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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】風力発電装置及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20230310BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20230310BHJP
【FI】
F03D7/04 L
F03D13/25
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019009443
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020118076
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】若林 正憲
(72)【発明者】
【氏名】武藤 香穂
(72)【発明者】
【氏名】金子 研一
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-040566(JP,A)
【文献】特開2003-129940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0006536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上または洋上に設置されていて頂部に支持部を備えた基礎部と、
前記支持部に回転可能に装着されたタワーと、
風を受けて回転するブレード及びハブと、
前記タワーに設置されていて前記ブレード及びハブの回転によって発電する発電機を内蔵するナセルと、
を備え
前記支持部は、前記基礎部の頂部に設置されて前記基礎部と同軸状に延びる内筒を含み、
前記タワーは、前記内筒に被せられて前記内筒を中心に回転可能に装着されている、
ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記ナセルに設置された風向計と、
前記風向計の検出値に基づいて前記タワーの回転角度を設定する姿勢補正機構と、
前記姿勢補正機構の指示信号に基づいて前記タワーを所定角度回転させる駆動機構と、を備えた請求項1に記載された風力発電装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記姿勢補正機構の指示信号に基づいて所定角度回転させられる駆動モータと、前記駆動モータの回転に応じて回転する歯車と、前記タワーの内周面に設けられていて前記歯車の回転角度に連動して前記タワーを回転させる内歯車と、を備えた請求項2に記載された風力発電装置。
【請求項4】
前記タワーの回転をガイドするベアリング機構が前記基礎部の頂部に設置されている請求項1から3のいずれか1項に記載された風力発電装置。
【請求項5】
前記基礎部は略円弧版形状のセグメントによって略円筒状に構築されている請求項1から4のいずれか1項に記載された風力発電装置。
【請求項6】
地上または洋上に略円筒状の基礎部を設置する工程と、
前記基礎部の頂部に設けられ、前記基礎部と同軸状に延びる内筒を含む支持部に、タワーを前記内筒上に被せて回転可能に装着する工程と、
前記タワーの上部にハブ及びブレードを備えたナセルを設置する工程と、を備えたことを特徴とする風力発電装置の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地上または洋上に設置されていて風力発電を行う風力発電装置及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生エネルギーによる発電装置が見直されている。洋上風力発電装置は水深に応じて、海底に基礎を設置する「着床式」と、海面に浮かぶ浮体構造物をチェーンなどで海底と係留する「浮体式」とを使い分けている。一般に水深50メートルより浅い海域では着床式の風力発電装置が採用され、それより深い海域では浮体式の風力発電装置が採用されている。着床式の風力発電装置は浅い海に限定されており、設置に適した海域は浮体式の風力発電装置の方が広い。
【0003】
