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特許7241541グリコシル化PD-L1に特異的な二重機能抗体およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】グリコシル化PD-L1に特異的な二重機能抗体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20230310BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230310BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230310BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230310BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230310BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230310BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230310BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230310BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C12N15/13
C07K16/46
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K47/68
A61K39/395 Y
C12P21/08
【請求項の数】 44
(21)【出願番号】P 2018551425
(86)(22)【出願日】2017-03-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 US2017024027
(87)【国際公開番号】W WO2017172518
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】62/314,652
(32)【優先日】2016-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/361,312
(32)【優先日】2016-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517343508
【氏名又は名称】エスティーキューブ,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智裕
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ステファン エス.
(72)【発明者】
【氏名】チュン,エズラ エム.
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-ス
(72)【発明者】
【氏名】ハン,キュウ リー
(72)【発明者】
【氏名】パーク,アンドリュー エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ミエン-チエ
(72)【発明者】
【氏名】リ,チア-ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リム,スン-ウェ
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/061668(WO,A1)
【文献】Kathleen M. Mahoney et al.,PD-L1 Antibodies to Its Cytoplasmic Domain Most Clearly Delineate Cell Membranes in Immunohistochemical Staining of Tumor Cells.,Cancer Immunol. Res.,2015年11月06日,Vol.3, No.12,p.1308-1315,doi: 10.1158/2326-6066.CIR-15-0116
【文献】Joseph W. Kim and Joseph Paul Eder,Prospects for targeting PD-1 and PD-L1 in various tumor types.,Oncology (Williston Park),2014年11月11日,Vol.28, Suppl.3,p.15-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
C12N 15/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1に結合する単離抗体であって、
(i) 配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むVドメイン、または
配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むVドメイン
を含み、かつ、
配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR L1、配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR L2、および配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR L3を含むVドメインを含むか、または、
(ii) 配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号22のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号24のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むVドメイン、または
配列番号21のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号23のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号25のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むVドメインを含み、かつ、
配列番号28のアミノ酸配列を有するCDR L1、配列番号30のアミノ酸配列を有するCDR L2、および配列番号32のアミノ酸配列を有するCDR L3を含むVドメインを含む、
単離抗体。
【請求項2】
非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化PD-L1に選択的に結合して、グリコシル化PD-L1のPD-1への結合を阻害し、腫瘍細胞上のPD-L1の内在化および分解を促進する、請求項1に記載の単離抗体。
【請求項3】
キメラ抗体である、請求項1または2に記載の単離抗体。
【請求項4】
5~20nMの親和性でグリコシル化PD-L1に結合する、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項5】
非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への抗体結合によって示されるMFIより少なくとも3倍高いMFIでグリコシル化PD-L1を発現する細胞に優先的に結合する、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項6】
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変(V)ドメインおよび配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変(V)ドメインを含むか、または
(ii) 配列番号19のアミノ酸配列を含むVドメインおよび配列番号27のアミノ酸配列を含むVドメインを含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項7】
ヒト抗体定常ドメインを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項8】
(i) 配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるVドメイン、および/または配列番号10のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるVドメインを含むか、
(ii) 配列番号18のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるVドメイン、および/または配列番号26のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるVドメインを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項9】
前記Vおよび/またはVドメインをコードするヌクレオチド配列がそれぞれ、配列番号2もしくは18または配列番号10もしくは26のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である、請求項8に記載の単離抗体。
【請求項10】
前記Vおよび/またはVドメインをコードするヌクレオチド配列がそれぞれ、配列番号2もしくは18、または配列番号10もしくは26と少なくとも98%同一である、請求項8に記載の単離抗体。
【請求項11】
ヒト抗体フレームワーク領域を有する、請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項12】
ヒト抗体定常ドメインを有する、請求項8から11のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項13】
IgG、IgM、IgA抗体、またはその抗原結合断片である、請求項1から12のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項14】
Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFvまたは二価scFvである、請求項1から12のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項15】
二重特異性または二重パラトープ性抗体である、請求項1から12のいずれか一項に記載の単離抗体。
【請求項16】
造影剤、化学療法剤、細胞傷害剤、抗新生物剤、または放射性核種にコンジュゲートされる、請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項17】
配列番号2及び10のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
【請求項18】
配列番号18及び26のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体のVドメインおよびVドメインをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
【請求項20】
薬学的に許容される担体中に請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体を含む組成物。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか一項に記載の単離抗体の有効量を含む、PD-L1陽性がんを処置するための医薬組成物。
【請求項22】
前記PD-L1陽性がんが、乳がん、肺がん、頭頚部がん、前立腺がん、食道がん、気管がん、皮膚がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、膵臓がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頚がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、または皮膚がんである、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記PD-L1陽性がんが、血液のがんである、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記単離抗体と併用して、非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化PD-L1に選択的に結合する第2の単離抗体が対象に投与される、請求項21から23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記抗体が、薬学的に許容される担体中にある、請求項21から24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
静脈内、皮内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、または局所投与される、請求項21から25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記単離抗体と併用して、少なくとも第2の抗がん治療を対象にさらに投与するための、請求項21から26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記第2の抗がん治療が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
細胞傷害薬に化学的にカップリングされた抗PD-L1抗体を含むADCであって、前記抗PD-L1抗体が、請求項1から16のいずれか一項に記載の単離抗体である、ADC。
【請求項30】
前記抗体が、以下の(i)または(ii)の単離抗体:
(i) 配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変(V)ドメインおよび配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変(V)ドメインを含む、単離抗体;または
(ii) 配列番号19のアミノ酸配列を含むVドメインおよび配列番号27のアミノ酸配列を含むVドメインを含む、単離抗体
である、請求項29に記載のADC。
【請求項31】
前記細胞傷害薬が、チューブリン重合化を阻害する薬剤である、請求項29または30に記載のADC。
【請求項32】
前記薬剤がメイタンシノイドまたはアウリスタチンである、請求項31に記載のADC。
【請求項33】
前記薬剤がメイタンシノイドであり、前記メイタンシノイドがDM1またはDM4である、請求項32に記載のADC。
【請求項34】
前記薬剤がアウリスタチンであり、前記アウリスタチンがMMAEまたはMMAFである、請求項32に記載のADC。
【請求項35】
前記アウリスタチンがMMAEである、請求項34に記載のADC。
【請求項36】
前記抗体が、MC結合基に化学的にコンジュゲートされ、これがカテプシン切断可能リンカーに化学的にコンジュゲートされ、これがPABスペーサーに化学的にコンジュゲートされ、これがMMAEまたはMMAFに化学的にコンジュゲートされ、それによってADCが形成される、請求項34に記載のADC。
【請求項37】
前記カテプシン切断可能リンカーがバリン-シトルリン(vc)である、請求項36に記載のADC。
【請求項38】
前記抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含むVドメインおよび配列番号27のアミノ酸配列を含むVドメインを含む、単離抗体である、請求項30に記載のADC。
【請求項39】
切断可能リンカーを介してMMAEに化学的にカップリングされた抗glycPD-L1抗体を含むADCであって、前記抗glycPD-L1抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含むVドメインおよび配列番号27のアミノ酸配列を含むVドメインを含む単離抗体である、ADC。
【請求項40】
前記細胞傷害薬が、アブリン、リシン、リシンA、シュードモナスエクソトキシン、ジフテリア毒素、ゲロニン、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾシン、マイトマイシンC、シスジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシンから選択される、請求項29または30に記載のADC。
【請求項41】
前記細胞傷害薬が、腫瘍壊死因子、インターフェロン、神経生長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2、インターロイキン-6、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、またはマクロファージコロニー刺激因子、および成長ホルモンから選択される、請求項29または30に記載のADC。
【請求項42】
請求項29から41のいずれか一項に記載のADCの有効量を含む、PD-L1陽性がんを処置するための医薬組成物。
【請求項43】
前記PD-L1陽性がんが、乳がん、肺がん、頭頚部がん、前立腺がん、食道がん、気管がん、皮膚がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、膵臓がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頚がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、または皮膚がんである、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記PD-L1陽性がんが、血液のがんである、請求項42に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出され、参照により全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2017年3月23日に作製された前記ASCIIのコピーは、名称が24258_105007_SL.txtであり、大きさは40,452バイトである。
【0002】
関連分野
本開示は、全般的に分子生物学、医学、および腫瘍学の分野に関する。より詳しくは、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する新規抗体およびがんを処置するためのその使用が提供される。
【背景技術】
【0003】
T細胞活性化の永続化によって、広いスペクトルの悪性がんの処置は劇的に変化している。例として、FDAによって初めて承認された、T細胞応答を標的とするチェックポイント遮断薬であるイピリムマブの開発によって、転移性黒色腫の処置が可能となった(Hodi, F.S. et al., 2010, NEJM, 363:711-723; Robert, C. et al., 2013, Clin. Cancer Res., 19:2232-2239;およびRobert, C. et al., 2011, NEJM, 364:2517-2526)。抗細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)モノクローナル抗体は、黒色腫患者の処置において有望な結果を示したが、PD-1およびPD-L1の両方を標的とする第二世代のチェックポイント阻害剤は、フェーズIII臨床試験においてより良好な臨床活性および安全性を証明している(Topalian, S.L. et al., 2012, NEJM, 366:2443-54;およびBrahmer, J.R. et al., 2012, NEJM, 366:2455-2465)。PD-L1はまた、その免疫抑制活性に加えて、がん細胞の進行を誘導する腫瘍形成能も有することから(Topalian, S.L. et al., Id.;Page, D.B. et al., 2014, Ann. Rev. Med., 65:185-202)、PD-1/PD-L1相互作用を標的とすることは、PD-L1を介して細胞進行を低減しながら、PD-1を介して免疫抑制を遮断することによって、二重の有効性を提供し、より感受性の高い転帰を有すると期待される(Topalian, S.L. et al., Id.; Brahmer, J.R. et al., Id.; and Hamid, O., 2013, NEJM, 369:134-144)。2014年に、単剤としてまたは併用のいずれかでの抗PD-L1および/または抗PD-1抗体の有効性を試験する10の臨床試験が米国において進行中であった(Page, D.B. et al.、同上)。米国FDAは、ある特定のがんの処置に関して2つの抗PD-1治療抗体、すなわち、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)およびOPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)を承認している。しかしながら、PD-L1の病理生理学機能および調節機構の定義は、不完全なままである。
【0004】
沈黙した免疫応答、特にエフェクターT細胞を再び目覚めさせることにより、最近、外科的切除、化学療法、放射線療法、および標的化治療を含む処置選択肢のレパートリーが増加している。抗CTLA-4モノクローナル抗体(Dunn, G.P., et al., 2002, Nat. Immunol., 3:991-998;およびLeach, D.R., et al., 1996, Science, 271:1734-1736)の使用は、当初、転移性黒色腫の処置において成功することが証明されたが、自己免疫応答も誘導することが示されている。免疫細胞のみに影響を及ぼす抗CTLA-4抗体とは異なり、抗PD-L1抗体および抗PD-1抗体は、細胞レベルおよび腫瘍部位で作用して、PD-1発現エフェクターT細胞と、PD-L1発現腫瘍細胞との間の相互作用を遮断する。これによって腫瘍細胞とT細胞の両方からの二重の影響が起こり、それによって、有害な作用を制限して、より良好な治療有効性をもたらす(Okazaki, T., et al., 2013, Nature immunology, 14:1212-1218)。この経路を標的とするより強力な治療薬を開発するためには、腫瘍細胞に及ぼすPD-L1媒介免疫抑制および発癌促進作用の基礎となる病理生理学的メカニズムのよりよい理解が必要である。腫瘍細胞を攻撃してがんを処置するために、PD-1/PD-L1経路を首尾よく標的として、免疫系のエフェクター細胞を活性化する、新規でより有効な治療および方法論がなおも必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、腫瘍細胞上に発現されるPD-L1(CD274、PDCD1L1、またはB7-H1としても知られる)のグリコシル化が、T細胞などの免疫エフェクター細胞上で発現したPD-1への結合を促進または増強し、それによって、腫瘍細胞に対するT細胞活性の抑制を増大させることを発見した。本発明者らは、PD-L1のグリコシル化が、細胞表面上のPD-L1発現を安定化させ、それによってPD-L1の内在化および細胞内分解の比率を低減させることをさらに発見した。本発明者らは、非グリコシル化ヒトPD-L1ポリペプチドと比較してグリコシル化ヒトPD-L1ポリペプチドに優先的に結合する抗体を同定した。本明細書において使用されるように、グリコシル化ヒトPD-L1に優先的に結合するような抗体を、「抗glycPD-L1抗体」と呼ぶ。本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体はまた、それらがPD-L1/PD-1相互作用を遮断し、PD-L1発現細胞上のPD-L1の内在化および細胞内分解を促進するという点において、二重機能性を有し、そのためこれらの抗体を、「二重機能」抗体と呼ぶ。したがって、PD-1/PD-L1結合を阻害し、PD-L1内在化および分解を促進するという二重機能性を示すそのような抗glycPD-L1抗体が提供される。
【0006】
さらに、抗glycPD-L1抗体の1つまたは複数を投与することによって、それを必要とする対象におけるがん、特にその細胞がPD-L1を発現または過剰発現するがん、を処置する方法が提供される。本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体は、PD-1とPD-L1の間の相互作用を阻害または遮断し、同様に腫瘍細胞上のPD-L1レベルを低減させ、それによってPD-1/PD-L1相互作用に起因する免疫抑制を阻害し、PD-L1を発現する腫瘍細胞に対するPD-1発現エフェクターT細胞の細胞傷害活性の永続化を促進する。PD-1/PD-L1相互作用を阻害することおよび腫瘍細胞表面上のグリコシル化PD-L1レベルを低減させることによって、記述される抗glycPD-L1抗体は、エフェクターT細胞応答を増強して、抗腫瘍活性を媒介することができる。本明細書において使用される用語腫瘍およびがんは、互換的に使用される。特に示していなければ、本明細書において使用される「PD-L1」は、PD-L1タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド、特にヒトPD-L1(配列番号1であるアミノ酸配列)を指し、「PD-1」は、PD-1タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド、特にヒトPD-1を指す。
【0007】
本発明者らはさらに、ヒトPD-L1が、例えば配列番号1に記載されるヒトPD-L1タンパク質の細胞外ドメインにおけるアミノ酸N35、N192、N200、および/またはN219位の4つの部位でグリコシル化されることを見出した。本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体は、これらの部位の1つまたは複数に結合しうるが、例えばこれらのグリコシル化部位の1つまたは複数において変異(例えば、グリコシル化コンセンサス配列内のアスパラギンのグルタミンへの置換)を有し、このためそれらの1つまたは複数の部位でグリコシル化されないPD-L1には結合することができない。したがって、いくつかの実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、PD-L1グリコポリペプチドまたはそのペプチドにおける1つまたは複数のグリコシル化モチーフに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化モチーフおよび隣接ペプチドを含むPD-L1グリコペプチドに結合する。いくつかの実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、3次元で1つまたは複数のグリコシル化モチーフの近傍に位置するペプチド配列に結合する。したがって、実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1のコンフォメーションエピトープを認識して、これに選択的に結合する。例として、ある特定の実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKの85%より小さい、80%より小さい、75%より小さい、70%より小さい、65%より小さい、60%より小さい、55%より小さい、50%より小さい、45%より小さいKでグリコシル化PD-L1に結合するが、実施形態において、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKの5%、10%、15%、20%、または25%以下で結合するが、それでもなお2つの抗グリコシル化PD-L1機能を示す。前述のK値の間の値および前述のK値に等しい値が包含されると理解すべきである。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKの半分より小さいKでグリコシル化PD-L1に結合するが、それでもなお二重の抗グリコシル化PD-L1機能を示す。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKより少なくとも5倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1タンパク質と比較して示されるKより少なくとも10倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。ある特定の実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、例えば、細胞フローサイトメトリーアッセイにおいてアッセイした場合、WTグリコシル化PD-L1を発現する細胞に、非グリコシル化PD-L1を発現する細胞より少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍大きい頻度で優先的に結合し、このアッセイにおいて、WT PD-L1を発現する細胞と非グリコシル化PD-L1を発現する細胞とを混合して、識別的に標識した後、例えば、実施例6に記載され、かつ例えば、抗体が蛍光マーカーによって標識される場合、二つの細胞集団についての測定蛍光強度(MFI)によって測定される、検出可能なマーカーによって標識されたアッセイされる抗体と接触させる。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1タンパク質に、5~20nM、5~10nM、または10~20nMの親和性で選択的に結合する。一実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体であり、より好ましくは、キメラまたはヒト化抗体またはヒト抗体である。用語「特異的に結合する」および「選択的に結合する」は、本明細書において互換的に使用される。
【0008】
本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化PD-L1に特異的に結合し;PD-1へのPD-L1の結合を低減、遮断、または阻害し;ならびにPD-L1の内在化および細胞内分解を促進する。ある特定の実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、非線形のコンフォメーションエピトープであるPD-L1エピトープに結合する。加えて、および理論に拘束されないが、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化アミノ酸を含むかまたはPD-L1の三次元構造においてその近位であるPD-L1に結合し、PD-L1のそのようなグリコシル化領域は、PD-L1/PD-1相互作用に特に関係していると考えられる。グリコシル化されているPD-L1の領域におけるエピトープアミノ酸に結合することによって、記述の抗glycPD-L1抗体は、腫瘍細胞表面上のPD-L1/PD-1相互作用および/またはPD-L1発現の安定化に関係するグリコシル化PD-L1タンパク質の結合部位または領域を隠すまたは中和するために有効に機能しうる。
【0009】
記述される抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1に対するその結合に関して二重機能性を発揮し、このため本明細書において「二重機能」抗体と呼ばれる。理論に拘束されないが、ECDのN末端グリコシル化部位(N35)は、PD-L1/PD-1結合に主に関係しているが、ECDのよりC末端のグリコシル化部位(N192、N200、およびN219)は、細胞膜上のPD-L1の安定化に主に関係しており、これらの領域のそれぞれが、膜におけるPD-L1/PD-1結合とPD-L1の安定化の両方に関与しうると考えられる。したがって、N35でのグリコシル化に結合する、遮断する、および/または隠す抗glycPD-L1抗体は、PD-L1/PD-1結合を阻害し、N192、N200、および/またはN219でのグリコシル化に結合する、遮断する、および/または隠す抗体は、PD-L1内在化および分解を促進する。本明細書において提供される抗体は両方の機能性を有する。
【0010】
特定の態様において、二重機能抗glycPD-L1モノクローナル抗体STM073(以下の表3に同様に提供されるように、配列番号3のVドメインアミノ酸配列を有し、配列番号11のVドメインアミノ酸配列を有する)およびSTM018(以下の表3に同様に提供されるように、配列番号19のVドメインアミノ酸配列を有し、配列番号27のVドメインアミノ酸配列を有する)、およびグリコシル化PD-L1に対して特異的なその結合断片、ならびにそのキメラおよびヒト化形態が提供される。一実施形態において、STM073は、本明細書における配列番号1のヒトPD-L1アミノ酸配列のH69、Y112、R113、およびK124位を包含するアミノ酸残基に対応するPD-L1上のエピトープに特異的に結合する。このSTM073エピトープは、アミノ酸配列内で不連続であり、コンフォメーションエピトープである。一実施形態において、STM073 MAbエピトープを包含するヒトPD-L1ポリペプチドの部分は、配列VGEEDLKVQH------DAGVYRCMISYGGADYRITV(配列番号85)を有し、ここでMAb STM073によって認識されるエピトープを構成するアミノ酸残基H69、Y112、R113、およびK124を下線で示し、78位のアミノ酸残基ヒスチジン(H)と108位のアミノ酸残基アスパラギン酸(D)の間のダッシュは、配列番号1のヒトPD-L1アミノ酸配列の79~107位のアミノ酸を表す。STM073エピトープに結合する抗体およびPD-L1への結合に関してSTM073と競合する抗体を提供する。
【0011】
別の実施形態において、STM108 MAbは、本明細書における配列番号1のヒトPD-L1アミノ酸配列のS80、Y81、K162、およびS169位を包含するアミノ酸残基に対応するPD-L1上のエピトープに特異的に結合する。このSTM108エピトープは、アミノ酸配列内で不連続であり、コンフォメーションエピトープである。一実施形態において、STM073 MAbエピトープを包含するヒトPD-L1ポリペプチドの部分は、配列LKVQHSSYRQR------EGYPAEVIWTSDHQ(配列番号1の残基74~173位)を有し、ここでMAb STM108によって認識されるエピトープを構成するアミノ酸残基S80、Y81、K162、およびS169位を下線で示し、84位のアミノ酸残基アルギニン(R)と158位のアミノ酸残基グルタミン酸(E)の間のダッシュは、配列番号1のヒトPD-L1アミノ酸配列、すなわち配列番号1のアミノ酸19~290位の成熟PD-L1タンパク質の85~157位のアミノ酸を表す。STM108エピトープに結合する抗体およびPD-L1への結合に関してSTM108と競合する抗体を提供する。
【0012】
STM073 MAbの重鎖および軽鎖可変(V)ドメインの核酸(DNA)および対応するアミノ酸配列を以下の表3に示す。表3は、STM073の成熟(すなわち、シグナルペプチドを含まない)VおよびVドメインのヌクレオチドおよびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号2、3、10、および11)、ならびにシグナルペプチドを含むVおよびVドメイン配列(それぞれ、配列番号87、88、89、および90)の両方を提供する。表3に示すシグナル配列含有重鎖および軽鎖ドメインの重鎖DNAおよびタンパク質Vドメイン配列において、アミノ末端シグナル配列(それぞれ、Vドメインのヌクレオチド1~58位およびアミノ酸1~19位、ならびにVドメインのヌクレオチド1~66位およびアミノ酸1~22位)をイタリック体で表す。KabatおよびChothia付番定義の両方を使用する、STM073 MAb重鎖および軽鎖VドメインCDRも同様に、表3に示す。
【0013】
一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号3のVドメインおよび配列番号11のVドメインを含む。一実施形態において、二重機能抗glyPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号3のVドメインおよび配列番号11のVドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメインを含む。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、PD-L1に特異的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインを含む。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、(a)配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメイン;ならびに(b)配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインを含む。実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、上記のVおよびVドメインならびにそのCDRを含む抗体と競合する。
【0014】
一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%同一であるVドメイン、および/または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%同一であるVドメインを含み、グリコシル化PD-L1のPD-1への結合を阻害または遮断する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、少なくとも1、2、または3個全てのCDRが配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列それぞれに関して、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインを含み、二重機能抗glycPD-L1抗体は、PD-1へのグリコシル化PD-L1の結合を遮断する。一実施形態において、PD-L1に特異的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、少なくとも1、2、または3個全てのCDRが配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインを含む。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する抗glycPD-L1抗体は、(a)少なくとも1、2、または3個全てのCDRが配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列それぞれに関して、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメイン;ならびに(b)少なくとも1、2、または3個全てのCDRが配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインを含み、抗体は、PD-1へのグリコシル化PD-L1の結合を遮断する。好ましくはこれらの抗体は、ヒトフレームワーク領域を有し、すなわちSTM073のヒト化形態であり、任意選択で、ヒト定常ドメインを有する。同様に、AbM、Contact、またはIMGT定義CDRを使用して、ヒトフレームワーク領域、および任意選択でヒト定常ドメインを有するSTM073のヒト化形態が提供される。結合親和性を改善するために、ヒト化抗体のフレームワーク領域および/またはCDRに1つまたは複数のアミノ酸置換を行ってもよいことは当業者に認識される。
【0015】
実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、上記のVおよびVドメインならびにそのCDRを含む抗体と競合する。実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKの半分より小さいKでグリコシル化PD-L1に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKより少なくとも5倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1タンパク質と比較して示されるKより少なくとも10倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、実施例6に記載する細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への結合に対するMFIより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍大きいMFIとして表される、WT PD-L1を発現する細胞への結合を示す。一実施形態において、STM073抗体、またはそのヒト化もしくはキメラ形態、またはグリコシル化PD-L1への結合に関して前述の抗体と競合する抗体の結合親和性は、その下限および上限値を含む、5~20nMまたは5~10nMである。一実施形態において、抗体は、PD-1とPD-L1との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞によって発現したPD-1と、腫瘍細胞によって発現したPD-L1、特にグリコシル化PD-L1との相互作用を阻害し、同様に特にPD-L1の内在化および細胞内分解を増加させることによって、腫瘍細胞の表面上のPD-L1、特にグリコシル化PD-L1のレベルを低減させる。本明細書において提供される抗グリコシル化PD-L1抗体による結合後に腫瘍細胞上で発現したPD-L1の内在化は、T細胞上のPD-1との相互作用のために腫瘍細胞上で利用可能であり、それによって腫瘍細胞に対するT細胞の細胞傷害性エフェクター機能を増加させ、PD-L1/PD-1相互作用に起因するT細胞アネルギーを低減させるため、抗glycPD-L1抗体の有益な特徴である。
【0016】
別の特定の実施形態において、抗glycPD-L1モノクローナル抗体STM108である、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する抗体またはその結合断片を提供する。STM108 MAbの成熟重鎖および軽鎖可変(V)ドメインの核酸(DNA)および対応するアミノ酸配列(配列番号18、19、26、および27)を以下の表3に示す。非プロセシング重鎖Vドメイン配列(すなわち、N末端でシグナルペプチドを含む配列)のDNAおよびアミノ酸配列も同様に、表3(配列番号91および92)に示し、アミノ末端シグナル配列を、イタリック体(Vドメインのヌクレオチド1~57位およびアミノ酸1~19位)で表す。同様に、KabatおよびChothiaの両方の定義に従うSTM108 MAbの重鎖および軽鎖VドメインCDRも表3に示す。
【0017】
一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号19のアミノ酸配列のVドメイン、および配列番号27のアミノ酸配列のVドメインを含む。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号19のアミノ酸配列のVドメインと配列番号27のアミノ酸配列のVドメインとを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD-L1抗体は、配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメインを含む。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD-L1抗体は、配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインを含む。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD-L1抗体は、(a)配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメイン、ならびに(b)配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR 1~3を含むVドメインを含む。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、上記のVHおよびVLドメインならびにそのCDRを含む抗体と競合する。
【0018】
一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD-L1抗体は、配列番号19のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であるVドメイン、および配列番号27のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であるVドメインを含む。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD-L1抗体は、配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸置換を有する少なくとも1、2、もしくは3個全てのCDRを有するCDR1~3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメインを含む。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD-L1抗体は、少なくとも1、2、または3個全てのCDRが配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインを含む。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD-L1抗体は、(a)少なくとも1、2、または3個全てのCDRが配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列それぞれに関して、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列それぞれに関して、少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメイン、および/または(b)少なくとも1、2、または3個全てのCDRが配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインを含む。
【0019】
同様に、AbM、Contact、またはIMGT定義CDRを使用して、ヒトフレームワーク領域、および任意選択でヒト定常ドメインを有するSTM108のヒト化形態が提供される。好ましくは、これらの抗体は、ヒトフレームワーク領域を有し、すなわち、STM108のヒト化形態であり、任意選択でヒト定常ドメインを有する。
【0020】
実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、上記のVおよびVドメインならびにそのCDRを含む抗体と競合する。STM108のヒト化形態は、CDRおよび/またはフレームワーク領域に、抗原親和性などの抗体の1つまたは複数の特性を改善する1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、または挿入を有してもよい。実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKの半分より小さいKでグリコシル化PD-L1に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKより少なくとも5倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1タンパク質と比較して示されるKより少なくとも10倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、実施例6に記載する細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への結合に対するMFIより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍大きいMFIとして表される、WT PD-L1を発現する細胞への結合を示す。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に対するSTM108 MAb、またはそのキメラもしくはヒト化形態の結合親和性は、その下限および上限値を含む、5~20nMまたは5~10nMである。一実施形態において、抗体は、PD-1とPD-L1との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞によって発現したPD-1と、腫瘍細胞によって発現したPD-L1、特にグリコシル化PD-L1との相互作用を阻害する。抗体は好ましくはヒトフレームワーク領域を有し、ある特定の実施形態において、ヒト定常ドメインを有する。
【0021】
同様に、配列番号1のヒトPD-L1配列のペプチド部分である、ヒトPD-L1アミノ酸配列DAGVYRCMISYGGADYKRITV(配列番号86)内のエピトープに結合する単離二重機能抗glycPD-L1モノクローナル抗体、またはそのキメラもしくはヒト化形態も本実施形態に包含される。一実施形態において、抗体が結合するエピトープは、不連続なアミノ酸を含み、エピトープはコンフォメーションエピトープである。一実施形態において、抗体は、以下の配列:DAGVYRCMIYGGADYKRITV(配列番号86)における下線のアミノ酸残基として示される、配列番号1のヒトPD-L1アミノ酸配列のY112、R113、およびS117位を包含する不連続なアミノ酸残基に対応するヒトPD-L1エピトープに特異的に結合する。
【0022】
別の態様において、その配列が、配列番号1の成熟ヒトPD-L1ポリペプチド配列内に位置する、VHGEEDLKVQH------DAGVYRCMISYGGADYKRITV(配列番号85)またはDAGVYRCMISYGGADYKRITV(配列番号86)から選択されるアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、またはその結合断片、特にヒト化抗体またはヒト抗体が提供される。抗体は、好ましくは、ヒトフレームワーク領域を有し、ある特定の実施形態において、ヒト定常ドメインを有する。別の態様において、配列番号1のアミノ酸74~84位および158~173位であるアミノ酸配列LKVQHSSYRQR------EGYPKAEVIWTSSDHQ内のエピトープに特異的に結合する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、またはその結合断片、特にヒト化抗体またはヒト抗体が提供される。抗体は、好ましくは、ヒトフレームワーク領域を有し、ある特定の実施形態において、ヒト定常ドメインを有する。
【0023】
ある特定の実施形態において、配列番号1のアミノ酸残基H69、Y112、R113、およびK124を含むエピトープに結合する単離抗glycPD-L1抗体、特にモノクローナル、ヒト化抗体、またはヒト抗体が提供される。一態様において、ヒトPD-L1に結合すると、抗体が、配列番号1の以下のアミノ酸残基:H69、Y112、R113、およびK124の少なくとも1つに結合するように、グリコシル化ヒトPD-L1に特異的に結合する単離抗glycPD-L1抗体が提供される。別の実施形態において、配列番号1のアミノ酸残基S80、Y81、K162、およびS169を含むエピトープに結合する単離抗glycPD-L1抗体、特にモノクローナル、ヒト化抗体、またはヒト抗体が提供される。一態様において、ヒトPD-L1に結合すると、抗体が、配列番号1の以下のアミノ酸残基S80、Y81、K162、およびS169の少なくとも1つに結合するように、グリコシル化ヒトPD-L1に特異的に結合する単離抗glycPD-L1抗体が提供される。
【0024】
