(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】監視システム及び監視方法
(51)【国際特許分類】
B61L 25/00 20060101AFI20230310BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20230310BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
B61L25/00
H04N7/18 D
H04N7/18 U
G08B25/00 510M
(21)【出願番号】P 2018181170
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】澤田 恒
(72)【発明者】
【氏名】坪井 敏之
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-196259(JP,A)
【文献】特開2005-231560(JP,A)
【文献】特開2004-224548(JP,A)
【文献】特開平09-226584(JP,A)
【文献】特開2015-016704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/00
H04N 7/18
G08B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅ホームを映像にて監視する監視システムであって、
複数の駅の各々に対応して配置された構内装置を具備し、複数の前記構内装置はネットワーク網を介して接続され、
前記構内装置は、
自駅の駅ホーム上の監視映像を取得し、画像認識処理により当該駅ホームに要支援者が存在するか否かを認識する映像解析部と、
前記映像解析部によって前記要支援者が存在すると認識された場合に、前記要支援者を含む映像を要支援者映像として前記ネットワーク網を介して前駅における前記構内装置に送信する要支援者映像送信部と、
次駅から要支援者を含んだ次駅要支援者映像を前記ネットワーク網を介して取得する要支援者映像取得部と、
自駅において停車中の列車に対して無線通信を用いて前記次駅要支援者映像を前記列車内にて表示するべき映像として送信する表示画像送信部と、
を備えることを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記表示画像送信部は、前記自駅の駅ホームの監視映像と、次駅から取得した前記次駅要支援者映像とを、前記列車内にて表示すべき映像として送信することを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記表示画像送信部は、前記監視映像と前記次駅要支援者映像とを並べて配置した加工映像を生成し、前記加工映像を前記列車内にて表示すべき映像として送信することを特徴とする請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記表示画像送信部は、前記次駅要支援者映像が存在しない場合、前記次駅要支援者映像が配置される領域と、前記監視映像とを配置した加工映像を生成し、前記加工映像
を前記列車内にて表示すべき映像として送信することを特徴とする請求項3に記載の監視システム。
【請求項5】
前記次駅要支援者映像は、含まれる前記要支援者の位置情報を有しており、
前記表示画像送信部は、前記表示すべき映像の中に前記位置情報を含めることを特徴とする請求項1~4までのいずれかに記載の監視システム。
【請求項6】
前記構内装置は、
列車の運行状況をもとに、前記要支援者映像の送信先となる駅を決定する送信先判断部を具備することを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の監視システム。
【請求項7】
前記自駅に入線中の列車を検出する列車検出部を備え、
前記表示画像送信部は、自駅で検出された前記要支援者を含んだ前記要支援者映像を、前記列車内にて表示するべき映像として送信することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項8】
駅ホームを駅毎に得られた映像にて監視する監視方法であって、
次駅における前記映像中の要支援者を映像解析によって認識し、前記要支援者を含んだ次駅要支援者映像をネットワーク網を介して自駅に送信する要支援者映像送信工程と、
次駅から前記次駅要支援者映像を取得する要支援者映像取得工程と、
