(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】冷却構造
(51)【国際特許分類】
F02F 1/36 20060101AFI20230310BHJP
F02F 1/38 20060101ALI20230310BHJP
F01L 3/12 20060101ALI20230310BHJP
F01P 3/14 20060101ALI20230310BHJP
F01P 11/04 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
F02F1/36 C
F02F1/38 A
F01L3/12 A
F01P3/14 A
F01P11/04 C
F01P11/04 D
F01P11/04 B
F01P11/04 F
(21)【出願番号】P 2018216818
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 芳彦
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-036316(JP,U)
【文献】実開平02-105525(JP,U)
【文献】実開昭59-121410(JP,U)
【文献】実開昭60-039710(JP,U)
【文献】特開2008-286009(JP,A)
【文献】実開昭55-127818(JP,U)
【文献】実開昭57-136806(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/36
F02F 1/38
F01L 3/12
F01P 3/14
F01P 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用ディーゼルエンジンの燃焼室から排ガスを排出するための排ガス経路と、前記燃焼室と前記排ガス経路との間を開閉する排気弁の弁棒の摺動を案内する弁棒案内部と、を内部に有する排気弁箱のための冷却構造であって、
前記弁棒案内部の外周を囲むように前記排気弁箱内の前記排ガス経路よりも上部に形成され、前記弁棒案内部を冷却水によって冷却するための冷却室と、
前記排気弁箱の下側から外側を通って前記排ガス経路よりも上側で前記冷却室と連通するように配管され、前記冷却室に前記冷却水を供給する外部給水管と、
を備え
、
前記外部給水管は、前記排気弁箱の熱伸びに伴って前記外部給水管に生じる応力を吸収する応力吸収構造を備え、
前記応力吸収構造は、
前記外部給水管の管本体の端部を前記排気弁箱の外壁部に接合する接合部と、
前記接合部に対する前記管本体の端部の熱伸び方向の摺動を可能とする摺動部材と、
によって構成されることを特徴とする冷却構造。
【請求項2】
舶用ディーゼルエンジンの燃焼室から排ガスを排出するための排ガス経路と、前記燃焼室と前記排ガス経路との間を開閉する排気弁の弁棒の摺動を案内する弁棒案内部と、を内部に有する排気弁箱のための冷却構造であって、
前記弁棒案内部の外周を囲むように前記排気弁箱内の前記排ガス経路よりも上部に形成され、前記弁棒案内部を冷却水によって冷却するための冷却室と、
前記排気弁箱の下側から外側を通って前記排ガス経路よりも上側で前記冷却室と連通するように配管され、前記冷却室に前記冷却水を供給する外部給水管と、
を備え、
前記外部給水管は、前記排気弁箱の熱伸びに伴って前記外部給水管に生じる応力を吸収する応力吸収構造を備え、
前記応力吸収構造は、
前記排気弁箱の下側に位置するシリンダカバーの上部に前記外部給水管の管本体の端部を接合する接合部と、
前記接合部に対する前記管本体の端部の熱伸び方向の摺動を可能とする摺動部材と、
によって構成されることを特徴とする冷却構造。
【請求項3】
舶用ディーゼルエンジンの燃焼室から排ガスを排出するための排ガス経路と、前記燃焼室と前記排ガス経路との間を開閉する排気弁の弁棒の摺動を案内する弁棒案内部と、を内部に有する排気弁箱のための冷却構造であって、
前記弁棒案内部の外周を囲むように前記排気弁箱内の前記排ガス経路よりも上部に形成され、前記弁棒案内部を冷却水によって冷却するための冷却室と、
前記排気弁箱の下側から外側を通って前記排ガス経路よりも上側で前記冷却室と連通するように配管され、前記冷却室に前記冷却水を供給する外部給水管と、
を備え、
前記外部給水管は、前記排気弁箱の熱伸びに伴って前記外部給水管に生じる応力を吸収する応力吸収構造を備え、
前記応力吸収構造は、
前記排気弁箱の下側に位置するシリンダカバー内の冷却水路に通じるように前記シリンダカバーの上部に接合される前記外部給水管の管本体の端部と前記冷却水路との間に設けられ、前記冷却水路に対する前記管本体の端部の熱伸び方向の摺動を可能とする摺動部材によって構成されることを特徴とする冷却構造。
【請求項4】
前記排気弁箱内の前記排ガス経路よりも上部に形成され、前記冷却室の周方向に沿って前記冷却室と合流する内部流路を備え、
前記外部給水管は、前記内部流路を通じて前記冷却室と連通することを特徴とする請求項1~
3のいずれか一つに記載の冷却構造。
【請求項5】
前記排気弁箱内の前記排ガス経路よりも上部に形成され、前記冷却室を挟んで前記冷却水の出口とは反対側で前記冷却室と合流する内部流路を備え、
前記外部給水管は、前記内部流路を通じて前記冷却室と連通することを特徴とする請求項1~
3のいずれか一つに記載の冷却構造。
【請求項6】
前記外部給水管は、複数配管されることを特徴とする請求項1~
5のいずれか一つに記載の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用ディーゼルエンジンの排気弁箱のための冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンの冷却構造が提案されている。例えば、特許文献1に記載される冷却構造では、シリンダカバーの下縁部から冷却水が供給され、この供給された冷却水が、シリンダカバー内の流路を通って当該シリンダカバーの上部に流れる。これにより、シリンダカバーおよびその上部の構造体が、冷却水によって冷却され得る。
【0003】
舶用ディーゼルエンジンにおいては、シリンダカバーの上部に排気弁箱が設けられている。一般に、排気弁箱内には、気筒(シリンダ)の燃焼室から排ガスを排出するための排ガス経路である排気ポートが形成されている。さらに、排気弁箱内においては、これら燃焼室と排気ポートとの間を開閉する排気弁の弁棒が、弁棒の摺動を案内する弁棒案内部によって摺動自在に支持されている。
【0004】
弁棒案内部における弁棒の円滑な摺動を保つためには、弁棒案内部に潤滑油を供給して、これら弁棒案内部と弁棒との間に潤滑油の膜を適度に形成する必要がある。しかし、排気弁箱内においては、排気ポート内を流れる高温な排ガスの熱が弁棒案内部に伝わり、これに起因して、弁棒案内部の温度が過度に上昇する場合がある。この場合、弁棒案内部に供給された潤滑油の粘度が下がることから、弁棒案内部は、弁棒との間に潤滑油の膜を保持し難い状態、すなわち油切れの状態となってしまう。この状態は、弁棒案内部における弁棒の円滑な摺動を阻害する原因となる。
【0005】