別の態様において、ヒトPD-L1に結合すると、抗体が、配列番号1の以下のアミノ酸残基Y112、R113、およびS117の少なくとも1つに結合するように、グリコシル化ヒトPD-L1に特異的に結合する単離二重機能抗glycPD-L1抗体、特にモノクローナル、ヒト化抗体、またはヒト抗体が提供される。
【0025】
別の態様において、ヒトPD-L1に結合すると、抗体が、配列番号1のV68~V128のアミノ酸領域内の、または配列番号1のD108~V128のアミノ酸領域内の少なくとも1つのアミノ酸に結合するように、グリコシル化ヒトPD-L1に特異的に結合する単離二重機能抗glycPD-L1抗体、特にモノクローナル、ヒト化抗体、またはヒト抗体が提供される。一態様において、ヒトPD-L1に結合すると、モノクローナル抗体が、配列番号1のV68~V128のアミノ酸領域内の以下の群のアミノ酸残基:H69、Y112、R113、およびK124に結合するように、グリコシル化ヒトPD-L1に特異的に結合する単離二重機能抗glycPD-L1抗体が提供される。一態様において、ヒトPD-L1に結合すると、モノクローナル抗体が、配列番号1のD108~V128のアミノ酸領域内の以下の群のアミノ酸残基:Y112、R113、S117に結合するように、グリコシル化ヒトPD-L1に特異的に結合する単離二重機能抗glycPD-L1抗体が提供される。
【0026】
一態様において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号1のL74~R84および/またはE158~Q173の領域内で、好ましくは配列番号1の残基S80、Y81、K162、およびS169の1つまたは複数に結合する。
【0027】
別の態様において、ヒトPD-L1に結合すると、抗体がPD-L1タンパク質(配列番号1)の少なくともアミノ酸領域V68~V128、または少なくともアミノ酸領域D108~V128、またはその組み合わせに結合するように、非グリコシル化形態と比較してグリコシル化ヒトPD-L1タンパク質に特異的に結合する単離二重機能抗glycPD-L1抗体、またはその結合断片、特にモノクローナル、ヒト化抗体、またはヒト抗体が提供される。抗体は、好ましくはヒトフレームワーク領域を有し、ある特定の実施形態において、ヒト定常ドメインを有する。
【0028】
別の態様において、(a)配列番号5、配列番号21、配列番号4、または配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号7、配列番号23、配列番号6、または配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2;および配列番号9、配列番号25、配列番号8、または配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR3を含むVドメイン;ならびに(b)配列番号12または配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号14または配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR2;および配列番号16または配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3を含むVドメインを含む、単離二重機能抗glycPD-L1抗体またはその結合断片が提供される。一実施形態において、抗体は、ヒトフレームワーク領域、および任意選択でヒト抗体定常ドメインを有するヒト化抗体である。
【0029】
別の態様において、Vドメインをコードする配列番号2もしくは18から選択されるヌクレオチド配列、および/またはVドメインをコードする配列番号10もしくは26から選択されるヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子が提供される。一実施形態は、ヌクレオチド配列が、配列番号2または18のヌクレオチド配列と少なくとも90~98%同一である、二重機能抗glycPD-L1抗体のVドメインをコードする単離ヌクレオチド配列を提供する。別の実施形態は、ヌクレオチド配列が、配列番号10または26のヌクレオチド配列と少なくとも90~98%同一である、二重機能抗glycPD-L1抗体のVドメインをコードする単離ヌクレオチド配列を提供する。実施形態において、Vおよび/またはVドメインをコードするヌクレオチド配列は、配列番号2もしくは18、または配列番号10もしくは26とそれぞれ、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ超同一である。
【0030】
ある特定の態様において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、IgG、IgM、IgA、そのアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG4、またはその抗原結合断片である。他の態様において、抗glycPD-L1抗体は、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価ScFv、二重特異性抗体、二重特異性scFv、またはシングルドメイン抗体である。いくつかの態様において、抗glycPD-L1抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、またはヒト化抗体である。一態様において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、組み換えによって産生される。さらなる態様において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、造影剤、化学療法剤、毒素、または放射性核種にコンジュゲートされる。
【0031】
一態様において、薬学的に許容される担体または媒体中に、二重機能抗glycPD-L1抗体(例えば、非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化PD-L1に選択的かつ優先的に結合し、本明細書において記述されるPD-L1の内在化および/または分解を行う抗体)を含む組成物が提供される。
【0032】
さらなる態様において、ヒトPD-L1の細胞外ドメイン(ECD)内のN35、N192、N200、またはN219位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含むヒトPD-L1の少なくとも7(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ超)連続アミノ酸のペプチドを含む単離ポリペプチドが提供される。一実施形態において、単離ポリペプチドは、ヒトPD-L1のN35、N192、N200、またはN219位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含む、ヒトPD-L1の少なくとも7つの(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ超の)連続したアミノ酸のペプチドを含み、ここでPD-L1のN35、N192、N200、またはN219位に対応するアミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている。一実施形態において、単離ポリペプチドは、免疫原性ポリペプチド(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、KLH)に融合またはコンジュゲートされている。ある特定の態様において、ポリペプチドは、そのアミノ(N)またはカルボキシ(C)末端でシステイン(Cys)残基をさらに含む。例えば、ポリペプチドは、Cys残基でジスルフィド結合によって免疫原性ポリペプチドにコンジュゲートされてもよい。特定の実施形態において、ヒトPD-L1のN35、N192、N200、またはN219位に対応する位置でグリコシル化されている少なくとも1つのアミノ酸残基を含むPD-L1ペプチドを免疫原として使用して、抗glycPD-L1抗体を産生する。
【0033】
さらなる態様において、ヒトPD-L1のECD内のN35、N192、N200、またはN219位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含むヒトPD-L1の少なくとも7つの(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ超の)連続したアミノ酸のペプチドを含むポリペプチドを含む組成物であって、PD-L1のN35、N192、N200、またはN219位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されており、ポリペプチドが、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはビヒクル中で製剤化される組成物が提供される。
【0034】
なおさらなる態様において、ヒトPD-L1ポリペプチドのN35、N192、N200、またはN219位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含むヒトPD-L1の少なくとも7つの連続したアミノ酸のペプチド断片を含むポリペプチドを含む免疫原性組成物であって、PD-L1ポリペプチドのECD内のN35、N192、N200、またはN219位に対応するアミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されており、ポリペプチドが、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはビヒクル中で製剤化される、免疫原性組成物が提供される。いくつかの態様において、免疫原性組成物はさらに、ミョウバンまたはフロイントアジュバントなどのアジュバントを含む。
【0035】
さらなる態様において、本明細書において記述される二重機能抗glycPD-L1抗体の有効量を対象に投与することを含む、がんを有する対象などの、それを必要とする対象を処置するための方法が提供される。特定の実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、MAb STM073またはSTM108のうちの1つのヒト化またはキメラ形態である。他の実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への結合に関して、MAb STM073またはMAb STM108と競合する抗体である。一実施形態において、本明細書において記述される抗体の有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法が提供される。ある特定の好ましい実施形態において、がん細胞は、PD-L1、特にグリコシル化PD-L1に関して陽性である。がん細胞はまた、EGFRなどの、しかしこれに限定されない1つまたは複数の他のがん細胞マーカーに関して陽性であってもよい。非限定的な実施形態において、対象において処置されるがん、疾患、または病態は、乳がん、肺がん、頭頚部がん、前立腺がん、食道がん、気管がん、皮膚がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、膵臓がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頚がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、または皮膚がんである。ある特定の実施形態において、処置されるがんは、副腎がん、肛門がん、胆管がん、骨がん、成人の脳/CNS腫瘍、小児の脳/CNS腫瘍、男性の乳がん、思春期のがん、小児のがん、青少年のがん、原因不明の原発性がん、キャッスルマン病、子宮頚がん、子宮内膜がん、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、眼のがん、胆嚢がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭または上咽頭がん、白血病(例えば、成人急性リンパ球性(ALL)、急性骨髄性(AML)、慢性リンパ球性(CLL)、慢性骨髄性(CML)、慢性骨髄単球性(CMML)、小児白血病)、肺がん(例えば、非小細胞、小細胞)、肺カルチノイド腫瘍、リンパ腫、皮膚リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔がん、副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、小児の非ホジキンリンパ腫、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(例えば、成人の軟部組織がん)、皮膚がん(例えば、基底細胞扁平上皮がん、黒色腫、メルケル細胞がん)、小腸がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症、またはウィルムス腫瘍である。
【0036】
ある特定の態様において、抗glycPD-L1抗体は、薬学的に許容される組成物中で製剤化される。さらなる態様において、抗体は全身投与または非経口投与される。特定の態様において、抗体は、静脈内、皮内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、髄腔内、または局所投与される。他の態様において、1つまたは1つ超のタイプの二重機能抗glycPD-L1抗体を、それを必要とする対象に同時投与してもよい。抗体の同時投与は、1つの抗体を、別の抗体の前、後、または同時に投与することを伴いうる。
【0037】
一態様において、がんまたは腫瘍を有する、特にがんまたは腫瘍細胞表面にPD-L1を発現するがんまたは腫瘍を有する対象を処置する方法が提供される。そのような方法は、PD-L1とPD-1との相互作用を阻害または遮断するために、および免疫抑制を防止して、対象のエフェクターTリンパ球によるがんまたは腫瘍細胞の殺滅を促進するために、二重機能抗glycPD-L1抗体の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、STM073またはSTM108のキメラ形態もしくはヒト化形態、またはPD-L1への選択的結合に関してこれらの抗体の1つもしくは両方と競合する抗体である。
【0038】
いくつかの態様において、方法は、抗glycPD-L1抗体による処置を受けている対象に、少なくとも第2の抗がん治療または薬物を投与することを含む。第2の抗がん治療は、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法を構成しうるが、これらに限定されるわけではない。第2の抗がん剤はまた、限定されないと意図され、医師、当技術分野における通常の知識を有する医学の専門家(例えば、腫瘍学者)が実践的にまたは経験的に決定することができる。当業者によって認識されるように、少なくとも第2の抗がん治療または薬物の投与は、二重機能抗glycPD-L1抗体の投与の前、後、または同時に行われうる。
【0039】
別の態様において、がんを有する患者が、PD-1へのPD-L1の結合を遮断する薬剤による処置によって恩典を受ける可能性がある(すなわち、処置の候補である)か否かを決定する方法が提供され、方法は、本明細書において記述される抗体を使用して、患者のがん細胞の試料に由来する細胞におけるグリコシル化PD-L1の存在に関して試験することを含み、患者のがん細胞への抗体の結合が検出される場合、患者が治療の候補であることが示される。方法は、対象のがん細胞が、グリコシル化PD-L1タンパク質の発現に関して陽性であることが見出される場合、PD-1へのPD-L1の結合を防止する薬剤の有効量を患者に投与することをさらに含みうる。一実施形態において、PD-1へのPD-L1の結合を防止する薬剤は、抗glycPD-L1抗体、好ましくは二重機能抗glycPD-L1抗体、抗PD-1抗体、またはその組み合わせである。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体および/または抗PD-1抗体は、別の抗がん剤または治療薬と併用して投与される。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、本明細書において記述される抗体などのも別の抗glycPD-L1抗体と併用して投与される。一実施形態において、方法はさらに、患者からがん細胞試料を得ることを伴う。
【0040】
なお別の態様において、生物試料中のPD-L1タンパク質のグリコシル化、N-連結グリコシル化、またはN-グリコシル化を評価するための方法であって、PD-L1含有試料に、本明細書において記述される抗体を接触させることを含む、方法が提供される。いくつかの態様において、方法は、in vitroの方法またはアッセイである。ある特定の態様において、生物試料は、細胞試料、組織試料、体液(例えば、血漿、血清、血液、尿、喀痰、リンパ、腹水、腹腔内液、脳脊髄液、およびその他)である。特定の実施形態において、試料は、細胞試料、またはがんもしくは腫瘍を有する対象から得た腫瘍もしくはがんの細胞試料である。そのようながんまたは腫瘍細胞試料は、特に、グリコシル化PD-L1が対象のがんまたは腫瘍細胞上に存在すれば、細胞が記述の抗glycPD-L1抗体による処置に関して適切な標的である可能性があることを決定するために、本明細書において記述される二重機能抗glycPD-L1抗体を使用してがんまたは腫瘍細胞表面上のグリコシル化PD-L1に関してアッセイしてもよい。
【0041】
別の態様において、抗体を作製する方法であって、グリコシル化PD-L1ポリペプチド(例えば、ヒトPD-L1のN35、N192、N200、またはN219位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含むヒトPD-L1の少なくとも7つの連続したアミノ酸の断片を含むポリペプチドであって、PD-L1のN35、N192、N200、またはN219位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されているポリペプチド)を対象(例えば、動物)に投与することと、対象から抗体を単離することとを含む方法が提供される。例として、動物は、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、またはヒトでありうる。ある特定の態様において、方法はさらに、抗体のCDRを同定することと、当技術分野で公知の方法および技法を使用して、CDR周囲の配列(すなわち、フレームワーク配列)をヒト化して、ヒト化抗体を産生することとを含む。なおさらなる態様において、方法は、ヒト化抗体を組み換え発現させることを含む。このため、さらなる実施形態において、前述の方法によって産生された単離抗体が提供される。このため、いくつかの実施形態において、非グリコシル化PD-L1と比較して、実施形態のポリペプチド(例えば、ヒトPD-L1のN35、N192、N200、またはN219位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含むヒトPD-L1の少なくとも7つの連続したアミノ酸の断片を含むポリペプチドであって、PD-L1のN35、N192、N200、またはN219位に対応する前記アミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されているポリペプチド)のコンフォメーションエピトープなどのエピトープに選択的に結合する単離抗体が提供される。別の態様において、免疫原性の抗原として実施形態のポリペプチド(例えば、グリコシル化PD-L1ポリペプチド)の有効量を対象に投与することを含む、対象を免疫して免疫応答、例えば抗原に対する抗体応答を生じさせる方法が提供される。
【0042】
特定の実施形態において、本発明は、それぞれが、グリコシル化PD-L1の他の抗原結合ドメインのエピトープと重なり合わないエピトープに結合する2つの異なる抗原結合ドメインを有し、少なくとも1つの結合ドメイン(およびある特定の実施形態において、両方の結合ドメイン)が、例えば本明細書において記載されるグリコシル化部位の1つまたは複数を含むエピトープに結合することによって、PD-L1のグリコシル化形態に優先的に結合する、二重パラトープ性抗体を作製する方法を提供する。これらの抗体は、細胞表面タンパク質に架橋して、内在化、リソソーム輸送、および分解を促進することができる。そのような二重パラトープ性抗体は、当技術分野で公知の、および同時係属中の仮出願番号62/361,298号に記載のスクリーニング方法を使用して、PD-L1の非グリコシル化形態と比較してグリコシル化PD-L1タンパク質に優先的に結合する抗体に関してスクリーニングすること、好ましくは1つまたは両方が非グリコシル化形態と比較してPD-L1のグリコシル化形態に優先的に結合する、グリコシル化PD-L1の重なり合わないエピトープに結合する2つの抗体を同定することによって作製することができる。グリコシル化含有エピトープ、または抗体がグリコシル化PD-L1に優先的に結合する本明細書において記述されるエピトープのいずれかに対する抗体を使用することができる。2つの抗原結合ドメインを、抗体分子において、例えばDimasi et al., J. Mol. Biol., 393:672-692 (2009)に記述されるように整列させることができる。特定の実施形態において、抗原結合ドメインの1つを、一本鎖Fvのフォーマットとなるように操作し、次にこれを、例えばペプチドリンカーを介して、他の抗原結合ドメインまたはCH3ドメインのC末端を有する抗体の重鎖および/または軽鎖のN末端に連結する。
【0043】
別の態様において、本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体、特に、グリコシル化PD-L1への結合後に有効な内在化活性を示す抗体を、抗新生物薬および薬剤に化学的に連結し、本明細書において記述および例示される抗glycPD-L1抗体-薬物コンジュゲートを産生する、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。実施形態において、抗glycPD-L1 MAb ADCは、腫瘍またはがん細胞の殺滅において、およびがんを有する対象を処置するための抗新生物治療において非常に有効である。実施形態において、ADCの抗glycPD-L1抗体成分は、二重特異性、多重特異性、二重パラトープ性、もしくは多重パラトープ性抗体、またはその抗原結合部分である。他の実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、本明細書においてさらに記述されるように、抗分裂剤、例えばメイタンシン誘導体、例えばDM1もしくはDM4などのメイタンシノイド、またはチューブリン重合化アウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチンE(MMAE)、もしくはモノメチルアウリスタチンF(MMAF)に化学的に連結される。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体に対するリンカーは、細胞外液で安定であるが、ADCが腫瘍またはがん細胞の中に入るとカテプシンによって切断され、このようにしてMMAEまたは他の毒素薬物の抗分裂メカニズムを活性化する。一実施形態において、ADCの抗体成分は、本明細書において記述されるSTM073 MAbまたはSTM108 MAbである。一実施形態において、STM108 MAb含有ADC(STM108-ADC)は、切断可能リンカーを介してMMAEに化学的に連結される。特定の実施形態において、STM108-ADCは、STM108 MAbがそのC領域におけるシステイン残基を介してマレイミドおよびカプロン酸(MC)結合基に化学的に連結され、これにバリン(Val)およびシトルリン(Cit)からなる「vc」などのカテプシン切断可能なリンカーが化学的に連結され、これにスペーサー「PAB」、すなわちパラアミノ安息香酸が化学的に結合され、これにMMAE細胞毒素が化学的に連結される構造を含み、このようにして、その成分構造STM108-MC-vc-PAB-MMAEによって示されるADCを産生する。
【0044】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本明細書において記述される実施形態の特定の態様を限定することなくさらに証明するために含める。本特許または本出願のファイルは、カラー表示の少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を含むこの特許または特許出願公報のコピーは、要請に応じ、必要な料金を支払うことによって、当局によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1-1】PD-L1は、がん細胞においてグリコシル化されている。1A.原発性乳がん患者試料におけるPD-L1タンパク質の発現。代表的な乳がん患者試料中のPD-L1のウェスタンブロット分析。1B.4種の代表的な乳がん細胞株、4種の黒色腫細胞株、3種の肺がん細胞株、および3種の結腸がん細胞株におけるPD-L1のウェスタンブロット分析。1C.A431細胞のshCTRLおよび独立した2つのshPD-L1安定クローンにおけるPD-L1発現のウェスタンブロット分析。PD-L1を、shPD-L1#5クローンに一過性にトランスフェクトした。D.PNGアーゼF処置の存在下または非存在下での、精製PD-L1タンパク質の糖タンパク質染色。クーマシーブルー染色パネルは、PD-L1タンパク質の全量を表す。レーン4および5に現れる上のバンドは、PNGアーゼFのローディングに由来する。(-)対照、非糖タンパク質の対照;(+)対照、糖タンパク質の対照。図において、黒丸は、グリコシル化PD-L1を示し、黒の矢印は、非グリコシル化PD-L1を示す。
図1-2】PD-L1は、がん細胞においてグリコシル化されている。E.PD-L1-GFP、HA-PD-L1、およびPD-L1-Flagタンパク質のグリコシル化パターン。細胞溶解物をPNGアーゼFおよびEndoHによって処置して、ウェスタンブロットによって分析した。F.GFPタグPD-L1完全長(WT)、細胞外ドメイン(ECD)、または細胞内ドメイン(ICD)を、293T細胞において一過性に発現させた。次に細胞を、5μg/mlツニカマイシン(TM)の存在下または非存在下で終夜処置した。PD-L1のタンパク質発現を、ウェスタンブロットを使用して調べた。G.本明細書において記述される実験的試験において使用される代表的なPD-L1タンパク質発現構築物の概略図であり、完全長のPD-L1タンパク質およびその成分である細胞外ドメイン(ECD)、細胞内ドメイン(ICD)、シグナルペプチド(SP)、膜貫通ドメイン(TM)を示す。概略図において、PD-L1のECDドメインにおける4つのN-グリコシル化部位(NXTモチーフ)を赤色で示す。数字は、PD-L1ポリペプチドにおけるアミノ酸残基の位置を示す。H.PD-L1 WTおよびPD-L1のグリコシル化変異体(NQ変異体)のタンパク質発現パターンのウェスタンブロット分析。レーン14は、ツニカマイシン(TM)によって終夜処置した非グリコシル化、野生型(WT)PD-L1を示す。図において、黒丸は、グリコシル化PD-L1を示し、黒の矢印は、非グリコシル化PD-L1を示す。
図2-1】グリコシル化はPD-L1発現を安定化させ、がん細胞関連免疫抑制にとって必要である。AおよびB:PD-L1-Flag発現293T細胞におけるPD-L1タンパク質のウェスタンブロット分析の結果。細胞を、20mMシクロヘキシミド(CHX)(A)および5μM MG132、プロテオソーム阻害剤(B)によって表記の間隔で処置し、ウェスタンブロットによって分析した。PD-L1タンパク質の強度を、濃度計を使用して定量した。C.(A)に記述されるように決定した、PD-L1 WT、ならびにPD-L1グリコシル化変異体N35Q、N192Q、N200Q、N219Q、および4NQのタンパク質安定性のウェスタンブロット分析。ウェスタンブロット分析の結果の下は、濃度測定による、PD-L1 WTおよび4つのNQ変異体のタンパク質半減期の定量である。D.TMまたは抗PD-L1抗体処置を行った、または行っていないPD-1とPD-L1タンパク質との相互作用。共焦点画像は、PD-L1 WT発現293T細胞の膜における結合したPD-1/Fc融合タンパク質を示す(左の染色パネル)。PD-L1/PD-1相互作用アッセイにおける結合したPD-1タンパク質の定量(右のプロット)。細胞を、(D)に示す実験の前にMG132によって前処置した。図において、黒丸は、グリコシル化PD-L1を示し;矢印は、非グリコシル化PD-L1を示す;TM:ツニカマイシン;は、スチューデントt検定によって統計学的に有意であることを示す。エラーバーは全て、3回の独立した実験の平均値±SDとして表記する。
図2-2】グリコシル化はPD-L1発現を安定化させ、がん細胞関連免疫抑制にとって必要である。E.PD-1と、PD-L1 WTまたは4NQタンパク質との結合親和性。PD-L1 WTまたは4NQ発現293T細胞の溶解物を、PD-1/Fc融合タンパク質の存在下または非存在下でインキュベートした。次に、PD-L1タンパク質を抗Flag抗体と共に免疫沈降させ、ウェスタンブロットによって分析した。F.PD-L1 WTまたは4NQ発現293T細胞におけるPD-1とPD-L1との相互作用を測定する同時免疫沈降。G.Jurkat T細胞およびPD-L1 WTまたは4NQ発現細胞の同時培養における可溶性IL-2発現レベル。細胞を、(E)、および(G)に示す実験の前にMG132によって前処置した。図において、黒丸は、グリコシル化PD-L1を示し;矢印は、非グリコシル化PD-L1を示す;TM:ツニカマイシン;は、スチューデントt検定によって統計学的に有意であることを示す。エラーバーは全て、3回の独立した実験の平均値±SDとして表記する。
図3】がん細胞におけるPD-L1タンパク質の発現。A.肺がん細胞におけるPD-L1のウェスタンブロット分析。B.結腸がん細胞におけるPD-L1のウェスタンブロット分析。C.乳がん細胞におけるPD-L1のウェスタンブロット分析。D.卵巣がん細胞におけるPD-L1のウェスタンブロット分析。黒丸=グリコシル化PD-L1;矢印=非グリコシル化PD-L1。
図4】PD-L1は、がん細胞においてグリコシル化されている。A.異なる抗PD-L1抗体を使用した、がん細胞におけるPD-L1のウェスタンブロット分析。異なる抗体を使用してPD-L1の発現を分析するために、4種のBLBC細胞株、HCC1937、SUM149、MB-231、およびBT20、ならびに2種の非BLBC細胞株、MB-483およびMB-474を選択した。B.MDA-MB-231およびA431細胞のshCTRLおよび独立した2つのshPD-L1安定クローンにおけるPD-L1のウェスタンブロット分析。C.Flag-PD-L1およびPD-L1のshRNAに対する二重発現構築物の概略図。D.MDA-MB-231およびA431細胞におけるPD-L1発現のグリコシル化パターン。細胞溶解物を、PNGアーゼFによって処置して、ウェスタンブロットによって分析した。黒丸=グリコシル化PD-L1;矢印=非グリコシル化PD-L1。
図5-1】グリコシル化および非グリコシル化PD-L1タンパク質の発現。A.ツニカマイシン(TM)処置細胞におけるPD-L1-Myc、PD-L1-Flag、およびHA-PD-L1タンパク質のウェスタンブロット分析。B.ツニカマイシン(TM)処置または無処置細胞におけるPD-L1-GFP-WT、PD-L1-GFP-ECD、およびPD-L1-GFP-ICDタンパク質のウェスタンブロット分析。C.ツニカマイシン(TM)処置細胞におけるPD-L1-Myc、PD-L1-Flag、HA-PD-L1、PD-L1-GFP-WT、PD-L1-GFP-ECD、およびPD-L1-GFP-ICDタンパク質のウェスタンブロット分析。グリコシル化PD-L1タンパク質(黒色の棒)または非グリコシル化PD-L1タンパク質(赤色の棒)の強度を、濃度定量(ウェスタンブロット分析の下の棒グラフ)によって決定した。細胞溶解物を、PNGアーゼFまたはO-グリコシダーゼの存在下または非存在下で処置して、ウェスタンブロットによって分析した。黒丸=グリコシル化PD-L1;矢印=非グリコシル化PD-L1。ツニカマイシンは、タンパク質のN-連結グリコシル化を阻害するヌクレオシド抗生物質である。
図5-2】グリコシル化および非グリコシル化PD-L1タンパク質の発現。D.上記の(C)で示した棒グラフから得たグリコシル化PD-L1(黒色の棒)または非グリコシル化PD-L1タンパク質(赤色の棒)の強度の平均値。エラーバーは、標準偏差(SD)を表す。E.PD-L1発現HEK293T細胞におけるPD-L1タンパク質のグリコシル化パターン。細胞溶解物を、PNGアーゼFまたはO-グリコシダーゼの存在下または非存在下で処置して、ウェスタンブロットによって分析した。黒丸=グリコシル化PD-L1;矢印=非グリコシル化PD-L1。ツニカマイシンは、タンパク質のN-連結グリコシル化を阻害するヌクレオシド抗生物質である。
図6】PD-L1タンパク質のN-グリコシル化部位。異なる種からのPD-L1アミノ酸配列の配列アライメント。4つのNXTモチーフ、N35、N192、N200、およびN219を四角で囲んで赤色で示し、2つの非NXTモチーフ、N63およびN204を緑色で示す。赤色の四角=保存されたNXTモチーフ。図6A:コンセンサス配列(配列番号74);Q9NZQ7_ヒト(配列番号75);Q9EP73_マウス(配列番号76);D4AE25_ラット(配列番号77);C5NU11_ウシ(配列番号78);Q4QTK1_ブタ(配列番号79);およびF7DZ76_ウマ(配列番号80)。図6B:コンセンサス配列(配列番号94);Q9NZQ7_ヒト(配列番号95);Q9EP73_マウス(配列番号96);D4AE25_ラット(配列番号97);C5NU11_ウシ(配列番号98);Q4QTK1_ブタ(配列番号99);およびF7DZ76_ウマ(配列番号100)。
図7-1】N-グリコペプチドのLC-MS/MSに基づく同定。HEK293細胞からのPD-L1の4つのN-グリコシル化部位、N35(AおよびE)、N192(BおよびF)、N200(CおよびG)、ならびにN219(DおよびH)のそれぞれに対応するN-グリコペプチドのLC-MS/MSに基づく同定。LC-MSプロファイル(A~D)は、糖形態の代表的なサブセットが検出されるときの、溶出時間(図に表示)の期間に平均したスペクトルとして示す。それぞれのN-グリコシル化部位に関して、そのペプチド配列を定義するbおよびyイオンと共に、y1イオン(N-グリコシル化Asnに付着したGlcNAcを有するトリプシンペプチド骨格)の検出に基づくその同定を例示するために、1つの代表的なHCD MSスペクトル(E~H)を示す。グリカン(挿入図を参照されたい)に関して使用される略図の記号は、Consortium for Functional Glycomicsによって推奨される標準的な表示に従う:追加のHexおよびHexNAは、フコシル化されているかまたはされていないいずれかのコアでありうる、トリマンノシルコア(Man-GlcNAc)からのlacNAc(Gal-GlcNAc)またはlacdiNAc(GalNAc-GlcNAc)伸長部のいずれかとして暫定的に割付した。図7E~7Hに示される配列をそれぞれ、配列番号81~84に記載する。
図7-2】N-グリコペプチドのLC-MS/MSに基づく同定。HEK293細胞からのPD-L1の4つのN-グリコシル化部位、N35(AおよびE)、N192(BおよびF)、N200(CおよびG)、ならびにN219(DおよびH)のそれぞれに対応するN-グリコペプチドのLC-MS/MSに基づく同定。LC-MSプロファイル(A~D)は、糖形態の代表的なサブセットが検出されるときの、溶出時間(図に表示)の期間に平均したスペクトルとして示す。それぞれのN-グリコシル化部位に関して、そのペプチド配列を定義するbおよびyイオンと共に、y1イオン(N-グリコシル化Asnに付着したGlcNAcを有するトリプシンペプチド骨格)の検出に基づくその同定を例示するために、1つの代表的なHCD MSスペクトル(E~H)を示す。グリカン(挿入図を参照されたい)に関して使用される略図の記号は、Consortium for Functional Glycomicsによって推奨される標準的な表示に従う:追加のHexおよびHexNAは、フコシル化されているかまたはされていないいずれかのコアでありうる、トリマンノシルコア(Man-GlcNAc)からのlacNAc(Gal-GlcNAc)またはlacdiNAc(GalNAc-GlcNAc)伸長部のいずれかとして暫定的に割付した。図7E~7Hに示される配列をそれぞれ、配列番号81~84に記載する。
図7-3】N-グリコペプチドのLC-MS/MSに基づく同定。HEK293細胞からのPD-L1の4つのN-グリコシル化部位、N35(AおよびE)、N192(BおよびF)、N200(CおよびG)、ならびにN219(DおよびH)のそれぞれに対応するN-グリコペプチドのLC-MS/MSに基づく同定。LC-MSプロファイル(A~D)は、糖形態の代表的なサブセットが検出されるときの、溶出時間(図に表示)の期間に平均したスペクトルとして示す。それぞれのN-グリコシル化部位に関して、そのペプチド配列を定義するbおよびyイオンと共に、y1イオン(N-グリコシル化Asnに付着したGlcNAcを有するトリプシンペプチド骨格)の検出に基づくその同定を例示するために、1つの代表的なHCD MSスペクトル(E~H)を示す。グリカン(挿入図を参照されたい)に関して使用される略図の記号は、Consortium for Functional Glycomicsによって推奨される標準的な表示に従う:追加のHexおよびHexNAは、フコシル化されているかまたはされていないいずれかのコアでありうる、トリマンノシルコア(Man-GlcNAc)からのlacNAc(Gal-GlcNAc)またはlacdiNAc(GalNAc-GlcNAc)伸長部のいずれかとして暫定的に割付した。図7E~7Hに示される配列をそれぞれ、配列番号81~84に記載する。
図7-4】N-グリコペプチドのLC-MS/MSに基づく同定。HEK293細胞からのPD-L1の4つのN-グリコシル化部位、N35(AおよびE)、N192(BおよびF)、N200(CおよびG)、ならびにN219(DおよびH)のそれぞれに対応するN-グリコペプチドのLC-MS/MSに基づく同定。LC-MSプロファイル(A~D)は、糖形態の代表的なサブセットが検出されるときの、溶出時間(図に表示)の期間に平均したスペクトルとして示す。それぞれのN-グリコシル化部位に関して、そのペプチド配列を定義するbおよびyイオンと共に、y1イオン(N-グリコシル化Asnに付着したGlcNAcを有するトリプシンペプチド骨格)の検出に基づくその同定を例示するために、1つの代表的なHCD MSスペクトル(E~H)を示す。グリカン(挿入図を参照されたい)に関して使用される略図の記号は、Consortium for Functional Glycomicsによって推奨される標準的な表示に従う:追加のHexおよびHexNAは、フコシル化されているかまたはされていないいずれかのコアでありうる、トリマンノシルコア(Man-GlcNAc)からのlacNAc(Gal-GlcNAc)またはlacdiNAc(GalNAc-GlcNAc)伸長部のいずれかとして暫定的に割付した。図7E~7Hに示される配列をそれぞれ、配列番号81~84に記載する。
図8-1】PD-L1グリコシル化は、PD-L1のタンパク質の安定性および免疫抑制機能を変化させる。A~B.PD-L1-Flag発現HEK293T細胞におけるPD-L1タンパク質のウェスタンブロット分析。ツニカマイシンの存在下または非存在下で処置した細胞を、20mMシクロヘキシミド(CHX)(A)および5μM MG132(B)によって、表記の間隔(時間)で処置し、ウェスタンブロットによって分析した。C.ツニカマイシンによって処置したかまたは処置していない、および20mMシクロヘキシミド(CHX)によって指定の時間処置したA431細胞におけるPD-L1のウェスタンブロット分析。下のパネルは、非グリコシル化PD-L1タンパク質と比較したグリコシル化PD-L1タンパク質の濃度定量を示す。D.PD-L1/PD-1相互作用アッセイの概略図。PD-L1発現腫瘍クローンを、PD-1を過剰発現するJurkatT細胞と同時培養した。Jurkat細胞からのIL-2産生を、例えば以下の実施例1、4、および5に記載されるようにELISAを使用して測定した。A~Cにおいて、黒丸はグリコシル化PD-L1であり;矢印は非グリコシル化PD-L1である。
図8-2】PD-L1グリコシル化は、PD-L1のタンパク質の安定性および免疫抑制機能を変化させる。E.A431細胞における膜局在PD-L1 WTまたは4NQタンパク質を示す共焦点画像。F.PD-L1 WTまたはPD-L1 4NQタンパク質の膜局在。膜局在PD-L1 WTまたは4NQタンパク質のビオチン化後、ビオチン化タンパク質を、ストレプトアビジンアガロースによってプルダウンした。膜局在PD-L1 WTまたは4NQタンパク質をウェスタンブロットによって調べた。試料の濃度定量から得た膜結合PD-L1 WTまたは4NQタンパク質の比率を、ブロットの下に示す。G.PD-L1 WT、N35Q、N192Q、N200Q、N219Q、または4NQ発現細胞におけるPD-1およびPD-L1タンパク質の相互作用。エラーバーは全て、3回の独立した実験の平均値±SDとして表記する。H.PD-1/PD-L1を介したT細胞/腫瘍細胞相互作用後のIL-2産生をそれぞれ検出するように設計したELISAの概略図である。PD-L1発現腫瘍クローンを、PD-1を過剰発現するJurkatT細胞と同時培養した。Jurkat細胞からのIL-2産生を、例えば以下の実施例1、4、および5に記載されるようにELISAを使用して測定した。
図9-1】PD-L1のグリコシル化は、がん細胞関連免疫抑制にとって必要である。A.BT549細胞上で発現した膜結合PD-1およびPD-L1 WTまたはPD-L1 4NQ変異体タンパク質の相互作用を測定するフローサイトメトリー。細胞を実験前にMG132によって前処置した。B.最後の時点でのPD-L1とPD-1の間の動的相互作用を示す低速度撮影顕微鏡画像。PD-L1 WTまたは4NQ発現細胞の赤色蛍光(核限定RFP)および緑色蛍光(緑色蛍光標識PD-1/Fcタンパク質)融合画像(20倍)。(B)の右に示す動力学グラフは、毎時間の時点でBT549細胞上で発現したPD-L1 WTまたはPD-L1 4NQタンパク質へのPD-1/Fcタンパク質の定量的結合を示す。C.BT549細胞上で発現したPD-L1 WTまたは4NQ PD-L1タンパク質を伴うT細胞媒介腫瘍細胞殺滅(TTK)アッセイ。カスパーゼ3/7基質の存在下で96時間での、PD-L1 WTまたは4NQ発現細胞、およびPD-1発現T細胞同時培養物の、代表的な赤色蛍光(核限定RFP)および/または緑色蛍光(NucView(商標)488カスパーゼ3/7基質)位相融合画像(10倍)。T細胞を抗CD3抗体(100ng/ml)およびIL-2(10ng/ml)によって活性化した。緑色蛍光細胞は死細胞として計数した。PD-L1 WTまたはPD-L1 4NQタンパク質に関連する死細胞の総細胞に対する定量比を、画像の右側の棒グラフで示す。
図9-2】PD-L1のグリコシル化は、がん細胞関連免疫抑制にとって必要である。D.PD-L1 WTまたはPD-L1 4NQ変異体タンパク質のいずれかを発現する4T1細胞の注入に由来する腫瘍を有するBalb/cマウスにおける腫瘍の増殖。4T1-luc細胞のin vivoでの腫瘍増殖を、IVIS100(Dの左側)を使用する生物発光イメージングによって示した。Dの右側:PD-L1 4NQタンパク質と比較して、PD-L1 WTを発現する4T1細胞に由来する腫瘍を有するマウスにおける、腫瘍体積を示すボックスプロットおよび腫瘍の大きさを示す写真。腫瘍をエンドポイントで測定して解剖した。1群あたりマウスn=8(右)。E.CD8+CD3+T細胞集団におけるIFNγの細胞内サイトカイン染色。二元配置ANOVAによって有意性を決定し、p<0.05および**P<0.001;1群あたりマウスn=7であった。は、スチューデントのt検定によって統計学的に有意であることを示す。エラーバーは全て、独立した3回の実験の平均値±SDとして表記する。F.STM073 Mab(「73」)100μg、またはIgG対照100μgによって処置した、PD-L1 WT(グリコシル化)タンパク質を発現する4T1細胞に由来する腫瘍を有するマウスにおける腫瘍体積を示す箱ひげ図である。エンドポイントで、腫瘍を測定し、摘出した。1群あたりマウスn=7。STM073による処置によって、腫瘍体積の低減が起こった。
図10】PD-L1タンパク質のグリコシル化および非グリコシル化形態の概略図およびウェスタンブロット分析。A.野生型のグリコシル化PD-L1タンパク質(PD-L1 WT)、およびそれぞれがPD-L1タンパク質の4つのN-グリコシル化部位のうち1つのグリコシル化アミノ酸残基と3つの非グリコシル化アミノ酸残基とを有する、4つのPD-L1タンパク質変種(N35/3NQ;N192/3NQ;N200/3NQ;およびN219/3NQ)の概略図。黒色で示したアミノ酸は、グリコシル化残基を表し、赤色で示したアミノ酸部位は、変種PD-L1タンパク質においてグリコシル化されない。B.PD-L1タンパク質のN35/3NQ、N192/3NQ、N200/3NQ、およびN219/3NQ形態を発現するBT549の安定なクローンを作製した。抗glycPD-L1抗体のいくつかは、ウェスタンブロット分析によって決定した場合に、他と比較してある特定のPD-L1グリコシル化変種により大きいレベルの結合を示し、それらのMAbが部位特異的であることを証明した。Bに示すように、例えばMAb STM073は、N35/3NQ、N192/3NQおよびN200/3NQ PD-L1変種を認識して結合し、このモノクローナル抗体がグリコシル化PD-L1のN35、N192、およびN200領域に結合したことを示している。C.肝がん細胞株の溶解物に結合したSTM073 MAbのウェスタンブロットの結果を示す。
図11】抗glycPD-L1抗体は、T細胞による腫瘍細胞殺滅を増強する。STM073 MAbを、実施例10に記述される細胞傷害アッセイにおいて異なる量で使用して、腫瘍細胞(BT549)に対するPBMC由来T細胞の細胞傷害性を評価した。図11は、MAb STM073によって処置したBT549(RFP PD-L1(WT))細胞の細胞死をリアルタイムで示す。図11において、下のプロットした線(塗りつぶしたオレンジ色の菱形)は、対照(PBMCからのT細胞なし)を表し、塗りつぶした紫色の逆三角は、抗体なし対照を表し、塗りつぶした緑色の三角は、アッセイで使用したSTM073 MAbの10μg/mlを表し、塗りつぶした赤色の四角は、アッセイで使用したSTM073 MAbの20μg/mlを表し、および塗りつぶした青色の丸は、アッセイで使用したSTM073 Mabの40μg/mlを表す。図11から観察されるように、PD-L1を有する腫瘍細胞の用量に比例する経時的な細胞殺滅が証明される。
図12-1】結合アッセイ。図12A~12Cは、実施例10において記述される結合アッセイの結果を示し、STM073 MAb(A)およびSTM108 MAb(B)が、アッセイ対照、すなわちPD-1/Fcなし、Abなし、mIgG Ab対照(C)と比較して、WT PD-L1を発現するBT549標的細胞へのPD-1の結合を用量依存的に遮断することが認められる。
図12-2】結合アッセイ。図12A~12Cは、実施例10において記述される結合アッセイの結果を示し、STM073 MAb(A)およびSTM108 MAb(B)が、アッセイ対照、すなわちPD-1/Fcなし、Abなし、mIgG Ab対照(C)と比較して、WT PD-L1を発現するBT549標的細胞へのPD-1の結合を用量依存的に遮断することが認められる。
図13】抗glycPD-L1抗体によるPD-L1の内在化。図13は、無血清培地中で一晩培養し、本明細書において記述される抗glyPD-L1抗体(10μg)によって2日間処置したA431細胞からのPD-L1タンパク質のウェスタンブロットの結果を示す。ブロットの短いおよび長い曝露を表す。チューブリンを対照として表す。「73」と指定される線は、STM073 MAbによるA431細胞の処置を表し、対照による処置(IgGのレーン)と比較してSTM073処置細胞において減少したPD-L1レベルを示す。結果は、本明細書において記述されるSTM073などの抗glycPD-L1抗体によるPD-L1の内在化および分解の促進または増強を支持する
図14-1】抗glycPD-L1抗体の細胞内在化の可視化。STM073およびSTM108 MAbを標識して異なるがん細胞株と共にインキュベートし、実施例11において記述されるIncuCyte ZOOM(登録商標)機器を使用して内在化を可視化した。図14A:STM073と共にインキュベートした野生型BT549細胞(ヒト乳管癌、乳がん細胞株);図14B:STM073と共にインキュベートしたPD-L1 WT(グリコシル化)を発現するように改変されているBT549細胞。
図14-2】抗glycPD-L1抗体の細胞内在化の可視化。STM073およびSTM108 MAbを標識して異なるがん細胞株と共にインキュベートし、実施例11において記述されるIncuCyte ZOOM(登録商標)機器を使用して内在化を可視化した。図14C:STM073と共にインキュベートしたNCI-H226細胞(ヒト肺がん細胞株、扁平上皮中皮腫);図14D:STM073と共にインキュベートしたMCF-7細胞(ヒト乳がん細胞株、腺癌)。
図14-3】抗glycPD-L1抗体の細胞内在化の可視化。STM073およびSTM108 MAbを標識して異なるがん細胞株と共にインキュベートし、実施例11において記述されるIncuCyte ZOOM(登録商標)機器を使用して内在化を可視化した。図14E:STM108と共にインキュベートしたPD-L1 WT(グリコシル化)を発現するBT549細胞。
図15】抗glycPD-L1抗体による結合後のPD-L1の内在化および分解。図15A~15Cは、二重機能抗glycPD-L1抗体と共にインキュベートしたPD-L1発現細胞の生細胞イメージングの結果を示す。図15A~15Cにおいて、抗PD-L1抗体は、赤色の蛍光色素であるpHrodo(商標)レッド(スクシンイミジルエステル(pHrodo(商標)レッド、SE)(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)にコンジュゲートしたSTM108 MAbである。pHrodo(商標)レッド色素コンジュゲートは、細胞外では非蛍光であるが、ファゴソームにおいて明るい赤色の蛍光を発し、このため生体粒子の食作用から受容体の内在化に及ぶ研究の有用な試薬となっている。緑色の染色は、LysoTracker(登録商標)グリーンDND-26によって染色された細胞を反映し、この色素は生細胞イメージングを介して撮像される生細胞における酸性区画(リソソーム)を染色する細胞透過性の緑色色素である。図15Aは、第1の時点(時間0)で、矢印によって示される細胞の強い赤色の細胞内染色によって表されるように、STM108が細胞に内在化されることを示している。図15Bは、図15Aで表した同じ細胞において、図15Aの時点の2分後の時点で細胞内赤色染色が弱くなったことを示す。図15Cは、図15Aにおける時点の4分後での赤色の細胞内染色がないことを示し、このことは、細胞内部でのSTM108抗体および/または抗体-抗原複合体の分解を反映している。
図16-1】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。図16A~16Lは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。図16Aおよび16Bは、以下の抗体と共にインキュベーション後の末梢血からの非活性化総T細胞の画像を示す:マウスIgG抗体対照(図16A);非内在化抗glycPD-L1 MAb STM004(図16B)。図16Aおよび16Bは、試験した抗体のいずれも、非活性化総T細胞に内在化しなかったことを示している。
