(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】封口体
(51)【国際特許分類】
H01M 50/152 20210101AFI20230310BHJP
H01M 50/159 20210101ALI20230310BHJP
H01M 50/164 20210101ALI20230310BHJP
H01M 50/581 20210101ALI20230310BHJP
H01M 50/583 20210101ALI20230310BHJP
【FI】
H01M50/152
H01M50/159
H01M50/164
H01M50/581
H01M50/583
(21)【出願番号】P 2019041349
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】516119106
【氏名又は名称】Littelfuseジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】水上 陽平
(72)【発明者】
【氏名】山岡 俊和
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-160382(JP,A)
【文献】国際公開第2012/118153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00-50/198
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池用の封口体であって、
(1)底部とかしめ部とを有する第1キャップと、
(2)前記第1キャップの底部上に位置する保護素子と、
(3)前記保護素子上に位置する第2キャップと
を有し、前記保護素子および前記第2キャップは、前記第1キャップのかしめ部により固定されており、
前記第1キャップは、前記底部の内側面の前記保護素子との接触領域に凸部を有
し、
前記第1キャップの凸部は、複数存在する
ことを特徴とする封口体。
【請求項2】
前記第1キャップの底部は、平面視において円環状であり、前記凸部が、前記底部の中心に対して均等に配置されている、請求項
1に記載の封口体。
【請求項3】
前記第1キャップは、前記底部の外側面の前記凸部に対向する位置に凹部を有する、請求項
1または2に記載の封口体。
【請求項4】
前記第1キャップは、アルミニウム製である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の封口体。
【請求項5】
前記凸部の高さは、5~200μmである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の封口体。
【請求項6】
前記保護素子は、PTC素子である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の封口体。
【請求項7】
前記PTC素子は、PTC層状要素と、PTC層状要素の各主表面上に位置する導電性金属薄層とを有し、該PTC層状要素は、ポリエチレンを主成分とするポリマー組成物から構成されている、請求項
6に記載の封口体。
【請求項8】
前記PTC素子は、PTC層状要素と、PTC層状要素の各主表面上に位置する導電性金属薄層とを有し、該PTC層状要素は、ポリフッ化ビニリデンを主成分とするポリマー組成物から構成されている、請求項
6に記載の封口体。
【請求項9】
前記保護素子は、ディスクプロテクターである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の封口体。
【請求項10】
前記保護素子は、
絶縁性樹脂またはPTC組成物により形成され、少なくとも1つの貫通開口部を有する層状要素と、
上記層状要素の各主表面上に位置する導電性金属薄層と、
上記貫通開口部の少なくとも1つを規定する側面上に位置し、導電性金属薄層を電気的に接続するヒューズ層と
を有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の封口体。
【請求項11】
前記層状要素は絶縁性樹脂により形成され、該絶縁性樹脂はポリエチレンである、請求項
10に記載の封口体。
【請求項12】
前記層状要素は絶縁性樹脂により形成され、該絶縁性樹脂はポリフッ化ビニリデンである、請求項
10に記載の封口体。
【請求項13】
円筒型電池用である、請求項1~
12のいずれかに記載の封口体。
【請求項14】
リチウムイオン二次電池用である、請求項1~
13のいずれかに記載の封口体。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれかに記載の封口体を有する、密閉型電池。
【請求項16】
円筒型電池である、請求項
15に記載の密閉型電池。
【請求項17】
リチウムイオン二次電池である、請求項