上述した油切れの状態を回避するために、排気弁箱内には、弁棒案内部の近傍に冷却室が形成されている。また、排気弁箱の側壁内には、下方のシリンダカバー側から上方の冷却室側に至る流路が形成されている。弁棒案内部は、この流路を通じて冷却室に流入した冷却水によって冷却される。このようにして、上述した弁棒案内部の過度な温度上昇が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した排気弁箱においては、排気ポートに面する側壁内に冷却水の流路が形成されているため、排気ポートの近傍を冷却水が流れる構造となっている。このような排気弁箱の構造では、燃焼室から排気ポートに流れた排ガスが上記流路内の冷却水によって冷却され、これに起因して、排気ポート内の排ガスの温度が過度に低下する恐れがある。この結果、排気ポート内において排ガスから硫酸が生成され、この硫酸によって排気弁箱内が腐食されるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、排気弁箱内の硫酸腐食の発生を抑制するとともに、この排気弁箱内に設けられている弁棒案内部を冷却することができる冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る冷却構造は、舶用ディーゼルエンジンの燃焼室から排ガスを排出するための排ガス経路と、前記燃焼室と前記排ガス経路との間を開閉する排気弁の弁棒の摺動を案内する弁棒案内部と、を内部に有する排気弁箱のための冷却構造であって、前記弁棒案内部の外周を囲むように前記排気弁箱内の前記排ガス経路よりも上部に形成され、前記弁棒案内部を冷却水によって冷却するための冷却室と、前記排気弁箱の下側から外側を通って前記排ガス経路よりも上側で前記冷却室と連通するように配管され、前記冷却室に前記冷却水を供給する外部給水管と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る冷却構造は、上記の発明において、前記外部給水管は、前記排気弁箱の熱伸びに伴って前記外部給水管に生じる応力を吸収する応力吸収構造を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る冷却構造は、上記の発明において、前記応力吸収構造は、前記外部給水管の管本体の端部を前記排気弁箱の外壁部に接合する接合部と、前記接合部に対する前記管本体の端部の熱伸び方向の摺動を可能とする摺動部材と、によって構成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る冷却構造は、上記の発明において、前記応力吸収構造は、前記排気弁箱の下側に位置するシリンダカバーの上部に前記外部給水管の管本体の端部を接合する接合部と、前記接合部に対する前記管本体の端部の熱伸び方向の摺動を可能とする摺動部材と、によって構成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る冷却構造は、上記の発明において、前記応力吸収構造は、前記外部給水管の熱伸び方向の伸縮を可能とする可変構造の管本体によって構成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る冷却構造は、上記の発明において、前記排気弁箱内の前記排ガス経路よりも上部に形成され、前記冷却室の周方向に沿って前記冷却室と合流する内部流路を備え、前記外部給水管は、前記内部流路を通じて前記冷却室と連通することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る冷却構造は、上記の発明において、前記排気弁箱内の前記排ガス経路よりも上部に形成され、前記冷却室を挟んで前記冷却水の出口とは反対側で前記冷却室と合流する内部流路を備え、前記外部給水管は、前記内部流路を通じて前記冷却室と連通することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る冷却構造は、上記の発明において、前記外部給水管は、複数配管されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、排気弁箱内の硫酸腐食の発生を抑制するとともに、この排気弁箱内に設けられている弁棒案内部を冷却することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジンの排気弁箱付近の一構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1に係る冷却構造の一構成例を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1に係る冷却構造を排気弁箱の上側から見た模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1における外部給水管の応力吸収構造の一例を示す断面模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態1における外部給水管の応力吸収構造の一変形例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態2に係る冷却構造の一構成例を示す断面模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態3に係る冷却構造の一構成例を示す断面模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態4に係る冷却構造の一構成例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る冷却構造の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0020】
(実施形態1)
(舶用ディーゼルエンジンの構成)
まず、本発明の実施形態1に係る冷却構造を有する排気弁箱を備えた舶用ディーゼルエンジンの構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る舶用ディーゼルエンジンの排気弁箱付近の一構成例を示す模式図である。
図1に示す舶用ディーゼルエンジン1は、プロペラ軸を介して船舶の推進用プロペラ(いずれも図示せず)を回転運動させる推進用の機関(主機関)である。例えば、舶用ディーゼルエンジン1は、公知のユニフロー掃排気式のクロスヘッド式ディーゼルエンジン等の2ストロークディーゼルエンジンである。舶用ディーゼルエンジン1としては、6気筒エンジン等が挙げられるが、気筒数は特に限定されない。また、舶用ディーゼルエンジン1の動作制御方式としては、カム式または電子制御式等が挙げられるが、特に限定されない。
【0021】
なお、舶用ディーゼルエンジン1の排気弁箱付近の構成は、いずれの気筒(シリンダ)においても同様である。このため、以下では、その中の一つの気筒について、舶用ディーゼルエンジン1の排気弁箱付近の構成を説明する。
【0022】
図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン1は、シリンダライナ2と、シリンダカバー3と、ピストン4と、ピストン棒5と、排気弁6と、排気弁座7と、燃料噴射弁9と、排気弁箱10と、カバー12と、接続配管14と、排気マニホールド15とを含んで構成されている。
【0023】
シリンダライナ2は筒状の構造体であり、シリンダライナ2の上部にはシリンダカバー3が取り付けられる。これらのシリンダライナ2およびシリンダカバー3は、舶用ディーゼルエンジン1における一つのシリンダを構成するものであり、ピストン4が往復移動する筒状の空間(すなわちシリンダ内の空間)を形成している。ピストン4は、この空間内に往復移動自在に設けられる。ピストン4の下部には、ピストン棒5の上部が接続されている。特に図示しないが、ピストン棒5の下部は、クロスヘッド等を介してクランク軸に連結されている。このクランク軸は、ピストン4の往復移動に連動して回転するクランクシャフト等の出力軸に連結されている。
【0024】
排気弁6は、弁体6aと弁棒6bとを備えている。排気弁座7は、シリンダカバー3の上部に組み込まれており、排気弁6の弁体6aが着座自在に構成されているとともに、排気ポート7aを形成している。シリンダライナ2と、シリンダカバー3と、ピストン4と、弁体6aとで上記シリンダ内の燃焼室8が形成される。燃料噴射弁9は、シリンダカバー3に取り付けられており、燃焼室8内に燃料(重油や軽油等)を噴射可能に構成されている。
【0025】
排気弁箱10は、上記シリンダの上部(本実施形態1では上記シリンダを構成するシリンダカバー3の上部)に取り付けられている。これにより、排気弁箱10の下端部は、シリンダカバー3の上部に組み込まれた状態の排気弁座7の上端部と連結される。排気弁箱10の内部には、排気弁座7の排気ポート7aと連通する排気ポート10aが形成されている。また、排気弁箱10の内部には、弁棒案内部11が組み込まれている。排気弁箱10は、弁棒案内部11を介して、排気弁6の弁棒6bを摺動自在に支持している。
