(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20230310BHJP
B60K 17/10 20060101ALI20230310BHJP
F16H 47/02 20060101ALI20230310BHJP
A01D 45/02 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
F16H57/04 G
B60K17/10 D
B60K17/10 F
F16H47/02 A
A01D45/02
(21)【出願番号】P 2018201117
(22)【出願日】2018-10-25
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】日野 真和
(72)【発明者】
【氏名】野口 耕作
(72)【発明者】
【氏名】北村 信樹
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-314673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04,47/02
B60K 17/10
A01D 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを貯留可能なオイルタンクと、
油圧回路を有する静油圧式無段変速機と、
油圧により駆動する
と共に前記静油圧式無段変速機の外部に設けられた油圧アクチュエータと、
前記オイルタンクと前記油圧回路とを接続すると共に、前記オイルタンクから前記油圧回路へ供給されるオイルが流れる第1油路と、
前記オイルタンクと前記油圧回路とを接続すると共に、前記油圧回路から前記オイルタンクへ戻るオイルが流れる第2油路と、
前記第1油路とは異なる油路であって、前記オイルタンクと前記油圧アクチュエータとを接続すると共に、前記オイルタンクから前記油圧アクチュエータへ供給されるオイルが流れる第3油路と、
前記第2油路とは異なる油路であって、前記オイルタンクと前記油圧アクチュエータとを接続すると共に、前記油圧アクチュエータから前記オイルタンクへ戻るオイルが流れる第4油路と、を備え、
前記第4油路に、オイルを冷却する冷却装置が設けられており、
前記オイルタンクから前記油圧回路へ供給されたオイルは、前記油圧回路から前記オイルタンクへ戻り、
前記オイルタンクから前記油圧アクチュエータへ供給されたオイルは、前記油圧アクチュエータから前記冷却装置を通って前記オイルタンクへ戻る作業車。
【請求項2】
前記冷却装置は空冷式であり、
前記冷却装置へ向けて送風するファンを備え、
前記油圧アクチュエータは、前記ファンを駆動する油圧モータである請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
エンジンと、ギヤ式変速機と、を備え、
前記静油圧式無段変速機は、前記ギヤ式変速機に隣接する位置に配置されており、
前記エンジンから出力された動力は前記静油圧式無段変速機に入力され、
前記静油圧式無段変速機から出力された動力は前記ギヤ式変速機に入力され、
前記ギヤ式変速機から出力された動力は走行装置に入力され、
前記ギヤ式変速機は、動力を伝達する動力伝達部と、前記動力伝達部を収容するケースと、を有しており、
前記ケースは、前記オイルタンクに含まれている請求項1または2に記載の作業車。
【請求項4】
前記冷却装置は空冷式であり、
前記冷却装置へ向けて送風するファンを備え、
前記油圧アクチュエータは、前記ファンを駆動する油圧モータであり、
前記ファンは、機体左右方向で外側から内側へ向けて送風するように構成されており、
前記静油圧式無段変速機及び前記ギヤ式変速機は、機体前部における機体左右方向中央寄りの位置に配置されており、
