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特許7241572半導体光素子、光モジュール、及び半導体光素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】半導体光素子、光モジュール、及び半導体光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20230310BHJP
   H01S 5/02335 20210101ALI20230310BHJP
   H01S 5/22 20060101ALI20230310BHJP
   G02F 1/025 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
H01S5/042 612
H01S5/02335
H01S5/22
G02F1/025
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019043177
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020145391
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 匡洋
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇之
(72)【発明者】
【氏名】関野 裕司
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-015147(JP,A)
【文献】特開2009-088490(JP,A)
【文献】特開2008-186855(JP,A)
【文献】特開平08-172242(JP,A)
【文献】特開2006-179717(JP,A)
【文献】特開2001-091913(JP,A)
【文献】特開2009-177141(JP,A)
【文献】特開2008-041850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延伸するメサストライプを含む素子構造層と、
少なくとも前記メサストライプの上面を覆う電極膜と、
前記素子構造層の上面における、前記メサストライプよりも前記第1の方向に交差する第2の方向に位置する第1の領域の一部を覆い、前記電極膜と電気的に接続された電極パッド部と、
前記第1の領域の他の一部を覆い、前記電極膜と電気的に絶縁された第1のダミー電極と、
前記素子構造層の上面における、前記メサストライプよりも前記第2の方向と逆方向である第3の方向に位置する第2の領域の少なくとも一部を覆い、前記電極膜と電気的に絶縁された第2のダミー電極と、を含み、
前記第1のダミー電極は、前記電極パッド部よりも前記第1の方向に配置された第1部と、前記電極パッド部よりも前記第1の方向と逆方向である第4の方向に配置された第2部と、を含み、
前記第2のダミー電極は、スリットによって分離された第3部および第4部を含み、
前記第1のダミー電極、前記第2のダミー電極および前記電極パッド部の膜厚が互いに等しい、
半導体光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記第1のダミー電極は、前記電極パッド部の外周の少なくとも一部に沿う縁を有する、
半導体光素子。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体光素子であって、
前記電極パッド部の前記外周は円周状であり、
前記第1のダミー電極の前記縁は、前記外周の曲率よりも大きな曲率半径を有する円弧状である、
半導体光素子。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体光素子であって、
前記外周の少なくとも一部と前記縁とは、互いに向き合うよう配置され、且つ一定幅の隙間を開けて配置された、
半導体光素子。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体光素子であって、
前記隙間は、5μm以上、10μm以下である、
半導体光素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記素子構造層は、前記第1の領域において第1のバンプ部を有し、及び前記第2の領域において第2のバンプ部を有する、
半導体光素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記素子構造層の上方から見て、前記メサストライプと重畳する領域における前記電極膜の上面の高さよりも、前記第1のダミー電極の上面、及び前記第2のダミー電極の上面の方が高い位置に配置された、
半導体光素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記第1部と前記第2部とは互いに分離して配置された、
半導体光素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記第1のダミー電極が、前記第1の方向、前記第2の方向、及び前記第4の方向から前記電極パッド部を囲う、
半導体光素子。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記第1の領域の面積よりも、前記第2の領域の面積が小さい、
半導体光素子。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記素子構造層の上方から見て、前記第2の領域における、前記第2のダミー電極、及び前記電極膜に覆われていない領域の面積は、前記第2の領域の面積の20%以下である、
半導体光素子。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体光素子であって、
前記第2のダミー電極の上方から視認される位置には記号が付された、
