(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】発電ブレーキ抵抗体、発電ブレーキ抵抗体ユニット及び電気駆動方式のダンプトラック
(51)【国際特許分類】
B60L 7/22 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
B60L7/22 Z
(21)【出願番号】P 2019166654
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2021-05-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北口 篤
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴照
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河野 竜治
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴行
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-076005(JP,U)
【文献】特開平06-318501(JP,A)
【文献】特開2016-136129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体と、
前記筒体に積層される複数の、回生制動によって生じた電気エネルギを熱エネルギに変換する発電ブレーキ抵抗体と、
を備え、
前記発電ブレーキ抵抗体は、一定の間隔Pを有するように繰り返し折り返された帯状の発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体の繰り返し方向に離れて設けられるとともに、間に前記発熱抵抗体が配置された第1側板及び第2側板と、を備え、前記繰り返し方向において、前記第1側板とそれに隣接する前記発熱抵抗体との間隔をmとしたとき、前記第2側板とそれに隣接する前記発熱抵抗体との間隔はm+P/
2であり、
前記複数の発電ブレーキ抵抗体は、前記繰り返し方向と直交する方向である積層方向に沿って積層され、
前記複数の発電ブレーキ抵抗体のうちの少なくとも一部は、隣接する一方の発電ブレーキ抵抗体の第1側板と他方の発電ブレーキ抵抗体の第2側板とが前記積層方向に隣り合うように交互に180度反転された状態で積層されていることを特徴とする発電ブレーキ抵抗体ユニット。
【請求項2】
前記発電ブレーキ抵抗体は、帯状の前記発熱抵抗体の両端部のうち、前記第1側板に隣接する端部に配置された第1接続端子と前記第2側板に隣接する端部に配置された第2接続端子とを更に備え、
前記繰り返し方向において、前記第1接続端子と前記第1側板との間隔は、前記第2接続端子と前記第2側板との間隔と等しい請求項
1に記載の発電ブレーキ抵抗体ユニット。
【請求項3】
前記発電ブレーキ抵抗体は、前記第1側板及び前記第2側板の間に架設され、前記発熱抵抗体を挟持する板状の絶縁挟持具を更に備える請求項1
又は2に記載の発電ブレーキ抵抗体ユニット。
【請求項4】
前記積層方向に流れる気流を形成する送風機を更に備える請求項1~
3のいずれか一項に記載の発電ブレーキ抵抗体ユニット。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の発電ブレーキ抵抗体ユニットを備えることを特徴とする電気駆動方式のダンプトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生制動によって生じた電気エネルギを熱エネルギに変換する発電ブレーキ抵抗体、発電ブレーキ抵抗体ユニット及び電気駆動方式のダンプトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような技術分野として、例えば下記特許文献に記載されるものがある。特許文献1に記載の発電ブレーキ抵抗体ユニットでは、帯状の発熱抵抗体が任意の長さで任意のピッチで折り曲げられて束状にされ、絶縁体を介して構造体に固定されている。発熱抵抗体は、電気が流れるとジュール熱を発生し、電気エネルギを熱エネルギに変換する機能を有する。この発電ブレーキ抵抗体ユニットでは、消費する電力量によって発熱抵抗体の数量を選択し、選択した発熱抵抗体を直列に配線して通電するが、これらの複数の発熱抵抗体を冷却するために、発熱抵抗体を同一列に縦列配置するように積層し、例えば送風機により冷却風を送ることで連続的な電力消費が可能となっている。
【0003】
また、特許文献2に記載の電気駆動方式のダンプトラックは、エンジンにより発電機で電気を発電し、インバータとコントローラにより電力をリアアクスル内の電気モータに送電して電気モータを駆動させ、減速機を介して車輪が回転することにより走行する。そして、減速若しくは停止するには電気モータによる電力回生により減速する手段(すなわち、電気ブレーキ)を使用する。その減速若しくは停止時に回生した電気エネルギは、発電ブレーキ抵抗体ユニットで発熱抵抗体に通電して熱に変換しその熱を送風機で外部に放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第971373号明細書
