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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】温室出入口用補強閂装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
A01G9/14 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019097685
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020191788
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 平成31年 4月15日 発行者 渡辺パイプ株式会社 刊行物 SEDIA 北海道 2019>2020 渡辺パイプの強いハウス勉強会 選べる!「強いハウス」読本 第3,4頁(外、添付証明書B)~T)に記載の通り) 発行日 平成31年 4月22日 発行者 渡辺パイプ株式会社 刊行物 2019年度版総合カタログ「Rakuchin(日本の農業・施設園芸総合カタログ 2019)」第16,17,66,67頁
(73)【特許権者】
【識別番号】000218362
【氏名又は名称】渡辺パイプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 茂喜
(72)【発明者】
【氏名】武田 雅史
【審査官】小笠原 かれん
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-093774(JP,A)
【文献】登録実用新案第3127022(JP,U)
【文献】かんぬき|ドア|佐藤産業|農業資材・施設園芸などハウス資材の製造・販売|製品情報,2019年02月22日,https://web.archive.org/web/20190222161723/http://www.satohnet.co.jp/products/door/365/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14-9/26
E05C 21/02
E05C 19/00
E05B 65/00
E05B 65/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱部材係止部と、閂受け部材と、閂棒部材を備えた温室出入口用補強閂装置であって、
柱部材係止部は、角形の柱の外形に沿う形状である四角の環状の柱取り付け部と、閂受け部材を挿入する挿入部を備え、
柱取り付け部には、一面に蝶番と、蝶番と反対面にボルト穴を有するフランジが妻部に平行に設けられており、
閂受け部材の挿入部は、蝶番と同じ面で妻部側の角部側に偏って設けられており、
閂受け部材は、受け部と脚部を備え、
閂受け部材の脚部は柱部材係止部の挿入部に回動又は着脱自在に装着され、閂棒部材が閂受け部材の受け部に装着されることを特徴とする温室出入口用補強閂装置。
【請求項2】
閂受け部材は、「N」形、逆「h」形あるいは「P」形であることを特徴とする請求項1記載の温室出入口用補強閂装置。
【請求項3】
閂棒部材は、先端部側に屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の温室出入口用補強閂装置。
【請求項4】
温室の妻側に設置された出入口の両側に立設されている角柱に閂受け部材の挿入部が妻部側になるように環状の柱取り付け部を取り付け、挿入部に閂受け部材の脚部を挿入し、受け部に閂棒部材が装着される請求項1~3のいずれかに記載の温室出入口用補強閂装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室の出入口の補強に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
栽培ハウスは、施設農業として、注目されており、普及している。
特に、日本農業の抱える構造的課題、農業の再生、競争力強化が農業に求められている。農商工連、六次産業化、TPP、企業の参入など変革点にある。市場から農業の産業化として、品質の安定化、出荷数量の安定化、周年供給など要素の充足が求められている。農産物を生産する供給サイドから見ると、このような3要素を充足することができれば、安定した売り先(市場)を確保でき、経営の安定化を計ることができるようになって、家業から事業へ転換でき、産業として成長することが期待できる。
ハウス栽培は、天候変動の影響を緩和して、栽培環境をコントロールし、計画栽培、安定出荷の手段として有効である。農業の課題を解決する技術的に有効な手段の1つである。
【0003】
ハウスの例としては、丸パイプをアーチ型に曲げたパイプフレームを60~100cm程度の間隔で多数立列設し、水平材や斜材を組み合わせた骨組みをビニールで覆った栽培用の温室がある。
自然災害による農業用ハウスの被害状況は、風害83%、雪害8%、その他9%という統計もある。そして、風害を受ける農業用ハウスの部位は、フィルム41%、屋根部13%、妻部13%、側面部14%、ハウス全体19%となっており、屋根や妻部などの躯体はほぼ同じ割合の被害となっている。
パイプハウスなどの栽培用温室は、大型化しており、また、強風の風害による倒壊などが発生している。温室の出入用の出入口は妻側に設けられることが多く、出入口は可動部であり、風圧を受けて破られることもある。温室は一か所が破られると、その部分から風が入り込み、内部風圧が高まり、浮力が大きくなって、倒壊しやすくなる。あるいは、被覆材に穴などがあると、そこから破れが大きくなる。
