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特許7241630張力付与装置、金属製品の製造装置及び金属製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】張力付与装置、金属製品の製造装置及び金属製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/16 20060101AFI20230310BHJP
   B21D 43/11 20060101ALI20230310BHJP
   B21D 43/05 20060101ALI20230310BHJP
   B21D 43/09 20060101ALI20230310BHJP
   B30B 15/30 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
B65H23/16
B21D43/11 A
B21D43/05 V
B21D43/09 F
B30B15/30 107
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019134445
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021017343
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 和泉
(72)【発明者】
【氏名】泉 智大
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-205836(JP,A)
【文献】特開2010-036464(JP,A)
【文献】登録実用新案第3005988(JP,U)
【文献】特開2008-302378(JP,A)
【文献】特公昭49-028701(JP,B2)
【文献】特開2013-028470(JP,A)
【文献】特開2009-056570(JP,A)
【文献】特開2017-043481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00-45/10
B30B 1/00-7/04
B30B 12/00-13/00
B30B 15/30-15/34
B65H 23/00-27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送出装置によって間欠的に搬送される金属板のうち二つのプレス加工装置の間を通過する部分を弾性的に押圧するように構成された押圧部材と、
前記金属板に対して前記押圧部材とは反対側に配置される支持部材と、
前記支持部材の動作を制御するように構成された動作制御部とを備え、
前記動作制御部は、前記送出装置による前記金属板の保持が解放されるのと同時又はその前に、前記押圧部材による前記金属板の押圧を規制するように前記支持部材を静止させることを実行する、張力付与装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、
前記金属板と当接するように構成されたテンションロールと、
前記テンションロールを回転可能に保持するように構成された保持部材と、
前記保持部材を付勢するように構成された付勢部材とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記支持部材は、
前記金属板と当接するように構成された支持ロールと、
前記支持ロールを回転可能に保持するように構成された他の保持部材と、
前記他の保持部材を付勢するように構成された他の付勢部材とを含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記動作制御部は、
偏心カムと、
前記偏心カムを回転させる駆動部とを含み、
前記支持部材を静止させることは、前記偏心カムの周面が前記他の保持部材に近づくように前記駆動部が前記偏心カムを回転させることにより、前記他の保持部材の動作を規制することを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記動作制御部は、
前記二つのプレス加工装置のうち一方のプレス加工装置の昇降部に接続可能に構成されたカムドライバと、
前記カムドライバの動作に伴い、前記カムドライバの動作方向と交差する方向に移動するように構成されたカムスライダとを含み、