例えば特許文献1に記載された風力発電装置は着床式の水上風力発電施設であり、海底に設置された鉄筋コンクリート製の底版から鉛直上方に基礎部が延びていて水上にある風力発電施設を支持している。基礎部は、内周筒部と外周筒部と内周筒部及び外周筒部の間の空間とから構成されており、この空間内に鉛直方向に延びる大径の複数の第1鋼管と小径の複数の鋼管が交互に配列されている。しかも、第1鋼管は内周筒部の外面に連結している。内筒の鋼管が鉛直方向に延びるように構成されている。
この風力発電装置の施工方法は、鉄筋コンクリート底版により支持された基礎部を陸上で製作して海上に運搬し、水上風力発電施設の設置位置に施工している。
【0004】
また、特許文献2に記載された風力発電装置は、ナセルとタワーを結合するベアリングに歯付きタイプを用い、アクチュエータやモータなどで強制的な方向制御を行う構成を備えている。風力発電は通常、風向きに対してブレードが正面を向くように、ナセルとタワーの接続部において回転可能な構造であるヨーシステムを備えている。ヨーシステムによるヨー制御とは、ブレードが無駄なく風を受ける為にブレードの向きを風向きに追従させて正対させる制御システムをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-115636号公報
【文献】特開2015-140777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された風力発電装置は着床式であり、風車タワーの風向きの変化に対してナセルとブレードの向きを変更できない欠点がある。
また、特許文献2に記載された風力発電装置は、ブレード及びハブを備えたロータとナセルをタワーに対して回転可能に支持するヨーシステムがナセルとタワーの接続部に設けられているため小さい断面積に設備が密集している。しかも、海上で発生する強風を大きなブレードで受けるため、タワーに対してナセルを回転させる小径の接続部のギア等の回転機構に過大な負荷がかかってしまい、損傷し易く耐久性が小さいという問題がある。また、この風力発電装置のヨーシステムは風向きの変化に対する反応が敏感で、ナセルがくるくる動くため、この点でもナセルとタワーの接続部の耐久性が小さいという問題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、ナセルとタワーの接続部に過大な負荷がかかることを阻止して耐久性を向上させることができる風力発電装置とその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による風力発電装置は、地上または洋上に設置されていて頂部に支持部を備えた基礎部と、支持部に回転可能に装着されたタワーと、風を受けて回転するブレード及びハブと、タワーに設置されていてブレード及びハブの回転によって発電する発電機を内蔵するナセルと、を備えたことを特徴とする。
本発明による風力発電装置は、地上または洋上で風にブレード及びハブを正対させるために基礎部の支持部を中心にタワーを回転させることができる。ブレード及びハブを備えたナセルとタワーとの接続部でなく、タワー全体をナセルと共に回転させることでブレードを風に正対させることができる。
【0009】
また、ナセルに設置された風向計と、風向計の検出値に基づいてタワーの回転角度を設定する姿勢補正機構と、姿勢補正機構の指示信号に基づいてタワーを所定角度回転させる駆動機構と、を備えていることが好ましい。
風向計で検出した風の向きの変化に対して姿勢補正機構で回転角度を駆動機構に指示してタワー全体を回転させることができる。
【0010】
また、駆動機構は、姿勢補正機構の指示信号に基づいて所定角度回転させられる駆動モータと、駆動モータの回転に応じて回転する歯車と、タワーの内周面に設けられていて歯車の回転角度に連動してタワーを回転させる内歯車と、を備えたことが好ましい。
姿勢補正機構の指示信号に基づいて駆動モータを駆動させて連動する歯車を介して内歯車を所定角度回転させることで、タワーを所定角度回転させることができる。
【0011】
また、タワーの回転をガイドするベアリング機構が基礎部の頂部に設置されていることが好ましい。
タワーはベアリング機構によって基礎部に対してスムーズに回転可能である。
【0012】
また、基礎部は略円弧版形状のセグメントによって略円筒状に構築されていることが好ましい。
セグメントを千鳥状に組み立てることで略円筒状の基礎部を構築でき、しかも基礎部は地上で構築することができる。基礎部をコンクリートで製作することでコストを低減できる。
