時間からは、凝縮相間の焼結工程が、実質的に除外されている。材料がまだ工場から出ていない場合、更なる処理において、シランと特に反応しやすい。例えば、実質、親水性の出発材料であるシリカを、連続法における化学的後処理によって、効果的かつ均質的に機能的なものにすることができ、その結果、その後、シリカが疎水性の表面特性を有する。Aerosilの表面の機能化は、ハロシラン、アルコキシシラン、シラザン、及びシロキサンを用いて実施する。この改良によって、後処理したシリカは、新規かつ重要な性能を示す。
【0035】
一方、水ガラス溶液から沈降シリカを製造し、そこに特定の条件下で硫酸を添加する。このようにして、沈降シリカが水相に形成される。沈降条件によって、製造される製品が有するより小さい又はより大きい一次粒子を持つシリカを製造することができ、これにより、実質的に比表面積のサイズが決まる。このようにして得た沈殿を、様々な方法(ロータリー乾燥、噴霧乾燥)によって、洗浄し、乾燥する。観察される集塊状シリカの粒径は、50μm~150μmの範囲にあることが好ましい。次に、採用した乾燥方法に応じて、そのシリカを粉砕することができる、又は粉砕しなくてはならない。粉砕すると粒径が著しく小さくなるが、比表面積のサイズは影響を受けない。
【0036】
シリカは、特に、その比表面積(DIN66131に従ったBET(Brunnauer, Emmett and Teller)式による。)及び一次粒子のサイズの観点から、特徴づけられる。詳細には、Aerosilの場合、一般に、一次粒子は、一体化して大小様々なレベルで集塊状になるため、粒径を特定するのは困難である。
【0037】
より詳細には、本発明の文脈においては、使用するポリアミンPは、全てグアニジン反応生成物であってもよく、前記反応生成物はグアニジン塩をポリアミンと反応させることによって得られ、前記ポリアミンには、原則として、モル質量が大きい、例えば、>500g/mol、>1,000g/mol、又は>2,000g/molなどのモル質量を有するポリアミンも含まれる。
【0038】
本発明は、長期保管においてもアルデヒドの排出を確実に最低限に抑える。実際、例えばPEIを使用した場合に保管中のアセトアルデヒドの排出レベルが著しく増加するのが抑制されるので、アセトアルデヒドの排出レベルは、仮に悪影響が及ぼされる場合であっても、重大なレベルにまで悪影響が及ぶことはなく、PEIを使用した場合と同様に、ポリウレタンフォームのアセトアルデヒド含有量が著しく増加、例えば50倍に増加する程度にまで影響が及ぶことは少なくともない。したがって、保管中の、アセトアルデヒド排出の上昇を、明確に最低限にまで低減する。より詳細には、5か月の保管期間後においても、ポリウレタンフォームのアセトアルデヒド含有量の増加が、ホルムアルデヒド排出量を低減するために添加剤を混合しなかったフォームと比較して2.5倍以下に抑えられることが有利である。これは、PEIの使用を伴う先行技術の提案に比べて、著しく改善している。
【0039】
より詳細には、本発明は、5か月の保存期間後でさえ、好ましくはVDA275を介して決定され得るように(実施例の部を変更した手順に従って)、既に製造したポリウレタン系(特にポリウレタンフォーム)からのホルムアルデヒドの排出において、PU系(PUフォーム)1kg当たりのホルムアルデヒドを、有利には0.02mg以下の値にまで確実に抑える。
【0040】
したがって、本発明の方法によれば、アルデヒドの排出のみならず、加工性についても非常に良好な結果をもたらすポリウレタン系(特にポリウレタンフォーム)を提供することができる。本発明により担体材料とポリアミンPとを組み合わせて混合することで、ポリウレタン系(特にポリウレタンフォーム)を提供することができ、前記ポリウレタン系においては、アルデヒド排出量が低減され、アセトアルデヒド排出量は、悪影響を仮に受けたとしてもほとんど受けず、好ましくは、例えばベンズアルデヒド又はアクロレインなど比較的珍しいアルデヒドも吸収され得る。
【0041】
本発明の更なる利点は、得られたポリウレタン系が、殺菌効果を有するか、又は従来のポリウレタン系よりも高い殺菌効果を有することである。本発明の更なる利点は、本発明の方法によれば、担体材料とポリアミンPとを組み合わせて使用しない方法と比較して、反応物の反応が促進されることである。
【0042】
本発明で使用する化合物、その調製方法、ポリウレタン系/フォームを製造するための化合物の使用、ポリウレタン系/フォームを製造するための化合物の使用、及びそのポリウレタン系/フォーム自体を、例を挙げて以下に記載するが、本発明がこれらの例示的実施形態に制限されることはない。範囲、一般式、又は化合物の種類が以下に特定されている場合、これらは、明確に記載されている化合物のそれぞれの範囲又は群だけでなく、化合物の個々の値(範囲)を除去することによって得られる化合物の副領域及び副群も全て包含する。本明細書の文脈内で文献が引用されている場合、その内容、特に参照されている主題に関する内容は、本発明の開示内容にその全体が含まれるものとみなされる。特に明記しない限り、百分率は重量によるものである。特に明記しない限り、以下に参照される平均値は、重量平均である。材料の特性、例えば粘度などが以下に参照される場合、特に明記しない限り、25℃での材料の特性に関する。化学(実験)式が本発明で使用される場合、報告される価は、絶対数だけでなく、平均値でもあり得る。ポリマー化合物に関する価は、平均値であることが好ましい。
【0043】