図16-2】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。図16Cおよび16Dは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。図16Cおよび16Dは、以下の抗体と共にインキュベーション後の末梢血からの非活性化総T細胞の画像を示す:二重機能抗glycPD-L1 MAb STM073(図16C);および二重機能抗glycPD-L1抗体STM108(図16D)。図16Cおよび16Dは、試験した抗体のいずれも、非活性化総T細胞に内在化しなかったことを示している。
図16-3】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。図16A~16Lは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。図16Eおよび16Fは、以下の抗体と共にインキュベーション後の末梢血由来の活性化総T細胞の画像を示す:マウスIgG抗体対照(図16E);非内在化STM004(図16F)。T細胞活性化に関して、総T細胞を抗CD3および抗CD28抗体(例えば、ThermoFisher Scientific,Rochester,NY)と1:1の比率で共有結合によりカップリングさせたビーズ、例えば不活性な超常磁性ビーズと混合した。図16Eおよび16Fは、試験した抗体のいずれについても、活性化総T細胞への内在化が実質的に観察されなかったことを示している。
図16-4】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。図16A~16Lは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。図16Gおよび16Hは、以下の抗体と共にインキュベーション後の末梢血由来の活性化総T細胞の画像を示す:二重機能STM073(図16G);および二重機能STM108(図16H)。T細胞活性化に関して、総T細胞を抗CD3および抗CD28抗体(例えば、ThermoFisher Scientific,Rochester,NY)と1:1の比率で共有結合によりカップリングさせたビーズ、例えば不活性な超常磁性ビーズと混合した。図16Gおよび16Hは、試験した抗体のいずれについても、活性化総T細胞への内在化が実質的に観察されなかったことを示している。
図16-5】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。図16A~16Lは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。図16Iおよび16Jは、以下の抗体と共にインキュベーション後のNCI-H226細胞(ヒト肺がん細胞株、扁平上皮中皮腫)の画像を示す:マウスIgG抗体対照(図16I);非内在化抗glycPD-L1抗体STM004(図16J)。図16Iおよび16Jは、赤色の細胞内染色によって証明されるように、二重機能の内在化STM073およびSTM108 MAbsが、対照抗体であるmIgG(図16I)および非内在化STM004 MAbと比較して、これらの細胞とのインキュベーション後にNCI-H226細胞に内在化されたことを示している。
図16-6】総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗PD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化。図16A~16Lは、二重機能抗glycPD-L1抗体がPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化することができるが、活性化または非活性化T細胞のいずれにも内在化しないことを示す細胞の画像を表す。図16Kおよび16Lは、以下の抗体と共にインキュベーション後のNCI-H226細胞(ヒト肺がん細胞株、扁平上皮中皮腫)の画像を示す:二重機能抗glycPD-L1 MAb STM073(図16K);および二重機能抗glycPD-L1 MAb STM108(図16L)。図16Kおよび16Lは、赤色の細胞内染色によって証明されるように、二重機能の内在化STM073およびSTM108 MAbsが、対照抗体であるmIgG(図16I)および非内在化STM004 MAbと比較して、これらの細胞とのインキュベーション後にNCI-H226細胞に内在化されたことを示している。
図17-1】抗glycPD-L1抗体-ADCの抗腫瘍有効性。図17A~17Dは、本明細書において記述される抗体-薬物コンジュゲート(STM108-ADC)を産生するためにMMAEにカップリングさせた二重機能抗glycPD-L1 MAb STM108を含むADCの有効性を、PD-L1発現および非PD-L1発現腫瘍細胞の殺滅に関して評価する、ならびに対照(IgGおよびSTM108 MAb単独)を注射した腫瘍を有する動物と比較して、STM108-ADCを、腫瘍を有する動物に注射後の腫瘍移植マウスにおける腫瘍体積の低減に関して評価する実験の結果を表す。図17Aは、異なる濃度のSTM108-ADC、すなわち「ADC108」(塗りつぶした黒四角)への曝露後のPD-L1のその発現をノックアウトするように改変されているMB231細胞(「MB231 PDL1 KO」)の%生存率と比較した、異なる濃度(nM)のSTM108-ADC(塗りつぶした黒丸)への曝露後のPD-L1発現MDA-MB231(ヒト乳癌細胞株)腫瘍細胞(「MB231」)の%生存率を示す。図17Bでは、MDA-MB231マウス乳がんモデルを使用し、MB231細胞に由来する腫瘍を移植した動物を、図17Bのグラフに示すように、IgG-MMAE対照(100μg);またはSTM108-ADC(「ADC」)の50μg、100μg、もしくは150μg;またはSTM108 MAbの100μgのいずれかによって処置した。STM108-ADC100μgを投与したマウス5匹中3匹、およびSTM108-ADCの150μgを投与したマウス5匹中4匹において、完全奏効(「CR」)が観察された。
図17-2】抗glycPD-L1抗体-ADCの抗腫瘍有効性。図17A~17Dは、本明細書において記述される抗体-薬物コンジュゲート(STM108-ADC)を産生するためにMMAEにカップリングさせた二重機能抗glycPD-L1 MAb STM108を含むADCの有効性を、PD-L1発現および非PD-L1発現腫瘍細胞の殺滅に関して評価する、ならびに対照(IgGおよびSTM108 MAb単独)を注射した腫瘍を有する動物と比較して、STM108-ADCを、腫瘍を有する動物に注射後の腫瘍移植マウスにおける腫瘍体積の低減に関して評価する実験の結果を表す。図17Cは、異なる濃度(nM)のSTM108-ADC、すなわち「ADC108」(白抜きの赤い四角)への曝露後の、PD-L1を天然に発現しない4T1細胞(「4T1」)の%生存率と比較して、異なる濃度(nM)のSTM108-ADC(白抜きの赤い丸)への曝露後の細胞表面上にヒトPD-L1を発現するように改変されている4T1乳癌細胞(「4T1 hPDL1」)の%生存率を示す。図17Dでは、4T1同系マウス乳がんモデルを使用し、動物(Balb/cマウス)に、細胞表面上にPD-L1を発現するように改変されている4T1乳癌細胞(「4T1 hPD-L1」)に由来する腫瘍を移植したか、またはBalb/cマウスに、細胞表面上にPD-L1を天然に発現しない非トランスフェクト4T1乳癌細胞(「4T1」)に由来する腫瘍を移植した。2つのタイプの4T1細胞に由来する腫瘍を有する動物を、図17Dのグラフに示すように、IgG-MMAE対照(100μg);またはSTM108 MAb(100μg)またはSTM108-ADC(100μg)のいずれかによって処置した。実施例14を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0046】
記載の実施形態の他の態様、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および例としての実施例から明らかになると予想される。
【0047】
腫瘍細胞で発現したプログラム死リガンド-1タンパク質(PD-L1)と、免疫エフェクター細胞、例えばT細胞上で発現したプログラム死-1タンパク質(PD-1)との間の細胞外相互作用は、腫瘍関連免疫逃避において顕著な影響を有する。抗PD-1または抗PD-L1抗体を使用する免疫チェックポイント遮断の臨床での成功にもかかわらず、PD-L1とPD-1との相互作用の基礎となる調節メカニズムおよび構造特徴は依然として不明のままである。本明細書において記述される知見によれば、PD-L1のN-連結グリコシル化は腫瘍細胞に存在するPD-L1タンパク質リガンドを安定化させ、同様にPD-1へのその結合を促進および増強し、それによってT細胞媒介免疫応答の抑制を促進することが証明されている。逆に、N-連結グリコシル化の異常または欠如、例えば腫瘍細胞上で発現したPD-L1ポリペプチドの部分的または完全な脱グリコシル化は、PD-L1/PD-1相互作用に有害な影響を及ぼし、例えば弱めまたは妨害し、腫瘍細胞上のPD-L1の内在化および分解を促進し、それによって免疫抑制を阻害して、エフェクターT細胞の細胞傷害活性および腫瘍細胞の殺滅を促進することが見出されている。加えて、その腫瘍が高度グリコシル化PD-L1を発現する患者の生存は不良であることから、グリコシル化PD-L1は、本明細書における知見に基づいて、がんの処置に関する有効な治療標的として認識される。本明細書において、がんを処置するために、グリコシル化PD-L1/PD-1相互作用を妨害し、腫瘍細胞表面上に発現するPD-L1を脱安定化させて、それによって免疫抑制を阻害し、腫瘍細胞に対するT細胞エフェクター機能を促進するために、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合して相互作用するがんの治療薬、例えば二重機能抗glycPD-L1抗体が提供および記述される。本明細書において記述される二重機能抗グリコシル化PD-L1抗体による腫瘍の処置は、PD-L1のグリコシル化形態に対して特異的ではない抗PD-L1抗体と比較して増強された免疫抑制阻害効果を提供する。実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、モノクローナル抗体であり、本明細書において「MAb」として示される。
【0048】
本明細書において、グリコシル化部位に対応するPD-L1の細胞外ドメイン(ECD)、特にPD-L1 ECDのN末端およびC末端部分におけるエピトープに結合する、またはあるいはそれらのグリコシル化部位を遮断もしくは隠すように結合する二重機能抗glycPD-L1抗体が提供される。PD-L1タンパク質においてグリコシル化されるアミノ酸は、図1Gに示されるようにその細胞外ドメインに存在し、本明細書における配列番号1において付番されるPD-L1の35、192、200、および219位に存在する。本知見に従って、本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体は、それらがPD-1へのPD-L1の結合を低減、遮断、または阻害し、同様にPD-L1内在化および分解を促進して腫瘍細胞に発現するPD-L1のレベルを低減させるという点において二重機能である。実施形態において、記述の二重機能抗glycPD-L1抗体は、非線形のコンフォメーションエピトープに結合する。加えて、理論に拘束されることを望まないが、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化アミノ酸を含むか、または三次元空間でグリコシル化アミノ酸に対して近位であるエピトープに結合し、そのようなグリコシル化アミノ酸は、PD-L1/PD-1相互作用に特に関係し、同様に腫瘍細胞の表面上のPD-L1の維持に関係していると考えられる。理論に拘束されないが、グリコシル化PD-L1のN末端のECD内のN35に関連するグリカン構造は、PD-1タンパク質によって認識および結合され、PD-1/PD-L1相互作用において有意な役割を有するグリコシル化PD-L1タンパク質の機能的構造または立体配置を構成しうる、またはそれに関与しうる。PD-L1 ECDのN末端領域における35位のアミノ酸を含むエピトープ、または35位に近位のエピトープに結合することによって、記述の二重機能抗glycPD-L1抗体は、PD-L1/PD-1相互作用に特に関係しうるグリコシル化PD-L1タンパク質の結合部位または領域を隠す。グリコシル化アミノ酸残基(N192、N200、およびN219)を含むPD-L1 ECDのC末端領域におけるアミノ酸に結合することによって、または結合を通して、隠すことによって、記述の二重機能抗glycPD-L1抗体は、腫瘍細胞の表面上のPD-L1の安定化に特に関係しうるグリコシル化PD-L1タンパク質の結合部位または領域を有効に隠し、それによってPD-L1内在化および分解を促進し、腫瘍細胞上のPD-L1のレベルを低減させる。
【0049】
本明細書において記述される二重機能抗glycPD-L1抗体は、PD-L1 ECDのNおよびC末端領域の両方におけるアミノ酸、特に非線形のコンフォメーションエピトープ内のアミノ酸を含むまたは隠すエピトープに結合し、それによって、腫瘍細胞表面上でのPD-L1/PD-1相互作用およびPD-L1の安定化に関係するPD-L1タンパク質のそれらのグリカン含有残基または領域が、抗glycPD-L1抗体によって隠れうるかまたは見えなくなりうる。そのような抗glycPD-L1抗体は、PD-1へのPD-L1の結合を阻害または遮断して、同様にPD-1との結合に利用できるPD-L1分子がより少なくなるように、腫瘍細胞表面上のPD-L1レベルを低減させる。抗glycPD-L1抗体は、エフェクターT細胞とPD-1を有する腫瘍またはがん細胞との混合物で提供される場合、PD-1/PD-L1相互作用によって免疫抑制されていないT細胞によるそのような腫瘍またはがん細胞の殺滅を促進する。(例えば、図11および実施例9を参照されたい)。
【0050】
本明細書において記述される実施例は、本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体による、非グリコシル化PD-L1と比較したグリコシル化PD-L1の結合における有意な差、例えば2~3倍の差を示す実験結果を提供する。実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1に対して、非グリコシル化PD-L1と比較して、ナノモル濃度範囲、例えば約5~20nM、または約10~20nMの結合親和性を示す。実施例は、抗glycPD-L1抗体が、PD-L1発現腫瘍細胞によって内在化されるが、T細胞(活性化または非活性化)によって内在化されないこと(図16A~16L)、腫瘍細胞株に由来する腫瘍を有するマウスモデルにおいて、抗glycPD-L1抗体がPD-L1発現腫瘍細胞の生存率および腫瘍体積も同様に低減させること(図17A~17D)をさらに示す。
【0051】
定義
本明細書において使用される用語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは複数を意味しうる。
【0052】
本明細書において使用される用語「または」は、代替物のみを指すことが明白に示されている場合、または代替物が相互に排他的である場合を除き「および/または」を意味するが、本開示は、代替物のみと「および/または」を指す定義を支持する。
【0053】
本明細書において使用される用語「別の」は、少なくとも2番目以上を意味する。
【0054】
本明細書において使用される用語「約」は、方法が、値または試験対象間に存在する変動を決定するために使用される、値が装置の固有の誤差の変動を含むことを示すために使用される。
【0055】
本明細書において使用される用語「プログラム死リガンド-1」または「PD-L1」は、特に示していなければ、哺乳動物、例えば霊長類(例えば、ヒト、カニクイザル(cyno))、イヌ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む任意の脊椎動物源由来のポリペプチド(用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は本明細書において互換的に使用される)または任意のネイティブPD-L1を指し、ある特定の実施形態において、様々なPD-L1アイソフォーム、そのSNP変種を含む関連するPD-L1ポリペプチドを含む。
【0056】
ヒトPD-L1の例示的なアミノ酸配列(UniProtKB/Swiss-Prot:Q9NZQ7.1;GI:83287884)を以下に提供する:
MRIFAVFIFM TYWHLLNAFT VTVPKDLYVV EYGSNMTIEC KFPVEKQLDL AALIVYWEME DKNIIQFVHG EEDLKVQHSS YRQRARLLKD QLSLGNAALQ ITDVKLQDAG VYRCMISYGG ADYKRITVKV NAPYNKINQR ILVVDPVTSE HELTCQAEGY PKAEVIWTSS DHQVLSGKTT TTNSKREEKL FNVTSTLRIN TTTNEIFYCT FRRLDPEENH TAELVIPELP LAHPPNERTH LVILGAILLC LGVALTFIFR LRKGRMMDVK KCGIQDTNSK KQSDTHLEET(配列番号1)。配列番号1において、アミノ末端のアミノ酸1~18は、ヒトPD-L1タンパク質のシグナル配列を構成する。したがって、成熟ヒトPD-L1タンパク質は、配列番号1のアミノ酸19~290からなる。
【0057】
本明細書において記述されるポリペプチドおよびペプチドを構成するアミノ酸残基の略語、ならびにこれらのアミノ酸残基対する保存的置換を、以下の表1に示す。1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含むポリペプチド、または本明細書において記述されるポリペプチドの保存的に改変された変種は、当初のまたは天然に存在するアミノ酸が、類似の特徴、例えば類似の電荷、疎水性/親水性、側鎖の大きさ、骨格のコンフォメーション、構造、および剛性などを有する他のアミノ酸に置換されているポリペプチドを指す。このため、これらのアミノ酸変化は、典型的に、ポリペプチドの生物活性、機能、または他の所望の特性、例えば抗原に対するその親和性またはその特異性を変更することなく行われうる。一般的に、ポリペプチドの非必須領域における1つのアミノ酸置換は、生物活性を実質的に変更しない。さらに、構造または機能が類似であるアミノ酸の置換は、ポリペプチドの生物活性を妨害する可能性がより低い。
【0058】
【表1】
【0059】
用語「抗体」、「免疫グロブリン」、および「Ig」は、本明細書において広い意味で互換的に使用され、具体的に、以下に記述されるように、例えば個々の抗PD-L1抗体、例えば本明細書において記述されるモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、完全長またはインタクトモノクローナル抗体、抗原結合活性を維持している抗体のペプチド断片を含む)、抗非グリコシル化PD-L1抗体、および抗グリコシル化PD-L1抗体、ポリエピトープまたはモノエピトープ特異性を有する抗PD-L1抗体組成物、ポリクローナル抗体または一価抗体、多価抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、それらが所望の生物活性を示す限り二重特異性抗体または二重パラトープ性抗体)、一本鎖抗PD-L1抗体、および抗PD-L1抗体の断片が範囲に含まれる。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、および/または親和性成熟抗体でありうる。抗体は、他の種、例えばマウス、ラット、ウサギなど由来であってもよい。用語「抗体」は、特異的分子抗原に結合することができるポリペプチドの免疫グロブリンクラス内のB細胞のポリペプチド産物を含むと意図される。抗体は典型的に、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成され、それぞれの対は、1つの重鎖(約50~70kDa)と1つの軽鎖(約25kDa)を有し、重鎖および軽鎖のアミノ末端部分は、約100~約130またはそれ超のアミノ酸の可変領域を含み、それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は定常領域を含む(Antibody Engineering, Borrebaeck (ed.), 1995, Second Ed., Oxford University Press.; Kuby, 1997, Immunology, Third Ed., W.H. Freeman and Company, New Yorkを参照されたい)。特異的実施形態において、本明細書において提供される抗体が結合する特異的分子抗原は、PD-L1ポリペプチド、PD-L1ペプチド断片、またはPD-L1エピトープを含む。PD-L1ポリペプチド、PD-L1ペプチド断片、またはPD-L1エピトープは、非グリコシル化またはグリコシル化されうる。特定の実施形態において、PD-L1ポリペプチド、PD-L1ペプチド断片、またはPD-L1エピトープは、グリコシル化される。PD-L1抗原に結合する抗体またはそのペプチド断片は、例えば、イムノアッセイ、Biacore、または当業者に公知の他の技術によって同定することができる。抗体またはその断片は、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)などの実験技術を使用して決定した場合に、いかなる交叉反応抗原よりも高い親和性でPD-L1抗原に結合するとき、PD-L1抗原に特異的に結合する。典型的に、特異的または選択的結合反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍、より典型的に、バックグラウンドシグナルまたはノイズの5~10倍超である。例えば、抗体特異性に関する考察に関しては、Fundamental Immunology Second Edition, Paul, ed., 1989, Raven Press, New York at pages 332-336を参照されたい。
【0060】
本明細書において提供される抗体には、合成抗体、モノクローナル抗体、組み換えによって産生された抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ抗体(抗Id)、および上記のいずれかの機能的断片(例えば、PD-L1結合断片などの抗原結合断片)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。結合断片は、抗体重鎖または軽鎖ポリペプチドの一部、例えば断片が由来する抗体の結合活性のいくつかまたは全てを保持するペプチド部分を指す。機能的断片(例えば、PD-L1結合断片などの抗原結合断片)の非限定的な例には、一本鎖Fv(scFv)(例えば、単特異性、二重特異性、二重パラトープ性、一価(例えば単一のVまたはVドメインを有する)、または二価等)、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab)断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、およびミニボディが挙げられる。特に、本明細書において提供される抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えばPD-L1抗原、特にグリコシル化PD-L1抗原に結合する抗原結合部位(例えば、抗PD-L1抗体の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR))を含む抗原結合ドメインまたは分子を含む。そのような抗体断片の説明は、例えば、Harlow and Lane, 1989, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York; Molec. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, Myers (ed.), New York: VCH Publisher, Inc.;Huston et al., 1993, Cell Biophysics, 22:189-224;Pluckthun and Skerra, 1989, Meth. Enzymol., 178:497-515 and in Day, E.D., 1990, Advanced Immunochemistry, Second Ed., Wiley-Liss, Inc., New York, NYに見出されうる。本明細書において提供される抗体は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、または任意のサブクラス(例えば、IgG2aおよびIgG2b)の抗体でありうる。ある特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、完全ヒト、例えば完全ヒトモノクローナル抗PD-L1抗体である。ある特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト化されており、例えば、ヒト化モノクローナル抗PD-L1抗体である。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体は、IgG抗体、またはそのクラス(例えば、ヒトIgG1またはIgG4)もしくはサブクラス、特にIgG1サブクラスの抗体である。
【0061】
4本鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖で構成されるヘテロ4量体糖タンパク質である。IgGの場合、4本鎖(非還元)抗体単位の分子量は、一般的に約150,000ダルトンである。それぞれのL鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結され、H鎖のアイソタイプに応じて、2つのH鎖が1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに連結される。それぞれのHおよびL鎖はまた、規則正しい間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。N末端において、それぞれのH鎖は、可変ドメイン(V)の後に、αおよびγ鎖のそれぞれにつき3つの定常ドメイン(C)を有し、μおよびεアイソタイプにつき4つのCドメインを有する。それぞれのL鎖は、N末端において可変ドメイン(V)を有し、その後にそのカルボキシ末端において定常ドメイン(C)を有する。Vドメインは、Vドメインと整列し、Cドメインは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖と重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられている。VおよびVが共に対形成すると、単一の抗原結合部位を形成する(しかし、ある特定のVおよびVドメインは、相対物VまたはVとはそれぞれ無関係に抗原に結合することができる)。免疫グロブリン分子の基本構造は、当業者によって理解される。例えば、異なるクラスの抗体の構造および特性は、Stites, Daniel P. et al., 1994, Basic and Clinical Immunology, 8th edition, Appleton & Lange, Norwalk, CT, page 71 and Chapter 6に見出されうる。
【0062】
本明細書において使用される用語「抗原」または「標的抗原」は、抗体が選択的に結合することができる既定の分子である。標的抗原は、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、または他の天然に存在するもしくは合成の化合物でありうる。実施形態において、標的抗原は低分子である。ある特定の実施形態において、標的抗原は、ポリペプチドまたはペプチドであり、好ましくはグリコシル化PD-L1ポリペプチドである。
【0063】
本明細書において使用される用語「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」、および類似の用語は、抗原と相互作用して、結合剤としての抗体に、抗原に対するその特異性および親和性を付与するアミノ酸残基を含む抗体の部分を指す(例えば、抗体のCDRは、抗原結合領域である)。抗原結合領域は、任意の動物種、例えば齧歯類(例えば、ウサギ、ラット、またはハムスター)およびヒトに由来しうる。特異的実施形態において、抗原結合領域は、ヒト起源の領域でありうる。
【0064】
「単離」抗体は、細胞材料または細胞もしくは組織起源の他の混入タンパク質、および/または抗体が由来する他の混入成分を実質的に含まず、または化学合成されるときの化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。語句「細胞材料を実質的に含まない」には、単離されたまたは組み換えによって産生された細胞の細胞成分から分離されている抗体の調製物を含む。このため、細胞材料を実質的に含まない抗体は、異種タンパク質(本明細書において「混入タンパク質」とも呼ばれる)の約30%、25%、20%、15%、10%、5%、または1%未満(乾燥重量で)を有する抗体の調製物を含む。ある特定の実施形態において、抗体が組み換えによって産生されるとき、抗体は培養培地を実質的に含まず、例えば、培養培地はタンパク質調製物の体積の約20%、15%、10%、5%、または1%未満を表す。ある特定の実施形態において、抗体が化学合成によって産生されるとき、抗体は、化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まず、例えば抗体は、タンパク質の合成に関係する化学前駆体または他の化学物質から分離されている。したがって、抗体のそのような調製物は、目的の抗体以外の化学前駆体または化合物の約30%、25%、20%、15%、10%、5%、または1%未満(乾燥重量で)を有する。混入成分はまた、抗体に対する治療的使用を妨げる材料を含みうるがこれらに限定されるわけではなく、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質を含みうる。ある特定の実施形態において、抗体は、(1)ローリー法(Lowry et al., 1951, J. Bio. Chem., 193: 265-275)によって決定した場合に、抗体の95重量%より大きいもしくはそれに等しい、例えば95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、もしくは99重量%まで、(2)スピニングカップシーケネーターを使用することによって、N-末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは銀染色を使用して還元もしくは非還元条件下でSDS-PAGEによって均一となるまで、精製される。単離抗体はまた、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないことから、組み換え細胞内のその場の抗体を含む。単離抗体は、典型的に少なくとも1つの精製ステップによって調製される。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される抗体は単離されている。
【0065】
本明細書において使用される用語「結合する」または「結合している」は、例えば複合体の形成を含む分子間の相互作用を指す。実例として、そのような相互作用は、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、およびファンデルワールス相互作用を含む非共有結合的相互作用を包含する。複合体はまた、共有もしくは非共有結合、相互作用、または力によって共に保持される2つまたはそれ超の分子の結合を含みうる。抗体の1つの抗原結合部位と、PD-L1などの標的(抗原)分子上のそのエピトープの間の全体的な非共有結合的相互作用の強度は、そのエピトープに関する抗体または機能的断片の親和性である。一価の抗原への抗体の結合(kon)と解離(koff)との比率(kon/koff)は、結合定数Kであり、これは親和性の測定値である。Kの値は、抗体および抗原の異なる複合体ごとに異なり、konおよびkoffの両方に依存する。本明細書において提供される抗体に対する結合定数Kは、本明細書において提供される任意の方法、または当業者に公知の他の任意の方法を使用して決定されうる。1つの結合部位での親和性は、抗体と抗原の間の相互作用の真の強度を必ずしも反映しない。グリコシル化PD-L1のような多数の抗原性決定基を含む複合抗原が、多数の結合部位を含む抗体と接触するとき、1つの部位で抗体と抗原とが相互作用すると、第2の結合部位での相互作用の確率が増加する。多価抗体と抗原の間のそのような多数の相互作用の強度は、アビディティと呼ばれる。抗体のアビディティは、その個々の結合部位の親和性よりもその結合能のよりよい尺度でありうる。例えば、高いアビディティは、時に、IgGより低い親和性を有しうる5量体のIgM抗体において見出されるように低い親和性を補うことができるが、IgMのアビディティがその多価性に起因して高い場合、IgMは抗原に有効に結合することができる。
【0066】
「結合親和性」は、一般的に、ある分子(例えば、抗体などの結合タンパク質)の1つの結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)の間の非共有結合的相互作用の合計の強度を指す。特に示していなければ、本明細書において使用される「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原または受容体とリガンド)間の1:1相互作用を反映する内因性の結合親和性を指す。結合分子Xのその結合パートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(K)によって表されうる。親和性は、本明細書において記述される方法を含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般的に、抗原への結合が遅く、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は一般的に、抗原への結合が速く、抗原により長い時間結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する多様な方法が当技術分野で公知であり、そのいずれも、本開示の目的のために使用されうる。特異的な例示的実施形態は、以下を含む:一実施形態において、「K」または「K値」は、当技術分野で公知のアッセイ、例えば結合アッセイによって測定される。Kは、例えば目的の抗体のFab部分とその抗原に関して実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)において測定することができる(Chen, et al., 1999, J. Mol. Biol., 293:865-881)。KまたはK値はまた、例えばBIAcore(商標)-2000またはBIAcore(商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ(Biacore)を使用することによって、または例えばOctetQK384システム(ForteBio,Menlo Park,CA)を使用するバイオレイヤー干渉法(BLI)によって、または水晶振動子微量天秤(QCM)技術によっても測定することができる。「オンレート」または「結合の速度」または「結合速度」または「kon」はまた、例えばBIAcore(商標)-2000もしくはBIAcore(商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)、またはOctetQK384システム(ForteBio,Menlo Park,CA)を使用する、上記の同じ表面プラズモン共鳴またはバイオレイヤー干渉法によって決定することもできる。
【0067】
用語「抗PD-L1抗体」、「PD-L1に特異的に結合する抗体」、または「PD-L1に特異的である抗体」、「PD-L1エピトープに特異的に結合する抗体」、「PD-L1に選択的に結合する抗体」、「PD-L1エピトープに選択的に結合する抗体」、「PD-L1に優先的に結合する抗体」、および類似の用語は、本明細書において互換的に使用され、特に非グリコシル化PD-L1またはPD-L1のグリコシル化変異体と比較して十分な親和性および特異性で、PD-L1、すなわちグリコシル化またはWT PD-L1に結合することができる抗体を指す。本明細書において提供される抗glycPD-L1抗体の「優先的結合」は、適当な対照、例えば非グリコシル化もしくは変種PD-L1(例えば、4NQ PD-L1)への結合と比較した、細胞上で発現したPD-L1、すなわちグリコシル化PD-L1ポリペプチドもしくはPD-L1 WTもしくはグリコシル化PD-L1への抗体の結合、またはPD-L1の非グリコシル化もしくは変種形態(例えば、4NQ PD-L1)を発現する細胞、例えば分子的に改変された細胞、細胞株、もしくは腫瘍細胞単離体、例えば本明細書において例えば実施例6に記述されるものなどへの抗体の結合の蛍光強度の定量に基づいて決定または定義されうる。記述の抗glycPD-L1抗体のグリコシル化PD-L1ポリペプチドまたはグリコシル化PD-L1(PD-L1 WT)発現細胞への優先的結合は、細胞フローサイトメトリーによって評価した場合に、非グリコシル化もしくは変異体グリコシル化PD-L1ポリペプチドまたは非グリコシル化もしくは変異体グリコシル化PD-L1発現細胞への抗体の結合と比較して、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍またはそれ超の測定された蛍光結合強度(MFI)によって示され、アッセイされる抗体は、蛍光標識またはマーカーによって直接または間接的に検出可能である。一実施形態において、抗体は、FITCなどの蛍光マーカーで直接標識される。実施形態において、グリコシル化PD-L1に優先的または選択的に結合する抗glycPD-L1抗体は、本明細書において記述される非グリコシル化PD-L1またはPD-L1グリコシル化変種、例えばグリコシル化されていない4NQ PD-L1の結合に関して、同じ抗体のMFI値より1.5倍~25倍、または2倍~20倍、または3倍~15倍、または4倍~8倍、または2倍~10倍、または2倍~5倍、またはそれ超大きいMFI値を示す。前述の全ての間のおよび全てに等しい倍率の蛍光強度の値が含まれると意図される。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1ポリペプチド、例えばグリコシル化PD-L1抗原、ペプチド断片、またはエピトープ(例えば、ヒトグリコシル化PD-L1ポリペプチド、抗原、またはエピトープなどのヒトグリコシル化PD-L1)に特異的かつ優先的に結合する。PD-L1(例えば、グリコシル化または野生型ヒトPD-L1)に特異的に結合する抗体は、PD-L1の細胞外ドメイン(ECD)またはECDに由来するペプチドに結合することができる。PD-L1抗原(例えば、ヒトPD-L1)に特異的に結合する抗体は、近縁の抗原(例えば、カニクイザル(cyno)PD-L1)と交叉反応しうる。好ましい実施形態において、PD-L1抗原に特異的に結合する抗体は、他の抗原と交叉反応しない。PD-L1抗原に特異的に結合する抗体は、例えば免疫蛍光結合アッセイ、イムノアッセイ法、免疫組織化学アッセイ法、Biacore、または当業者に公知の他の技術によって同定されうる。
【0068】
ある特定の他の実施形態において、本明細書において記述されるPD-L1に結合する抗体は、20nM、19nM、18nM、17nM、16nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、または0.1nM未満であるかまたはそれに等しい、および/または0.1nM超であるかまたはそれに等しい解離定数(K)を有する。ある特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、異なる種(ヒトとカニクイザルPD-L1の間)のPD-L1タンパク質において保存されているPD-L1のエピトープに結合する。抗体は、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)などの実験技術を使用して決定した場合に、いかなる交叉反応抗原よりも高い親和性でPD-L1抗原に結合するとき、PD-L1抗原に特異的に結合する。典型的に、特異的または選択的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍超でありうる。例えば、抗体の特異性に関する考察に関しては、Fundamental Immunology Second Edition, Paul, ed., 1989, Raven Press, New York at pages 332 336を参照されたい。そのような実施形態において、「非標的」タンパク質への抗体の結合の程度は、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析または放射免疫沈殿(RIA)によって決定した場合に、その特定の標的タンパク質への抗体の結合の約10%未満と予想される。
【0069】
本明細書において記述される抗PD-L1抗体は、抗グリコシル化PD-L1抗体または抗野生型PD-L1抗体を含み、野生型PD-L1タンパク質はグリコシル化されており、グリコシル化PD-L1に対して特異的である。いくつかの実施形態において、抗グリコシル化PD-L1抗体は、PD-L1の線形グリコシル化モチーフに結合する。いくつかの実施形態において、抗グリコシル化PD-L1抗体は、3次元でグリコシル化モチーフの1つまたは複数の近傍に位置するペプチド配列に結合する。いくつかの実施形態において、抗グリコシル化PD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して、PD-L1の1つもしくは複数のグリコシル化モチーフまたはPD-L1のグリコシル化モチーフを有するPD-L1ペプチドに選択的に結合する。他の実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、PD-L1タンパク質のアミノ酸を含む線形エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗グリコシル化PD-L1抗体は、PD-L1の1つまたは複数のグリコシル化モチーフに選択的に結合し、グリコシル化モチーフは、配列番号1のPD-L1ポリペプチドのN35、N192、N200、および/またはN219を含む。なお他の実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、PD-L1タンパク質のアミノ酸を含むコンフォメーション(非線形)エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗glycPD-L1抗体またはその結合部分は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKの少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%より小さいKでグリコシル化PD-L1に結合する。ある特定の実施形態において、抗glycPD-L1抗体またはその結合部分は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKより50%より小さいKでグリコシル化PD-L1に結合する。いくつかの実施形態において、抗glycPD-L1抗体またはその結合部分は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%より小さいKでグリコシル化PD-L1に結合する。さらなる態様において、抗glycPD-L1抗体またはその結合部分は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKより少なくとも5~10倍小さいKでグリコシル化PD-L1に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体またはその結合部分は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKより少なくとも10倍小さいKでグリコシル化PD-L1に結合する。ある特定の実施形態において、抗体は、非グリコシル化PD-L1への結合によって示されるKの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、または20%以下であるKでグリコシル化PD-L1に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体またはその結合部分は、ナノモル濃度の親和性で、例えば下限および上限の値を含む5~20nMまたは10~20nMの親和性で、グリコシル化PD-L1に結合する。
【0070】
一実施形態において、実施例6に記述される細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、WT PD-L1を発現する細胞に対して、非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への結合に対するMFIの少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍であるか、またはそれより大きい、およびある特定の実施形態において、非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への結合に対するMFIより10倍、20倍、50倍、または100倍以下大きいMFIとして表される結合を示す。
【0071】
本明細書において抗体を参照して使用される用語「重(H)鎖」は、アミノ末端部分が約115~130またはそれ超のアミノ酸の可変(V)領域(Vドメインとも呼ばれる)を含み、カルボキシ末端部分が定常(C)領域を含む、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指す。定常領域(または定常ドメイン)は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づき、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、およびミュー(μ)と呼ばれる異なる5つのタイプ(例えば、アイソタイプ)の1つでありうる。異なる重鎖は、大きさが異なる:α、δ、およびγは、およそ450アミノ酸を含むが、μおよびεは、およそ550アミノ酸を含む。軽鎖と併せると、これらの異なるタイプの重鎖はそれぞれ、5つの周知のクラス(例えば、アイソタイプ)の抗体、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMを生じ、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。抗体重鎖は、ヒト抗体重鎖でありうる。
【0072】
本明細書において抗体を参照して使用される用語「軽(L)鎖」は、約25kDaのポリペプチド鎖を指し、アミノ末端部分は、約100~約110またはそれ超のアミノ酸の可変ドメインを含み、カルボキシ末端部分は、定常領域を含む。軽鎖(VおよびCドメインの両方)のおおよその長さは、211~217アミノ酸である。軽鎖には2つの異なるタイプが存在し、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる。軽鎖アミノ酸配列は、当技術分野で周知である。抗体軽鎖は、ヒト抗体軽鎖でありうる。
【0073】
本明細書において使用される用語「可変(V)領域」または「可変(V)ドメイン」は、軽(L)または重(H)鎖のアミノ末端に一般的に位置する抗体ポリペプチドのL鎖またはH鎖の部分を指す。H鎖Vドメインは、約115~130アミノ酸長を有するが、L鎖Vドメインは、約100~110アミノ酸長である。HおよびL鎖Vドメインは、その特定の抗原に対するそれぞれの特定の抗体の結合および特異性において使用される。H鎖のVドメインは、「V」と呼ばれうる。L鎖のV領域は、「V」と呼ばれうる。用語「可変」は、Vドメインのある特定の区分が、異なる抗体の間で配列が大きく異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原の結合を媒介して、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義するが、可変性は抗体Vドメインの110アミノ酸の全長にわたって均一に分布しているわけではない。その代わりに、Vドメインは、それぞれが約9~12アミノ酸長である「超可変領域」または「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれるより大きい可変性(例えば、極度の可変性)のより短い領域によって隔てられた約15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより可変性の低い(例えば、比較的不変である)鎖からなる。抗体HおよびL鎖のVドメインはそれぞれ、4つのFRを含み、これらは大部分がβシート立体配座を採用し、3つの超可変領域で接続され、βシート構造を接続するループを形成し、いくつかの例ではβシート構造の一部を形成する。それぞれの鎖における超可変領域は、FRによって共に近位に保持され、他の鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に関与する(例えば、Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MDを参照されたい))。Cドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)および補体依存性細胞傷害性(CDC)などの様々なエフェクター機能を示す。Vドメインは、異なる抗体クラスまたはタイプでは配列が大きく異なる。配列の多様性は、CDRに集中し、これは主に抗体と抗原との相互作用の原因である。特異的実施形態において、抗体の可変ドメインはヒトまたはヒト化可変ドメインである。
【0074】
本明細書において使用される用語「相補性決定領域」、「CDR」、「超可変領域」、「HVR」、および「HV」は、互換的に使用される。「CDR」は、抗体Vβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2、もしくはH3)の1つ、または抗体Vβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2、もしくはL3)の1つを指す。この用語は、本明細書において使用されるとき、配列が高度に可変でありおよび/または構造的に定義されたループを形成する抗体Vドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、6つの超可変領域:Vドメインにおける3つ(H1、H2、H3)およびVドメインにおける3つ(L1、L2、L3)を含む。したがって、CDRは、典型的に、Vドメインのフレームワーク領域配列内に介在する高度に可変の配列である。「フレームワーク」または「FR」残基は、CDRに隣接するそれらの可変領域残基である。FR残基は、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ドメイン抗体、ダイアボディ、線形抗体、二重特異性抗体または二重パラトープ性抗体に存在する。
【0075】