自駅において停車中の列車に対して無線通信を用いて前記次駅要支援者映像を前記列車内にて表示するべき映像として送信する表示画像送信工程と、
を備えることを特徴とする監視方法。
【請求項9】
前記表示画像送信工程は、前記自駅の駅ホームの監視映像と、次駅から取得した前記次駅要支援者映像とを、前記列車内にて表示すべき映像として送信することを特徴とする請求項8に記載の監視方法。
【請求項10】
前記次駅要支援者映像は、含まれる前記要支援者の位置情報を有しており、
前記表示画像送信工程は、前記表示すべき映像の中に前記位置情報を含めることを特徴とする請求項8または9に記載の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視システム及び監視方法に係り、例えば、駅プラットフォーム上の要支援者を監視し適切な支援を可能とする監視システム及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のホーム監視ワンマンシステムの運転路線下にて、車椅子利用者や身体障がい者等の要支援者が乗車する駅では、運転士が駅到着後に確認し乗車の手助けを行っていた。例えば、車両が、駅到着し停車中に3台の駅ホームカメラ1~3の映像を、駅配置ミリ波無線機から停車中の車両に搭載しているミリ波無線機間でデータ伝送し、駅ホームのカメラ映像番号順に車両モニタに表示し、運転士が確認する。車両モニタに表示されたホーム映像を確認し、身体障がい者等のような要支援者がいた場合に、乗車の見守り支援や乗車の手助けを実施していた。
【0003】
そのような乗車補助に関する技術として、例えば、駅舎用映像監視システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。この技術では、エレベータ乗場に設けられた車椅子呼びボタンの押下操作で、そのボタンに関連付けられたホーム監視カメラの映像を表示させることで駅構内のホームにおける車椅子利用者の存在を駅員室等へ車椅子利用者の存在を通報する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のホーム監視ワンマンシステムでは、運転士が車両モニタを確認して、要支援者がいた場合に乗車の手助けを行っていた。要支援者は乗車駅の所定の場所から必ずしも乗るわけではなく、先頭車両から乗車、あるいは最後尾から乗車の乗車場所が不明確である。このため、到着後に確認して乗車支援することになり、乗車までに時間がかかり定時運行に支障を及ぼすという課題があった。また、要支援者がホーム下に転落した場合は、駅入線時に運転士が目視で確認後、車両を止めることとなり、人身事故の回避が難しい状況も発生するという課題もあった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、駅ホームを映像にて監視する監視システムであって、複数の駅の各々に対応して配置された構内装置を具備し、複数の前記構内装置はネットワーク網を介して接続され、前記構内装置は、自駅の駅ホーム上の監視映像を取得し、画像認識処理により当該駅ホームに要支援者が存在するか否かを認識する映像解析部と、前記映像解析部によって前記要支援者が存在すると認識された場合に、前記要支援者を含む映像を要支援者映像として前記ネットワーク網を介して前駅における前記構内装置に送信する要支援者映像送信部と、次駅から要支援者を含んだ次駅要支援者映像を前記ネットワーク網を介して取得する要支援者映像取得部と、自駅において停車中の列車に対して無線通信を用いて前記次駅要支援者映像を前記列車内にて表示するべき映像として送信する表示画像送信部と、を備える。
前記表示画像送信部は、前記自駅の駅ホームの監視映像と、次駅から取得した前記次駅要支援者映像とを、前記列車内にて表示すべき映像として送信してもよい。
前記表示画像送信部は、前記監視映像と前記次駅要支援者映像とを並べて配置した加工映像を生成し、前記加工映像を前記列車内にて表示すべき映像として送信してもよい。
前記表示画像送信部は、前記次駅要支援者映像が存在しない場合、前記次駅要支援者映像が配置される領域と、前記監視映像とを配置した加工映像を生成し、前記加工映像を前記列車内にて表示すべき映像として送信してもよい。
前記次駅要支援者映像は、含まれる前記要支援者の位置情報を有しており、
前記表示画像送信部は、前記表示すべき映像の中に前記位置情報を含めてもよい。