半導体光素子。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記素子構造層の上方から見て、前記第1の領域における、前記第1のダミー電極、前記電極パッド部、及び前記電極膜に覆われていない領域の面積は、前記第1の領域の面積の20%以下である、
半導体光素子。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体光素子であって、
前記第1のダミー電極の上方から視認される位置には記号が付された、
半導体光素子。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記素子構造層の外形を構成する辺の80%以上に沿うように、前記第1のダミー電極及び前記第2のダミー電極が配置された、
半導体光素子。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記素子構造層の上方から見て、前記第1の領域が、前記第1のダミー電極が配置されていない前記第1の方向に交差する第1の端辺領域を有し、前記第2の領域が、前記第2のダミー電極が配置されていない前記第1の方向に交差する第2の端辺領域を有する、
半導体光素子。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記素子構造層の上方から見て、前記素子構造層は矩形状の外形を有し、
前記第1のダミー電極、及び前記第2のダミー電極の少なくとも一部が、前記矩形状の外形における4隅に沿うよう配置され、
前記電極膜の上面よりも、前記第1のダミー電極、及び前記第2のダミー電極の上面の方が高い位置に配置された、
半導体光素子。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれかに記載の半導体光素子であって、
前記素子構造層の上方から見て、前記第1のダミー電極と重畳する領域の前記素子構造層の層構造と、前記第2のダミー電極と重畳する領域の前記素子構造層の層構造とが等しい、
半導体光素子。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれかに記載の半導体光素子と、
前記半導体光素子の下面側が搭載されるサブマウントと、を含み、
前記サブマウントに設けられた配線と、前記電極パッド部と、がワイヤボンディングにより電気的に接続された、
光モジュール。
【請求項20】
第1の方向に延伸するメサストライプを含む素子構造層を準備し、
前記素子構造層の上面に導電層を形成し、
前記導電層を分離することにより、少なくとも前記メサストライプの上面を覆う電極膜と、前記素子構造層の上面における、前記メサストライプよりも前記第1の方向に交差する第2の方向に位置する第1の領域の一部を覆い、前記電極膜と電気的に接続された電極パッド部と、前記第1の領域の他の一部を覆い、前記電極膜と電気的に絶縁された第1のダミー電極と、前記素子構造層の上面における、前記メサストライプよりも前記第2の方向と逆方向である第3の方向に位置する第2の領域の少なくとも一部を覆い、前記電極膜と電気的に絶縁された第2のダミー電極と、を形成し、
前記導電層を分離する工程において、前記第1のダミー電極が、前記電極パッド部よりも前記第1の方向に配置された第1部と、前記電極パッド部よりも前記第1の方向と逆方向である第4の方向に配置された第2部と、を含むよう分離し、
前記第2のダミー電極は、前記導電層を分離する工程においてスリットによって分離された第3部および第4部を含み、
前記第1のダミー電極、前記第2のダミー電極および前記電極パッド部の膜厚が互いに等しい、
半導体光素子の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の半導体光素子の製造方法であって、
前記導電層の分離は、ミリングを用いて行う、
半導体光素子の製造方法。
【請求項22】
第1の方向に延伸するメサストライプを含む素子構造層を準備し、
前記素子構造層の上面に導電層を形成し、
前記導電層を分離することにより、少なくとも前記メサストライプの上面を覆う電極膜と、前記素子構造層の上面における、前記メサストライプよりも前記第1の方向に交差する第2の方向に位置する第1の領域の一部を覆い、前記電極膜と電気的に接続された電極パッド部と、前記第1の領域の他の一部を覆い、前記電極膜と電気的に絶縁された第1のダミー電極と、前記素子構造層の上面における、前記メサストライプよりも前記第2の方向と逆方向である第3の方向に位置する第2の領域の少なくとも一部を覆い、前記電極膜と電気的に絶縁された第2のダミー電極と、を形成し、
前記導電層を分離する工程において、前記第1のダミー電極が、前記電極パッド部よりも前記第1の方向に配置された第1部と、前記電極パッド部よりも前記第1の方向と逆方向である第4の方向に配置された第2部と、を含むよう分離し、
前記導電層の分離は、ミリングを用いて行う、
半導体光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光素子、光モジュール、及び半導体光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体光素子は、例えばセラミック基板などで形成されたサブマウントに搭載されて使用されている。そして、サブマウントに設けられた配線パターンと半導体光素子とは、ワイヤを用いて電気的に接続される。
【0003】
下記特許文献1においては、半導体光素子をサブマウントに搭載する際に、コレットを用いた真空吸着により半導体光素子を保持する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-41850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、半導体光素子の小型化が進んだことにより、半導体光素子のサイズが、コレットなどの吸引器の吸着口のサイズと比較して小さくなってきている。また、高速応答対応や高集積化のために半導体光素子の電極サイズの縮小化が行われている。半導体光素子を吸引器で保持する際、半導体光素子の平坦な領域を吸引器が吸引することで吸着するが、半導体光素子の小型化により平坦な領域が小さくなり、吸引器による吸引不良が発生してしまう。そのため、吸引器による半導体光素子の適切な保持が困難となってきた。