前記冷却装置及び前記ファンは、前記静油圧式無段変速機及び前記ギヤ式変速機よりも後側で、機体左右方向外側寄りの位置に配置されている請求項3に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルを貯留可能なオイルタンクと、油圧回路を有する静油圧式無段変速機と、油圧により駆動する油圧アクチュエータと、を備える作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この作業車は、オイルを冷却する冷却装置(特許文献1では「オイルクーラ」)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この作業車においては、チャージポンプによって、静油圧式無段変速機における油圧回路にオイルが供給される。また、油圧回路における油圧が高まると、油圧回路におけるオイルが静油圧式無段変速機のケース内空間にリークされるように構成されている。そして、ケース内空間のオイルは、冷却装置を経由してオイルタンク(特許文献1では「オイル貯留部」)へ戻る。
【0005】
しかしながら、冬場など、気温が低いときには、冷却装置内部でのオイルの流れが悪くなりがちである。冷却装置内部でのオイルの流れが悪くなると、ケース内空間から冷却装置へオイルが流れにくくなり、ケース内空間における油圧が高くなる。その結果、油圧回路における油圧が高くなり、静油圧式無段変速機に不具合が生じる可能性がある。
【0006】
これを防ぐため、特許文献1に記載の作業車では、ケース内空間における油圧が高まった場合にケース内空間におけるオイルを排出するケースリリーフバルブを設ける必要がある。これにより、製造コストが増大しがちである。
【0007】
本発明の目的は、製造コストの増大を抑制しやすい作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、オイルを貯留可能なオイルタンクと、油圧回路を有する静油圧式無段変速機と、油圧により駆動すると共に前記静油圧式無段変速機の外部に設けられた油圧アクチュエータと、前記オイルタンクと前記油圧回路とを接続すると共に、前記オイルタンクから前記油圧回路へ供給されるオイルが流れる第1油路と、前記オイルタンクと前記油圧回路とを接続すると共に、前記油圧回路から前記オイルタンクへ戻るオイルが流れる第2油路と、前記第1油路とは異なる油路であって、前記オイルタンクと前記油圧アクチュエータとを接続すると共に、前記オイルタンクから前記油圧アクチュエータへ供給されるオイルが流れる第3油路と、前記第2油路とは異なる油路であって、前記オイルタンクと前記油圧アクチュエータとを接続すると共に、前記油圧アクチュエータから前記オイルタンクへ戻るオイルが流れる第4油路と、を備え、前記第4油路に、オイルを冷却する冷却装置が設けられており、前記オイルタンクから前記油圧回路へ供給されたオイルは、前記油圧回路から前記オイルタンクへ戻り、前記オイルタンクから前記油圧アクチュエータへ供給されたオイルは、前記油圧アクチュエータから前記冷却装置を通って前記オイルタンクへ戻ることにある。
【0009】
本発明であれば、冷却装置は、油圧回路からオイルタンクへ戻るオイルが流れる第2油路ではなく、油圧アクチュエータからオイルタンクへ戻るオイルが流れる第4油路に設けられている。
【0010】
これにより、冷却装置内部でのオイルの流れが悪くなった場合であっても、油圧回路における油圧は高まらない。従って、本発明であれば、ケースリリーフバルブを設ける必要がない。これにより、製造コストの増大を抑制しやすい作業車を実現できる。
【0011】
さらに、本発明において、前記冷却装置は空冷式であり、前記冷却装置へ向けて送風するファンを備え、前記油圧アクチュエータは、前記ファンを駆動する油圧モータであると好適である。
【0012】
冷却装置が空冷式であり、冷却装置へ向けて送風するファンを備える作業車においては、一般に、ファンと冷却装置との間の距離は比較的近い。
【0013】
従って、上記の構成によれば、油圧アクチュエータが、例えば作業車に備わる作業装置におけるアクチュエータ等、ファンを駆動する油圧モータ以外のアクチュエータである場合に比べて、油圧アクチュエータと冷却装置との間の距離が近くなりやすい。
【0014】
これにより、第4油路のうち、油圧アクチュエータと冷却装置との間の部分が比較的短くなりやすい。従って、第4油路のための配管を比較的短くしやすい。その結果、製造コストを抑えやすくなる。
【0015】
