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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】衣料用液体洗浄剤製品
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/72 20060101AFI20230310BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20230310BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20230310BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C11D1/72
C11D1/29
C11D1/22
C11D3/37
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018246612
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020105424
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】多勢 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】花田 弘彦
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534554(JP,A)
【文献】特開2018-203931(JP,A)
【文献】特表2011-526319(JP,A)
【文献】特開2014-136701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00- 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、(c)成分の含有量が5質量%以上30質量%以下であり、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比である、(a)/(c)が0.0025以上0.035以下である衣料用液体洗浄剤組成物を、水溶性フィルムで包装してなる、衣料用液体洗浄剤製品。
(a)成分:ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であり、且つ炭素数1以上18以下の炭化水素基及びカチオン基から選ばれる1種以上の基を有する多糖ポリマーであって、少なくともカチオン基を有し、カチオン基の置換度が0.01以上0.75以下である多糖ポリマーの1種又は2種以上
(b)成分:アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤
(c)成分:水
【請求項2】
水溶性フィルムが、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールコポリマー及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれるポリマーを含む、請求項1に記載の衣料用液体洗浄剤製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用液体洗浄剤製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の簡便嗜好の高まりから、より使いやすい洗浄剤製品が求められている。洗浄剤の使用性を高める観点から、洗浄剤の容器の技術が開示されており、例えば、液体洗浄剤を水溶性フィルムを用いたパウチに封入した技術(例えば、特許文献1参照)、ジアミドゲル化剤を含有する液体洗浄剤を水溶性フィルムを用いたパウチに封入した技術(例えば、特許文献2参照)等が開示されている。これら技術を用いた洗浄剤製品は、計量が必要ない等の簡便な使用感には優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-522279号公報
【文献】特表2014-529675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている技術のように、水溶性フィルムを用いた製品の安定性を高めるため、封入される液体洗浄剤の含水率は非常に低くする必要があり、組成の自由度の低下は免れず、含水率を非常に低くしたとしても未だ製品の安定性は十分ではない。また、特許文献2では、水溶性フィルムを用いた製品の安定性を高める技術としてジアミドゲル化剤が開示されているが、製品の安定化効果は未だ十分ではない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、衣料用液体洗浄剤組成物が水溶性フィルムで内包され、安定性が高い衣料用液体洗浄剤製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、(c)成分の含有量が5質量%以上35質量%以下であり、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比である、(a)/(c)が0.0025以上0.050以下である衣料用液体洗浄剤組成物〔以下、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物という場合もある〕を、水溶性フィルムで包装してなる、衣料用液体洗浄剤製品に関する。
(a)成分:ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であるポリマー、
(b)成分:アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤
(c)成分:水
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衣料用液体洗浄剤組成物が水溶性フィルムで内包され、安定性が高い衣料用液体洗浄剤製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、水和水量が多い特定のポリマーと界面活性剤と特定量の水を特定比率で配合し、水溶性フィルムに充填してなる液体洗浄剤製品とすることで本発明をなすに至ったものである。本発明で用いる特定のポリマーは、水和水量が非常に多く、洗浄剤製品中の自由水の量を低下させる事が出来るため、製品中の見かけの水量が低下する事で水溶性フィルムを用いた本発明の衣料用液体洗浄剤製品の安定性(以下、製品安定性という場合もある)が向上する。また、特定のポリマーが界面活性剤と相互作用する事で界面活性剤の構造体中に水を取り込む事によっても、同様の効果を発現している。本発明では、特定のポリマーのこれら効果と水溶性フィルムとを組み合わせる事で、安定性が高い衣料用液体洗浄剤製品が得られる。
【0009】
[衣料用液体洗浄剤組成物]
<(a)ポリマー>
本発明の(a)成分は、ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であるポリマーである。(a)成分は、下記成分のポリマーの中で、ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であるポリマーである。
【0010】
製品安定性を高める観点で、ポリマー1g当たりの水和水量は、6g以上、好ましくは6.5g以上、より好ましくは7.0g以上、更に好ましくは8.0g以上、そして、好ましくは50g以下、好ましくは40g以下、より好ましくは30g以下、更に好ましくは20g以下である。(a)成分のポリマーの水和水量は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0011】
