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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20230310BHJP
   F16J 15/12 20060101ALI20230310BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
F16J15/10 N
F16J15/12 F
F16J15/10 S
H01R13/52 301H
H01R13/52 301G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018177753
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020051434
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 侑己
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0012234(US,A1)
【文献】特開2012-141040(JP,A)
【文献】特開2015-152042(JP,A)
【文献】特開2018-017330(JP,A)
【文献】特開2012-128959(JP,A)
【文献】特開平08-303603(JP,A)
【文献】特開平08-210513(JP,A)
【文献】特表2018-501440(JP,A)
【文献】実開昭63-014067(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2001/0040348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
F16J 15/3204-15/3236
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに設けられた開口に装着され、前記開口に挿通される挿通部材と前記ハウジングの開口の内周面との間の環状隙間を封止する密封装置であって、
ゴム弾性体製の密封装置本体と、
前記密封装置本体の内部に埋設される補強環と、
を備え、
前記密封装置本体は、
前記補強環が設けられた部分から、前記密封装置を前記開口に装着する際の装着方向の反対方向に向かって、前記補強環における装着方向反対側の端部よりも更に装着方向の反対側かつ外周側に伸び、前記ハウジングの開口の内周面に当接するように構成される外周リップ部と、
前記補強環が設けられた部分から、装着方向の反対方向に向かって内周側に伸び、前記挿通部材の外周面に当接するように構成される内周リップ部と、
前記補強環が設けられた部分から、装着方向に伸び、前記補強環における装着方向側の端部よりも装着方向側において外周面に段差部を有する筒状部と、
前記筒状部の前記段差部より装着方向側の外周面に設けられた突起部と、
を有し、
前記筒状部の前記段差部より装着方向側の外周面の位置は、装着方向と反対方向側の外周面の位置より前記密封装置本体における内周面側であり、前記段差部は、前記開口の内周面における前記外周リップ部が当接する部分より装着方向側に設けられた内向きの凸部に装着方向に係合し、
前記突起部は、前記凸部に装着方向と反対方向に係合することを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記補強環は金属製である請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記補強環は筒状であり、かつ、端部が屈曲している請求項1に記載の密封装置。
【請求項4】
前記突起部の装着方向の先端部は、装着方向に沿って内周面側に近づく傾斜面を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の密封装置。
【請求項5】
前記突起部は前記筒状部の周方向に環状に設けられる請求項1~4のいずれか1項に記載の密封装置。
【請求項6】
前記突起部は前記筒状部の周方向に間隔を空けて複数設けられる請求項1~4のいずれか1項に記載の密封装置。
【請求項7】
ハウジングに設けられた開口に装着され、前記開口に挿通される挿通部材と前記ハウジングの開口の内周面との間の環状隙間を封止する密封装置であって、
ゴム弾性体製の密封装置本体と、
前記密封装置本体の内部に埋設される補強環と、
を備え、
前記密封装置本体は、
前記補強環が設けられた部分から、前記密封装置を前記開口に装着する際の装着方向の反対方向に向かって外周側に伸び、前記ハウジングの開口の内周面に当接するように構成される外周リップ部と、