多数の高度可変領域の描写が使用されており、本明細書において包含される。CDR領域は当業者に周知であり、例えば、抗体Vドメイン内の最も超可変性の領域としてKabatによって定義されている(Kabat et al., 1977, J. Biol. Chem., 252:6609-6616; Kabat, 1978, Adv. Prot. Chem., 32:1-75)。KabatのCDRは、配列多様性に基づいており、最も一般的に使用される(例えば、Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MDを参照されたい)。CDR領域配列はまた、保存されたβシートフレームワークの一部ではなく、このため異なる立体構造を採用することができる残基としてChothiaによって構造的に定義されている(Chothia et al., 1987, J. Mol. Biol., 196:901-917)。Chothiaは、その代わりに構造ループの位置を指す。KabatCDR付番の慣例を使用して付番したときのChothiaのCDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32からH34の間で変化する(これは、Kabatの付番スキームがH35AおよびH35Bで挿入を配置するために起こり;35Aも35Bのいずれも存在しなければ、ループは32で終了し、35Aのみが存在する場合ループは33で終了し、35Aと35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。いずれの付番システムおよび専門用語も当技術分野で十分に認識されている。
【0076】
最近、普遍的な付番システム、ImMunoGeneTics(IMGT)情報システム(登録商標)(Lefranc et al., 2003, Dev. Comp. Immunol., 27(1):55-77)が開発されて、広く使用されている。IMGTは、免疫グロブリン(Ig)、T細胞受容体(TR)、ならびにヒトおよび他の脊椎動物の主要組織適合複合体(MHC)を専門とする総合情報システムである。本明細書において、CDRは、アミノ酸配列と、軽鎖または重鎖内の位置の両方に関して参照される。免疫グロブリンVドメインの構造内のCDRの「位置」は、構造特徴に従って可変ドメイン配列を整列させる付番システムを使用することによって、種の間で保存されており、ループと呼ばれる構造で存在することから、CDRおよびフレームワーク残基は容易に同定される。この情報は、1つの種の免疫グロブリンからのCDR残基を典型的にヒト抗体からのアクセプターフレームワークに移植および置換するために使用することができる。追加の付番システム(AHon)が、Honegger et al., 2001, J. Mol. Biol. 309: 657-670によって開発されている。例えばKabat付番を含む付番システムとIMGT独自の付番システムとの対応は、当業者に周知である(例えば、Kabat, 同上; Chothia et al., 1987, J. Mol. Biol., 196:901-917, supra; Martin, 2010, Antibody Engineering, Vol. 2, Chapter 3, Springer Verlag;およびLefranc et al., 1999, Nuc. Acids Res., 27:209-212を参照されたい)。
【0077】
CDR領域配列はまた、AbM、ContactおよびIMGTによって定義されている。AbM超可変領域は、KabatのCDRとChothiaの構造ループの間の妥協点を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(例えば、Martin,同上を参照されたい)によって使用されている。「contact」の超可変領域は、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらの超可変領域またはCDRのそれぞれからの残基を以下に示す。
【0078】
CDR領域配列の例示的な描写を、以下の表2に例示する。標準的な抗体可変領域内のCDRの位置は、多数の構造との比較によって決定されている(Al-Lazikani et al., 1997, J. Mol. Biol., 273:927-948;Morea et al., 2000, Methods, 20:267-279)。超可変領域内の残基数は、異なる抗体において変化することから、標準的な可変領域付番スキーム(Al-Lazikani et al., 同上)では、標準的な位置と比較した追加の残基を、慣例によって残基番号の次にa、b、cなどと付番する。そのような命名法は同様に当業者に周知である。
【0079】
【表2】
【0080】
「親和性成熟」抗体は、それらの変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改善が起こる、1つまたは複数のそのHVRにおける1つまたは複数の変更(例えば、変化、付加、および/または欠失を含むアミノ酸配列の変動)を有する抗体である。ある特定の実施形態において、親和性成熟抗体は、標的抗原、例えばグリコシル化PD-L1に対してナノモル濃度またはピコモル濃度の親和性さえ有すると予想される。親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の技法によって産生される。総説に関しては、Hudson and Souriau, 2003, Nature Medicine 9:129-134;Hoogenboom, 2005, Nature Bioethanol., 23:1105-1116;Quiroz and Sinclair, 2010, Revitas Ingeneria Biomedia 4 : 39-51を参照されたい。
【0081】
「キメラ」抗体は、所望の生物活性を示す限り、Hおよび/またはL鎖の一部、例えばVドメインが、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応するアミノ酸配列と同一または相同であるが、鎖の残り、例えばCドメインは、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である抗体、ならびにそのような抗体の断片である(例えば、米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855を参照されたい)。
【0082】
「ヒト化」された非ヒト(例えば、マウス)抗体は、本来のCDR残基が、所望の特異性、親和性、ならびに抗原結合および相互作用能を有する非ヒト種(例えば、ドナー抗体)、例えばマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類の対応するCDRの残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン配列を指す抗体(例えば、レシピエント抗体)のキメラ形態である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンの1つまたは複数のFR領域残基を同様に、対応する非ヒト残基で置き換えてもよい。加えて、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含みうる。これらの改変は、ヒト化抗体の性能をさらに精密化するために行われる。CDR領域における1つまたは複数の改変はまた、例えば親和性成熟抗体におけるヒト化抗体の性能を改善および精密化するために行うことができる。ヒト化抗体のHまたはL鎖は、CDRの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのCDRに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つまたは複数の可変領域の実質的に全てを含みうる。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、典型的に、ヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部(Fc)を含む。当業者に公知であるが、さらなる詳細は、望ましければ、例えばJones et al., 1986, Nature, 321:522-525;Riechmann et al., 1988, Nature, 332:323-329;およびPresta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596;Carter et al., 1992, Proc. Natl. Acd. Sci. USA, 89:4285-4289;ならびに米国特許第6,800,738号明細書(2004年10月5日発行)、同第6,719,971号明細書(2005年9月27日発行)、同第6,639,055号明細書(2003年10月28日発行)、同第6,407,213号明細書(2002年6月18日発行)、および同第6,054,297号明細書(2000年4月25日発行)において見出されうる。
【0083】
用語「ヒト抗体」および「完全ヒト抗体」は、本明細書において互換的に使用され、ヒトによって産生された、および/または当業者によって実践されるようにヒト抗体を作製する技術のいずれかを使用して作製されている抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom and Winter, 1991, J. Mol. Biol., 227:381;Marks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581)、および酵母ディスプレイライブラリ(Chao et al., 2006, Nature Protocols, 1:755-768)を含む、当技術分野で公知の様々な技術を使用して産生することができる。Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77;Boerner et al., 1991, J. Immunol., 147(1):86-95に記述される方法も同様に、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。同様にvan Dijk and van de Winkel, 2001, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74も参照されたい。ヒト抗体は、その内因性のIg座が無能力化されていて、抗原チャレンジに応答してヒト抗体が生成されるように、ヒト抗体をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子を有するように遺伝子改変されているトランスジェニック動物、例えばマウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば、Jakobovits, A., 1995, Curr. Opin. Biotechnol., 6(5):561-6;Bruggemann and Taussing, 1997 Curr. Opin. Biotechnol., 8(4):455-8;ならびにXENOMOUSE(商標)技術に関して米国特許第6,075,181号明細書および同第6,150,584号明細書を参照されたい)。同様に、例えばヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されるヒト抗体に関して、Li et al., 2006, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562も参照されたい。特異的実施形態において、ヒト抗体は、ヒト起源の可変領域と定常領域とを含む。「完全ヒト」抗PD-L1抗体は、特定の実施形態において、PD-L1ポリペプチドに結合し、ヒト生殖系列免疫グロブリン核酸配列の天然に存在する体細胞変種であるヌクレオチド配列によってコードされる抗体も包含することができる。特異的実施形態において、本明細書において提供される抗PD-L1抗体は、完全ヒト抗体である。用語「完全ヒト抗体」は、Kabatら(Kabat et al., (1991), Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)によって記述されるヒト生殖系列免疫グロブリン配列に対応する可変および定常領域を有する抗体を含む。語句「組み換えヒト抗体」は、組み換え手段によって調製、発現、作製、または単離されたヒト抗体、例えば宿主細胞にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現された抗体;組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体;ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックおよび/またはトランスクロモゾームである動物(例えば、マウスまたはウシ)から単離された抗体(例えば、Taylor, L. D. et al., 1992, Nucl. Acids Res. 20:6287-6295を参照されたい);またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う他の任意の手段によって調製、発現、作製、もしくは単離された抗体を含む。そのような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有しうる(Kabat, E. A. et al.,同上を参照されたい)。しかし、ある特定の実施形態において、そのような組み換えヒト抗体は、in vitro変異誘発(またはヒトIg配列に関してトランスジェニックである動物を使用するときは、in vivo体細胞変異誘発)を受け、このため、組み換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来して関連するが、in vivoでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しない配列である。
【0084】
本明細書において使用される用語「エピトープ」は、1つの抗体分子が結合する抗原分子の表面上の部位または領域、例えば抗原、例えば抗PD-L1または抗glycPD-L1抗体の1つまたは複数の抗原結合領域が結合することができるPD-L1ポリペプチドまたはグリコシル化PD-L1ポリペプチドの表面上の局所領域である。エピトープは、免疫原性でありえて、動物において免疫応答を誘発することができる。エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。エピトープはしばしば、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学活性表面基からなり、特異的三次元構造特徴および特異的電荷特徴を有する。エピトープは、線形エピトープまたはコンフォメーションエピトープでありうる。エピトープに関与するポリペプチドの領域は、線形エピトープを形成するポリペプチドの連続するアミノ酸でありうるか、またはエピトープは、典型的にコンフォメーションエピトープと呼ばれるポリペプチドの2つもしくはそれ超の不連続なアミノ酸もしくは領域から形成されうる。エピトープは、抗原の三次元表面特徴であってもなくてもよい。ある特定の実施形態において、PD-L1エピトープは、PD-L1ポリペプチドの三次元表面特徴である。他の実施形態において、PD-L1エピトープは、PD-L1ポリペプチドの線形特徴である。いくつかの実施形態において、PD-L1エピトープは、1つまたは複数の部位でグリコシル化される。一般的に、抗原は、いくつかのまたは多くの異なるエピトープを有し、多くの異なる抗体と反応することができる。特定の実施形態において、本明細書に記述されるように抗glycPD-L1抗体は、コンフォメーションエピトープであるPD-L1のエピトープ、特にグリコシル化PD-L1のエピトープに結合する。
【0085】
抗体は、2つの抗体が、三次元空間において、同一の、重なり合う、または隣接するエピトープを認識するとき、「1つのエピトープ」、または参照抗体と「本質的に同じエピトープ」もしくは「同じエピトープ」に結合する。2つの抗体が、三次元空間において、同一、重なり合う、または隣接するエピトープに結合するか否かを決定するために最も広く使用される迅速な方法は、競合アッセイであり、これは例えば標識抗原または標識抗体のいずれかを使用する多数の異なるフォーマットで構成することができる。いくつかのアッセイにおいて、抗原を96ウェルプレートに固定するか、または細胞表面上で発現させて、非標識抗体が、標識抗体の抗原への結合を遮断する能力を、検出可能なシグナル、例えば放射活性、蛍光、または酵素標識を使用して測定する。加えて、抗体のエピトープを決定した後、当技術分野で公知の方法および例えば本明細書において実施例8に記述される方法を使用して比較することができる。
【0086】
PD-L1標的タンパク質またはそのペプチド上の同じエピトープまたは結合部位に関して競合する抗PD-L1抗体の文脈において使用するときの用語「競合する」は、試験中の抗体が、共通の抗原(例えば、PD-L1またはその断片)への参照分子(例えば、参照リガンド、または参照抗原結合タンパク質、例えば参照抗体)の特異的結合を防止、遮断、または阻害する、アッセイにおいて決定した場合の競合を意味する。多数のタイプの競合結合アッセイを使用して、試験抗体が、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1またはヒトグリコシル化PD-L1)への結合に関して参照抗体と競合するか否かを決定することができる。使用することができるアッセイの例には、固相の直接または間接的ラジオイムノアッセイ(RIA);固相の直接または間接的酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al., 1983, Methods in Enzymology 9:242-253を参照されたい);固相の直接のビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al., 1986, J. Immunol. 137:3614-3619を参照されたい);固相の直接標識アッセイ;固相の直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane, 1988, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Pressを参照されたい);標識ヨウ素(I125標識)を使用する固相の直接標識RIA(例えば、Morel et al., 1988, Molec. Immunol. 25:7-15を参照されたい);固相の直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung, et al., 1990, Virology 176:546-552を参照されたい);および直接標識RIA(Moldenhauer et al., 1990, Scand. J. Immunol. 32:77-82)が挙げられる。典型的に、そのようなアッセイは、固体表面に結合した精製抗原(例えば、ヒトPD-L1またはグリコシル化PD-L1などのPD-L1)、または非標識試験抗原結合タンパク質(例えば、試験抗PD-L1抗体)もしくは標識参照抗原結合タンパク質(例えば、参照抗PD-L1抗体)のいずれかを有する細胞の使用を伴う。競合的阻害は、試験抗原結合タンパク質の公知の量の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することによって測定することができる。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)は、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、および/または参照抗体が結合するエピトープに十分に近位の隣接するエピトープに結合して立体妨害を引き起こす抗体を含む。競合的結合を決定する方法に関するさらなる詳細を本明細書に記述する。通常、競合抗体タンパク質が過剰に存在するとき、競合抗体は、共通の抗原への参照抗体の特異的結合を少なくとも15%、または少なくとも23%、例えば40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%またはそれ超、および記載の量の間のパーセント量で阻害するが、これらに限定されない。いくつかの例において、結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、または97%、98%、99%、またはそれ超阻害される。
【0087】
本明細書において使用される用語「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性または機能的活性を防止、阻害、遮断、または低減させる抗体を指す。遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性または機能を、実質的または完全に防止、阻害、遮断、または低減させることができる。例えば、遮断抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間の結合相互作用を防止、阻害、遮断、または低減させて、このようにPD-1/PD-L1相互作用に関連する免疫抑制機能を防止、遮断、阻害、または低減させることができる。遮断する、阻害する、および中和するという用語は、本明細書において互換的に使用され、本明細書に記述されるように抗PD-L1抗体がPD-L1/PD-1相互作用を防止またはそうでなければ妨害もしくは低減させる能力を指す。
【0088】
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」または「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結された一続きの3またはそれ超のアミノ酸のアミノ酸のポリマーを指す。「ポリペプチド」は、タンパク質、タンパク質断片、タンパク質アナログ、オリゴペプチドなどでありうる。ポリペプチドを構成するアミノ酸は、天然由来または合成でありうる。ポリペプチドは、生物試料から精製してもよい。例えば、PD-L1ポリペプチドまたはペプチドは、ヒトPD-L1またはグリコシル化PD-L1の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の連続したアミノ酸で構成されうる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ヒトPD-L1またはグリコシル化PD-L1の少なくとも25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、または285個の連続したアミノ酸を有する。ある特定の実施形態において、PD-L1ポリペプチドは、PD-L1ポリペプチドまたはグリコシル化PD-L1ポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5つの連続したアミノ酸残基、少なくとも10個の連続したアミノ酸残基、少なくとも15個の連続したアミノ酸残基、少なくとも20個の連続したアミノ酸残基、少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個の連続したアミノ酸残基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、少なくとも80個の連続したアミノ酸残基、少なくとも90個の連続したアミノ酸残基、少なくとも100個の連続したアミノ酸残基、少なくとも125個の連続したアミノ酸残基、少なくとも150個の連続したアミノ酸残基、少なくとも175個の連続したアミノ酸残基、少なくとも200個の連続したアミノ酸残基、少なくとも250個の連続したアミノ酸残基を含む。
【0089】
本明細書において使用される用語「アナログ」は、参照ポリペプチドと類似もしくは同一の機能を保有するが、必ずしも参照ポリペプチドと類似もしくは同一のアミノ酸配列を含まないか、または参照ポリペプチドと類似もしくは同一の構造を保有しないポリペプチドを指す。参照ポリペプチドは、PD-L1ポリペプチド、PD-L1ポリペプチドの断片、抗PD-L1抗体、または抗glycPD-L1抗体でありうる。参照ポリペプチドと類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、本明細書において記述されるPD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体でありうる参照ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。参照ポリペプチドと類似の構造を有するポリペプチドは、本明細書において記述されるPD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体でありうる参照ポリペプチドの構造と類似の二次、三次、または四次構造を有するポリペプチドを指す。ポリペプチドの構造は、X線結晶学、核磁気共鳴法、および結晶電子顕微鏡を含むがこれらに限定されるわけではない、当業者に公知の方法によって決定することができる。好ましくは、アナログは、二重機能抗glycPD-L1抗体として機能する。
【0090】
本明細書において使用される用語「変種」は、PD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体に関連して使用するとき、ネイティブまたは非改変のPD-L1配列または抗PD-L1抗体配列と比較して1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5個など)のアミノ酸配列の置換、欠失、および/または付加を有するポリペプチドまたは抗PD-L1抗体を指す。例えば、PD-L1変種は、ネイティブPD-L1のアミノ酸配列に対する1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5個など)の変化に起因しうる。同様に、例として、抗PD-L1抗体の変種は、ネイティブまたはこれまで未改変の抗PD-L1抗体のアミノ酸配列に対する1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5個など)の変化に起因しうる。ポリペプチド変種は、変種をコードする対応する核酸分子から調製することができる。ある特定の実施形態において、変種は、1つまたは複数のCDRまたはフレームワーク領域において1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、または挿入を有する抗glycPD-L1抗体であり、好ましくは、アナログは二重機能抗glycPD-L1抗体として機能する。
【0091】
用語「同一性」は、配列を整列させて比較することによって決定される、2つもしくはそれ超のポリペプチド分子または2つもしくはそれ超の核酸分子の配列間の関係を指す。「パーセント同一性」は、比較される分子におけるアミノ酸またはヌクレオチド間の同一残基の百分率を意味し、比較される分子の最小の大きさに基づいて計算される。これらの計算に関して、アライメントにおけるギャップ(もしあれば)は、特定の数学モデルまたはコンピュータープログラム(例えば、「アルゴリズム」)によって特定されなければならない。整列させた核酸またはポリペプチドの同一性を計算するために使用することができる方法には、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., Ed., 1988, New York: Oxford University Press;Biocomputing Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., Ed., 1993, New York: Academic Press;Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., Eds., 1994 , New Jersey: Humana Press;Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., 1987, New York: Academic Press;Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., Eds., 1991, New York: M. Stockton Press;およびCarillo et al., 1988, SIAM J. Applied Math., 48:1073に記述される方法が挙げられる。
【0092】
パーセント同一性の計算において、比較される配列を、配列間で最大のマッチを生じるように整列させることができる。%同一性を決定するために使用することができるコンピュータープログラムの例は、GAPを含むGCGプログラムパッケージ(Devereux et al., 1984, Nucl. Acid Res., 12:387;Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, WI)であり、これはその%同一性を決定するために2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを整列させるために使用されるコンピューターアルゴリズムである。配列は、そのそれぞれのアミノ酸またはヌクレオチド配列の最適なマッチングが得られるように整列させることができる(アルゴリズムによって決定された「マッチさせる範囲」)。ギャップオープンペナルティ(平均対角線の3倍として計算され、「平均対角線(average diagonal)」は、使用される比較行列の対角線の平均値であり、「対角化」は、特定の比較行列によるそれぞれの完全なアミノ酸マッチに割り付けされるスコアまたは数である)、およびギャップ伸長ペナルティ(これは通常、ギャップオープンペナルティの1/10である)、ならびにPAM250またはBLOSUM62などの比較行列が、アルゴリズムと共に使用される。ある特定の実施形態において、標準的な比較行列(PAM250比較行列に関して、Dayhoff et al., 1978, Atlas of Protein Sequence and Structure, 5:345-352;BLOSUM62比較マトリックスに関して、Henikoff et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:10915-10919を参照されたい)も同様にアルゴリズムによって使用される。GAPプログラムを使用してポリペプチドまたはヌクレオチド配列のパーセント同一性を決定するための例示的なパラメータは、以下を含む:(i)アルゴリズム:Needleman et al., 1970, J. Mol. Biol., 48:443-453;(ii)比較行列:Henikoff et al., 同上のBLOSUM62;(iii)ギャップペナルティ:12(しかし、末端ギャップにはペナルティなし);(iv)ギャップ長ペナルティ:4;および(v)類似性の閾値:0。
【0093】
2つのアミノ酸配列を整列させるためのある特定のアライメントスキームによって、2つの配列の短い領域のみのマッチが起こりえて、この小さい整列した領域は、2つの完全長の配列間にたとえ有意な関係がない場合であっても非常に高い配列同一性を有しうる。したがって、選択されたアライメント方法(例えばGAPプログラム)を、望ましければ、標的ポリペプチドの代表的な数のアミノ酸、例えば少なくとも50個の連続したアミノ酸に及ぶアライメントが得られるように調節することができる。
【0094】
参照ポリペプチド配列に関連するパーセント(%)アミノ酸配列同一性は、必要であれば、最大のパーセント配列同一性が達成されるように配列を整列させてギャップを導入した後、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮することなく、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、例として一般に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当技術分野の専門家の技術の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の完全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適当なパラメータを決定することができる。
【0095】
本明細書において使用される用語「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失、または付加の導入によって変更されている参照ポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。参照ポリペプチドは、PD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体でありうる。本明細書において使用される用語「誘導体」はまた、例えば任意のタイプの分子をポリペプチドに共有結合により付着させることによって化学的に改変されているPD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体を指す。例えば、PD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体は、例えばグリコシル化、アセチル化、peg化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解、細胞リガンドへの連結、ペプチドもしくはタンパク質タグ分子への連結、または他のタンパク質などによって化学改変することができる。誘導体は、付着した分子のタイプまたは位置のいずれかで、天然に存在するまたは開始ペプチドもしくはポリペプチドとは異なるように改変される。誘導体はさらに、ペプチドまたはポリペプチド上に本来存在する1つまたは複数の化学基の欠失を含みうる。PD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体の誘導体は、特異的化学的切断、アセチル化、製剤化、ツニカマイシンによる代謝合成などを含むがこれらに限定されるわけではない当業者に公知の技術を使用する化学的改変によって化学的に改変されうる。さらに、PD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体の誘導体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含みうる。ポリペプチド誘導体は、本明細書において記述されるPD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体、特に二重機能抗glycPD-L1モノクローナル抗体でありうる参照ポリペプチドと類似または同一の機能を保有する。
【0096】
本明細書において使用される用語「融合タンパク質」は、少なくとも2つの異種ポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。PD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体に関連して使用するときの用語「融合」は、PD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体、その変種および/または誘導体を、異種ペプチドまたはポリペプチドに接続、融合、またはカップリングさせることを指す。ある特定の実施形態において、融合タンパク質は、PD-L1ポリペプチドまたは抗PD-L1抗体の生物活性を保持する。ある特定の実施形態において、融合タンパク質は、異種ペプチドまたはポリペプチドにカップリング、融合、または接続したPD-L1抗体V領域、V領域、VCDR(1、2、または3個のVCDR)、および/またはVCDR(1、2、または3個のVCDR)を含み、融合タンパク質は、PD-L1タンパク質またはペプチド上のエピトープに結合する。他の実施形態において、Fcドメイン(好ましくはヒトFcドメイン)に融合したグリコシル化PD-L1ペプチドが提供される。融合タンパク質は、当技術分野で実践される化学カップリング反応を介して、または分子組み換え技術を介して調製されうる。
【0097】
本明細書において使用される用語「組成物」は、明記された構成成分(例えば、本明細書において提供されるポリペプチドまたは抗体)を、任意選択で明記された量または有効量で含む産物、および任意選択で明記された量または有効量の、特異的構成成分の併用または相互作用に直接または間接的に起因する任意の所望の産物を指す。
【0098】
本明細書において使用される用語「担体」は、それに曝露される細胞または哺乳動物に対して使用される投与量および濃度で非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、ビヒクル、または安定化剤を含む。しばしば、生理的に許容される担体は、水性pH緩衝液である。生理的に許容される担体の例には、緩衝液、例えばリン酸、クエン酸、コハク酸、および他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(例えば、約10アミノ酸残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;グルコース、マンノース、スクロース、またはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)が挙げられる。用語「担体」はまた、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント、完全または不完全)、賦形剤、または治療薬がそれと共に投与されるビヒクルも指しうる。薬学的担体を含むそのような担体は、滅菌の液体、例えば石油、動物、植物、または合成起源の水および油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む水および油でありうる。水は、組成物(例えば、医薬組成物)が静脈内投与されるときの例示的な担体である。食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液もまた、特に注射用溶液の液体担体として使用することができる。適した賦形剤(例えば、薬学的賦形剤)には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。望ましければ、組成物はまた、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含みうる。組成物は、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。製剤を含む経口組成物は、標準的な担体、例えば薬学等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含みうる。適した薬学的担体の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 1990, Mack Publishing Co., Easton, PAに記述される。薬学的化合物を含む組成物は、対象(例えば、患者)にとって適切な投与形態を提供するために、抗PD-L1抗体、例えば抗glycPD-L1抗体の治療有効量を単離または精製形態で、適量の担体と共に含みうる。組成物または製剤は、投与様式に適合しなければならない。
【0099】
本明細書において使用される用語「賦形剤」は、希釈剤、ビヒクル、保存剤、結合剤、または安定化剤として一般的に使用される不活性物質を指し、これには、タンパク質(例えば、血清アルブミンなど)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、グリシン、ヒスチジンなど)、脂肪酸、およびリン脂質(例えば、スルホン酸アルキル、カプリル酸など)、界面活性剤(例えば、SDS、ポリソルベート、非イオン性界面活性剤など)、糖類(例えば、スクロース、マルトース、トレハロースなど)およびポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。同様に参照として、参照により全体が本明細書に組み込まれる、Remington's Pharmaceutical Sciences, 同上を参照されたい。
【0100】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」は、必要に応じて、動物、例えばヒトに投与されるときに、有害な、アレルギー、または他の予想外のもしくは望ましくない反応を生じない分子実体、製剤および組成物を指す。抗体または追加の活性成分を含む医薬組成物の調製は、本開示に照らして、Remington's Pharmaceutical Science、同上によって例示されるように当業者に公知である。その上、動物(例えば、ヒト)の投与に関して、調製物は、連邦政府または州政府の規制当局、例えばFDA Office of Biological Standardsが必要とする、または動物、より詳しくはヒトにおいて使用するために、米国薬局方、欧州薬局方、もしくは他の一般的に認識される薬局方に記載される無菌性、発熱性、全身安全性および純度の基準を満たさなければならないと理解される。
【0101】
用語「医薬製剤」は、活性成分の生物活性を有効にすることができる形態(例えば、抗PD-L1抗体および抗glycPD-L1抗体)で存在し、製剤が投与される対象に対して許容されない毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。そのような製剤は、滅菌製剤でありえて、すなわち、無菌的であるかまたは全ての生きている微生物およびその胞子などを含まない。
【0102】
用語「添付文書」は、そのような治療製品の使用に関する指示、用途、用量、投与、禁忌、および/または警告に関する情報を含む、市販の治療製品のパッケージに慣例的に含まれる説明書を指すために使用される。
【0103】
本明細書において使用される用語「処置する」、「処置」、または「処置している」は、少なくとも1つの陽性の治療効果または利益を得る目的、例えば疾患または健康関連状態を処置する目的で、それを必要とする対象に治療剤を投与もしくは適用すること、または対象に技法もしくはモダリティを行うことを指す。例えば、処置は、様々なタイプのがんを処置する目的での、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する抗体またはその組成物もしくは製剤の薬学的有効量の投与を含みうる。用語「処置レジメン」、「投与レジメン」、または「投与プロトコール」は、互換的に使用され、治療剤、例えば記述される抗glycPD-L1抗体の投与時期および用量を指す。本明細書において使用される用語「対象」は、がんを有するまたはがんを有すると診断されたヒトまたは非ヒト動物、例えば霊長類、哺乳動物および脊椎動物のいずれかを指す。好ましい実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象はがん患者である。一実施形態において、それを必要とする対象は、二重機能抗glycPD-L1抗体処置から利益を得ることが予想または予測される。
【0104】
本明細書において使用される用語「治療上有益な」または「治療上有効な」は、それを必要とする対象(例えば、がんを有する、またはがんを有すると診断された対象)の、特に二重機能抗glycPD-L1抗体の使用および記述の方法の実施の結果としての、状態の医学的処置、治療、用量の投与に関する幸福度の促進または増強を指す。これには、疾患の兆候または症状の頻度または重症度の低減が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。例えば、がんの処置は、例えば腫瘍の大きさの低減、腫瘍の浸潤性もしくは重症度の低減、末梢組織もしくは臓器へのがん細胞の浸潤の低減、腫瘍もしくはがんの増殖速度の低減、または転移の予防もしくは低減を伴いうる。がんの処置はまた、対象において持続的な応答を達成すること、またはがんを有する対象の生存を延長させることも指しうる。
【0105】
本明細書において使用される用語「投与する」、または「投与」は、例えば、注射または経口経路を介して、体外に存在する物質を、例えば経口、皮下、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達、および/または本明細書において記述されるもしくは当技術分野で公知の他の任意の物理的送達法によって、患者に物理的に送達する行為を指す。疾患、障害、もしくは状態、またはその症状が治療的に処置されるとき、物質の投与は典型的に、疾患、障害、もしくは状態、またはその症状の発症後に起こる。予防的処置は、疾患、障害、もしくは状態、またはその症状の発症前の時点での物質の投与を伴う。
【0106】
本明細書において使用される用語「有効量」は、がんの重症度および/もしくは持続、またはそれに関連する症状を低減、減少、軽減、および/または改善するために十分である治療薬(例えば、本明細書において提供される抗体または医薬組成物)の分量または量を指す。この用語はまた、がんの進展または進行の低減または改善、がんの再発、発生、または発症の低減または改善;および/または別のがん治療(例えば、本明細書において提供される抗PD-L1抗体または抗glycPD-L1抗体の投与以外の治療)の予防または治療効果の改善または増強にとって必要な量を包含する。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される抗体の有効量は、約0.1mg/kgまたは0.1mg/kgに等しい値(対象の体重1kgあたりの抗体のmg)から約100mg/kgまたは100mg/kgに等しい値までである。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体の有効量は、約0.1mg/kgまたは0.1mg/kgに等しい、約0.5mg/kgまたは0.5mg/kgに等しい、約1mg/kgまたは1mg/kgに等しい、約3mg/kgまたは3mg/kgに等しい、約5mg/kgまたは5mg/kgに等しい、約10mg/kgまたは10mg/kgに等しい、約15mg/kgまたは15mg/kgに等しい、約20mg/kgまたは20mg/kgに等しい、約25mg/kgまたは25mg/kgに等しい、約30mg/kgまたは30mg/kgに等しい、約35mg/kgまたは35mg/kgに等しい、約40mg/kgまたは40mg/kgに等しい、約45mg/kgまたは45mg/kgに等しい、約50mg/kgまたは50mg/kgに等しい、約60mg/kgまたは60mg/kgに等しい、約70mg/kgまたは70mg/kgに等しい、80mg/kg、90mg/kg、または100mg/kgである。これらの量は、その中の量および範囲を含むことを意味する。いくつかの実施形態において、「有効量」はまた、特定の結果(例えば、細胞表面PD-L1への細胞表面PD-1の結合を防止、遮断、もしくは阻害すること;またはPD-1/PD-L1媒介免疫抑制を防止、遮断、もしくは阻害すること)を得るための、本明細書において提供される抗体の量も指す。
【0107】
他の治療(例えば、他の薬剤、がんの薬物、がんの治療)の投与の文脈における用語「併用」は、1つ超の治療(例えば、薬物治療および/またはがんの治療)の使用を含む。1つまたは複数のさらなる治療剤との「併用」投与は、同時(例えば、並行)投与および任意の順序での連続投与を含む。用語「併用」の使用は、治療が対象に投与される順序を限定しない。非限定的な例として、第1の治療(例えば、抗glycPD-L1抗体などの薬剤)を、がんを有するまたはがんを有すると診断された対象への、第2の治療(例えば、薬剤)の投与の(例えば、1分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間)前、同時、または(例えば、1分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間もしくはそれ超)後に投与してもよい。
【0108】
治療の併用(例えば、治療剤を含む薬剤の使用)は、任意の2つ以上の単剤治療の相加効果より有効でありうる(例えば、相乗効果を有する)か、または副作用プロファイルの改善、治療効果の有効性もしくは持続期間の増加、併用が有効である患者集団がより広いこと等などの事前に予測されない他の恩典を有しうる。そのような効果は典型的に予想外で、予測することができない。例えば、治療剤の併用の相乗効果によってしばしば、1つもしくは複数の薬剤のより低用量を使用することができ、および/または薬剤をがん患者により少ない回数で投与することができる。治療薬およびがん治療のより低用量を利用できること、ならびに/または治療の投与回数がより少ないことは、治療の有効性を低減させることなく、対象への治療の投与に関連する毒性の可能性を低減させる。加えて、相乗効果によって、処置における治療の有効性の改善またはがんの軽減が起こりうる。同様に、治療(例えば、治療剤)の併用によって証明される相乗効果により、任意の単剤治療の使用に関連する有害なまたは望ましくない副作用を回避または低減することができる。
【0109】
二重機能抗グリコシル化PD-L1抗体
本明細書において、グリコシル化PD-L1タンパク質(例えば、特異的N-グリカン構造を有するPD-L1タンパク質;PD-L1の特異的グリコペプチド)またはグリコシル化PD-L1ペプチドに結合して、PD-L1/PD-1相互作用の結合を低減または遮断し、同様に腫瘍細胞上のPD-L1の内在化および分解を促進するという点において二重機能である抗体またはその結合断片、ならびに疾患、特にがんの処置におけるそのような抗体の使用が提供される。抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化PD-L1に優先的に結合する。本明細書において記述される二重機能抗glycPD-L1抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE Igクラスの抗体、ならびに抗原結合活性を保持する抗体CDRドメインを含むポリペプチドでありうる。実例として、二重機能抗glycPD-L1抗体は、キメラ抗体、親和性成熟抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体でありうる。好ましい実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、モノクローナル抗glycPD-L1抗体は、STM073もしくはSTM108である。別の好ましい実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、ヒト化抗体またはキメラ抗体、特にSTM073またはSTM108のヒト化またはキメラ形態である。公知の手段によって、および本明細書において記述されるように、そのような抗原またはエピトープが、天然起源から単離されるか、または天然の化合物の合成誘導体もしくは変種であるかによらず、グリコシル化PD-L1抗原、そのそれぞれのエピトープの1つもしくは複数、または前述の任意のコンジュゲートに対して特異的な、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、抗体断片、結合ドメイン、およびCDR(前述のいずれかの改変形態を含む)を作製してもよい。抗体は二重特異性または二重パラトープ性でありうる。
【0110】
一実施形態において、抗体はキメラ抗体、例えば異種の非ヒト、ヒト、またはヒト化配列(例えば、フレームワークおよび/または定常ドメイン配列)に移植された非ヒトドナー由来の抗原結合配列(例えば、Vドメインおよび/またはCDR)を含む抗体である。一実施形態において、非ヒトドナー配列は、マウスまたはラットに由来する。特定の実施形態において、VおよびVドメインは、非ヒト、例えばマウスであり、定常ドメインはヒトである。一実施形態において、抗原結合配列は、合成、例えば変異誘発(例えば、ヒトファージライブラリのファージディスプレイスクリーニングなど)によって得られる。一実施形態において、キメラ抗体はマウスV領域とヒトV領域とを有する。一実施形態において、マウス軽鎖V領域はヒトκ軽鎖C領域に融合される。一実施形態において、マウス重鎖V領域は、ヒトIgG1 C領域に融合される。
【0111】