【0026】
カバー12は、排気弁箱10の上部に取り付けられており、排気弁6を往復移動可能に構成された排気弁作動装置13を収容している。排気弁作動装置13は、圧縮ばねまたは空気ばね等の付勢部材(図示せず)を内部に備え、この付勢部材の作用により、排気弁6を、排気ポート7aを閉止する方向に付勢させた状態で支持している。また、排気弁作動装置13は、配管を通じて給油ポンプ(図示せず)と接続されている。排気弁作動装置13は、給油ポンプから配管を通じて作動油が供給された場合、この作動油の油圧により、排気弁6を付勢部材に抗して下降させる。このようにして、排気弁作動装置13は、排気ポート7aを開放するように排気弁6を作動させる。排気弁6は、排気弁作動装置13に作動油が供給されている間だけ、排気ポート7aを開放し、この作動油の供給が停止されると排気ポート7aを閉止する。
【0027】
接続配管14は、排気弁箱10に形成された排気ポート10aと排気マニホールド15とを接続している。排気マニホールド15は、舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室8から排気ポート7a、10aおよび接続配管14を通じて排ガスを受け入れ、受け入れた排ガスを一時貯留して、この排ガスの動圧を静圧に変える。
【0028】
舶用ディーゼルエンジン1において、掃気ポート(図示せず)から空気等の燃焼用ガスが燃焼室8に導入された後にピストン4が上昇し、排気弁6によって排気ポート7aが閉じることにより、燃焼室8内の燃焼用ガスが圧縮される。ピストン4が上死点まで移動すると、燃焼室8内の圧力が所定の圧縮圧力になり、燃料噴射弁9が燃料を噴射する。すると、燃焼室8内で燃焼用ガスと燃料とが混合して燃焼し、燃焼エネルギーによってピストン4が下降する。所定のタイミングで、排気弁6によって排気ポート7aが開くことにより、燃焼室8内の排ガスは、排気弁座7の排気ポート7aを通じて排気弁箱10内の排気ポート10aに排出される。その後、排ガスは、排気ポート10aから接続配管14を通じて排気マニホールド15に排出される。
【0029】
(冷却構造)
つぎに、本発明の実施形態1に係る冷却構造について説明する。本実施形態1に係る冷却構造は、例えば、舶用ディーゼルエンジン1のうち排気弁箱10のための冷却構造である。
図2は、本発明の実施形態1に係る冷却構造の一構成例を示す断面模式図である。
図3は、本発明の実施形態1に係る冷却構造を排気弁箱の上側から見た模式図である。
【0030】
上述したように、排気弁箱10は、排気ポート10aと弁棒案内部11とを内部に有する。排気ポート10aは、舶用ディーゼルエンジン1の燃焼室8から排ガスを排出するための排ガス経路であり、燃焼室8に通じる排気弁座7の排気ポート7aと連通する。弁棒案内部11は、燃焼室8と排気ポート10aとの間(すなわち排気ポート7a)を開閉する排気弁6の弁棒6bの摺動を案内するものである。弁棒案内部11は、例えば円筒状の構造体であり、カバー12の下部(排気弁箱10の上端部)から排気ポート10aの上部に至る領域に延在するように、排気弁箱10の内部に設けられる。弁棒案内部11には、排気弁6の弁棒6bが摺動自在に挿通されている。排気弁箱10は、弁棒案内部11を介して、弁棒6bの摺動方向を所定の方向(例えば排気弁箱10の上下方向)に規制しながら弁棒6bを支持する。このような排気弁箱10の冷却構造は、
図2、3に示すように、冷却室21と、外部給水管22、23と、下部流路24a、24bと、内部流路25a、25b、25cとを備える。
【0031】
冷却室21は、弁棒案内部11を冷却水によって冷却するための空間である。
図2、3に示すように、冷却室21は、弁棒案内部11の外周を囲むように、排気弁箱10の内部の排気ポート10aよりも上部に形成(例えば環状に形成)される。
【0032】
外部給水管22、23は、冷却室21に冷却水を供給するために複数配管される外部給水管の一例である。
図2、3に示すように、外部給水管22、23は、各々、排気弁箱10の下側から外側を通って排気ポート10aよりも上側で冷却室21と連通するように配管される。また、本実施形態1において、外部給水管22、23は、排気弁箱10の熱伸び(熱膨張)に伴って外部給水管22、23に生じる応力を吸収する応力吸収構造を各々備えている。
【0033】
本実施形態1では、例えば
図2に示すように、外部給水管22は、排気弁箱10の外側に冷却水を流通させる管本体22aと、管本体22aの端部を排気弁箱10の外壁部に接合する接合部22b、22cとを備える。
【0034】
管本体22aは、排気弁箱10の外壁部や当該外壁部から突起する構造体(例えば排気ポート10aのフランジ部等)との接触を回避するとともに、排気弁箱10の下部から上部に向かって延在するように排気弁箱10の外側に配管される。管本体22aの一端部(流入端部)は、接合部22bによって排気弁箱10の外壁部の下側部分に接合される。この下側部分として、例えば、排気弁箱10の排気ポート10aの入口端部近傍(好ましくは下側)の外壁部分等が挙げられる。管本体22aの他端部(流出端部)は、接合部22cによって排気弁箱10の外壁部の上側部分に接合される。この上側部分として、例えば、排気弁箱10の排気ポート10aよりも上側の外壁部分等が挙げられる。
【0035】
接合部22bは、内部に流通路22baを有する。接合部22bは、締結等によって排気弁箱10の外壁部の下側部分に管本体22aの流入端部を接合するとともに、流通路22baを介して排気弁箱10の下部流路24aと管本体22aとを連通させる。一方、接合部22cは、排気弁箱10の上側部分の内部流路25aと管本体22aとが連通するように、締結等によって排気弁箱10の外壁部の上側部分に管本体22aの流出端部を接合する。
【0036】
また、本実施形態1では、例えば
図2に示すように、外部給水管23は、上述した外部給水管22とは排気弁箱10を挟んで反対側に配管されている。この外部給水管23は、排気弁箱10の外側に冷却水を流通させる管本体23aと、管本体23aの端部を排気弁箱10の外壁部に接合する接合部23b、23cとを備える。
【0037】
管本体23aは、上述した管本体22aとは排気弁箱10を挟んで反対側において、排気弁箱10の外壁部や当該外壁部から突起する構造体との接触を回避するとともに、排気弁箱10の下部から上部に向かって延在するように排気弁箱10の外側に配管される。管本体23aの一端部(流入端部)は、接合部23bによって排気弁箱10の外壁部の下側部分に接合される。管本体23aの他端部(流出端部)は、接合部23cによって排気弁箱10の外壁部の上側部分に接合される。
【0038】
接合部23bは、内部に流通路23baを有する。上述した接合部22bとは排気弁箱10を挟んで反対側において、接合部23bは、締結等によって排気弁箱10の外壁部の下側部分に管本体23aの流入端部を接合するとともに、流通路23baを介して排気弁箱10の下部流路24bと管本体23aとを連通させる。また、接合部23cは、内部に流通路23caを有する。上述した接合部22cとは排気弁箱10を挟んで反対側において、接合部23cは、締結等によって排気弁箱10の外壁部の上側部分に管本体23aの流出端部を接合するとともに、流通路23caを介して排気弁箱10の上側部分の内部流路25cと管本体23aとを連通させる。
【0039】
また、
図2に示すように、排気弁箱10の外壁部内の下側には、下部流路24a、24bが形成されている。下部流路24a、24bは、各々、一端部が排気弁箱10の外壁部の下端面に開口し且つ他端部が排気弁箱10の外壁部の側壁面に開口するように、排気弁箱10の外壁部内の下側部分に形成される。ここで、排気弁座7の内部には、
図2に示すように、排気弁座7と排気弁箱10との接合端面側から排気弁座7と排気弁6の弁体6aとの接触部分(シート部)へ延在する冷却水路7bが形成されている。冷却水路7bには、例えば、シリンダカバー3の内部に形成された流路(図示せず)を通じて冷却水が供給される。冷却水路7bに供給された冷却水は、排気弁座7(特にシート部)を冷却する。
【0040】
また、排気弁座7の冷却水路7bと排気弁箱10の下部流路24a、24bとの各間には、