前記補強環が設けられた部分から、装着方向の反対方向に向かって内周側に伸び、前記挿通部材の外周面に当接するように構成される内周リップ部と、
前記補強環が設けられた部分から、装着方向に伸び、外周面に段差部を有する筒状部と、
前記筒状部の前記段差部より装着方向側の外周面に設けられた突起部と、
を有し、
前記筒状部の前記段差部より装着方向側の外周面の位置は、装着方向と反対方向側の外周面の位置より前記密封装置本体における内周面側であり、前記段差部は、前記開口の内周面における前記外周リップ部が当接する部分より装着方向側に設けられた内向きの凸部に装着方向に係合し、
前記突起部は、前記凸部に装着方向と反対方向に係合するように構成されており、
前記突起部は前記筒状部の周方向に間隔を空けて複数設けられると共に、
前記開口はオーバル形状であり、
前記突起部は前記開口の長手方向の両端部に複数設けられ、短手方向の両端部には設けられないことを特徴とする密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングとそれに挿入される挿通部材との間の環状隙間をシールする密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジングとそれに挿入される挿通部材との間の環状隙間をシールする密封装置としては、コネクタが挿入されるケースやカバーに装着されるガスケットやコネクタシールがある。特許文献1には電気機器の接続に用いられるシール構造及びコネクタ構造に関する技術が開示されている。特許文献2には、電気機器のコネクタの嵌合構造において、金属製のプレートをゴムで囲んだ構成の密封装置によってコネクタのシールを行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-123329号公報
【文献】国際公開第2010/113243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような密封装置は、ハウジングに設けられた開口にハウジングの外部から装着されるため、装着し易いこと、ハウジングの所定の位置に正確に装着できること、さらに、装着した密封装置が容易にハウジングから脱落してしまわないことが求められる。しかしながら、装着のし易さを向上させようとして、密封装置が変形し易い構成とすると、所定の位置から外れ易くなり、装着した密封装置が脱落し易くなってしまう可能性がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、装着し易く且つ脱落しにくい密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明の密封装置は、
ハウジングに設けられた開口に装着され、前記開口に挿通される挿通部材と前記ハウジングの開口の内周面との間の環状隙間を封止する密封装置であって、
ゴム弾性体製の密封装置本体と、
前記密封装置本体の内部に埋設される補強環と、
を備え、
前記密封装置本体は、
前記補強環が設けられた部分から、前記密封装置を前記開口に装着する際の装着方向の反対方向に向かって、前記補強環における装着方向反対側の端部よりも更に装着方向の反対側かつ外周側に伸び、前記ハウジングの開口の内周面に当接するように構成される外周リップ部と、
前記補強環が設けられた部分から、装着方向の反対方向に向かって内周側に伸び、前
記挿通部材の外周面に当接するように構成される内周リップ部と、
前記補強環が設けられた部分から、装着方向に伸び、前記補強環における装着方向側の端部よりも装着方向側において外周面に段差部を有する筒状部と、
前記筒状部の前記段差部より装着方向側の外周面に設けられた突起部と、
を有し、
前記筒状部の前記段差部より装着方向側の外周面の位置は、装着方向と反対方向側の外周面の位置より前記密封装置本体における内周面側であり、前記段差部は、前記開口の内周面における前記外周リップ部が当接する部分より装着方向側に設けられた内向きの凸部に装着方向に係合し、
前記突起部は、前記凸部に装着方向と反対方向に係合することを特徴とする密封装置である。
【0007】
この密封装置は、筒状部よりも装着方向と反対方向側の部分が外周リップ部と内周リップ部とにより断面Y字状に構成されており、密封装置をハウジングの開口に装着する際に外周リップ部及び内周リップ部が撓むため、装着し易い。また、小さい開口にも装着が容易である。
【0008】
