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特許7241678浸漬されたレンズ整形器を用いた調整可能非円形流体レンズ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】浸漬されたレンズ整形器を用いた調整可能非円形流体レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20230310BHJP
   G02B 1/06 20060101ALI20230310BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
G02C7/02
G02B1/06
G02B3/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019506473
(86)(22)【出願日】2017-05-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2017060845
(87)【国際公開番号】W WO2018028847
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】16184123.4
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516049342
【氏名又は名称】オプトチューン スウィッツァーランド アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】アシュヴァンデン マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】パチェイダー ロマン
(72)【発明者】
【氏名】レイエンベルガー ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ビュエラー ミヒャエル
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0229617(US,A1)
【文献】実開昭61-061137(JP,U)
【文献】特表2016-510430(JP,A)
【文献】国際公開第2015/184412(WO,A1)
【文献】特開2000-081503(JP,A)
【文献】特表2017-522587(JP,A)
【文献】特開2009-271095(JP,A)
【文献】特開2012-068638(JP,A)
【文献】特表平10-502179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0140168(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101726865(CN,A)
【文献】特表2007-531912(JP,A)
【文献】国際公開第2015/052236(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/185673(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0140167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
G02B 1/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学デバイス(1)であって、
調節可能な焦点距離を有する少なくとも第1のレンズ(100)と、
前記第1のレンズ(100)は、透明な流体(F)で充填される容積(V)を規定する容器(2)を備え、
前記容器(2)は、前壁(20)を備え、透明なレンズ整形器(22)が透明な膜(21)の曲率調節可能エリア(23)を規定するように、前記前壁(20)は、フレキシブルおよび伸縮可能である前記透明な膜(21)と、前記透明な流体(F)中に浸漬され、前記透明な膜(21)に接続された前記透明なレンズ整形器(22)とを備え、
前記容器(2)は、前記前壁(20)に対面する後壁(30)を備え、前記透明な流体(F)は、前記前壁(20)と前記後壁(30)との間に配置され、前記後壁(30)は、レンズを形成し、
前記曲率調節可能エリア(23)の曲率を調節するために、前記第1のレンズ(100)の前記容積(V)を調節するように構成されたアクチュエータ手段(60)と、
を備え、
前記アクチュエータ手段(60)は、前記透明な膜(21)の前記曲率調節可能エリア(23)の前記曲率を調節するために、少なくとも1つの永電磁石(80)と、前記第1のレンズ(100)の前記容積(V)を調節するための前記少なくとも1つの永電磁石(80)によって吸引可能な磁束誘導する少なくとも1つ相手部材(81)とを備える、
光学デバイス(1)。
【請求項2】
前記透明なレンズ整形器(22)、前記透明な膜(21)、および前記透明な流体(F)の材料は、各々、屈折率を備え、これらの3つの屈折率のうちの任意の2つの屈折率の差の絶対値は、0.1よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記容積(V)中に含まれる前記透明な流体(F)が前記透明な膜(21)を押圧し、それにより、前記曲率調節可能エリア(23)の前記曲率を調節するように、前記容積(V)の調節は、前記容積(V)の一部分の圧縮を含み、および/または、前記透明な流体(F)が前記透明な膜(21)の前記曲率調節可能エリア(23)をより少なく押圧し、それにより、前記曲率調節可能エリア(23)の前記曲率を調節するように、前記容積(V)の調節は、前記容積(V)の一部分の膨張を含む、ことを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項4】
少なくとも1つの圧電要素(61)は、前記後壁(30)を前記透明なレンズ整形器(22)のほうへ移動するかまたは前記透明なレンズ整形器(22)から離すために、前記後壁(30)と前記透明なレンズ整形器(22)との間に配置され、前記少なくとも1つの圧電要素(61)は、前記後壁(30)と第1の非圧縮可能スペーサ・リング(51)との間に配置され、前記透明な流体(F)の熱膨張の補償のための第2のスペーサ・リング(52)が、前記透明なレンズ整形器(22)と前記第1の非圧縮可能スペーサ・リング(51)との間に配置される、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記光学デバイス(1)は、前記第1のレンズ(100)の前記容積(V)を調節するために、前記透明な流体(F)を前記容積(V)の中に送り込むおよび/または前記容積(V)の外に送り出すように構成されたアクチュエータ手段(60)を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの永電磁石(80)は、前記曲率調節可能エリア(23)の前記曲率を調節するための前記少なくとも1つの相手部材(81)を吸引するための外部磁界を生成するように構成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの永電磁石(80)は、第1の保磁力と第1の磁化(M)とを有する第1の磁石(82)を備え、前記少なくとも1つの永電磁石(80)は、第2の保磁力と第2の磁化(Μ’)とを有する第2の磁石(83)をさらに備え、対応する電流を前記コイル(84)に印加することによって、前記第2の磁化(Μ’)は、前記2つの磁化(M、M’)が平行である平行状態から、前記2つの磁化(M、M’)が反平行である反平行状態に、およびその逆に切り替えられ得、前記第2の磁化(Μ’)が前記平行状態にあるとき、前記少なくとも1つの永電磁石(80)は前記外部磁界を生成し、前記第2の磁化(Μ’)が前記反平行状態にあるとき、前記外部磁界が消えるように、前記第1の保磁力は前記第2の保磁力よりも大きく、前記少なくとも1つの永電磁石(80)は、前記第2の磁石(83)を包含するコイル(84)をさらに備える、ことを特徴とする、請求項6に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの永電磁石(80)は、前記後壁(30)上に配置され、関連する前記少なくとも1つ相手部材(81)は、前記透明なレンズ整形器(22)上に配置されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記容器(2)はフレーム(10)によって保持され、前記少なくとも1つの永電磁石(80)は前記フレーム(10)上に配置され、関連する前記少なくとも1つの相手部材(81)は、前記透明なレンズ整形器(22)上に、前記透明なレンズ整形器(22)のエッジ(22a)において配置されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項10】