一実施形態において、抗体は、ラクダ抗体に由来し、好ましくはVHドメイン配列またはNanobodies(商標)として知られる、軽鎖を欠如する重鎖ラクダ抗体に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインである。Nanobody(商標)(Nb)は、天然に存在する一本鎖抗体の最小の機能的断片または単一可変ドメイン(VH)であり、当業者に公知である。それらは、ラクダに見られる重鎖のみの抗体に由来する(Hamers-Casterman et al., 1993, Nature, 363, p. 446-448;Desmyter et al., 1996, Nat. Struct. Biol., p. 803-811)。「ラクダ」科では、軽鎖ポリペプチドを欠如する免疫グロブリンが見出される。「ラクダ」は、旧大陸ラクダ(フタコブラクダ(Camelus bactrianus)およびヒトコブラクダ(Camelus dromedarius))、ならびに新大陸ラクダ(例えば、アルパカ(Lama paccos)、リャマ(Lama glama)、グアナコ(Lama guanicoe)、およびビクーニャ(Lama vicugna))を含む。単一可変ドメイン重鎖抗体は、本明細書において、Nanobody(商標)またはVH抗体として示される。Nbの大きさが小さいことおよび独自の生物物理学的特性は、一般的でないまたは隠れたエピトープの認識に関して、およびタンパク質標的の腔または活性部位への結合に関して通常の抗体断片より優れている。さらに、Nbは、レポーター分子に付着したまたはヒト化された、多重特異性および多価抗体として設計することができる。Nbは、安定で、消化管系で分解されることなく、容易に製造することができる。
【0112】
別の実施形態において、抗体は二重特異性抗体である。異なる特異性の2つの抗原結合部位を1つの構築物に統合すると、二重特異性抗体は、優れた特異性を有する2つの異なる抗原を一つにする能力を有し、したがって、治療剤として非常に有望である。二重特異性抗体は、それぞれが異なる免疫グロブリンを産生することができる、2つのハイブリドーマを融合することによって当初作製された。二重特異性抗体はまた、完全な免疫グロブリンに存在するFc部分を除外しながら2つのscFv抗体断片を接続させることによっても産生される。そのような構築物におけるそれぞれのscFv単位は、合成ペプチドリンカーによって互いに接続した、重鎖(V)および軽鎖(V)抗体鎖のそれぞれからの1つの可変ドメインを含み、後者はしばしば、タンパク質分解に対して最大限の抵抗性を残しながら最小の免疫原性となるように遺伝子改変されている。それぞれのscFv単位を、2つのscFv単位を架橋する短い(通常、10アミノ酸未満)ポリペプチドスペーサーを組み込むことを含む、多数の公知の技術によって接続して、それによって二重特異性一本鎖抗体を作製してもよい。したがって、得られた二重特異性一本鎖抗体は、それぞれのscFv単位におけるVおよびVドメインが、これらの2つのドメイン間の分子内会合を可能にするために十分に長いポリペプチドリンカーによって隔てられており、そのように形成されたscFv単位が、例えば1つのscFv単位のVドメインと他のscFv単位のVドメインとの間での望ましくない会合を防止するために十分に短く維持されるポリペプチドスペーサーを通して互いに連続してつながれている、1つのポリペプチド鎖上で異なる特異性の2つのV/V対を含む種である。
【0113】
別の実施形態において、抗体は二重パラトープ性抗体である。本明細書において使用される用語「二重パラトープ性抗体」は、同じタンパク質標的、例えば腫瘍関連PD-L1標的抗原または本明細書において記述されるグリコシル化PD-L1標的抗原上の2つの異なる重なり合わないエピトープ、抗原性決定基、またはドメインを認識して結合する2つの抗原結合ドメインを含む二重特異性結合分子を指す。一実施形態において、本明細書において記述されるglycPD-L1またはその1つもしくは複数のペプチド部分に対する二重パラトープ性抗体は、第1の免疫グロブリン可変ドメインと第2の免疫グロブリン可変ドメインとを含み、2つの結合ドメインは、同じ標的glycPD-L1タンパク質の2つの異なる重なり合わないエピトープに結合する。第1および第2の免疫グロブリン結合ドメインによって認識されるエピトープの1つまたは両方はグリコシル化されていてもよく、またはグリコシル化残基を含んでもよい。好ましくは、免疫グロブリンの少なくとも1つは、非グリコシル化形態と比較してglycPD-L1タンパク質のグリコシル化形態に優先的に結合する。
【0114】
別の実施形態において、二重パラトープ性抗体は、glycPD-L1標的分子上のエピトープに結合する免疫グロブリン(好ましくは四価IgG)と、同じglycPD-L1標的分子上の異なる重なり合わないエピトープに結合するscFvとを含み、免疫グロブリンとscFvは、免疫グロブリンおよびscFvが、glycPD-L1標的分子上の異なる重なり合わないエピトープに結合することができるようにリンカーによって連結される。したがって、二重パラトープ性抗体は、結合親和性/アビディティを増強するため、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)などのエフェクター機能を増強するために腫瘍細胞上の抗体量を増加するため、ならびに/または腫瘍の保持時間を改善もしくは増加するために、同じglycPD-L1標的上の異なるエピトープ(またはドメイン)に結合する2つの抗glycPD-L1から作製される。加えて、腫瘍関連glycPD-L1抗原上の2つの重なり合わないエピトープを標的とする二価の二重パラトープ性抗体は、細胞膜においてglycPD-L1標的分子のクラスターを誘導する可能性を有し、次に、内在化、リソソーム輸送、および分解の増加を促進しうる。標的タンパク質/抗原上の2つの異なる重なり合わないエピトープに対する二重パラトープ性抗体は、当技術分野で公知の技術を使用して作製されうる。例えば、B. Roberts et al., 1999, Int. J. Cancer, Vol. 81:285-291 (carcinoembryonic antigen, CEA);D. Lu et al., 1999, J. Immunol. Methods, Vol. 230:159-71 (vascular endothelial growth factor receptor 2, VEGF2);2009年6月4日に公開された国際公開第2009/068627号パンフレット、Ablynx NV;2010年12月16日に公開された国際公開第2010/142534号パンフレット、およびAblynx NVを参照されたい。
【0115】
一実施形態において、二価の二重パラトープ性抗体は、所定のglycPD-L1標的タンパク質上の異なる重なり合わないエピトープを認識して結合する、本明細書において記述されるように同定された2つの異なる抗glycPD-L1抗体からの可変ドメイン配列を使用することによって産生してもよく、抗体は、glycPD-L1上の異なる重なり合わないエピトープを認識する第2の抗PD-L1抗体のH鎖および/もしくはL鎖のN末端、またはあるいはC3ドメインのC末端に結合した抗glycPD-L1抗体の1つの一本鎖可変断片(scFv)を含む。scFvを、ペプチドリンカー、例えばscFvにおける結合ドメインを連結するために使用されるリンカーなどを介して、第2の抗PD-L1抗体に連結してもよい。例えば、Dimasi et al., J. Mol. Biol., 393:672-692 (2009)を参照されたい。得られた結合分子産物または二重パラトープ性抗体は、glycPD-L1上の2つの異なるエピトープと相互作用して結合することができる4つの抗glycPD-L1結合単位または2つの結合単位を、分子のそれぞれのアームに含む。本実施形態によれば、腫瘍細胞の表面上に発現したglycPD-L1上の2つの重なり合わないエピトープを標的とする二価の二重パラトープ性抗体は、エピトープ結合を通してglycPD-L1と有効に架橋して、細胞表面上のglycPD-L1のクラスター形成を誘導し、増強された内在化およびリソソーム分解を誘発および促進する大きい複合体を形成することができる。一実施形態において、二重パラトープ性抗体を、本明細書においてさらに記述されるように、毒素または抗がん剤に連結して抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を産生する。そのような抗PD-L1二重パラトープ性抗体の増強された内在化およびエンドサイトーシスならびにリソソーム輸送によって、最終的に標的細胞への毒素の大量の送達およびより大きい腫瘍細胞の殺滅または縮小が起こる。そのような効果は、二重パラトープ性抗HER2 ADCに関して記述されているように(J.Y. Li et al., 2016, Cancer Cell, Vol. 29:117-129)in vitroおよびin vivoの両方で観察された。実例として、そのPD-1の同起源結合パートナーとのその相互作用を防止または遮断するために、ならびに抗glycPD-L1 ADCを使用する場合にはその内在化および分解、ならびに腫瘍細胞の殺滅を促進するために、グリコシル化膜結合PD-L1の2つの重なり合わないエピトープに特異的に結合する二重パラトープ性抗glycPD-L1抗体または抗glycPD-L1 ADCを産生してもよい。
【0116】
他の実施形態において、本発明によって包含される抗glycPD-L1結合分子または抗体は、多重パラトープ性であってもよく、すなわち同じglycPD-L1標的分子上に3つ、4つ、またはそれ超の異なる、好ましくは重なり合わないエピトープまたは抗原性決定基を認識して結合する抗原結合ドメインを含んでもよい。なお他の実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、二重パラトープ性または多重パラトープ性で多価の両方であり、すなわち異なる標的glycPD-L1分子上の1つまたは複数の異なるエピトープまたは抗原性決定基を認識して結合する抗原結合部位または「パラトープ」を同様に含む。
【0117】
使用するために適した抗体断片の例には、(i)V、V、C、およびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VおよびCH1ドメインからなる「Fd」断片;(iii)1つの抗体のVおよびVドメインからなる「Fv断片」;(iv)Vドメインからなる「dAb」断片;(v)単離CDR領域;(vi)F(ab’)2断片、2つの連結したFab断片を含む二価の断片;(vii)VドメインとVドメインが、2つのドメインを会合させて結合ドメインを形成するペプチドリンカーによって連結されている一本鎖Fv分子(「scFv」);(viii)二重特異性一本鎖Fv二量体(米国特許第5,091,513号明細書を参照されたい);および(ix)ダイアボディ、遺伝子融合によって構築された多価または多重特異性断片(米国特許出願公開第20050214860号明細書)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。Fv、scFv、またはダイアボディ分子は、VおよびVドメインを連結するジスルフィド架橋を取り込むことによって安定化されうる。CH3ドメインに接続したscFvを含むミニボディ(Hu et al., 1996, Cancer Res., 56:3055-3061)も同様に、有用でありうる。加えて、抗体様結合ペプチド模倣体も同様に、実施形態において企図される。「抗体様結合ペプチド模倣体」(ABiP)は、小さい抗体として作用し、より長い血清中半減期およびより面倒でない合成方法という特定の利点を有するペプチドであり、Liu et al., 2003, Cell Mol. Biol., 49:209-216によって報告されている。
【0118】
動物に、グリコシル化PD-L1ポリペプチドまたはペプチドなどの抗原を接種して、免疫応答を生成させて、グリコシル化PD-L1ポリペプチドに対して特異的な抗体を産生してもよい。免疫応答を増強するために、しばしば、抗原を別の分子に結合またはコンジュゲートさせる。本明細書において使用されるように、コンジュゲートは、動物において免疫応答を誘発するために使用される、抗原に結合する任意のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または非タンパク質様物質である。抗原の接種に応答して動物において産生される抗体は、多様な個々の抗体産生Bリンパ球によって作製される多様な非同一の分子(ポリクローナル抗体)を含む。ポリクローナル抗体は、そのそれぞれが、同じ抗原上の異なるエピトープを認識しうる抗体種の混合集団である。動物におけるポリクローナル抗体産生に対する正確な条件を考慮すると、動物の血清中の抗体のほとんどは、動物が免疫されている抗原性化合物上の集合的エピトープを認識する。この特異性を親和性精製によってさらに増強して、目的の抗原またはエピトープを認識するそれらの抗体のみを選択する。
【0119】
モノクローナル抗体は、全ての抗体産生細胞が、1つの抗体産生Bリンパ球に由来することから、あらゆる抗体分子が同じエピトープを認識する抗体の1つのクローン種である。モノクローナル抗体(MAb)を作製する方法は、ポリクローナル抗体を調製する方法と同じ方向に沿って始まる。いくつかの実施形態において、マウスおよびラットなどの齧歯類を、モノクローナル抗体の生成に使用する。いくつかの実施形態において、ウサギ、ヒツジ、またはカエル細胞がモノクローナル抗体の生成に使用される。ラットの使用は周知であり、特定の利点を提供しうる。マウス(例えば、BALB/cマウス)は日常的に使用され、一般的に、安定な融合体を高い割合で生じる。モノクローナル抗体産生に使用されるハイブリドーマ技術は、グリコシル化PD-L1タンパク質またはペプチドによって予め免疫したマウスから単離した1つの抗体産生Bリンパ球と、不死化骨髄腫細胞、例えばマウス骨髄腫細胞株との融合を伴う。この技術は、1つの抗体産生細胞を、無限の世代にわたって繁殖させる方法を提供し、それによって同じ抗原またはエピトープ特異性を有する構造的に同一の抗体、すなわちモノクローナル抗体の無限の量が産生されうる。
【0120】
モノクローナル抗体および他の抗体および組み換えDNA技術を使用して改変抗体を作製して、当初の抗体の抗原またはエピトープ結合特異性を保持する他の抗体またはキメラ抗体を産生してもよく、すなわち分子は、特異的結合ドメインを有する。そのような技術は、抗体の免疫グロブリン可変領域またはCDRをコードするDNAを、異なる抗体のフレームワーク領域、定常領域、または定常領域プラスフレームワーク領域に対する遺伝子材料に導入することを伴いうる。例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,091,513号明細書および同第6,881,557号明細書を参照されたい。
【0121】
本明細書において記述される公知の手段によって、そのような抗原またはエピトープが天然起源から単離されたか、または天然化合物の合成誘導体もしくは変種であるか否かによらず、グリコシル化PD-L1タンパク質、1つもしくは複数のそのそれぞれのエピトープに特異的に結合し、腫瘍細胞においてPD-1へのPD-L1結合の遮断、かつPD-L1の内在化の促進という二重機能を有する、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、結合活性、結合ドメイン、およびCDRを有する抗体断片(前述の任意の改変形態を含む)を作製してもよい。
【0122】
抗体は、鳥類および哺乳動物を含む任意の動物起源から産生してもよい。好ましくは、抗体は、ヒツジ、ネズミ(例えば、マウスおよびラット)、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリである。加えて、ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリをスクリーニングすることにより、ヒト抗体を得ることができる。例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,946,546号明細書に記述されるように、動物の免疫を行うことなく、バクテリオファージ抗体発現技術によって、特異的抗体を産生することができる。これらの技術は、Marks, 1992, Bio/Technol., 10:779-783;Stemmer, 1994, Nature, 370:389-391;Gram et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:3576-3580;Barbas et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:3809-3813;およびSchier et al., 1996, Gene, 169(2):147-155に詳しく記述されている。
【0123】
様々な動物種においてポリクローナル抗体を産生する方法、ならびにヒト化抗体、キメラ抗体、および完全ヒト抗体を含む様々なタイプのモノクローナル抗体を産生する方法は、当技術分野で周知であり、非常に再現性が高い。例えば、以下の米国特許は、そのような方法の説明を提供するものであり、参照により全体が本明細書に組み込まれる:米国特許第3,817,837号明細書;同第3,850,752号明細書;同第3,939,350号明細書;同第3,996,345号明細書;同第4,196,265号明細書;同第4,275,149号明細書;同第4,277,437号明細書;同第4,366,241号明細書;同第4,469,797号明細書;同第4,472,509号明細書;同第4,606,855号明細書;同第4,703,003号明細書;同第4,742,159号明細書;同第4,767,720号明細書;同第4,816,567号明細書;同第4,867,973号明細書;同第4,938,948号明細書;同第4,946,778号明細書;同第5,021,236号明細書;同第5,164,296号明細書;同第5,196,066号明細書;同第5,223,409号明細書;同第5,403,484号明細書;同第5,420,253号明細書;同第5,565,332号明細書;同第5,571,698号明細書;同第5,627,052号明細書;同第5,656,434号明細書;同第5,770,376号明細書;同第5,789,208号明細書;同第5,821,337号明細書;同第5,844,091号明細書;同第5,858,657号明細書;同第5,861,155号明細書;同第5,871,907号明細書;同第5,969,108号明細書;同第6,054,297号明細書;同第6,165,464号明細書;同第6,365,157号明細書;同第6,406,867号明細書;同第6,709,659号明細書;同第6,709,873号明細書;同第6,753,407号;同第6,814,965号明細書;同第6,849,259号明細書;同第6,861,572号明細書;同第6,875,434号明細書;同第6,891,024号明細書;同第7,407,659号明細書;および同第8,178,098号明細書。
【0124】
本明細書において提供されるグリコシル化PD-L1に対する抗体は、動物種、モノクローナル細胞株、または他の抗体起源によらず、グリコシル化PD-L1の効果を中和、遮断、阻害、または拮抗する能力を有すると予想される。ある特定の動物種は、それらが、抗体の「Fc」部分を通して補体系の活性化により免疫応答またはアレルギー応答を引き起こす可能性がありうることから、治療抗体を作製するためにはあまり好ましくない。しかし、抗体全体を、「Fc」(補体結合)断片および結合ドメインまたはCDRを有するペプチド断片へと酵素的に消化してもよい。Fc部分の除去は、この抗体断片が望ましくない免疫応答を誘発する可能性を低減させ、このように、Fc部分を有しない抗体は、予防的または治療的処置にとって好ましくなりうる。上記のように、抗体はまた、キメラ抗体、ヒト化抗体、または部分的もしくは完全なヒト抗体となるように、別の種において産生されているまたは別の種からのアミノ酸配列を有する抗体を動物に投与することに起因する、潜在的に有害な免疫学的効果を低減または消失させるように構築されうる。
【0125】
抗体タンパク質は、組み換えであってもよく、またはin vitroで合成されてもよい。本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体含有組成物において、全抗体ポリペプチドが1mlあたり約0.001mgから10mgの間で存在すると企図される。このため、組成物中の抗体タンパク質の濃度は、約、少なくとも約、または多くて約0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0mg/mlまたはそれ超(またはそれらから誘導可能な任意の範囲)でありうるかまたはそれらに等しい。この中で、グリコシル化PD-L1に結合する抗体は、約、少なくとも約、多くて約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%でありうるか、またはそれらに等しい。
【0126】
抗体または結合活性を保持する抗体の免疫学的部分を、他のタンパク質に化学的にコンジュゲートさせることができ、または他のタンパク質との融合タンパク質として組み換え発現させることができる。本明細書において記述される目的として、そのような全ての融合タンパク質が、抗体または抗体の免疫学的部分の定義に含まれる。いくつかの実施形態において、グリコシル化PD-L1に対して作製された二重機能抗体および抗体様分子、または少なくとも1つの薬剤と連結して抗体コンジュゲートもしくはペイロードを形成するポリペプチドが包含される。診断または治療剤としての抗体分子の有効性を増加させるために、抗体を、少なくとも1つの所望の分子または部分に連結、または共有結合、または複合体形成させてもよい。そのような連結された分子または部分は、少なくとも1つのエフェクターまたはレポーター分子でありうるがこれらに限定されるわけではない。エフェクター分子は、所望の活性、例えば細胞傷害活性を有する分子を含む。抗体に付着されうるエフェクター分子の非限定的な例には、毒素、治療的酵素、抗体、放射標識ヌクレオチドなどが挙げられる。これに対し、レポーター分子は、アッセイを使用して検出されうる任意の部分として定義される。抗体にコンジュゲートされうるレポーター分子の非限定的な例には、酵素、放射標識、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、発光分子、光親和性分子、着色粒子またはリガンド、例えばビオチンなどが挙げられる。抗体をコンジュゲート分子または部分に付着またはコンジュゲートさせるいくつかの方法が当技術分野で公知である。いくつかの付着方法は、非限定的な例として有機キレート剤、例えばジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA);エチレントリアミン四酢酸;N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド;および/または抗体に付着させたテトラクロロ-3-6α-ジフェニルグリクリル-3を使用する、金属キレート錯体を使用することを伴う。抗体、特に本明細書において記述される二重機能抗体はまた、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩などのカップリング剤の存在下で酵素と反応しうる。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、慣例的に、これらのカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアネートとの反応によって調製される。別の実施形態において、本明細書において記述される二重機能抗glycPD-L1抗体を、投与後の血漿、血清、または血液中のそのin vivo半減期を増加させるために、化合物または物質、例えばポリエチレングリコール(PEG)にカップリングまたは連結させてもよい。
【0127】
特定の実施形態において、非グリコシル化PD-L1タンパク質と比較してグリコシル化PD-L1タンパク質に特異的かつ優先的に結合し、PD-L1/PD-1結合の遮断、かつPD-L1内在化および分解の促進という2つの活性を有する抗体、例えばモノクローナル抗体、およびそのヒト化およびキメラ形態、ならびにその抗原結合断片が提供される。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、例えば配列番号1に記載されるPD-L1タンパク質のアミノ酸配列の35、192、200、および/または219位でグリコシル化されているPD-L1タンパク質に特異的または優先的に結合する。例えば、抗glycPD-L1抗体の特異的または選択的結合は、非グリコシル化PD-L1と関連して示されるKの半分より小さいKでグリコシル化PD-L1抗原への抗体の結合を伴う。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKより少なくとも5倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKより少なくとも10倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、実施例6に記述される細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、WT PD-L1を発現する細胞に、非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への結合に対するMFIより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍高いMFIとして表される結合を示す。
【0128】
一実施形態において、STM073が結合するPD-L1エピトープに特異的に結合するグリコシル化PD-L1に特異的であり、優先的に結合する二重機能抗体またはその結合断片が提供される。ある特定の実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号1のヒトPD-L1アミノ酸配列のH69、Y112、R113、およびK124位を包含するPD-L1上のエピトープに特異的に結合する。一実施形態において、エピトープのアミノ酸は不連続であり、エピトープはコンフォメーションエピトープである。STM073 MAbエピトープを包含するヒトPD-L1ポリペプチドの領域は、配列VGEEDLKVQH------DAGVYRCMISYGGADYRITV(すなわち、配列番号85または配列番号1のV68~V128)を有し、ここでMAb STM073によって認識されるエピトープを構成するアミノ酸残基H69、Y112、R113、およびK124を下線で示す。STM073エピトープ配列において、78位のアミノ酸残基ヒスチジン(H)と108位のアミノ酸残基アスパラギン酸(D)の間のダッシュは、配列番号1のヒトPD-L1アミノ酸配列の79~107位のアミノ酸を表す。
【0129】
別の実施形態において、抗glycPD-L1モノクローナル抗体STM108またはそのヒト化もしくはキメラ形態であるグリコシル化PD-L1に特異的であり、優先的に結合する二重機能抗体またはその結合断片が提供される。特定の実施形態において、二重機能抗glycPD-L1は、本明細書における配列番号1のヒトPD-L1アミノ酸配列のS80、Y81、K162、およびS169位を包含するPD-L1上のエピトープに特異的に結合する。STM073 MAbエピトープを包含するヒトPD-L1ポリペプチドの領域は、アミノ酸配列LKVQHSSYRQR------EGYPAEVIWTSDHQ(配列番号1のL74-Q173位)を有し、ここでMAb STM108によって認識されるエピトープを構成するアミノ酸残基S80、Y81、K162、およびS169位を下線で示す。STM108エピトープ領域において、84位のアミノ酸残基アルギニン(R)と158位のアミノ酸残基グルタミン酸(E)の間のダッシュは、配列番号1のヒトPD-L1アミノ酸配列の85~157位のアミノ酸を表す。このように、STM108 MAbエピトープのアミノ酸は不連続であり、エピトープはコンフォメーションエピトープである。
【0130】
STM073 MAbの重鎖および軽鎖可変(V)ドメインの核酸(DNA)および対応するアミノ酸配列を、以下の表3に示す。表3は、STM073の成熟(すなわち、シグナルペプチドを含まない)VおよびVドメイン(それぞれ、配列番号2、3、10、および11)、ならびにシグナルペプチドを含むVおよびVドメイン配列(それぞれ、配列番号87、88、89、および90)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列の両方を提供する。表3に示される重鎖DNAおよびタンパク質Vドメイン配列において、アミノ末端シグナル配列をイタリック体で表す。同様に、KabatおよびChothia両方の定義によって決定される、STM073 MAb重鎖および軽鎖VドメインCDRを表3に示す。
【0131】
一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号3のVドメインおよび配列番号11のVドメインを含む。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的に結合に関して、配列番号3のVドメインおよび配列番号11のVドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメインを含む。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインを含む。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、(a)配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメイン;ならびに(b)配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインを含む。実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、上記のVおよびVドメインならびにそのCDRを含む抗体と競合する。
【0132】
一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%同一であるVドメイン、および/または配列番号11のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%同一であるVドメインを含み、PD-1へのグリコシル化PD-L1の結合を阻害または遮断し、細胞膜上のPD-L1発現の脱安定化を促進する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列それぞれに関して、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインを含み、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1のPD-1への結合を遮断し、かつ細胞膜上のPD-L1発現の脱安定化を促進する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインを含む。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、(a)少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列それぞれに関して、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインと、(b)少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインとを含み、抗体は、グリコシル化PD-L1のPD-1への結合を遮断すし、かつ細胞膜上のPD-L1発現の脱安定化を促進する。同様に、AbM、Contact、またはIMGT定義CDRを使用して、ヒトフレームワーク領域、および任意選択でヒト定常ドメインを有するSTM073のヒト化形態が提供される。
【0133】
前述の二重機能抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKの半分より小さいKでグリコシル化PD-L1に結合する。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKより少なくとも5倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1タンパク質と比較して示されるKより少なくとも10倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に対する二重機能抗glycPD-L1抗体の結合親和性は、下限および上限値を含む、5~20nMまたは5~10nMである。一実施形態において、実施例6に記述される細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、WT PD-L1を発現する細胞に、非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への結合に対するMFIより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍大きいMFIとして表される結合を示す。
【0134】
一実施形態において、抗体は、PD-1とPD-L1との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞によって発現されるPD-1と、腫瘍細胞によって発現されるPD-L1、特にグリコシル化PD-L1との相互作用を阻害する。抗体は、PD-L1の内在化およびPD-L1の分解をさらに促進し、それによって細胞表面上のPD-L1レベルを低減させる。
【0135】
別の特定の実施形態において、抗glycPD-L1モノクローナル抗体STM108である、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する抗体またはその結合断片が提供される。STM108 MAbの成熟重鎖および軽鎖可変(V)ドメイン(配列番号18、19、26、および27)の核酸(DNA)および対応するアミノ酸配列を以下の表3に示す。プロセシングされていない重鎖Vドメイン(すなわち、N-末端のシグナル配列を含む)のDNAおよびアミノ酸配列も同様に、表3(それぞれ配列番号91、および92)に示す。同様に、KabatおよびChothia両方の定義に従う、STM108 MAb重鎖および軽鎖VドメインCDRも表3に示す。
【0136】
一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号19のアミノ酸配列のVドメインと、配列番号27のアミノ酸配列のVドメインとを含む。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号19のアミノ酸配列のVドメインと、配列番号27のアミノ酸配列のVドメインとを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメインを含む。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインを含む。一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、(a)配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1~3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1~3、またはその組み合わせを含むVドメインと、(b)配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1~3を含むVドメインとを含む。実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、上記のVおよびVドメインならびにそのCDRを含む抗体と競合する。
【0137】
一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、配列番号19のアミノ酸配列と、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるVドメインと、配列番号27のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるVドメインとを含む。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列それぞれ、またはその組み合わせを有するCDR1~3を含むVドメインを含む。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインを含む。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に特異的かつ優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体は、(a)少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列それぞれに関して、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列それぞれ、またはその組合せに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメイン、および/または(b)少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1~3を含むVドメインを含む。同様に、AbM、Contact、またはIMGT定義CDRを使用して、ヒトフレームワーク領域、および任意選択でヒト定常ドメインを有するSTM108のヒト化形態が提供される。
【0138】
実施形態において、前述の抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKの半分より小さいKでグリコシル化PD-L1に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1と比較して示されるKより少なくとも5倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、非グリコシル化PD-L1タンパク質と比較して示されるKより少なくとも10倍小さいKでグリコシル化PD-L1タンパク質に結合する。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に対するSTM108の結合親和性は、下限および上限値を含む、5~20nMまたは5~10nMである。一実施形態において、実施例6に記述される細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、WT PD-L1を発現する細胞に、非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への結合に対するMFIより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍大きいMFIとして表される結合を示す。これらの抗glycPD-L1抗体は、PD-1とPD-L1との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞によって発現されるPD-1と、腫瘍細胞によって発現されるPD-L1、特にグリコシル化PD-L1との相互作用を阻害する。
【0139】
ヒトPD-L1アミノ酸配列DAGVYRCMISYGGADYKRITV(すなわち、配列番号1のD108~V128)内のエピトープに結合する単離二重機能抗glycPD-L1抗体もまた、一実施形態に包含される。一実施形態において、単離二重機能抗glycPD-L1抗体は、不連続であり、以下の配列DAGVYRCMIYGGADYKRITV(配列番号86)における下線のアミノ酸残基として示される配列番号1のヒトPD-L1アミノ酸配列のY112、R113、およびS117位を包含するヒトPD-L1エピトープに特異的に結合する。
【0140】
一実施形態において、(a)配列番号4のアミノ酸配列を有するChothia CDR H1または配列番号5のアミノ酸配列を有するKabat CDR H1;配列番号6のアミノ酸配列を有するChothia CDR H2または配列番号7のアミノ酸配列を有するKabat CDR H2;および配列番号8のアミノ酸配列を有するChothia CDR H3または配列番号9のアミノ酸配列を有するKabat CDR H3を含むVドメイン;ならびに配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR L1;配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR L2;および配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR L3を含むVドメインを含む、単離二重機能抗glycPD-L1抗体が提供される。同様に、以下の表2に詳細に記述されるIMGT、AbM、またはContact定義に従うCDRを有するSTM073のヒト化形態である単離二重機能抗glycPD-L1抗体も提供される。
【0141】
別の実施形態において、(a)配列番号20のアミノ酸配列を有するChothia CDR H1または配列番号21のアミノ酸配列を有するKabat CDR H1;配列番号22のアミノ酸配列を有するChothia CDR H2または配列番号23のアミノ酸配列を有するKabat CDR H2;および配列番号24のアミノ酸配列を有するChothia CDR H3または配列番号25のアミノ酸配列を有するKabat CDR H3を含むVドメイン;ならびに配列番号28のアミノ酸配列を有するCDR L1;配列番号30のアミノ酸配列を有するCDR L2;および配列番号32のアミノ酸配列を有するCDR L3を含むVドメインを含む、単離二重機能抗glycPD-L1抗体が提供される。同様に、以下の表2に詳細に記述されるIMGT、AbM、またはContact定義に従うCDRを有するSTM108のヒト化形態である単離二重機能抗glycPD-L1抗体も提供される。
【0142】
別の実施形態において、VHGEEDLKVQH------DAGVYRCMISYGGADYKRITV(配列番号85)、DAGVYRCMISYGGADYKRITV(配列番号86)、またはLKVQHSSYRQR------EGYPKAEVIWTSSDHQ(それぞれ、配列番号1のアミノ酸74~84位および158~173位である)から選択されるアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合し、配列が配列番号1のヒトPD-L1ポリペプチド配列内、すなわち配列番号1のアミノ酸19~290位を含む成熟PD-L1タンパク質内に位置する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、そのキメラもしくはヒト化形態、またはその結合断片が提供される。一実施形態において、抗体は、PD-1とPD-L1との相互作用、特にエフェクターT細胞によって発現するPD-1と腫瘍細胞によって発現するPD-L1、特にグリコシル化PD-L1との相互作用、ならびにPD-L1の細胞膜から細胞への内在化およびPD-L1の細胞内分解を容易にする。
【0143】
別の実施形態において、本明細書において記述されるMAb STM073または単離抗glycPD-L1 Mabと同じエピトープに結合する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、そのキメラもしくはヒト化形態、またはその結合断片が提供され、エピトープは、配列番号1のアミノ酸残基H69、Y112、R113、およびK124を含む。別の実施形態において、グリコシル化PD-L1に結合すると、以下のアミノ酸残基:配列番号1のH69、Y112、R113、およびK124の少なくとも1つに接触する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、そのキメラもしくはヒト化形態、またはその結合断片が提供される。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、PD-L1、すなわちグリコシル化ヒトPD-L1のエピトープ領域を含むアミノ酸残基の少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つに接触する。
【0144】
別の実施形態において、配列番号1のアミノ酸残基S80、Y81、K162、およびS169を含むエピトープに結合する、MAb STM108、または単離抗glycPD-L1 Mabと同じエピトープに結合する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、そのキメラもしくはヒト化形態、またはその結合断片が提供される。別の実施形態において、グリコシル化PD-L1に結合すると、配列番号1の以下のアミノ酸残基:S80、Y81、K162、およびS169の少なくとも1つに接触する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体が提供される。
【0145】
別の実施形態において、グリコシル化PD-L1に結合すると、以下のアミノ酸残基:配列番号1のY112、R113、およびS117の少なくとも1つに接触する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、そのキメラもしくはヒト化形態、またはその結合断片が提供される。
【0146】
別の実施形態において、グリコシル化PD-L1に結合すると、配列番号1のV68~V128のアミノ酸領域内、または配列番号1のD108~V128のアミノ酸領域内、または配列番号1のL74~Q173のアミノ酸領域内、または配列番号1のL74~R84ならびにE158~Q173のアミノ酸領域内の少なくとも1つのアミノ酸に接触する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、そのキメラもしくはヒト化形態、またはその結合断片が提供される。別の実施形態において、グリコシル化PD-L1に結合すると、以下の群のアミノ酸残基:配列番号1のV68~V128のアミノ酸領域内のH69、Y112、R113、およびK124の少なくとも1つに接触する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、そのキメラもしくはヒト化形態、またはその結合断片が提供される。別の実施形態において、グリコシル化PD-L1に結合すると、以下の群のアミノ酸残基:配列番号1のV68~V173のアミノ酸領域内のH69、S80、Y81、Y112、R113、K124、K162、S169の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つに接触する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、そのキメラもしくはヒト化形態、またはその結合断片が提供される。一実施形態において、グリコシル化PD-L1に結合すると、以下の群のアミノ酸残基:配列番号1のD108~V128のアミノ酸領域内のY112、R113、S117に接触する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、そのキメラもしくはヒト化形態、またはその結合断片が提供される。
【0147】
別の実施形態において、グリコシル化PD-L1に結合すると、PD-L1タンパク質(配列番号1)の少なくともアミノ酸領域V68~V128、または少なくともアミノ酸領域D108~V128に結合する、単離二重機能抗glycPD-L1抗体、例えばモノクローナル抗体、そのキメラもしくはヒト化形態、またはその結合断片が提供される。
【0148】
なお別の実施形態は、Vドメインをコードする配列番号2または18のヌクレオチド配列および抗体Vドメインをコードする配列番号10または26のヌクレオチド配列を含む単離核酸を提供する。一実施形態において、ヌクレオチド配列が、配列番号2または18のヌクレオチド配列と少なくとも90~98%同一である、抗glycPD-L1抗体Vドメインをコードする単離ヌクレオチド配列が提供される。一実施形態において、ヌクレオチド配列が、配列番号19または26のヌクレオチド配列と少なくとも90~98%同一である、抗glycPD-L1抗体Vドメインをコードする単離ヌクレオチド配列が提供される。実施形態において、Vおよび/またはVドメインをコードするヌクレオチド配列は、配列番号2もしくは18、または配列番号10もしくは26とそれぞれ、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ超同一である。
【0149】
【表3-1】
【0150】
【表3-2】
【0151】
【表3-3】
【0152】
【表3-4】
【0153】
疾患の処置
ある特定の態様において、本明細書における実施形態に記述される抗体またはその抗原結合断片(例えば、グリコシル化PD-L1に特異的に結合する二重機能抗体)は、がんに罹患している対象においてがんを処置するために、またはがんを発症する素因(遺伝的素因、発がん物質に対する過去の環境による曝露、過去のがんの発生等)を有する対象においてがんを防止するために投与されうる。したがって、本明細書において、がんを処置するために、少なくとも1つの二重機能抗glycPD-L1抗体の治療有効量を、必要とする対象に投与することによって、がんを処置する方法を提供する。本明細書において述べたように、処置は、がん細胞の成長、増殖、遊走などを低減させる、防止する、阻害する、または遮断することを伴い、がん細胞の細胞殺滅またはアポトーシスを引き起こすことを含む。処置はまた、腫瘍細胞の転移を防止または転移の縮小を引き起こしうる。本明細書において記述される方法は、特に免疫エフェクター細胞、例えばT細胞、特にキラーまたは細胞傷害性T細胞の細胞表面で発現するPD-1に結合/相互作用することができるグリコシル化PD-L1細胞表面タンパク質を発現する腫瘍細胞に関して、処置を受けている対象、例えばヒト患者に利益を提供する。
【0154】
これらの対象を、記述される二重機能抗glycPD-L1抗体の少なくとも1つの有効量によって処置すると、腫瘍細胞上のグリコシル化PD-L1への抗体の結合が起こり、PD-L1とPD-1の相互作用を防止、遮断、または阻害し、PD-L1の内在化および分解を促進して、PD-L1発現腫瘍細胞とPD-1発現T細胞との相互作用を防止、遮断、または阻害して、それによってT細胞活性の免疫抑制を防止または回避して、T細胞を活性化させてPD-L1を有する腫瘍細胞を殺滅することができると予想される。好ましい実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体は、ヒトPD-L1に結合し、対象はヒト患者である。したがって、本明細書において提供される方法は、本発明の方法の実践によって得られる抗がん結果を必要とする、抗がん結果から利益を得ることができる、または抗がん結果の利益を受けることを望む対象にとって有利である。対象が、少なくとも1つの二重機能抗glycPD-L1抗体の治療有効量の投与を伴う方法の治療上の利益を求めること、またはそのような治療上の利益を受けることは、当技術分野に利点をもたらす。加えて、本発明の方法は、副作用、有害な転帰、禁忌などを消失もしくは回避させる利点、または他の処置および処置モダリティと比較してそのような問題が起こるリスクもしくは可能性を低減させるさらなる利点を提供する。
【0155】
特定の実施形態において、がんに罹患しているまたは素因を有する対象に、二重機能抗glycPD-L1抗体であるSTM073またはSTM108のヒト化またはキメラ形態の治療有効量を投与する。がんの処置のために1つ超のタイプの抗glycPD-L1抗体を投与することは有利でありうる。例えば、STM073およびSTM108の両方のキメラまたはヒト化形態を、それを必要とする患者に同時投与してもよい。あるいは、STM073のキメラもしくはヒト化形態を、別の抗glycPD-L1抗体と共に、それを必要とする患者に同時投与してもよく、またはSTM108のキメラもしくはヒト化形態を、別の抗glycPD-L1抗体と共に、それを必要とする患者に同時投与してもよい。抗glycPD-L1抗体の同時投与は、いずれかの抗体単独の投与より治療上もしくは予防上有効でありうる、および/またはいずれかの抗体単独より低用量もしくは少ない回数での投与が可能となりうる。
【0156】