さらに、本発明において、エンジンと、ギヤ式変速機と、を備え、前記静油圧式無段変速機は、前記ギヤ式変速機に隣接する位置に配置されており、前記エンジンから出力された動力は前記静油圧式無段変速機に入力され、前記静油圧式無段変速機から出力された動力は前記ギヤ式変速機に入力され、前記ギヤ式変速機から出力された動力は走行装置に入力され、前記ギヤ式変速機は、動力を伝達する動力伝達部と、前記動力伝達部を収容するケースと、を有しており、前記ケースは、前記オイルタンクに含まれていると好適である。
【0016】
この構成によれば、静油圧式無段変速機における油圧回路と、ギヤ式変速機におけるケースと、の間の距離が比較的短くなりやすい。従って、第1油路及び第2油路がケースと油圧回路とを接続するように構成することによって、第1油路及び第2油路のための配管を比較的短くしやすい。その結果、製造コストを抑えやすくなる。
【0017】
さらに、本発明において、前記冷却装置は空冷式であり、前記冷却装置へ向けて送風するファンを備え、前記油圧アクチュエータは、前記ファンを駆動する油圧モータであり、前記ファンは、機体左右方向で外側から内側へ向けて送風するように構成されており、前記静油圧式無段変速機及び前記ギヤ式変速機は、機体前部における機体左右方向中央寄りの位置に配置されており、前記冷却装置及び前記ファンは、前記静油圧式無段変速機及び前記ギヤ式変速機よりも後側で、機体左右方向外側寄りの位置に配置されていると好適である。
【0018】
作業車が、機体前部に例えば収穫装置等の作業装置を備えている場合、作業装置によって砂埃等が舞い上がりやすい。そのため、この場合、作業車の前部においては、砂埃等が舞い上がりがちである。
【0019】
また、機体前部に例えば前輪等の走行装置を備えている場合、走行装置によって砂埃等が舞い上がりやすい。そのため、この場合にも、作業車の前部においては、砂埃等が舞い上がりがちである。
【0020】
このように、作業車の構造によっては、作業車の前部において砂埃等が舞い上がりがちである。そのため、ファンの位置が作業車における前側であるほど、ファンが砂埃等を吸い込んでしまいがちである。
【0021】
ここで、上記の構成によれば、ファンは、静油圧式無段変速機及びギヤ式変速機よりも後側に配置されている。従って、ファンが静油圧式無段変速機及びギヤ式変速機よりも前側に配置されている場合に比べて、ファンが砂埃等を吸い込んでしまうことを回避しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】静油圧式無段変速機等の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図1に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、
図1及び
図2に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。
【0024】
〔トウモロコシ収穫機の全体構成〕
図1に示すように、トウモロコシ収穫機1(本発明に係る「作業車」に相当)の機体前部には、収穫装置Hが設けられている。収穫装置Hは、圃場に植立するトウモロコシ植物体からトウモロコシ房状体を収穫する。
【0025】
そして、収穫されたトウモロコシ房状体は、フィーダ13によって皮剥き装置14へ移送される。皮剥き装置14へ移送されたトウモロコシ房状体は、皮剥き装置14において皮剥き処理された後、貯留タンク15に貯留される。
【0026】
また、トウモロコシ収穫機1は、エンジンE、静油圧式無段変速機2、ギヤ式変速機3、左右の前輪11(本発明に係る「走行装置」に相当)、左右の後輪12を備えている。
【0027】
図1に示すように、静油圧式無段変速機2は、ギヤ式変速機3に隣接する位置に配置されている。より具体的には、静油圧式無段変速機2は、ギヤ式変速機3の左側に隣接している。
【0028】
また、静油圧式無段変速機2及びギヤ式変速機3は、機体前部における機体左右方向中央寄りの位置に配置されている。
【0029】
エンジンEから出力された動力は、静油圧式無段変速機2及びギヤ式変速機3を介して、左右の前輪11に伝達される。これにより、左右の前輪11は回転駆動する。また、左右の後輪12は操向操作可能に構成されている。
【0030】
〔動力伝達構造〕
図2に示すように、静油圧式無段変速機2は、変速用油圧ポンプ4及び変速用油圧モータ5を有している。そして、変速用油圧ポンプ4は、ポンプ入力軸41及びポンプ斜板42を有している。また、変速用油圧モータ5は、モータ出力軸51及びモータ斜板52を有している。
