(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】液晶表示装置及びこれを備えた加熱調理器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13357 20060101AFI20230310BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230310BHJP
F24C 15/00 20060101ALI20230310BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
G02F1/13357
G02F1/1335 500
F24C15/00 M
F24C15/10 B
(21)【出願番号】P 2019047894
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】北村 将章
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136102(WO,A1)
【文献】特開2018-128581(JP,A)
【文献】特開2015-023028(JP,A)
【文献】特開2002-221323(JP,A)
【文献】特開2000-298268(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008497(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13357
G02F 1/1335
G02F 1/1333
G09F 9/00
F21S 2/00
F21V 8/00
F24C 1/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過可能な透光板と、前記透光板の背面に設けられた液晶パネルと、前記液晶パネルの背面に設けられ、可視波長域の光を照射可能な光源を有し、前記光源の点灯によって前記液晶パネルの表示を前記透光板上に現すバックライトユニットとを備えた液晶表示装置において、
前記透光板は、前記光源の消灯時に前記
液晶パネルを隠蔽可能な色彩に着色され、
前記バックライトユニットは、前記可視波長域内に含まれ、前記光源の点灯時に前記色彩によって吸収される特定波長の光からなる特定光が前記特定光以外の光よりも強く照射されるようになっていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記光源は、前記可視波長域の光を照射可能な第1光源と、前記特定光を照射可能な第2光源とを有する請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記透光板は、無色透明なクリア板と、前記色彩に着色された着色層とからなる請求項1又は2記載の液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の液晶表示装置を備え、前記透光板がトッププレートを含む加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置及びこれを備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の加熱調理器が開示されている。この加熱調理器は、本体ケースの上方にトッププレートが設けられ、トッププレートの上面に3個のコンロバーナが設けられている。また、本体ケースにはグリル庫が設けられ、グリル庫内にはグリルバーナが組み込まれている。トッププレートの中央前寄りの位置には液晶表示装置が一体的に設けられている。
【0003】
この液晶表示装置は、透光板と、液晶パネルと、バックライトユニットとを備えている。透光板は光を透過可能である。上記加熱調理器では、透光板は、無機ガラス製のトッププレートの一部であり、無色透明である。液晶パネルは、トッププレートの背面に設けられ、加熱調理器の動作情報や、設定入力スイッチにより設定された加熱条件を表示する。バックライトユニットは、液晶パネルの背面に設けられ、光源が点灯されて可視波長域の光を照射することにより、液晶パネルの表示をトッププレート上に現す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の液晶表示装置では、透光板が無色透明であるため、バックライトユニットの光源の消灯時にも液晶パネルの表示を目視することが可能である。このため、このような液晶表示装置を備えた加熱調理器等では、操作者が主電源のON時とOFF時とを勘違いするおそれがある。また、このような液晶表示装置を備えた機器において、バックライトユニットの光源の消灯時に液晶パネルの存在感をできるだけ無くしたいという要望もある。
【0006】
このため、光源の消灯時に液晶パネルの表示を隠蔽できるように、透光板に着色することが考えられる。この場合、操作者は、液晶パネルの表示が透光板上に現われていなければ、主電源がOFFとされていることを確認でき、液晶パネルの表示が透光板上に現われておれば、主電源がONとされていることを確認できる。また、バックライトユニットの光源の消灯時に液晶パネルの存在感をできるだけ無くすことができる。
【0007】
しかしながら、一般的なバックライトユニットは、光源が可視波長域の光を照射するだけであるため、透光板の色彩によって特定波長の光からなる特定光が吸収され、透光板上に現われる表示が不自然な色調となってしまう。
【0008】
かといって、透光板にさらに光学フィルタを設けることにより不自然な色調を補正することも考えられるが、こうすると光源の光が透光板上まで届き難くなり、表示が暗くなってしまう。このために光源の輝度を上げようとすれば、消費電力が大きくなり、ランニングコストが上がってしまう。また、発熱対策が必要になり、製品単価も上がってしまう。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ランニングコストや製品単価の上昇を生じず、透光板上に現われる表示が自然な色調となる液晶表示装置を提供することを解決すべき課題としている。また、この液晶表示装置を備えた加熱調理器を提供することも解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液晶表示装置は、光を透過可能な透光板と、前記透光板の背面に設けられた液晶パネルと、前記液晶パネルの背面に設けられ、可視波長域の光を照射可能な光源を有し、前記光源の点灯によって前記液晶パネルの表示を前記透光板上に現すバックライトユニットとを備えた液晶表示装置において、