ヒンジ(53)は、前記透明なレンズ整形器(22)の、前記少なくとも1つの永電磁石(80)の反対側に配置されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項11】
少なくとも1つの永電磁石(80)が関連する少なくとも1つ相手部材(81)を吸引するとき、前記少なくとも1つのリザーバ(90)は圧縮され、前記少なくとも1つのリザーバ(90)中に含まれている流体(F)は、前記主キャビティ(91)に押し込まれ、前記膜(21)を押圧し、それにより、前記膜(21)の前記曲率調節可能エリア(23)の前記曲率を調節するように、前記少なくとも1つのリザーバ(90)は、前記少なくとも1つの永電磁石(80)と関連する前記少なくとも1つ相手部材(81)との間に配置されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項12】
前記光学デバイス(1)は、仮想現実または拡張現実のための一対の眼鏡、または、仮想現実または拡張現実のためのヘッドセット(1)として形成され、前記第1のレンズ(100)、第2のレンズ(200)のそれぞれがユーザの関連する眼の前に配置されるように、前記第1のレンズ(100)および/または前記第2のレンズ(200)は、前記ユーザによって着用され得るフレーム(10)によって保持される、ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学デバイスに関し、詳細には、特に、眼鏡のための、レンズの形態の光学デバイスに関する。さらに、詳細には、本発明は、そのようなレンズを備える眼鏡に関する。
【0002】
より詳細には、そのようなレンズは、少なくとも部分的に流体または液体が充填され、調節可能な焦点距離を有する。
【0003】
より詳細には、本発明は、そのような動的レンズをどのように使用および制御すべきかの設計および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明は、眼鏡レンズに適用可能であるだけなく、限定はしないが、ビューファインダー、仮想現実(VR)および拡張現実(AR)システム、特に、VRまたはARのための眼鏡における視度(diopter)制御などの多種多様な適用例において使用され得る他のレンズにも適用可能である。
【0005】
近視(myopia)(nearsightedness)は、遠い物体の視覚異常(defect vision)の症状を指す。遠視(hyperopia)(farsightedness)は、近い物体の視覚異常(defect vision)の症状を指す。近視と遠視の両方が、眼球のサイズに関する眼の屈折力に関係し、人生にわたって一定である。
【0006】
老視(prespiopia)(farsightedness)は、眼のレンズの弾性の喪失によって引き起こされる症状である。それは、人間の眼の適応する能力、すなわち、自然の眼の焦点距離を変更する能力を低減する。それは、一般に、中高年で生じる。
【0007】
人間の調節作用は、35~45歳の年齢範囲において、3D(ジオプター)またはそれ以下に低減される。その時点で、人間の眼が、近くの物体に焦点を合わせることが可能になるために、読書用眼鏡または何らかの他の形態の近見視力補正(near vision correction)が必要になる。
【0008】
二重焦点、多重焦点または累進(progressive)眼鏡レンズまたはコンタクトレンズのいずれかを使用することによって、異なる屈折力(optical power)をもつ眼鏡の間で切り替えなければならないことを防ぎ得る。累進レンズの場合、最適レンズ倍率の「コリダー(corridor)」が、各累進レンズを垂直方向に下に延びる。二重焦点レンズおよび三重焦点レンズとは対照的に、像の跳躍(image jump)なしに遠くから近くへの焦点の滑らかな変化が生じる。
【0009】
多くの人々において、各眼について異なる視覚的補正が必要とされる。不同視患者(anisometrope)として知られる、これらの人々は、最大の視覚的快適さのために各眼について異なる視覚的補正を必要とする。
【0010】
流体を備える調節可能光学レンズ・システムが、理想的には、そのコンパクトなサイズ、低重量、および屈折力の連続的な調節のために、眼鏡に好適である。電気制御レンズの場合、高速切替え速度および低電力が、重要な恩恵である。
【0011】
流体を備える調節可能光学レンズ・システムは、従来技術から知られている。
【0012】
特許文献1は、可変焦点をもつレンズを対象とし、そのレンズは、フレキシブル膜が取り付けられた剛性リングを備える。剛性の透明の前側カバーがフレキシブル膜に取り付けられ、剛性の後側カバーがリングの裏面に取り付けられる。フレキシブル膜と後側カバーとの間に、液体で充填されるキャビティが形成される。キャビティ中の液体の量を調節して、フレキシブル膜の曲率を変え、したがってレンズの光学特性を変えることができる。第2のフレキシブル膜が、後側カバーとリングとの間に位置を定められ得る。
【0013】
さらに、特許文献2は、(第1の隔壁として示された)少なくとも1つのフレキシブル膜をもつ流体適応レンズ(fluidic adaptive lens)・デバイスを対象とする。適応レンズは、第1のフレキシブルな、光学的に透明な膜を含む。フレキシブル膜に結合される第2の隔壁は、少なくとも部分的に光学的に透明である。第1のキャビティが、フレキシブル膜と第2の隔壁との間に形成される。このレンズ・デバイスは、キャビティ内に流体を備える。さらに、このデバイスは、チャンバ中の流体の圧力または容積を制御するための手段、たとえば、テフロンコーティングされたねじを備える。流体媒体のパラメータが変化するとき、膜可撓性およびレンズの光学特性が変化する。
【0014】
さらに、特許文献3は、主に、補正または処方レンズのためのレンズ配置について説明している。処方レンズは、フレキシブル膜とベースとを有する流体セルに隣接する。流体が流体セルの中に送り込まれるかまたは流体セルの外に送り出されるので、レンズ配置全体の補正力が変えられる。
【0015】
さらに、眼科適用例のために流体レンズも提案されている(たとえば、特許文献4参照)。
【0016】
さらに、調整可能眼鏡のために設計された流体レンズが、後続の段落において説明される。
【0017】
特許文献5は、非円形調整可能流体レンズ・アセンブリについて説明しており、膜の厚さは、膜の膨張の特定の段階における非球面性(特に非点収差)を部分的に相殺するために、等厚輪郭(thickness contour)を含む。したがって、眼鏡フレームの各特定の形状のために、複雑な適合および最適化手順が必要である。
【0018】
さらに、特許文献6は、眼鏡のブラケットに組み込まれた液体作動機構(liquid actuation mechanism)について説明している。流体は、フレキシブル・チューブを介してブラケットの内側のリザーバから光学開口に送られる。
【0019】
さらに、特許文献7は、磁気的、機械的、熱的なものを含み、すべてが眼鏡のブラケットに組み込まれる、調節可能流体充填レンズのための異なるアクチュエータ機構について説明する。いくつかの実施形態では、調節可能流体充填レンズは、針によって貫通可能であり、針の抜去後にチャンバを自動的および流体的に密封するように構成された中隔を含む。
【0020】
さらに、特許文献8は、レンズ・モジュールの外周に組み込まれる、圧電制御流体リザーバの実施形態について説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】WO07049058号
【文献】WO06011937号