前記支持部材を静止させることは、前記昇降部の下降に伴い前記カムドライバが前記カムスライダを前記交差する方向に押圧することにより、前記他の保持部材の動作を規制することを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記支持部材を静止させることは、前記押圧部材と前記支持部材とで前記金属板を挟持するように前記支持部材を前記押圧部材に対して近づけることを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記押圧部材は前記金属板の上方に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
金属板を間欠的に送り出すように構成された送出装置と、
前記送出装置によって搬送される前記金属板をプレス加工するように構成された第1のプレス加工装置と、
前記第1のプレス加工装置の下流側に配置され、前記送出装置によって搬送される前記金属板をプレス加工するように構成された第2のプレス加工装置と、
前記第1のプレス加工装置と前記第2のプレス加工装置との間に配置された請求項1~7のいずれか一項に記載の装置とを備える、金属製品の製造装置。
【請求項9】
金属板のうち二つのプレス加工装置の間を通過する部分を押圧部材によって弾性的に押圧しつつ、前記二つのプレス加工装置を順次通過するように前記金属板を送出装置によって搬送することと、
前記送出装置による前記金属板の保持が解放されるのと同時又はその前に、前記押圧部材による前記金属板の押圧を規制することと、
前記押圧部材による前記金属板の押圧が規制された状態で、前記二つのプレス加工装置がそれぞれ前記金属板を加工することと、
前記金属板を加工することの後に、前記送出装置によって前記金属板を保持することと、
前記送出装置によって前記金属板が保持されるのと同時又はその後に、前記押圧部材の規制を解除することとを含む、金属製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、張力付与装置、金属製品の製造装置及び金属製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工により金属板から金属製品を製造する場合、金属製品の形状等が複雑化すると、加工工程の増加に伴いプレス加工装置の金型が大型化する。金型が大型化すると、多数のパンチ及びダイをより精度よく金型に組み付けることが求められるので、プレス加工装置のコストが増加する傾向にある。また、金型が大型化すると、金型の重量増加に伴い金型の動作速度が低下するので、製品の製造効率が低下する傾向にある。そこで、特許文献1は、直列に配置された2つのプレス加工装置が同期して駆動するように構成された、タンデム式の金属製品の製造装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-205836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、2つのプレス加工装置の間に配置されたループガイド部を備える。ループガイド部は、2つの金型の間に架け渡された帯状の金属板を上方から押さえつけて金属板に張力を付与するように構成されている。これにより、金属板の間欠的な移動に伴って金属板に生ずることがある脈動が抑制される。
【0005】
しかしながら、ループガイド部が金属板を押さえつけることにより、金属板がループガイド部に近寄るように引っ張られてしまう。そのため、金型における金属板の位置がずれてしまう懸念があった。
【0006】
そこで、本開示は、金属板の位置ずれを抑制することが可能な張力付与装置、金属製品の製造装置及び金属製品の製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの観点に係る張力付与装置は、送出装置によって間欠的に搬送される金属板のうち二つのプレス加工装置の間を通過する部分を弾性的に押圧するように構成された押圧部材と、金属板に対して押圧部材とは反対側に配置される支持部材と、支持部材の動作を制御するように構成された動作制御部とを備える。動作制御部は、送出装置による金属板の保持が解放されるのと同時又はその前に、押圧部材による金属板の押圧を規制するように支持部材を静止させることを実行する。
【0008】
本開示の他の観点に係る金属製品の製造装置は、金属板を間欠的に送り出すように構成された送出装置と、送出装置によって搬送される金属板をプレス加工するように構成された第1のプレス加工装置と、第1のプレス加工装置の下流側に配置され、送出装置によって搬送される金属板をプレス加工するように構成された第2のプレス加工装置と、第1のプレス加工装置と第2のプレス加工装置との間に配置された上記の張力付与装置とを備える。
【0009】