本発明の文脈において、担体材料とポリアミンPとを使用する。好ましいポリアミンPは、グアニジン塩とポリアミンとの反応生成物である。グアニジン塩と、ポリアミン、特に式(I)で表される化合物との反応は、先行技術に記載されているとおりに実施してもよい。グアニジン反応生成物は、当業者にとって周知である。英国公開特許第657753号は、グアニジン反応生成物及びグアニジン塩の誘導体を合成するために考えられ得る2つの方法について記載している。グアニジン反応生成物を得るための一つの方法は、アミン化合物、例えばジエチレントリアミンを、グアニジン塩、例えば炭酸グアニジンと反応させることによって、塩の形態の生成物を得る方法である。この種類の化合物を得るためのもう一つの方法は、アミンをシアンアミド又はジシアンジアミドと反応させ、その後、生成物を有機酸又は無機酸で処理して、処理した生成物をそれに対応する塩に転化する方法である。その結果生じた生成物は、本発明の意味におけるグアニジン反応生成物でもある。欧州公開特許第2300418号に記載のとおり、前記反応を、酸の存在下で直接実施することもでき、その場合、生成物はアルキルグアニジン化合物に対応する塩である。又は、アミンの塩を、ジシアンアミド又はナトリウムジシアンアミドの反応によって、ビグアニジンに転化してもよい。更に好適な一連の合成方法は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry「Guanidine and Derivatives」、及び、Katritzkyらによる概説(Journal of Organic Chemistry、2010年、76頁)に記載されている。
【0044】
本発明の目的のために好ましく使用できるグアニジン反応生成物は、グアニジン塩、特にグアニジン酸付加塩とポリアミンとを、好ましくは90℃~150℃の温度で、好ましくは5~36時間の反応時間で反応させることによる、有利な方法で得ることができ、その場合、形成されたアンモニアは、真空ポンプを使用して、反応混合物から任意に除去してもよい。反応が進行するにつれて反応混合物の粘度がかなり増加する可能性があるので、適切な溶媒を使用することは有利であり得る。更に、反応終了後、水と生成物とを混合することができる。生成物の粘度に応じて、前記混合を、室温又はより高温で、混合を実施してもよい。
【0045】
グアニジン塩とポリアミン、特に式(I)で表される化合物のモル比を5:1~1:5、好ましくは1:1~1:3、特に2:3~1:3として、グアニジン塩とポリアミン、特に式(I)で表される化合物との反応を実施する。グアニジン塩とポリアミンのモル比が1:3、1:2、又は2:3であることが特に好ましい。
【0046】
グアニジン反応生成物が後に組み込まれる系に応じて、任意ではあるが、次に続く工程で、粘度、溶解度、極性、及び混和性などの特性が、可能な限り、系に適切なものとなるように、前記反応生成物を少なくとも部分的に官能化剤と反応させることは利点がある。有用な官能化剤として、特に、アミノ基と反応することができる官能基を有するポリマー又はモノマー成分、例えばエポキシド、酸、ハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸塩などが挙げられる。必要に応じていくつかの実地試験により任意の官能化を日常的に実施できる当業者にとって、この手順自体、既知のものである。このように、グアニジン反応生成物の概念は、官能化したグアニジン反応生成物も含む。
【0047】
本発明の目的のために使用することができるグアニジン反応生成物は、塩基、例えばナトリウムエトキシドと混合して、対応する塩基性グアニジン誘導体に転化することができ、前記塩基性グアニジン誘導体は、その強い塩基性ゆえ、触媒として機能してPU系を生成することができる。ここで、また、本発明の目的のために使用することができるグアニジン反応生成物を扱う。
【0048】
原則として、本発明において任意の周知のグアニジン塩を反応させることができ、前記グアニジン塩としては、例えば、好ましくは塩酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、酢酸グアニジン、炭酸グアニジン、硫酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、又は硝酸グアニジンなどが挙げられる。特に塩酸グアニジン及び/又は炭酸グアニジンを、グアニジン塩として使用することができる。ビグアニジンとポリアミンとの反応から同様の方法で生じる生成物も、本発明の意味においては、グアニジン反応生成物である。
【0049】
更に、例えば国際公開第2008080184号によって当業者に知られるように、誘導体化したグアニジン塩の元の対イオン(すなわち、グアニジン反応生成物の元の対イオン)は、イオン交換体によって他の対イオンと置換されることが可能である。
【0050】
本発明で用いられる特に好適なグアニジン反応生成物は、式(II)
H[-(HN-CH2-CH2a-NH-C(=NHR+-)]c-NH-(CH2-CH2-NH-)bH (II)
で表される化合物であり、
前記化合物は、グアニジン塩を式(I)で表される化合物と反応させることによって得られ、式中、
aは、独立して0~6、有利には2~6、好ましくは3~5、特に3又は4であり、
bは、独立して0~6、有利には2~6、好ましくは3~5、特に3又は4であり、
cは、独立して1~4、好ましくは1又は2、好ましくは1であり、
Rは、独立して、H又は(CH2-CH2-NH-)dH、特にHであり、
dは、独立して0~6、有利には2~6、好ましくは3~5、特に3又は4であり、
d>0かつRがHでない場合、a及びbはそれぞれ0であってもよく、a>0の場合、d及びbはそれぞれ0であってもよく、又は、b>0の場合、d及びaはそれぞれ0であってもよく、
-は、陰イオン、好ましくはハロゲン化物、特に塩化物である。
【0051】
CO3 2-は、陰イオンとして機能してもよい。
【0052】
式(II)で表される好ましい化合物においては、式(II)で表される化合物中、a=bであり、かつ、a=b=2~6、好ましくは3~5、特には3又は4、より好ましくは3であり、X-は塩化物であることが好ましく、RはHであることが好ましく、c=1又は2であることが好ましい。これらの化合物は、特に、グアニジン塩と式(I)で表されるポリアミンとを反応させることによって得ることができる。
【0053】
したがって、本発明による方法の好ましい実施形態では、式(II)
H[-(HN-CH2-CH2a-NH-C(=NHR+-)]c-NH-(CH2-CH2-NH-)bH (II)
で表される化合物の存在下で、前記反応を実行し、