図2に示すように、周溝7cが形成されている。例えば、周溝7cは、排気ポート7aを囲むように、排気弁座7と排気弁箱10との境界部分に沿って円形または矩形の環状に形成されている。周溝7cは、排気弁座7および排気弁箱10の少なくとも一方に形成される。本実施形態1では、排気弁座7と排気弁箱10との境界部分を跨って排気弁座7および排気弁箱10の各端部に設けられている。冷却水路7bは、
図2に示すように、周溝7cを通じて上述の下部流路24a、24bと連通している。すなわち、一方の下部流路24aは、周溝7cを通じて冷却水路7bと接合部22b内の流通路22baとを連通させ、他方の下部流路24bは、周溝7cを通じて冷却水路7bと接合部23b内の流通路23baとを連通させている。
【0041】
また、
図2に示すように、排気弁箱10の内部の排気ポート10aよりも上部には、内部流路25a、25b、25cが形成されている。これらの内部流路25a、25b、25cのうち、内部流路25a、25bは、一方の外部給水管22と冷却室21とを連通させるものであり、内部流路25cは、他方の外部給水管23と冷却室21とを連通させるものである。
【0042】
詳細には、
図2、3に示すように、内部流路25aは、一端部が排気弁箱10の外壁部の側壁面に開口し且つ他端部が内部流路25bの中途部と接続されるように、排気ポート10aよりも上部に形成される。このような内部流路25aは、上述したように排気弁箱10の外壁部に接合された外部給水管22と内部流路25bとを、排気ポート10aよりも上側において連通させる。一方、内部流路25bは、一端部が冷却室21と接続され且つ他端部が排気弁箱10の上端面に開口するように、排気ポート10aよりも上部に形成される。この内部流路25bの開口は、
図2、3に示すように、冷却水出口26を構成する。また、内部流路25bは、上述したように、中途部において内部流路25aと接続されている。このような内部流路25bは、上述したように外部給水管22に通じる内部流路25aと冷却室21とを、排気ポート10aよりも上側において連通させる。
【0043】
本実施形態1では、例えば
図3に示すように、内部流路25bは、冷却室21の周方向に沿って冷却室21と合流する。外部給水管22は、内部流路25a、25bを通じて冷却室21と連通する。すなわち、これらの内部流路25a、25bは、排気ポート10aよりも上側で冷却室21と外部給水管22とを連通させるとともに、冷却室21の周方向に沿って冷却室21と合流する内部流路を構成する。
【0044】
一方、
図2、3に示すように、内部流路25cは、一端部が排気弁箱10の外壁部の側壁面に開口し且つ他端部が冷却室21と接続されるように、排気ポート10aよりも上部に形成される。このような内部流路25cは、上述したように排気弁箱10の外壁部に接合された外部給水管23と冷却室21とを、排気ポート10aよりも上側において連通させる。また、本実施形態1では、例えば
図2、3に示すように、内部流路25cは、冷却室21を挟んで冷却水出口26とは反対側で冷却室21と合流する。外部給水管23は、上述した外部給水管22とは排気弁箱10を挟んで反対側において、この内部流路25cを通じて冷却室21と連通する。なお、「冷却室21を挟んで冷却水出口26とは反対側」は、例えば、
図3に示すように排気弁箱10を上方から平面視した場合に、内部流路25cと冷却室21との合流部の中心点と冷却水出口26の中心点とを結ぶ線分が冷却室21と交差するようになる、内部流路25cと冷却水出口26との位置関係を意味する。
【0045】
上述したように構成された冷却構造において、冷却水は、例えば、シリンダカバー3内の流路(図示せず)から排気弁座7内の冷却水路7bに流入する。冷却水路7b内の冷却水は、周溝7cを経由して排気弁箱10の外壁部内の下部流路24aに流入し、この下部流路24aから外部給水管22を通じて排気弁箱10内の排気ポート10aよりも上部に導かれる。詳細には、冷却水は、下部流路24aから外部給水管22の接合部22b内の流通路22baを通じて管本体22aに流入し、管本体22aを通じて排気弁箱10の内部流路25aに流入する。その後、冷却水は、排気弁箱10内の排気ポート10aよりも上側で内部流路25aから内部流路25bを通じて冷却室21に流入する。
【0046】
これに並行して、冷却水路7b内の冷却水は、周溝7cを経由して排気弁箱10の外壁部内の下部流路24bに流入し、この下部流路24bから外部給水管23を通じて排気弁箱10内の排気ポート10aよりも上部に導かれる。詳細には、冷却水は、下部流路24bから外部給水管23の接合部23b内の流通路23baを通じて管本体23aに流入し、管本体23aおよび接合部23c内の流通路23caをこの順に通って排気弁箱10の内部流路25cに流入する。その後、冷却水は、排気弁箱10内の排気ポート10aよりも上側で内部流路25cを通じて冷却室21に流入する。
【0047】
上述したように冷却室21に流入した冷却水は、冷却室21内において流動しながら、冷却室21の壁を介して弁棒案内部11を冷却する。例えば、内部流路25bは、
図3に示したように冷却室21の周方向に沿って冷却室21と合流する流路であるため、外部給水管22から内部流路25a、25bを通じて冷却室21に供給された冷却水は、冷却室21内において周方向に流動する。これにより、冷却水は、冷却室21内での滞留が抑制され、冷却室21内を循環しながら、新たに供給された冷却水と入れ替わりで冷却水出口26から排出される。また、内部流路25cは、
図3に示したように冷却室21を挟んで冷却水出口26とは反対側で冷却室21と合流する流路であるため、内部流路25cと冷却室21との合流部から冷却水出口26に至るまでの冷却室21内の冷却水の流通経路が、冷却水出口26と同じ側の場合に比べて長くなる。これにより、外部給水管23から内部流路25cを通じて冷却室21に供給された冷却水は、冷却水出口26から排出されるまでの間に、冷却室21内を比較的長い距離、流動するようになる。
【0048】
このように冷却室21内を流動する冷却水が上述のように弁棒案内部11を冷却する場合、冷却室21内の冷却水は、排気ポート10a内の排ガスから弁棒案内部11に伝わる熱を除去して、弁棒案内部11の温度上昇を抑制する。ここで、弁棒案内部11と排気弁6の弁棒6bとの間には、弁棒案内部11における弁棒の6bの摺動を円滑にするための潤滑油が供給されている。この潤滑油は、弁棒案内部11と弁棒6bとの間に介在して油膜を形成する。上述したように弁棒案内部11は冷却室21内の冷却水によって冷却されているため、この潤滑油は、適度な粘度を有して上記の油膜を保持している。これにより、弁棒案内部11における弁棒6bの円滑な摺動が保たれている。弁棒案内部11の冷却に使用された冷却水は、冷却室21から内部流路25bを通じて冷却水出口26に至り、冷却水出口26から配管等(図示せず)を通じて排気弁箱10の外部に排出される。
【0049】
(外部給水管の応力吸収構造)
つぎに、本発明の実施形態1に係る冷却構造における外部給水管の応力吸収構造について説明する。排気弁箱10は、燃焼室8から排気ポート10aに排出された高温な排ガスの熱によって熱伸びする場合がある。
図2、3に示したように排気弁箱10の外壁部に接合された外部給水管22、23には、この排気弁箱10の熱伸びに伴って引っ張られる等して応力(例えば引張応力)が生じる恐れがある。当該応力による外部給水管22、23の破損を防止するために、外部給水管22、23は、当該応力を吸収する応力吸収構造を備えている。
【0050】
図4は、本発明の実施形態1における外部給水管の応力吸収構造の一例を示す断面模式図である。
図4には、応力吸収構造の一例として、外部給水管23の応力吸収構造が例示されている。
【0051】
図4に示すように、外部給水管23において、接合部23bは、上述した流通路23baと、この流通路23baに連通する係合部23bbとを内部に備える。接合部23bの係合部23bbには、管本体23aの流入端部23aaが嵌入される。これにより、流入端部23aaが係合部23bbと係合して、管本体23aは、接合部23b内の流通路22baと連通する。また、流入端部23aaと係合部23bbとの間には、Oリング27aが介在している。Oリング27aは、接合部23bに対する管本体23aの端部(