本開示の他の観点に係る金属製品の製造方法は、金属板のうち二つのプレス加工装置の間を通過する部分を押圧部材によって弾性的に押圧しつつ、二つのプレス加工装置を順次通過するように金属板を送出装置によって搬送することと、送出装置による金属板の保持が解放されるのと同時又はその前に、押圧部材による金属板の押圧を規制することと、押圧部材による金属板の押圧が規制された状態で、二つのプレス加工装置がそれぞれ金属板を加工することと、金属板を加工することの後に、送出装置によって金属板を保持することと、送出装置によって金属板が保持されるのと同時又はその後に、押圧部材の規制を解除することとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る張力付与装置、金属製品の製造装置及び金属製品の製造方法によれば、金属板の位置ずれを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、金属製品の製造装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、図1の装置の動作を説明するための概略図である。
図3図3は、金属製品の製造装置の他の例を示す概略図である。
図4図4は、金属製品の製造装置のさらに他の例を示す概略図である。
図5図5は、金属製品の製造装置のまたさらに他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
[金属製品の製造装置の構成]
図1を参照して、金属製品の製造装置1の全体構成について説明する。製造装置1は、いわゆる、2台のプレス加工装置が直列に配置されたタンデム式の装置である。製造装置1は、図示しないアンコイラーと、送出装置10,20と、プレス加工装置30,40と、張力付与装置100と、コントローラCtrとを備える。製造装置1は、送出装置10,20によって順送りされる帯状の金属板M(例えば、電磁鋼板)を、同期駆動される2つのプレス加工装置30,40によって打ち抜いて、金属板Mから金属製品を形成するように構成されている。2つのプレス加工装置30,40は、両者がクランクシャフト等の連結部材によって物理的に連結されることで同期駆動されてもよいし、電気的な制御により同期駆動されてもよい。製造装置1によって形成される金属製品は、例えば、回転子積層鉄心、固定子積層鉄心、リードフレームなどが挙げられる。
【0014】
アンコイラーは、コイル材を回転自在に保持するように構成されている。コイル材は、金属板Mがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。
【0015】
送出装置10は、金属板Mの搬送方向において、プレス加工装置30の上流側に配置されている。送出装置10は、金属板Mを上下から挟み込む一対のローラ11,12を含む。一対のローラ11,12は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、金属板Mをプレス加工装置30(第1のプレス加工装置)に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。一対のローラ11,12は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて上下動するように構成されている。例えば、一対のローラ11,12は、互いに近づいて金属板Mを挟持する近接位置と、互いに離間して金属板Mと非接触状態となる離間位置との間で移動可能に構成されている。
【0016】
送出装置20は、金属板Mの搬送方向において、プレス加工装置40の下流側に配置されている。送出装置20は、金属板Mを上下から挟み込む一対のローラ21,22を含む。一対のローラ21,22は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、プレス加工装置40(第2のプレス加工装置)から排出された金属板Mを間欠的に順次送り出すように構成されている。一対のローラ21,22は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて上下動するように構成されている。例えば、一対のローラ21,22は、互いに近づいて金属板Mを挟持する近接位置と、互いに離間して金属板Mと非接触状態となる離間位置との間で移動可能に構成されている。
【0017】
プレス加工装置30,40はそれぞれ、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作し、送出装置10,20によって間欠的に搬送される金属板Mを順次プレス加工するように構成されている。プレス加工装置30は、例えば、ベッド31、ボルスタ32、下型33、ストリッパ34、上型35(昇降部)、スライダ36(昇降部)、複数のパンチ(図示せず)、複数の位置決めピン(図示せず)などを含む。同様に、プレス加工装置40は、例えば、ベッド41、ボルスタ42、下型43、ストリッパ44、上型45、スライダ46、複数のパンチ(図示せず)、複数の位置決めピン(図示せず)などを含む。プレス加工装置30,40は、金属板Mの搬送方向において直列に並ぶように配置されている。