【文献】国際公開第2018/47270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した発電ブレーキ抵抗体ユニットにおいて、発熱抵抗体の放熱性能、すなわち熱伝達率を向上させる必要がある。発熱抵抗体の放熱性能を向上するために、例えば発熱抵抗体の数量を増やすことが考えられるが、発熱抵抗体の数量の増加に伴って質量増や寸法拡大を招くだけでなく、発電ブレーキ抵抗体ユニットの増大によるオペレータの視界に影響する問題も生じる。また、放熱性能を向上するために、例えば冷却風の風速を上げる、すなわち送風機の出力を上げることも考えられるが,送風機の高出力化によるパワーユニットの出力消費量の増加、更に寸法拡大に伴って視界の悪化を招く問題がある。
【0006】
上述の課題に鑑みて、本発明は、発熱抵抗体の熱伝達率を高めることができ、放熱性能を向上できる発電ブレーキ抵抗体、発電ブレーキ抵抗体ユニット及び電気駆動方式のダンプトラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発電ブレーキ抵抗体は、回生制動によって生じた電気エネルギを熱エネルギに変換する発電ブレーキ抵抗体であって、一定の間隔Pを有するように繰り返し折り返された帯状の発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体の繰り返し方向に離れて設けられるとともに、間に前記発熱抵抗体が配置された第1側板及び第2側板と、を備え、前記繰り返し方向において、前記第1側板とそれに隣接する前記発熱抵抗体との間隔をmとしたとき、前記第2側板とそれに隣接する前記発熱抵抗体との間隔はm+P/n(nは2以上の自然数)であることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る発電ブレーキ抵抗体では、繰り返し方向において第1側板とそれに隣接する発熱抵抗体との間隔をmとしたとき、第2側板とそれに隣接する発熱抵抗体との間隔はm+P/n(nは2以上の自然数)であるので、このような構造を有する発電ブレーキ抵抗体を複数積層する際に、交互に180度反転して積層することにより、積層された発熱抵抗体を千鳥状に配置することができる。これによって、発熱抵抗体の熱伝達率を高めることができ、放熱性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発熱抵抗体の熱伝達率を高めることができ、放熱性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体を示す正面図である。
【
図2】実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体を示す平面図である。
【
図5】実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体ユニットを示す平面図である。
【
図6】実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体ユニットを示す側面図である。
【
図7】実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット(上蓋を外した状態)を示す平面図である。
【
図8】実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット内における発熱抵抗体の配置状態を示す模式図である。
【
図9】変形例1に係る発電ブレーキ抵抗体を示す平面図である。
【
図10】変形例1に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット(上蓋を外した状態)を示す平面図である。
【
図11】変形例2に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット(上蓋を外した状態)を示す平面図である。
【
図12】変形例2に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット内における発熱抵抗体の配置状態を示す模式図である。
【
図13】変形例3に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット(上蓋を外した状態)を示す平面図である。
【
図14】変形例3に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット内における発熱抵抗体の配置状態を示す模式図である。
【