特許文献1(特開2018-93774号公報)には、上方が開放された略コの字状の閂棒の保持部が形成された保持金具本体の側部の円柱パイプに固定用の取り付け金具を設けたビニールハウスの閂装置が開示されている。この発明は、コ字状の閂棒の受け部が、不使用時でも温室内に張り出した状態となっており、非常時用である閂装置が、狭い温室内の通常業務の邪魔になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-093774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、着脱が容易で邪魔にならない風害対策用の温室出入口の補強用閂装置を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.柱部材係止部と、閂受け部材と、閂棒部材を備えた温室出入口用補強閂装置であって、
柱部材係止部は、角形の柱の外形に沿う形状である四角の環状の柱取り付け部と、閂受け部材を挿入する挿入部を備え、
柱取り付け部には、一面に蝶番と、蝶番と反対面にボルト穴を有するフランジが妻部に平行に設けられており、
閂受け部材の挿入部は、蝶番と同じ面で妻部側の角部側に偏って設けられており、
閂受け部材は、受け部と脚部を備え、
閂受け部材の脚部は柱部材係止部の挿入部に回動又は着脱自在に装着され、閂棒部材が閂受け部材の受け部に装着されることを特徴とする温室出入口用補強閂装置。
2.閂受け部材は、「N」形、逆「h」形あるいは「P」形であることを特徴とする1.記載の温室出入口用補強閂装置。
3.閂棒部材は、先端部側に屈曲部が形成されていることを特徴とする1.又は2.記載の温室出入口用補強閂装置。
4.温室の妻側に設置された出入口の両側に立設されている角柱に閂受け部材の挿入部が妻部側になるように環状の柱取り付け部を取り付け、挿入部に閂受け部材の脚部を挿入し、受け部に閂棒部材が装着される請求項1~3のいずれかに記載の温室出入口用補強閂装置。
【発明の効果】
【0007】
着脱が容易で邪魔にならない風害対策用の温室出入口の補強用閂装置を開発することができた。
本発明は、柱部材係止部と閂受け部材が別体とされており、閂受け部材を柱係止部に回動又は着脱自在とすることによって、閂受け部材が飛び出ない位置に退避あるいは取り外して保管することができて、温室内の作業の邪魔にならない温室出入口の補強用閂装置である。
本発明の補強用の閂装置は、妻側の角柱に特に適している。柱取り付け部が四角となって固定性が高まり、閂受け部材の取り付け位置を柱の側部に設けることにより、温室内の障害とならず、閂受け部材も不使用時は妻側に平行回動して、温室内に飛び出ない位置にできる。
閂受け部を「P」形にすることによって、風の衝撃によって、閂棒の跳ね抜けが防止できる。
閂棒部材の先端側が屈曲することによって、屈曲部が下方に向き、棒が横ずれしても閂受けから抜け落ちることを防止できる。
【0008】
本発明の温室出入口用補強閂装置を温室の妻側の出入口の左右にある柱に設置することによって、強風の風圧に対する弱点となりやすい、妻側の出入口部を必要時に臨機応変に補強対応できる。試験例では、本発明の補強閂装置を後付けした場合、耐風強度を30%向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】補強閂装置部品構成を示す図
図2】柱部材係止部と閂受け部の構成と組立を示す図
図3】柱部材係止部と閂受け部を妻柱に取り付け状態を示す図
図4】柱部材取り付け状態を多視点から示す図
図5】温室に設置した温室用補強閂装置を示す図
図6】閂棒部材の例を示す図
図7】栽培用温室の妻面を示す図
図8】閂受け金具の従来例(特許文献1)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、妻側の出入口の補強用の閂装置である。
妻側出入口の補強用の閂装置は、柱部材係止部と、閂受け部材と、閂棒部材を備えている。
柱部材係止部は、環状の柱取り付け部と、閂受け部材を挿入する挿入部を備えている。閂受け部材は、受け部と脚部を備えている。閂受け部材の脚部は柱部材係止部の挿入部に回動又は着脱自在に装着される。閂棒部材は左右に設けられている閂受け部材間にかけ渡される棒状部材である。
出入口は、可動部であり、風圧に弱い部分となって、強風時にこの部分から風が入り込むと、温室内部の風圧が高くなって、吹き上げられたり、ピンホールから被覆シートの破れが拡大するなどの被害が発生しやすい。特に、温室の大型化に伴い、トラクターが出入りできるような大きさの出入口が妻側に設けられているので、本発明の閂装置は、後付けもできるので、非常時にも有効である。
【0011】
図を参照して、本発明の、妻側の出入口の補強用の閂装置の実施態様を説明する。
図1は、補強用の閂装置を構成する部品を示す。
構成部品は、二つの柱部材係止部1、二本の閂受け部材2、一本の閂棒部材3の3種類から構成される。
柱部材係止部1は、柱の外形に沿う形状の柱取り付け部11を備えている。本例では、柱が角材なので、四角の枠となっている。この四角の柱取り付け部11は、2つの部材を開閉可能に蝶番14で結合されており、蝶番の反対側にフランジ13が設けられ、フランジ13には、ボルト穴が形成されている。また、蝶番14が設けられている面には閂受け部材2の脚部が挿入できる挿入部12が設けられている。挿入部12は、角部に偏位した箇所に設けること好ましい。これは、挿入した脚部を中心に閂受け部材2が回動した場合、柱に当接して、周り止め機能を発揮することになる。この例では、挿入部12を設けるために蝶番14も中央よりも他方に偏って設けられている。