【0006】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸引器による吸引不良を抑制可能な半導体光素子を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る半導体光素子は、第1の方向に延伸するメサストライプを含む素子構造層と、少なくとも前記メサストライプの上面を覆う電極膜と、前記素子構造層の上面における、前記メサストライプよりも前記第1の方向に交差する第2の方向に位置する第1の領域の一部を覆い、前記電極膜と電気的に接続された電極パッド部と、前記第1の領域の他の一部を覆い、前記電極膜と電気的に絶縁された第1のダミー電極と、前記素子構造層の上面における、前記メサストライプよりも前記第2の方向と逆方向である第3の方向に位置する第2の領域の少なくとも一部を覆い、前記電極膜と電気的に絶縁された第2のダミー電極と、を含み、前記第1のダミー電極は、前記電極パッド部よりも前記第1の方向に配置された第1部と、前記電極パッド部よりも前記第1の方向と逆方向である第4の方向に配置された第2部と、を含む。
【0008】
また、本開示に係る光モジュールは、上記半導体光素子と、前記半導体光素子の下面側が搭載されるサブマウントと、を含み、前記サブマウントに設けられた配線と、前記電極パッド部と、がワイヤボンディングにより電気的に接続されている。
【0009】
また、本開示に係る半導体光素子の製造方法は、第1の方向に延伸するメサストライプを含む素子構造層を準備し、前記素子構造層の上面に導電層を形成し、前記導電層を、分離することにより、少なくとも前記メサストライプの上面を覆う電極膜と、前記素子構造層の上面における、前記メサストライプよりも前記第1の方向に交差する第2の方向に位置する第1の領域の一部を覆い、前記電極膜と電気的に接続された電極パッド部と、前記第1の領域の他の一部を覆い、前記電極膜と電気的に絶縁された第1のダミー電極と、前記素子構造層の上面における、前記メサストライプよりも前記第2の方向と逆方向である第3の方向に位置する第2の領域の少なくとも一部を覆い、前記電極膜と電気的に絶縁された第2のダミー電極と、を形成し、前記導電層を分離する工程において、前記第1のダミー電極が、前記電極パッド部よりも前記第1の方向に配置された第1部と、前記電極パッド部よりも前記第1の方向と逆方向である第4の方向に配置された第2部と、を含むよう分離する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することが可能な半導体光素子、及び当該半導体光素子を含む光モジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は第1の実施形態に係る半導体光素子を上方から見た模式的な平面図である。
図2図2は第1の実施形態に係る半導体光素子の模式的な斜視図である。
図3図3は第1の実施形態の他の実施例に係る半導体光素子を上方から見た模式的な平面図である。
図4図4は第1の実施形態の他の実施例に係る半導体光素子の模式的な斜視図である。
図5図5は第1の実施形態の他の実施例に係る半導体光素子を上方から見た模式的な平面図である。
図6図6は第1の実施形態に係る半導体光素子と吸引器の吸入口との配置関係を示す模式的な平面図である。
図7図7は第1の実施形態に係る半導体光素子と吸引器の吸入口との配置関係を示す模式的な平面図である。
図8図8は第1の実施形態に係る半導体光素子を光モジュールに搭載した例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の第1の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態に係る半導体光素子100を上方から見た模式的な平面図である。図2は、本実施形態に係る半導体光素子100の模式的な斜視図である。
【0013】
図1、2に示すように、本実施形態の半導体光素子100は、例えば直接変調型レーザであり、半導体基板101と、半導体基板101の上方に設けられた、n-InP層102、活性層103、メサエッチング停止層104、p型クラッド層105、及びp型コンタクト層106を含む。
【0014】
これら半導体基板101、n-InP層102、活性層103、メサエッチング停止層104、p型クラッド層105、p型コンタクト層106、及び後述するパッシベーション膜108により、素子構造層114を構成している。
【0015】
これらn-InP層102、活性層103、メサエッチング停止層104、p型クラッド層105、及びp型コンタクト層106は、半導体基板101の上面に、例えばMOCVD(有機金属気相成長)法によって順に形成することができる。なお、半導体基板101としては、例えばn型InP基板を用いることができる。
【0016】
活性層103は、例えば、InGaAlAs層からなる多重量子井戸(MQW)構造を有する。メサエッチング停止層104は、例えばp-InGaAlAs層からなり、p型クラッド層は105、例えばp-InP層からなり、p型コンタクト層106は、例えばp-InGaAs層からなる。なお、活性層103におけるMQW構造の上層、下層の双方、若しくはそのいずれか一方に、活性層103の光のしみだしを抑制する光閉じ込め層を設けても構わない。また、図示はしないが、メサエッチング停止層104とp型クラッド層105との間に、回折格子を配置している。本実施形態における回折格子の発振波長は、例えば1.3μm帯とする。
【0017】
図1、2に示すように、本実施形態に示す半導体光素子100は、素子構造層114の上面側において、素子構造層114の上面に沿う第1の方向に延伸する第1の分離溝121Aと、第2の分離溝121Bと、を有する。第1の分離溝121Aと、第2の分離溝121Bとは、p型コンタクト層106を形成した後、例えば、フォトリソグラフィ工程を用いてSiO等の絶縁膜からなるマスクを形成し、その後、上方からエッチング加工を施すことにより形成することができる。第1の分離溝121A、第2の分離溝121Bの底部はメサエッチング停止層104となっている。