図4では流入端部23aa)の熱伸び方向F1の摺動を可能とする摺動部材の一例である。管本体23aは、Oリング27aによって流入端部23aaが係合部23bbに対して熱伸び方向F1に摺動自在となるように、接合部23bに接続される。すなわち、管本体23aの流入端部23aaは、接合部23bの係合部23bbと熱伸び方向F1に摺動自在に係合する自由端である。
【0052】
また、外部給水管23において、接合部23cは、上述した流通路23caと、この流通路23caに連通する係合部23cbとを内部に備える。接合部23cの係合部23cbには、管本体23aの流出端部23abが嵌入される。これにより、流出端部23abが係合部23cbと係合して、管本体23aは、接合部23c内の流通路23caと連通する。また、流出端部23abと係合部23cbとの間には、Oリング27bが介在している。Oリング27bは、接合部23cに対する管本体23aの端部(
図4では流出端部23ab)の熱伸び方向F1の摺動を可能とする摺動部材の一例である。管本体23aは、Oリング27bによって流出端部23abが係合部23cbに対して熱伸び方向F1に摺動自在となるように、接合部23cに接続される。すなわち、管本体23aの流出端部23abは、接合部23cの係合部23cbと熱伸び方向F1に摺動自在に係合する自由端である。
【0053】
なお、Oリング27a、27bは、接合部23b、23cの係合部23bb、23cbの内壁部に各々設けられているが、これに限定されず、管本体23aの流入端部23aaおよび流出端部23abの外壁部に各々設けられてもよい。
【0054】
本実施形態1において、外部給水管23の応力吸収構造は、管本体23aの流入端部23aaおよび流出端部23abを排気弁箱10の外壁部に接合する接合部23b、23cと、接合部23b、23cに対する管本体23aの流入端部23aaおよび流出端部23abの熱伸び方向F1の摺動を可能とするOリング27a、27bとによって構成される。この応力吸収構造において、例えば
図4に示すように、排気弁箱10の外壁部に固定されている接合部23b、23cは、排気弁箱10の熱伸びに伴い、熱伸び前の状態A1から熱伸び後の状態A2に変化する。
【0055】
詳細には、
図4に示すように、接合部23bは、熱伸びした排気弁箱10の外壁部とともに熱伸び方向F1の下方側に変位する。この際、管本体23aの流入端部23aaは、接合部23bの係合部23bbに係合された状態を維持しつつ、Oリング27aを介して、係合部23bbに対し相対的に摺動する。これにより、接合部23bと管本体23aの流入端部23aaとの間における応力の発生が抑制される。これに並行して、接合部23cは、熱伸びした排気弁箱10の外壁部とともに熱伸び方向F1の上方側に変位する。この際、管本体23aの流出端部23abは、接合部23cの係合部23cbに係合された状態を維持しつつ、Oリング27bを介して、係合部23cbに対し相対的に摺動する。これにより、接合部23cと管本体23aの流出端部23abとの間における応力の発生が抑制される。上述したOリング27a、27bによる管本体23aと接合部23b、23cとの摺動作用により、排気弁箱10の熱伸びに伴う外部給水管23の応力が吸収される。
【0056】
その後、接合部23b、23cは、排気弁箱10の熱収縮に伴い、熱伸び後の状態A2から熱伸び前の状態A1に変化する。この場合、接合部23b、23cは、上述した熱伸びの場合とは逆方向に変位する。この変位に伴い、管本体23aの流入端部23aaおよび流出端部23abは、各々、Oリング27a、27bを介して、接合部23b、23cの係合部23bb、23cbに対し相対的に摺動する。
【0057】
特に図示しないが、本実施形態1において、外部給水管22の応力吸収構造は、管本体22aの流入端部を、接合部22bと熱伸び方向F1に摺動自在に係合される自由端とし、管本体22aの流出端部を、接合部22cによって排気弁箱10の外壁部に固定される固定端とするものである。この応力吸収構造において、接合部22bは、上述した外部給水管23の応力吸収構造の接合部23bと同様の構成を有する。また、接合部22bと管本体22aの流入端部との間には、接合部22bに対する管本体22aの流入端部の熱伸び方向F1の摺動を可能とするOリング(図示せず)が設けられている。
【0058】
このような応力吸収構造では、接合部22bと管本体22aの流入端部との間における応力の発生と、接合部22cと管本体22aの流出端部との間における応力の発生とが、このOリングによる管本体22aと接合部22bとの摺動作用によって抑制される。この結果、排気弁箱10の熱伸びに伴う外部給水管22の応力が吸収される。その後、外部給水管22は、上述した外部給水管23の場合と同様に、排気弁箱10の熱収縮に伴い、熱伸び後の状態から熱伸び前の状態に変化する。
【0059】
(応力吸収構造の変形例)
つぎに、本発明における外部給水管の応力吸収構造の変形例について説明する。
図5は、本発明の実施形態1における外部給水管の応力吸収構造の一変形例を示す模式図である。
図5には、応力吸収構造の一変形例として、外部給水管33の応力吸収構造が例示されている。この変形例において、外部給水管33は、
図2等に示した外部給水管23と置き換えて排気弁箱10の外壁部に接合される。なお、
図5に示す外部給水管33において、上述した外部給水管23と同じ構成部には同一符号を付している。
【0060】
図5に示すように、外部給水管33において、管本体33aは、外部給水管33の熱伸び方向F1の伸縮を可能とする可変構造の配管である。この管本体33aの可変構造として、例えば、
図5に示すU字状の管構造、S字状の管構造等、管の長さが接合部23b、23c間の離間距離よりも長くなる湾曲した管構造が挙げられる。接合部23bは、上述した流通路23baを内部に有する。この接合部23bには、管本体33aと流通路23baとが連通するように、管本体33aの流入端部33aaが締結等によって固定される。また、接合部23cは、上述した流通路23caを内部に有する。この接合部23cには、管本体33aと流通路23caとが連通するように、管本体33aの流出端部33abが締結等によって固定される。すなわち、この変形例において、管本体33aの流入端部33aaおよび流出端部33abは、各々、接合部23b、23cに固定された固定端である。
【0061】
この変形例に係る外部給水管33の応力吸収構造は、外部給水管33の熱伸び方向F1の伸縮を可能とする可変構造の管本体33aによって構成される。この応力吸収構造において、例えば
図5に示すように、排気弁箱10の外壁部に固定されている接合部23b、23cは、排気弁箱10の熱伸びに伴い、互いに離間する方向(熱伸び方向F1)に変位する。
【0062】
詳細には、
図5に示すように、接合部23bは、熱伸びした排気弁箱10の外壁部とともに熱伸び方向F1の下方側に変位する。これに並行して、接合部23cは、熱伸びした排気弁箱10の外壁部とともに熱伸び方向F1の上方側に変位する。この際、管本体33aは、接合部23b、23cの変位量(離間距離の増加量)に応じて、可変構造の管部分(
図5ではU字状の管部分)を開くように変形させて、熱伸び方向F1に伸長する。これにより、接合部23b、23cと管本体33aの各端部との間における応力の発生が抑制されることから、排気弁箱10の熱伸びに伴う外部給水管33の応力が吸収される。
【0063】
その後、接合部23b、23cは、排気弁箱10の熱収縮に伴い、熱伸び後の状態から熱伸び前の状態に変化する。この場合、接合部23b、23cは、上述した熱伸びの場合とは逆方向に変位する。この変位に伴い、管本体33aは、接合部23b、23cの変位量(離間距離の減少量)に応じて、可変構造の管部分を閉じるように変形させて、熱伸び方向F1に収縮する。
【0064】
特に図示しないが、この変形例に係る応力吸収構造は、外部給水管22に適用することも可能である。例えば、外部給水管22の応力吸収構造は、外部給水管22の熱伸び方向F1の伸縮を可能とする可変構造をもつ管本体22aによって構成される。管本体22aの流入端部および流出端部は、各々、接合部22b、22cに固定される。この外部給水管22の応力吸収構造は、