前記構内装置は、列車の運行状況をもとに、前記要支援者映像の送信先となる駅を決定する送信先判断部を備えてもよい。
前記自駅に入線中の列車を検出する列車検出部を備え、前記表示画像送信部は、自駅で検出された前記要支援者を含んだ前記要支援者映像を、前記列車内にて表示するべき映像として送信してもよい。
本発明は駅ホームを駅毎に得られた映像にて監視する監視方法であって、次駅における前記映像中の要支援者を映像解析によって認識し、前記要支援者を含んだ次駅要支援者映像をネットワーク網を介して自駅に送信する要支援者映像送信工程と、次駅から前記次駅要支援者映像を取得する要支援者映像取得工程と、自駅において停車中の列車に対して無線通信を用いて前記次駅要支援者映像を前記列車内にて表示するべき映像として送信する表示画像送信工程と、を備える。
前記表示画像送信工程は、前記自駅の駅ホームの監視映像と、次駅から取得した前記次駅要支援者映像とを、前記列車内にて表示すべき映像として送信してもよい。
前記次駅要支援者映像は、含まれる前記要支援者の位置情報を有しており、前記表示画像送信工程は、前記表示すべき映像の中に前記位置情報を含めてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駅ホームに車椅子利用者や身体障がい者等の要支援者が存在する場合に、そのような要支援者を効果的に支援できる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る、監視システムの概略構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る、駅構内サーバ(A)の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る、車載装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る、列車側表示モニタの表示例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る、監視システムによる監視フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る監視システム1の概略構成を示す。監視システム1は、複数の駅のそれぞれに配置された構内装置2と、それらと通信可能な列車7の車載装置70とを備える。監視システム1は、監視カメラ10で駅ホームを撮影し、列車7(車載装置70)にミリ波帯(30GHz~300GHz)の電波による通信(以下、「ミリ波通信」と言う)で送信する。また、監視システム1は、画像認識処理を用いて自駅または次駅のホーム上の要支援者の有無を判断し、存在する場合には要支援者を含む映像を列車7に送信する。これによって、列車7の運行管理者(車掌や運転士)による要支援者の迅速な乗降補助を支援する。
【0011】
ここでは、構内装置2として、A駅の構内装置(A)2aと、B駅の構内装置(B)2bについて説明する。列車7はA駅からB駅に向けて運行し、便宜的にA駅を自駅、B駅を次駅としてする。
【0012】
A駅における構内装置(A)2aは、A駅のホーム(A)9aを監視する装置であって、駅構内サーバ(A)20aと、ホーム監視カメラ(A)10aと、構内側ミリ波無線機(A)30aと、を備える。
【0013】
ホーム監視カメラ(A)10aは、複数台、ここでは第1カメラ(A)11a、第2カメラ(A)12a、第3カメラ(A)13aの3台が設置されている。第1カメラ(A)11a、第2カメラ(A)12a、第3カメラ(A)13aのそれぞれには、監視エリア(すなわち画角)が設定され、3台でホーム(A)9a全体を監視する。なお、ホーム(A)9aの要支援者を検出するための専用の特定カメラが設置されてもよい。
【0014】
また、ホーム(A)9aには、列車7に搭載されている列車側ミリ波無線機72とミリ波通信を行う構内側ミリ波無線機(A)30aが設置されている。ミリ波通信では、監視映像の伝送機能及び入線列車検知のレーダ機能の二つの機能が利用されている。具体的には、列車7が入線して列車側ミリ波無線機72と構内側ミリ波無線機(A)30aとの通信可能エリアに入ると、それらを用いたミリ波通信により監視映像が駅構内サーバ(A)20aから列車7へ送信される。
【0015】
駅構内サーバ(A)20aは、構内装置(A)2aの各装置を制御するものであり、ホーム監視カメラ(A)10aから監視映像を取得し、また、駅間ネットワーク網8を介して構内装置(B)2bから次駅(すなわちB駅)の要支援者映像を取得し、監視映像または監視映像と要支援者映像とを併せた加工映像を表示すべき映像(表示用映像)として、上述のミリ波通信により入線中又は入線後の列車7に送信する。