15または
16に記載の密閉型電池。
【請求項18】
(1)底部とかしめ部とを有する第1キャップと、(2)前記第1キャップの底部上に位置する保護素子と、(3)前記保護素子上に位置する第2キャップとを有し、前記第1キャップのかしめ部により、前記保護素子および前記第2キャップが固定されており、前記第1キャップは、前記底部の内側面に凸部を有する封口体の製造方法であって、
前記第1キャップの底部上に前記保護素子を配置し、さらに該保護素子上に前記第2キャップを配置すること、
前記第1キャップのかしめ部をかしめることにより、前記保護素子および前記第2キャップを固定すること、次いで
前記第1キャップの底部の外側面に凹部を形成することにより、底部の内側面の凹部に対向する位置に前記凸部を形成すること
を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封口体に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の二次電池は、異常発熱または過電流から保護するために保護素子として、PCT素子、ディスクプロテクターなどが用いられている。
【0003】
上記保護素子は、通常、封口体に組み入れて用いられている。かかる封口体は、一般的に、第1キャップ、ガスケット、保護素子および第2キャップを重ね、これらをかしめにより固定することにより製造される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の封口体のように、かしめを利用した機械的接触では、例えば耐熱衝撃などの耐環境性が十分とはいえず、封口体部品同士の接触部において抵抗が増加するという問題がある。かかる問題に対して、部品同士を溶接する方法があるが、接合する部品が互いに異なる金属から製造されている場合には溶接が容易ではないという技術的問題があり、また、溶接装置の導入、上記問題を解決するために大きな費用が必要なるという問題もある。
【0006】
従って、本発明は、溶接を利用しない耐環境性に優れた封口体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、特に限定されないが、以下の態様を含む。
[1] 電池用の封口体であって、
(1)底部とかしめ部とを有する第1キャップと、
(2)前記第1キャップの底部上に位置する保護素子と、
(3)前記保護素子上に位置する第2キャップと
を有し、前記保護素子および前記第2キャップは、前記第1キャップのかしめ部により固定されており、
前記第1キャップは、前記底部の内側面の前記保護素子との接触領域に凸部を有する
ことを特徴とする封口体。
[2] 前記第1キャップの凸部は、複数存在する、上記[1]に記載の封口体。
[3] 前記第1キャップの底部は、平面視において円環状であり、前記凸部が、前記底部の中心に対して均等に配置されている、上記[1]または[2]に記載の封口体。
[4] 前記第1キャップは、前記底部の外側面の前記凸部に対向する位置に凹部を有する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の封口体。
[5] 前記第1キャップは、アルミニウム製である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の封口体。
[6] 前記凸部の高さは、5~200μmである、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の封口体。
[7] 前記保護素子は、PTC素子である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の封口体。
[8] 前記PTC素子は、PTC層状要素と、PTC層状要素の各主表面上に位置する導電性金属薄層とを有し、該PTC層状要素は、ポリエチレンを主成分とするポリマー組成物から構成されている、請求項7に記載の封口体。
[9] 前記PTC素子は、PTC層状要素と、PTC層状要素の各主表面上に位置する導電性金属薄層とを有し、該PTC層状要素は、ポリフッ化ビニリデンを主成分とするポリマー組成物から構成されている、上記[7]に記載の封口体。
[10] 前記保護素子は、ディスクプロテクターである、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の封口体。
[11] 前記保護素子は、
絶縁性樹脂またはPTC組成物により形成され、少なくとも1つの貫通開口部を有する層状要素と、
上記層状要素の各主表面上に位置する導電性金属薄層と、
上記貫通開口部の少なくとも1つを規定する側面上に位置し、導電性金属薄層を電気的に接続するヒューズ層と
を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の封口体。