前記化合物は、グアニジン塩を式(I)で表される化合物と反応させることによって得られ、式中、
aは、独立して0~6、有利には2~6、好ましくは3~5、特に3又は4であり、
bは、独立して0~6、有利には2~6、好ましくは3~5、特に3又は4であり、
cは、独立して1~4、好ましくは1又は2、好ましくは1であり、
Rは、独立してH又は(CH2-CH2-NH-)dH、特にHであり、
dは、独立して0~6、有利には2~6、好ましくは3~5、特に3又は4であり、
d>0かつRがHではない場合、a及びbは、それぞれ0であってもよく、a>0の場合、d及びbは、それぞれ0であってもよく、又は、b>0の場合、d及びaは、それぞれ0であってもよく、
-は、陰イオン、好ましくはハロゲン化物、特に塩化物である。
【0054】
式(II)で表される好ましい化合物において、式(II)で表される化合物中、a=bであり、かつ、a=b=2~6、好ましくは3~5、特に3又は4、より好ましくは3であり、X-は塩化物であることが好ましく、RはHであることが好ましく、c=1又は2であることが好ましい。
【0055】
下記式(III)は、式(II)で表される化合物の一例を示し、式中、X-はCl-であり、a=b=3であり、c=2であり、RはHである。
【0056】
本発明の特に好ましい実施形態において、式(II)で表される化合物であって、本発明の方法において、式中、好ましくはa=b=2~6、特に3又は4である化合物の割合は、グアニジン塩を式(I)で表される化合物と反応させることによって得られる化合物の40wt%以上である。式(II)で表される化合物であって、式中、好ましくはa=b=2~6、特に3又は4である化合物の割合は、グアニジン塩を式(I)で表される化合物と反応させることによって得られる化合物の60wt%~80wt%、特に90wt%~98wt%であることが好ましい。
【0057】
本発明の好ましい一実施形態において、グアニジン反応生成物のみを添加するのではなく、好ましくはモル質量400g/mol未満、有利には300g/mol未満、特に250g/molの少なくとも1つの脂肪族ポリアミンを更に添加するが、前記脂肪族ポリアミンは、有利には少なくとも2つ以上のアミノ基を含む脂肪族ポリアミン、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサメチレンジアミン、1,8-ジアミノトリエチレングリコール、トリス(2-アミノエチル)アミンである。更に、任意に用いられる前記脂肪族ポリアミンは、例えば、ポリオール成分に対して、0.001wt%~10wt%、好ましくは0.01wt%~5wt%、特に0.05wt%~3wt%の量で使用してもよい。これは、ポリアミンPに対して重要ではない付加的な量として理解される。
【0058】
本発明の目的のためのグアニジン反応生成物、すなわち、本発明による好ましいポリアミンPであるグアニジン反応生成物を、現場で形成してもよい。すなわち、グアニジン反応生成物は、特にグアニジン塩とポリアミンとからなる好適な反応物からポリウレタン系を製造する場面において、ポリオール成分と少なくとも1つのイソシアネート成分との反応過程においてのみ形成される。したがって、換言すれば、本発明の方法は、グアニジン反応生成物、すなわち、本発明による好ましいポリアミンPであるグアニジン反応生成物を、ポリウレタン系を製造するための反応混合物においてのみ形成される可能性も含む。これは、本発明の好ましい実施形態に対応する。しかし、あらかじめ合成したグアニジン反応生成物を使用してポリウレタン系を製造することがより好ましい。
【0059】
ポリウレタン系を、また別の通例の方法で、先行技術に記載されたとおりに製造してもよい。これは、当業者にとって周知である。総合的概要は、例えば、Hanser/Gardner Publications Inc.(シンシナシティ、オハイオ州)発行のG.Oertel著「Polyurethane Handbook」(第二版、1994年)177頁~247頁に記載されている。本発明に従ってポリウレタン系を製造する方法において、ポリアミンP、好ましくはグアニジン反応生成物を、ポリオール成分100部に対し、0.01部~20部、好ましくは0.05部~5部、特に0.1部~3部の質量分率で使用することが好ましい。
【0060】
本発明に従ってポリウレタン系を製造する方法を実行し、更に、水、物理発泡剤、難燃剤、及び/又は更なる添加物を混合することは、有利であり得る。
【0061】
本発明の方法において、イソシアネート成分として任意のイソシアネートを用いてもよく、前記イソシアネートは特に、それ自体周知の、脂肪族多官能性イソシアネート、脂環式多官能性イソシアネート、芳香脂肪族多官能性イソシアネート、及び好ましくは芳香族多官能性イソシアネートである。本発明の目的のために好適なイソシアネートとして、例えば任意の多官能性有機イソシアネート、例えば4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)が挙げられる。純粋な形態をとる、又は異性体混合物としての種々のTDI異性体と同様に、MDIと粗MDI(「ポリメリックMDI」)として知られ、2~4の平均官能基を有する、より高度に濃縮された類似体との混合物は特に好適である。TDIとMDIとの混合物は、特に好適なイソシアネートである。
【0062】
2つ以上のイソシアネート反応性基を有する有機物全て、及びその調製物は、本発明の目的のためのポリオール成分として好適なポリオールであることが好ましい。ポリウレタン系、特にポリウレタンフォームを製造するために通常使用する、全てポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールが、好適なポリオールである。ポリオールが、1つ又は2つの酸素原子及び炭素原子で構成される5員環又は6員環を1つ以上有する化合物ではないことが好ましい。
【0063】