【文献】米国特許第2003095336号
【文献】米国特許第7,085,065号
【文献】米国特許第8,414,121B2号
【文献】米国特許出願公開第2012/0087014号
【文献】米国特許出願公開第2012/0287512(A1)号
【文献】米国特許出願公開第2012/0087015(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記に基づいて、本発明の基礎をなす問題は、視力補正のための多用途光学デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この問題は、請求項1の特徴を有する光学デバイスによって解決される。
【0024】
本光学デバイスの好ましい実施形態が、対応する従属請求項において述べられ、以下で説明される。
【0025】
請求項1によれば、光学デバイスは、
調節可能な焦点距離を有する少なくとも第1のレンズを備え、
第1のレンズが、透明な流体で充填される容積を規定する容器を備え、
容器が、前壁を備え、その前壁が、フレキシブルおよび伸縮可能である透明な膜と、流体中に浸漬され(または流体に接触し)、膜に接続された透明なレンズ整形器とを備え、したがって、レンズ整形器が前記膜の曲率調節可能エリアを規定し、
容器が、前壁に対面する後壁を備え、流体が前壁と後壁との間に配置され、後壁が、(たとえば、追加の屈折力を与える)レンズを形成する。
【0026】
詳細には、すべての実施形態において、透明な流体は透明な液体であり得る(その逆も同様であり得る)。
【0027】
膜が前記エリアの曲率を調節するために弾性的に変形され得ることにより、前記容器とその中に存在する流体とが、焦点調節可能(または調整可能)レンズを形成する。
【0028】
詳細には、レンズ整形器が膜に接触することは、レンズ整形器が膜に直接的に接触すること、または(たとえば接着剤などによって形成された)別の材料層を介して間接的に接触することを意味することができる。レンズ整形器はさらに、それを膜に直接接合することまたは接着層などの別の材料層を介して接合することによって、膜に取り付けられ得る。
【0029】
詳細には、レンズ整形器が、調節可能曲率を有する膜のエリアを規定するための概念は、レンズ整形器が、膜に取り付けられることによってまたは膜に接触することによって、膜の弾性的に膨張可能な(たとえば円形の)エリアを画定することを意味し得、特に、前記エリアは、レンズ整形器中に形成された開口の(たとえば周囲の)内側エッジまで延在する。
【0030】
容器中に存在する流体の圧力が、容積の調節により、または流体が容器の容積の中に送り込まれるかまたは容器の容積の外に送り出されることにより増加するとき、膜の曲率調節可能エリアは膨張し、その曲率は増加する。同様に、流体が膜をあまり押圧しないとき、流体の圧力は減少し、膜が収縮すること、および膜の前記エリアの前記曲率が減少することが生じる。それにより、増加する曲率は、膜の前記エリアがより顕著な凸の膨らみを発現させ得ること、または膜の前記エリアが平坦状態から凸状態に変化することを意味する。同様に、減少する曲率は、膜の前記エリアが顕著な凸状態からあまり顕著でない凸状態に、または平坦な状態にさえ変化することを意味する。
【0031】
概して、膜は、以下の材料、ガラス、ポリマー、エラストマー、プラスチック、または任意の他の透明なおよび伸縮可能またはフレキシブルな材料のうちの少なくとも1つから製造され得る。たとえば、膜は、PDMSとしても知られるポリ(ジメチルシロキサン)(poly(dimethylsiloxane))などのシリコーンベースのポリマー、あるいはPETまたは二軸延伸ポリエチレン・テレフタレート(たとえば「マイラー(Mylar)」)などのポリエステル材料から製造され得る。
【0032】
さらに、膜は、コーティングを備え得る。さらに、膜はまた、構造化され、たとえば構造化面を備え、あるいは膜にわたって可変の厚さまたは硬さを有し得る。
【0033】
さらに、容器中に存在する前記流体は、好ましくは、液体金属、ゲル、液体、ガス、または変形され得る任意の透明な吸収または反射材料であるかまたはそれらを備える。たとえば、流体は、シリコーン・オイル(たとえばビスフェニルプロピル・ジメチコン)であり得る。さらに、流体は、過フッ化ポリエーテル(PFPE)不活性流体などのフッ素化ポリマーを含み得る。
【0034】
本発明の好ましい実施形態によれば、レンズ整形器は、膜によってカバーされた円形の開口を備え、前記曲率調節可能エリアは、(たとえば一致して)前記開口をカバーする膜の領域である。
【0035】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、レンズ整形器は、後レンズの外側輪郭と一致する周囲の外側エッジを備える。
【0036】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、レンズ整形器、膜、および流体の材料は、各々、屈折率を備え、これらの3つの屈折率のうちの任意の2つの屈折率の差の絶対値は、0.1よりも小さく、好ましくは0.02よりも小さい。
【0037】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、容器は、周囲の境界領域を有する半仕上げレンズ・ブランクを形成し、周囲の境界領域は、容器を保持するためのフレーム、特に、眼鏡フレームの輪郭に適合されるために、成形加工、賦形加工、機械加工、切削加工、砥粒研磨加工、フライス加工のうちの少なくとも1つが行われるように構成される。
【0038】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、光学デバイスは、膜を保護するために、および、たとえば、ベース屈折力を与えるために膜の前に配置された前レンズを備える。
【0039】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、容器は、レンズ整形器と後レンズとの間に配置されたスペーサ・リングを備える。
【0040】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、スペーサ・リングは、容器のためのシーリング・リングを形成する。
【0041】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、スペーサ・リングは、弾性的に圧縮可能である。詳細には、アクチュエータが、レンズ容器の容積を調節するためにスペーサ・リングの一方のセクションに作用するとき、スペーサ・リングは反対側にヒンジを形成し得る。
【0042】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、光学デバイスは、前記曲率調節可能エリアの曲率と、それとともに第1のレンズの焦点屈折力とを調節するために第1のレンズの前記容積を調節するように構成されたアクチュエータ手段を備える。
【0043】
さらに、本発明の一実施形態によれば、前記容積を調節することは、容積の一部分を圧縮することを含み、したがって、容積中に含まれている液体が膜を押圧し、したがって、膜がさらに外側に膨らみ、それにより、膜の前記曲率調節可能エリアの曲率を調節し(部分的に増加させ)、および/または、前記容積を調節することは、容積の一部分を膨張させることを含み、したがって、流体が膜の曲率調節可能エリアをあまり押圧せず、それにより、前記曲率調節可能エリアの曲率を調節する(部分的に減少させる)。
【0044】
詳細には、前記アクチュエータ手段は、前記容積を調節するための少なくとも1つまたはいくつかの圧電要素を備える。
【0045】
さらに、詳細には、少なくとも1つの圧電要素は、後壁をレンズ整形器のほうへ移動するかまたはレンズ整形器から離すために、後壁とレンズ整形器との間に配置され、特に、レンズ整形器は、後壁と第1の非圧縮可能スペーサ・リングとの間に配置され、特に、特に前壁および後壁に垂直な方向で熱膨張を受け、流体の熱膨張の補償を行う第2のスペーサ・リングが、レンズ整形器と第1のスペーサ・リングとの間に配置される。第2のスペーサ・リングの熱膨張によって、流体の熱膨張が補償され得、これは、容積中の圧力を温度にわたって一定に維持するのを助け、したがって、第1のレンズのより安定した焦点屈折力をより広い範囲の温度にわたって保証する。