本発明の(a)成分としては、ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であり、且つ炭素数1以上18以下の炭化水素基及びカチオン基から選ばれる1種以上の基を有する多糖ポリマーの1種又は2種以上(以下、(a1)成分という。)、及びポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であるアニオン性多糖ポリマーから選ばれる1種以上のポリマー(以下、(a2)成分という。)が挙げられる。
製品安定性をより高める観点から、(a)成分は、(a1)成分である、ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であり、且つ炭素数1以上18以下の炭化水素基及びカチオン基から選ばれる1種以上の基を有する多糖ポリマーの1種又は2種以上が好ましい。
【0012】
〔(a1)成分:ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であり、且つ炭素数1以上18以下の炭化水素基及びカチオン基から選ばれる1種以上の基を有する多糖ポリマーの1種又は2種以上〕
(a1)成分は、ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であり、且つ炭素数1以上18以下の炭化水素基及びカチオン基から選ばれる1種以上の基を有する多糖ポリマーの1種又は2種以上である。
【0013】
本発明の(a1)成分は、(a)成分の前駆化合物である多糖又はその誘導体の水酸基から水素原子を除いた基に、直接又は連結基を介してカチオン基及び炭素数1以上18以下の炭化水素基から選ばれる1種以上の基が結合した多糖ポリマーであることを特徴とする。尚、前記の「多糖又はその誘導体の水酸基から水素原子を除いた基に、直接又は連結基を介してカチオン基及び炭素数1以上18以下の炭化水素基から選ばれる1種以上の基が結合している」には、多糖又はその誘導体の水酸基から水素原子を除いた基、即ち酸素原子に、カチオン基のカチオン原子、例えば窒素カチオンが直接共有結合する結合様式は含まない。
【0014】
多糖としては、例えばセルロース、グアーガム又はスターチから選ばれる1種以上の多糖が挙げられる。(a1)成分は多糖ポリマーであるが、これを得るための前駆化合物として多糖ポリマーを用いることができる。すなわち、(a1)成分は、多糖ポリマーの誘導体であってよい。(a1)成分の前駆化合物である多糖ポリマーとしては、前記多糖の水酸基の水素原子の一部又は全部が炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基で置換された多糖ポリマー(以下、ヒドロキシアルキル置換体ともいう)が挙げられる。炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基は、好ましくは炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基が好ましい。炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基としては、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基及びヒドロキシブチル基から選ばれる1種以上の基が挙げられ、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基から選ばれる1種以上の基が好ましい。(a1)成分は、セルロース、グアーガム又はスターチから選ばれる1種以上の多糖又はそれらのヒドロキシアルキル置換体から選ばれる多糖又は多糖ポリマーに、炭素数1以上18以下の炭化水素基及びカチオン基から選ばれる1種以上の基が導入された化合物であってよい。(a1)成分は、ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であり、且つ炭素数1以上18以下の炭化水素基及びカチオン基から選ばれる1種以上の基を有する多糖ポリマーであって、少なくともカチオン基を有する多糖ポリマーの1種又は2種以上が好ましい。
【0015】
(a1)成分の中で、カチオン基から選ばれる1種以上の基を有する多糖ポリマーは、(a1)成分の前駆化合物である多糖又はその誘導体、好ましくは前記ヒドロキシアルキル置換体が有する水酸基から水素原子を除いた基に、連結基である、水酸基を含んでいてもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基〔以下、連結基(1)という〕を介して、カチオン基が結合している多糖ポリマーが挙げられる。
カチオン基は、窒素カチオンを含む基が好ましく、ポリマー1g当たりの水和水量を6g以上の範囲に制御することで、製品安定性を高める観点で、第4級アンモニウム基であることがより好ましい。
【0016】
連結基(1)は、水酸基を含んでいてもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基である。炭素数1以上4以下のアルキレン基としては、水酸基を含んでいても良い直鎖の炭素数1以上4以下のアルキレン基及び水酸基を含んでいても良い分岐鎖の炭素数3以上4以下のアルキレン基から選ばれる1種以上のアルキレン基が挙げられる。
【0017】
カチオン基が第4級アンモニウム基である場合、該第4級アンモニウム基に結合した連結基(1)以外の3つの炭化水素基は、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基が挙げられる。炭素数1以上4以下の直鎖の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基及びn-ブチル基が挙げられる。炭素数3以上4以下の分岐鎖の炭化水素基としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基が挙げられる。炭素数1以上4以下の直鎖の炭化水素基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
第4級アンモニウム基の対イオンは、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下の脂肪酸イオン、及びハロゲン化物イオンから選ばれる1種以上の対イオンが挙げられる。これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、及びハロゲン化物イオンから選択される1種以上、より好ましくはハロゲン化物イオンである。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンが挙げられる。(b1)成分の多糖ポリマーの水溶性及び化学的安定性の観点から、好ましくは塩化物イオン及び臭化物イオンから選択される1種以上、より好ましくは塩化物イオンである。なお、対イオンは1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0018】
