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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230310BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230310BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20230310BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230310BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/064 Z
B23K26/382
H05K3/00 M
G02B26/10 104Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019111802
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2020006438
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-02-23
(31)【優先権主張番号】P 2018123796
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 征識
(72)【発明者】
【氏名】加藤 充
(72)【発明者】
【氏名】菊地 潤
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-036667(JP,A)
【文献】特開2005-161329(JP,A)
【文献】特開2008-182033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
H05K 3/00
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
与える駆動信号の周波数と振幅を変えることにより入射されたレーザパルスの偏向方向と出射エネルギーを変えることができる光偏向部と、各周波数に対応する振幅の駆動信号を与えるための制御部とを有し、光偏向部から出射されたレーザパルスを被加工物に導き照射することにより被加工物を加工するようにしたレーザ加工装置において、
前記制御部は前記光偏向部の前記出射エネルギーが最大となる振幅において当該出射エネルギーの前記入射されたレーザパルスのエネルギーに対する比率のなかで最低となる比率に近くなる振幅を前記各周波数に対応する振幅とすることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記入射側エネルギーを検出する第1の検出部と前記出射エネルギーを検出する第2の検出部とを備え、前記比率は前記第1の検出部と前記第2の検出部とからの検出結果から求められていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工装置において、
前記制御部は、周波数毎に前記出射エネルギーが最大となる振幅において当該出射エネルギーの前記第2の検出部で検出されたエネルギーの前記第1の検出部で検出されたエネルギーに対する比率を求める第1のステップと、前記比率のなかで最低となる比率を求める第2のステップと、周波数毎に前記比率が前記最低比率に近くなる振幅を当該周波数に対応する振幅と定める第3のステップとを行うことにより、前記各周波数に対応する振幅の駆動信号を与えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項2あるいは3に記載のレーザ加工装置において、
前記第2の検出部は前記被加工物に実際に照射されるレーザパルスのエネルギーを検出することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載のレーザ加工装置において、
前記光偏向部から出射されたレーザパルスをさらに偏向する第2の光偏向部が設けられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のレーザ加工装置において、
前記制御部は周波数毎に対応する振幅を予め登録しておくための制御テーブルを備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