【0018】
第1の分離溝121A、第2の分離溝121Bで挟まれた領域が、メサストライプ122を構成している。図2に示すように、メサストライプ122は、素子構造層114の一部であり、第1の分離溝121A、第2の分離溝121Bと同様に、第1の方向に延伸している。
【0019】
更に、本実施形態においては、半導体光素子100が、第1の分離溝121Aの底部に第1のアイソレーション溝123Aを有し、第2の分離溝121Bの底部に第2のアイソレーション溝123Bを有する構成としている。第1のアイソレーション溝123A、及び第2のアイソレーション溝123Bは、上述したフォトリソグラフィ工程及びエッチング加工により形成することができる。第1のアイソレーション溝123A、及び第2のアイソレーション溝123Bは、活性層103を貫通し、n-InP層102もしくは半導体基板101まで及んでいる。第1のアイソレーション溝123Aと第2のアイソレーション溝123Bとで挟まれた領域における活性層103が、発光部となる。
【0020】
p型コンタクト層106、第1の分離溝121A、第2の分離溝121B、第1のアイソレーション溝123A、及び第2のアイソレーション溝123Bの上面には、パッシベーション膜108を設けている。パッシベーション膜108は、例えばSiO膜からなる。なお、パッシベーション膜108は、メサストライプ122の上面には設けない構成としている。このようなパッシベーション膜108の形成方法としては、例えば、まず、p型コンタクト層106、第1の分離溝121A、第2の分離溝121B、第1のアイソレーション溝123A、第2のアイソレーション溝123B、及びメサストライプ122の露出する上面全体にSiO膜を形成し、その後、メサストライプ122の上面のSiO膜を除去することにより、パッシベーション膜108を形成することができる。
【0021】
本実施形態における半導体光素子100は、メサストライプ122の上面を覆う電極膜107を含む。上述したとおり、メサストライプ122の上面には、パッシベーション膜108を設けない構成としているため、メサストライプ122の上面と電極膜107とは電気的に接続される。なお、電極膜107は、第1の分離溝121A、及び第2の分離溝121Bを跨ぐように形成されている。
【0022】
ここで、素子構造層114の上面において、このメサストライプ122よりも第1の方向に交差する第2の方向に位置する領域を第1の領域130とし、メサストライプ122よりも第2の方向の逆方向である第3の方向に位置する領域を第2の領域131とする。
【0023】
そして、第1の分離溝121Aに対して、第1の方向に交差する第2の方向に配置されたp型クラッド層105、p型コンタクト層106、及びパッシベーション膜108が第1のバンプ部115Aを構成している。また、第2の分離溝121Bに対して、第2の方向と逆方向である第3の方向に配置されたp型クラッド層105、p型コンタクト層106、及びパッシベーション膜108が、第2のバンプ部115Bを構成している。即ち、素子構造層114は、第1の領域130において第1のバンプ部115Aを有し、第2の領域131において第2のバンプ部115Bを有している。
【0024】
上述したとおり、パッシベーション膜108は、メサストライプ122の上面には設けない構成としているため、第1のバンプ部115A、第2のバンプ部115Bの上面の高さは、パッシベーション膜108の膜厚分、メサストライプ122の上面の高さよりも高い構成となっている。
【0025】
図1、2に示すように、第1の領域130には、電極膜107と電気的に接続された電極パッド部110と、電極膜107と電気的に絶縁された第1のダミー電極109が配置されている。電極パッド部110は、第1の領域130の一部を覆い、第1のダミー電極109は、第1の領域130の他の一部を覆う。また、第2の領域131には、電極膜107と電気的に絶縁された第2のダミー電極111が配置されている。第2のダミー電極111は、第2の領域131の少なくとも一部を覆う。電極パッド部110は、後述する光モジュールのサブマウントに形成された配線と、ワイヤボンディングにより電気的に接続される。電極パッド部110は、電気的、及び物理的に、電極膜107と接続されている。
【0026】
このような構成とすることにより、コレットなどの吸引器による吸引不良を抑制可能な半導体光素子100を実現することが可能となる。半導体光素子100の上面に凹凸があると吸引器の吸着面に対して素子が傾いて接触するために吸引不良が発生したり、凹部からの空気の漏れによる吸引不良が発生したりする恐れがある。吸引器に対して半導体光素子100の上面が十分に大きい場合は、半導体光素子100の上面の一部にある平坦部分を吸引することによりこの課題を解決することができるが、半導体光素子100の小型化に伴い、それも困難となっている。この課題に対して、本開示の構成とすることにより、半導体光素子100が、素子構造層114の上面において、第1の領域130に配置された第1のダミー電極109と、第2の領域131に配置された第2のダミー電極111と、を備える構成とすることにより、半導体光素子100の上面における平坦な領域の面積を増加させることが可能となる。その結果として、吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することが可能となる。
【0027】
また、第1の領域130、又は第2の領域131のみにダミー電極を設けるのではなく、第1の領域130に第1のダミー電極109、第2の領域131に第2のダミー電極111を設ける構成とすることにより、第1の領域130、第2の領域131の一方のみの吸引量が大きくなることを抑制し、吸引の際において半導体光素子100が傾くのを抑制することができる。
【0028】
