(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 41/12 20060101AFI20230310BHJP
A01D 69/00 20060101ALI20230310BHJP
A01D 67/00 20060101ALI20230310BHJP
A01D 57/00 20060101ALI20230310BHJP
A01D 63/04 20060101ALI20230310BHJP
A01F 12/40 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
A01D41/12 B
A01D69/00 301
A01D67/00 D
A01D57/00 A
A01D63/04
A01F12/40 302Z
(21)【出願番号】P 2019121785
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】林 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】迫 和志
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-104377(JP,A)
【文献】特開2005-245324(JP,A)
【文献】特許第4871039(JP,B2)
【文献】特開2015-104376(JP,A)
【文献】特開2014-171457(JP,A)
【文献】特許第5586910(JP,B2)
【文献】特開2018-186728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0049369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00 - 41/16
A01D 57/00 - 57/10
A01D 63/00 - 63/04
A01D 67/00 - 69/12
A01F 12/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置と、
脱穀装置を備える機体と、
撮影画像を生成する複数のカメラと、
複数の前記カメラが生成した撮影画像を単一の視点からの画像へ合成して合成画像を生成する画像合成部と、
前記画像合成部が生成した前記合成画像を表示する表示部と、
前記機体の外観形状を示す機体データを記憶する記憶部と、を備え、
前記機体における前部に、収穫部と、前記カメラとしての前カメラと、が設けられており、
前記前カメラは、前記収穫部の一部又は全部を撮影範囲に含むように設けられており、
前記脱穀装置における左の側部に、前記カメラとしての左カメラが設けられており、
前記左カメラは、前記脱穀装置よりも左側の領域を撮影範囲に含むように設けられており、
前記機体における前記前カメラよりも低い位置に、前記カメラとしての下カメラが設けられており、
前記下カメラは、前記走行装置の前部と、前記機体の下方の圃場と、を撮影範囲に含むように設けられており、
前記画像合成部は
、前記前カメラが撮影した前記収穫部の一部又は全部が示され、かつ、前記脱穀装置が前記機体データに基づいて生成された機体画像により示され
る前記合成画像と
、前記前カメラが撮影した前記収穫部の一部又は全部が示され、かつ、前記下カメラが撮影した前記走行装置の前部及び前記機体の下方の圃場が示され、前記脱穀装置が示されない前記合成画像と、を選択的に生成する収穫機。
【請求項2】
前記収穫部は、フレームとオーガとを備えており、
前記前カメラは、前記フレームの一部又は全部と、前記オーガの一部又は全部と、を撮影範囲に含むように設けられており、
前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記前カメラが撮影した前記フレームの一部又は全部と、前記オーガの一部又は全部と、が示されている請求項
1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記前カメラは、前記フレームにおける後部及び前記フレームよりも後側の領域を撮影範囲に含むように設けられており、
前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記前カメラが撮影した前記フレームにおける後部と、前記フレームよりも後側の領域と、が示されている請求項
2に記載の収穫機。
【請求項4】
前記収穫部は、圃場の作物を引き起こす引き起こし装置を備えており、
前記前カメラは、前記引き起こし装置の一部又は全部を撮影範囲に含むように設けられており、
前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記前カメラが撮影した前記引き起こし装置の一部又は全部が示されている請求項
1に記載の収穫機。
【請求項5】
前記前カメラは、前記引き起こし装置よりも後側の領域を撮影範囲に含むように設けられており、
前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記前カメラが撮影した前記引き起こし装置よりも後側の領域が示されている請求項
4に記載の収穫機。
【請求項6】
前記収穫部は、左デバイダ及び右デバイダを備えており、
前記前カメラは、少なくとも左デバイダの一部又は全部を撮影範囲に含むように設けられており、
前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記前カメラが撮影した左デバイダの一部又は全部が示されている請求項1から
5のいずれか1項に記載の収穫機。
【請求項7】
前記機体における後部に、排藁処理装置と、前記カメラとしての後カメラと、が設けられており、
前記後カメラは、前記排藁処理装置の一部又は全部を撮影範囲に含むように設けられており、
前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記後カメラが撮影した前記排藁処理装置の一部又は全部が示されている請求項1から
6のいずれか1項に記載の収穫機。
【請求項8】
前記後カメラは、前記排藁処理装置よりも後側の領域を撮影範囲に含むように設けられており、
前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記後カメラが撮影した前記排藁処理装置よりも後側の領域が示されている請求項
7に記載の収穫機。
【請求項9】
前記機体における後部に、排藁処理装置が設けられており、
前記下カメラは、前記排藁処理装置の下方領域を撮影範囲に含むように設けられており、
前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記下カメラが撮影した前記排藁処理装置の下方領域が示されている請求項
1に記載の収穫機。
【請求項10】
前記収穫部にて収穫された作物を挟持搬送して前記脱穀装置に脱穀処理させるフィードチェーンが設けられており、
前記下カメラは、前記フィードチェーンよりも下側に設けられると共に前記フィードチェーンの下方領域を撮影範囲に含むように設けられており、
前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記下カメラが撮影した前記フィードチェーンの下方領域が示されている請求項
1に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両周囲の様子を運転者に認識させるために、俯瞰映像を表示装置に表示する技術が用いられている。特許文献1に記載された車両用運転支援装置は、車両の前方、後方、左右両側方の各領域の映像を4つの車載カメラでそれぞれ撮影し、撮影された映像を自車上方の仮想視点から見下ろした映像に視点変換するとともに繋ぎ合わせて、この繋ぎ合わせた映像に仮想自車画像を重畳して、自車周囲の様子を運転者に認識させるための1つの俯瞰映像として表示する。
【0003】