与える駆動信号の周波数と振幅を変えることにより入射されたレーザパルスの偏向方向と出射エネルギーを変えることができる光偏向部に各周波数に対応する振幅の駆動信号を与え、光偏向部から出射されたレーザパルスを被加工物に導き照射することにより被加工物を加工するようにしたレーザ加工方法において、
前記光偏向部の前記出射エネルギーが最大となる振幅において当該出射エネルギーの前記入射側エネルギーに対する比率のなかで最低となる比率に近くなる振幅を前記各周波数に対応する振幅として与えることを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント基板にレーザを使用して穴あけを行うためのレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ発振器を用いたレーザ加工装置において、動作速度が速い音響光学素子(以下AODと略す)を用いてレーザ照射位置を変えるものが知られている。このAODは、AOD制御部から与えられるRF信号により制御されるが、偏向角度はRF信号の周波数により、また出射エネルギーはRF信号の振幅により決定される。
AODは偏向角度によって出射エネルギーが変わる性質をもっているので、例えば特許文献1には、偏向角度が変わっても出射エネルギーを一定に保つために、RF信号の周波数に対応した振幅とするための制御情報を登録しておく制御テーブルを予め作成しておき、これに基づき、AODを制御する技術が開示されている。
【0003】
従来の前記制御テーブルの作成方法の一例とその使用方法は以下の通りである。
レーザ発振器からのレーザパルスをAODに与えて偏向させ、その時の出射エネルギーを検出する。この動作を偏向角度を決定するRF信号の周波数毎に繰返し、そのなかでの出射エネルギーのうちの最小レベルを検出しておく。次に、偏向角度を決定するRF信号の周波数毎に、最小レベルの出射エネルギーを出力するようにRF信号の振幅を決めるための制御情報を登録しておくための制御テーブルを作成し、加工動作を制御する全体制御部内のメモリに登録しておく。
プリント基板等のワークに実際に穴あけを行う場合、周波数に応じた振幅を決定するためのデータが前記制御テーブルから読み出され、AODの偏向角度と出力エネルギーが制御される。
【0004】
前記の如き従来の制御テーブルの作成方法は、レーザ発振器から出力されるレーザパルスのエネルギーが一定であることを前提としたものである。制御テーブルの作成段階で、ある周波数のRF信号を与えている時、レーザ発振器から出力されるレーザパルスのエネルギーがたまたま上昇あるいは低下したとしても、それを基準にして制御テーブルが作成されることになる。
この結果、正しくない制御テーブルによってAODが制御されることになり、加工される穴の径が小さかったり、穴が貫通しない等、穴品質が悪くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5122773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、AODのための制御情報の作成段階でレーザ発振器から出力されるレーザパルスのエネルギーが変化しても、それに左右されることを抑え、穴品質を確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願において開示される代表的なレーザ加工装置は、与える駆動信号の周波数と振幅を変えることにより入射されたレーザパルスの偏向方向と出射エネルギーを変えることができる光偏向部と、各周波数に対応する振幅の駆動信号を与えるための制御部とを有し、光偏向部から出射されたレーザパルスを被加工物に導き照射することにより被加工物を加工するようにしたレーザ加工装置において、前記制御部は前記光偏向部の前記出射エネルギーが最大となる振幅において当該出射エネルギーの前記入射されたレーザパルスのエネルギーに対する比率のなかで最低となる比率に近くなる振幅を前記各周波数に対応する振幅とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、AODのための制御情報の作成段階でレーザ発振器から出力されるレーザパルスのエネルギーが変化しても、それに左右されることを抑え、穴品質を確保できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1となるレーザ加工装置におけるテーブル作成部の動作を示す概略フローチャートである。
図2】本発明の実施例1となるレーザ加工装置の構成ブロック図である。
図3図2のレーザ加工装置におけるガルバノ偏向部とAOD偏向部の役割を説明するための図である。
図4図2のレーザ加工装置におけるRF信号の例を示す図である。
図5図2のレーザ加工装置における一つのワークテーブルの内容を示す図である。