更に、電極膜107と電気的に接続された導電体ではなく、電極膜107と電気的に絶縁された第1のダミー電極109、第2のダミー電極111を設ける構成とすることにより、寄生容量の増大を招くことなく、高速応答に優れた半導体光素子100を提供することが可能となる。即ち、本実施形態の構成とすることにより、高速応答に優れ、且つ吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することが可能な半導体光素子100を実現することができるのである。
【0029】
また、平坦面の面積を確保するために、第1の領域130において、電極パッド部110を必要以上に大きく形成する構成も考えられるが、本実施形態のように、第1のダミー電極109を第1の領域130に配置する構成とすることにより、電極パッド部110を必要以上に大きくすることを回避し、寄生容量の発生を抑制することができる。
【0030】
なお、素子構造層114の上方から見て、素子構造層114が矩形状の外形を有している。このように素子構造層114が矩形状の外形を有する構成においては、図1乃至5に示すように、第1のダミー電極109、及び第2のダミー電極111の少なくとも一部が、矩形状における4隅に沿うよう配置されることが望ましい。
【0031】
このような構成とすることにより、例えば図6に示すように、半導体光素子100の外形が相対的に小さいような場合であっても、矩形状における4隅に沿うよう配置された第1のダミー電極109、第2のダミー電極111の一部が、吸引口150の外周よりも外側に配置される構成とすることができ、吸引不良の抑制を図ることが可能となる。
【0032】
また、素子構造層114の外形を構成する辺の80%以上に沿うように、第1のダミー電極109及び第2のダミー電極111が配置された構成とすることが望ましい。このような構成とすることにより、第1のダミー電極109と電極膜107との間、第2のダミー電極111と電極膜107との間などから、空気が漏れることを抑制することができ、吸引不良の抑制を図ることが可能となる。
【0033】
なお、電極膜107、電極パッド部110、第1のダミー電極109、及び第2のダミー電極111の形成方法としては、例えば以下の方法を用いることができる。
【0034】
まず、パッシベーション膜108、及びメサストライプ122の露出する上面全体に、例えば蒸着法を用いて、チタン、白金、金の三層構造からなる導電層を堆積する。この三層構造において、金が最上層で、チタンが最下層に配置される。
【0035】
ここで、図1に示すように、例えば第2のダミー電極111の上方から視認される位置に記号112を付すような場合、この記号112を形成する領域以外の部分にマスクを形成して保護し、記号112を形成する領域において、上述した三層構造における金層をエッチング等により除去することにより、白金層を露出させる。このような方法により、例えば半導体光素子100の識別番号等を意味する記号112を、第2のダミー電極111の上面に付することが可能となる。
【0036】
次に、図1に示した第1のダミー電極109と電極パッド部110との間、第1のダミー電極109と電極膜107との間、及び第2のダミー電極111と電極膜107との間以外をレジストなどでマスクする。そしてミリングなどによりマスクされていない領域の導電層を除去することで、各電極がパターニングされる。なお、ミリングとは、イオンビームなどの高エネルギーを所定領域に照射して、当該所定の領域を除去する方法である。このような方法により、第1のダミー電極109と電極パッド部110、第1のダミー電極109と電極膜107、及び第2のダミー電極111と電極膜107を、電気的、及び物理的に分離することが可能となる。なお、上述した記号112を、本工程で形成しても構わない。記号112となる領域及び上述の各電極の間をマスクせずにミリングを行う。この方法の場合は、記号112は第2のダミー電極111の一部の三層の導電層が除去された形態として形成される。
【0037】
このような製造方法とするため、第1のダミー電極109は、電極パッド部110の外周の少なくとも一部に沿う縁116を有する構成となる。例えば、図1、2に示すように、電極パッド部110の外周が円周状であれば、第1のダミー電極109が、電極パッド部110の外周に沿う円弧状の縁116を有する構成となる。また、電極パッド部110の外周が多角形状であれば、電極パッド部110が、この多角形状の外周に沿う屈曲した縁を有する構成となる。なお、この図1、2に示す構成においては、電極パッド部110の外周が円周状であり、電極パッド部110の外周の曲率よりも、第1のダミー電極109の円弧状の縁116の曲率半径が大きくなっている。そして、電極パッド部110の外周の少なくとも一部と、第1のダミー電極109の円弧状の縁116とは、互いに向き合うよう配置され、且つ一定幅の隙間を開けて配置されている。このような構成とすることにより、電極パッド部110と第1のダミー電極109とを近づけて配置することが可能となる。そのため、半導体光素子100の上面の限られた面積の中で、第1のダミー電極109の面積、即ち平坦面の面積を大きくすることができ、吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することができる。さらに、電極パッド部110と第1のダミー電極109との間を流れる空気の量を少なくすることができるため、吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することができる。
【0038】
また、上記製造方法によれば、第1のダミー電極109、第2のダミー電極111、電極パッド部110、及び電極膜107の膜厚を等しくすることができる。上述したとおり、第1のダミー電極109、電極パッド部110が配置される第1のバンプ部115A、第2のダミー電極111が配置される第2のバンプ部115Bの上面の高さは、パッシベーション膜108の膜厚分、メサストライプ122の上面の高さよりも高い構成となっている。そのため、素子構造層114の上方から見て、メサストライプ122と重畳する領域における電極膜107の上面の高さよりも、第1のダミー電極109の上面、及び第2のダミー電極111の上面の高さの方が、パッシベーション膜108の膜厚分だけ高い位置に配置される。
【0039】