フランジのボルト穴に挿入されるボルト41とナット42を備えている。
【0012】
閂受け部材2は、図示の例では、閂棒部材3を受ける水平の受け部21、先端側に立ち上がり部23、後端側に脚部22が設けられている。形状的には「N」型の閂受け部材と言うことができる。図示の例では丸棒材の側を別方向屈曲して形成されており、両先端側の屈曲部は同形状であり、先端側の立ち上がり部23と後端側の脚部22の違いはなく、両用である。
閂受け部材2は、本発明では、挿入部12に挿入できる脚部を有することと、閂棒が脱落しないような凹部や環状部を備えていることが必要である。そのような閂受け部材としては、前述の「N」型のほか、逆「h」型、「P」型などがある。
挿入部に挿入される脚部は、着脱して分離できるか回転させて邪魔にならない位置に退避できることが望ましく、回転用としては円柱が適しており、着脱式では、円柱や多角形の棒材を使用することができる。
【0013】
閂棒部材3は、出入口の両側に設けられた閂受け部材2、2間にかけ渡される長さを備えた棒部材である。角材あるいは円柱材などが利用できる。
図示の例では、転がらないように角材を使用している。閂受け部が円形の環になっているような場合には、丸棒材が適している。
図6に閂棒部材の例を示している。(a)は図1に示す角棒の閂棒部材であり、(b)は、両端側の折れ曲がり自在の先端屈曲部31が形成された閂棒部材であり、(c)は先端に固定した屈曲部を形成した閂棒部材である。先端屈曲部31は、棒部材の先端側が軸支されている、自重によって垂れ下がるように屈曲する構成である。閂棒部材3は、風の振動によって、横ずれする恐れがあるので、先端部分を垂れ下がるようにすることにより、横ずれして棒部材が閂受け部材から脱落することを防止できる。閂棒部材は、例えば50mm角の角材を使用することができる。材質は、金属パイプや木材を使用することができる。
【0014】
図2は、柱部材係止部1と閂受け部材2の構成を示している。(a)はバラバラの状態を示し、(b)は柱部材係止部1に閂受け部材2を組み付けた状態を示している。
(a)は、図1に示した状態と同じである。柱部材係止部1には、四角の環状形を構成する柱取り付け部11があり、開放側面にフランジ13があって、フランジ13の反対側の面に蝶番14と挿入部12が設けられている。蝶番14と挿入部12となる穴部材は、互いに他の角部に偏って設けられている。
(b)は、温室の内部側からみて、閂棒受けの右側であって、柱部材係止部1の挿入部12に閂受け部材2の脚部を挿入した状態を示している。出入口がフランジ13側になるので、フランジ13と閂受け部材2の挿入部12と蝶番14は、妻部に平行となり、温室内部に飛び出すことはない。挿入部12に挿入された閂受け部材2は、図示していない柱に当接するので右回転はできず、左回転させて、不使用時は妻部に平行にして退避あるいは抜いて保管することができ、邪魔になることがない。そして、柱部材係止部1は、着脱自在であるので、後付けでも出入口の補強ができる。
図3(a)は、模擬の妻柱52に柱部材係止部1を取り付けた状態で、挿入部12側を示している。図3(b)は図2(b)と同様であって、閂受け部材2を挿入した状態を示している。挿入部12と蝶番14が柱の左右に分かれている位置関係が示され、閂受け部材2の右回動が柱の側面によって規制されることも示されている。
図4は、模擬の妻柱52に柱部材係止部1を取り付けた状態を各視点から示した図面である。(a)は挿入部側からみた柱取り付け状態、(b)はフランジ側から見た柱取り付け状態、(c)は挿入部側から見た柱取り付け状態の斜視図、(d)は閂受け部を挿入した状態の外側側図、(e)は閂受け部材を挿入した状態の内側斜視図をそれぞれ示している。
【0015】
図5は、温室5の妻側51に設置した温室用補強閂装置100を示している。(a)補強用閂装置を設置した出入口、(b)妻柱に閂受け部材を取り付けた状態、(c)閂棒部材を設置した状態を示している。
出入口(扉)6の両側にある妻柱52、52に柱部材係止部1を取り付け、閂受け部材2を挿入して、閂棒部材3を掛け渡して、風に対する出入口の補強を行っている。図5(b)(c)は、右側の妻柱の取り付け状態を拡大して示している。フランジと挿入部12が妻に平行になっており、柱部材係止部1が温室内面側に面している面は平滑であり、閂受け部材2を取り外すか、あるいは回動することによって、温室の室内側に飛び出る部材がなく、温室内作業の弊害になることがない。
本発明の温室用補強閂装置100は、強風が予想されるときなどに、内側から閂をかけて、外から当たる風によって、扉などの出入口が破られることを防止することができる。試験的には、温室用補強閂装置を設置することにより耐風強度を30%向上させることができた。
【符号の説明】
【0016】
1 柱部材係止部
11 柱取り付け部
12 挿入部
13 フランジ
14 蝶番
15 ボルト穴
2 閂受け部材
21 受け部
22 脚部
23 立ち上がり部
3 閂棒部材
31 先端屈曲部
41 ボルト
42 ナット
5 温室
51 妻側
52 妻柱
6 出入口(扉)
100 温室出入口用補強閂装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8