本発明の処置方法が有用であるがんは、任意の悪性細胞タイプ、例えば固形腫瘍または血液腫瘍、特にその表面にグリコシル化PD-L1を発現する細胞を有する腫瘍において見出されるがんを含む。一般的に、腫瘍は、任意の大きさの悪性または潜在的に悪性の新生物または組織塊を指し、原発腫瘍および二次腫瘍を含む。固形腫瘍は、通常、嚢胞または液体を含まない異常な組織塊または成長である。例示的な固形腫瘍には、膵臓、胆嚢、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、精巣、腎臓、咽頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺、および乳房からなる群より選択される臓器の腫瘍が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。例示的な血液腫瘍には、骨髄の腫瘍、TまたはB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽腫、骨髄腫などが挙げられる。本明細書において提供される方法を使用して処置されうるがんのさらなる例には、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、扁平上皮がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)または胃がん(stomach cancer)(消化管がん、および消化管間質がんを含む)、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん(kidney cancer)または腎臓がん(renal cancer)、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、様々なタイプの頭頚部がん、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、肢端黒子型黒色腫、結節性黒色腫、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中間悪性度/濾胞性NHL、中間悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み型細胞NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、およびワルデンストレームマクログロブリン血症)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ヘアリーセル白血病、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄芽球性白血病が挙げられるがこれらに限定されるわけではない
【0157】
がんは、具体的に以下の組織学タイプのがんでありうるが、これらに限定される必要はない:悪性新生物;癌腫;未分化癌;巨細胞および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管癌;肝細胞癌;混合型肝細胞癌および胆管癌;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺癌、腺腫様ポリープ;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;悪性カルチノイド腫瘍;気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;子宮内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳道腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;膠様腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を有する腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性莢膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫瘍;悪性男性胚細胞腫;セルトリ細胞癌;悪性ライディッヒ細胞腫瘍;悪性脂質細胞腫瘍;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑の悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児型横紋筋肉腫;胞巣型横紋筋肉腫;間質性肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉腫;ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎生期癌;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管外皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星細胞腫;原形質性星細胞腫;原線維性星細胞腫;星芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起神経芽細胞腫;原始神経外胚葉腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫瘍;悪性リンパ腫;ホジキン病;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性大細胞型悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉腫;他の明記された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球腫;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ球性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核球性白血病;骨髄肉腫;およびヘアリーセル白血病。
【0158】
処置されるがんは、好ましくはPD-L1陽性、特にグリコシル化PD-L1陽性である。ある特定の実施形態において、腫瘍細胞はまた、例えば乳がん細胞において発現するEGFRまたはHER2/neu発現などの腫瘍細胞マーカーに関して陽性である。これらのマーカーの存在または非存在は、EGFR陽性がんに対する標的化治療薬、例えばゲフィチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤、またはHER2/neu陽性がんに対するハーセプチンと、本明細書において記述される二重機能抗glycPD-L1抗体との併用治療が、それを必要とする対象に治療上の恩典を提供するか否かを示しうる。ある特定の実施形態において、がんはBLBCである。
【0159】
治療の選択を誘導するためにがんを特徴付けするためまたは治療をモニターするために使用されうる他のマーカーには、非小細胞肺がんおよび異型性大細胞リンパ腫におけるALK遺伝子の再配列および過剰発現;肝臓がんおよび胚細胞腫瘍に関するα-フェトプロテイン(AFP);多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、およびいくつかのリンパ腫に関するβ-2ミクログロブリン(B2M);絨毛がんおよび胚細胞腫瘍に関するβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG);卵巣がんおよび乳がんに関するBRCA1およびBRCA2遺伝子変異;慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄性白血病に関するBCR-ABL融合遺伝子(フィラデルフィア染色体);皮膚黒色腫および結腸直腸がんに関するBRAF V600変異;消化管間質腫瘍および粘膜黒色腫に関するC-kit/CD117;乳がんに関するCA15-3/CA27.29;膵臓がん、胆嚢がん、胆管がん、および胃がんに関するCA19-9;卵巣がんに関するCA-125;甲状腺髄様がんに関するカルシトニン;結腸直腸がんおよびいくつかの他のがんに関する癌胎児性抗原(CEA);非ホジキンリンパ腫に関するCD20;神経内分泌腫瘍に関するクロモグラニンA(CgA);膀胱がんに関する第3、7、17および9p21染色体;肺がんに関するサイトケラチン断片21-1;非小細胞肺がんに関するEGFR遺伝子変異分析;乳がんに関するエストロゲン受容体(ER)/プロゲステロン受容体(PR);膀胱がんに関するフィブリン/フィブリノーゲン;卵巣がんに関するHE4;乳がん、胃がん、および胃食道接合部腺癌に関するHER2/neu遺伝子増幅またはタンパク質過剰発現;多発性骨髄腫およびワルデンストレームマクログロブリン血症に関する免疫グロブリン;結腸直腸癌および非小細胞肺がんに関するKRAS遺伝子変異分析;胚細胞腫瘍、リンパ腫、白血病、黒色腫、および神経芽細胞腫に関する乳酸デヒドロゲナーゼ;小細胞肺がんおよび神経芽腫に関するニューロン特異的エノラーゼ(NSE);膀胱がんに関する核マトリクスタンパク質22;前立腺がんに関する前立腺特異的抗原(PSA);甲状腺がんに関するサイログロブリン;ならびに乳がんに関するウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)およびプラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI-1)が挙げられる。
【0160】
二重機能抗glycPD-L1抗体は、多様なモダリティにおいて抗腫瘍剤として使用されうる。特定の実施形態は、抗腫瘍剤として抗体を使用する方法に関し、したがって、抗体または抗体を含む組成物の治療有効量を腫瘍細胞集団に、腫瘍細胞の成長を遮断もしくは阻害するために、または腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こすために十分な期間、接触させることを含む。一実施形態において、in vivoで腫瘍細胞に接触させることは、本明細書において記述される二重機能抗glycPD-L1抗体を含む生理学的に忍容可能な組成物の治療有効量を、例えば静脈内、皮下、腹腔内、または腫瘍内注射によって、それを必要とする患者に投与することによって達成される。抗体は、注射または経時的な徐々の注入によって非経口投与されてもよい。有用な投与および送達レジメンには、静脈内、腹腔内、経口、筋肉内、皮下、腔内、髄腔内、経皮、皮内、蠕動ポンプ手段、または腫瘍細胞を含む組織への直接注射が挙げられる。
【0161】
抗体を含む治療組成物は、慣例的に静脈内に、例えば単位用量の注射によって投与される。治療組成物を参照して使用される用語「単位用量」は、それぞれの単位が、必要な希釈剤、すなわち担体またはビヒクルに関連して所望の治療効果を生じるように計算された活性材料の既定量を含む、対象の単位投与量として適した物理的に個別の単位を指す。二重機能抗glycPD-L1抗体を含む組成物は、投与製剤と適合性である方法で、治療有効量で投与される。投与される量は、処置される対象、対象の系が活性成分を利用する能力、所望の治療効果の程度に依存する。投与する活性成分の正確な量は、医師の判断に依存して、個々の個体に特異的である。しかし、全身適用に関して適した投与量範囲が本明細書において開示され、投与経路に依存する。初回および追加投与にとって適したレジメンも同様に企図され、典型的に初回投与後に1つまたは複数の間隔(時間)で皮下注射または他の投与による繰り返し投与を伴いうる。例示的な複数回投与は、抗体の高い血清中および組織レベルを持続的に維持するために適している。あるいは、in vivo治療に関して明記された範囲で血液中の濃度を維持するために十分な持続的な静脈内注入が企図される。
【0162】
抗glycPD-L1抗体は、局所進行または転移性がんを有するがん患者において、疾患を処置するために、例えば腫瘍細胞の成長を阻害するために、またはがん細胞を殺滅させるために全身または局所投与されうると企図される。抗体は、単独で、または抗増殖薬もしくは抗がん薬と併用して投与されうる。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体は、手術または他の技法前に患者におけるがんの負荷を低減させるために投与される。あるいは、残っているいかなるがん(例えば、手術によって除去できなかったがん)も大きさまたは成長能が確実に低減されるように、および/または確実に生存しないように、抗glycPD-L1抗体を、術後、定期的な間隔で投与することができる。上記で注目したように、抗体の治療有効量は、所望の効果を達成するように計算された既定量である。このため、抗glycPD-L1抗体の投与のための投与量範囲は、腫瘍細胞分裂および細胞周期進行の兆候が低減される所望の効果を生じるために十分に大きい範囲である。最適には、投与量は、有害な副作用、例えば過粘稠度症候群、肺浮腫、うっ血性心不全、神経学的効果などを引き起こすほど多量であってはならない。一般的に、投与量は、患者の年齢、状態、体格、および性別、ならびに疾患の程度によって変化し、内科医または臨床医などの当業者が決定することができる。当然、いずれかの合併症が起こった場合には、個々の医師が投与量を調節することができる。
【0163】
処置方法
ある特定の実施形態において、記述の組成物および方法は、二重機能抗glycPD-L1抗体の単独投与、または第2のもしくは追加の薬物もしくは治療との併用投与を伴う。そのような薬物または治療は、PD-L1またはグリコシル化PD-L1、好ましくはヒトPD-L1もしくはグリコシル化ヒトPD-L1とヒトPD-1との相互作用に関連する任意の疾患の処置に適用されうる。例えば、疾患はがんでありうる。グリコシル化PD-L1タンパク質に優先的に結合し、およびPD-1へのPD-L1の結合を遮断または阻害し、PD-L1の内在化および分解を促進する少なくとも1つの抗PD-L1抗体、またはその結合部分を含む組成物および方法は、がんまたは他の疾患の処置において、特にPD-1/PD-L1相互作用を防止、低減、遮断、または阻害して、それによって治療効果および処置を提供することによって、治療効果または保護効果を有する。
【0164】
併用治療を含む組成物および方法は、治療効果もしくは保護効果を有し、治療効果もしくは保護効果を増強し、および/または別の抗がん治療もしくは抗増殖剤治療の治療効果を増加させうる。治療および予防の方法ならびに組成物は、所望の効果、例えばがん細胞の殺滅および/または細胞の過増殖の阻害を達成するために有効な併用量で提供されうる。このプロセスは、二重機能抗glycPD-L1抗体またはその結合断片と、第2の治療とを投与することを伴いうる。第2の治療は、直接の細胞傷害効果を有しても有しなくてもよい。例えば、第2の治療は、直接の細胞傷害作用を有することなく免疫系をアップレギュレートする薬剤でありうる。組織、腫瘍および/または細胞に、1つもしくは複数の薬剤(例えば、抗体もしくは抗がん剤)を含む1つもしくは複数の組成物もしくは薬理学的製剤を曝露するか、または組織、腫瘍、および/もしくは細胞に、2つもしくはそれ超の異なる組成物もしくは製剤を曝露することができ、1つの組成物は、例えば、1)抗体、2)抗がん剤、3)抗体と抗がん剤の両方、または4)2つもしくはそれ超の抗体を提供する。いくつかの実施形態において、第2の治療もまた、抗PD-L1抗体、好ましくは非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化PD-L1に優先的に結合する抗glycPD-L1抗体であるか、または他の実施形態において、抗PD-1抗体である。限定されないが、例示的な抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブおよびニボルマブを含み、例示的な抗PD-L1抗体はアテゾリズマブを含む。同様に、そのような併用治療は、化学療法、放射線療法、外科療法、または免疫療法と共に使用されうると企図される。
【0165】
例として、用語「接触した」および「曝露した」は、細胞に適用されるとき、本明細書において、特に腫瘍またはがん細胞の表面で発現または高度に発現した標的抗原、例えばPD-L1、特にグリコシル化PD-L1に特異的に結合するように、治療ポリペプチド、好ましくは本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体を標的細胞に送達するかまたは標的細胞の直接近位に配置するプロセスを記述するために使用される。治療的抗glycPD-L1抗体またはその結合断片によるそのような結合は、腫瘍またはがん細胞が発現するPD-L1とエフェクターT細胞上のPD-1との相互作用を防止、遮断、阻害、または低減させて、それによって、PD-L1/PD-1相互作用に関連する免疫抑制を防止する。実施形態において、化学療法剤または放射線療法剤はまた、抗glycPD-L1抗体またはその結合断片と共に対象に投与または送達される。細胞の殺滅を達成するために、例えば1つまたは複数の薬剤は、細胞を殺滅させるためにまたは細胞が分裂するのを防止するために有効な併用量で細胞に送達される。
【0166】
抗glycPD-L1抗体は、別の抗がん処置に対してその前に、間に、後に、または様々な組み合わせで投与されうる。投与は、互いを前後として、同時から数分まで、数日まで、数週間までの範囲の間隔でありうる。抗体が抗がん剤とは別に患者に提供される実施形態において、投与された化合物が患者に対して有利な併用効果をなおも発揮することができるように、一般的に、それぞれの送達時間の間に有意な時間が経過しないように確保される。実例として、そのような例において、患者に抗体と抗がん治療とを互いに約12~24時間または72時間以内に、より詳しくは互いに約6~12時間以内に提供してもよいと企図される。いくつかの状況では、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6、または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8週間)が経過する、処置期間の有意な延長が望ましいと予想される。
【0167】
ある特定の実施形態において、一連の処置または処置サイクルは、1~90日またはそれ超持続すると予想される(この範囲はその間の日および最後の日を含む)。1つの薬剤を、1日~90日のいずれかの日(このような範囲はその間の日および最後の日を含む)にまたはその任意の組み合わせで投与してもよく、別の薬剤が1日~90日(このそのような範囲は、その間の日および最後の日を含む)またはその任意の組み合わせのいずれかの日に投与されると企図される。1日の間(24時間の期間)に、患者に、薬剤を1回または複数回投与してもよい。その上、一連の処置の後、抗がん処置が投与されない期間が存在してもよいと企図される。この期間は、患者の状態、例えば予後、体力、健康などに応じて、例えば1~7日間、および/または1~5週間、および/または1~12ヶ月またはそれ以上持続してもよい(このそのような範囲は、その間の日および上限の時点を含む)。処置のサイクルは必要に応じて繰り返される。様々な処置の組み合わせを使用してもよい。以下に示す併用処置レジメンの代表的な例において、抗体、例えば抗glycPD-L1抗体またはその結合断片を「A」で表し、抗がん治療を「B」で表す。
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0168】
本実施形態の任意の抗体または治療の患者への投与は、もしあるとすれば、薬剤の毒性を考慮に入れて、そのような化合物を投与するための一般的プロトコールに従う。したがって、いくつかの実施形態において、有害事象および毒性、特に併用治療に帰することができる有害事象および毒性をモニターするステップが存在する。
【0169】
一実施形態において、二重機能抗glycPD-L1抗体を単独または別の抗がん剤と併用して、それを必要とする患者、すなわちがんまたは腫瘍を有する患者に投与することを伴う方法が提供される。抗glycPD-L1抗体の投与前に、患者の腫瘍またはがんの試料をPD-L1の存在に関して評価してもよい。そのような評価の結果によって、患者の腫瘍またはがんがグリコシル化PD-L1に関して陽性であることが判明すれば、患者のglycPD-L1+腫瘍またはがんが抗glycPD-L1抗体による処置により感受性がある可能性、および処置を進めて有益な転帰が得られる可能性がより高いことに基づいて、患者を処置に関して選択する。医療の専門家または医師は、抗glycPD-L1抗体処置方法を進めるように患者に助言を与えてもよく、患者は医療の専門家または医師の助言に基づいて処置を進めることを決定してもよい。加えて、一連の処置において、患者の腫瘍またはがん細胞を、処置の進行または有効性をモニターする方法として、グリコシル化PD-L1の存在に関してアッセイしてもよい。アッセイによって、例えば、患者の腫瘍またはがん細胞上のグリコシル化PD-L1の変化、喪失、または減少が示される場合、医療の専門家は患者と共に、処置を継続すべきか否か、または何らかの方法で変更すべきか、例えばより高い投薬量に、別の抗がん剤もしくは治療を追加するか否かなどを決定してもよい。
【0170】
化学療法
広く多様な化学療法剤が、本実施形態の処置または治療方法に従って使用されうる。用語「化学療法」は、がんを処置するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」は、がんの処置において投与される化合物または組成物を意味する。そのような薬剤または薬物は、細胞内でのその活性様式、例えばそれらが細胞周期、細胞成長、および増殖のどの段階に影響を及ぼすかによって分類される。あるいは、化学療法剤は、DNAを直接架橋する、DNAにインターカレートする、または細胞における核酸合成に影響を及ぼすことによって染色体異常および分裂異常を導入するその能力に基づいて特徴付けされうる。
【0171】
化学療法剤の非限定的な例には、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド;スルホン酸アルキル類、例えばブスルファン、イムプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン類、例えばベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ、およびウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンアミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールアミンを含むエチレンイミン類およびメチルアメラミン類;アセトゲニン類(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログであるトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン類(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトジェンマスタード類、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロフォスフェミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、およびウラシルマスタード;ニトロソウレア類、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン;抗生物質、例えば、エネジイン系抗生物質(例えば、カリケアミシン、特に、カリケアミシン・ガンマ1、カリケアミシン・オメガ1;ダイネミシンAを含むダイネミシン;ビスホスホネート類、例えば、クロドロネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連する色素タンパク質、エンジイン系抗生物質発色団、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、およびゾルビシン;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、およびチオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、およびフロクスウリジン;アンドロゲン類、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、およびテストラクトン;抗副腎皮質剤、例えば、ミトタンおよびトリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド類、例えば、メイタンシンおよびアンサマイトシン類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;ジゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’-2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド類、例えば、パクリタキセルおよびドキセタキセル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド類、例えば、レチン酸;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス型白金製剤、ならびに上記いずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。
【0172】
放射線療法
放射線療法は、DNAの損傷を引き起こす薬剤による処置を含む。放射線療法は、がんおよび疾患の処置において広く使用されており、一般的にγ線、X線として知られるもの、および/または腫瘍細胞への放射性同位元素の直接送達を包含する。他の形態のDNA損傷因子、例えばマイクロ波、光子線照射(米国特許第5,760,395号明細書および同第4,870,287号明細書)、およびUV照射も同様に企図される。これらの要因は全て、DNAそのもの、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に広範囲の損傷を与える可能性が最も高い。X線の例示的な線量範囲は、50~200レントゲンの長期間(3~4週間)毎日照射から2000~6000レントゲンの1回照射の範囲である。放射性同位元素の線量範囲は広く異なり、同位体の半減期、放出される放射線の強度およびタイプ、新生物細胞による取り込み、ならびに処置を受ける対象の忍容性に依存する。
【0173】
免疫療法
方法のいくつかの実施形態において、本明細書において記述される二重機能抗glycPD-L1抗体の投与と併用して、または投与と共に、免疫療法を使用してもよい。がんの処置の文脈において、免疫療法は一般的に、がん細胞を標的として破壊するために、免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存する。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))は、そのような一例である。イピリムマブを含む他のチェックポイント阻害剤もまた、併用して投与することができる。二重機能抗glycPD-L1抗体はまた、他の抗PD-1または抗PD-L1阻害剤、例えばアテゾリズマブ、デュルバルマブ、もしくはアベルマブを含むPD-L1に対する抗体、またはニボルマブ、ペムブロリズマブ、もしくはピディリズマブを含むPD-1に対する抗体と併用して投与されうる。加えて、実施形態の二重機能抗glycPD-L1抗体の1つまたは複数を、互いに併用して投与してもよい。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のマーカー(細胞表面タンパク質または受容体)に対して特異的な抗体でありうる。抗体単独は、治療のエフェクターとしての役割を果たしてもよく、または細胞殺滅を実際に行うために他の細胞を動員してもよい。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートしてもよく、単に標的化剤としての役割を果たしてもよい。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接または間接的に相互作用する表面分子、例えばT細胞上のPD-1/腫瘍細胞上のPD-L1相互作用を有するリンパ球でありうる。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。
【0174】
免疫療法の一態様において、腫瘍細胞は、標的化に感受性があるいくつかのマーカー(タンパク質/受容体)を有しなければならない。最適には、腫瘍マーカータンパク質/受容体は、大部分の他の細胞、例えば非がん細胞または正常細胞には存在しない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれも本実施形態の文脈において、抗glycPD-L1抗体と共に投与される別の薬物または治療による標的化にとって適しうる。一般的な腫瘍マーカーには、例えばCD20、がん胎児性抗原(CEA)、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erbB、およびp155が挙げられる。免疫療法の代替の態様は、抗がん作用と免疫刺激作用とを組み合わせることである。免疫刺激分子も同様に存在し、これにはサイトカイン、例えばIL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFN;ケモカイン、例えばMIP-1、MCP-1、IL-8;および増殖因子、例えばFLT3リガンドが挙げられる。
【0175】
現在治験中または使用されている免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼン、および芳香族化合物(米国特許第5,801,005号明細書および同第5,739,169号明細書;Hui and Hashimoto, 1998, Infection Immun., 66(11):5329-5336;Christodoulides et al., 1998, Microbiology, 144(Pt 11):3027-3037);サイトカイン療法、例えばα、β、およびγインターフェロン;IL-1、GM-CSF、およびTNF(Bukowski et al., 1998, Clinical Cancer Res., 4(10):2337-2347;Davidson et al., 1998, J. Immunother., 21(5):389-398;Hellstrand et al., 1998, Acta Oncologica, 37(4):347-353);遺伝子治療、例えばTNF、IL-1、IL-2、およびp53(Qin et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(24):14411-14416;Austin-Ward et al., 1998, Revista Medica de Chile, 126(7):838-845;米国特許第5,830,880号明細書および同第5,846,945号明細書);ならびにモノクローナル抗体、例えば抗CD20、抗ガングリオシドGM2、および抗p185(Hollander, 2012, Front. Immun., 3:3;Hanibuchi et al., 1998, Int. J. Cancer, 78(4):480-485;米国特許第5,824,311号明細書)である。1つまたは複数の抗がん治療を、本明細書において記述される抗体治療と共に使用してもよいと企図される。
【0176】
手術
がんを有するおよそ60%の個体が、予防的、診断的、または進行期分類、根治的、および姑息的手術を含む何らかのタイプの手術を受ける。根治的手術は、がん様組織の全てまたは一部が物理的に除去、切除、および/または破壊される切除を含み、他の治療、例えば本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法、および/または代替治療、ならびにその組み合わせと共に使用されうる。腫瘍の切除は、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍の切除に加えて、手術による処置は、レーザー手術、凍結手術、電気的手術、および顕微鏡下の手術(モース顕微鏡手術)を含む。がん様細胞、組織、または腫瘍の一部または全ての切除後、体に腔が形成されることがある。追加の抗がん治療によってその領域の灌流、直接注射、または局所適用による処置を行ってもよい。そのような処置を、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日ごと、または1、2、3、4、もしくは5週間ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月ごとに繰り返してもよい。これらの処置も同様に、多様な用量の処置でありうる。
【0177】
タンパク質の精製
抗体および特異的に抗glycPD-L1抗体を含むタンパク質の精製技術は、当業者に周知である。これらの技術は、1つのレベルで細胞、組織、または臓器のホモジナイゼーション、ならびにポリペプチドおよび非ポリペプチド分画への簡易分画を伴う。目的のタンパク質またはポリペプチドを、特に示していなければ部分精製または十分な精製(または均一になるまで精製)を達成するためにクロマトグラフィーおよび電気泳動技術を使用してさらに精製してもよい。純粋なタンパク質またはペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、および等電点電気泳動である。ペプチドの特に効率的な精製方法は、中圧液体クロマトグラフィー(FPLC)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。一般的に当技術分野で公知であるように、様々な精製ステップを実施する順序を変化させてもよく、および/またはある特定のステップを省略してもよく、それでもなお実質的に精製されたポリペプチドの適した調製方法が得られうる。
【0178】
精製ポリペプチド、例えば本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体は、他の成分から単離可能なまたは単離されて、その天然に得ることができる状態と比較して任意の程度に精製されるポリペプチドを指す。したがって、単離または精製ポリペプチドはまた、それが天然に存在しうる環境、例えば、細胞、組織、臓器、生物試料などを含まないポリペプチドを指す。一般的に、「精製」は、様々な他の成分を除去するために分画に供されているが、組成物がその発現された生物活性を実質的に保持しているポリペプチド組成物を指す。「実質的に精製された」組成物は、ポリペプチドが組成物の主成分を形成し、そのため、ポリペプチドが、組成物のタンパク質成分の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ超を構成する組成物を指す。
【0179】
ポリペプチド、例えば抗体タンパク質の精製の程度を定量する様々な方法が、本開示に照らして当業者に公知である。これらは、例えば、活性分画の特異的活性を決定すること、またはSDS/PAGE分析によって分画内のポリペプチドの量を評価することを含む。分画の純度を評価する好ましい方法は、分画の特異的活性を計算すること、それを最初の抽出物の特異的活性と比較すること、およびこのようにして「精製倍率」によって評価したその純度の程度を計算することである。活性の量を表すために使用される実際の単位は、精製後に行うように選択される特定のアッセイ技術、および発現されたポリペプチドが検出可能な活性を示すか否かに依存する。
【0180】
一般的に、ポリペプチドが常にその最も精製された状態で提供される必要はない。実際に、実質的にあまり精製されていない産物は、ある特定の実施形態において有用性を有しうると企図される。部分精製は、より少ない精製ステップを組み合わせて使用することによって、または同じ一般的精製スキームの異なる形態を利用することによって達成されうる。例えば、HPLC装置を利用して実施する陽イオン交換カラムクロマトグラフィーでは、一般的に、低圧のクロマトグラフィーシステムを利用する同じ技術より大きい精製「倍率」が得られると認識される。低い程度の相対的精製を示す方法は、タンパク質産物の全体的な回収において、または発現されたタンパク質の活性の維持において利点を有しうる。
【0181】
アフィニティークロマトグラフィーは、単離される物質(タンパク質)とそれが特異的に結合することができる分子との間の特異的親和性、すなわち、受容体-リガンド型相互作用に依存するクロマトグラフィー技法である。結合パートナーの1つを不溶性マトリクスに共有結合的にカップリングさせることによって、カラム材料(樹脂)を合成する。次いで、カラム材料は、カラム樹脂の上を通過する溶液から物質を特異的に吸着することができる。条件を、結合が妨害される/起こらない条件(例えば、pH、イオン強度、温度の変更など)に変化させることによって、溶出が起こる。マトリクスは、いかなる有意な程度にも分子を吸着せず、広範囲の化学的、物理的、および温度安定性を有する物質であるべきである。リガンドは、その結合特性に影響を及ぼさないようにカップリングすべきである。リガンドはまた、比較的堅固な結合を提供すべきであるが、結合した物質の溶出は、望ましい試料タンパク質またはリガンドを破壊することなく起こるべきである。
【0182】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、溶液中の分子がその大きさに基づいて、またはより技術的な用語ではその流体力学的体積に基づいて分離されるクロマトグラフィー方法である。これは通常、大きい分子または高分子複合体、例えばタンパク質および工業用ポリマーに適用される。典型的に、水溶液を使用して試料をカラムの中に通過させるとき、この技術は、ゲル濾過クロマトグラフィーとして知られるが、これに対し、ゲル透過性クロマトグラフィーという名称は、移動相として有機溶媒を使用するときに使用される。SECの基礎となる原理は、異なる大きさの粒子が、異なる速度で静止相の中を溶出(濾過)して、それによって、大きさに基づいて粒子の溶液が分離されることである。粒子の全てが同時またはほぼ同時にロードされると仮定すれば、同じ大きさの粒子は共に溶出するはずである。
【0183】
高速(すなわち、高圧)液体クロマトグラフィー(HPLC)は、化合物を分離、同定、および定量するために生化学および分析化学において頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィーの1つの形態である。HPLCは、クロマトグラフィー充填材料(静止相)、移動相をカラムの中に移動させるポンプ、および分子の保持時間を示す検出器を利用する。保持時間は、静止相、分析される分子、および使用する溶媒の間の相互作用に応じて変化する。
【0184】
医薬調製物
二重機能抗glycPD-L1抗体またはグリコシル化PD-L1ポリペプチドを含む医薬組成物の臨床応用を行う場合、一般的に、意図される適用にとって適当な医薬または治療組成物を調製することが有益である。一般的に、医薬組成物は、薬学的に許容される担体に溶解または分散した1つまたは複数のポリペプチドの有効量または追加の薬剤を含みうる。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば少なくとも約0.1%のポリペプチドまたは抗体を含みうる。他の実施形態において、ポリペプチドまたは抗体は、単位重量の約2%から約75%の間、または約25%から約60%の間、例えば、その上限および下限値を含むその間で誘導可能な任意の範囲を含みうる。それぞれの治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適した投与量が任意の所定の単位用量において得られるように調製されうる。溶解度、生物学的利用率、生物学的半減期、投与経路、産物の貯蔵寿命、および他の薬理学的検討などの要因は、そのような医薬製剤を調製する当業者によって企図され、そのため、多様な投与量および処置レジメンが望ましいと予想される。
【0185】
さらに、ある特定の態様に従って、投与に適した組成物は、不活性希釈剤の存在下または非存在下で薬学的に許容される担体中で提供されうる。担体は、同化可能でなければならず、液体、半固体、例えばゲルもしくはペースト、または固体担体を含むべきである。担体または希釈剤の例には、脂肪、油、水、食塩水溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、増量剤など、またはその組み合わせが挙げられる。本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」は、当業者に公知である、ありとあらゆる水性溶媒(例えば、水、アルコール/水溶液、エタノール、食塩水溶液、非経口用ビヒクル、例えば塩化ナトリウム、リンゲルデキストロースなど)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチル)、分散培地、コーティング(例えば、レシチン)、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサル)、等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウム)、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)、塩、薬物、薬物安定化剤(例えば、緩衝剤、アミノ酸、例えばグリシンおよびリジン、炭水化物、例えばデキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなど)、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、香味料、色素、血液体液用薬、そのような類似の材料および組み合わせを含む。任意の通常の培地、薬剤、希釈剤、または担体がレシピエントまたはその中に含まれる組成物の治療上の有効性にとって有害である場合を除き、方法の実践における使用ために投与可能な組成物におけるその使用が適切である。医薬組成物中の様々な成分のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整される。ある特定の態様に従って、組成物を、任意の通常のおよび実践的方法で、すなわち、溶液、懸濁液、乳液、混合物、カプセル化、吸収、粉砕などによって担体と結合させる。そのような技法は当業者にとって日常的である。
【0186】
ある特定の実施形態において、組成物は、それらが固体、液体、エアロゾル剤形のいずれで投与されるかに応じて、およびそれが注射などの投与経路に関して無菌的である必要があるか否かに応じて、異なるタイプの担体を含みうる。組成物は、当業者に公知であるように、静脈内、皮内、経皮、髄腔内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、筋肉内、皮下、粘膜内、経口、局所表面、局所、または吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、連続的注入、標的細胞を直接浴する局所灌流、カテーテル、洗浄、脂質組成物(例えば、リポソーム)、または他の方法、または前述の任意の組み合わせによる投与のために製剤化されうる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990を参照されたい。典型的に、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製することができ、注射前に液体の添加による溶液または懸濁液の調製に使用するために適した固体または再構成可能な形態も同様に調製することができ、調製物はまた乳化させることもできる。
【0187】
抗体は、遊離の塩基、中性、または塩形態として組成物中に製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩には、酸付加塩、例えば、タンパク質様組成物の遊離のアミノ基によって形成される塩、または無機酸、例えば塩酸もしくはリン酸など、または酢酸、酒石酸、もしくはマンデル酸などの有機酸によって形成される塩が挙げられる。遊離のカルボキシル基によって形成される塩もまた、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは水酸化第二鉄など、またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、もしくはプロカインなどの有機塩基から誘導してもよい。
【0188】
さらなる実施形態において、ポリペプチド、1つまたは複数の脂質、および水性溶媒を含む薬学的脂質ビヒクル組成物を使用してもよい。本明細書において使用される用語「脂質」は、特徴的に水に不溶性であり、有機溶媒によって抽出可能である広範囲の物質のいずれかを指す。この広いクラスの化合物は当業者に周知であり、用語「脂質」が本明細書において使用される場合、これは任意の特定の構造に限定されない。例には、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む化合物が挙げられる。脂質は、天然に存在するかまたは合成でありうる(すなわち、ヒトによって設計または生成される)。しかし、脂質は通常、生体物質である。生体脂質は、当技術分野で周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、グリコスフィンゴリピッド、糖脂質、スルファチド、エーテルおよびエステル結合した脂肪酸を有する脂質、重合化可能な脂質、およびその組み合わせを含む。当然、当業者によって脂質として理解される、本明細書において具体的に記述される化合物以外の化合物も同様に、組成物および方法に包含される。当業者は、脂質ビヒクル中に組成物を分散させるために使用することができる技術範囲を周知していると予想される。例えば、抗体を、脂質を含む溶液中に分散させる、脂質と共に溶解する、脂質によって乳化する、脂質と混合する、脂質と組み合わせる、脂質に共有結合させる、脂質中に懸濁剤として含める、ミセルもしくはリポソームに含めるもしくはそれらと複合体を形成する、または当業者に公知の任意の手段によって脂質もしくは脂質構造に会合させてもよい。分散によって、リポソームが形成してもしなくてもよい。
【0189】
用語「単位用量」または「投与量」は、それぞれの単位が、その投与に関連して、すなわち適切な経路および処置レジメンに関連して、上記の所望の応答を生じるように計算された、治療抗体または治療抗体を含む組成物の既定量を含む、対象において使用するために適した物理的に個別の単位を指す。処置の回数および単位用量の両方に従って投与される量は、所望の効果に依存する。患者または対象に投与される本実施形態の組成物の実際の投与量は、身体的および生理学的要因、例えば対象の体重、年齢、健康、および性別、処置される疾患のタイプ、疾患浸透の程度、過去のまたは同時の治療介入、患者の特発性疾患、投与経路、ならびに特定の治療物質の効力、安定性、および毒性によって決定することができる。他の非限定的な例において、用量はまた、投与あたり、約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重~約1000mg/kg/体重またはそれ超、およびそこから誘導可能な任意の範囲を含みうる。本明細書において記載した数値から誘導可能な範囲の非限定的な例において、上記の数値に基づいて、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重などの範囲を投与することができる。前述の用量は、記載の用量の間の量を含み、同様に、範囲の下限および上限値を含むと意図される。投与の責任者である医師は、いずれにせよ、組成物中の活性成分の濃度および個々の対象に関して適切な用量を決定すると予想される。
【0190】
治療組成物または調製物の特定の性質は、限定的であると意図されない。例えば、適した組成物は、生理的に忍容可能な液体、ゲル、または固体担体、希釈剤、および賦形剤と共に製剤中で提供されうる。いくつかの実施形態において、治療調製物は、他の治療剤と類似の方法で、家畜動物などの獣医学での使用のために、およびヒトでの臨床での使用のために哺乳動物に投与されうる。一般的に、治療有効性のために必要な投与量は、使用のタイプおよび投与様式、ならびに上記のように個々の対象の特定の必要条件に従って変化する。
【0191】
バイオマーカーとしてのグリコシル化PD-L1
バイオマーカーとしてのグリコシル化PD-L1のアッセイにおいて、少なくとも1つの二重機能抗glycPD-L1抗体の使用を伴う方法を提供する。そのような方法は、がんまたは腫瘍を有する対象から得た腫瘍またはがん細胞のバイオマーカー評価において有用でありうる。がんを有する対象が、グリコシル化PD-L1、特にそのような細胞の細胞表面上にグリコシル化PD-L1の検出可能なレベルを発現するがんまたは腫瘍を有するか否かを決定する方法が提供される。例えば、対象のがんまたは腫瘍細胞を試験して、細胞表面上にグリコシル化PD-L1を発現すると決定されれば、記述の抗glycPD-L1抗体の単独、または例えば別の抗がん剤との併用によって処置される対象は、処置によって利益が得られる可能性が高い。そのような方法は、がんまたは腫瘍を有する対象から試料を得ること、当技術分野において公知で使用される、または上記の結合方法を使用して、対象のがんまたは腫瘍に由来する細胞上のグリコシル化PD-L1の存在に関して試料を試験すること、ならびに対象のがんまたは腫瘍がグリコシル化PD-L1タンパク質の細胞表面発現に関して陽性であることが見出されれば、対象に、抗glycPD-L1抗体の有効量を単独でまたは別の抗がん剤と併用して投与することを含む。処置前に対象が、グリコシル化PD-L1を発現するがんまたは腫瘍を有すると診断されれば、投与された抗glycPD-L1抗体が、対象のグリコシル化PD-L1発現がんまたは腫瘍細胞と、対象のPD-1発現T細胞との相互作用を遮断または阻害する可能性がより高く、それによってT細胞活性の免疫抑制を防止して、活性化T細胞殺滅により腫瘍またはがん細胞の殺滅を促進することから、より有効な処置が得られ、対象にとって利益が得られる。一実施形態において、方法は、そのがんまたは腫瘍が、発現されたグリコシル化PD-L1タンパク質の存在に対する試験に感受性がありうる対象を最初に選択することを伴いうる。
【0192】
類似の方法を使用して、抗glycPD-L1抗体と別の抗がん薬または処置との併用処置を含む、一連のがんの処置または治療の間に、ならびに処置の終了後に、患者の腫瘍細胞上のグリコシル化PD-L1の存在を経時的にモニターしてもよい。そのような方法はまた、処置前に、および一連の処置の間に、抗がん処置レジメンまたは併用処置が、グリコシル化PD-L1発現腫瘍またはがん細胞に関して患者の腫瘍またはがん試料を試験またはアッセイすること、例えば成功の転帰またはその可能性を決定するためにモニターすることを伴うコンパニオン診断法において使用されうる。
【0193】
他の実施形態において、抗glycPD-L1抗体を、in vivoイメージングのために有用なマーカー、例えばPETもしくはSPECTのためのI124などの放射性核種、光学イメージングのための蛍光色素、またはMRIのための常磁性キレートにコンジュゲートさせてもよい。標識した抗glycPD-L1抗体を、例えば静脈内または他の非経口経路により患者に投与することができ、適切な時間の後、標識抗体の存在および位置を検出して、腫瘍細胞の位置を特定し、定量する。
【0194】
他の薬剤
他の薬剤を、処置の治療有効性を改善するために、本実施形態のある特定の態様と共に使用してもよいと企図される。これらの追加の薬剤は、細胞表面受容体およびGAP接合部のアップレギュレーションに影響を及ぼす薬剤、細胞抑制および分化剤、細胞接着阻害剤、アポトーシス誘発剤に対する過増殖細胞の感受性を増加させる薬剤、または他の生物薬剤を含む。GAP接合部の数を増加させることによる細胞内シグナル伝達の増加は、隣接する過増殖細胞集団に対して抗過増殖作用を増加させうる。他の実施形態において、細胞抑制または分化剤は、処置の抗過増殖有効性を改善するために、本実施形態のある特定の態様と併用して使用されうる。細胞接着阻害剤は、本実施形態の有効性を改善すると企図される。細胞接着阻害剤の例は、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。さらに、処置の有効性を改善するために、アポトーシスに対する過増殖細胞の感受性を増加させる他の薬剤、例えば抗体c225を、本実施形態のある特定の態様において併用して使用することができると企図される。