図5に示した外部給水管33の応力吸収構造と同様に動作する。
【0065】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る冷却構造では、排気弁6の弁棒6bの摺動を案内する弁棒案内部11の外周を囲むように、排気弁箱10内の排気ポート10aよりも上部に冷却室21が形成され、弁棒案内部11の冷却に使用される冷却水を冷却室21に供給するための外部給水管22、23が、排気弁箱10の下側から外側を通って排気ポート10aよりも上側で冷却室21と連通するように配管されている。
【0066】
このため、排気弁箱10の排気ポート10aに面する側壁を迂回して、排気弁箱10内の冷却室21に冷却水を供給することができる。これにより、排気ポート10a内の排ガスの温度が冷却水によって過度に低下する事態を回避することができる。この結果、排気ポート10a内において排ガスからの硫酸の生成を抑制できることから、排気弁箱10内の硫酸腐食の発生を抑制するとともに、排気弁箱10内に設けられている弁棒案内部11を冷却室21内の冷却水によって冷却することができる。また、この弁棒案内部11の冷却により、弁棒案内部11と弁棒6bとの間の潤滑油の粘度の過度な低下を抑制することができる。この結果、弁棒案内部11と弁棒6bとの間に潤滑油の膜を適度に形成できることから、弁棒案内部11における弁棒6bの円滑な摺動を保持することができる。
【0067】
ここで、舶用ディーゼルエンジン1の一例として、燃焼室への燃料噴射等のエンジン動作がカムの回転によって制御されるカム式のエンジンが挙げられるが、近年、エンジン動作が電子制御される電子制御式のエンジンが開発されている。一般に、カム式のエンジンは、所定のエンジン負荷についてエンジン動作を最適化するようにチューニングされる。これに対し、電子制御式のエンジンは、エンジン負荷が0%または100%の場合のみならず、0%超100%未満の範囲内(所謂、部分負荷)の場合であっても、チューニングによってエンジン動作を最適化し得る。したがって、電子制御式のエンジンは、カム式のエンジンよりも広範囲のエンジン負荷において燃費を向上させることができる。一方、排ガスの温度は、燃費の向上に伴って低下する。すなわち、「排気ポート内の排ガスの過度な温度低下に起因して生成される硫酸による排気弁箱内の硫酸腐食」という問題は、カム式のエンジンよりも電子制御式のエンジンにおいて顕著に生じる傾向にある。本発明の実施形態1に係る冷却構造によれば、排気ポート内の排ガスの温度が冷却水によって過度に低下する事態を回避できることから、カム式のエンジンについては勿論、電子制御式のエンジンについても、上記問題を解消することができる。
【0068】
また、本発明の実施形態1に係る冷却構造では、外部給水管22、23が排気弁箱10の外側を通るように配管されているため、排気ポート10a内の排ガスの熱によって高温化する排気弁箱10の側壁(排気ポート10aが面する側壁)を介さずに、排気弁箱10内の冷却室21に冷却水を供給することができる。これにより、冷却水が冷却室21に供給される途中で排ガスの熱によって意図せず加熱される事態を回避することができ、この結果、弁棒案内部11の冷却に十分な温度の冷却水を冷却室21に効率よく供給できることから、冷却水による弁棒案内部11の冷却効果を高めることができる。
【0069】
また、本発明の実施形態1に係る冷却構造では、排気弁箱10の熱伸びに伴って配管に生じる応力を吸収する応力吸収構造を外部給水管22、23に各々設けている。このため、排気ポート10a内の排ガスの熱等によって排気弁箱10が熱伸びした場合であっても、この熱伸びに伴って外部給水管22、23に生じる応力を吸収することができ、この結果、この熱伸びに伴う応力による外部給水管22、23の破損を防止することができる。
【0070】
また、本発明の実施形態1に係る冷却構造では、冷却室21と外部給水管22とを連通させる内部流路が、冷却室21の周方向に沿って冷却室21と合流するように、排気弁箱10内の排気ポート10aよりも上部に形成されている。このため、外部給水管22から当該内部流路を通じて冷却室21に供給された冷却水を、冷却室21の周方向に流動させることができる。これにより、冷却室21内での冷却水の滞留を抑制するとともに、冷却室21内の全域に亘って冷却水を循環させることができる。この結果、冷却室21内の冷却水による弁棒案内部11の冷却効果の向上を促進することができる。
【0071】
また、本発明の実施形態1に係る冷却構造では、冷却室21と外部給水管23とを連通させる内部流路が、冷却室21を挟んで冷却水出口26とは反対側で冷却室21と合流するように、排気弁箱10内の排気ポート10aよりも上部に形成されている。このため、当該内部流路と冷却室21との合流部から冷却水出口26に至るまでの冷却室21内の冷却水の流通経路を、冷却水出口26と同じ側に形成された流路に比べて長くすることができる。これにより、外部給水管23から当該内部流路を通じて冷却室21に供給された冷却水を、冷却水出口26から排出されるまでの間に、冷却室21内を比較的長い距離、流動させることができる。この結果、冷却室21内の冷却水による弁棒案内部11の冷却効果の向上を促進することができる。
【0072】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係る冷却構造について説明する。
図6は、本発明の実施形態2に係る冷却構造の一構成例を示す断面模式図である。本実施形態2における舶用ディーゼルエンジンは、上述した実施形態1における排気弁箱10に代えて
図6に示す排気弁箱10Aを備える。排気弁箱10Aは、上述した実施形態1における外部給水管22、23に代えて外部給水管42、43を備える。また、
図6に示すように、排気弁箱10Aの外壁部内には上述の下部流路24a、24bが形成されておらず、シリンダカバー3内の上側に冷却水路3a、3bが形成されている。これらの冷却水路3a、3bと排気弁座7の冷却水路7bとの間には、周溝7cが形成されている。本実施形態2に係る冷却構造は、このような排気弁箱10Aのための冷却構造である。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0073】
本実施形態2において、排気弁箱10Aの冷却構造は、例えば
図6に示すように、シリンダカバー3内の冷却水路3a、3bと、外部給水管42、43と、上述した冷却室21および内部流路25a、25b、25cとを備える。
【0074】
外部給水管42は、
図6に示すように、上述した実施形態1における接合部22bに代えて接合部42bを備える。外部給水管42の管本体22aの流入端部は、シリンダカバー3内の冷却水路3aに通じるように、接合部42bによってシリンダカバー3の上部に接合される。外部給水管42の構成は、上述のように接合部42bによってシリンダカバー3の上部に接合されること以外、実施形態1における外部給水管22と同様である。
【0075】
接合部42bは、
図6に示すように、内部に流通路42baを有する。接合部42bは、締結等によってシリンダカバー3の上部に管本体22aの流入端部を接合するとともに、流通路42baを介してシリンダカバー3内の冷却水路3aと管本体22aとを連通させる。
【0076】
また、外部給水管43は、
図6に示すように、上述した実施形態1における接合部23bに代えて接合部43bを備える。外部給水管43の管本体23aの流入端部は、シリンダカバー3内の冷却水路3bに通じるように、接合部43bによってシリンダカバー3の上部に接合される。外部給水管43の構成は、上述のように接合部43bによってシリンダカバー3の上部に接合されること以外、実施形態1における外部給水管23と同様である。
【0077】
接合部43bは、
図6に示すように、内部に流通路43baを有する。接合部43bは、締結等によってシリンダカバー3の上部に管本体23aの流入端部を接合するとともに、流通路43baを介してシリンダカバー3内の冷却水路3bと管本体23aとを連通させる。