【0031】
尚、
図2は、正面視と平面視とを組み合わせた展開図である。
【0032】
ポンプ入力軸41の右端部には、入力プーリ6が取り付けられている。そして、エンジンEから出力された動力は、動力伝達機構を介して、入力プーリ6に伝達される。入力プーリ6に伝達された動力は、ポンプ入力軸41、ポンプ斜板42、モータ斜板52を介して、モータ出力軸51に伝達される。
【0033】
このとき、動力伝達経路におけるポンプ斜板42とモータ斜板52との間で、動力は変速される。
【0034】
このように、エンジンEから出力された動力は静油圧式無段変速機2に入力される。
【0035】
また、ギヤ式変速機3は、ケース30、動力伝達部31、差動装置32、左出力軸33、右出力軸34を有している。
【0036】
動力伝達部31は、モータ出力軸51からの動力を差動装置32へ伝達する。また、ケース30は、動力伝達部31及び差動装置32を収容している。
【0037】
このように、ギヤ式変速機3は、動力を伝達する動力伝達部31と、動力伝達部31を収容するケース30と、を有している。
【0038】
モータ出力軸51に伝達された動力は、動力伝達部31を介して、差動装置32に伝達される。このとき、動力伝達部31において、動力は変速される。そして、差動装置32に伝達された動力は、左出力軸33及び右出力軸34に分配される。
【0039】
このように、静油圧式無段変速機2から出力された動力はギヤ式変速機3に入力される。
【0040】
左出力軸33は、差動装置32から左方に延びる状態で設けられている。そして、左出力軸33の左端部は、ギヤ式の左減速機構63を介して、左前車軸64に連結している。また、
図2には示されていないが、左側の前輪11は、左前車軸64に固定されている。
【0041】
この構成により、左出力軸33に伝達された動力は、左減速機構63及び左前車軸64を介して、左側の前輪11に伝達される。これにより、左側の前輪11が駆動される。
【0042】
また、
図2に示すように、右出力軸34は、差動装置32から右方に延びる状態で設けられている。そして、右出力軸34の右端部は、ギヤ式の右減速機構65を介して、右前車軸66に連結している。また、
図2には示されていないが、右側の前輪11は、右前車軸66に固定されている。
【0043】
この構成により、右出力軸34に伝達された動力は、右減速機構65及び右前車軸66を介して、右側の前輪11に伝達される。これにより、右側の前輪11が駆動される。
【0044】
このように、ギヤ式変速機3から出力された動力は左右の前輪11に入力される。
【0045】
また、
図2に示すように、トウモロコシ収穫機1は、サイドブレーキ60を備えている。サイドブレーキ60は、左ブレーキ61及び右ブレーキ62を有している。
【0046】
左ブレーキ61は、左出力軸33に取り付けられている。そして、左ブレーキ61は、左出力軸33を制動可能に構成されている。左出力軸33が制動されると、左側の前輪11が制動されることとなる。即ち、左ブレーキ61は、左側の前輪11を制動可能である。
【0047】
また、右ブレーキ62は、右出力軸34に取り付けられている。そして、右ブレーキ62は、右出力軸34を制動可能に構成されている。右出力軸34が制動されると、右側の前輪11が制動されることとなる。即ち、右ブレーキ62は、右側の前輪11を制動可能である。
【0048】
以上で説明した構成により、サイドブレーキ60は、左右の前輪11を各別に制動する。
【0049】
また、
図2に示すように、トウモロコシ収穫機1は、左右の伝動ケースTを備えている。左側の伝動ケースTは、左ブレーキ61、左減速機構63、左前車軸64を収容している。また、右側の伝動ケースTは、右ブレーキ62、右減速機構65、右前車軸66を収容している。
【0050】
そして、左右の伝動ケースTの間に、パイプフレーム67が設けられている。パイプフレーム67は、中空の円筒状に構成されている。
【0051】
パイプフレーム67の左端部は、左側の伝動ケースTに連結されている。また、パイプフレーム67の右端部は、右側の伝動ケースTに連結されている。
【0052】
また、