【0018】
張力付与装置100は、プレス加工装置30,40の間に位置するように配置されている。張力付与装置100は、金属板Mのうちプレス加工装置30とプレス加工装置40との間に延びる部分(以下、「中間部Ma」と称する。)に張力を付与するように構成されている。張力付与装置100の構成については、後述する。
【0019】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置10,20及びプレス加工装置30,40をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、これらに送信するように構成されている。
【0020】
[張力付与装置の構成]
続いて、図1及び図2を参照して、張力付与装置100の構成について説明する。張力付与装置100は、補助ロール101,102と、押圧部材110と、支持部材120と、動作制御部130とを含む。
【0021】
補助ロール101,102は、金属板Mの搬送方向においてこの順に並ぶようにプレス加工装置30とプレス加工装置40との間に配置されている。補助ロール101,102は、中間部Maを下から支持するように構成されている。
【0022】
押圧部材110は、テンションロール111と、保持部材112と、付勢部材113とを含む。テンションロール111は、金属板Mの搬送方向において補助ロール101,102の間で且つ金属板Mの上方に配置されている。保持部材112は、テンションロール111を回転可能に保持している。
【0023】
付勢部材113は、鉛直方向において保持部材112と固定壁等の構造物との間に取り付けられており、保持部材112と共にテンションロール111を下方に向けて付勢するように構成されている。その結果、付勢部材113によって付勢されたテンションロール111は、中間部Maを下方に向けて弾性的に押圧する。付勢部材113は、例えば、バネ、ゴム等であってもよいし、コントローラCtrからの指示信号に基づいて保持部材112を変位させるアクチュエータ等であってもよい。なお、押圧部材110が付勢部材113を含んでおらず、テンションロール111自身の重量により中間部Maを下方に向けて押圧してもよい。
【0024】
支持部材120は、支持ロール121と、保持部材122(他の保持部材)と、付勢部材123(他の付勢部材)とを含む。支持ロール121は、金属板Mの搬送方向において補助ロール101,102の間で且つテンションロール111及び金属板Mの下方に配置されている。保持部材122は、支持ロール121を回転可能に保持している。保持部材122は、水平方向において、固定壁等の構造物と後述するカムスライダ134との間に配置されている。
【0025】
付勢部材123は、鉛直方向において保持部材122と固定壁等の構造物との間に取り付けられており、保持部材122と共に支持ロール121を上方に向けて付勢するように構成されている。その結果、付勢部材123によって付勢された支持ロール121は、中間部Maを上方に向けて押圧する。付勢部材123は、例えば、バネ、ゴム等であってもよいし、コントローラCtrからの指示信号に基づいて保持部材122を変位させるアクチュエータ等であってもよい。付勢部材123の付勢力は、付勢部材113の付勢力よりも小さく設定されていてもよい。
【0026】
動作制御部130は、ベース部材131と、付勢部材132と、カムドライバ133と、カムスライダ134とを含む。ベース部材131は、プレス加工装置30のスライダ36に接続されている。すなわち、ベース部材131は、スライダ36が上型35を昇降させるのに伴って上下動するように構成されている。なお、ベース部材131は、上型35に直接接続されていてもよい。付勢部材132は、鉛直方向においてベース部材131とカムドライバ133との間に取り付けられている。付勢部材132は、ベース部材131とカムドライバ133との間で圧縮され、カムドライバ133からカムスライダ134に過剰な力が作用することを抑制するように構成されている。
【0027】
カムドライバ133は、スライダ36が上型35を昇降させるのに伴い、ベース部材131及び付勢部材132を介して上下動するように構成されている。カムドライバ133の下端面は、鉛直方向に対して交差する傾斜面を呈している。カムスライダ134は、水平方向に沿って移動するように構成されている。カムスライダ134のうちカムドライバ133寄りの側端面は、鉛直方向に対して交差する傾斜面を呈しており、カムドライバ133の下端面と当接するように構成されている。カムスライダ134のうち保持部材122寄りの側端面は、保持部材122と対向している。