【0046】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、本光学デバイスは、第1のレンズの前記曲率調節可能エリアと、それとともに焦点屈折力とを調節するために、流体をリザーバから容積の中に送り込むおよび/または容積の中から前記リザーバ中に送り出すように構成されたアクチュエータ手段を備える。
【0047】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、容器は、前記容積への流体接続を与えるための貫通可能シールを備える(すなわち、したがって、流体が、リザーバと第1のレンズの前記容積との間で交換され得る。
【0048】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、アクチュエータ手段は、流体のための外部リザーバと第1のレンズの前記容積との間の流体接続を与えるために、前記シールを貫通するように構成された(たとえば、針の形態の)導管を備える。
【0049】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、アクチュエータ手段は、流体をリザーバの中から前記容積におよびその逆に移送するための第1の調節手段を備え、特に、前記第1の調節手段がスライダーを備える。
【0050】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、アクチュエータ手段は、容積中の流体の量を調節するためにリザーバに作用する(たとえば、ねじを備える)別個の第2の調節手段を、すなわち前記第1の調節手段とは無関係に備える。これは、一方が第1のレンズのベース補正を設定することを可能にする。次いで、他方の第1の調節手段が、ベース補正に基づいて焦点屈折力を変化させるために使用され得る。
【0051】
さらに、一実施形態によれば、アクチュエータ手段は、膜の前記曲率調節可能エリアの曲率を調節するために、少なくとも1つの電子的永久磁石(electropermanent magnet)と、第1のレンズの前記容積を調節するために電子的永久磁石によって吸引可能な少なくとも1つの磁束誘導相手部材とを備える。
【0052】
さらに、本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの電子的永久磁石は、膜の前記曲率調節可能エリアの曲率を調節する(特に、増加させる)ために前記少なくとも1つの相手部材を吸引するための外部磁界を生成するように構成される。詳細には、前記外部磁界は、対応する電流パルスを電子的永久磁石のコイルに印加することによってオンまたはオフにされ得、そのコイルは、電子的永久磁石の(たとえば第2の)磁石を封入し、その磁化は、前記電流パルスをコイルに印加するとコイルによって生成される磁界によって切り替えられ得る。
【0053】
さらに、本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの電子的永久磁石は、第1の保磁力(coercivity)(たとえば「硬(hard)」磁性材料)と第1の磁化(magnetization)とを有する第1の磁石を備え、電子的永久磁石は、第2の保磁力(たとえば「軟(soft)」または「半硬(semi hard)」磁性材料)と第2の磁化とを有する第2の磁石をさらに備え、第1の保磁力は第2の保磁力よりも大きく、電子的永久磁石は、第2の磁石を包含するコイルをさらに備え、その結果、対応する電流をコイルに印加することによって、第2の磁化は、2つの磁化が平行である平行状態から、2つの磁化が反平行である反平行状態に、(およびその逆に)切り替えられ得、第2の磁化が平行状態にあるとき、電子的永久磁石が前記外部磁界を生成し、第2の磁化が反平行状態にあるとき、前記外部磁界が消える。
【0054】
言い換えれば、磁気的に硬い材料(第1の磁石)と磁気的に軟らかい材料(第2の磁石)とが、反対の磁化を有する場合、磁石はその極にわたって正味外部磁界を生じないが、それらの磁化方向が位置合わせされたとき、電子的永久磁石は外部磁界を生じ、それはそれぞれの相手部材を吸引する。
【0055】
さらに、一実施形態によれば、少なくとも1つの電子的永久磁石は、特に、軟磁性材料からなる、2つの極部材を備え、すなわち、第1の極部材は、第1の磁石の第1の端部および第2の磁石の第1の端部において配置され、第2の極部材は、第1の磁石の第2の端部および第2の磁石の第2の端部において配置される。
【0056】
極部材は、空気よりも高い透磁率を有するので、それらは、磁石の磁束を集中させる。詳細には、磁化が反平行であるとき、磁束は、それぞれの極部材を介して磁石の端部において短絡させられる。磁化が平行である場合、磁束は、一方の極部材から関連する相手部材に誘導され、再び他方の極部材に誘導される。
【0057】
さらに、一実施形態によれば、少なくとも1つの電子的永久磁石は、後壁上に配置され、少なくとも1つの関連する相手部材は、レンズ整形器上に配置される。詳細には、少なくとも1つの電子的永久磁石は、レンズ整形器上に配置され、少なくとも1つの関連する相手部材は、後壁上に配置されることも可能である。
【0058】
詳細には、少なくとも1つの相手部材は、その関連する少なくとも1つの電子的永久磁石に対面し、その結果、少なくとも1つの相手部材は、少なくとも1つの電子的永久磁石が前記外部磁界を生成したとき、少なくとも1つの電子的永久磁石のほうへ引っ張られ、それにより、レンズ整形器が後壁のほうへ引っ張られ、後壁は容積の一部分を圧縮し、したがって、容積中に含まれている流体が膜を押圧し(したがって、たとえば、膜はさらに外側に膨らみ)、それにより、膜の前記曲率調節可能エリアの曲率を調節する(特に、増加させる)。
【0059】
詳細には、外部磁界がオフにされたとき、復元力を与える伸縮可能な膜の、特に、前記曲率調節可能エリアの弾性により、膜、特に、前記曲率調節可能エリアは、その初期位置に戻る。
【0060】
さらに、一実施形態によれば、本光学デバイスは、複数の電子的永久磁石ならびに複数の磁束誘導相手部材を備え、各電子的永久磁石は、関連する相手部材に対面する。
【0061】
詳細には、一実施形態によれば、電子的永久磁石は後壁上に配置され、相手部材はレンズ整形器上に配置される。代替的に、電子的永久磁石がレンズ整形器上に配置され、相手部材が後壁上に配置されることも可能である。
【0062】
詳細には、電子的永久磁石は、後壁の(たとえば、周囲の)境界領域に沿って後壁上に配置される。詳細には、各電子的永久磁石は、レンズ整形器上に配置された関連する相手部材に対面する。この場合も、詳細には、それぞれの電子的永久磁石の位置とそれぞれ関連する相手部材の位置とは、入れ替えられ得る。
【0063】
さらに、前記容器は、フレームによって保持され、少なくとも1つの電子的永久磁石は、フレーム上に配置され、関連する相手部材は、レンズ整形器上に、レンズ整形器のエッジにおいて配置される。
【0064】
詳細には、少なくとも1つの相手部材は、少なくとも1つの電子的永久磁石に対してオフセットされて配置され、少なくとも1つの電子的永久磁石が前記外部磁界を生成したとき、少なくとも1つの関連する相手部材は、少なくとも1つの電子的永久磁石のそばに引っ張られ、したがって、特に、レンズ整形器が後壁のほうへ引っ張られ、後壁は容積の一部分を圧縮し、したがって、容積中に含まれている流体が膜を押圧し(たとえば、したがって、膜はさらに外側に膨らみ)、それにより、膜の前記曲率調節可能エリアの曲率を調節する(特に、増加させる)。
【0065】
詳細には、ここでも、外部磁界がオフにされたとき、復元力を与える伸縮可能な膜の、特に、前記曲率調節可能エリアの弾性により、膜、特に、前記曲率調節可能エリアは、その初期位置に戻る。
【0066】
ここでも、デバイスは、複数の電子的永久磁石を備え得る。詳細には、これらの電子的永久磁石は次いで、フレーム上に、レンズ整形器の(たとえば、周囲の)エッジに沿って配置され得る。詳細には、各電子的永久磁石は、レンズ整形器上に(たとえば、レンズ整形器のエッジに)配置された関連する相手部材に対してオフセットされて配置される。
【0067】