[12] 前記層状要素は絶縁性樹脂により形成され、該絶縁性樹脂はポリエチレンである、上記[11]に記載の封口体。
[13] 前記層状要素は絶縁性樹脂により形成され、該絶縁性樹脂はポリフッ化ビニリデンである、上記[11]に記載の封口体。
[14] 円筒型電池用である、上記[1]~[13]のいずれか1つに記載の封口体。
[15] リチウムイオン二次電池用である、上記[1]~[14]のいずれか1つに記載の封口体。
[16] 上記[1]~[15]のいずれか1つに記載の封口体を有する、密閉型電池。
[17] 円筒型電池である、上記[16]に記載の密閉型電池。
[18] リチウムイオン二次電池である、上記[16]または[17]に記載の密閉型電池。
[19] (1)底部とかしめ部とを有する第1キャップと、(2)前記第1キャップの底部上に位置する保護素子と、(3)前記保護素子上に位置する第2キャップとを有し、前記第1キャップのかしめ部により、前記保護素子および前記第2キャップが固定されており、前記第1キャップは、前記底部の内側面に凸部を有する封口体の製造方法であって、
前記第1キャップの底部上に前記保護素子を配置し、さらに該保護素子上に前記第2キャップを配置すること、
前記第1キャップのかしめ部をかしめることにより、前記保護素子および前記第2キャップを固定すること、次いで
前記第1キャップの底部の外側面に凹部を形成することにより、底部の内側面の凹部に対向する位置に前記凸部を形成すること
を含む製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の封口体は、第1キャップと保護素子の接触部分に凸部を有することにより、高い耐環境性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態における封口体1を断面図である。
【
図4】
図4は、実施例で作製する封口体の寸法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の封口体を詳細に説明する。但し、本発明の封口体は、図示する態様に限定されないことに留意されたい。
【0011】
本発明の封口体の1つの態様を、
図1にその厚み方向に沿った断面図にて、
図2に上側(
図1の図面上側)から見た平面図にて、
図3に底面図にて、模式的に示す。
【0012】
図示した封口体1は、円筒型電池用の封口体であり、第1キャップ2上に、保護素子3および第2キャップ4を、この順に積層された状態で有しており、さらにこれらの周囲および第2キャップ4のフランジ部(外縁部)10上に位置する絶縁性ガスケット5を有している。これらは、第1キャップ2の縁部に位置するかしめ部11により固定されている。封口体1には、電解液および/または活物質等の異常反応により電池内部でガスが発生した場合に作動する防爆弁13が設けられている。さらに、封口体1には、防爆弁が作動した際に、ガスを電池外部に排出するためのガス抜き口8が設けられている。封口体1において、電流は、第1キャップ2-保護素子3-第2キャップ4の順(またはその逆)に流れる。
【0013】
図示した態様では、第1キャップ2は、円環状の底部12、その内側に位置する防爆弁13、および底部12の外縁から上方に延伸するかしめ部11を有する。第1キャップ2は、底部12の内側面の上記保護素子3との接触領域に凸部6を有し、底部12の外側面における凸部6に対向する位置に凹部7を有する。ここに、底部12の内側面とは、底部12の主面のうち
図1における上側の面(すなわち、保護素子3側の面)をいい、底部12の外側面とは、底部12の主面のうち
図1における下側の面をいう。
【0014】
上記第1キャップ2は、導電性金属から形成される。該導電性金属は、特に限定されないが、例えば封口体がリチウムイオン電池用である場合、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム合金、より好ましくはアルミニウムである。第1キャップ2をアルミニウム製とすることにより、第1キャップ2と保護素子3の間の抵抗をより小さくすることができる。本開示は理論に拘束されないが、第1キャップをアルミニウム製とすることによる抵抗値の低減効果は以下の理由によると考えられる。第1キャップ2と保護素子3の間の抵抗は、第1キャップの表面の酸化皮膜に影響を受け、酸化皮膜が存在すると抵抗は高くなる。第1キャップ2がアルミニウム製である場合、第1キャップ2の表面に形成される酸化皮膜(Al2O3)は、保護素子3との接触により、特に凸部6に圧がかかることにより、破壊され、金属アルミニウム表面が露出する。これにより、第1キャップ2と保護素子3の間の抵抗をより小さく維持することができると考えられる。
【0015】