【0013】
本発明による風力発電装置の施工方法は、地上または洋上に略円筒状の基礎部を設置する工程と、基礎部の頂部に設けられた支持部にタワーを回転可能に装着する工程と、タワーの上部にハブ及びブレードを備えたナセルを設置する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による風力発電装置及び風力発電装置の施工方法は、風の向きに応じて基礎に対してブレード及びハブとナセルをタワーと一体に回転させるため、回転が緩やかで確実であり、ナセルとタワーの接続部に負荷が集中することがなく回転機構の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による風力発電装置の概略図である。
図2図1に示す風力発電装置のタワー頂部の構成を示す説明図である。
図3】風力発電装置の基礎部とタワーの連結構造を示す説明図である。
図4】風力発電装置の基礎部とタワーの連結構造を示す変形例の説明図である。
図5】タワーの回転機構を示す図3のA-A線断面図である。
図6図3におけるB部拡大縦断面図である。
図7】風力発電装置における基礎部の曳航工程を示す図である。
図8】洋上に浮かぶ風力発電装置の浮き状態を示すもので、(a)は基本構成の図、(b)は風を受けて揺動した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による風力発電装置とその施工方法について図1図8を参照して説明する。
図1に示す風力発電装置1は例えば海面に浮かぶスパー型浮体構造である。この風力発電装置1は洋上に浮かぶ基礎部2と、基礎部2の上部に回転可能に設置されていて発電機の支柱となるタワー3とを備えている。タワー3の上部にはナセル4が設置され、ナセル4の一端部にはハブ5と複数、例えば3枚のブレード6を備えたロータ7が設置されている。各ブレード6はハブ5に等間隔に連結されている。基礎部2はチェーン等の複数の係留策9を図示しないアンカーによって海底に固定することで流されないように係留されている。
【0017】
ナセル4内にはハブ5に連結されたロータ軸10に増速機11が連結され、ロータ7の回転力を発電機12に伝達して電力を発生させる。ナセル4内には風力発電装置1の制御に必要な制御機器や計器等を備えた制御盤13等が設置され、ロータ軸10には回転速度を規制するブレーキ14も設置されている。また、ナセル4の外面には風向きを計測して制御盤13に送信する風向計16がセンサとして取り付けられ、風向計16による風向きの検出値に基づいて基礎部2に対するタワー3の回転角度を制御盤13で制御している。
【0018】
図3に示す風力発電装置1の基礎部2は例えば略円筒形状の筒体18と底部18aと頂部18bとで形成されている。基礎部2は円筒形状に代えて角筒状等でもよい。基礎部2の筒体18は例えば鉄筋コンクリート製で略円弧版状に形成されたセグメント20を周方向と上下方向に千鳥配置に積層して形成されている。各セグメント20は継手によってそれぞれ連結される。
頂部18bの上には基礎部2と同軸状に延びる例えばコーン状の内筒22が設置されている。基礎部2の内部には風力発電装置1が洋上に浮かべられた状態でそのバランスをとるためにバラスト水24が貯留されている(図4参照)。
【0019】
基礎部2の上部に設置されたタワー3は略円錐台形状で略筒状に形成されており、その下部が内筒22内に被せられて後述するように回転可能とされている。本実施形態では、タワー3がナセル4及びロータ7と一体に基礎部2の内筒22を中心に回転可能に設置されている。なお、タワー3はナセル4から下方に延びる各種ケーブルの通り道になる。
図4は基礎部2及びタワー3の変形例を示す断面図である。図4において、基礎部2は例えば略円筒形状の筒体18と底部18a及び頂部18bとで形成されており、鉄筋コンクリート等で一体に製作されているが、鋼製でもよい。基礎部2の内空部2a内にはバランスをとるためのバラスト水24が貯留されている。しかも、筒体18の頂部18bには略円筒状の内筒23が形成されている。この内筒23に略円錐台形状で略筒状のタワー3が被せられ、内筒23を中心に回転可能に装着されている。なお、頂部18bから突出する内筒22、23は基礎部2と一体または別体でコンクリート製で製作してもよいし、スチール等で製作してもよい。なお、図3図4はタワー3と内筒22、23との嵌合部を断面で示している。
【0020】