(a1)成分の、カチオン基を有する多糖ポリマーのカチオン基の置換度が高いと、ポリマー1gあたりの水和水量を高くすることができる。製品安定性を高める観点から、カチオン基を含む(a1)成分のカチオン基の置換度の値は高い方が好ましい。ポリマー1gあたりの水和水量を制御することで、製品安定性を高める観点を考慮して、本発明では、カチオン基の置換度の値を選定することが好ましい。(a1)成分である、カチオン基を有する多糖ポリマーのカチオン基の置換度は、前記の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.75以下、より更に好ましくは0.7以下、より更に好ましくは0.65以下である。
【0019】
(a1)成分の中で、炭素数1以上18以下の炭化水素基を有する多糖ポリマーは、(a1)成分の前駆化合物である多糖又はその誘導体に、直接又は連結基〔以下、連結基(2)成分という〕を介して、炭素数1以上18以下の炭化水素基が結合した多糖ポリマーが挙げられる。
【0020】
前記の連結基(2)は、ヒドロキシ基を有していても良い炭素数1以上3以下のアルキレンオキシ基、アルキレン基が炭素数1以上3以下のアルキレン基であるポリオキシアルキレン基、カルボニル基、カルボニルオキシ基及びオキシカルボニル基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。一つの連結基(2)は、前記の連結基の1種類であっても良く、複数種類組み合わされていても良い。また、多糖ポリマー中に含まれる連結基は1種類でも良く、複数種類でも良い。
本発明において、連結基(2)が有する酸素原子に前記炭化水素基が連結されている場合は、(a1)成分が有する炭化水素基の炭素数は、酸素原子に結合した前記炭化水素基の炭素数を表す。前記炭化水素基がカルボニル基を介して連結している場合には、アシル基が結合した構造となり、この場合は、(a1)成分が有する炭化水素基の炭素数は、アシル基の炭素数を表す。カルボニルオキシ基及びオキシカルボニル基を介して連結している場合も、同様に、それらの炭素数を含む。多糖又は多糖ポリマーに炭化水素基を導入する場合に、1,2-エポキシアルカンを使用した場合には、エポキシ基から生じたエーテル基に結合する脂肪族炭化水素基の炭素数を表す。エポキシ基部分は連結基(2)となる。例えば1,2-エポキシテトラデカンを用いて、多糖又は多糖ポリマーに炭化水素基を導入した場合の炭化水素基の炭素数は12とする。すなわち、多糖又は多糖ポリマーの水酸基に連結基(2)であるオキシエチレン基が結合し、該連結基を介して炭素数12のアルキル基(ドデシル基)が結合する。アルキルグリシジルエーテルを用いる場合も同様である。
【0021】
(a1)成分の中で、炭素数1以上18以下の炭化水素基を有する多糖ポリマーは、更に前記ヒドロキシアルキル置換体の一部又は全ての水酸基から水素原子を除いた酸素原子に、直接又は連結基(2)を介して、好ましくは連結基(2)を介して、炭素数1以上18以下の炭化水素基が結合した多糖ポリマーが挙げられる。
【0022】
炭素数1以上18以下の炭化水素基は、製品安定性を高める観点で、炭素数1以上18以下の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上であり、更に好ましくは4以上であり、更に好ましくは6以上であり、より更に好ましくは8以上であり、より更に好ましくは10以上であり、より更に好ましくは12以上であり、そして、好ましくは16以下であり、より好ましくは14以下である。炭化水素基は、製品安定性を高める観点で、脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0023】
(a1)成分である、炭素数1以上18以下の炭化水素基を有する多糖ポリマーは、炭素数1以上18以下の炭化水素基の置換度は、製品安定性を高める観点から、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.005以上であり、そして、同じ観点から、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.08以下、より更に好ましくは0.06以下である。
【0024】
本発明において、(a1)成分の、炭素数1以上18以下の炭化水素基及びカチオン基から選ばれる1種以上の基の置換度は、それぞれ、構成単糖単位あたりの当該基の置換数、すなわち、モル平均の置換度(MS)を意味する。例えば、多糖がセルロースの場合には、「基の置換度」は、アンヒドログルコース単位1モルに対して導入された当該基の平均モル数を意味する。多糖ポリマーのカチオン基の置換度、及び炭素数1以上18以下の炭化水素基の置換度は、それぞれ、実施例に記載の方法で求められる。
【0025】
(a1)成分は、炭素数1以上18以下の炭化水素基及びカチオン基の両方を有する多糖ポリマーであってもよい。この場合のそれぞれの基の置換度は、前記の通りである。
【0026】
(a1)成分は、アニオン基を有することもできるが、(a1)成分におけるアニオン基の置換度と、カチオン基の置換度及び炭素数1以上18以下の炭化水素基の置換度の合計との比は、アニオン基の置換度/(カチオン基の置換度+炭素数1以上18以下の炭化水素基の置換度)で、製品安定性を高める観点から、好ましくは3以下であり、より好ましくは1.7以下、更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.1以下であり、0以上であってもよく、0であることが好ましい。
【0027】
本発明の(a1)成分の前駆化合物である多糖又はその誘導体の重量平均分子量は、製品安定性を高める観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、より更に好ましくは5万以上、より更に好ましくは7万以上、より更に好ましくは10万以上、より更に好ましくは30万以上、より更に好ましくは50万以上であり、そして、同じ観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは250万以下である。この前駆化合物の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出することができる
【0028】
<(a2)成分:ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であるアニオン性多糖ポリマーから選ばれる1種以上のポリマー>
(a2)成分は、ポリマー1g当たりの水和水量が6g以上であるアニオン性多糖ポリマーから選ばれる1種以上のポリマーである。アニオン性多糖ポリマーとしては、カルボキシル基又はその塩を置換基として有するアニオン性多糖ポリマー、スルホン酸基又はその塩を置換基として有するアニオン性多糖ポリマーが挙げられる。
カルボキシル基又はその塩を置換基として有するアニオン性多糖ポリマーとしては、下記一般式(I)で表される構成単位を有する多糖化合物の水酸基の水素原子の一部が、基-(CHCOO-(mは1~5の整数)で置換されており、該基による構成単位当たりの平均置換度が0.5以上2.0以下であり、残りの水酸基の水素原子の一部が炭素数1~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基及び/又はアルキレン基で置換されていてもよく、2質量%水溶液の25℃における粘度が0.5mPa・s以上800mPa・s以下であるアニオン性多糖ポリマー〔以下、アニオン性多糖ポリマー(I)という〕が挙げられる。
【0029】
【化1】
【0030】
〔式中、R’は、同じであっても異なっていてもよく、水酸基で置換されていてもよい炭素数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、nは構成単位当たりのR’Oの平均付加モル数が0~10となる数を示す。〕