特許文献1に記載されている車両用運転支援装置は、各図面に示される通り、乗用車を対象とするものであり、駐車の支援を目的とするものである。4つの車載カメラは、フロントバンパー、リアバンパー、及び左右のサイドミラーに設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、乗用車において俯瞰映像を表示する技術を開示するにとどまる。コンバイン等の収穫機において機体や周囲の様子を認識させるための映像を表示させる点や、収穫機に適した撮影範囲の選択については、特許文献1に開示も示唆もされていない。
【0006】
本発明の目的は、収穫機の周囲の作業環境や収穫機の状態を把握し易くする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための収穫機の特徴構成は、走行装置と、脱穀装置を備える機体と、撮影画像を生成する複数のカメラと、複数の前記カメラが生成した撮影画像を単一の視点からの画像へ合成して合成画像を生成する画像合成部と、前記画像合成部が生成した前記合成画像を表示する表示部と、前記機体の外観形状を示す機体データを記憶する記憶部と、を備え、前記機体における前部に、収穫部と、前記カメラとしての前カメラと、が設けられており、前記前カメラは、前記収穫部の一部又は全部を撮影範囲に含むように設けられており、前記脱穀装置における左の側部に、前記カメラとしての左カメラが設けられており、前記左カメラは、前記脱穀装置よりも左側の領域を撮影範囲に含むように設けられており、前記機体における前記前カメラよりも低い位置に、前記カメラとしての下カメラが設けられており、前記下カメラは、前記走行装置の前部と、前記機体の下方の圃場と、を撮影範囲に含むように設けられており、前記画像合成部は、前記前カメラが撮影した前記収穫部の一部又は全部が示され、かつ、前記脱穀装置が前記機体データに基づいて生成された機体画像により示される前記合成画像と、前記前カメラが撮影した前記収穫部の一部又は全部が示され、かつ、前記下カメラが撮影した前記走行装置の前部及び前記機体の下方の圃場が示され、前記脱穀装置が示されない前記合成画像と、を選択的に生成する点にある。
【0008】
上記の特徴構成によれば、前カメラを含む複数のカメラからの撮影画像が合成されて表示部に表示されるので、比較的広い範囲について圃場や機体の状態を一瞥して把握することができ、収穫機の周囲の作業環境や収穫機の状態の把握が容易になる。そして前カメラが収穫部の一部又は全部を撮影範囲に含み、撮影された収穫部が合成画像に示されるので、収穫部及び収穫部で処理される作物の状態を容易に把握することができる。
また、上記の特徴構成によれば、下カメラが機体の下部を撮影範囲に含み、撮影された機体の下部が合成画像に示されるので、機体の下部の状態を容易に把握することができる。
さらに、上記の特徴構成によれば、下カメラが走行装置の前部を撮影範囲に含み、撮影された走行装置の前部が合成画像に示されるので、走行装置の前部の状態を容易に把握することができる。
【0009】
本発明に係る収穫機の別の特徴構成は、前記収穫部は、フレームとオーガとを備えており、前記前カメラは、前記フレームの一部又は全部と、前記オーガの一部又は全部と、を撮影範囲に含むように設けられており、前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記前カメラが撮影した前記フレームの一部又は全部と、前記オーガの一部又は全部と、が示されている点にある。
【0010】
上記の特徴構成によれば、前カメラがフレーム及びオーガを撮影範囲に含み、撮影されたフレーム及びオーガが合成画像に示されるので、収穫部のフレーム及びオーガの状態、及びオーガにより処理される作物の状態を容易に把握することができる。
【0011】
本発明に係る収穫機の別の特徴構成は、前記前カメラは、前記フレームにおける後部及び前記フレームよりも後側の領域を撮影範囲に含むように設けられており、前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記前カメラが撮影した前記フレームにおける後部と、前記フレームよりも後側の領域と、が示されている点にある。
【0012】
上記の特徴構成によれば、前カメラがフレームの後部及びフレームよりも後側の領域を撮影範囲に含み、撮影されたフレームの後部及びフレームよりも後側の領域が合成画像に示されるので、収穫部のフレームの後部の状態や、フレームよりも後側の刈り跡の状態を容易に把握することができる。
【0013】
本発明に係る収穫機の別の特徴構成は、前記収穫部は、圃場の作物を引き起こす引き起こし装置を備えており、前記前カメラは、前記引き起こし装置の一部又は全部を撮影範囲に含むように設けられており、前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記前カメラが撮影した前記引き起こし装置の一部又は全部が示されている点にある。
【0014】
上記の特徴構成によれば、前カメラが引き起こし装置を撮影範囲に含み、撮影された引き起こし装置が合成画像に示されるので、引き起こし装置の状態、及び引き起こし装置にて引き起こされる作物の状態を容易に把握することができる。
【0015】
本発明に係る収穫機の別の特徴構成は、前記前カメラは、前記引き起こし装置よりも後側の領域を撮影範囲に含むように設けられており、前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記前カメラが撮影した前記引き起こし装置よりも後側の領域が示されている点にある。
【0016】
上記の特徴構成によれば、前カメラが引き起こし装置よりも後側の領域を撮影範囲に含み、撮影された引き起こし装置よりも後側の領域が合成画像に示されるので、引き起こし装置から後側へ送られた作物の状態を容易に把握することができる。
【0017】
本発明に係る収穫機の別の特徴構成は、前記収穫部は、左デバイダ及び右デバイダを備えており、前記前カメラは、少なくとも左デバイダの一部又は全部を撮影範囲に含むように設けられており、前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記前カメラが撮影した左デバイダの一部又は全部が示されている点にある。
【0018】
上記の特徴構成によれば、前カメラが左デバイダを撮影範囲に含み、撮影された左デバイダが合成画像に示されるので、デバイダによる圃場の作物の分草の状態を容易に把握することができる。
【0019】
本発明に係る収穫機の別の特徴構成は、前記機体における後部に、排藁処理装置と、前記カメラとしての後カメラと、が設けられており、前記後カメラは、前記排藁処理装置の一部又は全部を撮影範囲に含むように設けられており、前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記後カメラが撮影した前記排藁処理装置の一部又は全部が示されている点にある。
【0020】
上記の特徴構成によれば、後カメラが排藁処理装置を撮影範囲に含み、撮影された排藁処理装置が合成画像に示されるので、排藁の処理の状態を容易に把握することができる。
【0021】
本発明に係る収穫機の別の特徴構成は、前記後カメラは、前記排藁処理装置よりも後側の領域を撮影範囲に含むように設けられており、前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記後カメラが撮影した前記排藁処理装置よりも後側の領域が示されている点にある。
【0022】
上記の特徴構成によれば、後カメラが排藁処理装置よりも後側の領域を撮影範囲に含み、撮影された領域が合成画像に示されるので、排藁処理装置から排出される排藁の状態を容易に把握することができる。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
本発明に係る収穫機の別の特徴構成は、前記機体における後部に、排藁処理装置が設けられており、前記下カメラは、前記排藁処理装置の下方領域を撮影範囲に含むように設けられており、前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記下カメラが撮影した前記排藁処理装置の下方領域が示されている点にある。