詳細には、それぞれの相手部材は、関連する電子的永久磁石に対してオフセットされて配置され、それぞれの電子的永久磁石が、前記外部磁界を生成したとき、関連する相手部材は、それぞれの電子的永久磁石のそばに引っ張られ、したがって、特に、レンズ整形器が後壁のほうへ引っ張られ、後壁は容積の一部分を圧縮し、したがって、容積中に含まれている流体が膜を押圧し(たとえば、したがって、膜はさらに外側に膨らみ)、それにより、膜の前記曲率調節可能エリアの曲率を調節する(特に、増加させる)。
【0068】
この場合も、詳細には、それぞれの電子的永久磁石の位置とそれぞれ関連する相手部材の位置とは、入れ替えられ得る。
【0069】
また別の実施形態によれば、レンズ整形器は、ヒンジを介して後壁に接続され、したがって、特に、少なくとも1つの電子的永久磁石が、関連する相手部材を吸引したとき、レンズ整形器は後壁に対して回動され得る。
【0070】
詳細には、一実施形態によれば、ヒンジは、レンズ整形器の、少なくとも1つの電子的永久磁石の反対側に配置される。
【0071】
さらに、一実施形態によれば、レンズ整形器は、周囲のフレキシブルなシール部材を介して後壁に接続される。詳細には、少なくとも1つの電子的永久磁石および/または少なくとも1つの相手部材は、シール部材よりもさらに外側に配置される。詳細には、前記容積の外側で、それはシール部材によって横方向に画定される。
【0072】
さらに、本発明のまた別の実施形態によれば、容積は、チャネルによって容積の主キャビティに接続された少なくとも1つのリザーバを備える。
【0073】
一実施形態によれば、少なくとも1つのリザーバは、レンズ整形器中および/または後壁中に形成される凹部として形成される。さらに、詳細には、チャネルも、凹部(たとえば溝)として形成され得、その凹部または溝は、レンズ整形器中におよび/または後壁中に形成され得る。
【0074】
さらに、一実施形態によれば、少なくとも1つのリザーバは、少なくとも1つの電子的永久磁石と少なくとも1つの関連する相手部材との間に配置され、したがって、電子的永久磁石が、関連する相手部材を吸引したとき、リザーバが圧縮され、リザーバ中に含まれている流体が、主キャビティに押し込まれ、膜を押圧し(たとえば、したがって、膜がさらに外側に膨らみ)、それにより、膜の前記曲率調節可能エリアの曲率を調節する(特に、増加させる)。
【0075】
詳細には、膜は、少なくとも1つのリザーバの壁セクションを形成し、少なくとも1つの相手部材が、前記壁セクション上またはその中に配置される。したがって、ここでも、少なくとも1つの電子的永久磁石の外部磁界がオフにされたとき、壁セクションは、その初期位置に戻り、対応する量の流体がリザーバに戻り、それにより、膜の前記曲率調節可能エリアの曲率を変化させる(特に、減少させる)。
【0076】
詳細には、一実施形態によれば、本光学デバイスは、複数のリザーバを備え、各リザーバは、チャネルを介して主キャビティに接続される。詳細には、各リザーバは、電子的永久磁石と、関連する相手部材との間に配置され、したがって、それぞれの電子的永久磁石が関連する相手部材を吸引したとき、それぞれのリザーバが圧縮され、それぞれのリザーバ中に含まれている流体が、主キャビティに押し込まれ、膜を押圧し(たとえば、したがって、膜が外側にさらに膨らみ)、それにより、前記曲率調節可能エリアの曲率を調節する(特に、増加させる)。したがって、いくつかのリザーバを使用して、本光学デバイスの焦点屈折力が、段階的に調整され得る。
【0077】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、本光学デバイスは、調節可能な焦点距離を有する第2のレンズを備える。第2のレンズは、(特に、特許請求の範囲において特許請求され、本明細書で説明される)第1のレンズとして構成され得、第1のレンズと同様のやり方で機能する。特に、第2のレンズも、本明細書で説明されるようにアクチュエータ手段を備え得る。
【0078】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、本光学デバイスは、特に、視覚、特に人間の視覚を補正するための一対の眼鏡として形成される。さらに、本光学デバイスは、仮想現実または拡張現実のための眼鏡またはヘッドセットとしても形成され得る。
【0079】
詳細には、第1および/または第2のレンズは、ユーザによって着用され得る光学デバイスのフレームによって保持され得、その結果、それぞれのレンズは、ユーザの関連する眼の前に配置される。第1レンズと第2のレンズとは、接続されたレンズをも形成し得る。
【0080】
さらに、この実施形態によれば、本光学デバイスは、特に、たとえば第2の調節手段を使用して、各レンズについてベース補正が設定されると、第1のレンズの焦点距離と第2のレンズの焦点距離とを同時に調節するように構成される。
【0081】
本発明のさらなる特徴、利点および実施形態が、以下の図を参照しながら以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】円形の開口をもつレンズ整形器が、非円形の任意の整形された眼鏡ガラスにどのように適合され得るかを示す図である。
図2】浸漬したレンズ整形器に基づく、調整可能レンズの断面図である。(本明細書で、容器とも示される)液体充填レンズ・コアが、膜と、円形レンズ整形器と、スペーサと、後壁との間に形成される。この図ではアクチュエータが示されていない。
図3】浸漬したレンズ整形器に基づく、調整可能レンズの断面図である。液体充填レンズ・コアが、膜と、円形レンズ整形器と、スペーサとの間に形成される。スペーサは、圧縮可能なエラストマーである。このスペーサは、一方の側で機械的ヒンジとして働くことができ、反対側で、このスペーサは、アクチュエータによって圧縮および膨張させられる。
図4】浸漬したレンズ整形器に基づく、調整可能レンズの断面図である。液体充填レンズ・コアが、膜と、円形レンズ整形器と、スペーサとの間に形成される。液体を液体移送チューブを介してリザーバから流体キャビティの中に送り込むことによって、膜の形状が調整されている。
図5】浸漬したレンズ整形器に基づく、調整可能レンズの断面図である。小さいリザーバが、貫通可能シールを用いて密封され、流体キャビティと接続される。液体充填容積が、膜と、円形レンズ整形器と、スペーサとの間に形成される。液体をリザーバを介して注射器型アクチュエータ(syringe type actuator)から流体キャビティの中に送り込むことによって、膜の形状が調整されている。密封された構造が、半仕上げレンズ・ブランクの形態をとる。
図6】調整可能眼鏡レンズを眼鏡フレーム内に与える方法を示すフローチャートである。フレーム幾何学的形状の幅広い選択に適合するために、利用可能な異なる開口サイズおよびブランク・サイズをもついくつかのタイプの半仕上げレンズ・ブランクがある。
図7】浸漬したレンズ整形器に基づく、調整可能レンズの断面図である。液体充填レンズ・コアが、膜と、円形レンズ整形器と、スペーサとの間に形成される。キャビティの液体容積と、したがって膜の曲率とは、可変のスペーサとして働くいくつかの圧電アクチュエータによって調節され得る。
図8図7で説明された圧電作動デバイスの分解立体図である。
図9-1】-3.0Dpt近視をもつ眼モデルを使用した、ZEMAXシミュレーションを示す図である。膜は、作動力が存在しないとき、わずかな正の曲率を有する。前レンズと後容器ガラスが、両方とも、負の屈折力を採用して、-3.0Dptの初期補正に適応し、初期の正のオフセットを補償する。
図9-2】-3.0Dpt近視をもつ眼モデルを使用した、ZEMAXシミュレーションを示す図である。膜は、作動力が存在しないとき、わずかな正の曲率を有する。前レンズと後容器ガラスが、両方とも、負の屈折力を採用して、-3.0Dptの初期補正に適応し、初期の正のオフセットを補償する。
図10】浸漬したレンズ整形器に基づく、調整可能レンズの断面図である。液体充填レンズ・コア/容積が、膜と、円形レンズ整形器と、後壁との間に形成される。液体充填容積と、したがって膜の曲率とは、後壁に組み込まれ、後壁の境界エリアに沿って配置された、いくつかの電子的永久磁石によって調節され得る。軟磁性材料から製造された相手部材が、動くレンズ整形器に組み込まれる。
図10A】電子的永久磁石の原理を示す図である。