【0031】
前記一般式(I)で表される構成単位を有する多糖化合物としては、セルロース、グアーガム、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム及びヒドロキシプロピルメチルスターチからなる群より選択される少なくとも1種を好適に用いることができる。これらの中でも、セルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種をより好適に用いることができる。
【0032】
〔平均置換度〕
アニオン性多糖ポリマー(I)において、アニオン基、好ましくはカルボキシル基又はスルホン酸基の構成単位当たりの平均置換度は、ポリマー1gあたりの水和水量を6g以上に制御することで、製品安定性を高める観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.65以上、そして、同じ観点から、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは0.9以下である。
【0033】
・平均置換度の測定方法
導入された置換基が-(CHCOONaである場合を例として説明する。
絶乾したアニオン性多糖ポリマー(I)を、マイクロウェーブ湿式灰化装置(PROLABO社製、商品名:「A-300」)を用いて硫酸-過酸化水素で湿式分解した後、原子吸光装置(株式会社日立製作所製、商品名:「Z-6100型」)を用いて原子吸光法によりNa含量(%)を測定し、下記計算式により置換度を算出する。
平均置換度(DS)=(x×Na含量(%))/(2300-y×Na含量(%))
x:アニオン性置換基導入前の多糖ポリマーを構成する糖モノマー1unit当たりの平均分子量
y:置換基1個の導入による分子量の増分
【0034】
スルホン酸基又はその塩を置換基として有するアニオン性多糖ポリマーとしては、多糖におけるヒドロキシ基の水素原子の一部又は全部が、次の置換基(X1)で置換されてなる水溶性アルキル置換多糖〔以下、アニオン性多糖ポリマー(II)という〕が好ましいものとして挙げられる。なお、ここでいう水溶性とは、25℃で水に0.001質量%以上溶解することをいう。
置換基(X1):ヒドロキシ基が置換してもよい炭素数1~5のスルホアルキル基又はその塩
【0035】
置換基(X1)の具体例としては、2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、3-スルホ-2-ヒドロキシプロピル基、2-スルホ-1-(ヒドロキシメチル)エチル基等が挙げられ、その一部又は全部が、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アミン類等の有機カチオン基、アンモニウムイオンなどとの塩となっていてもよい。これらの中でも、3-スルホ-2-ヒドロキシプロピル基のナトリウム塩が好ましい。
【0036】
アニオン性多糖ポリマー(II)は、多糖におけるヒドロキシ基の水素原子の一部又は全部が、前記置換基(X1)に加え、更に次の置換基(X2)で置換されていることが好ましい。
置換基(X2):炭素数10以上40以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテル基及び/又は炭素数10以上40以下の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基を有するアルケニルグリセリルエーテル基
【0037】
置換基(X2)の具体例としては、2-ヒドロキシ-3-アルコキシプロピル基、2-アルコキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル基、2-ヒドロキシ-3-アルケニルオキシプロピル基、2-アルケニルオキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル基が挙げられ、これらの基は多糖分子に結合しているヒドロキシエチル基やヒドロキシプロピル基のヒドロキシ基の水素原子と置換していてもよい。これらのグリセリルエーテル基に置換している炭素数10以上40以下のアルキル基又はアルケニル基としては、炭素数12以上、更には16以上、そして、36以下、更には24以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基及びアルケニル基が好ましく、製品安定性を高める観点から、アルキル基、更には直鎖アルキル基が好ましく、中でも炭素数18の直鎖アルキル基が好ましい。
【0038】
なお、置換基(X1)又は(X2)がヒドロキシ基を有する場合には、当該ヒドロキシ基の水素原子は、更に他の置換基(X1)又は(X2)で置換されていてもよい。
【0039】
構成単糖残基当たりの置換基(X1)による置換度は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。また、構成単糖残基当たりの置換基(X2)による置換度は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.002以上、更に好ましくは0.003以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。更に、置換基(X1)と置換基(X2)の数の比率(X1)/(X2)は、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは300以下、そして、好ましくは1/100以上、より好ましくは1/10以上である。なお、(a)成分は、多糖の各繰り返し単位中に必ず置換基(X1)が存在している必要はなく、一分子全体として見たときに、置換基(X1)が導入されていればよく、置換基(X1)及び(X2)による置換度が平均して前記範囲内にあることが好ましい。
【0040】
また、アニオン性多糖ポリマー(II)の基本骨格となる多糖としては、セルロース、グアーガム、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルグアーガム、メチルスターチ、エチルセルロース、エチルグアーガム、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられ、なかでもセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれるものが好ましい。これら多糖の誘導体におけるメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等による置換は、単一の置換基による置換でも複数の置換基による置換でもよく、その構成単糖残基当たりの置換度は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。また、これら多糖の重量平均分子量は、好ましくは1万以上、より好ましくは10万以上、更に好ましくは30万以上、そして、好ましくは1000万以下、より好ましくは500万以下、更に好ましくは200万以下である。
【0041】
アニオン性多糖ポリマー(II)は、多糖の水酸基の水素原子の一部若しくは全部をスルホン化(スルホン酸基を有する置換基(X1)の導入)することにより、又は多糖の水酸基の水素原子の一部をスルホン化した後、残りの水酸基の水素原子の一部若しくは全部を疎水化(置換基(X2)の導入)することにより、又は多糖の水酸基の水素原子の一部を疎水化した後、残りの水酸基の水素原子の一部若しくは全部をスルホン化することにより、又は同時に疎水化及びスルホン化を行うことにより、製造することができる。