その結果として、図7に示すように、コレットなどの吸引器の吸引口150が、素子構造層114の上方から見て、メサストライプ122と交差するように配置されるような場合であっても、メサストライプ122の存在が邪魔することなく、吸引口150の外周部を、第1のダミー電極109、第2のダミー電極111の上面に接触させることができ、吸引不良の発生を抑制することができる。
【0040】
なお、素子構造層114の上方から見て、第1のダミー電極109と重畳する領域の素子構造層114の層構造と、第2のダミー電極111と重畳する領域の素子構造層114の層構造とは同じ構成としている。そのため、第1のダミー電極109の上面と第2のダミー電極の上面の高さは、略等しくなっている。
【0041】
なお、フォトリソグラフィとエッチング加工の精度から、第1のダミー電極109の側面と電極パッド部110の側面との間、第1のダミー電極109の側面と電極膜107の側面との間、及び第2のダミー電極111の側面と電極膜107の側面との間の距離は、5μm以上の構成であることが望ましい。また、第1のダミー電極109の側面と電極パッド部110の側面との間、第1のダミー電極109の側面と電極膜107の側面との間、及び第2のダミー電極111の側面と電極膜107の側面との間の距離が10μm以下の構成とすることにより、第1のダミー電極109、及び第2のダミー電極111の面積を担保することができ、平坦面の面積を大きくすることができ、吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することができるため望ましい。
【0042】
また、上述の製造方法によれば、電極膜107、電極パッド部110、第1のダミー電極109、及び第2のダミー電極111を共通のプロセスで形成することができるため、製造効率が高く望ましい。
【0043】
本実施形態においては、図1、2に示すように、第1のダミー電極109が、電極パッド部110よりも第1の方向に配置された第1部109Aと、電極パッド部110よりも第1の方向と逆方向である第4の方向に配置された第2部109Bと、を含み、これら第1部109Aと第2部109Bとは互いに分離して配置された構成としている。
【0044】
このように、第1のダミー電極109が、第1の方向に配置された、電極パッド部110よりも第1の方向に配置された第1部109Aと、電極パッド部110よりも第1の方向と逆方向である第4の方向に配置された第2部109Bと、を含む構成とすることにより、半導体光素子100の上面における第1の方向と第4の方向の端部に平坦な領域を形成することができるため、吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することが可能となる。
【0045】
なお、図3、4に示すように、第1のダミー電極109が、第1の方向、第2の方向、及び第4の方向から電極パッド部110を囲う構成としてもよい。この図3、4に示す構成においては、電極パッド部110よりも第1の方向に配置された第1部109Aと、電極パッド部110よりも第1の方向と逆方向である第4の方向に配置された第2部109Bと、が一体となった構成となっている。この図3、4に示す構成であれば、図1、2に示した半導体光素子100と比較して、空気の逃げ道を塞ぐ構成とすることができるため、吸引器による吸引不良をより抑制することが可能となる。即ち、図1、2に示す構成では、第1部109Aと第2部109Bとが分離して配置されているため、それらの間を空気が流れてしまう可能性がある。しかし、図3、4に示す構成であれば、そのような空気の逃げ道を塞ぐことができるため、吸引器による吸引不良をより抑制することが可能となる。
【0046】
一方で、図1、2に示す構成の方が、図3、4に示す構成と比較して小型化の観点からは望ましい。即ち、図1、2の構成であれば、第1のダミー電極109が、電極パッド部110に対して第2の方向に配置された部分を有さない分、図3、4に示す構成と比較して小型化を図ることが可能となる。
【0047】
また、第1の領域130と第2の領域131における吸引量を調整するために、あえて、図1、2に示すように、第1部109Aと第2部109Bとを分離させ、それらの距離を調整する構成としてもよい。例えば、第1の領域130と比較して、第2の領域131の方が吸引不良しやすい構成となっている場合において、吸引器による吸引を行うと、半導体光素子100が傾き、落下してしまう恐れがある。しかし、あえて第1部109Aと第2部109Bとを分離させることで、第1の領域130と、第2の領域131との吸引量を調整し、バランスさせることができる。
【0048】
また、図5に示すように、第2のダミー電極111にスリット111Aを形成し、あえて、第2の領域131の吸引量を低下させて、第1の領域130と、第2の領域131との吸引量をバランスさせる構成としてもよい。スリット111Aは、例えば、メサストライプ122の延伸方向である第1の方向に交差する方向に設ければよい。
【0049】
なお、図1乃至5に示す例では、第2のダミー電極111は第2の領域131において、電極膜107と並走するように配置されている。そして、素子構造層114の上方から見て、第2の領域131における、第2のダミー電極111、及び電極膜107に覆われていない面積は、第2の領域131の面積の20%以下としている。
【0050】
また、図1、2に示す例においては、第2の領域131において、第2のダミー電極111が相対的に大きな面積を有するため、上述した方法により、第2のダミー電極111の上面に記号112を付す構成としている。
【0051】
このように、素子構造層114の上方から見て、第2の領域131における、第2のダミー電極111、及び電極膜107に覆われていない面積が、第2の領域131の面積の20%以下とすることにより、第2の領域131において平坦な領域の面積を大きくすることができるため、吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することが可能となる。
【0052】