【0078】
上述したように接合部42b、43bによって外部給水管42、43に各流入端部が接合されるシリンダカバー3は、上述したように、舶用ディーゼルエンジンにおける一つのシリンダを構成する一部品であり、
図6に示すように、排気弁箱10Aの下側に位置する部分である。本実施形態2において、シリンダカバー3は、
図6に示すように、冷却水路3a、3bを内部に有する。また、シリンダカバー3の冷却水路3a、3bと排気弁座7の冷却水路7bとの各間には、
図6に示すように、周溝7cが形成されている。周溝7cは、上述した実施形態1の場合と同様に環状をなす溝であり、シリンダカバー3および排気弁座7の少なくとも一方に形成される。本実施形態2では、シリンダカバー3と排気弁座7との境界部分を跨ってシリンダカバー3および排気弁座7の各端部に設けられている。冷却水路3a、3bは、各々、一端部がシリンダカバー3の上端面に開口し且つ他端部が周溝7cを経由して排気弁座7内の冷却水路7bに通じるように、シリンダカバー3内の上側部分に形成される。これらの冷却水路3a、3bのうち、一方の冷却水路3aは、周溝7cを通じて排気弁座7内の冷却水路7bと接合部42b内の流通路42baとを連通させ、他方の冷却水路3bは、周溝7cを通じて排気弁座7内の冷却水路7bと接合部43b内の流通路43baとを連通させている。
【0079】
本実施形態2に係る冷却構造において、冷却水は、例えば、シリンダカバー3内の下側の流路(図示せず)から排気弁座7内の冷却水路7bに流入する。冷却水路7b内の冷却水は、周溝7cを経由してシリンダカバー3内の冷却水路3aに流入し、この冷却水路3aから外部給水管42の接合部42b内の流通路42baを通じて、管本体22aに流入する。その後、この冷却水の流通は、上述した実施形態1と同様である。これに並行して、冷却水路7b内の冷却水は、周溝7cを経由してシリンダカバー3内の冷却水路3bに流入し、この冷却水路3bから外部給水管43の接合部43b内の流通路43baを通じて、管本体23aに流入する。その後、この冷却水の流通は、上述した実施形態1と同様である。
【0080】
また、本実施形態2において、外部給水管42、43は、排気弁箱10Aの熱伸びに伴って外部給水管42、43に生じる応力を吸収する応力吸収構造を各々備えている。特に図示しないが、外部給水管42、43の各応力吸収構造は、接合部42b、43bによって管本体22a、23aの各流入端部がシリンダカバー3の上部に接合されていること以外、上述した実施形態1と同様である。例えば、外部給水管42の応力吸収構造において、接合部42bと管本体22aの流入端部との間には、接合部42bに対する管本体22aの流入端部の熱伸び方向F1(
図4参照)の摺動を可能とするOリング(図示せず)が設けられている。外部給水管43の応力吸収構造において、接合部43bと管本体23aの流入端部との間には、接合部43bに対する管本体23aの流入端部の熱伸び方向F1の摺動を可能とするOリング(図示せず)が設けられている。或いは、上述した変形例に係る応力吸収構造(
図5参照)と同様に、外部給水管42の応力吸収構造は、外部給水管42の熱伸び方向F1の伸縮を可能とする可変構造をもつ管本体22aによって構成されてもよい。これと同様に、外部給水管43の応力吸収構造は、外部給水管43の熱伸び方向F1の伸縮を可能とする可変構造をもつ管本体23aによって構成されてもよい。
【0081】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係る冷却構造では、シリンダカバー3内の冷却水路3aと管本体22aとが連通するように外部給水管42の流入端部を接合部42bによってシリンダカバー3の上部に接合し、シリンダカバー3内の冷却水路3bと管本体23aとが連通するように外部給水管43の流入端部を接合部43bによってシリンダカバー3の上部に接合し、その他の構成を上述した実施形態1と同様にしている。このため、外部給水管42、43の各流入端部をシリンダカバー3の上部に接合した態様でありながら、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受する冷却構造を実現することができる。
【0082】
(実施形態3)
つぎに、本発明の実施形態3に係る冷却構造について説明する。
図7は、本発明の実施形態3に係る冷却構造の一構成例を示す断面模式図である。本実施形態3における舶用ディーゼルエンジンは、上述した実施形態2における排気弁箱10Aに代えて
図7に示す排気弁箱10Bを備える。
図7に示すように、排気弁箱10Bは、上述した実施形態2における外部給水管42、43に代えて外部給水管52、53を備える。本実施形態3に係る冷却構造は、このような排気弁箱10Bのための冷却構造である。その他の構成は実施形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0083】
本実施形態3において、排気弁箱10Bの冷却構造は、例えば
図7に示すように、外部給水管52、53と、上述したシリンダカバー3内の冷却水路3a、3b、冷却室21および内部流路25a、25b、25cとを備える。
【0084】
外部給水管52は、
図7に示すように、上述した接合部42bを備えておらず、外部給水管52の流入端部52aaを冷却水路3a内に嵌入または螺合する等して、シリンダカバー3の上部に接合されている。これにより、外部給水管52の管本体22aは、シリンダカバー3内の冷却水路3aに通じるように配管される。外部給水管52の構成は、上述のようにシリンダカバー3の上部に流入端部52aaが接合されること以外、実施形態2における外部給水管42と同様である。
【0085】
外部給水管53は、
図7に示すように、上述した接合部43bを備えておらず、外部給水管53の流入端部53aaを冷却水路3b内に嵌入または螺合する等して、シリンダカバー3の上部に接合されている。これにより、外部給水管53の管本体23aは、シリンダカバー3内の冷却水路3bに通じるように配管される。外部給水管53の構成は、上述のようにシリンダカバー3の上部に流入端部53aaが接合されること以外、実施形態2における外部給水管43と同様である。
【0086】
本実施形態3に係る冷却構造において、冷却水は、例えば、シリンダカバー3内の下側の流路(図示せず)から排気弁座7内の冷却水路7bに流入する。冷却水路7b内の冷却水は、周溝7cを経由してシリンダカバー3内の冷却水路3aに流入し、この冷却水路3aを通じて外部給水管52の管本体22aに流入する。その後、この冷却水の流通は、上述した実施形態2と同様である。これに並行して、冷却水路7b内の冷却水は、周溝7cを経由してシリンダカバー3内の冷却水路3bに流入し、この冷却水路3bを通じて外部給水管53の管本体23aに流入する。その後、この冷却水の流通は、上述した実施形態2と同様である。
【0087】
また、本実施形態3において、外部給水管52、53は、排気弁箱10Bの熱伸びに伴って外部給水管52、53に生じる応力を吸収する応力吸収構造を各々備えている。特に図示しないが、外部給水管52、53の各応力吸収構造は、各流入端部52aa、53aaが冷却水路3a、3bに対する嵌入または螺合等によってシリンダカバー3の上部に接合されていること以外、上述した実施形態2と同様である。例えば、外部給水管52の応力吸収構造において、冷却水路3aと流入端部52aaとの間には、冷却水路3aに対する流入端部52aaの熱伸び方向F1(
図4参照)の摺動を可能とするOリング(図示せず)が設けられている。外部給水管53の応力吸収構造において、冷却水路3bと流入端部53aaとの間には、冷却水路3bに対する流入端部53aaの熱伸び方向F1の摺動を可能とするOリング(図示せず)が設けられている。或いは、上述した変形例に係る応力吸収構造(
図5参照)と同様に、外部給水管52の応力吸収構造は、外部給水管52の熱伸び方向F1の伸縮を可能とする可変構造をもつ管本体22aによって構成されてもよい。これと同様に、外部給水管53の応力吸収構造は、外部給水管53の熱伸び方向F1の伸縮を可能とする可変構造をもつ管本体23aによって構成されてもよい。