【0028】
上記の特徴構成によれば、下カメラが排藁処理装置の下方領域を撮影範囲に含み、撮影された下方領域が合成画像に示されるので、排藁処理装置の下方領域の状態(例えば、刈り跡や排藁の状態)を容易に把握することができる。
【0029】
本発明に係る収穫機の別の特徴構成は、前記収穫部にて収穫された作物を挟持搬送して前記脱穀装置に脱穀処理させるフィードチェーンが設けられており、前記下カメラは、前記フィードチェーンよりも下側に設けられると共に前記フィードチェーンの下方領域を撮影範囲に含むように設けられており、前記画像合成部が生成する前記合成画像に、前記下カメラが撮影した前記フィードチェーンの下方領域が示されている点にある。
【0030】
カメラがフィードチェーンよりも上側にある場合には、フィードチェーンで搬送される作物の存在により、フィードチェーンの下方領域(圃場など)の撮影は困難である。上記の特徴構成によれば、下カメラがフィードチェーンよりも下側に設けられ、下カメラがフィードチェーンの下方領域を撮影範囲に含み、撮影された下方領域が合成画像に示されるので、フィードチェーンの下方領域の状態を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図11】自脱型コンバインの機体の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、矢印Lの方向を「機体左側」、矢印Rの方向を「機体右側」とする。
【0033】
〔コンバインの全体の構成〕
図1-5に、収穫機の一例である普通型コンバインが示されている。この普通型コンバインの機体Vには、機体フレーム1と、左右一対のクローラ走行装置2(走行装置の一例)と、が備えられている。機体Vの前部には、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部3(収穫部の一例)が設けられている。刈取部3には、植立穀稈を掻き込む掻込リール4と、植立穀稈を切断する刈刃5と、刈取穀稈を掻き込む掻込オーガ6(オーガの一例)と、が備えられている。刈取部3に、圃場の植立穀稈を刈取対象と非刈取対象に分ける左右一対のデバイダ7が備えられている。刈取部3は、機体幅よりも幅広の刈幅を有している。刈取部3の後端部に、左右方向に延びる刈取フレーム3a(フレームの一例)が設けられている。
【0034】
機体Vにおいて刈取部3の後方に、運転部8と、運転部8を覆うキャビン9と、が設けられている。運転部8は、機体Vの前部における右側に位置する。運転部8の左方に、刈取部3により収穫された収穫物を搬送するフィーダ10(搬送部の一例)が設けられている。
【0035】
フィーダ10の後方に、フィーダ10により搬送された収穫物を脱穀処理する脱穀装置11が設けられている。脱穀装置11は、本体部11aと、本体部11aの上面に設けられた開口を開閉する天板11bと、を備えている。天板11bは、前後方向に延びる回転軸の周りに回転可能な状態で、その左端部が本体部11aに支持されている。脱穀装置11の後部に、排藁を切断処理する排藁処理装置11cが設けられている。
【0036】
運転部8の後方且つ脱穀装置11の右方に、脱穀装置11により得られた穀粒を貯留する穀粒タンク12が設けられている。穀粒タンク12の後方に、穀粒タンク12に貯留された穀粒を外部に排出する排出装置13が設けられている。機体Vの後部に、穀粒タンク12及び排出装置13を後方から覆う後部カバー部14が設けられている。
【0037】
排出装置13は、穀粒タンク12に接続され上下方向に沿って延びる縦搬送部13aと、縦搬送部13aの上端部に上下揺動可能に連結された横搬送部13bと、を備えている。排出装置13は、上下方向に延びる旋回軸心周りで旋回可能である。
【0038】
運転部8には、運転者が着座する運転座席8aが備えられている。キャビン9には、ルーフ部9aと、ルーフ部9aを支持するキャビンフレーム9bと、が備えられている。キャビンフレーム9bは、キャビン9のフロントガラス9c、ドア9d、及びサイドガラス9e等を支持する。
【0039】
運転座席8aよりも下側に、エンジン15が設けられている。エンジン15に対してフィーダ10と反対側、すなわちエンジン15の右方に、ラジエータ16が設けられている。ラジエータ16に対してフィーダ10と反対側、すなわちラジエータ16の右方に、ラジエータ16に供給される外気の塵埃を除去する防塵ケース17(防塵部の一例)が設けられている。
【0040】
GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信して、その信号に基づいて自車位置を検出する衛星測位モジュール18が設けられている。衛星測位モジュール18は、運転部8の前部における左側部分に設けられている。衛星測位モジュール18は、ルーフ部9aよりも上側に設けられている。
【0041】
〔カメラ〕
普通型コンバインの機体Vに、前カメラ21(カメラの一例)、後カメラ22(カメラの一例)、右カメラ23(カメラの一例)、左カメラ24(カメラの一例)、右下カメラ25(カメラ、及び下カメラの一例)、左下カメラ26(カメラ、及び下カメラの一例)、及び後下カメラ27(カメラ、及び下カメラの一例)が設けられている。これら7つのカメラは、撮影画像を生成し、画像処理装置30(後述)へ出力する。本実施形態では、7つのカメラは主として機体Vの周辺の圃場、畦、道路等を撮影するが、加えて機体Vの一部を撮影してもよい。これに伴い、撮影画像に機体Vの一部が示されてもよい。本実施形態において撮影画像、後述する予備合成画像、及び合成画像とは、静止画であってもよいし、静止画を連続的に表示させるものである動画及び映像であってもよい。各カメラの撮影範囲(画角)は、光軸(撮影方向)を水平方向に向けた場合に、光軸を中心として水平方向に180°以上(例えば195°)、垂直方向に100°以上(例えば120°)である。
【0042】
〔前カメラの配置〕
図2-4に示されるように、前カメラ21は、機体Vの左右方向の中央部に位置するように、運転部8における前部に設けられている。詳しくは、前カメラ21は、運転部8の前部において脱穀装置11の側に隣接する状態で設けられている。換言すれば、前カメラ21は、運転部8の前部の左側面に配置されている。
【0043】
前カメラ21は、ステーを介してキャビンフレーム9bに支持されている。運転部8が備えるルーフ部9aは、サイドガラス9eよりも左に突出する突出部9fを備えている。前カメラ21は、突出部9fの真下に設けられている。前カメラ21は、衛星測位モジュール18よりも下側に設けられている。
【0044】
前カメラ21の撮影方向21aは、前斜め下方向に向けられており、換言すれば、刈取部3に向けられている。前カメラ21は、その撮影範囲21bに、刈取部3の全部及び刈取部3の周囲の領域(圃場の一部)を含むように設けられている。換言すれば、前カメラ21の撮影範囲21bに、刈取フレーム3a、掻込リール4、掻込オーガ6、デバイダ7、フィーダ10の一部、刈取部3よりも前側の領域、刈取部3よりも後側の領域、刈取部3よりも右側の領域、及び刈取部3よりも左側の領域が含まれている。
【0045】
〔後カメラの配置〕
図1-3、5に示されるように、後カメラ22は、機体Vの左右方向の中央部に位置するように、後部カバー部14の上部に設けられている。詳しくは、後カメラ22は、後部カバー部14の上面における左端部に設けられている。後カメラ22は、ステーを介して後部カバー部14に支持されている。後カメラ22は、衛星測位モジュール18よりも下側に設けられている。
【0046】
後カメラ22の撮影方向22aは、後斜め下方向に向けられており、換言すれば、排藁処理装置11cの後方に向けられている。後カメラ22は、その撮影範囲22bに、排藁処理装置11cの全部及び排藁処理装置11cの周囲の領域(圃場の一部)を含むように設けられている。換言すれば、後カメラ22の撮影範囲22bに、排藁処理装置11c、排藁処理装置11cよりも後側の領域、排藁処理装置11cよりも右側の領域、及び排藁処理装置11cよりも左側の領域が含まれている。