上記第1キャップ2を構成する金属板の厚みt1は、好ましくは0.1~1.0mm、より好ましくは200~600μm、さらに好ましくは300~500μmであり得る。かかる金属板の厚みを1.0mm以下にすることにより、第1キャップを低背化することができ、即ち封口体を低背化することができ、電解質を収容する電池の本体部分をより大きくすることが可能になる。また、凸部6の形成において、第1キャップの底部12の一部分を外側面から押すことにより凸部を形成することが容易になる。即ち、凹部の形成と同時に凸部を形成することが容易になる。金属板の厚みをより小さくすることにより、上記の効果はより顕著になる。一方、金属板の厚みを0.1mm以上とすることにより、第1キャップの強度を担保することができる。金属板の厚みをより大きくすることにより、上記の効果はより顕著になる。
【0016】
上記第1キャップの高さ(底部12の外側面からの高さt2)は、好ましくは1.0~5.0mm、より好ましくは1.5~3.0mm、さらに好ましくは1.5~2.5mm、特に好ましくは1.5~2.0mmであり得る。
【0017】
上記防爆弁13は、円環状の上記底部12の内側空間を封じるように設けられる。
【0018】
上記防爆弁13の厚みは、防爆弁として機能できる厚みであれば特に限定されない。当業者であれば、所望の圧力(一般的には、10~15kgf)が負荷された場合に防爆弁が作動する(破裂する)ように、封口体の構成、特に保護素子の内径に応じて、上記防爆弁の厚みを適宜決定することができる。
【0019】
図示した態様では、上記凸部6は、第1キャップ2の底部12の内側面に、円環の中心に対して対象に6つ設けられている。本開示の封口体において、第1キャップの底部の内側面に凸部を設けることにより、かしめ圧による保護素子の特性の変化を抑制しつつ、第1キャップと保護素子間の抵抗を小さくすることができる。より詳細には、第1キャップと保護素子間の抵抗を小さくするには、一般的にかしめ圧を大きくすることが考えられるが、かしめ圧を大きくすると保護素子およびガスケットが変形し、封口体の信頼性が低下する虞がある。しかしながら、本開示の封口体においては、第1キャップの底部の内側面に凸部を設けることにより、かしめ圧を凸部に集中させることができるので、かしめ圧を過度に大きくすることなく、第1キャップと保護素子間の電気的接触をより確実にし、抵抗を小さくすることが可能になる。また、凸部を設けることにより、各部品の寸法のばらつきを吸収することが可能なり、封口体の電気的特性が安定し、信頼性が向上する。
【0020】
本態様では、凸部6は6つ設けられているが、本開示の封口体はこれに限定されない。即ち、本開示の封口体は、1つ以上の凸部を有していればよい。
【0021】
好ましい態様において、凸部の数は、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上であり得る。また、凸部の数は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下であり得る。凸部の数を2以上とすることにより、保護素子3との電気的接続をより確実にすることができ、また、抵抗を小さくすることができる。凸部の数を増やすことにより、抵抗はより小さくなる。一方、凸部の数を20以下とすることにより、製造がより容易になる。
【0022】
上記凸部6の高さは、好ましくは5~200μm、より好ましくは10~150μm、さらに好ましくは20~100μmであり得る。凸部の高さを5μm以上にすることにより、第1キャップと保護素子間の電気的接続をより確実にすることができる。凸部の高さをより大きくすることにより、上記の効果はより顕著になる。一方、凸部の高さを200μm以下にすることにより、封口体の高さを抑制することができる。
【0023】
上記凸部6の形状は、特に限定されないが、例えば、その平面形状(即ち、第1キャップ2の底面と同一平面に現れる形状)は、多角形、例えば矩形、台形、三角形等、円形、楕円形、あるいはこれらを組み合わせた形状であってもよく、その断面形状は、多角形、例えば四角形、円形、楕円形、あるいはこれらを組み合わせた形状であってもよい。好ましくは、凸部の平面形状は、円形である。なお、凸部は、第1キャップの底面を貫通する穴を有しない。
【0024】
上記凸部6が円形である場合、その直径は、好ましくは0.5~2.0mm、より好ましくは0.8~1.8mmであり得る。
【0025】
図示した態様において、上記凸部6は、かしめ部よりも円環内側に存在するが、好ましくは少なくとも一部が、より好ましくは50%以上が、さらに好ましくは全体がかしめ部の真下に位置することが好ましい。凸部をかかる位置に配置することにより、かしめによる圧が、より凸部に伝わり、より良好な接続が可能になる。
【0026】
上記凹部7は、第1キャップ2の底部12の外側面の上記凸部6に対向する位置に、6つ設けられている。即ち、凹部7は、第1キャップ2の底部12の外側面に、円環の中心に対して対象に6つ設けられている。
【0027】