図11】浸漬したレンズ整形器に基づく、調整可能レンズの断面図である。液体充填容積が、膜と、円形レンズ整形器と、後壁との間に形成される。液体充填容積と、したがって膜の曲率とは、後壁に組み込まれ、後壁の機械的ヒンジの反対側に後壁の境界エリアに沿って配置された、いくつかの電子的永久磁石モーターによって調節され得る。軟磁性材料から形成された相手部材が、動くレンズ整形器に組み込まれる。
図12】浸漬したレンズ整形器に基づく、調整可能レンズの断面図である。液体充填容積が、膜と、円形レンズ整形器と、後壁との間に形成される。液体充填容積と、したがって膜の曲率とは、眼鏡フレームに組み込まれ、フレームに沿って配置された、いくつかの電子的永久磁石モーターによって調節され得る。軟磁性材料から形成された相手部材が、動くレンズ整形器に組み込まれる。
図13】浸漬したレンズ整形器に基づく、調整可能レンズの断面図である。液体充填容積が、膜と、円形レンズ整形器と、後壁との間に形成される。液体充填容積と、したがって膜の曲率とは、眼鏡フレームに組み込まれ、フレームの機械的ヒンジの反対側にフレームに沿って配置された、いくつかの電子的永久磁石モーターによって調節され得る。軟磁性材料から製造された相手部材が、動くレンズ整形器に組み込まれる。
図14】(たとえば、マイクロ流体)チャネルを通って一連のより小さいキャビティに接続された液体充填容積に基づく、調整可能レンズの断面図である。液体充填キャビティならびに実際のレンズ・エリアが、膜と、レンズ整形器と、後壁との間に配置される。チャネルは、後壁および/またはレンズ整形器内に入り込んでいる。あらゆるキャビティの下方に、電子的永久磁石モーターが置かれる。軟磁性材料から製造された相手部材が、各キャビティの上方の膜上に置かれる。
【発明を実施するための形態】
【0083】
特定の構成および配置が説明されるが、これが、説明の目的で行われるにすぎないことを理解されたい。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の構成および配置が使用され得ることを、当業者は認識されよう。本発明が、様々な他の適用例、たとえば、限定はしないが、仮想現実(VR)デバイス、拡張現実(AR)デバイス、ビューファインダーにも採用され得ることは、当業者には明らかであろう。
【0084】
明細書における「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)、例示的な実施形態」などへの言及は、説明される実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、すべての実施形態が、必ずしもその特定の特徴、構造、または特性を含むとは限らないことを示すことに留意されたい。その上、そのような句は、必ずしも同じ実施形態に言及しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造または特性が一実施形態に関して説明されるとき、明示的に説明されるか否かにかかわらず、他の実施形態に関してそのような特徴、構造または特性を実現することは、当業者の知識内にあるであろう。
【0085】
アクチュエータに関与する実施形態は、各眼についてのベース補正が設定されると、左眼と右眼とを同時に調節する可能性を暗黙的に有する。
【0086】
図1は、任意の整形された非円形フレーム開口Oをもつ一対の眼鏡1の形態における、本発明による、光学デバイス1の一例を示す。典型的中央ビュー・ゾーンCは、全フレーム開口Oの一部分をカバーするにすぎない。その正確な位置は、瞳孔間距離(PD:pupillary distance)に依存する。中央ビュー・ゾーンCは、黄斑および近くの周辺ゾーンにおける視覚の質を規定するが、周辺ビュー・ゾーンPは、中間周辺視および遠周辺視に影響を及ぼすにすぎない。中央ビュー・ゾーンCだけが調整可能である必要がある。好ましい実施形態では、レンズ整形器開口24の形状は楕円である。より好ましい実施形態では、レンズ整形器22の形状は円である(すなわち、開口24は円形である)。詳細には、一定の膜の厚さと円形レンズ整形器開口とをもつ調整可能液体レンズ2が、所望の球面特性をもつレンズをもたらす。
【0087】
図2は、本発明の実施形態による、光学デバイス1の第1のレンズ100の流体充填レンズ容器2示す。それは、透明な大部分が剛性のレンズ整形器22からなり、レンズ整形器22は外側でフレーム10の輪郭に沿う。中央ビュー・エリアCの位置において、レンズ整形器22は円形開口24を有する。特定の実施形態では、高い光学透明性のフレキシブルな弾性膜21が、レンズ整形器22の上側(物体側)に接合される。膜21は、接着剤なしで、または極めて透明無色な接着剤を用いてのいずれかで接合される。さらに、膜21は、機械的安定性の改善のために接着剤を用いてフレーム10に密着される。異なる実施形態では、膜21は、レンズ整形器22の下側(眼側)に接合される。レンズ整形器22は、透明な後壁30に接着されて、スペーサ・リング50とともにレンズ(後レンズ)が形成される。後レンズ30とレンズ整形器22とは、それぞれ、スペーサ・リング50のセクションを受けるために周囲の凹部を備え得る。
【0088】
膜21と、レンズ整形器22と、スペーサ・リング50と、後レンズ/後壁30とが、流体Fで充填されるキャビティまたは容積Vを形成する。好ましくは、流体Fの屈折率と、膜21の屈折率と、レンズ整形器22の屈折率とが、屈折率整合されるように選定される。特定の実施形態では、屈折率の差は、0.1よりも小さい。より特定の実施形態では、屈折率の差は、0.02よりも小さい。流体レンズ・アセンブリ2が、眼鏡1の前レンズ40の後ろに置かれる。前レンズ40、レンズ整形器22および後レンズ30は、一般に、射出成形される。前レンズ40と後レンズ30の両方が、近視および遠視補正のための球面オフセットを含み、ならびに、非点収差および重力コマ(gravity coma)などのより高次の収差の補正を与えることができる。図2では、簡単のために、作動が示されていない。様々な作動機構が、後続の図に示されている。詳細には、(レンズ整形器22および後レンズ30の前記凹部に適合された)スペーサ・リング50が、上面上および底面上で緊密に接着される。凹部およびスペーサ・リング50の寸法ならびに材料の熱膨張係数が、レンズ2の温度感度が最小化されるようなやり方で整合される。スペーサ・リング50の線膨張から生じる容積変化が、好ましくは、流体Fの温度膨張による容積変化を正確に補償する。生じる温度ドリフト(thermal drift)が、全調整範囲の小さい部分について、0まで低減され得る。
【0089】
図3は、図2に加えて、作動概念を含む。レンズ整形器22と後レンズ30との間のスペーサ・リング50は、圧縮可能である。力を後レンズ30の輪郭上の一方の側に加えることおよび均一に加えることによって、圧縮可能スペーサ・リング50は、それぞれ、選択的に圧縮され、および均一に圧縮される。選択的な力の場合、スペーサ・リング50の反対側が、機械的ヒンジ53として働く。後者では、幾何学的形状により、膜21、すなわち、前記曲率調節可能エリア23を撓ませるために、スペーサ・リング50の小さい圧縮が必要とされるにすぎないので、ヒンジ機構によってもたらされる光学プリズム効果は無視され得る。圧縮可能スペーサ・リング50を圧縮することによって、後レンズ30とレンズ整形器22との間ならびに後レンズ30と膜21(エリア23)との間の液体容積Vは低減され、したがって、膜は外に膨らむ。作動は、たとえば、眼鏡フレーム10または眼鏡ブラケットのいずれかに組み込まれたスクイグル(squiggle)モーターによって与えられ得る。中央ビュー・ゾーンと総眼鏡表面との間の比が、機械的なてこの作用を与える。膜21の必要とされる撓みを与えるために、アクチュエータのごく小さい変位が必要とされる。したがって、非対称作動によって誘起される光学プリズム効果は、無視され得る。
【0090】
図4は、キャビティ内部の流体容積Vは一定にとどまるが、たとえば、フレーム10に組み込まれたリザーバ26から、流体Fが入る構成を示す。リザーバ26は、液体移送チューブ25によって流体キャビティ(容積)Vに接続される。このチューブ25は、実際のチューブの形態をとるか、またはフレーム10にモノリシックに組み込まれ得る。
【0091】