図15】発電ブレーキ抵抗体ユニットを搭載した電気駆動方式のダンプトラックの概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態の説明に先立ち、本発明に至った経緯を説明する。
【0012】
一般的には、平板状の発熱抵抗体を用いた場合、冷却風に対して発熱抵抗体の平板における上流側のエッジから温度境界層が形成されるので、エッジ部が最も熱伝達率が高くなる。そして、複数の発熱抵抗体を同一列に縦列配置して積層した場合、積層した各々の発熱抵抗体が同一平面に位置するため、エッジ温度境界層が分断され難く、熱伝達率が低下する可能性がある。そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねった結果、積層した発熱抵抗体を千鳥状に配置にすれば、発熱抵抗体の平板における上流側のエッジからなる温度境界層を確実に分断でき、熱伝達率を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る発電ブレーキ抵抗体、発電ブレーキ抵抗体ユニット及び電気駆動方式のダンプトラックの実施形態について順次説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。また、下記の説明において、上下、左右等の位置は、説明が煩雑になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際の使用状態での位置を指すとは限らない。更に、説明の煩雑を避けるために、「発熱抵抗体の繰り返し方向」を「繰り返し方向」、「発電ブレーキ抵抗体の積層方向」を「積層方向」と省略する場合がある。
【0014】
[発電ブレーキ抵抗体]
図1は実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体を示す正面図であり、
図2は実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体を示す平面図である。
図3は
図1中のA-A線に沿う端面図であり、
図4は
図1中のB-B線に沿う端面図である。本実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体100は、回生制動によって生じた電気エネルギを熱エネルギに変換するものであり、主に、一定の間隔Pを有するように繰り返し折り返された帯状の発熱抵抗体110と、発熱抵抗体110を支持する支持体120とを備えている。
【0015】
発熱抵抗体110は、一定の幅を有する帯状の金属板をその長さ方向に沿って蛇行状に繰り返し折り返すことにより形成されている。そして、隣接する発熱抵抗体110同士は、互いに接触しないように一定の間隔Pをもって離れている。発熱抵抗体110の材料として、発熱性に優れたクロムやアルミニウムなどの合金が挙げられる。
【0016】
支持体120は、発熱抵抗体110の繰り返し方向に延びる長方形の底板121と、底板121の長さ方向(すなわち、繰り返し方向)の両端部からそれぞれ立設されるとともに互いに離れた第1側板122及び第2側板123と、第1側板122及び第2側板123の間に架設されるとともに第1側板122及び第2側板123のそれぞれの上端に固定された天板124とを有する。支持体120は、支持される発熱抵抗体110との絶縁性を確保できれば、その材料が金属材料又は樹脂材料であっても良いが、発熱抵抗体110の安定性及び耐振性等を考慮した場合、アルミニウムやステンレスなどの金属材料によって形成されることが好ましい。
【0017】
第1側板122及び第2側板123は、それぞれ断面コ字状に形成されている(
図3及び
図4参照)。このようにすることで、第1側板122及び第2側板123の強度を高めることができる。そして、第1側板122及び第2側板123は、それぞれのコ字状の開口が外側に向くように互いに対向して配置されており、それらの間には上述の繰り返し折り返された発熱抵抗体110が配置されている。
【0018】
また、
図1に示すように、底板121と天板124との間であって、第1側板122及び第2側板123の間には、発熱抵抗体110を挟持する板状の絶縁挟持具125が複数本(本実施形態では、3本)架設されている。より具体的には、3本の絶縁挟持具125は、紙面の上下方向において所定の間隔をもって離れて配置されている。真ん中の絶縁挟持具125は発熱抵抗体110の中央部、上側(すなわち天板124側)の絶縁挟持具125は発熱抵抗体110の上端部、下側(すなわち底板121側)の絶縁挟持具125は発熱抵抗体110の下端部をそれぞれ挟持するようになっている。
【0019】
各絶縁挟持具125は、発熱抵抗体110の幅方向から該発熱抵抗体110を挟むように、互いに離れた第1絶縁挟持具125aと第2絶縁挟持具125bとを有する(