【0088】
以上、説明したように、本発明の実施形態3に係る冷却構造では、シリンダカバー3内の冷却水路3aと管本体22aとが連通するように外部給水管52の流入端部52aaを嵌入または螺合等によって冷却水路3a内に接合し、シリンダカバー3内の冷却水路3bと管本体23aとが連通するように外部給水管53の流入端部53aaを嵌入または螺合等によって冷却水路3b内に接合し、その他の構成を上述した実施形態2と同様にしている。このため、外部給水管52、53の各流入端部52aa、53aaをシリンダカバー3の上部に直接接合した態様でありながら、上述した実施形態2と同様の作用効果を享受する冷却構造を実現することができる。
【0089】
(実施形態4)
つぎに、本発明の実施形態4に係る冷却構造について説明する。
図8は、本発明の実施形態4に係る冷却構造の一構成例を示す断面模式図である。本実施形態4における舶用ディーゼルエンジンは、上述した実施形態2における排気弁箱10Aに代えて
図8に示す排気弁箱10Cを備える。
図8に示すように、排気弁箱10Cは、その外壁部の下端に周溝7cを備える。シリンダカバー3の冷却水路3a、3bおよび排気弁座7の冷却水路7bは、この排気弁箱10Cの周溝7cを介して互いに連通するように形成されている。本実施形態4に係る冷却構造は、このような排気弁箱10Cのための冷却構造である。その他の構成は実施形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0090】
本実施形態4において、排気弁箱10Cの冷却構造は、例えば
図8に示すように、周溝7cと、上述したシリンダカバー3内の冷却水路3a、3b、外部給水管42、43、冷却室21および内部流路25a、25b、25cとを備える。
【0091】
本実施形態4における周溝7cは、
図8に示すように、排気弁箱10Cの外壁部の下端角に形成されている。詳細には、周溝7cは、排気ポート7aを囲むように、シリンダカバー3および排気弁座7と排気弁箱10Cとの各境界部分に沿って矩形の環状に形成されている。周溝7cは、シリンダカバー3における一方の冷却水路3aと排気弁座7の冷却水路7bとを連通させるとともに、シリンダカバー3における他方の冷却水路3bと排気弁座7の冷却水路7bとを連通させる。
【0092】
本実施形態4に係る冷却構造において、冷却水は、例えば、シリンダカバー3内の下側の流路(図示せず)から排気弁座7内の冷却水路7bに流入する。冷却水路7b内の冷却水は、排気弁箱10Cの周溝7cを経由してシリンダカバー3内の冷却水路3aに流入し、この冷却水路3aから外部給水管42の接合部42b内の流通路42baを通じて、管本体22aに流入する。その後、この冷却水の流通は、上述した実施形態2と同様である。これに並行して、冷却水路7b内の冷却水は、排気弁箱10Cの周溝7cを経由してシリンダカバー3内の冷却水路3bに流入し、この冷却水路3bから外部給水管43の接合部43b内の流通路43baを通じて、管本体23aに流入する。その後、この冷却水の流通は、上述した実施形態2と同様である。
【0093】
以上、説明したように、本発明の実施形態4に係る冷却構造では、排気弁箱10Cの外壁部の下端角に周溝7cを形成し、この周溝7cを介してシリンダカバー3内の冷却水路3a、3bと排気弁座7内の冷却水路7bとが各々連通するようにし、その他の構成を上述した実施形態2と同様にしている。このため、シリンダカバー3内の冷却水路3a、3bと排気弁座7内の冷却水路7bとを各々連通させる周溝7cを排気弁箱10Cの外壁部の下端角に形成した態様でありながら、上述した実施形態2と同様の作用効果を享受する冷却構造を実現することができる。
【0094】
なお、上述した実施形態1~4では、排気弁箱10、10A、10B、10C内の排気ポート10aよりも上側で冷却室21と外部給水管とを連通させる内部流路を、冷却室21の周方向に沿って冷却室21と合流する内部流路、または、冷却室21を挟んで冷却水出口26とは反対側で冷却室21と合流する内部流路としていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、排気弁箱10、10A、10B、10C内の排気ポート10aよりも上側で冷却室21と外部給水管とを連通させる内部流路を、冷却室21を挟んで冷却水出口26とは反対側で冷却室21の周方向に沿って冷却室21と合流する内部流路としてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態1~4では、外部給水管23、43、53の管本体23aの流入端部および流出端部を接合部23b、23c、43bまたはシリンダカバー3内の冷却水路3bに対して各々自由端とする応力吸収構造を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、外部給水管23の応力吸収構造は、管本体23aの流入端部23aaを接合部23bに対して自由端とし且つ管本体23aの流出端部23abを接合部23cに対して固定端としたものであってもよいし、管本体23aの流入端部23aaを接合部23bに対して固定端とし且つ管本体23aの流出端部23abを接合部23cに対して自由端としたものであってもよい。このことは、外部給水管43、53についても同様である。また、外部給水管22の応力吸収構造は、管本体22aの流入端部を接合部22bに対して固定端とし且つ管本体22aの流出端部を接合部22cに対して自由端としたものであってもよいし、管本体22aの流入端部および流出端部を接合部23b、23cに対して各々自由端としたものであってもよい。このことは、外部給水管42、52についても同様である。
【0096】
また、上述した実施形態1~4では、冷却室21内の冷却水の出口として、内部流路25bの開口端(冷却水出口26)を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、冷却室21内の冷却水の出口は、上述した冷却水出口26以外の場所に形成されてもよい。
【0097】
また、上述した実施形態1~4では、排気弁箱の外壁部等に2つの外部給水管が接合された場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。排気弁箱の外壁部等に接合する外部給水管の配管数は、1つであってもよいし、複数(2つ以上)であってもよい。
【0098】
また、上述した変形例では、外部給水管の熱伸び方向の伸縮を可能にする可変構造の管本体として、湾曲形状の管本体を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、当該可変構造の管本体は、外部給水管の熱伸び方向に伸縮自在な蛇腹構造の管本体であってもよいし、複数の円筒体を摺動自在に嵌め合わせた構造の管本体であってもよい。
【0099】
また、上述した実施形態1~4および変形例により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1~4に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1 舶用ディーゼルエンジン
2 シリンダライナ
3 シリンダカバー
3a、3b 冷却水路
4 ピストン
5 ピストン棒
6 排気弁
6a 弁体
6b 弁棒
7 排気弁座
7a 排気ポート
7b 冷却水路
7c 周溝
8 燃焼室
9 燃料噴射弁
10、10A、10B、10C 排気弁箱
10a 排気ポート
11 弁棒案内部
12 カバー
13 排気弁作動装置
14 接続配管
15 排気マニホールド
21 冷却室
22、23、33、42、43、52、53 外部給水管
22a、23a、33a 管本体
22b、22c、23b、23c、42b、43b 接合部
22ba、23ba、23ca、42ba、43ba 流通路
23aa、33aa、52aa、53aa 流入端部
23ab、33ab 流出端部
23bb、23cb 係合部
24a、24b 下部流路
25a、25b、25c 内部流路
26 冷却水出口
27a、27b Oリング
F1 熱伸び方向