図5は、フレームの多種多様なサイズおよび形状に適応され得る汎用ワークフローに適合する一実施形態を示す。開始点は、破線の所望の輪郭10aに対応する実際のフレーム開口よりもわずかに大きい、半仕上げレンズ・ブランク2である。それは、図4で説明された構造と同様の基本構造を含んでいる。ここで、リザーバ26aは、モノリシックに組み込まれ得、自己閉鎖型貫通可能シール27を含んでおり、それを通して、液体Fが、ビュー・エリアのエッジのほうに位置するリザーバ26a中に挿入され得る。特定の実施形態では、このシール27は、シリコーンまたは別のエラストマーから製造され得る。半仕上げレンズ・ブランク2は、標準作製方法によって眼鏡フレーム10内に与えられ得る。随意の保護フィルムが、膜21を粒子から保護する。リザーバ26a、液体移送チャネル25および流体キャビティVのエリアは別として、レンズ整形器22および後レンズ30は、全エリアにわたって密封される。適合輪郭10aに沿って切断した後でさえ、流体キャビティVが密封されたままであることが保証される。この構成の主要な利点は、それが検眼士オフィスにおける従来の工具を用いて適合され得ることである。図面は、圧縮可能外部液体リザーバ26の概略表現をも含む。それは、レンズ2の(すなわち、エリア23の)ベースライン曲率を調節するためのオフセットねじを備える。特定の実施形態では、リザーバ26は、スライダー機構を用いて作動させられ得る。異なる実施形態では、同じリザーバ26が、ねじ式機構を用いて作動させられる。外部リザーバ26は、その端部に、特に針62の形態の、導管62を有し、それにより、針62が貫通可能シール27を貫通し、組み込まれたリザーバと外部液体リザーバとの間の液体接続を確立することが可能になる。そのような液体リザーバ26を実装し、外部液体リザーバ26を組み込まれたリザーバ26aに接続するための多くの異なるやり方があることを、当業者は理解されよう。
【0092】
図6は、調整可能眼鏡レンズ2を特定のフレームに適合させるためのワークフローを詳細に説明する。それは、眼の処方(eye prescription)を測定することから始まる。処方に基づいて、好適な前レンズ40が選択される。次のステップでは、特定のフレーム10に従って、最も好適な半仕上げレンズ・ブランク2が選定される。基準は、必要に応じて、組み込まれたリザーバ26aと流体キャビティ(容積)Vとの周りにちょうど十分なシーリング幅を有することである。次いで、レンズ・ブランク2は、随意にハード・コーティングされる。次のステップでは、レンズ・ブランク2が表面仕上げされて最終処方になる(たとえば、正しい瞳孔間距離を保証する)。次いで、最終処方が眼鏡フレーム10に適合される。外部液体リザーバ26が組み込まれていないいくつかの場合には、リザーバ26/アクチュエータ60が、眼鏡フレーム10に取り付けられる。外部リザーバ62の針62が、シールに貫通される。次いで、オフセットねじ64を回転させることによって、0位置が調節される。眼鏡フレーム上のスライダーを作動させることによって、屈折力は切り替えられ得る。
【0093】
図7は、図2に加えて、圧電作動概念を含む。いくつかの圧電アクチュエータ・チューブ61が、レンズ2の外側エッジに沿って置かれる。電圧を収縮性圧電アクチュエータ61に印加することは、レンズ整形器22と後レンズ30との間の距離、したがって、流体キャビティの容積Vと、実のところ膜21の曲率(ここでは、レンズ整形器開口24によって規定される前記エリア23の曲率)とを低減する。圧電アクチュエータ・チューブ61は、その力を非圧縮可能スペーサ・リング51上に移送する。特定の実施形態では、このスペーサ・リング51は、金属シートから打ち抜かれる。非圧縮性スペーサ・リング51自体は、レンズ整形器22に接続する圧縮可能スペーサ・リング52に接続される。圧縮可能スペーサ・リング52の機能は、レンズ2内の熱的効果を補償することである。これは、外部温度変動に対するレンズ2の焦点距離安定性を増加させる。
【0094】
流体密なキャビティを与えるために、追加のシーリング膜がレンズ整形器を後レンズ容器と接続する。好ましい実施形態では、圧縮可能スペーサ・リングは、シリコーンから製造される。圧電作動概念は、高速ジオプター変動を可能にする。典型的調整速度は、10~100ms程度であろう。アイウェアが、光学的/電気的手段を用いて視線距離を監視するビルトイン・センサーを有する場合、高速調整が必要とされる。
【0095】
図8は、圧電アクチュエータ61をもつ図7中の以前に示されたアセンブリのより詳細な実施形態を示す。さらに、図8は、(特に、アクチュエータ61を制御するために)眼球運動を追跡するために使用され得る、視線追跡センサー70をも示す。
【0096】
図9aは、-3.0Dptの屈折力、近視についての共通値をもつ眼モデルを示す。調整可能レンズの近補正(near correction)は、0に設定される。無限遠に置かれた物体が、網膜上にシャープな画像を生じる。図9bは、物体距離が330mmである状況を示す。この場合、調整可能レンズの近補正は、+3Dptに設定される必要がある。負の初期レンズ倍率は、負のレンズ倍率を前レンズに帰属させること、または後レンズ容器に帰属させること、または両方の組合せに帰属させることよって達成され得る。ZEMAXシミュレーションCR-39の場合、屈折率1.498と、アッベ数(Abbe number)58とをもつ透明なプラスチック材料が仮定された。レンズ流体の場合、屈折率1.38と、アッベ数65とをもつ液体が仮定された。図9d)は、0作動での膜(曲率半径200mm)と、完全作動での膜(曲率半径78mm)とを示す。この例では、35mmのやや大きい調整可能開放口(CA:clear aperture)が仮定された。これは、エッジにおける4.26mmの総レンズ厚さと、中央における3.7mmの総レンズ厚さとを生じる。CAが約25mmまで低減された場合、レンズは、はるかに薄くなり得る。
【0097】
すべての異なる作動機構において、各眼についてのベース補正が設定されると、左眼と右眼とを同時に調節するオプションがある。電気的に作動されるレンズの場合、これは、エレクトロニクス回路において容易に実装され得る。機械的に調整されるレンズの場合も、同時調整が当業者によって実装され得る。
【0098】
図10に示されている実施形態は、図2に加えて、いくつかの電子的永久磁石80に基づく作動概念を含む。そのようなアクチュエータは、図10Aに示されているようにコイル(たとえばワイヤ巻線)84中の電流のパルスによって、外部磁界がオンまたはオフに切り替えられ得る、永久磁石のタイプである。
【0099】
電子的永久磁石80は、2つのセクションまたは磁石82、83、すなわち、(「硬」/高保磁力磁性材料の)第1の磁石82と、(「軟」/低保磁力磁性材料」の)第2の磁石83とからなる。後者の部分83の磁化M’の方向は、第2の磁石83を囲んでいるコイル84中の電流のパルスによって、切り替えられ得る。磁気的に軟らかい材料82と磁気的に硬い材料83とが、対向する磁化Mと磁化M’とを有するとき、電子的永久磁石80は、その極にわたって正味外部磁界を生じないが、それらの磁化方向Mと磁化方向M’とが位置合わせされたとき、電子的永久磁石80は外部磁界を生じる。軟磁性材料からなる2つの極部材85が、2つの永久磁石82、83の両端上に位置する。極部材85は、空気よりも高い透磁率を有するので、それらは、電子的永久磁石82、83の磁束を集中させることになる。この電子的永久磁石80は、後壁または後レンズ30に機械的に接続される。
【0100】
電子的永久磁石80がオンに切り替えられ、電子的永久磁石の極近傍に軟磁性材料の相手部材81が置かれたとき、磁束は、軟磁性材料に閉じ込められて流れることになり、引力を生じる。相手部材81がレンズ整形器22に機械的に接続されている場合、この引力は、レンズ整形器22と後壁30との間の距離を低減し、したがって、流体(または液体)Fが存在する容積Vの一部分を低減する。これにより、膜21の伸縮可能な曲率調節可能エリアはさらに外に膨らみ、したがって、膜21の曲率調節可能エリア23の曲率は増加する(ここで、前記エリア23の曲率は、レンズ整形器開口24によって規定される)。もちろん、電子的永久磁石80の位置と相手部材81の位置とは、入れ替えられ得る(すなわち、2つの構成要素80、81は、場所を交換することができる)。
【0101】