図4参照)。第1絶縁挟持具125a及び第2絶縁挟持具125bは、それぞれ例えば硬い樹脂材料によって形成されている。第1絶縁挟持具125aにおける第2絶縁挟持具125bと対向する表面には、発熱抵抗体110の幅を受け入れる溝125cが複数形成されている。なお、溝125cの数は、発熱抵抗体110の繰り返し数に対応するようになっている。同様に、第2絶縁挟持具125bにおける第1絶縁挟持具125aに対向する表面にも、発熱抵抗体110の幅を受け入れる溝125cが複数形成されている。
【0020】
第1絶縁挟持具125a及び第2絶縁挟持具125bの両端は、それぞれボルト126を介して第1側板122及び第2側板123に固定されている。このような構成を有する絶縁挟持具125を用いて発熱抵抗体110を挟持する際に、例えば先に第1絶縁挟持具125aを第1側板122及び第2側板123に固定させる。次に、繰り返し折り返された発熱抵抗体110が第1絶縁挟持具125aの各溝125cに入り込むように発熱抵抗体110を第1絶縁挟持具125aに当接させる。この当接させた状態で、第2絶縁挟持具125bを第1側板122及び第2側板123に固定させる。このような分離可能な第1絶縁挟持具125a及び第2絶縁挟持具125bを利用することで、発熱抵抗体110を容易に挟持したり取り外したりすることができる。
【0021】
また、発電ブレーキ抵抗体100は、帯状の発熱抵抗体110の両端部のうち、第1側板122に隣接する端部に配置された第1接続端子130と第2側板123に隣接する端部に配置された第2接続端子131とを更に備えている。
図1に示すように、第1接続端子130及び第2接続端子131は、天板124から外方(ここでは、上方)に突出するように構成されている。このようにすれば、複数の発電ブレーキ抵抗体100を積層する際に、隣接する接続端子同士を容易にバスバーで電気的に接続することができる。
【0022】
図2に示すように、第1接続端子130及び第2接続端子131は、それぞれリング状の絶縁部材127を介して天板124に取り付けられている。なお、第1接続端子130及び第2接続端子131は、それぞれ発熱抵抗体110と別体に設けられた端子によって形成されても良く、発熱抵抗体110と一体的に形成されても良い。発熱抵抗体110と別体に設けられた端子の場合は、例えば半田付けや溶接で発熱抵抗体110の端部と電気的に接続される。一方、発熱抵抗体110と一体的に形成された場合は、発熱抵抗体110の両端部は、第1接続端子130及び第2接続端子131を構成することになる。
【0023】
図1に示すように、繰り返し方向において、第1側板122と該第1側板122に隣接する発熱抵抗体110との間隔をmとしたとき、第2側板123と該第2側板123に隣接する発熱抵抗体110との間隔はm+P/n(nは2以上の自然数)である。好ましくは、第2側板123と該第2側板123に隣接する発熱抵抗体110との間隔がm+P/2である。
【0024】
更に、繰り返し方向において、第1接続端子130とそれに隣接する第1側板122との間隔t1は、第2接続端子131とそれに隣接する第2側板123との間隔t2と等しい。具体的には、第1側板122と該第1側板122に隣接する発熱抵抗体110との間隔(すなわち、m)よりも大きい第2側板123と該第2側板123に隣接する発熱抵抗体110との間隔(すなわち、m+P/n)側に位置する第2接続端子131は、上述のt1がt2と等しくなるように、外側にずらして形成されている。なお、ここでは、第2接続端子131を外側にずらさずに、第1接続端子130を内側にずらしても良い。
【0025】
本実施形態では、第1側板122と第2側板123とが、繰り返し方向において発電ブレーキ抵抗体100の中心軸Lに対し左右対称であれば、第1接続端子130と第2接続端子131も発電ブレーキ抵抗体100の中心軸Lに対し左右対称である。更に、第1接続端子130と第2接続端子131とは、繰り返し方向と直交する方向(すなわち、発熱抵抗体110の幅方向)においても、発電ブレーキ抵抗体100の中心軸Lに対し左右対称であることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体100では、繰り返し方向において第1側板122と該第1側板122に隣接する発熱抵抗体110との間隔をmとしたとき、第2側板123と該第2側板123に隣接する発熱抵抗体との間隔はm+P/n(nは2以上の自然数)であるので、このような構造を有する発電ブレーキ抵抗体100を複数積層する際に、交互に180度反転して積層することにより、積層された発熱抵抗体110を千鳥状に配置することができる。
【0027】
このため、例えば複数の発電ブレーキ抵抗体を同一列に縦列配置した場合と比べて、発熱抵抗体110の平板における上流側のエッジからなる温度境界層を確実に分断できるので、発熱抵抗体110の熱伝達率を高めることができ、放熱性能を向上することができる。
【0028】
特に、第2側板123と該第2側板123に隣接する発熱抵抗体110との間隔がm+P/2である場合、発電ブレーキ抵抗体100の種類を増やさなくても、この一種類の発電ブレーキ抵抗体100を交互に180度反転して積層するだけで、積層された発熱抵抗体110の千鳥配置を容易に実現することができる。その結果、発電ブレーキ抵抗体100により構成される発電ブレーキ抵抗体ユニットの寸法を拡大することなく、しかも部品の種類を増やすことなく、発熱抵抗体110の放熱性能を向上することが可能になる。