図6図2のレーザ加工装置におけるもう一つのワークテーブルの内容を示す図である。
図7図2のレーザ加工装置における制御テーブルの内容を示す図である。
図8】本発明の実施例2を説明するための図である。
図9】本発明の実施例3を説明するための図である。
図10】本発明の実施例4を説明するための図である。
図11】本発明の実施例5を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
実施例1
図2は、本発明の実施例1となるレーザ加工装置のブロック図である。各構成要素や接続線は、主に本実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、レーザ加工装置として必要な全てを示している訳ではない。
【0011】
ここでのレーザ加工装置は、プリント基板に穴あけを行うものであるが、本発明はこれに限らず、ビームスプリッタ等で反射と透過に分光し、被加工物の複数個所に加工を施すレーザ加工装置でもよい。
図2において、2は加工すべきプリント基板が載置されるテーブル、3はレーザパルスL1を発振するレーザ発振器、4はレーザ発振器3から出射されたレーザパルスL1を反射と透過に分光するビームスプリッタ、6はビームスプリッタで反射されたレーザパルスL1をAODを用いて2次元方向に偏向させるAOD偏向部、7はAOD偏向部6において加工方向へ偏向されず透過したレーザパルスL3を吸収するダンパ、8はAOD偏向部6において加工方向へ偏向されたレーザパルスL2をガルバノミラーを用いて2次元方向に偏向させるガルバノ偏向部、9はガルバノ偏向部8からのレーザパルスをプリント基板の穴あけ位置に照射する集光レンズである。
なお上記のAOD偏向部6は、入射光をX方向に偏向させるAODと当該AODの出射光をY方向に偏向させるAODの二つから構成され、またガルバノ偏向部8も全く同様の構成である。
【0012】
このレーザ加工装置においては、テーブル2を移動させることにより、ガルバノ偏向部8の走査領域を順次移動させていくが、ガルバノ偏向部8は、レーザパルスを走査領域の中の特定位置に位置付けするのに用いられ、AOD偏向部6は当該特定位置を中心とする周辺位置に高速に位置付けするのに用いられる。特定位置と周辺位置との関係を図3に示す。図3において、20は特定位置を示し、21は周辺位置となる領域を示す。
例えば、レーザを特定位置20に位置付けして照射した後、さらに周辺位置に位置付けして照射を行うようにすれば、トレパニング加工が実現できる。
【0013】
図2に戻るが、10は装置全体の動作を制御するための全体制御部であり、例えばプログラム制御の処理装置を中心にして構成され、その中の各構成要素や接続線は、論理的なものも含むものとする。また各構成要素の一部はこれと別個に設けられていてもよい。また、全体制御部10はここで説明するもの以外の制御機能を有し、図示されていないブロックにも接続されているものとする。
【0014】
全体制御部10の内部には、レーザ発振器3でのレーザパルスL1の発振と減衰を指令するためのレーザ発振指令信号Sを出力するレーザ発振制御部11、AODを制御するための制御情報を登録しておく制御テーブル12、制御テーブル12の内容に従ってAODを制御するためのAOD駆動信号Dを出力するAOD制御部13、ガルバノ偏向部を制御するためのガルバノ制御信号Gを出力するガルバノ制御部14が設けられている。
AOD制御部13とガルバノ制御部14は、それぞれX系とY系の二つのAOD偏向部6、ガルバノ偏向部8を制御する。制御テーブル12は一つしか図示していないが、X系とY系の二つ設けられている。
【0015】
AOD制御部13から出力されるAOD駆動信号DはRF信号から成り、AOD偏向部6の偏向角はこのRF信号の周波数によって変化させ、また出射エネルギーはこのRF信号の振幅レベルによって変化させる。
図4にAOD駆動信号Dの例を示すが、AOD駆動信号Da、Dbでは、それぞれ周波数がfa、fb、振幅がAa、Abである。周波数fbはfaよりも高く、振幅AbはAaよりも大きい。
AOD駆動信号Dbが印加された時は、AOD駆動信号Daが印加された時よりもAOD偏向部6での偏向角度と出射エネルギーが大きくなる。
制御テーブル12は、後述するが、AODに与えるRF信号の周波数毎に、その時与える振幅を決定するためのデータがメモリに登録されているものである。
【0016】
ここでのレーザ加工装置は、本発明に基づいて制御テーブル12を作成するために、以下のような構成になっている