密封装置における補強環が設けられた部分より装着方向側にはゴム弾性体製の筒状部があり、筒状部は段差部を有する。段差部より装着方向と反対方向の部分(第1の部分)は、補強環が設けられた部分に隣接する。段差部より装着方向の部分(第2の部分)は、外周面の位置が第1の部分の外周面の位置より内側にある。外周面の位置の違いにより第1の部分と第2の部分との間の段差部は、ハウジングの開口の内周面に設けられた凸部に装着方向に係合する。従って、密封装置の装着時に正確な位置決めが可能である。
【0009】
密封装置を開口に装着した後は、筒状部の段差部より装着方向の部分(第2の部分)の外周面に設けられた突起部が、装着方向と反対方向に凸部に係合する。従って、密封装置の抜け止めがなされ、装着後に密封装置が脱落することが抑制される。すなわち、挿通部材を装着後は、挿通部材が妨げになり、突起(第2の部分)が内周側に撓まないため、脱落を防止する。
【0010】
密封装置における補強環が設けられた部分と、筒状部における突起部が設けられた部分(第2の部分)と、の間は、ゴム弾性体製の筒状部の一部(第1の部分)である。そのため、密封装置の装着時に密封装置が変形し易く、装着性が向上する。
【0011】
ハウジングによって隔てられた空間のうち装着方向側の空間を内部、装着方向と反対方向側の空間を外部とすると、外部の圧力は外周リップ部をハウジングの開口の内周面に押し付けるように作用するとともに、内周リップ部を挿通部材の外周面に押し付けるように作用する。そのため、高いシール性能を発揮する。
【0012】
このように、本発明に係る密封装置によれば、装着の容易性の向上と脱落の抑制とを両立することができる。
【0013】
本発明に係る密封装置においては、前記補強環は金属製としても良い。
これにより補強環の剛性が高くなるため、密封装置の脱落が抑制される。
【0014】
本発明に係る密封装置においては、前記補強環は筒状であり、かつ、端部が屈曲している構成としても良い。
これにより密封装置を開口に装着する際にねじりに対する変形が抑制される。従って、段差部や突起部と開口の凸部との係合が外れてしまうことが抑制され、密封装置の脱落が抑制される。
【0015】
本発明に係る密封装置においては、前記突起部の装着方向の先端部は、装着方向に沿って内周面側に近づく傾斜面を有する構成としても良い。
これにより密封装置の装着時の開口の凸部と突起部との抵抗が低減されるため、密封装置の装着が容易になる。
【0016】
本発明に係る密封装置においては、前記突起部は前記筒状部の周方向に環状に設けられ
る構成としても良い。
これにより開口の凸部との係合がより確実になり、密封装置の脱落を抑制することができる。
【0017】
本発明に係る密封装置においては、前記突起部は前記筒状部の周方向に間隔を空けて複数設けられる構成としても良い。
これにより筒状部が変形し易くなるため、装着性の向上と脱落の抑制とを両立することができる。
【0018】
本発明に係る密封装置においては、ハウジングに設けられた開口に装着され、前記開口に挿通される挿通部材と前記ハウジングの開口の内周面との間の環状隙間を封止する密封装置であって、
ゴム弾性体製の密封装置本体と、
前記密封装置本体の内部に埋設される補強環と、
を備え、
前記密封装置本体は、
前記補強環が設けられた部分から、前記密封装置を前記開口に装着する際の装着方向の反対方向に向かって外周側に伸び、前記ハウジングの開口の内周面に当接するように構成される外周リップ部と、
前記補強環が設けられた部分から、装着方向の反対方向に向かって内周側に伸び、前記挿通部材の外周面に当接するように構成される内周リップ部と、
前記補強環が設けられた部分から、装着方向に伸び、外周面に段差部を有する筒状部と、
前記筒状部の前記段差部より装着方向側の外周面に設けられた突起部と、
を有し、
前記筒状部の前記段差部より装着方向側の外周面の位置は、装着方向と反対方向側の外周面の位置より前記密封装置本体における内周面側であり、前記段差部は、前記開口の内周面における前記外周リップ部が当接する部分より装着方向側に設けられた内向きの凸部に装着方向に係合し、
前記突起部は、前記凸部に装着方向と反対方向に係合するように構成されており、
前記突起部は前記筒状部の周方向に間隔を空けて複数設けられると共に、
前記開口はオーバル形状であり、
前記突起部は前記開口の長手方向の両端部に複数設けられ、短手方向の両端部には設けられないことを特徴とする。
突起部を開口の長手方向の両端部に設けることで、ゴム弾性体製の筒状部が変形し易くなるため、密封装置の装着性が向上する。また、長手方向の両端部に複数の突起部を設けることで、脱落を抑制することができる。従って、装着性の向上と脱落の抑制を両立することができる。