【0195】
キットおよび診断
別の実施形態において、治療剤および/または他の治療剤および送達剤を含むキットが提供される。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体を伴う治療を準備および/または投与するために使用される。キットは、本明細書において記述される医薬組成物のいずれかを含む1つまたは複数の密封されたバイアルを含みうる。キットは、例えば少なくとも1つの抗グリコシル化PD-L1抗体、ならびに1つまたは複数の抗glycPD-L1抗体を調製、製剤化、および/もしくは投与するための、または記述の方法の1つもしくは複数のステップを実施するための試薬を含みうる。いくつかの実施形態において、キットはまた、キットの成分と反応しない容器である適した容器手段、例えばエッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、またはチューブを含みうる。容器は、滅菌可能な材料、例えばプラスチックまたはガラス製でありうる。
【0196】
キットはさらに、本明細書において記載される方法の技法ステップを概要する説明書を含んでもよく、本明細書において記述されるまたは当業者に公知である技法と実質的に同じ技法に従う。説明書の情報は、コンピューターを使用して実行するとき、ディスプレイに、治療剤の薬学的有効量を送達する実際のまたはバーチャル技法を表示させる、機械読み取り可能な説明書を含むコンピューター読み取り可能な媒体であってもよい。
【0197】
融合体およびコンジュゲート
本明細書において提供される抗グリコシル化PD-L1抗体またはグリコシル化PD-L1ポリペプチドはまた、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させるか、または別の部分と化学的にコンジュゲートさせることができる。いくつかの実施形態において、抗体またはポリペプチドは、アイソタイプまたはサブクラスによって変化しうるFc部分を有し、キメラもしくはハイブリッドであってよく、および/または例えばエフェクター機能を改善するために、半減期もしくは組織アクセシビリティを制御するために、生物物理学的特徴、例えば安定性を強化するために、および産物の有効性を改善するために、改変することができ、これらはコスト低減に関連しうる。融合タンパク質の構築において有用な多くの改変、およびそれらを作製するための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Mueller, J.P. et al., 1997, Mol. Immun. 34(6):441-452;Swann, P.G., 2008, Curr. Opin. Immunol., 20:493-499;およびPresta, L.G., 2008, Curr. Opin. Immunol., 20:460-470に記述されている。いくつかの実施形態において、Fc領域は、抗体のネイティブIgG1、IgG2、またはIgG4 Fc領域である。いくつかの実施形態において、Fc領域はハイブリッド、例えばIgG2/IgG4 Fc定常領域を含むキメラである。Fc領域の改変には、Fcγ受容体および補体への結合を防止するために改変されるIgG4;1つまたは複数のFcγ受容体への結合を改善するために改変されるIgG1;エフェクター機能を最小限にするように改変されるIgG1(アミノ酸の変化);変更されたグリカンを有する/グリカンを有しない(典型的に、発現宿主を変化させることによって)IgG1;ならびにFcRnへのpH依存的結合が変更されたIgG1が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。Fc領域は、全ヒンジ領域、または抗体の全ヒンジ領域より少ない部分を含みうる。
【0198】
別の実施形態は、その半減期を増加させるFcRへの結合が低減したIG2-4ハイブリッドおよびIgG4変異体を含む。代表的なIgG2-4ハイブリッドおよびIgG4変異体は、例えば、Angal et al., 1993, Molec. Immunol., 30(1):105-108;Mueller et al., 1997, Mol. Immun., 34(6):441-452;および米国特許第6,982,323号明細書に記載され、その参照により全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、IgG1および/またはIgG2ドメインは欠失している。例えば、Angalら、同上は、IgG1およびIgG2ドメインのセリン241位がプロリンで置換されているタンパク質を記述している。いくつかの実施形態において、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100個のアミノ酸を有する融合タンパク質またはポリペプチドが企図される。
【0199】
いくつかの実施形態において、抗グリコシル化PD-L1抗体またはグリコシル化PD-L1ポリペプチドを、連結または共有結合させる、または少なくとも1つの部分と複合体を形成させる。そのような部分は、診断剤または治療剤として抗体の有効性を増加させる部分でありうるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの実施形態において、部分は、造影剤、毒素、治療酵素、抗生物質、放射標識ヌクレオチド、化学療法剤などでありうる。
【0200】
いくつかの実施形態において、抗glycPD-L1抗体もしくはグリコシル化ポリペプチドまたはその一部にコンジュゲートまたは融合される部分は、酵素、ホルモン、細胞表面受容体、毒素、例えば、限定されないが、アブリン、リシンA、シュードモナスエクソトキシン(すなわちPE-40)、ジフテリア毒素、リシン、ゲロニン、またはヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、タンパク質(腫瘍壊死因子、インターフェロン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン)、神経生長因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、またはアポトーシス剤(例えば、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β)、生物応答修飾剤(例えば、リンフォカイン(例えば、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、またはマクロファージコロニー刺激因子(「M-CSF」)、または増殖因子(例えば、成長ホルモン(「GH」))、細胞毒素(例えば、細胞抑制または細胞障害剤、例えばパクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ツブリシンベースの微小管阻害剤、例えばメイタンシノイド、例えばメイタンシノイドDM1(N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシン、使用するリンカーに応じてメルタンシンまたはエムタンシン、ならびにメイタンシノイドDM4(N2’-デアセチル-n2’-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-6-メチルメイタンシン;ラブタンシン、ImmunoGen,Inc、Waltham,MA)、ならびにピューロマイシンおよびそのアナログまたはホモログ)、抗代謝薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、BiCNU(登録商標)(カルムスチン、BSNU)およびロムスチン(CCNU))、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(これまでのダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(これまでのアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC))、抗分裂剤ならびに/またはチューブリン阻害剤、例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、モノメチルアウリスタチンE(またはデスメチルアウリスタチンE)(MMAE)、例えばベドチン、またはその組み合わせであってもよい。
【0201】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、強力な細胞傷害薬が、化学リンカー、またはカップリング剤を介して特異的標的抗原、特に腫瘍またはがん細胞の表面上に発現するまたは過剰発現する標的抗原に対する抗体、典型的にモノクローナル抗体に共有結合により連結されている生物学的治療剤である。そのような「ロード」された抗体は、腫瘍またはがん細胞に対して致死性の細胞傷害性の積み荷を送達するように設計される。ADCは、副作用を低減させ、全身毒性を最小限にしながら、新生物細胞にペイロード薬物を標的化する手段を提供する。ADCは、ADCの抗体成分とその標的抗原との特異的相互作用により、細胞表面発現標的抗原に結合する。標的抗原に結合後、ADCは、本明細書に記述される実施形態の抗glycPD-L1抗体、例えばSTM108およびSTM073と同様に、特に抗体が高い内在化活性を有する場合には細胞に内在化されうる。したがって、そのようなADCが細胞に内在化されるとき、それらは、細胞を直接殺滅するか、または細胞内の分子を標的とするように作用して、それによってアポトーシスまたは細胞死が起こる。本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体、特にモノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト抗体を含むそのようなADCは、腫瘍およびがん細胞上のグリコシル化PD-L1に対する抗体の特異的標的化を、細胞障害薬または化合物のがんの細胞殺滅能と組み合わせて、それによって抗glycPD-L1抗体による処置および治療に関するさらなる利点を提供する。ADCを調製および使用する技術は当技術分野で公知であり、本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体に限定されないと意図される。(例えば、Valliere Douglass, J.F., et al., 2015, Mol. Pharm., 12(6):1774-1783;Leal, M. et al., 2014, Ann. N.Y. Acad. Sci., 1321:41-54;Panowski, S. et al., 2014, mAbs, 6(1):34-45;Beck, A. 2014, mAbs, 6(1):30-33;Behrens, C.R. et al., 2014, mAbs, 6(1):46-53;およびFlygare, J.A. et al., 2013, Chem. Biol. Drug Des., 81(1):113-121を参照されたい)。実施形態において、上記の部分のいくつかまたは全て、特に毒素および細胞毒素を、抗glycPD-L1抗体にコンジュゲートさせて、がんを処置するために有効なADCを産生してもよい。実施形態において、ADCの抗glycPD-L1抗体成分は、二重特異性、多重特異性、二重パラトープ性または多重パラトープ性抗体でありうる。
【0202】
治療的または細胞傷害性部分を抗体にコンジュゲートさせる方法は周知である。例えば、Amon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Reisfeld et al. (eds.), 1985, pp. 243-56, Alan R. Liss, Inc.);Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery", in CONTROLLED DRUG DELIVERY (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), 1987, pp. 623-53, Marcel Dekker, Inc.);Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in MONOCLONAL ANTIBODIES '84: BIOLOGICAL AND CLINICAL APPLICATIONS, Pinchera et al. (eds.), 1985, pp. 475-506);"Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", in MONOCLONAL ANTIBODIES FOR CANCER DETECTION AND THERAPY, Baldwin et al. (eds.), 1985, pp. 303-16, Academic Press;Thorpe et al., Immunol. Rev. 62:119-158 (1982);Carter et al., Cancer J. 14(3):154-169 (2008);Alley et al., Curr. Opin. Chem. Biol. 14(4):529-537 (2010);Carter et al., Amer. Assoc. Cancer Res. Educ. Book. 2005(1):147-154 (2005);Carter et al., Cancer J. 14(3):154-169(2008);Chari, Acc. Chem Res. 41(1):98-107 (2008);Doronina et al., Nat. Biotechnol. 21(7):778-784(2003);Ducry et al., Bioconjug Chem. 21(1):5-13(2010);Senter, Curr. Opin. Chem. Biol. 13(3):235-244 (2009);およびTeicher, Curr Cancer Drug Targets. 9(8):982-1004 (2009)を参照されたい。ADCおよびADC腫瘍学産物の論評は、Lambert, British J. Clin. Pharmacol., 76(2):248-262 (2013)およびBouchard et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 24:5357-5363 (2014)に見出される。
【0203】
特定の実施形態において、PD-L1の腫瘍細胞への内在化を容易にする抗glycPD-L1抗体を、非常に強力な生物活性薬または物質、例えば上記の細胞傷害剤および/または化学療法剤、毒素、または細胞毒素、または放射性核種に、典型的に不安定な結合を有する化学リンカーによってコンジュゲートし、本明細書において抗glycPD-L1抗体-ADCと呼ばれる抗glycPD-L1抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を産生する。生物活性薬または細胞傷害剤は、例えば細胞、特に抗glycPD-L1抗体-ADCが結合する細胞表面標的受容体または分子を発現する腫瘍またはがん細胞に送達される「細胞障害性ペイロード」として役立つ。その標的分子に結合したそのような抗glycPD-L1抗体-ADCは、細胞に内在化され、そこで細胞傷害薬ペイロードが放出される。非常に強力な細胞傷害性ペイロードとのコンジュゲーションを通しての本明細書において記述される内在化抗glycPD-L1抗体のがん細胞殺滅活性の増強により、高い抗腫瘍活性を有する抗がんADC生物学が得られ、副作用は一般的に軽度で良好に忍容される。
【0204】
本実施形態において記述される抗glycPD-L1抗体は、当技術分野において公知で使用される、またはまだ商品化されていない様々なタイプの細胞傷害性またはDNA作用ペイロードに連結してもよい。例えば、メイタンシンは、エチオピアの低木であるメイテヌス・オバツス(Maytenus ovatus)の樹皮から最初に単離されたベンゾアンサマクロライド(benzoansamacrolide)である。この細胞傷害剤およびその誘導体(例えば、メイタンシノイド)は、ビンカアルカロイド結合部位の近くでチューブリンに結合する。それらは、微小管の末端に位置するチューブリンに対して高い親和性および微小管全体に分布する部位に対してより低い親和性を有すると考えられる。微小管動態の抑制により、細胞は細胞周期のG2/M期で停止し、最終的にアポトーシスによる細胞死が起こる(Oroudjev et al., Mol. Cancer Ther., 10L2700-2713 (2010))。2つのメイタンシン誘導体(チオール含有メイタンシノイド)は、DM1およびDM4(ImmunoGen,Inc,Waltham,MA)を含み、これらは非可逆的および可逆的リンカーと組み合わせて広く使用されている。特に、チオエーテルリンカーによって抗体に結合したDM1は、「エムタンシン」と呼ばれる。SPPリンカーによって抗体に結合したDM1は、「メルタンシン」と呼ばれる。SPDBリンカーによって結合したDM4は、「ラブタンシン」と呼ばれ、sSPDBリンカーによって結合したDN4は、「ソラブタンシン」(ImmunoGen,Inc,Waltham,MA)と呼ばれる。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体-ADCは、チューブリン作用メイタンシノイドペイロードDM1を含む。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体-ADCは、DNA作用ペイロード、例えばDGN462(ImmunoGen,Inc、Waltham,MA)を含む。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体-ADCの抗glycPD-L1抗体成分は、STM073またはその結合部分である。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体-ADCの抗glycPD-L1抗体成分は、STM108またはその結合部分である。
【0205】
特定の実施形態において、抗glycPD-L1抗体にコンジュゲートされる細胞傷害剤は、その抗分裂活性がチューブリンの重合化を遮断することによって細胞分裂を阻害することを伴う毒性の高い抗新生物剤である、MMAE(モノメチルアウリスタチンE(またはデスメチル-アウリスタチンE))である。国際一般的名称であるベドチンは、MMAEプラスMMAE-抗体コンジュゲートにおける抗体とのその連結構造を指す。より特定の実施形態において、ADCは、STM073-MMAEまたはSTM108-MMAEである。
【0206】
多数の化学リンカーが公知であり、細胞傷害剤またはDNA作用薬ペイロードをコンジュゲートするために使用される。抗glycPD-L1抗体を含むADC、特に本明細書において記述されるその標的の結合後に内在化されるADCを産生するために単独でまたは併用して使用することが想像されるある特定のリンカーには、SMCC(4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボン酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル);SPDB(N-スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート);SPP(N-スクシンイミジル 4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエート);スルホ-SPDBまたはsSPDB(N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート);チオエーテルリンカー スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸(MCC);およびvc(バリン-シトルリンジペプチドリンカー)が挙げられる。例として、操作されたリンカー(例えば、SMCC、SPDB、S-SPDB)(Immunogen,Inc.)は、ADCの腫瘍への結合の前に安定であるように設計されており、次に、ADCががん細胞内に内在化されるとペイロードの有効性を最適化するように設計されている。カテプシン切断可能リンカーであるジペプチドvcリンカーなどの他のリンカーを使用して、抗体を、ドラスタチン10に由来する分裂阻害剤であるアウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチンE(MMAE)、例えばベドチンなどの細胞傷害剤にコンジュゲートしてもよい。細胞毒素を、1つ超の毒素分子がそれぞれの抗体分子に結合するように抗体にコンジュゲートさせてもよく、例えば抗体あたり平均で2、3、4、5、6、7、または8個の毒素分子が存在してもよい。
【0207】
特定の実施形態において、MMAEを、マレイミドカプロイル(MC)結合基によって抗体システインに間接的に連結させ、これを、バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル-MMAE(MC-vc-PAB-MMAE)にカップリングさせる。「MC-vc-PAB-MMAE」の線形構造において、「MC」は、マレイミドおよびカプロン酸からなり、典型的にH鎖上のシステイン基を介して抗体に結合する部分である。次に「MC」を、腫瘍またはがん細胞内部のカテプシンによって切断されるカテプシン切断可能リンカーである、バリン(Val)およびシトルリン(Cit)からなる「vc」リンカーに結合させる。「vc」を、スペーサー「PAB」、すなわちパラアミノ安息香酸に結合し、これにMMAE細胞毒素を連結する。MC-vc-PAB-MMAE ADCは、カテプシンBなどのプロテアーゼによって切断されると遊離の膜透過性のMMAEを放出する。一実施形態において、抗体に対するリンカーは、細胞外液において安定であるが、ADCが腫瘍またはがん細胞に入るとカテプシンによって切断され、このように、MMAEまたは他の毒素薬物の抗分裂メカニズムを活性化する。別の実施形態において、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)を、マレイミドカプロイル(MC-MMAF)によって抗体システインに連結する。MC-vc-PAB-MMAE ADCとは対照的に、MC-MMAF ADCは、MMC-DMI ADCと同様に切断不能であり、細胞内で内在化して分解されなければならず、細胞内の活性薬としてシステイン-MC-MMAFを放出する。
【0208】
一実施形態において、細胞傷害性ペイロードは、ADCの細胞内への内在化後にリソソームにおいて放出される。リソソームにおいて、リソソーム酵素は、ADCの抗体成分を消化する。リソソーム分解後、薬物(および薬物-リンカー)ペイロードが細胞質に放出され、ここで薬物が細胞内標的と結合し、最終的に細胞死を引き起こす。任意選択で、放出されたペイロードは、リンカーがなおも結合しているが完全に活性である。ADCに標的が結合することによってリソソームへの輸送の不良が起こる他の実施形態において、標的細胞の外部で安定であるが、細胞内に入ると抗体成分からペイロードを切断するリンカーは、細胞内であるがリソソームの外部でペイロードを放出する代替の様式を提供する。他の実施形態において、リンカーは、細胞外液で安定であるが、ADCが腫瘍またはがん細胞に入るとカテプシンによって切断され、このように毒素薬物の抗分裂または他の細胞傷害メカニズムを活性化する。他の実施形態において、切断可能リンカーの作用によって放出されるペイロードは、隣接するがん細胞に入り、バイスタンダー作用を介してそれらを殺滅することができ、このようにしてADCの標的化および腫瘍殺滅活性を増強する。
【0209】
一実施形態において、二重機能STM073またはSTM108 MAbsなどの本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体は、リンカーSMCC(スクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)を介してDM1にカップリングされる。別の実施形態において、STM073またはSTM108などの本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体は、リンカーSPDB(N-スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)またはsSPDB(N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート)を介してDM4にカップリングされる。別の実施形態において、アウリスタチンモノメチルアウリスタチンEは、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニルによって、STM073またはSTM108などの本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体のシステイン残基に連結される(MC-vc-PAB-MMAE)。特定の実施形態において、ADCは、STM108-MC-vc-PAB-MMAEである。別の特定の実施形態において、ADCはSTM073-MC-vc-PAB-MMAEである。一実施形態において、抗glycPD-L1抗体-ADCは、1分子あたり、MMAEなどの薬物の多数の単位、例えば分子あたり1~10、1~5、2~5、3-5、または2、3、4、5、6、7、8、9、10単位のMMAEなどの薬物、ならびにその間の値を含む。他の実施形態において、抗体-薬物比は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ超、ならびに2~10の間の範囲およびその間の値でありうる。実施形態において、STM108またはSTM073抗体は、二重特異性、多重特異性、二重パラトープ性もしくは多重パラトープ性抗体であるか、またはその抗原結合部分である。本明細書において記述される二重機能抗glycPD-L1抗体を含むそのようなADC、例えば上記のSTM108-MC-vc-PAB-MMAEは、がんの処置のために腫瘍およびがん細胞の殺滅に関して強化されたおよび多面的な抗新生物作用を提供する。ほんの数例の実例の利点として、抗ヒトglycPD-L1(例えば、MAb)-ADC、例えばSTM108-ADCは、PD-1/PD-L1相互作用を遮断して、それによって腫瘍細胞に対するT細胞免疫およびエフェクター機能を増強することができ、腫瘍およびがん細胞上で発現したグリコシル化PD-L1を選択的に標的とすることができ、結合後に腫瘍またはがん細胞上のPD-L1を内在化して、それによって腫瘍またはがん細胞上の表面発現PD-L1を低減させ、PD-L1の腫瘍形成能をさらに低減させることができ、抗体が内在化されて毒性薬物が放出される腫瘍またはがん細胞のアポトーシスを引き起こし、細胞に損傷を与え、最終的に殺滅することができ、ならびにアポトーシスを受けた腫瘍または細胞からの毒性薬物の放出を通して、付近または近隣の腫瘍またはがん細胞を殺滅することによって、バイスタンダー作用を容易にすることができる。
【0210】
いくつかの実施形態において、本明細書において記述される抗体は、精製を容易にするために、マーカー、例えばペプチドにコンジュゲートさせてもよい。いくつかの実施形態において、マーカーは、ヘキサヒスチジンペプチド(配列番号93)、すなわちインフルエンザ血液凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する血液凝集素「HA」タグ(Wilson, I. A. et al., Cell, 37:767-778 (1984))、または「flag」タグ(Knappik, A. et al., Biotechniques 17(4):754-761 (1994))である。
【0211】
他の実施形態において、本明細書において記述される抗体およびポリペプチドにコンジュゲートされる部分は、アッセイにおいて検出することができる造影剤でありうる。そのような造影剤は、酵素、補欠分子団、放射標識、非放射活性常磁性金属イオン、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、発光分子、生物発光分子、光親和性分子、または色素粒子もしくはリガンド、例えばビオチンでありうる。実施形態において、適した酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられるがこれらに限定されるわけではない;補欠分子団には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない;蛍光材料には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリスリンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない;発光材料には、ルミノールが挙げられるがこれらに限定されるわけではない;生物発光材料には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない;放射活性材料には、ビスマス(213Bi)、炭素(14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、ホルミウム(166Ho)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルテニウム(97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ストロンチウム(85Sr)、イオウ(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、スズ(113Sn、117Sn)、トリチウム(H)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb)、イットリウム(90Y)、亜鉛(65Zn);様々な陽電子射出トモグラフィーを使用して陽子を放出する金属;および非放射活性常磁性金属イオンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【0212】
造影剤は、当技術分野で公知の技術を使用して、本明細書において記述される抗体またはポリペプチドに、直接、または中間体(例えば、当技術分野で公知のリンカー)を通して間接的にコンジュゲートさせてもよい。例えば、診断薬として使用するために、本明細書において記述される抗体および他の分子にコンジュゲートすることができる金属イオンに関して報告する米国特許第4,741,900号明細書を参照されたい。いくつかのコンジュゲーション方法は、例えば抗体に付着した有機キレート剤、例えばジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸、N-クロローp-トルエンスルホンアミド、および/またはテトラクロロ-3-6α-ジフェニルグリクリル-3を使用する金属キレート錯体の使用を伴う。モノクローナル抗体はまた、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩などのカップリング剤の存在下で酵素と反応することができる。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、これらのカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアネートとの反応によって調製することができる。
【0213】
いくつかの実施形態において、本明細書において記述される抗glycPD-L1抗体またはglycPD-L1ポリペプチドを、例えば米国特許第4,676,980号明細書に記述されるように、二次抗体にコンジュゲートして、抗体ヘテロコンジュゲートを形成してもよい。そのようなヘテロコンジュゲート抗体はさらにハプテン(例えば、フルオレセイン)または細胞マーカー(例えば、限定されないが4-1-BB、B7-H4、CD4、CD8、CD14、CD25、CD27、CD40、CD68、CD163、CTLA4、GITR、LAG-3、OX40、TIM3、TIM4、TLR2、LIGHT、ICOS、B7-H3、B7-H7、B7-H7CR、CD70、CD47)、またはサイトカイン(例えば、IL-7、IL-15、IL-12、IL-4、TGF-β、IL-10、IL-17、IFNγ、Flt3、BLys))、またはケモカイン(例えば、CCL21)に結合させることができる。
【0214】
いくつかの実施形態において、本明細書において記述される抗グリコシル化PD-L1抗体またはグリコシル化PD-L1ポリペプチドは、固相支持体に付着させることができ、これは、本明細書において記述される抗体もしくは抗原結合断片との結合を通して支持体に固定されている標的抗原もしくは標的抗原に結合することができる他の分子のイムノアッセイまたは精製を行うために有用でありうる。そのような固相支持体には、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【実施例
【0215】
以下の実施例は、非グリコシル化PD-K1および/またはPD-L1グリコシル化変異体と比較してグリコシル化PD-L1に優先的に結合する二重機能抗glycPD-L1抗体に関連する実施形態および本明細書において記述される使用方法を実証するために含まれる。代表的な二重機能抗glycPD-L1抗体を例示する。開示の二重機能抗glycPD-L1抗体は例であり、限定でないと意図されることは当業者によって認識されるべきである。
【0216】
[実施例1]
材料および方法
細胞培養、安定なトランスフェクタント、およびトランスフェクション。細胞は全て、American Type Culture Collection(ATCC)から得た。これらの細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEM/F12またはRPMI 1640培地で成長させた。MDA-MB-468、BT549、および293T細胞におけるPD-L1安定トランスフェクタントを、ピューロマイシン(InvivoGen,San Diego,CA,USA)を使用して選択した。一過性のトランスフェクションに関して、細胞に、SNリポソーム(Hu, M. C. et al., 2004, Cell, 117:225-237)およびlipofectamine(商標)2000(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を使用して、DNA、例えばPD-L1をコードするDNAを一過性にトランスフェクトした。
【0217】
レンチウイルス感染を使用する安定な細胞の生成。細胞におけるPD-L1の発現をノックダウンするために使用されるレンチウイルスに基づくshRNA(pGIPZプラスミド)(Shen, J. et al., 2013, Nature, 497:383-387)を、shRNA/ORFコア施設(UT MD Anderson Cancer Center)から購入した。MDA-MB-231またはA431細胞におけるPD-L1タンパク質発現のノックダウン効率に基づいて、本発明者らは、この試験に関して2つのPD-L1クローンを選択した。成熟アンチセンス配列は以下の通りである:TCAATTGTCATATTGCTAC(shPD-L1 #1、配列番号34)、TTGACTCCATCTTTCTTCA(shPD-L1 #5、配列番号35)。内因性のPD-L1をノックダウンして同時にFlag-PD-L1を再構成するために、pGIPZ-shPD-L1/Flag-PD-L1二重発現構築物を使用して、本発明者らは、内因性のPD-L1ノックダウンおよびFlag-PD-L1 WTまたは4NQ変異体発現細胞株を確立した。PD-L1およびFlag-PD-L1に関するレンチウイルス発現shRNAを生成するために、本発明者らは、FuGENE6トランスフェクション試薬によって、293T細胞にpGIPZ非サイレンス(ベクター対照ウイルスに関して)、pGIPZ-shPD-L1、またはpGIPZ-shPD-L1/PD-L1 WT、またはpGIPZ-shPD-L1/PD-L1 4NQ変異体をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、培地を交換した後、培地を24時間間隔で収集した。収集したレンチウイルスを含む培地を遠心分離して、細胞破片を除去し、0.45μmフィルターを通して濾過した。細胞を、注射の12時間前に50%コンフルエンスで播種して、培地を、レンチウイルスを含む培地に交換した。24時間感染後、培地を新しい培地に交換して、感染した細胞を1μg/mlピューロマイシン(InvivoGen)によって選択した。
【0218】
プラスミド。ヒトPD-L1クローンをshRNA/ORFコア施設(UT MD Anderson Cancer Center,Houston,TX,USA)から得て、pCDHレンチウイルス発現ベクターにクローニングして、公知の分子生物学技術を使用してPD-L1-FlagまたはPD-L1-Myc発現細胞株を確立した。加えてヒトPD-L1核酸を、一過性のトランスフェクションのためにpEGFP-N1およびpCMV-HA哺乳動物細胞発現ベクターにクローニングした。pCDH/PD-L1-Flag発現ベクターを鋳型として使用して、以下の表4に示されるプライマーを使用して部位特異的変異誘発を実施することによって、PD-L1-Flag NQ変異体N35Q、N192Q、N200Q、N219Q、および4NQ(N35Q/N192Q/N200Q/N219Q)を生成した。内因性のPD-L1をノックダウンして同時にFlag-PD-L1を再構成するために、pGIPZ-shPD-L1/Flag-PD-L1二重発現構築物を作製するために、PD-L1 mRNAの3-UTR領域を標的とするshPD-L1構築物(shPD-L1 #5)を選択した。Flag-PD-L1野生型(WT)または4NQ変異体DNAを、内因性のPD-L1に対して特異的なshRNAを発現するpGIPZ-shPD-L1(Thermo Scientific,Pittsburgh,PA,USA)にクローニングした。全ての構築物を酵素消化およびDNAシークエンシングを使用して確認した。
【0219】
【表4】
【0220】
mRNAの発現を測定するためにqRT-PCRアッセイを実施した(Shen et al., 2013, Nature, 497:383-7;およびChang et al., 2011, Nature Cell Biology, 13:317-23)(以下の表5を参照されたい)。細胞をPBSで2回洗浄して、QIAzol中で直ちに溶解した。溶解した試料を、RNeasy Miniキット(Qiagen,Hilden,Germany)を使用して総RNA抽出に供した。mRNAの発現を測定するために、ランダムヘキサマー(Life Technologies)を使用してSuperScriptIII第一鎖cDNA合成システムによって、製造元の説明書に従って精製総RNA 1μgからcDNAを合成した。リアルタイムPCR機器(iQ5,BioRad,Hercules,CA,USA)を使用してqPCRを実施した。データ分析は全て、比較Ct法を使用して実施した。結果を最初に、内部対照β-アクチンmRNAに対して標準化した。
【0221】
【表5】
【0222】
抗体および化学物質。以下の抗体を、実施例において記述される実験に使用した:Flag(F3165;Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA);Myc(11667203001;Roche Diagnostics,Indianapolis,IN,USA);HA(11666606001;Roche Diagnostics);PD-L1(13684;Cell Signaling Technology,Danvers,MA,USA);PD-L1(329702;BioLegend,SanDiego,CA,USA,);PD-L1(GTX117446;GeneTex,Irvine,CA,USA);PD-L1(AF156;R&D Systems,Minneapolis,MN,USA);PD-1(ab52587;Abcam,Cambridge,MA,USA);B3GNT3(ab190458;Abcam);B3GNT3(18098-1-AP;Proteintech,Chicago,IL,USA);グランザイムB(ab4059;Abcam);EGFR(4267;Cell Signaling Technology);α-チューブリン(B-5-1-2;Sigma-Aldrich);およびβ-アクチン(A2228;Sigma-Aldrich)。実験に使用するために、上皮成長因子(EGF)、シクロヘキシミド、およびツニカマイシンを、Sigma-Aldrichから購入した。ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシマブ、およびAG1478は、Calbiochem Corp(Billerica,MA,USA)から得た。
【0223】
イムノブロット分析、免疫組織化学、および免疫沈降。イムノブロット分析は既に記述されるように実施した(Lim et al., 2008, Gastroenterology, 135:2128-40;およびLee et al., 2007, Cell, 130:440-455)。画像獲得およびバンド強度の定量を、Odyssey(登録商標)赤外線イメージングシステム(LI-COR Biosciences,Lincoln,NE,USA)を使用して実施した。免疫沈降に関して、細胞を緩衝液(50mM Tris・HCl、pH 8.0、150mM NaCl、5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、および0.5%NonidetP-40(NP-40))中で溶解して、16,000×gで30分間遠心分離して、破片を除去した。きれいにした溶解物を、抗体による免疫沈降に供した。免疫細胞化学に関して、細胞を4%パラホルムアルデヒド中、室温で15分間固定して5%TritonX-100中で5分間透過性にした後、一次抗体を使用して染色した。使用した二次抗体は、抗マウスAlexa Fluor488または594色素コンジュゲートおよび/または抗ウサギAlexaFluor488または594色素コンジュゲート(Life Technologies)であった。核を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPIblue)(Life Technologies)によって染色した。封入後、多光子共焦点レーザー走査型顕微鏡(Carl Zeiss,Thornwood,NY,USA)を使用して、細胞を可視化した。
【0224】
PD-L1およびPD-1(PD-L1/PD-1)相互作用アッセイ。PD-1タンパク質とPD-L1タンパク質の相互作用を測定するために、細胞を4%パラホルムアルデヒド中、室温で15分間固定した後、組み換えヒトPD-L1 Fcキメラタンパク質(R&DSystems)と共に1時間インキュベートした。使用した二次抗体は抗ヒトAlexa Fluor488色素コンジュゲート(Life Technologies)であった。核を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPIblue)(Life Technologies)によって染色した。Alexa Fluor488色素の蛍光強度を、マイクロプレートリーダーSynergy Neo(BioTeK,Winooski,VT,USA)を使用して測定して、総タンパク質の量によって強度に対して標準化した。封入後、画像を得るために、共焦点レーザー走査型顕微鏡(Carl Zeiss)を使用して、細胞を可視化した。
【0225】
同時培養実験およびIL-2発現の測定。Jurkat T細胞と腫瘍細胞との同時培養およびIL-2発現測定は、既に記述された通りに(Sheppard, K. A. et al., 2004, FEBS letters, 574:37-41)実施した。T細胞不活化に及ぼす腫瘍細胞の効果を分析するために、腫瘍細胞を、Dynabeads(登録商標)ヒトT-活性化因子CD3/CD28(Life Technologies)によって活性化した、ヒトPD-1を発現する活性化Jurkat T細胞と同時培養した。5:1(Jurkat:腫瘍細胞)比での同時培養を12または24時間インキュベートした。培地中に分泌されたIL-2レベルを、製造元(Human IL-2 ELISAキット、Thermo Scientific)によって記述されるとおりに測定した。
【0226】
PD-L1のグリコシル化分析。PD-L1タンパク質のグリコシル化を確認するために、細胞溶解物を、酵素PNGアーゼF、EndoH、O-グリコシダーゼ(New England BioLabs,Ipswich,MA,USA)によって製造元によって記述されるように処置した。グリコシル化PD-L1タンパク質を染色するために、精製PD-L1タンパク質を、製造元によって説明されるように糖タンパク質染色キット(Peirce/Thermo Scientific)を使用して染色した。
【0227】
ヒト乳房腫瘍組織試料の免疫組織化学染色。免疫組織化学(IHC)染色を、既に記述されているとおり(Lee et al., 2007, Cell, 130:440-455; Lo et al., 2007, Cancer Research, 67:9066-9076;Chang, C. J. et al., 2011, Cancer cell, 19:86-100)に実施した。簡単に説明すると、組織標本を、PD-L1、EGFR、B3GNT3、またはグランザイムBに対する抗体、およびビオチンコンジュゲート二次抗体と共にインキュベートした後、アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体と共にインキュベートした。アミノエチルカルバゾール色素原を使用して可視化を行った。統計分析に関して、フィッシャーの正確確率検定およびスピアマンの順位相関係数を使用した。0.05未満のp値は統計学的に有意であると考えられた。組織学のスコアに従って、染色強度を4つの群に順位付けした:高(スコア3)、中(スコア2)、低(スコア1)、および陰性(スコア0)。
【0228】
N-グリコペプチドの同定。精製HisタグPD-L1タンパク質を、10mMジチオスレイトール(DTT)によって37℃で1時間還元し、25mM重炭酸アンモニウム緩衝液中で50mMヨードアセトアミドによって、室温の暗所で1時間アルキル化した後、シークエンシング等級のトリプシンによって、酵素対基質比1:50で、37℃で終夜処置した。消化された産物をギ酸で希釈して、最終濃度0.1%を得て、ZipTip C118(Millipore)によってさらに洗浄した後、LC-MS/MS分析を行った。LC-MS/MSデータを、IBCのAcademia Sinica Mass Spectrometry Facilityで得た。ペプチド混合物を、トラップカラムAcclaim PepMap100(内径2cm×100μm)(Dionex)を備えたUltiMate3000 RSLCナノシステム(Dionex)にカップリングされたOrbitrap Fusion Tribrid(Thermo Scientific)においてナノスプレーLC-MS/MSによって分析した。ペプチド混合物を、カラム内径25cm×75μmのAcclaim PepMap RSLCにロードして、5%~35%溶媒B(0.1%ギ酸を含む100%アセトニトリル)の勾配を使用して流速500nL/分で60分間分離した。溶媒Aは0.1%ギ酸水溶液であった。CIDモードに対応するHCD下でMSおよびMS/MSデータ獲得に使用したパラメータは:サイクル時間3秒のトップスピードモード;FTMS:スキャン範囲(m/z)=400~2000;解像度=120K;AGC標的=2×10;経過時間(ms)=50;FTMSn(HCD):単離モード=四重極;単離ウィンドウ=1.6;衝突エネルギー(%)=段階的衝突エネルギー5%で30;解像度=30K;AGCターゲット=5×10;経過時間(ms)=60;ITMSn(CID);単離モード:四重極;単離ウィンドウ=1.6;衝突エネルギー(%)=30;AGCターゲット=1×10であった。生データをProteome Discoverer 1.4によってマスコット汎用フォーマット(MGF)に変換した。グリコペプチドの同定に関して、HCD MSデータを、Byonic(バージョン2.0-25)を使用して、以下の検索パラメータによって検索した:ペプチド公差=2ppm;断片公差=6ppm;切れ残り=1;修飾:カルバミドメチルシステイン(fixed)、メチオニン酸化(common2)、Nでの脱アミノ化(rare1)。Byonicによって示唆されるグリコペプチドのヒットを、HCDおよびCID MS結果を組み合わせることによって手動でさらにチェックした。
【0229】
統計分析。棒グラフのデータは、3回の独立した実験の標準偏差と共に無処置または対照群と比較した倍率変化を意味する。統計分析は、SPSS(バージョン、20 SPSS、Chicago,IL)を使用して実施した。タンパク質発現と、BLBCサブセットの間の相関を、Spearman相関およびMan Whitney検定を使用して分析した。実験データに関してスチューデントのt検定を実施した。P値<0.05は統計学的に有意であると考えられた。
【0230】
[実施例2]
PD-L1タンパク質発現分析
PD-L1の基礎となるメカニズムを解明するために、PD-L1のタンパク質発現を、ヒト腫瘍組織およびがん細胞株において調べた。図1Aおよび1B、ならびに図3A~3Dは、ウェスタンブロット分析による肺がん、乳がん、結腸がん、および卵巣がん細胞系におけるタンパク質発現を示す。図4Aは、異なるPD-L1抗体による細胞中のPD-L1タンパク質の結合を示す。大部分のPD-L1タンパク質が約45kDa(黒丸)で検出されたが、より小さい分画が33kDa(黒色の矢印の先)にも出現することが観察された。コード配列(shPD-L1 #1)または3’UTR(shPD-L1 #5)のいずれかを標的とするレンチウイルスの低分子ヘアピンRNA(shRNA)によるPD-L1のノックダウンにより、PD-L1の33kDaおよび45kDaの両方の形態の発現がダウンレギュレートされた(図4B)。PD-L1を再構成すると、shPD-L1 #5クローンでは両方の形態の発現が回復した(図1C図4Cはベクターの設計を示す)。これらの結果は、ウェスタンブロットにおける両方のバンドがPD-L1タンパク質であり、PD-L1のより高分子量形態が翻訳後修飾を示すことを示した。
【0231】
グリコシル化タンパク質は、しばしば、PD-L1の高分子量(約45kDa)に関して観察されるように、ウェスタンブロットにおいて不均一なパターンを生じる。PD-L1に関して観察されたグリコシル化パターンがグリコシル化形態に対応するか否かを試験するために、MDA-MB-231およびHeLa細胞を、組み換えグリコシダーゼ(ペプチド-N-グリコシダーゼF;PNGアーゼF)によって処置してN-グリカン構造を除去した後、ウェスタンブロット分析に供した。図4Dに示されるように、PNGアーゼF処置によって、45kDa PD-L1の有意な部分がPD-L1の33kDa形態に還元された。精製HisタグPD-L1では、一貫してグリカン構造の陽性染色が観察されたが、PNGアーゼFの存在下では観察されなかった(図1D)。これらの結果は、より高分子量のPD-L1が、実際にPD-L1タンパク質のグリコシル化形態であることを実証している。
【0232】