ポリエーテルポリオールは、多官能性アルコール又はアミンを、酸化アルキレンと反応させることによって得てもよい。ポリエステルポリオールは、多塩基性カルボン酸(例えばアジピン酸の場合は脂肪族、又は、例えばフタル酸又はテレフタル酸の場合の場合は芳香族であり得る)と、多価アルコール(通常グリコール)とのエステルを主成分として含むことが好ましい。天然油系ポリオール(NOP)を用いることもできる。これらのポリオールは、例えば大豆油又はパーム油などの天然油から得られ、改質された又は改質されていない状態で用いることができる。
【0064】
更なる種類のポリオールは、100:1~5:1、好ましくは50:1~10:1のモル比でポリオールとイソシアネートとを反応させた結果生じるプレポリマーとして得られるものである。
【0065】
好ましく用いられ得る他の更なる種類のポリオールは、いわゆる充填ポリオール(ポリマーポリオール)である。これらは、固形分40%以上の分散固体有機充填剤を含んでいる。このうち、例えば以下に記載するものを用いてもよい。
SANポリオール:スチレン-アクリロニトリル(SAN)を主成分とする分散したコポリマーを含む、高反応性ポリオール。
PHDポリオール:同様に分散した形態でポリ尿素を含む高反応性ポリオール。
PIPAポリオール:分散したポリウレタン、例えば従来のポリオール中でイソシアネートとアルカノールアミンとのその場の反応により形成されるもの、を含む高反応性ポリオール。
【0066】
用途に応じてポリオールに対して好ましくは5wt%~40wt%未満の範囲にある固形分は、気泡開放を改善する役割を担っており、これにより、ポリオールを、特にTDIと共に制御された形で形成することができ、フォームの収縮は発生しない。このように、固形物は重要な加工助剤として機能する。更なる機能は、固形分によって硬度を制御することであり、これによって、より高い固形分によりフォームの部分が高い硬度を有するようになるからである。
【0067】
固形物含有ポリオールを含む配合物は、自己安定性が著しく低いので、架橋反応による化学的安定化に加えて物理的安定化を必要とする傾向がある。
【0068】
ポリオールの固形分に応じて、これらを単独で又は上述の非充填ポリオールと混合して使用する。
【0069】
本発明の目的にとって好ましいイソシアネート成分とポリオール成分の比は、指数で表され、10~1000、好ましくは40~350の範囲にある。この指数は、実際に使用されるイソシアネートと、ポリオールとの化学量論反応のために算出されるイソシアネートの比を示す。指数100は、反応性基のモル比1:1を表す。
【0070】
本発明の方法に使用され得る好適な触媒は、イソシアネートのゲル反応(イソシアネート-ポリオール)、イソシアネートの発泡反応(イソシアネート-水)、又はイソシアネートの二量化若しくは三量化を触媒する物質であることが好ましい。代表的な例として、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、1,2-ジメチルイミダゾール、N-エチルモルホリン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、及びビス(ジメチルアミノエチル)エーテルなどのアミン類、有機カルボン酸のスズ塩、ジブチルスズジラウレートなどのスズ化合物、並びに、酢酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。使用する更なる触媒が、有機スズ化合物、特にジブチルスズジラウレートを含まないことが好ましい。
【0071】
これらの触媒が本発明の方法において好適に用いられる量は、触媒の種類に依存し、通常0.01pphp~5pphp(=ポリオール100重量部に対する重量部)の範囲にあり、カリウム塩類の場合は、0.1pphp~10pphpの範囲の量で用いられる。
【0072】
本発明の方法において好適に存在する水の量は、水に加えて物理発泡剤を使用するか否かによる。水だけで発泡させるフォームの場合、水分量は通常、好ましくは1pphp~20pphpの範囲であり、更に他の発泡剤を使用する場合は、使用する水の量は通常、0まで減少、又は、例えば0.1pphp~5pphpの範囲まで減少する。高いフォーム密度を得るためには、水も他のいずれの発泡剤も使用しないことが好ましい。
【0073】
本発明の目的のための好適な物理発泡剤として、気体、例えば液化CO2、並びに揮発性の液体、例えば炭素原子数4又は5の炭化水素、好ましくはシクロ-、イソ-、及びn-ペンタン-ヒドロフルオロカーボン、好ましくはHFC245fa、HFC134a、及びHFC365mfc、更に、HHO1233zd及びHHO1336mzzZなどのオレフィン系ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、好ましくはHCFC141b、ギ酸メチル及びジメトキシメタンなどの酸素含有化合物、及びヒドロクロロカーボン、好ましくはジクロロメタン及び1,2-ジクロロエタンが挙げられる。好適な発泡剤として更に、ケトン類(例えばアセトン)及びアルデヒド類(例えばメチラール)が挙げられる。
【0074】
使用する安定剤は、従来技術に記載の物質でもよい。本発明の組成物は、1つ以上の安定剤を含むことが有利である。その安定剤は、特に、炭素原子を含むケイ素化合物であり、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、有機変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、及びポリエーテル-ポリシロキサンコポリマーから選択することが好ましい。
【0075】
1つ以上の炭素原子を含む有用なケイ素化合物として、従来技術に記載の物質が挙げられる。特定の種類のフォームに特に好適なケイ素化合物を使用するのが好ましい。好適なシロキサンは、例えば、欧州公開特許第0839852号、欧州公開特許第1544235号、独国特許出願公開第102004001408号、国際公開第2005/118668号、米国特許出願公開第2007/0072951号、独国特許出願公開第2533074号、欧州公開特許第1537159号、欧州登録特許第533202号、米国特許第3,933,695号、欧州公開特許第0780414号、独国特許出願公開第4239054号、独国特許出願公開第4229402号、欧州登録特許第867465号などの参考文献に記載されている。ケイ素化合物は、従来技術に記載されているように得ることができる。好適な実施例は、例えば、米国特許第4,147,847号、欧州公開特許第0493836号、及び米国特許第4,855,379号に記載されている。