【0042】
アニオン性多糖ポリマー(II)における置換基(X1)及び(X2)は、原料として用いた多糖のヒドロキシ基のみならず、他の置換基(X1)や置換基(X2)が有するヒドロキシ基に置換する場合もあり、更に、かかる置換は重畳的に起こる場合もある。すなわち、多糖のヒドロキシ基の水素原子のみが置換基(X1)及び(X2)で置換された化合物のほか、疎水化(X2)後にスルホン化(X1)した場合には、置換基(X2)に更に置換基(X2)又は(X1)が置換し、また置換基(X1)に更に置換基(X1)が置換したものが含まれることがある。また、スルホン化(X1)後に疎水化(X2)した場合には、置換基(X2)に更に置換基(X2)が置換し、また置換基(X1)に更に置換基(X1)又は(X2)が置換したものが含まれることがある。さらに、疎水化とスルホン化を同時に行った場合には、置換基(X2)に更に置換基(X2)又は(X1)が置換し、置換基(X1)に更に置換基(X2)又は(X1)が置換したものが含まれることがあり、更に、かかる他の置換基への置換が重畳的に起こったものが含まれることもある。本発明においては、このような多糖のいずれをも使用することができる。
【0043】
アニオン性多糖ポリマー(II)の具体例としては、ステアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸Na、ヒドロキシエチルセルローススルホン酸又はその塩が挙げられる。
【0044】
<(b)成分>
(b)成分は、アニオン界面活性剤〔(以下(b1)成分ともいう。〕及びノニオン界面活性剤〔(以下(b2)成分ともいう。〕から選ばれる1種以上の界面活性剤である。(b)成分は、衣料に付着した汚れを洗浄する作用を有する。
【0045】
(b1)成分は、アニオン界面活性剤である。(b1)成分のアニオン界面活性剤として、下記(b1-1)成分、(b1-2)成分、(b1-3)成分及び(b1-4)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が挙げられる。
(b1-1)成分:アルキル又はアルケニル硫酸エステル塩
(b1-2)成分:アルキレンオキシ基を有するポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩
(b1-3)成分:スルホン酸塩基を有するアニオン界面活性剤
(b1-4)成分:脂肪酸又はその塩
【0046】
(b1-1)成分として、より具体的には、アルキル基の炭素数が10以上18以下のアルキル硫酸エステル塩、及びアルケニル基の炭素数が10以上18以下のアルケニル硫酸エステル塩から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が挙げられる。(b1-1)成分は、アルキル基の炭素数が12以上18以下のアルキル硫酸塩から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が好ましく、アルキル基の炭素数が12以上18以下のアルキル硫酸ナトリウムから選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤がより好ましい。
【0047】
(b1-2)成分として、より具体的には、アルキル基の炭素数が10以上18以下、アルキレンオキシド平均付加モル数が1以上3以下のポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、及びアルケニル基の炭素数が10以上18以下、アルキレンオキシド平均付加モル数が1以上3以下のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が挙げられる。(b1-2)成分は、平均エチレンオキシド付加モル数が1以上2.2以下であるポリオキシエチレンアルキル硫酸塩が好ましく、アルキル基の炭素数が12以上14以下でかつ、平均エチレンオキシド付加モル数が1以上2.2以下であるポリオキシエチレンアルキル硫酸塩がより好ましく、これらのナトリウム塩が更に好ましい。
【0048】
(b1-3)成分であるスルホン酸塩基を有するアニオン界面活性剤とは、親水基としてスルホン酸塩を有するアニオン界面活性剤を表す。
(b1-3)成分として、より具体的には、アルキル基の炭素数が10以上18以下のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルケニル基の炭素数が10以上18以下のアルケニルベンゼンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数が10以上18以下のアルカンスルホン酸塩、α-オレフィン部分の炭素数が10以上18以下のα-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下のα-スルホ脂肪酸塩、及び脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下であり、エステル部分の炭素数が1以上5以下であるα-スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩、及び炭素数が16以上18以下の内部オレフィンスルホン酸塩から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が挙げられる。(b1-3)成分は、アルキル基の炭素数が11以上16以下のアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、アルキル基の炭素数が11以上16以下のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
【0049】
(b1-4)成分である脂肪酸又はその塩としては、炭素数10以上20以下の脂肪酸又はその塩が挙げられる。(b1-4)成分の炭素数は、10以上であり、12以上が好ましく、14以上がより好ましく、そして20以下であり、18以下が好ましい。
【0050】
(b1-1)成分~(b1-4)成分であるアニオン界面活性剤の塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましい。
【0051】
〔(b2)成分〕
(b2)成分は、ノニオン界面活性剤である。(b2)成分は、衣料に付着した汚れを洗浄する作用を有する。
【0052】
(b2)成分としては、平均付加モル数が3モル以上50モルのポリオキシアルキレン基を有するノニオン界面活性剤が好ましい。
(b2)成分としては、下記一般式(b2)で表されるノニオン界面活性剤がより好ましい。
1b-(CO)O-(AO)-R2b (b2)
〔式中、R1bは炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、AOは、炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基であり、xは0又は1の数であり、mはAOの平均付加モル数であり、3以上50以下の数であり、R2bは、水素原子又はメチル基である。〕
【0053】
一般式(b2)中のR1bの炭素数は、洗浄性をより向上出来る点で、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、そして、16以下が好ましい。
また、一般式(c2)中のR1bの炭素数は、衣料に付着した汚れの洗浄性を高める観点で、10以上が好ましく、そして、16以下が好ましく、14以下がより好ましい。