【0028】
カムドライバ133が下降すると、カムドライバ133の下端面がカムスライダ134の側端面を滑りながら横方向に押し出す。これにより、図2に示されるように、カムスライダ134は、保持部材122を固定壁等の構造物に押しつける。すなわち、カムスライダ134と固定壁等の構造物とによって保持部材122が挟持され、保持部材122の上下動が拘束される。そのため、支持ロール121が静止する。したがって、テンションロール111が下方に移動すること、すなわち、テンションロール111が金属板Mを押下することが、支持ロール121によって規制される。
【0029】
保持部材122の拘束は、ローラ11,12が金属板Mと非接触状態となり且つローラ21,22が金属板Mと非接触状態となるのと同時又はその前に実行される。例えば、保持部材122の拘束は、ローラ11,12が金属板Mと非接触状態となり且つローラ21,22が金属板Mと非接触状態となる0秒前~0.1秒前の間に実行されてもよい。あるいは、例えば、送出装置10,20が金属板Mを搬送していないときに、保持部材122が拘束されてもよい。一方、保持部材122の拘束は、ローラ11,12が金属板Mを挟持し且つローラ21,22が金属板Mを挟持した後に解除されてもよい。
【0030】
[金属製品の製造装置の動作]
次に、金属製品の製造装置1の動作について説明する。まず、図1に示されるように、コントローラCtrが送出装置10,20を制御して、金属板Mが二つのプレス加工装置30,40を順次通過するように、金属板Mを間欠的に搬送する。金属板Mが所定量だけ搬送されると、送出装置10,20の動作が停止する。
【0031】
次に、コントローラCtrがプレス加工装置30,40を制御して、スライダ36,46を介して上型35,45を金属板Mに向けてそれぞれ降下させる。このとき、スライダ36に接続されているベース部材131を介して、カムドライバ133も降下する。これにより、カムスライダ134は、カムドライバ133によって保持部材122に近づくように水平に押し出される。
【0032】
上型35がさらに降下して、カムスライダ134と固定壁等の構造物との間で保持部材122が拘束されるタイミングで、コントローラCtrが送出装置10,20を制御して、ローラ11,12,21,22による金属板Mの保持が解放される。保持部材122が拘束されるタイミングは、ローラ11,12が金属板Mと非接触状態となり且つローラ21,22が金属板Mと非接触状態となるのと同時又はその前である。
【0033】
引き続き上型35,45がさらに降下して、金属板Mがプレス加工装置30,40によって加工される。次に、コントローラCtrが送出装置10,20を制御して、ローラ11,12,21,22によって金属板Mを保持させる。また、コントローラCtrがプレス加工装置30,40を制御して、スライダ36,46を介して上型35,45を上昇させる。上型35が上昇する過程で、カムドライバ133も共に上昇し、カムスライダ134と固定壁等の構造物とによる保持部材122の拘束が解除される。保持部材122が解放されるタイミングは、ローラ11,12が金属板Mと接触状態となり且つローラ21,22が金属板Mと接触状態となるのと同時又はその前である。
【0034】
次に、コントローラCtrが送出装置10,20を制御して、金属板Mが二つのプレス加工装置30,40を順次通過するように、金属板Mを間欠的に搬送する。その後は、上述した動作が繰り返されることにより、金属板Mが順送り加工される。
【0035】
[作用]
以上の例によれば、動作制御部130が保持部材122を拘束していない場合(静止状態としていない場合)、送出装置10,20が金属板Mを保持して間欠的に搬送している状態において、テンションロール111が金属板Mを押圧する。そのため、金属板Mに張力が付与された状態で金属板Mが搬送されるので、金属板Mに脈動が生じ難くなる。一方、動作制御部130が保持部材122を拘束している場合(静止状態としている場合)、テンションロール111による金属板Mの押圧が支持ロール121によって抑制される。すなわち、支持ロール121は、金属板Mを介してテンションロール111を背後から支持し、支持ロール121に近づく方向へのテンションロール111の移動を規制する。そのため、金属板Mが送出装置10,20による保持から解放された状態において、テンションロール111による金属板Mの押圧が抑制される。その結果、金属板Mの位置ずれを抑制することが可能となる。
【0036】
以上の例によれば、金属板Mのうちテンションロール111と当接する部分がテンションロール111の外径に沿って円弧状に湾曲する。そのため、テンションロール111から金属板Mに作用する応力が分散するので、金属板Mの変形を抑制することが可能となる。