特に、図1乃至5に示す例においては、メサストライプ122が、素子構造層114の上方から見て、第3の方向に寄った構成としている。このような構成においては、電極膜107よりも第3の方向に位置する第2の領域131の面積が小さくなってしまい、第2の領域131における平坦な領域の面積が小さくなってしまうという課題がある。この課題に対して、上述したように、素子構造層114の上方から見て、第2の領域131における、第2のダミー電極111、及び電極膜107に覆われていない領域の面積が、第2の領域131の面積の20%以下とすることにより、吸引器による吸引不良を抑制する効果はより顕著となる。
【0053】
なお、同様に、素子構造層114の上方から見て、第1の領域130における、第1のダミー電極109、電極パッド部110、及び電極膜107に覆われていない領域の面積が、前記第1の領域の面積の20%以下とし、第1の領域130において平坦な領域の面積を大きくすることにより、吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することが望ましい。
【0054】
なお、図1、2に示す構成では、第2のダミー電極111の上面に記号112を付す構成を示したが、図3、4に示すように、第1のダミー電極109が、第2のダミー電極111よりも大きな面積を有するような場合には、第1のダミー電極109の上面に、記号112を付す構成としても構わない。記号112の形成方法としては、第2のダミー電極111の上面に形成する方法と同じ方法を用いても構わない。
【0055】
図1乃至5に示すように、半導体基板101の下面には、n型電極113を設けている。n型電極113は、例えば、半導体基板101の下面に、蒸着法とフォトリソグラフィ技術でパターニングすることによって形成することができる。
【0056】
なお、素子構造層114の上方から見て、第1の領域130が、第1のダミー電極109が配置されていない、第1の方向に交差する第1の端辺領域130Aを有し、第2の領域131が、第2のダミー電極111が配置されていない、第1の方向に交差する第2の端辺領域131Aを有する構成とすることが望ましい。また、本実施形態においては、素子構造層114の上方から見て、第1の領域130が、第1のダミー電極109が配置されていない、第4の方向に交差する第3の端辺領域130Bを有し、第2の領域131が、第2のダミー電極111が配置されていない、第4の方向に交差する第4の端辺領域131Bを有する構成としている。その理由について、以下に説明する。
【0057】
半導体光素子100はウエハに複数形成され、その後、個別化して形成される。個別化のプロセスは大きく2段階に分けられる。第1の段階は、複数の半導体光素子100がメサストライプ122の延伸方向(第1の方向)に交差する方向に複数連結されたバー状態に分けるバー化工程である。第2の段階は、バー状態から、メサストライプ122の延伸方向に平行な方向に劈開していくことで個別化するチップ化工程である。バー状態に分けるバー化工程は、具体的には、上述した製造方法が施された素子構造層114にレーザで上方(又は下方)から傷入れを行った後に、下方(又は上方)からブレードを素子構造層114に押し当てることにより、メサストライプ122の延伸方向(第1の方向)に交差する方向に連結された半導体光素子群(バー)を形成する。ここで、半導体光素子群の切断面は劈開面となっており、レーザ光を出射する出射面となる。なお、レーザで傷入れを行うのは、素子構造層114の上方から行うことが望ましい。このような方法とすることにより、ブレードを押し当てる工程において、メサストライプ122が配置された面側からブレードを押し当てる必要がなく、メサストライプ122の品質劣化を抑制することができる。また、レーザによる傷入れ位置は、ブレードによる押し当てによる分断位置よりも高精度に制御することが可能となるため、メサストライプ122の品質劣化を抑制することができる。
【0058】
次に、レーザ光の前方出射面には、例えば反射率が1%以下となる反射膜を形成し、後方出射面には反射率が90%以上の反射膜を形成する。
【0059】
その後、メサストライプ122の延伸方向(第1の方向)に、半導体光素子群にダイヤモンドカッターで傷入れを行い分断することにより、複数の半導体光素子100を製造する(チップ化工程)。その際、半導体光素子100における、第1の方向に直交する方向の幅が、200μm以下となる構成としても構わない。即ち上述した通り、本実施形態に係る半導体光素子100であれば、このように、第1の方向に直交する方向の幅が200μm以下となるような小型の構成であったとしても、第1のダミー電極109、第2のダミー電極111を設けることにより、半導体光素子100の上面における平坦な領域の面積を増加させているため、吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することが可能となる。
【0060】
上述した半導体光素子群(バー)を形成する工程においては、レーザで傷入れを行うが、その際に、第1の領域130の第1の端辺領域130A、第2の領域131の第2の端辺領域131Aにまで、第1のダミー電極109、第2のダミー電極111が配置されない構成とすることが望ましい。このような構成とすることにより、傷入れの際に、第1のダミー電極109、第2のダミー電極111に曲げが発生するのを抑制することができ、また、第1のダミー電極109、第2のダミー電極111が割れるのを抑制することができる。更に、第1のダミー電極109、第2のダミー電極111に曲げが発生に伴う、パッシベーション膜108の下方に配置されたいずれかの層と、第1のダミー電極109、第2のダミー電極111との導通を抑制することができる。そのため、素子構造層114の上方から見て、第1の領域130が、第1のダミー電極109が配置されていない、第1の方向に交差する第1の端辺領域130Aを有し、第2の領域131が、第2のダミー電極111が配置されていない、第1の方向に交差する第2の端辺領域131Aを有する構成とすることが望ましい。同様に、素子構造層114の上方から見て、第1の領域130が、第1のダミー電極109が配置されていない、第4の方向に交差する第3の端辺領域130Bを有し、第2の領域131が、第2のダミー電極111が配置されていない、第4の方向に交差する第4の端辺領域131Bを有する構成とすることが望ましい。