前記透光板は、前記光源の消灯時に前記液晶パネルを隠蔽可能な色彩に着色され、
前記バックライトユニットは、前記可視波長域内に含まれ、前記光源の点灯時に前記色彩によって吸収される特定波長の光からなる特定光が前記特定光以外の光よりも強く照射されるようになっていることを特徴とする。
【0011】
本発明の液晶表示装置では、透光板が色彩に着色され、可視波長域の光を照射可能な光源の消灯時に液晶パネルの表示を隠蔽できる。このため、操作者は、液晶パネルの表示が透光板上に現われていなければ、主電源がOFFとされていることを確認でき、液晶パネルの表示が透光板上に現われておれば、主電源がONとされていることを確認できる。また、バックライトユニットの光源が消灯している間は液晶パネルの存在感をできるだけ無くすことができる。
【0012】
また、この液晶表示装置では、バックライトユニットが特定光を特定光以外の光よりも強く照射する。このため、透光板の色彩によって特定波長の光からなる特定光が吸収されても、その特定光が補われ、透光板上に現われる表示が自然な色調となる。
【0013】
しかも、この液晶表示装置では、透光板に光学フィルタを設けるようなことはしないため、表示が暗くなることもない。そのため、消費電力を大きく上げたり、発熱対策を行なう必要がない。
【0014】
したがって、本発明の液晶表示装置では、ランニングコストや製品単価の上昇を生じず、透光板上に現われる表示が自然な色調となる。
【0015】
光源は、可視波長域の光を照射可能な第1光源と、特定光を照射可能な第2光源とを有することが好ましい。この場合、容易に特定光を特定光以外の光よりも強く照射することが可能になる。
【0016】
透光板は、無色透明なクリア板と、色彩に着色された着色層とからなることが好ましい。この場合、透光板に容易に色彩を着色することができる。また、液晶表示装置において、透光板における液晶パネルの表面だけを他の部分と異なる色彩とすることにより、液晶パネルの表示を目立たせることができる。例えば、この液晶表示装置を加熱調理器に採用した場合、トッププレートにおける液晶パネルの表面だけに着色層を設け、他の部分と異なる色彩とすることにより、加熱調理器において、液晶パネルの表示を目立たせることができる。
【0017】
本発明は、上記液晶表示装置を備え、透光板がトッププレートを含む加熱調理器としても成立する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液晶表示装置では、ランニングコストや製品単価の上昇を生じず、透光板上に現われる表示が自然な色調となる。また、本発明の加熱調理器では、液晶表示装置の作用効果を加熱調理器で実現し、バックライトユニットの光源が消灯している時にトッププレートの一体感を演出して美感を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例1の加熱調理器具の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例1の加熱調理器具における液晶表示装置の模式断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の液晶表示装置のバックライトユニットの断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の液晶表示装置における波長と分光放射輝度との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、比較例の液晶表示装置における波長と分光放射輝度との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施例2の加熱調理器具における液晶表示装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例1)
実施例1の液晶表示装置は、
図1に示すように、加熱調理器1に設けられている。この加熱調理器1は、本体ケース3の上方にトッププレート5が設けられている。トッププレート5は無色透明な無機ガラス製である。トッププレート5の上面に3個のコンロバーナ7a~7cが設けられている。また、本体ケース3にはグリル庫9が設けられ、グリル庫9内には図示しないグリルバーナが組み込まれている。トッププレート5の中央前寄りの位置に液晶表示装置11が一体的に設けられている。
【0022】
この液晶表示装置11は、
図2に示すように、本体ケース3の支持壁3aに支持されている。液晶表示装置11は、透光板21と、液晶パネル23と、集光シート25と、拡散シート27と、バックライトユニット29と、反射シート31とからなる。なお、
図2においては、透光板21と液晶パネル23との間に設けられるシール材や遮熱板を省略している。また、支持壁3aは、加熱調理器1の送風装置を構成している。
【0023】
透光板21は、トッププレート5とフィルム21aとからなり、光を透過可能である。トッププレート5は加熱調理器1の天板を兼ねている。フィルム21aは、トッププレート5の背面かつ液晶パネル23の表面に設けられ、赤色を帯びた黒色に着色されている。トッププレート5がクリア板に相当し、フィルム21aが着色層に相当する。
【0024】
液晶パネル23は、トッププレート5及びフィルム21aの背面に設けられ、加熱調理器1の動作情報や、設定入力スイッチにより設定された加熱条件を表示する。集光シート25は、バックライトユニット29が照射する光を集め、フィルム21aに対して照射する。拡散シート27は、バックライトユニット29が照射する光を拡散し、集光シート25に対して照射する。
【0025】
バックライトユニット29は拡散シート27の背面に設けられたエッジライト方式のものである。このバックライトユニット29は、