【0037】
以上の例によれば、テンションロール111は、回転可能に保持部材112に保持されている。そのため、送出装置10,20による金属板Mの搬送に際して、金属板Mに当接するテンションロール111が回転する。したがって、テンションロール111から金属板Mに摩擦力が作用し難いので、送出装置10,20により金属板Mをスムーズに搬送することが可能となる。
【0038】
以上の例によれば、テンションロール111と支持ロール121とで金属板Mを挟持するように、支持ロール121が金属板Mを介してテンションロール111を背後から支持する。そのため、保持部材122が静止状態にあるか否かにかかわらず、送出装置10,20による金属板Mの搬送に際して、金属板Mに当接する支持ロール121が回転する。したがって、支持ロール121から金属板Mに摩擦力が作用し難いので、送出装置10,20により金属板Mをスムーズに搬送することが可能となる。
【0039】
以上の例によれば、保持部材122の静止状態において、テンションロール111と支持ロール121とで金属板Mが挟持されるので、支持ロール121に近づく方向へのテンションロール111の移動が確実に規制される。そのため、金属板Mが送出装置10,20による保持から解放された状態において、金属板Mの位置ずれをいっそう抑制することが可能となる。
【0040】
以上の例によれば、カムドライバ133がベース部材131及び付勢部材132を介してプレス加工装置30のスライダ36に接続されており、スライダ36の下降に伴いカムドライバ133がカムスライダ134を水平方向に押圧している。そのため、別の動力源を用いることなく、スライダ36の上下動に追従して、支持ロール121の静止状態と非静止状態とを切り替えることが可能となる。
【0041】
以上の例によれば、テンションロール111が金属板Mの上方に配置されている。そのため、金属板Mが下方から押し上げられるときと比較して、金属板Mにたるみが生じ難くなる。
【0042】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0043】
(1)図3に示される動作制御部130の他の例について、説明する。図3の動作制御部130は、偏心カム135と、駆動部136と、動力伝達部137とを含む。偏心カム135は、動力伝達部137を介して保持部材122の側方に配置されている。駆動部136は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて偏心カム135を回転駆動させるように構成されている。駆動部136が偏心カム135を回転駆動させると、偏心カム135の周面が保持部材122に近づいたり遠ざかったりする。駆動部136は、例えば、モータであってもよい。
【0044】
動力伝達部137は、偏心カム135と保持部材122とを弾性的に接続している。そのため、偏心カム135が回転して偏心カム135の周面が保持部材122に近づくと、動力伝達部137が保持部材122に向けて押し出される。これにより、動力伝達部137は、保持部材122を固定壁等の構造物に押しつける。すなわち、動力伝達部137と固定壁等の構造物とによって保持部材122が挟持され、保持部材122の上下動が拘束される。そのため、支持ロール121が静止する。したがって、テンションロール111が下方に移動すること、すなわち、テンションロール111が金属板Mを押下することが、支持ロール121によって規制される。この場合、駆動部136により偏心カム135を回転させるだけで、保持部材122の静止状態と非静止状態とを切り替えることが可能となる。
【0045】
(2)図4に示される動作制御部130の他の例について、説明する。図4の動作制御部130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、駆動部材(例えば、駆動ロッド、駆動スライダなど)を直線的に動作させるように構成された直動機構である。直動機構は、例えば、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータ、電動アクチュエータ、電磁ソレノイドなどであってもよい。
【0046】
駆動部材が保持部材122に近づくように動作制御部130がコントローラCtrによって制御されると、駆動部材は、保持部材122を固定壁等の構造物に押しつける。すなわち、駆動部材と固定壁等の構造物とによって保持部材122が挟持され、保持部材122の上下動が拘束される。そのため、支持ロール121が静止する。したがって、テンションロール111が下方に移動すること、すなわち、テンションロール111が金属板Mを押下することが、支持ロール121によって規制される。この場合、動作制御部130をコントローラCtrによって制御するだけで、保持部材122の静止状態と非静止状態とを切り替えることが可能となる。