次にタワー3の回転機構25について図5及び図6により説明する。図5図3に示す風力発電装置1のタワー3のA-A線断面図であり、図6は基礎部2の頂部18b上で内筒22に装着されたタワー3の下部を示す断面図である。ブレード6及びハブ5、そしてナセル4は高強度で重量を大きく設定する必要があり、タワー3はこれらを支持して回転可能なように例えばスチール等で高剛性に形成されているが、鉄筋コンクリート製でもよい。図5に示すタワー3の回転機構25において、タワー3の内周面3aには内歯車26が全周に取り付けられている。そして、内歯車26には所定間隔、図5では180度間隔で略円形の歯車27が噛合しており、各歯車27には駆動モータM1、M2の出力軸が噛合している。
【0021】
そのため、駆動モータM1,M2を駆動することで歯車27を介して内歯車26とタワー3を一体に回転させることができる。この場合、タワー3は基礎部2の内筒22を中心に回転可能であり、駆動モータM1,M2は内筒22に設置または連結されていてもよい。駆動モータM1,M2は姿勢補正機構28からの指示信号によって正逆回転することで、タワー3を洋上の風の向きに正対するように回転させる。
【0022】
また、ナセル4に設置された風向計16によって風の向きを検出し、風の向きを制御盤13に送信する。制御盤13では風向計16で検出した風の向きに応じてタワー3の向きを正対するよう包囲制御するべく、姿勢補正機構28を介してタワー3の駆動モータM1,M2に回転信号を出力するように制御される。
タワー3の回転はゆっくりと低速で回転する。一方、洋上の風は風向きが頻繁に変化することがあるため、風向きの変更検知タイミングに対してタワー3の回転速度と回転方向の切り換え制御が遅れることが多い。そのため、姿勢補正機構28では、制御盤13から送信される短時間で頻繁に変更される小さな風の向きの切り換えをノイズとしてカットし、予め設定された所定時間以上続く風向きの変更にのみ対応して駆動モータM1,M2を駆動するよう制御している。
【0023】
図6は基礎部2の内筒22に対するタワー3の回転構造を示すものである。タワー3の略円筒状の底面3bには凹溝30aが全周に亘って略リング状に形成され、これに対向する頂部18bにも凹溝30bが形成されている。これら凹溝30a、30bの間にはベアリングとして例えばボールベアリング31(或いはローラベアリング)等が全周に配列されたベアリング機構が設けられている。しかも、タワー3の底面3bには凹溝30a、30bを挟む径方向両側に2条のシール部材32、33が全周に亘って円環状に設置されている。このシール部材32、33の間の凹溝30a、30bを含む空間には潤滑用のオイル34が充填されている。そのため、ボールベアリング31を介して基礎部2の頂部18bに対してタワー3が内筒22を中心にスムーズに正逆回転可能とされ、ボールベアリング31の寿命が長い。
【0024】
本実施形態による風力発電装置1は上述した構成を有しており、次にその施工方法について説明する。
まず、ドッグにおいて円板状でコンクリート製の底部18aを打設し、次に底部18aの上にセグメント20を組み立てて円筒状の筒体18を施工する。そして、工場等で製作した頂部18bと内筒22をクレーン等で組み立てる。内筒22はコーン状でも円筒状でもよいが、コーン状に形成した方がタワー3を被せ易い。或いは、工場で製作した底部18a、筒体18、頂部18b、内筒22をクレーンで組み立て施工してもよい。また、基礎部2は鉄筋コンクリートで一体に製作してもよい。或いは、基礎部2を上半部が海上に突出して浮く程度に部分的にドッグで製作し、その後、海上の設置位置に曳航して残りのセグメント20や頂部18b、内筒22等を現場で施工してもよい。
次に、ドッグの内部に海水を導入し、基礎部2を海上に浮かべる。基礎部2内には曳航時の喫水高さの調節のため、或いは起き上がりこぼしの重りとしてバラスト水24を導入させる。
【0025】
次に、図7に示すように、タグボート36で基礎部2を海上に曳航して所定の設置場所に位置させる。海上では、クレーン船のクレーンによって別途搬送したタワー3を吊り上げて基礎部2の内筒22上に被せて回転可能に取り付け、凹溝30a、30b間に装着したボールベアリング31の両側を2条のシール部材32、33でシールしてオイルを充填させる。別途、船舶で搬送したナセル4、ハブ5、ブレード6をクレーンで吊り上げてタワー3の頂部に組み立てる。