図2に示すように、トウモロコシ収穫機1は、オイルタンク7を備えている。オイルタンク7は、オイルを貯留可能である。また、ケース30及びパイプフレーム67は、オイルタンク7に含まれている。即ち、ケース30及びパイプフレーム67は、何れも、オイルを貯留可能に構成されている。
【0053】
また、ケース30とパイプフレーム67とに亘って、連通配管71が設けられている。連通配管71は、ケース30の内部空間と、パイプフレーム67の内部空間と、を接続している。即ち、オイルは、連通配管71を介して、ケース30の内部空間と、パイプフレーム67の内部空間と、の間で流通可能である。
【0054】
〔油圧系統〕
図3に示すように、静油圧式無段変速機2は、油圧回路20、HSTケース2a、斜板角変更機構53を有している。変速用油圧ポンプ4に入力された動力は、油圧回路20を介して、変速用油圧モータ5に伝達される。これにより、変速用油圧モータ5が駆動される。
【0055】
また、変速用油圧ポンプ4のポンプ斜板42の角度は、斜板角変更機構53によって変更可能である。ポンプ斜板42の角度に応じて、静油圧式無段変速機2における変速比が変化する。
【0056】
また、トウモロコシ収穫機1は、オイルクーラ72(本発明に係る「冷却装置」に相当)、ラジエータ73、ファン74、油圧モータM(本発明に係る「油圧アクチュエータ」に相当)、バルブユニットVUを備えている。
【0057】
オイルクーラ72は、オイルを冷却するように構成されている。また、ラジエータ73は、エンジンEからの冷却水を冷却してエンジンEへ戻すように構成されている。
【0058】
また、油圧モータMは、油圧により駆動するように構成されている。そして、油圧モータMは、ファン74を駆動する。
【0059】
バルブユニットVUは、ファン用油路80と、回転制御弁81と、を有している。油圧モータMに給排されるオイルは、ファン用油路80を通る。また、回転制御弁81は、正転ポジションと逆転ポジションとの2ポジションに切換可能なスプールと、このスプールを操作する電磁ソレノイドと、を備えた電磁弁である。
【0060】
図3に示すように、トウモロコシ収穫機1は、制御装置82を備えている。そして、制御装置82は、所定の制御信号を出力することにより、回転制御弁81のスプールを制御する。尚、回転制御弁81は、電磁ソレノイドに電力が供給されない状態では正転ポジションを維持し、電磁ソレノイドに電力が供給されると逆転ポジションとなる。
【0061】
回転制御弁81のスプールが正転ポジションであるとき、油圧モータMには、ファン用油路80を介して正方向にオイルが供給される。これにより、油圧モータMは正方向に駆動する。
【0062】
また、回転制御弁81のスプールが逆転ポジションであるとき、油圧モータMには、ファン用油路80を介して逆方向にオイルが供給される。これにより、油圧モータMは逆方向に駆動する。
【0063】
この構成により、油圧モータMは、ファン74を正転方向及び逆転方向に回転駆動することが可能である。
【0064】
図3に示すように、ファン74は、オイルクーラ72及びラジエータ73へ向けて送風するように構成されている。即ち、オイルクーラ72は空冷式である。
【0065】
ファン74が正転方向に回転している場合、ファン74により、冷却風が吸引される。即ち、ファン74が正転方向に回転している場合、冷却風は、オイルクーラ72からファン74へ向かう方向に流れる。
【0066】
また、ファン74が逆転方向に回転している場合、ファン74により、冷却風が排出される。即ち、ファン74が逆転方向に回転している場合、冷却風は、ファン74からオイルクーラ72へ向かう方向に流れる。
【0067】
図1に示すように、オイルクーラ72及びファン74は、静油圧式無段変速機2及びギヤ式変速機3よりも後側で、機体左右方向外側寄りの位置に配置されている。また、ファン74は、正転方向に回転している場合、機体左右方向で外側から内側へ向けて送風することとなる。
【0068】
このように、ファン74は、機体左右方向で外側から内側へ向けて送風するように構成されている。
【0069】
図3に示すように、油圧回路20、ファン用油路80、オイルクーラ72は、トウモロコシ収穫機1の油圧系統Aに含まれている。そして、
図3に示すように、油圧系統Aは、第1油路21、第2油路22、第3油路23、第4油路24を有している。