【0016】
また、A駅のホーム(A)9aにおいて要支援者が存在することが監視映像から認識できた場合には、図示しない前駅の構内装置2に対してA駅の要支援者映像として送信する。駅構内サーバ(A)20aの具体的な構成については後述する。
【0017】
B駅における構内装置(B)2bは、上述の構内装置(A)2aと同様の構成であって、B駅のホーム(B)9bを監視する装置であって、駅構内サーバ(B)20bと、ホーム監視カメラ(B)10bと、構内側ミリ波無線機(B)30bと、を備える。
【0018】
ホーム監視カメラ(B)10bは、複数台、ここでは第1カメラ(B)11b、第2カメラ(B)12b、第3カメラ(B)13bの3台が設置されている。第1カメラ(B)11b、第2カメラ(B)12b、第3カメラ(B)13bのそれぞれには、監視エリア(すなわち画角)が設定され、3台でホーム(B)9b全体を監視する。
【0019】
また、ホーム(B)9bには、列車7に搭載されている列車側ミリ波無線機72とミリ波通信を行う構内側ミリ波無線機(B)30bが設置されている。列車7が入線して列車側ミリ波無線機72と構内側ミリ波無線機(B)30bとの通信可能エリアに入ると、それらを用いたミリ波通信により監視映像が駅構内サーバ(B)20bから列車7へ送信される。
【0020】
駅構内サーバ(B)20bは、構内装置(B)2bの各装置を制御するものであり、ホーム監視カメラ(B)10bから監視映像を取得し、また、駅間ネットワーク網8を介して次駅(図示せず)の要支援者映像を取得し、監視映像または監視映像と要支援者映像とを併せた加工映像を表示すべき映像(表示用映像)として、上述のミリ波通信により入線中又は入線後の列車7に送信する。
【0021】
また、B駅のホーム(B)9bにおいて要支援者が存在することが監視映像から認識できた場合には、前駅(A駅)の構内装置(A)2aに対してB駅の要支援者映像として送信する。
【0022】
図2は、駅構内サーバ(A)20aの概略構成を示すブロック図である。駅構内サーバ(B)20bも同様の構成を有するので、ここでは代表して駅構内サーバ(A)20aについて説明する。
【0023】
駅構内サーバ(A)20aは、コンピュータ装置、モニタ、HDD記録装置、ユーザインタフェイス(操作手段)、通信インタフェイス等を備えて構成されており、具体的には、主制御部21と、映像取得部22と、構内側表示モニタ23と、構内側ミリ波通信制御部24と、駅間通信制御部25と、映像解析部26と、送信先判断部27と、表示画像送信部28と、を備える。
【0024】
主制御部21は、駅構内サーバ(A)20aの各構成要素を統括的に制御する。映像取得部22は、ホーム監視カメラ(A)10a(第1カメラ(A)11a、第2カメラ(A)12a、第3カメラ(A)13a)が撮影した監視映像を取得する。また、映像取得部22は、駅間ネットワーク網8を介して、自駅より先の駅(ここでは次駅のB駅)から要支援映像を取得する。
【0025】
構内側表示モニタ23は、ホーム監視カメラ(A)10aの監視映像を並べて表示する。構内側ミリ波通信制御部24は、構内側ミリ波無線機(A)30aを制御し、車載装置70の列車側ミリ波無線機72とミリ波通信を行う。駅間通信制御部25は、駅間ネットワーク網8によって接続する他駅の構内装置2(駅構内サーバ20)と通信を行う。
【0026】
映像解析部26は、ホーム監視カメラ(A)10aの撮影した監視映像を画像解析し、ホーム(A)9aに要支援者が存在するか否かを判断する。判断手法自体は公知の技術、例えば機械学習やAIを利用した画像認識技術を用いることができ、基準画像等を用いて車椅子利用者や杖利用者を特定する。
【0027】
送信先判断部27は、運行状況をもとに、要支援者映像の送信先を決定する。例えば、運行している列車全てが全駅に停車する場合には、特に判断は要せず、前駅に要支援者映像を送信する。また、急行等のように一部駅を通過する列車が存在する場合には、次に入線し停車予定となっている列車が、自駅(ここではA駅)より前の駅のいずれの駅で停車するかを判断し、その駅に対して要支援者映像を送信することを決定する。
【0028】