図2に示すように、ビームスプリッタ4を透過したレーザパルスの平均パワーに対応した検出信号を出力するサーマルセンサ16と集光レンズ9から出射されたレーザパルスL4の平均パワーに対応した検出信号を出力するサーマルセンサ17が取付けられている。サーマルセンサ16と17は、レーザパルスの平均パワーを熱として検出するためのものであり、これらの検出信号はテーブル作成部18に入力されるようになっている。
【0017】
なお、ここでは、レーザパルスのエネルギーを検出するのに、サーマルセンサを使用して平均パワーを検出する方式を採用しているが、他の方式によりエネルギーを検出するようにしてもよい。
また、ここでは、レーザ発振器3から出射されたレーザパルスL1のエネルギーをビームスプリッタ4を介して検出しているが、他の方式によりレーザパルスL1のエネルギーを検出するようにしてもよい。
【0018】
以下、テーブル作成部18による制御テーブル12の作成方法を説明する。
X系の制御テーブル12を作成する場合、Y系のAODに与えるRF信号の周波数は固定しておき、AOD制御部13によりX系に与えるRF信号の周波数を順次切替えられるようにしておく。一方、Y系の制御テーブル12を作成する場合は、X系のAODに与えるRF信号の周波数は固定しておき、AOD制御部13によりY系に与えるRF信号の周波数を順次切替えられるようにしておく。
【0019】
また、X系の制御テーブル12を作成する場合、X系のAODに与えるRF信号の周波数は固定しておき、RF信号の振幅を順次切替えられるようにしておく。一方、Y系の制御テーブル12を作成する場合、Y系のAODに与えるRF信号の周波数は固定しておき、RF信号の振幅を順次切替えられるようにしておく。
【0020】
ガルバノ偏向部8はAOD偏向部6からのレーザパルスL2をその走査領域の中心付近、すなわち集光レンズ9の中心付近に位置づけするようになっている。この方が、集光レンズ9における入射位置による透過率の変動による悪影響を避けることができる。
X系に与えるRF信号の周波数を順次切替えることにより、レーザ照射位置は図3におけるX方向に移動し、またY系に与えるRF信号の周波数を順次切替えることにより、レーザ照射位置は図3におけるY方向に移動する。
【0021】
図1は、テーブル作成部18の動作を示す概略フローチャートである。
X系の制御テーブル12を作成する場合を説明するが、Y系の制御テーブル12を作成する場合も同じである。
図3におけるX方向の各位置x1、x2、x3・・・に位置付けする場合のX系のAODに与えるそれぞれのRF信号の周波数をf1、f2、f3・・・とする場合、RF信号の周波数をf1、f2、f3・・・と順次切替えていき、それぞれの場合のサーマルセンサ16、17の検出信号がテーブル作成部18に送られる。
【0022】
本実施例では、ビームスプリッタ4を透過してサーマルセンサ16で検出されるレーザパルスL1の平均パワーは、ビームスプリッタ4の透過率との関係で、レーザパルスL1の平均パワーを直接検出する場合に比較して1/100となるものとする。
そこで、テーブル作成部18はサーマルセンサ16による検出値を100倍することによりレーザパルスL1の平均パワーαを求め、サーマルセンサ17により検出されたレーザパルスL4の平均パワーβとのパワー比率γ(β/α)を算出してワークテーブルW1に登録する(図1におけるステップS1)。ワークテーブルW1の内容を図5に示す。
【0023】
なお、前記ステップS1の動作を行う場合、AODに与えるRF信号の振幅は出射エネルギーが最大になる時のものとする。これは、RF信号の周波数と振幅と最大出射エネルギーとの関係を予め求めておき、それに基づきAODに与える振幅を決めればよい。
【0024】
図5のワークテーブルW1において、u-α1、u-α2、u-α3・・・はそれぞれRF信号の周波数f1、f2、f3・・・における平均パワーα、またu-β1、u-β2、u-β3・・・はそれぞれRF信号の周波数f1、f2、f3・・・における平均パワーβ、またu-γ1、u-γ2、u-γ3・・・はそれぞれRF信号の周波数f1、f2、f3・・・におけるパワー比率γである。
【0025】
また、ここでのワークテーブルW1の内容はデータ相互の論理的関係を説明するためのものであり、例えば、RF信号の周波数f1、f2、f3・・・の各々毎にX方向の位置x1、x2、x3・・・を示すデータが必ずしも登録されている訳ではない。以下に説明するワークテーブルや制御テーブルでも同様とする。
【0026】
次に、ワークテーブルW1の中のパワー比率u-γ1、u-γ2、u-γ3・・・のなかで、一番低いパワー比率(以下最低パワー比率と呼ぶ)を抽出する(図1におけるステップS2)。これは、ここではX方向の位置xnに位置付けする場合の周波数fnの時のu-γnとする。