【0047】
〔右カメラの配置〕
図1,2,4,5に示されるように、右カメラ23は、機体Vの前後方向の中央部に位置するように、運転部8における右の側部に設けられている。詳しくは、右カメラ23は、運転部8の後部において右側に隣接する状態で設けられている。換言すれば、右カメラ23は、運転部8の後部の右側面に配置されている。右カメラ23は、運転部8が備える運転座席8aよりも後側に設けられている。
【0048】
右カメラ23は、ステーを介してキャビンフレーム9bに支持されている。運転部8が備えるルーフ部9aは、ドア9dよりも右に突出する突出部9gを備えている。右カメラ23は、突出部9gの真下に設けられている。右カメラ23は、防塵ケース17の上方に設けられている。右カメラ23は、衛星測位モジュール18よりも下側に設けられている。
【0049】
右カメラ23の撮影方向23aは、右斜め下方向に向けられており、換言すれば、運転部8の右方に向けられている。右カメラ23は、その撮影範囲23bに、運転部8よりも右側の領域、穀粒タンク12よりも右側の領域、及び刈取部3よりも右側の領域を含むように設けられている。
【0050】
〔左カメラの配置〕
図2-5に示されるように、左カメラ24は、機体Vの前後方向の中央部に位置するように、脱穀装置11における左の側部に設けられている。詳しくは、左カメラ24は、脱穀装置11の前部において左側に隣接する状態で設けられている。換言すれば、左カメラ24は、脱穀装置11の前部の左側面に配置されている。
【0051】
左カメラ24は、ステーを介して脱穀装置11に支持されている。詳しくは、左カメラ24は、脱穀装置11の左の側部に開閉可能に設けられたカバー11dの上部に設けられている。左カメラ24は、衛星測位モジュール18よりも下側に設けられている。
【0052】
左カメラ24の撮影方向24aは、左斜め下方向に向けられており、換言すれば、脱穀装置11の左方に向けられている。左カメラ24は、その撮影範囲24bに、脱穀装置11よりも左側の領域、フィーダ10よりも左側の領域、及び刈取部3よりも左側の領域を含むように設けられている。
【0053】
〔右下カメラの配置〕
図1に示されるように、右下カメラ25は、機体Vにおける前カメラ21よりも低い位置に設けられている。詳しくは、右下カメラ25は、機体フレーム1の前部における右側部分に設けられている。右下カメラ25は、前カメラ21よりも右に配置されている。右下カメラ25は、右のクローラ走行装置2よりも前側かつ左側に配置されている。右下カメラ25は、ステーを介して機体フレーム1に支持されている。
【0054】
右下カメラ25の撮影方向25aは、右斜め下方向に向けられており、換言すれば、右のクローラ走行装置2に向けられている。右下カメラ25は、その撮影範囲25bに、機体Vの下部及び機体Vの下方の圃場を含むように設けられている。詳しくは、右下カメラ25の撮影範囲25bに、右のクローラ走行装置2の前部、右のクローラ走行装置2の周囲の圃場が含まれている。
【0055】
〔左下カメラの配置〕
図3に示されるように、左下カメラ26は、機体Vにおける前カメラ21よりも低い位置に設けられている。詳しくは、左下カメラ26は、機体フレーム1の前部における左側部分に設けられている。左下カメラ26は、前カメラ21よりも左に配置されている。左下カメラ26は、左のクローラ走行装置2よりも前側かつ右側に配置されている。左下カメラ26は、ステーを介して機体フレーム1に支持されている。
【0056】
左下カメラ26の撮影方向26aは、左斜め下方向に向けられており、換言すれば、左のクローラ走行装置2に向けられている。左下カメラ26は、その撮影範囲26bに、機体Vの下部及び機体Vの下方の圃場を含むように設けられている。詳しくは、左下カメラ26の撮影範囲26bに、左のクローラ走行装置2の前部、左のクローラ走行装置2の周囲の圃場が含まれている。
【0057】
〔後下カメラの配置〕
図1、3、5に示されるように、後下カメラ27は、機体Vにおける前カメラ21よりも低い位置に設けられている。詳しくは、後下カメラ27は、機体Vの左右方向の中央部に位置するように、機体フレーム1の後部に設けられている。後下カメラ27は、排藁処理装置11cよりも低い位置に配置されている。後下カメラ27は、ステーを介して機体フレーム1に支持されている。
【0058】
後下カメラ27の撮影方向27aは、後斜め下方向に向けられており、換言すれば、機体Vの後方の圃場に向けられている。後下カメラ27は、その撮影範囲27bに、機体Vの下部、機体Vの下方の圃場、及び機体Vの後方の圃場を含むように設けられている。詳しくは、後下カメラ27の撮影範囲27bに、排藁処理装置11cの下部、排藁処理装置11cの下方の圃場、及び排藁処理装置11cの後方の圃場が含まれている。
【0059】
〔画像処理装置〕
以下、
図6のブロック図を参照しながら、普通型コンバインに備えられた画像処理装置30に係る構成について説明する。
【0060】
普通型コンバインの機体Vに、画像処理装置30と表示部40とが備えられている。画像処理装置30は、前カメラ21、後カメラ22、右カメラ23、左カメラ24、右下カメラ25、左下カメラ26、及び後下カメラ27から出力された撮影画像に基づいて合成画像を生成し、表示部40へ出力する。表示部40は、画像処理装置30が出力した合成画像を表示する。画像処理装置30は、マイクロコンピュータを備えて構成され、予め設定されているプログラムに従って画像処理を実行する。画像処理装置30及び表示部40は、運転部8に設けられている。
【0061】
画像処理装置30に、前カメラ21、後カメラ22、右カメラ23、左カメラ24、右下カメラ25、左下カメラ26、及び後下カメラ27が接続されている。画像処理装置30に、前撮影画像が前カメラ21から入力され、後撮影画像が後カメラ22から入力され、右撮影画像が右カメラ23から入力され、左撮影画像が左カメラ24から入力される。画像処理装置30に、右下撮影画像が右下カメラ25から入力され、左下撮影画像が左下カメラ26から入力され、後下撮影画像が後下カメラ27から入力される。
【0062】
画像処理装置30に、視点操作部41と、機体制御装置42と、が接続されている。視点操作部41は、作業者からの視点の変更・指定の操作を受け付けて、操作データを画像処理装置30へ出力する。視点操作部41は例えば、ボタン、ボリューム、ジョイスティック等の操作具であってもよいし、表示部40に設けられたタッチパネル等の入力手段であってもよい。
【0063】
機体制御装置42は、普通型コンバインの機体Vの動作状態を示す動作状態データを画像処理装置30へ出力する。動作状態データには、機体Vの前進、後進、旋回、停止等の動作状態を示すデータ、刈取部3の作動、停止、作業姿勢、非作業姿勢、揺動位置等の動作状態を示すデータ、排出装置13の作動、停止、格納姿勢、排出姿勢、旋回位置等の動作状態を示すデータが含まれる。
【0064】
機体制御装置42に、操向操作具43、主変速レバー44、刈取昇降スイッチ45、リール昇降スイッチ46、及び排出操作具47等の操作具が接続されている。機体制御装置42は、これら操作具に入力された操作に基づいて動作状態データを生成し、画像処理装置30へ出力する。なお、機体制御装置42が、これらの操作具や刈取部3、排出装置13等に設けられたセンサ(図示なし)の出力に基づいて、動作状態データを生成してもよい。
【0065】
画像処理装置30は、視点決定部31と、記憶部32と、画像合成部33と、を備えている。
【0066】
視点決定部31は、視点操作部41から出力された操作データ、又は、機体制御装置42から出力された動作状態データに基づいて、画像合成部33が生成する合成画像の視点となる合成視点を決定し、当該合成視点を示すデータを視点データとして画像合成部33へ出力する。具体的には、視点決定部31は、合成視点を、機体Vを真上から見る視点、機体Vを斜め上から見る視点、機体Vを前後又は左右から見る視点へ決定する。「機体Vを斜め上方から視る視点」とは、例えば、機体Vを前斜め上方から視る視点や、機体Vを後ろ斜め上方から視る視点や、機体Vを右斜め上方から視る視点や、機体Vを左斜め上方から視る視点などである。