【0029】
なお、第2側板123と該第2側板123に隣接する発熱抵抗体110との間隔をm+P/2にする理由としては、発熱抵抗体110の放熱性能を向上しつつ、圧力損失をなるべく少なくすることを考慮した結果である。具体的には、発熱抵抗体を千鳥状に配置すると、同一列の縦列配置と比べて冷却風に対する送風抵抗が大きくなり、圧力損失が比較的に大きくなるので、冷却風が流れ難くなる。その結果、風速が低下し、熱伝達率も下がって放熱性能も低下してしまう。このように放熱性能の確保と圧力損失の低減とのバランスを考慮すると、上述の間隔をm+P/2にすることが好ましい。なお、第2側板123と該第2側板123に隣接する発熱抵抗体110との間隔は、m+P/2に限定されずに、m+P/3、m+P/4などであっても良い。
【0030】
更に、繰り返し方向において、第1接続端子130とそれに隣接する第1側板122との間隔t1は、第2接続端子131とそれに隣接する第2側板123との間隔t2と等しい。従って、発電ブレーキ抵抗体100を交互に180度反転して積層する際に、積層方向において、隣接する一方の発電ブレーキ抵抗体100の第1接続端子130と他方の発電ブレーキ抵抗体100の第2接続端子131とが常に同一平面に位置することができるので、一種類のバスバーで隣り合う第1接続端子130と第2接続端子131とを容易に電気的に接続することができる。
【0031】
[発電ブレーキ抵抗体ユニット]
以下、
図5~
図8を参照して発電ブレーキ抵抗体ユニット10を説明する。
図5は実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体ユニットを示す平面図であり、
図6は実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体ユニットを示す側面図である。
図7は実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット(上蓋を外した状態)を示す平面図であり、
図8は実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット内における発熱抵抗体の配置状態を示す模式図である。
【0032】
本実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット10は、例えば電気駆動方式のダンプトラックに搭載され、回生電力を熱として放出するためのグリッドボックスとして用いられるものである。この発電ブレーキ抵抗体ユニット10は、主に、筒体11と、筒体11の内部に収容される複数の発電ブレーキ抵抗体100と、筒体11に隣接される送風機12とを有する。
【0033】
筒体11は、例えばアルミニウム等の金属材料によって角筒状に形成されており、筒本体11aと上蓋11bとを有する。筒体11の内部に発電ブレーキ抵抗体100を積層したり外したりしやすくするため、上蓋11bは筒本体11aに対して着脱可能になっている。そして、上蓋11bは、例えばボルト11cによって筒本体11aと固定されている。
【0034】
図7に示すように、筒体11の内部には、複数(ここでは、8つ)の発電ブレーキ抵抗体100が発熱抵抗体110の繰り返し方向と直交する方向に沿って、隙間なく積層されている(いわゆる、縦列配置)。ここでは、「発熱抵抗体110の繰り返し方向と直交する方向」を発電ブレーキ抵抗体100の積層方向といい、「積層方向」と略する。
【0035】
8つの発電ブレーキ抵抗体100は、隣接する一方の発電ブレーキ抵抗体100の第1側板122と他方の発電ブレーキ抵抗体100の第2側板123とが積層方向に隣り合うように、交互に180度反転された状態で積層されている。そして、隣接する一方の発熱抵抗体110の第1接続端子130と他方の発熱抵抗体110の第2接続端子131とは、バスバー14によって電気的に接続されている。バスバー14は、例えばアルミニウム材料によって平板状に形成されており、隣接する一方の発熱抵抗体110の第1接続端子130と他方の発熱抵抗体110の第2接続端子131を覆うようにこれらの接続端子の上に載せられた状態で、レーザ溶接でこれらの接続端子と接合されている。これによって、8つの発熱抵抗体110は、直列に電気的に接続される。
【0036】
8つの発電ブレーキ抵抗体100は、隣接する一方の発電ブレーキ抵抗体100の第1側板122と他方の発電ブレーキ抵抗体100の第2側板123とが積層方向に隣り合うように交互に180度反転された状態で積層されるため、
図8に示すように、筒体11に収容された発電ブレーキ抵抗体100の各発熱抵抗体110は、積層方向に沿って千鳥状に配置されることになる。
【0037】
一方、送風機12は、積層方向に流れる気流を形成するように筒体11の上流側に配置されている。