【0019】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、装着し易く且つ脱落しにくい密封装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の実施例1に係る密封装置の模式的断面図である。
図2図2は本発明の実施例1に係る密封装置の模式的上面図である。
図3図3は本発明の実施例1に係る密封装置の斜視図である。
図4図4は本発明の実施例1に係る密封装置の断面を示す斜視図である。
図5図5は本発明の実施例1に係る密封装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
図1図5を参照して、本発明の実施例に係る密封装置について説明する。
【0024】
(実施例1)
図1は実施例1に係る密封装置の模式的断面図である。図2は本発明の実施例1に係る密封装置の模式的上面図である。図1の図中左側は図2におけるAA断面を示しており、図1の図中右側は図2におけるBB断面を示している。図3は本発明の実施例1に係る密封装置の斜視図である。図4は本発明の実施例1に係る密封装置の断面を示す斜視図である。図5は本発明の実施例1に係る密封装置の側面図である。
【0025】
密封装置100は、ハウジング200に設けられた開口201に装着され、開口201に挿通される挿通部材300の外周面301とハウジング200の開口201の内周面202との間の環状隙間を封止する。図1は、密封装置100に外力がかかっていない状態を示した図であるが、説明の便宜上、密封装置100が装着されるハウジング200と密封装置100に挿通される挿通部材300との位置関係を示すためにハウジング200及び挿通部材300を破線で示している。図2に示すように、実施例1の密封装置100は
、オーバル形状の開口201に装着可能な形状である。密封装置100としては、ガスケットやコネクタシール等を例示できる。ハウジング200としては、車両のPCU(パワー・コントロール・ユニット)のカバー等を例示できる。挿通部材300としては、PCUに接続されるコネクタ等を例示できる。また、インバータやコンバータ等にも適用可能である。ただし、本発明の密封装置を適用可能なハウジングや挿通部材はこれらの例示に限定されない。一般に、ハウジングの穴とシャフト間のシールであれば、特に限定されることなく使用可能である。
【0026】
密封装置100は、ハウジング200の開口201の周縁部に、図中の上側から下側へ矢印Iが示す方向に装着される。この方向を以下、装着方向という。実施例1では、ハウジング200によって隔てられた空間のうち密封装置100の装着方向Iの空間S1を「内部」、装着方向Iの反対方向の空間S2を「外部」とする。
【0027】
密封装置100は、ゴム弾性体製の密封装置本体110と、密封装置本体110の内部に埋設される金属製の補強環120とを備える。補強環120は、筒状であり、かつ装着方向の端部において外周面側に屈曲した折り曲げ部121を有する。
【0028】
密封装置本体110は、補強環120が設けられた部分から、装着方向Iの反対方向に向かって外周側に伸び、ハウジング200の開口201の内周面202に当接するように構成される外周リップ部111を有する。また、密封装置本体110は、補強環120が設けられた部分から、装着方向Iの反対方向に向かって内周側に伸び、挿通部材300の外周面301に当接するように構成される内周リップ部112を有する。
【0029】
密封装置本体110は、補強環120が設けられた部分から装着方向Iに伸び、外周面に段差部116を有する筒状部117を有する。筒状部117の段差部116より装着方向I側の外周面119の位置は、段差部116より装着方向Iの反対方向側の外周面118の位置より内周面側である。段差部116は、開口201の内周面202における外周リップ部111が当接する部分204より装着方向I側に設けられた内向きの凸部203に対し装着方向に係合する。
【0030】
密封装置本体110は、筒状部117の段差部116より装着方向I側の外周面119に設けられた突起部115を有する。突起部115は、開口201の凸部203に対し装着方向と反対方向に係合する。突起部115の装着方向Iの先端部は、装着方向Iに沿って内周面側に近づく傾斜面1151を有する。
【0031】
実施例1では、図3に示すように、突起部115は、筒状部117の周方向に間隔を空けて複数設けられる。詳細には、突起部115は、オーバル形状の長手方向の両端部に2個ずつ設けられ、短手方向の両端部には設けられていない。
【0032】
(実施例1に係る密封装置の優れた点)