【0067】
記憶部32は、機体Vの外観形状を示す機体データを記憶する。機体データは、機体Vの立体的な形状を示すデータであって、例えば、機体Vの3Dモデルを示すデータである。機体データには、クローラ走行装置2の外観形状を示すデータ、刈取部3の外観形状を示すデータ、排出装置13の外観形状を示すデータ、及び排藁処理装置11cの外観形状を示すデータが含まれる。
【0068】
また機体データには、作業姿勢の刈取部3の外観形状を示すデータ、非作業姿勢の刈取部3の外観形状を示すデータ、格納姿勢の排出装置13の外観形状を示すデータ、排出姿勢の排出装置13の外観形状を示すデータが含まれる。機体データは、予め準備され記憶部32に記憶される。
【0069】
画像合成部33は、前カメラ21、後カメラ22、右カメラ23、左カメラ24、右下カメラ25、左下カメラ26、及び後下カメラ27から入力された7つの撮影画像と、記憶部32に記憶された機体データとに基づいて、視点決定部31が決定した視点から視る画像であって、機体V及びその周辺を示す画像である合成画像を生成し、表示部40へ出力する。合成画像には、カメラにより撮影された機体Vの一部の部位が示されることになる。ただし、視点決定部31が決定した視点が、これらの機体Vにおける部位のいずれかが見えない視点である場合には、その部位は合成画像に示されない。
【0070】
まず画像合成部33は、7つのカメラからの撮影画像に対して、視点の変換及び合成の画像処理を行い、視点決定部31から入力された視点データが示す合成視点からの画像へ変換して、予備合成画像を生成する。予備合成画像は、7つのカメラが撮影して生成した撮影画像を1つの画像へ合成した画像である。画像処理の具体的な手法としては、ホモグラフィ行列を用いた平面射影変換や、三次元空間での投影処理などを用いることができる。
【0071】
次に画像合成部33は、記憶部32から機体データを読み出して、視点データが示す視点から視た機体Vの画像(機体画像)を機体データから生成する。このとき画像合成部33は、機体制御装置42から受信した動作状態データを参照して、刈取部3及び排出装置13の動作状態に応じた機体データを用いて、動作状態に合致する機体画像を生成する。そして画像合成部33は、先に生成した予備合成画像へ機体画像を合成して、合成画像を生成する。
【0072】
〔合成画像の例〕
普通型コンバインが圃場にて前進しながら収穫作業を行っているとする。このときに画像合成部33が生成する合成画像の例を、合成画像50として
図7に示す。
【0073】
このときの機体Vの動作状態としては、機体Vは前進及び直進状態にあり、刈取部3は作業姿勢にあって動作しており、排出装置13は格納姿勢にあって停止している。機体制御装置42は、上述した機体Vの動作状態を示す動作状態データを画像処理装置30へ出力する。
【0074】
視点操作部41が、平面視視点を指定する操作を受け付けたとする。視点操作部41は、平面視視点を示す操作データを視点決定部31へ出力する。画像処理装置30の視点決定部31は、操作データの入力を受けたことに基づいて、画像合成部33が合成する合成画像の視点(合成視点)を平面視視点に決定し、その旨を示す視点データを画像合成部33へ出力する。
【0075】
画像合成部33は、7つのカメラから入力された撮影画像に対して平面視視点への視点の変換及び合成の画像処理を行い、予備合成画像を生成する。続いて画像合成部33は、機体制御装置42から入力された動作状態データと、視点決定部31から入力された視点データとを参照して、機体画像を生成する。具体的には、作業姿勢の刈取部3及びフィーダ10の外観形状を示すデータ、格納姿勢の排出装置13の外観形状を示すデータ、及び機体Vのその余の部位に係る機体データを用いて、平面視視点からの機体Vを示す機体画像を生成する。そして画像合成部33は、予備合成画像へ機体画像を合成して、合成画像50を生成する。
【0076】
図7に、画像合成部33によって生成された合成画像50が示されている。合成画像50おける境界線Eの外側の領域50aは、予備合成画像に由来する画像であり、7つのカメラにより撮影された撮影画像に由来する画像である。この領域50aに、撮影された刈取部3(刈取フレーム3a、掻込リール4、掻込オーガ6、デバイダ7)、フィーダ10、排藁処理装置11c、刈取部3よりも後側の領域、排藁処理装置11cよりも後側の領域、機体Vの右方及び後方の既刈り地H、及び、機体Vの左方及び前方の未刈り地Gが示されている。合成画像50における境界線Eの内側の領域50bは、機体画像に由来する領域である。領域50bには、運転部8、フィーダ10、脱穀装置11、穀粒タンク12、及び排出装置13等が示されている。この例では、合成画像50に、左右のクローラ走行装置2、機体Vの下方の圃場、天板11bの下方の圃場は示されていない。
【0077】
図8に、合成画像50の別の例が示されている。先の例と同様に、合成画像50おける境界線Eの外側の領域50aは、主に予備合成画像に由来する画像であり、7つのカメラにより撮影された撮影画像に由来する画像である。合成画像50における境界線Eの内側の領域50bは、主に機体画像に由来する領域である。
【0078】
図8の例では、領域50aに、撮影された刈取部3(刈取フレーム3a、掻込リール4、掻込オーガ6、デバイダ7)、フィーダ10、刈取部3よりも後側の領域、排藁処理装置11cよりも後側の領域、機体Vの右方及び後方の既刈り地H、及び、機体Vの左方及び前方の未刈り地Gが示されている。領域50aに、右下カメラ25及び左下カメラ26により撮影されたクローラ走行装置2の前部及びクローラ走行装置2の周囲の圃場(機体Vの下方の圃場)が示されている。領域50aに、後下カメラ27により撮影された排藁処理装置11cの下方の圃場、排藁処理装置11cの後方の圃場、及び排藁処理装置11cから排出された切断済みの排藁Mが示されている。また、領域50aに、機体データから生成された排藁処理装置11cの外観形状が半透明の形態で示されている。
【0079】
領域50bに、機体データから生成されたクローラ走行装置2の後部の外観形状2aが示されている。
【0080】
つまり、
図7の例では、機体データから生成された運転部8、フィーダ10、脱穀装置11、穀粒タンク12、及び排出装置13等の外観形状が合成画像50に示されている。一方、
図8の例では、これら外観形状に換えて、撮影された機体フレーム1の下部(クローラ走行装置2の前部)、撮影された機体フレーム1の下方の圃場、及び機体データから生成されたクローラ走行装置2の後部の外観形状2aが示されている。以上述べたような画像の態様の変更は、画像合成部33による画像処理の方式や設定等を変更することにより実現可能である。
【0081】
〔合成画像の視点切り替え〕
以上説明した本実施形態に係る普通型コンバインでは、表示部40に表示される合成画像の視点が、視点操作部41が受け付ける運転者による操作や、機体Vの動作状態の変化に応じて随時切り替えられる。具体的には、視点操作部41は、運転者から視点を指定する操作を受け付けたことに応じて、当該視点を示す操作データを視点決定部31へ出力する。機体制御装置42は、機体Vの動作状態が変化したことに応じて、機体Vの動作状態を示す動作状態データを視点決定部31へ出力する。視点決定部31は、操作データ及び動作状態データの入力を受ける度に、合成視点を決定し、当該合成視点を示す視点データを画像合成部33へ出力する。画像合成部33は、生成する合成画像の視点が、入力された視点データが示す合成視点となるように、合成画像を生成して表示部40へ出力する。以上のようにして、表示部40に表示される合成画像の視点が切り替えられる。
【0082】