好ましい態様において、凹部7の数は、上記凸部6の数と同じであり、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上であり得る。また、凹部の数は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下であり得る。
【0028】
上記凹部7の高さは、好ましくは10~300μm、より好ましくは20~200μm、さらに好ましくは50~160μmであり得る。
【0029】
上記凹部7の形状は、特に限定されないが、例えば、その平面形状(即ち、第1キャップ2の底面と同一平面に現れる形状)は、多角形、例えば矩形、台形、三角形等、円形、楕円形、あるいはこれらを組み合わせた形状であってもよく、その断面形状は、多角形、例えば四角形、円形、楕円形、あるいはこれらを組み合わせた形状であってもよい。好ましくは、凸部の平面形状は、円形である。
【0030】
上記凹部7が円形である場合、その直径は、好ましくは0.1~1.5mm、より好ましくは0.5~1.0mmであり得る。
【0031】
尚、凹部7は、本開示の封口体において必須の構成ではなく、存在しなくてもよい。
【0032】
上記保護素子3は、第1キャップ2と第2キャップ4の間に配置され、これらを電気的に接続する。また、保護素子3は、異常発熱または過電流が生じた場合に動作して、そこを流れる電流を遮断し、保護すべき対象、例えば二次電池を保護する。
【0033】
上記保護素子3としては、上記の機能を発揮できるものであれば特に限定されないが、例えばPTC素子、ディスクプロテクター(例えば、国際公開第2014/034833号参照)などが挙げられる。
【0034】
本開示の封口体における保護素子の形状は、封口体の形状に合わせて適宜設定することができる。例えば、図示した態様においては、保護素子3は円環状である。
【0035】
上記保護素子3は、上記凸部6と接する箇所に窪みを有していてもよい。かかる窪みは、凸部6よりも小さな形状であり得る。
【0036】
一の態様において、保護素子3は、PTC層状要素と、PTC層状要素の各主表面上に位置する導電性金属薄層とを有するPTC素子であり得る。保護素子3は、好ましくは、ポリマーPTC素子であり得る。
【0037】
上記PTC層状要素を構成するPTC組成物は、PTC特性を示す組成物であって、例えば、ポリマー材料中に導電性フィラーが分散された組成物である。PTC層状要素は、PTC組成物を層状に形成したもの、例えば押出成形したものであり得る。
【0038】
上記導電性フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト(または黒鉛)、他の炭素質材料、金属、導電性金属酸化物、導電性セラミック、導電性ポリマー、およびそれらの組合せが挙げられる。導電性フィラーは、通常、粉末状態である。
【0039】
上記ポリマー材料としては、高密度ポリエチレン、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0040】
一の態様において、上記ポリマー材料は、ポリフッ化ビニリデンであり得る。ポリマー材料としてポリフッ化ビニリデンを用いることにより、高温環境下での使用においても、PTC層状要素の熱変形を抑制することができ、電気的特性が安定する。
【0041】
上記PTC層状要素は、その両側の主表面上に配置された導電性金属薄層を有する。この導電性金属薄層は、導電性を有する金属の薄い層(例えば、厚みが0.1~100μm程度)であれば特に限定されるものではなく、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、金等の金属によって構成でき、複数の金属薄層により形成されていてもよい。
【0042】
上記導電性金属薄層が各主表面上に位置するPTC層状要素は、それを構成するPTC組成物を、金属薄層を構成する金属シート(または金属箔)と一緒に同時押し出し、金属シート(または金属箔)の間にPTC組成物が挟まれた状態の押出物を得ることによって、製造することができる。別の態様では、PTC組成物の層状物を例えば押出によって得、この層状物を金属シート(または金属箔)の間に挟み、これらを一体に熱圧着して圧着物を得ることによって、製造することもできる。このような押出物(または圧着物)は、導電性金属薄層を両側の主表面に有する、PTC層状要素が多数隣接して集合した状態であり、押出物(または圧着物)を所定の形状および寸法に切り出して、単一の、導電性薄層を有するPTC層状要素を得ることができる。
【0043】
上記PTC素子の導電性金属薄層は、めっきを施されていてもよい。該めっきとしては、例えばNi、Snのめっきが挙げられる。
【0044】
上記PTC素子の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1~0.7mm、好ましくは0.2~0.6mmである。PTC素子の厚みを0.7mm以下とすることにより、封口体の低背化がより容易になる。また、PTC素子の厚みを0.1mm以上とすることにより、押出成形での製造が容易になる。