表示画像送信部28は、要支援画像を前駅に送信するとともに、自駅(A駅)に入線してくる列車7に送信すべき監視映像を生成する。送信すべき要支援映像として、要支援者が含まれるフレームをそのままとしてもよいし、要支援者を含むように一定のエリアをトリミングした映像でもよい。このとき、要支援者の位置が分かるように、位置情報が含まれるように加工される。位置情報は、予定される列車番号、カメラ番号(全体のうちの何番目)、ホーム(A)9aの「先頭」「中間」「後尾」等がある。
【0029】
表示画像送信部28は、自駅(A駅)に入線した列車7に送信すべき監視映像(表示用映像)を生成する場合、ホーム監視カメラ(A)10aの映像と、次駅からの要支援者映像とを並べた映像を表示用映像として生成し、構内側ミリ波通信制御部24で構内側ミリ波無線機(A)30aを介してミリ波通信で列車7に送信する。
【0030】
図3は、車載装置70の概略構成を示すブロック図である。車載装置70は、主制御部71と、表示制御部73と、列車側ミリ波無線機72と、列車側表示モニタ80とを備える。主制御部71は、車載装置70の各構成要素を統括的に制御する。列車側ミリ波無線機72は、構内側ミリ波無線機(A)30aと通信するためのミリ波無線通信手段である。
【0031】
表示制御部73は、列車側ミリ波無線機72を介して構内側ミリ波無線機(A)30aから取得した監視映像を列車側表示モニタ80に表示させる制御を行う。なお、列車7の列車側ミリ波無線機72と構内側ミリ波無線機(A)30a(または構内側ミリ波無線機(B)30b)と相互通信可能になると、映像表示が開始され、相互通信範囲外になった時点で、映像切断となる。
【0032】
図4は列車7に配置される列車側表示モニタ80の表示例を示している。
図4(a)に示すように、列車側表示モニタ80は、第1カメラ映像領域81と、第2カメラ映像領域82と、第3カメラ映像領域83と、要支援者映像領域84とを横方向に並べて設けている。なお、列車側表示モニタ80は、それぞれのカメラに対応した複数のモニタを組み合わせた構成でもよいし、一つモニタの表示領域をカメラ数で分割したものもよいし、それら構成を組み合わせたものでもよい。
【0033】
図4(b)に示すように、通常時、すなわち要支援者が存在しない場合、自駅(A駅)の3台のホーム監視カメラ(A)10a(第1カメラ(A)11a、第2カメラ(A)12a、第3カメラ(A)13a)の監視映像が、第1カメラ映像領域81、第2カメラ映像領域82、第3カメラ映像領域83にそれぞれ表示される。要支援者映像領域84には、何も表示されない(黒画面または青画面などの所定映像を表示する)。なお、第1カメラ映像領域81、第2カメラ映像領域82、第3カメラ映像領域83には、それぞれに表示される監視映像の駅名(ここではA駅)と、カメラ番号が重畳されて表示される。
【0034】
図4(c)に示すように、次駅(ここではB駅)に要支援者が存在する場合、
図4(b)と同様に、第1カメラ映像領域81、第2カメラ映像領域82、第3カメラ映像領域83に、自駅の3台のホーム監視カメラ(A)10a(第1カメラ(A)11a、第2カメラ(A)12a、第3カメラ(A)13a)の監視映像が表示される。このような列車側表示モニタ80の状態は、列車7が入線して停止後に表示される。特に、運転士等がA駅での作業完了後出発時に表示されると、次駅(B駅)で要支援者が存在することが明確に把握できる。要支援者映像領域84には、B駅から送信されてきたB駅の要支援者映像が表示される。要支援者映像領域84には、映像がどの駅のどの位置(すなわちB駅のカメラ(1))のものであるかが分かるように、その位置情報が重畳され表示される。
【0035】
図4(d)に示すように、自駅(A駅)に要支援者が存在する場合、要支援者映像領域84に自駅のホーム監視カメラ(A)10aで撮影した要支援者映像が表示される。列車7がA駅に入線中で停止前の状態において表示される。これによって、運転士等は、停止前にA駅の要支援者の位置を把握できる。
【0036】
図4(e)に示すように、自駅(A駅)と次駅(B駅)の両方に要支援者が存在する場合、要支援者映像領域84の表示領域を分割して、左上の領域に自駅の要支援者映像を、右下の領域に次駅の要支援者映像を表示させる。例えば、入線中には
図4(d)のように表示し、停車したら
図4(e)のように表示し、出発後に
図4(c)のように表示するという処理もできる。また、相互通信範囲外となった後で次駅にて相互通信可能となるまで、要支援者映像領域84の表示については映像切断直前と映像を継続表示し、第1~第3カメラ映像領域81~83については、黒表示とする表示制御がなされてもよい。
【0037】