機体制御装置42から入力された動作状態データに応じて視点決定部31が合成視点を決定する場合に、機体Vを斜め上方から視る複数の視点のうちから選択して合成視点を決定するよう、視点決定部31が構成されてもよい。例えば、入力された動作状態データが機体Vが前進している旨を示すことに応じて機体Vを後ろ斜め上方から視る視点へ合成視点を決定し、機体Vが後進している旨を示すことに応じて機体Vを前斜め上方から視る視点へ合成視点を決定し、排出装置13が穀粒を排出している旨を示すことに応じて機体Vを左斜め上方から視る視点へ合成視点を決定するよう、視点決定部31が構成されてもよい。
【0083】
〔第1実施形態の変形例〕
〔1〕上記の実施形態では、普通型コンバインの機体Vに7つのカメラが設けられる例が説明された。カメラの数はこれに限られず、前カメラ21と他のカメラの組み合わせにより、2~6つ、又は8つ以上のカメラが機体Vに設けられてもよい。
【0084】
〔2〕上記の実施形態では、前カメラ21の撮影範囲21bに刈取部3の全部(刈取フレーム3aの全部、掻込リール4の全部、掻込オーガ6の全部、左右のデバイダ7の全部)が含まれるが、前カメラ21の撮影範囲21bに刈取部3の一部(刈取フレーム3aの一部、掻込リール4の一部、掻込オーガ6の一部、左右のデバイダ7の一部)が含まれるように前カメラ21が配置されてもよい。特に、前カメラ21の撮影範囲21bに左右のデバイダ7のうち左のデバイダ7の全部又は一部が含まれるように、前カメラ21が配置されてもよい。
【0085】
〔3〕上記の実施形態では、後カメラ22の撮影範囲22bに排藁処理装置11cの全部が含まれるが、後カメラ22の撮影範囲22bに排藁処理装置11cの一部が含まれるように後カメラ22が配置されてもよい。
【0086】
〔第2実施形態〕
本発明の別の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0087】
〔コンバインの全体の構成〕
図9-13に、収穫機の一例である自脱型コンバインが示されている。この自脱型コンバインの機体Wには、機体フレーム61と、左右一対のクローラ走行装置62と、が備えられている。機体Wの前部には、圃場の植立穀稈を刈り取る刈取部63(収穫部の一例)が設けられている。
【0088】
機体Wにおいて刈取部63の後方に、運転部68と、運転部68を覆うキャビン69と、が設けられている。運転部68は、機体Wの前部における右側に位置する。運転部68の左方に、刈取部63により収穫された収穫物を搬送する搬送部70が設けられている。
【0089】
搬送部70の後方に、搬送部70により搬送された収穫物を脱穀処理する脱穀装置71が設けられている。脱穀装置71の後部に、排藁を切断処理する排藁処理装置71cが設けられている。
【0090】
運転部68の後方且つ脱穀装置71の右方に、脱穀装置71により得られた穀粒を貯留する穀粒タンク72が設けられている。穀粒タンク72の後方に、穀粒タンク72に貯留された穀粒を外部に排出する排出装置73が設けられている。
【0091】
排出装置73は、穀粒タンク72に接続され上下方向に沿って延びる縦搬送部73aと、縦搬送部73aの上端部に上下揺動可能に連結された横搬送部73bと、を備えている。排出装置73は、上下方向に延びる旋回軸心周りで旋回可能である。
【0092】
運転部68には、運転者が着座する運転座席68aが備えられている。キャビン69には、ルーフ部69aと、ルーフ部69aを支持するキャビンフレーム69bと、が備えられている。キャビンフレーム69bは、キャビン69のフロントガラス69c、ドア69d、及びサイドガラス69e等を支持する。
【0093】
運転座席68aよりも下側に、エンジン75が設けられている。エンジン75に対して刈取部63と反対側、すなわちエンジン75の右方に、ラジエータ76が設けられている。ラジエータ76に対して刈取部63と反対側、すなわちラジエータ76の右方に、ラジエータ76に供給される外気の塵埃を除去する防塵ケース77(防塵部の一例)が設けられている。
【0094】
GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信して、その信号に基づいて自車位置を検出する衛星測位モジュール78が設けられている。衛星測位モジュール78は、運転部68の前部における左側部分に設けられている。衛星測位モジュール78は、ルーフ部69aよりも上側に設けられている。
【0095】
刈取部63は、圃場の植立穀稈を刈取対象と非刈取対象に分ける左右一対のデバイダ63aと、植立穀稈を引き起こす引き起こし装置63bと、植立穀稈を切断する刈刃63cと、切断された刈取穀稈を合流させて搬送部70へ搬送する合流搬送部63dと、を備えている。
【0096】
搬送部70は、刈取部63の合流搬送部63dから刈取穀稈を受け取って脱穀装置71へ向けて搬送する第1搬送装置70aと、第1搬送装置70aから刈取穀稈を受け取って脱穀装置71へ向けて搬送する第2搬送装置70bと、を備えている。第1搬送装置70a及び第2搬送装置70bは、刈取穀稈の株元側の部分を搬送する。第1搬送装置70aは、その姿勢を変化させることにより、扱深さを調節可能なように構成されている。
【0097】
搬送部70の第2搬送装置70bにより搬送された刈取穀稈を後方に搬送するフィードチェーン70cと、フィードチェーン70cと上下に対向する位置でフィードチェーン70cと共に刈取穀稈を挟持するレール台70dと、が備えられている。脱穀装置71は、フィードチェーン70cにより搬送される刈取穀稈を脱穀処理する。
【0098】
〔カメラ〕
自脱型コンバインの機体Wに、前カメラ81(カメラの一例)、後カメラ82(カメラの一例)、右カメラ83(カメラの一例)、左カメラ84(カメラの一例)、及び左下カメラ86(カメラ、及び下カメラの一例)が設けられている。これら5つのカメラは、撮影画像を生成し、機体Wが備える画像処理装置30へ出力する。本実施形態では、5つのカメラは主として機体Wの周辺の圃場、畦、道路等を撮影するが、加えて機体Wの一部を撮影してもよい。これに伴い、撮影画像に機体Wの一部が示されてもよい。本実施形態において撮影画像、後述する予備合成画像、及び合成画像とは、静止画であってもよいし、静止画を連続的に表示させるものである動画及び映像であってもよい。各カメラの撮影範囲(画角)は、光軸(撮影方向)を水平方向に向けた場合に、光軸を中心として水平方向に180°以上(例えば195°)、垂直方向に100°以上(例えば120°)である。
【0099】
〔前カメラの配置〕
図10-12に示されるように、前カメラ81は、機体Wの左右方向の中央部に位置するように、運転部68における前部に設けられている。詳しくは、前カメラ81は、運転部68の前部において脱穀装置71の側に隣接する状態で設けられている。換言すれば、前カメラ81は、運転部68の前部の左側面に配置されている。
【0100】
前カメラ81は、ステーを介してキャビンフレーム69bに支持されている。運転部68が備えるルーフ部69aは、サイドガラス69eよりも左に突出する突出部69fを備えている。前カメラ81は、突出部69fの真下に設けられている。前カメラ81は、衛星測位モジュール78よりも下側に設けられている。
【0101】
前カメラ81の撮影方向81aは、前斜め下方向に向けられており、換言すれば、刈取部63に向けられている。前カメラ81は、その撮影範囲81bに、刈取部63の全部及び刈取部63の周囲の領域(圃場の一部)を含むように設けられている。換言すれば、前カメラ81の撮影範囲81bに、デバイダ63a、引き起こし装置63b、引き起こし装置63bよりも後側の領域(刈取部63の後部)、刈取部63よりも前側の領域、刈取部63よりも後側の領域、刈取部63よりも右側の領域、及び刈取部63よりも左側の領域が含まれている。
【0102】
〔後カメラの配置〕
図9-11、13に示されるように、後カメラ82は、機体Wの左右方向の中央部に位置するように、脱穀装置71における後部に設けられている。詳しくは、後カメラ82は、脱穀装置71の排藁処理装置71cの上面における右寄りの位置に設けられている。後カメラ82は、ステーを介して脱穀装置71に支持されている。後カメラ82は、衛星測位モジュール78よりも下側に設けられている。