また、一般式(b2)中のR1bの脂肪族炭化水素基としては、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる脂肪族炭化水素基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
一般式(b2)中のxは、0又は1の数であり、衣料に付着した汚れの洗浄性を高める観点で、0の数が好ましい。
一般式(b2)中のmは、AOの平均付加モル数であり、衣料に付着した汚れの洗浄性を高める観点で、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上が更に好ましく、7以上が更に好ましく、そして、45以下が好ましく、40以下がより好ましく、35以下が更に好ましく、30以下が更に好ましく、25以下が更に好ましく、20以下が更に好ましく、18以下が更に好ましく、16以下が更に好ましく、14以下が更に好ましく、12以下が更に好ましい。
AOは、炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基である。AOは、例えば、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。衣料に付着した汚れの洗浄性を高める観点で、AOが、エチレンオキシ基を含むアルキレンオキシ基であることが好ましい。AOはエチレンオキシ基が好ましい。
【0054】
<(c)成分>
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(c)成分の水を含有する。例えば、本発明の組成物の4℃以上40℃以下における性状を液体状態とする為に、水を含有することが出来る。水は脱イオン水(イオン交換水とも言う場合もある)や、次亜塩素酸ソーダをイオン交換水に対して1mg/kg以上5mg/kg以下添加した水を使用することが出来る。また、水道水も使用できる。
【0055】
<衣料用液体洗浄剤組成物の組成等>
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物中の(a)成分の含有量は、製品安定性をより高める観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上であり、更に好ましくは0.2質量%以上であり、そして、同じ観点から、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、より更に好ましくは2質量%以下であり、より更に好ましくは1質量%以下である。
【0056】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物中の(b)成分の含有量は、洗浄性と製品の安定性を高める観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、水和ポリマーの溶解性を高める観点から、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、更に好ましくは45質量%以下である。
【0057】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物中の(c)成分の含有量は、5質量%以上35質量%以下である。(a)成分の溶解性の観点から、(c)成分の含有量は、好ましくは6質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、更に好ましくは7.5質量%以上であり、より更に好ましくは8質量%以上であり、そして、製品安定性を高める観点から、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
【0058】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量の質量比である(a)/(c)が0.0025以上0.050以下である。製品安定性をより高める観点から、質量比(a)/(c)は、好ましくは0.0028以上であり、より好ましくは0.0030以上であり、更に好ましくは0.0032以上であり、より更に好ましくは0.0035以上であり、そして、(a)成分の溶解性を高める観点から、好ましくは0.045以下であり、より好ましくは0.040以下であり、更に好ましくは0.035以下である。
【0059】
<任意成分>
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(d)成分として、多価アルコールを含有することができる。一般的には(d)成分は溶解剤として用いられている。本発明においては製品安定性をより高める作用を有する。
【0060】
(d)成分としてより具体的には、炭素数2以上12以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、且つ2価以上12価以下、好ましくは10価以下、より好ましくは8価以下の多価アルコールが挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリンが挙げられる。
【0061】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物が(d)成分を含有する場合、(d)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比である、(d)/(a)は、製品安定性の観点から、好ましくは30以上であり、より好ましくは50以上であり、更に好ましくは100以上であり、そして、(a)成分の溶解性の観点から、好ましくは800以下であり、より好ましくは500以下であり、更に好ましくは300以下である。(d)成分の含有量は、組成物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0062】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物には、下記(e1)~(e7)成分を配合しても良い。
(e1)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロースなどの再汚染防止剤及び分散剤を組成物中0.01質量%以上10質量%以下
(e2)過酸化水素、過炭酸ナトリウム又は過硼酸ナトリウム等の漂白剤を組成物中0.01質量%以上10質量%以下
(e3)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6-316700号の一般式(I-2)~(I-7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤を組成物中0.01質量%以上10質量%以下、
(e4)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼから選ばれる1種以上の酵素、好ましくはアミラーゼ及びプロテアーゼから選ばれる1種以上の酵素を組成物中0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、そして、2質量%以下、好ましくは1質量%以下
(e5)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料を組成物中0.001質量%以上1質量%以下
(e6)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤を組成物中0.01質量%以上2質量%以下