最後に、基礎部2をチェーン等の複数の係留策9をアンカーによって海底に固定することで流されないように係留する。
【0026】
次に風力発電装置1の使用方法について説明する。
風力発電装置1を海上に浮かべた状態で、ナセル4に設置した風向計16によって海上の風の向きの変化を検出し、ナセル4内の制御盤13に送信する。制御盤13では現在のロータ7の向きから風の向きの変化を検出してタワー3が回転すべき角度を演算して姿勢補正機構28に送信する。
姿勢補正機構28では、風の向きが短時間で頻繁に変わる送信データの場合にはノイズとしてカットする。所定時間以上、風向きが特定方向に変更している場合には、タワー3が風の向きに正対するように調整すべき角度だけ位置調整するように駆動モータM1,M2に駆動信号を出力する。駆動モータM1、M2の駆動に連動して歯車27をそれぞれ同一方向に回転させることで内歯車26を内筒22を中心に旋回させ、タワー3を風の向きに正対するように所定角度だけ回転させる。その際、タワー3は内筒22にガイドされながら基礎部2上をゆっくりと回転して位置調整がなされる。
【0027】
位置調整された風力発電装置1は、正対する風を受けてブレード6及びハブ5の回転によって回転するロータ軸10の回転を増速機11で増速させて発電機12で発電することができる。こうして、風の向きに応じてブレード6が正対するようにタワー3を回転させることで、風力発電装置1で風力発電を行える。発電された電気はタワー3内部の変電設備(図示せず)を通って変電所に送信される。
なお、風力発電装置1の浮体を構成する基礎部2及びタワー3は細長いスパー型であるため、図8(b)に示すように、強風などで大きく傾いたとしても基礎部2内に貯留されたバラスト水24を重りとして「起き上がりこぼし」の原理で、同図(a)に示すように、略垂直に保持することができる。
【0028】
上述したように本実施形態による風力発電装置1によれば、風に正対するためにロータ7の向きを変更する場合、従来のナセル4とタワー3との接続部に代えて、タワー3を基礎部2の内筒22を中心に回転させる。そのため、タワー3全体がゆっくりと回転するので、ナセル4とタワー3との接続部に負荷が集中することがなく、高強度であり耐久性が向上する。
また、基礎部2がセグメント20の場合には工場で製作できるため、気象の影響を受けない上に緻密な筒体18を製作できる。しかも、基礎部2はドックまで小型の車両で運搬でき、小型のクレーンで組み立てることが可能である。
また、基礎部2とタワー3をすべて鋼材で製作すると高コストになるが、少なくとも基礎部2をコンクリートで製作しているため、製造コストを抑えることができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態による風力発電装置1及びその施工方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本発明の変形例等について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0030】
実施形態による風力発電装置1は浮体式でスパー型の風力発電装置1について説明したが、本発明はスパー型に限定されるものではなく、セミサブ式やテンションリグ式等の他の浮体式の風力発電装置にも適用できる。また、本発明は浮体式に限定されるものではなく、着床式の風力発電装置や地上に設置する風力発電装置等にも適用できる。
【0031】
また、基礎部2の頂部18bに設けたタワー3のコーン状の内筒22や円筒状の内筒23はタワー3の回転中心のガイドをなすものであり、支持部に含まれる。姿勢補正機構28からの指示信号に基づいて駆動する駆動モータM1,M2、歯車27、内歯車26はタワー3の駆動機構に含まれる。
なお、基礎部2をセグメント20で構築した場合、工場やドッグだけでなく洋上の施工現場で基礎部2を構築することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 風力発電装置
2 基礎部
3 タワー
4 ナセル
5 ハブ
6 ブレード
7 ロータ
16 風向計
18 筒体
18b 頂部
22、23 内筒
24 バラスト水
25 回転機構
26 内歯車
27 歯車
28 姿勢補正機構
31 ボールベアリング
32、33 シール部材
34 オイル
M1、M2 駆動モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8