【0047】
(3)図5に示される動作制御部130の他の例について、説明する。図5の動作制御部130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、支持ロール121を回転可能に保持する保持部材122を直線的に動作させるように構成された直動機構である。直動機構は、例えば、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータ、電動アクチュエータ、電磁ソレノイドなどであってもよい。
【0048】
支持ロール121及び保持部材122がテンションロール111に近づくように動作制御部130がコントローラCtrによって制御されると、支持ロール121が金属板Mを介してテンションロール111に押しつけられる。この状態で、支持ロール121及び保持部材122が静止するようコントローラCtrが動作制御部130を制御すると、テンションロール111が下方に移動すること、すなわち、テンションロール111が金属板Mを押下することが、支持ロール121によって規制される。この場合、動作制御部130をコントローラCtrによって制御するだけで、支持ロール121及び保持部材122の静止状態と非静止状態とを切り替えることが可能となる。
【0049】
[他の例]
例1.本開示の一つの例に係る張力付与装置(100)は、送出装置(10,20)によって間欠的に搬送される金属板(M)のうち二つのプレス加工装置(30,40)の間を通過する部分を弾性的に押圧するように構成された押圧部材(110)と、金属板(M)に対して押圧部材(110)とは反対側に配置される支持部材(120)と、支持部材(120)の動作を制御するように構成された動作制御部(130)とを備える。動作制御部(130)は、送出装置(10,20)による金属板(M)の保持が解放されるのと同時又はその前に、押圧部材(110)による金属板(M)の押圧を規制するように支持部材(120)を静止させることを実行する。動作制御部が支持部材を静止状態としていない場合、送出装置が金属板を保持して間欠的に搬送している状態において、押圧部材が金属板を押圧する。そのため、金属板に張力が付与された状態で金属板が搬送されるので、金属板に脈動が生じ難くなる。一方、動作制御部が支持部材を静止状態としている場合、押圧部材による金属板の押圧が支持部材によって抑制される。すなわち、支持部材は、金属板を介して押圧部材を背後から支持し、支持部材に近づく方向への押圧部材の移動を規制する。そのため、金属板が送出装置による保持から解放された状態であっても、押圧部材による金属板の押圧が抑制される。その結果、金属板の位置ずれを抑制することが可能となる。
【0050】
例2.例1の装置(100)において、押圧部材(110)は、金属板(M)と当接するように構成されたテンションロール(111)と、テンションロール(111)を回転可能に保持するように構成された保持部材(112)と、保持部材(112)を付勢するように構成された付勢部材(113)とを含んでいてもよい。この場合、金属板のうちテンションロールと当接する部分がテンションロールの外径に沿って円弧状に湾曲する。そのため、テンションロールから金属板に作用する応力が分散するので、金属板の変形を抑制することが可能となる。また、この場合、送出装置による金属板の搬送に際して、金属板に当接するテンションロールが回転する。そのため、テンションロールから金属板に摩擦力が作用し難いので、送出装置により金属板をスムーズに搬送することが可能となる。
【0051】
例3.例1又は例2の装置(100)において、支持部材(120)は、金属板(M)と当接するように構成された支持ロール(121)と、支持ロール(121)を回転可能に保持するように構成された他の保持部材(122)と、他の保持部材(122)を付勢するように構成された他の付勢部材(123)とを含んでいてもよい。この場合、押圧部材と支持ロールとで金属板を挟持するように、支持部材が金属板を介して押圧部材を背後から支持することとなる。そのため、支持部材が静止状態にあるか否かにかかわらず、送出装置による金属板の搬送に際して、金属板に当接する支持ロールが回転する。したがって、支持ロールから金属板に摩擦力が作用し難いので、送出装置により金属板をスムーズに搬送することが可能となる。また、この場合、支持部材の静止状態において、押圧部材と支持ロールとで金属板が挟持されるので、支持ロールに近づく方向への押圧部材の移動が確実に規制される。そのため、金属板が送出装置による保持から解放された状態において、金属板の位置ずれをいっそう抑制することが可能となる。
【0052】