以上の構成による監視システム1の動作について
図5のフローチャートを参照して説明する。ここでは、B駅で要支援者を特定し、A駅に入線する列車7に通知する処理について説明する。B駅の構内装置(B)2bではホーム監視カメラ(B)10bがホーム(B)9bが撮影した映像を、駅構内サーバ(B)20bの映像取得部22が取得し、映像解析部26がその映像中の要支援者の有無を特定する(S10)。
【0038】
映像解析部26は、特定した要支援者が含まれる要支援者映像を、駅間ネットワーク網8を介して前駅(A駅)の構内装置(A)2aの駅構内サーバ(A)20aに送信する(S11)。要支援者映像には、上述のように要支援者の位置情報が含まれている。
【0039】
B駅にとっての前駅であるA駅の構内装置(A)2aでは、駅構内サーバ(A)20aの映像取得部22がB駅の駅構内サーバ(B)20bから送信された要支援者映像を取得する(S12)。さらに、映像取得部22は、ホーム監視カメラ(A)10aが撮影したホーム(A)9aの監視映像を取得する(S13)。
【0040】
表示画像送信部28は、列車7の入線状態に応じて送信すべき表示用映像を生成する(S14)。すなわち、列車7がA駅に入線途中で停止前であれば、
図4(d)のように、A駅のカメラ映像のみで表示用映像が生成される。列車7がA駅に入線し停止すると、例えば
図4(c)に示すようにB駅の要支援者が含まれる映像と、A駅の監視映像とを合成した表示用映像が生成される。なお、要支援者を確認できなかった場合には、
図4(b)のように要支援者映像領域84には何も映っていない表示(黒表示等)となる。表示画像送信部28は、表示用映像を生成すると、列車7に対してミリ波通信(すなわち構内側ミリ波無線機(A)30a)で送信する(S15)。
【0041】
列車7では、ミリ波通信(すなわち列車側ミリ波無線機72)で構内装置(A)2aの駅構内サーバ20から表示用映像を取得すると(S16)、表示制御部73が取得した表示用映像を列車側表示モニタ80に表示させる(S17)。
【0042】
このように、列車7では、事前に次に停車する駅の要支援者映像を取得し、通常では表示しない表示エリア(要支援者映像領域84)に要支援者及びその位置情報(駅名やホームにおける場所、カメラ位置等)を表示させることができる。すなわち、支援すべき要支援者の情報(存在の有無や位置情報)を事前に、運転士等に通知できる。したがって列車到着後、運転士が、所定の場所にいる要支援者の乗車を見守り支援及びの乗車を手早く支援することができる。また、前駅で要支援者の有無が確認できるため、要支援者がホームから転落等した場合であっても、事前に注意しておくことができ、緊急対応(停止操作等)に備えることができる。特に、列車7が運転士のみのワンマン運行の様な場合に、事前に要支援者の有無およびその位置を把握することで、定時運行を確保しつつ迅速な支援が可能となる。
【0043】
また、次駅に再び要支援者がいる場合には、該当到着駅で要支援者を乗車させるまで、該当到着駅の要支援者の映像を優先表示させるフラグを付与させる処理がなされてもよい。たとえば駅に設置している駅構内サーバ20内のデータに駅ごと順に若い番号を付与しておき、若い番号順を優先的停車中の列車7にミリ波通信を介して映像伝送し、列車側表示モニタ80に表示させることで、次駅の映像表示をしないようにすることができる。乗車後に、次駅番号を認識することで、列車側表示モニタ80に映す映像を駅間ネットワーク網8で伝送された次駅名と次駅にいる要支援者を切替できるようにする。
【0044】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0045】
1 監視システム
2 構内装置
2a 構内装置(A)
2b 構内装置(B)
7 列車
8 駅間ネットワーク網
9a ホーム(A)
9b ホーム(B)
10a ホーム監視カメラ(A)
10b ホーム監視カメラ(B)
11a 第1カメラ(A)
11b 第1カメラ(B)
12a 第2カメラ(A)
12b 第2カメラ(B)
13a 第3カメラ(A)
13b 第3カメラ(B)
21 主制御部
22 映像取得部
23 構内側表示モニタ
24 構内側ミリ波通信制御部
25 駅間通信制御部
26 映像解析部
27 送信先判断部
28 表示画像送信部
70 車載装置
71 主制御部
72 列車側ミリ波無線機
73 表示制御部
80 列車側表示モニタ
81 第1カメラ映像領域
82 第2カメラ映像領域
83 第3カメラ映像領域
84 要支援者映像領域