(e7)色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤を適量。
【0063】
[水溶性フィルム]
水溶性フィルムは、好ましくはポリマーを含んで構成される。水溶性フィルムは、当該技術分野において既知の方法、例えば、ポリマーの注型成形、吹込み成形、押出成形、射出成形などによって得ることができる。水溶性フィルムを製造するためのポリマーの非限定例として、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコールコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、(変性)セルロース、(変性)セルロース-エーテル又は-エステル又は-アミド、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸及び塩マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、ポリアミノ酸つまりペプチド、ポリアクリルアミドなどのポリアミド、デンプン及びゼラチンなどの多糖、キサンタン及びカラゴム(carragum)などの天然ゴムが挙げられる。ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコールと他のモノマー、例えばエチレン、アクリル酸とのコポリマーである。好ましくは、水溶性フィルムは、ポリアクリレート及び水溶性アクリレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。より好ましくは、水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールコポリマー及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれるポリマーを含む。更に好ましくは、水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール、例えば、株式会社アイセロから入手可能なソルブロンを含む。パウチの水溶性フィルムを製造するのに好適なポリマーは、例えば、米国特許第6995126号に記載されている。
【0064】
本発明において水溶性フィルムとは、1リットルのガラスビーカーに500gの30℃のイオン交換水を入れ、直径が8cmのテフロン(登録商標)製の撹拌子を入れ、その中に評価対象のフィルム1gを投入し、100rpmで30分間撹拌した後に、見かけ上、不溶物が見られないフィルムをいう。
【0065】
[衣料用液体洗浄剤製品]
衣料用液体洗浄剤製品は、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を水溶性フィルムで内包した製品である。衣料用液体洗浄剤組成物と接触する水溶性フィルムの総面積は、製品安定性をより高める観点から、好ましくは2cm以上であり、より好ましくは5cm以上であり、更に好ましくは7cm以上であり、そして、同じ観点から、好ましくは100cm以下であり、より好ましくは70cm以下であり、更に好ましくは60cm以下である。
【0066】
本発明の衣料用液体洗浄剤製品は、当該技術分野において既知の任意の好適なプロセス、例えば既知の洗剤パウチの作製プロセスによって作製できる。パウチの作製プロセス例は、米国特許第6,995,126号、同第7,127,874号、同第8,156,713号、同第7,386,971号、同第7,439,215号、及び米国特許出願公開第2009/199877号に記載されている。
【0067】
本発明の衣料用液体洗浄剤製品は、1個あたりの内容物の量が、好ましくは10g以上、より好ましくは12g以上、更に好ましくは15g以上、そして、好ましくは50g以下、より好ましくは30g以下、更に好ましくは25g以下である。また、1個あたりの好ましい形状、大きさは、例えば四辺形の形状であり、1辺の長さが、好ましくは1cm以上5cm以下、そして、厚みが好ましくは1cm以上5cm以下、より好ましくは1cm以上4cm以下である。また、1個あたりの質量は、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上、更に好ましくは15g以上、そして、好ましくは50g以下、より好ましくは40g以下、更に好ましくは30g以下である。
【実施例
【0068】
以下に本発明の効果を実施例により例示するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
〔(a)成分の水和水量の算出方法〕
(a)成分の水和水量は、(b)成分の1.0質量%水溶液をイオン交換水で調製し、示差走査熱量計(DSC、Q2000、TA instuments社製)を用いて、水の融解熱ΔH〔J/g〕(-5℃から5℃の領域)を測定することにより算出した。測定条件は、40℃から2℃/minの速度で-20℃まで降温し、-20℃で10分静置後、2℃/minの速度で25℃まで昇温した。同条件で測定した純水の融解熱ΔHwを用い、水和水量(g/ポリマー1g当たり)は、(100-1)×(ΔHw-ΔH)/ΔHwの式より算出した。(a’)成分についても同様に算出した。
【0070】
〔(a)成分の置換度の算出方法〕
・多糖ポリマーの前処理
(A)成分である多糖ポリマー1gを100gの水に溶かした後、水溶液を透析膜(スペクトラポア、分画分子量1000)に入れ、2日間透析を行った。得られた水溶液を、凍結乾燥機(eyela,FDU1100)を用いて凍結乾燥することで、前処理済の多糖ポリマーを得た。
【0071】
・(a)成分のカチオン基の置換度の測定(ケルダール法)
前記の方法で前処理した多糖ポリマーの200mgを精秤し、濃硫酸10mLとケルダール錠 (Merck)1錠を加え、ケルダール分解装置(BUCHI社製、K-432)にて加熱分解を行った。分解終了後、サンプルにイオン交換水30mLを加え、自動ケルダール蒸留装置(BUCHI社製、K-370)を用いてサンプルの窒素含量(質量%)を求めることで、カチオン基の質量を算出した。
【0072】
・(a)成分の炭化水素基(アルキル基)の置換度の算出(Zeisel法)
前記の方法で前処理した多糖ポリマー200mg、アジピン酸220mgを10mLバイアル(マイティーバイアルNo.3)に精秤し、内標溶液(テトラデカン/o-キシレン=1/25(v/v))3mLおよびヨウ化水素酸3mLを加えて密栓した。また、多糖ポリマーの代わりに1-ヨードドデカンを2.4mgまたは9mg加えた検量線用の試料を調製した。各試料をスターラーチップにより攪拌しながら、ブロックヒーター(PIERCE社製、Reacti-Therm III Heating/Stirring module)を用いて160℃、2時間の条件で加熱した。試料を放冷した後、上層(o-キシレン層)を回収し、下記条件のガスクロマトグラフィー(GC)(島津製作所社、QD2010plus)にて分析した。
・GC分析条件
カラム:Agilent HP-1(長さ:30m、液相膜厚:0.25μL、内径:32mm)
スプリット比:20
カラム温度:100℃(2min)→10℃/min→300℃(15min)
インジェクター温度:300℃
検出器:HID
検出器温度:330℃
打ち込み量:2μL
GCにより得られた1-ヨードドデカンの検出量から、サンプル中のアルキル基の質量を求めた。
【0073】
・ヒドロキシアルキル基質量の測定
ヒドロキシアルキル基由来のヨウ化アルキルを定量することで、前述のアルキル基質量の測定と同様にして行った。
【0074】
・カチオン基およびアルキル基の置換度の算出