特に、図10に示されているように、複数の電子的永久磁石80が、後壁30の周囲の境界エリアに沿って配置される。特に、電子的永久磁石は後壁に埋め込まれ、各電子的永久磁石80は、特にレンズ整形器22に埋め込まれた、関連する相手部材81に対面する。詳細には、それぞれの電子的永久磁石80の各極部材85が、関連する相手部材81に対面する対面側85aを備え、関連する相手部材81とのギャップ86を形成する。それぞれの電子的永久磁石80が外部磁界を生成したとき、それぞれの相手部材81は、したがってレンズ整形器22は、後壁30のほうへ引っ張られる。この相対的運動は、流体が曲率調節可能エリア23のほうへ変位され、次いでそれに応じて曲率調節可能エリア23が外側に膨らむので、膜21の曲率調節可能エリア23の曲率を調節することを可能にする。それぞれの外部磁界がオフにされたとき、膜22の曲率調節可能エリア23は、その初期位置に戻り、流体をレンズ整形器22と後壁30との間の領域に再び押し込む。
【0102】
さらに、流体密な容積Vを与えるために、追加の周囲のフレキシブル・シーリング部材(たとえばシーリング膜または変形可能なシーリング・リング)28が与えられ、それがレンズ整形器22を後壁30に接続する。電子的永久磁石80および相手部材81は、密閉された容積Vの外側に配置される。
【0103】
電子的永久磁石概念は、高速ジオプター変動を可能にする。典型的調整速度は、1ms程度であり得る。アイウェアが、光学的/電気的手段を用いて視線距離を監視するビルトイン・センサーを有する場合、高速調整が必要とされる。
【0104】
図11に示されている実施形態は、図10に加えて、一方の側のレンズ整形器22上の機械的ヒンジ53を含み、そのヒンジ53は、レンズ整形器22のエッジ領域を容器2を保持するフレーム10に接続する。ここで、少なくとも1つの電子的永久磁石80または複数の電子的永久磁石80が、レンズ整形器22/後壁30の、ヒンジ53の反対側に配置される。電子的永久磁石80がオンに切り替えられたとき、後壁30上に配置されたそれぞれの電子的永久磁石80と、関連する電子的永久磁石80に対面するそれぞれの相手部材81との間の引力が、レンズ整形器22を後壁30のほうへ回動することによりレンズ整形器22と後壁30との間の距離を低減する。したがって、再び、容積Vの一部分が圧縮され、流体(たとえば液体)Fが膜21の曲率調節可能エリア23を押圧し、次いで膜21が外側に膨らみ、それにより、膜21の前記曲率調節可能エリア23の曲率が増加する。
【0105】
さらに、生じた力を正確に制御することをより困難にする、図10および図11の実施形態において使用されるアクチュエータ・アセンブリのスナップインする傾向(すなわち、相手部材81と、関連する電子的永久磁石80との接触)を低減するために、図12に示されている実施形態は、電子的永久磁石80と、関連する相手部材81との異なる配置を使用する。ここで、電子的永久磁石80は、眼鏡のフレーム10に組み込まれ、レンズ/容器2の周辺部を囲んで配置され、相手部材81は、動くレンズ整形器22に組み込まれる。
【0106】
非作動位置では、電子的永久磁石80とそれらの相手部材81は、互いに対してシフトされる。第2の磁石83の磁化M’を、第1の磁石82の磁化Mに平行であるように(ここでは、それぞれのコイル84に印加される好適な電流パルスによって)切り替えることによって、それぞれの電子的永久磁石80が作動させられたとき、それぞれの外部磁界は、磁束を最大にするためにそれぞれの電子的永久磁石80の前にそれぞれの相手部材80を引っ張る。相手部材は、電子的永久磁石80のそばに引っ張られるが、電子的永久磁石80のほうにまっすぐに引っ張られないので、この構成は、磁気「スナップイン」による影響を受けない。
【0107】
ここでも、それぞれの電子的永久磁石80の位置は、関連する相手部材81の位置と交換され得る。
【0108】
さらに、図13に示される実施形態は、図12に加えて、図11に関連して上記で説明された機械的ヒンジ53を含む。ここでも、電子的永久磁石80は、ヒンジ53の反対側に配置される。電子的永久磁石80がオンに切り替えられたとき、それぞれの電子的永久磁石80と、関連する相手部材81との間の引力が、レンズ整形器22と後壁30との間の距離を低減し、したがって、容積Vの一部分を圧縮し、したがって、流体Fが、膜21の曲率調節可能エリア23に押圧される。したがって、前記エリア23の曲率は、すでに上記で説明されたように増加される。
【0109】
図10図13に示されたすべての構成では、それぞれの電子的永久磁石80が個々に対処され得、規定された数の電子的永久磁石80を切り替えることが可能であるにすぎない。N個の同等の電子的永久磁石80および関連する相手部材81を有する場合、エリア23のN個の異なる状態/曲率、したがって、レンズ/容器2のN個の異なる焦点屈折力が達成され得る。
【0110】
さらに、また別の実施形態によれば、異なる強度のN個の電子的永久磁石80が使用され得、これは、総計2のN乗個の異なる状態/焦点屈折力を実現することを可能にする。
【0111】
さらに、それぞれのコイル84に印加される電流パルスのパラメータを調節することによって、それぞれの電子的永久磁石80は、完全にまたは部分的にのみのいずれかで分極させられ得る。これは、各電子的永久磁石80の力をアナログ様式で調節することを可能にする。したがって、異なる量の引力が、したがって前記エリア23の異なる量の曲率が生成され得、それらの間で迅速に切り替えることができる。
【0112】
さらに、レンズ/容器2の焦点屈折力の変動性をさらに増加させるために、完全なまたは部分的な分極を異なる強度の電子的永久磁石に適用することが可能である。
【0113】
さらに、図14に示されている実施形態は、(たとえば、マイクロ流体)チャネル92を介して容積Vの主キャビティ91と接続された、1つまたは複数のリザーバ90を使用する。リザーバ90ならびに実際のレンズ・キャビティ91は、膜21と、レンズ整形器22と、後壁30との間に形成される。レンズ整形器22は、主キャビティ91のための凹部(中央レンズ・エリア)と、さらに、より小さいリザーバ90のための凹部とをもつ透明な材料からなり得る。主キャビティ91は、好ましくは、光学収差を低減するために円形または円であるが、より小さいリザーバ90は、非円形形状をも有することができる。リザーバ90はまた、レンズ整形器のエッジ近くに配置され得、したがって、それらは、レンズ整形器22のエッジを保持するフレームのスロット中に位置を定められ得る。したがって、リザーバ90は、外側から見えない。
【0114】
マイクロ流体チャネルは、後壁30中および/またはレンズ整形器22中のいずれかに形成される。これは、マイクロフライス加工、エンボス加工、成形加工などのプロセスによって行われ得る。
【0115】
流体/液体Fと、レンズ整形器22と、後壁材料とが、好ましくは屈折率整合され、したがって、マイクロ流体チャネル92ならびに中央キャビティ91は、理想的には非可視である。あらゆる小さいリザーバ90の下方に、電子的永久磁石80が置かれる。関連する相手部材81は、それぞれのリザーバ90の上方の膜21上に置かれる。したがって、リザーバ90は、液体または流体のポンプとして働く。それぞれの相手部材81に対する引力は、それぞれのリザーバの上側の壁セクション93(それぞれの壁セクション93は膜21によって形成される)を押下し、したがって、それぞれのリザーバ90の内部の有効容積を低減する。変位された流体/液体Fは、主キャビティ91に流入し、超過圧力を生じ、それは、上記ですでに説明されたように膜21の前記エリア23を外側に湾曲させる。主キャビティ91の流体容積と、したがって膜21のエリア23の曲率とは、個々のリザーバ90の有効容積を制御することによって、調節され得る。アクチュエータ80は、それがスナップインするように設計され得る。結果として、変位された流体/液体Fは、小さいリザーバ90の幾何学的形状によって、厳密に知られ、与えられる。N個の同等のリザーバ90を使用する場合、レンズ/容器2の焦点屈折力のN個の異なる状態が達成され得る。別の実施形態は、異なるサイズのN個の小さいリザーバ90を使用するであろう。この場合、総数2のN乗個の異なる状態(焦点屈折力)が対処され得る。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図10A
図11
図12
図13
図14