【0076】
有機変性ケイ素化合物を、特に使用することができる。特に好ましい有用な有機変性ケイ素化合物として、例えば、下記式(IV)に一致するものが挙げられる。
kmD’nop (IV)
式中、
M=[R21 2SiO1/2]、
D=[R11SiO2/2]、
D’=[R31SiO2/2]、
T=[R1SiO3/2]、
Q=[SiO4/2]、
k=0~22、好ましくは2~10、より好ましくは2、
m=0~400、好ましくは0~200、より好ましくは2~100、
n=0~50、好ましくは0.5~20、より好ましくは0.7~9、
o=0~10、好ましくは0~5、特に0、
p=0~10、好ましくは0~5、特に0、
2は、R1又はR3であり、
1は、独立してアルキル基、アリール基、又はH、好ましくはメチル、エチル、プロピル、又はフェニル、より好ましくはメチル又はフェニルであり、
3は、有機変性物、例えばポリエーテル、又は、N、S、O、P、F、Cl、Brからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する炭素原子1~30の1価の部分である。
式(IV)中、R3は、
-CH2CH2CH2O[CH2CH2O]a[CH2CH(CH3)O]b[CHR4CHR4O]c5
-CH2CH2CH2CN、
-CH2CH2CF3
-CH2CH2CH2Cl
からなる群から選択される部分であることが好ましく、
式中、
5は、アルキル、アリール、ウレタン、カルボキシ、シリル、又はH、好ましくはH、-Me、又は-C(O)Meであり、
4は、酸素が任意に割り込んでいてもよい、アルキル又はアリールであり、より好ましくはH、Me、Et、又はPhであり、
a=0~100、好ましくは0.5~70、より好ましくは1~40、
b=0~100、好ましくは0.5~70、より好ましくは0~40、
c=0~50、好ましくは0~15、特に0、
a+b+c>3である。
【0077】
未変性ケイ素化合物を、特に使用することができる。
特に好ましい有用な未変性ケイ素化合物として、例えば、下記式(V)に一致するものが挙げられる。
qr (V)
式中、
M及びDは、上記式(IV)で定義されたとおりであり、
q=2、
r=0~50、好ましくは1~40、より好ましくは2~30である。
【0078】
上述のケイ素化合物、特に式(IV)及び/又は(V)で表されるケイ素化合物を、個別に又は互いに組み合わせて使用することが特に好ましい。混合物の場合、更に、相容剤を使用してもよい。この相容剤を、脂肪族又は芳香族炭化水素、好ましくは脂肪族ポリエーテル又はポリエステルからなる群から選択してもよい。
【0079】
少なくとも10当量%(かつ、最大50当量%)の、式(IV)で表されるシロキサン化合物のR2部分が、(シロキサン化合物のR2部分の総数に対して)炭素原子数8~22のアルキル基であると有利である。
【0080】
ポリオール成分100質量部に対して、ケイ素化合物0.05質量部~10質量部を使用することが好ましい。
【0081】
特に、本発明によって使用する反応生成物と組み合わせて、上述のケイ素化合物を使用すると、本発明が求めているポリウレタンに関して、非常に良好な結果を得ることができる。
【0082】
水及び任意の物理発泡剤に加えて、又はその代わりに、本発明の添加物組成物は、気体を発生してイソシアネートと反応する他の化学発泡剤、例えばギ酸、カルバミン酸塩、及び炭酸塩などを含んでもよい。
【0083】
本発明の目的に好適な難燃剤は、好ましくは、液体有機リン化合物、例えば、リン酸トリエチル(TEP)などの無ハロゲン有機リン酸塩、リン酸トリス(1-クロロ-2-プロピル)(TCPP)及びリン酸トリス(2-クロロエチル)(TCEP)などのハロゲン化リン酸塩、並びにメタンホスホン酸ジメチル(DMMP)、プロパンホスホン酸ジメチル(DMPP)などの有機ホスホン酸塩であり、又は固体、例えばポリリン酸アンモニウム(APP)及び赤リンなどである。好適な難燃剤として、更に、例えばハロゲン化ポリオールなどのハロゲン化合物、並びに、メラミン及び膨張性グラファイトなどの固体が挙げられる。
【0084】
本発明の方法は、特に、加工性が良好で、アルデヒドの排出量が低いポリウレタン系、特にポリウレタンフォームを提供する。
【0085】
本発明の意味において、ポリウレタンという用語は、ジ-又はポリ-イソシアネート、ポリオール、及び、例えばアミンなどの他のイソシアネート反応性種から得られる任意のポリマーの一般用語として理解されるものであり、ウレタン結合が唯一又は主たる結合である種類のものでなくてもよい。ポリイソシアヌレート及びポリ尿素も、特に含まれる。
【0086】
本発明の方法によるポリウレタン系の製造、特に本発明の方法によるポリウレタンフォームの製造、及び/又はポリウレタン系/ポリウレタンフォームの製造は、当業者に周知の任意の方法によって、例えば手動で混合することによって、又は、好ましくは高圧若しくは低圧発泡機を使用することによって、実施してもよい。本発明の方法を、連続作業又はバッチ作業として実施することができる。バッチ作業は、成形フォーム、冷蔵庫、靴底、又はパネルを製造する方法にとって好ましい。連続方法は、断熱パネル、金属複合要素、スラブを製造する方法、又はスプレー技術にとって好ましい。
【0087】
本発明の方法において、本発明で使用するポリアミンP、特にグアニジン付加物と担体材料との組み合わせをウレタン結合を形成する反応の直前又は最中に、直接混合することが好ましい。その組み合わせは、混合ヘッドで、かつ、既製のポリオール系のためのバッチ工程において混合することが好ましい。好ましい実施形態によれば、ポリアミンP、特にグアニジン付加物を、シリカ又はポリアミンP、特にグアニジン付加物に直接分散することができ、また、シリカ、好ましくは溶剤に分散させたシリカを、ポリオール成分に、互いに別々に添加することができる。