【0070】
第1油路21は、第1部分油路21a、第1オイルフィルタ21b、第2部分油路21c、チャージポンプ21d、第3部分油路21e、第2オイルフィルタ21f、第4部分油路21gを有している。
【0071】
第1油路21においては、オイル流れ方向の上流側から、第1部分油路21a、第1オイルフィルタ21b、第2部分油路21c、チャージポンプ21d、第3部分油路21e、第2オイルフィルタ21f、第4部分油路21gの順に並んでいる。
【0072】
第1部分油路21aは、ケース30に接続している。また、第4部分油路21gは、油圧回路20に接続している。そして、チャージポンプ21dは、ポンプ入力軸41によって駆動される。
【0073】
この構成により、第1油路21は、ケース30と油圧回路20とを接続する。また、第1油路21を介して、ケース30から油圧回路20へオイルが供給される。即ち、第1油路21には、ケース30から油圧回路20へ供給されるオイルが流れる。尚、上述の通り、ケース30はオイルタンク7に含まれている。
【0074】
また、
図3に示すように、第2部分油路21cから分岐したオイルは、各種の作業装置Wへ送られる。尚、各種の作業装置Wには、収穫装置Hを昇降するリフトシリンダや、貯留タンク15を揺動させるダンプシリンダ等が含まれる。
【0075】
また、第2油路22は、HSTケース2aと、第5部分油路22aと、を有している。第5部分油路22aは、HSTケース2aの内部空間と、ケース30の内部空間と、を接続している。
【0076】
油圧回路20における油圧が所定の閾値を超えると、油圧回路20からリーク弁20aを介してHSTケース2aの内部空間へ、オイルが排出されるように構成されている。そして、HSTケース2aの内部空間におけるオイルは、第5部分油路22aを通り、ケース30の内部空間へ戻る。
【0077】
この構成により、第2油路22は、ケース30と油圧回路20とを接続する。また、第2油路22を介して、油圧回路20からケース30へオイルが戻る。即ち、第2油路22には、油圧回路20からケース30へ戻るオイルが流れる。尚、上述の通り、ケース30はオイルタンク7に含まれている。
【0078】
また、第3油路23は、第6部分油路23a、ファン用ポンプ23b、第7部分油路23cを有している。
【0079】
第3油路23においては、オイル流れ方向の上流側から、第6部分油路23a、ファン用ポンプ23b、第7部分油路23cの順に並んでいる。
【0080】
第6部分油路23aは、パイプフレーム67に接続している。また、第7部分油路23cは、ファン用ポンプ23bから油圧モータMへ至る油路である。即ち、第7部分油路23cの一部は、バルブユニットVUの内部を通っている。
【0081】
この構成により、第3油路23は、パイプフレーム67と油圧モータMとを接続する。また、ファン用ポンプ23bが駆動することにより、第3油路23を介して、パイプフレーム67から油圧モータMへオイルが供給される。即ち、第3油路23には、パイプフレーム67から油圧モータMへ供給されるオイルが流れる。尚、上述の通り、パイプフレーム67はオイルタンク7に含まれている。
【0082】
また、第4油路24は、第8部分油路24a、第9部分油路24bを有している。また、オイルクーラ72は、第4油路24に含まれている。
【0083】
第4油路24においては、オイル流れ方向の上流側から、第8部分油路24a、オイルクーラ72、第9部分油路24bの順に並んでいる。
【0084】
このように、第4油路24に、オイルを冷却するオイルクーラ72が設けられている。
【0085】
第8部分油路24aは、油圧モータMからオイルクーラ72へ至る油路である。即ち、第8部分油路24aの一部は、バルブユニットVUの内部を通っている。また、第9部分油路24bは、ケース30に接続している。
【0086】
この構成により、第4油路24は、ケース30と油圧モータMとを接続する。また、第4油路24を介して、油圧モータMからケース30へオイルが戻る。即ち、第4油路24には、油圧モータMからケース30へ戻るオイルが流れる。尚、上述の通り、ケース30はオイルタンク7に含まれている。
【0087】