次に、RF信号の周波数をX方向の位置x1に位置付けする場合の周波数f1に固定しておき、RF信号の振幅を制御し得る範囲で区切ってa1、a2、a3・・・と順次切替えていき、それぞれの場合の平均パワーα、平均パワーβ、両者のパワー比率γ(β/α)をワークテーブルW2に登録する(図1におけるステップS3)。ワークテーブルW2の内容を図6に示す。
【0027】
図6のワークテーブルW2において、v-α1、v-α2、v-α3・・・はそれぞれRF信号の振幅がa1、a2、a3・・・における平均パワーα、またv-β1、v-β2、v-β3・・・はそれぞれRF信号の振幅がa1、a2、a3・・・における平均パワーβ、またv-γ1、v-γ2、v-γ3・・・はそれぞれRF信号の振幅がa1、a2、a3・・・におけるパワー比率γである。
【0028】
次に、ワークテーブルW2の中のパワー比率v-γ1、v-γ2、v-γ3・・・のなかで、前記最低パワー比率u-γnに一番近いパワー比率を抽出する。これは、ここではRF信号の振幅がamの時のパワー比率v-γmとする。そして、X方向の位置x1に位置付けするためにRF信号の周波数f1を与える時の振幅としてamを制御テーブル12に登録する(図1におけるステップS4)。
【0029】
次に、X方向の他の位置x2 、x3・・・に位置付けするための周波数f2、f3・・・の各々毎でもワークテーブルW2を作成する等を行って前記ステップ3~5を行い、その時の振幅an、ap、as・・・を制御テーブル12に登録する(図1におけるステップS5)。このようにして完成した制御テーブル12の内容を図7に示す。
【0030】
以上のようにして作成した制御テーブル12は、以下のように使用する。X系の制御テーブル12を使用する場合を説明するが、Y系の制御テーブル12を使用する場合も同様である。
図2において、X方向の位置x1に位置付けするためのデータがAOD制御部13に与えられると、AOD制御部13は制御テーブル12からAODに与えるRF信号の周波数f1と振幅amを読出し、AOD偏向部6に与える。
これにより、AOD偏向部6においてはRF信号の周波数f1と振幅amに対応する偏向角度と平均パワーのレーザパルスL2がガルバノ偏向部8に出射される。X方向の他の位置x2 、x3・・・に位置付けする場合も同じである。
【0031】
以上の実施例によれば、レーザ発振器3からから出射されたレーザパルスL1の平均パワーαと集光レンズ9から出射されたレーザパルスの平均パワーβのパワー比率に基づいて制御テーブル12が作成されるので、レーザ発振器3から出射されたレーザパルスのエネルギーがたまたま上昇あるいは低下したとしても、その影響を排除することができ、穴品質を確保できる。
【0032】
実施例2
実施例1においては、ワークテーブルW1を作成する場合、AODに与えるRF信号の周波数として、X方向の各位置x1、x2、x3・・・に対応する周波数f1、f2、f3・・・の各々とし、それぞれでパワー比率を求めるようにしている。
しかしながら、AODに与えるRF信号の周波数として、周波数の変動範囲を一定間隔で区切った場合の各周波数帯域毎の中心周波数とし、それぞれでパワー比率(以下、中心パワー比率と呼ぶ)を求めるようにしてワークテーブルW1を作成してもよい。
【0033】
図8は、上記方法を説明するための図である。図8において、T1とT2は隣り合う周波数帯域、ft1とft2は周波数帯域T1、T2それぞれの中心周波数、U1とU2は中心周波数ft1、ft2それぞれでの中心パワー比率である。
この方法においては、X方向の各位置x1、x2、x3・・・に対応する周波数f1、f2、f3・・・の各々毎のパワー比率は近似的に求めることができる。
【0034】
例えば、X方向の位置x100に対応する周波数f100でのパワー比率U100は、周波数と正比例関係で変化するものとして近似し、f100、ft1、ft2、U1及びU2のデータを用いて、(f100-ft1)×(U2-U1)/(ft2-ft1)+U1の式で算出できる。
X方向の各位置x1、x2、x3・・・に対応する周波数f1、f2、f3・・・の変動範囲での最低パワー比率は、上記のようにして得られたパワー比率のなかから抽出すればよい。
【0035】
以上の実施例2によれば、X方向の各位置x1、x2、x3・・・に対応する周波数f1、f2、f3・・・の各々毎にパワー比率を求める必要はなく、ワークテーブルW1に登録するエントリ数を少なくできる。
Y方向についても、X方向と同様に周波数の変動範囲を一定間隔で区切った場合の各周波数帯域毎の中心周波数のそれぞれで中心パワー比率を求めるようにすれば、全く同じことがいえる。
【0036】