【0088】
本発明のポリウレタン系は、ポリウレタン系の全組成物に対して、担体材料とポリアミンPとを、その総量で好ましくは0.001wt%~10wt%、有利には0.01wt%~5wt%、特に0.1wt%~3wt%含んでもよい。
【0089】
本発明のポリウレタン系は、ポリウレタンフォームであることが好ましく、特に、例えば、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、粘弾性フォーム、HRフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、熱成形可能なポリウレタンフォーム、又は一体フォームであり、好ましくはHRポリウレタンフォームである。
【0090】
本発明のポリウレタン系、好ましくはポリウレタンフォームは、例えば、冷蔵庫の断熱材、断熱パネル、サンドイッチ状素子、パイプの断熱材、スプレーフォーム、1-及び1.5-成分缶フォーム(1.5-成分缶フォームとは、缶内で容器を破壊することで製造されるフォームである)、模造木材、モデリングフォーム、包装用フォーム、マットレス、家具緩衝材、自動車シート緩衝材、ヘッドレスト、ダッシュボード、自動車内装品、自動車のルーフライナー、吸音材、ステアリングホイール、靴底、カーペット裏地用フォーム、フィルタフォーム、シーリングフォーム、シーラント、及び対応する製品を製造するための接着剤、バインダ若しくは塗料として、使用可能である。
【0091】
本発明は更に、ポリウレタンフォーム製造のための組成物を提供し、前記組成物は、少なくとも1つのウレタン及び/又はイソシアヌレート触媒と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つのイソシアネート成分と、少なくとも1つのポリオール成分とを含み、含まれている添加物は、担体材料とポリアミンP、好ましくはポリアミンPを含む1つ以上の支持化合物であり、グアニジン塩を、ポリアミン、特に式H2N-CH2-CH2-NH-(CH2-CH2-NH)x-CH2-CH2-NH2で表される化合物と反応させることによって得られる化合物とを含み、式中、xは0~4、好ましくは1~3、特に1である。より詳細には、説明の重複を避けるために、既になされている記載を参照する。
【0092】
この意味における組成物の概念には、多成分組成物も含まれ、前記多成分組成物においては、ポリウレタンフォームを製造するための化学反応を引き起こすために、2つ以上の成分が混合されていなければならない。この意味における組成物の概念には、特に、少なくとも1つのウレタン及び/又はイソシアヌレート触媒、少なくとも1つの発泡剤、少なくとも1つのイソシアネート成分、及び少なくとも1つのポリオール成分と、更に、担体材料とポリアミンP、特にグアニジン反応生成物との混合(混合物)が含まれる。
【0093】
本発明による好適なポリウレタンフォーム製造組成物は、例えば25wt%~75wt%の量のポリオール、例えば1wt%~7wt%の量の水、例えば0.05wt%~3wt%の量の触媒、例えば0wt%~25wt%(例えば0.1wt%~25wt%)の量の物理発泡剤、例えば0.3wt%~5wt%の量の安定剤(例えばケイ素含有及びケイ素非含有安定剤、特にケイ素含有及びケイ素非含有有機安定剤並びに界面活性剤)、例えば20~50wt%の量のイソシアネート、並びに、例えば0.00001wt%~5wt%(好ましくは0.00005wt%~2.5wt%)の量の本発明で用いられる担体材料及びポリアミンP、特にグアニジン反応生成物を含んでもよい。
【0094】
上述した組成物の好ましい実施形態について、特に担体材料とポリアミンP、特にグアニジン反応生成物とに関しては、上記の説明が参照される。
【0095】
本発明は更に、ポリウレタン系(特にポリウレタンフォーム)の総重量に基づき、好ましくは0.001wt%~10wt%、有利には0.01wt%~5wt%、特に0.1wt%~3wt%の量の、上述したような担体材料とポリアミンP、特にグアニジン反応生成物とを、ポリウレタン系(特にポリウレタンフォーム)に混合することによって、ポリウレタン系(特にポリウレタンフォーム)から、アルデヒドの総排出量、好ましくは、ホルムアルデヒドと、アセトアルデヒドと、アクロレインと、ベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒドとを含む排出量、有利には、ホルムアルデヒドと、アセトアルデヒドと、アクロレインと、ベンズアルデヒドとを含むアルデヒド排出量、特に、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドとを含むアルデヒド排出量を低減する方法を提供し、前記混合は、ポリウレタン系(特にポリウレタンフォーム)の製造前及び/又は製造中に実施してもよい。
【0096】
本発明は更に、上述したように、ポリウレタン系(特にポリウレタンフォーム)の総重量に対して、好ましくは0.001wt%~10wt%、有利には0.01wt%~5wt%、特に0.1wt%~3wt%の量で、担体材料とポリアミンP、特にグアニジン反応生成物とを含むポリウレタン系(特にポリウレタンフォーム)を提供し、前記ポリウレタン系は、ポリウレタン系、特にポリウレタンフォームの製造前及び/又は製造中に担体材料とポリアミンPとを混合することによって得られる。
【0097】
本発明は更に、アルデヒド、好ましくはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びベンズアルデヒドを含むアルデヒドの排出量が低い、特にホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの排出量が低いポリウレタンフォームを製造するための、担体材料とポリアミンP、特にグアニジン反応生成物の上述の使用を提供する。
【0098】
下記に挙げる実施例において、例を用いて本発明を説明するが、本発明、並びに明細書全体及び特許請求の範囲によって明らかである適用範囲は、実施例に記載される実施形態に限定されるものではない。