上記のように構成された実施例1の密封装置100は、筒状部117より装着方向Iと反対方向側の部分が外周リップ部111と内周リップ部112とにより断面Y字状に構成されている。これにより、密封装置100をハウジング200の開口201に装着する際に外周リップ部111と内周リップ部112が撓むため、装着し易い。また、開口201の幅が狭い場合でも密封装置100を装着し易い。
【0033】
密封装置100における補強環120が設けられた部分より装着方向I側には、ゴム弾性体製の筒状部117があり、筒状部117は段差部116を有する。段差部116より装着方向Iと反対方向の部分113(第1の部分)は、補強環120が設けられた部分に隣接する。段差部116より装着方向Iの部分114(第2の部分)は、外周面の径方向
位置が第1の部分113の外周面の径方向位置より内側にある。このような外周面の径方向位置の違いにより、第1の部分113と第2の部分114の間の段差部116は、ハウジング200の開口201の内周面202に設けられた内向きの凸部203に対し装着方向に係合する。従って、密封装置100の装着時に正確な位置決めが可能である。
【0034】
密封装置100を開口201に装着した後は、筒状部117の段差部116より装着方向Iの部分(第2の部分114)の外周面119に設けられた突起部115が、装着方向Iと反対方向に凸部203に係合する。従って、密封装置100の抜け止めがなされ、装着後に密封装置100が脱落することが抑制される。
【0035】
密封装置100における補強環120が設けられた部分と、筒状部117における突起部115が設けられた部分(第2の部分114)と、の間は、ゴム弾性体製の筒状部117の一部(第1の部分113)である。そのため、密封装置100の装着時に密封装置100が変形し易く、装着性が向上する。
【0036】
外部S2の圧力は外周リップ部111をハウジング200の開口201の内周面202に押し付けるように作用するとともに、内周リップ部112を挿通部材300の外周面301に押し付けるように作用する。従って、開口201の内周面202と挿通部材300の外周面301との間の環状隙間を封止するための高いシール性能を発揮する。
【0037】
補強環120は金属製の筒状であり、端部が屈曲しているため、高い剛性を有する。そのため、密封装置100を開口201に装着する際にねじりに対する変形が抑制される。従って、段差部116や突起部115と開口201の凸部203との係合が外れてしまうことが抑制され、密封装置100の脱落が抑制される。
【0038】
突起部115の装着方向の先端部が傾斜面1151になっているため、密封装置100の装着時の開口201の凸部203と突起部115との間の抵抗が低減され、密封装置100の装着性が向上する。
【0039】
開口201はオーバル形状であり、突起部115はオーバル形状の長手方向の両端部に設けられ、短手方向の両端部には設けられないため、ゴム弾性体製の筒状部117が変形し易くなる。これにより、密封装置100の装着性が向上する。また、突起部115はオーバル形状の長手方向の両端部に間隔を空けて複数設けられるため、密封装置100の脱落が抑制される。
【0040】
このように、実施例1に係る密封装置100によれば、密封装置100の装着の容易性の向上と、脱落の抑制とを両立することができる。
【0041】
(その他)
実施例1では補強環が金属製である構成を例示したが、補強環の材質は金属に限らない。密封装置本体110を構成するゴム弾性体より高硬度の樹脂等でも良い。また、補強環の装着方向側の先端が外周面側に屈曲した構成を例示したが、補強環の屈曲位置は装着方向の反対方向側の先端でも良いし、屈曲方向は内周面側でも良い。
【0042】
実施例1では、オーバル形状の開口201に装着可能な形状に構成された密封装置の例を説明したが、密封装置の形状は装着する開口の形状に応じて適宜決定されるものであり、実施例1で例示した形状に限定されない。開口の形状が円、楕円、角丸長方形等であっても、密封装置の形状を円、楕円、角丸長方形等に構成することで、本発明を適用することができる。
【0043】
実施例1では、突起部が周方向に間隔を空けて複数設けられる構成の密封装置を例示したが、突起部は周方向に環状に設けられる構成としても良い。突起部を環状に設けることにより、開口の凸部との係合が外れにくくなるため、脱落抑制の効果が高くなる。
【符号の説明】
【0044】
100:密封装置
110:密封装置本体
111:外周リップ部
112:内周リップ部
113:第1の部分
114:第2の部分
115:突起部
1151:傾斜面
116:段差部
117:筒状部
118:外周面
119:外周面
120:補強環
200:ハウジング
201:開口
202:内周面
203:凸部
204:外周リップ部が当接する部分
300:挿通部材
301:外周面
図1
図2
図3
図4
図5