【0045】
別の態様において、保護素子3は、ディスクプロテクターであり得る。
【0046】
上記ディスクプロテクターは、好ましくは、
絶縁性樹脂またはPTC組成物により形成され、少なくとも1つの貫通開口部を有する層状要素、
上記層状要素の各主表面上に位置する導電性金属薄層、および
上記貫通開口部の少なくとも1つを規定する側面上に位置し、導電性金属薄層を電気的に接続するヒューズ層を有する。
【0047】
上記ディスクプロテクターは、絶縁性樹脂またはPTC組成物により形成された層状要素を有して成り、この層状要素は、少なくとも1つの貫通開口部を有する。この開口部は、層状要素の厚み方向に沿って延びて層状要素を貫通しており、その厚み方向に垂直な方向の断面形状は特に限定されるものではないが、例えば円形であるのが好ましい。この場合、貫通開口部は円柱状の空間部である。しかしながら、他の形状、例えば正方形、菱形、長方形、楕円形であってもよい。貫通開口部の数は、少なくとも1つである。即ち、1つまたは2つ以上であり、例えば2つ、3つ、4つ、5つであってよいが、保護素子としてのディスクプロテクターに要求される保護の程度に応じて、適宜選択できる。1つの貫通開口部を有する場合、貫通開口部は層状要素の中心部、より詳しくは、厚み方向に垂直な方向の断面形状の中心部に位置するのが好ましい。
【0048】
一の態様において、上記ディスクプロテクターの層状要素は、1つの貫通開口部を有する。別の態様において、上記ディスクプロテクターの層状要素は、複数の貫通開口部を有する。この場合、層状要素を通過する電流が可及的に均等に各貫通開口部のヒューズ層を流れるように貫通開口部を配置するのが好ましい。例えば、中心貫通開口部を有する円環状の層状要素の周状部分(即ち、内側周と外側周とによって規定される層状要素の本体部分)に、同じ断面形状およびサイズを有する貫通開口部(「周辺貫通開口部」とも呼ぶ)を複数設ける。この場合、円環を規定する内側周の円の中心に関して等角度で貫通開口部を設けるのが好ましい。例えば、180°毎に2つ、120°毎に3つ、90°毎に4つ、60°毎に6つ貫通開口部を設ける。
【0049】
上記層状要素を構成する絶縁性樹脂は、電気的に絶縁性を有する樹脂であれば特に限定されるものではない。例えば、上記絶縁性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フッ素系樹脂等の樹脂が挙げられる。特にポリエチレンまたはポリフッ化ビニリデンのような樹脂を使用するのが好ましい。
【0050】
上記層状要素を構成するPTC組成物は、上記PTC層状要素に関して記載したPTC組成物と同様のものが用いられる。
【0051】
上記層状要素は、その各主表面上に、即ち、その両側の主表面上に配置された導電性金属薄層を有して成る。この金属薄層は、導電性を有する金属の薄い層(例えば、厚みが0.1μm~100μm程度の層)であれば特に限定されるものではなく、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、金等の金属によって構成できる。
【0052】
上記ディスクプロテクターは、貫通開口部の少なくとも1つを規定する側面上に位置するヒューズ層を有する。このヒューズ層は、層状要素の両側主表面に位置する導電性金属薄層を電気的に接続すると共に、一方の主表面上の導電性金属薄層から他方の主表面上の導電性金属薄層に向かって過電流が流れようとする場合に、過電流が集中的にヒューズ層を流れる結果、それが溶融して回路を開くことによって、そのような電流の流れを遮断する機能(いわゆるヒューズとしての機能)を有する。そのようヒューズ層は、少なくとも1つの貫通開口部を規定する側面上に形成されている。より詳しくは、両側の導電性金属薄層を電気的に接続できる限り、そのような側面の少なくとも一部分にヒューズ層が形成されていてもよいが、そのような側面の全体にわたって形成されているのが好ましい。形成方法は特に限定されるものではないが、導電性金属をメッキ(例えば電解メッキまたは無電解メッキ)することによって形成するのが特に好ましい。ヒューズ層の厚みは、メッキ条件によってコントロールできるが、例えば0.001~0.02mmであるのが好ましい。
【0053】
上記ヒューズ層を構成する金属としては、導電性であれば特に限定されるものではなく、例えば、Ni、Cu、Ag、Au、Al、Zn、Rh、Ru、Ir、Pd、Pt、Ni-Au合金、Ni-P合金、Ni-B合金、Sn、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-Cu-Bi合金、Sn-Ag-Cu-Bi-In合金、Sn-Ag-Bi-In合金、Sn-Ag-Cu-Sb合金、Sn-Sb合金、Sn-Cu-Ni-P-Ge合金、Sn-Cu-Ni合金、Sn-Ag-Ni-Co合金、Sn-Ag-Cu-Co-Ni合金、Su-Bi-Ag合金、Sn-Zn合金、Sn-In合金、Sn-Cu-Sb合金、Sn-Fe合金、Zn-Ni合金、Zn-Fe合金、Zn-Co合金、Zn-Co-Fe合金、Sn-Zn合金、Pd-Ni合金およびSn-Bi合金が挙げられる。