【0099】
実施例
【0100】
【0101】
【0102】
シリカ分散液の製造:
シリカ分散液を製造するために、分散剤(例えばグリコール)に分散させた相(シリカ)を、まず、容器(例えばステンレス鋼製ビーカー)に充填し、そして溶解ディスク(直径=6cm)を用いて30分間5,000rpmで分散させる。真空のDispermatを使用することで、分散作業中、空気の進入によって引き起こされ得るフォームの形成に対処する。

高圧発泡機によるHRポリウレタンフォームの製造
【0103】
MQ混合ヘッドを備えた高圧発泡機、Henneke HK 270を用いて、発泡作業を実施した。特に実際に関連する冷却フォーム系をシミュレートするのに、表1及び表2に明記した原料を使用した。使用した反応物各々の量は、表3及び表4に記載している。
【0104】
分離剤(Gorapur LK 8931-6 HW)と共に、混合ヘッドを用いて、あらかじめ処理した反応混合物を55℃に加熱した箱状の型(寸法40×40×10cm)に投入し、その後、箱状の型を密閉した。完成したフォームを、4分後に離型した。離型しやすくするためにスプレーガンを用いて蝋系分離剤を塗布した。
【0105】
下記パラメータにより発泡機を操作した。
ポリオール配合物に含まれる全成分の合計に対応するポリオール製造量(例えば、表3の107.2gフォームV1参照):107.2g/秒、イソシアネート製造量(指数75):45.7g/秒
投与時間:6秒
混合圧:ポリオール成分150bar、イソシアネート160bar
タンク内の原料温度:ポリオール25℃、イソシアネート26℃
【0106】
離型直後に、フォームに対して標準force-to-crush試験を実施した。

FORCE-TO-CRUSH測定
【0107】
FORCE-TO-CRUSH測定は、フォームの連続気泡含有量を測定する一般的な方法である。自動車のシートクッションの製造において、フォームの連続気泡含有量は、成形物の寸法安定性を保証し、製造後の収縮を防ぐための、重要なパラメータである。
その測定を以下のように実施した。
フォームパッドを離型した直後(<15秒後)に、パッドをFTC試験機の開始位置に配置する。FTC試験機において、測定足/測定板/測定針は、台板から115mm離れた位置に配され、フォームに接し、500mm/分の速度で移動する。力が5Nに達した際に、初期フォーム厚を測定する。5Nで停止することなく、測定足は、台板から50mm離れた位置に到達するまで、500mm/分でフォームを更に貫通する。この時点で、FTC1を測定する。中断することなく測定を実施する。測定足が500mm/分で開始位置(台板から115mm離れた位置)に戻り、第1サイクルが終了する。第1サイクルと同じサイクルを更に9回、遅滞なく完了させる。第10サイクルの後、測定足は開始位置で停止する。その後、フォームパッドを手動で十分に圧縮してから、試験機に戻す。最初の10サイクルと同じ条件下で、更なるサイクル(第11サイクル)を実施する。その後、そのサイクルの終了時のフォーム厚を、第1サイクル開始時にフォーム厚を測定した方法と同じ方法で測定する。FTC1後に開始時のフォーム厚を評価し、残っている独立気泡含有量はFTC10とFTC11との差異により示され、フォームの圧縮性を曲線の形(FTCの急降下の度合い)から読み取る。FTC11(その新しいフォームの硬さ)を、フォーム硬化の尺度として用いることができる。
【0108】
試験機の機器パラメータ:
万能試験機H10K-S
メーカー:Tinius Olsen
メーカー番号:672
最大測定:10kN
【0109】
DIN EN ISO 2439:2009-05による押込硬度測定(ILD-押込荷重、40%圧縮時の硬度)
【0110】
エラストマーフォームの押込硬度は、フォーム応力特性の尺度の一つである。上述の国際基準には、押込硬度を決定する4つの方法(A~D)と、エラストマーフォームの圧縮永久ひずみ係数及びヒステリシス損を決定する1つの方法(E)とが規定されている。今回、方法Aを使用する。方法Aの定義は以下のとおりである。
【0111】
方法A-試験室試験において、押し込みの個別測定に用いられる押込硬度指数(40%/30秒)の決定
【0112】
上記条件下で所定の押し込みを得るのに必要な力を測定する。測定は、FTC測定(上記参照)に使用したものと同じ機器を用いて、実施することができる。
【0113】
材料の製造後72時間未満に、その材料の試験を実施してはならない。しかし、16時間又は48時間という短い熟成時間も、これらの時間の平均結果が72時間の際の値の±10%未満の差異であることが実証できる場合は、許容される。上述の基準が満たされている場合、所定時の16時間又は48時間のいずれかの後に試験を実施することが許容される。
【0114】
ISO23529に記載されているように、試験前に、以下の一連の気候条件のうちの1つで、少なくとも16時間、応力及び張力無しに試験片を調整しなければいけない。
・(23±2)℃、相対湿度(50±5)%、又は
・(27±2)℃、相対湿度(65±5)%
【0115】
この調整期間を、製造後の待ち時間の最終部分にあててもよい。
【0116】
品質管理の場合には、製造後12時間以降に既に試験片を採取し、一連の所定の気候条件のうちの一つで、少なくとも6時間の調整の後に、試験を実施してもよい。
【0117】
試験片又は試験領域の中心が、適切な場合、押し込みラムの中心の真下に位置するように、試験片を接触板上に置く。試験片が、一方の側にくぼみを有している場合、くぼみのある側は接触板に面している。
【0118】
a)選択した試験領域に5Nの力をかけ、その後、試験片の厚さを測定する。その測定値を、押し込みゼロのポイントとして用いる。
【0119】
b)その後、試験片を、その厚さの(70±2.5)%の押し込みに達するまで押込速度(100±20)mm/分で押し込む。このように変形したら直ちに、負荷を同速度で除去する。
【0120】
c)この負荷及び負荷除去のサイクルを更に2回繰り返す。

押込硬度指数(40%/30秒)の決定