上述のカチオン基とアルキル基の質量および全サンプル質量から多糖ポリマーの骨格の質量を計算し、それぞれ物質量(mol)に変換することでカチオン基とアルキル基の置換度をモル平均で算出した。
【0075】
〔ヒドロキシエチルセルロース(HEC)の重量平均分子量の測定〕
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算により算出した。
測定条件は、以下の通りである。
・カラム:TSKgel α-M
・溶離液:50mmol/L LiBr、1%CHCOOH、エタノール/水=3/7
・温度:40℃
・流速:0.6mL/min
【0076】
〔(a)成分〕
(a-1):下記の合成例で得られた多糖ポリマー(水和水量15.4g/ポリマー1gあたり)
(a-2):下記の合成例で得られた多糖ポリマー(水和水量15.9g/ポリマー1gあたり)
(a-3):カチオン化セルロース(分子量60万、カチオン基は第4級アンモニウム基、カチオン基の置換度は0.60、水和水量14.1g/ポリマー1gあたり、)
(a-4):カルボキシメチルセルロース(分子量150万、アニオン基の置換度は0.60、水和水量6.8g/ポリマー1gあたり)
【0077】
・(a-1)の合成例
ヒドロキシエチルセルロース(Ashland社、Natrosol 250 GR、重量平均分子量:30万、ヒドロキシエチル基の置換度(MS):2.5)90gを1Lセパラフラスコに入れ、窒素フローを行った。イオン交換水77.2g、イソプロピルアルコール(以下IPAという)414.5gを加え、直径5cmの半月形撹拌羽根(テフロン(登録商標)製)を用いて200r.p.m.で5分間撹拌した後、48%水酸化ナトリウム水溶液10.9gを加え、更に15分間撹拌した。次に、ラウリルグリシジルエーテル(四日市合成(株)、LA-EP)5.6gを加え、80℃で13時間アルキル化反応を行った。更にグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(阪本薬品工業(株)、SY-GTA80)12.9gを加え、50℃で1.5時間カチオン化反応を行った。その後、90%酢酸水溶液10.9gを加え、30分撹拌することで中和反応を行った。
得られた懸濁液を500mLの遠沈管2本に均等に移し替え、高速冷却遠心機(日立工機(株)、CR21G III)を用いて遠心分離を行った。上澄みをデカンテーションにより取り除き、取り除いた上澄みと同量の85%IPA水溶液を加え、再分散を行った。再度、遠心分離と再分散の操作を繰り返し、3回目の遠心分離を行った後に沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を真空乾燥機(アドバンテック社、VR-420)を用いて80℃で一晩減圧乾燥し、エクストリームミル(ワーリング社、MX-1200XTM)により解砕することで、粉末状の多糖ポリマー組成物として(a-1)を得た。得られた(a-1)のラウリル基の置換度は0.030であり、カチオン基の置換度は0.023であった。前記のポリマーの水和水量の算出方法に従って求められた(a-1)の水和水量は15.4g/ポリマー1gあたりであった。
【0078】
・(a-2)の合成例
前記の(a-1)の合成例において、原料となるヒドロキシエチルセルロースとして、重量平均分子量が15万であり、ヒドロキシエチル基の置換度(MS)が2.5であるヒドロキシエチルセルロースを用いた。前記の(a-1)の合成例において、ラウリルグリシジルエーテルの仕込み量、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、反応条件等を適宜変えることで(a-2)を得た。(a-2)のラウリル基の置換度は0.019であり、カチオン基の置換度は0.10であった。前記のポリマーの水和水量の算出方法に従って求められた(a-2)の水和水量は15.9g/ポリマー1gあたりであった。
【0079】
〔(a’)成分:(a)成分の比較化合物〕
(a’-1):Merquat 2200(Lubrizol 製)、水和水量4.2g/ポリマー1gあたり
【0080】
〔(b)成分〕
(b-1):ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(ラウリルアルコール1モルに対し、エチレンオキシ基を平均で7モル付加した化合物)
(b-2):ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(オキシエチレン基の平均付加モル数は3モル)
(b-3):ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
【0081】
〔(c)成分〕
イオン交換水
【0082】
<任意成分>
〔(d)成分〕
(d-1):プロピレングリコール
【0083】
<実施例1~9及び比較例1~4>
(1)衣料用液体洗浄剤製品の製造
上記の配合成分を用いて、表1に示す衣料用液体洗浄剤組成物を調製して水溶性フィルムに充填し、以下の項目について評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(1-1)衣料用液体洗浄剤組成物の調製
表1に示す衣料用液体洗浄剤組成物は、具体的には次の通り調製した。200mL容量のガラス製ビーカーに長さ5cmのテフロン(登録商標)製スターラーピースを投入し質量を測定した。次に20℃の(c)成分のイオン交換水80g、必要量の(a)成分又は(a’)成分、(b)成分、(d)成分を投入し、ビーカーの上面をサランラップ(登録商標)で封をした。
内容物が入ったビーカーをマグネチックスターラーに設置した60℃のウォーターバスに入れ、ウォーターバス内の水の温度が60±2℃の温度範囲内で、100r/minで30分間撹拌した。次に、ウォーターバス内の水を5℃の水道水に替え、ビーカー内の該組成物の温度が20℃になるまで冷却した。次に、サランラップ(登録商標)を外し、内容物の質量が100gになるように、(c)成分のイオン交換水を入れ、再度、100r/minで30秒間撹拌し、表2に記載の衣料用液体洗浄剤組成物を得た。
【0085】
(1-2)衣料用液体洗浄剤製品の作製
水溶性フィルムとして、ソルブロンPT(株式会社アイセロ製、ポリビニルアルコールを主成分とする水溶性フィルム)を用いた。
7cm×7cmの水溶性フィルムを2枚重ね、インパルスシーラーを用い、三辺をシーラーで融着させ、一辺だけ開口した袋を作製し、この袋に表1示す組成の液体洗浄剤組成物を20mL入れた。その後、ヒートシールで、袋の開口した一辺を融着して閉じて、衣料用液体洗浄剤組成物が内包された包装体を作製し、衣料用液体洗浄剤製品を得た。衣料用液体洗浄剤組成物と接触している水溶性フィルムの総面積は、50cmであった。
【0086】
(2)製品安定性の評価
得られた衣料用液体洗浄剤製品を用いて、35℃、60%RHで1週間保存後の製品安定性を液漏れの有無で評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:衣料用液体洗浄剤製品から全く液漏れが起こっていなかった。
○:保存開始4日以上7日未満で、衣料用液体洗浄剤製品の水溶性フィルムの外表面にごくわずかに液が滲んでいたが使用には支障がなかった。
△:保存開始1日以上4日未満で、衣料用液体洗浄剤製品から液漏れが起こった。
×:保存開始1日未満で、衣料用液体洗浄剤製品から液漏れが起こった。
なお、今回の評価では該当するものが無かったが、保存開始4日以上で衣料用液体洗浄剤製品から液漏れが起こった場合は、○よりも悪い評価に分類される。
【0087】
【表1】