【0054】
好ましい態様において、上記ヒューズ層は、少なくとも1つの高融点金属により形成される高融点金属層および少なくとも1つの低融点金属により形成される低融点金属層が積層されている。
【0055】
上記高融点金属としては、特に限定するものではないが、例えば、Ni、Cu、Ag、Au、Al、Zn、Sn、Rh、Ru、Ir、Pd、Pt、Ni-Au合金、Ni-P合金およびNi-B合金が挙げられ、特にNiが好ましい。
【0056】
上記の高融点金属を用いる場合、上記低融点金属としては、特に限定するものではないが、例えば、Sn、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-Cu-Bi合金、Sn-Ag-Cu-Bi-In合金、Sn-Ag-Bi-In合金、Sn-Ag-Cu-Sb合金、Sn-Sb合金、Sn-Cu-Ni-P-Ge合金、Sn-Cu-Ni合金、Sn-Ag-Ni-Co合金、Sn-Ag-Cu-Co-Ni合金、Su-Bi-Ag合金、Sn-Zn合金およびSn-Bi合金が挙げられ、特にSn、Sn-Cu合金またはSn-Bi合金が好ましい。
【0057】
上記ディスクプロテクターの厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1~0.7mm、好ましくは0.2~0.6mmである。ディスクプロテクターの厚みを0.7mm以下とすることにより、封口体の低背化がより容易になる。また、ディスクプロテクターの厚みを0.1mm以上とすることにより、押出成形での製造が容易になる。
【0058】
上記第2キャップ4は、上記保護素子3の上に配置され、保護素子3と電気的に接続されている。下記するように、第2キャップ4は、第1キャップ2とは電気的に絶縁されている。
【0059】
上記第2キャップ4は、ガス抜き口8を有する。当該ガス抜き口8は、電解液および/または活物質等の異常反応により、電池内部でガスが生じ、電池内圧が上昇して防爆弁13が作動した際に、ガスを排出するために設けられる。ガス抜き口8の配置、数は特に限定されない。
【0060】
上記第2キャップは、導電性金属から形成される。該導電性金属は、特に限定されないが、例えば封口体がリチウムイオン電池用である場合、ニッケルメッキ鋼であることが好ましい。
【0061】
本開示の封口体において、絶縁性ガスケット5は、電解液に対し耐性があり、絶縁性であれば、一般的に用いられるガスケットを用いることができる。例えば、該絶縁性ガスケットの材料としては、絶縁性樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。
【0062】
上記絶縁性ガスケット5は、第1キャップ2と、保護素子3(詳細には、図示した態様では、保護素子3の第2キャップ4側の主表面上の電極)および第2キャップ4との間の絶縁を確保する。この第1キャップと保護素子および第2キャップとの間を絶縁することにより、第1キャップから第2キャップに直接電流が流れる、換言すれば、保護素子を介さずに電流が流れることを防止することができる。このような構成とすることにより、保護素子が作動して、第1キャップから保護素子を介して第2キャップへ流れる電流を遮断することによって、封口体を流れる電流を遮断することが可能になる。
【0063】
上記絶縁性ガスケット5の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.05~0.8mm、好ましくは0.1~0.6mm、より好ましくは0.2~0.5mmである。
【0064】
図示した態様では、第1キャップ2の内側に、保護素子3および第2キャップ4を重ね、保護素子3および第2キャップ4の周囲ならびに第2キャップ4のフランジ部10上に、絶縁性ガスケット5を設置する。保護素子3、第2キャップ4および絶縁性ガスケット5は、図示したように設置した後、第1キャップ2のかしめ部11により固定される。
【0065】
図示した封口体1は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、かしめ部11が伸びた状態である皿形の第1キャップ2を準備する。この第1キャップの壁面の内側に絶縁性ガスケット5を設置する。この際、第1キャップの底面部には絶縁性ガスケット5を設けない。次いで、第1キャップの内部に、保護素子3、第2キャップ4を順に重ねる。最後に、第1キャップ2のかしめ部11を内側に折り曲げ、保護素子3、第2キャップ4および絶縁性ガスケット5をかしめ付けて固定する。