例4.例3の装置(100)において、動作制御部(130)は、偏心カム(135)と、偏心カム(135)を回転させる駆動部(136)とを含み、支持部材(110)を静止させることは、偏心カム(135)の周面が他の保持部材(122)に近づくように駆動部(136)が偏心カム(135)を回転させることにより、他の保持部材(122)の動作を規制することを含んでいてもよい。この場合、駆動部により偏心カムを回転させるだけで、支持部材の静止状態と非静止状態とを切り替えることが可能となる。
【0053】
例5.例3の装置(100)において、動作制御部(130)は、二つのプレス加工装置(30,40)のうち一方のプレス加工装置(30)の昇降部(35,36)に接続可能に構成されたカムドライバ(133)と、カムドライバ(133)の動作に伴い、カムドライバ(133)の動作方向と交差する方向に移動するように構成されたカムスライダ(134)とを含み、支持部材(110)を静止させることは、昇降部(35,36)の下降に伴いカムドライバ(133)がカムスライダ(134)を交差する方向に押圧することにより、他の保持部材(122)の動作を規制することを含んでいてもよい。この場合、別の動力源を用いることなく、一方のプレス加工装置のうちの昇降部の上下動に追従して、支持部材の静止状態と非静止状態とを切り替えることが可能となる。
【0054】
例6.例3の装置(100)において、支持部材(120)を静止させることは、押圧部材(110)と支持部材(120)とで金属板(M)を挟持するように支持部材(120)を押圧部材(110)に対して近づけることを含んでいてもよい。この場合、支持部材の静止状態において、押圧部材と支持部材とで金属板が挟持されるので、支持部材に近づく方向への押圧部材の移動が確実に規制される。そのため、金属板が送出装置による保持から解放された状態において、金属板の位置ずれをいっそう抑制することが可能となる。
【0055】
例7.例1~例6のいずれかの装置(100)において、押圧部材(110)は金属板(M)の上方に配置されていてもよい。金属板を下方から押し上げるように押圧部材が金属板を押圧するときと比較して、このように金属板を上方から押下するように押圧部材が金属板を押圧することにより、金属板にたるみが生じ難くなる。
【0056】
例8.本開示の他の例に係る金属製品の製造装置(1)は、金属板(M)を間欠的に送り出すように構成された送出装置(10,20)と、送出装置(10,20)によって搬送される金属板(M)をプレス加工するように構成された第1のプレス加工装置(30)と、第1のプレス加工装置(30)の下流側に配置され、送出装置(10,20)によって搬送される金属板(M)をプレス加工するように構成された第2のプレス加工装置(40)と、第1のプレス加工装置(30)と第2のプレス加工装置(40)との間に配置された例1~例7のいずれかに記載の装置(100)とを備える。この場合、少なくとも例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【0057】
例9.本開示の他の例に係る金属製品の製造方法は、金属板(M)のうち二つのプレス加工装置(30,40)の間を通過する部分を押圧部材(110)によって弾性的に押圧しつつ、二つのプレス加工装置(30,40)を順次通過するように金属板(M)を送出装置(10,20)によって搬送することと、送出装置(10,20)による金属板(M)の保持が解放されるのと同時又はその前に、押圧部材(110)による金属板(M)の押圧を規制することと、押圧部材(110)による金属板(M)の押圧が規制された状態で、二つのプレス加工装置(30,40)がそれぞれ金属板(M)を加工することと、金属板(M)を加工することの後に、送出装置(10,20)によって金属板(M)を保持することと、送出装置(10,20)によって金属板(M)が保持されるのと同時又はその後に、押圧部材(110)の規制を解除することとを含む。この場合、少なくとも例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0058】
1…金属製品の製造装置、10,20…送出装置、30…プレス加工装置(第1のプレス加工装置)、35…上型(昇降部)、36…スライダ(昇降部)、40…プレス加工装置(第2のプレス加工装置)、100…張力付与装置、110…押圧部材、111…テンションロール、112…保持部材、113…付勢部材、120…支持部材、121…支持ロール、122…保持部材(他の保持部材)、123…付勢部材(他の付勢部材)、130…動作制御部、131…ベース部材、132…付勢部材、133…カムドライバ、134…カムスライダ、135…偏心カム、136…駆動部、M…金属板。
図1
図2
図3
図4
図5