図8に示すように、送風機12は、筒体11と連通する送風機ダクト12aと、送風機ダクト12aの内部に配置されたファン12bと、ファン12bを回転駆動するためのファンモータ12cとを有する。このような構造を有する送風機12は、ファンモータ12cが通電すると、ファン12bが回転して冷却風を積層方向に沿って発熱抵抗体110に供給する。なお、送風機12は、例えば取付台13に固定されている(
図6参照)。
【0038】
本実施形態に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット10では、複数の発電ブレーキ抵抗体100は隣接する一方の発電ブレーキ抵抗体100の第1側板122と他方の発電ブレーキ抵抗体100の第2側板123とが積層方向に隣り合うように交互に180度反転された状態で積層されるので、発電ブレーキ抵抗体100の各発熱抵抗体110は積層方向に千鳥状に配置される。このため、例えば複数の発熱抵抗体を同一列に縦列配置した場合と比べて、発熱抵抗体110の平板における上流側のエッジからなる温度境界層を確実に分断できるので、発熱抵抗体110の熱伝達率を高めることができ、放熱性能を向上することができる。
【0039】
特に、第2側板123と該第2側板123に隣接する発熱抵抗体110との間隔がm+P/2である場合、発電ブレーキ抵抗体100の種類を増やさずに、一種類の発電ブレーキ抵抗体100を交互に180度反転して積層するだけで、発熱抵抗体110の千鳥配置を容易に実現することができる。その結果、発電ブレーキ抵抗体ユニット10の寸法を拡大することなく、しかも部品の種類を増やすことなく、発熱抵抗体110の熱伝達率を高めることができ、放熱性能を向上することが可能になる。
【0040】
更に、繰り返し方向において、第1接続端子130とそれに隣接する第1側板122との間隔t1は、第2接続端子131とそれに隣接する第2側板123との間隔t2と等しい。従って、発電ブレーキ抵抗体100を交互に180度反転して積層する際に、積層方向において、隣接する一方の発電ブレーキ抵抗体100の第1接続端子130と他方の発電ブレーキ抵抗体100の第2接続端子131とが常に同一平面に位置することができるので、一種類のバスバーで隣り合う第1接続端子130と第2接続端子131とを容易に電気的に接続することができる。
【0041】
上述した発電ブレーキ抵抗体ユニットについては、上述した内容のほか、様々な変形例も考えられる。以下、その代表的な変形例を説明する。
【0042】
[変形例1]
図9は変形例1に係る発電ブレーキ抵抗体を示す平面図であり、
図10は変形例1に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット(上蓋を外した状態)を示す平面図である。本変形例では、発電ブレーキ抵抗体100Aの向きを分かり易くするように、支持体120の天板124には印が設けられている。より具体的には、例えば
図9の紙面に対して左側に第2側板123、右側に第1側板122がそれぞれ位置した向きで、下凸三角形の印128が印刷などで天板124に設けられている。
【0043】
このようにすれば、例えば作業員が下凸三角形の印128の向きを確認するだけで、第1側板122及び第2側板123の位置を容易に把握することができる。従って、発電ブレーキ抵抗体100Aを筒体11に積層する際に、第1側板122及び第2側板123の向き(言い換えれば、間隔m及び間隔m+P/nのそれぞれがどちら側にあるか)を改めて確認することなく、正確且つスムーズに積層することができる。その結果、作業時間の短縮を期待できる。
【0044】
なお、印は下凸三角形に限らず、上凸三角形、半円形、台形などであっても良い。
【0045】
[変形例2]
図11は変形例2に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット(上蓋を外した状態)を示す平面図であり、
図12は変形例2に係る発電ブレーキ抵抗体ユニット内における発熱抵抗体の配置状態を示す模式図である。本変形例では、複数の発電ブレーキ抵抗体100Aのうち、一部は隣接する一方の発電ブレーキ抵抗体100Aの第1側板122と他方の発電ブレーキ抵抗体100Aの第2側板123とが積層方向に隣り合うように交互に180度反転された状態で積層され、残りは同一列に縦列配置されている。
【0046】
具体的には、8つの発電ブレーキ抵抗体100Aのうち、上流側(すなわち、送風機12に隣接する側)に近い4つの発電ブレーキ抵抗体100Aは、隣接する一方の発電ブレーキ抵抗体100の第1側板122と他方の発電ブレーキ抵抗体100Aの第2側板123とが積層方向に隣り合うように交互に180度反転された状態で積層されている。残りの4つの発電ブレーキ抵抗体100A(すなわち、下流側に近い4つの発熱抵抗体110)は、隣接する一方の発電ブレーキ抵抗体100Aの第1側板122と他方の発電ブレーキ抵抗体100Aの第1側板122とが積層方向に隣り合うように積層されている。
【0047】
このため、