【0061】
ただし、吸引器による吸引不良を抑制する観点からは、第1の領域130の第1の端辺領域130Aにまで第1のダミー電極109を配置し、第2の領域131の第2の端辺領域131Aにまで第2のダミー電極111を配置する構成とすることが望ましい。同様に、第1の領域130の第3の端辺領域130Bにまで第1のダミー電極109を配置し、第2の領域131の第4の端辺領域131Bにまで第2のダミー電極111を配置する構成とすることが望ましい。
【0062】
なお、メサストライプ122については、素子構造層114の上方から見て、第1の方向、及び第4の方向に交差する端辺領域にまで形成されることが望ましい。このような構成とすることにより、活性層103の全ての領域を発光に寄与させることができ、且つ活性層103が光吸収層として機能することを抑制することができる。そのため、半導体光素子100の品質劣化を抑制することができる。
【0063】
なお、本実施形態においては、図1乃至5に示すように、メサストライプ122の延伸方向(第1の方向)に、半導体光素子群にダイヤモンドカッターで傷入れを行い分断する際に、メサストライプ122が素子構造層114の上方から見て、第3の方向に寄った構成となるよう分断を行う。このような構成とすることにより、電極パッド部110が配置される第1の領域130の面積を担保しつつ、半導体光素子100全体の小型化を図ることが可能となる。なお、第2の領域131には電極パッド部110を設けていないため、上述した個片化工程において、第2のアイソレーション溝123Bが分断されない程度の最低限の面積を持たせておけばよい。そのため、図1乃至5に示す例においては、第1の領域130の面積よりも第2の領域131の面積が小さい構成となっている。
【0064】
図8は、上述した本実施形態に係る半導体光素子100を、光モジュール300に搭載した例を示す概略図である。本実施形態に係る光モジュール300は、全体収容部305と、半導体光素子100から出力される光を光ファイバ303に入射させるレンズ302と、半導体光素子100に電気信号を入力するサブマウント200と、リードピン306とを備えている。
【0065】
全体収容部305は、光モジュール300の各部材を格納するための金属製の部材であり、光ファイバ収容部304と、レンズ収容部301と、を含んで構成される。光ファイバ収容部304は、光ファイバ303を格納するための金属製の円筒形状の部材である。光ファイバ収容部304には、コネクタを備えた光ファイバ303が外部から挿入される。レンズ収容部301には、所定位置に形成された孔にレンズ302がはめ込まれており、レンズ収容部301はレンズ302を支持する。
【0066】
また、特に図示はしないが、全体収容部305の底面(リードピン306が接続されている面)に、高周波信号線が印刷された窒化アルミ等からなるサブマウント200が搭載されている。サブマウント200上には、上述した半導体光素子100が搭載されている。当該半導体光素子100は、コレットなどの吸引器により保持され、サブマウント200上に配置される。上述した通り、半導体光素子100は第1のダミー電極109、第2のダミー電極111を備えることにより、吸引器による吸引不良が発生してしまうことを抑制することが可能な構成となっている。そのため、サブマウント200上の適切な場所に、コレットなどの吸引器を用いて、半導体光素子100を配置することが可能となる。
【0067】
サブマウント200上には、半導体光素子100の下面側が搭載されており、電極パッド部110が設けられた半導体光素子100の上面は露出された状態となっている。そして、サブマウントに設けられた配線と、電極パッド部110とが、ワイヤボンディングにより電気的に接続されることで、半導体光素子100を通電することができる。
【0068】
なお、サブマウント200や半導体光素子100は、リードピン306を介して、光モジュール300の外部に存在するフレキシブル基板(図示せず)と電気的に接続されている。リードピン306は、全体収容部305の底面の外側から接続されている。半導体光素子100に入力される電気信号は、フレキシブル基板からリードピン306を経由して伝送されることになる。
【0069】
なお、本実施形態では、リッジ型の半導体光素子100を例示して説明したが、埋め込み型の半導体層や、埋め込み型の樹脂層を有する半導体光素子においても同様の効果が得られることは言うまでもない。また、本実施形態では、半導体光素子100が直接変調型レーザである例を示して説明したが、半導体光素子100が、電界吸収変調器であってもよい。なお、直接変調型レーザは、上面面積が一般的に小さい構成となるが、上述した本開示の構成とすることにより、吸引器による吸引不良を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
100 半導体光素子、101 半導体基板、102 n-InP層、103 活性層、104 メサエッチング停止層、105 p型クラッド層、106 p型コンタクト層、107 電極膜、108 パッシベーション膜、109 第1のダミー電極、109A 第1部、109B 第2部、110 電極パッド部、111 第2のダミー電極、112 記号、113 n型電極、114 素子構造層、115A 第1のバンプ部、115B 第2のバンプ部、116 縁、121A 第1の分離溝、121B 第2の分離溝、122 メサストライプ、123A 第1のアイソレーション溝、123B 第2のアイソレーション溝、130 第1の領域、130A 第1の端辺領域、130B 第3の端辺領域、131 第2の領域、131A 第2の端辺領域、131B 第4の端辺領域、150 吸引口、200 サブマウント、300 光モジュール、301 レンズ収容部、302 レンズ、303 光ファイバ、304 光ファイバ収容部、305 全体収容部、306 リードピン。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8