細胞におけるPD-L1タンパク質の発現を要約するために、タンパク質の内因性の発現を模倣するために、様々な過剰発現構築物を作製した。N-末端シグナリングペプチドでの起こりうる切断を回避するために、様々なタグ配列をN-またはC-末端のいずれかに融合させた(図5Aおよび5B、ブロットの上)。内因性のPD-L1発現分析からの結果と同様に、全てのGFP-、HA-、Flag-、またはMyc-タグPD-L1の一過性のトランスフェクションにより、ウェスタンブロット上で分子量がその実際の大きさから約15kDaシフトした(図1Eおよび5Aおよび5B)。PD-L1タンパク質上のN-グリカン構造の全てを除去するPNGアーゼF処置とは対照的に、組み換えグリコシダーゼ、エンドグリコシダーゼH(EndoH)の添加は、PD-L1グリコシル化を部分的に低減させたに過ぎず、PD-L1には主にN-連結グリカン構造の複合体型(高いマンノースおよびハイブリッド形態の両方を含む)が存在することを示唆している。さらに、N-連結グリコシル化阻害剤であるツニカマイシン(TM)によって細胞を処置したとき、PD-L1のグリコシル化は完全に阻害された(図1Fおよび5A~5D)が、O-グリコシダーゼ(図5E)では阻害されなかった。併せると、これらの結果は、PD-L1が、試験した細胞において広範囲にN-連結グリコシル化されることを示している(Heifetz, A., et al., 1979, Biochemistry, 18:2186-2192)。
【0233】
[実施例3]
グリコシル化分析
2つのPD-L1特異的抗体(抗PD-L1および抗hB7-H1)を使用するウェスタンブロット分析により、PD-L1グリコシル化がその細胞外ドメイン(ECD、抗hB7-H1によって認識される)で起こるが、その細胞内ドメイン(ICD、抗PD-L1によって認識される)では起こらないことが示された(図1Fおよび5C)。グリコシル化部位を正確に示すために、異なる種のPD-L1アミノ酸配列の配列アライメントを実施して、進化的に保存されたNXTモチーフ、コンセンサスN-グリコシル化認識配列に関して検索した(Schwarz, F., et al., 2011, Current opinion in structural biology, 21:576-582)。初期の予測と一貫して(Cheng et al., 2013, The JBC, 288:11771-85);およびVigdorovich et al., 2013, Structure, 21:707-17)、4つのNXTモチーフが同定された(図1Gおよび図6Aおよび6B)。これらの配列が実際にグリコシル化されたか否かを確認するために、精製ヒトPD-L1のトリプシンペプチドをナノLC-MS/MSによって分析した。複合体型のN-グリカンを有するグリコペプチドを、4つのN-グリコシル化部位のそれぞれに関して同定し(図7A~7H)、EndoH処置に対する見かけの抵抗性と一貫した(図1E)。一連のアスパラギン(N)からグルタミン(Q)への置換を作製して、PD-L1タンパク質上の特異的グリコシル化部位を決定した。4つ全ての変異体N35Q、N192Q、N200Q、およびN219Qが、WT PD-L1と比較してある程度のグリコシル化の低減を示した(図1H、レーン2、3、4、および5)。グリコシル化の検出可能な差は、3つの非NXT NQ PD-L1変異体に関して観察されなかった(図1H、レーン11、12、および13)。加えて、PD-L1グリコシル化は、4つ全てのアスパラギンがグルタミンに変異したPD-L1 4NQ変種において、45kDaでのグリコシル化形態に対応するシグナルが存在しないことによって示されるように完全に消失した(図1H、レーン10(4NQ)およびレーン14(WT))。PD-1/PD-L1複合体の結晶構造(Lin, D.Y., et al., 2008, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 105:3011-3016に基づくと、PD-L1のこれら4つのグリコシル化部位(N35、N192、N200、およびN219)は、タンパク質の表面に露出する。PD-L1グリコシル化部位の変異(PD-L1 4NQ)は、予測に基づいて全体的な構造に影響を及ぼさなかった。これらの結果は、PD-L1が細胞においてもっぱらN-グリコシル化糖タンパク質として存在し、4つ全てのNXTモチーフがグリコシル化されていることを示唆している。
【0234】
観察されたグリコシル化PD-L1のレベルは、PD-L1タンパク質の非グリコシル化形態より有意に高かった(図1Aおよび1Bならびに5Cおよび5D)。この知見に基づき、本発明者らは、グリコシル化がPD-L1タンパク質を安定化させるか否かを調べた。この目的に関して、タンパク質の代謝回転速度を、タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CHX)の存在下で測定し、PD-L1タンパク質安定性に及ぼすグリコシル化の効果を決定した。FlagタグPD-L1の代謝回転速度は、ツニカマイシン(TM)処置HEK 293T細胞では、DMSO処置HEK 293T細胞よりはるかに速かった(図2A;8Aおよび8B)。類似の結果が、A431細胞における内因性のPD-L1についても観察された(図8C)。MG132によるプロテアソーム阻害下では、非グリコシル化PD-L1レベルは、12時間の間に着実に増加した(図2B)。一貫して、非グリコシル化PD-L1 4NQは、急速に分解し、半減期は、非グリコシル化PD-L1 WTの半減期(図2A)と類似の4時間もの短さであり(図2C)、グリコシル化の障害によって、26Sプロテアソームを介してのPD-L1の分解が起こることを示唆している。
【0235】
[実施例4]
PD-L1の結合親和性
PD-L1は、がんの進行の際にPD-1とのその結合を通しての重要な免疫抑制剤である(Okazaki, T., et al., 2013, Nature immunology, 14:1212-1218)。このため、WT PD-L1およびグリコシル化欠損変異体PD-L1のPD-1への結合親和性を比較した。PD-L1 WTおよび4NQ変異体PD-L1は、MDA-MB-468およびHEK-293T細胞において安定に発現し、PD-L1 WTおよび4NQ発現の類似の量を有する安定なクローンを選択し、組み換えPD-1/Fc融合タンパク質と共にインキュベートした後、シグナルを増幅するために抗ヒトIgG(Fc特異的)蛍光コンジュゲートを添加した(Cheng, X. et al., 2013, The Journal of biological chemistry, 288:11771-11785)(図8D)。グリコシル化と非グリコシル化PD-L1の間で膜局在に有意な変化はなかったが(図8E(共焦点画像)および8F(ビオチン化プルダウン))、TMによって処置したかまたは処置していない安定なトランスフェクタントの間では細胞膜におけるPD-1結合に顕著な差が観察された(図2D、右に示す定量グラフ)。さらに、TM処置によるPD-1グリコシル化の除去または4NQ変異体の発現は、PD-L1とPD-1との会合を低減させた(図2Eおよび8G)。In vitro結合実験も同様に、PD-L1 4NQ/PD-1/Fc相互作用の喪失を証明しており、PD-L1のグリコシル化がPD-1とのその会合を増強することを示唆している(図2F)。免疫抑制活性は、細胞傷害性T細胞を伴う細胞-細胞相互作用に関連していることから、PD-L1安定クローンに曝露後のJurkat T細胞において同時培養実験を実施し、PD-L1とPD-1との相互作用によって抑制されるT細胞免疫応答の指標であるIL-2発現レベルを測定した(Yang, W., et al., 2008, Investigative ophthalmology & visual science, 49:2518-2525)(図8H)。一貫して、PD-L1グリコシル化の喪失は、PD-1とのその相互作用を損ない、可溶性IL-2の放出を増強した(図2G)。これらの結果は、PD-L1糖表現型の完全性が、その免疫抑制機能にとって必要であることを明らかにしている。
【0236】
[実施例5]
PD-L1糖表現型の機能性
PD-L1 WTおよび4NQ変異体は、内因性のPD-L1欠失MDA-MB-468およびBT549細胞において安定に発現された。これらの細胞株を使用して、PD-1およびPD-L1結合親和性を分析した。示されるように、グリコシル化変種PD-L1 4NQとPD-1との会合は減少した(図9A)。In vitro結合実験によりさらに、PD-L1とPD-1との会合にとってグリコシル化が必要であることが証明された(図9B)。T細胞媒介腫瘍細胞殺滅を、BT549 PD-L1 WTおよびPD-L1 4NQ発現安定細胞株をヒト初代培養T細胞と同時培養することによって、in vitroで測定した(低速度撮影顕微鏡)。PD-1結合の喪失と一貫して、PD-L1 4NQ安定細胞株は、より多くのがん細胞のT細胞媒介殺滅を示した(図9C)。加えて、PD-L1の免疫抑制機能を、PD-L1 WTまたはPD-L1 4NQ発現4T1細胞のいずれかを投与したBALB/cマウスにおいて腫瘍の成長を測定する、同系の4T1マウスモデルにおいてin vivoで測定した。PD-L1 WTを発現する細胞を有するマウスと比較して、PD-L1 4NQを発現する細胞を有するマウスは、低減された腫瘍の大きさおよびより活性化された細胞傷害性T細胞を示した(図9Dおよび9E)。併せると、これらのデータは、PD-L1グリコシル化の喪失が、PD-1とのその相互作用を障害し、PD-1/PD-L1相互作用による腫瘍細胞のT細胞による免疫監視逃避能を障害することを証明している。したがって、PD-L1がグリコシル化されていない、または異常にグリコシル化されている腫瘍細胞は、機能的なエフェクターT細胞による殺滅に対して感受性がある標的を提供する。その膜発現PD-L1のグリコシル化障害により、腫瘍細胞によるT細胞免疫監視の逃避を防止または遮断するこのメカニズムは、PD-L1糖表現型の完全性が、その免疫抑制機能にとって必要であることをさらに裏付ける。
【0237】
加えて、上記の同系4T1 BALB/cマウスモデルを使用して、16日の試験期間の間に動物における腫瘍の成長に及ぼす代表的な二重機能抗体、すなわちSTM073の効果(すなわち、免疫抑制機能)を決定した。簡単に説明すると、試験において、動物に、野生型(グリコシル化)PD-L1を発現する4T1細胞(1×10個の4T1細胞)を0日目に投与した。その後、3、5、7、9、11および13日目に、STM073 MAb(100μg)またはIgG対照抗体(100μg)の注射によって4T1動物を処置した。処置期間の間、死亡率および腫瘍体積を動物において評価した。図9Fは、STM0073(「73」)MAbによって処置したマウスにおける腫瘍体積が、対照動物における腫瘍体積と比較して測定可能に低かったことを示す棒グラフを表す。
【0238】
[実施例6]
グリコシル化PD-L1結合モノクローナル抗体の産生
グリコシル化ヒトPD-L1に対して作製されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、標準化プロトコールに従って、SP2/0マウス黒色腫細胞と、ヒトPD-L1免疫BALB/cマウス(n=6)から単離した脾細胞との融合によって得た(Antibody Solution,Inc)。融合前に、免疫したマウスの血清を、FACS分析を使用してPD-L1免疫原への結合に関して確認した。モノクローナル抗体(MAb)産生ハイブリドーマを作製し、MAbの全てのアイソタイプはIgG1であった。抗体を産生するハイブリドーマを、特異性に関して再度試験した。
【0239】
非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化PD-L1抗原に対して特異的であり、優先的に結合する抗glycPD-L1 MAb(すなわち、グリコシル化PD-L1特異的MAb)を同定するために、異なるタイプのアッセイを実施した。グリコシル化PD-L1へのMAbの優先的結合を検出するスクリーニングアッセイにおいて、FACS分析による蛍光強度の測定に基づいて(細胞膜結合タンパク質を使用する)、抗体の結合を決定した。例として、BT549ヒト乳がん細胞株を使用して、アッセイを実施した。実例として、PD-L1 WT(完全にグリコシル化)を過剰発現するBT549細胞を、通常の技法に従ってビオチンによって標識した後、PD-L1 4NQ(完全な非グリコシル化PD-L1変種)を過剰発現するBT549細胞と混合した。混合した細胞を、抗PD-L1抗体、例えば抗glycPD-L1抗体と共にインキュベートして、検出剤としてのFITCにコンジュゲートした二次抗体と共にさらにインキュベートした。洗浄後、蛍光強度(測定蛍光強度、MFI)をFACS/フローサイトメトリー分析によって測定して、膜結合PD-L1 WT(細胞上)または4NQ PD-L1(細胞上)への抗PD-L1抗体の相対的結合を評価した。4NQ PD-L1と比較してWT PD-L1において有意により高いMFIを示した抗体を、さらなる評価のために選択した。STM073およびSTM108二重機能MAbの蛍光結合分析の結果を、以下の表6に示し、これは、野生型(グリコシル化)PD-L1を発現するBT549細胞(BT549PD-L1WT細胞)への抗体結合に対するMFI値を、変種(非グリコシル化4NQ)PD-L1を発現するBT549細胞(BT549PD-L1 4NQ細胞)への抗体結合に対するMFI値と比較して示す。表6に示す実験結果は、BT549PD-L1 4NQ細胞(非グリコシル化PD-L1発現細胞)と比較してBT549PD-L1 WT細胞(グリコシル化PD-L1発現細胞)に対するSTM073 MAbの結合のMFI値がおよそ5倍高いことを示す。同様に、BT549PD-L1 4NQ細胞と比較して、BT549PD-L1 WT細胞へのSTM1108結合に関して、およそ4倍高いMFI値が決定された。
【0240】
【表6】
結合分析に基づき、42個の候補MAb産生ハイブリドーマを選択して、ADCF培地中で成長させ、モノクローナル抗体を含むその上清を濃縮して精製した。
【0241】
いくつかの例において、精製MAbをさらに、生細胞イメージングアッセイIncuCyte(商標)(Essen Bioscience)を使用して、そのPD-L1とPD-1との間の相互作用(PD-L1/PD-1相互作用)の中和または阻害能に関して試験した。このアッセイに関して、PD-L1を発現するBT-549細胞を、抗ヒトPD-L1抗体および蛍光標識PD-1-Fc融合タンパク質と共にインキュベートした。リガンドおよび受容体結合を、製造元の説明書に従ってIncuCyte(商標)Zoomによって毎時間定量した。このアッセイに基づいて、試験した42個のMAbのうち、15個のMAbは、PD-L1のPD-1への結合を完全に遮断した。強い遮断有効性を示す15個のMAbのいくつかは、非グリコシル化PD-L1にもある程度結合することを示した。
【0242】
別のアッセイにおいて、グリコシル化ヒトPD-L1タンパク質および非グリコシル化PD-L1、すなわちPNGアーゼFによって処置したPD-L1タンパク質の両方を、固相表面にコーティングして、PD-L1抗原に対するMAbの結合親和性に関して試験した。「PD-L1抗原」は、「PD-L1タンパク質」と同義であると理解される。12個のMAbが、非グリコシル化PD-L1タンパク質(PNGアーゼF処置タンパク質)と比較してグリコシル化PD-L1タンパク質と高親和性の相互作用を示した。さらなる特異性分析に関して、選択されたMAbをウェスタンブロットおよびFACSフローサイトメトリー分析によって分析した。様々な分析から、STM073およびSTM108などのMAbが、PD-L1の非グリコシル化形態と比較してPD-L1のグリコシル化形態に特異的に結合することが見出され、このことは、グリコシル化PD-L1抗原に関するこれらのMAbの特異性をさらに確認した。
【0243】
[実施例7]
特異的グリコシル化PD-L1結合モノクローナル抗体の結合領域の同定
グリコシル化PD-L1に結合するモノクローナル抗glycPD-L1抗体の領域を同定するために、野生型(グリコシル化)PD-L1(PD-L1 WT)およびグリコシル化変種タンパク質N35/3NQ、N192/3NQ、N200/3NQ、およびN219/3NQ(35、192、200、または219位でのグリコシル化部位の1つが、その位置での野生型アスパラギン(N)であるが、他の3つの位置がグルタミン(Q)に変異しており、そのためグリコシル化されていない)(図10A)を、PD-L1ノックダウンBT549細胞において過剰発現させた。ウェスタンブロットによって決定されるように、いくつかのMAbは他のPD-L1変異体と比較してより高い結合レベルを有する特定のPD-L1変異体を認識し、そのようなMAbが部位特異的であることを証明した。例えば、MAb STM073は、変異体N35/3NQ、N192/3NQ、およびN200/3NQに結合したが、変異体N219/3Qには結合せず、この抗体がPD-L1のN35、N192、およびN200領域に結合したがN219には結合しなかったことを証明している(図10B)。さらに、肝臓がん細胞溶解物を使用するウェスタンブロット分析により、STM073などの代表的な抗glycPD-L1抗体に関してPD-L1グリコシル化の差別的パターンが明らかとなった(図10C)。
【0244】
これらのMAbの組織病理学的関連性を、免疫組織化学(IHC)染色によってさらに証明した。サイトスピン染色分析において、抗glycPD-L1モノクローナル抗体は、一貫してPD-L1タンパク質のグリコシル化タンパク質を認識して結合したが、非グリコシル化PD-L1タンパク質には結合しなかった。ヒトトリプルネガティブ乳がん患者の試料において、抗glycPD-L1モノクローナル抗体はまた、膜および細胞質染色を1:30の比率で示した。これらのデータは、抗glycPD-L1モノクローナル抗体が、バイオマーカー分析において、バイオマーカーとしてグリコシル化PD-L1の検出のために使用することができることを証明した。
【0245】
[実施例8]
グリコシル化PD-L1結合抗体のエピトープマッピング
マウスモノクローナル抗glycPD-L1抗体STM073のエピトープマッピングを、CovalX AG社(Switzerland)が実施した。抗glycPD PD-L1抗体全般、特にSTM073 MAbによって認識されるエピトープの性質、例えば線形またはコンフォメーションであるかを決定するために、試験を実施して、PD-L1抗原タンパク質と抗PD-L1抗体との相互作用が、抗原のタンパク質分解によって生成される非構造化ペプチドによって阻害されうるか否かを評価した。PD-L1抗原の十分なタンパク質分解によって生成されるペプチドが、抗体による抗原の結合を阻害することができれば、相互作用はコンフォメーションに基づいておらず、エピトープは線形である。エピトープの配列を決定するためには、抗原の配列から生成された重なり合うペプチドのバンクによる単純な競合アッセイで十分である。あるいは、PD-L1抗原の十分なタンパク質分解によって生成されたペプチドが抗体による抗原の結合を阻害することができなければ、標的のコンフォメーションは、相互作用にとって必要であると決定され、エピトープはコンフォメーションであり、例えば連続(ループなどの空間的コンフォメーションで)または不連続(三次元構造により)である。コンフォメーションエピトープへの結合をさらに解明するために、共有結合標識、ペプチドマッピング、および高解像度質量分析も同様に使用した。
【0246】
競合アッセイは、PD-L1抗原から生成されたペプチドがPD-L1抗原へのMAb STM073結合を阻害しなかったことを示し、STM073 MAbエピトープがコンフォメーションであり、線形ではないことが確認された。化学的架橋、高質量のMALDI質量分析およびnLC-Orbitrap質量分析を使用して、PD-L1タンパク質と抗体との相互作用表面を特徴付けした。PD-L1のペプシンタンパク質分解、得られたペプシン生成PD-L1ペプチドと抗体およびインタクトPD-L1との混合物を使用する競合アッセイ、ならびに公知の方法による抗原/抗体相互作用の分析により、PD-L1ペプチドによる、STM073モノクローナル抗体のPD-L1抗原への結合の検出可能な阻害は示されなかった。したがって、抗PD-L1 MAb STM073によって認識されるPD-L1のエピトープは、コンフォメーションであって、線形ではないと決定された。STM073のエピトープは、アミノ酸残基H69、Y112、R113、およびK124を含むことが決定され、これらを、V68で始まり、V128で終わる配列VGEEDLKVQH------DAGVYRCMISYGGADYRITV(配列番号85)において下線で示す(ダッシュで示す79~107位内の領域を有する)。STM108は、配列LKVQHSSYRQR------EGYPKAEVIWTSSDHQ内のエピトープに結合することが見出され、これはそれぞれ、配列番号1のアミノ酸74~84位および158~173位であり、配列番号1の残基74~173位内の配列番号1の残基S80、S81、K162、およびS169に接触する。
【0247】
[実施例9]
T細胞殺滅アッセイ
T細胞殺滅活性を利用して、本明細書において記述される抗glycPD-L1モノクローナル抗体が腫瘍細胞に及ぼす細胞傷害活性を決定した。従ったプロトコールは以下のとおりである;0日目、グリコシル化野生型PD-L1(PD-L1 WT)発現BT549 RFP標的細胞培養物から血清含有培地を除去して、PBSで丁寧に2回すすいだ。細胞を回収して計数した。細胞浮遊液を遠心分離(1000RPM、4分間)して、細胞沈降物を培養培地に細胞50,000個/mlで浮遊させた。手動のマルチチャンネルピペットを使用して、細胞を平底マイクロプレートのあらゆるウェルに播種した(100μL/ウェル、すなわち、細胞5000個/ウェル)。プレートを室温で30分間放置した後、IncuCyteZOOM(登録商標)生細胞イメージング装置の中に入れて、20分間平衡にした後、初回スキャンを計画した。初回スキャンの開始直後から3時間ごとに、24時間の繰り返しスキャン(10倍対物レンズ)を計画した。細胞のコンフルエンスを、所望のコンフルエンス(例えば20%)が達成されるまで、続く18時間で(終夜)モニターした。
【0248】
翌朝、アッセイの日(すなわち、1日目)、IncuCyte(商標)Caspase3/7アポトーシス緑色蛍光検出試薬(Essen Bioscience 4440)の10μM溶液を、アッセイ培地(4×最終アッセイ濃度2.5μM)中で調製して、インキュベータにおいて37℃に加温した。抗CD3抗体(100ng/mL)+IL-2(10ng/mL)T細胞活性化剤処置を、アッセイ培地中で4×最終アッセイ濃度で調製して、37℃に加温した。試験MAbも同様に調製した。標的細胞プレートをインキュベータから取り出して、細胞層を傷つけないように注意して培地を吸引した。マルチチャンネルピペットを使用して、加温したカスパーゼ3/7溶液25μLを各ウェルに移した。その後、加温した抗CD3抗体+IL-2 25μLおよび抗体を、細胞プレートの適切なウェルの中に入れた。エフェクター細胞(PBMCまたは総T細胞)を含む追加の培地50μLを添加して、総アッセイ容積を100μLにした。脱気した細胞プレートをIncuCyteZOOM(登録商標)機器の中に入れて、20分間平衡にして、初回スキャンを行った。24時間の繰り返しスキャンを2~3時間毎に5日まで計画した。(対物レンズ10倍;容器のタイプ:Corning3596;スキャンモード:標準;スキャンパターン:ウェルあたり画像2個;チャンネル:フェーズ+「緑色」(+NucLight(商標)赤色標的細胞を使用する場合は+「赤色」)。
【0249】
分析に関して、標的細胞アポトーシスを、視野における「大きい」緑色蛍光オブジェクト(核)の総数を経時的に計数することによってIncuCyte(商標)ソフトウェアにおいて定量した。標的細胞の増殖は、赤色細胞核の数に対応する、赤色オブジェクトの数から測定した。データは1mmあたりの蛍光オブジェクト数として表記した。データは、本明細書において記述した抗体、具体的にSTM073の添加が腫瘍細胞殺滅を増強することを示した(図11)。
【0250】
[実施例10]
結合アッセイ
本明細書において記述される抗glycPD-L1モノクローナル抗体がPD-1とPD-L1との相互作用を特異的に阻害するか否かを決定するために、以下の結合アッセイを実施した。アッセイの0日目に、血清含有培地をPD-L1発現BT549標的細胞培養物から採取して、D-PBSによって丁寧に2回すすいだ。細胞を採取して計数した。細胞浮遊液を遠心分離(1000RPM、5分間)して、細胞沈降物を細胞50,000個/mlで培養培地に浮遊させた。手動でのマルチチャンネルピペットを使用して、細胞(100μL/ウェル、すなわち、細胞5000個/ウェル)を平底マイクロプレートのあらゆるウェルに播種した。プレートを室温で30分間放置した。その後、細胞を含むプレートを、5%COインキュベータにおいて終夜インキュベートした。
【0251】
アッセイの1日目に(すなわち翌朝)、1μg/mL PD-1/Fcおよび1:400倍希釈のAlexa Fluor488ヤギ抗ヒトIgGを含む培養培地を調製して、インキュベータ内で37℃に加温した。細胞プレートをインキュベータから取り出して、細胞層を傷つけないように注意して培地を吸引した。試験抗体50μLを、用量依存的に各ウェルに添加した。PD-1/FcおよびAlex Fluor488ヤギ抗ヒトIgGを含む培養培地50μLをあらゆるウェルに添加した。細胞プレートをIncuCyteZOOM(登録商標)機器の中に入れて、20分間平衡にして、初回スキャンを行った。24時間の自動繰り返しスキャンを1~2時間毎に24時間まで計画した。対物レンズ10倍;容器のタイプ:Corning3596;スキャンモード:標準;スキャンパターン:ウェルあたり画像4個;チャンネル:フェーズ+「緑色」。
【0252】
図12Aおよび12Bは、代表的なMAb STM073およびSTM108が、PD-L1を発現する細胞へのPD-1/Fcの結合を用量依存的に阻害したことを示している。対照アッセイの結果を図12Cに示す。
【0253】
[実施例11]
PD-L1内在化アッセイ
抗glycPD-L1モノクローナル抗体が、PD-L1内在化および分解を促進するか否かを決定するために、A431細胞を、無血清培地中で一晩インキュベートした後、抗glycPD-L1抗体10μgと共に2日間インキュベートした。次に細胞を回収し、細胞中のPD-L1をウェスタンブロットによって評価した。図13は、STM073とのインキュベーションが、対照(IgG)と比較して細胞におけるPD-L1レベルの低減を示すことを示す。
【0254】
STM073およびSTM108 MAbの細胞内在化を、pHrodo(商標)レッドMicroscale Labelingキット(ThermoFischer Scientific,Rochester,NY)を使用して、製造元の説明書に従って、pHrodo(商標)レッド色素による抗体の標識によって可視化した。簡単に説明すると、細胞を0時間で播種し、播種後24時間で、細胞を標識STM073またはSTM108 MAbs(5μg/mL)と共にインキュベートした。1時間後、細胞のイメージスキャンを、IncuCyte ZOOM(登録商標)機器を使用して、予定される24時間で1時間ごとにスキャンを繰り返した(10×)。対物レンズ:10倍;容器タイプ:Corning 356407;スキャンモード:標準;スキャンパターン;ウェルあたり3画像;チャネル:フェーズ+「レッド」。図14A:STM073と共にインキュベートした野生型BT549細胞(ヒト乳管癌、乳がん細胞株);図14B:STM073と共にインキュベートした、PD-L1 WT(グリコシル化)を過剰発現する BT 549細胞;図14C:STM073と共にインキュベートしたNCI-H226細胞(ヒト肺がん細胞株、扁平上皮中皮腫);図14D:STM073と共にインキュベートしたMCF-7細胞(ヒト乳がん細胞株、腺癌);および図14E:STM108と共にインキュベートした、PD-L1 WT(グリコシル化)を発現するBT 549細胞。
【0255】
[実施例12]
抗glycPD-L1抗体によるPD-L1の結合は、PD-L1内在化および分解を促進する
図15A~15Cは、BT549-PD-L1細胞上で発現するPD-L1への抗glycPD-L1 MAb STM108の結合後の生細胞イメージング分析を介したPD-L1内在化および分解の例を提供する。図15A~15Cにおいて、抗PD-L1抗体は、実施例11において上述のとおり、pHrodo(商標)レッド Microscale Labelingキット(ThermoFischer Scientific,Rochester,NY)を使用して、赤色蛍光色素pHrodo(商標)レッド(スクシンイミジルエステル(pHrodo(商標)レッド、SE)にコンジュゲートしたSTM108である。緑色染色は、生細胞イメージングを介して撮像した生細胞において酸性区画(リソソーム)を染色する細胞透過性緑色色素であるLysoTracker(登録商標)グリーンDND-26によって染色された細胞を反映する。図15Aは、最初の時点(時間0)で、矢印で示される細胞の強い赤色の細胞内染色によって観察されるように、STM108抗体が細胞に内在化されることを示している。図15Bは、図15Aにおける時間0の2分後の時点での、図15Aに示した同じ細胞における弱められた細胞内赤色染色を示す。図15Cは、図15Aにおける時間0の4分後の赤色細胞内染色の欠如を示し、細胞内のSTM108抗体および/または抗体-抗原複合体が分解したことを反映する。これらの画像は、STM108 Mabなどの抗glycPD-L1抗体が細胞表面上に発現するPD-L1への結合後にPD-L1の内在化および分解を行うことを反映する。
【0256】
[実施例13]
総T細胞と比較した腫瘍細胞における抗glycPD-L1抗体が結合したPD-L1の内在化
抗glycPD-L1抗体を、活性化または非活性化T細胞と比較して細胞表面発現PD-L1の結合後にPD-L1陽性腫瘍細胞に内在化する能力に関して試験した。抗glycPD-L1抗体STM004、STM073、およびSTM108および対照としてのマウスIgGを、末梢血からの非活性化総T細胞、末梢血からの活性化総T細胞、およびPD-L1を発現するNCI-H226細胞と共にインキュベートした。T細胞の活性化に関して、総T細胞をビーズ、例えば抗CD3および抗CD28抗体(例えば、ThermoFisher Scientific,Rochester,NY)に1:1で共有結合によりカップリングさせた不活性な超常磁性ビーズと混合して、抗原提示細胞による刺激を模倣するようにT細胞を刺激した(例えば、A. Trickett et al., 2003, J. Immunol. Methods, 275, Issues 1-2:251-255を参照されたい)。全ての抗体を、pHrodo(商標)レッドによって標識し、内在化を実施例11に記載のように可視化した。図16A~16Dおよび図16E~16Hは、試験したいずれの抗体も非活性化総T細胞または活性化総T細胞に内在化されなかったことを示す。図16I~16Lは、二重機能内在化STM073およびSTM108 MAbが、赤色の細胞内染色を示さなかった標識対照抗体mIgG(図16I)および標識非内在化STM004 MAb(図16J)と比較して、赤色の細胞内染色によって証明されるように、これらの細胞とのインキュベーション後にNCI-H226細胞に内在化されたことを示している。本実施例は、二重機能抗glycPD-L1抗体が、PD-L1発現腫瘍細胞に選択的に内在化されるが、活性化または非活性化T細胞には内在化されないことを証明する。
【0257】
[実施例14]
腫瘍細胞殺滅および腫瘍体積低減におけるPD-L1 ADCの有効性
腫瘍の殺滅および腫瘍体積低減における、細胞毒素MMAEにカップリングさせた抗ヒトglycPD-L1 MAb、すなわちSTM108 MAbを含むADCの有効性を評価するために、in vitroおよびin vivo実験の両方を実施した。STM108-ADCは、MMAE細胞毒素ペイロードをPD-L1発現腫瘍またはがん細胞に特異的に送達するために、本明細書において上記のようにシステインを介してMC-vc-PAB-MMAEに化学的に連結したSTM108 MAbを含む。STM108-ADC(STM108-MC-vc-PAB-MMAE)の測定された物理特性は、以下の通りである。
【0258】
【表7】
【0259】
本実施例に関連して、図17A~17Dは、対照(IgGおよびSTM108 MAb単独)と比較して、腫瘍移植マウスにおけるPD-L1発現および非PD-L1発現腫瘍細胞の殺滅ならびに腫瘍体積の低減における、STM108-ADCの有効性を評価するために実施した実験の結果を表す。図17Aは、異なる濃度のSTM108-ADC、すなわち「ADC108」(塗りつぶした黒四角)に曝露後のPD-L1のその発現をノックアウトするように改変されたMB231細胞(「MB231 PDL1 KO」)の%生存率と比較した、異なる濃度(nM)のSTM108-ADC(塗りつぶした黒丸)に曝露後のPD-L1発現MDA-MB231(ヒト乳癌細胞株)腫瘍細胞(「MB231」)の%生存率を示す。観察されるように、その表面にPD-L1を発現しないMB231細胞の生存率は、最高濃度においてもSTM108-ADCによって有意に影響を受けなかったが、PD-L1発現MB231細胞の生存率は、特に1nM~100nMまでのSTM108-ADC濃度で有意に低減された。図17Bでは、MDA-MB231マウス乳がんモデルを使用し、このモデルでは、MB231細胞に由来する腫瘍を移植した動物を、IgG-MMAE対照(100μg)、STM108-ADCの50μg、100μg、もしくは150μg、またはSTM108 MAb単独(100μg)のいずれかによって処置した。結果は、IgG-MMAE対照によって処置した動物と比較して、腫瘍体積が、全ての用量レベルのSTM108-ADC、ならびにある程度、STM108 MAb(100μg)によって処置した腫瘍を有する動物において有効に減少されることを証明した。加えて、約18日までに、STM108-ADC(100μg)によって処置した動物5匹中3匹(3/5)およびSTM108-ADC(150μg)によって処置した動物5匹中4匹(4/5)において、完全寛解(「CR」)が意外にも見出された。
【0260】
図17Cは、異なる濃度のSTM108-ADC、すなわち「ADC108」(白抜きの赤い四角)に曝露後のPD-L1を本来発現しない4T1細胞(「4T1」)の%生存率と比較して、異なる濃度(nM)のSTM108-ADC(白抜きの赤い丸)に曝露後の細胞表面上にPD-L1を発現するように改変された4T1乳癌細胞(「4T1 hPDL1」)の%生存率を示す。観察されるように、その表面上にPD-L1を発現しない4T1細胞の生存率は、最高濃度であってもSTM108-ADCによって有意に影響を受けなかったが、PD-L1発現4T1細胞の生存率は、10nM超~100nMのSTM108-ADC濃度で低減された。
【0261】
4T1同系マウス乳がんモデルを使用し、このモデルにおいて、動物(Balb/cマウス)に、細胞表面上にPD-L1を発現するように改変されている4T1乳癌細胞に由来する腫瘍を移植したか、または細胞表面上にPD-L1を本来発現しない非トランスフェクト4T1乳癌細胞(「4T1」)に由来する腫瘍を移植した。BALB/cマウス(6~8週齢、雌性;Jackson Laboratories,Bar Harbor,Maine,USA)を使用する手順は全て、MD Andersonの施設内動物飼育および使用に関する委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認された指針に従って実施した。マウスを各群における平均腫瘍体積に従って群分けした。4T1細胞(Matrixgel基底膜基質[BD Biosciences,San Jose,CA,USA]25μLと混合した培地25μL中に細胞1×10個)を乳房脂肪体に注射した。IgG-MMAE対照(100μg)、STM108 MAb(100μg)、またはSTM108-ADC(150μg)を、マウスの腫瘍細胞接種後3、5、7、9、11、および13日目に腹腔内注射した。腫瘍をキャリパーによって3日毎に測定し、腫瘍体積を以下の式:π/6×長さ×幅を使用して計算した。
【0262】
図17Dに観察されるように、細胞表面PD-L1発現をほとんどまたは全く有しない4T1由来腫瘍を有する動物(白抜きの丸/破線)において、結果は、腫瘍体積が全ての処置タイプ、すなわちIgG-MMAE対照、STM108 MAb、またはSTM108-ADCに関して時間と共に増加することを示した。PD-L1発現4T1細胞に由来する腫瘍を有し、IgG-MMAE対照によって処置した動物では、処置動物における腫瘍体積も同様に時間と共に増加した(塗りつぶした黒丸)。これに対し、PD-L1発現4T1細胞に由来する腫瘍を有し、STM108 MAb(塗りつぶした青色の丸)またはSTM108-ADC(塗りつぶした赤色の丸)のいずれかによって処置した動物では、腫瘍体積は有効に減少した。加えて、約21日までに、STM108-ADCによって処置した動物7匹中5匹(5/7)では完全寛解(「CR」)が起こることが意外にも見出された。
【0263】
がん、例えば2つのタイプの乳房腫瘍を処置するための、STM108などの、本明細書において上記の抗glycPD-L1 Mabを含むADCの使用に関連する有益で有効な抗新生物および治療態様は、抗glycPD-L1 MAb ADCによって処置されている動物における処置後25日以内、例えば約15~23日での腫瘍体積の有意な低減および腫瘍の完全寛解を示すin vivo結果によって強調されている。
【0264】
本明細書において開示され特許請求される方法の全ては、本開示に照らして不当な実験を行うことなく、作製および実行することができる。組成物および方法は、実施形態および好ましい実施形態に関して記述してきたが、記述の本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において記述される方法およびステップに、または方法のステップの順序に変更を適用してもよいことは、当業者に明白である。より具体的に、化学的および物理的に関連する特定の薬剤を、本明細書において記述される薬剤の代わりに置換してもよく、それでも同じまたは類似の結果が得られることは明白である。当業者に明白であるそのような全ての類似の置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義される記述の実施形態の精神、範囲、および概念に含まれると考えられる。
【0265】
本明細書において引用した全ての特許、刊行された特許出願、およびその他の刊行物は、参照により全体が本出願に組み込まれる。

本発明は次の実施態様を含む。
[1]
非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化PD-L1に選択的に結合して、グリコシル化PD-L1のPD-1への結合を阻害し、腫瘍細胞上のPD-L1の内在化および分解を促進する単離抗体。
[2]
組み換えにより改変された、キメラ抗体またはヒト化抗体である、上記[1]に記載の単離抗体。
[3]
非グリコシル化PD-L1への前記抗体の結合によって示されるK の半分より小さいK でグリコシル化PD-L1に結合する、上記[1]または上記[2]に記載の単離抗体。
[4]
非グリコシル化PD-L1への前記抗体の結合によって示されるK より少なくとも10倍小さいK でグリコシル化PD-L1に結合する、上記[3]に記載の単離抗体。
[5]
5~20nMの親和性でグリコシル化PD-L1に結合する、上記[4]に記載の単離抗体。
[6]
前記抗体が、蛍光標識によって直接または間接的に検出可能であり、細胞フローサイトメトリーアッセイにおいて非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への抗体結合によって示される平均蛍光強度(MFI)より2倍から10倍高いMFIでグリコシル化PD-L1を発現する細胞に優先的に結合する、上記[1]から[3]のいずれかに記載の単離抗体。
[7]
非グリコシル化PD-L1を発現する細胞への抗体結合によって示されるMFIより3倍~5倍、またはそれより高いMFIでグリコシル化PD-L1を発現する細胞に優先的に結合する、上記[6]に記載の単離抗体。
[8]
配列番号1のH69、S80、Y81、Y112、R113、K162、K124およびS169位のアミノ酸の少なくとも1つを含むグリコシル化PD-L1のエピトープに特異的に結合する、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[9]
前記エピトープが、配列番号1の領域V68~V128内または領域L74~Q173内のアミノ酸を含む、上記[8]に記載の単離抗体。
[10]
配列番号1のアミノ酸Y112、R113、およびS117の少なくとも1つを含むグリコシル化PD-L1のエピトープに特異的に結合する、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[11]
前記エピトープが、配列番号1の領域D108~V128内のアミノ酸を含む、上記[10]に記載の単離抗体。
[12]
モノクローナル抗体(MAb)STM073またはMAb STM108によって認識されるPD-L1のエピトープに特異的に結合する、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[13]
グリコシル化PD-L1への特異的結合に関して、MAb STM073またはMAb STM108と競合するかまたは交叉競合する、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[14]
MAb STM073またはMAb STM108の重鎖可変(V )ドメインまたは軽鎖可変(V )ドメインを含む、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[15]
MAb STM073またはMAb STM108の重鎖CDR1~3および/または軽鎖CDR1~3を含む、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[16]
ヒト抗体フレームワーク領域を有する、上記[15]に記載の単離抗体。
[17]
前記重鎖可変ドメイン(V )が、配列番号3または配列番号19のアミノ酸配列を有する、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[18]
ドメインが、配列番号11または配列番号27のアミノ酸配列を有する、上記[1]から[7]または[17]のいずれかに記載の単離抗体。
[19]
ドメインが配列番号3のアミノ酸配列を有し、V が配列番号11のアミノ酸配列を有する、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[20]
ドメインが配列番号19のアミノ酸配列を有し、V ドメインが配列番号27のアミノ酸配列を有する、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[21]
ヒト定常ドメインを含む、上記[17]から[20]のいずれかに記載の単離抗体。
[22]
配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV ドメイン、または
配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV ドメイン
を有する、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[23]
配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR L1、配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR L2、および配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR L3を含むV ドメインを有する、上記[1]から[7]、または[22]のいずれかに記載の単離抗体。
[24]
配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号22のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号24のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV ドメイン、または
配列番号21のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号23のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号25のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV ドメイン
を有する、上記[1]から[7]のいずれかに記載の単離抗体。
[25]
配列番号28のアミノ酸配列を有するCDR L1、配列番号30のアミノ酸配列を有するCDR L2、および配列番号32のアミノ酸配列を有するCDR L3を含むV ドメインを有する、上記[1]から[7]または[23]のいずれかに記載の単離抗体。
[26]
配列番号2もしくは18のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるV ドメイン、および/または配列番号10もしくは26のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるV ドメインを含む、上記[1]から[7]に記載の単離抗体。
[27]
前記V および/またはV ドメインをコードするヌクレオチド配列がそれぞれ、配列番号2もしくは18または配列番号10もしくは26のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である、上記[26]に記載の単離抗体。
[28]
前記V および/またはV ドメインをコードするヌクレオチド配列がそれぞれ、配列番号2もしくは18、または配列番号10もしくは26と少なくとも98%同一である、上記[27]に記載の単離抗体。
[29]
ヒト抗体フレームワーク領域を有する、上記[22]から[28]のいずれかに記載の単離抗体。
[30]
ヒト抗体定常ドメインを有する、上記[22]から[29]のいずれかに記載の単離抗体。
[31]
IgG、IgM、IgA抗体、またはその抗原結合断片である、上記[1]から[30]のいずれかに記載の単離抗体。
[32]
Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、二重パラトープ性またはシングルドメイン抗体である、上記[1]から[31]のいずれかに記載の単離抗体。
[33]
二重特異性または二重パラトープ性抗体である、上記[1]から[32]のいずれかに記載の単離抗体。
[34]
造影剤、化学療法剤、細胞傷害剤、抗新生物剤、または放射性核種にコンジュゲートされる、上記[1]から[33]のいずれかに記載の抗体。
[35]
配列番号2または18のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
[36]
配列番号10または26のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
[37]
上記[1]から[32]のいずれかに記載の抗体のV ドメインおよび/またはV ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
[38]
薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはビヒクル中に上記[1]から[34]のいずれかに記載の抗体を含む組成物。
[39]
上記[1]から[34]のいずれかに記載の単離抗体の有効量を、PD-L1陽性がんを有する対象に投与することを含む、それを必要とする対象におけるPD-L1陽性がんを処置する方法。
[40]
前記PD-L1陽性がんが、乳がん、肺がん、頭頚部がん、前立腺がん、食道がん、気管がん、皮膚がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、膵臓がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頚がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、または皮膚がんである、上記[39]に記載の方法。
[41]
前記PD-L1陽性がんが、血液のがんである、上記[39]に記載の方法。
[42]
前記単離抗体と併用して、非グリコシル化PD-L1と比較してグリコシル化PD-L1に選択的に結合する第2の単離抗体を投与することを含む、上記[39]から[41]のいずれかに記載の方法。
[43]
前記抗体が、薬学的に許容される組成物中にある、上記[39]から[41]のいずれかに記載の方法。
[44]
前記抗体が、全身、静脈内、皮内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、または局所投与される、上記[43]に記載の方法。
[45]
前記単離抗体と併用して、少なくとも第2の抗がん治療を対象に投与することをさらに含む、上記[39]から[44]のいずれかに記載の方法。
[46]
前記第2の抗がん治療が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、上記[45]に記載の方法。
[47]
抗新生物剤とコンジュゲートして抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を産生する、上記[34]に記載の単離抗体。
[48]
前記抗新生物剤が、チューブリン重合化を阻害する薬剤である、上記[47]に記載の単離抗体。
[49]
前記薬剤がメイタンシノイドまたはアウリスタチンである、上記[48]に記載の単離抗体。
[50]
前記メイタンシノイドが、DM1(N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシン)、またはDM4(N2’-デアセチル-n2’-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-6-メチルメイタンシンである、上記[49]に記載の単離抗体。
[51]
前記アウリスタチンがモノメチルアウリスタチンE(MMAE)またはモノメチルアウリスタチンF(MMAF)である、上記[49]に記載の単離抗体。
[52]
前記アウリスタチンがMMAEである、上記[51]に記載の単離抗体。
[53]
前記抗体が、マレイミドおよびカプロン酸(MC)結合基に化学的にコンジュゲートされ、これがカテプシン切断可能リンカーに化学的にコンジュゲートされ、これがパラアミノ安息香酸(PAB)スペーサーに化学的にコンジュゲートされ、これがMMAEに化学的にコンジュゲートされ、それによってADCが形成される、上記[52]に記載の単離抗体。
[54]
前記カテプシン切断可能リンカーがバリン-シトルリン(vc)である、上記[53]に記載の単離抗体。
[55]
STM073またはSTM108である、上記[54]に記載の単離抗体。
[56]
STM108である、上記[55]に記載の単離抗体。
[57]
細胞傷害薬に化学的にカップリングされた二重機能抗glycPD-L1抗体を含むADC。
[58]
前記抗体がSTM108またはSTM073である、上記[57]に記載のADC。
[59]
前記細胞傷害薬が、チューブリン重合化を阻害する薬剤である、上記[57]または上記[58]に記載のADC。
[60]
前記薬剤がメイタンシノイドまたはアウリスタチンである、上記[59]に記載のADC。
[61]
前記メイタンシノイドがDM1またはDM4である、上記[60]に記載のADC。
[62]
前記アウリスタチンがMMAEまたはMMAFである、上記[60]に記載のADC。
[63]
前記アウリスタチンがMMAEである、上記[62]に記載のADC。
[64]
前記抗体が、MC結合基に化学的にコンジュゲートされ、これがカテプシン切断可能リンカーに化学的にコンジュゲートされ、これがPABスペーサーに化学的にコンジュゲートされ、これがMMAEに化学的にコンジュゲートされ、それによってADCが形成される、上記[63]に記載のADC。
[65]
前記カテプシン切断可能リンカーがバリン-シトルリン(vc)である、上記[64]に記載のADC。
[66]
前記抗体がSTM108である、上記[65]に記載のADC。
[67]
切断可能リンカーを介してMMAEに化学的にカップリングされた抗glycPD-L1抗体STM108を含むADC。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図15
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図16-4】
図16-5】
図16-6】
図17-1】
図17-2】
【配列表】
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