実施例3
実施例1においては、ワークテーブルW2を作成する場合、AODに与えるRF信号の振幅a1、a2、a3・・・として、制御し得る範囲で区切って、それぞれでのパワー比率を求めている。
しかしながら、実施例2でのワークテーブルW1を作成する場合と同様にして、AODに与えるRF信号の振幅として、振幅の変動範囲を一定間隔で区切った場合の各振幅帯域毎の中心振幅とし、それぞれでパワー比率(以下、振幅中心パワー比率と呼ぶ)を求めるようにしてワークテーブルW2を作成してもよい。
RF信号の振幅a1、a2、a3・・・の各々毎のパワー比率は、各周波数帯域において求めた中心パワー比率を元にして、実施例2の場合と同様にして近似的に求めることができる。
【0037】
図9は、上記方法を説明するための図である。図9において、S1とS2は隣り合う振幅帯域、ms1とms2は振幅帯域S1、S2それぞれの中心振幅、V-1とV-2は中心振幅ms1、ms2それぞれでの振幅中心パワー比率である。
この方法においては、振幅a1、a2、a3・・・の各々毎のパワー比率を近似的に求めることができる。例えば、振幅m200でのパワー比率v200は、振幅と正比例関係で変化するものとして近似し、m200、ms1、ms2、V1及びV2のデータを用いて、(m200-ms1)×(v2-v1)/(ms2-ms1)+v1の式で算出できる。
【0038】
最低パワー比率に一番近いパワー比率となる振幅は、このようにして得られたパワー比率を元にして抽出すればよい。
以上の方式によれば、ワークテーブルW1の場合と同様、ワークテーブルW2に登録するエントリ数を少なくできる。
【0039】
実施例4
実施例3においては、ワークテーブルW2を作成する場合、AODに与えるRF信号の振幅は、振幅の変動範囲を一定間隔で区切った場合の各振幅帯域毎の中心振幅としているものの、AODに与えるRF信号の周波数としては、位置x1 、x2 、x3・・・に位置付けするための周波数f1、f2、f3・・・の各々としているが、実施例2のように周波数の変動範囲も一定間隔で区切り、各周波数帯域毎の中心周波数を与えるようにしてもよい。
【0040】
図10は、上記方法を説明するための図である。図10において、ft11、ft12はそれぞれ隣り合う周波数帯域での中心周波数、U11、U12はAODに与えるRF信号の振幅が中心振幅mS10の場合に、中心周波数ft11、ft12のそれぞれで検出するパワー比率、U21、U22はAODに与えるRF信号の振幅が中心振幅mS20の場合に、中心周波数ft11、ft12のそれぞれで検出するパワー比率である。
【0041】
最低パワー比率に一番近いパワー比率となる振幅は、以下のようにして近似的に求めることができる。例えば、周波数f300でのパワー比率が予め求めておいた最低パワー比率γminに一番近くなる振幅m300は、周波数f300の上下の周波数帯域での中心振幅mS10とmS20でのパワー比率U11、U12、U21、U22のデータを用いて、m300 = mS20 + ( mS10 - mS20 ) ÷ ( J - K ) × γminで算出できる。但し、J=U11+(U12-U11)÷(ft12-ft11)×f300、K=U21+(U22-U21) ÷(ft12-ft11)×f300とする。
【0042】
実施例5
以上までの実施例では、レーザ加工装置に組み込まれた状態でのAOD偏向部6の制御テーブル12を作成する場合である。
これに対して、周波数、振幅及び出射エネルギーの関係に関してAOD偏向部6と同じ特性のAOD偏向部23及び上記実施例のようにして作成した制御テーブル12と同じ内容の制御テーブル24とを図11に示すようにセットにしたAOD偏向ユニット25を、図2におけるレーザ加工装置でのAOD偏向部6及び制御テーブル12の代わりに部品として組込むことにより、別のレーザ加工装置を製作するようにしてもよい。
このようにすれば、別のレーザ加工装置においては、あらためて制御テーブルを作成する必要がなく、サーマルセンサ16、17やテーブル作成部18も不要になる。
【符号の説明】
【0043】
2:テーブル 3:レーザ発振器 4:ビームスプリッタ 6、23:AOD偏向部
7:ダンパ 8:ガルバノ偏向部 9:集光レンズ 10:全体制御部、
11:レーザ発振制御部 12、24:制御テーブル 13:AOD制御部
14:ガルバノ制御部 16、17:サーマルセンサ
18:テーブル作成部 25:AOD偏向ユニット
D:AOM駆動信号 G:ガルバノ制御信号、L1~L3:レーザパルス
S:レーザ発振指令信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11