【0103】
後カメラ82の撮影方向82aは、後斜め下方向に向けられており、換言すれば、排藁処理装置71cの後方に向けられている。後カメラ82は、その撮影範囲82bに、排藁処理装置71cの全部及び排藁処理装置71cの周囲の領域(圃場の一部)を含むように設けられている。換言すれば、後カメラ82の撮影範囲82bに、排藁処理装置71c、排藁処理装置71cよりも後側の領域、排藁処理装置71cよりも右側の領域、及び排藁処理装置71cよりも左側の領域が含まれている。
【0104】
〔右カメラの配置〕
図9,10,12,13に示されるように、右カメラ83は、機体Wの前後方向の中央部に位置するように、運転部68における右の側部に設けられている。詳しくは、右カメラ83は、運転部68の後部において右側に隣接する状態で設けられている。換言すれば、右カメラ83は、運転部68の後部の右側面に配置されている。右カメラ83は、運転部68が備える運転座席68aよりも後側に設けられている。
【0105】
右カメラ83は、ステーを介してキャビンフレーム69bに支持されている。運転部68が備えるルーフ部69aは、ドア69dよりも右に突出する突出部69gを備えている。右カメラ83は、突出部69gの真下に設けられている。右カメラ83は、防塵ケース77の上方に設けられている。右カメラ83は、衛星測位モジュール78よりも下側に設けられている。
【0106】
右カメラ83の撮影方向83aは、右斜め下方向に向けられており、換言すれば、運転部68の右方に向けられている。右カメラ83は、その撮影範囲83bに、運転部68よりも右側の領域、穀粒タンク72よりも右側の領域、及び刈取部63よりも右側の領域を含むように設けられている。
【0107】
〔左カメラの配置〕
図10-13に示されるように、左カメラ84は、機体Wの前後方向の中央部に位置するように、脱穀装置71における左の側部に設けられている。詳しくは、左カメラ84は、脱穀装置71の前部において左側に隣接する状態で設けられている。換言すれば、左カメラ84は、脱穀装置71の前部の左側面に配置されている。左カメラ84は、ステーを介して脱穀装置71に支持されている。左カメラ84は、衛星測位モジュール78よりも下側に設けられている。
【0108】
左カメラ84の撮影方向84aは、左斜め下方向に向けられており、換言すれば、脱穀装置71の左方に向けられている。左カメラ84は、その撮影範囲84bに、脱穀装置71よりも左側の領域、搬送部70よりも左側の領域、及び刈取部63よりも左側の領域を含むように設けられている。
【0109】
〔左下カメラの配置〕
図10,11,13に示されるように、左下カメラ86は、機体Wにおける前カメラ81よりも低い位置に設けられている。詳しくは、左下カメラ86は、機体Wの前後方向のほぼ中央部に位置するように、脱穀装置71における左の側部に設けられている。左下カメラ86は、脱穀装置71の前部において左側に隣接する状態で設けられている。換言すれば、左下カメラ86は、脱穀装置71の前部の左側面に配置されている。左下カメラ86は、ステーを介して脱穀装置71に支持されている。左下カメラ86は、衛星測位モジュール78よりも下側に設けられている。左下カメラ86は、左カメラ84よりも後側、且つ下側に設けられている。
【0110】
左下カメラ86の撮影方向86aは、左斜め下方向に向けられており、換言すれば、脱穀装置71の左方に向けられている。左下カメラ86は、その撮影範囲86bに、脱穀装置71よりも左側の領域、搬送部70よりも左側の領域、及び刈取部63よりも左側の領域を含むように設けられている。左下カメラ86は、特に、その撮影範囲86bに、フィードチェーン70cの下方領域(機体Wの一部や圃場など)を撮影範囲に含むように設けられている。
【0111】
〔画像処理装置〕
以下、
図14のブロック図を参照しながら、自脱型コンバインに備えられた画像処理装置30に係る構成について説明する。
【0112】
自脱型コンバインの機体Wに、画像処理装置30と表示部40とが備えられている。画像処理装置30は、前カメラ81、後カメラ82、右カメラ83、左カメラ84、及び左下カメラ86から出力された撮影画像に基づいて合成画像を生成し、表示部40へ出力する。表示部40は、画像処理装置30が出力した合成画像を表示する。画像処理装置30は、マイクロコンピュータを備えて構成され、予め設定されているプログラムに従って画像処理を実行する。画像処理装置30及び表示部40は、運転部68に設けられている。
【0113】
画像処理装置30に、前カメラ81、後カメラ82、右カメラ83、左カメラ84、及び左下カメラ86が接続されている。画像処理装置30に、前撮影画像が前カメラ81から入力され、後撮影画像が後カメラ82から入力され、右撮影画像が右カメラ83から入力され、左撮影画像が左カメラ84から入力される。画像処理装置30に、左下撮影画像が左下カメラ86から入力される。
【0114】
画像処理装置30に、視点操作部41と、機体制御装置42と、が接続されている。視点操作部41は、作業者からの視点の変更・指定の操作を受け付けて、操作データを画像処理装置30へ出力する。視点操作部41は例えば、ボタン、ボリューム、ジョイスティック等の操作具であってもよいし、表示部40に設けられたタッチパネル等の入力手段であってもよい。
【0115】
機体制御装置42は、自脱型コンバインの機体Wの動作状態を示す動作状態データを画像処理装置30へ出力する。動作状態データには、機体Wの前進、後進、旋回、停止等の動作状態を示すデータ、刈取部63の作動、停止、作業姿勢、非作業姿勢、揺動位置等の動作状態を示すデータ、排出装置73の作動、停止、格納姿勢、排出姿勢、旋回位置等の動作状態を示すデータが含まれる。
【0116】
機体制御装置42に、操向操作具43、主変速レバー44、刈取昇降スイッチ45、及び排出操作具47等の操作具が接続されている。機体制御装置42は、これら操作具に入力された操作に基づいて動作状態データを生成し、画像処理装置30へ出力する。なお、機体制御装置42が、これらの操作具や刈取部63、排出装置73等に設けられたセンサ(図示なし)の出力に基づいて、動作状態データを生成してもよい。
【0117】
画像処理装置30は、視点決定部31と、記憶部32と、画像合成部33と、を備えている。
【0118】
視点決定部31は、視点操作部41から出力された操作データ、又は、機体制御装置42から出力された動作状態データに基づいて、画像合成部33が生成する合成画像の視点となる合成視点を決定し、当該合成視点を示すデータを視点データとして画像合成部33へ出力する。具体的には、視点決定部31は、合成視点を、機体Wを真上から見る視点、機体Wを斜め上から見る視点、機体Wを前後又は左右から見る視点へ決定する。「機体Wを斜め上方から視る視点」とは、例えば、機体Wを前斜め上方から視る視点や、機体Wを後ろ斜め上方から視る視点や、機体Wを右斜め上方から視る視点や、機体Wを左斜め上方から視る視点などである。
【0119】
記憶部32は、機体Wの外観形状を示す機体データを記憶する。機体データは、機体Wの立体的な形状を示すデータであって、例えば、機体Wの3Dモデルを示すデータである。機体データには、クローラ走行装置62の外観形状を示すデータ、刈取部63の外観形状を示すデータ、排出装置73の外観形状を示すデータ、及び排藁処理装置71cの外観形状を示すデータが含まれる。
【0120】
また機体データには、作業姿勢の刈取部63の外観形状を示すデータ、非作業姿勢の刈取部63の外観形状を示すデータ、格納姿勢の排出装置73の外観形状を示すデータ、排出姿勢の排出装置73の外観形状を示すデータが含まれる。機体データは、予め準備され記憶部32に記憶される。
【0121】