以上の構成により、ケース30から油圧回路20へ供給されたオイルは、油圧回路20からケース30へ戻る。また、パイプフレーム67から油圧モータMへ供給されたオイルは、油圧モータMからオイルクーラ72を通ってケース30へ戻る。
【0088】
これにより、オイルクーラ72によって冷却されたオイルがケース30へ戻るため、ケース30に貯留されているオイルの温度が低下することとなる。そして、上述の通り、オイルは、連通配管71を介して、ケース30の内部空間と、パイプフレーム67の内部空間と、の間で流通可能である。従って、ケース30に貯留されているオイルと、オイルクーラ72に貯留されているオイルと、が混ざり合うことにより、ケース30及びパイプフレーム67に貯留されているオイルの全体的な温度が低下する。
【0089】
以上で説明した構成によれば、オイルクーラ72は、油圧回路20からオイルタンク7へ戻るオイルが流れる第2油路22ではなく、油圧モータMからオイルタンク7へ戻るオイルが流れる第4油路24に設けられている。
【0090】
これにより、オイルクーラ72内部でのオイルの流れが悪くなった場合であっても、油圧回路20における油圧は高まらない。従って、以上で説明した構成であれば、ケースリリーフバルブを設ける必要がない。これにより、製造コストの増大を抑制しやすいトウモロコシ収穫機1を実現できる。
【0091】
尚、以上に記載した実施形態は一例に過ぎないのであり、本発明はこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0092】
〔その他の実施形態〕
(1)トウモロコシ収穫機1は、前輪11及び後輪12に代えて、クローラ式の走行装置またはセミクローラ式の走行装置を備えていても良い。
【0093】
(2)パイプフレーム67は、中空の円筒状以外の構成であっても良い。例えば、パイプフレーム67は、四角形断面等、多角形断面を有する筒状に構成されていても良い。
【0094】
(3)オイルクーラ72は空冷式でなくても良い。例えば、オイルクーラ72は水冷式であっても良い。
【0095】
(4)ファン74は設けられていなくても良い。
【0096】
(5)油圧により伸縮する油圧シリンダと、オイルタンク7と、が第3油路23及び第4油路24によって接続されていても良い。この場合、この油圧シリンダは、本発明に係る「油圧アクチュエータ」に相当する。
【0097】
(6)ファン74によって送風可能な方向が、機体左右方向で内側から外側へ向かう方向のみであっても良い。
【0098】
(7)静油圧式無段変速機2は、機体前部における機体左右方向外側寄りの位置に配置されていても良いし、機体後部に配置されていても良い。
【0099】
(8)ギヤ式変速機3は、機体前部における機体左右方向外側寄りの位置に配置されていても良いし、機体後部に配置されていても良い。
【0100】
(9)オイルクーラ72は、静油圧式無段変速機2及びギヤ式変速機3よりも前側に配置されていても良いし、機体左右方向中央寄りの位置に配置されていても良い。
【0101】
(10)ファン74は、静油圧式無段変速機2及びギヤ式変速機3よりも前側に配置されていても良いし、機体左右方向中央寄りの位置に配置されていても良い。
【0102】
(11)エンジンEに代えて、電気モータが備えられると共に、電気モータからの動力により走行装置が駆動するように構成されていても良い。
【0103】
(12)ケース30は、オイルタンク7に含まれていなくても良い。
【0104】
(13)パイプフレーム67は設けられていなくても良い。
【0105】
(14)上記実施形態におけるバルブユニットVU内の構成は一例にすぎないのであり、適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、トウモロコシ収穫機だけではなく、普通型コンバイン、自脱型コンバイン、田植機、トラクタ、建設作業車等の種々の作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 トウモロコシ収穫機(作業車)
2 静油圧式無段変速機
3 ギヤ式変速機
7 オイルタンク
11 前輪(走行装置)
20 油圧回路
21 第1油路
22 第2油路
23 第3油路
24 第4油路
30 ケース
31 動力伝達部
72 オイルクーラ(冷却装置)
74 ファン
E エンジン
M 油圧モータ(油圧アクチュエータ)