【0121】
3回目に負荷を除去した直後に、試験片を、その厚さの(40±1)%分、圧縮する。
【0122】
(30±1)秒の間、この押し込みを維持する。この期間の最後に、ニュートン単位で表される力を測定し、その後、試験片から負荷を除去する。
【0123】
上述した方法によって製造した成形フォームのホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド含有量を、VDA275基準(VDA275「Mouldings for the Automotive Interior-Determination of Formaldehyde Evolution」(自動車内装品用の成形物-ホルムアルデヒド排出量の測定)」修正したボトル法による測定、出典:VDA275、07/1994、www.vda.de)に従って分析した。

測定の原則
【0124】
特定の質量及びサイズを有する試験片を、閉じた1Lガラス瓶内の蒸留水の上方に固定し、上記方法における所定の期間、一定温度で保存した。次に、瓶を冷却し、吸収されたホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを蒸留水中で測定した。測定したホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの量を、成形物の乾燥重量で割った(mg/kg)。

分析
試験片:試料調製、試料採取、及び試料寸法
【0125】
離型後、フォームを21℃、相対湿度約50%で、24時間保存した。その後、(冷却した)成形物の幅全体に均一に分散している、好適かつ代表的な点で、成形物の試料を採取した。その後、フォームをアルミニウム箔で包み、ポリエチレン袋に封入した。
【0126】
試料のサイズは、各々、100×40×40mmであった(約9g)。一成形物当たり3つの試料をアルデヒド試験用に採取した。

試験手順:ホルムアルデヒド/アセトアルデヒドの放出
【0127】
封入した試料を、得た直後に直接測定した。分析前に、化学天秤を用いて0.001gの精度で試料を計量した。50mlの量の蒸留水を、使用する各ガラス瓶内にピペットを用いて入れた。試料をガラス瓶に投入し、容器を密閉し、保温キャビネット内で60℃の一定温度で3時間保存した。試験期間終了後に、容器を保温キャビネットから取り出した。室温で60分間静置した後、試料を試験瓶から取り出した。その後、DNPH法(ジニトロフェニルヒドラジン)によって誘導体化した。その際、900μlの水相を100μlのDNPH溶液と混合した。DNPH溶液は、以下のようにして調製した。MeCN(アセトニトリル)40mL中のDNPH50mgを250μLの希HCl(1:10)で酸性化し、MeCNで50mLにした。誘導体化を行った後、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)を用いて試料を分析した。個々のアルデヒド同族体への分離を行った。
【0128】
HPLC装置パラメータ
分析には、以下の装置を使用した。
Agilent Technologies1260
クロマトグラフィカラム:Phenomenex Luna250*4.6mm C18、粒径5μ
移動相:水アセトニトリル勾配
検出:UV365nm
【0129】
【0130】
原料の量は、グラムで表されている。
【0131】
フォーミング結果は、添加物1の添加によって、添加物(V1)を含まないゼロフォームと比較して、ホルムアルデヒド排出(V2)に良好な変化をもたらしたが、独立気泡含有量(FTC)及びILD硬度においては更に著しく低下したことを示す。V1とV2のFTC1値の差は、ほぼ20%であり、これは独立気泡含有量の重大な低下と判断することができ、したがって、配合物の加工性に重大な影響を与えている。
【0132】
添加物2(EM1)を更に添加物1に添加(個別で添加)した場合、良好な効果は、発生するホルムアルデヒドの排出量の著しい低減という形で見出され、これは検出限界に近い。更に、独立気泡含有量(FTC1~10、11)及びILD硬度は、ほぼ出発値にまで増加し得る。添加物1及び添加物2が同じ混合比であらかじめ混合され、その後、添加される(EM2)場合、同じ結果が得られる。
【0133】
実施例EM3は、EM2と同じ混合物であるが、担体物質の比率が、より低い。ここで観察される特性の改善の程度は、同オーダーである。グアニジン反応生成物に直接に分散された(グアニジン反応生成物がここでそのように機能しているため、追加の分散剤無しの)Aerosil分散液としての実施例EM4は、同様に、比較的良好な結果をもたらす。
【0134】
フォーミング結果は、担体材料及びポリアミンPの本発明による添加によって、ホルムアルデヒド排出が低減されたPUフォームを製造することができ、独立気泡含有量(FTC)に反映されるILD硬度及び加工性を開始時のレベルにほぼ維持することができることを示す。
【0135】
【0136】
原料の量は、グラムで表されている。
【0137】
フォーミング結果は、添加物Aの添加によって、添加物(V3)を含まないゼロフォームと比較して、ホルムアルデヒド排出(V4)に良好な変化をもたらしたが、独立気泡含有量(FTC)は更に著しく低下し、この場合、このように低いので、ILD硬度もまた著しく低下したことを示す。V3とV4のFTC1値の差は、30%超でさえあり、これは独立気泡含有量の重大な低下と判断され、したがって、配合物の加工性に重大な影響を与えている。
【0138】
添加物Aの代わりに、本発明による添加物B(EM5)を添加(既に完全に分散している変形体)する場合、良好な効果は、ホルムアルデヒド排出が低減したフォームに見出されるが、ここでは特に、独立気泡含有量(FTC1~10、11)の向上、及び開始時の値にまでほぼ戻ったILD硬度に良好な効果が見出される。
【0139】
フォーミング結果は、担体材料及びポリアミンPの本発明による添加によって、ホルムアルデヒド排出が低減したPUフォームを製造することができ、独立気泡含有量(FTC)に反映されるILD硬度及び加工性を開始時のレベルにほぼ維持することができる。