画像合成部33は、前カメラ81、後カメラ82、右カメラ83、左カメラ84、及び左下カメラ86から入力された5つの撮影画像と、記憶部32に記憶された機体データとに基づいて、視点決定部31が決定した視点から視る画像であって、機体W及びその周辺を示す画像である合成画像を生成し、表示部40へ出力する。合成画像には、カメラにより撮影された機体Wの一部の部位が示されることになる。ただし、視点決定部31が決定した視点が、これらの機体Wにおける部位のいずれかが見えない視点である場合には、その部位は合成画像に示されない。
【0122】
まず画像合成部33は、5つのカメラからの撮影画像に対して、視点の変換及び合成の画像処理を行い、視点決定部31から入力された視点データが示す合成視点からの画像へ変換して、予備合成画像を生成する。予備合成画像は、5つのカメラが撮影して生成した撮影画像を1つの画像へ合成した画像である。画像処理の具体的な手法としては、ホモグラフィ行列を用いた平面射影変換や、三次元空間での投影処理などを用いることができる。
【0123】
次に画像合成部33は、記憶部32から機体データを読み出して、視点データが示す視点から視た機体Wの画像(機体画像)を機体データから生成する。このとき画像合成部33は、機体制御装置42から入力された動作状態データを参照して、刈取部63及び排出装置73の動作状態に応じた機体データを用いて、動作状態に合致する機体画像を生成する。そして画像合成部33は、先に生成した予備合成画像へ機体画像を合成して、合成画像を生成する。
【0124】
〔合成画像の例〕
自脱型コンバインが圃場にて前進しながら収穫作業を行っているとする。このときに画像合成部33が生成する合成画像の例を、合成画像90として
図15に示す。
【0125】
このときの機体Wの動作状態としては、機体Wは前進及び直進状態にあり、刈取部63は作業姿勢にあって動作しており、排出装置73は格納姿勢にあって停止している。機体制御装置42は、上述した機体Wの動作状態を示す動作状態データを画像処理装置30へ出力する。
【0126】
視点操作部41が、平面視視点を指定する操作を受け付けたとする。視点操作部41は、平面視視点を示す操作データを視点決定部31へ出力する。画像処理装置30の視点決定部31は、操作データの入力を受けたことに基づいて、画像合成部33が合成する合成画像の視点(合成視点)を平面視視点に決定し、その旨を示す視点データを画像合成部33へ出力する。
【0127】
画像合成部33は、5つのカメラから入力された撮影画像に対して平面視視点への視点の変換及び合成の画像処理を行い、予備合成画像を生成する。続いて画像合成部33は、機体制御装置42から入力された動作状態データと、視点決定部31から入力された視点データとを参照して、機体画像を生成する。具体的には、作業姿勢の刈取部63及び搬送部70の外観形状を示すデータ、格納姿勢の排出装置73の外観形状を示すデータ、及び機体Wのその余の部位に係る機体データを用いて、平面視視点からの機体Wを示す機体画像を生成する。そして画像合成部33は、予備合成画像へ機体画像を合成して、合成画像90を生成する。
【0128】
図15に、画像合成部33によって生成された合成画像90が示されている。合成画像90おける境界線Eの外側の領域90aは、予備合成画像に由来する画像であり、5つのカメラにより撮影された撮影画像に由来する画像である。この領域90aに、撮影された刈取部63(デバイダ63a、引き起こし装置63b)、引き起こし装置63bよりも後側の領域(刈取部63の後部)、機体Wの右方及び後方の既刈り地H、及び、機体Wの左方及び前方の未刈り地Gが示されている。特に、合成画像90の領域90aに、左下カメラ86に撮影されたフィードチェーン70cの下方領域である圃場の未刈り地Gが示されている。合成画像90における境界線Eの内側の領域90bは、機体画像に由来する領域である。領域90bには、運転部68、搬送部70、脱穀装置71、穀粒タンク72、及び排出装置73等が示されている。
【0129】
〔合成画像の視点切り替え〕
以上説明した本実施形態に係る自脱型コンバインでは、表示部40に表示される合成画像の視点が、視点操作部41が受け付ける運転者による操作や、機体Wの動作状態の変化に応じて随時切り替えられる。具体的には、視点操作部41は、運転者から視点を指定する操作を受け付けたことに応じて、当該視点を示す操作データを視点決定部31へ出力する。機体制御装置42は、機体Wの動作状態が変化したことに応じて、機体Wの動作状態を示す動作状態データを視点決定部31へ出力する。視点決定部31は、操作データ及び動作状態データの入力を受ける度に、合成視点を決定し、当該合成視点を示す視点データを画像合成部33へ出力する。画像合成部33は、生成する合成画像の視点が、入力された視点データが示す合成視点となるように、合成画像を生成して表示部40へ出力する。以上のようにして、表示部40に表示される合成画像の視点が切り替えられる。
【0130】
機体制御装置42から入力された動作状態データに応じて視点決定部31が合成視点を決定する場合に、機体Wを斜め上方から視る複数の視点のうちから選択して合成視点を決定するよう、視点決定部31が構成されてもよい。例えば、入力された動作状態データが機体Wが前進している旨を示すことに応じて機体Wを後ろ斜め上方から視る視点へ合成視点を決定し、機体Wが後進している旨を示すことに応じて機体Wを前斜め上方から視る視点へ合成視点を決定し、排出装置73が穀粒を排出している旨を示すことに応じて機体Wを左斜め上方から視る視点へ合成視点を決定するよう、視点決定部31が構成されてもよい。
【0131】
〔第2実施形態の変形例〕
〔1〕上記の実施形態では、自脱型コンバインの機体Wに5つのカメラが設けられる例が説明された。カメラの数はこれに限られず、前カメラ81と他のカメラの組み合わせにより、2~4つ、又は6つ以上のカメラが機体Wに設けられてもよい。
【0132】
〔2〕上記の実施形態では、前カメラ81の撮影範囲81bに刈取部63の全部(左右のデバイダ63aの全部、引き起こし装置63bの全部)が含まれるが、前カメラ81の前カメラ81に刈取部63の一部(左右のデバイダ63aの一部、引き起こし装置63bの一部)が含まれるように前カメラ81が配置されてもよい。特に、前カメラ81の撮影範囲81bに左右のデバイダ63aのうち左のデバイダ63aの全部又は一部が含まれるように、前カメラ81が配置されてもよい。
【0133】
〔3〕上記の実施形態では、後カメラ82の撮影範囲82bに排藁処理装置71cの全部が含まれるが、後カメラ82の撮影範囲82bに排藁処理装置71cの一部が含まれるように後カメラ82が配置されてもよい。
【0134】
〔4〕自脱型コンバインの機体Wに、機体Wの下部を撮影範囲に含むカメラが設けられてもよい。例えば、機体Wに、クローラ走行装置62の前部(又は全部)、機体Wの下方の圃場などを撮影範囲に含むカメラが設けられてもよい。機体Wに、排藁処理装置71cの下部、排藁処理装置71cの下方の圃場、排藁処理装置71cの後方の圃場などを撮影範囲に含むカメラが設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、植立する作物を走行しながら収穫する収穫機に適用可能であり、普通型コンバインや自脱型コンバイン等に適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
2 :クローラ走行装置(走行装置)
3 :刈取部(収穫部)
3a :刈取フレーム(フレーム)
6 :掻込オーガ(オーガ)
7 :デバイダ
11 :脱穀装置
11c :排藁処理装置
21 :前カメラ(カメラ)
22 :後カメラ(カメラ)
23 :右カメラ(カメラ)
24 :左カメラ(カメラ)
25 :右下カメラ(カメラ)
26 :左下カメラ(カメラ)
27 :後下カメラ(カメラ)
33 :画像合成部
40 :表示部
50 :合成画像
63 :刈取部(収穫部)
63a :デバイダ
63b :引き起こし装置
70c :フィードチェーン
71 :脱穀装置
71c :排藁処理装置
81 :前カメラ(カメラ)
82 :後カメラ(カメラ)
83 :右カメラ(カメラ)
84 :左カメラ(カメラ)
86 :左下カメラ(カメラ)
90 :合成画像
V :機体
W :機体