図3に示すように、導光板29aと、導光板29aの一縁に設けられた保持部29bとを有している。保持部29bには、導光板29aに向けて光を照射可能な第1LED29c及び第2LED29dが保持されている。第1LED29cと第2LED29dとは、それぞれ複数個が互い違いに一列に配置されている。市販のバックライトユニットでは複数個の第1LED29cだけが保持部に設けられているが、このバックライトユニット29では、複数個の第2LED29dが追加されている。保持部29bにはコネクタ29eも設けられており、コネクタ29eを図示しない制御装置及び電源に接続することにより、第1LED29c及び第2LED29dが点灯するようになっている。
【0026】
各第1LED29cは通電によって可視波長域の光を照射可能である。各第1LED29cが第1光源に相当する。各第2LED29dは通電によって特定波長420~480nmの特定光である青色に発光する。各第2LED29dが第2光源に相当する。
【0027】
この液晶表示装置11では、透光板21がフィルム21aによって赤色を帯びた黒色に着色され、各第1LED29cの消灯時に液晶パネル23の表示を隠蔽できる。このため、加熱調理器1の操作者は、液晶パネル23の表示がトッププレート5上に現われていなければ、主電源がOFFとされていることを確認でき、液晶パネル23の表示がトッププレート5上に現われておれば、主電源がONとされていることを確認できる。
【0028】
また、この液晶表示装置11では、バックライトユニット29が第1LED29cだけでなく、第2LED29dも有することから、青色を青色以外の光よりも強く照射する。このため、フィルム21aの色彩によって420~480nmの青色の特定光が吸収されても、その特定光が第2LED29dの発光によって補われ、トッププレート5上に現われる表示が自然な色調となる。
【0029】
しかも、この液晶表示装置11では、透光板21に光学フィルタを設けるようなことはしないため、表示が暗くなることもない。バックライトユニット29は、通常の第1LED29cの他に複数個の第2LED29dを追加したものではあるが、各第2LED29dの追加では、ほとんど消費電力が上がることはなく、発熱対策を行なう必要もない。
【0030】
この液晶表示装置11における波長と分光放射輝度(W/Sr/m
2)との関係を
図4に示す。一方、市販のバックライトユニットを用い、他の構成は実施例1の液晶表示装置11と同様とした比較例の液晶表示装置を用意した。この比較例の液晶表示装置における波長と分光放射輝度との関係を
図5に示す。
図4及び
図5において、A線が光学フィルタや透光板を介さない液晶パネル23における関係を示し、B線は、透光板21に光学フィルタを設けただけの従来技術の場合の関係を示している。C1線は実施例1の液晶表示装置における関係を示し、C2線は比較例の液晶表示装置における関係を示している。
【0031】
図5に示すように、A線とC2線との相違から、フィルム21aの色彩によって420~480nmの青色の特定光が吸収されていることがわかる。しかしながら、実施例1の液晶表示装置11では、
図4のC1線で示されるように、その特定光が第2LED29dの発光によって補われていることがわかる。一方、比較例の液晶表示装置では、
図5のC2線で示されるように、その特定光は何ら補われておらず、表示が自然の色彩にはなっていないことがわかる。また、従来技術の場合、B線で示されるように、全ての波長を平均化しているが、全体的に暗くなっていることがわかる。
【0032】
したがって、実施例1の液晶表示装置11では、ランニングコストや製品単価の上昇を生じず、透光板21上に現われる表示が自然な色調となることがわかる。また、実施例1の加熱調理器1では、液晶表示装置11の作用効果によって操作者の使い勝手が向上することがわかる。
【0033】
また、この加熱調理器1では、透光板21が無色透明なトッププレート5とフィルム21aとからなるため、透光板21に容易に色彩を着色することができる。また、この加熱調理器1では、トッププレート5における液晶パネル23の表面だけにフィルム21aを設け、他の部分と異なる色彩としているため、液晶パネル23の表示を目立たせることができる。
【0034】
(実施例2)
実施例2の加熱調理器1及びその液晶表示装置12は、
図6に示すように、トッププレート6だけを透光板21としている。トッププレート6は有色透明であり、透光板21が実施例1のようなフィルム21aを有さない。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0035】
この加熱調理器1及びその液晶表示装置12においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。このため、クリア板は無色透明に限定されず、有色透明であってもよい。
【0036】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上記実施例1、2では、加熱調理器1に液晶表示装置11、12を設けたが、他の装置に液晶表示装置11、12を設けることができることはいうまでもない。また、加熱調理器1に液晶表示装置11、12を設ける場合でも、加熱調理器1の透光板21がトッププレート5とは別体であってもよい。また、フィルム21a等の着色層も赤色を帯びた黒色以外の色彩で着色され得る。実施例1、2では、透光板21やフィルム21aが赤色を帯びた黒色として、特定波長が420~480nmの第2LED29dを追加したが、第2LED29dは透光板21やフィルム21a等の着色層の色彩に応じて適宜変更され得る。バックライトユニット29はエッジライト方式に限定されず、直下方式のものであってもよい。実施例1、2では、第1光源が可視波長域の光を照射し、第2光源で特定光を照射しているが、第1光源が可視波長域の光を照射する際に、特定光を特定光以外の光よりも強く照射するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、液晶表示装置を用いた種々の装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
21…透光板
23…液晶パネル
29c…第1光源(第1LED)
29…バックライトユニット
11、12…液晶表示装置
29d…第2光源(第2LED)
5、6…クリア板(トッププレート)
21a…着色層(フィルム)
1…加熱調理器