図12に示すように、上流側に近い4つの発熱抵抗体110は千鳥状に配置されており、残りの4つの発熱抵抗体110は同一列に縦列配置されている。このように発熱抵抗体110の千鳥配置と同一列の縦列配置とを組み合わせることで、発熱抵抗体110の放熱性能を一定のレベルに確保しつつ、圧力損失の低減を実現することができる。すなわち、送風機12の出力は風量と圧力との積で決まっており、双方が反比例関係であるため、双方のバランスから積層した発電ブレーキ抵抗体100A全体の熱伝達率が最大となる発熱抵抗体110の配置にすることが可能である。そして、例えば全ての発熱抵抗体を千鳥状に配置すると圧力の損失が大きい場合、一部の発熱抵抗体を千鳥状に配置し、残りの発熱抵抗体を同一列の縦列配置することで、放熱性能の確保と圧力損失の低減とを両立することが可能になる。
【0048】
なお、本変形例では、同一列に縦列配置した4つの発熱抵抗体110を上流側、千鳥配置した4つの発熱抵抗体110を下流側にしても良く、或いは上流側から下流側に向かって同一列に縦列配置した発熱抵抗体110を2つ、千鳥配置した発熱抵抗体110を4つ、同一列に縦列配置した発熱抵抗体110を2つという順にしても良い。
【0049】
[変形例3]
上記説明では、筒体11に発電ブレーキ抵抗体を8つ積層した例を示したが、発電ブレーキ抵抗体の数はこれに限らず、発電ブレーキ抵抗体ユニットの要求仕様に応じて、発電ブレーキ抵抗体の数を増減しても良い。例えば、
図13及び
図14に示すように、発電ブレーキ抵抗体100を8つ積層可能な筒体11において、6つの発電ブレーキ抵抗体100のみを積層し、残りのスペースをそのまま(すなわち、空間のまま)にしても良い。
【0050】
この場合、6つの発電ブレーキ抵抗体100は、上流側又は下流側に詰めるように積層しても良く、或いは筒体11の真中に配置するように積層しても良い。しかし、送風機12により供給される冷却風は下流側に向かうにつれ、流れがより安定して冷却効率を向上できるので、6つの発電ブレーキ抵抗体100を下流側に詰めるように積層することが好ましい(
図13及び
図14参照)。
【0051】
[電気駆動方式のダンプトラック]
以下、
図15を参照して本実施形態に係る電気駆動方式のダンプトラックを説明する。
図15は発電ブレーキ抵抗体ユニットを搭載した電気駆動方式のダンプトラックの概略構成を示す側面図である。本実施形態に係る電気駆動方式のダンプトラック1は、鉱山向けに用いられるものであって、4輪を配置した車体フレーム2をベースにし、車体フレーム2上に土砂等を積載するための荷台3が搭載され、車体フレーム2と荷台3とはホイストシリンダ4により連結されている。また、車体フレーム2には、図示しない機構部品を介して前輪5、後輪6、燃料タンク7などが取り付けられている。後輪6の回転軸部には、後輪6を駆動するための走行モータ8、後輪6の回転数を調整する減速機(未図示)などが収められている。
【0052】
車体フレーム2の上方には、オペレータが歩行可能なデッキ9が更に取り付けられている。デッキ9には、電気駆動方式のダンプトラック1の操作を行うためにオペレータが搭乗するための運転室20、各種電力機器が収納されたコントロールボックス21などが配置されている。更に、デッキ9には上述した発電ブレーキ抵抗体ユニット10が2基配置されている。また、前輪5により隠れた部分には、エンジン、後輪6を駆動するための走行モータ8用の電力源としての発電機、発電ブレーキ抵抗体ユニット10の発熱抵抗体110を冷却するためのファン12bを駆動するファンモータ12c用の電力源としての発電機などが配置されている。
【0053】
このような構造を有する電気駆動方式のダンプトラック1は、制動動作時において、走行モータ8を発電機として動作させて運動エネルギを電気エネルギに変換し、電気エネルギを発電ブレーキ抵抗体ユニット10の発熱抵抗体110により熱エネルギに変換することで、制動力を得ている。そして、発生した熱をファン12bにより強制空冷し、大気中に放出することにより、安定的な制動力を確保している。
【0054】
本実施形態に係る電気駆動方式のダンプトラック1では、上述した発電ブレーキ抵抗体ユニット10を備えるので、発電ブレーキ抵抗体ユニット10の寸法を拡大することなく、しかも部品の種類を増やすことなく、発熱抵抗体110の熱伝達率を高めることができ、放熱性能を向上することができる。また、放熱性能の向上によって発電ブレーキ抵抗体ユニット10の小型化、軽量化、省力化を図ることができるので、視界の確保、低燃費及び運搬効率の向上を実現することが可能になる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 ダンプトラック
10,10A,10B 発電ブレーキ抵抗体ユニット
11 筒体
12 送風機
100,100A 発電ブレーキ抵抗体
110 発熱抵抗体
120 支持体
121 底板
122 第1側板
123 第2側板
124 天板
125 絶縁挟持具
130 第1接続端子
131 第2接続端子