【0066】
次に、第1キャップ2の外側面に凹部7を形成する。凹部7は、第1キャップ2の底面側から打ち付ける、あるいは金型に嵌めることにより製造することができる。これにより、凹部7に対向する内側面に凸部6が同時に形成される。この際、凸部6が保護素子3の電極部分に強く押しつけられることにより、表面の酸化皮膜が破壊され、第1キャップ2と保護素子3の間の良好な電気的接続が達成される。
【0067】
別法として、保護素子3および第2キャップ4を配置する前に、予め第1キャップ2に凸部6を形成していてもよい。この場合、保護素子3および第2キャップ4を配置し、かしめ付けて固定する際の圧が凸部6に集中し、これにより表面の酸化皮膜が破壊され、第1キャップ2と保護素子3の間の良好な電気的接続が達成される。
【0068】
本開示の封口体は、第1キャップ2と保護素子3が主に凸部6において接触することから、かしめ圧が凸部6に集中し、第1キャップ2と保護素子3の電気的接続が良好となり、電気的特性が向上し、また、環境耐性も向上する。
【0069】
本開示の封口体は、密閉型電池、特に円筒型電池、具体的には円筒型リチウムイオン二次電池の封口体として好適に用いることができる。したがって、本発明は、本発明の封口体を有する密閉型電池、特に円筒型電池、具体的には円筒型リチウムイオン二次電池をも提供する。
【0070】
以上、本開示の封口体の1つの実施形態について説明したが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0071】
実施例1
図4および下記表に示す寸法を有する封口体を作製した。具体的には、第1キャップ(アルミニウム製)の内部側面に、ガスケット(ポリプロピレン製)を配置し、第1キャップの底部上にディスクプロテクター(厚さ:0.4mm;絶縁性樹脂:ポリエチレン;導電性金属薄層:ニッケル;ヒューズ層:ニッケル)および第2キャップ(ニッケルメッキ鋼)を配置し、第1キャップのかしめ部を内側に折り曲げ、保護素子と第2キャップをかしめにより固定した。保護素子と第2キャップを固定した後、封口体を金型に嵌めて、第1キャップの底部の外側面からプロジェクション加工を行い、凸部および凹部を形成した。凸部の直径は1.6mm、高さは0.080mmであり、凹部の直径は、0.75mm、深さは0.160mmであった。また、保護素子の凸部との接触箇所の窪みは、直径1.10mm、深さ0.040mmであった。
【0072】
【0073】
実施例2
ディスクプロテクターの絶縁性樹脂として、ポリエチレンの代わりにポリフッ化ビニリデンを用いること以外は、実施例1と同様にして封口体を製造した。
【0074】
実施例3
ディスクプロテクターに代えて、PTC素子(樹脂組成物:ポリエチレン)を用いること以外は、実施例1と同様にして封口体を製造した。
【0075】
比較例1
プロジェクション加工を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の封口体を作製した。比較例1の封口体は凸部を有しない。
【0076】
比較例2
プロジェクション加工を行わないこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2の封口体を作製した。比較例2の封口体は凸部を有しない。
【0077】
比較例3
プロジェクション加工を行わないこと以外は、実施例3と同様にして、比較例3の封口体を作製した。比較例3の封口体は凸部を有しない。
【0078】
試験例
・温度衝撃試験
実施例1~2および比較例1~2の封口体各5個について、温度衝撃試験を行った。具体的には、下記1~3のサイクルを繰り返した。
1.85℃に加温、85℃で30分保持、5分で-40℃に冷却、-40℃で30分保持、25℃に加温の温度プロファイルで保存
2.1時間常温放置
3.常温で抵抗測定
【0079】
抵抗測定は、第1キャップ中心と第2キャップ中心の間の抵抗を、日置電気株式会社製のミリオームハイテスターHIOKI3227を用いて、4端子測定法で測定することにより行った。
【0080】
結果を、実施例1~2および比較例1~2については264サイクル後の抵抗変化率を5個の試料の平均として、実施例3および比較例3については105サイクル後の抵抗変化率を10個の試料の平均として、下記表に示す。
【0081】
【表2】
DP:ディスクプロテクター
PTC:PTC素子
PE:ポリエチレン
PVDF
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示の封口体は、種々の電池の封口体として用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
1…封口体
2…第1キャップ
3…保護素子
4…第2キャップ
5…絶縁性ガスケット
6…凸部
7…凹部
8…ガス抜き口
10…フランジ部
11…かしめ部
12…底部
13…防爆弁